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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】制御装置及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/028 20060101AFI20230510BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230510BHJP
   B66C 13/20 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
F15B11/028 A
E02F9/22 J
B66C13/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019031764
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020133856
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 正幸
(72)【発明者】
【氏名】住本 篤史
(72)【発明者】
【氏名】三上 晃右
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039620(JP,A)
【文献】特開平02-229329(JP,A)
【文献】特開昭58-174702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0298660(US,A1)
【文献】特開2000-161305(JP,A)
【文献】特開平09-013429(JP,A)
【文献】実開平06-037603(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/028
E02F 9/22
B66C 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を送り出すポンプからの流量を制御して前記流体によって駆動される駆動体の駆動制御を行う制御弁と、
前記駆動体と前記制御弁との間の一対の給排通路に設けられ、所定の信号に基づいて前記一対の給排通路のうちのいずれか一方の給排通路における前記流体の圧力を下降させる一対のリリーフ弁と
前記制御弁を駆動させるパイロット圧を出力する操作部と
を備え、
前記一対のリリーフ弁のそれぞれは、
前記パイロット圧が入力される第1ポートと、
前記給排通路における前記流体の圧力が入力される第2ポートとを有し、
前記操作部と前記第1ポートとの間に設けられ、前記第1ポートと前記操作部との連結と、前記第1ポートと前記流体が排出されるタンクとの連結とを切り替え可能な切替弁を備えた
制御装置。
【請求項2】
前記駆動体の駆動状態に応じて前記一対のリリーフ弁を駆動可能な他の制御弁を備えた請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の制御装置を備え、
前記ポンプは油圧ポンプであり、
前記駆動体は油圧アクチュエータである
建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、旋回体(キャブ)、バケット、ブーム等を駆動させるためのさまざまな油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータを駆動させるための油圧駆動装置とを備えている。油圧駆動装置は、操作部と、油圧アクチュエータに油を供給するための油圧ポンプと、各油圧アクチュエータに供給される油の流量を制御する油圧制御弁とを備えている。ここで、駆動装置の操作性を向上させるために、さまざまな技術が提案されている。
【0003】
例えば、旋回体を旋回させるにあたり、一旦操作部を操作すると、設定した制動域内を自動で旋回体が旋回し、制動域の終端で旋回体の旋回が自動で停止する制御装置がある。このような制御装置の具体的な構成としては、例えば、油圧アクチュエータと油圧制御弁との間にリリーフ弁を設けている。また、リリーフ弁にベント油路を設け、チェック弁を介してベント油路の下流に電磁比例弁を設けている。電磁比例弁の下流側は、油圧ポンプのポートに接続されている。また、ポンプ油路とタンク油路とが接続されている。
【0004】
このような構成のもと、タンク油路を絞るとポンプ油路の圧力が昇圧される。ポンプ油路の圧力が昇圧されると、ベント油路のチェック弁が閉塞される。そして、ポンプ油路の圧力の昇圧が電磁比例弁の後段に作用してベント油路の圧力が昇圧される。これにより、油圧アクチュエータにブレーキ力が作用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-24688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにタンク油路を絞ることによってポンプ油路の圧力を昇圧する場合、同時に油圧アクチュエータへの油の供給通路の圧力も昇圧されることになる。このため、油圧アクチュエータの動作によっては、安定したブレーキ力が得られない可能性があった。
