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特許7274884液体ポンプ装置の流量推定方法、液体ポンプ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】液体ポンプ装置の流量推定方法、液体ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20230510BHJP
   G01F 1/34 20060101ALI20230510BHJP
   F04B 51/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
G01F1/00 F
G01F1/34 Z
F04B51/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019028371
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020134326
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 徳臣
(72)【発明者】
【氏名】栗原 義臣
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-241326(JP,A)
【文献】特開平10-131869(JP,A)
【文献】特開2010-209856(JP,A)
【文献】特開2013-40593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
F04B49/00-51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ポンプ装置から吐出される液体の流量を推定する流量推定方法であって、
前記液体ポンプ装置は、インバータによって駆動されるポンプ本体を備えるものであり、
前記インバータの運転周波数と、前記ポンプ本体の吐出側の圧力と吸い込み側の圧力との差分であるポンプ揚程と、前記ポンプ本体から吐出される液体の流量との関係を、複数の運転周波数および複数のポンプ揚程について実際に流量を測定することによって予め記憶しておき、
記憶している運転周波数とポンプ揚程と流量との関係に基づいて、実際の運転時に取得した運転周波数とポンプ揚程とにおける流量を推定することを特徴とする液体ポンプ装置の流量推定方法。
【請求項2】
ポンプ揚程として、前記ポンプ本体の吐出側において液体ポンプ装置の一部として提供される部位における液体の圧力と、前記ポンプ本体の吸い込み側において液体ポンプ装置の一部として提供される部位における液体の圧力との差分を用いることを特徴とする請求項1記載の液体ポンプ装置の流量推定方法。
【請求項3】
運転周波数とポンプ揚程と流量との関係をデータテーブルとして記憶し、実際の運転周波数およびポンプ揚程における流量を、前記データテーブルを補間することにより推定することを特徴とする請求項1または2記載の液体ポンプ装置の流量推定方法。
【請求項4】
運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を関数として記憶し、実際の運転周波数およびポンプ揚程における流量を、関数を用いた演算により推定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の液体ポンプ装置の流量推定方法。
【請求項5】
運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を、ポンプ揚程の高低に基づいて複数の領域に区分けするとともに、各領域における運転周波数とポンプ揚程と流量との関係をそれぞれ関数として記憶することを特徴とする請求項4記載の液体ポンプ装置の流量推定方法。
【請求項6】
インバータによって駆動されるポンプ本体と、
前記ポンプ本体の吐出側における液体の圧力と吸い込み側における液体の圧力との差分であるポンプ揚程を取得可能な圧力センサと、
前記インバータの複数の運転周波数と複数のポンプ揚程とにおける実際の流量を予め測定することにより得られた運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を記憶している記憶部と、
