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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】巻線装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/069 20160101AFI20230510BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230510BHJP
   H01F 41/082 20160101ALI20230510BHJP
【FI】
H01F41/069
H01F41/04 F
H01F41/082
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018148771
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020025021
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 崇行
(72)【発明者】
【氏名】大塚 由幸
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-033887(JP,A)
【文献】特開昭56-088311(JP,A)
【文献】特開昭61-107714(JP,A)
【文献】特開平02-308513(JP,A)
【文献】特開平04-084406(JP,A)
【文献】実開平06-034228(JP,U)
【文献】米国特許第05209414(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0266552(US,A1)
【文献】特開平05-254731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/069
H01F 41/04
H01F 41/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の巻芯に沿って2本線以上のワイヤを交互且つ多層に巻回する巻線装置であって、
前記ワイヤの本数と同数のトラバーサと、
前記各トラバーサと対にして配置され、対応の前記トラバーサを前記巻芯に沿って独立して平行移動させ、前記ワイヤを前記巻芯に沿って送る各駆動機構と、
表面層の巻回状態を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に応じて前記駆動機構を制御する制御部と、
を備え、
前記駆動機構は、
前記ワイヤの送り方向を逆転させる際、前記各トラバーサの相対的な位置関係を前記巻芯に沿った平行移動によって入れ替えると共に、
前記検出部が検出する表面層の巻回状態に応じた前記制御部による制御下で、前記各トラバーサの相対的な位置関係を入れ替え始めてから終えるまでの当該トラバーサの平行移動の速度を変更することにより、前記各トラバーサの相対的な位置関係を入れ替え始めてから終えるまでの前記巻芯の回転角度を、層によって変更すること、
を特徴とする巻線装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、
前記ワイヤの送り方向を逆転させる際、前記送り方向先行の前記ワイヤを支持する前記トラバーサを、前記送り方向最後尾の前記ワイヤを支持する前記トラバーサを基準に軸対称の位置に平行移動させること、
を特徴とする請求項1記載の巻線装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、
前記巻芯の外周面に沿った前記軸対称の位置に移動させること、
を特徴とする請求項2記載の巻線装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、
前記ワイヤの直径をdとすると、前記送り方向最後尾の隣からN番目のワイヤを保持する前記トラバーサを、前記送り方向最後尾の前記ワイヤを支持する前記トラバーサを基準に、当該基準の前記トラバーサを跨ぐ方向に2×N×dの距離だけ平行移動させること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の巻線装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、
前記巻芯の外周面に沿った前記2×N×dの距離だけ移動させること、
を特徴とする請求項4記載の巻線装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、
前記送り方向最先端のワイヤが前記巻芯の端部まで残り0.5本分の位置まで迫ると、前記送り方向最後尾のワイヤを保持する前記トラバーサを、前記送り方向最後尾のワイヤが前記端部で段上げされるように移動させること、
を特徴とする請求項4又は5記載の巻線装置。
【請求項7】
前記トラバーサは、前記巻芯間近まで延びるガイド溝を備え、
前記ガイド溝は、当該ガイド溝と前記巻芯との間で延びる前記ワイヤの延び方向に沿って延びること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の巻線装置。
