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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/02 20060101AFI20230510BHJP
   B65G 59/06 20060101ALI20230510BHJP
   B65G 59/08 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B65H1/02 A
B65G59/06 101B
B65G59/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019024527
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020132303
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】山本 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】竹本 衆一
(72)【発明者】
【氏名】宮倉 敏明
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保成
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044682(JP,A)
【文献】特開2011-026097(JP,A)
【文献】特開昭49-118169(JP,A)
【文献】特開昭48-070266(JP,A)
【文献】特開平10-258997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 31/00-31/40
B65G 59/06
B65G 59/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平積みされた複数のシートを前記複数のシートの搬送方向の前方へ反転させて移送するリフト部と、前記リフト部から移送された前記複数のシートを前記搬送方向に沿って移動させるコンベア部とを備えたシート供給装置であって、
前記リフト部は、上下方向に一致する平積み方向に沿って前記複数のシートを平積みした状態で保持する垂下姿勢と、前記複数のシートを反転させて前記コンベア部上に移送する前傾姿勢との間で回動し得るものであって、
前記リフト部は、
前記複数のシートの平積み方向に沿って延在するフレームと、
前記フレームに前記平積み方向に沿って移動可能に支持されており、前記複数のシートを搭載するフォーク部と、
前記フォーク部に設けられており、前記複数のシートの最下に位置する最下シートを吸着する吸着部と、
前記フォーク部に、前記フォーク部と一体に移動可能に取り付けられており、前記最下シートの端部と前記フレームとの間に介在して、前記最下シートの端部と前記フレームとの隙間を保つ第一支持部材と
を備え
前記第一支持部材は、前記前傾姿勢において前記最下シートのみを下方から支持する
ことを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記フレームの前記平積み方向の下方位置に設けられており、前記最下シートの上面に重ねられたシートの端部と前記フレームとの間の隙間を保つ第二支持部材を備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記第一支持部材は、少なくとも一枚の前記シートの厚さを有する形状に形成される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記第一支持部材は、少なくとも前記最下シートの前記端部との当接面が滑り性を有する部材により形成される
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項5】
複数の前記第一支持部材が前記フォーク部の機械幅方向に並べて配置されている
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記第一支持部材は、前記フォーク部の機械幅方向に延びた棒状に形成される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項7】
前記第一支持部材は、前記リフト部の機械幅方向に延びた棒状に形成される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項8】
前記第一支持部材は、前記フォーク部と一体に形成されたものである
