(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ガスアトマイズバーナノズル
(51)【国際特許分類】
F23D 11/12 20060101AFI20230510BHJP
B05B 7/08 20060101ALI20230510BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20230510BHJP
B05B 1/34 20060101ALI20230510BHJP
F23D 11/38 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
F23D11/12
B05B7/08
B05B7/04
B05B1/34 101
F23D11/38 E
(21)【出願番号】P 2019036632
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 智博
(72)【発明者】
【氏名】大堀 等
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162927(JP,A)
【文献】特開2018-028391(JP,A)
【文献】特開昭50-052637(JP,A)
【文献】実公昭10-015194(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 11/12
B05B 7/08
B05B 7/04
B05B 1/34
F23D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を霧化液体燃料とガス燃料とが混合された霧化混合燃料を通流させる噴出路とする円筒状部を有し、前記噴出路の先端に、当該噴出路を通流する霧化混合燃料を前記噴出路の軸心方向に噴出する主噴出孔が設けられた第1ノズル部と、
前記噴出路の基端に液体燃料を噴出する液体燃料噴出孔、及び、当該液体燃料噴出孔から噴出される液体燃料を霧化するためのガス燃料を前記噴出路の基端に噴出するガス燃料噴出孔が設けられた第2ノズル部とを備えたガスアトマイズバーナノズルであって、
前記第1ノズル部の円筒状部の周壁に、前記噴出路に連通する複数の副噴出孔が、前記噴出路の軸心に沿う噴出路軸心方向視で環状に並ぶ状態で設けられ、
前記複数の副噴出孔夫々の軸心が、前記噴出路軸心方向の前方ほど前記噴出路の軸心から前記円筒状部の径方向に遠ざかる先拡がり状であ
り、
前記噴出路軸心方向の同一箇所で当該噴出路軸心方向視で複数の前記副噴出孔が環状に並ぶ環状副噴出孔群が、前記円筒状部の周壁における前記噴出路軸心方向の複数箇所に設けられて、前記環状副噴出孔群が、前記円筒状部の周壁に前記噴出路軸心方向で複数段に設けられ、
前記複数段の環状副噴出孔群のうち、前記噴出路軸心方向の最前の前記環状副噴出孔群における複数の前記副噴出孔が、夫々の先端開口が、前記円筒状部の周壁における前記噴出路軸心方向の前方を向く先端面に対応する部分に開口する状態で設けられており、
前記噴出路軸心方向の最前の前記環状副噴出孔群における複数の前記副噴出孔の軸心は、前記噴出路軸心方向の前方ほど前記円筒状部の周方向の同一方向にずれる旋回状であり、
前記噴出路軸心方向の最前の前記環状副噴出孔群以外の前記環状副噴出孔群における複数の前記副噴出孔の軸心は、前記円筒状部の径方向視のいずれかで前記円筒状部の軸心に重なる状態であるガスアトマイズバーナノズル。
【請求項2】
前記円筒状部の先端開口を閉じる状態で、主噴出孔形成体が設けられ、
前記主噴出孔形成体に、前記主噴出孔が、その横断面積が前記噴出路の横断面積よりも小さくなる状態で形成されている請求項
1に記載のガスアトマイズバーナノズル。
【請求項3】
全ての前記副噴出孔の横断面積の合計である総副噴出孔面積が、前記主噴出孔の横断面積である主噴出孔面積と等しいか前記主噴出孔面積よりも大きい請求項
2に記載のガスアトマイズバーナノズル。
【請求項4】
前記主噴出孔面積に対する前記総副噴出孔面積の割合が1~21になるように構成されている請求項
3に記載のガスアトマイズバーナノズル。
【請求項5】
前記噴出路軸心方向視において、複数の前記液体燃料噴出孔が環状に並ぶ状態で設けられ、
複数の前記ガス燃料噴出孔が、環状に並ぶ前記複数の液体燃料噴出孔の外周部に環状に並ぶ状態で設けられている請求項
1~4のいずれか1項に記載のガスアトマイズバーナノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を霧化液体燃料とガス燃料とが混合された霧化混合燃料を通流させる噴出路とする円筒状部を有し、噴出路の先端に、当該噴出路を通流する霧化混合燃料を噴出路の軸心方向に噴出する主噴出孔が設けられた第1ノズル部と、噴出路の基端に液体燃料を噴出する液体燃料噴出孔、及び、当該液体燃料噴出孔から噴出される液体燃料を霧化するためのガス燃料を噴出路の基端に噴出するガス燃料噴出孔が設けられた第2ノズル部とを備えたガスアトマイズバーナノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるガスアトマイズバーナノズルは、液体燃料をガス燃料によって霧化して燃焼させるガスアトマイズバーナに利用されるものであり、このガスアトマイズバーナは、例えば、製紙用のライムキルン、ガラス溶解炉等の加熱対象物の加熱用で用いられる。液体燃料としては、重油、軽油、灯油、廃油を再生した再生油等、種々のものが用いられ、ガス燃料に比べて安価な液体燃料を燃料の一部に用いることにより、ライムキルン、ガラス溶解炉等の加熱対象物を加熱するに当たって、エネルギーコストの低減を図っている。
【0003】
このガスアトマイズバーナは、第2ノズル部の液体燃料噴出孔から噴出される液体燃料を第2ノズル部のガス燃料噴出孔から噴出されるガス燃料により霧化しながら、第1ノズル部の噴出路を通流させて、その通流過程で霧化液体燃料とガス燃料とを混合し、それらが混合された燃料(以下、霧化混合燃料と記載する場合がある)を主噴出孔から噴出することにより燃焼させるようになっている。
【0004】
このようなガスアトマイズバーナノズルにおいて、従来は、第1ノズル部の円筒状部の先端を全開して、その円筒状部の先端に開口する噴出路と同径の先端開口を、主噴出孔としていた。
