(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】インターホン機器
(51)【国際特許分類】
H04N 23/50 20230101AFI20230510BHJP
H04M 9/00 20060101ALI20230510BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20230510BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230510BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20230510BHJP
G03B 11/04 20210101ALI20230510BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20230510BHJP
【FI】
H04N23/50
H04M9/00 D
H04M1/02 G
G03B15/00 U
G03B17/02
G03B11/04 C
G02B7/02 D
(21)【出願番号】P 2019147853
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 益典
(72)【発明者】
【氏名】水谷 行孝
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-099682(JP,A)
【文献】特開2014-192605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/50
H04M 9/00
H04M 1/02
G03B 15/00
G03B 17/02
G03B 11/04
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの前面にカメラ窓が開設されており、
前記本体ケース内に、前記カメラ窓を介して前記本体ケースの前方を撮像するようにカメラユニットが設置されたインターホン機器であって、
前記カメラユニットが、前面部と、前記前面部の外周縁から後方へ延びる周面部とを有し、前記前面部にレンズを露出させるためのレンズ孔が開設されたカメラホルダーを備えており、
前記前面部における前記レンズ孔の周縁表面に、前記レンズ孔の周縁側から径方向外側へ向かって徐々に前方へせり出す円弧状のR面が設けられているとともに、
前記R面が、半径が所定の第1半径である第1のR面と、前記第1のR面から連続的に径方向外側へ拡がっており、半径が前記第1半径よりも小さな第2半径である第2のR面とを有することを特徴とするインターホン機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば来訪者等を撮像するための撮像手段を備えたインターホン機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本体ケースにカメラを内蔵してなるインターホン機器としては、太陽光等の直射光に起因するゴーストやフレアの発生を防止するための工夫を施してなるものがある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インターホン機器におけるゴーストやフレアの発生防止という課題は、依然として課題のまま残っている。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、ゴーストやフレアの発生を抑制することができるインターホン機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、本体ケースの前面にカメラ窓が開設されており、本体ケース内に、カメラ窓を介して本体ケースの前方を撮像するようにカメラユニットが設置されたインターホン機器であって、カメラユニットが、前面部と、前面部の外周縁から後方へ延びる周面部とを有し、前面部にレンズを露出させるためのレンズ孔が開設されたカメラホルダーを備えており、前面部におけるレンズ孔の周縁表面に、レンズ孔の周縁側から径方向外側へ向かって徐々に前方へせり出す円弧状のR面が設けられているとともに、R面が、半径が所定の第1半径である第1のR面と、第1のR面から連続的に径方向外側へ拡がっており、半径が第1半径よりも小さな第2半径である第2のR面とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カメラユニットの前面部におけるレンズ孔の周縁表面に、レンズ孔の周縁側から径方向外側へ向かって徐々に前方へせり出す円弧状のR面を設けた。また、該R面が、半径が所定の第1半径である第1のR面と、第1のR面から連続的に径方向外側へ拡がっており、半径が第1半径よりも小さな第2半径である第2のR面とを有するようにした。そのため、カメラホルダーの前面部に到達した直射光が反射する際、その反射方向を分散させることができる。したがって、たとえばカメラホルダーの前方を覆うように取り付けられたカメラカバーの後面に反射光が到達したとしても、その反射光を原因としてリング状のゴーストやフレアが発生しづらくなる。すなわち、ゴーストやフレアの発生を抑制することのできるインターホン機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】インターホン子機を前方から示した説明図である。
【
図2】インターホン子機を後方から示した説明図である。
【
図3】インターホン子機の上下方向での断面を示した説明図である。
【
図4】分解状態にあるカメラユニット部分を示した説明図である。
【
図5】カメラホルダーを示した説明図であり、(a)は前方から、(b)は側方から夫々示している。
【
図6】カメラホルダーの要部端面を拡大して示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となるインターホン子機について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、インターホン子機1を前方から示した説明図であり、
