(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20230510BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20230510BHJP
H02K 11/225 20160101ALI20230510BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K41/02 Z
H02K11/225
(21)【出願番号】P 2018201761
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
(72)【発明者】
【氏名】柿内 隆司
(72)【発明者】
【氏名】永溝 喜也
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-029159(JP,A)
【文献】特開2006-187079(JP,A)
【文献】特開2013-251992(JP,A)
【文献】特開平02-290152(JP,A)
【文献】特開2008-236832(JP,A)
【文献】特開2014-167320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 41/02
H02K 11/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のロッドと、
筒状であって前記ロッドの先端外周に装着されるコアと、前記コアの外周に設けられたスロットに装着される巻線とを有する電機子と、
筒状であって内方に前記電機子が軸方向へ移動自在に挿入されて軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、
前記ロッド内に挿通されて前記界磁に対する前記ロッドの位置を検知するストロークセンサとを備え、
前記ストロークセンサは、前記界磁に対して固定されて前記ロッド内に挿入される被検出子と、前記ロッド内に収容されて前記被検出子の位置を検知するセンサ本体とを有
し、
前記センサ本体は、前記ロッド内の前記電機子と径方向で対向しない範囲に収容される
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
筒状のロッドと、
筒状であって前記ロッドの先端外周に装着されるコアと、前記コアの外周に設けられたスロットに装着される巻線とを有する電機子と、
筒状であって内方に前記電機子が軸方向へ移動自在に挿入されて軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、
前記ロッド内に挿通されて前記界磁に対する前記ロッドの位置を検知するストロークセンサとを備え、
前記ストロークセンサは、前記界磁に対して固定されて前記ロッド内に挿入される被検出子と、前記ロッド内に収容されて前記被検出子の位置を検知するセンサ本体とを有し、
前記ロッドは、筒状の第一ロッドと、筒状であって外周に前記コアが装着されるとともに第一ロッドの内周に螺合される第二ロッドとを有し、
前記センサ本体は、前記第一ロッドと前記第二ロッドとで挟持されて前記ロッド内に固定されている
ことを特徴とす
る筒型リニアモータ。
【請求項3】
前記センサ本体は、前記ロッド内の前記電機子と径方向で対向しない範囲に収容される
ことを特徴とする請求項
2に記載の筒型リニアモータ。
【請求項4】
前記界磁に連結されて前記ロッド内に摺動自在に挿入されるガイドロッドを備え、
前記被検出子は、前記ガイドロッドに装着されている
ことを特徴とする請求項1
から3のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒型リニアモータは、たとえば、軸方向に並べて配置される複数のティースを外周に持つ筒型のコアとティース間のスロットに装着されるU相、V相およびW相の巻線を有する電機子と、電機子の外周に設けられた有底円筒形のヨークとヨークの内周に軸方向にS極とN極とが交互に並ぶように取付けられた複数の永久磁石とでなる固定子とを備えるものがある。
【0003】
このように構成された筒型リニアモータでは、たとえば、電機子のU相、V相およびW相の各相巻線へ120度位相をずらした正弦波電圧を印加する120度通電制御を行って電機子が永久磁石に吸引されるように通電し、電機子が可動子として固定子に対して軸方向へ駆動される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記筒型リニアモータでは、磁極に対する電機子の位置によって各相の巻線への通電タイミングを決する必要があるので、固定子に対する電機子の電気角或いは機械角をセンサで検知している。
【0006】
具体的には、従来の筒型リニアモータでは、ヨーク側に固定した磁気センサで機械角を検知するだけでなく、電機子側に設けた磁気センサで電気角を検知しており、二つの磁気センサを利用して精度よく電機子の位置を得ようとしている。
【0007】
しかしながら、従来の筒型リニアモータでは、磁気センサが電子回路でなるホールセンサを含んで構成されており、通電時に加熱する電機子の近傍に設置されているので、磁気センサが熱に曝される。よって、従来の筒型リニアモータでは、磁気センサが検知した電機子の位置についての信頼性が低下する恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、検知した電機子の位置の信頼性を向上できる筒型リニアモータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、筒状のロッドと、筒状であってロッドの先端外周に装着されるコアとコアの外周に設けられたスロットに装着される巻線とを有する電機子と、筒状であって内方に電機子が軸方向へ移動自在に挿入されて軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、ロッド内に挿通されて界磁に対するロッドの位置を検知するストロークセンサとを備え、ストロークセンサは、界磁に対して固定されてロッド内に挿入される被検出子と、ロッド内に収容されて被検出子の位置を検知するセンサ本体とを有している。
