(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】心電計、及び、心電計の作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20230510BHJP
A61B 5/339 20210101ALI20230510BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/339
(21)【出願番号】P 2019141465
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和晃
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-190227(JP,A)
【文献】特開2018-171239(JP,A)
【文献】特開2018-130588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位システムからのオーダー情報を受信する受信部と、
患者の心電図データを取得する心電図データ取得部と、
前記心電図データを保存するデータ保存部と、
前記心電図データを解析する解析部と、
を備え、
前記データ保存部は、少なくとも前記解析部が前記オーダー情報に含まれる第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行っている間、前記オーダー情報に含まれる第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを収集して保存し、
前記解析部は、前記第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行った後に、前記データ保存部に保存されている前記第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを用いて前記第2の種類の心電図検査に対応する解析処理を行う、
心電計。
【請求項2】
前記第2の種類の心電図検査は、前記第1の種類の心電図検査よりも解析のための心電図データの収集に長い時間を要する心電図検査である、
請求項1に記載の心電計。
【請求項3】
前記第1の種類の心電図検査は、12誘導検査である、
請求項1又は2に記載の心電計。
【請求項4】
上位システムからのオーダー情報を受信するステップと、
患者の心電図データを取得するステップと、
前記心電図データを保存するステップと、
前記心電図データを解析するステップと、
を含み、
前記心電図データを保存するステップでは、少なくとも前記オーダー情報に含まれる第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行っている間、前記オーダー情報に含まれる第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを収集して保存し、
前記心電図データを解析するステップでは、前記第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行った後に、保存した前記第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを用いて前記第2の種類の心電図検査に対応する解析処理を行う、
心電計の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電計、及び、心電計の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓疾患の診断指標として、心電図が広く用いられている。心電図は、心臓の電気的な活動を体表面で検出し、それを心電波形として表したものである。この心電波形(心電図)を解析することで、心臓の活動に関する様々な情報を得ることができる。
【0003】
近年では、心電図をデータ化して記録するデジタル心電計の開発により、コンピューターを用いて心電図を自動解析することが可能になり、心電図から得られる様々なパラメーターについて検討がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、1つの心電計で複数の検査(例えば、12誘導検査、不整脈検査、リズム計測検査、マスター検査など)を行うことができるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、12誘導検査、不整脈検査、リズム計測検査、マスター検査などの複数の検査を行うことができる心電計は、例えば病院などで用いられる。この場合、心電計は、HIS(Hospital Information System)などの病院の上位システムからのオーダー情報に従って順次心電図検査を実行するようになっている。
【0007】