前記記憶部に記憶されている運転周波数とポンプ揚程と流量との関係に基づいて、実際の運転時に取得した運転周波数とポンプ揚程とにおける流量を推定する処理を行う制御部と、
を備えることを特徴とする液体ポンプ装置。
【請求項7】
前記圧力センサは、
前記ポンプ本体の吸い込み側において、液体ポンプ装置の一部として供給される部位に設けられている吸込圧センサと、
前記ポンプ本体の吐出側において、液体ポンプ装置の一部として供給される部位に設けられている吐出圧センサとにより構成されていることを特徴とする請求項6記載の液体ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体ポンプ装置の流量推定方法、液体ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば熱源機が利用する水を供給することなどに用いられる液体ポンプ装置は、一般的に、液体ポンプ装置から吐出される水の流量を測定するための流量計とともに使用されている。ただし、流量計は、直線的な配管に設置する必要があるなどその設置位置が制限されることがある。また、流量計は、仕様によるものの、液体に気泡が存在していたり配管が錆びたりしていると正しい測定ができないおそれがある。
【0003】
そのため、例えば特許文献1では、流量計を用いず、PQ特性に基づいてポンプから吐出する水の流量を測定することが提案されている。なお、PQ特性とは、ポンプの出口側と入口側の差圧(P)と、その差圧における流量(Q)との関係を示すものであり、一般的には定格周波数でインバータを駆動した際の特性としてポンプメーカーから提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-241326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際のポンプのPQ特性は、インバータの運転周波数ではなくポンプの回転数に依存しており、そのポンプの回転数は、いわゆるモータ滑りなどによっても変化する。そのため、定格周波数におけるPQ特性に基づいて流量を推定すると、実際の流量との間に誤差が生じることになる。
【0006】
そこで、実際の流量との誤差が少ない状態で流量を推定することができる液体ポンプ装置の流量推定方法、液体ポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の液体ポンプ装置の流量推定方法では、インバータによって駆動されるポンプ本体を備える液体ポンプ装置において、インバータの運転周波数と、ポンプ本体の吐出側の圧力と吸い込み側の圧力との差分であるポンプ揚程と、ポンプ本体から吐出される液体の流量との関係を、複数の運転周波数および複数のポンプ揚程について実際に流量を測定することによって予め記憶しておき、実際の運転時に取得した運転周波数とポンプ揚程とにおける流量を、記憶している運転周波数とポンプ揚程と流量との関係に基づいて推定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体ポンプ装置の構成を模式的に示す図
図2】運転周波数、ポンプ揚程、流量の関係を求める処理の流れを示す図
図3】運転周波数、ポンプ揚程および流量の関係をデータテーブルとして示す図
図4】実際の運転時において流量を求める処理の流れを示す図
図5】運転周波数、ポンプ揚程および流量の関係を関数として示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図1から図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、液体ポンプ装置1は、インバータ2によって駆動されるポンプ本体3、ポンプ本体3に吸い込まれる液体の圧力である吸込圧を検出する吸込圧センサ4、ポンプ本体3から吐出される液体の圧力である吐出圧を検出する吐出圧センサ5、制御部6、および記憶部7等を備えている。以下、ポンプ本体3に液体が吸い込まれる側を吸い込み側と称し、ポンプ本体3から液体が吐出される側を吐出側と称する。
【0010】
ポンプ本体3は、液体を送るものであり、本実施形態では液体として水を想定している。なお、液体を送るものであれば、ポンプ本体3の構造や種類あるいは能力については要求される仕様に応じたものを適宜選択すればよい。インバータ2は、制御部6からの制御指令に基づいて例えばPWM制御信号を生成および出力することにより、ポンプ本体3を駆動する。なお、インバータ2は周知の構成のものを採用すればよいので、詳細な説明は省略する。
