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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】光学装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20230510BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20230510BHJP
   B05D 3/12 20060101ALN20230510BHJP
   B05D 7/24 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
G09F9/00 342
B29C65/48
G09F9/00 313
B05D3/12 A
B05D7/24 301T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019138981
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021859
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】長澤 好員
(72)【発明者】
【氏名】竹林 悠子
【審査官】道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159957(WO,A1)
【文献】特開2019-53234(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117526(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/065336(WO,A1)
【文献】米国特許第5242652(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
B29C 65/48
B05D 3/12
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材又は透明パネルに、光硬化性樹脂組成物の塗布領域を囲む壁部を形成する工程Aと、
上記塗布領域に、光硬化性樹脂組成物を塗布する工程Bと、
大気圧よりも低い減圧雰囲気下で、上記光硬化性樹脂組成物を介して上記光学部材と上記透明パネルとを貼り合わせて積層体を得る工程Cと、
上記積層体に加圧脱泡処理を行う工程Dとを有し、
上記工程Bでは、少なくとも上記壁部側の光硬化性樹脂組成物の高さを上記壁部の高さよりも大きくするとともに、上記工程Cで得られる積層体が光硬化性樹脂組成物の厚み方向に形成される気泡により複数の分断空間を有するように上記光硬化性樹脂組成物を塗布する、光学装置の製造方法。
【請求項2】
上記工程Bでは、上記工程Cで得られる積層体の光硬化性樹脂組成物中に上記気泡が遍在するように、上記光硬化性樹脂組成物を塗布する、請求項1記載の光学装置の製造方法。
【請求項3】
上記工程Cにおける減圧雰囲気が100Pa以下である、請求項1または2記載の光学装置の製造方法。
【請求項4】
上記工程Bでは、ライン状、渦巻状、格子状または脈動状から選択される少なくとも1種のパターンに上記光硬化性樹脂組成物を塗布する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項5】
上記工程Bでは、ライン状と脈動状との組み合わせからなるパターン、または、格子状のパターンに上記光硬化性樹脂組成物を塗布する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項6】
上記工程Bでは、25℃における粘度が1000~10000mPa・sである光硬化性樹脂組成物、または、チクソトロピー性を有する光硬化性樹脂組成物を塗布する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項7】
上記透明パネルは、上記光学部材の表示領域周縁に対応する領域に遮光部が形成され、上記遮光部の上記表示領域側に、上記壁部が形成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項8】
上記工程Dで得られた積層体の上記光硬化性樹脂組成物に光照射して、上記硬化樹脂層を形成する工程Eをさらに有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項9】
上記壁部は、上記光硬化性樹脂組成物と同一成分の光硬化性樹脂組成物からなる、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやカーナビゲーション等の情報端末に用いられている画像表示装置等の光学装置は、薄型化や視認性の向上を目的として、液晶表示パネル等の光学部材と、光学部材を保護する透明パネルとの間に光透過性の硬化樹脂層が設けられている。
【0003】
画像表示装置の製造方法として、例えば図9に示すように、以下の工程a~工程fを有する方法が挙げられる(特許文献1を参照)。