図2は、インターホン子機1を後方から示した説明図である。
図3は、インターホン子機1の上下方向での断面を示した説明図である。
図4は、分解状態にあるカメラユニット10部分を示した説明図である。
図5は、カメラホルダー15を示した説明図であり、(a)は前方から、(b)は側方から夫々示している。
図6は、カメラホルダー15の要部端面を拡大して示した説明図である。
【0011】
インターホン子機1は、前側に配置される前ケース2と、後側に配置される後ケース3とを組み合わせてなる本体ケースを有しており、本体ケースの前面上部には、本体ケースに内蔵されるカメラユニット10を露出させるためのカメラ窓4が開設されているとともに、カメラ窓4を覆うように平板状のカメラカバー5が取り付けられている。また、本体ケースにおけるカメラカバー5の右側にはマイク部6が、カメラカバー5の下側にはスピーカ部7が夫々設けられている。さらに、スピーカ部7の下側には、来訪者が居住者を呼び出す際に操作する呼出ボタン8が設けられている。そして、このようなインターホン子機1は、基台9を介して住戸の玄関の壁面等に設置されており、来訪者によって呼出ボタン8が操作されると、住戸内に設置されているインターホン親機(図示せず)を呼び出すとともに、カメラユニット10を作動させて来訪者を撮像するようになっている。尚、カメラユニット10により撮像された映像は、インターホン親機に備えられているモニターに表示される。
【0012】
ここで、本発明の要部となるカメラユニット10について詳細に説明する。
カメラユニット10は、撮像素子(図示せず)が搭載されたカメラ基板11、カメラ基板11の前面側に固定されるレンズホルダー12、レンズを内蔵しており、レンズホルダー12に取り付けられるレンズ鏡筒13、及びレンズ鏡筒13のレンズホルダー12への取付状態を安定させるために、レンズ鏡筒13とレンズホルダー12との間に介在されるウェーブワッシャー14を有するカメラと、レンズを露出させた状態でカメラの前方に配される合成樹脂製のカメラホルダー15と、カメラの後方に配される合成樹脂製の角度調整部材16と、カメラホルダー15とカメラとの間に介在されるパッキン19とを備えてなる。
【0013】
カメラホルダー15の本体20は、中央にレンズ孔20cが開設された円板状の前面部20aと、前面部20aの外周縁から後方へ延設された周面部20bとを有しており、周面部20bの表面は球面とされている。一方、前面部20aの表面(前面)は、レンズ孔20cの周縁から前面部20aの外周縁に向かって円弧状に前方へせり出し、先端部を超えた箇所からは後方へ向かって直線的に傾斜するような面として形成されている。そして、円弧状の部分は、径方向内側(レンズ孔20cの周縁)に位置する半径1.0mmの第1のR面21(中心はO1)と、第1のR面21よりも半径が小さい(曲率が大きい)R面であり、第1のR面21から連続的に径方向外側へ拡がる半径0.5mmの第2のR面22(中心はO2)とで構成されている。なお、レンズ孔20cの開口縁から後方(本体20内方)へ向かっては、レンズ鏡筒13の先端側を保持する保持筒23が突設されている。また、本体20の上部及び下部の後端縁には、夫々上下外方へ突出する軸部24が設けられている。さらに、本体20の後端縁から後方へ向かって、カメラ基板11に穿設された丸孔17、17・・を貫通可能な3つのガイド突起25、25・・が突設されている。加えて、本体20の表面には、光を反射しにくくするためのコーティング処理(たとえば、つや消し加工やシボ加工、その両方等)が施されている。
【0014】
角度調整部材16は、表面が球面とされた後方へ膨出するカバー状の本体30を有しており、本体30の後面中央部には、操作摘まみ31が後方へ突設されている。また、本体31の後面で、操作摘まみ31の周囲には、複数の位置決め突起32、32・・が突設されている。さらに、角度調整部材16の外周縁でカメラホルダー15のガイド突起25、25・・と対応する位置に、夫々ガイド突起25を前側から差し込み可能とされた3つのガイド凹部33、33・・が設けられている。
【0015】
また、パッキン19は、弾性を有する合成樹脂製のリング状の部材であって、該パッキン19の内径は、レンズ鏡筒13の外径と略同じとされている。一方、パッキン19の外径は、カメラホルダー15のレンズ孔20cよりは大径で、且つ、カメラホルダー15の周面部20bよりは小径とされている。そして、パッキン19は、レンズ鏡筒13に環装させた状態で、カメラホルダー15内へ収納可能となっている。
【0016】
一方、上記カメラユニット10が設置される側の構造として、前ケース2の後面側には、カメラ窓4の開口縁から後方へ突出する支持筒41が設けられている。該支持筒41の内周面は、カメラホルダー15の周面部20bが密接可能な球面に成形されている。また、カメラ窓4の上方及び下方には、カメラユニット10のパン・チルト動作時に、カメラホルダー15の軸部24、24の回転を許容しつつ及び上下方向への移動等を案内する案内部42、42が設けられている。一方、後ケース3には、操作摘まみ31を本体ケース後方へ突出させるための操作窓43が開設されている。また、後ケース3の前面で操作窓43の周囲となる箇所には、角度調整部材16の本体30後面に密接可能とされた凹状の受け部44が設けられており、該受け部44の前面には、位置決め突起32、32・・が係合可能な多数の位置決め凹部(図示せず)が凹設されている。
【0017】
