(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】蓋体の溶着方法および加圧製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 51/22 20060101AFI20230510BHJP
B65B 7/16 20060101ALI20230510BHJP
B65B 31/00 20060101ALI20230510BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B65B51/22 100
B65B7/16 J
B65B31/00 A
B29C65/08
(21)【出願番号】P 2019022178
(22)【出願日】2019-02-09
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】菅原 信也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英俊
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-116833(JP,A)
【文献】特開2019-006457(JP,A)
【文献】米国特許第03947307(US,A)
【文献】米国特許第03827925(US,A)
【文献】実開昭57-105719(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/00
B65B 7/00
B65B 31/00
B29C 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の首部を有する容器本体の前記首部の上端に、開口を密封するための蓋体を溶着する方法であって、
前記首部の上端面と蓋体の対応する部位のうち、少なくとも一方の外周縁よりいくらか内側の位置に超音波溶着用の環状突起を設けた容器本体と蓋体を準備し、
前記首部の上端面に蓋体を載置し、
前記蓋体の天面における、前記環状突起と対応する部位より外側を除く
範囲で、環状突起と対応する部位およびそれより内側を含む範囲に
、底面が平坦な超音波溶着用のホーンを当接させて超音波溶着する、
蓋体の溶着方法。
【請求項2】
前
記蓋体の天面
の前記環状突起と対応する部位より外側が切り欠かれている請求項1記載の蓋体の溶着方法。
【請求項3】
前記ホーンの下面のうち、容器本体の首部の内面より内側の範囲に、空所が設けられている請求項1または2記載の蓋体の溶着方法。
【請求項4】
円筒状の首部を有する容器本体の前記首部の上端に、開口を密封するための蓋体を溶着する方法であって、
前記首部の上端面と蓋体の対応する部位のうち、少なくとも一方の外周縁よりいくらか内側の位置に超音波溶着用の環状突起を設けた容器本体と、蓋体を準備し、
前記容器本体が、円筒状の首部を有する外部容器と、前記外部容器の内部に収容され、外部容器の首部と嵌合する首部を有する内部容器とからなり、
前記内部容器が、その首部の上端に、外部容器の上端面から上に突出して外部容器の首部の上端面に係止されるフランジを有し、
前記蓋体が、外部容器および内部容器の首部の上端に当接する部位を有し、
前記蓋体を、外部容器および内部容器の首部の上端に載置し、
前記蓋体の天面における、前記環状突起と対応する部位より外側を除く範囲に超音波溶着用のホーンを当接させ、
前記蓋体を外部容器および内部容器の首部の上端にそれぞれ超音波溶着することにより、外部容器および内部容器の上端開口を密封する
、
蓋体の溶着方法。
【請求項5】
前記ホーンの下面のうち、内部容器の首部の内面より内側の範囲に、空所が設けられている請求項4記載の蓋体の溶着方法。
【請求項6】
前記蓋体が、内部容器のフランジの外周と嵌合する外筒部と、内部容器の首部に内挿する内筒部と、内部容器のフランジの上面と当接する平板部とを有し、
前記外筒部の下端が外部容器の首部の上端面と当接する請求項4記載の蓋体の溶着方法。
【請求項7】
容器本体と、その容器本体を閉じる蓋体と、容器本体内に充填される加圧剤とからなる加圧製品の製造方法であって、
請求項1~6のいずれかに記載の溶着方法によって蓋体で容器本体を密封し、
前記蓋体の溶着の前または後に、容器本体内に加圧剤を含む内容物を充填する、
加圧製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓋体の溶着方法および加圧製品の製造方法に関し、とくに加圧容器用の容器本体に蓋体を超音波溶着する蓋体の溶着方法およびその方法を用いた加圧製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図1には、上端に開口部を有する容器本体と、その開口部を閉じ、容器本体に固定されるバルブ収容部とからなり、バルブ収容部の上端のフランジ部を容器本体の口部に形成した段部に当接させて支持させ、フランジ部を溶着あるいは接着によって容器本体に気密に固定することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、容器本体の口部内に挿入されるエアゾールバルブを容器本体に固定するための固定蓋(固定部材)の下面を口部の上面に超音波溶着した吐出容器が開示されている。また特許文献2の段落[0041]には、口部の上面に断面三角形状の環状突起を設け、超音波振動を集中させて溶融させる技術が開示され、さらに溶融した樹脂が容器の内部に入り込まないよう、口部内面と固定蓋の外周面との間に溶融樹脂を貯めておく隙間を形成することが提案されている。
