IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中島特殊鋼株式会社の特許一覧 ▶ 青山 諭の特許一覧

<>
  • 特許-ナット部材および専用工具 図1
  • 特許-ナット部材および専用工具 図2
  • 特許-ナット部材および専用工具 図3
  • 特許-ナット部材および専用工具 図4
  • 特許-ナット部材および専用工具 図5
  • 特許-ナット部材および専用工具 図6
  • 特許-ナット部材および専用工具 図7
  • 特許-ナット部材および専用工具 図8
  • 特許-ナット部材および専用工具 図9
  • 特許-ナット部材および専用工具 図10
  • 特許-ナット部材および専用工具 図11
  • 特許-ナット部材および専用工具 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ナット部材および専用工具
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20230510BHJP
   F16B 23/00 20060101ALI20230510BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20230510BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20230510BHJP
   B25B 13/54 20060101ALI20230510BHJP
   B25B 13/48 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
F16B41/00 P
F16B23/00 H
F16B23/00 U
F16B37/00 H
F16B43/00 Z
B25B13/54 A
B25B13/48 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019077950
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020176657
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】506241640
【氏名又は名称】中島特殊鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517028708
【氏名又は名称】青山 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中島 利一
(72)【発明者】
【氏名】青山 諭
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3175390(JP,U)
【文献】特開2018-003974(JP,A)
【文献】特開2000-035027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0105704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 41/00
F16B 23/00
F16B 37/00
F16B 43/00
B25B 13/54
B25B 13/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトに螺合することにより、締結対象物を締結するためのナット部材であって、
底面と、
前記底面と反対側に形成されており、前記底面の径よりも小径の上面と、
前記底面の周縁と前記上面の周縁との間に連続形成されたテーパ面と、
前記上面から前記底面に向けて窪んでおり、当該ナット部材の締結に用いる専用工具を装着するための装着部と、
前記底面から突出した基部と、
前記基部の底面に開口形成されており、当該ナット部材を螺合するボルトの先端を挿入するための第1の孔と、
前記装着部の底面に開口形成されており、前記ボルトの先端が突出するための第2の孔と、
前記第1の孔と前記第2の孔との間を連通しており、前記ボルトの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が内壁面に形成されたボルト挿通孔と、
前記基部の外周面に回転可能に装着されており、前記底面の径以上の外径を有する円環状部材と、を備えており、
前記基部の底面が前記円環状部材から突出しており、
前記円環状部材から突出した前記基部の底面と、前記基部の外周面に回転可能に装着された前記円環状部材との間には、前記円環状部材の抜け止めをするためのワッシャが装着されていることを特徴とするナット部材。
【請求項2】
ボルトに螺合することにより、締結対象物を締結するためのナット部材であって、
底面と、
前記底面と反対側に形成されており、前記底面の径よりも小径の上面と、
前記底面の周縁と前記上面の周縁との間に連続形成されたテーパ面と、
前記上面から前記底面に向けて窪んでおり、当該ナット部材の締結に用いる専用工具を装着するための装着部と、
前記底面から突出した基部と、
前記基部の底面に開口形成されており、当該ナット部材を螺合するボルトの先端を挿入するための第1の孔と、
前記装着部の底面に開口形成されており、前記ボルトの先端が突出するための第2の孔と、
前記第1の孔と前記第2の孔との間を連通しており、前記ボルトの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が内壁面に形成されたボルト挿通孔と、
前記基部の外周面に回転可能に装着されており、前記底面の径以上の外径を有する円環状部材と、を備えており、
前記基部の底面が前記円環状部材から突出しており、
前記基部の外周面および前記円環状部材の内周面の一方に形成された突部と、
前記基部の外周面および前記円環状部材の内周面の他方の周方向に連続形成されており、前記円環状部材を前記基部に装着する際に前記突部と嵌合可能な嵌合部と、
を有することを特徴とするナット部材。
【請求項3】
前記円環状部材から突出した前記基部の底面と、前記基部の外周面に回転可能に装着された前記円環状部材との間には、前記円環状部材の抜け止めをするための抜け止め部材が装着されていることを特徴とする請求項に記載のナット部材。
【請求項4】
前記抜け止め部材はワッシャであることを特徴とする請求項3に記載のナット部材。
【請求項5】
前記上面を平面視した場合に、前記装着部の内壁の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のナット部材。
【請求項6】
