(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20230510BHJP
B60N 2/70 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/70
(21)【出願番号】P 2019017501
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 弘治
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 将樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓
(72)【発明者】
【氏名】長友 広光
(72)【発明者】
【氏名】福田 優樹
(72)【発明者】
【氏名】水越 敏充
(72)【発明者】
【氏名】御園生 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸太
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135074(JP,A)
【文献】特許第6309130(JP,B1)
【文献】特開2018-149886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びシートバックを有する乗物用シートであって、
前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた枠形のフレームと、
前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、乗員を支持する支持部材とを有し、
前記フレームは、左右一対のサイドメンバと、前記サイドメンバの対応する端部同士を接続するクロスメンバとを有し、
左右の前記サイドメンバには、互いに対向する側面の少なくとも一部を覆うカバー部材が設けられ、
前記支持部材は、前記フレームと略平行に延びる板状の本体と、前記本体の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部とを有し、
左右の前記傾斜部は、対応する左右の前記カバー部材に当接し、
前記傾斜部の裏面には、前記傾斜部の剛性を補強する第1補強部が設けられ
、
前記カバー部材は、前記サイドメンバに支持され、
前記カバー部材には、前記カバー部材の剛性を補強する第2補強部が設けられており、前記第2補強部は、前記第1補強部の、前記傾斜部の表面に沿った横方向の延長線上に配置されたことを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第1補強部は直線状に延びる少なくとも1つの第1リブを含み、
前記第2補強部は直線状に延びる少なくとも1つの第2リブを含み、
互いに対応する前記第1リブと前記第2リブとは、共通の直線上に配置されたことを特徴とする請求項
1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記第1リブの延長線上に線状部材を把持したクリップを取付可能な第1取付孔を有することを特徴とする請求項
2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第1補強部は、前記第1リブを複数含み、更に前記第1リブと交差する複数の第3リブを含むことを特徴とする請求項
2又は請求項
3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
シートクッション及びシートバックを有する乗物用シートであって、
前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた枠形のフレームと、
前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、乗員を支持する支持部材とを有し、
前記フレームは、左右一対のサイドメンバと、前記サイドメンバの対応する端部同士を接続するクロスメンバとを有し、
左右の前記サイドメンバには、互いに対向する側面の少なくとも一部を覆うカバー部材が設けられ、
前記支持部材は、前記フレームと略平行に延びる板状の本体と、前記本体の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部とを有し、
左右の前記傾斜部は、対応する左右の前記カバー部材に当接し、
前記傾斜部の裏面には、前記傾斜部の剛性を補強する第1補強部が設けられ、
前記カバー部材は、前記サイドメンバに支持され、
前記カバー部材は、前記傾斜部に当接する側壁の裏面から突出して、先端において前記サイドメンバに当接するボスを有し、
前記サイドメンバは、前記ボスの前記先端の近傍にクリップを取り付ける第2取付孔を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項6】
前記傾斜部が前記カバー部材に当接している縦方向の範囲では、前記カバー部材の下端がレールカバーに当接していること
を特徴とする請求項
5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記傾斜部の表面の延長面上に前記サイドメンバが配置されたことを特徴とする請求項
1~請求項
6の何れか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記傾斜部は、金属製のワイヤーがインサート成形された樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1~請求項