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシート等のシートを、コルゲートマシン等の供給元装置から製函機,印刷機等の供給先装置に供給するために用いて好適なシート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、段ボールシート等のシートをコルゲートマシン等の供給元装置から製函機,印刷機等の供給先装置に供給するためのシート供給装置(以下単に「供給装置」)の一つとして、平積みされた複数のシートを反転してコンベヤ上に移送し、コンベヤが複数のシートを搬送方向に沿って移動させる構造を有するシート反転式の供給装置が知られる。
【0003】
図6(a)~(d)は、従来のシート反転式の供給装置を説明するための模式的側面図であり、供給装置の要部のみを抽出して示している。供給装置100は、台腕101を有する第一コンベア110を垂下姿勢から前傾姿勢に回動し得るように設けている。図6(a)は第一コンベア110が垂下姿勢の状態を示しており、(b)は第一コンベア110が垂下姿勢から前傾姿勢へ回動する経過を示し、(c),(d)は第一コンベア110が前傾姿勢の状態を示す。
【0004】
この供給装置100は、図6(a)に示す第一コンベア110が垂下姿勢の状態で、台腕101上に複数のシート130を平積みしておき、それから、第一コンベア110を垂下姿勢から前傾姿勢に回動させ〔図6(b)参照〕、図6(c)に示す第一コンベア110が前傾姿勢になった状態で、シート130が反転されて、下流の第二コンベア120上に移送される構造である。なお、前傾姿勢では台腕101が搬送方向に沿って移動し、反転されたシート130を第二コンベア120上へ押し出すようになっている(例えば下記特許文献1を参照)。
【0005】
ところで、平積みされた複数のシートのうち最下に位置されたシートには、傷や汚れが付いていることが多い。このため、シート反転式の供給装置100では、最下シートを第二コンベア120に移送せずに、不良シートとして排出する場合がある。この点、従来の供給装置100は、排出機構として、台腕101に内蔵された吸着部102を有するものがあった。吸着部102によって最下シート131を台腕101に吸着させておくことで、第二コンベア120上に移送させず、移送完了後に最下シート131を排除している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-44682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の供給装置100では、図6(c),(d)に示すように、第一コンベア110の上面と最下シート131との間に隙間がなかったので、最下シート131の一つ前のシート132が反転する際に、最下シート131を蹴り上げてしまい、最下シート131の吸着をはがしてしまう場合があった。その場合、最下シート131が第二コンベア120に移送されて他のシート130に混入してしまう。このため、最下シート131の混入に対応するための作業とそのための人員とが必要となる。
【0008】
こうした課題を解決するには、吸着部102の吸着力を強化することや、吸着部102の点数を増やすこと、といったアプローチもあるが、その場合、吸着に要するエネルギーの増加やコストアップといった別の課題が生まれてしまう。
【0009】
本発明のシート供給装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、シート反転式の供給装置において、吸着力を増強させることなしに、最下シートの吸着部からの離脱を防止できるようにすることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のシート供給装置は、平積みされた複数のシートを前記複数のシートの搬送方向の前方へ反転させて移送するリフト部と、前記リフト部から移送された前記複数のシートを前記搬送方向に沿って移動させるコンベア部とを備えたシート供給装置であって、前記リフト部は、上下方向に一致する平積み方向に沿って前記複数のシートを平積みした状態で保持する垂下姿勢と、前記複数のシートを反転させて前記コンベア部上に移送する前傾姿勢との間で回動し得るものであって、前記リフト部は、前記複数のシートの平積み方向に沿って延在するフレームと、前記フレームに前記平積み方向に沿って移動可能に支持されており、前記複数のシートを搭載するフォーク部と、前記フォーク部に設けられており、前記複数のシートの最下に位置する最下シートを吸着する吸着部と、前記フォーク部に、前記フォーク部と一体に移動可能に取り付けられており、前記最下シートの端部と前記フレームとの間に介在して、前記最下シートの端部と前記フレームとの隙間を保つ第一支持部材とを備え、前記第一支持部材は、前記前傾姿勢において前記最下シートのみを下方から支持することを特徴とする。
