(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】注射用ドセタキセル組成物およびそのための調製法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/337 20060101AFI20230510BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230510BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230510BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20230510BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K31/337
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/40
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021503744
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2018098227
(87)【国際公開番号】W WO2020019363
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】201810838844.1
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520165571
【氏名又は名称】ビカ バイオテクノロジー (グアンジョウ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シュ インティン
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538294(JP,A)
【文献】特表2011-523620(JP,A)
【文献】特表2009-523771(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108066774(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、
ドセタキセルを含有する注射用組成物であって、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、25~40部のシクロデキストリン、40~70部の共溶媒、0~5部の安定剤1、4~9部の安定剤2、0.001~0.4部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない、組成物を調製するための方法:
共溶媒を容器に量り取る段階、次いで、そこにドセタキセルを加える段階、得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、20℃~50℃で撹拌する段階、シクロデキストリンを容器に加える段階、継続して撹拌してそれを分散させる段階、次いで、そこに水を加える段階、系を十分に撹拌した後、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加える段階、容器を窒素充填してまたはせずに、安定剤1、安定剤2および添加剤を撹拌して溶解させた後に系をさらに30~480分間撹拌する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階;
ここで、該共溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールおよびグリセロールから選択される1つまたは複数であり、該共溶媒は、エタノールではなく;
該安定剤1は、ポロキサマー(P)であり;
該安定剤2は、ポビドン(PVP)であり;
該添加剤が、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または重亜硫酸ナトリウム;および/またはメタ重亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウムを含む。
【請求項2】
以下の段階を含む、
ドセタキセルを含有する注射用組成物であって、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、25~40部のシクロデキストリン、40~70部の共溶媒、0~5部の安定剤1、4~9部の安定剤2、0.001~0.4部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない、組成物を調製するための方法:
シクロデキストリン、共溶媒、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに量り取る段階、20℃~50℃および1.0MPa~200MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得る段階、ドセタキセルを系に加えてそれを高圧均質化でさらに5~60分間処理した後、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階;
ここで、該共溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールおよびグリセロールから選択される1つまたは複数であり、該共溶媒は、エタノールではなく;
該安定剤1は、ポロキサマー(P)であり;
該安定剤2は、ポビドン(PVP)であり;
該添加剤が、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または重亜硫酸ナトリウム;および/またはメタ重亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウムを含む。
【請求項3】
以下の段階を含む、
ドセタキセルを含有する注射用組成物であって、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、25~40部のシクロデキストリン、40~70部の共溶媒、0~5部の安定剤1、4~9部の安定剤2、0.001~0.4部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない、組成物を調製するための方法:
共溶媒をホモジナイザーに量り取る段階、そこにドセタキセルを加える段階、次いで、20℃~50℃および1.0MPa~200MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させる段階、その後、そこにシクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水を加える段階、それらを高圧均質化でさらに5~60分間処理する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階;
ここで、該共溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールおよびグリセロールから選択される1つまたは複数であり、該共溶媒は、エタノールではなく;
該安定剤1は、ポロキサマー(P)であり;
該安定剤2は、ポビドン(PVP)であり;
該添加剤が、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または重亜硫酸ナトリウム;および/またはメタ重亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウムを含む。
【請求項4】
上記方法によって得られた均一な混合物のpH値が、4.0~5.0である、請求項
1~
3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
得られた系を20℃~50℃で撹拌して溶解させる段階が、得られた系を25℃で撹拌して溶解させる段階である、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、20℃~50℃で撹拌する段階が、得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、25℃で撹拌する段階である、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
20℃~50℃および1.0MPa~200MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得る段階が、25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得る段階である、請求項
2記載の方法。
【請求項8】
20℃~50℃および1.0MPa~200MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させる段階が、25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させる段階である、請求項
3記載の方法。
【請求項9】
混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過することによって得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを栓で半密閉する段階、次いで、バイアルを凍結乾燥用フリージングドライヤーに入れる段階、次いで、バイアルを取り出し、それらを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
をさらに含む、請求項
1~
8のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の分野に関する。特に、本発明は、ドセタキセルを含有する注射用組成物およびその調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドセタキセルは、白色またはほぼ白色の粉末であり、水にほとんど溶けない。ドセタキセルは、エタノールに可溶性であり、アルカリ条件で不安定である。ドセタキセルの化学名は、[2aR-(2aα,4β,4aβ,6β,9α,(aR*,βS*),11α,12α,12aα,12bα)]-β-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-α-ヒドロキシベンゼンプロパン酸[12b-アセチルオキシ-12-ベンゾイルオキシ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4,6, 11-トリヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-7,11-メタノ-1H-シクロデカ-[3,4]ベンズ[1,2-b]オキセト-9-イル]エステルである。
【0003】
さらに、ドセタキセルは、以下の構造式:
を有し、その分子式は、C
43H
53NO
14であり、そして
その分子量は、807.89である。
【0004】
ドセタキセルは、イチイから抽出された前駆体から半合成的に調製することができるタキサンの抗悪性腫瘍薬である。その抗がん作用機構および特徴は、パクリタキセルのものと類似しており、微小管阻害薬に属する。ドセタキセルは、チューブリン二量体の微小管への集合を促進すること、および脱重合プロセスを防止して微小管を安定化させることを通して、がん細胞をG2期およびM期においてブロックし、がん細胞の有糸分裂および増殖を阻害する。ドセタキセルは、パクリタキセルよりも強い薬理作用を有する。具体的には、パクリタキセルと比較して、ドセタキセルは、3倍より高い細胞内濃度およびより長い細胞内保持時間を有する。微小管に対するドセタキセルの親和性は、パクリタキセルの親和性よりも2倍高い;ドセタキセルは、微小管安定剤および集合促進剤としての役割を果たすときにパクリタキセルの2倍活性である;そして、ドセタキセルは、微小管脱重合阻害剤としての役割を果たすときにパクリタキセルの2倍活性である。インビトロ抗腫瘍活性試験において、ドセタキセルは、パクリタキセルよりも1.3~12倍活性であることが示されている。加えて、臨床研究によって、ドセタキセルは、パクリタキセルとの比較でアントラサイクリン耐性乳がんにより有効であることも示されている。ドセタキセルは、アントラサイクリン耐性乳がんの二次治療における非常に有効な薬物であり、また非小細胞肺がんのための単剤療法および併用化学療法における最も有効な薬物の1つである。
【0005】
使用されている現行のドセタキセルの製剤は、単一調製物包装(Tween 80および/またはエタノールを含有する)と希釈剤(13%エタノール水溶液)とを含む注射液である。ドセタキセルの最も初期のオリジナル製品は、Sanofi-Aventis(以前はフランスのRhone-poulenc Rorer)によって開発された半合成抗腫瘍薬であり、進行性の乳がんおよび非小細胞肺がんのための二次治療として1995年にメキシコ、南アフリカおよびカナダで最初に販売された。1996年に、ドセタキセルは、米国FDAによって、化学療法が失敗した転移性乳がんおよび白金製剤が失敗した転移性非小細胞肺がんの治療用に承認された。2000年12月に、ドセタキセルとシスプラチンの併用が、局所進行性または転移性の非小細胞肺がん用の一次療法としてFDAによって承認された。現時点で、ドセタキセルは、中国、欧州、米国および日本を含めた世界のほぼ100の国と地域で販売が承認されている。
【0006】
ドセタキセルは、脂溶性で水にほとんど溶けないので、そのオリジナル製剤であるTAXOTERE(登録商標)は、可溶化剤として界面活性剤のポリソルベート80(Tween 80、T-80)および希釈剤としてエタノールを用いる。その製剤の包装仕様は、2つのバイアルを含有する:(a)TAXOTERE(登録商標)注射剤、ポリソルベート80 0.5mLに溶解させたドセタキセル20mg;(b)希釈剤、13%(w/w)エタノール溶液約1.5mL。しかしながら、そのようなドセタキセルの製剤について、患者へ投与する前に二段階の調製プロセスが必要とされる:第一段階は、TAXOTERE(登録商標)注射剤(a)を希釈剤(b)と混合して、約10mg/mLの濃度の混合物を得ることである;第二段階は、第一段階によって得られた混合物を、注射用の0.9%塩化ナトリウム溶液または5%グルコース溶液のいずれかを含有する250mLの容器(非PVC)に希釈することである。調製された最終輸注液中のドセタキセルの濃度は、0.35mg/mL~0.70mg/mLであるべきであり、0.9mg/mLを超えてはならない。
【0007】
後発の改良された製剤では、ドセタキセル、T-80およびエタノール(有無を問わず)ならびに他の担体が単一の非水溶液中に調製される。しかしながら、今まで、T-80もエタノールも含有しないドセタキセル製剤の報告はなく、そのような製剤を記載している文献もない。
【0008】
特異な匂いの暖色でやや苦みのある非イオン性界面活性剤であるポリソルベート(Tween)は、ポリオキシエチレンソルビトールの部分脂肪酸エステルが連続したものである。ポリソルベートは、油用の乳化剤および可溶化剤として広く使用されている。ポリソルベートは、一般に、無毒で非刺激性の物質であると考えられており、難溶性薬物の注射液における可溶化担体としてよく使用されている。しかしながら、Tweenの注射液は、有害作用を引き起こす場合があり、例えば、それは、低濃度(0.01~2.0%)で溶血を引き起こす可能性があり、さらに、局所および筋肉内注射の間に過敏性反応が生じる場合もあり、重症例では、全身性発疹/紅斑、低血圧および/もしくは気管支痙攣を特徴とする重度の過敏性反応、または極めて稀ではあるが致死性アナフィラキシーもしくは死亡さえ起こる場合がある。ポリソルベートの有害作用を低下させるために、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ステロイドおよびH2拮抗薬からなる前投薬が患者に対して臨床上必要とされ、このことは、臨床使用のコンプライアンスを大きく低下させる。
【0009】
ドセタキセル製剤中のポリソルベート80の存在は、重度の有害作用を引き起こす場合があり、全身性発疹/紅斑、低血圧および/もしくは気管支痙攣を特徴とする重度の有害作用、または極めて稀ではあるが致死性アナフィラキシーが患者において報告されている。ポリソルベート80によって引き起こされる有害作用を低下させるために、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ステロイドおよびH2拮抗薬が、TAXOTERE(登録商標)の投与の30分前に患者に前投与される。さらに、TAXOTERE(登録商標)について、臨床使用の前に2段階希釈が必要とされる。すなわち、TAXOTERE(登録商標)は、投与の前に、最初に13%(w/w)エタノール溶液で、次いで0.9%塩化ナトリウム溶液または5%グルコース溶液で希釈されるべきであるが、このことは、複雑な段階を導くだけでなく、薬物の使用における安全上のリスクももたらす。
【0010】
それと同時に、ドセタキセル製剤においては、希釈剤として13%(w/w)エタノール溶液が用いられるか、または共溶媒としてエタノールが用いられるので、その中の高濃度のエタノールが原因で、ドセタキセル製剤の注射および投与の間により大きな刺激、中毒などの有害作用が引き起こされる場合がある。2014年6月20日、米国食品医薬品局(FDA)は、アルコールとしても知られているエタノールを含有した静脈内化学療法薬ドセタキセルが、処置中および処置後に、患者に中毒症状を経験させるかまたは酩酊感を生じさせる場合があると警告した。我々は、このリスクを回避するためにすべてのドセタキセル薬品のラベルの見直しを行っている。医療従事者は、この薬物を患者に(特にアルコール摂取を避けなければならないまたは最小限に抑えなければならない患者において)処方または投与する際に、またそれを他の医薬と併用する際に、ドセタキセルのアルコール含量を考慮すべきである(https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm401752.htm#tabs-6)。
【0011】
現行のドセタキセル製剤自体、T-80によって引き起こされる有害作用の影響、ならびに/またはエタノールによって引き起こされるより大きな刺激および中毒、ならびに/またはエタノールを含有するドセタキセルのラベルにあるFDAが警告している中毒症状/酩酊のリスクの点で、依然として大きな臨床的リスクを有していることが分かる。それゆえ、T-80もエタノールも含有しないドセタキセルの製剤の開発は、その製剤の使用中の患者の安全性およびコンプライアンスを大幅に改善するであろうから、極めて明白な臨床的利点を有する。
【0012】
20世紀の終わりに、ナノテクノロジーと薬学の組み合わせからナノドラッグが生まれた。すなわち、薬物および担体が、粒径1~1000nmの薬物担持粒子(ナノ粒子、ナノリポソーム、ナノエマルションなど)または薬物ナノ結晶へと調製された。
【0013】
ナノ結晶技術は、ミクロンサイズの薬物粒子の粒径を、物理的破砕、カプセル封入、破壊および分散、沈殿晶析などの手段によって、サブミクロンレベル(100~1000nm)まで、またはさらにナノメートルレベル(1~100nm)まで減少させることを指し、それによって、難溶性薬物の粒径をナノメートルレベルまで減少させる技術的課題を解決することができる。ナノ結晶技術は、薬物の粒径を減少させる、薬物の比表面積、飽和溶解度および膜透過性を増加させる、ならびに吸収部位での保持時間を延長させるなどの利点に起因して、薬物の溶解度およびバイオアベイラビリティを効果的に向上させることができる。それゆえ、このことは、難溶性薬物の低い経口吸収の問題を克服する新たな解決策、および安定剤の作用下で安定である調製技術を提供する。