【0010】
このように構成された筒型リニアモータでは、電機子を外周に備えるロッド内にストロークセンサが収容されており、通電によって発熱する電機子および磁界を発生する界磁に対してストロークセンサが直接曝露されていない。したがって、ストロークセンサは、電機子の熱から保護されるとともに、磁界の磁界にも曝されないので、検知した電機子の位置を精度よく検知できる。
【0011】
さらに、センサ本体がロッド内の電機子と径方向で対向しない範囲に収容されるようにして筒型リニアモータを構成してもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、センサ本体と電機子とが筒型リニアモータのストローク中に径方向へ重なることが無いので、電機子の熱の影響をより一層受け辛くなり、検知した電機子の位置の信頼性をより効果的に向上できる。
【0012】
また、筒型リニアモータは、界磁に連結されてロッド内に摺動自在に挿入されるガイドロッドを備え、被検出子がガイドロッドに装着されてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、センサ本体に対して移動する被検出子がロッドの軸方向への移動を案内するガイドロッドに装着されているので、センサ本体に対する被検出子の偏心が防止されて、ストロークセンサは精度よく電機子の位置を検知できる。
【0013】
さらに、筒型リニアモータにおけるロッドは、筒状の第一ロッドと、筒状であって外周にコアが装着されるとともに第一ロッドの内周に螺合される第二ロッドとを有し、センサ本体が第一ロッドと第二ロッドとで挟持されてロッド内に固定されてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、ストロークセンサをロッド内への固定と電機子のロッドへの装着が非常に容易となるので、良好な組付性が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の筒型リニアモータによれば、検知した電機子の位置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、
図1に示すように、筒状のロッド11と、筒状であってロッド11の先端外周に装着されるコア3とコア3の外周に設けられたスロット4に装着される巻線5とを有する電機子2と、筒状であって内方に電機子2が軸方向へ移動自在に挿入されて軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、ロッド11内に挿通されて界磁6に対するロッド11の位置を検知するストロークセンサSとを備えて構成されている。
【0017】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。電機子2は、コア3と巻線5とを備えて構成されている。コア3は、円筒状のコア本体3aと、環状であってコア本体3aの外周に軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース3bとを備えて構成されて可動子とされている。
【0018】
コア3は、前述の通り筒状であって、
図1に示すように、コア本体3aの外周に軸方向に等間隔に並べて設けられた10個のティース3bを備えており、ティース3b,3b間には、巻線5が装着される空隙でなるスロット4が形成されている。また、各ティース3bは、環状であって、コア3の両端に配置されたティース3bを除いて、軸方向において内周端の幅より外周端の幅が狭い等脚台形状とされており、軸方向で両側の側面が外周端に対して等角度で傾斜するテーパ面とされている。なお、末端のティース3bは、末端のティース3b以外の他のティース3bをコア3の軸線に直交する面で半分に切り落とした断面形状とされている。このように、各ティース3bの断面形状は、内周端の幅より外周端の幅が狭い台形状とされている。
【0019】
また、本実施の形態では、
図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、空隙でなるスロット4が合計で9個設けられている。そして、このスロット4には、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。9個のスロット4には、
図1中左側から順に、W相、W相、W相およびV相、V相、V相、V相およびU相、U相、U相、U相およびW相の巻線5が装着されている。
【0020】
そして、このように構成された電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の外周に装着されている。ロッド11は、筒状の第一ロッド20と、筒状であって外周にコア3が装着されるとともに第一ロッド20の内周に螺合される第二ロッド21とを備えている。
【0021】
第一ロッド20は、筒状であって
図1中左端外周と
図1中右端内周にそれぞれ螺子部22a,22bを有するロッド本体22と、筒型リニアモータ1を機器へ取り付けるブラケット23aを有してロッド本体22の
図1中左端の螺子部22aに螺着されてロッド本体22の左端を閉塞するエンドキャップ23とを備えている。また、ロッド本体22の
図1中右端外周には、環状のスライダ25が嵌合されている。スライダ25の右端内周には、フランジ25aが設けられている。フランジ25aの内径は、ロッド本体22の内径以上であってロッド本体22の外径以下となっており、スライダ25をロッド本体22に嵌合するとフランジ25aがロッド本体22の
図1中右端面に当接する。また、ロッド11の
図1中左端側に設けられたフランジ18とスライダ25とに嵌合してロッド11の外周を覆う筒状のカバー17が設けられており、カバー17とロッド11との間には環状の空間が形成されている。
