(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】増粘特性及び懸濁特性を有するコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 220/06 20060101AFI20230510BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C08F220/06
C08F220/18
(21)【出願番号】P 2018554026
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(86)【国際出願番号】 FR2017051396
(87)【国際公開番号】W WO2017207945
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-20
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513197585
【氏名又は名称】コアテツクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャンパーニュ,クレモンティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】シュオー,ジャン-マルク
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-251846(JP,A)
【文献】特開平03-164784(JP,A)
【文献】特開平03-015070(JP,A)
【文献】特開平03-164783(JP,A)
【文献】特開平03-001145(JP,A)
【文献】特開昭62-174703(JP,A)
【文献】米国特許第04777116(US,A)
【文献】特表2016-503086(JP,A)
【文献】FERRET, Nicolas et al.,Acryloxy and Methacryloxy Palladiation of Alkenes,Journal of the Chemical Society, Chemical Communications,1994年,22,2589-2590,DOI:10.1039/C39940002589
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、
(b)C
1-C
8アルキルアクリレート、C
1-C
8アルキルメタクリレート、C
1-C
8アルキルマレエート、C
1-C
8アルキルイタコネート、C
1-C
8アルキルクロトネート、C
1-C
8アルキルシンナメート及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー、及び
(c)式(I):
【化1】
[式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、又は-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す]
の少なくとも1つのモノマー
の重合反応によって得られるコポリマー(P1)。
【請求項2】
・アニオン性モノマー(a)が、重合性ビニル官能基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むアニオン性モノマーである、又は
・モノマーの総モル量に対して少なくとも20mol%のアニオン性モノマー(a)を使用する重合反応によって得られる、
請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
・疎水性非イオン性モノマー(b)が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びこれらの混合物から選択されるモノマーである、又は
・モノマーの総モル量に対して30~80mol%の疎水性非イオン性モノマー(b)を使用する重合反応によって得られる、
請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
・モノマーの総モル量に対して0.01mol%以上、かつ、5mol%未満のモノマー(c)を使用する重合反応によって得られる、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
・重合性ビニル官能基及びC
12-C
36炭化水素系鎖を含むモノマー(d1)並びに
・重合性ビニル官能基、C
12-C
36炭化水素系鎖、及び1~150個のアルキレンオキシ基を含むモノマー(d2)、から選択される、重合性ビニル官能基及び少なくとも12個の炭素原子を含む炭化水素系鎖を含み、かつ、モノマー(b)と異なる少なくとも1つの非イオン性モノマー(d)を同様に使用する重合反応によって得られる、請求項1から4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩と、
・不飽和であるアクリル酸のテロマーと、
・式(III):
【化2】
[式中、
・R
3、R
4及びR
5が、同一であっても又は異なってもよく、独立に、H又はCH
3を表し、及び
・rが、独立に、1、2又は3を表す]
のモノマーと、
・式(IV):
【化3】
[式中、
・R
6、R
7及びR
8が、同一であっても又は異なってもよく、独立に、H又はCH
3を表し、
・R
9が、H又はCH
3を表し、
・L
2が、独立に、直接結合又はO、C(=O)O、CH
2CH
2及びCH
2から選択される基を表し、及び
・L
3が、独立に、直接結合又は1~150個のアルキレンオキシ基を表す]
のモノマーと
から選択される、モノマー(a)及びモノマー(b)と異なる少なくとも1つのイオン性又は非イオン性モノマー(e)を同様に使用する重合反応によって得られる、請求項1から5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
式(V):
【化4】
[式中、
・R
10が、独立に、H又はCH
3を表し、
・L
4が、独立に、直鎖状又は分岐状のC
1-C
20アルキレン基を表し、
・tが、独立に、0又は1~30の範囲の整数を表す]
の化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1つの他のモノマー(f)を同様に使用する重合反応によって得られる、請求項1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
・式(I):
【化5】
[式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、又は-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す]
の化合物と、
・式(I-A):
【化6】
[式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、又は-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す]
の化合物と、
・式(I-B):
【化7】
[式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、又は-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す]
の化合物と
から選択されるモノマーの総モル量に対して0.01mol%以上、かつ、5mol%未満の少なくとも1つのモノマーの、コポリマーの製造のための使用。
【請求項9】
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、
(b)C
1-C
8アルキルアクリレート、C
1-C
8アルキルメタクリレート、C
1-C
8アルキルマレエート、C
1-C
8アルキルイタコネート、C
1-C
8アルキルクロトネート、C
1-C
8アルキルシンナメート及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー、及び
(c)
・式(I):
【化8】