【0014】
調製法に応じて、医薬ナノ結晶技術は、粉砕法、晶析法、高圧均質化法、乳化法などに分類することができる。一方で、医薬ナノ結晶技術はまた、注射用難溶性薬物のための新規の可溶化法も提供する。例えば、薬物の水溶解度は、ナノ粉砕によって粒径を減少させて薬物の表面積を増加させることを通して増加させることができる;または、薬物の水溶解度は、高圧均質化によって向上させることができ、具体的には、高圧環境が、APIのミクロ粒子形成を容易にし、均質化が、溶媒中での均一な分散を加速させることによって、薬物の溶解を加速させることができ、そして、2つの技術の組み合わせは、難溶性薬物の溶解度をさらに増加させることができる。
【0015】
医薬担体の一種であるシクロデキストリンは、中が空洞で疎水性の立体キラル空間を有しており、その「内部疎水性および外部親水性」の構造的特徴は、好適な空間サイズを有する多種多様な有機小分子(基質)を封入して、非共有ホスト-ゲスト複合体(包接複合体)を形成することを可能にする。シクロデキストリンの最も顕著な薬理作用は、難溶性薬物の水溶解度および安定性を増加させることであると分かる。
【0016】
先行技術において、いくつかの特許および/または文献が、T-80を含まないシクロデキストリン/ドセタキセル組成物を報告している:例えば、Ren Yong等によって発明された特許番号US8765716B2/CN100411688C(特許文献1)(ドセタキセル-シクロデキストリン包接複合体を含有する薬学的組成物およびその調製プロセス)は、ドセタキセルとシクロデキストリンの質量比が1:10~1:150である、ドセタキセル、シクロデキストリンおよび薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を開示している。この特許の明細書および特許請求の範囲に開示されている内容によれば、組成物の調製法において共溶媒としてエタノールを使用し、次いでそれを減圧下で除去して、少量または微量のエタノールを有する液体包接物または固体包接物を形成しており、その中のエタノールの含量は1.0%未満である。シクロデキストリンは、エタノールに対してある特定の包接効果を有する特殊な空間構造を有するため、エタノールが一度この空間に侵入すると、既存の減圧技術では完全に取り除くことは不可能である。さらに、その特許は、「包接物の1H NMRは、弱いエタノールメチルピークを示した」ことも開示した。それゆえ、ドセタキセル、シクロデキストリンおよび薬学的に許容される賦形剤からなる組成物において、薬学的に許容される賦形剤は、エタノールと他の賦形剤の組み合わせであるはずであり、またそれから調製された組成物は必然的に少量または微量のエタノールを含有すると結論付けることができる。
【0017】
GECZY JOSEPH Mによって発明された特許番号CN1222321C/WO1999/024073(特許文献2)(シクロデキストリンおよびタキソイドを含有する薬学的組成物)は、タキソイドとシクロデキストリンの重量比が1:25~1:250の間である、タキソイドおよびシクロデキストリンを含有する組成物を開示している;同様に、この組成物の調製法において溶媒としてエタノールを使用し、次いでそれを減圧下で除去している。これに関して、上記のシクロデキストリンの構造的特徴から、この組成物中に少量のエタノールが含有されるはずである。
【0018】
Kagkadisによって発明された特許番号US2005/0009783(特許文献3)(タキソールと2-ヒドロキシポキシプロピル(Hydroxypoxyproply)-ベータ-シクロデキストリンとの包接複合体)は、タキソールおよびその誘導体と2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンのモル比が1:1000である、組成物を開示しており、ここでも調製法においてエタノールを使用している。
【0019】
上記で考察された特許では、T-80は使用していないが、可溶化を補助するために必然的にエタノールを使用している。しかしながら、組成物中にはその後に減圧下で除去されてもなお多少のエタノールが残留しているだろう。結果的に、組成物は、エタノール除去後、固体形態でしか存在することができず、使用前に追加の希釈段階が必要となる。臨床使用に好都合な液体形態は、上記特許を通じて得ることができないことが分かる。一方で、タキソイドを可溶化するためにエタノールおよびシクロデキストリンを使用している上記特許に開示されているように、そこに開示されている組成物はすべて、エタノールを除去することによって固体形態へと調製されている。エタノール不含溶液中ではタキソイドの安定時間は大幅に短縮され、一般に24時間以内に沈殿するだろうから、上記特許に開示されている組成物の再構成の間、組成物を液体形態で安定化させるにはエタノールが必要である。例えば、ZHAO WilliamW等によって発明された特許出願番号WO2016/149162(特許文献4)(タキサン-シクロデキストリン複合体を含有する薬学的組成物、製造法および使用法)は、組成物中に、エタノールは含まれなければならないものであること、およびエタノールとタキソイドの質量比が5:1~40:1であることを明確に開示している。タキソイドが長時間にわたって安定であることができる液体の薬学的組成物がこの特許によって調製されているが、その中に含有される大量のエタノールは、臨床薬適用のリスクをもたらし得ることが分かる。
【0020】
Lajo Szente等によって発明された特許番号US6284746(特許文献5)(シクロデキストリンと共に形成されたイチイ抽出物のタキソールまたはタキソテレの包接複合体、その調製および使用)において、パクリタキセルもしくはドセタキセルまたはセイヨウイチイ抽出物の複合体が、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体の水溶液もしくは緩衝液、または少量のエタノールを含有する溶液を使用することによって直接調製されている。しかしながら、上記調製された複合体におけるAPIの最大水溶解度は1mg/mLを超えず、このことは、エタノールを使用しないでまたは非常に少量のエタノールを使用して、臨床上の濃度要件を満たすドセタキセルの製剤を調製することが困難であることを示している。
【0021】
上記特許を分析および研究した後、T-80は、液体形態の安定なドセタキセル/シクロデキストリン組成物の調製中に省略可能であるが、エタノールは、使用または存在しなければならないものであると結論付けることができる。
【0022】
ドセタキセル製剤中のT-80によって引き起こされるアナフィラキシーおよびエタノールによって引き起こされる有害作用を考えると、T-80もエタノールも含有しないドセタキセル製剤を安定な液体形態で調製できれば、それは大きな技術革新となろう。
【0023】
エタノールは、先行技術において慣用的に使用されていることから、エタノールを使用することなしに、シクロデキストリンを含有するドセタキセル組成物を、安定な液体製剤へと調製することも、少量または微量のエタノールを含有する固体組成物へと調製することもできないという明白な結論を得ることができる。
【0024】
しかしながら、上述の慣用性に影響を受けることなく、また特殊な組み合わせ製剤および特殊な調製法に基づくことなく、本出願の発明者は、多数の実験を行って、長期安定性である液体ドセタキセル/シクロデキストリン組成物および完全にエタノール不含の固体組成物を調製した。本発明によって調製される組成物は、T-80もエタノールも有しておらず、その調製法においてエタノールを使用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】US8765716B2/CN100411688C
【文献】CN1222321C/WO1999/024073
【文献】US2005/0009783
【文献】WO2016/149162
【文献】US6284746
【発明の概要】
【0026】
これに関して、既存のドセタキセル調製物は、以下の欠点を有する:製剤中にドセタキセルを溶解させるまたはその溶解度を増加させるために使用されるエタノールおよび/またはポリソルベートは、重度のアナフィラキシー、より大きな被刺激性および中毒をもたらす場合がある;加えて、ドセタキセル組成物がエタノールによって可溶化されないとなれば、ドセタキセルは極めて低い溶解度を有するために臨床において必要とされる濃度に達せず、結果的に、製剤製品を調製することができない;または、エタノールによって可溶化されていないドセタキセル組成物の安定時間は、注射用液剤へと希釈した後、比較的短く(一般に<4時間)、かつ、臨床使用の間に沈殿が生じる場合があり、組成物の使用において安全上のリスクがある。
【0027】
しかしながら、本発明者等は、先行技術においてドセタキセルの溶解を補助するためにエタノールがよく使用されるという偏見を克服し、シクロデキストリンならびに他の特定の共溶媒(エタノールではない)、安定剤および添加剤を含み、かつ、先行技術においてよく使用される液剤を調製するための方法(本発明の第一の方法)を通して調製される、本発明の液体組成物を見いだした。加えて、本発明者等は、第一の方法によって臨床使用要件を満たす高濃度組成物を調製する際により長い調製時間が必要であったことも見いだした。より長い調製時間によって引き起こされる生産コストならびに微生物および不純物の取り込みリスクを考慮に入れて、本発明者は、調製法を改良し続けることで、第二の方法、第三の方法、および第四の方法を開発した。
【0028】
具体的には、本出願の発明者は、ドセタキセル、共溶媒(エタノールではない)、シクロデキストリン、安定剤、添加剤(例えば、クエン酸など)および適量の水からなる溶液系を構成する。前記系では、ドセタキセルの溶解度は、≧10mg/mLであり(一般的な臨床使用要件を満たすことができる)、ドセタキセルの最大溶解度は、40mg/mLに達することができる。一方で、GC法を使用して、系にエタノールがあるか否かを判定したところ、エタノールが検出されなかったという結果が示された。本発明の溶液系は、再構成後4時間超安定していることができ、このことは、長時間にわたって安定に貯蔵できることを示している。
