(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】自走式ロボット及びこれを用いたマーキング方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20230510BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230510BHJP
E04F 21/20 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
E04G21/18 B
G05D1/02 K
E04F21/20 Z
(21)【出願番号】P 2019033268
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519068283
【氏名又は名称】株式会社イノベリタ
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100193839
【氏名又は名称】杉山 周平
(72)【発明者】
【氏名】小林 淳彦
(72)【発明者】
【氏名】亀田 修
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-011347(JP,A)
【文献】特開昭59-167716(JP,A)
【文献】特開2012-208592(JP,A)
【文献】特開平01-239608(JP,A)
【文献】特開2005-315746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0100496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/16、21/18
E04F 21/00、21/20
G01C 15/02
G05D 1/02
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルを設置する設置面にマーキングを行う自走式ロボットであって、
走行装置を有する本体部と、
前記本体部に配置される第1マーキング部と、
前記第1マーキング部から、前記フロアパネルの一辺の長さに対応する間隔をおいて前記本体部に配置される第2マーキング部と、
平面視で、前記第2マーキング部を通り、前記第1マーキング部と前記第2マーキング部を結ぶ線と直交する線上に位置するように前記本体部に配置され、前記設置面の画像を取得する複数の撮像部と、を備える自走式ロボット。
【請求項2】
前記第1マーキング部及び前記第2マーキング部の少なくとも何れか一方は、前記設置面にシンボルを描画するスタンプ式である請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項3】
前記第1マーキング部は、前記複数の撮像部間を結ぶ線に平行な直線を含むシンボルマークを描画する請求項1又は2に記載の自走式ロボット。
【請求項4】
前記複数の撮像部のうちの1つと前記第2マーキング部が、前記フロアパネルにおける前記一辺と前記一辺に向かい合う対向辺との間の距離に対応する間隔をおいて配置される請求項1から3の何れかに記載の自走式ロボット。
【請求項5】
平面視で、前記第1マーキング部を通り、前記第1マーキング部と前記第2マーキング部を結ぶ線と直交する線上に位置するように前記本体部に配置される第3マーキング部を更に備える請求項1から4の何れかに記載の自走式ロボット。
【請求項6】
前記第3マーキング部は、前記設置面にシンボルを描画するスタンプ式である請求項5に記載の自走式ロボット。
【請求項7】
前記第3マーキング部と前記第1マーキング部は、前記フロアパネルの前記一辺と前記一辺に向かい合う対向辺との間の距離に対応する間隔をおいて配置される請求項5又は6に記載の自走式ロボット。
【請求項8】
前記設置面に描かれるシンボルパターンを予め記憶する記憶部と、
前記撮像部が取得した画像中の前記シンボルパターンに基づいて前記第1マーキング部及び第2マーキング部のマーキングを実行するマーキング実行部と、
を更に備える請求項1から7の何れかに記載の自走式ロボット。
【請求項9】
前記撮像部が取得する画像に前記シンボルパターンを認識する範囲を設定する範囲設定部を更に備え、
前記マーキング実行部は、前記範囲設定部で設定された範囲内の前記シンボルパターンに基づいてマーキングを実行する請求項8に記載の自走式ロボット。
【請求項10】
前記マーキング実行部は、前記複数の撮像部が取得する前記シンボルパターンを含む複数の画像のそれぞれを用いてマーキングを実行する位置を特定する請求項8又は9に記載の自走式ロボット。
【請求項11】
前記撮像部が取得する画像に前記シンボルパターンを検出すると前記走行装置の速度を減衰させる速度制御部を更に備える請求項8から10の何れかに記載の自走式ロボット。
【請求項12】
自走距離測定部を更に備え、
前記速度制御部は、前記自走距離測定部が取得した自走距離に基づいて減衰させる速度を調整する請求項11に記載の自走式ロボット。
【請求項13】
前記自走距離測定部は、前記走行装置の駆動量に基づいて自走距離を測定する請求項12に記載の自走式ロボット。
【請求項14】
前記走行装置は、前後左右に合わせて4つの全方向移動車輪を有する請求項1から13の何れかに記載の自走式ロボット。
【請求項15】
平面視において前記本体部の中心に回転可能に配置される補助撮像部を更に備え、
前記補助撮像部が取得する画像に基づいて位置合わせを行う請求項1から14の何れかに記載の自走式ロボット。
【請求項16】
前記設置面における前記本体部の位置を取得する位置検出部を更に備える請求項1から15の何れかに記載の自走式ロボット。
【請求項17】
請求項1から16の何れかに記載の自走式ロボットにより設置面にマーキングを施すマーキング方法であって、
前記設置面に基準線を描く工程と、
1本の前記基準線上に前記複数の撮像部が位置するように、前記基準線に沿って前記自走式ロボットを走行させながら、前記フロアパネルにおける前記一辺と
前記一辺に向かい合う対向辺との間の距離に対応する間隔で、前記第1マーキング部と前記第2マーキング部によるマーキングを繰り返す工程と、を含むマーキング方法。
【請求項18】
前記第1マーキング部によって描画されたシンボルマークが並ぶ直線上に前記複数の撮像部が位置するように、前記基準線に平行に前記自走式ロボットを走行させながら、前記第1マーキング部によるマーキングを繰り返す請求項17に記載のマーキング方法。