7の何れか1つの項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関し、詳細には乗員を支持する支持部材を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、シートクッションフレームの内側に設けられ、乗員を支持する支持部材を板状の樹脂部材によって形成したものが公知である(例えば、特許文献1)。支持部材は、その前端及び後端に複数のフックを有し、各フックにおいてシートクッションフレームを構成する前クロスメンバ及び後クロスメンバに引っ掛けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持部材は、その前端及び後端においてシートクッションフレームに引っ掛けられた構造であるため、シートクッションフレームに対して左右方向への位置決めを行なう必要がある。そのため、支持部材のシートクッションフレームへの組み付け時に時間を要するという問題がある。また、組み付け後、シートクッションフレームに対して支持部材が意図せず左右にずれる虞がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、フレームに対して支持部材の位置決めが容易な乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、シートクッション(2)及びシートバック(3)を有する乗物用シート(1)であって、前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた枠形のフレーム(7)と、前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、乗員を支持する支持部材(8)とを有し、前記フレームは、左右一対のサイドメンバ(14)と、前記サイドメンバの対応する端部同士を接続するクロスメンバ(15,16)とを有し、左右の前記サイドメンバには、互いに対向する側面の少なくとも一部を覆うカバー部材(60)が設けられ、前記支持部材は、前記フレームと略平行に延びる板状の本体(20)と、前記本体の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部(21)とを有し、左右の前記傾斜部は、対応する左右の前記カバー部材に当接し、前記傾斜部の裏面には、前記傾斜部の剛性を補強する第1補強部(39)が設けられたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、傾斜部とカバー部材とが当接させることによって、フレームに対する支持部材の左右方向における位置決めを行なうことができる。これにより、支持部材のフレームへの組み付け作業を容易にすることができる。また、組み付け後において、フレームに対して支持部材を左右にずれ難くすることができる。更に、第1補強部によって傾斜部の剛性を向上させ、傾斜部の変形を抑制することができる。これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記カバー部材は、前記サイドメンバに支持されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、カバー部材がサイドメンバに支持されることにより安定するため、支持部材の位置が一定する。
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記カバー部材には、前記カバー部材の剛性を補強する第2補強部(64)が設けられており、前記第2補強部は、前記第1補強部の、前記傾斜部の表面に沿った横方向の延長線上に配置されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第2補強部によってカバー部材の剛性を向上させ、カバー部材の変形を抑制することができる。これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記第1補強部は直線状に延びる少なくとも1つの第1リブ(41)を含み、前記第2補強部は直線状に延びる少なくとも1つの第2リブ(64)を含み、互いに対応する前記第1リブと前記第2リブとは、共通の直線上に配置されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、支持部材の第1リブによって剛性が向上した部分と、カバー部材の第2リブによって剛性が向上した部分とが並ぶため、支持部材及びカバー部材の変形を抑制することができる。これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記傾斜部は、前記第1リブの延長線上に線状部材を把持したクリップを取付可能な第1取付孔(35)を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1リブによって第1取付孔の変形が抑制されるため、クリップの脱落を抑制できる。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、第1リブを有する上記構成の何れかにおいて、前記第1補強部は、前記第1リブを複数含み、更に前記第1リブと交差する複数の第3リブ(40)を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、傾斜部の剛性を一層向上させ、傾斜部の変形を抑制することができる。これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、カバー部材がサイドメンバに支持された上記構成の何れかにおいて、前記カバー部材は、前記傾斜部に当接する側壁の裏面から突出して、先端において前記サイドメンバに当接するボス(63)を有し、前記サイドメンバは、前記ボスの前記先端の近傍に前記クリップを取り付け可能な第2取付孔(14a)を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ボスによってカバー部材の変形が抑制されるため、カバー部材に当接する支持部材が一定するとともに、クリップに把持された線状部材等の他の部材を収容する空間が確保され、他の部材にカバー部材が衝突して他の部材が落下することが抑制される。
