IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エンプラスの特許一覧

<>
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図1A
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図1B
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図2
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図3A
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図3B
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図3C
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図4
  • 特許-コンタクトピンおよびソケット 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】コンタクトピンおよびソケット
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20230510BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20230510BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018226559
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020091115
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上山 雄生
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-025844(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2011-0024267(KR,A)
【文献】特開2003-167001(JP,A)
【文献】特開2010-256251(JP,A)
【文献】特開2000-241447(JP,A)
【文献】特開2010-014544(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202344(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 31/26
G01R 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に設けられた第1接触部、および、前記第1接触部よりも下側に設けられた中空の本体部を有する、第1プランジャと、
下端に設けられた第2接触部、前記第2接触部よりも上側に設けられ、かつ、前記第2接触部に向かって拡径する第1テーパ部、前記第1テーパ部よりも上側に設けられた小径部、および、前記小径部よりも上側に設けられ、かつ、前記本体部に挿入されて前記本体部の内壁面と当接する大径部を有し、前記大径部の径と前記第1テーパ部の下端における径とは互いに等しい、第2プランジャと、
前記第1接触部と前記第2接触部とが互いに離れるように付勢するバネと、を備え、
前記第1接触部と前記第2接触部とが互いに近付く際、前記第1テーパ部が前記本体部の下端と当接可能である、
コンタクトピン。
【請求項2】
前記第2プランジャは、前記小径部の上端から上方に向かって拡径する第2テーパ部を含み、前記大径部は、前記第2テーパ部の上端から上方に延出して構成され、または前記第2テーパ部の上端縁により構成される
請求項1に記載のコンタクトピン。
【請求項3】
前記第1プランジャは、前記本体部に設けられ、径方向外側に膨出する曲面形状の第1拡径部を有し、
前記第2プランジャは、前記第2接触部と前記第1テーパ部との間に設けられ、径方向外側に膨出する第2拡径部を有し、
前記バネは、前記第1拡径部と前記第2拡径部との間に配置される、
請求項1または2のいずれか一項に記載のコンタクトピン。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のコンタクトピンと、
前記コンタクトピンが挿入される貫通孔を有する支持体と、を備える、
ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ICパッケージ等の性能試験等に使用されるコンタクトピンおよびソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、従来、ICパッケージ等の電気部品を検査する際、ソケットが用いられている。このソケットは、電気部品と検査装置側の基板である検査用基板とを電気的に接続する複数のコンタクトピンを備えている。