【請求項19】
前記基準線上に設定される基準点に基づいて自走式ロボットを初期位置に位置決めする工程を更に含む請求項17又は18に記載のマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式ロボット及びこれを用いたマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロアパネルを設置するために、建築工事の墨出しを行う場合、専門の作業員により行っていたため、人材不足と準備コストを要する点から改善策が求められていた。
これに対して、フロアパネルを設置するための建築工事の墨出しロボットとして、レーザーにより距離を測定して、ロボットの位置を把握するものがある(例えば、特許文献1、2、非特許文献1参照)。レーザーにより距離を測定する場合には、2つのレーザーを使用して、三角法で距離を算出する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-289638号公報
【文献】特許第2649859号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】大林組技術研究所報 No.76 自走式墨出しロボットシステム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フロアパネルを設置するために、墨出しロボットの位置をレーザー測定により把握するには、レーザーを使用するという観点から、レーザー測定に要するコストやレーザーの経時劣化による寿命などを考慮すると、コスト高である。また、墨出しロボットの位置をレーザー測定により把握して墨出しを行う場合においても、周辺の準備やロボットの完全自動化が難しいため、人手がかかる。
【0006】
本発明は、フロアパネルの設置に必要な労力を省略できる自走式ロボット及びこれを用いたマーキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フロアパネルを設置する設置面にマーキングを行う自走式ロボットであって、走行装置を有する本体部と、前記本体部に配置される第1マーキング部と、前記第1マーキング部から、前記フロアパネルの一辺の長さに対応する間隔をおいて前記本体部に配置される第2マーキング部と、平面視で、前記第2マーキング部を通り、前記第1マーキング部と前記第2マーキング部を結ぶ線と直交する線上に位置するように前記本体部に配置され、前記設置面の画像を取得する複数の撮像部と、を備える自走式ロボットに関する。
【0008】
また、前記第1マーキング部及び前記第2マーキング部の少なくとも何れか一方は、前記設置面にシンボルを描画するスタンプ式であることが好ましい。
【0009】
また、前記第1マーキング部は、前記複数の撮像部間を結ぶ線に平行な直線を含むシンボルマークを描画することが好ましい。
【0010】
また、前記複数の撮像部のうちの1つと前記第2マーキング部が、前記フロアパネルにおける前記一辺と前記一辺に向かい合う対向辺との間の距離に対応する間隔をおいて配置されることが好ましい。
【0011】
また、平面視で、前記第1マーキング部を通り、前記第1マーキング部と前記第2マーキング部を結ぶ線と直交する線上に位置するように前記本体部に配置される第3マーキング部を更に備えることが好ましい。
【0012】
また、前記第3マーキング部は、前記設置面にシンボルを描画するスタンプ式であることが好ましい。
【0013】
また、前記第3マーキング部と前記第1マーキング部は、前記フロアパネルの前記一辺と前記一辺に向かい合う対向辺との間の距離に対応する間隔をおいて配置されることが好ましい。
【0014】
また、前記設置面に描かれるシンボルパターンを予め記憶する記憶部と、前記撮像部が取得した画像中の前記シンボルパターンに基づいて前記第1マーキング部及び第2マーキング部のマーキングを実行するマーキング実行部と、を更に備えることが好ましい。
【0015】
前記撮像部が取得する画像に前記シンボルパターンを認識する範囲を設定する範囲設定部を更に備え、前記マーキング実行部は、前記範囲設定部で設定された範囲内の前記シンボルパターンに基づいてマーキングを実行することが好ましい。
【0016】
また、前記マーキング実行部は、前記複数の撮像部が取得する前記シンボルパターンを含む複数の画像のそれぞれを用いてマーキングを実行する位置を特定することが好ましい。
【0017】
また、前記撮像部が取得する画像に前記シンボルパターンを検出すると前記走行装置の速度を減衰させる速度制御部を更に備えることが好ましい。
【0018】
また、自走距離測定部を更に備え、前記速度制御部は、前記自走距離測定部が取得した自走距離に基づいて減衰させる速度を調整することが好ましい。
【0019】
また、前記自走距離測定部は、前記走行装置の駆動量に基づいて自走距離を測定することが好ましい。
【0020】
また、前記走行装置は、前後左右に合わせて4つの全方向移動車輪を有することが好ましい。
【0021】
また、平面視において前記本体部の中心に回転可能に配置される補助撮像部を更に備え、前記補助撮像部が取得する画像に基づいて位置合わせを行うことが好ましい。
【0022】
また、前記設置面における前記本体部の位置を取得する位置検出部を更に備えることが好ましい。
【0023】
また、前記自走式ロボットにより設置面にマーキングを施すマーキング方法であって、前記設置面に基準線を描く工程と、1本の前記基準線上に前記複数の撮像部が位置するように、前記基準線に沿って前記自走式ロボットを走行させながら、前記フロアパネルにおける前記一辺の対向辺との間の距離に対応する間隔で、前記第1マーキング部と前記第2マーキングによるマーキングを繰り返す工程と、を含むマーキング方法に関する。
【0024】
また、前記第1マーキング部によって描画されたシンボルマークが並ぶ直線上に前記複数の撮像部が位置するように、前記基準線に沿って前記自走式ロボットを走行させながら、前記第1マーキング部によるマーキングを繰り返すことが好ましい。
【0025】
また、前記基準線上に設定される基準点に基づいて自走式ロボットを初期位置に位置決めする工程を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、フロアパネルの設置に必要な労力を省略できる自走式ロボット及びこれを用いたマーキング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自走式ロボットの構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る自走式ロボットを後方側から見た図である。
