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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ポンプユニット及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   F04B 23/10 20060101AFI20230510BHJP
   F04B 23/12 20060101ALI20230510BHJP
   F04B 53/16 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
F04B23/10
F04B23/12
F04B53/16 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019071480
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020169605
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】赤見 俊也
(72)【発明者】
【氏名】山口 祥
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-158556(JP,A)
【文献】実開昭50-051207(JP,U)
【文献】特開2008-025494(JP,A)
【文献】特開平06-159237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/10-23/12
F04B 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプと、第2ポンプと、
を備え、
前記第1ポンプは、
ケーシングと、
前記ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、
前記回転軸と一体となって回転され、シリンダ穴が形成されたシリンダブロック、前記シリンダ穴に前記回転軸の軸線方向に移動自在に収納されたピストン、及び前記ピストンの前記軸線方向の変位を規制する斜板を有するとともに、前記シリンダ穴に流体を吸入するポンプ供給口及び前記シリンダ穴から前記流体を排出するポンプ排出口を有するポンプ本体と、
前記回転軸の軸線上で前記ケーシングの一側に位置する壁面部と、
前記ケーシングの前記壁面部に形成され、前記流体が流れる吸入部及び排出部と、
前記吸入部及び前記排出部の少なくともいずれか一方の内側面部に設けられた凸部と、
前記壁面部の外面から前記凸部に向けて形成された固定用穴部と
備え、
前記第2ポンプは、前記固定用穴部に固定部材を取り付けて、前記壁面部の前記外面に固定され
前記吸入部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ供給口に至る間に形成され、
前記排出部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部、前記吸入部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ排出口に至る間に形成されている
ポンプユニット。
【請求項2】
前記凸部は、前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向と直交する幅方向の中央に配置されている
請求項1に記載のポンプユニット。
【請求項3】
前記第2ポンプは、
他のケーシングと、
前記他のケーシングの第1壁面部に形成され前記他のケーシング内に液体を吸入するための他の吸入部と、
前記他のケーシングの第2壁面部に形成され前記他のケーシング外に液体を排出するための他の排出部とを含み、
前記ケーシングにおける前記排出部の排出口部が形成された側面部と前記他のケーシングの前記第2壁面部とは、同一方向を向いている
請求項1又は請求項2に記載のポンプユニット。
【請求項4】
前記第1ポンプの前記吸入部と、前記第2ポンプの前記他の吸入部とは、連通している請求項3に記載のポンプユニット。
【請求項5】
前記凸部は、突出方向に向かうに従って先細りとなる
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【請求項6】
前記凸部は楕円錐であり、
前記凸部の長軸は、前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向に沿っている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【請求項7】
第1ポンプと、第2ポンプと、
を備え、
前記第1ポンプは、
ケーシングと、
前記ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、
前記回転軸と一体となって回転され、シリンダ穴が形成されたシリンダブロック、前記シリンダ穴に前記回転軸の軸線方向に移動自在に収納されたピストン、及び前記ピストンの前記軸線方向の変位を規制する斜板を有するとともに、前記シリンダ穴に流体を吸入するポンプ供給口及び前記シリンダ穴から前記流体を排出するポンプ排出口を有するポンプ本体と、
前記回転軸の軸線上で前記ケーシングの一側に位置する壁面部と、
前記ケーシングの前記壁面部に形成され、前記流体が流れる吸入部及び排出部と、
前記吸入部及び前記排出部の少なくともいずれか一方の内側面部で前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向と直交する幅方向の中央に設けられ長軸が前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向に沿って楕円錐、かつ突出方向に向かうに従って先細りの凸部と、