[式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、又は-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す]
の化合物と、
・式(I-A):
【化9】
[式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、又は-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す]
の化合物と、
・式(I-B):
【化10】
[式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、又は-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す]
の化合物と
から選択される少なくとも1つのモノマー
の重合反応によって得られるコポリマー(P1)を製造するための方法(1)。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載のコポリマー(P1)
である第1のコポリマー(P1)を準備し、当該第1のコポリマー(P1)に、請求項9に記載の重合反応によって
第2のコポリマー(P1)を重合させて得られるコポリマー(P2)を製造するための方法(2)。
【請求項11】
請求項10に記載の方法(2)によって得られるコポリマー(P2)。
【請求項12】
第1のコポリマー(P1)と
第2のコポリマー(P
1)との重量比が、45対55~95対5の間である、請求項11に記載のコポリマー(P2)。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマー(P1)又は請求項11又は12に記載の少なくとも1つのコポリマー(P2)を含む、水性組成物。
【請求項14】
・請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマー(P1)又は
・請求項11若しくは12に記載の少なくとも1つのコポリマー(P2)又は
・請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマー(P1)及び請求項11若しくは12に記載の少なくとも1つのコポリマー(P2)又は
・請求項13に記載の少なくとも1つの水性組成物
を含む、化粧用組成物。
【請求項15】
pHが、3~9の範囲である、請求項14に記載の化粧用組成物。
【請求項16】
・請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマー(P1)又は
・請求項11若しくは12に記載の少なくとも1つのコポリマー(P2)又は
・請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマー(P1)及び請求項11もしくは12に記載の少なくとも1つのコポリマー(P2)
の、請求項13に記載の水性組成物の製造のための、又は請求項14又は15に記載の化粧用組成物の製造のための使用
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レオロジー調整剤を含む水性組成物の製造の分野に関し、特に、改善された増粘特性及び清澄度特性並びに良好な懸濁特性を有する水性化粧用組成物又は水性洗剤組成物の製造に関する。
【0002】
特に、本発明は、少なくとも1つの架橋形成用モノマーと、少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー及び少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマーとの重合によって得られるコポリマーである、レオロジー調整剤に関する。
【背景技術】
【0003】
増粘剤又は粘度作用物質としても知られたレオロジー調整剤は公知である。一般に、レオロジー調整剤は、清浄化用組成物、例えばケア用組成物若しくは個人衛生用組成物、特に化粧用組成物中に存在し、又は家庭用品用組成物、特に洗剤製品中に存在する。これらの組成物は通常、界面活性剤化合物に富んでいる。
【0004】
これらの作用物質は、配合物のレオロジー特性、特に粘度及び清澄度等の光学的又は美観的特性に影響する。これらの作用物質は、配合物中に粒子を懸濁させる又は配合物中で粒子を安定化させる能力にも影響する。
【0005】
水性配合物中に一般的に使用されるレオロジー調整剤の中でも特に、アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性コポリマー(アルカリ可溶性エマルション又はアルカリ膨潤性エマルションであるASEというポリマー)を挙げることができる。疎水性修飾アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性コポリマー(疎水性修飾アルカリ可溶性エマルション又は疎水性修飾アルカリ膨潤性エマルションであるHASEというポリマー)を挙げることもできる。
【0006】
レオロジー調整剤としてASEコポリマー又はHASEコポリマーを含む水性組成物も、公知である。
【0007】
これらの水性組成物に関しては、幅広いpH範囲において特性又は性能レベルを改善することが特に求められている。特に、高い清澄度、増粘効果に関する良好な特性及び良好な懸濁特性を有する水性組成物を得ることが求められている。
【0008】
粘度の制御及び透明な連続相の形態で水性組成物を得ることは、特に幅広いpH範囲において、特に求められている。
【0009】
したがって、水性組成物の特性及び性能レベルを、酸性pH値と中性又は塩基性pH値との両方において実用化しなければならない。
【0010】
水性組成物は、当該水性組成物が粒子を連続相に懸濁した状態に保つことができる場合、良好な懸濁特性又は良好な懸濁能力を有する。この懸濁能力は、安定な水性組成物、例えば、貯蔵されているときに安定な水性組成物を得るために、長期にわたって持続することが可能でなければならない。
【0011】
一般に、懸濁特性は、レオロジー調整剤を含む水性組成物の弾性係数G’の値及びTan(δ)の値の測定を可能にする実用的な懸濁試験の適用によって評価される。
【0012】
一般に、水性組成物の連続相中に懸濁すべき粒子は、中空でない又は中空の固体物質である。これらの懸濁すべき粒子は、水性組成物の連続相と混和しない液体状要素であってもよいし、又は、異なる最終的な形状、質感、構造、組成、色及び特性によって特徴付けることができるカプセル化された物質若しくは気体状物質であってもよい。
【0013】
指摘として、はく離による粒子、例えばポリエチレン粒子、砕いた果物の殻、軽石を挙げることができる。栄養のある粒子、例えばコラーゲン球体及び真珠光沢のある粒子(nacreous particle)、例えばマイカチタン、グリコールジステアレート又は任意選択的に着色される美観的粒子、例えば気泡、フレーク、顔料を挙げることもできる。
【0014】
通常、懸濁すべき粒子は、サイズが非常に多様であり得る。例えば、気泡は、1mm、2mm又は3mmのサイズを有し得る。
【0015】
水性組成物の清澄度は、一般に百分率として表される透過率の測定によって評価することができる。ある組成物は、当該組成物が500nmの波長において少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、さらにより好適には少なくとも80%の透過率を有する場合、透明であると考えられる。
【0016】
文献FR3000085は、透明な連続相中に懸濁した状態の粒子を含む、シャワージェルのための水性組成物の製造を開示している。使用される架橋形成用化合物は、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)又はトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP-TMA)である。文献FR1363955及びFR1329008は、α,β-エチレン性脂肪族カルボン一酸と、ホモペリリルアルコールとのエステルの製造を記述している。Acryloxy and methacryloxy palladation of alkenesという題名のFerretらの論文は、ペリリル誘導体を含むアルケンによるアクリレート又はメタクリレートからの製造の方法を開示している。
【0017】