【
図3】制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4A】後方カメラ及び前方カメラの画像取得領域において、第1のシンボルパターン認識範囲を示す図である。
【
図4B】後方カメラ及び前方カメラの画像取得領域において、第2のシンボルパターン認識範囲を示す図である。
【
図5A】後方カメラ又は前方カメラが、十字シンボルを撮像した図である。
【
図5B】後方カメラ又は前方カメラが、基準線又は直線シンボルを撮像した図である。
【
図5C】後方カメラ又は前方カメラが、画像取得領域の先頭に出現した十字シンボルを撮像した図である。
【
図6A】自走式ロボットが基準線に位置する場合を示す図である。
【
図6B】自走式ロボットが基準線に沿ってマーキングしながら移動する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の自走式ロボットの好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自走式ロボット1の構成を示す平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る自走式ロボット1を後方側から見た図である。
【0029】
本実施形態の自走式ロボット1は、フロアパネルPを設置する設置面100にマーキングを行う自走式のロボットである。自走式ロボット1は、例えば正方形のフロアパネルPを設置面100に設置するために、フロアパネルPを支持する支持脚を設置する箇所にマーキングを行う。
【0030】
自走式ロボット1は、
図1に示すように、進行方向(
図1における矢印方向)に移動可能である。なお、本実施形態において、自走式ロボット1の進行方向を前後方向といい、前後方向における前方側を前側(
図1の上側)といい、前後方向における後方側を後側(
図2の下側)という。また、進行方向に直交する幅方向を左右方向といい、左右方向における一方側を左側(
図1の左側)といい、左右方向の他方側を右側(
図1の右側)という。
【0031】
図1及び
図2に示すように、自走式ロボット1は、本体部2と、第1マーキング部3と、第2マーキング部4と、第3マーキング部5と、後方カメラ61(撮像部)と、前方カメラ62(撮像部)と、補助カメラ63(補助撮像部)と、制御装置10(
図3参照)と、を備える。第1マーキング部3、第2マーキング部4及び第3マーキング部5は、本体部2に配置され、設置面100にシンボルを描画するスタンプ式のマーキング部である。
【0032】
本体部2は、台座部21と、走行装置22と、を備える。
台座部21は、平面視で正方形状に形成され、厚みを有する。台座部21には、各種回路基板(図示省略)などが配置される。なお、台座部21は、平面視で正方形状に限定されず、例えば、長方形状や円形状や楕円状でもよい。
【0033】
走行装置22は、台座部21に取り付けられる。走行装置22は、4つの車輪221(全方向移動車輪)と、4つの駆動部222と、を有する。4つの車輪221は、台座部21の左右方向の両端部において、前後方向に離間して、前後左右に配置されている。4つの車輪221は、全方向移動車輪で構成される。車輪221は、車輪の駆動やローラの回転を組み合わせることで、全方向移動を可能としている。
【0034】
本実施形態においては、全方向移動車輪としての車輪221として、例えば、車輪に対して45度傾いた複数のローラを取り付けたメカナムホイール(登録商標)を採用している。なお、全方向移動車輪として、メカナムホイールの他に、例えば、回転軸が互いに異なる方向を向いた複数のローラを有するオムニホイール(登録商標)を採用してもよい。
【0035】
4つの駆動部222は、それぞれ、車輪221を駆動する。本実施形態においては、駆動部222は、例えば、ステッピングモータにより構成される。4つの駆動部222は、それぞれ、後述する制御装置10により制御されることで、4つの車輪221が、各全方向移動車輪の回転量及び回転方向のそれぞれを個別に制御されて、本体部2を前後方向、左右方向、斜行方向に移動させることができる。
【0036】
第1マーキング部3は、本体部2の左側の前側に配置される。第1マーキング部3は、支持枠体31と、支持枠体31の下面に配置される環状枠311と、環状枠311の中央に配置される1つの十字スタンプ32と、十字スタンプ32から前後左右の4方向に離間して配置される4つの直線スタンプ33と、を備えて構成される。第1マーキング部3は、上下移動機構(図示省略)が駆動されることで上下方向に移動されて、フロアパネルPを設置する設置面100にマーキングを描画する。上下移動機構は、第1マーキング部3を上下移動させることが可能な機構である。上下移動機構としては、例えば、ソレノイド、カム機構等の上下移動させることが可能な機構を挙げることができる。
【0037】
本実施形態においては、フロアパネルPは、
図1の一点鎖線で示すように、1つの辺の長さが距離L1で形成される正方形状に形成される。具体的には、フロアパネルPは、前側の前側辺P1(一辺)、後側の後側辺P2(対向辺)、左側辺P3及び右側辺P4の長さは、距離L1である。前側辺P1及び後側辺P2は、距離L1の間隔をおいて配置され、左側辺P3及び右側辺P4は、距離L1の間隔をおいて配置される。本実施形態においては、フロアパネルPの1つの辺の長さの距離L1は、例えば、50cmである。なお、本実施形態においては、フロアパネルPを正方形状に形成したが、これに限定されない。フロアパネルPは、前側辺P1及び後側辺P2が平行に配置される形状であればよく、例えば、フロアパネルを、長方形や六角形等の形状に形成してもよい。
【0038】
環状枠311は、1つの十字スタンプ32及び4つの直線スタンプ33を囲む環状に形成される。環状枠311の内側に配置された1つの十字スタンプ32及び4つの直線スタンプ33は、十字状シンボルSC(シンボルパターン)を描画する(
図6B参照)。本実施形態においては、4つの直線スタンプ33の外縁に沿って形成される環状枠311の直径は、例えば、15cmである。
【0039】
