(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20230510BHJP
B63C 11/02 20060101ALI20230510BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
G01B11/00 H
B63C11/02
B64D47/08
(21)【出願番号】P 2019152777
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道前 武尊
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-020195(JP,A)
【文献】特開2011-245887(JP,A)
【文献】特開2000-121732(JP,A)
【文献】特開2017-131115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01V 1/00-99/00
B63C 1/00-15/00
B63G 1/00-13/02
B64B 1/00-1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00-5/60
B64G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面の上空を飛行する飛行体に設けられて前記水面に向いている撮像装置が映している画像から当該画像に映っている泡を認識する認識部と、
前記泡の認識結果に基づいて当該泡の内部の気体を排出した潜水士の位置を報知するための報知処理を行う報知部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記認識部により前記泡が認識されない場合に、前記泡が認識されるまで前記画像に映っている範囲を変動させる変動処理を行う変動部を備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記報知部は、前記画像に前記泡が映る状態を維持するように前記飛行体の飛行を制御する処理を前記報知処理として行う
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記報知部は、前記画像内の特定の範囲に前記泡が映る状態を維持するように前記飛行体の飛行を制御する処理を前記報知処理として行う
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記飛行体の飛行高度、前記飛行体の向き及び前記画像内の前記泡の位置によって特定される前記潜水士の位置を示す位置情報を出力する処理を前記報知処理として行う
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記報知部は、前記泡の認識結果に基づいて2人以上の潜水士の位置が特定される場合に、所定の領域に近い潜水士の位置を優先して報知するための処理を前記報知処理として行う
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記泡の認識結果に基づいて潜水士の異常が検知される場合に、当該異常が生じた旨を報知するための異常報知処理を行う異常報知部を備える
請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記画像に映る領域における水流の情報を取得する取得部を備え、
前記報知部は、取得された前記情報が示す水流により求められる前記泡の上昇中の移動と、前記飛行体の飛行高度、前記飛行体の向き及び前記画像内の前記泡の位置とによって特定される前記潜水士の位置を示す情報を前記位置情報として出力する
請求項5に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイバーが携帯する発光装置から水深及び発光角度を表す可視光を発光させ、受信された可視光が表す推進及び発光角度に基づきダイバーの平面視位置方向、相対深度及び水平距離を算出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば海上の施工現場においては、海底に構造物を設置する際又は基礎を均す際等に潜水士が水中で作業を行う場合がある。その際、工事区域内又は隣接工事区域において複数の作業が並行して行われるため、潜水士の位置を把握していないと重大な事故が発生するおそれがある。特許文献1の技術はそのように潜水士の位置を把握するための技術であるが、この技術では、潜水士に携帯させた発光装置が水中での作業の邪魔になる可能性がある。
そこで、本発明は、潜水士に特別な装置を持たせなくとも潜水士の位置を把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る情報処理装置は、水面の上空を飛行する飛行体に設けられて前記水面に向いている撮像装置が映している画像から当該画像に映っている泡を認識する認識部と、前記泡の認識結果に基づいて当該泡の内部の気体を排出した潜水士の位置を報知するための報知処理を行う報知部とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る情報処理装置は、請求項1に記載の態様において、前記認識部により前記泡が認識されない場合に、前記泡が認識されるまで前記画像に映っている範囲を変動させる変動処理を行う変動部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る情報処理装置は、請求項1又は2に記載の態様において、前記報知部は、前記画像に前記泡が映る状態を維持するように前記飛行体の飛行を制御する処理を前記報知処理として行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る情報処理装置は、請求項3に記載の態様において、前記報知部は、前記画像内の特定の範囲に前記泡が映る状態を維持するように前記飛行体の飛行を制御する処理を前記報知処理として行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る情報処理装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