【0004】
特許文献3では、容器本体のフランジ(環状鍔)の上面を平らにし、そのフランジに重ねられるハウジングのフランジ(固定鍔)の下面に環状突起(溶着リブ)を設けるエアゾール容器の組み立て方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2015/80252号公報
【文献】特開2018-177265号公報
【文献】特開昭62-289255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の内容物収容容器では、ハウジングのフランジは容器本体の段部に支持された状態で熱溶着されるので、強度および気密性が不充分になりがちである。特許文献2の吐出容器では、容器本体の上面に形成された環状突起が溶融して流動するので、固着強度およびシール性が高い。また、内側に流れ出る溶融樹脂については一応の対策がとられている。しかし外側に流れ出た樹脂が固化して溶融くずとなることにより、面同士の密着が妨げられ、長期間のうちに漏れが生ずることがある。また、周囲にはみ出した溶融くずが美観を損なう。特許文献3の吐出容器においても同様な問題が生ずる。
【0007】
本出願人は未公開であるが、
図11に示す蓋体の溶着方法を提案している(特願2018-218704号)。この方法で製造される溶着容器100では、蓋体101と外部容器102の間と、蓋体101と内部容器103の間の2個所に溶着しようとする当接部(溶着部)104、105がある。それらの当接部104、105はホーンHと当接する蓋体101の天面107からの距離が異なっている。そのためホーンHから振動を加えると、溶着条件によっては内部容器103の当接部のみが充分に溶着され、外部容器は充分に溶着されないことがある。また、外部容器102を溶着するために外部容器に溶着条件を合わせると、内部容器102の溶着が不充分になりやすく、さらに外部容器から溶着くずがはみ出しやすい。
【0008】
本発明は容器本体に蓋体を溶着する溶着方法において、充分な溶着強度および気密性を得ることができ、とくに溶融樹脂の外側へのはみ出しを抑制することができる蓋体の溶着方法および加圧製品の製造方法を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の蓋体の溶着方法は、円筒状の首部13d、14dを有する容器本体16(外部容器13、内部容器14)の前記首部13d、14dの上端に、開口を密封するための蓋体15を溶着する方法であって、前記首部13d、14dの上端面13f、14eと蓋体15の対応する部位のうち、少なくとも一方の外周縁よりいくらか内側の位置に超音波溶着用の環状突起13g、14g、13g1、13g2を設けた容器本体16と蓋体15を準備し、前記首部13d、14dの上端面13f、14eに蓋体15を載置し、前記蓋体15の天面17cにおける、前記環状突起13g、14g、13g1、13g2と対応する部位より外側(R)を除く範囲に超音波溶着用のホーンHを当接させて超音波溶着することを特徴としている。
【0010】
このような蓋体の溶着方法においては、前記ホーンHの下面H1と蓋体15の天面17cのうち、いずれか一方または両方の径Dが、前記環状突起13g、14g、13g1、13g2の径と略同一であるか、またはいずれか一方または両方の前記環状突起と対応する部位より外側が切り欠かれていることが好ましい。
【0011】
さらに前記ホーンHの下面H1のうち、容器本体16の首部13d、14dの内面より内側の範囲に、空所Haが設けられていることが好ましい。
【0012】
前記容器本体16が、円筒状の首部13dを有する外部容器13と、前記外部容器13の内部に収容され、外部容器13の首部13dと嵌合する首部14dを有する内部容器14とからなり、前記内部容器14が、その首部14dの上端に、外部容器13の上端面13fから上に突出して外部容器13の首部13dの上端面13fに係止されるフランジ14fを有し、前記蓋体15が、外部容器13および内部容器14の首部13a、14dの上端に当接する部位(17a1、17b)を有し、前記蓋体15を、外部容器13および内部容器14の首部13d、14dの上端に載置し、前記ホーンHを蓋体15に当接して、前記蓋体15を外部容器13および内部容器14の首部13d、14dの上端13f、14eにそれぞれ超音波溶着することにより、外部容器13および内部容器14の上端開口を密封することが好ましい。
【0013】
前記ホーンHの下面H1のうち、内部容器14の首部14dの内面より内側の範囲に、空所Haが設けられていることが好ましい。
【0014】
前記蓋体15が、内部容器14のフランジ14fの外周と嵌合する外筒部17aと、内部容器14の首部14dに内挿する内筒部15a1と、内部容器14のフランジ14fの上面14eと当接する平板部17とを有し、前記外筒部17aの下端17a1が外部容器13の首部13dの上端面13fと当接することが好ましい。
【0015】