十字スタンプ32は、左右方向に延びる長方形状の枠321と、枠321内に配置される十字マーキング322と、を有する。十字マーキング322は、前後方向に延びる縦マーキング322aと、左右方向に延びる横マーキング322bとが直交して形成されている。
【0040】
第1マーキング部3は、十字スタンプ32において、縦ラインシンボルSa及び横ラインシンボルSbからなる十字シンボルS1(シンボルパターン)を描画する(
図5A参照)。十字シンボルS1の中心は、フロアパネルPを支持する支持脚を設置する位置としてマーキングされる。十字スタンプ32により描画した縦ラインシンボルSaは、後方カメラ61及び前方カメラ62間(後述)を結ぶ線(右側辺P4)に平行な直線(左側辺P3)を含むシンボルマークであり、十字スタンプ32により描画した横ラインシンボルSbは、縦ラインシンボルSaに直交するシンボルマークである。
【0041】
4つの直線スタンプ33は、十字スタンプ32の前後左右の4方向の外側に離間した位置において、放射状に延びる。4つの直線スタンプ33は、十字スタンプ32の前側に配置される前側スタンプ33aと、十字スタンプ32の後側に配置される後側スタンプ33bと、十字スタンプ32の左側に配置される左側スタンプ33cと、十字スタンプ32の右側に配置される右側スタンプ33dと、を有する。
【0042】
前側スタンプ33a及び後側スタンプ33bは、十字スタンプ32の前後に離間して配置される。後側スタンプ33bは、前方カメラ62を通る左右方向に延びる線上に位置する。後側スタンプ33bは、十字スタンプ32の前側に配置される前側スタンプ33aよりも前後方向の長さが長く形成され、前側スタンプ33aと十字スタンプ32との間の距離よりも短い距離を空けて、十字スタンプ32の後側に配置される。前側スタンプ33a及び後側スタンプ33bは、前後方向に延びる長方形状の枠331a,331bと、枠331a,331b内に配置され十字スタンプ32の縦マーキング322aの前後の延長線上において縦方向に延びる縦マーキング332a,332bと、を有する。
第1マーキング部3は、前側スタンプ33a及び後側スタンプ33bにおいて、直線シンボルS2(シンボルパターン)を描画する(
図5B参照)。
【0043】
左側スタンプ33c及び右側スタンプ33dは、十字スタンプ32の左右に離間して配置される。左側スタンプ33c及び右側スタンプ33dは、左右方向に延びる長方形状の枠331c,331dと、枠331c,331d内に配置され十字スタンプ32の縦マーキング322aの左右の延長線上において横方向に延びる横マーキング332c,332dと、を有する。
【0044】
第2マーキング部4は、本体部2の右側の前側に配置される。第2マーキング部4は、第1マーキング部3から、フロアパネルPの前側辺P1の距離L1に対応する間隔をおいて本体部2に配置される。
【0045】
第2マーキング部4は、支持部41と、支持部41の先端側に配置される1つの十字スタンプ42と、を備えて構成される。十字スタンプ42は、第1マーキング部3の十字スタンプ32と同様の構成である。第2マーキング部4は、上下移動機構(図示省略)が駆動されることで上下方向に移動されて、フロアパネルPを設置する設置面100にマーキングを描画する。上下移動機構は、第2マーキング部4を上下移動させることが可能な機構である。上下移動機構としては、例えば、ソレノイド、カム機構等の上下移動させることが可能な機構を挙げることができる。
【0046】
十字スタンプ42は、左右方向に延びる長方形状の枠421と、枠421内に配置される十字マーキング422と、を有する。十字マーキング422は、前後方向に延びる縦マーキング422aと、左右方向に延びる横マーキング422bとが直交して形成されている。
【0047】
第2マーキング部4は、十字スタンプ42において、縦ラインシンボルSa及び横ラインシンボルSbからなる十字シンボルS1(シンボルパターン)を描画する(
図5A参照)。十字シンボルS1の中心は、フロアパネルPを支持する支持脚を設置する位置としてマーキングされる。第2マーキング部4により描画した縦ラインシンボルSaは、後方カメラ61及び前方カメラ62(後述)間を結ぶ線(右側辺P4)の延長線上の直線を含むシンボルマークである。第2マーキング部4により描画した横ラインシンボルSbは、縦ラインシンボルSaに直交して形成され、第1マーキング部3の十字スタンプ32により描画した横ラインシンボルSbの延長線上に配置されるシンボルマークである。
【0048】
第3マーキング部5は、本体部2の左側の後側に配置される。第3マーキング部5は、平面視で、第1マーキング部3を通り、第1マーキング部3と第2マーキング部4を結ぶ線(前側辺P1)と直交する線(左側辺P3)上に位置するように本体部2に配置される。
第3マーキング部5と第1マーキング部3は、フロアパネルPの前側辺P1と前側辺P1に向かい合う後側辺P2との間の距離L1に対応する間隔をおいて配置される。
【0049】
第3マーキング部5は、支持部51と、支持部51の先端側に配置される1つの十字スタンプ52と、を備えて構成される。十字スタンプ52は、第1マーキング部3の十字スタンプ32と同様の構成である。第3マーキング部5は、上下移動機構(図示省略)が駆動されることで上下方向に移動されて、フロアパネルPを設置する設置面100にマーキングを描画する。上下移動機構は、第3マーキング部5を上下移動させることが可能な機構である。上下移動機構としては、例えば、ソレノイド、カム機構等の上下移動させることが可能な機構を挙げることができる。
【0050】
十字スタンプ52は、左右方向に延びる長方形状の枠521と、枠521内に配置される十字マーキング522と、を有する。十字マーキング522は、前後方向に延びる縦マーキング522aと、左右方向に延びる横マーキング522bとが直交して形成されている。
【0051】
第3マーキング部5は、十字スタンプ52において、縦ラインシンボルSa及び横ラインシンボルSbからなる十字シンボルS1(シンボルパターン)を描画する(
図5A参照)。第3マーキング部5により描画した縦ラインシンボルSaは、後方カメラ61及び前方カメラ62間(後述)を結ぶ線(右側辺P4)に平行な直線(左側辺P3)を含み、第1マーキング部3により描画した縦ラインシンボルSaの延長線上の直線を含むシンボルマークである。第3マーキング部5により描画した横ラインシンボルSbは、縦ラインシンボルSaに直交して配置されるシンボルマークである。
【0052】