【0022】
第二ロッド21は、外周にコア3が装着される筒状のコア保持筒21aと、コア保持筒21aの
図1中右端となる先端の外周に設けられる環状のスライダ21bとを備えている。また、コア保持筒21aの
図1中左端となる基端の外周には、螺子部21cが設けられており、コア保持筒21aの基端側内周には内径が他の部位よりも大きな内径大径部21dが設けられている。そして、コア保持筒21aの基端を第一ロッド20におけるロッド本体22の
図1中右端の内周に挿入しつつ螺子部21cを螺子部22bに捩じ込むと、第一ロッド20と第二ロッド21とが連結される。
【0023】
このようにロッド11は、第一ロッド20と第二ロッド21とで構成されており、第一ロッド20内には、ストロークセンサSにおけるセンサ本体30が収容される。
【0024】
また、第二ロッド21におけるコア保持筒21aの外周には、コア3が嵌合されて装着されている。コア保持筒21aの外径は、第一ロッド20におけるロッド本体22の外径よりも小径となっているので、スライダ25を装着した第一ロッド20に電機子2を装着した第二ロッド21を前記した要領で連結すると、電機子2およびスライダ25が第一ロッド20の
図1中右端と第二ロッド21のスライダ21bとで挟み込まれて固定される。このようにロッド11に電機子2を装着すると、コア3がスライダ21bおよびスライダ25に挟まれる格好でロッド11に固定される。
【0025】
本実施の形態では、界磁6は、筒状の積層磁石体Mと、積層磁石体Mの外周に装着される円筒状の磁性体で形成されるバックヨーク8とを備えて構成されており、円筒状の非磁性体で形成されるアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に挿入される円筒状の非磁性体のインナーチューブ9との間の環状隙間内に収容されている。
【0026】
積層磁石体Mは、筒状のバックヨーク8の内周に軸方向に交互に積層されて挿入される複数の環状の主磁極となる永久磁石10aと複数の環状の副磁極となる永久磁石10bとを備えて構成されている。なお、
図1中で主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
【0027】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1は、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くなっている。主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くすれば、コア3との間の主磁極の永久磁石10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の推力を向上できる。主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2に最適な関係があり、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して98%以上の推力を確保できる。ただし、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2との関係は、前述の設定に限られない。
【0028】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、界磁6が積層磁石体Mを構成する永久磁石10a,10bの外周に筒状のバックヨーク8を備えている。バックヨーク8を設けない場合、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が短くなると主磁極の永久磁石10aの軸方向中央部分における磁石外部の磁気抵抗が増大し、界磁磁束が小さくなるため、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くする際の筒型リニアモータ1の推力向上度合が小さくなる。これに対して、永久磁石10a,10bの外周にバックヨーク8を設けると、磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2の短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くするとともに永久磁石10a,10bの外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータ1の推力を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石10aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。
【0029】
なお、副磁極の永久磁石10bは、主磁極の永久磁石10aより高い保磁力を有する永久磁石とされている。永久磁石における残留磁束密度と保磁力は、互いに密接に関係しており、一般的に残留磁束密度を高めると保磁力は低くなり、保磁力を高めると残留磁束密度が低くなるという、互いに背反する関係にある。ハルバッハ配列では、副磁極の永久磁石10bには減磁方向に大きな磁界が印加されるため、副磁極の永久磁石10bの保磁力を高くして減磁を抑制し、大きな磁界をコア3に作用させ得るようにしている。対して、コア3に対して作用する磁界の強さは、主磁極の永久磁石10aの磁力線数に左右される。そのため、主磁極の永久磁石10aに高い残留磁束密度の永久磁石を使用して大きな磁界をコア3に作用させるようにしている。本実施の形態では、副磁極の永久磁石10bを主磁極の永久磁石10aよりも保磁力を高くするのに際して、副磁極の永久磁石10bの材料を主磁極の永久磁石10aの材料よりも保磁力が高い材料としている。よって、材料の選定によって、主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bの組合せを簡単に実現できる。なお、本実施の形態では、主磁極の永久磁石10aは、ネオジム、鉄、ボロンを主成分とする残留磁束密度が高い材料で構成され、副磁極の永久磁石10bは、前記材料にジスプロシウムやテリビウム等の重希土類元素の添加量を増やした減磁しにくい磁石で構成されている。
