IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NTN株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-リンク作動装置 図1
  • 特許-リンク作動装置 図2
  • 特許-リンク作動装置 図3
  • 特許-リンク作動装置 図4
  • 特許-リンク作動装置 図5
  • 特許-リンク作動装置 図6
  • 特許-リンク作動装置 図7
  • 特許-リンク作動装置 図8
  • 特許-リンク作動装置 図9
  • 特許-リンク作動装置 図10
  • 特許-リンク作動装置 図11
  • 特許-リンク作動装置 図12
  • 特許-リンク作動装置 図13
  • 特許-リンク作動装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】リンク作動装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20230510BHJP
   F16H 21/46 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B25J11/00 D
F16H21/46
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018183107
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049613
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 賢蔵
(72)【発明者】
【氏名】磯部 浩
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051866(WO,A1)
【文献】特開2008-040930(JP,A)
【文献】特開2013-052501(JP,A)
【文献】特開2013-198942(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
F16C 41/00
F16H 21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを、リンク機構を介して姿勢変更可能に連結し、前記リンク機構の連結を行う部分である回転対偶部を備えたパラレルリンク機構と、前記リンク機構に対して先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢制御用駆動源と、この姿勢制御用駆動源を制御する制御装置とを備えたリンク作動装置において、
前記制御装置は、前記パラレルリンク機構および前記姿勢制御用駆動源により構成されるリンク作動装置本体における前記パラレルリンク機構の姿勢変化の生じ難さである剛性推定する測定部と、この測定部で推定された剛性から前記リンク作動装置本体における前記各回転対偶部のいずれかに異常があることを判定する判定部とを有する異常検知手段を備え、
前記判定部は、判定の基準となる剛性を基準値として記憶部に記憶しておき、前記基準値と前記測定部で推定された剛性とを比較して前記異常の判定を行い、
前記測定部は、前記リンク作動装置本体の固有振動数を測定し、固有振動数から前記剛性を推定するリンク作動装置。
【請求項2】
基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを、リンク機構を介して姿勢変更可能に連結し、前記リンク機構の連結を行う部分である回転対偶部を備えたパラレルリンク機構と、前記リンク機構に対して先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢制御用駆動源と、この姿勢制御用駆動源を制御する制御装置とを備えたリンク作動装置において、
前記制御装置は、前記パラレルリンク機構および前記姿勢制御用駆動源により構成されるリンク作動装置本体における前記パラレルリンク機構の姿勢変化の生じ難さである剛性推定する測定部と、この測定部で推定された剛性から前記リンク作動装置本体における前記各回転対偶部のいずれかに異常があることを判定する判定部とを有する異常検知手段を備え、
前記測定部は、前記姿勢制御用駆動源のトルクを測定し、この測定されたトルクから前記リンク作動装置本体の前記剛性を推定し、
前記判定部は、前記リンク作動装置本体の前記各回転対偶部が正常であるときにおける、前記リンク作動装置本体の複数種類の姿勢における前記剛性をそれぞれ記憶する記憶部を有し、前記判定部は、前記複数種類の姿勢における前記記憶された前記剛性と前記測定部で推定された剛性とを比較して前記異常の判定を行うリンク作動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリンク作動装置において、前記リンク作動装置本体が異常判定のための定められた姿勢となるように、前記姿勢制御用駆動源を駆動する異常判定用動作指令部が前記制御装置に設けられたリンク作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療機器や産業機器等の精密で広範な作動範囲を必要とする機器に用いられるリンク作動装置に関し、特にその回転対偶部の異常を判定する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能なリンク作動装置として、例えば、特許文献1に示されるようなものが提案されている。同文献1のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結したパラレルリンク機構と、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる姿勢制御用駆動源とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-94245号公報