前記壁面部の外面から前記凸部に向けて形成された固定用穴部と
備え、
前記第2ポンプは、
他のケーシングと、
第1壁面部に形成され前記第1ポンプの前記吸入部と連通する他の吸入部と、
前記ケーシングにおける前記排出部の排出口部が形成された側面部と同一方向を向いている前記他のケーシングの第2壁面部に形成された他の排出部と
を備え、
前記第2ポンプは、前記固定用穴部に固定部材を取り付けて、前記壁面部の前記外面に固定され
前記吸入部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ供給口に至る間に形成され、
前記排出部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部、前記吸入部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ排出口に至る間に形成されている
ポンプユニット。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のポンプユニットと、
前記ポンプユニットが搭載された車体と
を備えた建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニット及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械に搭載される油圧式のポンプユニットとして、メインポンプとギアポンプとの2つのポンプを備えたものがある。
メインポンプは、例えばポンプケーシング内に回転自在に支持された回転軸を有している。回転軸の外周面には、シリンダブロックが嵌め合わされ固定されている。回転軸とシリンダブロックとは、一体となって回転する。シリンダブロックには、複数のシリンダ穴が設けられている。各シリンダ穴に、ピストンが挿入されている。そして、シリンダ穴とピストンとによりシリンダ室を構成している。
ポンプケーシングのシリンダ室が形成される側の底部には、作動油が流れる吸入路と排出路とが形成されている。また、ピストンには、シリンダ室が形成されている側の端部とは反対側端に、ポンプケーシングに対して回転自在に支持された斜板が設けられている。
【0003】
このような構成のもと、ピストンは、斜板に沿って摺動されるとともに、斜板によってシリンダ穴内での変位が規制される。斜板に沿ってピストンが摺動すると、このピストンがシリンダ穴内をスライド移動する。これによってシリンダ室の容積が変化する。シリンダ室が膨張されると、吸入路を介してポンプケーシング外からシリンダ室に作動油が吸入される。シリンダ室が収縮すると、排出路を介してシリンダ室の作動油がポンプケーシング外へと排出される。
【0004】
一方、ギアポンプは、ギアケーシングとギアケーシング内に収納された2つのギアとを備えている。互いに噛み合わされた2つのギアを回転させることにより、作動油を吸入したり排出したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-82740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポンプユニットの小型化を図ろうとした場合、メインポンプとギアポンプとを一体化することが考えられる。
また、ポンプユニットの駆動効率を向上しようとした場合、メインポンプの回転軸とギアポンプのギアとを連結することが考えられる。このように構成することで、メインポンプにおける回転軸の回転を動力として、ギアポンプを駆動させることができる。
【0007】
ここで、上記の小型化、駆動効率の向上化を図ろうとした場合、メインポンプの回転軸と同軸上にギアポンプを配置して一体化することが好ましい。しかしながら、このようにギアポンプを配置した場合、ポンプケーシングの底部にギアポンプを固定するための例えばボルトを締め付ける必要がある。ポンプケーシングには吸入路や排出路が形成されているので、ボルトを締め付けるための雌ネジ部は、ポンプケーシングの外側と、吸入路又は排出路とを貫通してしまう。このため、メインポンプが適正に動作しなくなる可能性があった。
【0008】
ポンプケーシングの底部に雌ネジ部を形成してもポンプケーシングの外側と、吸入路又は排出路とが貫通しないように、ポンプケーシングの底部の厚さを厚くすることも考えられる。しかしながら、ポンプケーシングの底部を厚くすると、ポンプユニットの軸長が長くなってしまう。
【0009】
本発明は、小型化、駆動効率の向上化を確実に実現できるポンプユニット及び建設機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るポンプユニットは、第1ポンプと、第2ポンプと、を備え、前記第1ポンプは、ケーシングと、前記ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸と一体となって回転され、シリンダ穴が形成されたシリンダブロック、前記シリンダ穴に前記回転軸の軸線方向に移動自在に収納されたピストン、及び前記ピストンの前記軸線方向の変位を規制する斜板を有するとともに、前記シリンダ穴に流体を吸入するポンプ供給口及び前記シリンダ穴から前記流体を排出するポンプ排出口を有するポンプ本体と、前記回転軸の軸線上で前記ケーシングの一側に位置する壁面部と、前記ケーシングの前記壁面部に形成され、前記流体が流れる吸入部及び排出部と、前記吸入部及び前記排出部の少なくともいずれか一方の内側面部に設けられた凸部と、前記壁面部の外面から前記凸部に向けて形成された固定用穴部と備え、前記第2ポンプは、前記固定用穴部に固定部材を取り付けて、前記壁面部の前記外面に固定され、前記吸入部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ供給口に至る間に形成され、前記排出部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部、前記吸入部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ排出口に至る間に形成されている