しかしながら、従来の心電計においては、上記複数の検査を行うにあたっての効率的な処理手順については十分に検討されていなかった。そのため、心電図検査の合計時間が長くなるという欠点がある。これは、検査中に身体に心電電極を装着し続けなければならない患者にとって負担となる。また、多数の患者に対して検査を行うことが求められる大病院などでは、大きなデメリットとなり得る。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、複数検査を行うことができる心電計における検査時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の心電計の一つの態様は、
上位システムからのオーダー情報を受信する受信部と、
患者の心電図データを取得する心電図データ取得部と、
前記心電図データを保存するデータ保存部と、
前記心電図データを解析する解析部と、
を備え、
前記データ保存部は、少なくとも前記解析部が前記オーダー情報に含まれる第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行っている間、前記オーダー情報に含まれる第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを収集して保存し、
前記解析部は、前記第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行った後に、前記データ保存部に保存されている前記第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを用いて前記第2の種類の心電図検査に対応する解析処理を行う。
【0010】
本発明の心電計の作動方法の一つの態様は、
上位システムからのオーダー情報を受信するステップと、
患者の心電図データを取得するステップと、
前記心電図データを保存するステップと、
前記心電図データを解析するステップと、
を含み、
前記心電図データを保存するステップでは、少なくとも前記オーダー情報に含まれる第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行っている間、前記オーダー情報に含まれる第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを収集して保存し、
前記心電図データを解析するステップでは、前記第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行った後に、保存した前記第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを用いて前記第2の種類の心電図検査に対応する解析処理を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数検査を行うことができる心電計において、ユーザーによる操作を複雑化することなく、検査時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】病院における、心電計を含むシステム構成とデータの流れを示す模式図
【
図2】従来行われている、心電計の処理の流れの第1の比較例を示すフローチャート
【
図3A】第1の比較例において収集される12誘導波形の例を示す図
【
図3B】第1の比較例における12誘導検査の解析結果を示す図
【
図3C】第1の比較例におけるオーダーリストの表示例を示す図
【
図3D】第1の比較例において収集される不整脈波形の例を示す図
【
図3E】第1の比較例における不整脈検査の解析結果を示す図
【
図3F】第1の比較例におけるオーダー終了時の表示画像例を示す図
【
図4】従来行われている、心電計の処理の流れの第2の比較例を示すフローチャート
【
図5A】第2の比較例において収集される12誘導波形の例を示す図
【
図5B】第2の比較例におけるフリーズ画面の例を示す図
【
図5C】第2の比較例におけるフリーズ画面の例を示す図
【
図5D】第2の比較例における12誘導検査の解析結果を示す図
【
図5E】第2の比較例における不整脈検査の解析結果を示す図
【
図5F】第2の比較例におけるオーダー終了時の表示画像例を示す図
【
図7】実施の形態の心電計の動作の説明に供するフローチャート
【
図8A】実施の形態において収集される12誘導波形の例を示す図
【
図8B】実施の形態におけるフリーズ画面の例を示す図
【
図8C】実施の形態における12誘導検査の解析結果を示す図
【
図8D】実施の形態におけるオーダーリストの表示例を示す図
【
図8E】実施の形態において収集される不足分の不整脈波形の例を示す図
【
図8F】実施の形態におけるフリーズ画面の例を示す図
【
図8G】実施の形態における不整脈検査の解析結果を示す図
【
図8H】実施の形態におけるオーダー終了時の表示画像例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1>本発明に至った経緯
先ず、実施の形態を説明する前に、本発明に至った経緯について説明する。