【0020】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記傾斜部が前記カバー部材に当接している縦方向の範囲では、前記カバー部材の下端がレールカバーに当接していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、レールカバーによってカバー部材の変形が抑制されるため、カバー部材に当接する支持部材が一定する。
【0022】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、カバー部材がサイドメンバに支持された上記構成の何れかにおいて、前記傾斜部の表面の延長面上に前記サイドメンバが配置されたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、取付剛性が向上する。
【0024】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記傾斜部は、金属製のワイヤー(24)がインサート成形された樹脂によって形成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、傾斜部の剛性を一層向上させ、傾斜部の変形を抑制することができる。これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、支持部材がカバー部材に当接する傾斜部を有し、傾斜部が第1補強部によって補強されるため、支持部材のフレームへの組み付け作業が容易になり、組み付け後において、フレームに対して支持部材を左右にずれ難くなり、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0027】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、カバー部材がサイドメンバに支持された構成とすることによって、カバー部材がサイドメンバに支持されることにより安定するため、支持部材の位置が一定する。
【0028】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、カバー部材に第2補強部を設けることによって、カバー部材の剛性を向上させ、カバー部材の変形を抑制し、これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0029】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、第1補強部の第1リブと、第2補強部の第2リブ(64)を、共通の直線上に配置することによって、支持部材の第1リブによって剛性が向上した部分と、カバー部材の第2リブによって剛性が向上した部分とが並ぶため、支持部材及びカバー部材の変形を抑制することができ、これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0030】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、傾斜部の第1取付部が、第1リブの延長線上に配置されたことによって、第1リブによって第1取付孔の変形が抑制されるため、クリップの脱落を抑制できる。
【0031】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、複数の第1リブと交差する複数の第3リブを設けることによって、傾斜部の剛性を一層向上させ、傾斜部の変形を抑制することができ、これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【0032】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、カバー部材がサイドメンバに当接するボスを有し、サイドメンバが、ボスの先端の近傍にクリップを取り付ける第2取付孔を有することによって、カバー部材に当接する支持部材が一定するとともに、クリップに把持された他の部材が落下することが抑制される。
【0033】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、カバー部材の下端がレールカバーに当接していることによって、カバー部材の変形が抑制され、カバー部材に当接する支持部材が一定する。
【0034】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、傾斜部の表面の延長面上にサイドメンバが配置されたことによって、取付剛性が向上する。