【文献】米国特許第5893296号明細書
【文献】特許第4476603号公報
【文献】特許5785055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のリンク作動装置の構成では、組立時に各回転対偶部に設けた軸受間にシムを入れて予圧を付与し、回転対偶部のガタ詰めを行って、位置決め精度や剛性を向上させることができる。また、軸受の組み合わせ(正面合わせ(DB)、背面合わせ(DF)等)により、回転対偶部の剛性を向上させ、装置の位置決め精度や剛性を向上させることができる。
しかし、このような回転対偶部の組立時に、シムの挿入忘れ・重なり、軸受の組み合わせミスなどにより、所望の位置決め精度や剛性を得られない場合がある。また、長期運転に伴う摩耗による位置決め精度や剛性の低下を初期段階で検出することが難しいという場合もある。
【0005】
また、上記特許文献3の構成のパラレルリンク機構では、先端部材の姿勢によってリンク部分の剛性が変化するため、組立時のミスや長期連続運転による摩耗等の剛性・位置決め精度の低下および原因の検出が難しい。そのため、上記構成のパラレルリンク機構において、出荷時の検査や、連続運転の最中に容易に異常を検出できる構成が望まれている。
【0006】
この発明は、上記課題を解消するものであり、その目的は、リンク作動装置本体の組立ミスや長期運転による剛性および位置決め精度の低下を、分解せず、また運転を継続しながらでも容易に検知することができるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブ12に対して先端側のリンクハブ13を、リンク機構14を介して姿勢変更可能に連結し、前記リンク機構14の連結を行う部分である回転対偶部31~34を備えたパラレルリンク機構10と、前記リンク機構14に対して先端側のリンクハブ13の姿勢を任意に変更する姿勢制御用駆動源11(11~11)と、この姿勢制御用駆動源11を制御する制御装置2とを備えたリンク作動装置において、
前記制御装置2は、前記パラレルリンク機構10および前記姿勢制御用駆動源11により構成されるリンク作動装置本体1における前記回転対偶部31~34の異常に影響される定められた状態値を測定する測定部5と、この測定部5の測定結果から前記リンク作動装置本体1が前記各回転対偶部31~34のいずれかに異常があることを判定する判定部6とを有する異常検知手段4を備える。
【0008】
この構成のリンク作動装置によると、制御装置2は、回転対偶部31~34の異常に影響される前記リンク作動装置本体1の何らかの状態値を測定する測定部5と、この測定部5の測定結果から前記リンク作動装置本体1が前記回転対偶部31~34のいずれかに異常があることを判定する判定部7とを有する異常検知手段4を有する。このため、リンク作動装置本体1の前記軸受23やその周辺部分で構成される回転対偶部31~34の組立ミスや長期運転による剛性および位置決め精度の低下を、分解せず、また運転を継続しながらでも容易に検知することができる。
【0009】
この発明において、前記測定部5は、前記リンク作動装置本体1の剛性を測定し、前記判定部6は前記測定部5による測定値から定められた規則に従って前記異常の判定を行うようにしてもよい。
リンク作動装置本体1の剛性は、リンク作動装置本体1の姿勢変化の生じ難さであり、
各回転対偶部31~34の剛性である回転し難さが総合的に作用してリンク作動装置本体1の剛性として現れる。
回転対偶部31~34の軸受23の組立ミスや長期運転による摩耗は、リンク作動装置本体1の剛性に大きく影響する。このため、リンク作動装置本体1の剛性を測定し、定められた規則に従って前記異常の判定を行うことで、精度良くリンク作動装置本体1の回転対偶部31~34の異常を検知することができる。前記定められた規則は、任意に設定すれば良いが、例えば、設計上で定めた基準値や正常時に収集した測定値から定まる基準値と現在の測定値とを比較し、基準値に対して許容範囲内にある場合に異常であると判定してもよい。許容範囲内にあるかは前記基準値となる閾値を超えるか否かで判断してもよい。また、複数回の測定および比較によって異常か否かの判定を行うようにしてもよい。
【0010】
前記のように剛性を測定して異常の判定を行う場合に、前記測定部5は、前記リンク作動装置本体1の固有振動数を測定し、固有振動数から前記剛性を推定するようにしてもよい。
リンク作動装置本体1の剛性は固有振動数に関係し、固有振動数が低くなるに従って剛性が低下する。このため、リンク作動装置本体1の固有振動数の測定値を用いることで、リンク作動装置本体1の異常の判定を行うことができる。剛性の測定値を用いる場合、組立直後の動作試験による検査や動作中の測定で確認することができ、そのため、動作不良等の不良品の出荷を防ぐことができる。
【0011】