【0011】
このように構成することで、吸入部や排出部が形成されるポンプケーシングの壁面部に固定用穴を形成しても、壁面部を厚くすることなく固定用穴を介してポンプケーシングの外側と、吸入部又は排出部とが貫通してしまうことを防止できる。このため、ポンプユニットの軸長が長くなってしまうことを抑制でき、ポンプユニットを小型化できる。また、第1ポンプにおける回転軸の軸線上に位置する壁面部に第2ポンプ(ギアポンプ)を配置できるので、第1ポンプにおける回転軸の回転力を第2ポンプのケーシング(ギアケーシング)に伝達しやすい。このため、ポンプユニットの駆動効率を向上できる。
【0012】
上記構成であって、前記凸部は、前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向と直交する幅方向の中央に配置されていてもよい。
【0013】
このように構成することで、液体の流れと直交する方向で、凸部を中心に右側と左側とで液体の流量差が大きくなってしまうことを抑制できる。このため、吸入部や排出部での液体の流れの乱れを最小限に抑えることができ、液体の流れを安定させることができる。このため、ポンプユニットの駆動効率をさらに向上できる。
【0014】
上記構成であって、前記第2ポンプは、他のケーシングと、前記他のケーシングの第1壁面部に形成され前記他のケーシング内に液体を吸入するための他の吸入部と、前記他のケーシングの第2壁面部に形成され前記他のケーシング外に液体を排出するための他の排出部とを含み、前記ケーシングにおける前記排出部の排出口部が形成された側面部と前記他のケーシングの前記第2壁面部とは、同一方向を向いていてもよい。
【0015】
このように構成することで、第1ポンプの排出口と第2ポンプにおける他の排出部の排出口とが隣接配置される。このため、各排出部への配管の接続作業、及びこれら配管の引き回し作業を容易に行うことができる。
【0016】
上記構成であって、前記第1ポンプの前記吸入部と、前記第2ポンプの前記他の吸入部とは、連通していてもよい。
【0017】
このように構成することで、第1ポンプの吸入部を介して第2ポンプにおける他の吸入部へ液体を導くことができる。このため、各吸入部の構成を簡素化でき、ポンプユニットをさらに小型化できる。
【0018】
上記構成であって、前記凸部は、突出方向に向かうに従って先細りとなってもよい。
【0019】
このように構成することで、凸部による液体の流路抵抗をできる限り小さくできる。このため、吸入部や排出部での液体の流れの乱れをできる限り抑制できる。よって、ポンプユニットの駆動効率をさらに向上できる。
【0020】
上記構成であって、前記凸部は楕円錐であり、前記凸部の長軸は、前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向に沿っていてもよい。
【0021】
このように構成することで、凸部による液体の流路抵抗を確実に小さくできる。このため、吸入部や排出部での液体の流れの乱れを確実に抑制できる。よって、ポンプユニットの駆動効率を確実に向上できる。
【0022】
本発明の他の態様に係るポンプユニットは、第1ポンプと、第2ポンプと、を備え、前記第1ポンプは、ケーシングと、前記ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸と一体となって回転され、シリンダ穴が形成されたシリンダブロック、前記シリンダ穴に前記回転軸の軸線方向に移動自在に収納されたピストン、及び前記ピストンの前記軸線方向の変位を規制する斜板を有するとともに、前記シリンダ穴に流体を吸入するポンプ供給口及び前記シリンダ穴から前記流体を排出するポンプ排出口を有するポンプ本体と、前記回転軸の軸線上で前記ケーシングの一側に位置する壁面部と、前記ケーシングの前記壁面部に形成され、前記流体が流れる吸入部及び排出部と、前記吸入部及び前記排出部の少なくともいずれか一方の内側面部で前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向と直交する幅方向の中央に設けられ長軸が前記吸入部及び前記排出部に流れる前記流体の流れる方向に沿って楕円錐、かつ突出方向に向かうに従って先細りの凸部と、前記壁面部の外面から前記凸部に向けて形成された固定用穴部と備え、前記第2ポンプは、他のケーシングと、第1壁面部に形成され前記第1ポンプの前記吸入部と連通する他の吸入部と、前記ケーシングにおける前記排出部の排出口部が形成された側面部と同一方向を向いている前記他のケーシングの第2壁面部に形成された他の排出部と、を備え、前記第2ポンプは、前記固定用穴部に固定部材を取り付けて、前記壁面部の前記外面に固定され、前記吸入部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ供給口に至る間に形成され、前記排出部は、前記壁面部の前記外面のうち、前記固定用穴部、前記吸入部及び前記第2ポンプを避けた位置から前記ポンプ排出口に至る間に形成されている
【0023】
このように構成することで、ポンプユニットの小型化ができ、かつ駆動効率を向上できる。
【0024】
本発明の他の態様に係る建設機械は、上述のポンプユニットと、前記ポンプユニットが搭載された車体とを備えた。
【0025】
このように構成することで、小型化、駆動効率の向上化を確実に実現可能な建設機械を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