【0014】
図1は、心電計1を含む病院内システムの構成とデータの流れを示す模式図である。
図1の病院内システムは、心電計1と、データマネージメントシステム2と、上位システム3と、を有する。
【0015】
心電計1は、12誘導検査、不整脈検査、リズム計測検査、マスター検査などの複数の検査を実行可能な構成を有する。データマネージメントシステム2は、生理検査室に設けられた心電計1を含む医療計測器の計測データを格納する機能、及び、上位システム3と各医療計測器との間のデータを変換する機能を有する。上位システム3は、例えばHISである。
【0016】
上位システム3がオーダー情報を発行すると、データマネージメントシステム2が当該オーダー情報を心電計用のオーダー情報に変換して心電計1に送る。心電計1は、オーダー情報に従って心電図検査を実行する。心電計1は、心電図検査によって得た検査データ及びオーダー完了通知をデータマネージメントシステム2に送る。データマネージメントシステム2は、検査データを格納するとともに、オーダー完了通知を上位システム3に送る。
【0017】
図2は、従来行われている、心電計1の処理の流れの第1の比較例を示すフローチャートである。また、
図3A-
図3Fは、心電計1に表示される画像例を示す図である。
【0018】
先ず、ステップS11においてオーダーリストが表示される。なお、この例のオーダー情報は、12誘導検査及び不整脈検査を実行することを指示するものである。心電計1のユーザーである医療従事者は、オーダーリストを見ることにより、これから行う検査を把握するとともに、オーダーに含まれるコメントに基づいて医師からの指示を確認する。
【0019】
次に、ステップS12において、心電計1は、12誘導検査に検査モードを切り替え、波形を収集する。ここで、心電計1は、12誘導検査に必要な波形として、10秒間の波形を収集する。
図3Aは、収集される12誘導波形の例を示す。
【0020】
次に、ステップS13において、心電計1は、収集された波形を用いて12誘導検査に対応した解析処理を実行する。解析結果は、心電計1の表示部に表示される。
図3Bは、12誘導検査の解析結果を示す。ユーザーは、この表示された解析結果を確認する。心電計1は、解析結果をデータマネージメントシステム2に送る(データ送信)。
【0021】
次に、ステップS14において、心電計1はオーダーリストを表示する。
図3Cは、オーダーリストの表示例である。ユーザーは、このオーダーリストを見ることにより、次の検査が不整脈検査であることを認識する。また、オーダーに含まれるコメントに基づいて医師からの指示を確認する。
【0022】
次に、ステップS15において、心電計1は、検査モードを不整脈検査に切り替え、波形を収集する。ここで、心電計1は、不整脈検査に必要な波形として、180秒間の波形を収集する。
図3Dは、収集される不整脈波形の例を示す。
【0023】
次に、ステップS16において、心電計1は、収集された波形を用いて不整脈検査に対応した解析処理を実行する。解析結果は、心電計1の表示部に表示される。
図3Eは、不整脈検査の解析結果を示す。ユーザーは、この表示された解析結果を確認する。心電計1は、解析結果をデータマネージメントシステム2に送る(データ送信)。
【0024】
次に、ステップS17において、心電計1は、オーダー完了通知を送り、オーダーを終了する。
図3Fは、オーダー終了時の心電計1の表示画像例を示す。
【0025】
図4は、従来行われている、心電計1の処理の流れの第2の例を示すフローチャートである。また、
図5A-
図5Fは、心電計1に表示される画像例を示す図である。
【0026】
先ず、ステップS21においてオーダーリストが表示される。なお、この例のオーダー情報は、12誘導検査及び不整脈検査を実行することを指示するものである。心電計1のユーザーである医療従事者は、オーダーリストを見ることにより、これから行う検査を把握するとともに、オーダーに含まれるコメントに基づいて医師からの指示を確認する。
【0027】
次に、ステップS22において、心電計1は、検査モードにモードを切り替え、波形を収集する。この第2の比較例では、心電計1は、12誘導検査、不整脈検査に必要な波形を一気に収集する。つまり、12誘導検査に必要な波形が10秒間の波形であるのに対して、不整脈検査に必要な波形が180秒間の波形なので、ステップS22での収集には、少なくとも180秒を要することになる。因みに、上位システム3からのオーダーによっても異なるが、一般に、12誘導検査に必要な波形は8秒~24秒の範囲であり、不整脈検査に必要な波形は40秒~180秒の範囲であり、リズム計測検査に必要な波形は40秒~10分の範囲である。
図5Aは、収集される波形の例を示す。
【0028】
次に、ステップS23において、心電計1は、フリーズ画面に遷移する。このフリーズ画面への遷移は、ユーザー操作をトリガーとして行われる。
図5B及び
図5Cは、12誘導検査のフリーズ画面の例を示す。先ず、ユーザーは、