また、前記のように剛性を測定して異常の判定を行う場合に、前記測定部5は、前記姿勢制御用駆動源11のトルクを測定し、この測定されたトルクから前記リンク作動装置本体1の剛性を推定するようにしてもよい。
回転対偶部31~34の剛性、つまり回り難さは、姿勢制御用駆動源11のトルクとして現れる。そのため、姿勢制御用駆動源11のトルクを測定し、この測定されたトルクから前記リンク作動装置本体1の剛性を推定することができる。これにより、組立ミスを検知することができ、確認作業を簡略化できる。また、組立直後の動作試験による検査や動作中の測定で確認することができるため、動作不良等の不良品の出荷を防ぐことができる。
【0012】
この発明において、前記判定部6は、前記リンク作動装置本体1の前記各回転対偶部31~34が正常であるときにおける、前記リンク作動装置本体1の複数種類の姿勢における前記状態値をそれぞれ記憶する記憶部7を有し、前記判定部6は、前記複数種類の姿勢における前記記憶された前記状態値から定まる値と前記測定部5で測定された状態値とを比較して前記異常の判定を行うようにしてもよい。
正常時における状態値を記憶しておき、その記憶された状態値、あるいはこの状態値から定まる値と現在の測定値とを比較することで、異常の有無を適切に判定することができる。また、リンク作動装置本体1の姿勢によって、回転対偶部31~34に作用する負荷が大きく異なるため、姿勢によっては、回転対偶部31~34の軸受23の剛性等の状態値に異常が現れない場合がある。このため、複数種類の姿勢における異常の判定を行うことで、組立ミスなどの初期不良だけでなく摩耗等による長期使用時の変動も精度良く検知することができる。また、異常が生じている回転対偶部31~34を特定することが可能になる場合もある。
【0013】
この発明において、前記リンク作動装置本体1が、異常判定のための定められた姿勢となるように、前記姿勢制御用駆動源11を駆動する異常判定用動作指令部3cが前記制御装置2に設けられていてもよい。
前記異常判定用動作指令部3cの指令によって、リンク作動装置の組み立て後や、毎回の運転開始前等に、異常判定のための動作を行わせることによって、組立ミスなどの初期不良だけでなく摩耗等による長期使用時の変動も確実に良く検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを、リンク機構を介して姿勢変更可能に連結し、前記リンク機構の連結を行う部分である回転対偶部を備えたパラレルリンク機構と、前記リンク機構に対して先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢制御用駆動源と、この姿勢制御用駆動源を制御する制御装置とを備えたリンク作動装置において、前記制御装置は、前記パラレルリンク機構および前記姿勢制御用駆動源により構成されるリンク作動装置本体における前記回転対偶部の異常に影響される定められた状態値を測定する測定部と、この測定部の測定結果から前記リンク作動装置本体が前記各回転対偶部のいずれかに異常があることを判定する判定部とを有する異常検知手段を備えるため、パラレルリンク機構の組立ミスや長期運転による剛性および位置決め精度の低下を、分解せず、また運転を継続しながらでも容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の第1の実施形態に係るリンク作動装置におけるリンク作動装置本体の斜視図に制御装置のブロック図を組み合わせた説明図である。
図2】同リンク作動装置本体の図1と異なる姿勢の斜視図である。
図3】同リンク作動装置本体の正面図である。
図4】同リンク作動装置本体の図3と異なる姿勢の正面図である。
図5】同リンク作動装置本体の一部を示す正面図である。
図6】同リンク作動装置本体の破断平面図である。
図7図6のVIII部を拡大して示す拡大破断平面図である。
図8図7の一部をさらに拡大して示す拡大断面図である。
図9】同リンク作動装置本体のパラレルリンク機構を直線で示すモデル図である。
図10】同リンク作動装置における異常検知の一例を示す流れ図である。
図11】同リンク作動装置における異常検知の他の例を示す流れ図である。
図12】同リンク作動装置における異常検知のさらに他の例を示す流れ図である。
図13】同リンク作動装置における異常検知のさらに他の例を示す流れ図である。
図14】同リンク作動装置本体の組み立てミスの一例を示す破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
このリンク作動装置は、パラレルリンク機構10およびその姿勢制御用駆動源11(11,11,11)により構成されるリンク作動装置本体1と、このリンク作動装置本体1を制御する制御装置2とを備える。
【0017】
<パラレルリンク機構10>
パラレルリンク機構10は、図3,4に示すように、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13を、3組のリンク機構14を介して姿勢変更可能に連結してなる。リンク機構14の数は、4組以上であってもよい。
【0018】