【請求項8】
前記ガイド溝は、前記トラバーサと共に平行移動すること、
を特徴とする請求項7記載の巻線装置。
【請求項9】
前記駆動機構は、
層ごとに平行移動の速度を変更し、前記ワイヤが交差する距離を層によって変更すること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の巻線装置。
【請求項10】
前記検出部はカメラであること、
を特徴とする請求項1記載の巻線装置。
【請求項11】
前記送り方向に1線分遅れる前記ワイヤの前記駆動機構は、対応の前記トラバーサと共に、前記送り方向に1線分先行する前記ワイヤの前記トラバーサ及び前記駆動機構を平行移動させること、
を特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の巻線装置。
【請求項12】
前記送り方向最後尾の前記ワイヤの前記駆動機構は、前記巻芯に対する巻回位置を設定する位置決め手段であり、
前記送り方向先行する前記ワイヤの前記駆動機構は、前記トラバーサの位置関係を入れ替える入れ替え手段であること、
を特徴とする請求項11記載の巻線装置。
【請求項13】
前記ワイヤは、捻りによってキンクする細線、捻り困難な太線、又は捻り困難な多角形断面形状を有する線であること、
を特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の巻線装置。
【請求項14】
前記巻芯は、
前記ワイヤの直径に前記ワイヤの本数を乗じた長さの整数倍に、前記ワイヤの半径を加えた長さであること、
を特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載の巻線装置。
【請求項15】
前記巻芯の断面は、真円、楕円、又は三角形以上の多角形であること、
を特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の巻線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多層コイルを製造する巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各層に2本以上のワイヤを整列させて渦巻き状に巻回し、更に多層に構成された多層コイルがある。例えば、電気自動車や家電のモータコイルとして用いられ、またタービン発電機等において固定子コイルとして用いられる。この多層コイルを製造する巻線装置としては従来から種々の提案が成されている。
【0003】
巻線装置は、一般的には巻線用の冶具であるボビンを有し、ボビンを回転させながら2本以上のワイヤをボビンで巻き取っていく。ワイヤがボビンの巻芯端部まで巻回されると、ワイヤを上層に段上げし、ワイヤの送り方向を逆転させながら上層の巻回を他端の巻芯端部まで行っていく。このとき、ボビンの巻芯端部ではワイヤが3重に巻き重ねられた領域が発生し、ボビンの巻線端部で多層コイルの外径が大きくなってしまう。
【0004】
そこで、回転中心を基準に点対称の位置に各ワイヤを保持し、ボビンに当該ワイヤを導く回転盤を備え、下層から上層へ段上げしてワイヤの送り方向を逆転させるときに、回転盤を180度回転させることで、ワイヤ群を180度捻り、ワイヤ群の配列を入れ替える巻線方法が提案されている。この方法によると、2本のワイヤが交差して2重に巻き重ねられた領域のみで、3重に巻き重ねられることはない。そのため、ボビンの巻線端部での多層コイルの膨らみは遙かに抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-67171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ワイヤの配列入れ替えに回転移動を用いる巻線方法は、ワイヤの捻りによりキンクが発生してしまう虞がある。そのため、回転移動を用いる巻線方法は、キンクにより破断が生じ易い細線に対しては採用できない。また、捻り難いワイヤ、即ち太線や四角形などの多角形の線に対しても、この回転移動を用いる巻線方法を採用できない。
【0007】
本実施形態は、上記課題を解決すべく、ワイヤを捻ること無く、多層コイルの外径の膨らみを抑制できる巻線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本実施形態に係る巻線装置は、共通の巻芯に沿って2本線以上のワイヤを交互且つ多層に巻回する巻線装置であって、前記ワイヤの本数と同数のトラバーサと、前記各トラバーサと対にして配置され、対応の前記トラバーサを前記巻芯に沿って独立して平行移動させ、前記ワイヤを前記巻芯に沿って送る各駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、前記ワイヤの送り方向を逆転させる際、前記各トラバーサの相対的な位置関係を前記巻芯に沿った平行移動によって入れ替えること、を特徴とする。
【0009】
前記トラバーサは、前記巻芯間近まで延びるガイド溝を備え、前記ガイド溝は、当該ガイド溝と前記巻芯との間で延びる前記ワイヤの延び方向に沿って延びるようにしてもよい。