工程a:透明パネル100(例えば光透過性カバー部材)に、光硬化性樹脂組成物(以下、フィル材ともいう。)103の塗布領域101を囲む壁部(以下、ダム材ともいう。)102を形成する(図9(A),(B))。
工程b:塗布領域101に、フィル材103を塗布する(図9(B))。
工程c:透明パネル100と光学部材104(例えば液晶表示パネル)とを、フィル材103を介して真空貼合法で貼り合わせて積層体105を得る(図9(C))。
工程d:オートクレーブ107を用いて積層体105に加圧脱泡処理を行う(図9(D))。
工程e:光学部材104と透明パネル100との間に挟持されている光硬化性樹脂組成物層106に、紫外線108を照射して硬化樹脂層109を形成する(図9(E),(F))。
【0004】
図9に示す方法の工程bでは、塗布領域101全面にフィル材103が均一に広がるように、スリットノズル110(図10(A))や狭ピッチ(例えば1~2mm)のマルチノズル111(図11(A))を用いて光硬化性樹脂組成物103を塗布する方法、短時間で濡れ広がる低粘度のフィル材103をラフなパターンでディスペンサー112を用いて塗布する方法(図12(A))等が用いられる。
【0005】
図9に示す方法の工程cでは、通常、光学部材104とダム材102とが最初に貼合されるため、フィル材103がダム材102の外部に漏洩することが抑制される(図13)。そして、光学部材104とダム材102との貼合後、ダム材102が潰れ、フィル材103と光学部材104とが貼合される(図14(A),(B))。フィル材103と光学部材104とが貼合する際、フィル材103は、ある一部113から光学部材104と接触して貼合が進む。貼合時に閉じ込められた希薄空気は、フィル材103の貼合せ広がりの効果で、最終貼合部分に集められて気泡114となる(図15(A),(B))。
【0006】
気泡114は、密度が高くなるため、工程dにおけるオートクレーブ107を用いた加圧脱泡処理でも消失しにくい傾向にある(図16(A),(B))。気泡114を除去しやすくする方法として、例えば工程cにおいて、貼合中の真空度をより高くすることが考えられる。しかし、この方法は、装置のコスト向上や、サイクルタイムが長くなる問題を伴うため、実現が困難である。また、気泡114を除去しやすくする他の方法として、ダム材102の高さをフィル材103の厚み(体積/面積)に極力近づけることが考えられる(図17(A))。しかし、この方法は、ダム材102の高さや貼合装置の平面精度の問題で対応に限界があり、フィル材103漏洩も懸念される(図17(B))。また、この方法において、光学部材104として貼合面積が大きい大型パネル104Aを用いる場合(図18(B))、小型パネル104Bを用いる場合(図18(A))と比較して、気泡114の体積が相対的に大きくなるため、気泡114が消失しにくい傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-128668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本技術は、光硬化性樹脂組成物中の気泡を容易に除去できる光学装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術は、光学部材又は透明パネルに、光硬化性樹脂組成物の塗布領域を囲む壁部を形成する工程Aと、上記塗布領域に光硬化性樹脂組成物を塗布する工程Bと、大気圧よりも低い減圧雰囲気下で、上記光硬化性樹脂組成物を介して上記光学部材と上記透明パネルとを貼り合わせて積層体を得る工程Cと、上記積層体を加圧することにより、光硬化性樹脂組成物中の気泡を除去する工程Dとを有し、上記工程Bでは、少なくとも上記壁部側の光硬化性樹脂組成物が上記壁部よりも高くなるようにするとともに、上記工程Cで得られる積層体が光硬化性樹脂組成物の厚み方向に形成される気泡により複数の分断空間を有するように、上記光硬化性樹脂組成物を塗布する。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、光硬化性樹脂組成物中の気泡を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は光学装置の製造方法の工程Bを説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図2図2(A)は光学装置の製造方法の工程Cを説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図3図3(A)は光学装置の製造方法の工程Cを説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図4図4(A)は光学装置の製造方法の工程Dを説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図5図5(A)は光学装置の製造方法の実施例1の工程Bを説明するための平面図であり、図5(B)は工程Cを説明するための平面図であり、図5(C)は工程Dを説明するための平面図であり、図5(D)は得られた積層体を説明するための平面図である。