各リンク機構14は、その一つを図5に示すように、基端側の端部リンク部材15、先端側の端部リンク部材16、および中央リンク部材17で構成され、4つの回転対偶部31~34からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材15,16はL字状をなし、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13に回転自在に連結されている。中央リンク部材17は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材15,16の他端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0019】
パラレルリンク機構10は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造であって、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の各回転対偶部31,32、および端部リンク部材15,16と中央リンク部材17の各回転対偶部33,34の中心軸O1,O2が、基端側と先端側においてそれぞれの球面リンク中心PA,PB( 図5) で交差している。また、基端側と先端側において、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の各回転対偶部31,32とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じであり、端部リンク部材15,16と中央リンク部材17の各回転対偶33,34とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材15,16と中央リンク部材17との各回転対偶部33,34の中心軸は、ある交差角γを持っていてもよいし、平行であってもよい。
【0020】
図6はリンク作動装置の破断平面図であって、同図に、基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15の各回転対偶部31の中心軸O1と、中央リンク部材17と基端側の端部リンク部材15の各回転対偶部33の中心軸O2と、基端側の球面リンク中心PAとの関係が示されている。つまり、中心軸O1と中心軸O2とが交差する点が球面リンク中心PAである。図の例では、リンクハブ12(13)と端部リンク部材15(16)との各回転対偶部31,32の中心軸O1と、端部リンク部材15(16)と中央リンク部材17との各回転対偶部33,34の中心軸O2とが成す角度αが90°とされているが、前記角度αは90°以外であってもよい。
【0021】
3組のリンク機構14は、如何なる姿勢においても幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、図9に示すように、各リンク部材15,16,17を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶部31~34と、これら回転対偶部31~34間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材17の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。図9は、一組のリンク機構14を直線で表現した図である。この実施形態のパラレルリンク機構10は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ12および基端側の端部リンク部材15と、先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16との位置関係が、中央リンク部材17の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。各中央リンク部材17の中央部は、共通の軌道円上に位置している。
【0022】
基端側のリンクハブ12と先端側のリンクハブ13と3組のリンク機構14とで、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が直交2軸回りに回転自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ12に対して先端側のリンクハブ13を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の可動範囲を広くとれる。
【0023】
例えば、球面リンク中心PA,PBを通り、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の各回転対偶部31,32の中心軸O1(図6)と直角に交わる直線をリンクハブ12,13の中心軸QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの折れ角θの最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の旋回角φを0°~360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
【0024】
基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢変更は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの交点Oを回転中心として行われる。基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBが同一線上にある原点位置の状態(図3)では、先端側のリンクハブ13は真下を向く。図1図3は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが或る作動角をとった状態を示す。姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離L(図9)は変化しない。