前記内壁の上縁にはRが付いていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のナット部材。
【請求項7】
前記ボルト挿通孔は、当該ナット部材および前記ボルトを用いて前記締結対象物を締結した場合に、前記ボルトの先端が前記上面から突出する長さに形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のナット部材。
【請求項8】
前記テーパ面には、凹凸および角部が形成されていないことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のナット部材。
【請求項9】
前記装着部に嵌合可能な蓋を有することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のナット部材。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のナット部材を回転させるための専用工具であって、
胴部と、
前記胴部の一端から突出形成されており、前記ナット部材の装着部に合致した形状の凸部と、
前記凸部の上面に開口形成されており、前記凸部が前記装着部に装着された場合に、前記第2の孔から突出したボルトの先端を挿入可能な挿入孔と、を有し、前記凸部が前記装着部に装着された状態で前記胴部を回転させることにより前記ナット部材を回転可能に構成されていることを特徴とする専用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトと組み合わせることにより締結対象物を締結するナット部材と、このナット部材を締めたり緩めたりする際に必要な専用工具とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トラックやクレーンなどに搭載されたバッテリーの盗難が多発している。これらの車両が狙われる要因は、バッテリーが車外に露出していることにあるが、それよりも、バッテリーの取付け構造に大きな要因がある。つまり、バッテリーが、ボルト・ナットによる簡易な構造によって車両に固定されているため、レンチなどの一般的な工具を使ってナットを緩めれば、バッテリーを容易に取り外すことができるからである。
また、金属の高騰に起因して、建造物の銘板や面格子などの盗難も起きている。これらも、多くは、ボルト・ナットによって所定個所に固定されているため、レンチなどの一般的な工具を使ってナットを緩めれば、容易に取り外すことができる。
そこで、本願発明者らは、そのような盗難を防止するためのナットおよび専用工具の提案を先の出願において行った(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-3974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願発明者らは、上記の先の出願後、さらなる研究を重ねた結果、次のような新たな課題が見つかった。
つまり、ナット10の外周面13には凹凸が存在しないものの、底面11に近い部分は円柱形状に形成されているため、その部分を挾持力の強いプライヤなどの工具で挾持することにより、ナット10が緩められるおそれのあることが分かった。
また、ナット10の外周面13を総てテーパ面とすれば、工具によって外周面13を挾持することが困難になるが、ナット10の凹部15の内壁15cをポンチなどで叩いてナット10が少し緩み、ナット10の底面11の周縁と締結対象物との間に隙間が形成されると、工具で底面11の周縁を挾持することが可能となり、ナット10が緩められるおそれのあることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した諸課題を解決するために鋭意研究の結果創出されたものであり、緩めることがより一層困難であり、防犯効果をより一層高めることができるナット部材および専用工具を実現することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1に係る発明)
前述した目的を達成するため、この出願の請求項1に係る発明では、
ボルト(60)に螺合することにより、締結対象物(50,51)を締結するためのナット部材(10)であって、
底面(21)と、
底面(21)と反対側に形成されており、底面(21)の径(φ2)よりも小径(φ1)の上面(22)と、
底面(21)の周縁(21a)と上面(22)の周縁(22a)との間に連続形成されたテーパ面(23)と、
上面(22)から底面(21)に向けて窪んでおり、当該ナット部材(10)の締結に用いる専用工具(40)を装着するための装着部(27)と、
底面(21)から突出した基部(24)と、
基部(24)の底面(24b)に開口形成されており、当該ナット部材(10)を螺合するボルト(60)の先端(61)を挿入するための第1の孔(28c)と、
装着部(27)の底面(27a)に開口形成されており、ボルト(60)の先端(61)が突出するための第2の孔(28a)と、
第1の孔(28c)と第2の孔(28a)との間を連通しており、ボルト(60)の雄ねじ部(62)と噛み合う雌ねじ部(28b)が内壁面に形成されたボルト挿通孔(28)と、
基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着されており、底面(21)の径(φ2)以上の外径(φ7)を有する円環状部材(30)と、を備えており、
基部(24)の底面(24b)が円環状部材(30)から突出しており、
円環状部材(30)から突出した基部(24)の底面(24b)と、基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着された円環状部材(30)との間には、円環状部材(30)の抜け止めをするためのワッシャ(80)が装着されているという技術的手段を用いる。
【0007】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明では、
ボルト(60)に螺合することにより、締結対象物(50,51)を締結するためのナット部材(10)であって、
底面(21)と、
底面(21)と反対側に形成されており、底面(21)の径(φ2)よりも小径(φ1)の上面(22)と、
底面(21)の周縁(21a)と上面(22)の周縁(22a)との間に連続形成されたテーパ面(23)と、
上面(22)から底面(21)に向けて窪んでおり、当該ナット部材(10)の締結に用いる専用工具(40)を装着するための装着部(27)と、
底面(21)から突出した基部(24)と、
基部(24)の底面(24b)に開口形成されており、当該ナット部材(10)を螺合するボルト(60)の先端(61)を挿入するための第1の孔(28c)と、