【0011】
(2)前記シート供給装置は、前記フレームの前記平積み方向の下方位置に設けられており、前記最下シートの上面に重ねられた前記シートの端部と前記フレームとの間の隙間を保つ第二支持部材を備えることが好ましい。
(3)前記第一支持部材は、少なくとも一枚の前記シートの厚さを有する形状に形成されることが好ましい。
(4)前記第一支持部材は、少なくとも前記最下シートの前記端部との当接面が滑り性を有する部材により形成されることが好ましい。
(5)複数の前記第一支持部材が前記フォーク部の機械幅方向に並べて配置されていることが好ましい。
(6)前記第一支持部材は、前記フォーク部の機械幅方向に延びた棒状に形成されるものであってもよい。
(7)前記第一支持部材は、前記リフト部の機械幅方向に延びた棒状に形成されるものであってもよい。
(8)前記第一支持部材は、前記フォーク部と一体に形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート供給装置によれば、フォーク部に第一支持部材を設けたことで、フォーク部を移動させつつシートを反転させる際に、第一支持部材が最下シートの端部とフレームとの間の隙間を保つことができる。したがって、第一支持部材を設けるだけの簡単な構成で、吸着力を増強させることなしに、最下シートの吸着部からの離脱を防止することができ、最下シートを確実に排除できる。その結果、最下シートの混入に対応するための作業とそのための人員とを低減でき、生産効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a),(b)は実施形態に係るシート供給装置の全体構成を説明する模式的側面図であって、(a)はリフト部が垂下姿勢にある状態を示し、(b)はリフト部が前傾姿勢になった状態を示す。
図2】実施形態に係るリフト部の主要部分を拡大して示す斜視図である。
図3】(a),(b)は実施形態に係るリフト部の主要部分を拡大して示す概略側面図であり、(a)はリフト部が垂下姿勢にある状態を示し、(b)はリフト部が前傾姿勢になった状態を示す。
図4】(a)~(d)は実施形態に係るシート供給装置の作用を説明する図である。
図5】(a),(b)は支持部材の変形例を説明する斜視図である。
図6】(a)~(d)は従来のシート反転式供給装置を説明する模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としてのシート供給装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.装置構成]
図1(a),(b)は、実施形態に係るシート供給装置の全体構成を説明する模式的側面図である。図中の方向(上,下,上流,下流)は、シート供給装置の搬送方向を基準とした方向を表す。通常は、シート供給装置は水平面に設置されるので、シート供給装置の上下方向は鉛直方向に一致する。また、搬送方向に直交する水平方向を機械幅方向とする。また、搬送方向の下流側を前方、上流側を後方とする。
【0016】
シート供給装置1(以下単に「供給装置」)は、例えば、段ボールシートを製造するコルゲートマシン(図示せず)と、段ボールシートを製函用シート材に加工する製函機(図示せず)との間に配備され、コルゲートマシンで製造された複数枚の段ボールシートを製函機に供給するために使用される。本実施形態において、複数のシート50Gを構成する各シート50は、段ボールシート等の厚みある板紙類である。
【0017】
この供給装置1は、シート反転式の供給装置として構成されており、複数のシート50Gが平積み搭載されるリフト部10と、リフト部10の下流に設けられたコンベア部20とを備え、リフト部10が平積みされた複数のシート50Gを反転させてコンベア部20上に移送して、コンベア部20が複数のシート50Gを搬送方向に沿って移動させる構造を有する。
【0018】
リフト部10は、コルゲートマシン等の供給元装置から供給された複数のシート50Gを平積みして、下流のコンベア部20に移送するために設けられている。このリフト部10は、フォーク部12がフレーム11の下端部に位置されて複数のシート50Gを平積みした状態で保持する垂下姿勢と、複数のシート50Gを反転させてコンベア部20上に移送する前傾姿勢との二つの姿勢を取り得る。図1(a)はリフト部10が垂下姿勢である状態を示し、図1(b)はリフト部10が前傾姿勢になった状態を示す。