【0035】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、傾斜部が、金属製のワイヤーを有することによって、傾斜部の剛性を一層向上させ、傾斜部の変形を抑制することができ、これにより、フレームに対して支持部材の位置を一定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】実施形態に係るフレーム及び支持部材の斜視図
【
図3】実施形態に係る傾斜部及びカバー部材周辺の筒状部を通る背面から見た縦断面図(パッドの図示は省略)
【
図4】実施形態に係る支持部材側部及びサイドフレームの拡大平面図
【
図5】実施形態に係る支持部材に対する表皮材の係合を示す図(A:平面図、B:横断面図、C:変形例に係る横断面図)
【
図6】実施形態に係る傾斜部の拡大斜視図(カバー部材の図示は省略)
【
図8】実施形態に係るフレーム及び支持部材の右後方の斜視図
【
図9】実施形態に係る傾斜部及びカバー部材周辺の正面から見たパッドを含む縦断面図
【
図10】実施形態に係るシートバックにおけるパッドの背面図
【
図11】実施形態に係るシートバックのサイドフレームを前方内側から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、前後、左右及び上下の方向は、車両の前後、左右及び上下の方向に従う。
【0038】
図1に示すように、シート1は、車両の運転席又は助手席として使用され、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。シートクッション2は、車室のフロア5に固定された左右一対のスライドレール6,6に前後にスライド移動可能に支持される。また、シート1は、フレーム7及び支持部材8(
図2参照)上に配置されたウレタンフォーム等からなる可撓性のパッド9と、パッド9を覆う表皮材10とを有する。スライドレール6は、フロア5に結合されたロアレール11と、ロアレール11に前後にスライド移動可能に支持されたアッパレール12と、アッパレール12の少なくとも一部を覆うレールカバー13(
図3参照)とを有する。
【0039】
図2に示すように、シートクッション2は、枠形のフレーム7と、フレーム7内に位置するように、フレーム7に支持されて、表皮材10及びパッド9(
図1参照)を介してシート1の乗員の荷重を弾発的に支持する支持部材8とを有する。
【0040】
フレーム7は、左右一対のサイドメンバ14,14と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部を互いに接続する前部クロスメンバ15と、左右一対のサイドメンバ14,14の後端部を互いに接続する後部クロスメンバ16と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部に連結して左右の中間部が前部クロスメンバ15よりも前方に位置するパンフレーム17とを有する。左右一対のサイドメンバ14,14は、板金からなる前後に長い長尺材であり、上下にフランジが形成されている。前部クロスメンバ15及び後部クロスメンバ16は、左右方向に延在する金属製のパイプからなる。パンフレーム17は、板金からなり、概ね座面の前部に沿った表面を有する。
図4に示すように、右側のサイドメンバ14には、フロア5に対するシート1の前後方向位置を検出する位置センサ19が取り付けられている。
【0041】
図2に示すように、支持部材8は、フレーム7に対して略平行に延在する板状の本体20と、本体20の後部における左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部21と、本体20の前縁から前方に延出して前部クロスメンバ15に係合する前部取付部22と、本体20の後縁から斜め上後方に延出して後部クロスメンバ16に係合する後部取付部23とを有する。支持部材8は、金属製のワイヤー24がインサート成形された樹脂によって形成され、乗員の荷重を受けて撓み、乗員を弾発的に支持する。
【0042】
本体20の前部における左右方向の中央部の表側には、圧力センサ25が載置されるセンサ載置部26が形成されている。圧力センサ25は、乗員がシート1に着座しているか否かを判断するために、シートクッション2にかかる圧力を検出する。本体20の後部は、傾斜部21によって乗員の荷重が分散されるため、着座時に係る圧力が小さくなる。そこで、傾斜部21による圧力分散の影響を受けないように、圧力センサ25は、傾斜部21に対して前方にオフセットした位置に配置される。従って、圧力センサ25から信号を受信したECU等の着座判定手段(図示せず)による着座の判定の正確性が向上する。
【0043】
シート1(
図1参照)には、シート1の表面に対して空気を吸引又は送風して湿度を調整するエアーベンチレーションシステムが採用されており、本体20におけるセンサ載置部26の左右には、空気の通路となるように上下に貫通した一対の空気用開口27,27が設けられている。各々の空気用開口27は平面視で矩形をなす。一対の空気用開口27,27に挟まれたセンサ載置部26の形成する樹脂部分には、縦方向に沿って通過する、補強のための中央縦ワイヤー24aが埋設されている。
【0044】
また、本体20の後部には、表皮材10の端部に取り付けられた複数のフック28(