装着部(27)の底面(27a)に開口形成されており、ボルト(60)の先端(61)が突出するための第2の孔(28a)と、
第1の孔(28c)と第2の孔(28a)との間を連通しており、ボルト(60)の雄ねじ部(62)と噛み合う雌ねじ部(28b)が内壁面に形成されたボルト挿通孔(28)と、
基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着されており、底面(21)の径(φ2)以上の外径(φ7)を有する円環状部材(30)と、を備えており、
基部(24)の底面(24b)が円環状部材(30)から突出しており、
基部(24)の外周面(24a)および円環状部材(30)の内周面(34)の一方に形成された突部(26)と、
基部(24)の外周面(24a)および円環状部材(30)の内周面(34)の他方の周方向に連続形成されており、円環状部材(30)を基部(24)に装着する際に突部(26)と嵌合可能な嵌合部(35)と、
を有するという技術的手段を用いる。
【0008】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明では、
請求項3に係る発明では、請求項に記載のナット部材(10)において、
円環状部材(30)から突出した基部(24)の底面(24b)と、基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着された円環状部材(30)との間には、円環状部材(30)の抜け止めをするための抜け止め部材(80)が装着されているという技術的手段を用いる。
【0009】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明では、請求項3に記載のナット部材(10)において、
抜け止め部材は、ワッシャ(80)であるという技術的手段を用いる。
【0010】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
上面(22)を平面視した場合に、装着部(27)の内壁(27b)の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であるという技術的手段を用いる。
【0011】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
内壁(27b)の上縁にはRが付いているという技術的手段を用いる。
【0012】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明では、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
ボルト挿通孔(28)は、当該ナット部材(10)およびボルト(60)を用いて締結対象物(50,51)を締結した場合に、ボルト(60)の先端(61)が上面(22)から突出する長さに形成されているという技術的手段を用いる。
【0013】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明では、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
テーパ面(23)には、凹凸および角部が形成されていないという技術的手段を用いる。
【0014】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
装着部(27)に嵌合可能な蓋(90)を有するという技術的手段を用いる。
【0015】
(請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明では、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のナット部材(10)を回転させるための専用工具であって、
胴部(41)と、
胴部(41)の一端(41a)から突出形成されており、ナット部材(10)の装着部(27)に合致した形状の凸部(42)と、
凸部(42)の一端面(42a)に開口形成されており、凸部(42)が装着部(27)に装着された場合に、第2の孔(28a)から突出したボルト(60)の先端(61)を挿入可能な挿入孔(44)と、を有し、凸部(42)が装着部(27)に装着された状態で胴部(41)を回転させることによりナット部材(10)を回転可能に構成されているという技術的手段を用いる。
【0016】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0017】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明によれば、工具でテーパ面を挟んでも、工具とテーパ面との接触面積が小さいため、工具が滑り易いので、ナット部材を回転させることは困難である。
しかも、基部の外周面には、底面の径以上の外径を有する円環状部材が回転可能に装着されているため、工具で底面の周縁を挟もうとしても、円環状部が邪魔になるので、工具で周縁を挟むことができない。また、工具で円環状部材を挟んで回転させても、円環状部材が基部の周りを空回りするだけであり、基部は回転しない。
したがって、ナット部材を緩めることは困難である。
さらに、請求項1に係る発明によれば、円環状部材から突出した基部の底面と、基部の外周面に回転可能に装着された円環状部材との間には、円環状部材の抜け止めをするためのワッシャが装着されているため、円環状部材の抜け止めを図ることができる。
さらに、請求項1に係る発明によれば、ワッシャを基部に装着するという比較的簡単な作業により、円環状部材の基部からの抜け止めを図ることができる。
【0018】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明によれば、工具でテーパ面を挟んでも、工具とテーパ面との接触面積が小さいため、工具が滑り易いので、ナット部材を回転させることは困難である。
しかも、基部の外周面には、底面の径以上の外径を有する円環状部材が回転可能に装着されているため、工具で底面の周縁を挟もうとしても、円環状部が邪魔になるので、工具で周縁を挟むことができない。また、工具で円環状部材を挟んで回転させても、円環状部材が基部の周りを空回りするだけであり、基部は回転しない。
したがって、ナット部材を緩めることは困難である。
さらに、円環状部材を基部に嵌合することができるため、円環状部材が基部から離脱するおそれがない。しかも、嵌合部が周方向に連続形成されているため、円環状部材を基部の外周面に沿って回転させると、突部が嵌合部に嵌合された状態で、突部および嵌合部の一方が他方に沿って移動するので、円環状部材を滑らかに回転させることができる。