そして、上記カメラユニット10を本体ケース内へ設置するに際しては、カメラ基板11の前面にレンズホルダー12を固定した後、ウェーブワッシャー14を介在させた状態でレンズホルダー12とレンズ鏡筒13とを一体化して、まずカメラを組み立てる。次に、前ケース2の後側から、案内部42、42に軸部24、24を係合させつつ、支持筒41内へ本体20の周面部20bをはめ込んで、カメラホルダー15を取り付ける。そして、レンズ鏡筒13にパッキン19を環装させた上で、カメラホルダー15の後側から、ガイド突起25、25・・を対応する丸孔17、17・・に貫通させながら、保持筒23内へレンズ鏡筒13の先端を嵌め込むことにより、カメラホルダー15の後側にカメラを取り付ける。当該状態において、パッキン19は、保持筒23の後端とレンズホルダー12の基台部前面とにより前後から挟まれている(
図3)。また、各ガイド突起25はカメラ基板11の後側へ突出するものの、その突出量はガイド凹部33の深さより短くなっている。
【0018】
さらに、カメラ基板11の後側へ突出しているガイド突起25、25・・の先端を対応するガイド凹部33、33・・に差し込んで、カメラの後側に角度調整部材16を配置する。当該状態では、上記の如く各ガイド突起25の突出量よりもガイド凹部33の深さの方が深いため、各ガイド凹部33の周縁部がカメラ基板11の後面に当接した状態となっている。そして最後に、操作窓43から操作摘まみ31を突出させながら後ケース3を前ケース2へ組み付ければ、本体ケース内にカメラユニット10が設置される。
【0019】
上述したような設置状態において、カメラユニット10は、カメラホルダー15の本体20の周面部20bが支持筒41内面に、角度調整部材16の本体30の後面が受け部44の前面に夫々密接し、角度調整部材16の位置決め突起32、32・・が後ケース3の位置決め凹部のうちの何れかに係止した状態で、前ケース2と後ケース3とにより前後から挟持されている。そして、当該密接状態、ひいては位置決め突起32と位置決め凹部との係止状態は、保持筒23とレンズホルダー12とにより挟まれているパッキン19の弾性力によって維持されており、カメラ窓4や操作窓43からの水の浸入防止及びカメラユニット10のパン・チルト角度の保持が図られている。
【0020】
そこで、カメラユニット10のパン・チルト角度を調整したい場合には、角度調整部材16の操作摘まみ31を摘まむ等して、パッキン19の弾性力に抗して角度調整部材16を前方(本体ケース内方)へ押し込み、位置決め突起32、32・・と位置決め凹部との係止状態を解除した後、角度調整部材16の姿勢を変えればよい。この角度調整部材16の押し込みは、ガイド突起25、25・・の先端とガイド凹部33、33・・の底との間の隙間によって可能となる。また、ガイド突起25、25・・がガイド凹部33、33・・に差し込まれていることで、角度調整部材16の姿勢変化に連係してカメラホルダー15の姿勢も変わる。したがって、角度調整部材16の姿勢を変えることで、カメラユニット10のパン・チルト角度を所望の角度に調整することができる。その後は、その姿勢のまま角度調整部材16の押し込みを解除すれば、パッキン19の弾性力によって再び角度調整部材16が後ケース3内面に押し付けられ、位置決め突起32、32・・が当初とは別の位置決め凹部に係止して、当該パン・チルト角度のまま保持されることになる。
【0021】
以上のような構成を有するインターホン子機1によれば、カメラホルダー15の前面部20aの表面を、レンズ孔20cの周縁から前面部20aの外周縁に向かって円弧状に前方へせり出し、先端部を超えた箇所からは後方へ向かって直線的に傾斜するような面として形成した。そして、円弧状の部分を、径方向内側に位置する半径1.0mmの第1のR面21と、第1のR面21よりも半径が小さいR面であり、第1のR面21から連続的に径方向外側へ拡がる半径0.5mmの第2のR面22とで構成した。したがって、たとえばカメラホルダー15の前方を覆うように取り付けられたカメラカバー5の後面に反射光が到達したとしても、その反射光を原因としてリング状のゴーストやフレアが発生しづらくなる。すなわち、ゴーストやフレアの発生を抑制することのできるインターホン子機1とすることができる。
【0022】
なお、本発明に係るインターホン機器は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、インターホン機器全体の構成は勿論、カメラホルダーに係る構成に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0023】
たとえば、上記実施形態では、カメラホルダーのレンズ孔の周縁から先端部にかけて全てR面として構成しているが、全てをR面とするのではなく、レンズ孔の周縁際については徐々に後方へ傾斜する平坦な傾斜面として構成することも可能である。
また、上記実施形態では、R面を形成するにあたり、第1のR面と第2のR面との2種類のR面を連続させるとしているが、半径が異なる3種類以上のR面を連続させることで、反射方向を更に分散させるように構成することも可能であり、そのように3種類以上のR面が連続して設けられてなるものであっても、第1のR面が設けられているとともに、その第1のR面の径方向で外側に、第1のR面よりも半径の小さな第2のR面が連続してさえいれば、本発明の範囲内となる。
【0024】
さらに、上記実施形態では、カメラホルダーとその前に位置するカメラカバーとの前後方向での距離について言及していないが、カメラホルダーとカメラカバーとの前後方向での距離を4.0mm以下にすることで更に高いゴーストやフレアの抑止効果を発揮することができる。
加えて、上記実施形態では、インターホン機器の一例であるインターホン子機について説明しているが、本発明のインターホン機器は、カメラを内蔵しているのであれば、インターホン子機や集合住宅インターホンシステムを構成する集合玄関機等の他のインターホン機器に対しても良好に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1・・インターホン子機(インターホン機器)、2・・前ケース(本体ケース)、3・・後ケース(本体ケース)、4・・カメラ窓、10・・カメラユニット、15・・カメラホルダー、20・・本体、20a・・前面部、20b・・周面部、20c・・レンズ孔、21・・第1のR面、22・・第2のR面。