IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-暖房システム 図1
  • 特許-暖房システム 図2
  • 特許-暖房システム 図3
  • 特許-暖房システム 図4
  • 特許-暖房システム 図5
  • 特許-暖房システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/18 20060101AFI20230510BHJP
   F24D 3/00 20220101ALI20230510BHJP
【FI】
F24D3/18
F24D3/00 J
F24D3/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019053807
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153611
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 雅旦
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-281644(JP,A)
【文献】特開2003-130491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/18
F24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、蒸発器と、を有するヒートポンプユニットと、
暖房用熱媒が循環する暖房用熱媒回路と、
前記暖房用熱媒回路に設けられ、前記凝縮器と熱交換した空気と前記暖房用熱媒とを熱交換させる熱媒熱交換器と、
前記暖房用熱媒回路に設けられ、前記暖房用熱媒を利用する端末と、
熱源ユニットと、
前記ヒートポンプユニット及び前記熱源ユニットを制御する制御部と、を備え、
前記熱源ユニットは、
主熱媒を加熱する熱源部と、
前記主熱媒が循環する主熱媒回路と、
前記主熱媒回路に設けられ、前記主熱媒が、前記暖房用熱媒回路を前記熱媒熱交換器から前記端末に向けて通流する前記暖房用熱媒と熱交換するための往き熱交換器と、
前記主熱媒回路に前記往き熱交換器と並列に設けられ、前記主熱媒が、前記暖房用熱媒回路を前記端末から前記熱媒熱交換器に向けて通流する前記暖房用熱媒と熱交換するための戻り熱交換器と、
前記主熱媒が前記往き熱交換器を通流する往き加熱流路と前記戻り熱交換器を通流する戻り加熱流路とを切り替え可能な流路切替手段と、を有し、
前記制御部は、
前記ヒートポンプユニットの起動運転時に、前記戻り加熱流路を構成するように前記流路切替手段を制御する
ことを特徴とする暖房システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ温水暖房システムが知られている(例えば特許文献1参照)。ヒートポンプ温水暖房システムは、暖房に使う熱媒水を生成するヒートポンプ加熱装置と、床暖房パネル等の暖房器具に温水を供給する給湯器等の被加熱装置とにより構成されている。第二の熱交換器、熱媒水配管、被加熱装置等により、熱媒水循環回路が形成されている。ヒートポンプ加熱装置は、ヒートポンプサイクルを構成することで、第二の熱交換器を循環する熱媒水に熱を供給する。(特許文献1の[0018][0020]図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-066515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したヒートポンプ温水暖房システムにあっては、起動運転時、ヒートポンプ加熱装置における熱の生成の効率が低く、省エネ性が低いものであった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みたものであって、省エネ性が高い暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る暖房システムは、ヒートポンプユニットと、暖房用熱媒が循環する暖房用熱媒回路と、熱媒熱交換器と、端末と、熱源ユニットと、制御部と、を備える。前記ヒートポンプユニットは、圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、蒸発器と、を有する。前記熱媒熱交換器は、前記暖房用熱媒回路に設けられ、前記凝縮器と熱交換した空気と前記暖房用熱媒とを熱交換させる。前記端末は、前記暖房用熱媒回路に設けられ、前記暖房用熱媒を利用する。前記制御部は、前記ヒートポンプユニット及び前記熱源ユニットを制御する。