従来技術のレオロジー調整剤及び従来技術のレオロジー調整剤を含む従来技術の水性組成物は、常に満足なものであるとは限らず、これらの数多くの所望される特性に関連付けられた課題に帰結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】仏国特許出願公開第3000085号明細書
【文献】仏国特許出願公開第1363955号明細書
【文献】仏国特許出願公開第1329008号明細書
【非特許文献】
【0019】
【文献】Ferretら、Acryloxy and methacryloxy palladation of alkenes
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、当業者には、改善された特性、特に水性組成物中に存在する特性を有するレオロジー調整剤を利用可能にする必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、従来技術のレオロジー調整剤に伴って遭遇する課題のすべて又は一部の解決法の提供を可能にする。
【0022】
したがって、本発明は、
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー及び(c)式(I):
【0023】
【化1】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の少なくとも1つのモノマー
の重合反応によって得られるコポリマー(P1)を提供する。
【0024】
好ましくは、本発明によれば、モノアルコキシ化基又はポリアルコキシ化基は、1つ以上のアルコキシ基、特にオキシエチレン基若しくはオキシプロピレン基又はその組合せを含む。このような数は、1~50の範囲、好ましくは1~10の範囲であり得、オキシエチレン基若しくはオキシプロピレン基又はその組合せである。
【0025】
本発明によれば、重合反応中において、モノマーは、別々に導入することもできるし、又は、これらのモノマーの1種以上の混合物の形態で導入することもできる。好ましくは、モノマーは、混合物の形態で導入される。
【0026】
好ましくは、本発明によれば、アニオン性モノマー(a)は、重合性ビニル官能基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むアニオン性モノマーである。より好ましくは、アニオン性モノマー(a)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、マレイン酸塩、イタコン酸塩、クロトン酸塩、ケイ皮酸塩及びこれらの混合物から選択されるモノマーである。
【0027】
より好ましくは、本発明によれば、アニオン性モノマー(a)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸塩及びこれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、本発明によれば、アニオン性モノマー(a)は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物から選択される。さらに特段に好ましいモノマー(a)は、メタクリル酸である。
【0028】
同様に好ましくは、本発明によれば、アニオン性モノマー(a)は、モノマーの総モル量に対して少なくとも20mol%、好ましくは25~60mol%、特に30~55mol%の量で使用される。
【0029】
好ましくは、本発明によれば、疎水性非イオン性モノマー(b)は、重合性ビニル官能基を含む疎水性非イオン性モノマーである。
【0030】
有利には、疎水性非イオン性モノマー(b)は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリル酸ニトリル及びメタクリル酸ニトリルから選択され、又はアクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン及びジイソブチレンから選択される。
【0031】
好ましくは、疎水性非イオン性モノマー(b)は、C1-C8アルキルアクリレート、C1-C8アルキルメタクリレート、C1-C8アルキルマレエート、C1-C8アルキルイタコネート、C1-C8アルキルクロトネート、C1-C8アルキルシンナメート及びこれらの混合物、好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びこれらの混合物から選択される。特に好ましくは、疎水性非イオン性モノマー(b)は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びこれらの混合物から選択される。さらに特段に好ましい疎水性非イオン性モノマー(b)は、エチルアクリレートである。
【0032】
同様に好ましくは、本発明によれば、疎水性非イオン性モノマー(b)は、モノマーの総モル量に対して30~80mol%、好ましくは35~75mol%、より好適には45~70mol%の量で使用される。
【0033】
特に好ましくは、コポリマー(P1)は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物から選択されるアニオン性モノマー(a)、好適にはメタクリル酸並びにメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びこれらの混合物から選択される疎水性非イオン性モノマー(b)、好適にはエチルアクリレートから製造することができる。
【0034】
モノマー(a)及び(b)に加えて、本発明によるコポリマー(P1)の製造は、少なくとも1つの式(I)のモノマーを使用する。この式(I)のモノマーは、性質が異なる少なくとも2つの重合性エチレン性不飽和を含む。式(I)のモノマーは、有利には、架橋形成用モノマーである。特に本質的に、式(I)のモノマーは、2つの重合性エチレン性不飽和が、特定の架橋特性を式(I)のモノマーに付与する異なる特性を有する、架橋形成用モノマーである。
【0035】
好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、式(I-A):
【0036】
【化2】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の化合物である。
【0037】
より好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、式(I-A)(式中、
・Lが、CH2を表し、
・Rが、-C(H)=CH2、-C(CH3)=CH2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH3、-C(=CH2)CH2C(O)OH、-CH2C(=CH2)C(O)OHを表す。)
の化合物である。
【0038】
同様により好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、式(I-A):(式中、
・Lが、モノアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2を表し、
・Rが、Q3OQ4OC(O)C(CH3)=CH2又はQ3OQ4OC(O)C(H)=CH2を表し、
・Q3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q4が、CH2、CH2-CH2、モノアルコキシ化CH2、モノアルコキシ化CH2-CH2、ポリアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2-CH2を表す。)
の化合物である。
【0039】
したがって、本発明は、
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー及び
(c)式(I-A):
【0040】
【化3】
(式中、Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、
-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表す。)
の少なくとも1つのモノマー
の重合反応によって得られるコポリマー(P1)を提供する。
【0041】
