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特許7274845浅溝分離に使用するための水性低砥粒シリカスラリー及びアミンカルボン酸組成物並びにその製造方法及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】浅溝分離に使用するための水性低砥粒シリカスラリー及びアミンカルボン酸組成物並びにその製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20230510BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230510BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230510BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018177584
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2019070113
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】15/718,998
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ・グォ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・モズリー
(72)【発明者】
【氏名】ナレシュ・クマール・ペンタ
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525796(JP,A)
【文献】特表2010-541204(JP,A)
【文献】特表2016-524004(JP,A)
【文献】特表2017-514297(JP,A)
【文献】特開2012-028747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
B24B 37/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上のアミノシラン基を有するコロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系(ここで、複数のコロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系は、組成物のpHで+5~+50mVのゼータ電位を有する)の砥粒粒子と、ニコチン酸、ピコリン酸又はイソニコチン酸から選択される、3~4.5の等電点(pI)を有する少なくとも一つのN含有複素環式モノカルボン酸とを含み、2.5~5.3のpHを有し、さらに、固形分としての前記砥粒粒子の量が、組成物の総重量に基づいて0.01~20重量%の範囲であ酸化剤化合物を実質的に含まない、水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物。
【請求項2】
前記コロイド状シリカ粒子の分散系の少なくとも一つが、伸長性、屈曲性若しくは結節性のコロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系、又はそれと球形コロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系との混合物を含伸長性、屈曲性若しくは結節性のコロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系は、前記粒子の最長寸法と、前記最長寸法に対して垂直であるその直径との平均粒子アスペクト比1.8:1~3:1を有する、請求項1記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物。
【請求項3】
前記砥粒粒子が、カチオン性窒素原子を含有する複数の伸長性、屈曲性若しくは結節性のコロイド状シリカ粒子の分散系の混合物、又はそれと複数の球形コロイド状シリカ粒子の分散系との混合物を含み、前記伸長性、屈曲性若しくは結節性のコロイド状シリカ粒子の分散系の量が、前記砥粒粒子の総固形分重量に基づいて50~99.9重量%の範囲であ複数の伸長性、屈曲性若しくは結節性のコロイド状シリカ粒子の分散系は、前記粒子の最長寸法と、前記最長寸法に対して垂直であるその直径との平均粒子アスペクト比1.8:1~3:1を有する、請求項記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物。
【請求項4】
前記アミノシラン基が、一つ以上の第三級アミン基又は一つ以上の第二級アミン基又は一つ以上の第一級アミン基を含有するアミノシランから選択される、請求項1記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物。
【請求項5】
アミノシランの量が、水性CMP研磨組成物中の全シリカ固形分に基づいて0.0010~0.5重量%の範囲である、請求項記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物。
【請求項6】
前記N含有複素環式モノカルボン酸の量が、水性CMP研磨組成物中の全シリカ固形分に基づいて10~5000ppmの範囲である、請求項1記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物。
【請求項7】