したがって、工具で円環状部材を挟んで回転させても、その回転力はナットを回転させる力としては作用しないため、ナット部材を緩めることがより一層困難になる。
【0019】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る発明において、円環状部材から突出した基部の底面と、基部の外周面に回転可能に装着された円環状部材との間には、円環状部材の抜け止めをするための抜け止め部材が装着されているため、円環状部材の抜け止めを図ることができる。
【0020】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明によれば、請求項3に係る発明において、ワッシャを基部に装着するという比較的簡単な作業により、円環状部材の基部からの抜け止めを図ることができる。
【0021】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明によれば、上面を平面視した場合に、装着部の内壁の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であるため、タガネやポンチなどの先端によって装着部の内壁を叩くことによりナット部材を回転させようとしても、その先端が内壁で滑ってしまうので、ナット部材を回転させることが困難である。
つまり、一般的な工具によってはナット部材を緩めることは困難である。
【0022】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明によれば、内壁の上縁にはRが付いているため、専用工具の先端を装着部に装着する際に、先端が内壁の上縁に引っ掛かることなく、Rに沿って内壁の底方向に案内されるので、専用工具を装着部に容易に装着することができる。
【0023】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明によれば、ボルト挿通孔は、当該ナット部材およびボルトを用いて締結対象物を締結した場合に、ボルトの先端が上面から突出する長さに形成されているため、マイナスやプラスのドライバーなど、専用工具以外の工具を装着部に挿入しようとしても、上面から突出したボルトが邪魔になるので、ナット部材を緩めることが困難である。
【0024】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明によれば、テーパ面には、凹凸および角部が形成されていないため、工具の先端を凹凸または角部に係止してナット部材を緩めるという手法を封じることができる。
【0025】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明によれば、装着部に嵌合可能な蓋を有するため、装着部に工具を挿入することができなくなるので、ナット部材を緩めることがより一層困難になる。
しかも、雨水や塵芥などが装着部に浸入することを阻止することができるため、ナット部材およびボルトが錆びたりしてナット部材を緩めることができなくなるおそれもない。
【0026】
(請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明の専用工具を用いれば、第2の孔から突出したボルトの先端を挿入孔に挿入し、凸部をナットの装着部に嵌合した状態で胴部を回転させることにより、ナット部材を締めたり緩めたりすることができる。
【0027】
本発明によれば、緩めることがより一層困難であり、防犯効果をより一層高めることができるナット部材および専用工具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係るナット部材の説明図であり、(a)は側面図、(b)はナット本体および円環状部材の側面図である。
図2図1に示すナット本体の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図であり、(c)は(a)のB-B矢視断面図である。
図3】(a)は図2(b)の拡大図であり、(b)は(a)に示す突部の拡大図である。
図4図1に示す円環状部材の説明図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のA-A矢視断面図、(d)は側面図である。
図5図1に示すナット部材の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図、(c)は(a)のB-B矢視断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る専用工具の説明図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
図7】六角ボルトに螺合されたナット部材に専用工具を嵌合しようとする状態を示す説明図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るナット部材の説明図であり、(a)は側面図、(b)はナット本体、円環状部材およびワッシャの側面図である。
図9図8に示すワッシャの説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図である。
図10図8に示すナット部材の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図、(c)は(a)のB-B矢視断面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るナット部材に用いる蓋の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図12図7に示すナット部材に図11に示す蓋を装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〈第1実施形態〉
本発明に係るナット部材の第1実施形態について図1ないし図7を参照して説明する。
[ナット部材の構造]
図1に示すように、本実施形態のナット部材10は、ナット本体20と、ナット本体20に回転可能に装着された円環状部材30とを備えている。
(ナット本体20の構造)
図1(b)に示すように、ナット本体20は、底面21と、上面22と、テーパ面23と、装着部27(図2(a))と、基部24と、第1の孔28c(図2(b),(c))と、第2の孔28a(図2(a))と、ボルト挿通孔28(図2)と、を備えている。底面21は円形に形成されており、その反対側には、円形の周縁22aを有する上面22が形成されている。図3(a)に示すように、上面22の径φ1は底面21の径φ2よりも小さい。底面21の円形の周縁21aと上面22の円形の周縁22aとの間にはテーパ面23が連続形成されている。換言すると、底面21と、上面22と、テーパ面23とにより、円錐台形状を形成している。また、テーパ面23には凹凸および角部が一切形成されていない。