上述のポンプユニット及び建設機械は、小型化、駆動効率の向上化を確実に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態における建設機械の概略構成図。
図2】本発明の実施形態におけるポンプユニットの構成図。
図3図2のA矢視図。
図4】本発明の実施形態の変形例における凸部の軸方向に沿う断面図。
図5図4のB-B線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
(建設機械)
図1は、建設機械100の概略構成図である。
図1に示すように、建設機械100は、例えば油圧ショベルである。建設機械100は、旋回体(請求項における車体に相当)101と、走行体(請求項における車体に相当)102とを備えている。旋回体101は、走行体102の上に旋回可能に設けられている。旋回体101には、ポンプユニット110が設けられている。
【0030】
旋回体101は、操作者が搭乗可能なキャブ103と、キャブ103に一端が揺動自在に連結されているブーム104と、ブーム104のキャブ103とは反対側の他端(先端)に揺動自在に一端が連結されているアーム105と、アーム105のブーム104とは反対側の他端(先端)に揺動自在に連結されているバケット106と、を備えている。また、キャブ103内には、ポンプユニット110が設けられている。このポンプユニット110から供給される作動油によって、キャブ103、ブーム104、アーム105、及びバケット106が駆動される。
【0031】
(ポンプユニット)
図2は、ポンプユニット110の構成図である。図3は、図2のA矢視図である。
ポンプユニット110は、作動油を吸入、排出するいわゆる油圧ポンプである。図2図3に示すように、ポンプユニット110は、メインポンプ(請求項における第1ポンプに相当)1と、付加ポンプとしてのギアポンプ(請求項における第2ポンプに相当)111とが一体化されたものである。なお、図2では、メインポンプ1のみを軸方向に沿う断面で示している。
【0032】
(メインポンプ)
メインポンプ1は、いわゆる斜板式可変容量型油圧ポンプである。メインポンプ1は、メインケーシング(請求項におけるケーシングに相当)2と、メインケーシング2に対して回転自在に支持された回転軸3と、メインケーシング2内に収納され、回転軸3に固定されているシリンダブロック4と、メインケーシング2内に回転自在に収納されメインポンプ1から排出される作動油の排出量を制御する斜板5とを主構成としている。
なお、図2では、説明を分かりやすくするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明では、回転軸3の中心軸線Cと平行な方向を軸方向と称し、回転軸3の回転方向を周方向と称し、回転軸3の径方向を単に径方向と称する。
【0033】
メインケーシング2は、開口部9aを有する箱状のケーシング本体9と、ケーシング本体9の開口部9aを閉塞するフロントフランジ10とを備えている。
ケーシング本体9は、開口部9aとは反対側に底壁(請求項における壁面部に相当)119を有している。底壁119の内面119a側に、シリンダブロック4が配置される。底壁119の外面119bに、ギアポンプ111が取り付けられる。
【0034】
また、底壁119には、回転軸3を挿通可能な回転軸挿通孔121が底壁119の板厚方向に貫通形成されている。底壁119の内面119a寄りには、回転軸3の一端を回転自在に支持する軸受11が設けられている。すなわち、底壁119は、ケーシング本体9における回転軸3の中心軸線C上に位置した壁面である。
【0035】
さらに、底壁119には、回転軸3を挟んで両側に、第1吸入路(請求項における吸入部に相当)122と第1排出路(請求項における排出部に相当)123とが形成されている。第1吸入路122は、底壁119の第1側面119cに吸入口122aを有している。吸入口122aは、図示しないタンクに接続されている。第1吸入路122は、第1側面119cから回転軸3に向かって漸次開口面積が小さくなるように底壁119内に延びている。
【0036】
第1吸入路122における回転軸3側の端部には、第1吸入路122と底壁119の内面119aとを連通する第1連通路124が形成されている。第1連通路124は、第1吸入路122と後述する弁板19の供給口19aとを連通する。
また、第1吸入路122における回転軸3側の端部には、第1吸入路122と底壁119の外面119bとを連通する第2連通路125が形成されている。第2連通路125は、第1吸入路122とギアポンプ111の後述する第2吸入路(請求項における他の吸入部に相当)144とを連通する。
【0037】
また、底壁119の外面119bには、回転軸挿通孔121及び第2連通路125の周囲を取り囲むようにOリング溝118が形成されている。Oリング溝118には、Oリング117が装着されている。このOリング117により、メインケーシング2とギアポンプ111の後述するギアケーシング141との間のシール性が確保される。
【0038】
このような構成のもと、作動油は、図示しないタンクから吸入口122aを介して第1吸入路122内に吸入される。第1吸入路122内に吸入された作動油は、第1連通路124及び第2連通路125へと流れる。
【0039】
ここで、第1吸入路122の内側面(請求項における内側面部に相当)122bには、第1吸入路122内に向かって突出する略円柱状の凸部126が設けられている。凸部126は、吸入口122aと第2連通路125との間の中央よりも第2連通路125寄りで、かつ底壁199の外面119b側(ギアポンプ111側)に配置されている。また、凸部126は、第1吸入路122の作動油が流れる方向(図2における上下方向、図3における左右方向)と直交する第1吸入路122の幅方向の中央に配置されている。凸部126は、ケーシング本体9の底壁119にギアポンプ111を固定するためのものである。底壁119には、外面119bから凸部126内に至る間に、雌ネジ部(請求項における固定用穴部に相当)127が形成されている。