特に好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、
・式(I-A)(式中、Lが、CH2を表し、Rが、
-C(H)=CH2を表す。)の化合物(c1)と、
・式(I-A)(式中、Lが、CH2を表し、Rが、
-C(CH3)=CH2を表す。)の化合物(c2)と
から選択される化合物である。
【0042】
同様に好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、式(I-B):
【0043】
【化4】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の化合物である。
【0044】
より好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、式(I-B)(式中、
・Lが、CH2を表し、
・Rが、-C(H)=CH2、-C(CH3)=CH2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH3、-C(=CH2)CH2C(O)OH、-CH2C(=CH2)C(O)OH、Q3OQ4OC(O)C(CH3)=CH2又はQ3OQ4OC(O)C(H)=CH2を表し、
・Q3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q4が、CH2、CH2-CH2、モノアルコキシ化CH2、モノアルコキシ化CH2-CH2、ポリアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2-CH2を表す。)
の化合物である。
【0045】
同様により好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、式(I-B)(式中、
・Lが、モノアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2を表し、
・Rが、-C(H)=CH2、-C(CH3)=CH2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH3、-C(=CH2)CH2C(O)OH、-CH2C(=CH2)C(O)OH、Q3OQ4OC(O)C(CH3)=CH2又はQ3OQ4OC(O)C(H)=CH2を表し、
・Q3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q4が、CH2、CH2-CH2、モノアルコキシ化CH2、モノアルコキシ化CH2-CH2、ポリアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2-CH2を表す。)
の化合物である。
【0046】
同様に好ましくは、本発明によれば、モノマー(c)は、モノマーの総モル量に対して5mol%未満、好ましくは0.01~5mol%、より好適には0.02~4mol%若しくは0.02~2mol%又は0.04~0.5mol%の量で使用される。
【0047】
これらの本発明による式(I)、(I-A)又は(I-B)の化合物は、温度が一般に50℃~250℃の間であり、ラジカル阻害剤を使用することができる、スキーム1による反応を含む方法によって、製造することができる。
【0048】
【0049】
本発明によれば、コポリマー(P1)は、式(I)、(I-A)又は(I-B)のモノマー(a)及び(b)及びモノマー(c)の使用を含む重合反応によって製造される。したがって、コポリマー(P1)は、これらの式(I)、(I-A)又は(I-B)のモノマー(a)、(b)及び(c)からのみ製造されてもよい。
【0050】
コポリマー(P1)は、他のモノマーと組み合わせたこれら3種類のモノマーから製造することもできる。したがって、式(I)、(I-A)又は(I-B)のモノマー(a)及び(b)及びモノマー(c)に加えて、コポリマー(P1)を製造するための重合反応は、1種以上の他のモノマーを使用することができる。
【0051】
有利には、コポリマー(P1)は、重合性ビニル官能基及び少なくとも10個の炭素原子を含む炭化水素系鎖を含むモノマー(b)と異なる少なくとも1つの非イオン性モノマー(d)を同様に使用する重合反応によって製造することができる。本発明によれば、非イオン性モノマー(d)は好ましくは、
・重合性ビニル官能基及びC12-C36炭化水素系鎖を含むモノマー(d1)並びに
・重合性ビニル官能基、C12-C36炭化水素系鎖及び1~150個、好ましくは15~50個、より好適には20~30個のアルキレンオキシ基を含むモノマー(d2)
から選択される。
【0052】
非イオン性モノマー(d2)の場合、好ましいオキシアルキレン基は、エトキシ(OE)基、プロポキシ(PO)基及びブトキシ(BO)基、特にエトキシ(OE)基である。好ましい非イオン性モノマー(d2)は、式(II)
R1-(CH2CH2O)m-(CH2CH(CH3)O)p-(CH2CH(CH2CH3)O)q-R2(II)
(式中、
・R1が独立に、重合性ビニル官能基を表し、
・R2が独立に、
・少なくとも10個の炭素原子を含む炭化水素系鎖、好ましくはC12-C36炭化水素系鎖又は
・少なくとも10個の炭素原子を含む炭化水素系鎖、好ましくはC12-C36炭化水素系鎖並びにO、S、N及びPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子
を表し、
・m、p及びqが、同一であっても又は異なってもよく、独立に、0~150の範囲の整数又は小数を表し、m、p及びqの合計が、0ではない。)
の化合物である。
【0053】
好ましくは、R1は、ビニル基、メチルビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基及びメタリル基から選択される重合性ビニル官能基を表す。
【0054】
特定の化合物(d2)として、式(II)(式中、R1が、-OC(O)C(CH3)=CH2基を表し、R2が、16個の炭素原子を含む分岐状炭化水素系鎖(2-ヘキシルデカニル)を表し、mが、25を表し、p及びqが、0を表す。)の化合物(d2-1)を挙げることができる。
【0055】
同様に有利には、重合反応は、モノマーの総モル量に対して0.01~10mol%のモノマー(d)を使用することができる。好ましくは、重合反応は、モノマーの総モル量に対して0.02~5mol%又は0.02~2mol%のモノマー(d)を使用することができる。
【0056】
有利には、コポリマー(P1)は、モノマー(a)及びモノマー(b)と異なる少なくとも1つのイオン性又は非イオン性モノマー(e)を同様に使用する重合反応によって製造することができる。好ましくは、本発明によれば、イオン性又は非イオン性モノマー(e)は、
・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩と、
・不飽和であるアクリル酸のテロマー、好ましくはダイマー、トリマー又はテトラマーと、
・式(III)
【0057】
【化6】
(式中、
・R
3、R
4及びR
5が同一であっても又は異なってもよく、独立に、H又はCH
3を表し、
・rが独立に、1、2又は3を表す。)
のモノマーと、
・式(IV)
【0058】
【化7】
(式中、
・R
6、R
7及びR
8が同一であっても又は異なってもよく、独立に、H又はCH
3を表し、
・R
9が、H又はCH
3を表し、
・L
2が独立に、直接結合又はO、C(=O)O、CH
2CH
2及びCH
2から選択される基を表し、
・L
3が独立に、直接結合又は1~150個、好ましくは15~100個、より好適には25~75個のアルキレンオキシ基を表す。)
のモノマー、特にHEMA、HPMA及びHPAと
から選択される。
【0059】
イオン性又は非イオン性モノマー(e)の場合、好ましいオキシアルキレン基は、エトキシ(OE)、プロポキシ(PO)及びブトキシ(BO)基、特にエトキシ(OE)基である。
【0060】
本発明によれば、エトキシ(OE)基は、-CH2-CH2-O残基であり、プロポキシ(PO)基は、炭素原子のうちの1個に付いた水素原子を置きかえるものとしてのメチル基によって置換されたエトキシ基であり、ブトキシ(BO)基は、炭素原子のうちの1個に付いた水素原子を置きかえるものとしてのエチル基によって置換されたエトキシ基である。
【0061】