【0003】
これらのコンタクトピンは、電気部品の端子に接触する中空の第1プランジャと、検査用基板の端子に接触し、かつ、第1プランジャに挿入される第2プランジャと、第1プランジャと第2プランジャとの間に配置され、かつ、第1プランジャと第2プランジャとが互いに離れるように付勢するコイルスプリングとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-91436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコンタクトピンは、第2プランジャがストレート形状であることから、以下のような課題がある。
【0006】
(1)第2プランジャの径を小さくすると、第1プランジャに対して第2プランジャを傾けた際に、第1プランジャの内周壁に第2プランジャの上端が噛み込み、摺動抵抗の増大が発生する。
【0007】
(2)第2プランジャの径を大きくすると、第1プランジャに対して第2プランジャが傾き難くなり、第1プランジャに対する第2プランジャの接触が不安定になり、ひいてはコンタクトピンの導電性が不安定になる。
【0008】
本開示の目的は、第1プランジャに対する第2プランジャの摺動抵抗を抑えつつ導電性を向上することができるコンタクトピンおよびこれを用いたソケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るコンタクトピンは、上端に設けられた第1接触部、および、前記第1接触部よりも下側に設けられた中空の本体部を有する、第1プランジャと、下端に設けられた第2接触部、前記第2接触部よりも上側に設けられ、かつ、前記第2接触部に向かって拡径する第1テーパ部、前記第1テーパ部よりも上側に設けられた小径部、および、前記小径部よりも上側に設けられ、かつ、前記本体部に挿入されて前記本体部の内壁面と当接する大径部を有し、前記大径部の径と前記第1テーパ部の下端における径とは互いに等しい、第2プランジャと、前記第1接触部と前記第2接触部とが互いに離れるように付勢するバネと、を備え、前記第1接触部と前記第2接触部とが互いに近付く際、前記第1テーパ部が前記本体部の下端と当接可能である、コンタクトピンである。
【0010】
本開示の一態様に係るソケットは、前記コンタクトピンと、前記コンタクトピンが挿入される貫通孔を有する支持体と、を備える、ソケットである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、第1プランジャに対する第2プランジャの摺動抵抗を抑えつつ導電性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、実施形態に係るコンタクトピンを示す斜視図である。
図1B図1Bは、実施形態に係るコンタクトピンを示す部分断面図である。
図2図2は、コンタクトピンおよびソケットを示す図である。
図3A図3Aは、実施形態の作用効果を説明するための模式的な断面図である。
図3B図3Bは、実施形態の作用効果を説明するための模式的な断面図である。
図3C図3Cは、実施形態の作用効果を説明するための模式的な断面図である。
図4図4は、第一変形例に係るコンタクトピンを示す部分断面図である。
図5図5は、第二変形例に係るコンタクトピンを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本開示はこの実施形態により限定されるものではない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0014】
なお、以下の実施形態では、便宜的に、コンタクトピンは、第1プランジャが上側に配置され、第2プランジャが下側に配置されているものとして説明を行う。ただし、コンタクトピンおよびソケットの配置がそのような配置に限られないことはいうまでもない。
【0015】
(コンタクトピン)
図1Aおよび図1Bを参照して、本実施形態に係るコンタクトピン1について説明する。図1Aは、実施形態に係るコンタクトピン1の斜視図である。図1Bは、実施形態に係るコンタクトピン1の部分断面図である。コンタクトピン1は、第1プランジャ11と、第2プランジャ12と、コイルスプリング13(「バネ」の一例)とを備える。
【0016】
第1プランジャ11は、略円筒状の中空部材である。第2プランジャ12は、略円柱状の中実部材である。第2プランジャ12は、下方から第1プランジャ11に挿入され、第1プランジャ11の軸線L1に沿って(又は、ほぼ軸線L1に沿って)第1プランジャ11に対して進退可能となっている。第1プランジャ11と第2プランジャ12とはそれぞれ導電性の素材により形成されている。