【0029】
本発明の溶液系の安定性は、以下の局面において具現化される:(1)いくつかの好ましい態様において得られた試料を、25℃±2℃およびRH 60%±5%の条件下に24ヶ月間置いたところ、ドセタキセルの結晶の析出は観察されなかった;(2)25℃±2℃およびRH 60%±5%の条件下に24ヶ月間置いた試料の指標はすべて注射液の要件を満たし、その不純物限界はUSPの基準を満たす;(3)試料は、静置している間、清澄で無色であり、結晶の析出は観察されなかった。それゆえ、本出願の液体試料は、24ヶ月間超安定に貯蔵でき、本出願の固体試料は、再構成後24時間超安定していることができる。
【0030】
言い換えれば、本出願の発明者等は、先行技術の偏見を克服し、一連の調製法を使用することによって自明でなくかつ予想さえしない結果にたどり着いた:すなわち、ドセタキセル、シクロデキストリン、共溶媒(エタノールではない)、安定剤および注射用添加剤を含む新規組成物を見いだした。さらに、本発明者等によって見いだされた組成物は、ポリソルベートもエタノールも含有せず、その調製法においてエタノールを使用することもないが、エタノールもポリソルベートも使用しなくとも、本発明は、なお、ドセタキセル製剤の特徴を大幅に向上させることができる。
【0031】
本発明の発明者等は、ドセタキセル、シクロデキストリン、共溶媒(エタノールではない)、安定剤および添加剤を含み、ポリソルベートおよびエタノールを含まない、本組成物を使用することによって、ポリソルベートによって引き起こされる有害作用を回避することができ、かつ、組成物の注射の間に生じる刺激ならびに投与の間に生じる中毒および有害作用を減少させることができることを調査において見いだした。加えて、本発明は、安定性が大きく改善されているドセタキセル製剤を提供する、すなわち、ドセタキセル用のエタノールなしの安定な注射形態、および臨床使用のための利便性を提供する。
【0032】
それと同時に、本出願によって提供される技術的解決策は、特許US6284746に記載されている以下の欠点を克服している:組成物中のタキサンの最大溶解度は、エタノールおよびポリソルベートを使用せずに約1.0mg/mlに達することができず、それゆえ臨床使用の濃度要件を満たすことができない。反対に、本発明は、エタノールおよびポリソルベートを使用することなくタキサンの溶解度を大幅に増加させることができる方法を提供し、これは、ブレイクスルーであるだけでなく、先行技術に対する技術革新でもあり、タキサンを含有する薬物の臨床実用性の問題を効果的に解決する。
【0033】
先行技術における技術的課題に鑑みて、本発明の目的は、ポリソルベートおよびエタノールを含有しないドセタキセルの製剤を提供することである。注射または凍結乾燥粉末の剤形である本発明の製剤は、安定した品質特性を有しており、臨床使用要件を満たすことができ、投与中の安全性および有効性を確保することができる。
【0034】
本発明によって提供される技術的解決策は、以下の通りである。
【0035】
一局面では、本発明は、ドセタキセルを含有する注射用組成物を提供し、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、20~60部のシクロデキストリン、5~80部の共溶媒、0~20部の安定剤1、0.2~30部の安定剤2、0.001~1.0部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない。
【0036】
好ましくは、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、25~50部のシクロデキストリン、20~70部の共溶媒、0~10部の安定剤1、1~15部の安定剤2、0.001~0.5部の添加剤
を含み、かつ、該エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない。
【0037】
より好ましくは、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、25~40部のシクロデキストリン、40~70部の共溶媒、0~5部の安定剤1、4~9部の安定剤2、0.001~0.4部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない。
【0038】
さらに好ましくは、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、30~40部のシクロデキストリン、50~65部の共溶媒、1~2部の安定剤1、5~8部の安定剤2、0.001~0.3部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない。
【0039】
好ましくは、前記シクロデキストリンは、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBE-β-CD)、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および/またはヒドロキシプロピル-スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(HP-SBE-β-CD)を含むが、それらに限定されず;より好ましくは、前記シクロデキストリンは、HP-β-CDまたはSBE-β-CDであり;さらに好ましくは、前記シクロデキストリンは、SBE-β-CDである。
【0040】
好ましくは、前記共溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールおよびグリセロールから選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり、前記共溶媒は、エタノールではなく;より好ましくは、前記は、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0041】
好ましくは、前記ポリエチレングリコール(PEG)は、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600およびPEG800から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり;より好ましくは、前記ポリエチレングリコール(PEG)は、PEG300および/またはPEG400である。
【0042】
好ましくは、前記安定剤1は、ポロキサマー(P)であり、より好ましくは、前記安定剤1は、P124、P188、P237、P338およびP407から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり;さらに好ましくは、前記安定剤1は、P188である。
【0043】
好ましくは、前記安定剤2は、ポビドン(PVP)であり、より好ましくは、前記安定剤2は、PVPK12、PVPK15、PVPK17、PVPK25、PVPK30およびPVPK45から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり;さらに好ましくは、前記安定剤2は、PVPK12および/またはPVPK17である。
【0044】
好ましくは、前記添加剤は、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または重亜硫酸ナトリウム;および/またはメタ重亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウムを含むが、それらに限定されず、より好ましくは、前記添加剤は、クエン酸である。
【0045】
好ましくは、該組成物は、貯蔵に適した水溶液の形態または凍結乾燥固体の形態である。
【0046】
別の局面では、本発明は、ドセタキセルを含有する上記の注射用組成物を調製するための方法を提供し、該方法は、以下の段階:
シクロデキストリンを容器に量り取る段階、そこに共溶媒および水を加える段階、得られた系を20℃~50℃、好ましくは25℃で撹拌して溶解させる段階、次いで、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加える段階、それらを継続して撹拌して溶解させた後、ドセタキセルを容器に加える段階、窒素充填してまたはせずに、ドセタキセルが撹拌によって分散されて溶解した後にさらに30~480分間撹拌する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み(第一の方法);
好ましくは、該方法は、以下の段階:
共溶媒を容器に量り取る段階、次いで、そこにドセタキセルを加える段階、得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、20℃~50℃、好ましくは25℃で撹拌する段階、シクロデキストリンを容器に加える段階、継続して撹拌してそれを分散させる段階、次いで、そこに水を加える段階、系を十分に撹拌した後、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加える段階、容器を窒素充填してまたはせずに、撹拌して溶解させた後に系をさらに30~480分間撹拌する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み(第二の方法);
より好ましくは、該方法は、以下の段階:
シクロデキストリン、共溶媒、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに量り取る段階、20℃~50℃および1.0MPa~200MPa、好ましくは25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得る段階、ドセタキセルを系に加えてそれを高圧均質化でさらに5~60分間処理した後、最終的に均一な混合物を得る;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み(第三の方法);
最も好ましくは、該方法は、以下の段階:
共溶媒をホモジナイザーに量り取る段階、そこにドセタキセルを加える段階、次いで、20℃~50℃および1.0MPa~200MPa、好ましくは25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させる段階、その後、そこにシクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水を加える段階、それらを高圧均質化でさらに5~60分間処理する段階、最終的に均一な混合物を得る;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み(第四の方法)、
上記方法(第一の方法~第四の方法)によって得られた均一な混合物のpH値は、3.0~6.0、好ましくは4.0~5.0であり;
上述した方法、すなわち、第一の方法~第四の方法は、液体の形態で貯蔵することを意図した水溶液を調製するための方法である。
【0047】
さらに、本発明の方法は、以下の段階:
混合物を微多孔膜に通して濾過することによって得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを栓で半密閉する段階、次いで、バイアルを凍結乾燥用フリージングドライヤーに入れる段階、次いで、バイアルを取り出し、それらを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含む。この方法は、貯蔵に適した凍結乾燥固体を調製するためのものである。
【0048】
製剤の調製において使用される一般的な撹拌法を通して、臨床要件を満たす良好な溶解度およびより長い安定時間(再構成後)を有する本発明のドセタキセルの製剤を、安定剤1、T-80およびエタノールを使用することなく調製することができる。その後、本発明者等はさらに、調製法を改良し、かつ/または、ナノ結晶技術において使用される高圧均質化法を導入し、それによって、さらに向上した溶解度を有しかつ長時間にわたって安定に貯蔵できるドセタキセルの製剤を得た。加えて、より長い調製時間によって引き起こされる生産コストならびに微生物および不純物の取り込みリスクを、前記の改良された調製法を使用するかまたはそこに高圧均質化法を導入することによって回避することができる。さらに、改良された調製法に基づいてある一定量の安定剤1が導入されれば、本製剤の有益効果がさらに増幅され得る。
【0049】
本発明において、共溶媒は、溶解および分散を補助する機能を有し、シクロデキストリンは、包接作用によって達成される可溶化の機能および安定化の機能を有し、そして、安定剤は、組成物中のドセタキセルの結晶の成長を抑制し、組成物系全体を安定化させることができる。その上、前記の溶解、分散の補助、包接反応によって達成される可溶化、安定化、および抑制は、相乗的に働くことができ、これらは、組成物の調製法を改良することおよび/またはそこに高圧均質化法を導入することによってさらに増強させることができる。加えて、注射用添加剤を加えることによって形成される、適切なpH条件、低濃度の金属イオン、および低酸素またはほぼ低酸素の条件下で、本発明によって提供されるドセタキセルを含有する注射用組成物は、ポリソルベートおよびエタノールがなくても優れた安定性を有することができる。具体的には、本発明の組成物は、再構成後により長い安定時間を有し、24ヶ月間以上安定に貯蔵できる。さらに、該組成物は、低いアナフィラキシーおよび刺激を特徴とし、エタノールによって引き起こされる有害作用を引き起こさないだろう。本発明の組成物は、USPによって定められた注射用ドセタキセルの基準を満たす。
【0050】
本発明の組成物は、ポリソルベートもエタノールも有さず、低いヒスタミン放出を引き起こすことができ、したがって、組成物を投与する前の抗ヒスタミン剤、副腎皮質ステロイドおよびH2拮抗薬の投与は必要ない。本組成物はまた、ドセタキセルの高い溶解度、高い安定性、再構成後のより長い安定時間および好都合な臨床使用の利点も有する。加えて、本組成物の投与の間、アナフィラキシー、刺激、中毒、酩酊などのリスクは、ポリソルベートおよびエタノールを含有しないので大幅に低減される。加えて、本発明は、ドセタキセルを含有する注射用組成物を調製するための方法も提供する。
[本発明1001]
ドセタキセルを含有する注射用組成物であって、該組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、20~60部のシクロデキストリン、5~80部の共溶媒、0~20部の安定剤1、0.2~30部の安定剤2、0.001~1.0部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない、組成物。
[本発明1002]
前記組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、25~50部のシクロデキストリン、20~70部の共溶媒、0~10部の安定剤1、1~15部の安定剤2、0.001~0.5部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されず;
好ましくは、前記組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、25~40部のシクロデキストリン、40~70部の共溶媒、0~5部の安定剤1、4~9部の安定剤2、0.001~0.4部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されず;
さらに好ましくは、前記組成物は、以下の成分(重量部単位):
1部のドセタキセル、30~40部のシクロデキストリン、50~65部の共溶媒、1~2部の安定剤1、5~8部の安定剤2、0.001~0.3部の添加剤
を含み、かつ、エタノールおよびポリソルベートを含まず、その調製中にエタノールは使用されない、
本発明1001の組成物。
[本発明1003]
前記シクロデキストリンが、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBE-β-CD)、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および/またはヒドロキシプロピル-スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(HP-SBE-β-CD)を含むがそれらに限定されず;より好ましくは、前記シクロデキストリンが、HP-β-CDまたはSBE-β-CDであり;さらに好ましくは、前記シクロデキストリンが、SBE-β-CDである、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1004]
前記共溶媒が、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールおよびグリセロールから選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり、前記共溶媒が、エタノールではなく;より好ましくは、前記共溶媒が、ポリエチレングリコール(PEG)であり;
好ましくは、前記ポリエチレングリコール(PEG)が、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600およびPEG800から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり;より好ましくは、前記ポリエチレングリコール(PEG)が、PEG300および/またはPEG400である、
本発明1001~1003のいずれかの組成物。
[本発明1005]
前記安定剤1が、ポロキサマー(P)であり、より好ましくは、前記安定剤1が、P124、P188、P237、P338およびP407から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり;さらに好ましくは、前記安定剤1が、P188である、本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1006]
前記安定剤2が、ポビドン(PVP)であり、より好ましくは、前記安定剤2が、PVPK12、PVPK15、PVPK17、PVPK25、PVPK30およびPVPK45から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数であり;さらに好ましくは、前記安定剤2が、PVPK12および/またはPVPK17である、本発明1001~1005のいずれかの組成物。
[本発明1007]
前記添加剤が、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または重亜硫酸ナトリウム;および/またはメタ重亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウムを含むがそれらに限定されず、より好ましくは、前記添加剤が、クエン酸である、本発明1001~1006のいずれかの組成物。
[本発明1008]
貯蔵に適した水溶液の形態または凍結乾燥固体の形態である、本発明1001~1007のいずれかの組成物であって、
好ましくは、貯蔵に適した水溶液の形態である該組成物は、以下の段階:
シクロデキストリンを容器に量り取る段階、そこに共溶媒および水を加える段階、得られた系を20℃~50℃、好ましくは25℃で撹拌して溶解させる段階、次いで、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加える段階、それらを継続して撹拌して溶解させた後、ドセタキセルを容器に加える段階、窒素充填してまたはせずに、ドセタキセルが撹拌によって分散されて溶解した後にさらに30~480分間撹拌する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含む方法によって調製され;
より好ましくは、該方法は以下の段階:
共溶媒を容器に量り取る段階、次いで、そこにドセタキセルを加える段階、得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、20℃~50℃、好ましくは25℃で撹拌する段階、シクロデキストリンを容器に加える段階、継続して撹拌してそれを分散させる段階、次いで、そこに水を加える段階、系を十分に撹拌した後、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加える段階、容器を窒素充填してまたはせずに、撹拌して溶解させた後に系をさらに30~480分間撹拌する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み;
さらに好ましくは、該方法は以下の段階:
シクロデキストリン、共溶媒、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに量り取る段階、20℃~50℃および1.0MPa~200MPa、好ましくは25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得る段階、ドセタキセルを系に加えてそれを高圧均質化でさらに5~60分間処理した後、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み;
最も好ましくは、該方法は以下の段階:
共溶媒をホモジナイザーに量り取る段階、そこにドセタキセルを加える段階、次いで、20℃~50℃および1.0MPa~200MPa、好ましくは25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させる段階、その後、そこにシクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水を加える段階、それらを高圧均質化でさらに5~60分間処理する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み;
上記方法によって得られた均一な混合物のpH値が、3.0~6.0、好ましくは4.0~5.0であり;
さらにより好ましくは、貯蔵に適した凍結乾燥固体の形態である該組成物は、以下の段階:
混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過することによって得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを栓で半密閉する段階、次いで、バイアルを凍結乾燥用フリージングドライヤーに入れる段階、次いで、バイアルを取り出し、それらを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含む方法によって調製される、
組成物。
[本発明1009]
以下の段階:
シクロデキストリンを容器に量り取る段階、そこに共溶媒および水を加える段階、得られた系を20℃~50℃、好ましくは25℃で撹拌して溶解させる段階、次いで、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加える段階、それらを継続して撹拌して溶解させた後、ドセタキセルを容器に加える段階、窒素充填してまたはせずに、ドセタキセルが撹拌によって分散されて溶解した後にさらに30~480分間撹拌する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み;
好ましくは、以下の段階:
共溶媒を容器に量り取る段階、次いで、そこにドセタキセルを加える段階、得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、20℃~50℃、好ましくは25℃で撹拌する段階、シクロデキストリンを容器に加える段階、継続して撹拌してそれを分散させる段階、次いで、そこに水を加える段階、系を十分に撹拌した後、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加える段階、容器を窒素充填してまたはせずに、撹拌して溶解させた後に系をさらに30~480分間撹拌する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み;
より好ましくは、以下の段階:
シクロデキストリン、共溶媒、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに量り取る段階、20℃~50℃および1.0MPa~200MPa、好ましくは25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得る段階、ドセタキセルを系に加えてそれを高圧均質化でさらに5~60分間処理した後、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み;
最も好ましくは、以下の段階:
共溶媒をホモジナイザーに量り取る段階、そこにドセタキセルを加える段階、次いで、20℃~50℃および1.0MPa~200MPa、好ましくは25℃および100MPaで、それらを高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させる段階、その後、そこにシクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水を加える段階、それらを高圧均質化でさらに5~60分間処理する段階、最終的に均一な混合物を得る段階;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定する段階、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過する段階、得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
を含み;
上記方法によって得られた均一な混合物のpH値が、3.0~6.0、好ましくは4.0~5.0である、
本発明1001~1008のいずれかの組成物を調製するための方法。
[本発明1010]
以下の段階:
本発明1009のように混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過することによって得られた濾液をバイアルに分注する段階、バイアルを栓で半密閉する段階、次いで、バイアルを凍結乾燥用フリージングドライヤーに入れる段階、次いで、バイアルを取り出し、それらを窒素充填してまたはせずに、それらを栓で密閉する段階、次いで、バイアルに蓋をしてラベルを貼る段階
をさらに含む、本発明1009の方法。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
本発明は、以降の具体的な態様と組み合わせてさらに詳述される。当業者には、提供される態様が、本発明の範囲を限定するものでは決してなく、本発明を例証するためだけに使用されるものであると認識されよう。
【0052】
再構成後の安定時間:これは、難溶性薬物を、臨床使用要件を満たす製剤へと調製できるか否かを調査するための重要な指標である。一般に、臨床使用されるときの製剤の希釈物の安定時間が≧4時間であれば、一般的な臨床要件を満たすと見なすことができる。この状況では、再構成後の安定時間は、以下のように決定される:実施例で調製された適量の溶液を溶液中のAPIの濃度に従ってサンプリングし、ドセタキセルを含有する溶液を臨床で通常使用されている0.5mg/mLの濃度に希釈するためにそこに5%グルコース注射液または生理食塩水を加え、得られた希釈物をランプ検出器で観察して結晶析出があるか否かを判定し、結晶化が始まる時間を安定時間として記録する。
【実施例】
【0053】
実験例の説明:
本発明ではポリソルベートおよびエタノールを使用しないので、溶液系全体に含有されるシクロデキストリン、共溶媒および安定剤の量および種類をスクリーニングする必要がある。ドセタキセルは難溶性薬物であるので、ドセタキセルが溶解されるかどうか、どれほど溶解されるか、および溶解後の安定時間を考慮することが重要である。それに基づいて、本発明者等は、以下の指標で実験を行った:溶液が形成され得るかどうか、ドセタキセルの溶解度および再構成後の安定時間。溶解度を決定するための具体的な作業は、以下の通りである:
【0054】
対応する実施例に列記される比に従って成分(ドセタキセルなし)および過剰なドセタキセル(API)を量り取り、対応する調製法に従って過飽和溶液を調製し、過飽和溶液を濾過および希釈し、次いで、得られた濾液中のドセタキセルの溶解度を決定する。この内容の部分について、詳細は実験例1~99を参照されたい。
【0055】
a)溶解度を決定するための方法:
溶解度は、USPによって定められた注射用ドセタキセルの決定基準に従って決定され、具体的には以下である。
高速液体クロマトグラフィー
溶液A:水
溶液B:アセトニトリル
移動相:
溶媒:アセトニトリル:酢酸:水=100:0.1:100
クロマトグラフ条件:
検出器:UV232nm
カラム:4.6mm×150mm;3.5μm、L1
温度:カラム温度 45℃
流速:1.2mL/min
注入量:20μL
【0056】
対照溶液:0.2mg/mLの標準ドセタキセル。具体的には、標準ドセタキセル10mgを正確に量り取った後、50mLのフラスコに入れ、次いで、標準ドセタキセルを溶媒で点線まで希釈する。
【0057】
試験溶液:ドセタキセルを含有する試料を適量正確に量り取る。次いで、ドセタキセルの濃度が0.2mg/mLになるまで試料を溶媒で希釈する。
【0058】