【0030】
したがって、レンチのような工具によってテーパ面23を挾持してナット部材10を回転させようとしても、工具とテーパ面23との接触面積が小さく工具が滑るため、ナット部材10を回転させて緩めることが困難である。
さらに、テーパ面23には凹凸および角部が一切形成されていないため、工具の先端を凹凸または角部に係止してナット部材10を緩めるという手法を封じることができる。
【0031】
底面21からは基部24が突出形成されている。基部24は、略円筒形状に形成されている。基部24の底面24bは円形に形成されており、底面24bの中央には、六角ボルト60の先端61(図7)を挿入するための第1の孔28cが開口形成されている。
図2に示すように、装着部27は、専用工具40の凸部42(図6)を装着するための部分であり、上面22から底面21に向けて窪んで形成されている。装着部27の底部には、上面22と相対向する底面27aが形成されている。底面27aには、六角ボルト60の先端61が突出するための第2の孔28aが開口形成されている。図3および図5(b),(c)に示すように、第1の孔28cと第2の孔28aとの間には、六角ボルト60を挿通するためのボルト挿通孔28が連通している。ボルト挿通孔28の内壁面には、六角ボルト60の雄ねじ部62(図7)と噛み合う雌ねじ部28bが形成されている。六角ボルトはボルトの一例である。
【0032】
図7に示すように、ボルト挿通孔28は、ナット部材10および六角ボルト60を用いて締結対象物50,51を締結した場合に、六角ボルト60の先端61がナット本体20の上面22を超える高さに突出するように形成されている。
したがって、マイナスやプラスのドライバーなど、専用工具以外の工具を装着部27に挿入しようとしても、上面22から突出した六角ボルト60が邪魔になるため、ナット部材10を緩めることは困難である。
【0033】
上面22を平面視した場合に、装着部27の内壁27bの形状は、第2の孔28aの周縁に向けて膨らんだ曲面27cと、第2の孔28aの周縁から遠ざかる方向に膨らんだ曲面27dとにより構成されている。曲面27cおよび曲面27dは、交互に連続形成されており、内壁27bは、曲面27cおよび曲面27dをそれぞれ3個有する、いわゆるヘクサロビュラ穴の形状に形成されている。
したがって、タガネやポンチなどの先端を装着部27に挿入してナット部材10を回転させようとしても、その先端が内壁27bで滑ってしまうので、ナット部材10を回転させることが困難である。
つまり、装着部27の内壁27bの形状に合致した凸部42を有する専用工具40(図6)を用いなければナット部材10を緩めることができない。
また、内壁27bの上縁には、上面22に近い第1の上縁27eと、底面27aに近い第2の上縁27fとが形成されており、第1の上縁27eと第2の上縁27fとの間は、外向きの曲線に形成されている。つまり、内壁27bの上縁にはRが付いている。
【0034】
図1(b)に示すように、基部24の外周面24aには、突部26が周方向に連続形成されている。換言すると、基部24の外周面24aには、基部24の底面24bの方向から見て円環状の突部26が形成されている。図3(b)に示すように、突部26は、外周面26aと、第1の側面26bと、第2の側面26cと、第1の周縁26dと、第2の周縁26eとから形成されている。第1の側面26bおよび第2の側面26cは、それぞれ基部24の外周面24aから立ち上がり形成されており、第1の側面26bの反対側に第2の側面26cが形成されている。第1の側面26bの上縁と第2の側面26cの上縁との間に外周面26aが配置されている。外周面26aと第1の側面26bとの境界である第1の周縁26dにはRが付いている。また、外周面26aと第2の側面26cとの境界である第2の周縁26eにもRが付いている。
【0035】
突部26の基部24の周面からの高さ、つまり、突出高さはd1であり、突部26の厚さはw1である。図3(a)に示すように、基部24の径φ3は、上面の径φ1よりも大きく、かつ、底面21の径φ2よりも小さい。突部26の径φ4は基部24の径φ3よりも大きく、底面21の径φ2よりも小さい。
【0036】
(円環状部材30の構造)
図1(a)に示すように、円環状部材30は、ナット本体20の基部24の周面に回転可能に装着されている。ナット本体20の基部24の底面24bが円環状部材30から突出している。図4に示すように、円環状部材30は、平面視円環状に形成されており、その外径φ7は、ナット本体20の底面21の径φ2(図3)よりも僅かに大きい(図1(a))。このため、図1(a)に示すように、円環状部材30をナット本体20の基部24に装着すると、円環状部材30の外周面33がナット本体20の底面21の周縁21aから僅かに突出した状態になる。これにより、工具により底面21の周縁21aを挟もうとしても、円環状部材30が邪魔になるため、挟むことができない。
【0037】
図4(c)に示すように、円環状部材30は、第1の側面31と、第2の側面32と、外周面33と、内周面34とを備えている。第1の側面31および第2の側面32は、それぞれ平面視円環状に形成されており、第1の側面31の反対側に第2の側面32が形成されている。外周面33には、凹凸および角部が一切形成されていない。第1の側面31と第2の側面32との間には、円環状の外周面33が連続形成されている。外周面33と第1の側面31との境界である第1の外周縁31aと、外周面33と第2の側面32との境界である第2の外周縁32aとは、それぞれC面に形成されている。内周面34には、ナット本体20の突部26(図1(b))と嵌合可能な嵌合部35が形成されている。嵌合部35は、第1の側面31と連続形成された第1の内周面35aと、第2の側面32と連続形成された第2の内周面35bとにより形成されている。第2の内周面35bは、第1の内周面35aから一段下がって形成されている。つまり、嵌合部35は、段差を有する段部である。また、第1の側面31と第1の内周面35aとの境界である内周縁36にはRが付いている。
【0038】