【0017】
(第1プランジャ)
第1プランジャ11の上端には、後述のICパッケージの半田ボールと接触する接触部11a(「第1接触部」の一例)が設けられている。本実施形態では、接触部11aは、先端の尖った複数の切片によって構成されている。すなわち、接触部11aは、王冠状である。
【0018】
接触部11aよりも下側には、中空の本体部11bが設けられている。本体部11bには、径方向外側に(軸線L1から離れる方向に)膨出する曲面形状の膨出部11c(「第1拡径部」の一例)が設けられている。本実施形態では、膨出部11cは、中空の球体の上部および下部をそれぞれ水平に切断した形状を呈する。
【0019】
また、第1プランジャ11は、その上部、詳しくは膨出部11cと接触部11aとの間であって接触部11aよりも僅かに下側に、蓋部11dを備える。接触部11aが接触することで半田ボールから削り取られた切削屑が、この蓋部11dによって下方に入り込むことが防止される。
【0020】
これにより、第1プランジャ11と第2プランジャ12との隙間に入り込んだ切削屑によって第1プランジャ11と第2プランジャ12との相対的な移動が阻害されることが防止される。蓋部11dは、第1プランジャ11の本体部11bの一部に略円形の切り込みを入れ、この切り込みに囲まれた切片を径方向内側に(軸線L1に近付く方向に)折り込むことによって形成される。
【0021】
第1プランジャ11は、板材を、それぞれ鉛直方向(上下方向)に延在する第1端縁と第2端縁とを突き合わせるように円筒状に丸めて製作される。図1Aおよび図1Bにおける符合11eは、第1端縁と第2端縁との突き合わせ部である。なお、図1Bは、コンタクトピン1を、この突き合わせ部11eを通る鉛直面で切断した断面図である。また、膨出部11cは当該板材をプレス加工することで形成され、膨出部11cにおいては外壁面と内壁面11fとが共に径方向外側に膨出する。
【0022】
(第2プランジャ)
第2プランジャ12の下端には、後述の検査用基板の端子と接触するテーパ状の接触部12a(「第2接触部」の一例)が設けられている。この接触部12aは、下方に尖った円錐を斜めに切断したような形状をしている。これにより、接触部12aの先端12b、すなわち検査用基板の端子との接触点が、第2プランジャ12の軸線L2から離れて位置している。
【0023】
接触部12aよりも上側には、径方向外側に(軸線L2から離れる方向に)膨出する鍔部12c(「第2拡径部」の一例)が設けられている。コイルスプリング13は、第1プランジャ11の膨出部11cと第2プランジャ12の鍔部12cとの間に配置される。
【0024】
鍔部12cよりも上側には、テーパ部12d(「第1テーパ部」の一例)が設けられている。テーパ部12dは、鍔部12cの上端から上方に延出した大径の円柱部の上端から、上方に向かって徐々に縮径している。換言すると、テーパ部12dは、接触部12aに向かって拡径している。
【0025】
テーパ部12dよりも上側には、テーパ部12e(「第2テーパ部」の一例)が設けられている。テーパ部12eは、テーパ部12dの上端から上方に延出した小径の円柱部の上端から、上方に向かって徐々に拡径している。換言すると、テーパ部12eは、接触部12aに向かって縮径している。
【0026】
テーパ部12eよりも上側には、円柱状の大径部12fが設けられている。大径部12fは、テーパ部12eの上端から上方に延出している。大径部12fの径は、テーパ部12dの下端における径と等しい。また、大径部12fの径は、テーパ部12eの上端における径と等しい。
【0027】
(ソケット)
図2を参照して、本実施形態に係るソケット100について説明する。図2は、実施形態におけるコンタクトピン1およびソケット100の断面図である。図2では、便宜的に、ソケット100の異なる状態を横に並べて示している。ソケット100は、コンタクトピン1と、フローティングプレート2と、ハウジング3とを備える。
【0028】
ソケット100に接続されるICパッケージ200の下面には、端子である半田ボール201がマトリクス状に複数配置される。コンタクトピン1は、この半田ボール201の配置に一致するように、マトリクス状に複数配置される。
【0029】
フローティングプレート2には、フローティングプレート2を鉛直方向(上下方向)に貫通する貫通孔20が複数設けられている。各貫通孔20の配置は、半田ボール201の配置およびコンタクトピン1の配置と一致している。また、各貫通孔20の水平断面は、円形を呈する。
【0030】
ハウジング3(「支持体」の一例)には、ハウジング3を鉛直方向(上下方向)に貫通する貫通孔30が複数設けられている。各貫通孔30の配置は、半田ボール201の配置およびコンタクトピン1の配置と一致している。また、各貫通孔30の水平断面は、円形を呈する。