本発明の加圧製品の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる容器本体16、13と、その容器本体16、13に溶着されて容器本体16を閉じる蓋体15と、容器本体16、13内に充填される加圧剤Pとからなる加圧製品11aの製造方法であって、円筒状の首部13dを有する容器本体16、13と、前記首部13dの上端面13fと当接して溶着部Y2を形成する平板部17とを有し、前記首部13dの上端13fまたは蓋体15の平板部17の下面17cのうち、少なくとも一方に環状突起13gを備えた加圧容器11と、その加圧容器11に充填する加圧剤Pとを準備し、前記容器本体16、13の首部13dの上端面13fに蓋体15を載置し、前記蓋体15の天面17cにおける、前記環状突起13gと対応する部位より外側(R)を除く範囲に超音波溶着用のホーンHを当接させて超音波溶着し、前記容器本体16、13内に、蓋体15の溶着の前または後に加圧剤Pを含む内容物を充填することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蓋体の溶着方法は、蓋体の天面における、前記環状突起と対応する部位より外側を除く範囲に超音波溶着用のホーンを当接させて超音波溶着するので、超音波振動を発振するホーンを天面に当接し、加圧したとき、環状突起と対応する部位より外側では、ホーンの振動が伝わりにくい。そのため、蓋体の周囲に流れる振動エネルギーは少なくなる。そのため、溶けた環状突起は口部の上面と蓋体の下面の間に挟まれている範囲に留まり、外周面側へのはみ出しが減る。したがって内容物を充填して蓋体を超音波溶着した加圧製品は、はみ出した樹脂が冷やされてできた樹脂片(溶着くず)によって外観が損なわれない。また、溶着くずによって邪魔されず、溶着部(溶着される部材の当接され、押圧される部位)をより確実に溶着することができ、固着強度が向上し、内容物の漏れの発生が抑制される。
【0017】
前記ホーンの下面と蓋体の天面のうち、いずれか一方または両方の径が、前記環状突起の径と略同一である場合、またはいずれか一方または両方の前記環状突起と対応する部位より外側が切り欠かれている場合は、振動エネルギーが蓋体を介して環状突起に伝わりやすく、環状突起の溶解が容易になり、蓋体と容器本体とが溶着しやすい。また、ホーンの下面と対応する円の外側、あるいは環状の外周切り欠き部の下方には振動エネルギーが伝わりにくく、特に、環状突起より外側の部位に流れる振動エネルギーは少なくなる。そのため、溶けた環状突起は口部の上面と蓋体の下面の間に挟まれている範囲に留まりやすく、外周面側へのはみ出しが減る。
【0018】
前記ホーンの下面のうち、容器本体の首部の内面より内側の範囲に、空所が設けられている場合は、蓋体のうち環状突起がある範囲に振動エネルギーが伝わりやすく、容器本体の首部の内面に挿入されている部分、とくに蓋体の嵌合部に振動エネルギーが伝わりにくい。それにより蓋体の下部に設けられている部分、とくに被開封部(封盤部)が破断されにくい。
【0019】
前記容器本体が、円筒状の首部を有する外部容器と、前記外部容器の内部に収容され、外部容器の首部と嵌合する首部を有する内部容器とからなり、前記内部容器が、その首部の上端に、外部容器の上端面から上に突出して外部容器の首部の上端面に係止されるフランジを有し、前記蓋体が、外部容器および内部容器の首部の上端に当接する部位を有し、前記蓋体を、外部容器および内部容器の首部の上端に載置し、前記ホーンを蓋体に当接して、前記蓋体を外部容器および内部容器の首部の上端にそれぞれ超音波溶着することにより、外部容器および内部容器の上端開口を密封する場合は、外部容器の溶着部と内部容器の溶着部の高さが異なるにも関わらず、いずれの溶着部も密封性が高い。
【0020】
すなわち、通常は外側の溶着部と内側の溶着部で高さが異なる場合は、片方のみ(通常は高い内側)に振動エネルギーが集中して他方(通常は低い外側)の溶着が不充分になりがちである。しかし本発明の蓋体の溶着方法では、振動エネルギーが蓋体の天面の外周に拡がるのが抑制されるため、高さが異なる両方の溶着部をいずれも充分に溶着することができる。したがって内容物の漏れが長期にわたって抑制される。
【0021】
前記ホーンの下面のうち、内部容器の首部の内面より内側の範囲に、空所が設けられている場合は、蓋体のうち内部容器に挿入される部分に振動エネルギーが伝わりにくくなる。そのため蓋体の下部に設けられている部分、とくに被開封部(封盤部)が破断されにくい。
【0022】
前記蓋体が、内部容器のフランジの外周と嵌合する外筒部と、内部容器の首部に内挿する内筒部と、内部容器のフランジの上面と当接する平板部とを有し、前記外筒部の下端が外部容器の首部の上端面と当接する場合は、蓋体と外部容器および蓋体と内部容器との密封性が一層確実になる。
【0023】
本発明の加圧製品の製造方法は、蓋体の天面における、前記環状突起と対応する部位より外側を除く範囲に超音波溶着用のホーンを当接させて超音波溶着するので、超音波振動を発振するホーンを天面に当接し、加圧したとき、環状突起と対応する部位より外側では、ホーンの振動が伝わりにくい。そのため、蓋体の周囲に流れる振動エネルギーは少なくなる。そのため、溶けた環状突起は口部の上面と蓋体の下面の間に挟まれている範囲に留まり、外周面側へのはみ出しが減る。したがってはみ出した樹脂が冷やされてできた樹脂片(溶着くず)によって外観が損なわれない。また、溶着くずによって邪魔されず、溶着部(溶着される部材の当接され、押圧される部位)をより確実に溶着することができ、固着強度が向上し、内容物の漏れの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1Aは本発明の製造方法で得られた加圧製品を用いた吐出装置の一実施形態を示す断面図、
図1Bは加圧製品の組み立て前の断面図である。
【
図2】
図2Aは本発明の蓋体の溶着方法の一実施形態を示す要部断面図、
図2Bは溶着後の断面図である。