前記熱源ユニットは、主熱媒を加熱する熱源部と、前記主熱媒が循環する主熱媒回路と、往き熱交換器と、戻り熱交換器と、流路切替手段と、を有する。前記往き熱交換器は、前記主熱媒回路に設けられ、前記主熱媒が、前記暖房用熱媒回路を前記熱媒熱交換器から前記端末に向けて通流する前記暖房用熱媒と熱交換するためのものである。前記戻り熱交換器は、前記主熱媒回路に前記往き熱交換器と並列に設けられ、前記主熱媒が、前記暖房用熱媒回路を前記端末から前記熱媒熱交換器に向けて通流する前記暖房用熱媒と熱交換するためのものである。前記流路切替手段は、前記主熱媒が前記往き熱交換器を通流する往き加熱流路と前記戻り熱交換器を通流する戻り加熱流路とを切り替え可能である。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記制御部は、前記ヒートポンプユニットの起動運転時に、前記戻り加熱流路を構成するように前記流路切替手段を制御する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明にあっては、ヒートポンプユニットの起動運転時に、熱源ユニットを動作させて、主熱媒を介して熱を熱媒熱交換器に付与することができる。これにより、ヒートポンプユニットの動作に要するエネルギーが低下し、熱源ユニットの動作に要するエネルギーは増加するが、この増加分は、ヒートポンプユニットの動作に要するエネルギーの低下分よりも低くてすむ。このため、ヒートポンプユニットの起動運転時における省エネ性が高い暖房システムとすることができる。
【0009】
請求項2に係る発明にあっては、ヒートポンプユニットの起動運転時に、主熱媒が戻り熱交換器を通流することにより、戻り熱交換器で加熱されて高温となった暖房用熱媒が熱媒熱交換器に戻ることとなる。この結果、室内側冷媒熱交換器が空気を介して熱媒熱交換器を通流する暖房用熱媒に付与すべき熱量が低下するため、ヒートポンプユニットの動作に要するエネルギーが低くてすむ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る暖房システムの全体を概略的に示す構成図である。
図2図2は、同上の暖房システムの制御系を示すブロック図である。
図3図3は、同上の暖房システムにおける冷凍サイクルにおける成績係数と負荷との関係を示す図である。
図4図4は、同上の実施形態に係る暖房システムの運転例1の全体制御のフロー図である。
図5図5は、同上の運転例1の起動運転のフロー図である。
図6図6は、同上の運転例1の冷凍サイクル最適設定制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、暖房システムに関し、更に詳しくは、ヒートポンプユニット及び熱源ユニットを備えた暖房システムに関するものである。以下、本開示に係る暖房システムの一実施形態について、図1図6に基づいて説明する。なお、本開示に係る暖房システムの実施形態は、下記実施形態に限定されるものではなく、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【0012】
暖房システムは、ヒートポンプユニットにより冷凍サイクルを成立させるのみならず、熱源ユニットを用いて熱媒を加熱して、温水床暖房装置等の端末に熱媒を介して熱を付与する。
【0013】
図1に示すように、暖房システム1は、ヒートポンプユニット2と、暖房ユニット4と、熱源ユニット(貯湯ユニット3)と、制御部10(図2参照)と、を備える。
【0014】
ヒートポンプユニット2は、圧縮機21と、室外側冷媒熱交換器22と、膨張機構23と、室内側冷媒熱交換器24と、ヒートポンプ制御部20(図2参照)と、を有する。ヒートポンプユニット2が動作することにより、冷凍サイクルが成立する。
【0015】
ヒートポンプユニット2は、室外機201と室内機202とを有する。室外機201は、ケーシング(不図示)と、ケーシング内に収容される、圧縮機21と、室外側冷媒熱交換器22と、膨張機構23と、四方弁25と、送風装置26等の機器を有する。
【0016】
膨張機構23は、キャピラリチューブや電子膨張弁等により構成される。膨張機構23の流路の一端は、冷媒流路27を介して室外側冷媒熱交換器22の流路の一端に接続される。室外側冷媒熱交換器22は、室外機201内の外気流路(不図示)の途中に配置される。室外機201のケーシングは、外気を吸込むための吸込み口(不図示)と、空気を吹出すための吹出し口(不図示)とを有し、吸込み口と吹出し口との間に外気流路が形成される。外気流路の途中には更に、送風装置26としてのファンが配置される。
【0017】