第1の内周面35aの径、つまり、円環状部材30の最小の内径φ5は、ナット本体20の基部24の径φ3よりも僅かに大きく、かつ、突部26の径φ4よりも僅かに小さい。たとえば、0.02mm小さい(φ5=φ4-0.02mm)。つまり、円環状部材30を基部24に装着する際に、円環状部材30の第1の側面31が基部24の突部26の第2の側面26cと当接した状態にし、円環状部材30の第2の側面32を所定の押圧手段により所定の力で押圧すると、円環状部材30が第1の内周面35aの内径φ5を広げる方向に弾性変形し、円環状部材30の第1の内周面35aが突部26を乗り越え、突部26の外周面26aが、第2の内周面35bと対向した状態になる。つまり、突部26が嵌合部35に嵌合される。このように嵌合を行うとき、最初に、円環状部材30の内周縁36と、突部26の第2の周縁26eとが当接するが、円環状部材30の内周縁36と、突部26の第2の周縁26eとには、それぞれRが付いているため、円環状部材30の第1の内周面35aが、突部26を乗り越えるときの引っ掛かりを少なくして接触抵抗を小さくすることができるため、円環状部材30の嵌合部35に突部26を嵌合し易い。
【0039】
また、一旦、円環状部材30がナット本体20に回転可能に装着されると、図5に示すように、円環状部材30とナット本体20の底面21との間には、隙間が殆ど無くなるため、円環状部材30とナット本体20の底面21との間に工具などを挿入することが困難となるので、円環状部材30が基部24から外れるおそれがない。つまり、ナット部材10は、円環状部材30をナット本体20の基部24に装着し易く、かつ、円環状部材30を基部24から外し難い構造になっている。
したがって、ナット部材10を締結する際に、円環状部材30が回転可能に装着されたナット本体20を持っても、円環状部材30がナット本体20から外れないため、ナット部材10の締結作業を行い易い。また、円環状部材30がナット本体20に装着された状態で保管することができるため、ナット本体20および円環状部材30の一方が紛失するおそれがない。
【0040】
第1の内周面35aと外周面33との距離、つまり、円環状部材30の最も厚い部分の肉厚はd2である。また、嵌合部35の深さはd3である。また、第1の側面31と第2の側面32との間の距離、つまり、円環状部材30の厚さはw2であり、第1の内周面35aの厚さはw3であり、第2の内周面35bの厚さはw4である。嵌合部35の深さd3は、ナット本体20の突部26の高さd1(図3(b))よりも僅かに深い(d3>d1)。また、第2の内周面35bの厚さw4は、ナット本体20の突部26の厚さw1よりも広い(w4>w1)。つまり、円環状部材30をナット本体20の基部24に装着し、突部26が嵌合部35に嵌合したときに、突部26の周囲と嵌合部35との間に隙間が形成されるように構成されている。また、第1の内周面35aの厚さはw3は、突部26の第1の側面26b(図3(b))と、ナット本体20の底面21(図3(a))との間の距離よりも僅かに小さい。つまり、円環状部材30をナット本体20に装着したときに、円環状部材30の第1の側面31と、ナット本体20の底面21との間に僅かに隙間が形成されるようになっている。
これにより、基部24に装着された円環状部材30が基部24を回転軸にして回転自在となる。
つまり、工具で円環状部材30の外周面33を挾持してナット部材10を回転させようとしても、円環状部材30が基部24を中心に回転するだけで、ナット本体20は回転しないため、ナット部材10を緩めることは困難である。
【0041】
[専用工具の構造]
次に、ナット部材10を締めたり緩めたりするための専用工具の構造について図6を参照して説明する。
【0042】
専用工具40は、胴部41と、凸部42と、六角部43とを備えている。胴部41は円柱形状に形成されている。凸部42は、胴部41の一端41aから突出形成されており、ナット本体20の装着部27(図2)に合致した形状に形成されている。つまり、図6(b)に示すように、凸部42は、ヘクサロビュラの穴形状の装着部27に嵌合する形状に形成されている。六角部43は、胴部41の他端41bから突出形成されており、六角ナットの形状に形成されている。六角部43は、ボックスレンチ、ソケットレンチおよびスパナなどの工具によって挾持する部分である。凸部42、胴部41および六角部43には、六角ボルト60の先端61(図7)を挿入するための挿入孔44が貫通形成されている。挿入孔44は、凸部42の一端面42aから胴部41を通じて六角部43の他端面43aに連通している。
挿入孔44は貫通形成しないで有底にしても良い。また、胴部41の外周面を六角形状に形成し、工具によって挾持する範囲を長くすることもできる。この場合、六角部43を設けないようにしても良い。
【0043】
[ナット部材10および専用工具40の使用方法]
次に、ナット部材10および専用工具40の使用方法について図7を参照して説明する。ここでは、金属製の板状に形成された締結対象物を締結する場合を説明する。
【0044】
締結対象物50には、六角ボルト60を挿通するための貫通孔50aが貫通形成されており、締結対象物51には、六角ボルト60を挿通するための貫通孔51aが貫通形成されている。各貫通孔50a,51aは、六角ボルト60を挿通できるように相互に連通している。
先ず、ワッシャ(座金)70に挿通された六角ボルト60の先端61を貫通孔50aから貫通孔51aに挿通する。次に、ナット本体20のテーパ面23を指などで摘み、ナット本体20を時計回りに回転させながら、貫通孔51aから突出した六角ボルト60の先端61にナット本体20のボルト挿通孔28を螺合する。そして、専用工具40の凸部42をナット本体20の装着部27に嵌合する。このとき、装着部27の内壁27b(図5(a))の上縁にはRが付いているため、専用工具40の凸部42の先端が内壁27bの上縁に当接した場合でも、その上縁に引っ掛かることなく、内壁27bに沿って底面27aに向けて滑らかに案内される。そして、専用工具40の凸部42をナット部材10の装着部27に嵌合した後、ボックスレンチ、ソケットレンチおよびスパナなどの工具によって専用工具40の六角部43を挾持し、その工具を時計回りに回転させ、ナット部材10を締結対象物51に締付ける。そして、ナット部材10の締結トルクが所定の締付トルクに達した時点でナット部材10の締付を停止し、専用工具40の凸部42をナット部材10の装着部27から外し、ナット部材10の締付け作業を終了する(図7)。
【0045】
また、締結対象物50,51を締結したナット部材10を緩める場合は、専用工具40の凸部42をナット部材10の装着部27に嵌合し、ボックスレンチ、ソケットレンチおよびスパナなどの工具によって専用工具40の六角部43を挾持し、その工具を反時計回りに回転させ、ナット部材10を緩める。
このように、専用工具40を用いれば、専用工具40の凸部42をナット部材10の装着部27に嵌合した状態で六角部43を回転させることにより、ナット部材10を締めたり緩めたりすることができる。
【0046】