図6図6(A)は光学装置の製造方法の実施例2の光学装置の製造方法の工程Bを説明するための平面図であり、図6(B)は工程Cを説明するための平面図であり、図6(C)は工程Dを説明するための平面図である。
図7図7(A)は光学装置の製造方法の実施例3の工程Bを説明するための平面図であり、図7(B)は工程Bを説明するための平面図であり、図7(C)は工程Cを説明するための平面図であり、図7(D)は工程Dを説明するための平面図である。は、である。
図8A図8A(A)は光学装置の製造方法の実施例4の工程Bを説明するための平面図であり、図8A(B)は図8A(A)中のA-A断面図である。
図8B図8B(C)~(E)は工程Cを説明するための平面図である。
図8C図8C(F)は、工程Cを説明するための平面図であり、図8C(G)は工程Dを説明するための平面図である。
図9図9(A)は従来の光学装置の製造方法を説明するための断面図であり、(A)は透明パネルに光硬化性樹脂組成物の塗布領域を囲む壁部を形成する工程、(B)は塗布領域に光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、(C)は透明パネルと光学部材とを光硬化性樹脂組成物を介して真空貼合法で貼り合わせて積層体を得る工程、(D)はオートクレーブを用いて積層体に加圧脱泡処理を行う工程、(E)は光学部材と透明パネルとの間に挟持されている光硬化性樹脂組成物層に紫外線を照射して硬化樹脂層を形成する工程、(F)は得られた光学装置を示す断面図である。
図10図10(A),(B)は、スリットノズルを用いて光硬化性樹脂組成物を塗布する方法を説明するための斜視図である。
図11図11(A),(B)は、マルチノズルを用いて光硬化性樹脂組成物を塗布する方法を説明するための斜視図である。
図12図12(A),(B)は、ディスペンサーを用いて光硬化性樹脂組成物を塗布する方法を説明するための斜視図である。
図13図13は、透明パネルと光学部材とを光硬化性樹脂組成物を介して真空貼合法で貼り合わせるときの状態の一例を示す断面図である。
図14図14(A)は、光学部材とダム材との貼合後、ダム材が潰れ、フィル材と光学部材とが貼合される状態の一例を示す断面図であり、図14(B)は、平面図である。
図15図15は、貼合時に閉じ込められた希薄空気が、フィル材の貼合せ広がりの効果で、最終貼合部分に集められて気泡となる状態の一例を示す断面図であり、図15(B)は、平面図である。
図16図16は(A)は、オートクレーブを用いて積層体に加圧脱泡処理を行う状態の一例を示す断面図であり、図16(B)は、平面図である。
図17図17(A),(B)は、ダム材の高さをフィル材の厚みに極力近づけた状態の一例を示す断面図である。
図18図18(A)は、光学部材として小型パネルを用いたときの積層体における気泡の状態の一例を示す平面図であり、図18(B)は光学部材として大型パネルを用いたときの積層体における気泡の状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係る光学装置の製造方法(以下、本製造方法ともいう。)では、透明パネル2と光学部材3とが硬化樹脂層4を介して積層した光学装置1(図9F参照)を得る。
【0013】
[透明パネル]
透明パネル2は、光学部材3に形成された画像が視認可能となるような光透過性を有するものが用いられる。透明パネル2としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の樹脂材料が挙げられる。透明パネル2の形状は、例えば、板状、シート状が挙げられる。透明パネル2には、少なくとも一方の面にハードコート処理、反射防止処理などが施されていてもよい。透明パネル2の形状、厚み、弾性率等の物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0014】
透明パネル2は、光学部材3の表示領域周縁に対応する領域に、遮光部5が形成されている。遮光部5は、画像のコントラスト向上のために設けられている。遮光部5は、例えば、黒色等に着色された塗料をスクリーン印刷等で塗布し、乾燥・硬化させて形成することができる。遮光部5の厚みは、目的に応じて適宜変更することができ、例えば5~100μmとすることができる。
【0015】
[光学部材]
光学部材3としては、例えば、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等が挙げられる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子と、タッチパッドのような位置入力装置とを組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。
【0016】
[硬化樹脂層]
硬化樹脂層4は、後述する光硬化性樹脂組成物6から形成される。硬化樹脂層4の屈折率は、透明パネル2や光学部材3の屈折率とほぼ同等であることが好ましく、例えば1.45以上1.55以下とすることができる。これにより、透明パネル2からの映像光の輝度やコントラストを高め、視認性を良好にすることができる。また、硬化樹脂層4の光透過率は、90%を超えることが好ましい。これにより、画像の視認性をより良好にすることができる。硬化樹脂層4の厚みは、目的に応じて適宜変更することができ、例えば50~200μmとすることができる。