二つの第四級アンモニウム基を含有する一つ以上の化合物をさらに含む、請求項1記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ以上のアミノシラン基を有するコロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系(組成物のpHで+5~+50mV又は好ましくは+10~+30mVのゼータ電位を有する)の砥粒と、2.5~5の等電点(pI)を有する少なくとも一つのアミン複素環式カルボン酸とを含み、2.5~5.3のpHを有する水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基板工程(FEOL:front-end-of-line)の半導体加工においては、浅溝分離(STI:shallow trench isolation)は、集積回路作製中、たとえばトランジスタの形成の前に、ゲートの形成にとって重要である。STIにおいては、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)又は二酸化ケイ素などの誘電体を、シリコンウェーハ中に形成された開口部、たとえば窒化ケイ素(SiN)バリヤによって集積回路の残り部分から分離される溝又は分離区域中に過剰に堆積させる。そして、CMPプロセスを使用して過剰な誘電体を除去して、所定のパターンの誘電体がシリコンウェーハにはめ込まれている構造を得る。STIのためのCMPは、分離区域からの二酸化ケイ素過装入分の除去及び平坦化を必要とし、それにより、二酸化ケイ素充填溝と同一平面の面を生じさせる。STIにおいて、その後、下流側の加工における窒化物ハードマスクの除去を可能にするために、窒化ケイ素膜面から二酸化又は酸化ケイ素を取り除かなければならない。許容可能な酸化物:窒化物除去速度比は、下にあるSi活性区域への損傷を防ぎ、すべてのパターン密度から酸化物を取り除くことを保証するための過研磨マージンを提供するために必要である。さらに、完成したゲートにおける低しきい値電圧漏れを防ぐために、溝中の酸化物のディッシング(dishing)が回避されなければならない。
【0003】
現在、基材を研磨するためにCMP研磨パッドとともに使用される水性化学機械平坦化研磨(CMP研磨)組成物のユーザは、セリア含有CMP研磨組成物の使用を避けることを望んでいる。セリアスラリーは、窒化ケイ素に対する二酸化ケイ素の高い選択比を示し、窒化ケイ素の露出時、溝区域中の酸化物の除去を回避するが、高価であり、RR及びプロセス安定性に関する問題を抱え、研磨中に欠陥を生じさせやすい。シリカスラリー調合物は、より低コストでより欠陥の少ない解決手段を提供するが、今日まで、STI用途における使用の場合、不十分な酸化物:窒化物選択比の欠点を抱えている。近年、アミノシラン表面処理されたシリカ粒子は、相対的に高い酸化物速度を示すため、いくらかの有望さを示し、好ましい粒子/ウェーハ静電反発力のおかげで窒化物速度を有意に低下させた。このような水性シリカスラリーCMP組成物は、窒化物速度がセリア粒子が提供する窒化物速度に匹敵にするには困難なままである、4~5.5のpH範囲で酸化物速度にとって最適に機能する。そのpH状態中でpHを安定化するために、多くの場合、ある種のカルボン酸、たとえば酢酸及びクエン酸が滴定及び/又は緩衝剤として使用される。そのような化合物は、望ましい窒化物抑制を提供するには不十分であり、したがって、改善された酸化物:窒化物選択比を達成するために、新たな種類の化学添加物を特定する必要がある。
【0004】
Grumbine et al.の米国特許第9,499,721(B2)号は、永久的な正電荷を有する粒子及びその粒子に組み込まれた一つ以上の化学種を有し得るコロイド状シリカ分散系を含む、基材を研磨するための化学機械研磨組成物を開示する。シリカ粒子中の化学種は、窒素含有化合物、好ましくはアミノシラン又はリン含有化合物であることができる。しかし、開示された何百ものそのような窒素の化学種のうち、Grumbineは、アミンカルボン酸が誘電体酸化物:誘電体窒化物除去速度の選択比を高める組成物を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、STI用途に使用するための許容可能な酸化物ディッシング制御及び酸化物:窒化物除去速度選択比を可能にする水性シリカスラリーを提供する課題を解決しようと尽力した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明にしたがって、水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物は、一つ以上のアミノシラン基を有するコロイド状シリカ粒子、好ましくは伸長性、屈曲性若しくは結節性のコロイド状シリカ粒子、又はそれと球形コロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系との混合物の一つ以上の分散系(ここで、複数のコロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系は、組成物のpHで+5~+50mV又は好ましくは+10~+30mVのゼータ電位を有する)の砥粒と、2.5~5又は好ましくは3~4.5の等電点(pI)を有する少なくとも一つのアミン複素環式カルボン酸とを含み、2.5~5.3又は好ましくは4~5のpHを有し、さらに、固形分としての砥粒粒子の量は、組成物の総重量に基づいて0.01~20重量%又は好ましくは0.1~15重量%又はより好ましくは0.5~3重量%の範囲である。CMP研磨組成物は、濃縮物として貯蔵及び輸送されたのち、基材を研磨するときに水で希釈され得る。
【0007】
2.上記項目1記載の水性CMP研磨組成物にしたがって、砥粒は、カチオン性窒素原子を含有する伸長性、屈曲性若しくは結節性のコロイド状シリカ粒子の分散系の混合物、又はそれと複数の球形コロイド状シリカ粒子の分散系との混合物を含み、伸長性、屈曲性又は結節性のコロイド状シリカ粒子の分散系の量は、砥粒の総固形分重量に基づいて50~99.9重量%又は好ましくは65~99.9重量%の範囲である。
【0008】
3.上記項目1又は2記載の水性CMP研磨組成物にしたがって、砥粒は、粒子の最長寸法と、最長寸法に対して垂直であるその直径との平均粒子アスペクト比が1.8:1~3:1である伸長性、屈曲性又は結節性のコロイド状シリカ粒子の少なくとも一つの分散系を含む。
【0009】
4.上記項目1、2又は3のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物にしたがって、コロイド状シリカ粒子の分散系の少なくとも一つ又はすべては、粒子内に一つ以上の窒素原子を含み、それにより、前記粒子は、アミノシラン基の非存在下において正の表面電荷又はゼータ電位を示し;たとえば、コロイド状シリカ粒子内に捕らえられた窒素は、アルキルアンモニウム水酸化物、アルキルアミン、アルコキシアルキルアミン、アルコキシアルキルアンモニウム水酸化物、アリールアミン又はアリールアンモニウム水酸化物のいずれか由来であることができる。