また、タンク油路の絞りは、油圧アクチュエータの操作性を向上させるためにポンプ油路の圧力を調整する役割を有しているので、油圧アクチュエータの操作性が低下してしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、上述のような流体によって駆動される駆動体の操作性を損なうことなく、簡素な構造で安定したブレーキ力を得ることができる制御装置及び建設機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る制御装置は、流体を送り出すポンプからの流量を制御して前記流体によって駆動される駆動体の駆動制御を行う制御弁と、前記駆動体と前記制御弁との間の一対の給排通路に設けられ、所定の信号に基づいて前記一対の給排通路のうちのいずれか一方の給排通路における前記流体の圧力を下降させる一対のリリーフ弁と、前記制御弁を駆動させるパイロット圧を出力する操作部とを備え、前記一対のリリーフ弁のそれぞれは、前記パイロット圧が入力される第1ポートと、前記給排通路における前記流体の圧力が入力される第2ポートとを有し、前記操作部と前記第1ポートとの間に設けられ、前記第1ポートと前記操作部との連結と、前記第1ポートと前記流体が排出されるタンクとの連結とを切り替え可能な切替弁を備えた
【0009】
このように構成することで、リリーフ弁によって一対の給排通路のうちのいずれか一方の給排通路における流体の圧力を下降させると、駆動体に余計な負荷をかけることがなく、駆動体の自動運転化もできる。このため、駆動体の操作性を損なうことがない。
これに対し、リリーフ弁を閉塞して上記一方の給排通路における流体の圧力を昇圧させると、安定したブレーキ力を得ることができる。
また、給排通路の流体の圧力とパイロット圧との圧力差を信号とし、この信号に基づいてリリーフ弁を開閉させることができる。すなわち、パイロット圧よりも給排通路の流体の圧力が高い場合、リリーフ弁が開放される。これに対し、給排通路の流体の圧力よりもパイロット圧が高い場合、リリーフ弁が閉塞される。このようなリリーフ弁の開閉を利用して、駆動体へのブレーキ力を解除したり駆動体にブレーキ力を作用させたりできる。このため、制御装置を簡素な構造とし、安定したブレーキ力を得ることができる。
さらに、駆動体の操作性を損なうことなく、給排通路の流体の圧力とパイロット圧との圧力差に基づいて確実にブレーキ力を得ることができる。
【0014】
上記構成であって、前記駆動体の駆動状態に応じて前記リリーフ弁を駆動可能な他の制御弁を備えてもよい。
【0015】
このように構成することで、駆動体の駆動状況に応じてブレーキ力を発生させることが可能になる。このため、制御装置の使い勝手が向上し、安全性も高めることができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る制御装置は、流体を送り出すポンプからの流量を制御して前記流体によって駆動される駆動体の駆動制御を行う制御弁と、前記駆動体と前記制御弁との間の一対の給排通路に設けられるともに、前記流体が排出されるタンクに接続され、所定の信号に基づいて前記一対の給排通路のうちのいずれか一方の給排通路における前記流体の圧力を下降させる一対のリリーフ弁とを備え、前記一対のリリーフ弁のうち、一方の前記リリーフ弁が開放されているとき、他方の前記リリーフ弁が閉塞されており、前記制御弁を介して前記一対の給排通路のうちの一方の前記給排通路に流れ出る前記流体は、前記一方の前記給排通路に設けられた前記リリーフ弁が閉塞されているとき、閉塞された前記リリーフ弁では前記タンクに排出されず、前記駆動体を介して前記タンクに排出され、前記一方の前記給排通路に設けられた前記リリーフ弁が開放されているとき、開放された前記リリーフ弁を介して前記流体が前記タンクに排出される。
【0017】
このように構成することで、リリーフ弁の開閉を利用して、駆動体へのブレーキ力を解除したり駆動体にブレーキ力を作用させたりできる。このため、制御装置を簡素な構造とし、安定したブレーキ力を得ることができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る建設機械は、上述の制御装置を備え、前記ポンプは油圧ポンプであり、前記駆動体は油圧アクチュエータである。
【0019】
このように構成することで、操作性を損なうことなく、簡素な構造で安定したブレーキ力を得ることが可能な建設機械を提供できる。