【0017】
<工程A>
工程Aでは、例えば図1に示すように、まず、遮光部5を有する透明パネル2を準備し、透明パネル2の表面に、光硬化性樹脂組成物6の塗布領域7を囲む壁部8を形成する。壁部8は、硬化樹脂層4を構成する光硬化性樹脂組成物6の塗布領域を画するとともに、工程Bで塗布する光硬化性樹脂組成物6が壁部8の外側へはみ出すことを防止するためのものである。壁部8は、例えば図1(A)に示すように、枠状に形成された遮光部5の表示領域側5Aに、遮光部5に沿って略枠状に形成されている。また、壁部8は、本製造方法の工程Cにおいて、光学部材3と透明パネル2とが貼り合わされるときに、遮光部5の上面から内側に亘って当接するように形成されている。壁部8は、遮光部5の上面から、遮光部5によって囲まれた塗布領域7側に亘って形成してもよい。
【0018】
壁部8は、例えば、熱や光によって硬化する硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。壁部8用の硬化性樹脂組成物は、例えばディスペンサーによって略枠状に塗布すればよい。壁部8用の硬化性樹脂組成物として、光硬化性樹脂組成物を用いる場合、光硬化性樹脂組成物を塗布し、光硬化性樹脂組成物に光(例えば紫外線)を照射することにより、光硬化性樹脂組成物が硬化して壁部8が形成される。壁部8は、工程Bで塗布する光硬化性樹脂組成物6と同一成分の光硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0019】
壁部8の高さは、形成する硬化樹脂層4の厚みに応じて適宜変更することができ、例えば、光学部材3と透明パネル2との間に挟持された状態で50~100μmとすることができる。
【0020】
<工程B>
工程Bでは、例えば図1に示すように、壁部8で囲まれた塗布領域7に光硬化性樹脂組成物6を塗布する。工程Bでは、例えば図2,3に示すように、工程Cで得られる積層体15が、光硬化性樹脂組成物6の厚み方向に亘って形成される気泡13により複数の分断空間を有するように、光硬化性樹脂組成物6を塗布する。すなわち、工程Bでは、工程Cにおける貼合時に、光硬化性樹脂組成物6の面内に多数の気泡13が分散するように、光硬化性樹脂組成物パターン11を形成する。また、工程Bでは、光硬化性樹脂組成物6の塗布量の合計が目標体積(厚み)となるように光硬化性樹脂組成物6を塗布することが好ましい。このような工程Bにより、例えば図3に示すように、工程Cで得られる積層体15の光硬化性樹脂組成物6中に気泡13が遍在しやすくなる。そのため、工程Dにおいて、光硬化性樹脂組成物6中の気泡13をより容易に除去することができる。
【0021】
以下、工程Bの具体例について説明する。工程Bでは、例えば図1(A)に示すように、透明パネル2の表面の壁部8で囲まれた塗布領域7に、1または2以上のニードル9から光硬化性樹脂組成物6を複数のライン状(筋状)に塗布して、光硬化性樹脂組成物パターン11を形成する。また、工程Bでは、工程Cの貼合わせ時(図2,3)、光硬化性樹脂組成物6が壁部8の外側へはみ出さないようにするために、光硬化性樹脂組成物パターン11間の距離(d1)と、壁部8と壁部8に最近傍の光硬化性樹脂組成物パターン11との距離(d2)を適切な範囲に調整することが好ましい。距離(d1)は、例えば2~4mmとすることが好ましい。距離(d2)は、例えば1~3mmとすることが好ましい。距離(d1)および距離(d2)を適切な範囲とすることにより、工程Cの貼合わせ時に、光硬化性樹脂組成物6が壁部8の外側へはみ出すことをより効果的に防止できる。また、距離(d1)および距離(d2)を適切な範囲とすることにより、工程Cで得られる積層体15の光硬化性樹脂組成物6中に気泡13がより遍在しやすい傾向となり、工程Dで光硬化性樹脂組成物6中の気泡13をより容易に除去することができる。
【0022】
また、工程Bでは、少なくとも壁部8側の光硬化性樹脂組成物パターン11、例えば壁部8に最も近接する光硬化性樹脂組成物パターン11の高さ(h1)が、壁部8の高さ(h2)よりも大きくなるように、光硬化性樹脂組成物6を塗布する。このように、工程Bでは、壁部8側の光硬化性樹脂組成物パターン11の高さ(h1)と、壁部8の高さ(h2)とを極力近づけなくてもよいため、壁部8の高さや貼合装置の平面精度に関する自由度を高くすることができる。なお、壁部8に最も近接する光硬化性樹脂組成物パターン11以外の光硬化性樹脂組成物パターン11については、その高さ(h1)を壁部8の高さ(h2)よりも高くしてもよいし、壁部8の高さ(h2)と同じ程度としてもよいし、壁部8の高さ(h2)よりも低くしてもよいが、本技術の効果がより効果的に得られる点で、全ての光硬化性樹脂組成物パターン11の高さ(h1)を壁部8の高さ(h2)よりも高くすることが好ましい。例えば、壁部8の高さ(h2)を0.33mmとしたとき、全ての光硬化性樹脂組成物パターン11の高さ(h1)を0.40~0.50mmとすることができる。
【0023】