【0040】
第1排出路123は、底壁119の第1側面119cとは回転軸3を挟んで反対側に位置する第2側面(請求項における側面部に相当)119dに排出口(請求項における排出口部に相当)123aを有している。排出口123aは、図示しない制御弁等を介してキャブ103、ブーム104、アーム105、及びバケット106に接続されている。第1排出路123は、第2側面119dから回転軸3に向かって底壁119内に延びている。第1排出路123における回転軸3側の端部には、第1排出路123と底壁119の内面119aとを連通する第3連通路128が形成されている。第3連通路128は、第1排出路123と後述する弁板19の図示しない排出口とを連通する。
【0041】
フロントフランジ10には、回転軸3を挿通可能な貫通孔13が形成されている。この貫通孔13に、回転軸3の他端側を回転自在に支持する軸受14が設けられている。また、貫通孔13には、軸受14よりもケーシング本体9とは反対側(フロントフランジ10の外側)に、オイルシール15が設けられている。この他、フロントフランジ10には、メインポンプ1を旋回体101等に固定するための2つの取付プレート137が一体成形されている。2つの取付プレート137は、回転軸3を挟んで両側に配置されている。取付プレート137は、径方向外側に向かって延びている。
【0042】
回転軸3は、段付き状に形成されている。回転軸3は、メインケーシング2内に配置されている回転軸本体131と、回転軸本体131におけるケーシング本体9の底壁119側に一体成形された第1軸受部132と、第1軸受部132における回転軸本体131とは反対側端に一体成形された伝達軸133と、回転軸本体131におけるフロントフランジ10側端に一体成形された第2軸受部134と、第2軸受部134における回転軸本体131とは反対側端に一体成形された連結軸135とが同軸上に配置されたものである。
【0043】
第1軸受部132の軸径は、回転軸本体131の軸径よりも小さい。第1軸受部132が、底壁119の軸受11に回転自在に支持されている。
伝達軸133は、回転軸3の回転力をギアポンプ111に伝達する役割を有する。伝達軸133の軸径は、第1軸受部132の軸径よりも小さい。伝達軸133は、軸受11を介してギアポンプ111側に突出されている。伝達軸133は、底壁119の回転軸挿通孔121内に配置されている。伝達軸133の外周面には、円筒状のアダプタ136が嵌め合いされている。アダプタ136は、伝達軸133と一体となって回転する。アダプタ136のギアポンプ111側は、底壁119よりもギアポンプ111側に突出されている。この突出した箇所にギアポンプ111が連結される。
【0044】
第2軸受部134の軸径は、回転軸本体131の軸径よりも小さい。第2軸受部134が、フロントフランジ10の軸受14に回転自在に支持されている。
連結軸135は、図示しないエンジン等の動力源に連結される。連結軸135の軸径は、第2軸受部134の軸径よりも小さい。連結軸135の先端部は、軸受14を介してフロントフランジ10の外側に突出されている。この先端部とフロントフランジ10との間からの異物等の侵入を、オイルシール15によって防止する。連結軸135の先端には、第1スプライン135aが形成されている。この第1スプライン135aを介し、図示しないエンジン等の動力源と回転軸3とが連結される。
【0045】
回転軸本体131には、第2スプライン131aが形成されている。回転軸本体131には、第2スプライン131aに対応する箇所に、シリンダブロック4が嵌め合わされている。
【0046】
シリンダブロック4は、円柱状に形成されている。シリンダブロック4の径方向中央には、回転軸3を挿入又は圧入可能な貫通孔16が形成されている。貫通孔16にもスプライン16aが形成されている。このスプライン16aと回転軸本体131の第2スプライン3bとがスプライン結合される。これにより、回転軸3とシリンダブロック4とが一体となって回転する。
【0047】
貫通孔16の軸方向中央から底壁119側の端部4aに至る間には、回転軸3の周囲を取り囲むように凹部20が形成されている。また、貫通孔16の軸方向中央からフロントフランジ10側に至る間には、内周面の一部に、シリンダブロック4を軸方向に貫通する貫通孔25が形成されている。凹部20には、後述のスプリング23及びリテーナ24a,24bが収納される。貫通孔25には、後述の連結部材26が軸方向に移動可能に収納される。
【0048】
また、シリンダブロック4には、回転軸3の周囲を取り囲むように複数のシリンダ穴17が形成されている。シリンダ穴17は、周方向に沿って等間隔に配置されている。また、シリンダ穴17は軸方向に沿って形成されており、フロントフランジ10側が開口されている。シリンダブロック4の端部4aには、各シリンダ穴17に対応する位置に、これらシリンダ穴17とシリンダブロック4の外部とを連通する連通孔18が形成されている。
【0049】
シリンダブロック4の端部4aには、この端部4aの端面に重なるように円板状の弁板19が設けられている。弁板19は、ケーシング本体9に固定されている。弁板19は、シリンダブロック4が回転軸3とともに回転する場合であっても、メインケーシング2(ケーシング本体9)に対して静止している。
【0050】