たとえば、ナット部材10を呼び径8mmの六角ボルト60に締結する場合、ナット本体20の上面22の径φ1(図3)は15.0mm、底面21の径φ2が19.0mm、基部24の径φ3が16.0mm、突部26の径φ4が16.6mmである。この場合、突部26の基部24の外周面24aからの突出高さd1は0.3mm(=(16.6mm-16.0mm)×1/2)であり、突部26の厚さw1は1.0mmである。
また、円環状部材30の外径φ7(図4(c))は20.0mmであり、ナット本体20の底面21の径φ2(19.0mm)よりも1.0mm(=20.0mm-19.0mm)大きい。つまり、円環状部材30を基部24に装着すると、円環状部材30の外周面33が、底面21の周縁21aから上下でそれぞれ0.5mm(=1.0mm×1/2)突出する。
【0047】
また、円環状部材30の嵌合部35の第2の内周面35bの内径φ6は16.8mm、第1の内周面35aの内径φ5は15.98mmである。また、外周面33および第2の内周面35b間の厚さ、つまり、円環状部材30の最も薄い肉厚d2は1.6mm(=(20.0mm-16.8mm)×1/2)、第1の内周面35aから第2の内周面35bまでの長さ、つまり、嵌合部35の深さd3は0.41mm(=(16.8mm-15.98m)×1/2)である。また、円環状部材30の厚さw2は3.8mm、嵌合部35の第2の内周面35bの厚さw3は1.2mmである。
つまり、突部26の高さd1は0.3mmであり、嵌合部35の深さd3は0.41mmであるから、嵌合部35に突部26が嵌合した状態では、突部26の外周面26aと、嵌合部35の底面35cとの間には、0.11mm(=0.41mm-0.3mm)の隙間が形成されるため、円環状部材30は基部24の外周面24aに対して回転自在な状態になる。
【0048】
また、装着部27の内壁27b(図2)の高さ、つまり、装着部27の深さは3.0mmである。また、内壁27bを形成する曲面のうち、外側に膨らんだ曲面27dの相対向する曲面27dの最大幅(第1の上縁27e間の幅)は13.49mmであり、最小幅(第2の上縁27f間の幅)は13.36mmである。また、内側に膨らんだ曲面27cの相対向する曲面27cの最大幅(第1の上縁27e間の幅)は9.68mmであり、最小幅(第2の上縁27f間の幅)は9.55mmである。つまり、第1の上縁27eおよび第2の上縁27f間の幅は0.065mm(=(13.49mm-13.36mm)×1/2)である。また、外側に膨らんだ曲面27dの曲率半径は1.13mmであり、内側の膨らんだ曲面27cの曲率半径は2.83mmである。
ボルト挿通孔28は、締結対象物に対するナット部材10の締結を完了したときに、六角ボルトの先端が上面22から2.0~3.0mm突出する長さに形成されている。
なお、上記各数値は一例であり、ボルトおよび締結対象物に応じて適宜変更可能である。たとえば、円環状部材30がナット本体20に回転可能に装着されており、かつ、円環状部材30がナット本体20から容易に外れなければ、突部26の突出高さd1は、0.05~0.25mmでも良い。
【0049】
また、ナット部材10の材質は、使用箇所に応じて、鉄、ステンレス、アルミニウム、チタン、真鍮、銅などから選択することができる。さらに、ナット部材10の表面は、使用箇所に応じて、三価クロメートめっき、亜鉛ニッケル合金めっき、ジオメット、カチオン電着塗装などから選択して処理することができる。
【0050】
上述したように、本実施形態のナット部材10は、底面21と、底面21と反対側に形成されており、底面21の径φ2よりも小径φ1の上面22と、底面21の周縁21aと上面22の周縁22aとの間に連続形成されたテーパ面23と、上面22から底面21に向けて窪んでおり、当該ナット部材10の締結に用いる専用工具40を装着するための装着部27と、底面21から突出した基部24と、基部24の底面24bに開口形成されており、当該ナット部材10を螺合する六角ボルト60の先端61を挿入するための第1の孔28cと、装着部27の底面27aに開口形成されており、六角ボルト60の先端61が突出するための第2の孔28aと、第1の孔28cと第2の孔28aとの間を連通しており、六角ボルト60の雄ねじ部62と噛み合う雌ねじ部28bが内壁面に形成されたボルト挿通孔28と、基部24の外周面に回転可能に装着されており、底面21の径φ2以上の外径φ7を有する円環状部材30と、を備えており、基部24の底面24bが円環状部材30から突出していることを特徴としている。
上述したように、本実施形態のナット部材10および専用工具40を実施すれば、緩めることがより一層困難であり、防犯効果をより一層高めることができるナット部材を提供することができる。
【0051】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態について図8ないし図10を参照しつつ説明する。
本実施形態のナット部材10は、ワッシャ(座金)80を備えている。ワッシャ80は、平ワッシャ(平座金)である。図8に示すように、ナット本体20の基部24の外周面24aと底面24bとの間には、段部24dが形成されている。段部24dは、基部24と同軸上に形成されており、略円筒形状に形成されている。円環状部材30は、基部24の外周面24aに回転可能に装着され、ワッシャ80は、段部24dの外周面に装着固定される。また、図8(a)に示すように、基部24の底面、つまり段部24dの底面24bは、ワッシャ80から突出している。なお、底面24bとワッシャ80とは面一でも良い。このように、ワッシャ80は、ナット本体20の基部24の一部を形成する段部24dに装着固定され、円環状部材30の基部24からの抜け止めを図るものである。また、本実施形態のナット部材10は、ワッシャ80を基部24に装着固定することにより円環状部材30の抜け止めを図るため、基部24の外周面24aには突部26(図3)が形成されていない。また、円環状部材30の内周面34には嵌合部35(図4)が形成されていない。
【0052】
図9に示すように、ワッシャ80は円環状に形成されており、平面視円環状の第1の側面81と、平面視円環状の第2の側面82と、外周面85と、内周面83とを有する。第1の側面81と内周面83との境界である内周縁84にはRが付いている。ワッシャ80の内径φ8は、段部24dの径よりも僅かに小さく、ワッシャ80を段部24dに装着するときに、ワッシャ80の内周縁84が段部24d(基部24の底面24b)の外周縁24eに当接する大きさである。つまり、ワッシャ80を段部24dに装着するときは、ワッシャ80の内周縁84を段部24dの外周縁24eに当接させ、その状態からワッシャ80をナット本体20の基部24の周縁24cの方へ押圧すると、ワッシャ80の第1の側面81が弾性変形または塑性変形し、内径φ8が広がるため、段部24dがワッシャ80に挿通され、ワッシャ80を円環状部材30の近傍まで移動させることができる(図10)。ワッシャ80の外径φ9は、円環状部材30の外径φ7(図4)よりも小さい。これにより、工具でワッシャ80の外周面85を挾持することが困難となる。ワッシャ80は、鉄、ステンレスなどの金属により形成されている。ワッシャ80は抜け止め部材の一例である。