【
図4】本発明の製造方法に用いる加圧剤充填装置の一部断面正面図である。
【
図5】本発明の溶着方法の他の実施形態を示す要部断面図である。
【
図6】本発明の溶着方法のさらに他の実施形態を示す要部断面図である。
【
図7】本発明の溶着方法のさらに他の実施形態を示す要部断面図である。
【
図8】
図8Aは本発明の製造方法で製造する加圧製品の他の実施形態を示す断面図、
図8Bはその加圧製品に用いる溶着方法の要部断面図である。
【
図9】本発明の溶着方法の他の実施形態を示す断面図である。
【
図10】本発明の加圧製品の製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aに示す吐出装置10は、加圧容器(二重加圧容器)11と、その加圧容器11に装着される吐出部材12と、加圧容器11に充填された原液Cおよび加圧剤Pとからなる。加圧容器11に原液Cと加圧剤Pを充填したものが加圧製品11aである。加圧製品11aと吐出部材12は組み立て前のセット品として、あるいは吐出部材12を加圧製品11aの上端にいくらかねじ込んだ、しかも未開封の半結合状態で販売される。加圧製品11aは吐出部材12と共に販売されるほか、交換用として単独でも販売される。その場合は吐出部材12は繰り返し使用するので、省資源に資する。吐出部材12も単独で販売されることがある。
【0026】
図1Bに示す加圧容器11は、外部容器13と、その内部に収容されている可撓性を有する内部容器14と、外部容器13と内部容器14を封止するための蓋体(封盤)15とからなる。バルブやポンプは備えていない。外部容器13と内部容器14を組み合わせたものは容器本体16である。内部容器14の内部は原液Cを充填する原液収容室Scであり、外部容器13と内部容器14の隙間の空間は加圧剤Pを充填する加圧剤収容室Spである(
図1A参照)。それらは蓋体15によって封止されるが、
図1Bの状態では原液Cも加圧剤Pも充填されておらず、蓋体15も溶着されていない。この実施形態では、内部容器14で原液Cと噴射剤Pを分離して収容し、吐出部材12を装着することにより原液Cのみ吐出するようにしている。しかし内部容器14を用いず、容器本体16に加圧剤Pと原液Cとを混合して充填するようにしてもよい(
図8A、B、
図9参照)。その場合は原液Cと加圧剤Pが内容物となる。
【0027】
図1Bは蓋体15を容器本体16に被せる前の状態で示している。外部容器13は底部13aと、円筒状の胴部13bと、肩部13cと、円筒状の首部13dとからなる。首部13dの外周には雄ねじ13eが形成されている。首部13dは上端で開口しており、首部13dの上端面13fは蓋体15を安定して支持し、溶着できるように略平坦にしている。
【0028】
内部容器14も外部容器13と同様に、底部14a、胴部14b、肩部14cおよび首部14dからなる。首部14dの上端近辺が口部である。内部容器14の首部14dの外面は外部容器13の首部13dの内面との間にわずかな隙間を有するように嵌合されている。内部容器14の底部14aは外部容器13の底部13aと当接しており、加圧剤を充填するときや蓋体15を固着するときなど、内部容器14が下がらないように支持される。
【0029】
図2Aは容器本体16に蓋体15を被せた状態である。蓋体15の天面17cには超音波溶着用のホーンHが当接されている。蓋体15の溶着はまだ行われていない。このとき原液収容室Scに原液Cは充填されているが、加圧剤収容室Spに加圧剤Pは充填されていない。外部容器13の首部13dの上端面13fには、超音波溶着のときに蓋体15との当接圧を高くして溶解しやすくし、蓋体15と一体にするための溶着部(
図2BのY2)をつくる環状突起13gが形成されている。環状突起13gは断面略三角形で、とくに二等辺三角形ないし正三角形である。
【0030】
この実施形態では環状突起13gは首部13dの厚みの範囲の略中央に設けている。蓋体15側に環状突起を設け、首部13dの上端面13fは平坦とすることもできる。上端面13fの内部側には傾斜部13hが複数個設けられており、超音波溶着のときに溶けた樹脂が冷やされてできた樹脂片(溶着くず)がはみ出ないように収容するための空間としている。
【0031】
図2Aに示すように、内部容器14の首部14dの上部は外部容器13の上端面13fより突出しており、その突出している部位に外部容器13の上端面13fと係合するフランジ14fが形成されている。フランジ14fの厚さ(半径方向の寸法)は、外部容器13の首部13dの厚さの1/3~1/2程度である。そのため、フランジ14fを外部容器13の首部13dの上端面13fに係止させたとき、外部容器13の首部13dの上端面13fは外側の部分が覆われずに残る。前記外部容器13の上端の環状突起13gは、その外側の部分に設けられている。内部容器14の首部14dの上端面14eにも、超音波溶着のときに蓋体15との当接圧を高くして蓋体15との溶着部(
図2BのY1)をつくるための環状突起14gが形成されている。この実施形態ではこの環状突起14gも断面略三角形、とくに二等辺三角形ないし正三角形としている。
【0032】
内部容器14のフランジ14fの下面には、半径方向に延びる加圧剤充填用の横溝14hが等間隔で4カ所に形成されている。さらに内部容器14の首部14dの外周面には、その横溝14hと連通する縦溝14iが形成されている。縦溝14iは横溝14hから肩部14cの上端まで延びており、それにより加圧剤Pを加圧剤収容室Sp内に充填しやすい。
【0033】