【発明の効果】
【0020】
上述の制御装置及び建設機械は、操作性を損なうことなく、簡素な構造で安定したブレーキ力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態における建設機械の概略構成図。
図2】本発明の第2実施形態における建設機械の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1実施形態)
(建設機械)
図1は、建設機械100の概略構成図である。
建設機械100は、例えばラフテレーンクレーン等のクレーン車であり、旋回体101と、旋回体101を旋回駆動する駆動装置1とを備えている。
【0024】
(駆動装置)
図1に示すように、駆動装置1は、旋回体101を旋回駆動するための旋回用の油圧モータ(請求項の油圧アクチュエータに相当)2と、油圧モータ2を駆動するための油圧ポンプ(請求項のポンプに相当)3と、油圧モータ2の操作を行うための操作部4と、操作部4の出力信号に基づいて油圧モータ2の駆動制御を行う制御装置5及び制御部6とを主構成としている。油圧モータ2の出力軸2aに、旋回体101が連結されている。
【0025】
油圧ポンプ3は、油圧モータ2を駆動するためにこの油圧モータ2に圧油を供給する。油圧ポンプ3としては、例えば斜板式可変容量型の油圧ポンプが用いられる。斜板式可変容量型の油圧ポンプは、内部に、斜板とポンプ軸の回転に連動して往復運動するピストン(いずれも図示しない)とを有している。そして、斜板の傾斜角度によってピストンのストローク量を変化させ、圧油の吐出流量が調整できる。なお、油圧ポンプ3は、斜板式可変容量型の油圧ポンプに限られるものではなく、例えば、斜軸式容量型の油圧ポンプ等を用いてもよい。
【0026】
操作部4は、例えば図示しない操作レバーを有し、この操作レバーを傾けることによって信号としてのパイロット圧P1、及び操作信号S1を出力する。操作信号S1は、制御部6に入力される。
油圧ポンプ3の吐出ポートには、第1センター通路L1が接続されている。第1センター通路L1は、油圧ポンプ3とタンク7とを連通している。第1センター通路L1における油圧ポンプ3とタンク7との間に、制御装置5が接続されている。
【0027】
制御装置5は、第1センター通路L1に接続された第2センター通路L2と、第2センター通路L2に接続された制御弁9及び圧力補償制御部10と、操作部4に設けられ圧力補償制御部10の駆動制御を行う切替部8とを備えている。切替部8の切替信号S2は、制御部6に出力される。
【0028】
制御弁9は、いわゆる4ポート3位置方向制御弁である。制御弁9には、操作部4から出力されたパイロット圧P1が入力される。これにより、制御弁9が駆動される。
制御弁9は、一対の給排通路13a,13bを介して油圧モータ2に接続されている。制御弁9は、パイロット圧P1に基づいて第2センター通路L2を介して油圧ポンプ3から送られる油の流量を制御する。また、制御弁9は、制御した流量で、一対の給排通路13a,13bを介して油圧モータ2に油を供給する。制御弁9は、油圧モータ2への油の流量を制御することにより、油圧モータ2のブレーキ制御を行う。
【0029】
圧力補償制御部10は、第2センター通路L2における制御弁9よりも上流側(油圧ポンプ3側)の上流側通路L3に配置されている。圧力補償制御部10は、上流側通路L3に接続された第1切替弁11及び第2切替弁12を備えている。
【0030】
第1切替弁11は、上流側通路L3から分岐されてタンク7へと連通するバイパス通路16の途中に設けられている。第1切替弁11は、いわゆる2ポート2位置方向制御弁である。第1切替弁11は、上流側通路L3の油圧を所定値内に保持する役割を有する。また、第1切替弁11は、第1比例制御弁14を介して制御部6に接続されている。第1比例制御弁14は、制御部6からの出力信号に基づいて第1切替弁11に駆動油圧を供給する。これにより、第1切替弁11が駆動される。
バイパス通路16の第1切替弁11よりも下流側(タンク7側)には、チェック弁21が接続されている。チェック弁21は、バイパス通路16が所定の油圧以上になると開放される。
【0031】
第2切替弁12は、上流側通路L3のバイパス通路16との分岐点よりも下流側(制御弁9側)に設けられている。第2切替弁12は、いわゆる2ポート2位置方向制御弁である。第2切替弁12は、制御弁9に供給する油の流量を調整する役割を有する。また、第2切替弁12は、第2比例制御弁15を介して制御部6に接続されている。第2比例制御弁15は、制御部6からの出力信号に基づいて第2切替弁12に駆動油圧を供給する。これにより、第2切替弁12が駆動される。
【0032】
制御部6は、例えばECU(Electronic Contorol Unit)である。制御部6は、操作部4から出力される操作信号S1や切替信号S2に基づいて、駆動装置1を総括的に制御する。