室外側冷媒熱交換器22の流路の他端は、冷媒流路27を介して四方弁25の第1のポート251に接続される。四方弁25の第2のポート252は、冷媒流路27を介して圧縮機21の流路の一端に接続される。圧縮機21の流路の他端は、冷媒流路27を介して四方弁25の第3のポート253に接続される。膨張機構23の流路の他端に接続される冷媒流路27と、四方弁25の第4のポート254に接続される冷媒流路27とは、室外機201より導出され、室内機202に導入される。
【0018】
室内機202は、ケーシング(不図示)と、ケーシング内に収容される、室内側冷媒熱交換器24と、後述する熱媒熱交換器41と、送風装置28等の機器を有する。ただし、熱媒熱交換器41は、暖房システム1を構成する要素であるが、ヒートポンプユニット2を構成する要素(すなわち冷凍サイクルを成立させるための要素)ではない。室内機202のケーシングは、空気を吸込むための吸込み口(不図示)と、空気を吹出すための吹出し口(不図示)とを有し、吸込み口と吹出し口との間に空気流路(不図示)が形成される。空気流路の途中には、吸込み口側から吹出し口側にかけて、室内側冷媒熱交換器24と、熱媒熱交換器41と、送風装置28としてのファンと、がこの順に配置される。
【0019】
室内側冷媒熱交換器24の流路の一端は、冷媒流路27を介して四方弁25の第4のポート254に接続される。室内側冷媒熱交換器24の流路の他端は、冷媒流路27を介して膨張機構23の流路の他端に接続される。
【0020】
四方弁25は、第1のポート251と第2のポート252とが通じると共に第3のポート253と第4のポート254とが通じる状態と、第1のポート251と第3のポート253とが通じると共に第2のポート252と第4のポート254とが通じる状態のいずれかに任意に切り替えることができる。
【0021】
ヒートポンプ制御部20は、ヒートポンプユニット2を制御する。ヒートポンプ制御部20は、例えばマイクロコンピュータを有し、ROM(Read Only Memory)等の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、ヒートポンプユニット2を構成する要素の動作を制御する。ヒートポンプ制御部20は、具体的には、圧縮機21により搬送される冷媒の単位時間当たりの搬送量(l/s)、室外機201及び室内機202に配置された送風装置26,28による単位時間当たりの風量(m/s)、四方弁25の切り替えを制御することができる。ヒートポンプ制御部20は、室内機202に設けられるが、室外機201に設けられてもよく、設けられる場所は特に限定されない。
【0022】
ヒートポンプユニット2は、本実施形態では、外気温度検知部204(図2参照)を備えている。外気温度検知部204は、室外機201の外気流路の吸込み口近傍に配置されている。外気温度検知部204は、サーミスタにより構成されるが、サーミスタ以外にも各種の温度センサが適宜利用可能であり、特に限定されない。外気温度検知部204は、室外機201の外気流路に吸込まれる空気(外気)の外気温度To(℃)を検知する。外気温度検知部204により検知された外気温度To情報は、ヒートポンプ制御部20に受信される。
【0023】
ヒートポンプユニット2は、本実施形態では、暖房操作部29(図2参照)を備えている。暖房操作部29より入力された情報は、ヒートポンプ制御部20に受信される。
【0024】
このヒートポンプユニット2により、冷凍サイクルによる冷房運転と暖房運転とが選択的に運転可能である。冷房運転では、ヒートポンプ制御部20は、四方弁25を、第1のポート251と第2のポート252とが通じると共に第3のポート253と第4のポート254とが通じる状態とする。これにより、圧縮機21、室外側冷媒熱交換器22(凝縮器)、膨張機構23、室内側冷媒熱交換器24(蒸発器)、圧縮機21へと到る冷媒流路27が形成され、冷房運転の冷凍サイクルが成立する。
【0025】
また、暖房運転では、四方弁25を、第1のポート251と第3のポート253とが通じると共に第2のポート252と第4のポート254とが通じる状態とする。これにより、圧縮機21、室内側冷媒熱交換器24(凝縮器)、膨張機構23、室外側冷媒熱交換器22(蒸発器)、再び圧縮機21へと到る冷媒流路27が形成され、暖房運転が行われる。このようなヒートポンプユニット2は、従来広く知られており、様々なものが適宜利用可能であって特に限定されない。また、ヒートポンプユニット2が適宜アキュミュレータ等の機器を有してもよい。
【0026】