そして、噴出路を通流する霧化混合燃料の全量を、その噴出路の先端の噴出路と同径の主噴出孔から噴出路の軸心方向に噴出して燃焼させるように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなガスアトマイズバーナでは、燃焼量は所定の燃焼量を確保しながら、炉内の温度分布を加熱対象物の加熱条件に応じた所定の温度分布にしたいという要望がある。例えば、高温域を炉内の手前側(ガスアトマイズバーナ側)に近づけた温度分布を形成するには、形成される火炎の長さを短くする必要がある。
しかしながら、従来のガスアトマイズバーナノズルの第1ノズル部は、噴出路を通流する霧化混合燃料の全量を噴出路と同径の主噴出孔から噴出路の軸心方向に噴出する構成であるので、ガスアトマイズバーナの燃焼量が同じであれば、形成される火炎の形状を変更し難いため、炉内に形成される温度分布を変更調節することができなかった。
従って、炉内の温度分布を所定の温度分布にしたいという要望に応えることができなかった。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、炉内の温度分布を所定の温度分布に設定し得るガスアトマイズバーナノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るガスアトマイズバーナノズルは、内部を霧化液体燃料とガス燃料とが混合された霧化混合燃料を通流させる噴出路とする円筒状部を有し、前記噴出路の先端に、当該噴出路を通流する霧化混合燃料を前記噴出路の軸心方向に噴出する主噴出孔が設けられた第1ノズル部と、
前記噴出路の基端に液体燃料を噴出する液体燃料噴出孔、及び、当該液体燃料噴出孔から噴出される液体燃料を霧化するためのガス燃料を前記噴出路の基端に噴出するガス燃料噴出孔が設けられた第2ノズル部とを備えたガスアトマイズバーナノズルであって、その特徴構成は、
前記第1ノズル部の円筒状部の周壁に、前記噴出路に連通する複数の副噴出孔が、前記噴出路の軸心に沿う噴出路軸心方向視で環状に並ぶ状態で設けられ、
前記複数の副噴出孔夫々の軸心が、前記噴出路軸心方向の前方ほど前記噴出路の軸心から前記円筒状部の径方向に遠ざかる先拡がり状であり、
前記噴出路軸心方向の同一箇所で当該噴出路軸心方向視で複数の前記副噴出孔が環状に並ぶ環状副噴出孔群が、前記円筒状部の周壁における前記噴出路軸心方向の複数箇所に設けられて、前記環状副噴出孔群が、前記円筒状部の周壁に前記噴出路軸心方向で複数段に設けられ、
前記複数段の環状副噴出孔群のうち、前記噴出路軸心方向の最前の前記環状副噴出孔群における複数の前記副噴出孔が、夫々の先端開口が、前記円筒状部の周壁における前記噴出路軸心方向の前方を向く先端面に対応する部分に開口する状態で設けられており、
前記噴出路軸心方向の最前の前記環状副噴出孔群における複数の前記副噴出孔の軸心は、前記噴出路軸心方向の前方ほど前記円筒状部の周方向の同一方向にずれる旋回状であり、
前記噴出路軸心方向の最前の前記環状副噴出孔群以外の前記環状副噴出孔群における複数の前記副噴出孔の軸心は、前記円筒状部の径方向視のいずれかで前記円筒状部の軸心に重なる状態である点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、噴出路を通流する霧化混合燃料の一部が主噴出孔から噴出路の軸心方向に噴出され、噴出路を通流する霧化混合燃料の残量が、主噴出孔の周りに環状に並ぶ複数の副噴出孔から先拡がり状に噴出されて、主噴出孔から噴出された霧化混合燃料及び複数の副噴出孔から噴出された霧化混合燃料が、炉内で燃焼する。
【0010】
つまり、主噴出孔から噴出される霧化混合燃料と複数の副噴出孔から噴出される霧化混合燃料との割合に関連する主噴出孔の横断面積、副噴出孔の個数及び複数の副噴出孔夫々の横断面積、並びに、複数の副噴出孔夫々の軸心が先拡がり状となる角度(以下、先拡がり角度と記載する場合がある)等を、種々に設定することにより、炉内に形成される火炎の長さや太さを調整することが可能となる。ちなみに、噴出路を通流する霧化混合燃料を主噴出孔と複数の副噴出孔とにより噴出することにより、主噴出孔のみから噴出する構成と比較して、炉内に形成される火炎の長さを短く且つ太くし易いので、高温域を炉内の手前側に近づけた温度分布を形成し易い。
そして、炉内に形成される火炎の長さや太さを調整することにより、炉内に形成される温度分布を調整することができる。
従って、炉内の温度分布を所定の温度分布に設定し得るガスアトマイズバーナノズルを提供することができる。
【0014】
更に、上記特徴構成によれば、噴出路を通流する霧化混合燃料の一部が主噴出孔から噴出路の軸心方向に噴出され、噴出路を通流する霧化混合燃料の残量が、複数段の環状副噴出孔群夫々の環状に並ぶ複数の副噴出孔から、主噴出孔から噴出される霧化混合燃料の周りに先拡がり状に噴出されて、主噴出孔から噴出された霧化混合燃料、及び、複数段の環状副噴出孔群夫々の複数の副噴出孔から噴出された霧化混合燃料が、炉内で燃焼する。
【0015】
つまり、主噴出孔から噴出される霧化混合燃料と複数段の環状副噴出孔群から噴出される霧化混合燃料との割合に関連する主噴出孔の横断面積、噴出路軸心方向に並ぶ環状副噴出孔群の段数、各環状副噴出孔群の副噴出孔の個数及び各環状副噴出孔群の複数の副噴出孔夫々の横断面積、並びに、各環状副噴出孔群の複数の副噴出孔夫々の先拡がり角度等を、種々に設定することにより、炉内に形成される火炎の長さや太さを調整することが可能となる。
特に、環状副噴出孔群が噴出路軸心方向に複数段に設けられていることから、炉内に形成される火炎の形状を短く且つ太くする面で有効となる。
従って、高温域が比較的手前側に位置する温度分布を形成するのに好適なガスアトマイズバーナノズルを提供することができる。
【0017】
更に、上記特徴構成によれば、最前の環状副噴出孔群における複数の副噴出孔夫々の先端開口が、円筒状部の周壁の先端面に設けられていて、その先端面は、炉内に火炎が形成される方向に直面しているので、その先端面によって、最前の環状副噴出孔群の複数の副噴出孔夫々から噴出される霧化混合燃料が燃焼するに当たって、保炎機能を効果的に発揮させることができる。