工程Bでは、上述のように、工程Cで得られる積層体15が、光硬化性樹脂組成物6の厚み方向に亘って形成される気泡13により複数の分断空間を有するように光硬化性樹脂組成物6を塗布することにより、例えば図12に示すように、短時間で濡れ広がる低粘度のフィル材103を使用する従来の方法と比べて、より高粘度(例えば80000mPa・s程度)のフィル材や、チクソトロピー性を有するフィル材を使用することが可能となる。チクソトロピー性とは、せん断応力に応じて粘度が変化する特性をいう。チクソトロピー性を有するフィル材は、例えば、ニードル9から吐出される際に、せん断応力により低粘度となり、吐出後(せん断応力がかからない状態)は元の粘度に戻るため、吐出後の形状が崩れ難い傾向にある。本技術では、より高粘度のフィル材や、チクソトロピー性を有するフィル材も使用することができるため、壁部8側の光硬化性樹脂組成物パターン11の高さ(h1)が、壁部8の高さ(h2)よりも大きくなるように、光硬化性樹脂組成物パターン11の高さを容易に確保することができる。
【0024】
工程Bにおける、光硬化性樹脂組成物6の塗布形状としては、図1(A)に示すライン状に限定されず、例えば、渦巻状、格子状、脈動状またはこれらの組み合わせからなるパターンを採用することができる。工程Bで塗布する光硬化性樹脂組成物6は、25℃におけるコーンプレート型粘度計により測定した粘度が1000~10000mPa・sであるか、チクソトロピー性を有することが好ましい。光硬化性樹脂組成物6は、25℃における粘度が1000~5000mPa・sであることが好ましく、2000~4500mPa・sであることがより好ましい。
【0025】
光硬化性樹脂組成物6としては、例えば、ベース成分(成分(a))、アクリレート系モノマー成分(成分(b))、可塑剤成分(成分(c))、光重合開始剤(成分(d))を含有するものを用いることができる。
【0026】
<成分(a)>
成分(a)は、膜形成成分である。成分(a)としては、エラストマー及びアクリル系オリゴマーの少なくとも一方を含有するものを用いることができる。エラストマーとしては、例えば、アクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル共重合体、ポリブテン、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0027】
アクリル系オリゴマーとしては、例えば、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリブタジエン等を骨格に持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとを包含することを意味する。ポリイソプレン骨格の(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリイソプレン重合体の無水マレイン酸付加物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(UC102(ポリスチレン換算分子量17000)、UC203(ポリスチレン換算分子量35000)、UC-1(分子量約25000)、以上クラレ社製)等が挙げられる。ポリウレタン骨格を持つ(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230(分子量5000)、ダイセル・オルネクス社製;UA-1、ライトケミカル社製)等が挙げられる。ポリブタジエン骨格の(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、公知のものを採用することができる。
【0028】
<成分(b)>
成分(b)は、光硬化性樹脂組成物に十分な反応性及び塗布性等を付与するために反応性希釈剤として使用されるものである。成分(b)としては、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば、ベンジルアクリレート)、脂環基を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート)等が挙げられる。
【0029】
光硬化性樹脂組成物中の成分(a)と成分(b)との合計含有量は、例えば、25~85質量%とすることができる。成分(a)及び成分(b)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<成分(c)>
成分(c)は、硬化樹脂層に緩衝性を付与するとともに、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮率を低減させるために使用され、紫外線の照射では成分(a)及び成分(b)と反応しないものである。成分(c)としては、固体の粘着付与剤や液状オイル成分を用いることができる。固形の粘着付与剤としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂等が挙げられる。液状オイル成分としては、ポリプタジエン系オイル、ポリイソプレン系オイル等が挙げられる。光硬化性樹脂組成物中の成分(c)の含有量は、例えば、10~65質量%とすることができる。成分(c)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