【0011】
吸込圧センサ4は、本実施形態の場合、ポンプ本体3の吸い込み側に設けられている吸込配管8に設けられており、吸込配管8を流れる液体の圧力つまりはポンプ本体3に吸い込まれる液体の圧力を検出する。この吸込配管8は、液体ポンプ装置1の一部として供給される部位である。つまり、吸込圧センサ4は、液体ポンプ装置1の一部としてメーカーから供給される部位に設けられており、ポンプ揚程を取得可能な圧力センサを構成している。
【0012】
この吸込配管8には、吸込側バルブ9を介して外部の配管が接続される。以下、吸込配管8に接続される配管を入口配管10と称する。この入口配管10は、図示しない給水タンクに接続されている。
【0013】
吐出圧センサ5は、本実施形態の場合、ポンプ本体3の吐出側に設けられている吐出配管11に設けられている。この吐出圧センサ5は、吐出配管11を流れる液体の圧力、つまりは、ポンプ本体3から吐出される液体の圧力を検出する。吐出配管11は、液体ポンプ装置1の一部として供給される部位である。つまり、吐出圧センサ5は、液体ポンプ装置1の一部としてメーカーから供給される部位に設けられており、ポンプ揚程を取得可能な圧力センサを構成している。
【0014】
また、吐出配管11には、吐出側バルブ12を介して外部の配管が接続される。以下、吐出配管11に接続される配管を出口配管13と称する。この出口配管13は、液体ポンプ装置1と、例えばいわゆるチラーと称される熱源機14などの外部装置との間を接続している。つまり、本実施形態の液体ポンプ装置1は、熱源機14が利用するための水を供給することに用いられることを想定している。この熱源機14は、一般的に、必要となる最低流量は規定されているものの、必ずしも厳密な流量の調整は必要とせず、最低流量以上の水が供給されていれば正常に動作することができる装置である。
【0015】
制御部6は、例えばマイクロコンピュータで構成されており、吸込圧センサ4や吐出圧センサ5あるいは温度センサ15などで検出した水圧や温度に基づいて液体ポンプ装置1を制御する。この制御部6は、本実施形態では上位の制御装置16から与えられる流量指令値にもとづいて、ポンプ本体3を駆動するための制御指令を生成してインバータ2に出力する。また、制御部6は、詳細は後述するが、流量計を備えていない液体ポンプ装置1において、ポンプ本体3から吐出される水の流量を推定する推定部としての機能も備えている。
【0016】
記憶部7は、制御部6で実行するコンピュータプログラムなど、液体ポンプ装置1の動作に必要な各種のデータを記憶している。また、記憶部7には、詳細は後述するが、インバータ2の運転周波数と、吐出圧と吸込圧との差分であるポンプ揚程と、ポンプ本体3から吐出される液体の流量との関係を、予め複数の運転周波数および複数のポンプ揚程において実際に流量を測定することによって記憶している。この運転周波数とポンプ揚程と流量との関係は、例えば出荷前試験時など、液体ポンプ装置1を出荷する前に取得および記憶されている。
【0017】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、産業用に利用されるようなポンプには、一般的に流量計が設けられている。ただし、流量計は、直線的な配管に設置する必要があるなどその設置位置が制限される。また、流量計は、仕様によるものの、液体に気泡が存在していたり配管が錆びたりしていると正しい測定ができないおそれがある。そのため、流量計を設けずに流量を側的できることが求められている。
【0018】
しかし、本実施形態のようにインバータ2によって駆動されるポンプ本体3の場合、インバータ2の運転周波数が変化すれば流量も変化するものの、実際の流量は、運転周波数ではなく回転数に相関している。つまり、同一の運転周波数であっても、ポンプの回転数が変化した場合には、流量も変化する。また、ポンプの回転数は、いわゆるモータ滑りによって変化する。
【0019】
そのため、ポンプメーカーから提供される定格の運転周波数におけるPQ特性を利用すると、推定した流量と実際の流量とに誤差が生じてしまう。なお、PQ特性とは、ポンプの出口側と入口側の差圧であるポンプ揚程(P)と、そのポンプ揚程(P)における流量(Q)との関係を示すものである。そして、その誤差は、運転周波数が低い低周波数域や、流量が少なく且つポンプ揚程が比較的高い場合に顕著になる。
【0020】