【0010】
5.上記項目1、2、3又は4のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物にしたがって、アミノシラン基は、一つ以上の第三級アミン基を含有するアミノシラン、たとえばN,N-(ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン(DEAMS)、又は一つ以上の第二級アミン基を含有するアミノシラン、たとえばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPS)若しくはN-アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(DETAPS)、又は一つ以上の第一級アミン基を含有するアミノシラン、たとえば3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APES)若しくは3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APMS)、好ましくは、一つ以上の第三級アミン基を含有するアミノシランから選択される。
【0011】
6.上記項目1、2、3、4又は5のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物にしたがって、アミノシランの量は、水性CMP研磨組成物中の全シリカ固形分に基づいて0.0010~0.5重量%又は好ましくは0.003~0.1重量%又はより好ましくは0.005~0.02重量%の範囲である。
【0012】
7.上記項目1、2、3、4、5又は6のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物にしたがって、前記組成物は、一つ以上のアミン複素環式カルボン酸を含有する化合物をさらに含み、一つ以上のアミン複素環式カルボン酸は、N含有複素環式モノカルボン酸から選択され、又はより好ましくはニコチン酸、ピコリン酸又はイソニコチン酸から選択される。
【0013】
8.上記項目7記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物にしたがって、アミン複素環式カルボン酸の量は、水性CMP研磨組成物中の全シリカ固形分に基づいて10~5000ppm又は好ましくは20~1000ppm又はより好ましくは20ppm~700ppmの範囲である。
【0014】
9.上記項目1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか一つ記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物にしたがって、シリカ粒子の重量平均粒子径(CPS)は、10nm~200nm又は好ましくは25nm~80nmの範囲である。
【0015】
10.誘電体又は酸化物含有基材の研磨に使用するための上記項目1~9のいずれか一つ記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物にしたがって、組成物は、酸化剤化合物、たとえば過酸化水素を実質的に含まない。
【0016】
11.上記項目1~10のいずれか一つ記載の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物にしたがって、前記組成物は、二つの第四級アンモニウム基を含有する一つ以上の化合物、たとえばヘキサブチルC1~C8アルカンジアンモニウム二水酸化物若しくはその塩、たとえば二ハロゲン化物、又は好ましくはN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)をさらに含む。
【0017】
12.上記項目11記載の本発明の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物にしたがって、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の量は、水性CMP研磨組成物中の全シリカ固形分に基づいて1~2000ppm又は好ましくは5~500ppm又はより好ましくは10ppm~200ppmの範囲である。
【0018】
13.上記項目1~12のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物にしたがって、組成物は、一つ以上のカチオン性コポリマー、たとえば、ジアリルジアルキルアミン塩、ジアリルアルキルアミン塩又はジアリルアミン塩のいずれかと非イオン性モノマー、たとえば二酸化硫黄とのカチオン性コポリマーをさらに含む。
【0019】
14.本発明の別の態様にしたがって、水性CMP研磨組成物を使用する方法は、CMP研磨パッド及び上記項目1~13のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物によって基材を研磨する工程を含む。
【0020】
15.上記項目14記載の本発明の方法にしたがって、基材は、二酸化ケイ素又はテトラエトキシシリケート(TEOS)及び窒化ケイ素(たとえばSiN若しくはSi34又はそれらの混合物)の両方を含み、研磨は、少なくとも8:1、たとえば10:1~50:1又は好ましくは少なくとも10:1、たとえば20:1~40:1の酸化物:窒化物除去速度比を生じさせる。
【0021】
16.上記項目14又は15記載のCMP基材研磨法にしたがって、研磨ダウンフォースは、10.3kPa(1.5psi)~41.5kPa(6psi)又は好ましくは12kPa(1.8psi)~36kPa(5.2psi)の範囲である。
【0022】
別段指示されない限り、温度及び圧力の条件は、周囲温度及び標準圧力である。記載されるすべての範囲は、両端を含み、かつ組み合わせ可能である。
【0023】
別段指示されない限り、括弧を含む用語は、選択的に、括弧が存在しない場合の完全な用語及び括弧を有しない当該用語並びに各選択肢の組み合わせを指す。たとえば、用語「(ポリ)イソシアネート」は、イソシアネート、ポリイソシアネート又はそれらの混合物を指す。