<成分(d)>
成分(d)としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASF社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピロニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア127、BASF社)、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。成分(d)の含有量は、成分(a)及び成分(b)の合計100質量部に対し、0.1~5質量部とすることができる。
【0032】
光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤等の一般的な添加剤をさらに含有していてもよい。
【0033】
<工程C>
工程Cでは、例えば図2,3に示すように、大気圧よりも低い減圧雰囲気下で、光硬化性樹脂組成物6を介して光学部材3と透明パネル2とを貼り合わせて積層体15を得る。すなわち、工程Cでは、真空貼合装置12を用いた真空貼合法で、透明パネル2と光硬化性樹脂組成物6と光学部材3とがこの順に積層した積層体15を得る。
【0034】
大気圧よりも低い減圧雰囲気とは、例えば、低真空、中真空、高真空または超高真空状態であり、具体的には、圧力が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下がより好ましく、60Pa以下がさらに好ましい。真空度の下限値は、特に限定されないが、真空貼合装置12のコスト向上や、サイクルタイムが長くなることを回避するために、例えば0.1Pa以上が好ましく、10Pa以上がより好ましい。光学部材3と透明パネル2との貼り合わせは、例えば、大気圧よりも低い減圧雰囲気状態を形成できる真空貼合装置12を用いて行うことができる。
【0035】
上述のように、工程Bにおいて塗布した光硬化性樹脂組成物パターン11の高さ(h1)は、壁部8の高さ(h2)よりも大きい。そのため、工程Cにおいて、大気圧よりも低い減圧雰囲気下で光学部材3と透明パネル2とを貼り合わせると、光学部材3と光硬化性樹脂組成物パターン11とが最初に接触する。そして、光学部材3と光硬化性樹脂組成物パターン11とが接触すると、光硬化性樹脂組成物パターン11の効果で、光硬化性樹脂組成物の面内が複数に分断される(図2)。すなわち、複数の閉じた空間S(分断空間)が形成される。そして、透明パネル2と光学部材3との貼合が進行するにつれて、光硬化性樹脂組成物6の面内は、複数の微小な気泡13が分散した状態となる(図3)。気泡13の数は、光硬化性樹脂組成物6の広がり方によって増減する。一例として、図1に示すように、工程Bにおいて、ライン状の光硬化性樹脂組成物パターン11をd1の間隔で平行に4本形成すると、工程Cにおいて、光硬化性樹脂組成物6の面内が少なくとも5分割され(図2)、透明パネル2と光学部材3との貼合せが進行するにつれて7個の気泡13が光硬化性樹脂組成物6の面内に分散する(図3)。
【0036】
微小な気泡13の一部は、透明パネル2と光学部材3との貼合が進行するにつれて、常圧でも消失する。工程Cにおける光学部材3と透明パネル2との貼合わせ後の気泡13の大きさは、図3(A)に示す光硬化性樹脂組成物6の中央部の方が、周縁部よりも小さくなる傾向にある。例えば、気泡13の大きさは、図3(A)に示す光硬化性樹脂組成物6の中央部では0.1mm以下とすることができ、光硬化性樹脂組成物6の周縁部では0.3~1.0mm程度とすることができる。工程Cにおける貼り合わせ後の気泡13の大きさが1.0mm以下となると、透明パネル2と光学部材3との貼合が進行するにつれて消失しやすい傾向にある。そのため、工程Cで得られる積層体15は、光硬化性樹脂組成物6中の気泡13の大きさが1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0037】
このように、工程Cで得られる積層体15は、光硬化性樹脂組成物6の厚み方向に形成された気泡13により複数の分断空間を有し、光硬化性樹脂組成物6の面内に気泡13が遍在しているため、工程Dで光硬化性樹脂組成物6中の気泡13をより容易に除去することができる。
【0038】
<工程D>
工程Dでは、図4に示すように、工程Cで得られた積層体15を加圧することにより、光硬化性樹脂組成物6中の気泡13を除去する。積層体15の加圧方法は、公知の加圧脱泡処理を採用することができる。例えば、工程Dでは、オートクレーブ14を用いて、圧力0.2~0.8MPa、温度25~60℃、時間5~30分の条件で積層体を加圧することが好ましい。気泡13中の気体分子数は、真空度(圧力)と体積との積に比例する。したがって、工程Cで光硬化性樹脂組成物6の面内に分散させた微小な気泡13は、工程Dにおいて容易に消失させることができる。
【0039】
<工程E>
工程Eでは、工程Dで得られた積層体15の光硬化性樹脂組成物6に光照射することにより、光硬化性樹脂組成物6を硬化させる。例えば、工程Eでは、紫外線照射装置を用いて、透明パネル2側から、光学部材3と透明パネル2との間に挟持されている光硬化性樹脂組成物6に紫外線を照射することにより、硬化樹脂層4を形成する。工程Eにおける光照射は、硬化樹脂層4の硬化率(ゲル分率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となるように行う。