【0010】
また、前記駆動機構は、層ごとに平行移動のタイミングを変更し、前記ワイヤが交差する位相を層によって変更したり、前記駆動機構は、層ごとに平行移動の速度を変更し、前記ワイヤが交差する距離を層によって変更するようにしてもよい。
【0011】
また、前記送り方向に1線分遅れる前記ワイヤの前記駆動機構は、対応の前記トラバーサと共に、前記送り方向に1線分先行する前記ワイヤの前記トラバーサ及び前記駆動機構を平行移動させるようにしてもよい。
【0012】
前記送り方向最後尾の前記ワイヤの前記駆動機構は、前記巻芯に対する巻回位置を設定する位置決め手段であり、前記送り方向先行する前記ワイヤの前記駆動機構は、前記トラバーサの位置関係を入れ替える入れ替え手段であるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る巻線装置の構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る、ワイヤの順番入れ替えと各トラバーサの移動を示す模式図であり、片側への送りを示す。
図3】第1の実施形態に係る、ワイヤの順番入れ替えと各トラバーサの移動を示す模式図であり、片側での段上げを示す。
図4】第1の実施形態に係る、ワイヤの順番入れ替えと各トラバーサの移動を示す模式図であり、反対側への送りを示す。
図5】第1の実施形態に係る、ワイヤの順番入れ替えと各トラバーサの移動を示す模式図であり、反対側での段上げを示す。
図6】第1の実施形態に係る巻線装置で使用可能なワイヤの形状及び大きさを示す図である。
図7】ボビンの詳細寸法を示す図である。
図8】ボビンの他の形状を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る巻線装置の構成を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る、ワイヤの順番入れ替えと各トラバーサの移動を示す模式図である。
図11】第3の実施形態に係るボビンを示す図である。
図12】第4の実施形態に係る、ワイヤの順番入れ替えタイミングの層ごとの相違を示す模式図である。
図13】第5の実施形態に係る巻線装置の制御手段を示す図である。
図14】第5の実施形態に係る巻線装置の制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
(構成)
第1の実施形態に係る巻線装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、第1の実施形態に係る巻線装置の全体構成を示す図である。図1に示す巻線装置1は多層コイルを製造する装置である。この巻線装置1は、n本(nは2以上の整数)のワイヤを共通の巻芯21に渦巻き状に巻回しつつ、軸中心に近い下層から外表側の上層へ段上げして、コイルを多層状にする。各層において、巻線装置1は、n本のワイヤを巻芯21に沿って交互に巻回し、一つ下層と一つ上層とでn本のワイヤの並び順を逆転させる。
【0015】
第1の実施形態の巻線装置1は、2本のワイヤ11A及び11Bを巻回する。この巻線装置1はボビン2、回転軸24及び回転モータ23を備える。ボビン2は巻芯21と鍔部22とから成る。巻芯21は、ワイヤ11A及び11Bが巻回される円筒部材であり、端から端まで同一半径の柱状を成す。鍔部22は、巻芯21の両端に接続されている。この鍔部22は、巻芯21と同軸で、巻芯21よりも長径であり、巻芯21に巻回されたワイヤ11A及び11Bの崩れを阻止する。回転軸24は、ボビン2を巻芯21と同軸で軸支する。回転モータ23は回転軸24を軸回転させる。この回転モータ23が駆動すると、ボビン2は回転軸24に連動して軸回転し、ワイヤ11A及び11Bを巻き取ることになる。
【0016】
更に、この巻線装置1は、ワイヤ11Aを供給する第1供給系31、第1供給系31から供給されたワイヤ11Aをボビン2の巻芯21に沿って平行に移動させる第1トラバーサ51、ワイヤ11Bを供給する第2供給系32、及び第2供給系32から供給されたワイヤ11Bをボビン2の巻芯21に沿って平行に移動させる第2トラバーサ52を備える。ワイヤとトラバーサとは同数である。第1トラバーサ51は、当該第1トラバーサ51を巻芯21に沿って平行移動させる第1駆動機構71を備えており、第2トラバーサ52は、当該第2トラバーサ52を巻芯21に沿って平行移動させる第2駆動機構72を備えており、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52は、別個独立で巻芯21に沿って平行移動可能である。
【0017】
この巻線装置1において、ワイヤ11Aは、第1供給系31から引き出され、第1トラバーサ51によって巻芯21上の巻回位置が決定される。ワイヤ11Bは、第2供給系32から引き出され、第2トラバーサ52によって巻芯21上の巻回位置が決定される。巻芯21の第1端部21aと第2端部21bでは、第2トラバーサ52は、第1トラバーサ51の軸を基準に軸対称の位置に平行移動させ、ワイヤ11Aとワイヤ11Bの位置関係を入れ替える。
【0018】