本実施形態では、熱源ユニットは貯湯ユニット3により構成される。貯湯ユニット3は、主熱媒と、熱源部31と、主熱媒が循環する主熱媒回路32と、を有する。更に、貯湯ユニット3は、貯湯部33と、出湯流路34と、主熱媒供給部37と、貯湯制御部30(図2参照)と、を有する。本実施形態では、主熱媒として湯水(水)が利用されるが、特に湯水でなくてもよく、他の液体や各種溶液であってもよく、限定されない。なお、熱源ユニットは、貯湯ユニット3により構成されなくてもよく、少なくとも熱源部31と主熱媒回路32とを有していればよい。
【0027】
熱源部31は、主熱媒を加熱する。本実施形態では、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell、略してPEFCという)により、熱源部31が構成されている。燃料電池において発電に伴って発生する熱(排熱)が、熱交換器311を介して主熱媒に付与される。なお、熱源部31は、PEFCに限定されず、他の種類の燃料電池であってもよいし、燃料電池以外であってもよい。例えば、熱源部31は、エンジンやガスタービンによりジェネレータを動作させる発電装置であってもよい。
【0028】
主熱媒回路32には、熱源部31から排熱を回収した主熱媒が通流する。主熱媒回路32は、途中に、ポンプ等からなる搬送装置321と、流量調整弁322と、を有する。
【0029】
貯湯部33は、主熱媒回路32に設けられる。貯湯部33は、主熱媒回路32を通流する主熱媒が貯められる。貯湯部33は、本実施形態では貯湯タンクにより構成されるが、貯湯タンクにより構成されないものであってもよく、限定されない。主熱媒回路32及び貯湯部33により、循環する主熱媒の一流路が形成される。
【0030】
出湯流路34は、貯湯部33から主熱媒を搬出するための流路である。出湯流路34の上流端は、貯湯部33の上部(上端部)に接続されている。出湯流路34には、出湯量調整部(不図示)が設けられる。出湯量調整部は、流量調整弁からなり、貯湯部からの出湯の実行及び停止を切り替え可能であると共に、出湯量を調整可能である。
【0031】
主熱媒回路32は、貯湯部33と並列に接続される第一熱交換流路35を有する。更に、主熱媒回路32は、貯湯部33及び第一熱交換流路35と並列に接続される第二熱交換流路36を有する。第一熱交換流路35及び第二熱交換流路36は、主熱媒回路32の一部である。
【0032】
主熱媒供給部37は、主熱媒回路32又は貯湯部33に主熱媒を供給する。本実施形態では、主熱媒供給部37は、給水管371及び給水管371に設けられる調整弁372により構成される。給水管371の上流端は、水道等の給水源(不図示)に接続されており、給水管371の下流端は、貯湯部33の下部(下端部)に接続されている。主熱媒供給部37は、貯湯部33への給水の実行及び停止を切り替え可能であると共に、給水量を調整可能である。
【0033】
貯湯制御部30は、貯湯ユニット3を構成する要素の動作を制御する。貯湯制御部30は、例えばマイクロコンピュータを有し、ROM等の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、貯湯ユニット3の要素の動作を制御する。貯湯制御部30は、熱源部31を制御して、熱源部31における単位時間当たりの発熱量を調整することができる。また、貯湯制御部30は、主熱媒回路32に設けられた搬送装置321、流量調整弁322を制御して、主熱媒回路32(ただし貯湯部33を通流する流路)を通流する主熱媒の通流の実行及び停止、主熱媒の通流量を調整することができる。また、貯湯制御部30は、出湯量調整部を制御して、出湯の実行及び停止と、出湯量とを調整することができる。また、貯湯制御部30は、主熱媒供給部37を制御して、貯湯部33への給水の実行及び停止と、給水量とを調整することができる。
【0034】
貯湯ユニット3は、本実施形態では、貯湯操作部38(図2参照)を備えている。使用者は、貯湯操作部38を操作して、熱源部31の動作及び停止と発電量、主熱媒の出湯及び停止、出湯量等の各種設定を行う。貯湯操作部38より入力された情報は、貯湯制御部30に受信される。
【0035】
暖房システム1は、ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30との間で通信を行う通信装置(不図示)を更に備える。通信装置により、ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30とは、無線又は有線により相互に送受信を行うことができる。このような通信装置は、従来知られている様々なものが適宜利用可能であり、特に限定されない。
【0036】
