(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】下地層形成用定木、タイル貼着方法
(51)【国際特許分類】
E04F 21/00 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
E04F21/00 Z
(21)【出願番号】P 2019116922
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】大橋 有紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 意法
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-137336(JP,U)
【文献】特開2020-026621(JP,A)
【文献】実開昭48-090428(JP,U)
【文献】登録実用新案第3008712(JP,U)
【文献】特開2011-094338(JP,A)
【文献】特開2012-117266(JP,A)
【文献】特開2016-121483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/00
E04F 21/04
E04F 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の出隅に下地層および接着層を介してタイルを所定位置に貼着させる際に、前記下地層を形成するための下地層形成用定木であって、
前記出隅を構成する壁面に添設させる定木面を有する矩形平板状の添設部と、一辺が前記添設部に接続され前記定木面に対して所定の角度で傾斜するように広がる矩形平板状の傾斜部と、前記傾斜部の前記一辺に対向する他辺から前記添設部と平行に広がる矩形平板状の支持部と、を少なくとも有し、
前記添設部と前記傾斜部とが接続される稜部は、前記定木面に対して所定の角度で広がる平坦面を形成し
、
前記支持部の外面には、一方向に延びる複数の溝が形成されていることを特徴とする下地層形成用定木。
【請求項2】
少なくとも前記添設部を構成する部材は、前記下地層を構成する材料に対して剥離性を有する材料からなることを特徴とする請求項
1に記載の下地層形成用定木。
【請求項3】
前記添設部に対する前記傾斜部の傾斜角度は、30°以上、60°以下の範囲であることを特徴とする請求項1
または2に記載の下地層形成用定木。
【請求項4】
前記添設部には、前記定木面から厚み方向に凹んだ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の下地層形成用定木。
【請求項5】
前記添設部、前記傾斜部、および前記支持部は、樹脂によって一体成形されていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の下地層形成用定木。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の下地層形成用定木を用いたタイル貼着方法であって、
前記下地層の形成厚み分だけ前記定木面の前記稜部側を前記出隅から突出させた状態で、前記出隅を構成する一方の壁面に対して前記下地層形成用定木を固定する第1定木設置工程と、
前記出隅からの前記定木面の突出幅に相当する厚みで、前記出隅を構成する他方の壁面に対して下地層材料を塗布して第1下地層を形成する第1下地層形成工程と、
前記一方の壁面から前記下地層形成用定木を取り外す第1除去工程と、
前記下地層の形成厚み分だけ前記定木面の前記稜部側を前記出隅から突出させた状態で、前記第1下地層を介して前記出隅を構成する他方の壁面に対して前記下地層形成用定木を固定する第2定木設置工程と、
前記出隅からの前記定木面の突出幅に相当する厚みで、前記出隅を構成する一方の壁面に対して下地層材料を塗布して第2下地層を形成する第2下地層形成工程と、
前記他方の壁面から前記下地層形成用定木を取り外す第2除去工程と、
前記第1下地層及び前記第2下地層に重ねてそれぞれ接着層を形成してからタイルを貼着させるタイル貼着工程と、を備えていることを特徴とするタイル貼着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地層形成用定木、およびこれを用いたタイル貼着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面の仕上げにタイルを用いることが広く行われている。こうしたタイルの壁面への貼着は、従来、モルタルを用いて行っていたが、建築物の出隅(コーナー)部分の貼着力が弱く、経年変化や地震などによって剥落しやすいという懸念があった。