【0024】
すべての範囲は、両端を含み、かつ組み合わせ可能である。たとえば、用語「50~3000cPの範囲又は100cP以上」は、50~100cP、50~3000cP及び100~3000cPのそれぞれを含む。
【0025】
本明細書の中で使用される用語「アミン複素環式カルボン酸」とは、少なくとも一つのカルボキシル基及び少なくとも一つのアミン複素環含有基を含有する有機化合物をいう。したがって、アミン複素環式カルボン酸は、アミン複素環含有基を有する天然由来のアミノ酸又はペプチド結合を形成するアミノ酸だけに限定されない。たとえば、ピリジンカルボン酸は、ペプチド結合を形成しそうにないアミン複素環式カルボン酸である。
【0026】
本明細書の中で使用される用語「ASTM」とは、ASTM International(West Conshohocken, PA)の刊行物をいう。
【0027】
本明細書の中で使用される用語「コロイド的に安定」とは、所与の組成物が、所与の温度で所与の時間ののち目視検査したとき、ゲル化又は沈殿を生じず、明澄なままであることをいう。
【0028】
本明細書の中でアミンカルボン酸に関して使用される用語「等電点」又は「pI」とは、アミンカルボン酸のpKa1及びpKa2の平均を指し、pKa1は、アミンカルボン酸上のカルボキシル基の最初又は最低のpKaを指し、pKa2は、アミンカルボン酸上のアミン基の最後又は最高のpKaを指す。たとえば、pKa1が2.5であり、pKa2が6.5であるならば、アミンカルボン酸の等電点は4.5である。さらに、本明細書の中で使用される用語「全砥粒のpI」とは、コロイド状シリカ粒子の一つ以上の分散系それぞれのpIの加重平均をいう。たとえば、そのようなコロイド状シリカ粒子の分散系が一つである場合、全砥粒のpIはその分散系のpIに等しく;二つのそのような分散系の重量比50/50の混合物があり、一方の分散系のpIが3.5であり、他方の分散系のpIが4.5である場合、全砥粒のpIは、(3.5×0.5)+(4.5×0.5)、すなわち4.0である。
【0029】
本明細書の中で使用される用語「硬い塩基」とは、NaOH、KOH又はCa(OH)2などのアルカリ(土類)金属水酸化物を含む金属水酸化物をいう。
【0030】
本明細書の中で使用される用語「ISO」とは、International Organization for Standardization(Geneva, CH)の刊行物をいう。
【0031】
本明細書の中で使用される用語「粒子径(CPS)」とは、CPS Instruments(The Netherlands)ディスク遠心システムによって測定される組成物の重量平均粒子径をいう。粒子は、溶媒中、遠心力によって粒子径ごとに分けられ、光学的な光散乱法を使用して定量される。
【0032】
本明細書の中で使用される用語「シリカ粒子固形分」又は「シリカ固形分」とは、所与の組成物に関し、球形シリカ粒子の全量+伸長性、屈曲性又は結節性のシリカ粒子の全量(これらの粒子のいずれかとともに処理されるものを含める)をいう。
【0033】
本明細書の中で使用される用語「固形分」とは、その物理的状態にかかわらず使用条件下で揮発しない、水又はアンモニア以外の物質をいう。たとえば、液体シラン、又は使用条件下で揮発しない添加物は、「固形分」とみなされる。
【0034】
本明細書の中で使用される用語「強酸」とは、2以下のpKaを有するプロトン酸、たとえば硫酸又は硝酸のような無機酸をいう。
【0035】
本明細書の中で使用される用語「酸化剤化合物を実質的に含まない」とは、所与の組成物に添加される酸化剤化合物がなく、その組成物が酸化剤化合物を500ppm未満又は好ましくは100ppm未満しか含有しないことを意味する。
【0036】
本明細書の中で使用される用語「使用条件」とは、所与の組成物が使用されるときの温度及び圧力(使用中の、又は使用の結果としての温度及び圧力の上昇を含む)をいう。
【0037】
本明細書の中で使用される用語「重量分率シリカ」とは、組成物の総重量/100%に基づくシリカの総重量%をいう。たとえば、30重量%シリカは0.3の重量分率に等しい。
【0038】
本明細書の中で使用される用語「重量%」は、重量百分率の略である。
【0039】
本明細書の中で使用される用語「ゼータ電位」とは、Malvern Zetasizer計器(Malvern Instruments, Malvern, UK)によって計測される所与の組成物の電荷をいう。すべてのゼータ電位計測は、以下の実施例に記載されるように(希釈)スラリー組成物に対して実施したものである。報告される値は、各指示された組成物に関して計器によって読み取られた>20個の獲得値を使用してゼータ値の平均化計測値から得たものである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者らは、CMP研磨において酸化物:窒化物選択比を調整する際に、アミン複素環含有カルボン酸が重要な役割を演じることを見いだした。アミン複素環式カルボン酸は、CMP研磨組成物のpHを調節するために使用することができる滴定剤を含むため、本発明の組成物は、シリカ砥粒粒子安定性又は基材とのその相互作用に対してマイナスの影響をほとんど及ぼさず;さらに、本発明の組成物は、酸化物、たとえばテトラエトキシシラン(TEOS)除去速度を損なうことなく、窒化物除去速度の抑制を可能にする。本発明の水性CMP研磨組成物は、10:1~50:1又は好ましくは20:1~40:1の、誘電体酸化物:誘電体窒化物基材の除去速度選択比を提供する。選択比は、好ましい4~5のpHで、一般に使用されるアルキルカルボン酸及びジカルボン酸、たとえば酢酸又はコハク酸又はクエン酸と比べ、さらに改善される。したがって、本発明の方法は、10:1~50:1又は好ましくは20:1~40:1の、誘電体酸化物:誘電体窒化物基材の除去速度選択比を提供することを可能にする。
【0041】
本発明のアミン複素環式カルボン酸は、好ましくはモノカルボン酸である。ジカルボン酸添加物を有する水性CMP研磨組成物は、本発明の組成物とともに試験されたとき、酸化物:窒化物選択比の悪化を示した。
【0042】