本実施形態においては、第3マーキング部5により描画した十字シンボルS1は、自走式ロボット1のスタート時において前後方向の後側の基準位置としてマーキングされる。第3マーキング部5により描画した十字シンボルS1は、自走式ロボット1のスタート時に描画する列の隣りの列において、奥側から手前側に戻ってくる自走式ロボット1の手前側の限界位置のマーキングとして使用されてもよい。
【0053】
後方カメラ61及び前方カメラ62は、設置面100の画像を取得する。
後方カメラ61及び前方カメラ62は、
図1及び
図2に示すように、平面視で、第2マーキング部4を通り、第1マーキング部3と第2マーキング部4を結ぶ線(前側辺P1)と直交する線(右側辺P4)上に位置するように本体部2に配置される。後方カメラ61は、支持部611を介して本体部2の右側の後側に配置される。前方カメラ62は、支持部621を介して本体部2の右側の前側に配置される。
後方カメラ61及び前方カメラ62は、例えば、簡易な構成の低価格のカメラが用いられる。本実施形態においては、後方カメラ61及び前方カメラ62におけるカメラ用のインターフェース(I/F)として、例えば、USB(Universal Serial Bus)が用いられている。なお、カメラ用のインターフェース(I/F)は、撮影した画像の信号を送信可能なものであれば、USBに限定されない。
【0054】
後方カメラ61及び前方カメラ62が右側辺P4上に位置することで、後方カメラ61が撮像した画像により、自走式ロボット1の移動開始位置を認識し、前方カメラ62が撮像した画像により、基準線Kの直線を検出することで、自走式ロボット1の直線移動を認識する。
【0055】
また、自走式ロボット1が描画した列の隣りの列を戻りながら描画を行う場合に、前方カメラ62が撮像した画像により、第1マーキング部3の後側スタンプ33bにより描写した直線シンボルS2(
図5B参照)を検出することで、自走式ロボット1が直線移動しているか否かを認識する。
【0056】
後方カメラ61と第2マーキング部4は、右側辺P4上に位置し、フロアパネルPにおける前側辺P1と対向する後側辺P2との間の距離L1に対応する間隔をおいて配置される。これにより、後方カメラ61が十字シンボルS1(シンボルパターン)を認識したと同時に第2マーキング部4により十字シンボルS1を描画することで、十字シンボルS1から距離L1の間隔をおいて、新たな十字シンボルS1を描画できる。つまり、第2マーキング部4は、後方カメラ61に撮像された画像に基づいて、複数の十字シンボルS1を、後方カメラ61との間に距離L1の間隔をおいて描画できる。
【0057】
補助カメラ63は、
図1及び
図2に示すように、平面視において本体部2の中心において、本体部2の上面から上方から延びる支持軸631の上端に取り付けられ、支持軸631を中心に回転可能に配置される。補助カメラ63は、回転しながら、周囲を撮像して、周囲の画像を取得する。これにより、自走式ロボット1のマーキング動作をスタートさせる前に、補助カメラ63が取得する画像に基づいて、自走式ロボット1を初期位置付近に移動させる。これにより、自走式ロボット1の初期位置の概ねの位置合わせを行うことができる。補助カメラ63による自走式ロボット1の初期位置の概ねの位置合わせは、遠隔操作で行ってもよいし、自動で行ってもよい。具体的には、フロアパネルPを設置する設置面100に描いた基準線Kを補助カメラ63により撮像して、自走式ロボット1を基準線Kに近づくように移動させることができる。
【0058】
制御装置10の構成について説明する。
図3は、制御装置10の構成を示す機能ブロック図である。
図4Aは、後方カメラ61及び前方カメラ62の画像取得領域RAにおいて、第1のシンボルパターン認識範囲RS1を示す図である。
図4Bは、後方カメラ61及び前方カメラ62の画像取得領域RAにおいて、第2のシンボルパターン認識範囲RS2を示す図である。
図5Aは、後方カメラ61又は前方カメラ62が、十字シンボルS1を撮像した図である。
図5Bは、後方カメラ61又は前方カメラ62が、基準線K又は直線シンボルS2を撮像した図である。
図5Cは、後方カメラ61又は前方カメラ62が、画像取得領域RAの先頭に出現した十字シンボルS1を撮像した図である。
【0059】
制御装置10には、駆動部222、第1マーキング部3、第2マーキング部4、第3マーキング部5、後方カメラ61、前方カメラ62、補助カメラ63が電気的に接続されている。制御装置10は、制御部11と、記憶部12と、を有する。
【0060】
記憶部12は、設置面100に描かれるシンボルパターンを予め記憶する。例えば、記憶部12は、縦ラインシンボルSa及び横ラインシンボルSbからなる十字シンボルS1(
図5A参照)、基準線E(
図5B参照)、直線シンボルS2(
図5B参照)などのシンボルパターンなどを予め記憶する。
【0061】
制御部11は、自走式ロボット1の起動、駆動及び停止等の各種の制御を行う。制御部11は、
図3に示すように、範囲設定部111と、マーキング実行部112と、自走距離測定部113と、速度制御部114と、位置合わせ部115と、位置検出部116と、通信部117と、を有する。
【0062】
範囲設定部111は、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得する画像にシンボルパターンを認識する範囲を設定する。本実施形態においては、例えば、
図4A及び
図4Bに示すように、後方カメラ61及び前方カメラ62の画像取得領域RAにおいて、シンボルパターンを認識するシンボルパターン認識範囲RS1,RS2が設定される。
【0063】
図4Aに示すように、後方カメラ61及び前方カメラ62の画像取得領域RAが長方形の範囲である場合に、第1のシンボルパターン認識範囲RS1は、例えば、縦方向(前後方向)において等間隔に離間して配置され横方向(左右方向)に延びる3本の横帯領域RSa,RSb,RScと、横方向の中央において縦方向に延びる縦帯領域RSdと、画像取得領域RAの中央に位置する中央領域RSeと、を含んで構成される。中央領域RSeは、中段の横帯領域RSbと縦帯領域RSdが交差する位置に配置され横帯領域RSbの幅及び縦帯領域RSdの幅よりも大きな一辺を有する正方形に形成される。
また、
図4Bに示すように、第2のシンボルパターン認識範囲RS2は、例えば、画像取得領域RAの中央において、第1のシンボルパターン認識範囲RS1における横帯領域RSaと横帯領域RScとの間の領域に配置され、第1のシンボルパターン認識範囲RS1における中央領域RSeの一辺よりも大きな一辺を有する正方形に形成される。