【0031】
このようなフローティングプレート2およびハウジング3の構成により、各コンタクトピン1は、半田ボール201の配置にあわせて、鉛直方向に並ぶ貫通孔20と貫通孔30とに挿通されている。
【0032】
また、貫通孔30は、上側の小径部30aと、下側の小径部30bと、小径部30aと小径部30bとの間に形成された大径部30cとにより構成されている。
【0033】
小径部30aの内径は、第1プランジャ11の膨出部11cの最大外径、第2プランジャ12の鍔部12cの最大外径、および、コイルスプリング13の最大外径より小さい。また、小径部30bの内径は、小径部30aの内径と等しい。
【0034】
大径部30cの内径は、第1プランジャ11の膨出部11cの最大外径、第2プランジャ12の鍔部12cの最大外径、および、コイルスプリング13の最大外径よりも僅かに大きい。
【0035】
第1プランジャ11の膨出部11cよりも上側の部分(接触部11aを含む)の最大外径は、小径部30aの内径およびフローティングプレート2の貫通孔20の内径よりも小さい。これにより、第1プランジャ11の膨出部11cよりも上側の部分は、小径部30aおよびフローティングプレート2の貫通孔20を貫通して、フローティングプレート2の上面よりも上方に突出可能となっている。
【0036】
第2プランジャ12の鍔部12cよりも下側の接触部12aの最大外径は、小径部30bの内径よりも小さい。これにより、第2プランジャ12の接触部12aは、小径部30bを貫通して、ハウジング3の下面よりも下方に突出可能となっている。
【0037】
これにより、コンタクトピン1がハウジング3の貫通孔30から抜け止めされつつ、貫通孔30内において、コイルスプリング13が伸縮可能に、かつ、第2プランジャ12が第1プランジャ11の下方から進退可能になっている。
【0038】
(ソケットの状態)
図2では、コンタクトピン1毎に、ソケット100の異なる状態が示されている。以下、各状態について、図2において左から順に説明する。
【0039】
左から一番目は、コンタクトピン1に対して外力の作用していない自然状態、すなわち、コイルスプリング13が伸張し、ひいてはコンタクトピン1が伸張した状態である。この状態では、第2プランジャ12は、鍔部12cが貫通孔30の小径部30bと大径部30cとの段差に当接して下方から支持され、接触部12aがハウジング3の下面から突出する。
【0040】
左から二番目は、コンタクトピン1が検査用基板300により全体的に押し上げられている状態である。具体的には、第2プランジャ12の接触部12aと検査用基板300の端子301とが接触し、コンタクトピン1は、第1プランジャ11の膨出部11cの上部が貫通孔30の小径部30aと大径部30cとの段差に当接するまで、上方に押し上げられている。この状態では、コイルスプリング13は僅かに圧縮される。
【0041】
左から三番目は、コンタクトピン1が検査用基板300によりさらに押し上げられている状態である。具体的には、検査用基板300の上面が、ハウジング3の下面に接触している。
【0042】
この状態では、第2プランジャ12が第1プランジャ11にさらに挿入され、コイルスプリング13が圧縮されている。また、この状態では、ICパッケージ200がフローティングプレート2に載置されているが、半田ボール201は、コンタクトピン1の接触部11aに接触していない。なお、図2に示すように、ICパッケージ200がフローティングプレート2に載置された状態で、ICパッケージ200の下面に設けられた半田ボール201と、フローティングプレート2との間には、鉛直方向(上下方向)の隙間が生じている。
【0043】
左から四番目は、ICパッケージ200の検査時の状態である。この状態では、第1プランジャ11が半田ボール201により下方に押し込まれ、コイルスプリング13がさらに圧縮されている。
【0044】
このとき、第2プランジャ12と検査用基板300の端子301との間には、コイルスプリング13から発生する反発力が、第2プランジャ12と検査用基板300の端子301との間にプリロードとして作用している。
【0045】
(作用・効果)
図3A図3Cを参照して、本実施形態の作用効果について説明する。図3A図3Cは、実施形態の作用効果を説明するための模式的な断面図である。図3Aは、図2における左から一番目の状態を示している。図3Bは、図2における左から三番目の状態を示している。図3Cは、図2における左から四番目の状態を示している。
【0046】
上述のとおり、貫通孔30の大径部30cの内周面と、コイルスプリング13との間には、隙間が設けられている。そのため、図3Aに示す状態から図3Bに示す状態になるまでの間、コイルスプリング13は当該隙間を蛇行しながら縮む。
【0047】