また、制御部6は、第2切替弁12よりも上流側(油圧ポンプ3側)の絞り前油圧PGと、第2切替弁12よりも下流側(制御弁9側)の絞り後油圧LSGとの差圧(以下、第2切替弁12の前後の差圧という)を検出する。この検出結果、及び切替部8の切替信号S2に基づいて、制御部6は、第2切替弁12の前後の差圧が一定になるように第1切替弁11及び第2切替弁12の駆動を制御したり、制御弁9と第2切替弁12とを同期させたりする。なお、制御装置5の動作の詳細については後述する。
【0033】
制御弁9と油圧モータ2とを接続する一対の給排通路13a,13bには、一対のリリーフ弁17a,17bと、一対のチェック弁18a,18bとが接続されている。一対のリリーフ弁17a,17bは、油圧モータ2の過度の圧力上昇を防止するための安全弁としての役割を有するとともに、油圧モータ2にブレーキ力を作用させたりする役割を有する。
【0034】
リリーフ弁17a,17bは、パイロット圧P1が入力される第1ポート18と、一対の給排通路13a,13bが接続されて各給排通路13a,13bの油圧が入力される第2ポート19とを備えている。
第1ポート18と操作部4との間には、第3切替弁(請求項の切替弁に相当)20が接続されている。第3切替弁20は、操作部4の操作信号S1に基づいて、第1ポート18と操作部4との連結と、第1ポート18とタンク7との連結とを切り替える。
【0035】
(制御装置の動作)
次に、制御装置5の動作について説明する。
まず、圧力補償制御部10の動作について説明する。
圧力補償制御部10は、操作部4の切替部8から出力される切替信号S2に基づいて駆動状態と非駆動状態とに切り替わる。
【0036】
(非駆動状態)
制御部6に圧力補償制御部10の非駆動状態の切替信号S2が入力されると、第1切替弁11が開放されたままの状態になる。そして、操作部4から出力されるパイロット圧P1に基づいて制御弁9が駆動される。また、制御部6に操作部4の操作信号S1が入力されると、制御部6は、操作信号S1に基づいて第2切替弁12を駆動させる。この際、制御弁9、及び第2切替弁12は、同期して駆動する。油圧ポンプ3から送り出される油は、制御弁9、及び第2切替弁12によって流量が制御され、一対の給排通路13a,13bへと流れる。制御弁9によって制御された余剰油は、第2センター通路L2を介してタンク7へと還流される。また、第1センター通路L1及び上流側通路L3の油圧が所定圧以上になると、バイパス通路16に接続されているチェック弁21が開放されてタンク7へと油が還流される。このように、圧力補償制御部10の非駆動状態では、いわゆるブリードオフ制御(ブリードオフ方式)が行われる。
【0037】
(駆動状態)
制御部6に圧力補償制御部10の駆動状態の切替信号S2が入力されると、制御部6は、第2切替弁12の前後の差圧を検出する。制御部6には、予め第2切替弁12の前後の設定差圧領域(以下、単に設定差圧領域という)が記憶されている。制御部6は、第2切替弁12の前後の差圧を検出し、この差圧が設定差圧領域に収まるように第1切替弁11を駆動させる。具体的には、第2切替弁12の前後の差圧が設定差圧領域を下回る場合、第1切替弁11によってバイパス通路16が閉塞される。第2切替弁12の前後の差圧が設定差圧領域を上回る場合、第1切替弁11によってバイパス通路16が開放される。
【0038】
制御部6に操作部4の操作信号S1が入力されると、制御部6は、操作信号S1に基づいて第2切替弁12を駆動させる。これにより、制御弁9に供給される油の流量が制御される。第2切替弁12を介して制御弁9に供給された油は、制御弁9によって流量が制御され、一対の給排通路13a,13bへと流れる。このように、圧力補償制御部10の駆動状態では、第2センター通路L2の油圧が所定値内に保持されるように、いわゆる圧力補償制御(圧力補償制御方式)が行われる。
ここで、上記ブリードオフ制御、及び圧力補償制御の両制御では、制御弁9は、油圧ポンプ3から送り出される油の流量を制御することにより、油圧モータ2の駆動制御を行っていることから、油圧モータ2のブレーキ制御を行っているといえる。
【0039】
(リリーフ弁の動作)
次に、一対の給排通路13a,13bに接続されている一対のリリーフ弁17a,17bの動作について説明する。なお、以下では、説明を簡単にするために、操作部4の図示しない操作レバーを一方向に傾けることにより、一対の給排通路13a,13bのうち、給排通路13aが油圧モータ2に油を供給する側の通路となり(以下、供給通路13aという場合がある)、給排通路13bが油圧モータ2から油が戻る通路となる(以下、排出通路13bという場合がある)場合について説明する。
【0040】