つまり、最前の環状副噴出孔群の複数の副噴出孔夫々から噴出される霧化混合燃料が円筒状部の周壁の先端面に保炎されて安定燃焼することにより、火炎が安定して形成される。そして、そのように安定形成される火炎による保炎作用により、全体として、比較的長さが短く且つ太い形状の火炎を安定して形成することができる。
従って、高温域が比較的手前側に位置する温度分布を一層安定して形成することができる。
【0018】
本発明に係るガスアトマイズバーナノズルの更なる特徴構成は、前記円筒状部の先端開口を閉じる状態で、主噴出孔形成体が設けられ、
前記主噴出孔形成体に、前記主噴出孔が、その横断面積が前記噴出路の横断面積よりも小さくなる状態で形成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、主噴出孔の横断面積が噴出路の横断面積よりも小さいことから、霧化混合燃料が主噴出孔から噴出される際の抵抗が大きくなるので、噴出路を通流する霧化混合燃料が環状に並ぶ複数の副噴出孔から噴出され易くなる。
そして、環状に並ぶ複数の副噴出孔からの霧化混合燃料の噴出は、火炎の長さを短く且つ太くするのに効果的に作用するので、噴出路を通流する霧化混合燃料のうち、環状に並ぶ複数の副噴出孔からの噴出量を多くすることにより、炉内に形成される火炎の形状を短く且つ太くする上で有効となる。
従って、高温域が比較的手前側に位置する温度分布を形成するのに好適なガスアトマイズバーナノズルを提供することができる。
【0020】
本発明に係るガスアトマイズバーナノズルの更なる特徴構成は、全ての前記副噴出孔の横断面積の合計である総副噴出孔面積が、前記主噴出孔の横断面積である主噴出孔面積と等しいか前記主噴出孔面積よりも大きい点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、総副噴出孔面積が主噴出孔面積と等しいか主噴出孔面積よりも大きいことから、噴出路を通流する霧化混合燃料のうち、環状に並ぶ複数の副噴出孔からの噴出量が比較的多くなるので、炉内に形成される火炎の形状を一層短く且つ太くすることができる。
従って、高温域がより一層手前側に位置する温度分布を形成することができる。
【0022】
本発明に係るガスアトマイズバーナノズルの更なる特徴構成は、前記主噴出孔面積に対する前記総副噴出孔面積の割合が1~21になるように構成されている点にある。
【0023】
本発明の発明者らは、炉内に形成される火炎の形状を的確に短く且つ太くできるようにすべく、鋭意研究し、主噴出孔面積に対する総副噴出孔面積の割合を1~21の間に設定することにより、炉内に形成される火炎の形状を的確に短く且つ太くできることを見出した。
つまり、主噴出孔面積に対する総副噴出孔面積の割合を1以上にすることは、火炎の形状を短く且つ太くする上で有効であるが、その割合を大きくし過ぎると、火炎の長さが長くなる傾向となる。そこで、主噴出孔面積に対する総副噴出孔面積の割合を1~21の間に設定することにより、炉内に形成される火炎の形状を的確に短く且つ太くすることができるのである。
従って、高温域が手前側に位置する温度分布を的確に形成することができる。
【0024】
本発明に係るガスアトマイズバーナノズルの更なる特徴構成は、前記噴出路軸心方向視において、複数の前記液体燃料噴出孔が環状に並ぶ状態で設けられ、
複数の前記ガス燃料噴出孔が、環状に並ぶ前記複数の液体燃料噴出孔の外周部に環状に並ぶ状態で設けられている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、液体燃料が複数の液体燃料噴出孔から噴出されることから、液体燃料の噴出流の表面積が大きくなって、液体燃料の噴出流に対して一層広範囲にガス燃料を接触させることができるので、ガス燃料により液体燃料を霧化させる霧化性能が向上して、液体燃料の霧化が一層促進すると共に、その霧化液体燃料とガス燃料との混合が一層促進する。
すると、液体燃料が全体にわたって一層均等に霧化され、その霧化液体燃料とガス燃料とが一層均等に混合された霧化混合燃料が噴出されるようになって、霧化液体燃料に燃焼用空気が一層広範囲にわたって接触し易くなると共に、ガス燃料の易燃性が一層広範囲にわたって作用するので、安定燃焼性を維持しながら、総燃料噴出量に対するガス燃料の噴出量比率を小さくすることが可能となる。
従って、安定燃焼性を維持しながら、総燃料噴出量に対するガス燃料の噴出量比率を小さくすることができるので、エネルギーコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】中炎型のガスアトマイズバーナの縦断展開図である。
【
図2】中炎型のガスアトマイズバーナの要部の分解斜視図である。
【
図3】中炎型のガスアトマイズバーナの正面図である。
【
図5】短炎A型のガスアトマイズバーナの縦断展開図である。
【
図6】短炎A型のガスアトマイズバーナの要部の分解斜視図である。
【
図7】短炎A型のガスアトマイズバーナの正面図である。
【
図8】短炎B型のガスアトマイズバーナの縦断展開図である。
【
図9】短炎B型のガスアトマイズバーナの要部の分解斜視図である。
【
図10】短炎B型のガスアトマイズバーナの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
尚、以下の説明において、中炎型のガスアトマイズバーナと、短炎A型のガスアトマイズバーナとを示しているが、これらの内容は、参考の形態として示しているものであり、本発明の権利範囲に含まれるものではない。
ガスアトマイズバーナは、
図1に示すように、液体燃料をガス燃料で霧化しながら、その霧化液体燃料とガス燃料とを混合すると共に、それらガス燃料と霧化液体燃料とが混合された霧化混合燃料を噴出するガスアトマイズバーナノズル1、そのガスアトマイズバーナノズル1に液体燃料とガス燃料とを供給する二重管部材2、及び、冷却用媒体としての水を通流させてガスアトマイズバーナノズル1を冷却する水冷ジャケット3等を備えて構成されている。
【0028】
このガスアトマイズバーナは、例えば、ガラス溶解炉や製紙用のライムキルン等の各種の炉で用いられるものである。炉へのガスアトマイズバーナの設置形態は、周知であるので、詳細な説明及び図示を省略して、簡単に説明する。