弁板19には、シリンダブロック4の各連通孔18に連通する供給口19a及び図示しない排出口が弁板19の厚さ方向に貫通形成されている。弁板19の供給口19a、及びシリンダブロック4の連通孔18を介し、各シリンダ穴17とケーシング本体9に形成された第1連通路124とが連通される。また、弁板19の図示しない排出口、及びシリンダブロック4の連通孔18を介し、各シリンダ穴17とケーシング本体9に形成された第2連通路125とが連通される。
ケーシング本体9に対して弁板19が固定されているので、シリンダ穴17は、シリンダブロック4の回転状態に応じ、弁板19を介して第1吸入路122から作動油が供給される状態と第1排出路123に作動油を排出する状態とが切り替えられる。
【0051】
各シリンダ穴17には、ピストン21が軸方向に沿って摺動可能に収納されている。シリンダ穴17にピストン21が収納されることにより、ピストン21は、回転軸3及びシリンダブロック4の回転に伴い、回転軸3の中心軸線C周りに公転する。
ピストン21におけるフロントフランジ10側の端部には、球状の凸部28が一体形成されている。また、ピストン21の内部は、空洞に形成されている。この空洞は、シリンダ穴17内の作動油で満たされている。したがって、ピストン21の往復動は、シリンダ穴17への作動油の供給及び排出と連関されている。つまり、ピストン21がシリンダ穴17から引き出される際には、シリンダ穴17内に第1吸入路122から第1連通路124及び供給口19aを介して作動油が供給される。ピストン21がシリンダ穴17内に進入する際には、シリンダ穴17内から図示しない排出口及び第1排出路123を介して作動油が排出される。
【0052】
シリンダブロック4の凹部20に収納されたスプリング23は、例えばコイルスプリングである。スプリング23は、凹部20に収納された2つのリテーナ24a,24bの間で圧縮されている。このため、スプリング23は、その弾性力によって伸長する向きに付勢力を生じる。スプリング23の付勢力は、2つのリテーナ24a,24bのうちの一方のリテーナ24bを介し連結部材26に伝達される。連結部材26よりもフロントフランジ10側には、回転軸本体131の外周面に、押圧部材27が嵌め合わされている。この押圧部材27に、連結部材26を介してスプリング23の付勢力が伝達される。
【0053】
フロントフランジ10には、ケーシング本体9側の内面10aに、斜板5が設けられている。斜板5は、フロントフランジ10に対して傾倒可能に設けられている。斜板5は、フロントフランジ10に対して傾くことにより、各ピストン21の軸方向に沿う方向への変位を規制する役割を有している。斜板5の径方向中央には、回転軸3を挿通可能な挿通孔32が形成されている。斜板5のシリンダブロック4側には、平坦な摺動面5aが形成されている。摺動面5aには、複数のシュー22が摺動自在に配置されている。
【0054】
複数のシュー22は、ピストン21の凸部28に取り付けられている。シュー22の凸部28を受け入れる側の面には、凸部28の形状に対応するように球状の凹部22aが形成されている。この凹部22aにピストン21の凸部28が嵌め込まれる。これにより、ピストン21の凸部28に対し、シュー22が回転自在に連結される。各シュー22は、シュー保持部材29によって一体的に保持されている。シュー保持部材29に押圧部材27が当接され、この押圧部材27によってシュー保持部材29が斜板5側に向かって押圧される。これにより、斜板5の摺動面5aに追随するようにシュー22が摺動される。なお、斜板5は、図示しないアクチュエータによって傾き角度が制御される。
【0055】
(ギアポンプ)
ギアポンプ111は、メインケーシング2における底壁119の外面119bに配置される直方体状のギアケーシング(請求項における他のケーシングに相当)141と、ギアケーシング141内に回転自在に支持されるとともに互いに噛み合わされている2つのギア142,143(駆動ギア142、従動ギア143)とを備えている。ギアケーシング141のメインケーシング2と重ね合わさる壁面(請求項における第1壁面部に相当)141aには、メインケーシング2の第2連通路125に連通する第2吸入路(請求項における他の吸入部に相当)144が形成されている。第2吸入路144は、ギアケーシング141における壁面141aの内外を連通している。
【0056】
また、ギアケーシング141の壁面141aには、メインケーシング2の回転軸挿通孔121に対応する位置に、アダプタ挿通孔149が形成されている。このアダプタ挿通孔149を介してアダプタ136のギアポンプ111側端がギアケーシング141内に突出されている。
ギアケーシング141の壁面141aと直交し、径方向で対向する2つの側壁面141b,141c(第1側壁面141b、第2側壁面141c)には、取付プレート145が一体成形されている。2つの側壁面141b,141cのうちの第1側壁面141bは、吸入口122aが形成されているメインケーシング2の第1側面119cと同一方向を向いている。2つの側壁面141b,141cのうちの第2側壁面(請求項における第2壁面部に相当)141cは、排出口123aが形成されているメインケーシング2の第2側面119dと同一方向を向いている。
【0057】
各取付プレート145は、径方向外側に向かって延びている。各取付プレート145は、メインケーシング2にギアケーシング141を固定するために用いられる。
各取付プレート145には、先端から対応する側壁面141b,141cに向かって切り欠くように凹部146が形成されている。凹部146には、メインケーシング2にギアケーシング141を固定するためのボルト(請求項における固定部材に相当)147が挿通される。
【0058】
ここで、第1側壁面141b側の取付プレート145に形成された凹部146は、メインケーシング2の第1吸入路122内に形成された雌ネジ部127の軸線上に位置している。すなわち、第1側壁面141b側の取付プレート145に形成された凹部146に挿通されるボルト147は、雌ネジ部127に締め付けられる。