図5Bに示したフリーズ画面において12誘導検査の解析範囲と不整脈検査の解析範囲を設定する。ユーザーが、解析範囲を設定し、「解析モード」(ここでの「解析モード」とは解析を行う検査種別を意味する。)のボタンを操作すると、
図5Cに示したようなチェックボックスが表示される。次に、ユーザーが、チェックボックスの検査の中から、オーダーリストに記載されている検査をチェックし、リターンボタンを操作し、「解析」のボタンを操作するとチェックした検査の解析が行われる。この例の場合、ユーザーは、12誘導検査と不整脈検査の項目にチェックし、リターンボタンを操作し、「解析」のボタンを操作することで、12誘導検査と不整脈検査の解析が行われることになる。
【0029】
心電計1は、ステップS24に移って、モードをフリーズモードから解析モード(ここでの「解析モード」とは心電計1が解析処理を行うモードであることを意味する)に変更する
【0030】
このように、心電計1は、ステップS23において各検査についての解析範囲が設定され、ステップS24において解析モードへのモード移行が指示されると、ステップS25に移る。心電計1は、ステップS25において、設定された解析範囲の波形を用いて、12誘導検査及び不整脈検査に対応した解析処理を実行する。解析結果は、心電計1の表示部に表示される。
図5Dは12誘導検査の解析結果を示し、
図5Eは不整脈検査の解析結果を示す。ユーザーは、この表示された解析結果を確認する。心電計1は、解析結果をデータマネージメントシステム2に送る(データ送信)。つまり、
図2に示した第1の比較例では、ステップS13とステップS15に分けて12誘導検査の解析、確認、データ送信と、不整脈検査の解析、確認、データ送信が行われたが、
図4に示した第2の比較例では、ステップS25において、12誘導検査の解析、確認、データ送信と、不整脈検査の解析、確認、データ送信とが一括して行われる。
【0031】
次に、ステップS26において、心電計1は、オーダー完了通知を送り、オーダーを終了する。
図5Fは、オーダー終了時の心電計1の表示画像例を示す。
【0032】
ここで、
図2に示した第1の比較例では、12誘導検査の波形収集(ステップS12)と、不整脈検査の波形収集(ステップS15)を別々に行うので、波形収集に要する時間が長くなる。例えば、
図2の例では、12誘導検査の波形収集に10秒を要し、不整脈検査の波形収集に180秒を要するので、全体として190秒の波形収集時間を要する。なお、上述したように、12誘導検査の波形収集に要する時間は、オーダーによって最大で24秒となるので、この場合には、全体として24+180=204秒の波形収集時間を要することになる。
【0033】
一方、
図4に示した第2の比較例では、ステップS22において複数の検査(12誘導検査、不整脈検査)の波形収集を一括して行うので、第1の比較例と比較して、波形収集に要する時間を短縮できる。しかし、
図4に示した第2の比較例では、ステップS23及びステップS24において、ユーザーが複数のオーダー情報を確認しながら複数の検査についての解析範囲の設定を行ったり、ステップS25において、ユーザーが複数のオーダーを確認しながら複数の検査についての解析設定を行う必要がある。よって、
図4に示した第2の比較例では、
図2に示した第1の比較例と比較して、ユーザーの手間が増え、さらには的確な操作を行うためにはユーザーにある程度の経験が要求される。
【0034】
本発明の発明者は、以上の考察の下、本発明に至った。
【0035】
<2>実施の形態
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明における「心電図」は「心電波形」と読み換えてもよい。
【0036】
図6は、本発明の実施の形態に係る心電計の基本構成を示すブロック図である。本実施の形態の心電計10は、
図1のシステムにおける心電計1として用いられる。
【0037】
心電計10は、心電図データ取得部11、解析部12、表示部13、操作入力部14、制御部15、送受信部16及びデータ保存部17を有する。
【0038】
心電図データ取得部11は、患者に装着された複数の心電用電極21からの心電信号を増幅する増幅回路やアナログディジタル回路を含んで構成されており、患者の心電図データを出力する。
【0039】
解析部12は、心電図データを解析する。解析部12は、12誘導検査や不整脈検査などの検査の種類によって異なる解析を行う。解析部12の各検査に対する解析は既知の技術なので、ここでの詳しい説明は省略する。解析部12により得られた解析結果は、表示部13に表示される。また、解析結果は、送受信部16を介してデータマネージメントシステム2(
図1)に送られる。
【0040】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイである。操作入力部14は、ユーザー操作を受け付ける。表示部13がタッチパネル付きの液晶ディスプレイの場合には、操作入力部14は、ユーザーによるタッチパネルのタッチ操作を受け付ける。また、心電計10にキーボードやマウスが接続されている場合には、操作入力部14はユーザーによるこれらのディバイス操作を受け付ける。