【0003】
このため、弾性接着剤を用いて建築物の壁面にタイルを貼着することによって、タイルの貼着力を高める工法が知られている。
こうした弾性接着剤を用いてタイルを端着する場合には、建築物の壁面の凹凸を解消するために、予め、壁面に下地調整材を所定の厚みで塗布することにより下地層を形成し、この下地層によって表面を平滑にしてから、弾性接着剤を塗布してタイルを貼着させることが行われている。
【0004】
しかし、建築物の出隅部分は尖った稜角部分があるため、下地調整材を均一の厚みで塗布することは困難であった。このため、例えば、特許文献1には、建物の出隅部分を平坦にするために、軟質合成樹脂製蝶番部の長手方向左右両側に硬質合成樹脂製の平板を一体に連結し、この平板には適数の孔を穿設したコーナー材が記載されている。このコーナー材は、蝶番部を建物のコ-ナ-部に当てがい、直角に屈曲させて左右両側の平板をそれぞれ壁面に接着剤で貼りつけることにより、コーナー部の壁面を平坦化できるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、コーナー部の2方の出隅壁に沿って添設される添設板と、出隅壁の角線に沿い前方へ突出する定規板と、を備えた角出し用埋め込み定規が記載されている。こうした角出し用埋め込み定規によれば、突出する定規板を指標にすることで、仕上げ用塗り壁材を均一な厚みで塗布することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-275683号公報
【文献】特開2007-177478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたコーナー材は、モルタル仕上げ用のコーナー材であり、下地調整材を均一の厚みで塗布して下地層を形成し、さらに弾性接着剤を塗布した後、タイルを貼着するといった用途に用いることは想定されていない。
【0008】
また、特許文献2に記載された角出し用埋め込み定規も、モルタル仕上げ用途であり、タイルを貼着するといった用途に用いることは想定されていない。また、この角出し用埋め込み定規は、角線に沿い前方へ突出する定規板も埋め込まれてしまうため、出隅を構成する一方の壁に塗られたモルタルの端部と、他方の壁に塗られたモルタルの端部とが、埋め込まれた定規板によって分断され、貼着強度が低下する懸念があった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、建築物の出隅部分に下地層および接着層を介してタイルを所定位置に貼着させる際に、下地層を高精度に形成することを可能にする下地層形成用定木、およびこれを用いてタイルを高精度に、かつ強固に貼着させることが可能なタイル貼着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の下地層形成用定木は、建築物の出隅に下地層および接着層を介してタイルを所定位置に貼着させる際に、前記下地層を形成するための下地層形成用定木であって、前記出隅を構成する壁面に添設させる定木面を有する矩形平板状の添設部と、一辺が前記添設部に接続され前記定木面に対して所定の角度で傾斜するように広がる矩形平板状の傾斜部と、前記傾斜部の前記一辺に対向する他辺から前記添設部と平行に広がる矩形平板状の支持部と、を少なくとも有し、前記添設部と前記傾斜部とが接続される稜部は、前記定木面に対して所定の角度で広がる平坦面を形成し、前記支持部の外面には、一方向に延びる複数の溝が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明では、少なくとも前記添設部を構成する部材は、前記下地層を構成する材料に対して剥離性を有する材料から構成されていてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記添設部に対する前記傾斜部の傾斜角度は、30°以上、60°以下の範囲であってもよい。
【0014】
また、本発明では、前記添設部には、前記定木面から厚み方向に凹んだ凹部が形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明では、前記添設部、前記傾斜部、および前記支持部は、樹脂によって一体成形されていてもよい。
【0016】