詳細には、第1供給系31と第2供給系32は、各々が供給ボビン41、テンショナ42及び送りローラ43を有する。ワイヤ11A及び11Bは、対応の供給ボビン41から引き出され、対応のテンショナ42により張力をかけられ、対応の送りローラ43に架けられて、第1トラバーサ51及び第2トラバーサ52に入る。テンショナ42は、供給ボビン41と送りローラ43との間の直線経路に介在するブロックであり、ワイヤ11A及び11Bを引っ掛けて経路を屈曲させることにより、ワイヤ11Aと11bに張力をかける。
【0019】
第1トラバーサ51と第2トラバーサ52は、ボビン2にワイヤ11A及びワイヤ11Bを供給する最終経路を成す。この第1トラバーサ51と第2トラバーサ52は、ワイヤ11A及びワイヤ11Bの最終経路を巻芯21に対して直交させて延ばしている。即ち、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52は、各々が可動ローラ61、可動ガイド溝62及び可動ベース63を備えている。可動ベース63は幅広の板状部材であり、各々が独立して巻芯21の軸に沿って平行移動可能となっている。可動ローラ61は可動ベース63に設置され、第1供給系31と第2供給系32から引き出されたワイヤ11A及びワイヤ11Bが各々架設される。
【0020】
可動ガイド溝62は、可動ローラ61を経たワイヤ11A及びワイヤ11Bをボビン2に案内する。この可動ガイド溝62は、各々が対応の可動ベース63に固定され、ボビン2の巻芯21の軸と直交して延び、当該巻芯21の間際に至る。可動ガイド溝62には、延び方向に沿って溝が穿設されており、この溝内をワイヤ11A及び11Bが通る。可動ガイド溝62の延び方向は、巻芯21に巻き付くワイヤ11A及びワイヤ11Bと巻芯21の延び方向と一致する。そのため、ワイヤ11A及びワイヤ11Bが可動ガイド溝62の出口で屈曲して擦れることはなく、ワイヤ11A及びワイヤ11Bの損耗は抑制される。
【0021】
第1駆動機構71は、回転モータ81とボールネジ82を備える。ボールネジ82は、巻芯21の軸と平行に延び、第1トラバーサ51の可動ベース63と螺合している。回転モータ81は、ボールネジ82を軸回転させる。これにより、第1トラバーサ51は、第1駆動機構71の駆動に応じて巻芯21の軸に沿って平行移動する。
【0022】
第2駆動機構72は、回転モータ81とボールネジ82と支持台73を備える。支持台73は、第1トラバーサ51の可動ベース63上に立設している。第2トラバーサ52の可動ベース63は、支持台73上に設置され、巻芯21の軸に沿って平行移動可能となっている。第2駆動機構72のボールネジ82は、支持台73上で巻芯21の軸と平行に延び、第2トラバーサ52の可動ベース63と螺合している。第2駆動機構72の回転モータ81は、第2駆動機構72のボールネジ82を軸回転させる。これにより、第2トラバーサ52は、第1駆動機構71の駆動に応じて巻芯21に沿って平行移動するとともに、第2駆動機構72の駆動に応じて巻芯21に沿って独立して平行移動し、第1トラバーサ51との位置関係を可変にしている。
【0023】
図2乃至図5は、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の平行移動態様を示す模式図である。図2乃至図5に示すように、ワイヤ11Aは、送り方向最後尾に常に位置するように巻回され、ワイヤ11Bはワイヤ11Aよりも送り方向1本分先行して巻回されるものとする。
【0024】
図2に示すように、巻芯21の第1端部21aから第2端部21bに向かってワイヤ11Aとワイヤ11Bを巻回する際、第2トラバーサ52は、ワイヤ1本分だけ第1トラバーサ51よりも第2端部21bに近い位置に相対的に固定される。即ち、第2トラバーサ52の第2駆動機構72は停止している。一方、第1トラバーサ51は、第1駆動機構71によって、ワイヤ11Aとワイヤ11Bの1周分巻回完了ごとに、2本分の平行移動を連続して行う。
【0025】
図3に示すように、第2端部21bまで残り0.5本分の位置までワイヤ11Bが迫った位置で、ワイヤ11A及びワイヤ11Bを1周巻き終えたものとする。次の1周巻きの間に、第1駆動機構71は、第1トラバーサ51を1.5本分だけ第2端部21bに向けて移動させ、第2端部21bに最近傍のワイヤ11Bにワイヤ11Aを乗り上げさせ、第2端部21bに立設する鍔部22に沿わせる。一方、第2駆動機構72は、ワイヤ11Aが段上げされて一周巻回するまでの間に、第1トラバーサ51の軸を基準に第2トラバーサ52を軸対称の位置に平行移動させ、第1トラバーサ51よりも第2端部21bから離れるように、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の位置を入れ替える。
【0026】
第2トラバーサ52の平行移動中は、ワイヤ11Aとワイヤ11Bが交差することになる。従って、第2トラバーサ52は速やかに平行移動を完了させ、ワイヤ11Aとワイヤ11Bの交差距離を最小にする。これにより、多層コイルの外径が第1端部21a及び第2端部21b周辺で膨らむ現象をより抑制することができる。
【0027】