図5参照)を係止するとともに支持部材8の撓みを調整する貫通孔であって、左右方向の中央に位置する中央係止孔29及び中央係止孔29の左右に位置する一対の側部係止孔30,30が設けられている。中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30は、それぞれ、平面視で矩形をなす。左右方向に並んだ中央係止孔29と一対の側部係止孔30,30とは、前後方向の幅は互いに等しいが、左右方向の長さは、中央係止孔29の方が一対の側部係止孔30,30よりも長くなっている。そのため、支持部材8の中央部の可撓性が高くなり、柔らかい座り心地となる。このように中央係止孔29の長さと一対の側部係止孔30,30との長さを互いに相違させることによって、着座感が向上するように支持部材8の撓みが設定される。また、中央係止孔29内の左右方向の中央を中央縦ワイヤー24aが縦断することにより、中央係止孔29の周辺の強度が補強されている。
図5(A)に示すように、中央係止孔29に係止されるフック28は、中央縦ワイヤー24aを受容するスロット31を有し、このため中央係止孔29に対するフック28の係合が強固になる。また、スロット31を有するため、中央係止孔29に係止されるフック28は、側部係止孔30に係止されるフック28に対して、形状が異なるとともに幅が広くなっている。このように係止させるべき係止孔の形状や大きさに応じてフック28の形状や大きさを変えることにより、作業者がフック28を誤った係止孔に組み付けることを防止できる。中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30が後部取付部23と離間しているため、作業性がよい。支持部材8に表皮材10を係止できるため、係止部を形成するための突片等をフレーム7に設ける必要がなく、フレーム7を小型化及び軽量化することができる。
【0045】
図2及び
図5に示すように、本体20の表側における中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30の後方の縁部には、裏側に向けて凹んだフック用凹部32が設けられている。フック28は、対応する中央係止孔29又は側部係止孔30を裏側から表側に通過し、フック28の先端がフック用凹部32に受容される。フック28の先端がフック用凹部32に受容されることにより、中央係止孔29及び側部係止孔30に対してフック28を位置決めすることができる。なお、フック用凹部32に代えて、
図5(C)に示すように、中央係止孔29の表側の後方の縁部に、表側に突出するフック用縁壁33を設けて、フック28の先端を係止させてもよい(側部係止孔30の表側縁部についても同様)。フック28の先端がフック用縁壁33に係合することにより、中央係止孔29及び側部係止孔30からのフック28の脱落が防止される。また、中央係止孔29及び側部係止孔30は、本体20における左右一対の傾斜部21,21と並ぶ位置、すなわち、剛性が比較的高い位置に設けられているため、中央係止孔29及び側部係止孔30の変形を抑制することができ、中央係止孔29及び側部係止孔30からのフック28の脱落を防止できる。
【0046】
図2、
図3、及び
図6~
図8に示すように、傾斜部21には、下方(本体20に垂直な方向の裏向き)に向けて突出する筒状部34が形成されている。筒状部34の筒の内空からなる取付孔35は、ワイヤーハーネスやケーブル等の線状部材36等の他の部材を支持部材8に取り付けるためのクリップ37を挿通させる。線状部材36は、変形し難くするため、傾斜部21の後部補強部42及び裏面に面当たりするように配置される。また、作業性向上のため、線状部材36は、中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30からずらして配置される。また、線状部材36は、前後方向に延在するか、取付孔35から横方向の内側に寄るように配置されることが好ましい。筒状部34の内周面には、筒状部34の剛性を高めるとともにクリップ37の先端を係止するための肩面38が形成されている。例えば、筒状部34は、クリップ37を挿通させる貫通孔を有するとともに平面視で矩形をなす底壁34aと、底壁34aの辺部から上方に向かって立設された側壁34bによって構成される。底壁34aの上面が肩面38を構成する。筒状部34の下端が本体20の裏面と略同一平面上に位置し、取付孔35の延在方向が本体20に対して垂直であるため、傾斜部21に対する裏面側からのクリップ37の取付作業は、本体20に対する取付作業と同等に行うことができる。すなわち、筒状部34へのクリップ37の取付作業性は、クリップ37を傾斜させて取り付ける場合に比べて向上している。また、肩面38を有することにより、クリップ37の先端が傾斜部21の表面から突出せず、クリップ37が着座感に影響すること防止できる。なお、図示を省略するが、中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30の前後方向の位置は、パッド9に設けられる表皮材10の吊り込み位置に対してずれている。また、サイドメンバ14にも表皮材10を固定する場合、その固定位置は傾斜部21に対して前後にずれている。複数の線状部材36を取り付けるため各々の傾斜部21に複数の取付孔35を設けてもよい。この場合、複数の取付孔35は、互いに左右方向及び前後方向で位置をずらすことにより、前後方向又は横方向に延在する線状部材36を複数取り付けることができ、かつ、取付作業性が向上する。傾斜部21の裏面には、格子状補強部39が設けられている。格子状補強部39は、下方に突出して前後方向に延在する複数の縦リブ40と、下方に突出して傾斜部に沿った横方向に延在する複数の横リブ41とを有する。格子状補強部39によって傾斜部21の剛性が向上するため、傾斜部21の変形を抑制することができ、また、フレーム7に対する支持部材8の位置が一定する。筒状部34は格子状補強部39内に配置され、取付孔35を設けたことによる剛性の低下を補うため、一部の縦リブ40及び/又は横リブ41が筒状部34に連結することが好ましい。