一方、第2側壁面141c側の取付プレート145に形成された凹部146に挿通されるボルト147は、メインケーシング2に形成された図示しない雌ネジ部に締め付けられる。なお、この図示しない雌ネジ部とメインケーシング2の第1排出路123とは、互いに干渉する箇所に位置していない。
【0059】
また、ギアケーシング141の第2側壁面141cには、第2排出路(請求項における他の排出部に相当)148が形成されている。第2排出路148の排出口148aは、第2側壁面141cに開口されている。このように、ギアケーシング141の排出口148aとメインケーシング2の排出口123aとは、同一方向を向いた側壁面141c及び側面119dに形成されている。
【0060】
ギアケーシング141内に配置された2つのギア142,143は、第2吸入路144と第2排出路148との間に配置されている。2つのギア142,143の並び方向は、第2吸入路144と第2排出路148との並び方向と直交する。
2つのギア142,143のうちの駆動ギア142は、メインケーシング2からアダプタ挿通孔149を介して突出されたアダプタ136に連結されている。これにより、メインポンプ1における回転軸3の回転力がアダプタ136を介して駆動ギア142に伝達される。2つのギア142,143のうちの従動ギア143は、駆動ギア142に噛合わされているので、駆動ギア142と同期して回転する。
【0061】
(ポンプユニットの動作)
次に、ポンプユニット110の動作について説明する。
まず、メインポンプ1の動作について説明する。
メインポンプ1は、シリンダ穴17からの作動油の排出(及びシリンダ穴17への作動油の供給)に基づく駆動力を出力する。
より具体的には、エンジン等の動力源からの動力によって回転軸3を回転させることにより、回転軸3と一体となってシリンダブロック4が回転される。シリンダブロック4の回転に伴い、回転軸3の中心軸線C周りにピストン21が公転される。
【0062】
各ピストン21の凸部28に取り付けられた各シュー22は、スプリング23の付勢力によって、斜板5の傾き角にかかわらず斜板5の摺動面5aに対して適切に追従して押し当てられる。また、ピストン21の凸部28は球状に形成されているとともに、この凸部28が嵌め込まれるシュー22の凹部22aも球状に形成されている。また、押圧部材27によって、シュー保持部材29を介して各シュー22が斜板5側に押圧されている。このため、斜板5の傾き角が変化しても、各シュー22は斜板5の傾きに追従して摺動面5aに適切に追従して押し当てられる。
【0063】
シリンダブロック4の回転に伴い、回転軸3の中心軸線C周りにピストン21が公転されると、各シュー22も斜板5の摺動面5a上を回転軸3の中心軸線C周りに公転しながら摺動される。これにより、各シリンダ穴17内で各ピストン21が軸方向に沿って摺動され、各ピストン21が往復動作される。このように、斜板5は、各ピストン21の軸方向に沿う方向への変位を規制する。ピストン21の往復動作に応じて一部のシリンダ穴17からは、作動油が第1排出路123、排出口13aを介して排出される。また、他のシリンダ穴17には、吸入口122a、第1吸入路122を介して作動油が吸入される。
【0064】
ここで、第1吸入路122の内側面122bには、第1吸入路122内に向かって突出する凸部126が設けられている。凸部126は、第1吸入路122の作動油が流れる方向(図1における上下方向、図2における左右方向)と直交する第1吸入路122の幅方向の中央に配置されているので、第1吸入路122の幅方向で凸部126を中心に右側と左側とで作動油の流量差が大きくなってしまうことを抑制できる。
【0065】
なお、斜板5(摺動面5a)の傾き角が変化すると、ピストン21の往復動のストローク(摺動距離)が変化する。すなわち、斜板5の傾き角が大きいほど、各ピストン21の往復動に伴うシリンダ穴17に対する作動油の供給量及び排出量は大きくなる。これに対し、斜板5の傾き角が小さいほど、各ピストン21の往復動に伴うシリンダ穴17に対する作動油の供給量及び排出量は小さくなる。斜板5の傾き角が0度の場合には、回転軸3の中心軸線C周りにピストン21が公転しても各ピストン21は往復動されない。このため、各シリンダ穴17からの作動油の排出量もゼロになる。
【0066】
次に、ギアポンプ111の動作について説明する。
ギアポンプ111の駆動ギア142は、メインポンプ1の回転軸3にアダプタ136を介して連結されているので、回転軸3と一体となって回転する。すると、駆動ギア142に噛合わされている従動ギア143も駆動ギア142と同期して回転する。すると、メインケーシング2の第2連通路125を介して第1吸入路122を流れる作動油が第2吸入路144に吸入される。さらに作動油は、各ギア142,143とギアケーシング141の内側面との間を通って第2排出路148側へと流れる。そして、排出口148aを介して作動油が排出される。
【0067】
このように、上述の実施形態では、第1吸入路122の内側面122bに、第1吸入路122内に向かって突出する凸部126が設けられている。この凸部126内に、底壁119の外面119bに形成される雌ネジ部127が入り込んでいる。このため、第1吸入路122が通るメインケーシング2の底壁119にギアケーシング141を固定するための雌ネジ部127を形成しようとした場合であっても、底壁119を厚くすることなく雌ネジ部127を適正に形成できる。底壁119を厚くする必要のない分、ポンプユニット110の軸長が長くなってしまうことを抑制でき、ポンプユニット110を小型化できる。
【0068】