より詳細には、ワイヤ11Bは送り方向最後尾の11Aから数えて2番目である。従って、ワイヤ11Aとワイヤ11Bの直径をdとすると、第2駆動機構72は、第1トラバーサ51の軸を基準に、この第1トラバーサ51を跨いで第1端部21aに相対的に近い位置に2dの距離だけ平行移動させる。
【0028】
これにより、ワイヤ11Aは、送り方向最後尾に常に位置するように第2端部21bに近い側となり、ワイヤ11Bはワイヤ11Aよりも第1端部21aに近い側に入れ替わる。そして、図4に示すように、第2駆動機構72は第2トラバーサ52の第1トラバーサ51に対する相対移動を停止させ、第1トラバーサ51の第1駆動機構71を駆動し、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の位置関係を保ったまま、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52を第1端部21aに向けて移動させる。そうすると、ワイヤ11Aが第1端部21aに向けた送り方向で1線分遅れ、ワイヤ11Bが1線分先行した状態を維持しながら、上層が形成されていく。
【0029】
図5に示すように、第1端部21aまで残り0.5本分の位置までワイヤ11Bが迫ると、第1駆動機構71は第1トラバーサ51を1.5本分だけ第1端部21aに向けて移動させ、ワイヤ11Aを第1端部21aに立設する鍔部22に沿わせるように段上げする。一方、第2駆動機構72は、ワイヤ11Aが段上げされて一周巻回するまでの間に、第1トラバーサ51の軸を基準に第2トラバーサ52を軸対称の位置に平行移動させ、第1トラバーサ51より第1端部21aから離れるように、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の位置を入れ替える。より詳細には、第2駆動機構72は、第1トラバーサ51の軸を基準に、この第1トラバーサ51を跨いで第2端部21bに相対的に近い位置に距離2dだけ平行移動させる。
【0030】
この一連の流れにおいて、第1端部21a及び第2端部21bで送り方向を逆転させるとき以外は、第1駆動機構71は、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の位置を決定する巻回位置決定手段となっている。また、第2駆動機構72は、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の位置関係を入れ替える入れ替え手段となっている。また、第2駆動機構72は、第2トラバーサ52を巻芯21に沿って平行移動させているだけであり、ワイヤ11A及びワイヤ11Bの大きな捻れによってキンクして損耗することが抑制されている。
【0031】
(効果)
このように、この巻線装置1は、共通の巻芯21にワイヤ11A及びワイヤ11Bを交互且つ多層に巻回する装置であり、ワイヤ11A及び11Bの本数と同数の第1トラバーサ51及び第2トラバーサ52を備えるようにした。そして、第1トラバーサ51と対にして配置され、対応の第1トラバーサ51を巻芯21に沿って独立して平行移動させる第1駆動機構71と、第2トラバーサ52と対にして配置され、対応の第2トラバーサ52を巻芯21に沿って独立して平行移動させる第2駆動機構72とを備えるようにした。第1駆動機構71と第2駆動機構72は、巻芯21に沿ったワイヤ11A及び11Bの送り方向を逆転させる際、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の相対的な位置関係を平行移動によって入れ替えるようにした。
【0032】
これにより、ワイヤ11A及びワイヤ11Bは平行移動のみで大きな捻れが発生することはなく、キンクして損耗することを抑制できる。そのため、例えば図6の(a)に示すように、捻りによってキンクし易い細線で成るワイヤ11A及びワイヤ11B、同図の(b)に示すように、捻ることが困難な太線で成るワイヤ11A及びワイヤ11B、同図の(c)及び(d)に示すように、断面が四角形や六角形等の捻り困難な多角形断面形状を有するワイヤ11A及びワイヤ11Bであっても、多層コイルとして適用できる。
【0033】
尚、この巻線装置1では、第1端部21a及び第2端部21bまで残り0.5本分の位置までワイヤ11Bが迫ると、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52を入れ替えるようにした。そこで、図7に示すように、巻芯21の軸方向長さAは、ワイヤ11A及び11Bの直径をdとし、ワイヤの本数をnとすると、A=d×n×N+d/2とすることが望ましい。Nは整数倍である。これにより、ワイヤ11A及び11Bのボビン2への収まりが良好となり、ワイヤ11A及び11Bが整然と巻回された多層コイルを製造できる。
【0034】
また、図8に示すように、巻芯21の断面を四角形にする等、真円に限らず、楕円又は三角形以上の多角形としてもよい。楕円や多角形の巻芯21を適用する場合、巻線装置1は、ボビン2を回転させる回転モータ23の回転速度を位相ごとに変化させ、線速度を一定に保つことによってテンション変動を低減することができ、整然と巻回された多層コイルを製造できる。
【0035】