炉の炉壁には、炉内に燃焼用空気を供給するための空気通路が設けられる。
そして、ガスアトマイズバーナが、ガスアトマイズバーナノズル1から噴出される霧化混合燃料を空気通路から供給される燃焼用空気により燃焼させるべく、炉壁における空気通路の下方に設けられることにより、所謂アンダーポート型に構成されたり、あるいは、空気通路内に設けられることにより、所謂スルーポート型に構成される。
【0029】
図1~
図3に示すように、ガスアトマイズバーナノズル1は、内部を霧化液体燃料とガス燃料とが混合された霧化混合燃料を通流させる噴出路41とする円筒状部42を有し、噴出路41の先端に、当該噴出路41を通流する霧化混合燃料を噴出路41の軸心P方向に噴出する主噴出孔43が設けられた第1ノズル(第1ノズル部の一例)4と、噴出路41の基端に液体燃料を噴出する液体燃料噴出孔51、及び、当該液体燃料噴出孔51から噴出される液体燃料を霧化するためのガス燃料を噴出路41の基端に噴出するガス燃料噴出孔52が設けられた第2ノズル(第2ノズル部の一例)5とを備えて構成されている。
【0030】
図1~
図3に示すように、水冷ジャケット3は、ガスアトマイズバーナノズル1を内部に収納可能な概略円筒状に構成されて、ガスアトマイズバーナを構成する複数の部材を一体的に組み付けるためのバーナキャップに兼用するように構成されている。
そして、この実施形態では、ガスアトマイズバーナは、バーナキャップに兼用される水冷ジャケット3と、先端側部分を突出させた状態で水冷ジャケット3に内嵌状態で配置される第1ノズル4と、先端面を第1ノズル4の基端面に当て付けた状態で配置される第2ノズル5と、その第2ノズル5の外周を覆う状態で、先端が水冷ジャケット3の基端に螺着される概略円筒状の筒状連結部材6と、内管21の先端が第2ノズル5の基端に内嵌され、且つ、外管22の先端が筒状連結部材6の内周面の基端に螺着された状態で組み付けられる二重管部材2等を備えて構成されている。
【0031】
以下、ガスアトマイズバーナの各部について説明を加える。
図1~
図4に示すように、水冷ジャケット3、第1ノズル4、第2ノズル5、筒状連結部材6及び二重管部材2は、同軸心状に組み付けられるので、第1ノズル4の円筒状部42内部の噴出路41の軸心(以下、噴出路軸心と記載する場合がある)は、第1ノズル4、水冷ジャケット3、第2ノズル5、筒状連結部材6及び二重管部材2の軸心でもあり、各図において、それら各部材の軸心を、符号Pにて示す。
【0032】
本発明では、第1ノズル4の円筒状部42の周壁42wに、噴出路41に連通する複数の副噴出孔44が、噴出路41の軸心Pに沿う噴出路軸心P方向視で環状に並ぶ状態で設けられ、複数の副噴出孔44夫々の軸心Qが、噴出路軸心P方向の前方ほど噴出路41の軸心Pから円筒状部42の径方向に遠ざかる先拡がり状である。
又、円筒状部42の先端開口を閉じる状態で、主噴出孔形成体45が設けられ、その主噴出孔形成体45に、主噴出孔43が、その開口面積が噴出路41の横断面積よりも小さくなる状態で形成されている。
【0033】
本発明によるガスアトマイズバーナノズル1は、第1ノズル4に設ける副噴出孔44の設置形態、各副噴出孔44の大きさ(横断面積)、主噴出孔43の大きさ(横断面積)等により、形成可能な火炎Fの長さや太さを異ならせることが可能である。そこで、この実施形態では、形成可能な火炎Fの長さが異なる3種類の第1ノズル4を設定することにより、ガスアトマイズバーナノズル1として、形成可能な火炎Fの長さが異なる3種類を説明する。
【0034】
3種類のガスアトマイズバーナノズル1は、いずれも先に説明した従来の構成のものに比べて、長さが短い火炎Fを形成することが可能な第1ノズル4を装備したものであり、それら3種類の第1ノズル4のうち、最も長い火炎Fを形成可能なものを、中炎型(
図1~
図3参照)、次に長い火炎Fを形成可能なものを短炎A型(
図5~
図7参照)、最も短い火炎Fを形成可能なものを短炎B型(
図8~
図10参照)と夫々称する。そして、3種類の第1ノズル4夫々が装備されるガスアトマイズバーナノズル1も、夫々、中炎型、短炎A型、短炎B型と称する。
【0035】
先ず、
図1~
図3、
図5~
図7及び
図8~
図10に基づいて、3種類の第1ノズル4において、共通の構成について説明する。
第1ノズル4の円筒状部42は、基端に、先端側よりも大径で且つ軸心P方向の長さが短い大径部分42bを同軸心状に備えた2段状であり、この実施形態では、第1ノズル4は、円筒状部42そのものにて構成されている。つまり、第1ノズル4は、基端側に大径部分42bを同軸心状に有する形態の2段円柱状の外形になるように構成されている。
そして、円筒状部42の内部の噴出路41も、基端に、先端側よりも大径の部分を同軸心状に備えるように構成され、その基端の部分を、第2ノズルの液体燃料噴出孔51から噴出される液体燃料、及び、ガス燃料噴出孔52から噴出されるガス燃料を受け入れる受け入れ部41gとするように構成されている。
【0036】
3種類の第1ノズル4において、各部の寸法のうち、共通の寸法は、軸心P方向での円筒状部42の全長、同じく軸心P方向での円筒状部42の大径部分42bの長さ、円筒状部42の直径、円筒状部42の大径部分42bの直径、噴出路41の直径、及び、噴出路41の受け入れ部41gの直径である。
ちなみに、それら共通の寸法の一例としては、円筒状部42の全長は100mm、円筒状部42の大径部分42bの長さは20mm、円筒状部42の直径は44.5mmφ、円筒状部42の大径部分42bの直径は52mmφ、噴出路41の直径は20mmφ、及び、噴出路41の受け入れ部41gの直径は29mmφである。
【0037】
次に、
図1~
図3及び
図5~
図7に基づいて、中炎型及び短炎A型の2種類の第1ノズル4において、共通の構成について説明する。
第1ノズル4の複数の副噴出孔44夫々の軸心Qは、前述のような先拡がり状に加えて、噴出路軸心P方向の前方ほど円筒状部42の周方向の同一方向にずれる旋回状である。
更に、複数の副噴出孔44が、夫々の先端開口44aが、円筒状部42の周壁42wにおける噴出路軸心P方向の前方を向く先端面42sに対応する部分に開口する状態で設けられている。