そこで、本実施形態の液体ポンプ装置1は、以下のようにして、流量計を設けない場合であっても実際の流量との誤差が少ない状態で流量を推定することができるようにしている。
【0021】
液体ポンプ装置1は、例えば製品の出荷時にテストを行うことなどにより、実際に液体ポンプ装置1を駆動した状態における運転周波数とポンプ揚程と流量との関係、より厳密に言えば、複数の運転周波数および複数のポンプ揚程における実際に流量を取得している。以下、これら運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を取得する作業を、便宜的にデータ取得時と称する。また、データ取得には、流量を測定する流量計が一時的に設けられるものとする。
【0022】
具体的には、図2に示すように、データ取得時には、インバータ2の運転周波数を設定し(S1)、ポンプ揚程を設定する(S2)。このとき、ポンプ揚程は、例えばポンプ本体3の吐出側にバルブを設け、そのバルブの開閉度を調整することで設定あるいは変更することができる。続いて、その運転周波数とポンプ揚程とにおける流量を測定し(S3)、その運転周波数とポンプ揚程と流量とを記憶する(S4)。
【0023】
続いて、データ取得が完了したか否かを判定する(S5)。この判定は、必要とする数のデータが取得できたか否かによって判定される。本実施形態の場合、予め設定された数の複数の運転周波数と複数のポンプ揚程とにおいてそれぞれ流量を測定すれば、データ取得が完了したとしている。なお、それぞれの数は、運転周波数であれば例えば10Hz区切りで20Hzから80Hzの範囲、ポンプ揚程であれば例えば10kPa区切りで20kPaから400kPaまで範囲のように設定されている。ただし、ここで示した範囲や区切りは一例であり、これに限定されるものではない。
【0024】
データ取得が完了していない場合には(S5:NO)、ステップS1に移行して運転周波数を設定し、ステップS2においてポンプ揚程を設定した後、ステップS3において流量を測定する処理を繰り返す。なお、ここではステップS1に移行するとしているが、同一周波数で異なるポンプ揚程における流量を測定する場合には、ステップS1を省略してステップS2に移行すればよい。この場合、吐出側のバルブを全閉状態から徐々に開放していくことで、同一周波数における複数のポンプ揚程での流量を測定することができる。
【0025】
そして、全てのデータ取得が完了すると(S5:YES)、処理を終了する。このようにしてデータ取得を行うことにより、図3に示すように、複数の運転周波数と複数のポンプ揚程とにおける流量の実測値のマトリックスデータMが得られる。すなわち、運転周波数とポンプ揚程と流量との関係がデータテーブルとして記憶される。このとき記憶されるテーブルデータには、想定される運転周波数の範囲、且つ、想定されるポンプ揚程の範囲の運転周波数とポンプ揚程と流量との関係が記憶される。
【0026】
つまり、この図3には、液体ポンプ装置1の実際の特性が例えば運転周波数が10Hzでポンプ揚程が20kPaの場合には流量はHA1(立方メートル毎時)、運転周波数が10Hzでポンプ揚程が30kPaの場合には流量はHA2(立方メートル毎時)、運転周波数が20Hzでポンプ揚程が20kPaの場合には流量はHB1(立方メートル毎時)であることが示されている。なお、図3に示すHA1、HA2あるいはHB1は模式的なものであり、実際にはそれぞれ数値が記憶されている。
【0027】
ところで、ポンプ揚程は、吐出圧と吸込圧との差分として求められている。このとき、ポンプ揚程の取得態様がデータ取得時と実際の運転時とで異なると、流量の推定に誤差が生じる可能性がある。換言すると、データ取得時と実際の運転時とでポンプ揚程の取得態様が同じであれば、推定した流量は実際の流量とほぼ同じになると考えられる。
【0028】
そのため、本実施形態では、吸込圧センサ4と吐出圧センサ5を、それぞれ液体ポンプ装置1と一体で供給される吸込配管8と吐出配管11に設けている。換言すると、吸込圧センサ4と吐出圧センサ5は、液体ポンプ装置1を現場に設置して外部の配管が接続された場合であっても、また、外部の配管がどのような形状や種類のものであったとしても、基本的にその位置や構造あるいは形状などの取り付け態様が変化しない部位に設けられている。
【0029】