【0047】
傾斜部21の後縁には、傾斜部21を補強するとともに傾斜部21の撓みを調整するための後部補強部42が設けられている。後部補強部42は、傾斜部21の後縁から傾斜部21の表面に直交するように裏側に延出する立壁43と、立壁43の下縁から後方又は斜め上後方に延出する底壁44と、立壁43及び底壁44に直交するように固定された複数の補強壁45(リブ)とを有する。取付孔35を設けたことによる剛性の低下を補うため、補強壁45の一部は、取付孔35の縦方向の延長線上に位置し、また取付孔35と同じ高さに位置することが好ましい。また、格子状補強部39の縦リブ40が立壁43に交差するように連結して、縦リブ40及び立壁43が互いに異なる方向の荷重の入力に対して傾斜部21の剛性を向上させることが好ましい。
【0048】
後部補強部42よりも前方における本体20と傾斜部21との連結部分には、両者の連結を補強するための連結補強部46が設けられている。連結補強部46は、支持部材8の表側における本体20と傾斜部21との境界部分に縦方向に延在する連結凹部47と、連結凹部47内に設けられて主面が縦方向に直交する壁からなる複数の連結リブ48とを有する。連結凹部47の長さ及び深さ、並びに連結リブ48の数及び厚さ等を調整することにより、傾斜部21の撓みやすさ及び本体20及び傾斜部21の間の剛性が調整される。連結凹部47は、取付孔35の横方向の側方に形成され、その前後方向の長さは、取付孔35の前後方向長さよりも大きいことが好ましく、このように構成することにより、連結リブ48が取付孔35により強度が損なわれる部分を広い範囲で補強する。連結リブ48は、後部補強部42の補強壁45よりも横方向の内方に位置する。また、本体20と傾斜部21との間に沿って、側部縦ワイヤー24bが支持部材8に埋設され、本体20と傾斜部21との間が補強されている。なお、傾斜部21の剛性を高めるため、筒状部34や連結補強部46を囲うようにワイヤー24の配置を変更してもよい。この場合、ワイヤー24は縦リブ40及び横リブ41に交差するように配置することが好ましく、剛性向上のため、ワイヤー24の一部の区間に対して線状部材36が沿うようにすることが好ましい(図示せず)。
【0049】
図4に示すように、支持部材8の左右の側縁には、本体20と後部に設けられた傾斜部21との間に側部切欠き49が形成されている。サイドメンバ14に取り付けられた位置センサ19の前後方向の位置は、側部切欠き49の前後方向の位置内にある。側部切欠き49を設けることによって、支持部材8を小型化及び軽量化できるとともに、位置センサ19の取付状態が確認しやすくなる。側部切欠き49は、支持部材8の左右の側縁における位置センサ19が設けられた側のみに設けてもよい。なお、位置センサ19が左右の一方にのみ設けられることを除くと、フレーム7及び支持部材8は、その左右方向に直交する中央の平面に対して、略鏡像対称形をなす。
【0050】
側部切欠き49の前方には傾斜部21が設けられていないため、支持部材8の前部においては、本体20の側縁が支持部材8の側縁となる。本体20の前側部50は、側面視で前方が後方に比べて低くなるようなクランク形状を有し、側部切欠き49によって低下した剛性を補っている。また、クランク形状で低くなった部分の裏側に線状部材36を取り付ける場合、表側から突出するクリップ(図示せず)の先端による影響がクランク形状における高くなった部分によって緩和され、着座感の低下が抑制される。また、前側が低くなっても後側で乗員の臀部を支持するため、クランク形状が臀部の支持に与える影響は小さく、着座感の低下が抑制される。また、本体20における左右一対の空気用開口27,27のそれぞれの左右外側の近傍部分は、本体20の前側部50におけるクランク形状によって低くなった部分に連結するように正面視で屈曲する屈曲部51を有する。屈曲部51は、空気用開口27の近傍から、本体20の前縁の近傍まで延出している。屈曲部51により、左右一対の空気用開口27,27により低下した剛性を補っている。
【0051】
図3及び
図4に示すように、支持部材8の左右の側縁の剛性を高めるため、本体20の前部の側縁には表側に突出するフランジ53が設けられ、傾斜部21の側縁には裏側に突出するフランジ54が設けられている。本体20の前部側縁の近傍に設けられた孔55にクリップ(図示せず)を取り付けると、クリップの先端が本体20の表側に突出する。表側に突出するフランジ53は、このクリップの先端の突出による着座感への影響を緩和する。一方、傾斜部21の取付孔35には肩面38が設けられているため、取付孔35に取り付けられたクリップ37の先端は傾斜部の表側に突出しない。そのため、傾斜部のフランジ54は、裏側に突出させて着座感に影響を与えないようにしている。
【0052】
図2に示すように、支持部材8を構成する樹脂に埋設されるワイヤー24には、左右方向(横方向)に延在するものもあり、それぞれ、支持部材におけるその周囲の剛性を高めている。左右1対の空気用開口27,27の前方の概ね本体20の前縁に沿った位置に前部横ワイヤー24cが配置され、左右1対の空気用開口27,27と中央係止孔29及び左右1対の側部係止孔30,30との間に中央横ワイヤー24dが配置され、中央係止孔29及び左右1対の側部係止孔30,30の後方の概ね本体20の後縁に沿った位置に後部横ワイヤー24eが配置される。中央横ワイヤー24dの一部は、中央係止孔29及び左右1対の側部係止孔30,30の前縁に沿って配置される。中央横ワイヤー24dは、複数列配置されてもよく、この場合、中央横ワイヤー24dは、環状に配置されたワイヤー24の一部によって構成されてもよい。