本発明にしたがって、適切なコロイド状シリカ組成物は、従来のゾル・ゲル重合又は水ガラスの懸濁重合によって作られたシリカの分散系を含むことができ、もって、複数の球形シリカ粒子を含むことができる分布物又は混合物中に、複数の伸長性、屈曲性又は結節性のシリカ粒子が生成するようにすることができる。
【0043】
適切な伸長性、屈曲性又は結節性のシリカ粒子は、テトラエトキシシラン(TEOS)又はテトラメトキシシラン(TMOS)のような前駆体から公知のやり方で形成されるシラノールの加水分解縮合によって懸濁重合から製造される。伸長性、屈曲性又は結節性のシリカ粒子を製造する方法は、公知であり、たとえば、Higuchi et al.の米国特許第8,529,787号に見ることができる。加水分解縮合は、前駆体を、水性懸濁液中、塩基性触媒、たとえばアルキルアンモニウム水酸化物、アルキルアミン又はKOH、好ましくは水酸化テトラメチルアンモニウムの存在下、反応させる工程を含み;加水分解縮合法は、一つ以上のカチオン性窒素原子を伸長性、屈曲性又は結節性のシリカ粒子に組み込むことができる。好ましくは、伸長性、屈曲性又は結節性のシリカ粒子は、pH4でカチオン性である。
【0044】
適切な屈曲性又は結節性のシリカ粒子は、Fuso Chemical Co., Ltd., Osaka, JP(Fuso)から商品名HL-2、HL-3、HL-4、PL-2、PL-3又はBS-2及びBS-3スラリーの下で市販されている。FusoからのHL及びBSシリーズ粒子は、pH4でカチオン電荷を付与する一つ以上の窒素原子を含有する。
【0045】
本発明の水性CMP研磨組成物のコロイド安定性を保証するために、組成物は、2.5~5.3又は好ましくは4~5の範囲であるpHを有する。組成物は、所望のpH範囲よりも上ではその安定性を失う傾向を示す。
【0046】
本発明の組成物にしたがって、アミノシランは、より多くのアミノシランがより小さなシリカ粒子(より多くの表面積を有する)とともに使用され、より少ないアミノシランがより大きなシリカ粒子とともに使用されるような量で使用される。アミノシランの適切な量は、水性CMP研磨組成物中の全シリカ固形分に基づいて0.0020~0.25重量%又は好ましくは0.003~0.1重量%又はより好ましくは0.003~0.02重量%の範囲である。
【0047】
アミノシラン(アンモニウムシラン)化合物は、本発明の組成物のpHでは、粒子表面との静電引力によってシリカ粒子表面に物理吸着する。そして、縮合反応によってシリカ表面と反応してSi-O-Si結合を形成することができる。一般に、アミノシラン化合物の少なくとも75重量%がシリカ表面に結合するであろう。すなわち、連続水相中で自由に浮動しない。
【0048】
本発明のCMP研磨組成物中のコロイド状シリカ粒子の分散系は、正のゼータ電位を有する、又は、二つ以上のコロイド状シリカ粒子分散系の混合物ならば、正の平均ゼータ電位を有する。コロイド安定性を制御するために、5未満のpH範囲におけるシリカ粒子の単位表面積あたりの、アミノシラン中のカチオン性窒素原子の数を少なくとどめ、かつ、シリカ粒子に正のゼータ電位をもたせるべきである。しかし、シリカ粒子の表面積あたりのカチオン性窒素原子が多すぎると、TEOSウェーハの除去速度によって計測されるスラリーの研磨能力の損失を招き得る。シリカの単位表面積あたりのカチオン性窒素原子の数はまた、シリカ粒子表面の気孔率、密度及びシラノール濃度の関数であり;より多孔性又はより低密度のシリカ粒子及びより多くのシラノール基をその表面に有するシリカの場合、より多くのアミノシランが必要になろう。水中のシリカ粒子のシラノール密度は、BET計測によって計測される表面積に基づいて、表面積1nm2あたりシラノール1.8~2から7~8の範囲であることが当技術分野において周知である。
【0049】
アミノシランは、本発明の組成物のコロイド安定性を改善することができ;そのような安定性は、正帯電原子又はカチオンの存在に関連することができる。一つのアミン基を有する第三級及び第二級アミノシランは、アミノ基がプロトン化されているため、本発明の組成物のpHでアミノシラン分子1個あたり一つの正電荷又はカチオン性窒素原子を与える。ビス(アミノ)シラン及び二つのアミン基を含有するアミノシラン、たとえばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシランは、本発明の組成物のpHでアミノシラン分子1個あたり約二つの正電荷又はカチオン性窒素原子を与える。
【0050】
本発明のアミノシラン基含有シリカ粒子分散系を製造する際の使用に適したアミノシランは、第三級アミン基及び第二級アミン基を含有するアミノシランである。本発明の組成物中のアミノシランは、初期混合中には加水分解性の水性アミノシランとして存在するが、すぐにシリカ粒子の表面に収着される。
【0051】
本発明の水性CMP研磨組成物における使用に適したアミノシランは、一つ以上の第三級アミン基を含有するアミノシラン、たとえばN,N-(ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン(DEAMS)、又は一つ以上の第二級アミン基を含有するアミノシラン、たとえばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPS)若しくはN-アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(DEAPS、DETAPSとも呼ばれる)、又は一つ以上の第一級アミン基を含有するアミノシラン、たとえば3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APES)若しくは3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APMS)、好ましくは一つ以上の第三級アミン基を含有するアミノシランを含む。
【0052】
本発明の加水分解性の水性アミノシラン及びそれを含有するCMP研磨組成物を製造する方法にしたがって、水性アミノシラン組成物は、貯蔵時に形成されたシリケート結合を加水分解するために放置される。一つ以上の第二級アミン基を含有するアミノシランの場合、そのような水性アミノシランのpHは、7~8で5~600分間、たとえば5~120分間維持されたのち、強酸によって3.5~5に調節される。第三級アミン基を含有するアミノシランは、本発明の水性シリカCMP研磨組成物の所望のpH範囲では、第一級及び第二級アミン基を含有するアミノシランよりも容易に加水分解される。加水分解工程ののち、小さな割合のアミノシランが短鎖オリゴマーとして存在することもある。