本実施形態では、暖房システム1の制御部10は、ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30とにより構成される。すなわち、制御部10は、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3(熱源ユニット)を制御する。ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30とが協働して、暖房システム1の全体の制御部10として機能する。なお、暖房システム1が単一の制御部10を備え、単一の制御部10が暖房システム1の全体を制御してもよい。
【0037】
暖房ユニット4は、暖房用熱媒と、暖房用熱媒が循環する暖房用熱媒回路40と、熱媒熱交換器41と、端末42と、を有する。本実施形態では、暖房用熱媒として湯水(水)が利用されるが、特に湯水でなくてもよく、他の液体や各種溶液であってもよく、限定されない。
【0038】
熱媒熱交換器41は、暖房用熱媒回路40に設けられる。熱媒熱交換器41は、凝縮器(暖房運転時における室内側冷媒熱交換器24)と熱交換した空気流路を通流する空気と、暖房用熱媒回路40を通流する暖房用熱媒とを熱交換させる。更に説明すると、空気流路を通流する空気は、凝縮器である室内側冷媒熱交換器24において加熱される。室内側冷媒熱交換器24に加熱された空気は、熱媒熱交換器41において暖房用熱媒に熱を付与する。すなわち、暖房用熱媒回路40を通流する暖房用熱媒は、熱媒熱交換器41において加熱される。
【0039】
端末42は、暖房用熱媒回路40に設けられる。端末42は、内部流路420を有する床暖房パネルであり、内部流路420に暖房用熱媒が通流する。
【0040】
暖房用熱媒回路40の途中には、ポンプ等からなる搬送装置43と、流量調整弁44とが設けられる。暖房用熱媒回路40においては、搬送装置43により、暖房用熱媒の通流の実行及び停止が切り替え可能であると共に、流量調整弁44により、暖房用熱媒の通流量が調整可能である。
【0041】
主熱媒回路32には、往き熱交換器51が設けられる。本実施形態では、往き熱交換器51は、主熱媒回路32のうちの第一熱交換流路35と、暖房用熱媒回路40において暖房用熱媒が熱媒熱交換器41から端末42に向けて通流する流路と、の間に跨るように設けられる。往き熱交換器51は、主熱媒が、暖房用熱媒回路40を熱媒熱交換器41から端末42に向けて通流する暖房用熱媒と熱交換するためのものである。
【0042】
主熱媒回路32には、戻り熱交換器52が設けられる。戻り熱交換器52は、主熱媒回路32において、往き熱交換器51と並列に設けられる。本実施形態では、戻り熱交換器52は、主熱媒回路32のうちの第二熱交換流路36と、暖房用熱媒回路40において暖房用熱媒が端末42から熱媒熱交換器41に向けて通流する流路と、の間に跨るように設けられる。戻り熱交換器52は、主熱媒が、暖房用熱媒回路40を端末42から熱媒熱交換器41に向けて通流する暖房用熱媒と熱交換するためのものである。
【0043】
暖房システム1は、流路切替手段6を有する。流路切替手段6は、主熱媒が往き熱交換器51を通流する往き加熱流路と、戻り熱交換器52を通流する戻り加熱流路と、を切り替え可能とするものである。往き加熱流路は、主熱媒回路32のうちの熱交換器311を含む部分と第一熱交換流路35とからなり、途中に熱交換器311と往き熱交換器51とを有する主熱媒の回路である。また、戻り加熱流路は、主熱媒回路32のうちの熱交換器311を含む部分と第二熱交換流路36とからなり、途中に熱交換器311と戻り熱交換器52とを有する主熱媒の回路である。
【0044】
本実施形態では、流路切替手段6は、第一ダンパ61と、第二ダンパ62とにより構成される。第一ダンパ61は、第一熱交換流路35の往き熱交換器51の上流側の部分及び下流側の部分に設けられる。第一ダンパ61により、往き熱交換器51を通流する主熱媒の通流の実行及び停止が切り替え可能であると共に、往き熱交換器51を通流する主熱媒の通流量が調整可能である。
【0045】
また、第二ダンパ62は、第二熱交換流路36の戻り熱交換器52の上流側の部分及び下流側の部分に設けられる。第二ダンパ62により、戻り熱交換器52を通流する主熱媒の通流の実行及び停止が切り替え可能であると共に、戻り熱交換器52を通流する主熱媒の通流量が調整可能である。
【0046】
流路切替手段6は、第一ダンパ61を開とすると共に第二ダンパ62を閉とすることにより、往き加熱流路を構成することができる。また、流路切替手段6は、第一ダンパ61を閉とすると共に第二ダンパ62を開とすることにより、戻り加熱流路を構成することができる。また、第一ダンパ61を開とすると共に第二ダンパ62を開とすることにより、往き加熱流路及び戻り加熱流路を構成することができる。このとき、第一ダンパ61の開度と第二ダンパ62の開度を適宜調整することにより、第一熱交換流路35を通流する通流量と第二熱交換流路36を通流する通流量とを適宜調整することができる。