また、この巻線装置1において、第1トラバーサ51及び第2トラバーサ52は、巻芯21間近まで延びる可動ガイド溝62を備えるようにした。そして、この可動ガイド溝62は、巻芯21に巻き付くワイヤ11A及び11Bの延び方向に沿って延びるようにした。これにより、ワイヤ11A及びワイヤ11Bと可動ガイド溝62とが擦れることはなく、ワイヤ11A及びワイヤ11Bの損耗を抑制できる。尚、可動ガイド溝62の溝は、可動ガイド溝62の表面から掘り下げられて成る他、ワイヤ11A及びワイヤ11Bの全周に内壁を有する所謂孔も含まれる。
【0036】
また、この巻線装置1において第1駆動機構71は、第2駆動機構72を含む第2トラバーサ52を支持する支持台73を備えるようにした。即ち、送り方向に1線分遅れるワイヤ11Aの第1駆動機構71は、対応の第1トラバーサ51と共に、送り方向に1線分先行するワイヤ11Bの第2トラバーサ52及び第2駆動機構72を平行移動させるようにした。
【0037】
これにより、送り方向最後尾のワイヤ11Aの第1駆動機構71は、巻芯21に対する巻回位置を設定する位置決め手段となり、送り方向先行するワイヤ11Bの第2駆動機構72は、第2トラバーサ52の位置関係を入れ替える入れ替え手段となる。従って、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52が別個独立に移動可能となりつつ、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52が機械的に位置関係を保つことができ、ワイヤ11Aとワイヤ11Bを密に巻回することが可能となる。また、入れ替えタイミングの精度が向上し、多層コイルの製造精度が増す。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る巻線装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1の実施形態と同一構成又は同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。図9は、第2の実施形態に係る巻線装置の全体構成を示す図である。この巻線装置1は、3本のワイヤ11A、11B及び11Cを並列に巻回しながら多層コイルを製造する。
【0039】
この巻線装置1は、ワイヤ11Cを供給する第3供給系33を更に備えている。第3供給系33は、第1供給系31及び第2供給系32と同じく、ワイヤ11Cを巻き出す供給ボビン41、テンショナ42及び送りローラ43を備える。また、この巻線装置1は、ワイヤ11Cに対応して第3トラバーサ53を備える。第1トラバーサ51に立設する第2トラバーサ52の可動ベース63には、支持台75が立設し、第3トラバーサ53は、この支持台75に支持されている。そして、第3トラバーサ53は、第1トラバーサ51及び第2トラバーサ52と同じく、可動ローラ61、可動ガイド溝62及び可動ベース63により成り、第3駆動機構74を備えている。第3駆動機構74は、第1駆動機構71及び第2駆動機構72と同じく、回転モータ81及びボールネジ82を備える。
【0040】
この巻線装置1の段上げ動作を説明する。ワイヤ11Aは、送り方向最後尾に常に位置するように巻回されているものとする。ワイヤ11Bは、ワイヤ11Aよりも1本分先行し、ワイヤ11Cよりも1本分遅れているものとする。ワイヤ11Cは、送り方向最先端に常に位置するように巻回されているものとする。
【0041】
巻芯21の第1端部21aから第2端部21bに向かってワイヤ11Aとワイヤ11Bとワイヤ11Cを巻回する際は、支持台73を介して第1トラバーサ51に載っている第2トラバーサ52を、ワイヤ1本分だけ第1トラバーサ51よりも第2端部21bに近い位置で、第1トラバーサ51に対して相対的に停止させる。また、第3トラバーサ53を、ワイヤ1本分だけ第2トラバーサ52よりも第2端部21bに近い位置で、第1トラバーサ51及び第2トラバーサ52に対して相対的に停止させる。即ち、第2トラバーサ52の第2駆動機構72も第3トラバーサ53の第3駆動機構74も停止している。一方、第1トラバーサ51は、第1駆動機構71によって、ワイヤ11Aとワイヤ11Bとワイヤ11Cの一周分巻回完了ごとに、3本分平行移動する。
【0042】
図10は、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52と第3トラバーサ53の平行移動態様を示す模式図である。図10に示すように、第2端部21bまで残り0.5本分の位置までワイヤ11Cが迫ると、第1駆動機構71は第1トラバーサ51を2.5本分だけ第2端部21bに向けて移動させ、ワイヤ11Aを第2端部21bに立設する鍔部22に沿わせるように段上げする。一方、第2駆動機構72は、ワイヤ11Aが段上げされて一周巻回するまでの間に、第1トラバーサ51の軸を基準に第2トラバーサ52を軸対称の位置に平行移動させ、第1トラバーサ51より第2端部21bから離れるように、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の位置を入れ替える。
【0043】