【0053】
一つ以上の第二級アミン基を有するアミノシランはあまり好ましくないため、加水分解性の水性アミノシランを製造する好ましい方法は、一つ以上の第三級アミノ基を有する本発明の水性アミノシランのpHを3.5~4.5に調節する工程及びそれを5~600分間又は5~120分間放置する工程を含む。
【0054】
本発明にしたがって、アミノシランの適切な量は、水性CMP研磨組成物中の全シリカ固形分に基づいて0.0010~0.25重量%又は好ましくは0.003~0.1重量%又はより好ましくは0.003~0.02重量%の範囲であることができる。
【0055】
好ましくは、本発明にしたがって、水性CMP研磨組成物は、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物、たとえばN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)を含む。そのような化合物は、高い除去速度を維持しながらも貯蔵、輸送及び熱老化に関して水性CMP研磨組成物の安定性を高める。
【0056】
本発明にしたがって、二つの第四級アンモニウム基を含有する適切な化合物は、ヘキサブチルC1~C8アルカンジアンモニウム二水酸化物若しくはその塩、たとえば二ハロゲン化物、又は好ましくはN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)を含むことができる。
【0057】
本発明にしたがって、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の適切な量は、組成物中の全シリカ固形分に基づいて1~2000ppm又は好ましくは5~500ppm又はより好ましくは10ppm~200ppmの範囲である。量は、安定化効果を保証するのに十分な量であるべきである。より高いシリカ濃度及び/又はより低いアミノシラン濃度を有する濃縮物及び組成物を安定化するためには、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物がより多く必要になる。また、より小さい平均粒子径の粒子を安定化する場合にも、その表面積の増大及びオリゴマー化又はゲル化の可能性のせいで、より多くの前記化合物が必要になる。
【0058】
好ましくは、CMP研磨中に誘電体酸化物のディッシングを減らすために、本発明の組成物はさらに、カチオン性ポリマー、たとえばカチオン性コポリマー;たとえば、アニオン性モノマー又は繰り返し単位、たとえば二酸化硫黄と、カチオン性窒素を有するジアリルジアルキルアミン塩、たとえばジアリルジメチルアンモニウムハロゲン化物;カチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩、たとえばジアリルアンモニウムハロゲン化物;又はカチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩、たとえばジアリルアルキルアンモニウム塩、たとえばジアリルアルキルアンモニウムハロゲン化物、好ましくはジアリルモノメチルアンモニウム塩;のいずれかとのコポリマーを含むことができる。そのようなコポリマーは、酸化ケイ素選択比において役立ち、研磨中のディッシングを防止するのに役立つことができる。カチオン性コポリマーの量は、組成物の総重量に基づいて0.5重量%までの範囲である。カチオン性コポリマーが多すぎると、基材の誘電体又はシリカ表面を不動態化するおそれがある。本発明のカチオン性コポリマーは、たとえばYusuke et al.の米国特許第9,006,383(B2)号に詳述されるように、酸の存在又は非存在下における付加重合によって製造することができる。
【0059】
本発明の水性化学機械平坦化(CMP)研磨組成物は、誘電体又は酸化物含有基材を研磨する際に用途を見いだし、その場合、組成物は、過酸、過酸化物、酸化鉄又はヨウ素酸塩など酸化剤化合物を含まない。
【0060】
好ましくは、本発明の水性CMP研磨組成物はさらに、アミンアルコキシレート、ジアミンアルコキシレート、アンモニウムアルコキシレート又はそれらの混合物から選択される疎水性アルキル又はアリール置換アルキル(アラルキル)基を有する一つ以上の界面活性剤を含むことができる。そのような界面活性剤は、(i)C8~C32又は好ましくはC8~C24N-アルキルアミン基、第二級アミン又は第三級アミン、好ましくは第三級アミンを有するアミン又はジアミンアルコキシレート、(ii)C8~C32又は好ましくはC8~C24N-アルキルアンモニウム基を有するアンモニウムアルコキシレート、又は(iii)(i)と(ii)の両方であることができる。より好ましくは、界面活性剤の少なくとも一つは、二つのN-アルコキシエーテル基を有し、さらにより好ましくは、(ii)アンモニウムアルコキシレートの少なくとも一つは、C1~C6N-アルキル基を含む。アミンアルコキシレート、ジアミンアルコキシレート、アンモニウムアルコキシレート又はそれらのすべてにおいて、N-アルコキシエーテル基、N-エトキシエーテルオリゴマー又はN-プロポキシオリゴマーは、2~50のエーテル繰り返し単位又は好ましくは4~24のエーテル繰り返し単位を有する。そのような一つ以上の界面活性剤の量は、組成物の総重量に基づく固形分として、好ましくは0.001~1重量%又はより好ましくは0.0025~0.05重量%の範囲である。界面活性剤がアンモニウムアルコキシレート、又はアンモニウムアルコキシレート及びアミンアルコキシレートを含有する界面活性剤の混合物であるとき、一つ以上のアンモニウムアルコキシレートの量は、組成物の総重量に基づく固形分として、好ましくは0.0005~1重量%又はより好ましくは0.0015~0.05重量%の範囲である。
【0061】