【0019】
図1(a)に示す垂下姿勢の状態では、リフト部10に搭載された複数のシート50Gの平積み方向Dは上下方向に一致する。なお、本実施形態において「平積み方向」とは、複数のシート50Gの積層方向であり、リフト部10の姿勢によって変化するものである。
【0020】
[2.リフト部の構成]
リフト部10は、大別して、複数のシート50Gの平積み方向Dに沿って延在するフレーム11と、フレーム11に平積み方向Dに沿って移動可能に片持ち支持されており、複数のシート50Gを搭載するための搭載面12Aを有するフォーク部12と、複数のシート50Gを搭載面12Aに搬送するリフトコンベア19とを備える。
フォーク部12及びリフトコンベア19は、側面視でフレーム11に略垂直に交差する方向に配設されている。図1(a)に示す垂下姿勢の状態では、フォーク部12及びリフトコンベア19はフレーム11の下端部に位置されており、リフト部10(フレーム11とフォーク部12及びリフトコンベア19)は側面視でL字形状を成す。
【0021】
フレーム11には、図示しないチェーン,チェーンホイールを含む動力伝達機構が内蔵されており、図示しないモータによって動力伝達機構を作動させることで、フォーク部12が平積み方向Dに沿って移動される。フォーク部12は平積み方向Dに沿って双方向移動可能である。
【0022】
フレーム11において、フォーク部12とリフトコンベア19とが設けられた面とは反対側の面には、円弧状のアーチ部13が設けられており、アーチ部13の円弧内に架設された桁部13Aには、リフト部10を回動自在に支持する回動軸15が設けられている。
【0023】
リフト部10は、図示しないモータによって回動駆動され、回動軸15を中心に、図1(a)の垂下姿勢と図1(b)の前傾姿勢との一方から他方へ回動し得る。アーチ部13は、リフト部10が複数のシート50Gを搭載した状態で回動する際のバランスをとるために設けられている。なお、図1(b)では、垂下姿勢のリフト部10を二点鎖線で示す。
【0024】
フォーク部12には、複数のシート50Gの最下に位置するシート50(最下シート51とする)を吸着するための吸着部14が複数個内蔵されている。図1では側面視で二個の吸着部14のみが図示されている。吸着部14としては、例えば、真空による吸引力によって最下シート51を吸着する真空パッドを適用できる。
【0025】
また、フォーク部12には、可動側支持部材(第一支持部材)16が、フォーク部12と一体に移動可能に設けられている。可動側支持部材16は、最下シート51の端部〔図1(a)の垂下姿勢の状態で前方の端部〕とフレーム11との間に介在し、最下シート51の端部とフレーム11との隙間を保つ機能を果たす部材である。このため、可動側支持部材16は、図1(a)の垂下姿勢において、フォーク部12の搬送方向の前方側の端部に配置されており、フレーム11から搬送方向の後方側に向かって突出し、且つ、フォーク部12の搭載面12Aから平積み方向Dの上方に向かって突出している。
【0026】
図1に示すコンベア部20には、搬送方向の上流から下流に向かて、第一コンベア21,第二コンベア22,第三コンベア23,ホッパー24,第四コンベア25が順に設けられている。第一コンベア21,第二コンベア22,第三コンベア23,ホッパー24,第四コンベア25は、それぞれ複数のプーリと無端ベルトとを有し、図示しないモータ等の駆動機構によって駆動されて、搬送方向の上流から下流に向かて、無端ベルト上に載置された複数のシート50Gを移動させる。すなわち、第一コンベア21,第二コンベア22,第三コンベア23,ホッパー24,第四コンベア25が全体として、上流から下流に向かって一方向にシート50を搬送する搬送ラインを形成する。
【0027】
[3.支持部材]
図2はリフト部10の主要部分を拡大して示す斜視図である。また、図3(a),(b)はリフト部10の主要部分を拡大して示す側面図であり、図3(a)は垂下姿勢の状態を示し、図3(b)は前傾姿勢の状態を示す。なお、図3(b)では、フォーク部12の主要部分を、図3(a)よりも拡大して示している。なお、図2図3では、フレーム11の一部とアーチ部13との図示を省略している。
【0028】
図2に示すように、フレーム11は、機械幅方向に並べられた四本の柱体11A~11Dによって構成されており、各柱体11A~11Dに前記の動力伝達機構が内蔵されている。また、柱体11A~11Dの相互間の下端部には、柱体11A~11Dの間を塞ぐ板部材17が取り付けられている。
【0029】