外部容器13および内部容器14はいずれも合成樹脂製、とくにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製である。これらは、たとえば外部容器用のプリフォームの中に内部容器用のプリフォームを入れ、首部13d、14dの下端より下側を同時にブロー成形することにより製造することができる。とくに所定形状のプリフォームをインジェクション成形し、ついでブロー成形するインジェクション・ブロー成形法が好ましい。
【0034】
前記蓋体15は、内部容器14の首部14d内に挿入される有底筒状の封止部15aと、その上端に連続する環状のフランジ15bとからなる。封止部15aの上部は内部容器14の首部14dの内面と隙間をもって嵌合する内筒部15a1であり、下部は吐出部材12のバルブ21を着脱自在に収容し、シール材(
図1の符号28)を介して嵌合するバルブ収容部(嵌合筒部)15a2である。バルブ収容部15a2は内筒部15a1より小径である。
【0035】
蓋体15のフランジ15bは、封止部15aの上端から半径方向外向きに拡がる平板部17と、その平板部17の外縁から下向きに延びる外筒部17aとからなる。平板部17の下面17bは内部容器14の首部14dの上端面14e、とくに環状突起14gと当接して溶着部(
図2Bの符号Y1)を形成しシールする部位で、外筒部17aの下面17a1は外部容器13の首部13dの上端面13f、とくに環状突起13gと当接して溶着部(
図2Bの符号Y2)を形成しシールする部位である。内部容器14の溶着部Y1は、原液収容室Scと加圧剤収容室Spの間をシールする。外部容器13の溶着部Y2は、加圧剤収容部Spと外部の間をシールする。平板部17の天面17c(フランジ15bの天面)は超音波溶着機の超音波振動を発振するホーンHとの当接面である。ホーンHは円柱状で、下面H1は平坦である。
【0036】
図2Aの溶着方法の特徴は、ホーンHの下面H1が蓋体15の天面17cの全体に当接せず、天面17cのうち、外側の環状突起13gと対応する部位、とくに断面の三角形の頂点より外側の円環状の範囲RではホーンHが当接しない点である。すなわち、ホーンHの外径Dが蓋体15の天面17cの径より小さく、容器本体13の環状突起13gの径(平面視の径)と同一か、それよりいくらか大きい程度である。そして[天面17cの外径>ホーンHの下面の外径D≧外部容器の環状突起13gの径]となっている。なお、外筒部17aの外径は外部容器13の径(雄ねじ13eを除く)と略同一であるか、わずかに小さい。
【0037】
蓋体15の超音波溶着は、内部容器14内の原液収容室Scに原液Cを充填し、容器本体16の開口に蓋体15を被せた後、溶着用のホーンHを組み込んだ加圧剤充填装置(
図4の符号30参照)によって行うことができる。超音波溶着は、
図2Aの外部容器13と内部容器14の間の加圧剤収容室Spに加圧剤Pをアンダーカップ充填した後に行う。
【0038】
図2Aに示すように、ホーンHの外径Dが蓋体15の天面17cより小さいので、ホーンHが平板部17の天面17cに当接して下方に押圧し、振動エネルギーを天面17cから下方に付与したとき、振動エネルギーが外側に拡がりにくく、外筒部17aの外周側に流れる振動エネルギーが少なくなる。そのため、付与された振動エネルギーは下方に効率よく流れ、内部容器14と蓋体15の間の溶着部Y1と外部容器13と蓋体15の間の溶着部Y2を同時に溶着することができる。さらに溶着部Y2で溶けた樹脂のはみ出しが減り、固化した溶着くずによって邪魔されずに溶着することができる(
図2B参照)。
【0039】
溶着した後は、
図2Bに示すように、外筒部17aの下面17a1が外部容器13の上端面13fと溶着され、平板部17の下面17bが内部容器14の上端面14eと溶着され、加圧製品11aとなる。そして前述のように、溶融した樹脂が両者の隙間から外部にはみ出すことがない。また、2つの溶着部Y1、Y2は連続的に充分に溶着形成されるので、長期間にわたり加圧剤Pが加圧剤収容室Spから漏れ出すことがなく、また原液Cが原液収容室Scから漏れ出すことがない。溶着時に内側へはみ出した樹脂は、傾斜部(傾斜溝)13hに蓄えられ、加圧剤収容室Spに流れ込むことはない。
【0040】
なお、前記封止部15aの底部、すなわちバルブ収容部15a2の底部15cには、周囲に比して厚肉にされた受圧部15d1を備えた被開封部15dが設けられている。被開封部15dの周囲は、一部(連続部)15eを除き、環状溝などの弱め線15fで囲まれている。前記受圧部15d1は被開封部15dの上面全体に設けられ、弱め線15fは受圧部15d1の周囲を囲むように、底部15cの上面に形成されている。弱め線15fはたとえばV溝からなる。被開封部15dの連続部15eには、補強部(補強リブ)15gが半径方向外向きに延びるように設けられている。
【0041】
蓋体15の材料は外部容器13や内部容器14との熱接合性が高い熱可塑性樹脂が用いられ、外部容器13や内部容器14と同じ材料を用いることが好ましい。
図2Bに示すように、蓋体15で原液収容室Scと加圧剤収容室Spを封止すると共に、内部容器14および外部容器13の両方に固着することにより、内容物(原液C、加圧剤P)を長期間安全に、漏れないように保管しておくことができる。
【0042】