【0047】
次に、ヒートポンプユニット2の特性について説明する。ヒートポンプユニット2の負荷Wと冷凍サイクルにおける成績係数(Coefficient Of Performance、以下COPとする)との間には、図3に示す関係が存在する。ここで、Wmin(W)は負荷Wの最小値であり、主に、圧縮機21により搬送される冷媒の最小限界搬送量と、外気温度Toと、に基づいて定まる最小絞り負荷である。最小限界搬送量は、主に、圧縮機21が有するモータの単位時間当たりの回転数の下限値により決まる。
【0048】
また、Wmax(W)は負荷Wの最大値であり、主に、圧縮機21により搬送される冷媒の最大限界搬送量と、外気温度Toと、に基づいて定まる。最大限界搬送量は、主に、圧縮機21が有するモータの単位時間当たりの回転数の上限値により決まる。
【0049】
なお、負荷W及びCOPの具体的な値は、ヒートポンプユニット2毎に定まるため、具体的な値についての説明は省略する。
【0050】
COPが最大となる負荷WをWcmax(W)としたとき、上限をWcmax+α1(W)とすると共に下限をWcmax-α2(W)とする範囲を、最適化負荷範囲Z1とする。ここで、α1及びα2は、COP及びエネルギー効率等の観点から各種の許容範囲をどの位広くとるか等により、適宜決められる。
【0051】
冷凍サイクルは、負荷Wが最適化負荷範囲Z1内にある場合に行われると、COP及びエネルギー効率が高く好ましい。また、最適化負荷範囲Z1外の負荷Wの範囲を非最適化負荷範囲Z2とする。最適化負荷範囲Z1のうち、負荷WがWcmax未満である領域を範囲Z11とし、負荷WがWcmax以上である領域を範囲Z12とする。また、非最適化負荷範囲Z2のうち、負荷WがWcmax-α2未満である領域を範囲Z21とし、負荷WがWcmax+α1以上である領域を範囲Z22とする。
【0052】
また、ヒートポンプユニット2にあっては、暖房運転の起動時の省エネ性が低い。そこで、暖房運転を行うにあたり、ヒートポンプユニット2の起動運転時に、ヒートポンプユニット2のみ動作させるのではなく、熱源ユニット(貯湯ユニット3)を動作させる運転を行う。具体的には、ヒートポンプユニット2の起動運転時に、制御部10は、貯湯ユニット3を動作させ、戻り加熱流路を構成するように流路切替手段6を制御する。
【0053】
ヒートポンプユニット2の起動運転時に、必要な熱需要をヒートポンプユニット2のみの運転で賄おうとすると、ヒートポンプユニット2の動作に要するエネルギーが膨大となり、省エネ性が低い。
【0054】
本実施形態においては、ヒートポンプユニット2の起動運転時に、貯湯ユニット3を動作させて、主熱媒回路32を通流する主熱媒を介して、熱を熱媒熱交換器41に付与している。これにより、ヒートポンプユニット2の動作に要するエネルギーが低下すると共に、ヒートポンプユニット2における熱需要を賄う能力(熱供給能力)が低下する。ヒートポンプユニット2における熱供給能力の低下分は、貯湯ユニット3により賄われるが、これに伴って貯湯ユニット3の動作に要するエネルギーは、ヒートポンプユニット2の動作に要するエネルギーの低下分よりも低くてすむ。このため、ヒートポンプユニット2の起動運転時に、貯湯ユニット3を併せて動作させると、省エネ性が高い。
【0055】
具体的には、ヒートポンプユニット2の起動運転時に、戻り加熱流路が構成されて、主熱媒が戻り熱交換器52を通流する。これにより、戻り熱交換器52で加熱されて高温となった暖房用熱媒が熱媒熱交換器41に戻ることとなり、室内側冷媒熱交換器24が空気を介して熱媒熱交換器41を通流する暖房用熱媒に付与すべき熱量が低下するため、ヒートポンプユニット2の動作に要するエネルギーが低くてすむ。
【0056】
以下、暖房システム1の運転例1について説明する。図4に、運転例1の全体制御のフロー図を示す。
【0057】
使用者は、暖房操作部29を操作して、設定温度(室内目標温度)を設定し、暖房システム1による運転を開始する。なお、使用者が暖房操作部29を操作する前は、ヒートポンプユニット2は停止しているものとする。
【0058】
ステップS1において、ヒートポンプユニット2の起動運転を開始する。次に、ステップS2に進む。
【0059】
ステップS2において、一定時間が経過したか否かが判定され、一定時間が経過していないと判定された場合には、ステップS2に戻る。一定時間は、適宜設定されるもので、特に限定されない。ステップS2において、一定時間が経過していると判定された場合には、ステップS3に進む。