これにより、ポンプ揚程の取得態様をデータ取得時と実際の運転時とで同じにすることができ、より正確な流量の推定が可能になる。換言すると、ポンプ揚程として、ポンプ本体3の吐出側においてポンプ本体3に接続されている部位であって液体ポンプ装置1の一部として提供される部位における液体の圧力と、ポンプ本体3の吸い込み側においてポンプ本体3に接続されている部位であって液体ポンプ装置1の一部として提供される部位における液体の圧力との差分を用いることにより、より正確な流量の推定が可能になる。
【0030】
さて、実際に液体ポンプ装置1を運転する際には、制御部6は、図4に示すように、インバータ2の現在の運転周波数を取得し(T1)、現在のポンプ揚程を取得し(T2)、上記したデータテーブルに基づいて、取得した運転周波数とポンプ揚程とにおける流量を推定する(T3)。このとき、データテーブルに記憶されていない運転周波数またはポンプ揚程における流量は、データテーブルに記憶されている値を線形補間することによって推定される。例えば、運転周波数が15Hzでポンプ揚程が20kPaの場合、流量は、(HA1+HB1)/2のようにして推定される。なお、インバータ2の運転周波数は、制御部6が把握している。
【0031】
そして、制御部6は、運転が終了していない場合には(T4:NO)ステップT1に移行し、運転周波数の取得、ポンプ揚程の取得、および流量の推定を繰り返す。一方、制御部6は、上位の制御装置16等から運転の終了が指示された場合などにおいては、運転が終了したと判定し(T4:YES)、処理を終了する。その後、制御部6は、流量の推定を終えると、推定した流量に基づいてインバータの運転状態を制御する。なお、推定した流量は、異常の場合を除いて基本的に液体ポンプ装置1内での制御に用いられるものである。
【0032】
このように、液体ポンプ装置1は、予め実測した運転周波数とポンプ揚程と流量との関係に基づいて、流量計を用いることなく、実際の流量との誤差が少ない状態で流量を推定する。
【0033】
以上説明した構成によれば、次のような効果を得ることができる。
液体ポンプ装置1の流量推定方法では、インバータ2によって駆動されるポンプ本体3を備える液体ポンプ装置1において、インバータ2の運転周波数と、ポンプ本体3の吐出側の圧力と吸い込み側の圧力との差分であるポンプ揚程と、ポンプ本体3から吐出される液体の流量との関係を、予め複数の運転周波数および複数のポンプ揚程について実際に流量を測定することによって記憶しておき、記憶している運転周波数とポンプ揚程と流量との関係に基づいて、実際の運転時に取得した運転周波数とポンプ揚程とにおける流量を推定する。
【0034】
このような構成とすることにより、記憶している運転周波数とポンプ揚程と流量との関係に基づいて推定される流量は、液体ポンプ装置1の実際の運転状態に沿ったもの、つまりは、ポンプの回転数やモータ滑りなどが考慮されたものとなる。したがって流量計を用いることなく、実際の流量との誤差が少ない状態で流量を推定することができる。
【0035】
また、液体ポンプ装置1の流量推定方法では、ポンプ揚程は、吐出圧センサ5で検出された圧力と吸込圧センサ4で検出された圧力との差分として求められている。このとき、吐出圧センサ5は、ポンプ本体3の吐出側において、ポンプ本体3に接続されている部位であって液体ポンプ装置1の一部として提供される部位における液体の圧力を検出する。また、吸込圧センサ4は、ポンプ本体3の吸い込み側においてポンプ本体3に接続されている部位であって、液体ポンプ装置1の一部として提供される部位における液体の圧力を検出する。
【0036】
このような構成とすることにより、ポンプ揚程の取得態様をデータ取得時と実際の運転時とで同じにすることができ、より正確に流量を推定することができる。
【0037】
また、液体ポンプ装置1の流量推定方法では、運転周波数とポンプ揚程と流量との関係はデータテーブルとして記憶されており、実際の運転周波数およびポンプ揚程における流量は、データテーブルを用いて、あるいは、データテーブルを本実施形態では線形補間することにより推定される。
【0038】
このような構成とすることにより、予め用意すべきデータテーブルのデータ数を少なくすることができる。また、実際の運転時に流量を推定する際の演算量も削減することができる。また、記憶されるテーブルデータには、想定される運転周波数の範囲、且つ、想定されるポンプ揚程の範囲での運転周波数とポンプ揚程と流量との関係が記憶されるため、液体ポンプ装置1の運転状態が変化しても、その変化に追従して正確に流量を推定することができる。