また、雌ネジ部127は、メインポンプ1における回転軸3の中心軸線C上に位置した底壁119に形成されている。つまり、底壁119にギアポンプ111を配置してメインポンプ1とギアポンプ111とを一体化できる。このため、回転軸3とギアポンプ111の駆動ギア142とをアダプタ136を介して容易に連結できる。よって、ギアポンプ111を駆動するための機構を別途設ける必要がなく、ポンプユニット110を小型化できるとともに、ポンプユニット110の駆動効率を向上できる。
【0069】
また、第1吸入路122に形成された凸部126は、第1吸入路122の幅方向の中央に配置されている。このため、第1吸入路122の幅方向で凸部126を中心に右側と左側とで作動油の流量差が大きくなってしまうことを抑制できる。この結果、第1吸入路122での作動油の流れの乱れを最小限に抑えることができ、作動油の流れを安定させることができる。よって、ポンプユニット110の駆動効率をさらに向上できる。
【0070】
また、メインポンプ1に形成されている第1排出路123の排出口123aは、底壁119の第2側面119dに形成されている。ギアポンプ111に形成されている第2排出路148の排出口148aは、ギアケーシング141の第2側壁面141cに形成されている。これら第2側面119d、第2側壁面141cは同一方向を向いているので、第1排出路123の排出口123aと第2排出路148の排出口148aとが隣接配置される。このため、各排出路123,148(各排出口123a,148a)への配管の接続作業、及びこれら配管の引き回し作業を容易に行うことができる。
【0071】
また、メインポンプ1の第1吸入路122とギアポンプ111の第2吸入路144とが第2連通路125を介して連通されている。このため、第1吸入路122のみに作動油を供給することで、メインポンプ1とギアポンプ111との両者に作動油を導くことができる。よって、各吸入路122,144の構成を簡素化でき、ポンプユニット110をさらに小型化できる。
【0072】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば上述の実施形態では、油圧ショベル等の建設機械100に用いられる油圧式のポンプユニット110について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、液体を吸入、排出するさまざまなポンプユニットに上述の凸部126の構成を採用することが可能である。
【0073】
また、上述の実施形態では、凸部126は略円柱状である場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな形状を採用することができる。例えば、凸部126を、以下の変形例のように形成してもよい。
【0074】
(変形例)
図4は、凸部126の変形例を示す軸方向に沿う断面図である。図4は、図2の第1吸入路122周辺の図に対応している。図5は、図4のB-B線に沿う断面図である。
図4図5に示すように、凸部126は、楕円錐状であってもよい。具体的には、凸部126は、底辺が楕円状に形成されており、突出方向に向かうに従って先細りである。凸部126の長軸Jは、第1吸入路122内で作動油が流れる方向(図4図5における上下方向)に沿っている。
【0075】
したがって、上述の変形例によれば、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、凸部126が楕円錐状に形成され、その長軸Jが第1吸入路122内で作動油が流れる方向に沿っているので、凸部126による作動油の流路抵抗をできる限り小さくでき、第1吸入路122での作動油の流れの乱れを確実に抑制できる。よって、ポンプユニット110の駆動効率を確実に向上できる。
【0076】
また、上述の実施形態では、メインケーシング2の第1吸入路122に凸部126を形成し、この凸部126に雌ネジ部127を形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ギアポンプ111の形状や向きに応じて第1排出路123に凸部126を形成し、凸部126に雌ネジ部127を形成してもよい(図2における2点鎖線で示す凸部126参照)。また、第1吸入路122及び第1排出路123の両者に凸部126を形成してもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、雌ネジ部127とボルト147とによってメインケーシング2にギアケーシング141を締結固定した場合について説明した。しかしながら、メインケーシング2へのギアケーシング141の固定方法としてさまざまな方法を採用できる。例えば、ボルト147に代わってリベット等を用いてもよい。この場合、メインケーシング2に雌ネジ部127に代わってリベットを圧入可能な穴を形成すればよい。つまり、凸部126にギアケーシング141を固定するための穴が、ギアケーシング141が固定される外面119b側から形成されていればよい。
【符号の説明】
【0078】
1…メインポンプ(第1ポンプ)、2…メインケーシング(ケーシング)、3…回転軸、4…シリンダブロック、5…斜板、17…シリンダ穴、19a…供給口(ポンプ供給口)、21…ピストン、100…建設機械、101…旋回体(車体)、102…走行体(車体)、110…ポンプユニット、111…ギアポンプ(第2ポンプ)、119…底壁(壁面部)、119b…外面、119d…第2側面(側面部)、122…第1吸入路(吸入部)、122b…内側面(内側面部)、123…第1排出路(排出部)、123a…排出口(排出口部)、126…凸部、127…雌ネジ部(固定用穴部)、141…ギアケーシング(他のケーシング)、141a…壁面(第1壁面部)、141c…第2側壁面(第2壁面部)、144…第2吸入路(他の吸入部)、147…ボルト(固定部材)、148…第2排出路(他の排出部)、C…中心軸線(軸線)、J…長軸
図1
図2
図3
図4
図5