本発明のCMP研磨は、従来のCMP研磨法を含む。CMP研磨は、プラテン又はテーブルを有するCMP研磨装置を提供する工程;研磨する基材、たとえば、二酸化ケイ素などの誘電体の層が堆積されている、好ましくは、窒化ケイ素の層が同じく堆積されているケイ素又はポリシリコンの基材を提供する工程;研磨面を有するCMP研磨パッド、たとえばポリウレタンフォームパッドを提供する工程;CMP研磨パッドをプラテン又はテーブル上に設置する工程;CMP研磨パッドの研磨面と基材との間の界面に本発明の水性CMP研磨組成物を提供する工程;並びにポリシリコン、好ましくはそれと窒化ケイ素の層が、露出するが実質的には除去されないまでCMP研磨パッド表面と基材との間に動的接触を生じさせて、好ましくは、低区域又は溝中に残る誘電体又は酸化ケイ素がポリシリコン及び窒化ケイ素の縁部とほぼ同じレベルになるようにする工程を含む。
【0062】
本発明の方法にしたがって、方法は、CMP研磨パッド表面と基材との間に動的接触を生じさせる工程を、基材を回転させること、研磨層を有するCMP研磨パッドを回転させること、又は両方を回転させることによって実施することができるCMP研磨を含む。
【0063】
本発明の方法にしたがって、方法は、CMP研磨パッドを用いてCMP研磨し、別個に又は同時に、CMP研磨パッドの研磨面をコンディショニングパッドによって調整して、研磨面が表面ミクロテキスチャを有するようにする工程を含む。
【0064】
本発明にしたがって、基材は、窒化ケイ素、たとえばSiN又はSi34及び二酸化ケイ素又はテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を含み、研磨は、少なくとも10:1、たとえば10:1~50:1又は好ましくは20:1~40:1の酸化物:窒化物除去速度比を生じさせる。
【0065】
望ましくは、本発明のCMP研磨は、本発明のCMP研磨組成物を用いるSTI又はILD加工において、好ましくは、溝又は他の低区域内の誘電体又は二酸化ケイ素の過度なエロージョン(erosion)又はディッシングなしで、ポリシリコン及び窒化ケイ素が実質的に除去されず、二酸化ケイ素が十分に平坦化されるように実施される。
【0066】
使用中、ウェーハ基材のSTI加工は、窒化ケイ素の層が堆積されているケイ素基材を提供することを含む。フォトリソグラフィーののち、窒化ケイ素の上側層(overlying layer)を含む基材上に溝をエッチングし、過剰量の誘電体、たとえば二酸化ケイ素をその上に堆積させる。次いで、基材を、窒化ケイ素の表面層が、露出するが実質的には除去はされないまで平坦化に付して、溝中に残る誘電体又は酸化ケイ素が窒化ケイ素の縁部とほぼ同じレベルになるようにする。
【0067】
使用中、ウェーハ基材のILD又はバルク誘電体加工は、ドープされたケイ素活性形体をそれらの間の低区域及びそれらの中の窒化ケイ素溝とともに有し、二酸化ケイ素又はTEOSなどの誘電体の充填層の層が堆積されている形体含有ケイ素基材を提供することを含む。次いで、基材を、ケイ素及び窒化ケイ素の表面層が、露出するが実質的には除去はされないまで平坦化に付して、低区域及び溝中に残る誘電体又は酸化ケイ素がケイ素形体及び窒化ケイ素の縁部とほぼ同じレベルになるようにする。
【実施例
【0068】
以下の実施例は、本発明の様々な特徴を説明する。
【0069】
以下の実施例においては、別段指示されない限り、温度及び圧力の条件は、周囲温度及び標準圧力である。
【0070】
以下の実施例においては、以下の材料を使用した。
【0071】
HBBAH=N,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物、98重量%(Sachem, Austin, TX)。
AEAPS=N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、98%(Gelest Inc., Morrisville, PA)。
DEAMS=(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン、98%(Gelest Inc.)。
ジアミンアルコキシレート:Ethoduomeen(商標)T-25 エトキシ化(15)N-牛脂-1,3-ジアミノプロパン界面活性剤(CAS: 61790-85-0、Akzo Nobel)。
【0072】
実施例において使用した様々なシリカ粒子が以下の表Aにリストされている。
【0073】
【表1】
【0074】
以下の実施例においては以下の略号を使用した。
【0075】
POU:使用時点(Point of use);RR:除去速度(Removal rate);SA:表面積(Surface Area);SSA:比表面積(Specific surface area)。
【0076】
多くのアミンカルボン酸のpIを以下の表Bに示す。以下の表B中、Nは、アミンを指す。
【0077】
【表2】
【0078】
アミンカルボン酸の等電点:
アミンカルボン酸の等電点又はpIは、アミンカルボン酸が電場又は電気泳動媒体中で移動しないpHである。中性の側鎖を有するアミンカルボン酸は、二つのpKa:カルボン酸に対するpKa1及びアミンに対するpKa2を特徴とする。pIは、これら二つのpKaの中間点又は平均である。すなわちpI=1/2(pKa1+pKa2)。pKa1未満のpHで、アミンカルボン酸は、全体として正の電荷を有し、pKaを超えるpHで、アミンカルボン酸は、全体として負の電荷を有するであろう。もっとも単純なアミンカルボン酸であるグリシンの場合、pKa1=2.34、pKa2=9.6、よってpI=5.97である。酸性アミンカルボン酸は、酸性の側鎖を有する。酸性の側鎖が余分な負電荷を導入するため、pIは、より低いpHになるであろう。たとえば、アスパラギン酸の場合、二つの酸pKa(pKa1及びpKa2)及び一つのアミンpKa(pKa3)がある。pIは、これら二つの値の中間点である。すなわちpI=1/2(pKa1+pKa3)、よってpI=2.77。塩基性アミンカルボン酸は、塩基性の側鎖が余分な正電荷を導入するため、より高いpHのpIを有する。たとえば、ヒスチジンの場合、pIは、最低のpKa、すなわちカルボン酸水素のpKaと、最高のpKa、すなわちアンモニア水素のpKaとの二つの値の中間点である。pI=1/2(pKa2+pKa3)であり、よってpI=7.59である。
【0079】
調合例:
以下の実施例において別段指示されない限り、各スラリーを、上記表Aからの、スラリーB中の伸長性、屈曲性又は結節性のシリカ粒子とスラリーAのシリカ粒子との固形分として重量比3:1の混合物から、15重量%固形分のスラリー組成物として調合した。POUの組成物は、指示された酸又はアミン複素環式カルボン酸を、固形分として、組成物の総重量に基づいて指示された量、たとえば50ppm~500ppmで含み;DEAMSアミノシランの約0.08重量%固形分をpH~7.5の水溶液として、指示されたシリカ粒子スラリー組成物に加えて、アミン処理されたコロイド状シリカ粒子を形成した。スラリーのpHを~7.5で1時間維持した。得られた組成物は、アミノシランを粒子上に含有するシリカ粒子を約90重量%含む。組成物を、固形分として0.00625重量%のDiquatと合わせ、別段指示されない限り、室温で熟成した。コハク酸を参照として使用して、シリカスラリー組成物を指示されたpHに調節した。
【0080】
以下の実施例において単独のスラリーA又はスラリーBしか示されないならば、それは、15重量%固形分の組成物として出発して使用され、上記のように、指示されたシリカ粒子スラリーをDEAMSと合わせた。
【0081】
上記調合物を2重量%固形分まで希釈し、指示された界面活性剤及び他の指示された材料と合わせて、以下の表C~Eに示す水性CMP研磨組成物を得た。
【0082】
【表3】
【0083】
以下の実施例においては以下の試験法を使用した。
【0084】
POUのpH:
使用時点のpH(POUのpH)とは、指示された濃縮組成物を指示された固形分まで水で希釈したのち、除去速度試験中に計測されたpHである。
【0085】
除去速度:
Applied Materials Reflexion(商標)300mm研磨機又は「Reflexion RR」(Applied Materials, Santa Clara, CA)を指示されたとおり用い、指示されたダウンフォース並びにテーブル及びキャリヤ回転速度(rpm)で、指示されたCMP研磨パッド及び砥粒スラリー(所与の砥粒スラリー流量300mL/min)とともに使用して、指示された基材に対する研磨から除去速度試験を実施した。Saesol 8031C1ダイアモンドパッドコンディショナ(Saesol Diamond Ind. Co., Ltd., Korea)を使用して研磨パッドを調整した。CMP研磨パッドを、パッドコンディショナにより、6.35kg(14.0lb)のダウンフォースを用い20分間ならし運用し、さらに、研磨の前に、4.1kg(9lb)のダウンフォースを用い10分間調整した。さらに、CMP研磨パッドを、研磨中、4.1kg(9lb)のダウンフォースで、研磨パッドの中心から毎分10回掃引して、インサイチューで調整した。研磨の前後に、49点渦巻状走査(49 point spiral scan)を用いるKLA-Tencor F5X計測機(KLA Tencor, Milpitas, CA)を使用して、縁部3mmを除いて膜厚を計測することにより、除去速度を測定した。
【0086】
Z平均粒子径:
製造者の推奨にしたがって校正されたMalvern Zetasizer装置(Malvern Instruments, Malvern, UK)を使用する動的光散乱法(DLS)により、指示された組成物のZ平均粒子径を計測した。Z平均粒子径とは、ISO法(ISO13321:1996又はそのより新しい付録ISO22412:2008)によって計算される直径である、強度加重調和平均径である。粒子径の計測は、各実施例に記載されるpHで希釈粒子サンプルに対して実施した。
【0087】
ゼータ電位:
指示された組成物のゼータ電位をMalvern Zetasizer計器によって上記のやり方で計測した。ゼータ電位の計測は、pH4.5の溶液によって2%w/wシリカまで希釈された、pH4.5又はその付近の組成物に対して実施した。
【0088】
除去速度試験:
除去速度試験のためにスラリー濃縮物を水中2%w/wまで希釈し、その後、pH調節は加えなかった。別段指示されない限り、AMAT Reflexion(商標)LK研磨機(Applied Materials, Santa Clara, CA)を、6.9kPa(1psi)及び20.7kPa(3psi)のダウンフォースで、93rpmのテーブル速度及び87rpmの基材キャリヤ速度で作動させた。性能を試験するために、TEOS/SiN/ポリSiウェーハを300mL/minの流量で研磨した。別段指示されない限り、K7+R32溝パターンを有する、厚さ80mil、ショアD硬さ57のIC1000(商標)ウレタンパッド(The Dow Chemical Company, Midland, MI, (Dow))を使用した。
【0089】
実施例1:様々なカルボン酸に対するカルボキシレートの効果
上記表Cに示すスラリー組成物の除去速度試験を以下の表1に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
上記表1に示すように、選択されたオリゴカルボン酸のいずれも、参照コハク酸と比べて改善された選択比を生じさせなかった。
【0092】
実施例2:様々な酸性化合物の効果
以下の表Cに示す組成物の除去速度試験を以下の表2に示す。調合物は、上記と同じやり方で、スラリーB:スラリーAの3:1固形分重量ブレンドで製造した。上記のように除去速度を試験した。kPa単位のダウンフォースを以下の表2に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
上記表2に示すように、アミン複素環式カルボン酸としてニコチン酸を有する実施例7の本発明の水性CMP研磨組成物は、窒化物除去を抑制しながら約35%の選択比改善をもたらす。
【0096】
実施例3:さらなるCMP研磨調合物
以下の表Eに示す調合物を上記のように除去速度に関して試験した。kPa単位のダウンフォース及び結果を以下の表3に示す。
【0097】
【表7】
【0098】
【表8】
【0099】
上記表3に示すように、アミン複素環式カルボン酸を含有する実施例11のスラリー組成物は、酸化物:窒化物選択比の改善を容易にする。ピコリン酸(ピリジンモノカルボン酸)と比べて、比較例12及び13において試験された二つのピリジンジカルボン酸は、窒化物除去速度を抑制するのではなく、その増大を生じさせた。