コイルスプリング13が貫通孔30の大径部30cの内周面との隙間を蛇行しながら縮むことで、第2プランジャ12は、第1プランジャ11に対して傾いた状態となり、第1プランジャ11の内壁面11fと当接する(図3B)。
【0048】
本実施形態では、第2プランジャ12は、第1プランジャ11の内壁面11fと当接する大径部12fを有しており、大径部12fよりも下側には、下方に向かって縮径するテーパ部12eが設けられている。
【0049】
これにより、第2プランジャ12が第1プランジャ11に対して僅かに傾いた状態で、第2プランジャ12の大径部12fを第1プランジャ11の内壁面11fに当接させることができる。そのため、第2プランジャ12が第1プランジャ11の内壁面11fに対して噛み込むのを抑制することができる。
【0050】
そのため、第1プランジャ11の内壁面11fに対して第2プランジャ12の大径部12fを安定して接触させることができる。よって、第1プランジャ11と第2プランジャ12との間の電気抵抗値を安定させ、ひいてはコンタクトピン1の導電性を向上させることができる。
【0051】
図3Bに示す状態から、さらにICパッケージ200を押し下げていくと、第2プランジャ12の大径部12fが第1プランジャ11の内壁面11fに当接した状態を維持したまま、第1プランジャ11の接触部11aと第2プランジャ12の接触部12aとが互いに近付く。
【0052】
第2プランジャ12はテーパ部12dを有しているため、テーパ部12dの下方ほど、テーパ部12dと第1プランジャ11の下端11gとの隙間が小さくなる。そのため、第1プランジャ11の接触部11aと第2プランジャ12の接触部12aとが互いに近付くことで、第1プランジャ11に対して第2プランジャ12をあまり傾けなくても、第2プランジャ12のテーパ部12dを第1プランジャ11の下端11gに当接させることができる。
【0053】
第2プランジャ12のテーパ部12dが第1プランジャ11の下端11gに当接することで、第1プランジャ11と、第2プランジャ12とは、2点接触状態となる。よって、第1プランジャ11に対して第2プランジャ12をより安定して接触させることができる。
【0054】
また、第2プランジャ12にテーパ部12dが設けられていることで、第1プランジャ11に対する第2プランジャ12の挿入長さが変化しても、第1プランジャ11と第2プランジャ12とが2点で接触した状態を維持することができる。そのため、第1プランジャ11に対して第2プランジャ12を移動させる際の接触安定性が向上する。また、第1プランジャ11と第2プランジャ12とを2点で接触させることで、コンタクトピン1の導電性を向上させることができる。
【0055】
また、第2プランジャ12はテーパ部12dを有しているため、テーパ部12dと第1プランジャ11の下端11gとの当接部に、横向きの荷重を発生させることができる。そのため、第1プランジャ11に対する第2プランジャ12の接触圧を安定させることができ、ひいてはコンタクトピン1の導通性を向上させることができる。
【0056】
また、第2プランジャ12は大径部12fからテーパ状に縮径しているため、第2プランジャ12の大径部12fが第1プランジャ11の内壁面11fを押圧するのに起因して大径部12fよりも下の部分に掛かる応力を緩和することができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1プランジャ11の膨出部11cは湾曲形状をしており、コイルスプリング13の上端から上方に向かって徐々に拡径する形状となっている。そのため、コイルスプリング13と膨出部11cとのフィット性が向上する。
【0058】
さらに、膨出部11cは、湾曲形状をしているので、大径部30cの内周面との接触面積を小さくすることができる。そのため、第1プランジャ11は、コイルスプリング13の蛇行に追従して鉛直方向に対して傾き易く、ひいては、第1プランジャ11が、第2プランジャ12に対して傾き易くなる。
【0059】
この結果、第1プランジャ11の内壁面11fに対する第2プランジャ12の大径部12fの接触圧を、より高めることができる。そのため、第1プランジャ11と第2プランジャ12との間の電気抵抗値をより安定させ、ひいてはコンタクトピン1の導電性をより向上させることができる。
【0060】
また、コイルスプリング13の蛇行に対する第1プランジャ11の追従性が向上するとともに、膨出部11cと大径部30cの内壁面との接触面積が小さくなることで、第1プランジャ11が貫通孔30内をより滑らかに移動するようになる。そのため、コンタクトピン1の移動性を向上させることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、図1Bに示すように、第2プランジャ12の接触部12aの先端12bが、軸線L2から離れて位置している。そのため、第2プランジャ12は、検査用基板300によって上方に押し上げられた際に、鉛直方向に対して傾き易くなる。