【0053】
前部取付部22は、前部クロスメンバ15に上方から係合しており、取り付けやすくなるように互いに分離した3つの前部取付片56を有する。同様に、後部取付部23は、後部クロスメンバ16に上方から係合しており、取り付けやすくなるように互いに分離した3つの後部取付片57を有する。中央縦ワイヤー24a及び側部縦ワイヤー24bの両端部は、それぞれ対応する前部取付片56及び後部取付片57に埋設され、前部取付部22及び後部取付部23を補強している。
【0054】
本体20の前縁における前部取付片56に連結していない部分には、前部切欠き58が設けられている。前部切欠き58の左右方向幅は、本体20の前縁に連結した互いに隣接する2つの前部取付片56,56間の距離よりも小さい。そのため、本体20の前縁及び互いに隣接する2つの前部取付片56,56によって画成される空間の輪郭は、平面視で凸字状になっている。前部切欠き58を設けることにより、本体20の前部から前部取付片56にかけての部位を大きく撓ませることができ、前部取付片56の前部クロスメンバ15への取り付けが容易になる。また、前部切欠き58の幅が互いに隣接する2つの前部取付片56間の距離よりも小さいことにより、前部切欠き58を設けることによる着座感の低下を抑制している。また、センサ載置部26から中央の前部取付片56の間は、中央縦ワイヤー24aを埋設する連結部59となっている。空気用開口27や前部切欠き58が設けられたことにより、本体20の前部の左右方向中央付近は、剛性が低下しているが、連結部59によって必要な剛性を確保している。前部取付片56は、本体20から概ね前方に延出するフック状をなし、後部取付片57は、本体20の後縁から斜め上後方に延出するフック状をなす。
【0055】
前部横ワイヤー24cは、本体20の前縁に沿って、かつ前部切欠き58を避けるように配置されるため、屈曲している。また、前部横ワイヤー24cの左右の両端部は、前方に延出し、屈曲部51よりも左右方向の外方に、かつフランジ53に沿って延在することにより、支持部材8を大型化することなく本体20の前側の隅を補強している。
【0056】
図2及び
図3に示すように、フレーム7のサイドメンバ14にはカバー部材60が取り付けられている。カバー部材60は、サイドメンバ14の後部において、左右方向の内側と上部を覆っている。カバー部材60は、樹脂によって形成されている。カバー部材60の左右の内側を構成する側壁61は、下側が左右方向の内側に向かうように傾斜している。側壁61の表面に、傾斜部21の側縁が当接する。確実に当接させるため、傾斜部21の側縁が側壁61の表面に線接触するように構成される。傾斜部21の側縁と側壁61の表面との間の摩擦力を減らして組み付けを容易にするため、側壁61の表面における傾斜部21の側縁が当接する部位の近傍は平面部62となっており、また、傾斜部21の側縁は縦断面視で丸みが付されている。側壁61の前端及び後端は、それぞれ傾斜部21の側縁の前端及び後端よりも前方及び後方に位置することが好ましい。傾斜部21と側壁61とのこすれを低減するため、側壁61の厚さは、傾斜部21の厚さよりも薄いことが好ましい。傾斜部21の側縁をカバー部材60の側壁61の表面に当接させることによって、フレーム7に対する支持部材8の左右方向における位置決めを行なうことができるとともに、組み付け後においては、フレーム7に対して支持部材8を左右にずれ難くしている。左側の傾斜部21及びカバー部材60と右側の傾斜部21及びカバー部材60とが互いに鏡像対称形をなすため、支持部材8のフレーム7への組み付け作業が容易である。
【0057】
側壁61には、裏面から突出して、先端においてサイドメンバ14に当接するボス63が設けられている。サイドメンバ14は、ボス63の前記先端の近傍に線状部材36を把持したクリップ(図示せず)を取り付け可能な取付孔14aを有する。カバー部材60に傾斜部21から負荷がかかっても、ボス63によってカバー部材60の側壁61の変形が抑制されるため、側壁61から線状部材36に負荷がかかって線状部材36が外れることが抑制される。また、後部クロスメンバ16を避けるように線状部材36を配置するため、サイドメンバ14に線状部材36を支持するブラケットを設けることが好ましい。カバー補強部64は、側壁61の内面及びボス63に連結するリブによって構成されている。カバー補強部64を構成するリブは、縦方向に直交する主面を有し、左右方向の外側の端部でサイドメンバ14に当接している。ボス63及びカバー補強部64によってカバー部材60の剛性が向上し、カバー部材60の変形が抑制される。また、これにより、フレーム7に対して支持部材8の位置を一定させることができる。傾斜部21の横リブ41の一部と、カバー補強部64を構成するリブとは、共通の直線上に配置されていることが好ましい。この場合、横リブ41によって剛性が向上した部分と、カバー補強部64を構成するリブによって剛性が向上した部分とが並ぶため、支持部材8及びカバー部材60の変形を抑制することができる。また、剛性向上のため、筒状部34とボス63との縦方向位置(縦方向の座標)が一致することが好ましい。なお、傾斜部21の横リブ41とカバー補強部64を構成するリブとを、互いに直線状に並ばないように変更してもよく、この場合、傾斜部21及びカバー部材60が撓みやすくなり着座感が向上する。
【0058】