原液Cとしては、洗顔剤、洗浄剤、入浴剤、保湿剤、クレンジング剤、日焼け止め、化粧水、シェービング剤、脱毛剤、制汗剤、殺菌消毒剤、害虫忌避剤などの皮膚用品、トリートメント剤、スタイリング剤、染毛剤などの頭髪用品などの人体用品、ホイップクリーム、オリーブオイルなどの食品、消臭剤、芳香剤、殺虫剤、防虫剤、花粉除去剤、殺菌剤などの家庭用品、潤滑剤などの工業用品などである。但し、これらの用途に限られるわけではない。原液Cは被開封部15dの内面側と接触させるのが好ましい。それにより蓋体15と容器本体16との溶着時に被開封部15dが原液Cで冷やされ、被開封部15dが熱で溶ける問題を解消できる。
【0043】
加圧剤Pとしては窒素ガス、圧縮空気、炭酸ガスなどの圧縮ガスが好ましい。加圧剤により加圧容器11内の圧力を0.1~0.5MPa(25℃、ゲージ圧)、とくに炭酸飲料と同程度の圧力0.3~0.5MPa(25℃、ゲージ圧)にするのが好ましい。また、外部容器13の容量は30~500mlであることが好ましい。内部容器(原液収容室Sc)14の容量は20~300ml程度が好ましい。加圧剤収容室Spの容量は10~200ml程度が好ましい。
【0044】
上記のように、加圧容器11を用いた加圧製品11aは部品数が少なく、バルブを備えていないので、安価に製造することができる。そして加圧剤Pの圧力が低く、炭酸飲料などと同程度であるので、消費者が持ち運んだり、流通業者が配送したりするときに安全である。また、万一、外部容器13にひびが入っても、加圧剤Pが漏れるだけで内部容器14内の原液Cは漏れない。そのため一層安全である。
【0045】
つぎに
図3を参照して、
図1Aの吐出部材12を説明する。前記吐出部材12は、外部容器13の首部13dの雄ねじ13eと螺合するキャップ(装着部)20と、そのキャップ20によって保持されるバルブ21と、バルブ21のステム22に装着される操作ボタン(操作部、アクチュエータ)23とからなる。キャップ20は有底筒状で、内周面に雌ねじが形成されている。そして上底20aの下側に、バルブ21のハウジング24の上部を保持する筒状のバルブ保持部18aを備えたバルブホルダ18が取り付けられている。
【0046】
バルブ21は、有底筒状のハウジング24と、その内部に上下移動自在に収容される前述のステム22と、そのステム22を上向きに付勢するバネ25と、ハウジング24の上端とバルブホルダ18のラバー押さえ18bの間に介在されるステムラバー26とからなる公知の基本構造を有する。さらにこの実施形態では、ハウジング24の下端に下向きに突出する略円柱状の開封部27が設けられている。開封部27は蓋体15の下部に設けられる被開封部15d(
図2B参照)を破断して開封する部分である。ハウジング24の下部外周にOリングなどのシール部材28が装着されている。
【0047】
シール部材28は、開封時および開封後に蓋体15のバルブ収容部15a2の内周面とハウジング24の間をシールするものである。開封部27の中心にはハウジング24内部と連通する深穴27bが形成されており、開封部27にはその深穴27bの内部と外部を連通する横孔27cが形成されている。横孔27cは開封後にハウジング24内と内部容器14内の原液室Scとを連通して、吐出される原液の通路となる。横孔27cは破断した被開封部15dにより塞がれないため、安定した吐出状態が維持される。横孔27cに代えて、開封部27の中心に底面27aに達する縦孔を形成することもできる。また、横孔と縦孔を形成してもよい。
【0048】
開封部27の底面27aの高さ方向の位置は、キャップ20を外部容器13の雄ねじに1~2回程度螺合させたときに受圧部15d1(
図2B参照)と当接する位置である。したがって出荷時および流通時にはキャップ20を緩く螺合させて被開封部15dを破断せず、シール状態のまま吐出部材12と加圧容器11とを仮結合させておくことができる。そのため、購入した消費者はキャップ20を数回回してねじ込むだけで容易に開封することができる。
【0049】
使用者が購入した吐出装置10を使用する場合、まずキャップ20を外部容器の雄ねじ13eにねじ込む。それによりキャップ20全体およびバルブ21が下降し、開封部27の底面27aが被開封部15dを押し下げる。それにより被開封部15dは弱め線15fで破断され、バルブ収容部15a2の底部15cを突き破り、ハウジング24内と原液収容室Scとを連通する。その後は操作ボタン23を押し下げることにより、加圧剤Pの圧力によって原液Cを吐出することができる。
【0050】
つぎに
図4を参照して前述の加圧剤の充填と溶着に用いられる加圧剤充填装置の一例を説明する。
図4の加圧剤充填装置30は、ベース31と、そのベース31に設けられる昇降台32と、その昇降台32の上方に配置される筒状の充填具33と、その充填具33の上部開口を閉じ、充填具33内に昇降自在に設けられる超音波溶着用のホーンHとからなる。充填具33はベース21から立ち上がる2本の支柱35によって高さ調節自在に支持されている。充填具33の下端にはシール材36が設けられ、外部容器13の肩部13cに気密に当接する。ホーンHは流体シリンダまたはモータなどの駆動源を備えた昇降機構を介して超音波発振器に取り付けられている。
【0051】
ホーンHは、前述のように充填具33内をシールしながら上下に摺動できるように中部Hmが充填具33の内径に合わせられている。また、ホーンHは超音波発振器から振動エネルギーを下側に向けて増幅できるように、上部Huから中部Hmにかけて縮径し、さらに中部Hmから下部Hbにかけて縮径しており、下端近辺38は外部容器13の環状突起13gの径に合わせて細くされている。
【0052】
図5に示す溶着方法は、ホーンHの下面H1に略円柱状の空所Haを設け、下部近辺38を厚肉円筒状としている点が特徴である。ホーンHの下部近辺38の外径Dは、