また、第3駆動機構74は、ワイヤ11Aが段上げされて一周巻回するまでの間に、第1トラバーサ51の軸を基準に第3トラバーサ53を軸対称の位置に平行移動させ、第1トラバーサ51より第2端部21bから離れるように、第2トラバーサ52を超えつつ、第1トラバーサ51と第3トラバーサ53の位置を入れ替える。より詳細には、ワイヤ11Aとワイヤ11Bとワイヤ11Cの直径をdとすると、ワイヤ11Cは送り方向最後尾のワイヤ11Aから数えて3番目であるから、第3駆動機構74は、第1トラバーサ51の軸を基準に、この第1トラバーサ51を跨いで第1端部21aに相対的に近い位置に、第3トラバーサ53を距離4dだけ平行移動させる。これにより、第1端部21aに近い方から第3トラバーサ53、第2トラバーサ52、第1トラバーサ51の順に配列される。
【0044】
そして、第2トラバーサ52の第2駆動機構72と第3トラバーサ53は停止させ、第1トラバーサ51の第1駆動機構71を駆動させて、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52と第3トラバーサ53の位置関係を保ったまま、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52と第3トラバーサ53を第1端部21aに向けて移動させる。
【0045】
第1端部21aまで残り0.5本分の位置までワイヤ11Cが迫ると、第1駆動機構71は第1トラバーサ51を2.5本分だけ第1端部21aに向けて移動させ、ワイヤ11Aを第1端部21aに立設する鍔部22に沿わせるように段上げする。一方、第2駆動機構72は、ワイヤ11Aが段上げされて一周巻回するまでの間に、第1トラバーサ51の軸を基準に第2トラバーサ52を軸対称の位置に平行移動させ、第1トラバーサ51より第1端部21aから離れるように、第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の位置を入れ替える。また、第3駆動機構74は、ワイヤ11Aが段上げされて一周巻回するまでの間に、第1トラバーサ51の軸を基準に、第2トラバーサ52を超えつつ、第3トラバーサ53を軸対称の位置に平行移動させる。
【0046】
このように、巻線装置1は、3本以上のワイヤを巻芯21に沿って巻回する場合でも適用可能となる。即ち、送り方向最後尾のワイヤ11Aが段上げされている間に、他のワイヤ11B、11C・・・が、第1トラバーサ51の軸を基準に軸対称移動するように第2トラバーサ52、第3トラバーサ53・・・を移動させればよい。即ち、送り方向最後尾のワイヤ11Aの隣から数えてN番目のワイヤを保持するトラバーサを、2×N×dの距離だけ平行移動させればよい。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る巻線装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1の実施形態又は第2の実施形態と同一構成又は同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。図11の(a)に示すように、この巻線装置1は、軸方向の各半径が異なる巻芯21を有するボビン2を備えている。典型的には、巻芯21がテーパ形状を有し、第1端部21aの位置の半径よりも第2端部21bの位置の半径が小さくなっている。尚、図中では、理解容易のため、鍔部22を大径側にのみ設けているが、鍔部22を両端部に設けても良い。
【0048】
このようなボビン2を備える場合であっても、入れ替え手段となる第2トラバーサ52、第3トラバーサ53は、巻芯21の外周面と平行な方向に、第1トラバーサ51の軸を基準にして軸対称の位置に平行移動させればよい。具体的に、図11の(b)に示すように、巻芯21の外周面の勾配をθ度とし、ワイヤ直径をdとする。このとき、送り方向最後尾のワイヤ11Aの隣から数えてN番目のワイヤを保持するトラバーサは、第1トラバーサ51の軸を基準に、第1トラバーサ51を超えつつ、2×N×d×cosθの距離だけ平行移動すればよい。これにより、テーパ状の多層コイルも精度良く製造可能となる。
【0049】
尚、巻芯21がテーパ形状を有するボビン2を備える場合、図11の(b)に示すように、巻芯21の小径側から巻回を開始することが望ましい。ワイヤ11Aの巻き付け初期位置が小径側の鍔部22に固定されて安定性が増し、巻芯21の勾配θによるワイヤ11A及び11Bの小径側への滑り落ちを未然に防止できる。そのため、より整然と巻回された、テーパ形状の多層コイルを製造することができる。
【0050】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る巻線装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1の実施形態と同一構成又は同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