【0040】
以上のように、本製造方法によれば、工程Bにおいて、少なくとも壁部8側の光硬化性樹脂組成物パターン11の高さを壁部8の高さよりも大きくするとともに、工程Cで得られる積層体15が光硬化性樹脂組成物6の厚み方向に形成される気泡13により複数の分断空間を有するように光硬化性樹脂組成物6を塗布する。これにより、工程Cで得られる積層体15は、光硬化性樹脂組成物6の厚み方向に形成された気泡13により複数の分断空間を有し、光硬化性樹脂組成物6の面内に気泡13が遍在しやすくなる。そのため、本製造方法では、工程Cにおいて、光硬化性樹脂組成物6中の気泡13を容易に除去することができる。
【0041】
本製造方法では、従来の製造方法では気泡の除去が困難であった、大型パネルや異型パネルについても、気泡を容易に除去することができる。したがって、印刷段差追従性や接着強度が高い液状の光硬化性樹脂組成物を用いることができるため、光学装置の品質を向上させることができるとともに、光学装置の生産性を向上させることができる。また、本製造方法では、工程Bにおいて、工程Cで得られる積層体15が光硬化性樹脂組成物6の厚み方向に形成される気泡13により複数の分断空間を有するように光硬化性樹脂組成物6を塗布するため、例えば図12に示すように、短時間で濡れ広がる低粘度のフィル材103を使用する従来の方法と比べて、光硬化性樹脂組成物6(フィル材)を塗布してから工程Cにおける貼り合わせを行うまでの時間を短縮することができる。
【実施例
【0042】
以下、本技術の実施例について説明する。なお、本技術は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
<工程A>
実施例1では、図5(A)に示すように、光硬化性樹脂組成物の塗布領域を囲むように、すなわち、液晶表示パネル16の表示領域周縁に対応する領域に遮光部5が形成された異型のカバーガラス17(130mm×300mm、厚み0.3mm)を用意した。カバーガラス17の遮光部5上の表示領域側に、光硬化性樹脂組成物を塗布して高さ0.3mm、幅1mmの壁部8Aを形成した。光硬化性樹脂組成物として、25℃における粘度が3700mPa・sである光硬化性樹脂組成物を用いた。光硬化性樹脂組成物の塗布には、ディスペンス装置(武蔵エンジニアリング社製、型番350PC)を用いた。
【0044】
<工程B>
壁部8Aで囲まれた塗布領域7Aに、光硬化性樹脂組成物6をライン状に複数平行に塗布して、光硬化性樹脂組成物パターン11Aを形成した。具体的には、硬化性樹脂組成物パターン11A間の距離(d1)が4mm、壁部8Aから最近傍の硬化性樹脂組成物パターン11Aと壁部8Aとの距離(d2)が3mmとなるように、光硬化性樹脂組成物6を塗布した(図5(A))。また、全ての硬化性樹脂組成物パターン11Aが壁部8Aよりも高くなるようにした。
【0045】
<工程C>
真空貼合装置(タカトリ社製)を用いて、真空度50Pa、貼合圧0.01MPa、貼り合わせ時間10秒、温度25℃の条件で、光硬化性樹脂組成物6を介してカバーガラス17と液晶表示パネル16とを貼り合わせて積層体15を得た(図5(B))。積層体15は、光硬化性樹脂組成物6中に気泡13が遍在していた。
【0046】
<工程D>
積層体15を、オートクレーブ14(製品名:TBR600、チヨダエレクトリック製社)を用いて、圧力0.5MPa、常温、20分間の条件で加圧した(図5(C))。加圧後の積層体18Aは、光硬化性樹脂組成物6中の気泡13が除去されていることが確認された(図5(D))。
【0047】
<工程E>
加圧後の積層体18Aの光硬化性樹脂組成物6に紫外線を照射することにより、光硬化性樹脂組成物6を硬化させた。これにより、カバーガラス17と液晶表示パネル16とが硬化樹脂層4を介して貼り合わされた光学装置を得た。
【0048】
[実施例2]
実施例2では、工程Aで図6(A)に示すように、液晶表示パネル16の表示領域周縁に対応する領域に、遮光部5が形成されたカバーガラス19(130mm×300mm、厚み0.3mm)を用意したこと、工程Bで図6(A)に示すように、塗布領域7Bに、光硬化性樹脂組成物6を渦巻状に塗布して、光硬化性樹脂組成物パターン11Bを形成したこと以外は、実施例1と同様にして光学装置を得た。具体的に、実施例2では、光硬化性樹脂組成物6を渦巻状に塗布する際に、光硬化性樹脂組成物パターン11B間の距離(d1)が4mm、壁部8Bから最近傍の光硬化性樹脂組成物パターン11Bと壁部8Bとの距離(d2)が3mmとなるようにした。実施例2でも、実施例1と同様に、オートクレーブ14で加圧した後の積層体18Bは、光硬化性樹脂組成物6中の気泡13が除去されていることが確認された(図6(B),(C))。
【0049】
[実施例3]
実施例3では、工程Aで図7(A)に示すように、液晶表示パネル16の表示領域周縁に対応する領域に、遮光部5が形成されたカバーガラス19(130mm×300mm、厚み0.3mm)を用意したこと、工程Bで図7(B)に示すように、塗布領域7Cに、光硬化性樹脂組成物を格子状(クロス状)に塗布して、光硬化性樹脂組成物パターン11Cを形成したこと以外は、実施例1と同様にして光学装置を得た。