【0025】
各リンク機構14が次の各条件を満たす場合、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ12および基端側の端部リンク部材15と、先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16とは同じに動く。よって、パラレルリンク機構10は、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する等速自在継手として機能する。
条件1:各リンク機構14におけるリンクハブ12,13と端部リンク部材15,16との回転対偶部31,32の中心軸O1の角度および長さが互いに等しい。
条件2:リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16との回転対偶部31,32の中心軸O1および端部リンク部材15,16と中央リンク部材17との回転対偶部33,34の中心軸O2が、基端側および先端側において球面リンク中心PA,PBで交差する。
条件3:基端側の端部リンク部材15と先端側の端部リンク部材16の幾何学的形状が等しい。
条件4:中央リンク部材17における基端側部分と先端側部分の幾何学的形状が等しい。
条件5:中央リンク部材17の対称面に対して、中央リンク部材17と端部リンク部材15,16との角度位置関係が基端側と先端側とで同じである。
【0026】
図3に示すように、基端側のリンクハブ12は、基端部材20と、この基端部材20と一体に設けられた3個の回転支持部材21とで構成される。3個の回転支持部材21が円周方向に等間隔で配置されている。各回転支持部材21には、軸心が基端側のリンクハブ12の中心軸QAと交差する回転軸22が回転自在に連結されている。この回転軸22に、基端側の端部リンク部材15の一端が連結される。
【0027】
先端側のリンクハブ13は、平板状の先端部材50と、この先端部材50の内面に円周方向等配で設けられた3個の回転支持部材51とで構成される。各回転支持部材51は、軸心が先端側のリンクハブ13の中心軸QBと交差する回転軸52が回転自在に連結されている。この先端側のリンクハブ13の回転軸52に、先端側の端部リンク部材16の一端が連結される。先端側の端部リンク部材16の他端には、中央リンク部材17の他端に回転自在に連結された回転軸55が連結される。先端側のリンクハブ13の回転軸52および中央リンク部材17の回転軸55も、前記回転軸35と同じ形状であり、かつ2個の軸受(図示せず)を介して回転支持部材51および中央リンク部材17の他端にそれぞれ回転自在に連結されている。
【0028】
<回転対偶部31(リンクハブ12と端部リンク部材15の間)>
図6に基端側の各端部リンク部材15の断面と、各姿勢制御用駆動源11と、基端側のリンクハブ12の関係を示す。図7にその一部の拡大断面図を示し、図8にさらにその一部を拡大した断面図を示す。
基端側のリンクハブ12は、各端部リンク部材15を支持するための3個の回転軸支持部材21が、基端部材20の上面に突出して設けられている。この回転軸支持部材21に回転軸22が、図7図8のように2個複列に並べた軸受23,23を介して回転自在に支持され、回転軸22に端部リンク部材15の一端が固定されている。この基端側のリンクハブ12とリンクハブ12との軸受23,23による連結部分を、回転対偶部31と称す。
【0029】
具体的には、基端側の端部リンク部材15の一端には、二叉状となった一対の分岐片15a,15bが設けられ、両分岐片15a,15bの間に回転軸支持部材21と軸受23,23が介在する。回転軸22の大径部の外周に嵌合状態に固定された外周嵌合部材24の片面が、片方の分岐片15bの外側面に接触し、内側から挿入されたボルト等の固着部材25により、分岐片15bが外周嵌合部材24に固定されている。
前記軸受23,23は、アンギュラ玉軸受等の転がり軸受であり、両軸受23,23の外輪(図示せず)の間にシム30(図8参照)が介在する。また、両軸受23,23の内輪(図示せず)に前記回転軸22の細軸部が挿通され、内輪と両分岐片15a,15bとの間に、リング状のスペーサ29,29が介在する。また、この状態で、細軸部の先端に設けられた雄ねじ部22aに螺合するナット27(図7参照)を締め付けることにより、両分岐片15a,15bと、軸受23,23の内輪と、前記スペーサ29,29とが締め付けられ、軸受23,23に予圧が与えられている。
【0030】
図3において、先端側の端部リンクハブ13と端部リンク部材16との連結は、基端側のリンクハブ12と端部リンク部材15との上記回転対偶部31と同様な構成の回転対偶部32で連結されている。
【0031】
<回転対偶部33(端部リンク部材15と中央リンク部材17の間)>