【0039】
また、液体ポンプ装置1は、インバータ2によって駆動されるポンプ本体3と、ポンプ本体3の吐出側における液体の圧力と吸い込み側における液体の圧力との差分であるポンプ揚程を取得可能な圧力センサと、インバータ2の複数の運転周波数と複数のポンプ揚程とにおける実際の流量を予め測定することにより得られた運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を記憶している記憶部7と、記憶部7に記憶されている運転周波数とポンプ揚程と流量との関係に基づいて、実際の運転時に取得した運転周波数とポンプ揚程とにおける流量を推定する処理を行う制御部6と、を備える。
【0040】
このような構成とすることにより、液体ポンプ装置1は、流量計を用いることなく、実際の流量との誤差が少ない状態で流量を推定することができるなど、上記した流量推定方法と同様の各種の効果を得ることができる。
【0041】
また、液体ポンプ装置1は、圧力センサを、ポンプ本体3の吸い込み側においてポンプ本体3に接続されている部位であって液体ポンプ装置1の一部として供給される部位に設けられている吸込圧センサ4と、ポンプ本体3の吐出側においてポンプ本体3に接続されている部位であって液体ポンプ装置1の一部として供給される部位に設けられている吐出圧センサ5とにより構成されている。
【0042】
このような構成とすることにより、液体ポンプ装置1は、ポンプ揚程の取得態様をデータ取得時と実際の運転時とで同じにすることができ、より正確に流量を推定することができる。
【0043】
さて、上記した実施形態では運転周波数とポンプ揚程と流量との関係をデータテーブルとして記憶する例を示したが、それらの関係は、関数として記憶することもできる。すなわち、実際の運転周波数およびポンプ揚程における流量を、関数を用いて演算することにより推定する構成とすることができる。
【0044】
具体的には、図5に示すように、データ取得時に取得した運転周波数とポンプ揚程と流量とを縦軸をポンプ揚程(P)、横軸を流量(Q)としてプロットし、各点を通る最適曲線を求めることで、液体ポンプ装置1のいわゆるPQ特性を示す関数を求め、その関数を用いて実際の運転周波数およびポンプ揚程における流量を推定することができる。
【0045】
このとき、最適曲線を示す関数としては、PQ特性の一般式として知られている下記の(1)式を援用することができる。
P=A・Q^2+B・Q・(f/F)+C・(f・F)^2 ・・・(1)
ただし、Pはポンプ揚程、Qは流量、fは実際の運転周波数、Fは定格の運転周波数、A、BおよびCは係数であり、「・」は乗算を示し、「^」はべき乗を示している。
【0046】
図5の場合、グラフ(G1)は、定格の運転周波数、例えば60Hzにおける液体ポンプ装置1のPQ特性を示している。また、グラフ(G2)は、運転周波数が例えば40Hzにおける液体ポンプ装置1のPQ特性を示している。なお、図3には2つのグラフを示しているが、データ取得時に取得した複数の運転周波数について、それぞれ同様のPQ特性が得られている。
【0047】
このようにPQ特性を関数により得る構成、換言すると、運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を関数として記憶し、実際の運転周波数およびポンプ揚程における流量を、関数を用いた演算により推定する構成とすることもできる。このような構成によっても、流量計を用いることなく、実際の流量との誤差が少ない状態で流量を推定することができるなど、上記した実施形態と同様の各種の効果を得ることができる。
【0048】
ところで、上記した(1)式から分かるように、また、図5にも表されているように、実際の運転周波数(f)が一定であっても、ポンプ揚程(P)の変化量に対する流量(Q)の変化量は一定ではない。そして、その流量(Q)の変化量は、ポンプ揚程の高低によって変化する。
【0049】
そのため、運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を、ポンプ揚程の高低に基づいて複数の領域に区分けするとともに、各領域における運転周波数とポンプ揚程と流量との関係をそれぞれ関数として記憶する構成とすることもできる。具体的には、ポンプ揚程を相対的に高い高揚程域と相対的に低い低揚程域とに区分けし、高揚程域と低揚程域とにおける運転周波数とポンプ揚程と流量との関係を関数として求めることができる。なお、区分けする領域は3つ以上であってもよい。