実施例1~11および実験例1~11
第一の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0とした。具体的には:シクロデキストリンを容器に量り取り、そこに共溶媒および水を加え、得られた系を20℃~50℃(具体的な温度については以下の表を参照のこと)で撹拌して溶解させ、次いで、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加え、それらを継続して撹拌して溶解させた後、ドセタキセルを容器に加え、窒素充填してまたはせずに、ドセタキセルが撹拌によって分散されて溶解した後に系をさらに30~480分間撹拌し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0059】
実施例12~22および実験例12~22
第二の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0とした。具体的には:共溶媒を容器に量り取り、次いで、そこにドセタキセルを加え、得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、20℃~50℃(具体的な温度については以下の表を参照のこと)で撹拌し、その後、シクロデキストリンを容器に加え、継続して撹拌してそれを分散させ、次いで、水を加え、十分に撹拌した後、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加え、容器を窒素充填してまたはせずに、それによって得られた系を、撹拌して溶解させた後にさらに30~480分間撹拌し、最終的に均一な混合物が得られた。得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0060】
実験例23~33および実験例23~33
第三の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0とした。具体的には:シクロデキストリン、共溶媒、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに量り取り、次いで、それらを、20℃~50℃および1MPa~200MPa(具体的な温度および圧力については以下の表を参照のこと)で高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得て、次いで、系にドセタキセルを加え、高圧均質化によりさらに5~60分間処理し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0061】
実験例34~44および実験例34~44
第四の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0とした。具体的には:共溶媒をホモジナイザーに量り取り、そこにドセタキセルを加え、次いで、20℃~50℃および1MPa~200MPa(具体的な温度および圧力については以下の表を参照のこと)で高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させ、その後、シクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに加え、高圧均質化によりさらに5~60分間処理し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0062】
実験例45~55および実験例45~55
第一の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0以外とした。具体的には:シクロデキストリンを容器に量り取り、そこに共溶媒および水を加え、得られた系を20℃~50℃(具体的な温度については以下の表を参照のこと)で撹拌して溶解させ、次いで、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加え、それらを継続して撹拌して溶解させた後、ドセタキセルを容器に加え、窒素充填してまたはせずに、ドセタキセルが撹拌によって分散されて溶解した後に系をさらに30~480分間撹拌し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜によって濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0063】
実験例56~66および実験例56~66
第二の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0以外とした。具体的には:共溶媒を容器に量り取り、次いで、そこにドセタキセルを加え、得られた系を、ドセタキセルが共溶媒中に均一に分散されるまで、20℃~50℃(具体的な温度については以下の表を参照のこと)で撹拌し、その後、シクロデキストリンを容器に加え、継続して撹拌してそれを分散させ、次いで、水を加え、十分に撹拌した後、安定剤1、安定剤2および添加剤を容器に加え、容器を窒素充填してまたはせずに、それによって得られた系を、撹拌して溶解させた後にさらに30~480分間撹拌し、最終的に均一な混合物が得られた。得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0064】
実験例67~77および実験例67~77
第三の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0以外とした。具体的には:シクロデキストリン、共溶媒、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに量り取り、次いで、それらを、20℃~50℃および1MPa~200MPa(具体的な温度および圧力については以下の表を参照のこと)で高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、均一に分散かつ溶解された系を得て、次いで、系にドセタキセルを加え、高圧均質化によりさらに5~60分間処理し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0065】
実験例78~88および実験例78~88
第四の方法をこれらの実施例において使用し、加える安定剤1の量を0以外とした。具体的には:共溶媒をホモジナイザーに量り取り、そこにドセタキセルを加え、次いで、20℃~50℃および1MPa~200MPa(具体的な温度および圧力については以下の表を参照のこと)で高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させ、その後、シクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに加え、高圧均質化によりさらに5~60分間処理し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0066】
実験例89~99および実験89~99
実施例89~99では、共溶媒、安定剤および添加剤の種類をスクリーニングして、第四の方法を使用した。具体的には:共溶媒をホモジナイザーに量り取り、そこにドセタキセルを加え、次いで、20℃~50℃および1MPa~200MPa(具体的な温度および圧力については以下の表を参照のこと)で高圧均質化により5~30分間(10~30サイクル)にわたり処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させ、その後、シクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに加え、高圧均質化によりさらに5~60分間処理し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
【0067】
実施例100
ドセタキセル 0.2g
SBE-β-CD 7.0g
PEG300 12.0g
P188 0.3g
PVPK12 1.6g
クエン酸 2mg
水 5.0g
この実施例の組成物を第四の方法で調製した。具体的には:共溶媒をホモジナイザーに量り取り、そこにドセタキセルを加え、次いで、25℃および100MPaで高圧均質化により5分間処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させ、その後、シクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに加え、高圧均質化によりさらに30分間処理し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。
再構成後の安定時間:24時間。
【0068】
本発明の進歩性を例証するために、本発明者等によって以下の通り比較例および関連する実験例が実施された。
【0069】
比較例1~7
これらの比較例の組成物を第四の方法で調製した。具体的には:共溶媒をホモジナイザーに量り取り、そこにドセタキセルを加え、次いで、25℃および100MPaで高圧均質化により5分間処理して、ドセタキセルを共溶媒中に分散させて懸濁または溶解させ、その後、シクロデキストリン、安定剤1、安定剤2、添加剤および水をホモジナイザーに加え、高圧均質化によりさらに30分間処理し、最終的に均一な混合物が得られた;得られた混合物から試料をサンプリングして、pH値および試料中のドセタキセル含量を決定し、次いで、試料が適格であると証明された後に混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過し、次いで、得られた濾液をバイアルに分注し、次いで、バイアルを窒素充填してまたはせずに、栓で密閉し、蓋をしてラベルを貼る。加えて、これらの比較例によって調製された組成物の安定時間を研究し、実験例に記載の方法に従って、これらの比較例に列挙されたものと比較して過剰なAPIを加えることによりAPIの最大濃度をさらに決定した。