基端側の端部リンク部材15の他端には、図7に示すように、二叉状となった一対の分岐片15c,15dが設けられ、両分岐片15c,15dの間に、中央リンク部材17の端部が介在する。この中央リンク部材17の端部に、基端側のリンクハブ12との回転対偶部31と同様に、アンギュラ玉軸受等の転がり軸受からなる軸受23,23が二列に並べて設けられて、その外輪が中央リンク部材17に嵌合状態に固定され、内輪に回転軸35が嵌合している。前記リンクハブ12への連結と同様に、両軸受23,23の外輪間にはシムが介在する。また、軸受23,23の並びの両側には、内輪に接するスペーサが配置される。回転軸35は、雄ねじ部および頭部を有するボルトであり、ナット28の螺合により、前記一対の分岐片15c,15dが、2列の軸受23,23、前記シム及びスペーサと共に締め付けられ、軸受23,23に予圧が与えられている。なお、この部分の回転軸35は、回転の支持を行う軸であって、回転は行わないが、回転する構成としてもよい。
【0032】
先端側の端部リンク部材16(図3参照)と中央リンク部材17との回転対偶部34は、図7と共に説明した基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17との回転対偶部33と同様な構成で連結されている。
【0033】
<姿勢制御用駆動源11>
姿勢制御用駆動源11は、図3のように、減速機構62を備えたロータリアクチュエータであり、基端側のリンクハブ12の基端部材20の下面に、前記回転軸22と同軸上に設置されている。姿勢制御用駆動源11と減速機構62は一体に設けられ、駆動源取り付け部材63により減速機構62が基端部材20に固定されている。この例では、3組のリンク機構14の全てに姿勢制御用駆動源11が設けられているが、3組のリンク機構14のうち少なくとも2組に姿勢制御用駆動源11を設ければ、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を確定することができる。
【0034】
パラレルリンク機構10は、各姿勢制御用駆動源11を回転駆動することで姿勢の変更を行う。詳しくは、姿勢制御用駆動源11を回転駆動すると、その回転が減速機構62を介して減速して回転軸22に伝達される。それにより、基端側のリンクハブ12に対する基端側の端部リンク部材15の角度が変わり、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢が変更される。
【0035】
<エンドエフェクタ(図示せず)>
図1において、先端側リンクハブ12には、作業の対象物(図示せず)に対して作業を行うエンドエフェクタ(図示せず)が取付けられ、このリンク作動装置とエンドエフェクタとで作業装置を構成する。エンドエフェクタは、例えば、塗布ノズル、エアーノズル、溶接トーチ、カメラ、把持機構等とされる。
【0036】
<制御装置2、図1
制御装置2は、主に姿勢制御用駆動源11(11~11)を制御することでパラレルリンク機構1の姿勢を制御する装置であって、コンピュータおよびこれに実行されるプログラム、並びに電子回路等からなる。
制御装置2は、前記姿勢の制御を行う制御手段3と、異常検知を行う異常検知手段4とを備える。
【0037】
<制御手段3>
制御手段3は、制御プログラムを解読して実行する制御部3aと、通常動作指令部3bと異常判定用動作指令部3cとを備える。通常動作指令部3bは、リンク作動装置本体1に作業等のための姿勢制御を行わせる制御プログラムからなる。異常判定用動作指令部3cはリンク作動装置本体1に異常検知のための姿勢制御を行わせる制御プログラムからなる。
【0038】
<異常検知手段4>
異常検知手段4は、リンク作動装置本体1の回転対偶部31~34の異常、例えば軸受23やその周辺のシム30やスペーサ29の組み込みミス、摩耗等の異常の検知する手段であり、測定部5および判定部6を有する。この例では、異常検知手段4はさらにデータ収集部8を有する。
測定部5は、リンク作動装置本体1における前記回転対偶部31~34の軸受23の異常に影響される何らかの状態値、例えばリンク作動装置本体1の剛性を測定する手段である。
判定部6は、測定部5の測定結果からリンク作動装置本体1の回転対偶部31~34のいずれかに異常があることを判定する手段であり、測定部5による測定値から定められた規則に従って異常の判定を行う。
【0039】
<測定部5>
測定部5は、この実施形態では、リンク作動装置本体1の固有振動数を測定し、固有振動数からリンク作動装置本体1の剛性を推定する手段とされ、リンク作動装置本体1の基端側のリンクハブ12に設置された加速度ピックアップ等の振動計からなるセンサ5aと、制御装置2を構成するコンピュータ内に設けられた剛性推定手段5bとで構成される。
測定部5は、この他に、姿勢制御用駆動源11のトルクを測定し、この測定されたトルクからリンク作動装置本体1の剛性を推定する構成であってもよい。この場合、前記トルクを測定する手段として、例えば姿勢制御用駆動源11に流れる電流を検出する電流計(図示せず)が用いられ、剛性推定手段5bは、検出された電流からリンク作動装置本体1の剛性する推定する構成とされる。
【0040】
<判定部6、記憶部7、データ収集部8>
判定部6は、判定の基準となる状態値(例えば、基準となる剛性)を基準値として記憶部7に記憶しておき、前記基準値と測定部5で測定された状態値とを比較して異常の判定を行う。この場合に、記憶部7にはリンク作動装置本体1の複数種類の姿勢における前記基準値をそれぞれ記憶する。
記憶部7に記憶する前記基準値は、設計やシミュレーションにより定めた値であってもよく、またリンク作動装置本体1の各回転対偶部31~34が正常であるときにおける、リンク作動装置本体1の前記剛性または振動数等の状態値であってもよい。