図2Aのホーンと同様に外部容器13の上端の環状突起13gと略同径であり、空所Haの内径D1は内部容器14の首部14dの内径と略同径である。他は
図2Aの溶着方法と同様である。
【0053】
この溶着方法では、蓋体15の天面17cにホーンHを当接して振動エネルギーを付与したとき、振動エネルギーが外側や内側に広がらず、ほぼまっすぐ下に伝わる。そのため、内部容器14と蓋体15の間の溶着部Y1と外部容器13と蓋体15の間の溶着部Y2を同時に溶着することができ、さらに、外部容器13と蓋体15の間の溶着部で溶けた樹脂の外側および内側へのはみ出しが減り、固化した溶着くずによって邪魔されずに溶着することができる。また、外観もよくなる。また、振動エネルギーは内筒部15a1から底部15cに流れにくくなり、消費者が被開封部15dを開封しやすくするために設けられている弱め線15fの溶解を防止することができる。
【0054】
図6に示す溶着方法では、蓋体15のフランジ15bの天面、すなわち平板部17の天面17cの外周に、断面矩形状の外周切り欠き部17dが形成されている点である。そのため、外周切り欠き部17dより径が大きいものであれば、下面が平坦な円柱状を呈する一般的なホーンHを使用することができる。なお、外周切り欠き部17dの立ち壁17d1は、環状突起13gの頂点の位置と対応している。この溶着方法においても、外部容器13の環状突起13gより外側の範囲には超音波エネルギーが伝わりにくい。そのため、内部容器14と蓋体15の間の溶着部Y1と外部容器13と蓋体15の間の溶着部Y2を同時に溶着することができる。さらに、外部容器13と蓋体15の間の溶着部で溶けた樹脂の外側および内側へのはみ出しが減り、固化した溶着くずによって邪魔されずに溶着することができる。また、外観もよくなる。
【0055】
図7に示す溶着方法では、蓋体15の天面17cに外周切り欠き部17dを形成したことに加えて、内筒部15a1の上端角部に内周切り欠き部
33aを形成している。そのため、振動エネルギーは内筒部15a1からバルブ収容部15a2の底部15c側に流れにくくなり、消費者が被開封部15dを開封しやすくするために設けられている弱め線15fの溶解を防止することができる。
【0056】
図8Aに示す加圧製品40は、内部容器を備えておらず、外部容器13がそのまま容器本体となっている。そして蓋体15によりバルブ21を取り付けており、その蓋体15は外部容器13の首部13dの上端面13fに超音波溶着されている。バルブ21には、ディップチューブ41が装着されている。
図8Bに示すように、蓋体15は水平に広がる平板部17と、外部容器13の首部13dの内面に嵌合される嵌合部42およびその内側のバルブ保持部42aとからなる。バルブ保持部42aにバルブ21のハウジング24が取り付けられており、嵌合部42の外周面にOリング溝43が形成され、その中に収容されたOリング44が容器本体(外部容器13)と蓋体15の隙間をシールしている。
【0057】
外部容器13の首部13dの上端面13fには、同心状に2本の環状突起13g1、13g2が形成されている。そしてホーンHの外径Dは、外部容器13における外側の環状突起13g1と略同径である。また、ホーンHは、外部容器13の首部13dの内面45と対応する部位の近辺より内側を空洞46にしている。
【0058】
この加圧製品40においても、蓋体15の天面17cに筒状のホーンHを当接させて振動エネルギーを付与させると、振動エネルギーは主として環状突起13g1、13g2を含む下側に伝わり、外側の環状突起13g1より外側への広がりは抑制され、首部13dの内面45より内側への拡がりも抑制される。そのため、効率的に溶着が行われ、溶着くずが外側や内側に広がることが抑制される。さらに2本の環状突起13g1、13g2の両方を蓋体15に密に溶着することができ、長期にわたり内容物の漏れを抑制することができる。
【0059】
図9に示す溶着方法では、
図8Aと同様に、外部容器13のみで容器本体を構成しており、円筒状の下部を有するホーンHを用いている。そして
図6の溶着方法と同様に、蓋体15のフランジ15bの天面17cの外周に、断面矩形状の外周切り欠き部17dが形成されている。この方法では、ホーンHは、外周切り欠き部17dや蓋体15より径が大きいものを採用することができる。そしてこの溶着方法においても、外部容器13の環状突起13g1より外側には超音波エネルギーが伝わりにくい。そのため、外部容器13と蓋体15の間の溶着部で溶けた樹脂の外側および内側へのはみ出しが減り、固化した溶着くずによって邪魔されずに溶着することができる。また、外観もよくなる。
【0060】
図10に示す加圧容器の製造方法は、原液充填工程S1と、蓋体装着・収縮工程S2と、収縮外力解除工程S3と、加圧剤充填・蓋体溶着工程S4とからなる。収縮工程と収縮外力解除工程S3は省略してもよい。この製造方法では、始めに外部容器13に内部容器14を装着した容器本体16を準備しておく。二重の容器本体16は二重ブロー成形などによって製造することができる。そして原液充填工程S1のとき、内部容器14の上部に原液Cを充填しない空所(ヘッドスペース)Hsを残しておく。
【0061】
次の蓋体装着・収縮工程S2では、加圧剤収容室Spおよび原液収容室Scへのガスの出入りが可能な状態で蓋体15を装着し(蓋体装着工程)、外部容器13の胴部13bを外周から押し込み(収縮工程)、ヘッドスペースHs内の空気を排出する。なお、外部容器13の収縮後に蓋体15を装着してもよい。加圧剤収容室Spと外部とは