【0064】
マーキング実行部112は、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得するシンボルパターンを含む複数の画像のそれぞれを用いて、記憶部12に予め記憶されたシンボルパターンを参照して、マーキングを実行する位置を特定する。
マーキング実行部112は、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得した画像中のシンボルパターンに基づいて、記憶部12に予め記憶されたシンボルパターンを参照して、第1マーキング部3及び第2マーキング部4のマーキングを実行する。
これにより、マーキング実行部112は、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得するシンボルパターンを含む複数の画像のそれぞれを用いて、距離L1の間隔で、マーキングを施すことができる。
【0065】
マーキング実行部112は、範囲設定部111で設定された範囲内のシンボルパターンに基づいてマーキング動作を実行する。範囲設定部111により、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得する画像にシンボルパターンを認識するシンボルパターン認識範囲RSを設定することで、シンボルパターン認識範囲RS以外の範囲では、シンボルパターンを認識しない。そのため、全範囲でシンボルパターンを認識するよりも、演算スピードを向上させることができる。
【0066】
例えば、マーキング実行部112は、後方カメラ61において、
図5Aに示す十字シンボルS1を撮像して認識し、かつ、前方カメラ62において、
図5Bに示す基準線Kを撮像して認識した場合に、自走式ロボット1の位置を初期位置であることを確定して、次のマーキング位置への移動を開始する動作を実行する。
マーキング実行部112の実行中においては、自走式ロボット1の移動中に、後方カメラ61及び前方カメラ62が設置面100を撮像するように構成してもよいし、設置面100を撮像しないように構成してもよい。例えば、自走式ロボット1の移動中に後方カメラ61及び前方カメラ62により設置面100を撮像するように構成した場合、マーキング実行部112は、例えば、後方カメラ61において、
図5Bに示す直線シンボルS2を撮像して認識し、かつ、前方カメラ62において、
図5Bに示す直線シンボルS2を撮像して認識した場合に、自走式ロボット1の位置をマーキング動作の移動途中の位置であると確定して、次のマーキング位置への移動を開始する動作を実行することもできる。
【0067】
自走距離測定部113は、4つの車輪(走行装置)の駆動量に基づいて自走距離を測定する。具体的には、4つの車輪221は、ステッピングモータからなる駆動部222により駆動される。これにより、自走距離測定部113は、ステッピングモータを駆動する駆動パルス数に基づいて、自走距離を測定できる。
【0068】
速度制御部114は、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得する画像に十字シンボルS1(
図5C参照)を検出すると、4つの車輪221(走行装置22)の速度を減衰させる。例えば、
図5Cに示すように、速度制御部114は、前方カメラ62において撮像された十字シンボルS1が、画像取得領域RAの先頭に出現したこと検出した場合に、4つの車輪221(走行装置22)の速度を減衰させる。これにより、4つの車輪221を減速させてスムーズに停止させることができる。
【0069】
また、速度制御部114は、自走距離測定部113が取得した自走距離に基づいて減衰させる速度を調整する。具体的には、速度制御部114は、自走距離測定部113が取得した自走距離に基づいて、ステッピングモータを駆動する駆動パルス数を算出して、減衰させる速度を調整する。これにより、4つの車輪221を減速させてスムーズに停止させることができる。
【0070】
位置合わせ部115は、補助カメラ63が取得する画像に基づいて位置合わせを行う。例えば、位置合わせ部115は、補助カメラ63が取得する画像に基づいて、設置面100に描かれた基準線Kに対して概ねの位置合わせを行うように、自走式ロボット1を移動させる。これにより、自走式ロボット1を基準線Kの近傍まで移動させることができる。
【0071】
位置検出部116は、設置面100における本体部2の位置を取得する。位置検出部116により検出された本体部2の位置に関する位置情報は、後述する通信部117を介して外部に発信される。これにより、外部に発信された本体部2の位置情報により、例えば、自走式ロボット1の位置を表示部(図示省略)に表示できる。
【0072】
通信部117は、外部と通信を行い、例えば、遠隔操作により自走式ロボット1を移動させる場合に、外部からの動作信号を受信し、例えば、自走式ロボット1において取得した位置検出部116により検出された自走式ロボット1の位置情報や自走距離情報などを、外部に発信する。
【0073】
次に、自走式ロボット1により設置面100にマーキングを施す動作について説明する。
図6Aは、自走式ロボット1が基準線Kに位置する場合を示す図である。
図6Bは、自走式ロボット1が基準線Kに沿ってマーキングしながら移動する場合を示す図である。
【0074】
まず、自走式ロボット1のマーキング動作をスタートさせる前に、
図6Aに示すように、フロアパネルPを設置する設置面100に基準線Kを描く(基準線を描く工程)。基準線Kを描くことは、作業者によって行われてもよいし、別のロボットにより行われてもよい。
【0075】
次に、補助カメラ63は、回転しながら、フロアパネルPを設置する設置面100に描いた基準線Kを補助カメラ63により撮像する。そして、遠隔操作による操作信号により、位置合わせ部115は、補助カメラ63が取得する画像に基づいて、設置面100に描かれた基準線Kに対して概ねの位置合わせを行うように、自走式ロボット1を移動させる。
【0076】
続けて、制御部11は、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得した設置面100の基準線Kの画像に基づいて、基準線K上に後方カメラ61及び前方カメラ62が位置するように、自走式ロボット1を初期位置に位置決めする(初期位置に位置決めする工程)。ここで、基準線K上に基準点K1を設定することで、後方カメラ61により基準点K1を認識させて、自走式ロボット1を初期位置に位置決めすることもできる。