本発明によれば、式(IV)のモノマー(e)の中でも特に、
・式(IV)(式中、R6、R7及びR9が、Hを表し、R8が、CH3を表し、L2が、C(O)Oを表し、L3が、エチレンオキシ基を表す。)の化合物であるHEMA又はヒドロキシエチルメタクリレート、
・式(IV)(式中、R6、R7及びR9が、Hを表し、R8が、CH3を表し、L2が、C(O)Oを表し、L3が、プロピレンオキシ基を表す。)の化合物である式HPMA又はヒドロキシプロピルメタクリレート及び
・式(IV)(式中、R6、R7、R8及びRaが、Hを表し、L2が、C(O)Oを表し、L3が、プロピレンオキシ基を表す。)の化合物であるHPA又はヒドロキシプロピルアクリレート
が知られている。
【0062】
同様に有利には、重合反応は、モノマーの総モル量に対して0.01~25mol%のモノマー(e)を使用することができる。好ましくは、重合反応は、モノマーの総モル量に対して0.02~15mol%又は0.02~10mol%のモノマー(e)を使用することができる。
【0063】
有利には、コポリマー(P1)は、少なくとも1つの他のモノマー(f)を同様に使用する重合反応によって製造することがでる。モノマー(f)は、有利には、親水性、疎水性又は両親媒性の架橋形成用モノマーであり、一般に、いくつかのエチレン性不飽和を含む化合物である。モノマー(f)は、本発明による式(I)のモノマーと相違する。モノマー(f)は、式(V):
【0064】
【化8】
(式中、
・R
10が独立に、H又はCH
3を表し、
・L
4が独立に、直鎖状又は分岐状C
1-C
20アルキレン基を表し、
・tが独立に、0又は1~30、例えば1~20、特に1~15、特に1~10の範囲の整数を表す。)
の化合物であってよい。
【0065】
モノマー(f)は、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、特にポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート又は1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等だが、2,2’-ビス(4-(アクリルオキシプロピルオキシ)フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-(アクリルオキシジエトキシ)フェニル)プロパン及びアクリル酸亜鉛等もあるジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート並びにテトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート化合物、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等のアリル化合物、分子1個当たり2~8個の基を有するスクロースのポリアリルエーテル、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリトリトールポリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル及びトリメチロールプロパントリアリルエーテル等のトリメチロールプロパンポリアリルエーテルから選択することもできる。他の多価不飽和化合物には、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、ジビニルシクロヘキシル及びメチレンビスアクリルアミドを含むが挙げられる。
【0066】
モノマー(f)は、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、無水マレイン酸又はイタコン酸無水物等の不飽和無水物によるポリオールのエステル化のための反応によって製造することもできる。モノマー(f)を得るために、1,3-ジクロロイソプロパノール及び1,3-ジブロモイソプロパノール等のポリハロアルカノール、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、2-メチルエピクロロヒドリン及びエピヨードヒドリン等のハロエポキシアルカン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセリン-1,3-ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA-エピクロロヒドリンエポキシ樹脂並びにこれらの混合物から選択される化合物を使用することもできる。
【0067】
モノマー(f)は、三官能性架橋剤から選択することもできる。モノマー(f)は特に、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)又はエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(例えば、TMPTA3OE等)であってもよい。
【0068】
モノマー(f)は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート及びこれらの混合物から選択されてもよい。
【0069】
モノマー(f)は、相違する2種のモノマーの混合物、例えば、EGDCPEA(エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルアクリレート)とTMPTAとの混合物又はEGDCPEAとTMPTA 3OEとの混合物の混合物であってもよい。
【0070】
本発明によれば、モノマー(f)は好ましくは、式(V)の化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート及びこれらの混合物から選択される。
【0071】
同様に有利には、重合反応は、モノマーの総モル量に対して5mol%未満、好ましくは0.01~4mol%、特に0.02~2mol%、特に0.04~1mol%のモノマー(f)を使用することができる。
【0072】
同様に有利には、コポリマー(P1)は、少なくとも1つのモノマー(g)を同様に使用する重合反応によって製造することができる。モノマー(g)は、有利には、親水性、疎水性又は両親媒性架橋形成用モノマーであり、一般に、いくつかのエチレン性不飽和を含む化合物である。モノマー(f)は、本発明による式(I)のモノマーと相違する。モノマー(g)は、式(VI):
【0073】
【化9】
(式中、
・R
11が独立に、H又はCH
3を表し、
・R
12が独立に、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、
-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OHを表し、
・L
5が独立に、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基を表し、
・uが独立に、0又は1~30の範囲の整数若しくは小数を表す。)
の化合物であってよい。
【0074】
好ましくは、本発明によれば、モノマー(g)は、式(VI)(式中、uが、1~18の範囲、1~15の範囲若しくは2~16の範囲又は2~12の範囲の整数又は小数を表す。)の化合物である。
【0075】
特に好ましくは、本発明によれば、モノマー(g)は、式(VI)(式中、R11が、Hを表し、R12が、-C(H)=CH2、L5が、CH2-CH2を表し、uが、10を表す。)の化合物(g1)(CAS番号99742-80-0)である。同様に特に好ましくは、本発明によれば、モノマー(g)は、式(VI)(式中、R11が、Hを表し、R12が、-C(CH3)=CH2を表し、L5が、CH2-CH2を表し、uが、3.5を表す。)の化合物(g2)(CAS番号121826-50-4)である。同様に特に好ましくは、本発明によれば、モノマー(g)は、式(VI)(式中、R11が、Hを表し、L5が、CH2-CH2を表し、R12が、-C(CH3)=CH2を表し、uが、10を表す。)の化合物(g3)(CAS番号121826-50-4)である。
【0076】
これらの式(VI)の化合物は、それ自体は公知であり、従来技術において記述された方法によって製造することもできるし、又は、従来技術において記述された方法からの適合が可能な方法によって製造することもできる。モノマー(g)は一般に、それ自体は公知であり、又は、特許出願US2006-0052564において記述された調製法を使用して製造することができる。