データ収集部8は、リンク作動装置本体1の各回転対偶部31~34が正常であるときにおけるリンク作動装置本体1の複数種類の姿勢における前記状態値を、それぞれ記憶部7に記憶させる。
【0041】
異常判定用動作指令部3cは、リンク作動装置本体1が、異常判定のための定められた各姿勢となるように、姿勢制御用駆動源11を駆動する指令を行う手段であり、前述のように、制御部3aにより実行される制御プログラムからなる。
【0042】
<リンク作動装置本体1の動作>
この実施形態のリンク作動装置本体1は、回転2自由度のパラレルリンク機構10で構成されており、特徴として、パラレルリンク機構10の姿勢によって各系のリンク機構14およびリンク作動装置本体1の剛性が変化するということが挙げられる。
リンク作動装置本体1のパラレルリンク機構10に異常が起きた場合、各系のリンク機構14系の剛性や回転対偶部31~34の剛性(換言すれば「抵抗」)が変化する。各系のリンク機構14や回転対偶部31~34の剛性が変化すると、リンク作動装置本体1の固有振動の変化や各姿勢制御用駆動源11のトルクの変化が起こる。
【0043】
<異常判定の動作>
前記のように、制御装置2はリンク作動装置本体1の異常を検知する異常検知部4を有している。異常検知部4は、リンク作動装置本体1の剛性を測定する測定部5と、それらの値が正常か異常かを判定する判定部6とで構成されている。
判定の際、正常時の状態値である固有振動またはトルクを基準値として記憶する記憶部7を判定部6が有しているため、様々な姿勢における測定値を記憶部7の前記基準値となるデータと比較することで異常を検知することができる。リンク作動装置本体1の剛性は、固有振動数または姿勢制御用駆動源11のトルクによって推定することができる。例えば、剛性が大きくなると、固有振動の振幅および振動数が増大し、駆動トルクも大きくなる。そのため、リンク作動装置本体1に取付けた振動を拾うためのセンサ5a(例えば加速度ピックアップ)を取り付けて固有振動を測定するか、または姿勢制御用駆動源11のモータ駆動電流から固有振動やトルクを測定することで、リンク作動装置本体1の剛性を推定することができる。
【0044】
図1におけるセンサ5aは基端側のリンクハブに取付けているが、振動が大きくなる先端側のリンクハブに取付けても良い。図3のリンク作動装置の先端側のリンクハブ13の姿勢では3つのリンク機構14がほぼ等しい値の荷重を支えているが、図4のように先端側のリンクハブ13の姿勢を変更した場合、3つのリンク機構14で支える荷重および慣性モーメントが不等分になることから、リンク作動装置本体1の全体の剛性が変化する。そのため、各姿勢における剛性値をあらかじめ保存する必要がある。
【0045】
この実施形態のリンク作動装置は、リンク作動装置本体1の姿勢によって剛性が変化するため、様々な姿勢での正常なデータを保持しておく。ここで言うデータとは、前記基準値、またはこの基準値を導出する値であり、固有振動およびトルクから推定された剛性を示している。正常なデータは過去の検査またはシミュレーションモデルから導出されるものであり、正常なデータに基づいて、異常判定の基準値とする閾値を決定し、記憶部7に記憶しておく。
【0046】
異常検知手段4による異常検知は、組立後の検査工程、通常の動作である連続運転時、および連続運転開始前の確認過程で行う。
図10は組立後の検査工程のフローチャートの一例、図11は組立後の検査工程のフローチャートの別の例、図12は連続運転開始前の確認過程時のフローチャートの一例、図13は連続運転時のフローチャートの別の例をそれぞれ示す。
【0047】
<組立後の検査工程、図10のフローチャート>
リンク作動装置の組立後の検査工程では、ある姿勢でのリンク作動装置本体1の状態値のデータを測定部5によって測定する(ステップQ1)。判定部6は、そのデータを記憶部7に保持された閾値と比較する(ステップQ2)。比較の結果、正常であるとされた場合(ステップQ3:Yes)、異常検知手段4のデータ収集部8は、前記の測定したある姿勢でのデータを記憶部7に保存し(ステップQ4)、正常なデータとして次回以降の組立後の検査工程での検査に使用させるようにし、かつそのリンク作動装置に固有のデータとして連続運転時の異常判定に使用させるようにする。
【0048】
判定部6により異常であるとされた場合(ステップQ3:No)、異常である旨の判定結果を示す警告を表示する(ステップQ5)。この表示は、制御装置2に設けられた液晶表示装置(図示せず)などに行う。
上記警告が行われた場合、作業者、またはこのリンク作動装置と組み合わせた被作業体による取扱品(図示せず)は、NG品(不良品)として再検査や部品交換、または廃棄等の処理を行う。
【0049】
<組立後の検査工程、図11のフローチャート>
図10の組立後の一連の検査工程は、単一の姿勢におけるデータ測定・正常異常の判断を繰り返して行っているが、図11の例のように、各姿勢のデータの測定をあらかじめ行った後(ステップR1)、まとめて正常異常の判断(ステップR2、R3)を行っても良い。その場合、各指姿勢でのデータの保存(ステップR4)および警告の表示(ステップR5)もまとめて行う。
【0050】
<連続動作前の確認工程での異常判定、図12のフローチャート>
リンク作動装置に通常の運転である連続動作を行う場合は、その前に、リンク作動装置に、異常判定のための確認過程となる動作を、異常判定用動作指令部3cの指令によって行わせる。この確認過程の動作は、連続運転の動作と同じであっても、確認専用の動作であってもよい。