図2に示すように、フレーム11には、三本のリフトコンベア19が片持ち状に固定される。各リフトコンベア19は、垂下姿勢の状態で搬送方向に延在する上面を有しており、各リフトコンベア19の上面にはコンベア19Aが設けられている。上面のコンベア19Aは、コルゲートマシン(図示せず)から供給された複数のシート50Gをフォーク部12の搭載面12Aに搬送する機能を果たす。コンベア19Aにより、各シート50は、搬送方向の前端側がフレーム11に突き当たる位置まで搬送される。ここで、フォーク部12に可動側支持部材16が設けられているので、少なくとも最下シート51〔図1(a)参照〕の前端側は可動側支持部材16に突き当たる。
【0030】
フォーク部12は、フレーム11に対する取り付け部となる基部12Bからフォーク状に延びた二本の腕部12Cを有する。二本の腕部12Cはリフトコンベア19同士の間に設けられている。これら腕部12Cが搭載面12A(図1参照)として機能する。また、図2に示す各腕部12Cには二個ずつ吸着部14が配置されており、各腕部12Cの吸着部14は搬送方向に並べられている。なお、フォーク部12の腕部12Cとリフトコンベア19の間には、最下シート51を排除するための、排除機構(図示せず)が設けられている。
【0031】
図2に示すフォーク部12には、機械幅方向に並べられた複数(図2では二つ)の可動側支持部材16が設けられている。これら可動側支持部材16は同一の構造を有する。
図2に示す可動側支持部材16は、ブロック状の樹脂部材からなり、上流側を向いた面16A(つまりシート50との当接面)が面取りされている。樹脂製であるため、少なくともシート50との当接面16Aが所定の滑り性を有する。この所定の滑り性とはシート50が滑らかに移動できる滑り易さである。この所定の滑り性と面取り加工とにより、可動側支持部材16にシート50が接触した際に傷つくことを抑制できる。
【0032】
また、図3(a)に示すように可動側支持部材16の厚さTは、少なくとも一枚のシート50の厚さ以上に設定される。本実施形態において支持部材の「厚さ」とは、平積み方向Dの寸法である。厚さTは、最も薄手のシート50の厚さを考慮して設定されるとよく、例えば、シート50として段ボールシートを扱う場合は、最も薄い段ボールシートを考慮して、3mm以上に設定されるとよい。
これにより、図3(b)に示す前傾姿勢において、最下シート51の一つ前のシート50(シート52とする)を、厚さT(シート50一枚分の厚さ)だけ搬送方向下流側に、最下シート51から隔離させることができる。したがって、最下シート51の一つ前のシート52の端部が最下シート51に接触することを、一層確実に抑制できる。
また、厚さTを少なくともシート一枚分の厚さとすることで、図3(a)に示す垂下姿勢において、シート52など、最下シート51よりも上面にあるシートが可動側支持部材16に当接しにくくなり、上面にあるシートに傷がつくことを抑制できる。
【0033】
また、可動側支持部材16の幅Wも、少なくとも一枚のシート50の厚さよりも大きく設定されるとよい。なお、支持部材の幅とは、平積み方向Dの直交方向の寸法とする。これにより、図3(b)に示す前傾姿勢において、最下シート51の端部とフレーム11との隙間として、シート一枚分の厚さを確保でき、一層確実に最下シートとその一つ前のシートとの接触を防止できる。
【0034】
また、フレーム11(詳しくは板部材17)の平積み方向Dの下方位置には、機械幅方向に並べられた複数(図2では三つ)の固定側支持部材18が設けられている。
固定側支持部材18は、専ら垂下姿勢の状態で、平積みされた複数のシート50Gのうち最下シート51の上面に重ねられた数枚のシート50の端部とフレーム11との間に介在し、最下シート51の上面に重ねられたシートの端部とフレーム11との間の隙間を保つために設けられている。固定側支持部材18は、フレーム11の下方位置に固定されており、フォーク部12と一体に移動しない。
【0035】
固定側支持部材18は、可動側支持部材16と比べて、平積み方向Dと機械幅方向との双方に面状に広がったパッド状の樹脂部材からなる。また、固定側支持部材18の上流側を向いた面(シート50との当接面)も面取り加工される。したがって、固定側支持部材18も、当接面の滑り性と面取り加工とにより、シート50に傷がつくことを抑制できる。加えて、固定側支持部材18は、機械幅方向に幅広のパット状に形成されているので、シート50と面で接触し、シート50に傷がつくことを抑制できる。
【0036】