【0077】
同様に有利には、重合反応は、モノマーの総モル量に対して5mol%未満、好ましくは0.01~4mol%、特に0.02~2mol%、特に0.04~1mol%のモノマー(g)を使用することができる。
【0078】
様々なモノマーに加えて、コポリマー(P1)の製造は、好ましくはメルカプタン化合物、特に、ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン又はtert-ドデシルメルカプタン等の少なくとも4個の炭素原子を含むメルカプタン化合物から選択される少なくとも1つの連鎖移動剤をさらに使用する。
【0079】
したがって、本発明によって製造されるコポリマー(P1)は、重合反応によって得られる。この反応は、ラジカル重合反応、例えばエマルション重合反応、分散重合反応又は溶液重合反応であってよい。重合は、少なくとも1つの開始剤化合物の存在下において、溶媒中で実施することができる。開始剤化合物の例として、過硫酸塩、特に過硫酸アンモニウムが公知である。
【0080】
好ましくは、反応は、ラジカルエマルション重合反応である。ラジカルエマルション重合は、重合中に生成される鎖の分子量を大まかに調整するために、少なくとも1つの界面活性剤化合物及び任意選択的に少なくとも1つの連鎖移動剤の存在下において、実施することができる。使用され得る界面活性剤化合物、次のものが公知である。
【0081】
・アニオン性界面活性剤、例えば脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩又はスルホスクシネートジエステル塩、ココアンホ酢酸ナトリウム等のココアンホ酢酸塩、ココアンホ二酢酸ナトリウム等のココアンホジアセテート塩、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等のラウロイルグルタミン酸塩、ココイルイセチオン酸ナトリウム等のココイルイセチオン酸塩、ラウロイルメチルイセチオン酸ナトリウム等のラウロイルメチルイセチオン酸塩、メチルココイルタウリンナトリウム等のメチルココイルタウリン塩、メチルオレイルタウリンナトリウム等のメチルオレイルタウリン塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のラウロイルサルコシン塩、ラウレス3スルホコハク酸ナトリイウム等のラウレス3スルホコハク酸塩、ココイルリンゴアミノ酸ナトリウム等のココイルリンゴアミノ酸塩、ココイルカラスムギアミノ酸ナトリウム等のココイルカラスムギアミノ酸塩、
・非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレン脂肪酸エステル、
・カチオン性界面活性剤、例えば第四級アルキルアンモニウムハライド及び第四級アリールアンモニウムハライド、
・双性又は両性界面活性剤、例えばベタイン基を含む界面活性剤並びに
・これらの混合物。
【0082】
本発明は、使用されるモノマーの総モル量に対して5mol%未満の式(I):
【0083】
【化10】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の少なくとも1つのモノマーの、コポリマーの製造のための使用にも関する。
【0084】
本発明は、使用されるモノマーの総モル量に対して5mol%未満の本発明による式(I-A)又は式(I-B)の少なくとも1つのモノマーの、コポリマーの製造のための使用にも関する。
【0085】
同様に、本発明は、使用されるモノマーの総モル量に対して5mol%未満の式(I):
【0086】
【化11】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の少なくとも1つのモノマーの、ポリマー又はモノマーの混合物の架橋形成のための使用に関する。
【0087】
同様に、本発明は、使用されるモノマーの総モル量に対して5mol%未満の本発明による式(I-A)又は式(I-B)の少なくとも1つのモノマーの、ポリマー又はモノマーの混合物の架橋形成のための使用に関する。
【0088】
これらの本発明による使用も同様に、本発明によるコポリマー(P1)の製造の特徴によって規定することができる。
【0089】
このコポリマー(P1)及びその使用に加えて、本発明は、この本発明によるコポリマーを製造するための方法にも関する。したがって、本発明は、
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むアニオン性モノマー、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基を含む疎水性非イオン性モノマー及び
(c)式(I):
【0090】
【化12】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の少なくとも1つのモノマー
の重合反応によって得られるコポリマー(P1)を製造するための方法(1)を提供する。
【0091】
本発明は、
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むアニオン性モノマー、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基を含む疎水性非イオン性モノマー及び
(c)本発明による式(I-A)又は式(I-B)の少なくとも1つのモノマー
の重合反応によって得られるコポリマー(P1)を製造するための方法(1)も提供する。
【0092】
本発明による方法(1)も同様に、モノマー及び本発明によるコポリマー(P1)の製造のために使用される条件によって規定される。
【0093】
本発明は、重合反応によって得られるコポリマー(P2)を製造するための方法(2)であって、本発明による方法(1)の重合反応中に事前に得られたコポリマー(P1)を重合反応中に使用することをさらに含む、方法(2)にも関する。
【0094】
したがって、本発明による方法(2)は、本発明によって事前に製造されたコポリマー(P1)と、
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むアニオン性モノマー、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基を含む疎水性非イオン性モノマー及び
(c)式(I):
【0095】
【化13】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の少なくとも1つのモノマー
との重合反応を含む。
【0096】
本発明による方法(2)は、本発明によって事前に製造されたコポリマー(P1)と、
(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのアニオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むアニオン性モノマー、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和を含む少なくとも1つの疎水性非イオン性モノマー、好ましくは重合性ビニル官能基を含む疎水性非イオン性モノマー及び
(c)本発明による式(I-A)又は(I-B)の少なくとも1つのモノマー
との重合反応をさらに含むことができる。
【0097】
本発明による方法(2)も同様に、モノマー及び本発明によるコポリマー(P1)の製造のために使用される条件によって規定される。
【0098】
有利には、混相状の本発明によるコポリマー(P2)は、エマルション重合、分散重合又は溶液ラジカル重合によって逐次製造することができる。好ましくは、第1のコポリマー(P1)の入手を可能にする第1のステップ及びコポリマー(P1)を使用する後続の第2の重合ステップという少なくとも2つの連続するステップが実施される。
【0099】
実用において、第1のステップは、コポリマー(P1)を製造するためのモノマーを、重合開始剤化合物と接触させるものである。この接触は、非連続式モード、バッチ式モード又は半バッチ式モード若しくは半連続式モードで実施することができる。この接触は、数分~数時間の範囲であり得るある期間の時間にわたって、実施することができる。