【0077】
自走式ロボット1の初期位置において、マーキング実行部112は、第1マーキング部3、第2マーキング部4及び第3マーキング部5のマーキング動作を実行する。これにより、第1マーキング部3により、十字シンボルS1及び直線シンボルS2が描画され、第2マーキング部4により十字シンボルS1が描画され、第3マーキング部5により十字シンボルS1が描画される。
【0078】
第3マーキング部5が描画した十字シンボルS1は、自走式ロボット1の左側の後側において設置面100にマーキングされ、自走式ロボット1のスタート時において前後方向の後側の基準マーキングとなる。第3マーキング部5により描画した十字シンボルS1は、スタート時に描画する列の隣りの列において、奥側から手前側に戻ってくる自走式ロボット1の手前側の限界位置のマーキングとして使用されてもよい。
【0079】
ここで、自走式ロボット1において、後方カメラ61と第2マーキング部4の中心との前後方向の距離は、距離L1であり、後方カメラ61と第3マーキング部5の中心との左右方向の距離は、距離L1である。また、第1マーキング部3の十字スタンプ32の中心と、第2マーキング部4の中心との左右方向の距離は、距離L1であり、第1マーキング部3の十字スタンプ32の中心と、第3マーキング部5の中心との前後方向の距離は、距離L1である。
【0080】
次に、1本の基準線K上に前方カメラ62が位置するように、基準線Kに沿って自走式ロボット1を走行させながら、フロアパネルPにおける前側辺P1と対向する後側辺P2との間の距離L1に対応する間隔で、第1マーキング部3と第2マーキング部4によるマーキング動作を実行する。そして、この第1マーキング部3と第2マーキング部4によるマーキングを繰り返す(マーキングを繰り返す工程)。
【0081】
具体的には、マーキング実行部112は、範囲設定部111で設定された範囲内のシンボルパターンに基づいて、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得するシンボルパターンを含む複数の画像のそれぞれを用いて、記憶部12に予め記憶されたシンボルパターンを参照して、マーキングを実行する位置を特定し、第1マーキング部3及び第2マーキング部4のマーキングを実行する。
【0082】
例えば、マーキング実行部112は、後方カメラ61において、
図5Aに示す十字シンボルS1を撮像して認識し、かつ、前方カメラ62において、
図5Bに示す基準線Kを撮像して認識した場合に、自走式ロボット1の位置を初期位置であることを確定して、次のマーキング位置への移動を開始する動作を実行する。
マーキング実行部112の実行中においては、自走式ロボット1の移動中に、後方カメラ61及び前方カメラ62が設置面100を撮像するように構成してもよいし、設置面100を撮像しないように構成してもよい。例えば、自走式ロボット1の移動中に後方カメラ61及び前方カメラ62により設置面100を撮像するように構成した場合、マーキング実行部112は、後方カメラ61において、
図5Bに示す直線シンボルS2を撮像して認識し、かつ、前方カメラ62において、
図5Bに示す直線シンボルS2を撮像して認識した場合に、自走式ロボット1の位置をマーキング動作の移動途中の位置であると確定して、次のマーキング位置への移動を開始する動作を実行することもできる。
【0083】
これにより、自走式ロボット1を基準線Kに沿って移動させて、基準線Kを基準として設置面100にマーキングを施すことができる。この自走式ロボット1のマーキング動作は、自走式ロボット1を最初に移動させる1列目において、自走式ロボット1が進行方向においてマーキングを施す範囲の前側の限界に達するまで継続される。
【0084】
次に、自走式ロボット1が進行方向においてマーキングを施す範囲の前側の限界に達した場合には、自走式ロボット1は、左側に距離L1移動する。この場合、後方カメラ61により、第2マーキング部4により描画された十字シンボルS1の中心を認識し、前方カメラ62により、第1マーキング部3の後側スタンプ33bにより描画した直線シンボルS2(
図5B参照)を認識することで自走式ロボット1の直線移動を認識する。
【0085】
その後、自走式ロボット1は、本体部2を回転させずに、1列目の左側の2列目において、進行方向を奥側から手前側に移動する方向に変更して、手前側に自走式ロボット1を走行させながら、1列目のマーキング動作と同じように、第1マーキング部3と第2マーキング部4によるマーキングを繰り返して実行する。なお、本実施形態においては、自走式ロボット1を、次の列に移動させる場合に、本体部2を回転させずに移動させたが、これに限定されず、本体部2を回転させて次の列に移させてもよいし、本体部2を斜めに移動させて次の列に移動させてもよい。
ここで、自走式ロボット1が描画した1列目の隣りの2列目を戻りながら描画を行う場合に、前方カメラ62が撮像した画像により、後側スタンプ33bにより描写した直線シンボルS2(
図6B参照)を検出することで、自走式ロボット1が直線移動しているか否かを認識する。
【0086】
この自走式ロボット1のマーキング動作は、2列目において、自走式ロボット1が進行方向においてマーキングを施す範囲の手前側の限界に達するまで継続される。自走式ロボット1が2列目を奥側から手前側に移動した場合の手前側の限界位置は、例えば、第3マーキング部5が自走式ロボット1のスタート時に描画した十字シンボルS1により認識してもよい。
【0087】
自走式ロボット1は、以上の動作を、複数列において往復移動することで繰り返して行う。
以上の自走式ロボット1は、第1マーキング部3及び第2マーキング部4により、1本の基準線Kのみで、フロアパネルPの設置面100の左右方向及び前後方向に、距離L1の間隔でマーキングを施す動作を自律的に実行できる。これにより、フロアパネルPの設置に必要な労力を効果的に省略できる。
【0088】