図3(a)に示すように、固定側支持部材18の厚さは、可動側支持部材16の厚さTと比べて、平積み方向Dに長く延びており、固定側支持部材18の幅は、可動側支持部材16の幅Wよりも薄く設定されている。このため、固定側支持部材18は、垂下姿勢の状態では、最下シート51以外の下方のシート、具体的には、最下シート51の上面に重ねられた4枚のシート50(シート52,53,54,55とする)の端部とフレーム11との間に介在する。ただし、固定側支持部材18により確保される隙間は、可動側支持部材16により確保される隙間よりも狭い。
【0037】
なお、ここでは、固定側支持部材18が4枚のシートに対してフレーム11との隙間を確保する例を説明するが、固定側支持部材18によってフレーム11との隙間を確保するシートの枚数はこれに限らず、適宜の複数枚あるいは1枚であってもよい。また、固定側支持部材18の幅は、可動側支持部材16の幅Wと同一に設定されていてもよい。その場合、固定側支持部材18は、最下シート51を含む下方のシートの端部とフレーム11との隙間を保つ機能を有することになる。
【0038】
[4.作用]
次に上記の構成からなる供給装置1の作用を説明する。以下に説明する供給装置1の各部の動作は、図示しないコントロールユニットからの制御信号に基づいて制御される。
図4(a)~(d)は供給装置1のリフト部10が垂下姿勢から水平姿勢を経て前傾姿勢まで回動する様子を説明する模式的側面図であり、図4(a)はリフト部10が垂下姿勢の状態を示しており、(b)、(c)はリフト部10が垂下姿勢から前傾姿勢へ回動する経過を示しており、(d)はリフト部10が前傾姿勢まで回動された状態を示す。
【0039】
先ず、図4(a)に示す垂下姿勢の状態でフォーク部12に複数のシート50Gが平積み状態で搭載される。最下シート51の端部とフレーム11との間には、可動側支持部材16により隙間が確保されている。また、固定側支持部材18により、最下シート51の上面に重ねられたシート52~55の端部とフレーム11との間にも、隙間が確保されている。この状態で、最下シート51は、吸着部14の作動によりフォーク部12に吸着される。したがって、最下シート51は、可動側支持部材16の厚さTの分だけフレーム11と隙間をあけて、フォーク部12に吸着・保持される。
【0040】
次に、図4(b),(c),(d)に示すように、フォーク部12を平積み方向Dの下方から上方へ向かって移動させつつ、リフト部10を、垂下姿勢から前傾姿勢まで、搬送方向に向かって回動させる。図4(b)に示す状態では、可動側支持部材16はフォーク部12と一体に移動するので、最下シート51は可動側支持部材16により支持されている。一方、固定側支持部材18はフォーク部12と一体に移動せずフォークリフト19に固定されている。このため、図4(b)に示す状態では、最下シート51の上面に重ねられたシート52~55は、既に固定側支持部材18に支持されていない。しかし、シート52~55は、その上層のシート50と最下シート51との間に挟まれているため、シート52~55の端部とフレーム11との間の隙間が維持され得る。
【0041】
図4(c)に示すようにリフト部10が水平姿勢まで回動された状態で、複数のシート50Gは搬送方向の前方に向かって転倒を開始する。このとき、最下シート51は可動側支持部材16の支持によりフレーム11との間の隙間を維持しつつ、吸着部14により吸着されている。一方、シート52~55は、可動側支持部材16にも固定側支持部材18にも支持されていないので、フレーム11との間に維持されていた隙間の高さの分だけ自重で落下しつつ転倒を開始する。このため、フレーム11との間に隙間を空けない場合と比べてシート52~55を円滑に搬送方向の前方への転倒を開始させることができ、転倒姿勢を安定させ得る。
【0042】
つまり、シート50が前方へ転倒する際には、シート50の下端の後面側が後方のシート50を蹴り上げるように動作する。フォーク部12から離れているシート50の場合、隣接するシート50,50間の圧接状態は比較的緩やかであり、後方のシート50への蹴り上げの影響は少ないが、フォーク部12に近いシート50ほど、隣接するシート50,50間の圧接状態が強くなるため、後方のシート50への蹴り上げの影響が大きくなり、シート50の転倒姿勢が不安定になりやすい。この点、フォーク部12に近いシート50が自重で落下しつつ転倒すると、この後方のシート50を蹴り上げる動作が抑制され、シート50の転倒姿勢を安定させやすくなる。
【0043】
そして、図4(d)の前傾姿勢の状態で、最下シート51以外の複数のシート50Gは最上位置のシート56から順に、搬送方向の前方に向かって転倒し、反転され、第一コンベア21上に移送される。ただし、最下シート51は吸着部14の吸着によりフォーク部12に残り、第一コンベア21上に移送されない。