【0038】
図1~
図3に示すように、中炎型の第1ノズル4は、12個の副噴出孔44が、噴出路軸心P方向視で、等間隔で環状に並ぶ状態で設けられ、
図5~
図7に示すように、短炎A型の第1ノズル4は、8個の副噴出孔44が、噴出路軸心P方向視で、等間隔で環状に並ぶ状態で設けられている。
【0039】
図3及び
図7に示すように、円筒状部42の周壁42wの先端面42sに開口する複数の副噴出孔44夫々の先端開口44aの中心を結んで形成される円(以下、副噴出孔配列円と記載する場合がある)C1の直径(PCD)は、中炎型、短炎A型の第1ノズル4で同径である。ちなみに、中炎型、短炎A型のいずれの第1ノズル4も、複数の副噴出孔44の副噴出孔配列円C1のPCDは、例えば、32mmである。
【0040】
中炎型の第1ノズル4については
図1に示し、短炎A型の第1ノズル4については
図5に示すように、中炎型の第1ノズル4、短炎A型の第1ノズル4のいずれも、夫々の複数の副噴出孔44夫々の軸心Qが先拡がり状となる角度α(以下、先拡がり角度と称する場合がある)は、全ての副噴出孔44で同一であり、その先拡がり角度αの一例としては、例えば、30°である。
【0041】
又、中炎型の第1ノズル4については
図3に示し、短炎A型の第1ノズル4については
図7に示すように、中炎型の第1ノズル4、短炎A型の第1ノズル4のいずれも、複数の副噴出孔44夫々の軸心Qが旋回状となる角度β(以下、旋回角度と称する場合がある)は、全ての副噴出孔44で同一であり、その旋回角度βの一例としては、例えば、15°である。
【0042】
中炎型の第1ノズル4では、複数の副噴出孔44の全てで直径(軸心Qに直交する横断面の円孔の直径であり、以下同様)は同径であり、短炎A型の第1ノズル4でも、複数の副噴出孔44の全てで直径は同径である。
但し、中炎型の第1ノズル4と短炎A型の第1ノズル4では、副噴出孔44の直径が異なり、副噴出孔44の直径は、短炎A型の第1ノズル4の方が大きい。
ちなみに、副噴出孔44の直径の一例としては、中炎型の第1ノズル4は4.5mmφであり、短炎A型の第1ノズル4は8.0mmφである。
【0043】
又、中炎型の第1ノズル4と短炎A型の第1ノズル4では、主噴出孔43の直径(軸心Pに直交する横断面の円孔の直径)も異なり、主噴出孔43の直径は、中炎型の第1ノズル4の方が大きい。
ちなみに、主噴出孔43の直径の一例としては、中炎型の第1ノズル4は15.0mmφであり、短炎A型の第1ノズル4は5.0mmφである。
【0044】
この実施形態では、全ての副噴出孔44の横断面積の合計(以下、総副噴出孔面積と記載する場合がある)が、主噴出孔43の横断面積(以下、主噴出孔面積と記載する場合がある)と等しいか主噴出孔面積よりも大きくなるように構成されている。尚、横断面積とは、主噴出孔43及び副噴出孔44の夫々の軸心Qに直交する断面の面積をいう。
更に、この実施形態では、主噴出孔面積に対する総副噴出孔面積の割合(以下、主副噴出孔面積比と記載する場合がある)が1~21になるように構成されている。
ちなみに、上述した主噴出孔43の直径、副噴出孔44の個数及び直径の一例では、主副噴出孔面積比は、中炎型の第1ノズル4は、約1.1であり、短炎A型の第1ノズル4は、約20.5である。
【0045】
次に、
図8~
図10に基づいて、短炎B型の第1ノズル4について、説明を加える。
短炎B型の第1ノズル4では、噴出路軸心P方向の同一箇所で当該噴出路軸心P方向視で複数の副噴出孔44が環状に並ぶ環状副噴出孔群46が、円筒状部42の周壁42wにおける噴出路軸心P方向の複数箇所に設けられて、環状副噴出孔群46が、円筒状部42の周壁42wに噴出路軸心P方向で複数段に設けられている。
ちなみに、この実施形態では、短炎B型の第1ノズル4には、環状副噴出孔群46が、2段に設けられている。
ここで、2段の環状副噴出孔群46のうち、前方のものを前段環状副噴出孔群46fと称し、後方のものを後段環状副噴出孔群46rと称する場合がある。
【0046】
2段の環状副噴出孔群46のうち、噴出路軸心P方向の最前の前段環状副噴出孔群46fにおける複数の副噴出孔44が、夫々の先端開口44aが、円筒状部42の周壁42wにおける噴出路軸心P方向の前方を向く先端面42sに対応する部分に開口する状態で設けられている。
更に、2段の環状副噴出孔群46のうち、前段環状副噴出孔群46fにおける複数の副噴出孔44夫々の軸心Qは、先拡がり状、且つ、噴出路軸心P方向の前方ほど円筒状部42の周方向の同一方向にずれる旋回状である。
一方、後段環状副噴出孔群46fにおける複数の副噴出孔44夫々の軸心Qは、先拡がり状ではあるが旋回状ではなく、円筒状部42の径方向視で円筒状部42の軸心Pに重なる状態である。
【0047】
前段環状副噴出孔群46fでは、12個の副噴出孔44が、噴出路軸心P方向視で、等間隔で環状に並ぶ状態で設けられ、後段環状副噴出孔群46rでは、6個の副噴出孔44が、噴出路軸心P方向視で、等間隔で環状に並ぶ状態で設けられている。
円筒状部42の周壁42wの先端面42sに開口する前段環状副噴出孔群46fの複数の副噴出孔44における副噴出孔配列円C1のPCDは、前述の中炎型、短炎A型の第1ノズル4と同径であり、この実施形態では、32mmである。
【0048】
前段環状副噴出孔群46f、後段環状副噴出孔群46rのいずれも、夫々の複数の副噴出孔44夫々の軸心Qの先拡がり角度α(
図8参照)は、全ての副噴出孔44で同一であり、その先拡がり角度αの一例としては、例えば、30°である。
前段環状副噴出孔群46fの複数の副噴出孔44夫々の軸心Qの旋回角度β(
図10参照)は、全ての副噴出孔44で同一であり、その旋回角度βの一例としては、例えば、15°である。
【0049】
前段環状副噴出孔群46fの全ての副噴出孔44の直径は同径であり、後段環状副噴出孔群46rの全ての副噴出孔44の直径も同径である。
ちなみに、前段環状副噴出孔群46fの副噴出孔44の直径の一例としては、4.3mmφであり、後段環状副噴出孔群46rの副噴出孔44の直径の一例としては、6.0mmφである。
又、主噴出孔43の直径の一例としては、10.0mmφである。
この場合、短炎B型の第1ノズル4の主副噴出孔面積比は、約4.4である。