図2Aの横溝14hと縦溝14iによって外部と連通している。
【0062】
ついで収縮外力解除工程S3において、蓋体15で内部容器14を気密に封止しながら(溶着はまだ行わない)収縮外力を解除し、外部容器13が弾力的に元の形状に復帰する力を利用して、加圧剤収容室Spに外部から空気を吸引する。あるいは空気を注入してもよい。それにより、内部容器14と外部容器13の隙間を拡げて加圧剤収容室Spを形成する。このような収縮工程と収縮外力解除工程S3は、加圧剤収容室Spの形状をできるだけ均等にするためである。すなわち、内部容器と外部容器を二重ブロー成形などによって製造したときは、内部容器と外部容器が密着しており、加圧剤Pを充填するときに加圧剤収容室Spが不均一に拡がりがちである。そのため、加圧剤Pを充填する前に、あらかじめ収縮工程と収縮外力解除工程S3を行って隙間を均等にするのが好ましい。別個に成形した内部容器14を外部容器13に挿入する製造法などでは、収縮工程と収縮外力解除工程S3を省略することができる。
【0063】
収縮外力解除工程S3についで加圧剤充填・蓋体溶着工程S4を行う。この工程では蓋体15と外部容器13の隙間を通して加圧剤収容室Spに加圧剤Pを充填し(アンダーカップ充填)、蓋体15を外部容器13と内部容器14に溶着して密封する。このとき、たとえば
図4の加圧剤充填装置30などを採用することができ、
図2A、
図6~
図9の溶着方法を採用することができる。それにより溶着くずが外部に出にくく、蓋体15と外部容器13の密着性が高くなり、漏れが少なく、外観に優れた加圧製品を得ることができる。
なお、原液充填工程S1にて加温した原液を充填して内部容器を熱収縮させたり、原液充填工程S1の前に内部容器に熱風を吹き付けて熱収縮させてから原液を充填することもできる。これらの場合は収縮外力解除工程S3を省略することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々の変形を行うことができる。たとえば
図1Aなどの二重の容器本体16では、蓋体15は内部容器14と外部容器13の両方に溶着しているが、外部容器13のみに固着し、内部容器14とは単にOリングなどで封止(シール)するだけでもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、外部容器13や内部容器14など、容器本体16側に超音波溶着用の環状突起13g、14gを設けているが、容器本体16側の上端面を平坦とし、蓋体15の下面に環状突起を設けてもよい。また、前記実施形態では、吐出部材12の容器本体16への装着をネジ締めによって行うようにしているが、スナップ嵌合など、他の取り付け・固定方法を採用することもできる。
【0066】
図10の製造法では、加圧剤収容室Spに加圧剤Pを充填した後、蓋体15を容器本体16に溶着しているが、外部容器13の底部13aなどに加圧剤充填用バルブを設けているなどの場合は、先に蓋体15を容器本体16に溶着し、その後、加圧剤Pを充填することができる。その場合は、たとえば消費地に搬送した後、加圧剤Pを充填することができるので、搬送が容易になる。
図2AではホーンHの下部近辺の外径Dを外部容器13の環状突起13gと略同一としているが、
図6の蓋体15の外周切り欠き部17dと同様の環状の切り欠き部をホーンHに形成してもよい。さらにホーンHと蓋体15の両方に切り欠き部を形成してもよい。切り欠き部は断面矩形状のほか、テーパー状あるいは扇状であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 吐出装置
11 加圧容器
11a 加圧製品
12 吐出部材
C 原液
P 加圧剤
13 外部容器
13a 底部
13b 胴部
13c 肩部
13d 首部
13e 雄ねじ
13f 首部の上端面
13g 環状突起
13h 傾斜部
14 内部容器
Sc 原液収容室
Sp 加圧剤収容室
14a 底部
14b 胴部
14c 肩部
14d 首部
14e 上端面
14f フランジ
14g 環状突起
14h 横溝
14i 縦溝
15 蓋体
15a 封止部
15a1 内筒部
15a2 バルブ収容部(嵌合筒部)
15b フランジ
15c 底部
15d 被開封部
15d1 受圧部
15e 連続部
15f 弱め線
15g 補強部(補強リブ)
16 容器本体
17 平板部
17a 外筒部
17a1 外筒部の下面
17b 平板部の下面
17c 平板部の天面
R 円環状の範囲
17d 外周切り欠き部
17d1 立ち壁
18 バルブホルダ
18a バルブ保持部
18b ラバー押さえ
20 キャップ(装着部)
20a 上底
21 バルブ
22 ステム
23 操作ボタン
24 ハウジング
25 バネ
26 ステムラバー
27 開封部
27a (開封部の)底面
27b 深穴
27c 横孔
28 シール部材
H ホーン
H1 ホーンの下面
30 加圧剤充填装置
31 ベース
32 昇降台
33 充填具
35 支柱
36 シール材
37 昇降装置
38 ホーンの下端近辺
D ホーンの下部近辺の外径
Ha 空所
D1 空所の内径
33a 内周切り欠き部
Hu ホーンの上部
Hm ホーンの中部
Hb ホーンの下部
40 加圧製品
41 ディップチューブ
42 嵌合部
42a バルブ保持部
43 Oリング溝
44 Oリング
45 内面
13g1、13g2 環状突起
46 空洞
S1 原液充填工程
S2 蓋体装着・収縮工程
S3 収縮外力解除工程
S4 加圧剤充填・蓋体溶着工程
Hs ヘッドスペース