傾斜部21がカバー部材60に当接している前後方向の範囲において、カバー部材60の下端は、レールカバー13の左右方向の内側に当接して支持される。レールカバー13はアッパレール12に支持されており、サイドメンバ14はベース部材65を介してアッパレール12に支持されている。これにより、カバー部材60の変形が抑制され、フレーム7に対する支持部材8の位置が一定する。また、カバー部材60の上下方向位置に関して、傾斜部21の側縁が当接する部分は、サイドメンバ14に当接するボス63と、レールカバー13に支持される下端との間にある。また、取付剛性が向上するように、傾斜部21の表面の延長面上にサイドメンバ14が配置される。
【0059】
図9に示すように、傾斜部21の表面はパッド9に当接し、パッド9の一部がカバー部材60と傾斜部21との間に進入している。そのため、傾斜部21の側縁は、パッドを介してカバー部材60に当接する。カバー部材60と傾斜部21との間に進入したパッド9によって、傾斜部21とカバー部材60との摩擦を避けることができ、摩擦音を抑制することができる。パッド9の左右の側端は、カバー部材60上に、すなわち、傾斜部21の側縁よりも左右の外方に位置する。このため、支持部材8の左右幅を小さくできる。なお、傾斜部21の撓みを大きくしたい場合は、パッド9の傾斜部21の表面に対向する面を傾斜部21に対して反った形状とすること等により、傾斜部21の側縁をカバー部材60から離間させ、パッド9がカバー部材60と傾斜部21との間に進入しないようにしてもよい。
【0060】
パッド9は、支持部材8の前部取付片56(
図2参照)上にも配置されることが好ましい。この場合、乗員の荷重がパッドを介して前部取付片56にかかるため、上方から前部クロスメンバ15(
図2参照)に係合している前部取付片56の係合強度が高まる。
【0061】
図5(B)及び(C)に示すように、パッド9におけるフック28に対向する部分には、上方に凹んだフック受容部66が形成される。フック受容部66によってパッド9とフック28との干渉を避けることができ、中央係止孔29及び側部係止孔30へのフック28の取り付け作業が容易になる。なお、フック28の脱落を抑制するため、パッド9におけるフック28に対向する部分をフック受容部66に代えてフック28に圧接するようにしてもよい。
【0062】
また、図示を省略するが、ヒーターをシートクッション2に設ける場合、ヒーターの基布の左右の側縁は、左右の傾斜部21の側縁よりも内側に位置し、好ましくは、左右の側部縦ワイヤー24bよりも内側に位置する。また、ヒーターの基布の前側は、後側よりも幅広であることが好ましい。
【0063】
図10は、シートバック3(
図1参照)におけるパッド101の背面図であり、
図11は、シートバック3のサイドフレーム102を前方内側から見た斜視図である。作業性向上のため、表皮材10(
図1参照)を固定するための表皮固定材103の内、表皮材10の上端側に設けられるものは、サイドフレーム102に取り付けられるエアバッグ104よりも上方に固定され、また、線状部材36の取り付け位置105はエアバッグ104の力布クリップ取付位置106から離間していることが好ましい。線状部材36がサイドフレーム102の表側に配置される場合は、表皮固定材103が外れないように、線状部材36と表皮固定材103との間にパッド101が配置されることが好ましい。剛性向上のため、表皮固定材103は、サイドフレーム102とロアフレーム(図示せず)とが互いに重なる位置や、溶接される位置に設けられることが好ましい。線状部材36をサイドフレーム102に固定する場合、剛性向上のため、線状部材36の取り付け位置105は、エアバッグ104に対向するビード107の近傍、かつモジュールホルダ108を避けた位置とすることが好ましい。また、剛性向上のため、エアバッグ104の取付位置はビード107の延長線上とすることが好ましい。更に作業性向上のため、モジュールホルダ108の取付位置は、側面視でサイドフレーム102のフランジ109を避けることが好ましい。
【0064】
パッド101は、表側に配置された主部101aと、主部101aの上部及び左右側部に重なるように裏側に配置されて、主部101aと協働してアッパフレーム(図示せず)及びサイドフレーム102を包む端部101bとを有する。主部101aには、表皮材10(
図1参照)を吊り込むための吊り込み孔110が設けられている。端部101bには、上部と左右側部との連結部に、内側から外側に向かう切り込み111が設けられている。主部101aの側部に設けられた貫通孔112は、サイドフレーム102に取り付けられたモジュールホルダ108と同一平面状に設けられる。貫通孔112は、支持部材113を保持するワイヤー114を避けた位置に設けられる。
【0065】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。表皮材の端部は、フックに代えてクリップ等の他の構造の係止部としてもよい。一部のリブを省略して部材の撓みを大きくしてもよい。線状部材の一部が、傾斜部以外の場所、例えば、剛性の高いサイドメンバ等に固定されてもよい。上記実施形態及び変形実施形態の構成は、シートバックに適用してもよく、車両以外の乗物、例えば飛行機等のシートに適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:シート
2:シートクッション
3:シートバック
7:フレーム
8:支持部材
13:レールカバー
14:サイドメンバ
14a:取付孔(第2取付孔)
20:本体
21:傾斜部
22:前部取付部
23:後部取付部
24:ワイヤー
34:筒状部
35:取付孔
36:線状部材(ワイヤーハーネス等)
37:クリップ
39:格子状補強部(第1補強部)
40:縦リブ(第3リブ)
41:横リブ(第1リブ)
60:カバー部材
63:ボス
64:カバー補強部(第2補強部、第2リブ)