以上説明した本実施形態の自走式ロボットによれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の自走式ロボットは、フロアパネルPを設置する設置面100にマーキングを行う自走式ロボットであって、走行装置22を有する本体部2と、本体部2に配置される第1マーキング部3と、第1マーキング部3から、フロアパネルPの前側辺P1の長さに対応する間隔をおいて本体部2に配置される第2マーキング部4と、平面視で、第2マーキング部4を通り、第1マーキング部3と第2マーキング部4を結ぶ線(前側辺P1)と直交する線(右側辺P4)上に位置するように本体部2に配置され、設置面100の画像を取得する後方カメラ61及び前方カメラ62と、を備える。そのため、1本の基準線Kのみで、フロアパネルPの設置面100の左右方向及び前後方向に、距離L1の間隔でマーキングを施す動作を自律的に実行できる。これにより、フロアパネルPの設置に必要な労力を効果的に省略できる。例えば、自走式ロボット1を夜間に起動して、自走式ロボット1の自律的な走行により、フロアパネルPの設置面100にマーキングさせることで、工期を短縮できる。
【0089】
また、第1マーキング部3及び第2マーキング部4の少なくとも何れか一方は、設置面100にシンボルを描画するスタンプ式である。これにより、簡易な構成の第1マーキング部3及び第2マーキング部4を使用して、マーキングを行うことができる。
【0090】
また、第1マーキング部3は、後方カメラ61及び前方カメラ62を結ぶ線(右側辺P4)に平行な直線(左側辺P3)を含むシンボルマークを描画する。そのため、第1マーキング部3は、右側辺P4との間に距離L1をあけて、シンボルマークを描画できる。また、第1マーキング部3により描画されたシンボルマークを、次の列にシンボルマークを描画する際の基準とすることができる。これにより、第1マーキング部3により描画されたシンボルマークを基準として、複数列において、マーキングを行うことができる。
【0091】
また、後方カメラ61と第2マーキング部4が、フロアパネルPにおける前側辺P1と前側辺P1に向かい合う後側辺P2との間の距離L1に対応する間隔をおいて配置される。これにより、後方カメラ61が十字シンボルS1(シンボルパターン)を認識したと同時に第2マーキング部4により十字シンボルS1を描画することで、十字シンボルS1から距離L1の間隔をおいて、新たな十字シンボルS1を描画できる。つまり、第2マーキング部4は、後方カメラ61に撮像された画像に基づいて、複数の十字シンボルS1を、距離L1の間隔をおいて描画できる。
【0092】
また、平面視で、第1マーキング部3を通り、第1マーキング部3と第2マーキング部4を結ぶ線と直交する線上に位置するように本体部2に配置される第3マーキング部5を更に備える。これにより、第3マーキング部5により描画した十字シンボルS1は、自走式ロボット1のスタート時において前後方向の後側の基準位置としてマーキングされる。
【0093】
また、第3マーキング部5は、設置面100にシンボルを描画するスタンプ式である。これにより、簡易な構成の第3マーキング部5を使用して、マーキングを行うことができる。
【0094】
また、第3マーキング部5と第1マーキング部3は、フロアパネルPの前側辺P1と前側辺P1に向かい合う後側辺P2との間の距離L1に対応する距離をおいて配置される。これにより、第3マーキング部5と第1マーキング部3を同時にマーキングすることで、距離L1の間隔をおいてマーキングを施すことができる。
【0095】
また、設置面100に描かれるシンボルパターンを予め記憶する記憶部12と、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得した画像中のシンボルパターンに基づいて第1マーキング部3及び第2マーキング部4のマーキングを実行するマーキング実行部112と、を更に備える。これにより、マーキング実行部112は、後方カメラ61及び前方カメラ62が取得した画像中のシンボルパターンに基づいて、シンボルパターンを予め記憶する記憶部12を参照して、距離L1の間隔で新たなマーキングを行うことができる。
【0096】
また、自走式ロボット1により設置面100にマーキングを施すマーキング方法は、設置面100に基準線Kを描く工程と、1本の基準線K上に後方カメラ61及び前方カメラ62が位置するように、基準線Kに沿って自走式ロボット1を走行させながら、フロアパネルPにおける前側辺P1の対向する後側辺P2との間の距離に対応する距離L1で、第1マーキング部3と第2マーキング部4によるマーキングを繰り返す工程と、を含む。これにより、1本の基準線Kのみで、第1マーキング部3及び第2マーキング部4により、フロアパネルPの設置面100に、左右方向及び前後方向に、距離L1の間隔で、マーキングを施す動作を実行できる。これにより、フロアパネルの設置に必要な労力を効果的に省略できる。
【0097】
また、マーキング方法において、第1マーキング部3によって描画されたシンボルマークが並ぶ直線上に後方カメラ61及び前方カメラ62が位置するように、基準線Kに沿って自走式ロボット1を走行させながら、第1マーキング部3によるマーキングを繰り返す。そのため、後方カメラ61が撮像した画像により、自走式ロボット1の移動開始位置を認識でき、前方カメラ62が撮像した画像により、基準線Kの直線を検出することで、自走式ロボット1の直線移動を認識できる。これにより、簡易な構成で、フロアパネルPの設置面100に、左右方向及び前後方向に、距離L1の間隔で、マーキングを施す動作を実行できる。
【0098】
また、マーキング方法において、基準線K上に設定される基準点K1に基づいて自走式ロボット1を初期位置に位置決めする工程を更に含む。基準線K上に基準点K1を設定することで、後方カメラ61により基準点K1を認識させて、自走式ロボット1を初期位置に位置決めすることができる。
【0099】
以上、本発明の自走式ロボット1の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、2つのカメラ61,62を備えたが、これに限定されない。3つ以上のカメラを備えてもよい。
【0100】
また、本実施形態においては、第1マーキング部3、第2マーキング部4及び第3マーキング部5を、設置面100にシンボルを描画するスタンプ式で構成したが、これに限定されない。例えば、マーキングペンで構成してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 自走式ロボット
2 本体部
3 第1マーキング部
4 第2マーキング部
5 第3マーキング部
12 記憶部
22 走行装置
61 後方カメラ(撮像部)
62 前方カメラ(撮像部)
63 補助カメラ(補助撮像部)
100 設置面
111 範囲設定部
112 マーキング実行部
113 自走距離測定部
114 速度制御部
115 位置合わせ部
116 位置検出部
221 車輪(全方向移動車輪)