【0041】
制御部15は、操作入力部14から出力される操作信号に基づいて心電計10の動作を制御する。また、制御部15には、送受信部16を介してオーダー情報が入力され、制御部15は、このオーダー情報に基づいて心電計10の動作を制御する。具体的には、オーダー情報が表示部13に表示されるとともに、解析部12及びデータ保存部17などがオーダー情報に基づいて制御される。なお、オーダー情報は、上述したようにHISなどの上位システム3(
図1)で発行されたものである。
【0042】
データ保存部17は、心電図データ取得部11によって取得された心電図データを保存する。データ保存部17に保存された心電図データは、解析部12での解析に用いられる。
【0043】
図7は、本実施の形態の心電計10の処理の流れを示すフローチャートである。また、
図8A-
図8Hは、心電計10に表示される画像例を示す図である。
【0044】
先ず、ステップS31において表示部13にオーダーリストが表示される。なお、この例のオーダー情報は、12誘導検査及び不整脈検査を実行することを指示するものである。心電計10のユーザーである医療従事者は、オーダーリストを見ることにより、これから行う検査を把握するとともに、オーダーに含まれるコメントに基づいて医師からの指示を確認する。
【0045】
次に、ステップS32において、心電計10は、オーダー情報に基づいて12誘導検査に検査モードを切り替え、心電図データを収集する。ここで、心電計10は、12誘導検査に必要な波形として、10秒間の心電図データを収集する。この心電図データは、解析部12のメモリに記憶されてもよいし、データ保存部17に記録されてもよい。
図8Aは、収集される12誘導波形の例を示す。
【0046】
次に、ステップS33において、心電計10は、フリーズ画面に遷移する。このフリーズ画面への遷移は、ユーザー操作をトリガーとして行われる。
図8Bは、フリーズ画面の例を示す。ユーザーは、
図8Bに示したフリーズ画面において12誘導検査の解析範囲を設定する。
【0047】
次に、心電計10は、ステップS34において、設定された解析範囲の心電図データを用いて、12誘導検査に対応した解析処理を実行する。解析結果は、表示部13に表示される。
図8Cは12誘導検査の解析結果を示す。ユーザーは、この表示された解析結果を確認する。また、心電計10は、解析結果を送受信部16を介してデータマネージメントシステム2(
図1)に送る(データ送信)。
【0048】
次に、ステップS35において、心電計10はオーダーリストを表示する。
図8Dは、オーダーリストの表示例である。ユーザーは、このオーダーリストを見ることにより、次の検査が不整脈検査であることを認識する。また、オーダーに含まれるコメントに基づいて医師からの指示を確認する。
【0049】
本実施の形態の心電計10は、ステップS32-S35と並行してステップS40を実行することにより、ステップS32-S35の処理を行っている間に、データ保存部17に心電図データを保存する(波形保存)。つまり、ステップS32-S35の処理時間が150秒である場合には、データ保存部17に150秒の期間の心電図データが保存される。換言すれば、心電計10は、ステップS32-S35の処理を行っている間、バックグランドで心電図データの保存を行う。
【0050】
次に、ステップS36において、心電計10は、不整脈検査に検査モードを切り替え、心電図データを収集する。この心電図データの収集は、ステップS40で保存した心電図データの不足分を補うために行う。つまり、ステップS40で心電図データを不足なく保存できた場合には、ここでの収集は行う必要がない。例えば、オーダー情報で指定された不整脈検査に必要な心電図データが180秒間のデータであり、ステップS40で150秒のデータを保存できた場合には、ステップS36において、不足分の30秒のデータを収集する。
図8Eは、収集される不足分の不整脈波形の例を示す。
【0051】
次に、ステップS37において、心電計10は、フリーズ画面に遷移する。このフリーズ画面への遷移は、ユーザー操作をトリガーとして行われる。
図8Fは、フリーズ画面の例を示す。このフリーズ画面には、ステップS40で保存された心電図データ、及び、ステップS36で収集された不足分の心電図データが結合して表示される。ユーザーは、
図8Fに示したフリーズ画面において不整脈検査の解析範囲を設定する。
【0052】
次に、心電計10は、ステップS38において、設定された解析範囲の心電図データを用いて、不整脈検査に対応した解析処理を実行する。解析結果は、表示部13に表示される。
図8Gは不整脈検査の解析結果を示す。ユーザーは、この表示された解析結果を確認する。また、心電計10は、解析結果を送受信部16を介してデータマネージメントシステム2(
図1)に送る(データ送信)。
【0053】