【0050】
図1、
図2及び
図4に示すように、第2ノズル5は、外径が第1ノズル4の円筒状部42の大径部分42bと同径の円盤状部分53と、外径が円盤状部分53よりも小径で、その円盤状部分53の基端面に同軸心状に連なる状態の概略円柱状の外形を有する円柱状部分54とからなる。
【0051】
この実施形態では、噴出路軸心P方向視において、複数の液体燃料噴出孔51が環状に並ぶ状態で、第2ノズル5の円盤状部分53に設けられ、複数のガス燃料噴出孔52が、環状に並ぶ複数の液体燃料噴出孔51の外周部に環状に並ぶ状態で、第2ノズル5の円盤状部分53に設けられている。
更に具体的には、複数の液体燃料噴出孔51が、夫々の先端開口51aが環状に等間隔で並ぶ状態の配置形態で、第2ノズル5の円盤状部分53に設けられ、複数のガス燃料噴出孔52が、夫々の先端開口52aが、複数の液体燃料噴出孔51の先端開口51aが並ぶ円と同心の環状に等間隔で並ぶ状態の配置形態で、第2ノズル5の円盤状部分53に設けられている。
この実施形態では、ガス燃料噴出孔52が6個設けられ、液体燃料噴出孔51が3個設けられている。
【0052】
ここで、
図4において、第2ノズル5の円盤状部分53の先端面に開口する3個の液体燃料噴出孔51夫々の先端開口51aの中心を結んで形成される円(以下、液体燃料噴出孔配列円と記載する場合がある)を符号C2で示し、第2ノズル5の円盤状部分53の先端面に開口する6個のガス燃料噴出孔52夫々の先端開口52aの中心を結んで形成される円(以下、ガス燃料噴出孔配列円と記載する場合がある)を符号C3で示す。
ちなみに、液体燃料噴出孔配列円C2のPCDは8mmであり、ガス燃料噴出孔配列円C3のPCDは22mmである。当該値は、一例であり液体燃料噴出孔配列円C2のPCDよりもガス燃料噴出孔配列円C3のPCDの方が大きい条件で、適宜変更可能である。
尚、ガスの流れ方向において、ガス燃料噴出孔52の先端開口52aと、液体燃料噴出孔51の先端開口51aとは、同一位置に設けられている。
【0053】
図1及び
図4に示すように、第2ノズル5の円柱状部分54には、後述する二重管部材2から受け入れた液体燃料を3個の液体燃料噴出孔51に供給する液体燃料導入孔55が、その先端の開口部内に3個の液体燃料噴出孔51の基端開口を内在させる状態で、第2ノズル5の軸心Pと同軸心状に設けられている。
更に、液体燃料導入孔55の基端側の部分は、先端側の部分よりも大径の大径部分55bに構成されている。
【0054】
図1及び
図4に示すように、3個の液体燃料噴出孔51は、夫々、軸心が第2ノズル5の軸心Pと平行になる姿勢で、第2ノズル5の円盤状部分53に設けられている。
一方、6個のガス燃料噴出孔52は、夫々、軸心が先端側ほど第2ノズル5の軸心Pに近づき、且つ、軸心P方向視で周方向に同一方向にずれる状態で、第2ノズル5の円盤状部分53に設けられている。
ここで、
図4に示すように、3個の液体燃料噴出孔51は、夫々の先端開口51aが、1個置きのガス燃料噴出孔52の先端開口52aと周方向での位相が同一になる配置形態で、第2ノズル5の円盤状部分53に設けられている。
【0055】
図1に示すように、第2ノズル5の円盤状部分53の先端面を第1ノズル4の円筒状部42の大径部分42bの基端面に同軸心状に当て付けた状態で、円盤状部分53に設けられた6個のガス燃料噴出孔52の先端開口52aが、第1ノズル4の噴出路41における受け入れ部41gの開口内に臨む状態となるように構成されている。
【0056】
図1に示すように、二重管部材2は、内管21と外管22とを同軸心状に一体的に備えて構成される。内管21は、その外径が、第2ノズル5の円柱状部分54に設けられた液体燃料導入孔55の基端側の大径部分55bの内径と略同一に構成され、外管22は、その内径が第2ノズル5の円柱状部分54の外径よりも大径になるように構成される。
又、二重管部材2の外管22の外周面の先端部には、雄ネジ部23が形成されている。
つまり、二重管部材2は、内管21の先端部が第2ノズル5の液体燃料導入孔55の基端側の大径部分55bに内嵌され、且つ、外管22の先端部分が第2ノズル5の円柱状部分54の基端側部分を覆う状態で、第2ノズル5の基端に連結可能に構成されている。
【0057】
外管22の内周面と内管21の外周面との間の環状空間が、ガス燃料を供給するガス燃料供給路24に構成され、内管21の内部空間が、液体燃料を供給する液体燃料供給路25に構成される。
つまり、液体燃料供給路25が、液体燃料導入孔55を介して、3個の液体燃料噴出孔51に連通するように構成されている。
そして、図示を省略するが、二重管部材2の基端部には、ガス燃料をガス燃料供給路24に供給するガス燃料供給口が、外管22の内周面と内管21の外周面とにより形成される環状空間に連通する状態で設けられ、並びに、液体燃料を液体燃料供給路25に供給する液体燃料供給口が、内管21内に連通する状態で設けられる。
【0058】
図1及び
図2に示すように、水冷ジャケット3は、軸心P方向に貫通する貫通孔31を備えた概略円筒状に構成され、その周壁部内には、冷却水を通流させる水通流部32が備えられている。
水冷ジャケット3の貫通孔31は、第1ノズル4の円筒状部42の外径と略同径の先端側の小径孔部分31sと、第1ノズル4の円筒状部42の大径部分42bの外径よりも大径の基端側の大径孔部分31bとからなり、基端側向きの段部を有する2段状に構成されている。
水冷ジャケット3の貫通孔31の大径孔部分31bにおける内周面の基端側には、雌ネジ部33が設けられている。
又、水冷ジャケット3には、図示を省略するが、水通流部32に冷却水を供給する入水管部、及び、水通流部32から冷却水を排出させる出水管部が備えられている。
【0059】
図1に示すように、筒状連結部材6は、外周面及び内周面共に、先端側が基端側よりも小径となる2段状に構成されると共に、内周面が第2ノズル5の円柱状部分54よりも大径となるように構成されている。そして、筒状連結部材6の外周面の先端部には、水冷ジャケット3の貫通孔31における大径孔部分31bの内周面の雌ネジ部33に螺合可能な雄ネジ部61が形成され、筒状連結部材6の内周面の基端部には、二重管部材2の外管22の外周面の雄ネジ部23に螺合可能な雌ネジ部62が形成されている。