【0044】
図4(a)~(d)に示すリフト部10によるシート反転動作中、可動側支持部材16はフォーク部12と一体に移動するので、最下シート51は可動側支持部材16よりフレーム11との間の隙間を保つことができる。したがって、吸着部14の吸着力を増強することなしに、最下シート51が吸着部14から離脱することを抑制できる。
【0045】
従来の可動側支持部材16を持たない構造では、仮に最下シート51とフレーム11との間に隙間を空けた状態で最下シート51をフォーク部12に吸着させたとしても、例えば反転動作の反動やシートの自重等による必要な吸着力の変動のため、最下シート51の位置がズレ落ちてしまう場合がある。その場合、最下シート51の一つ前のシート52が反転する際に、最下シート51を蹴り上げてしまう可能性がある〔図6(d)参照〕。特に、供給装置1の運転速度(反転動作の速度)が速い場合や、処理対象のシート50が重たい場合などに、このような課題が生じやすい傾向がある。
この点、本実施形態によれば、複数のシート50Gの反転動作中も、可動側支持部材16の支持によって、最下シート51とフレーム11との間に所定の隙間を維持できる。したがって、最下シート51が吸着部14から離脱してフォーク部12から剥がれてしまう事態を抑制できる。加えて、最下シート51の上面に重ねられたシート52~55の端部とフレーム11との間にも隙間を確保したことで、前記の蹴り上げ動作が抑制され、シート52~55の反転姿勢が安定する。このため、図4(d)に示すように、一つ前のシート52による蹴り上げを抑制でき、最下シート51の離脱を一層確実に抑制できる。
【0046】
したがって、本実施形態の供給装置1では、複数のシート50Gを反転させる際に、最下シート51をフォーク部12に確実に吸着させておくことができ、最下シート51を除く複数のシート50Gが第二コンベア上に移送された後に、最下シート51を確実に排除できる。
【0047】
最下シート51を除く複数のシート50Gは、上記の反転動作の後、図1(b)に示すように、第一コンベア21上に移送され、部分的に折り重なった状態で、第一コンベア21から搬送方向の下流へ順次搬送される。
ここで、図1(b)に示す供給装置1では、第一コンベア21,第二コンベア22,第三コンベア23によって順次搬送されてきた複数のシート50Gは、ホッパー24にて一時滞留されるようになっている。そして、複数のシート50Gは、ホッパー24にて平積みされた状態で、下流の第四コンベア25に移送される。ホッパー24の下流側上方には規制部材26が設けられており、第四コンベア25に移送される複数のシート50Gの嵩が規制されている。第四コンベア25の下流には図示しない供給先装置(例えば、製函機や印刷機)が配備されており、複数のシート50Gは図示しない供給先装置に供給される。
【0048】
[5.変形例]
図5(a),(b)は可動側支持部材16の変形例である。上記の実施形態にかかる可動側支持部材16は、フォーク部12に取り付けた樹脂部材(フォーク部12とは別個の部材)であったが、図5(a)に示す可動側支持部材16aは、フォーク部12の基部12Bに一体形成(一体成型を含む)されている。つまり、この可動側支持部材16aは、フォーク部12と一体成型されたものでもよいし、同一部材を加工することで、フォーク部12と可動側支持部材16とを一体的に形成したものであってもよい。この場合、フォーク部12に別部材を取り付ける必要がなくなるので、部品点数を削減し、装置構成を一層簡素化できる。
また、図5(b)に示す可動側支持部材16bは、リフト部10の機械幅方向の全長にわたって延在する棒状部材によって構成される。この場合、機械幅方向の全長にわたって最下シート51を支持するので、最下シート51とフレーム11との隙間を一層確実に確保できる。あるいは、図5(b)において一点鎖線で示すように、可動側支持部材16cが、フォーク部12の機械幅方向の全長にわたって延在する棒状部材によって構成されていてもよい。
【0049】
[6.効果]
(1)上述した供給装置1では、フォーク部12に可動側支持部材16を設けたことで、フォーク部12を移動させつつ複数のシート50Gを反転させる際に、可動側支持部材16が最下シート51の端部とフレーム11との間の隙間を保つことができる。したがって、可動側支持部材16を設けるだけの簡単な構成で、吸着力を増強させることなしに、最下シート51の吸着部14からの離脱を防止することができる。このため、最下シート51を確実に排除できる。その結果、最下シート51の混入に対応するための作業とそのための人員とを低減でき、生産効率を向上できる。