この巻線装置1の第2駆動機構72は、図12の(a)に示すように、ある層から段上げする際、ボビン2が例えば90度回転する間に、第1トラバーサ51のワイヤ1.5本分の平行移動による段上げを終え、またボビン2が90度回転する間に、第2トラバーサ52による第1トラバーサ51を跨ぐ平行移動を終える。一方、図12の(b)に示すように、他の層から段上げする際、ボビン2が例えば180度回転する間に、第1トラバーサ51のワイヤ1.5本分の平行移動による段上げを終え、またボビン2が180度回転する間に、第2トラバーサ52による第1トラバーサ51を跨ぐ平行移動を終える。
【0052】
このように、この巻線装置1は、層ごとに第1トラバーサ51が段上げし、第2トラバーサ52が第1トラバーサ51を跨ぐ平行移動のタイミングを変更し、ワイヤ11Bがワイヤ11Aと交差する位相を層によって変更するようにした。換言すると、この巻線装置1は、層ごとに第1トラバーサ51と第2トラバーサ52の平行移動の速度を変更し、ワイヤ11Aとワイヤ11Bが交差する距離を層によって変更するようにした。これにより、下層の状況に応じて、上層の段上げ態様を決定できるため、下層の不安定さが上層に反映されることが抑制でき、良好な多層ワイヤを製造することができる。
【0053】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る巻線装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1乃至第5の実施形態と同一構成又は同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
図13に示すように、第1乃至第5の実施形態に係る巻線装置1は、第1駆動機構71、第2駆動機構72、第3駆動機構74・・・を制御する制御部91を備えている。制御部91は、所謂コンピュータであり、CPU等の演算制御装置と、RAM等の主記憶装置と、HDD等の外部記憶装置と、第1駆動機構71、第2駆動機構72、第3駆動機構74・・・を制御するドライバ回路を備えており、外部記憶装置に記憶されたプログラムや各種データが主記憶装置に展開され、演算制御装置が実行し、実行結果に従ってドライバ回路が第1駆動機構71、第2駆動機構72、第3駆動機構74・・・に制御信号を出力する。制御信号は、その出力タイミングによって第1駆動機構71、第2駆動機構72、第3駆動機構74・・・の駆動タイミングを規定し、移動量を内容に含む。
【0055】
また、巻線装置1は、ボビン2に巻回されている多層コイルを画角に収めるカメラ92を備えている。制御部91は、カメラ92の撮像結果を画像処理する画像処理部93を備え、画像処理の結果から多層コイルの外径の膨らみと、膨らみ箇所を検出する。そして、制御部91は、この膨らみ箇所を避けてワイヤ11A、11B・・・の交差箇所を設定し、この膨らみと面一になるように交差距離を設定する。
【0056】
図14は、この制御部91の動作を示すフローチャートである。ここでは、巻線装置1が2本のワイヤ11A及び11Bを巻回させる例を採って説明する。図14に示すように、制御部91は、カメラ92から動画像データを受信し(ステップS01)、動画像データを解析して(ステップS02)、表面層の状態を検出する(ステップS03)。
【0057】
表面層の状態が検出されると(ステップS03)、制御部91は、この表面層の状態に応じて段上げ時の平行移動速度を計算し(ステップS04)、計算結果に応じた平行移動速度で第1トラバーサ51に段上げの平行移動をさせ(ステップS05)、計算結果に応じた平行移動速度で第2トラバーサ52に第1トラバーサ51と交差させる平行移動を行わせる(ステップS06)。
【0058】
このように、この巻線装置1では、第2駆動機構72は、層ごとに平行移動のタイミングを変更し、ワイヤ11Bが交差する位相を層によって変更する。また、第2駆動機構72は、層ごとに平行移動の速度を変更し、ワイヤ11Aとワイヤ11Bとが交差する距離を層によって変更する。そして、この変更のために、巻線装置1は、巻回の状態を検出するカメラ92を含み、当該カメラ92の検出結果に応じて第2駆動機構72を制御する制御部91を備えるようにした。これにより、多層コイルが歪な形状とならず、巻芯21に倣いやすくなる。
【0059】
尚、この巻線装置1では、カメラ92を備えるようにしたが、多層コイルの膨らみが検出可能であれば、各種検出部を備えるようにしてもよい。例えば、検出部としてカメラ92に代えてレーザによる距離測定器を備えるようにしてもよい。
【0060】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 巻線装置
11A ワイヤ
11B ワイヤ
11C ワイヤ
2 ボビン
21 巻芯
22 鍔部
23 回転モータ
24 回転軸
31 第1供給系
32 第2供給系
33 第3供給系
41 供給ボビン
42 テンショナ
43 送りローラ
51 第1トラバーサ
52 第2トラバーサ
53 第3トラバーサ
61 可動ローラ
62 可動ガイド溝
63 可動ベース
71 第1駆動機構
72 第2駆動機構
73 支持台
74 第3駆動機構
75 支持台
81 回転モータ
82 ボールネジ
91 制御部
92 カメラ
93 画像処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14