【0060】
ステップS3において、ヒートポンプユニット2の起動運転を終了する。次に、ステップS4に進む。
【0061】
ステップS4において、ヒートポンプユニット2の定常運転を開始する。ヒートポンプユニット2の定常運転では、使用者が暖房操作部29を操作して設定した設定温度を基に、制御部10がヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3を制御する。運転例1では、設定温度を例えば9段階にテーブル化し、テーブル化した各段階の設定温度にそれぞれ対応するように、室内側冷媒熱交換器24及び往き熱交換器51で暖房用熱媒に付与すべき熱量を例えば9段階にテーブル化している。なお、テーブル化するにあたっての段階数は限定されない。
【0062】
例えば、設定温度16℃未満の場合はメモリ1、設定温度16℃以上18℃未満の場合はメモリ2、設定温度18℃以上20℃未満の場合はメモリ3、設定温度20℃以上22℃未満の場合はメモリ4、設定温度22℃以上24℃未満の場合はメモリ5、設定温度24℃以上26℃未満の場合はメモリ6、設定温度26℃以上28℃未満の場合はメモリ7、設定温度28℃以上30℃未満の場合はメモリ8、設定温度30℃以上の場合はメモリ9、というようにテーブル化している。次に、ステップS5に進む。
【0063】
ステップS5において、設定温度が、第一定常運転をすべき温度範囲にあるか否かが判定される。ステップS5において、設定温度が、第一定常運転をすべき温度範囲にあると判定された場合には、ステップS6に進む。運転例1では、メモリ1~4に対応する範囲(すなわち設定温度が22℃未満の場合)が、第一定常運転をすべき温度範囲である。
【0064】
ステップS6において、第一定常運転が開始される。第一定常運転は、ヒートポンプユニット2が動作せず、貯湯ユニット3のみ動作する運転である。第一定常運転では、熱源部31の排熱を回収した例えば40℃程の主熱媒が、往き熱交換器51で暖房用熱媒に熱を付与する。暖房用熱媒へ付与する熱量は、デューティ制御により制御する。運転例1では、メモリ1(設定温度16℃未満)の場合には、暖房用熱媒を端末42への通流時間が5分間で、暖房用熱媒の端末42への通流の停止時間が15分間、というサイクルを繰り返す。メモリ2(設定温度16℃以上18℃未満)の場合には通流時間が10分間で停止時間が10分間、メモリ3(設定温度18℃以上20℃未満)の場合には通流時間が15分間で停止時間が5分間、メモリ4(設定温度20℃以上22℃未満)の場合には通流時間が20分間で停止時間が0分間、というサイクルを繰り返す。次に、ステップS8に進む。
【0065】
また、ステップS5において、設定温度が、第一定常運転をすべき温度範囲にないと判定された場合には、ステップS7に進む。
【0066】
ステップS7において、第二定常運転が開始される。第二定常運転は、設定温度が、メモリ5~9に対応する範囲(すなわち設定温度が22℃以上)である場合に、実行される。第二定常運転は、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3の両方が動作する運転である。第二定常運転においても、暖房用熱媒へ付与する熱量は、デューティ制御により制御する。次に、ステップS8に進む。
【0067】
ステップS8において、暖房操作部29が操作されて、設定温度が変更されたか否かが判定される。ステップS8において、設定温度が変更されたと判定された場合には、ステップS5に戻る。ステップS8において、設定温度が変更されたと判定されない場合には、ステップS8に戻る。
【0068】
また、暖房操作部29が操作されて、暖房運転の停止が入力されると、制御部10は、暖房運転を停止する。
【0069】
次に、ステップS1におけるヒートポンプユニット2の起動運転について説明する。図5に、運転例1のヒートポンプユニット2の起動運転のフロー図を示す。
【0070】
ステップS11において、制御部10は、第一ダンパ61を閉とすると共に、第二ダンパ62を開とし、戻り加熱流路を構成する。次に、ステップS12に進む。
【0071】
ステップS12において、暖房用熱媒回路40における戻り熱交換器52に入る暖房用熱媒の温度Tinを計測する。なお、温度Tinは、センサ等により計測されて、制御部10に受信される。次に、ステップS13に進む。
【0072】
ステップS13において、第二熱交換流路36を通流する主熱媒の通流量qwが最大値qwmaxである場合に、主熱媒が戻り熱交換器52において放出する熱量Qwmaxを算出する。熱量Qwmaxは、制御部10が、通流量qwmax、熱源部31での発熱量等の諸量を基に算出する。次に、ステップS14に進む。