【0030】
また、界磁6の内周側には、コア3が挿入されており、界磁6は、コア3に磁界を作用させている。なお、界磁6は、コア3の可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア3の可動範囲に応じて永久磁石10a,10bの設置範囲を決定すればよい。したがって、アウターチューブ7とインナーチューブ9との環状隙間のうち、コア3に対向し得ない範囲には、永久磁石10a,10bを設置しなくともよい。なお、バックヨーク8の長さは、永久磁石10a,10bを積層した長さと等しい長さとされており、永久磁石10a,10bがコア3のストローク範囲外に磁界を作用させて推力低下を招かないように配慮されている。
【0031】
また、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の
図1中左端は内周にロッド11が挿入される環状のヘッドキャップ15によって閉塞されている。アウターチューブ7は、
図1中右端側が縮径されていて底部7aが設けられており、底部7aの右端に筒型リニアモータ1の機器への取り付けを可能とするブラケット7bを備えている。そして、界磁6、インナーチューブ9は、ヘッドキャップ15とアウターチューブ7の底部7aとで挟み込まれてアウターチューブ7に固定されている。ヘッドキャップ15の内周には、第一ロッド20の外周を覆うカバー17の外周に摺接する環状のシール部材28が設けられており、筒型リニアモータ1内への塵や水などの侵入が防止されている。
【0032】
アウターチューブ7の底部7aの内周には、ガイドロッド16が取り付けられている。ガイドロッド16は、底部7aの内周に固定される基端部16aと、基端部16aからロッド11側へ延びてロッド11内に摺動自在に挿入されるガイド部16bとを備えており、筒型リニアモータ1が伸縮しても常にロッド11の内周に摺接している。より詳細には、ガイドロッド16のガイド部16bは、第二ロッド21の内径大径部21dよりも先端側に摺動自在に挿入されている。また、インナーチューブ9の内周には、スライダ21b,25が摺接しており、ガイドロッド16がロッド11の内周に摺接し、スライダ21b,25がインナーチューブ9に摺接しているので、電機子2はロッド11とともに界磁6に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。インナーチューブ9は、コア3の外周と各永久磁石10a,10bの内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ21b,25と協働してコア3の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、インナーチューブ9は、非磁性体で形成されればよいが、合成樹脂で形成されると筒型リニアモータ1の推力密度向上効果が高くなる。インナーチューブ9を非磁性体の金属で製造すると、電機子2が軸方向へ移動する際にインナーチューブ9の内部に渦電流が生じて、電機子2の移動を妨げる力が発生してしまう。これに対して、インナーチューブ9を合成樹脂とすれば渦電流が生じないので筒型リニアモータ1の推力をより効果的に向上できるとともに、筒型リニアモータ1の質量を低減できる。なお、インナーチューブ9を合成樹脂とする場合、フッ素樹脂で製造すればスライダ21b,25との間の摩擦および摩耗を低減できる。また、インナーチューブ9を他の合成樹脂で形成してもよく、また、摩擦および摩耗を低減するべく他の合成樹脂で形成されたインナーチューブ9の内周をフッ素樹脂でコーティングしてもよい。
【0033】
つづいて、ストロークセンサSは、本実施の形態では、線形可変差動変圧器とされており、詳しくは図示しないが、プライマリコイルと二つのセカンダリコイルとを収容した筒状のセンサ本体30と、センサ本体30内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに先端に被検出子であるセンサ用コア31を有するプローブ32とを備えて構成されている。なお、線形可変差動変圧器は、プライマリコイルへ交流電圧を印加した際に誘導される二つのセカンダリコイルの誘導電圧の差からセンサ用コア31の位置を検知する。
【0034】
センサ本体30を予め第一ロッド20内に挿入しておき、スライダ25を第一ロッド20の端部に嵌合して、第二ロッド21を第一ロッド20に螺着すると、センサ本体30は、第二ロッド21における内径大径部21dの右端に形成される段部と第一ロッド20のエンドキャップ23とで挟持されて第一ロッド20内に固定される。このように、センサ本体30は、外周に電機子2が装着されない第一ロッド20内に収容されており、ロッド11の径方向で電機子2と対向しない範囲に収容されている。
【0035】
また、ストロークセンサSにおけるプローブ32は、ロッド状であってガイドロッド16におけるガイド部16bの先端に取り付けられている。よって、被検出子としてのセンサ用コア31は、プローブ32、ガイドロッド16およびアウターチューブ7を介して界磁6に対して固定的に連結されている。プローブ32は、前述したとおり、先端にセンサ用コア31を備えていて、先端側をセンサ本体30内に挿入している。よって、電機子2が界磁6に対して軸方向へ移動するのに伴ってプローブ32がセンサ本体30に対して軸方向へ相対移動して、センサ用コア31がセンサ本体30内で移動する。
【0036】
センサ本体30を収容するロッド11内にはプローブ32を保持するガイドロッド16が摺動自在に挿入されているので、センサ本体30に対するセンサ用コア31の径方向への偏心が防止される。なお、センサ本体30のプライマリコイルへの通電用の配線およびセカンダリコイルに接続される配線は、図示はしないがエンドキャップ23に設けた孔から外部へ引き出されて図外のコントローラに接続される。