上記のような操作部4の操作によって、第3切替弁20は、供給通路13a側におけるリリーフ弁17aの第1ポート18と操作部4とが連結されるように切り替わる。これにより、供給通路13a側のリリーフ弁17aにはパイロット圧P1がかかり、このパイロット圧P1と供給通路13aの油圧との差圧により閉塞される。リリーフ弁17aが閉塞されることにより、供給通路13aの油圧が昇圧される。
【0041】
一方、排出通路13b側のリリーフ弁17bにかかるパイロット圧P1が下降していく。このため、パイロット圧P1と排出通路13bとの差圧によってリリーフ弁17bが開放され、排出通路13bの油がタンク7に還流される。
このように、各給排通路13a,13bとパイロット圧P1との差圧を信号とし、この信号に基づいて供給通路13aが高圧となる一方、排出通路13bが低圧となる。このため、操作部4の1回の操作で、油圧モータ2は所望の方向に回転し続ける。つまり、油圧モータ2は、自動運転となる。
【0042】
油圧モータ2を停止させる場合、操作部4の図示しない操作レバーを一方向とは反対方向に傾ける。すると、第3切替弁20は、排出通路13b側におけるリリーフ弁17bの第1ポート18と操作部4とが連結されるように切り替わる。これにより、供給通路13a側のリリーフ弁17aにかかるパイロット圧P1が下降していく。このため、パイロット圧P1と供給通路13aとの差圧によってリリーフ弁17aが開放され、供給通路13aの油がタンク7に還流される。
【0043】
一方、排出通路13b側のリリーフ弁17bはパイロット圧P1がかかり、このパイロット圧P1と排出通路13bの油圧との差圧により閉塞される。リリーフ弁17bが閉塞されることにより、排出通路13bの油圧が昇圧される。このように、各給排通路13a,13bとパイロット圧P1との差圧を信号とし、この信号に基づいて排出通路13bが高圧となる一方、供給通路13aが低圧となる。このため、油圧モータ2にブレーキ力が作用する。
なお、油圧モータ2にブレーキ力を作用させる場合、つまり、図示しない操作レバーを反対方向に傾ける場合、第2切替弁12を閉塞するように制御することが望ましい。このように制御することにより、第2センター通路L2に無駄に油が流れ出てしまうことを防止できる。
【0044】
このように、制御装置5は、制御弁9と油圧モータ2との間の一対の給排通路13a,13bの途中に、リリーフ弁17a,17bを備えている。リリーフ弁17a,17bは、操作部4から出力されるパイロット圧P1、操作信号S1、及び給排通路13a,13bの油圧に基づいて、一対の給排通路13a,13bのいずれか一方の油圧を下降させている。これに対し、一対の給排通路13a,13bのいずれか他方の油圧が昇圧される。このため、油圧モータ2に余計な負荷をかけることがなく、油圧モータ2の自動運転化もできる。よって、油圧モータ2の操作性を損なうことがない。
また、操作部4の操作に基づいてリリーフ弁17a,17bの開閉が逆転すると、上記一方の給排通路13a,13bの油圧が昇圧されて、安定したブレーキ力を得ることができる。
【0045】
また、リリーフ弁17a,17bは、パイロット圧P1が入力される第1ポート18と、各給排通路13a,13bの油圧が入力される第2ポート19とを備えている。このため、各給排通路13a,13bの油圧とパイロット圧P1との圧力差を信号とし、この信号に基づいてリリーフ弁17a,17bを開閉させることができる。すなわち、パイロット圧P1よりも給排通路13a,13bの油圧が高い場合、対応するリリーフ弁17a,17bが開放される。これに対し、給排通路13a,13bの油圧よりもパイロット圧P1が高い場合、対応するリリーフ弁17a,17bが閉塞される。このようなリリーフ弁17a,17bの開閉を利用して、油圧モータ2へのブレーキ力を解除したり油圧モータ2にブレーキ力を作用させたりできる。このため、制御装置5を簡素な構造とし、安定したブレーキ力を得ることができる。
【0046】
また、第1ポート18と操作部4との間には、第3切替弁20が接続されている。第3切替弁20は、操作部4の操作信号S1に基づいて、第1ポート18と操作部4との連結と、第1ポート18とタンク7との連結とを切り替える。このため、油圧モータ2の操作性を損なうことなく、給排通路13a,13bの油圧とパイロット圧P1との圧力差に基づいて確実にブレーキ力を得ることができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、図2に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。
図2は、第2実施形態における建設機械200の概略構成図である。なお、図2では、前述の第1実施形態と同一態様については、同一符号を付して説明を省略する。
図2に示すように、建設機械200に用いられる駆動装置201では、以下の点が前述の第1実施形態と相違する点である。すなわち、駆動装置201の制御装置205は、油圧モータ2の駆動状況に応じてリリーフ弁17a,17bを駆動させる。