【0062】
また、第2プランジャ12が鉛直方向に対して傾いたとき、第1プランジャ11は、第2プランジャ12によって下部が押圧されるため、第2プランジャ12とは逆方向に傾く。これにより、第1プランジャ11の内壁面11fに対する第2プランジャ12の大径部12fの接触圧を、一層高めることができる。そのため、第1プランジャ11と第2プランジャ12との間の電気抵抗値を一層安定させ、ひいてはコンタクトピン1の導電性を一層向上させることができる。
【0063】
(第一変形例)
図4を参照して、コンタクトピンの第一変形例について説明する。第一変形例は、上述の実施形態と共通する構成を有している。共通する構成については説明を省略する。図4は、第一変形例に係るコンタクトピン1Aの部分断面図である。
【0064】
第2プランジャ12Aの下端には、接触部12aが設けられている。接触部12aよりも上側には、鍔部12cが設けられている。鍔部12cよりも上側には、テーパ部12dが設けられている。テーパ部12dの上側には、テーパ部12eが設けられている。
【0065】
第一変形例では、テーパ部12eの上端縁が、大径部12gを構成する。大径部12gの径は、テーパ部12dの下端における径と等しい。
【0066】
第一変形例によれば、大径部12gが、テーパ部12eの上端縁により構成されているため、円柱状の大径部12fを有するものに比べて、第1プランジャ11に対して第2プランジャ12をより傾け易くすることができる。
【0067】
(第二変形例)
図5を参照して、コンタクトピンの第二変形例について説明する。第二変形例は、上述の実施形態と共通する構成を有している。共通する構成については説明を省略する。図5は、第二変形例に係るコンタクトピン1Bの部分断面図である。
【0068】
第2プランジャ12Bの下端には、接触部12aが設けられている。接触部12aよりも上側には、鍔部12cが設けられている。鍔部12cよりも上側には、テーパ部12dが設けられている。テーパ部12dの上側には、円柱状の小径部12hが設けられており、小径部12hの上側に、大径部12fが設けられている。
【0069】
第二変形例によれば、大径部12fとテーパ部12dとが円柱状の小径部12hで接続されているため、大径部12fとテーパ部12dとをテーパ部12dで接続するのに比べて、抵抗値を低減させることができる。
【0070】
(その他の変形例)
上述の実施形態では、第1プランジャを、板材を丸めて制作されるものとしたが、第1プランジャの制作方法はこれに限定されない。例えば第1プランジャを、棒材に機械加工を施して制作されるものとしてもよい。この場合、膨出部においても内周壁をストレート形状としてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、膨出部を、球体の上部および下部をそれぞれ水平に切断した形状としたが、膨出部の形状はこれに限定されない。例えば膨出部を、鉛直方向に長い楕円体又水平方向に長い楕円体の上部および下部を切断したような形状としてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、コンタクトピンおよびソケットを、ICパッケージの検査用に適用したが、本開示のコンタクトピンおよびソケットは、これに限られるものではなく、他の電気部品の種々の用途に適用できる。
【0073】
また、上述の実施形態では、コイルスプリングを、第1プランジャの膨出部と第2プランジャの鍔部との間に配置されるものとしたが、コイルスプリングの配置はこれに限定されない。例えばコイルスプリングを、第1プランジャの本体部の内部に配置し、第2プランジャの上端を押圧するものとしてもよい。さらに、コイルスプリングは圧縮バネには限定されず、引っ張りバネとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示は、電気部品と配線基板とを電気的に接続するためのコンタクトピンおよびソケットに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1、1A、1B コンタクトピン
2 フローティングプレート
3 ハウジング
11 第1プランジャ
11a 接触部
11b 本体部
11c 膨出部
11d 蓋部
11e 突き合わせ部
11f 内壁面
11g 下端
12、12A、12B 第2プランジャ
12a 接触部
12b 先端
12c 鍔部
12d テーパ部
12e テーパ部
12f 大径部
12g 大径部
12h 小径部
13 コイルスプリング
20 貫通孔
30 貫通孔
30a 小径部
30b 小径部
30c 大径部
100 ソケット
200 ICパッケージ
201 半田ボール
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5