【0050】
具体的に、実施例3では、工程Bで、まず図7(A)に示すように、光硬化性樹脂組成物6をライン状に6本平行に塗布する際に、光硬化性樹脂組成物パターン11C間の距離(d1)が4mm、壁部8Cから最近傍の光硬化性樹脂組成物パターン11Cと壁部8Cとの距離(d2)が3mmとなるようにした。続いて、図7(B)に示すように、6本の光硬化性樹脂組成物パターン11C上に、この光硬化性樹脂組成物パターン11Cと直交するように光硬化性樹脂組成物をライン状に3本平行に塗布して、光硬化性樹脂組成物パターン11Cをさらに形成した。このように、実施例3では、光硬化性樹脂組成物パターン11Cの内側を10分割するとともに、光硬化性樹脂組成物パターン11Cと壁部8Cとの間(光硬化性樹脂組成物パターン11Cの外周)に空間を形成した(図7(B))。そして、カバーガラス19と液晶表示パネル16との貼合せが進行するにつれて合計14個(中央部に10個、周縁部に4個)の気泡13が光硬化性樹脂組成物6の面内に遍在した(図7(C))。
【0051】
実施例3では、図7(C)に示すように、真空貼合後、オートクレーブ14で加圧する前の気泡13の数が、実施例1,2の場合よりも減少することが分かった。また、実施例3では、実施例1,2の場合よりも容易にオートクレーブで気泡13を除去できることが分かった。これは、実施例3では、実施例1と比較して、光硬化性樹脂組成物パターンの数を増やしたことにより、光硬化性樹脂組成物の面内に形成される分断空間の数がより増加し、その結果、気泡がより細分化されたためと考えられる。
【0052】
[実施例4]
実施例4では、工程Aで図8A(A)に示すように、液晶表示パネル16の表示領域周縁に対応する領域に、遮光部5が形成されたカバーガラス20(60mm×110mm、厚み0.1mm)を用意したこと、工程Bで図8A(A),(B)に示すように、光硬化性樹脂組成物6をライン状と脈動状との組み合わせからなるパターンに塗布して、光硬化性樹脂組成物パターン11Dを形成したこと以外は、実施例1と同様にして光学装置を得た。
【0053】
具体的に、工程Bでは、図8A(A)に示すように、光硬化性樹脂組成物パターン11D間の距離(d1)が4mm、壁部8Dから最近傍の光硬化性樹脂組成物パターン11Dと壁部8Dとの距離(d2)が3mmとなるようにした。また、工程Bでは、図8A(B)に示すように、分割させたい箇所で光硬化性樹脂組成物6の吐出量を増加させる、又は、ディスペンサー21の速度を低下させることにより、局部的に光硬化性樹脂組成物パターン11Dの高さ及び幅が増加した凸部22を形成した。これにより、合計13列の光硬化性樹脂組成物パターン11D、すなわち、図8A(A)中、両端に1列ずつライン状の光硬化性樹脂組成物パターン11Daと、光硬化性樹脂組成物パターン11Daの間に合計11列の幅と高さが断続的に不均一な光硬化性樹脂組成物パターン11Dbを形成した。各光硬化性樹脂組成物パターン11Dbは、図8A(A)中の縦方向に6つの凸部22を有していた。
【0054】
工程Cでは、図8B(C)~(E)に示すようにカバーガラス20と液晶表示パネル16との貼合せが進行するにつれて、光硬化性樹脂組成物パターン11Dが不均一(脈動)にカバーガラス20と液晶表示パネル16との間に広がり、複数の閉じた空間23が形成された(図8B(E))。図8B(E)に示す状態において、光硬化性樹脂組成物6の面内が約98分割され、形成された複数の閉じた空間23は、実施例1~3の場合と比べて、より細分化されていた。
【0055】
このような実施例4では、図8C(F)に示すように、真空貼合後、オートクレーブ14で加圧する前の気泡13が、実施例1,2の場合よりも減少することが分かった。また、実施例4では、実施例1,2の場合と比べてサイクルタイムを増加させずに、実施例1,2の場合よりも容易にオートクレーブ14で気泡13を除去できることが分かった。
【符号の説明】
【0056】
1 光学装置、2 透明パネル、3 光学部材、4 硬化樹脂層、5 遮光部、6 光硬化性樹脂組成物、7,7A,7B,7C 塗布領域、8,8A,8B,8C,8D 壁部、9 ニードル、11,11A,11B,11C,11D 光硬化性樹脂組成物パターン、12 真空貼合装置、13 気泡、14 オートクレーブ、15 積層体、16 液晶表示パネル、17 カバーガラス、18、18A,18B,18C,18D 加圧後の積層体、19 カバーガラス、20 カバーガラス、21 ディスペンサー、22 凸部、23 閉じた空間、100 透明パネル、100A 遮光部、101 塗布領域、102 壁部(ダム材)、103 光硬化性樹脂組成物(フィル材)、104 光学部材、105 積層体、106 仮硬化樹脂層、107 オートクレーブ、108 紫外線、109 硬化樹脂層、110 スリットノズル、111 マルチノズル、112 ディスペンサー、113 一部、114 気泡、115 光学装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18