【0060】
図1、
図5及び
図8に示すように、各部材を組み付けて、ガスアトマイズバーナを製作するには、第1ノズル4を、その先端部分を水冷ジャケット3の先端から突出させた状態で、水冷ジャケット3の貫通孔31に内嵌させ、第2ノズル5を、その円盤状部分53の先端面を第1ノズル4の円筒状部42の大径部分42bの基端面に当て付けて配置する。
そして、筒状連結部材6の先端の雄ネジ部61を水冷ジャケット3の基端の雌ネジ部33に螺合することにより、筒状連結部材6を、第2ノズル5の外周を覆う状態で、水冷ジャケット3の基端に連結する。更に、二重管部材2の内管21の先端部を第2ノズル5における液体燃料導入孔55の大径部分55bに内嵌させた状態で、二重管部材2の外管22の先端の雄ネジ部23を筒状連結部材6の基端の雌ネジ部62に螺合することにより、二重管部材2を筒状連結部材6の基端に連結する。
【0061】
すると、第1ノズル4の円筒状部42における前方側の部分(短炎B型の第1ノズル4における後段環状副噴出孔群46rの設置位置を含む前方側の部分)が水冷ジャケット3の先端から突出し、第1ノズル4の円筒状部42の大径部分42bの先端面が水冷ジャケット3の貫通孔31の内周面の基端側向き段部に当て付けられ、第2ノズル5の円盤状部分53の先端面が第1ノズル4の円筒状部42の大径部分42bの基端面に当て付けられ、且つ、二重管部材2の先端が第2ノズル5の基端及び筒状連結部材6の基端に連結された状態で、水冷ジャケット3、第1ノズル4、第2ノズル5、筒状連結部材6及び二重管部材2が一体的に組み付けられて、ガスアトマイズバーナが組み立てられる。
【0062】
尚、
図1、
図5及び
図8中の7は、第2ノズル5の基端と二重管部材2の内管21の先端との嵌合部分をシールするOリングである。
【0063】
図1、
図5及び
図8に示すように、このように組み立てられたガスアトマイズバーナでは、第2ノズル5の円柱状部分54の外周面と筒状連結部材6の内周面とにより形成される環状の空間が、その基端側が二重管部材2により形成されるガス燃料供給路24に連通し、且つ、その先端が第2ノズル5の複数のガス燃料噴出孔52に連通することになり、この環状の空間が、ガス燃料供給路24に供給されたガス燃料を受け入れて複数のガス燃料噴出孔52に送るガス燃料導入路63として用いられるように構成されている。
【0064】
そして、図示を省略するが、二重管部材2の基端部に設けられた液体燃料供給口から、液体燃料供給路25に液体燃料が供給されると共に、二重管部材2の基端部に設けられたガス燃料供給口から、ガス燃料供給路24にガス燃料が供給される。
【0065】
すると、
図1、
図5及び
図8において矢印にて示すように、液体燃料供給路25に供給された液体燃料は、液体燃料導入孔55を通って、第2ノズル5の3個の液体燃料噴出孔51から第1ノズル4の噴出路41の受け入れ部41gに噴出され、並びに、ガス燃料供給路24に供給されたガス燃料は、ガス燃料導入路63を通って第2ノズル5の6個のガス燃料噴出孔52から第1ノズル4の噴出路41の受け入れ部41gに噴出される。
そして、第2ノズル5の3個の液体燃料噴出孔51から噴出された液体燃料は、第2ノズル5の6個のガス燃料噴出孔52から噴出されたガス燃料により霧化されると共に、その霧化された霧化液体燃料とガス燃料とが受け入れ部41gにて混合され、更に、噴出路41を通流する間に混合されて、それら霧化液体燃料とガス燃料とが混合された霧化混合燃料が主噴出孔43及び複数の副噴出孔44から噴出され、火炎Fを形成して燃焼する。
【0066】
更に、中炎型、短炎A型、短炎B型夫々のガスアトマイズバーナノズル1を夫々装備した中炎型、短炎A型、短炎B型の各ガスアトマイズバーナについて、燃焼形態を詳細に説明する。
先ず、
図1及び
図5に基づいて、中炎型のガスアトマイズバーナ、及び、短炎A型のガスアトマイズバーナについて、燃焼形態を詳細に説明する。
中炎型、短炎A型夫々のガスアトマイズバーナでは、噴出路41を通流する霧化混合燃料の一部が主噴出孔43から噴出路41の軸心P方向に噴出され、噴出路41を通流する霧化混合燃料の残量が、主噴出孔43の周りに環状に並ぶ複数の副噴出孔44から先拡がり状且つ旋回状に噴出されて、主噴出孔43から噴出された霧化混合燃料及び複数の副噴出孔44から噴出された霧化混合燃料が、炉内で燃焼する。
【0067】
複数の副噴出孔44からは、霧化混合燃料が先拡がり状且つ旋回状に噴出されることにより、噴出された霧化混合燃料は、旋回しながら先拡がり状に流れて、過度な拡散が抑制されるので、形成される火炎形状が安定する。
【0068】
そして、主噴出孔43から噴出される霧化混合燃料と複数の副噴出孔44から噴出される霧化混合燃料との割合に関連する主噴出孔43の横断面積、副噴出孔44の個数及び複数の副噴出孔44夫々の横断面積、並びに、複数の副噴出孔44夫々の軸心Qの先拡がり角度等を、種々に設定することにより、炉内に形成される火炎Fの長さや太さを調整することが可能となる。
つまり、炉内に形成される火炎Fの長さや太さを調整することにより、炉内に形成される温度分布を調整することができる。
【0069】
次に、
図8に基づいて、短炎B型のガスアトマイズバーナノズル1を装備した短炎B型のガスアトマイズバーナについて、燃焼形態を詳細に説明する。
短炎B型のガスアトマイズバーナでは、噴出路41を通流する霧化混合燃料の一部が主噴出孔43から噴出路41の軸心P方向に噴出され、噴出路41を通流する霧化混合燃料の残量が、2段の環状副噴出孔群46夫々の環状に並ぶ複数の副噴出孔44から、主噴出孔43から噴出される霧化混合燃料の周りに先拡がり状に噴出される。そして、主噴出孔43から噴出された霧化混合燃料、及び、2段の環状副噴出孔群46夫々の複数の副噴出孔44から噴出された霧化混合燃料が、炉内で燃焼する。
【0070】
ところで、1段目の環状副噴出孔群46の複数の副噴出孔44からは、霧化混合燃料が先拡がり状且つ旋回状に噴出されることにより、噴出された霧化混合燃料は、旋回しながら先拡がり状に流れて、過度な拡散が抑制されるので、形成される火炎形状が安定する。
【0071】