【0037】
なお、巻線5に接続されるケーブルCは、ロッド11とロッド11の外周を覆う筒状のカバー17との間の空間に収容されて、筒型リニアモータ1の外方へ引き出されており、前記コントローラによって制御される図外の駆動回路に接続されている。よって、外部の駆動回路から巻線5へ通電できるようになっている。また、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の軸方向長さは、コア3の軸方向長さよりも長く、コア3は、界磁6内の軸方向長さの範囲で
図1中左右へストロークできる。
【0038】
そして、図外のコントローラは、巻線5の界磁6に対する電気角をストロークセンサSでセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御して、筒型リニアモータ1における推力と電機子2の移動方向とを制御する。なお、前述のコントローラにおける制御方法は、一例でありこれに限られない。このように、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、電機子2が可動子であり、界磁6は固定子として振る舞う。また、電機子2と界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
【0039】
以上のように、本発明の筒型リニアモータ1は、筒状のロッド11と、筒状であってロッド11の先端外周に装着されるコア3とコア3の外周に設けられたスロット4に装着される巻線5とを有する電機子2と、筒状であって内方に電機子2が軸方向へ移動自在に挿入されて軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、ロッド11内に挿通されて界磁6に対するロッド11の位置を検知するストロークセンサSとを備え、ストロークセンサSは、界磁6に対して固定されてロッド11内に挿入されるコア(被検出子)31と、ロッド11内に収容されてコア(被検出子)31の位置を検知するセンサ本体30とを有している。このように構成された筒型リニアモータ1では、電機子2を外周に備えるロッド11内にストロークセンサSが収容されており、通電によって発熱する電機子2および磁界を発生する界磁6に対してストロークセンサSが直接曝露されていない。したがって、ストロークセンサSは、電機子2の熱から保護されるとともに、界磁6の磁界にも曝されないので、検知した電機子2の位置を精度よく検知できる。以上より、本発明の筒型リニアモータ1によれば、検知した電機子2の位置の信頼性を向上できる。
【0040】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、センサ本体30がロッド11内の電機子2と径方向で対向しない範囲に収容されている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、センサ本体30と電機子2とが筒型リニアモータ1のストローク中に径方向へ重なることが無いので、より、電機子2の熱の影響を受け辛くなり、検知した電機子2の位置の信頼性をより効果的に向上できる。
【0041】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、界磁6に連結されてロッド11内に摺動自在に挿入されるガイドロッド16を備え、コア(被検出子)31がガイドロッド16に装着されている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、センサ本体30に対して移動するセンサ用コア(被検出子)31がロッド11の軸方向への移動を案内するガイドロッド16に装着されているので、センサ本体30に対するセンサ用コア(被検出子)31の偏心が防止されて、ストロークセンサSは精度よく電機子2の位置を検知できる。
【0042】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1におけるロッド11は、筒状の第一ロッド20と、筒状であって外周にコア3が装着されるとともに第一ロッド20の内周に螺合される第二ロッド21とを有し、センサ本体30が第一ロッド20と第二ロッド21とで挟持されてロッド11内に固定されている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、ストロークセンサSをロッド11内への固定と電機子2のロッド11への装着が非常に容易となるので、良好な組付性が得られる。
【0043】
なお、ストロークセンサSは、線形可変差動変圧器に代えて、磁歪式のストロークセンサとされてもよいし、リニア型のポテンショメーターとされてもよく、いずれにしても、界磁6に固定される被検出子の位置をロッド11側に固定されるセンサ本体で検知するようにすればよい。
【0044】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1にあっては、ティース3bの断面形状は、内周端の幅より外周端の幅が狭い台形状とされているので、ティース3bの断面形状を矩形とする場合に比較して、内周端における磁路断面積が広くなる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1では、大きな磁路断面積を確保しやすくなり、巻線5を通電した際の磁気飽和を抑制でき、より大きな磁場を発生できるからより大きな推力を発生できる。なお、推力の向上のためには、ティース3bの断面形状を台形とするとよいが、断面形状を矩形としてもよいし、他の形状としてもよい。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子、3・・・コア、4・・・スロット、5・・・巻線、6・・・界磁、11・・・ロッド、16・・・ガイドロッド、20・・・第一ロッド、21・・・第二ロッド、30・・・センサ本体、31・・・コア(被検出子)、S・・・ストロークセンサ