また、本発明のタイル貼着方法は、前記各項に記載の下地層形成用定木を用いたタイル貼着方法であって、前記下地層の形成厚み分だけ前記定木面の前記稜部側を前記出隅から突出させた状態で、前記出隅を構成する一方の壁面に対して前記下地層形成用定木を固定する第1定木設置工程と、前記出隅からの前記定木面の突出幅に相当する厚みで、前記出隅を構成する他方の壁面に対して下地層材料を塗布して第1下地層を形成する第1下地層形成工程と、前記一方の壁面から前記下地層形成用定木を取り外す第1除去工程と、前記下地層の形成厚み分だけ前記定木面の前記稜部側を前記出隅から突出させた状態で、前記第1下地層を介して前記出隅を構成する他方の壁面に対して前記下地層形成用定木を固定する第2定木設置工程と、前記出隅からの前記定木面の突出幅に相当する厚みで、前記出隅を構成する一方の壁面に対して下地層材料を塗布して第2下地層を形成する第2下地層形成工程と、前記他方の壁面から前記下地層形成用定木を取り外す第2除去工程と、前記第1下地層及び前記第2下地層に重ねてそれぞれ接着層を形成してからタイルを貼着させるタイル貼着工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建築物の出隅部分に下地層および接着層を介してタイルを所定位置に貼着させる際に、下地層を高精度に形成することを可能にする下地層形成用定木、およびこれを用いてタイルを高精度に、かつ強固に貼着させることが可能なタイル貼着方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の下地層形成用定木を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態の下地層形成用定木を示す断面図である。
【
図3】本発明のタイル貼着方法の工程の段階的に示したフローチャートである。
【
図4】本発明のタイル貼着方法を段階的に示した説明図である。
【
図5】本発明のタイル貼着方法を段階的に示した説明図である。
【
図6】本発明のタイル貼着方法を段階的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の下地層形成用定木、およびこれを用いたタイル貼着方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
(下地層形成用定木)
以下、
図1、
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る下地層形成用定木の概略構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の下地層形成用定木を示す外観斜視図である。また、
図2は、本発明の一実施形態の下地層形成用定木を示す断面図である。
【0021】
下地層形成用定木10は、例えば、建築物の出隅にタイルを貼着させる接着層を形成する前に、予め下地調整材(下地層を構成する材料)を所定の厚みで正確に塗布して下地層を形成するための治具である。
下地層形成用定木10は、一面が定木面11Aを成す矩形平板状の添設部11、一辺がこの添設部11の一辺に接続されて、定木面11Aに対して所定の角度で傾斜する矩形平板状の傾斜部12、この傾斜部12の他辺から添設部11と平行に広がる矩形平板状の支持部13、および添設部11と支持部13とを結ぶ梁部14とを有している。
【0022】
即ち、下地層形成用定木10は、内部に複数の空洞を有し、長手方向Lに沿って細長く延びる、一端が鋭角を成す棒状の部材であり、添設部11、傾斜部12、支持部13、および3つの梁部14,14…が同一の樹脂材料によって一体に成形されている。なお、これら添設部11、傾斜部12、支持部13、梁部14は、それぞれ異なる材料によって形成され、それらを接合して形成したものであってもよい。
【0023】
添設部11は、外面を成す一面が平坦な定木面11Aとされている。そして、添設部11には、定木面11Aから厚み方向に凹んだ凹部11bが形成されている。こうした凹部11bは、後述するタイル貼着方法において下地層形成用定木10を出隅の壁面に釘打ちによる固定する際に、下地層形成用定木10が浮き上がることを防止するために設けられる。
【0024】
また、少なくとも添設部11は、下地層を構成する下地調整材に対して剥離性を有する材料から構成されることが好ましい。本実施形態では、例えば、下地層形成用定木10全体が、下地調整材に対して剥離性を有するポリエチレン樹脂によって一体に成形されている。
【0025】
傾斜部12は、添設部11に対して所定の角度で交差するように接続され、傾斜部12と添設部11との接続部分で稜部15を形成している。添設部11に対する傾斜部12の傾斜角度θ1は、30°以上、60°以下の範囲、好ましくは30°以上、50°以下の範囲であればよい。本実施形態では傾斜角度θ1は40°である。