【0070】
比較例8
この比較例は、米国特許番号8675716B2/CN100411688Cに開示されている実施例1および4に従って実施した。具体的には、SBE-β-CD 1.7gを純水5.0mlと混合し、次いで、ドセタキセル100mgおよびエタノールによって調製された溶液を撹拌しながらゆっくり滴下した。完全な溶解まで十分に混合した後、生じた混合物を0.2μmの微多孔膜に通して濾過した。55℃の減圧下で濾液からエタノールを除去した。無菌処理後、乾燥するまで水も減圧下で除去し、次いで、生じた固体生成物を減圧下で48時間乾燥させると、白色の固体包接物を与えた。加えて、この比較例によって調製された組成物の安定時間を研究し、実験例に記載の方法に従って、この比較例に列挙されたものと比較して過剰なAPIを加えることによりAPIの最大濃度をさらに決定した。
【0071】
【0072】
実験例100
エタノールの含量を、以下の通りガスクロマトグラフィーによって決定した。
クロマトグラフ条件:
カラム:InertCap 624(固定相液体:G43、長さ:60m;ID:0.25mm, 1.4μm, Shimadzu);
検出器:水素炎イオン化検出器(FID);
キャリアガス:窒素;
線速度:21.5cm/s;
総流量:24.0mL/min;
カラムの流速:1mL/min
パージ流量:3.0mL/min;
スプリット比:20:1。
温度プログラム化条件:初期温度50℃を5分間維持し、次いで、温度を10℃/minで200℃まで上昇させ、4分間維持し、次いで、サンプリングする;総使用時間は24分である。
注入温度:210℃;
FID温度:280℃。
サンプリングサイズ:1μL
検出限界:5.057ng
定量限界:1.264ng。
【0073】
実施例9、86および比較例8で調製された試料中のエタノールの含量を上記の説明に従って決定した。結果を以下の通りまとめる。
【0074】
これらの結果は、ドセタキセルの溶解を向上させるために使用されるエタノールが、減圧下で完全に除去できないことを示す。これに関して、US8675716B2/CN100411688Cにおいて調製された組成物は、エタノールを含有するはずである。
【0075】
実験例101
液体組成物の安定性に関する研究:
特許US8675716B2に記載されている方法に従って組成物を調製した。具体的には、ドセタキセルの溶解を向上させるために調製中にエタノールを加え、次いで、エタノールおよび水の大部分を減圧下で除去して、固体包接物(すなわち、組成物)を得た。さらに、固体包接物および本発明において使用される注射用担体を使用して、10mg/mLのドセタキセルを含有する新たな注射用液体組成物(組成物1~4)を調製し、次いで、液体組成物の安定時間および再構成後の安定時間を研究した。
【0076】
他の試料は、WO2016/149162の特許出願に開示されている方法に従って調製された10mg/mLのドセタキセルを含有する注射用組成物、および本発明の実施例86に従って調製された10mg/mLのドセタキセルを含有する注射用組成物とした。具体的な配合は、以下の通りである。
【0077】
組成物1:
ドセタキセル 100mg
SBE-β-CD 3.5g
エタノール 適量
水 適量
エタノールおよび水の大部分を減圧下で除去し、固体組成物を得て、次いで、この固体を、以下の物質を用いて液体組成物へと再構成した。
水 7.0g
【0078】
組成物2:
ドセタキセル 100mg
SBE-β-CD 3.5g
エタノール 適量
水 適量
エタノールおよび水の大部分を減圧下で除去し、固体組成物を得て、次いで、この固体を、以下の物質を用いて液体組成物へと再構成した。
PEG300 6.0g
クエン酸 2mg
水 2.5g
【0079】
組成物3:
ドセタキセル 100mg
SBE-β-CD 3.5g
エタノール 適量
水 適量
エタノールおよび水の大部分を減圧下で除去し、固体組成物を得て、次いで、この固体を、以下の物質を用いて液体組成物へと再構成した。
P188 150mg
PVPK12 800mg
クエン酸 2mg
水 2.5g
【0080】
組成物4:
ドセタキセル 100mg
SBE-β-CD 3.5g
エタノール 適量
水 適量
エタノールおよび水の大部分を減圧下で除去し、固体組成物を得て、次いで、この固体を、以下の物質を用いて液体組成物へと再構成した。
PEG300 6.0g
P188 150mg
PVPK12 800mg
クエン酸 2mg
水 2.5g
【0081】
【0082】
上記結果から、特許US8675716B2に記載の方法において固体組成物の調製中にエタノール(その後除去される)が使用されている限り、組成物1~4(液体の形態)は、これらが固体組成物を本発明において使用される共溶媒および安定剤で再構成することによって得られたとしても、大幅に短縮された安定時間(再構成後)を有することが分かる。このことは、調製法または共溶媒の種類の相違が、本発明の組成物と米国US8675716B2の組成物の安定性の顕著な相違をもたらすことを示唆しており、すなわち、US8675716B2を通して臨床使用に適した安定な溶液製剤を得ることができない。加えて、前記の顕著な相違は、本発明の組成物に対して99%同一の成分を有する組成物(US8675716B2に従って調製された組成物は少量のエタノールを含有する)の間でも観察することができ、そのことから、たとえわずか1.0%の相違が成分(すなわち、少量~微量のエタノールが存在する)または調製法にあったとしても、得られた組成物の安定性に大きく影響を与え得ることが分かる。本発明者等は、本発明の組成物の成分間に特有の相乗効果があることを見いだしたが、このことは、エタノールを用いない実験を行う前には予想外のことであったので、この効果は自明ではない。また、このことは、WO2016/149162に従って調製されたエタノールとAPIの比が5:1~40:1のエタノールを含有する組成物によっても確認される。WO2016/149162の組成物はまた、その中により多くのエタノールを有することに起因して、本発明のものと同等な技術的効果を達成することができる。しかしながら、臨床への応用では、エタノールは、それによってもたらされる安全性の問題から、FDAによって推奨されていない。それゆえ、臨床使用のための安全性の観点から、本発明の組成物は、極めて明白な利点を有する。
【0083】
実験例102
実施例86の方法に従って試料2000mLを調製し、次いで、長期安定性の調査のため25℃±2℃およびRH 60%±5%の条件下に置いた。以下の通りUSP基準に従って試料を試験した:
クロマトグラフ条件:
検出波長:232nm
カラム温度、45℃
流速:1.2ml/min
試料サイズ:20μL
溶媒:アセトニトリル:水=1:1
移動相Aは水であり、移動相Bはアセトニトリルである。
溶出勾配を以下の表に示す。
注射用ドセタキセルの含量および関連物質を検出するためのHPLC勾配
【0084】
結果:
注記:
a:10-デアセチルバッカチン
b:2-デベンゾイル-2-ペンテノイルドセタキセル
c:クロトンアルデヒド類似体
d:6-オキソドセタキセル
e:4-エピドセタキセル
f:4-エピド-6-オキソドセタキセル
【0085】
結論:
上記の実施例、実験例および比較例の結果から、以下の結論を得ることができる。
【0086】
a)シクロデキストリン、共溶媒および安定剤の間に相乗効果があり、それを通じて、注射液中のAPIの溶解度を増加させることができ、かつ、本組成物の再構成後の安定時間を向上させることができる。安定剤2およびシクロデキストリンの添加量は、再構成後の安定時間と正の相関関係にあり、すなわち、添加量が多ければ、再構成後の安定時間が長くなる。しかしながら、これらの担体自体の安全性および安定性を考慮に入れ、臨床薬適用の要件を満たすこと、安全性を改善すること、およびコストを下げることを考慮した上で、本発明者等によって両担体について適切な量が選択される。
【0087】
b)安定剤1に関して:第一の方法~第四の方法によって調製された組成物は、基本的に、安定剤1の添加量が0であるときに臨床使用要件を満たすことができる。しかしながら、適量の安定剤1が加えられたとしても、同じ方法および同じ他の成分を用いて調製された組成物は、安定剤1の量が0であるときの効果よりも良好な効果を有する。さらに、該方法がさらに改良されれば、その効果はより明白となろう。
【0088】
c)共溶媒に関して:共溶媒は、APIを溶液形態の製剤へと調製することができるか否かに決定的な影響を及ぼす。実際に、共溶媒が加えられなければ、APIは、溶液形態の製剤へと調製することができない。とは言え、共溶媒の添加量は、無制限というわけではなく、共溶媒の添加量によって、APIの溶解を補助できるばかりでなく、臨床要件を満たす適切な濃度の溶液を得ることもできると考慮されるべきである;
【0089】
d)調製法に関して:第一の方法~第四の方法による組成物の調製の中で、本方法の改良によって、組成物中のAPIの溶解度を大幅に増加させることができ、調製時間を短縮させることができ、かつ、より長い調製時間によって引き起こされる生産コストならびに微生物および不純物の取り込みリスクを減少させることができることが見いだされる。
【0090】
e)医薬製剤の安全性に鑑みて、医療用担体の種類または量は、可能な限り少なくすべきであり、担体の種類は、先行技術において通常使用され、注射の要件を満たすものであるべきである。シクロデキストリン、共溶媒および安定剤の量が好ましい範囲にあるとき、それによって得られた組成物の効果は、より高い範囲にあるシクロデキストリン、共溶媒および安定剤を用いて得られた組成物の効果と同等である。言い換えれば、組成物の効果は、シクロデキストリン、共溶媒および安定剤の量をさらに増加させてもそれほど改善されない。それゆえ、それらの添加量を好ましい範囲内にすることがより良い選択肢である。添加剤の選択については、注射の安全性要件および製剤のpH要件を満たす種類の添加剤を選択することに努める方が良い。それゆえ、好ましい範囲内にある添加剤がより適した選択肢である。