【0073】
ステップS14において、暖房用熱媒回路40における戻り熱交換器52から出る暖房用熱媒の温度Toutを算出する。ここで、(戻り熱交換器52において暖房用熱媒に付与される熱量)/(戻り熱交換器52において主熱媒が放出する熱量)を熱交換比率kwとする。また、暖房用熱媒回路40を通流する暖房用熱媒の通流量をqとする。温度Toutは、
Tout=kw・Qwmax/q+Tin ・・・(式1)
より算出される。次に、ステップS15に進む。
【0074】
ステップS15において、暖房用熱媒回路40における熱媒熱交換器41から出て端末42に向かって通流する暖房用熱媒の温度をTisvとするために必要な、ヒートポンプユニット2が熱媒熱交換器41において放出する熱量Qrsvを算出する。ここで、(熱媒熱交換器41において暖房用熱媒に付与される熱量)/(熱媒熱交換器41においてヒートポンプユニット2が放出する熱量)を熱交換比率krとする。熱量Qrsvは、
Qrsv=q/kr・(Tisv-Tout) ・・・(式2)
より算出される。次に、ステップS16に進む。
【0075】
ステップS16において、熱媒熱交換器41において熱量Qrsvを放出するために必要なヒートポンプユニット2における負荷Wsvを算出する。なお、負荷Wsvは、式に数値を代入して演算して算出してもよいし、予め負荷Wsv及び諸量がテーブル化されていて、テーブル上で諸量を当てはめて、対応する負荷Wsvを選択してもよい。次に、ステップS17に進む。
【0076】
ステップS17において、冷凍サイクル最適設定制御を行う。冷凍サイクル最適設定制御について図6に基づいて説明する。
【0077】
ステップS21において、負荷Wsvが、COPが最大となるWcmax(図3参照)未満か否かが判定される。ステップS21において、WsvがWcmax未満でないと判定された場合には、冷凍サイクル最適設定制御を終了して、ステップS18(図5参照)に戻る。ステップS21において、WsvがWcmax未満であると判定された場合には、ステップS22に進む。
【0078】
ステップS22において、負荷WsvをWcmaxにまで上昇させる。次に、ステップS23に進む。
【0079】
ステップS23において、負荷Wsvに対応する、ヒートポンプユニット2が熱媒熱交換器41において放出する熱量Qrを算出する。次に、ステップS24に進む。
【0080】
ステップS24において、(式2)のQrsvに、ステップS23において算出した熱量Qrを代入して、(式2)を満たすToutとしてToutmaxを算出する。次に、ステップS25に進む。
【0081】
ステップS25において、(式1)のToutにToutmaxを代入して、(式1)を満たすQwmaxとしてQw′を算出する。次に、ステップS26に進む。
【0082】
ステップS26において、算出したQw′に対応するように、通流量qwをqwmaxからqw′に変更する。次に、冷凍サイクル最適設定制御を終了して、ステップS18(図5参照)に戻る。
【0083】
ステップS18において、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3を動作させる。次に、ステップS2(図4参照)に進む。
【0084】
運転例1においては、ヒートポンプユニット2の起動運転時に、貯湯ユニット3を最大限動作させて、主熱媒回路32を通流する主熱媒を介して、熱を熱媒熱交換器41に付与するため、ヒートポンプユニット2の動作に要するエネルギーが最小限ですむ。これにより、ヒートポンプユニット2は、省エネ性の低い起動運転時に、動作に要するエネルギーが最小限ですむため、省エネ性が高くなる。
【0085】
また、冷凍サイクル最適設定制御を行うことにより、COPが最大となるWcmaxによりヒートポンプユニット2を運転することができ、省エネ性がより一層向上する。なお、冷凍サイクル最適設定制御は任意であり、行われなくてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 暖房システム
10 制御部
2 ヒートポンプユニット
21 圧縮機
22 室外側冷媒熱交換器(蒸発器)
23 膨張機構
24 室内側冷媒熱交換器(凝縮器)
3 貯湯ユニット(熱源ユニット)
31 熱源部
32 主熱媒回路
40 暖房用熱媒回路
41 熱媒熱交換器
42 端末
51 往き熱交換器
52 戻り熱交換器
6 流路切替手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6