【0026】
添設部11と傾斜部12とが接続される稜部15は、定木面11Aに対して所定の角度で広がる平坦面Sを形成している。こうした平坦面Sによって、後述するタイル貼着方法において下地調整材を塗布する際のコテ切れを良好にする。定木面11Aに対する平坦面Sの傾斜角度θ2は、90°以上、150°以下の範囲であればよい。本実施形態では傾斜角度θ2は90°である。
【0027】
支持部13は、後述するタイル貼着方法において作業者が下地層形成用定木10を出隅の壁面に押し付けたりする際に支持する部位である。こうした支持部13の外面には、長手方向Lに沿って延びる複数の溝16,16…が形成されている。本実施形態では、複数の溝16,16…は、支持部13の外面のうち、3つの梁部14,14,14のそれぞれの間に対応する領域に形成されている。
【0028】
このような複数の溝16,16…は、後述するタイル貼着方法において下地層形成用定木10を出隅の壁面に固定する際に、この溝16,16…から釘などを壁面に向かって打ち込むことで、釘打ちを容易にするとともに下地層形成用定木10の割れを防止する。
【0029】
本実施形態の下地層形成用定木10によれば、建築物の出隅を構成する一方の壁面に定木面11Aを添接させて、出隅から突出させた稜部15を厚みの指標として他方の壁面に下地層を形成し、その後、形成した下地層を介して他方の壁面に定木面11Aを添接させて、出隅から突出させた稜部15を厚みの指標として一方の壁面に下地層を形成することによって、出隅の一方の壁面および他方の壁面に、それぞれ均一な厚みで下地層を形成することができる。
【0030】
なお、本実施形態の下地層形成用定木10では、3つの梁部14,14…の間にそれぞれ釘Pを打ち込む2つの空洞が形成されているが、これ以外にも、梁部14を2つ形成して釘Pを打ち込む空洞を1つにしたり、あるいは梁部14を4つ以上形成して、釘Pを打ち込む空洞を3つ以上にすることもできる。
【0031】
(タイル貼着方法)
次に、
図1、
図2に示した一実施形態の下地層形成用定木を用いた、本発明のタイル貼着方法を説明する。
図3は、本発明のタイル貼着方法の工程の段階的に示したフローチャートである。また、
図4、
図5、
図6は、本発明のタイル貼着方法を段階的に示した説明図である。
【0032】
本発明のタイル貼着方法によって、建築物の出隅1の一方の壁面2および他方の壁面3に、それぞれタイルを貼着させる際には、まず、
図4(a)に示すように、例えば、一方の壁面2に、下地層形成用定木10の定木面11Aを沿わせる(第1定木設置工程S1)。
【0033】
この第1定木設置工程S1において、出隅の角から、他方の壁面3に形成する第1下地層5(
図4(b)参照)の厚みに合致するように、下地層形成用定木10の稜部15を突出させる。即ち、出隅の角から突出させた稜部15の突出幅(突出長さ)に相当する厚みまで、後工程で第1下地層5が形成される。
【0034】
なお、第1定木設置工程S1において、一方の壁面2に下地層形成用定木10の定木面11Aを沿わせた後、下地層形成用定木10を一方の壁面2に固定することが好ましい。下地層形成用定木10の固定は、例えばモルタル用の釘(固定具)Pを下地層形成用定木10の支持部13に形成された溝16から一方の壁面2に向けて打ち込むことにより行う。
【0035】
この時、定木面11Aから添設部11の厚み方向に凹む凹部11bの形成位置に釘Pを打ち込むことによって、定木面11Aの釘孔部分の突出や、一方の壁面2の釘孔部分の盛り上がりなどをこの凹部11bに収容し、下地層形成用定木10が一方の壁面2から浮き上がってしまうことを防止する。また、釘Pを出隅1の角から後退した位置に打ち込むことで、出隅の割れを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態に用いる下地層形成用定木10は、釘Pを打ち込む2つの空洞が形成されたものにそれぞれ釘Pを打ち込んでいるが、必要に応じていずれか一方の空洞に沿って釘Pを打ち込んで下地層形成用定木10を一方の壁面2に固定することもできる。
【0037】
次に、出隅1から突出する下地層形成用定木10の稜部15の平坦面Sに着目し、稜部15の平坦面Sの位置まで、下地調整材を他方の壁面3に塗布する(第1下地層形成工程S2:
図4(b)参照)。これにより、出隅1を構成する他方の壁面3に、出隅1の角から突出させた稜部15の突出幅(突出長さ)に相当する厚みの第1下地層7が形成される。
【0038】