【0100】
コポリマー(P2)を製造する第2のステップは、
・数分~数時間の範囲であり得るある期間の時間に応じて、例えば非連続式モード、バッチ式モード、半バッチ式モード又は半連続式モードによってあらかじめ形成されたコポリマー(P1)を含む分散媒体に、コポリマー(P2)を製造するためのモノマーを加えること及び
・同時に、半連続式モード又は後続する非連続式モードのために重合開始剤化合物を導入すること
を含むことができる。
【0101】
このとき、このステップにより、本発明によるコポリマー(P2)を形成することができる。
【0102】
したがって、本発明は、本発明による方法(2)によって得ることができるコポリマー(P2)にも関する。
【0103】
有利には、本発明によるコポリマー(P2)は、混相状である。同様に有利には、本発明によるコポリマー(P2)は、第1のコポリマー(P1)と同一であっても又は異なってもよい第2のコポリマー(P1)によって全体的に又は部分的に被覆された第1のコポリマー(P1)を含む核を含む。
【0104】
好ましくは、本発明によるコポリマー(P2)は、第2のコポリマー(P1)によって全体的に又は部分的に被覆された第1のコポリマー(P1)を含む核を含み、1°コポリマー(P1)と2°コポリマー(P1)との重量比が、45対55~95対5の間、特に60対40~90対10の間である。
【0105】
本発明によるコポリマーは、広範な水性組成物中のレオロジー調整剤又は増粘剤及び懸濁剤として、特に効率的であると判明した。数多くの産業分野における水性組成物、特に、穴開け加工におけるフラッキング用流体、セラミックのための配合物、紙のコーティング用の着色料(paper coating colour)を挙げることができる。例えば化粧用組成物、パーソナル衛生用組成物、トイレタリー製品及びヒト若しくは動物の身体(皮膚、毛髪、爪を含む。)への施用のための清浄化用組成物、例えばシャンプー組成物を含むパーソナルケア用組成物又は家庭用品用組成物、又は、例えばキッチン、バスルーム、洗剤製品、選択製品等における清浄化若しくは衛生的な条件の維持のために使用される組成物等、界面活性剤を含有する洗浄用組成物を特に挙げることができる。
【0106】
本発明によるコポリマー(P1)及び(P2)は、有利な特性を有する。したがって、本発明によるコポリマー(P1)及び(P2)は、水性組成物中に取り込ませることができる。したがって、本発明は、本発明による少なくとも1つのコポリマー(P1)を含む水性組成物も提供する。本発明は、本発明による少なくとも1つのコポリマー(P2)を含む水性組成物も提供する。本発明は、本発明による少なくとも1つのコポリマー(P1)及び本発明による少なくとも1つのコポリマー(P2)を含む水性組成物も提供する。
【0107】
好ましくは、本発明による水性組成物は、化粧用組成物であり、
・本発明による少なくとも1つのコポリマー(P1)又は
・本発明による少なくとも1つのコポリマー(P2)又は
・本発明による少なくとも1つのコポリマー(P1)及び本発明による少なくとも1つのコポリマー(P2)
を含むことができる。
【0108】
本発明による組成物中において、本発明によるコポリマー(P1)及び(P2)は、本組成物の総重量に対して0.1~20重量%の範囲、特に0.5~12重量%の範囲の量で存在し得る。
【0109】
本発明によるコポリマーに加えて、本発明による組成物は、透明な連続相及び連続相中に分配された懸濁粒子を含むことができる。本発明によるコポリマーは、清澄度を本組成物に付与することができ、存在する粒子の懸濁状態を維持することができる。
【0110】
このような本発明による組成物は、本組成物が数週間又は数か月貯蔵された場合でさえ、使用されるときに一般に混合ステップを必要としない。
【0111】
本発明による組成物は、特にアニオン性、双性又は両性、カチオン性又は非イオン性の界面活性剤及びこれらの混合物から選択される、1種以上の界面活性剤化合物をさらに含むことができる。本発明による組成物は、1種以上の活性成分をさらに含むことができる。
【0112】
より好ましくは、本発明による化粧用組成物は、3~9の範囲のpHを有する。さらにより好ましくは、本発明による化粧用組成物のpHは、3~7の範囲である。さらにより好適には、本発明による化粧用組成物のpHは、4~7の範囲である。
【0113】
したがって、本発明は、
・本発明による少なくとも1つのコポリマー(P1)又は
・本発明による少なくとも1つのコポリマー(P2)又は
・本発明による少なくとも1つのコポリマー(P1)及び本発明による少なくとも1つのコポリマー(P2)
の、本発明による水性組成物を製造するため又は本発明による化粧用組成物を製造するための使用に関する。
【0114】
本発明は、式(I):
【0115】
【化14】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・L
1が、直接結合又はC(O)結合を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表し、ただし、LがCH
2を表し、L
1がC(O)を表し、R-C(H)=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2又は-C(H)=C(H)CH
3を表す式(I)の化合物を除く。)
の化合物にも関する。
【0116】
同様に、本発明は、式(I-A):
【0117】
【化15】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表し、ただし、LがCH
2を表し、Rが-C(H)=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2又は-C(H)=C(H)CH
3を表す式(I-A)の化合物を除く。)
の化合物にも関する。
【0118】
本発明による好ましい化合物は、式(I-A):(式中、Lが、CH2を表し、Rが、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(=CH2)CH2C(O)OH又は
-CH2C(=CH2)C(O)OH
を表す。)
の化合物である。
【0119】
本発明による他の好ましい化合物は、式(I-A)(式中、
・Lが、モノアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2を表し、
・Rが、Q3OQ4OC(O)C(CH3)=CH2又はQ3OQ4OC(O)C(H)=CH2を表し、
・Q3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q4が、CH2、CH2-CH2、モノアルコキシ化CH2、モノアルコキシ化CH2-CH2、ポリアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2-CH2を表す。)
の化合物である。
【0120】
同様に、本発明は、式(I-B)
【0121】
【化16】
(式中、
・Lが、CH
2、モノアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2を表し、
・Rが、-C(H)=CH
2、-C(CH
3)=CH
2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH
3、-C(=CH
2)CH
2C(O)OH、-CH
2C(=CH
2)C(O)OH、Q
3OQ
4OC(O)C(CH
3)=CH
2又はQ
3OQ
4OC(O)C(H)=CH
2を表し、
・Q
3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q
4が、CH
2、CH
2-CH
2、モノアルコキシ化CH
2、モノアルコキシ化CH
2-CH
2、ポリアルコキシ化CH
2又はポリアルコキシ化CH
2-CH
2を表す。)
の化合物にも関する。
【0122】
本発明による好ましい化合物は、式(I-B):(式中、
・Lが、CH2を表し、
・Rが、-C(H)=CH2、-C(CH3)=CH2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH3、-C(=CH2)CH2C(O)OH、-CH2C(=CH2)C(O)OH、Q3OQ4OC(O)C(CH3)=CH2又はQ3OQ4OC(O)C(H)=CH2を表し、