次に、ステップS39において、心電計10は、送受信部16からデータマネージメントシステム2にオーダー完了通知を送り、オーダーを終了する。
図8Hは、オーダー終了時の心電計10の表示画像例を示す。
【0054】
ここで、本実施の形態の心電計10の処理と、
図2に示した処理とを比較すると、
図2の処理では、12誘導検査のための波形収集及び解析の後に、不整脈検査のための180秒分の心電図データを新たに収集しなければならないが、本実施の形態の心電計10は、不整脈検査のための心電図データを12誘導の収集及び解析をしている間に保存するのでトータルの検査時間を短縮できる。つまり、本実施の形態の処理では、
図2のステップS15の時間を短縮できる。
【0055】
大病院などでは、多数の患者がいるので、一人当たりの検査に要する時間をできるだけ短くしたい要求がある。例えば、一台の心電計で一日に50人程度の患者の検査を行うことが要求される場合もある。このような場合に、本実施の形態の心電計10は、一人あたりの検査時間を短縮できるので非常に有効である。また、検査時間が短くなるので、心電用電極21が装着された患者の負担を軽減できる。
【0056】
また、本実施の形態の心電計10の処理と、
図4に示した処理とを比較すると、
図4の処理では、ステップS23及びステップS24において、ユーザーが複数のオーダー情報を確認しながら複数の検査についての解析範囲の設定を行ったり、ステップS25において、ユーザーが複数のオーダーを確認しながら複数の検査についての解析設定を行う必要がある。これに対して、
図7に示した本実施の形態の心電計10の処理では、ユーザーは、各検査ごとにオーダー情報を確認しながら、1つの検査ごとに解析範囲の設定及び解析設定を行えばよいので、換言すれば、1つの検査の設定及び解析が終わった後に次の検査の設定及び解析を行えばよいので、検査に不慣れなユーザーであっても的確に設定操作を行うことができるようになる。
【0057】
実際上、
図4に示した処理は、
図2に示した処理と比較すると、心電図データの収集時間は短いが、12誘導検査の中で不整脈検査やリズム計測検査も行うことになり、複雑な操作・判断が必要となるので、手慣れた技師がいる専門病院など以外での運用が困難であった。これに対して、本実施の形態の心電計10は、操作が簡単なので、手慣れた技師がいない医療機関での運用も可能となる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態の心電計10は、上位システム3からのオーダー情報を受信する受信部(送受信部16)と、患者の心電図データを取得する心電図データ取得部11と、心電図データを保存するデータ保存部17と、心電図データを解析する解析部12と、を有し、データ保存部17は、少なくとも解析部12がオーダー情報に含まれる第1の種類の心電図検査(例えば12誘導検査)に対応する解析処理を行っている間、オーダー情報に含まれる第2の種類の心電図検査(例えば不整脈検査)に関する区間の心電図データを収集して保存し、解析部12は、第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行った後に、データ保存部17に保存されている第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを用いて第2の種類の心電図検査に対応する解析処理を行う。
【0059】
これにより、複数種類検査を行うことができる心電計において、ユーザーによる操作を複雑化することなく、検査時間を短縮することができる。
【0060】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0061】
上述の実施の形態では、
図7に示したように、ステップS32-S35の処理を行っている間の心電図データをデータ保存部17に保存する場合について述べたが、例えばステップS31-S35の処理を行っている間の心電図データを保存してもよく、要は、データ保存部17は、少なくとも解析部12がオーダー情報に含まれる第1の種類の心電図検査に対応する解析処理を行っている間(つまり少なくともステップS34の間)、オーダー情報に含まれる第2の種類の心電図検査に関する区間の心電図データを収集して保存すればよい。
【0062】
また、上述の実施の形態では、主に、12誘導検査及び不整脈検査を実行する場合について述べたが、オーダー情報にリズム計測検査、マスター検査、負荷検査が含まれている場合にも上述の実施の形態と同様に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、上位システムからのオーダー情報に基づいて心電図検査を実行する心電計に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1、10 心電計
2 データマネージメントシステム
3 上位システム
11 心電図データ取得部
12 解析部
13 表示部
14 操作入力部
15 制御部
16 送受信部
17 データ保存部