【0050】
(2)また、上述した供給装置1では、フレーム11の平積み方向の下方位置に固定側支持部材18を設けたことで、最下シート51の上面に重ねられたシート52~55の端部とフレーム11との間に隙間を確保できる。これにより、シート52~55による蹴り上げを抑制し、シート52~55の姿勢を安定させる。このため、最下シート51の吸着部14からの離脱をより確実に防止できる。
【0051】
(3)また、上述した供給装置1では、可動側支持部材16の厚さTを少なくともシート一枚分としたことで、一層確実に最下シート51とその一つ前のシート52との接触を防止できる。また、部材16の厚さTをシート一枚分としたことで、最下シート51よりも上面のシートが可動側支持部材16に当接し難くなり、シートへの傷つけを抑制できる。
【0052】
(4)また、上述した供給装置1では、可動側支持部材16が樹脂部材からなり、当接面16Aが滑り性を有するため、シート50に傷がつくことを抑制できる。
【0053】
(5)また、上述した供給装置1では、複数個の可動側支持部材16をフォーク部12の機械幅方向に並べて配置することで、機械幅方向の複数個所で最下シート51を支持できるため、最下シート51の端部とフレーム11との間の隙間を一層確実に確保できる。
【0054】
(6)また、上述した可動側支持部材16の変形例において、可動側支持部材16がフォーク部12の機械幅方向に延びた棒状に形成される場合、フォーク部12の機械幅方向にわたって最下シート51を支持できるため、最下シート51の端部とフレーム11との間の隙間を一層確実に確保できる。
(7)また、上述した可動側支持部材16の変形例において、可動側支持部材16がリフト部10の機械幅方向に延びた棒状に形成される場合、リフト部10の機械幅方向にわたって最下シート51を支持できるため、最下シート51の端部とフレーム11との間の隙間を一層確実に確保できる。
【0055】
(8)また、上述した可動側支持部材16の変形例において、可動側支持部材16がフォーク部12と一体に形成される場合、部品点数を削減して、装置構成を簡素化できる。
【0056】
[7.その他]
上述した支持部材の構成は一例であって、上述したものに限られない。
例えば、複数のシート50Gを構成する各シート50は、段ボールシートに限らない。シート50としては、厚み,重さのある板紙類であることが好ましい。
【0057】
また、可動側支持部材16は樹脂部材に限らず、例えば金属であってもよい。
【0058】
また、可動側支持部材16と固定側支持部材18との両方を設ける構成に限らず、固定側支持部材18を省略して、可動側支持部材16のみを設ける構成であってもよい。
【0059】
また、供給装置1は、コルゲートマシンから製函機又は印刷機にシートを供給するために使用されることに限らず、任意の供給元装置から任意の供給先装置にシートを供給するために使用されてよい。
【0060】
また、供給装置1の構成は図1のものに限らない。例えば、本実施形態の供給装置1はアーチ部13を備えた回動構造を有していたが、図6に示す供給装置100と同様な回動構造を有するものでもよい。すなわち、フレーム11の端部が第一コンベア21に近接して配置されるとともに、このフレーム11の端部に設けた回動軸15を中心に、リフト部10が回動する構造において、フォーク部12に可動支持部材16を取り付けてもよい。この場合、フレーム11がシート搬送可能なコンベアで構成されてもよいし、フレーム11は搬送機構を持たずに単にフォーク部12を移動可能に支持する支持体(例えば本実施形態の柱体11A~11D)であってもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、リフト部10が、三本のリフトコンベア19と二本の腕部12cとを有する構成を例に挙げたが、リフトコンベア19の本数と腕部12cの本数とは、これに限定されない。また、リフト部10は、シート搬送可能なリフトコンベア19に替えてシート搬送機構を持たない固定腕を有する構造であってもよい。その場合、シート50は、図示しない搬送装置によりフォーク部12の搭載面12Aに搬送される。
【符号の説明】
【0062】
1 シート供給装置
10 リフト部
11 フレーム
12 フォーク部
14 吸着部
16,16a,16b,16c 可動側支持部材(第一支持部材)
18 固定側支持部材(第二支持部材)
19 リフトコンベア
20 コンベア部
50 シート
50G 複数のシート
51 最下シート
52 一つ前のシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6