・Q3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q4が、CH2、CH2-CH2、モノアルコキシ化CH2、モノアルコキシ化CH2-CH2、ポリアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2-CH2を表す。)
の化合物である。
【0123】
本発明による他の好ましい化合物は、式(I-B):(式中、
・Lが、モノアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2を表し、
・Rが、-C(H)=CH2、-C(CH3)=CH2、-C(H)=C(H)C(O)OH、-C(H)=C(H)CH3、-C(=CH2)CH2C(O)OH、-CH2C(=CH2)C(O)OH、Q3OQ4OC(O)C(CH3)=CH2又はQ3OQ4OC(O)C(H)=CH2を表し、
・Q3が、不斉ジイソシアネート化合物の二官能性残基を表し、好ましくはトリル1,3-ジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択され、及び、
・Q4が、CH2、CH2-CH2、モノアルコキシ化CH2、モノアルコキシ化CH2-CH2、ポリアルコキシ化CH2又はポリアルコキシ化CH2-CH2を表す。)
の化合物である。
【実施例】
【0124】
下記の例により、本発明の様々な態様の説明することができる。
【0125】
次の略語が使用されている。
・MAA:メタクリル酸、
・EA:エチルアクリレート、
・Sartomer製のSR351:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、
・Clariant製のPolyglykol B11/50:エチレンオキシド-プロピレンオキシド-モノブチルエーテル、
・Huntsmann製のEmpicol LXVN:ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、
・BASF製のTexapon NS0:溶液中で28%のアンモニウムラウレススルフェート又は溶液中で28%のアンモニウムラウリルエーテルスルフェート(SLES)、
・過硫酸アンモニウム(NH4)2S2O8並びに
・化合物(d)45重量%のメタクリル酸、5重量%の水及び50重量%の式(II)(式中、R1が、-OC(O)C(CH3)=CH2基を表し、R2が、16個の炭素原子を含む分岐状炭化水素系鎖(2-ヘキシルデカニル)を表し、mが、25を表し、p及びqが、0を表す。)の化合物(d2-1)を含む溶液。
【0126】
モノマー(c)の製造
安定剤として、100gのペリリルアルコール(CAS番号536-59-4)及び1.03gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、500ml反応器に秤量した。
【0127】
撹拌しながら混合物を78℃に加熱し、次いで、101.19gのメタクリル酸無水物を加える。撹拌は、80℃±2℃で2時間維持する。
【0128】
72質量%の架橋形成用モノマー(c2)及び28質量%のメタクリル酸を含む混合物が、得られる。
【0129】
半バッチ式工程によるポリマーの製造
試薬及び使用量を、表1に示す。
【0130】
油浴を使用して加熱された撹拌されている1l反応器内において、脱イオン水並びに28質量%のナトリウムラウリルエーテルスルフェート(SLES)又はラウリル硫酸ナトリウム(SDS)及び任意選択的にエチレンオキシド-プロピレンオキシド-モノブチルエーテルを含有する溶液を導入することによって、混合物1を調製する。
【0131】
次のものを含むプレミックスと呼ばれる混合物2を、ビーカー内で調製する。
・メタクリル酸、
・エチルアクリレート、
・本発明による化合物(c)又はTMPTA、
・任意選択的に、化合物(d)、
・任意選択的に、脱イオン水、
・任意選択的に、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)又はラウリル硫酸ナトリウム(SDS)の28%溶液及び
・任意選択的に、エチレンオキシド-プロピレンオキシド-モノブチルエーテル。
【0132】
モノマー混合物を形成するために、このプレミックスを撹拌する。
【0133】
同様に、化合物(c)を含まない比較用プレミックスを調製する。
【0134】
過硫酸アンモニウム及び脱イオン水を含む開始剤1の溶液を、調製する。過硫酸アンモニウム及び脱イオン水を同様に含む開始剤2を、調製する。
【0135】
2時間にわたって、開始剤1及びモノマープレミックスの溶液を、85℃±1℃の温度に加熱された反応器に並行に注入する。次に、1時間にわたって、開始剤2の溶液を、85℃±1℃に加熱された反応器に注入する。
【0136】
任意選択的に水を加え、85℃±1℃の温度で30分混合物を硬化させる。次いで、混合物全体を周囲温度に冷却する。
【0137】
本発明によるポリマー及び比較用ポリマーは、これらの条件下において、モノマープレミックスのモノマー組成物の変更によって製造された。
【0138】
得られたコポリマーの組成を、表1に示す。
【0139】
【0140】
水性配合物中におけるポリマーの特性の評価
使用された水性配合物は、2.4重量%又は3重量%のポリマー(表1を参照されたい。)、9重量%の第1の界面活性剤化合物(SLES又はナトリウムラウリルエーテルスルフェート)、3重量%の第2の界面活性剤化合物(CAPB又はコカミドプロピルベタイン)及び水(適量100重量%)を含む。配合物のpHは、乳酸又は水酸化ナトリウムの添加によって5、6又は7の値に調節される。
【0141】
配合物は、粘度、清澄度及び懸濁性能特性について評価される。
【0142】
粘度
配合物の粘度は、Brookfield粘度計、モデルLVTを使用して測定される。粘度測定の前に、各配合物を25℃で24時間静置する。粘度計のスピンドルは、配合フラスコの開口部に対して中心に位置しなければならない。粘度は、適切なモジュールを使用して6回毎分で測定する。粘度計は、粘度値が安定化するまで回転するままにする。
【0143】
レオロジー調整剤であるコポリマーは、その中に当該コポリマーを使用した配合物に、十分な粘度を与えなければならない。一般に、増粘された配合物のために所望される粘度は、4,000mPa.s超、特に6,000mPa.s超、より特定すると8,000mPa.s超にすべきである。
【0144】
清澄度
各配合物の清澄度は、Rotilabo-Einmal Kuvetten Psという4.5mlキュベットを装着したUV Genesys 10UV分光計(Cole Parmer)によって透過率を測定することによって、評価される。装置は、使用前に10分予備加熱され、次いで、1回目の測定が、3.8mlの2回入れ替えた水(bi-permutated water)を充填したキュベットによって実施される。次いで、測定が、試験すべき3.8mlの化粧用配合物を充填したキュベットによって実施される。透過率は、500nmの波長で測定される。百分率として表される透過率値が高いほど、化粧用組成物がより透明になる。500nmにおける透過率値が少なくとも60%である場合、配合物は透明である。
【0145】
懸濁性能レベル
Haake-Mars III rheometerを使用して、粘弾性測定を配合物に実施する。ひずみτ(0dyn/cm2~1000dyn/cm2の走査)の関数としてのTan(δ)及びG’の変化を、1°における円錐と平面との幾何学的形状(1°Cone/Plan geometry)を使用して25℃で測定する。10dyn/cm2におけるTan(δ)及びG’の値を、この測定から推定する。
【0146】
原則として、配合物は、20Pa超のG’の値と、0.55未満のTan(δ)の値とが相まって、良好な懸濁特性を有する。
【0147】
得られた結果は、表2に示されている。
【0148】
なお、本発明によるコポリマーは、増粘効果、清澄度及び懸濁特性に関する性能レベルを有利に組み合わせることができる。言い換えると、本発明によるコポリマーは、所望の粘度を有し、透明な連続相及び連続相中に均一に分配された懸濁粒子を含む、水性配合物を得ることを可能にする。
【0149】