つまり、主噴出孔43から噴出される霧化混合燃料と複数段の環状副噴出孔群46から噴出される霧化混合燃料との割合に関連する主噴出孔43の横断面積、噴出路軸心P方向に並ぶ環状副噴出孔群46の段数、各環状副噴出孔群46の副噴出孔44の個数及び各環状副噴出孔群46の複数の副噴出孔44夫々の横断面積、並びに、各環状副噴出孔群46の複数の副噴出孔44夫々の先拡がり角度等を、種々に設定することにより、炉内に形成される火炎Fの長さや太さを調整することが可能となる。
特に、短炎B型のガスアトマイズバーナノズル1では、環状副噴出孔群46が噴出路軸心P方向に複数段(この実施形態では2段)に設けられていることから、炉内に形成される火炎Fの形状を比較的短く且つ太くする上で有効となる。
【0072】
本発明に係るガスアトマイズバーナノズル1により、炉内に形成される火炎Fの長さや太さを調整することにより、炉内に形成される温度分布を調整することができることを評価するために、評価テストを実施した。
以下、評価テストの結果を説明する。
評価テストでは、上記の本発明に係る3種類のガスアトマイズバーナノズル1、及び、従来のガスアトマイズバーナノズル1夫々を装備したガスアトマイズバーナをテスト炉に装備して、以下のテスト条件で燃焼させて、炉内に形成される温度分布を評価した。
【0073】
テスト条件は、ガス燃料の流量が240m3/h、液体燃料の流量が560L/h、空気比が1.2であり、テスト炉の形状は、炉内長が12000mm、炉内径が3000mmφである。
そして、テスト炉内に、6個の熱電対をガスアトマイズバーナからの距離が1mの位置から2m間隔で設け、更に、炉尻の排ガス出口にも熱電対を設けて、これら7個の熱電対により、温度分布を計測した。
ここで、評価テストに用いた液体燃料はLSA重油であり、ガス燃料は都市ガス13Aである。
【0074】
図11に、評価テストの結果を示す。
図11に示すように、炉内に形成される温度分布において、最高温域の位置は、従来のガスアトマイズバーナがガスアトマイズバーナから最も離れた位置となり、中炎型のガスアトマイズバーナ、短炎A型のガスアトマイズバーナの順にガスアトマイズバーナに近づいた位置となり、短炎B型のガスアトマイズバーナが最も手前となる。
【0075】
つまり、形成される火炎Fの長さが、従来のガスアトマイズバーナ、中炎型のガスアトマイズバーナ、短炎A型のガスアトマイズバーナ、端炎B型のガスアトマイズバーナの順に短くなり、この順で、形成される火炎Fの太さが太くなると考えられる。
【0076】
〔別実施形態〕
(A)中炎型や短炎A型の第1ノズル4のように、噴出路軸心P方向視で環状に並ぶ複数の副噴出孔44を1段で設ける場合について、別実施形態を以下に列記する。
(A-1)主噴出孔43の横断面積、副噴出孔44の個数、複数の副噴出孔44夫々の横断面積、夫々の軸心Qの先拡がり角度α、旋回角度βは、目的とする炉内の温度分布に応じて、種々変更可能である。
ちなみに、主噴出孔43の横断面積、副噴出孔44の個数、複数の副噴出孔44夫々の横断面積を変更することにより、主副噴出孔面積比を変更するにしても、形成される火炎を短炎化する上で、主副噴出孔面積比は、1~21の範囲で変更するのが好ましい。
【0077】
(A-2)上記の実施形態では、複数の副噴出孔44を、夫々の先端開口44aが、円筒状部42の周壁42wの先端面42sに対応する部分に開口する状態で設けたが、夫々の先端開口44aが、円筒状部42の周壁42wの側周面に対応する部分に開口する状態で設けても良い。
【0078】
(A-3)上記の実施形態では、複数の副噴出孔44夫々の軸心Qは、先拡がり状且つ旋回状としたが、旋回状にはせずに、円筒状部42の径方向視で円筒状部42の軸心Pに重なる状態で、先拡がり状しても良い。
【0079】
(A-4)上記の実施形態では、複数の副噴出孔44において、夫々の横断面積、夫々の軸心Qの先拡がり角度α、夫々の軸心Qの旋回角度βを同一としたが、夫々の横断面積を異ならせたり、夫々の軸心Qの先拡がり角度αを異ならせたり、夫々の軸心Qの旋回角度βを異ならせても良い。
【0080】
(B)短炎B型の第1ノズル4のように、環状副噴出孔群46を複数段に設ける場合について、別実施形態を以下に列記する。
(B-1)環状副噴出孔群46の段数は、上記の実施形態のように2段に限定されるものではなく、目的とする炉内の温度分布に応じて、種々変更可能である。
【0081】
(B-2)主噴出孔43の横断面積、各段の環状副噴出孔群46における副噴出孔44の個数、各段の環状副噴出孔群46における複数の副噴出孔44夫々の横断面積、各段の環状副噴出孔群46における複数の副噴出孔44夫々の軸心Qの先拡がり角度α、旋回角度βは、目的とする炉内の温度分布に応じて、種々変更可能である。
【0084】
(B-3)上記の実施形態では、各段の環状副噴出孔群46における複数の副噴出孔44において、夫々の横断面積、夫々の軸心Qの先拡がり角度α、夫々の軸心Qの旋回角度βを同一としたが、夫々の横断面積を異ならせたり、夫々の軸心Qの先拡がり角度αを異ならせたり、夫々の軸心Qの旋回角度βを異ならせても良い。
【0085】
(C)上記の実施形態では、円筒状部42の先端開口を閉じる主噴出孔形成体45を設け、その主噴出孔形成体45に、主噴出孔43を形成したが、主噴出孔形成体45を設けずに、円筒状部42の先端開口を主噴出孔43としても良い。
【0086】
(D)上記の実施形態では、主副噴出孔面積比が1以上になるように構成したが、1より小さくなるように構成しても良い。
【0087】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、又、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、炉内の温度分布を所定の温度分布に設定し得るガスアトマイズバーナノズルを提供することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ガスアトマイズバーナノズル
4 第1ノズル(第1ノズル部)
5 第2ノズル(第2ノズル部)
41 噴出路
42 円筒状部
42s 先端面
42w 周壁
43 主噴出孔
44 副噴出孔
44a 先端開口
45 主噴出孔形成体
46 環状副噴出孔群
51 液体燃料噴出孔
52 ガス燃料噴出孔
P 噴出路の軸心
Q 副噴出孔の軸心