【0048】
より具体的には、一対のリリーフ弁17a,17bのうちの一方のリリーフ弁17aは、第3比例制御弁33(請求項の他の制御弁に相当)を介して制御部6に接続されている。第3比例制御弁33は、制御部6からの出力信号に基づいて一方のリリーフ弁17aに駆動油圧を供給する。また、一対のリリーフ弁17a,17bのうちの他方のリリーフ弁17bは、第4比例制御弁34(請求項の他の制御弁に相当)を介して制御部6に接続されている。第4比例制御弁34は、制御部6からの出力信号に基づいて他方のリリーフ弁17bに駆動油圧を供給する。このように、一対のリリーフ弁17a,17bは、第3切替弁20の他、第3比例制御弁33及び第4比例制御弁34によって駆動される。
【0049】
また、制御装置205は、油圧モータ2における出力軸2aの回転数や回転角度等を検出するセンサ40を備えている。このセンサ40の検出結果は、信号として制御部6に出力される。制御部6は、センサ40からの出力信号に基づいて、リリーフ弁17a,17bを駆動させる。すなわち、制御部6は、例えば出力軸2aの回転数が所定回転数以上の場合や出力軸2aの回転角度(旋回体101の制動域)が所定角度(所定制動域)以上の場合、油圧モータ2にブレーキ力が作用するようにリリーフ弁17a,17bを駆動させる。
【0050】
この他、制御弁9は、第5比例制御弁35及び第6比例制御弁36を介して制御部6に接続されている。第5比例制御弁35及び第6比例制御弁36は、制御部6からの出力信号に基づいて制御弁9に駆動油圧を供給する。これにより、制御弁9が駆動される。
【0051】
このように、制御装置205は、制御部6からの出力信号に基づいてリリーフ弁17a,17bを駆動させる第3比例制御弁33、第4比例制御弁34を備えている。このため、油圧モータ2の駆動状況に応じ、油圧モータ2にブレーキ力を発生させることができる。よって、本第2実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様の効果に加え、制御装置205の使い勝手が向上され、制御装置205の安全性も高めることができる。
【0052】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、建設機械100,200は、油圧ショベルである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざま建設機械に上述の駆動装置1,201(制御装置5,205)を適用することができる。
【0053】
また、上述の実施形態では、制御装置5は、油圧ポンプ3から送り出される油によって、油圧モータ2を駆動させる油圧回路に適用されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、制御装置5の構成は、油以外のさまざまな流体の回路に適用することが可能である。
【0054】
また、上述の実施形態では、油によって駆動される駆動体として、油圧モータ2を用いて説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、駆動体として、油圧シリンダ等、さまざまなアクチュエータを用いることが可能である。
【0055】
また、上述の第2実施形態では、センサ40は、油圧モータ2における出力軸2aの回転数や回転角度等を検出するものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、所望のセンサを用いることが可能である。例えば、センサ40によって油圧モータ2の温度を検出してもよい。また、建設機械200のアーム等にセンサ40としてモニタを設け、建造物等の接近を検出するようにしてもよい。そして、油圧モータ2の温度が所定温度以上に上昇した場合や建造物等とアームとの距離が所定以上に縮まった場合に、油圧モータ2にブレーキ力を作用させるようにしてもよい。
【0056】
また、上述の第2実施形態では、制御部6の出力信号に基づいてリリーフ弁17a,17bを駆動させる制御弁として、第3比例制御弁33や第4比例制御弁34を用いた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第3比例制御弁33や第4比例制御弁34に代わってさまざまな制御弁を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,201…駆動装置、2…油圧モータ(駆動体、油圧アクチュエータ)、3…油圧ポンプ(ポンプ)、4…操作部、5,205…制御装置、9…制御弁、13a,13b…給排通路、17a,17b…リリーフ弁、18…第1ポート、19…第2ポート、20…第3切替弁(切替弁)、33…第3比例制御弁(他の制御弁)、34…第4比例制御弁(他の制御弁)、100,200…建設機械
図1
図2