この確認過程時では、動作中の各姿勢でのデータを一定期間ごと、または一定動作ステプごとに、測定部6によって測定し(ステップS1)、検査工程時に記憶部7に保持されたデータから導出された閾値と比較を行う(ステップS2)。比較の結果、異常と判定されたならば(ステップS3:Yes)、リンク作動装置を停止し警告を表示する(ステップS4)。前記の各姿勢での測定(ステップ1)は、一定期間ごとに行う代わりに、定められた姿勢となる毎に行うようにしてもよい。
組立後の検査時と、確認過程時や連続動作時とでは、閾値に違う値を用いてもよい。蓄積された正常時データとそのリンク作動装置に固有の初期データの双方に、正常時データを用いても構わない。
【0051】
<連続動作時の異常判定、図13のフローチャート>
連続動作時では、確認過程時と同様に、各姿勢でのデータを一定期間、または一定動作ステップごとに測定部6によって測定し(ステップT1)、検査工程時に記憶部7に保持されたデータから導出された閾値と比較を行う(ステップT2)。比較の結果、異常と判定されたならば(ステップT3:Yes)、リンク作動装置を停止し警告を表示する(ステップT4)。
前記一定期間は、例えば1時間毎であってもよい。また、前記一定動作ステップは、1ステップ毎であっても、複数の動作ステップ毎であってもよい。ここで言う動作ステップは、リンク作動装置の姿勢変更の単位となる動作である。
【0052】
<組立ミスが起きた状態の具体例:図14
図14は、上記実施形態において、駆動源取り付け部材63および回転支持部材21の取り付け角度が変わった組立ミスが起きた時の構成を示す。
この実施形態のリンク作動装置では、各基端側の端部リンク部材15と回転支持部材21との回転対偶部31の中心軸O1と、各基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17との回転対偶部33の中心軸O2とが、全て基端側のリンクハブ12の中心で交わるように配置される。
組み立てミスの例として、駆動源取り付け部材および回転支持部材21の取り付け角度が変わってしまい、各基端側の端部リンク部材15と回転支持部材21との回転対偶部31の中心軸O1と、各基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17との回転対偶部33の中心軸O2とが、基端側のリンクハブ12の中心で交わらなくなるということがある。
【0053】
図14の状態で姿勢制御用駆動源11を制御し、先端側のリンクハブ13の姿勢を制御しようとした場合、機構のズレから正常に動作しないため、リンク作動装置の固有振動および姿勢制御用駆動源11のトルクが正常のものとは異なる。この固有振動もしくはトルクを測定することで組立ミスを検知することができる。
【0054】
また、この実施形態で示しているリンク作動装置は、回転トルク軽減手段として回転対偶部31~34に軸受23を配置している。また、軸受23を複列配置とし、軸受外輪間の距離をかせぐために、図8のようにシム30を挟んでおり、軸受23の内輪を基端側の端部リンク部材15およびスペーサ29を介してボルトおよびナットで予圧を付与することで剛性を向上させている。
【0055】
このような構成において、中央リンク部材17に軸受23を配置する際に、軸受23,23間にシム30を入れ忘れて配置するか、もしくは軸受23,23間にシム30を2枚以上挟んで配置するといった組立ミスが起こることが考えられる。このようなシム30の配置違いは、寸法差が生じることによって基端側の端部リンク部材15に余計な力が加わってしまい変形してしまうことがあり、また回転対偶部31~34の剛性の変化等によって精度、寿命の低下および振動を引き起こすことがある。シム抜けは剛性の低下から精度低下および振動を引き起こし、シムの重複は面圧の増大から寿命の低下を引き起こす。
シム配置間違いは、リンク作動装置の組立終了後に確認することが従来は困難であった。例えば、目視確認のために分解の必要があり、分解に手間がかかる。また非破壊での分解が不可能である。しかし、この実施形態のように固有振動数やトルクを用いることで、非破壊かつ簡易に検知することができる。
【0056】
この実施形態によると、このように、リンク作動装置の固有振動および姿勢制御用駆動源のトルクから異常を検知することで、リンク作動装置の組立ミスや長期運転による剛性および位置決め精度の低下を、分解せず、また運転を継続しながらでも容易に検知することができる。
なお、異常検知手段4は、固有振動数とトルクの両方を用いて異常の検知を行うようにしてもよい。
【0057】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1…リンク作動装置本体、
2…制御装置、
3…制御手段、
3a…制御部、
3b…通常動作指令部、
3c…異常判定用動作指令部、
4…異常検知手段、
5…測定部、
6…判定部、
7…記憶部、
8…データ収集部、
10…パラレルリンク機構、
11,11,11,11…姿勢制御用駆動源、
12…基端側のリンクハブ、
13…先端側のリンクハブ、
14…リンク機構、
15…基端側の端部リンク部材、
16…先端側の端部リンク部材、
17…中央リンク部材、
23…軸受、
29…スペーサ、
30…シム、
31~34…回転対偶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14