こうした第1下地層形成工程S2における下地調整材の塗布は、例えば、作業者がコテを用いて下地調整材を平坦に均すように行えばよい。この時、下地層形成用定木10の稜部15に平坦面Sが形成されていることによって、作業時に下地調整材のコテ切れが良くなり、作業性が向上するとともに、形成した第1下地層7の出隅部分の盛り上がりが抑制され、全体が均等な厚みの第1下地層7を形成することができる。
【0039】
次に、釘Pを一方の壁面2から抜き取ってから、下地層形成用定木10を一方の壁面2から取り外す(第1除去工程S3)。この時、下地層形成用定木10は、少なくとも添設部11が下地調整材に対して剥離性を有する材料、例えばポリエチレン樹脂から形成されているので、形成した第1下地層7の端面の形状を崩すことなく、第1下地層7の端面から引き離すことができる。この後、形成した第1下地層7を硬化させる。
【0040】
次に、
図5(a)に示すように、硬化した第1下地層7を介して、他方の壁面3に、下地層形成用定木10の定木面11Aを沿わせる(第2定木設置工程S4)。この第2定木設置工程S4において、(第1下地層7を介した)出隅の角から、一方の壁面2に形成する第2下地層6(
図5(b)参照)の厚みに合致するように、下地層形成用定木10の稜部15を突出させる。即ち、出隅の角から突出させた稜部15の突出幅(突出長さ)に相当する厚みまで、後工程で第2下地層8が形成される。
【0041】
なお、第2定木設置工程S4において、硬化した第1下地層7を介して他方の壁面3に下地層形成用定木10の定木面11Aを沿わせた後、下地層形成用定木10を他方の壁面3に固定することが好ましい。下地層形成用定木10の固定は、例えばモルタル用の釘(固定具)Pを下地層形成用定木10の支持部13に形成された溝16から他方の壁面3に向けて打ち込むことにより行う。
【0042】
この時、定木面11Aから添設部11の厚み方向に凹む凹部11bの形成位置に釘Pを打ち込むことによって、定木面11Aの釘孔部分の突出をこの凹部11bに収容し、下地層形成用定木10が硬化した第1下地層7から浮き上がってしまうことを防止する。また、釘Pを出隅1の角から後退した位置に打ち込むことで、出隅の割れを防止することができる。
【0043】
次に、(第1下地層7を介した)出隅1から突出する下地層形成用定木10の稜部15の平坦面Sに着目し、稜部15の平坦面Sの位置まで、下地調整材を一方の壁面2に塗布する(第2下地層形成工程S5:
図5(b)参照)。これにより、出隅1を構成する一方の壁面2に、出隅1の角から突出させた稜部15の突出幅(突出長さ)に相当する厚みの第2下地層8が形成される。なお、第2下地層8は、第1下地層7の出隅1側の端面を覆う位置まで形成すればよい。
【0044】
こうした第2下地層形成工程S5における下地調整材の塗布は、第1下地層形成工程S2と同様に、例えば、作業者がコテを用いて下地調整材を平坦に均すように行えばよい。この時、下地層形成用定木10の稜部15に平坦面Sが形成されていることによって、作業時に下地調整材のコテ切れが良くなり、作業性が向上するとともに、形成した第2下地層8の出隅部分の盛り上がりが抑制され、全体が均等な厚みの第2下地層8を形成することができる。
【0045】
次に、釘Pを他方の壁面3から抜き取ってから、下地層形成用定木10を他方の壁面3から取り外す(第2除去工程S6)。この時、下地層形成用定木10は、少なくとも添設部11が下地調整材に対して剥離性を有する材料、例えばポリエチレン樹脂から形成されているので、形成した第2下地層8の端面の形状を崩すことなく、第2下地層8の端面から引き離すことができる。この後、形成した第2下地層8を硬化させる。
【0046】
この後、出隅1に形成した第1下地層7、第2下地層8にそれぞれ重ねて接着層9を形成し、出隅1の一方の壁面2、および他方の壁面3に、それぞれタイルTを貼着させる(タイル貼着工程S7:
図6参照)。
【0047】
以上のような本発明のタイル貼着方法によれば、下地層形成用定木10の定木面11Aの出隅1からの突出幅を指標として、出隅1を構成する一方の壁面2および他方の壁面3にそれぞれ下地調整材を塗布することで、正確な厚みの第1下地層7および第2下地層8を形成できる。そして、こうした第1下地層7および第2下地層8に接着層を介してタイルTを貼着することによって、出隅1を覆うタイルTを所定の位置で高精度に設けることができ、隣接するタイルT同士の段差が少ない、美観に優れたタイル貼り面を形成できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…出隅
2…一方の壁面
3…他方の壁面
7…第1下地層
8…第2下地層
10…下地層形成用定木
11…添設部
11A…定木面
12…傾斜部
13…支持部
15…稜部