上述したように、本実施形態のナット部材10を実施すれば、ワッシャ80を基部24の段部24dに装着するという比較的簡単な作業により、円環状部材30の基部24からの抜け止めを図ることができる。
【0053】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態について図11および図12を参照しつつ説明する。
図11は、本実施形態に係るナット部材に用いる蓋の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。図12は、図7に示すナット部材に図11に示す蓋を装着した状態を示す説明図である。
本実施形態のナット部材10は、装着部27に装着する蓋90を備えている。蓋90は、平面視円形の覆い部91と、覆い部91の底面から突出形成された突部92とを備えている。覆い部91は、ナット本体20の上面22の周縁22a(図2(b))と同じ径に形成されている。突部92は、円筒形状に形成されており、ナット本体20の第2の孔28aから突出した六角ボルト60の先端61を挿入するための挿入部93が内部に形成されている。また、覆い部91には、蓋90をナット本体20から外す際に、ピンなどの先端が尖った工具を挿入するための切欠部94が形成されている。
図12に示すように、蓋90をナット本体20の装着部27に装着すると、六角ボルト60の先端61が挿入部93に挿入され、かつ、覆い部91の外周縁とナット本体20の周縁22aとが一致する。つまり、ナット本体20の装着部27は、蓋90によって封止される。
本実施形態では、蓋90は合成樹脂により形成されており、可撓性を有する。また、突部92の内径は、六角ボルト60の呼び径よりも僅かに小さく、六角ボルト60の先端61を挿入すると、突部92が僅かに弾性変形し、六角ボルト60の雄ねじの山が突部92の内壁に圧着され、容易に外れないようになっている。
【0054】
上述したように、本実施形態のナット部材10を実施すれば、蓋90をナット本体20の装着部27に装着することにより、装着部27が露出しないようにすることができるため、工具が装着部27に挿入されないようにすることができるので、ナット部材を緩めることがより一層困難になる。
しかも、雨水や塵芥などが装着部27に浸入することを阻止することができるため、ナット部材10および六角ボルト60が錆びたりしてナット部材10を緩めることができなくなるおそれもない。
【0055】
[本発明のナット部材を適用可能な箇所]
(1)本発明のナット部材は、バッテリーを車両に固定するための部材に用いることにより、バッテリーの盗難防止効果を高めることができる。たとえば、車両に搭載されるバッテリーは、バッテリーの上部を跨ぐステーと、このステーの両端にそれぞれ挿通された一対のボルトと、各ボルトに螺合される一対のナットとによって車両に固定されるため、それら各ナットとして本発明のナット部材を用いれば、ナット部材を緩めることが困難になるため、バッテリーの盗難を防止することができる。特に、トラック、クレーン車、フォークリフト、その他の特殊車両など、バッテリーが車外に露出しており、盗難に遭いやすい車両に適用すれば盗難防止効果が高い。
【0056】
(2)自動販売機やATM(現金自動預け払い機)が、ボルトおよびナットによって所定個所に固定されている場合において、そのナットとして本発明のナット部材を用いることにより、自動販売機やATMの盗難防止効果を高めることができる。
(3)近年、屋外に設置されているソーラーパネルの盗難被害が多発している。屋外に設置されるソーラーパネルが、ボルトおよびナットを使って設置台に取付けられている場合において、そのナットとして本発明のナット部材を用いることにより、屋外に設置されているソーラーパネルの盗難防止効果を高めることができる。
【0057】
(4)その他に、橋や建物の銘板、監視カメラ、エアコン室外機、公衆トイレの温水便座、街路灯、面格子など、ボルトおよびナットによって取付けられている物に対して本発明のナット部材を使用することにより、それらの物の盗難防止効果を高めることができる。
(5)また、公園などに設置されている遊具には、ボルトおよびナットが多用されているため、そのナットとして本発明のナット部材を用いることにより、ナットを緩めるといういたずらを防止する効果を高めることができる。
【0058】
〈他の実施形態〉
(1)装着部27の形状は、ヘクサロビュラ穴の形状の他、5組または7組以上の曲面27c,27dを組み合わせた形状でも良い。また、装着部27の形状は、3角形、4角形、5角形、6角形などの多角形でも良く、専用工具40の凸部42の形状もその装着部27に嵌合する形状に形成しても良い。
(2)突部26(図3)を円環状部材30の内周面34(図4(c))に沿って形成し、嵌合部35(図4(c))を基部24の外周面24a(図3)に形成することもできる。
【0059】
(3)突部26を円環状に形成しないで1箇所または複数箇所に形成することもできる。
(4)嵌合部35を突部26に嵌合可能な凹形状に形成することもできる。
(5)ナット本体20を鉄により形成し、円環状部材30に磁性を帯びさせ、円環状部材30を磁力によってナット本体20の基部24に装着することもできる。この場合、突部26および嵌合部35を形成する必要がない。
【0060】
(6)第2実施形態ではワッシャ80として平ワッシャ(座金)を用いたが、スプリングワッシャ、皿ばねワッシャ、歯付ワッシャなどを用いることもできる。また、ワッシャに代えて他の抜け止め部材を用いることもできる。たとえば、ゴムまたは樹脂製のパッキンを用いることもできる。
(7)第3実施形態において蓋90をゴム製材料、または、金属製材料により形成することもできる。
【符号の説明】
【0061】
10・・ナット部材
21・・底面
21a・周縁
22・・上面
22a・周縁
24・・基部
24a・外周面
24b・底面
26・・突部
27・・装着部
27a・底面
28・・ボルト挿通孔
28a・第2の孔
28b・雌ねじ部
28c・第1の孔
30・・円環状部材
34・・内周面
35・・嵌合部
40・・専用工具
60・・六角ボルト
61・・先端
23・・テーパ面
φ1・・上面22の径
φ2・・底面21の径
φ7・・円環状部材30の外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12