【0050】
具体的には、図5に示す点P10は、グラフ(G1)つまりは定格の運転周波数において吐出側のバルブを全閉としたときのポンプ揚程である。なお、この点P10や後述する点P20のようにPQ特性のグラフと縦軸との交点は、その運転周波数におけるいわゆる締切全揚程を示している。
【0051】
図5の場合、締切全揚程の80%を閾値とし、閾値以上の領域を高揚程域として設定し、閾値未満の領域を低揚程域として設定している。なお、区分けする領域の数や閾値は、適宜選択することができる。具体的には、グラフ(G1)であれば、点P10の80%となる点P11を通る横軸に水平な仮想線とグラフ(G1)との交点P30を含んだ左方側が高揚程域となり、交点P30よりも右方側が低揚程域となる。同様に、グラフ(G2)であれば、点P20の80%となる点P21を通る横軸に水平な仮想線とグラフ(G2)との交点P31を含んだ左方側が高揚程域となり、交点P30よりも右方側が低揚程域となる。
【0052】
そして、各運転周波数におけるPQ特性について高揚程域と低揚程域とを設定すると、図5に破線のグラフ(G3)にて示すように、高揚程域と低揚程域とを区分けする境界線が設定される。このように高揚程域と低揚程域とに区分し、各領域において(1)式のように関数を求めれば、ポンプ揚程の高低に応じて適切な関数が選択され、より誤差の少ない状態で流量を推定することができる。
【0053】
また、実施形態では吸込圧センサ4を吸込配管8に設ける構成を例示したが、吸込圧センサ4は、ポンプ本体3、より厳密に言えば、ポンプ本体3の吸込側の構造の一部に設ける構成とすることができる。すなわち、吸込圧センサ4は、ポンプ本体3の吸い込み側において、ポンプ本体3またはポンプ本体3に接続されている部位であって液体ポンプ装置1の一部として供給される部位に設ける構成とすることができる。
【0054】
同様に、吐出圧センサ5は、ポンプ本体3、より厳密に言えば、ポンプ本体3の吐出側の構造の一部に設ける構成とすることができる。すなわち、吐出圧センサ5は、ポンプ本体3の吐出側において、ポンプ本体3またはポンプ本体3に接続されている部位であって液体ポンプ装置1の一部として供給される部位に設ける構成とすることができる。
【0055】
このような構成によっても、実施形態で説明したように、吸込圧センサ4および吐出圧センサ5は、ポンプ揚程をデータ取得時と同様の状態で取得することができることから、誤差が生じるおそれを低減することができる。また、吸込圧センサ4または吐出圧センサ5の一方をポンプ本体3に設ける構成とすることもできる。
【0056】
また、実施形態では液体ポンプ装置1と熱源機14とを別体で設ける例を示したが、熱源機14の筐体内に液体ポンプ装置1を組み込む構成とすることもできる。また、複数の熱源機14のうちの1台をマスターとし、マスターの熱源機14の制御ユニットを制御装置16として用いる構成とすることもできる。
【0057】
また、実施形態では圧力センサとして吸込圧センサ4と吐出圧センサ5の2つのセンサを設ける構成を例示したが、圧力センサとして1つの差分センサを設け、ポンプ揚程を直接的に検出する構成とすることもできる。
また、実施形態ではデータテーブルを線形補間する例を示したが、非線形で補間する構成とすることもできる。
【0058】
また、制御部6に実施形態で示した流量推定方法を実行させるコンピュータプログラム、または、そのコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体を用いて流量推定方法を実現することによっても、実施形態と同様に、流量計を用いることなく誤差の少ない状態で液体ポンプ装置1から吐出される液体の流量を推定することができる等の効果を得ることができる。
【0059】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
図面中、1は液体ポンプ装置、2はインバータ、3はポンプ本体、4は吸込圧センサ(圧力センサ)、5は吐出圧センサ(圧力センサ)、6は制御部、7は記憶部、8は吸込配管(液体ポンプ装置の一部として提供される部位)、10は入口配管(外部の配管)、11は吐出配管(液体ポンプ装置の一部として提供される部位)、13は出口配管(外部の配管)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5