の態様において、前記報知部は、前記飛行体の飛行高度、前記飛行体の向き及び前記画像内の前記泡の位置によって特定される前記潜水士の位置を示す位置情報を出力する処理を前記報知処理として行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る情報処理装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の態様において、前記報知部は、前記泡の認識結果に基づいて2人以上の潜水士の位置が特定される場合に、所定の領域に近い潜水士の位置を優先して報知するための処理を前記報知処理として行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る情報処理装置は、請求項1から6のいずれか1項に記載の態様において、前記泡の認識結果に基づいて潜水士の異常が検知される場合に、当該異常が生じた旨を報知するための異常報知処理を行う異常報知部を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項8に係る情報処理装置は、請求項5に記載の態様において、前記画像に映る領域における水流の情報を取得する取得部を備え、前記報知部は、取得された前記情報が示す水流により求められる前記泡の上昇中の移動と、前記飛行体の飛行高度、前記飛行体の向き及び前記画像内の前記泡の位置とによって特定される前記潜水士の位置を示す情報を前記位置情報として出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、潜水士に特別な装置を持たせなくとも潜水士の位置を把握することができる。
請求項2に係る発明によれば、潜水士の位置が分かっていない状態から潜水士の位置を見つけることができる。
請求項3に係る発明によれば、飛行体の位置を見ることで潜水士の位置を把握することができる。
請求項4に係る発明によれば、特定の範囲外に泡が映る状態が維持される場合に比べて、より精度の高い潜水士の位置を把握することができる。
請求項5に係る発明によれば、表示される位置情報を見ることで潜水士の位置を把握することができる。
請求項6に係る発明によれば、報知に優先度を付けない場合に比べて、危険な領域への潜水士の接近を防ぎやすくすることができる。
請求項7に係る発明によれば、異常報知処理がされない場合に比べて、潜水士の異常に迅速に対処することができる。
請求項8に係る発明によれば、水流を考慮しない場合に比べて、より正確な潜水士の位置を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例に係る潜水土位置監視システムの全体構成を表す図
【
図5】潜水士位置監視システムにおいて実現される機能構成を表す図
【
図10】潜水士の位置の特定方法の別の一例を表す図
【
図14】位置出力処理における動作手順の一例を表す図
【
図15】変形例で表示された位置情報の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1]実施例
図1は実施例に係る潜水士位置監視システム1の全体構成を表す。潜水士位置監視システム1は、水中で作業する潜水士の位置を監視するためのシステムである。海又は湖等の潜水が可能な深さになる程の大量の水が存在する領域において工事が行われる場合、水中での作業を支援するために潜水士が潜水する。
【0016】
水中での作業とは、例えば水底に構造物を設置する作業又は水中で基礎を均す作業等である。上記の工事では、潜水士の位置を把握していないと重大な事故が発生するおそれがあるため、潜水士位置監視システム1は、潜水士の位置を監視し、海上にいる作業員たちに潜水士の位置を報知するための処理(以下「報知処理」と言う)を行う。潜水士位置監視システム1は、通信回線2と、サーバ装置10と、ドローン20と、作業員端末30とを備える。
【0017】
通信回線2は、移動体通信網及びインターネット等を含む通信システムであり、自システムと通信する装置等(=装置、端末及びシステム等)同士のデータのやり取りを中継する。通信回線2には、サーバ装置10が有線通信で接続し、ドローン20が無線通信で接続している。なお、各装置と通信回線2との通信は、有線通信及び無線通信のどちらでもよい。
【0018】
特に、潜水士の作業がドローン20のバッテリーによる飛行可能時間よりも長時間に及ぶ場合は、ドローン20に電力を供給するケーブルを接続し、そのケーブルを通信にも兼用して、有線通信の接続を行う。なお、バッテリーで飛行させる場合であっても、バッテリー切れに合わせて新たに別のドローン20を飛行させ交代させるようにしてもよい。ドローン20は、1以上の回転翼を回転させて飛行する回転翼機型の飛行体であり、上下、左右、前後及び斜めを含むあらゆる方向へ移動する飛行及び空中の特定の位置で静止する飛行(いわゆるホバリング)等の飛行を行う。
【0019】
ドローン20は、デジタルカメラ等の撮像装置を備えており、潜水士が作業を行う作業領域の上空を飛行しながら、撮像装置に映る画像をサーバ装置10に送信する。サーバ装置10は、潜水士の位置を監視するため処理を行う装置であり、本発明の「情報処理装置」の一例である。サーバ装置10は、ドローン20から送信されてきた画像を解析して、潜水士の位置を特定し、特定した潜水士の位置を海上にいる作業員に報知する報知処理を行う。
【0020】
サーバ装置10は、本実施例では、2つの報知処理を行う。サーバ装置10は、特定した作業員の位置の上空にドローン20を飛行させる飛行制御処理と、特定した作業員の位置を示す位置情報を作業員端末30に送信する送信処理とを報知処理として行う。作業員端末30は、作業現場で作業員が利用する端末であり、サーバ装置10から送信されてきた位置情報を表示する。作業員は、ドローン20の飛行位置及び表示された位置情報によって潜水士の位置を把握する。
【0021】
図2はサーバ装置10のハードウェア構成を表す。サーバ装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14とを備えるコンピュータである。プロセッサ11は、例えば、CPU(=Central Processing Unit)等の演算装置、レジスタ及び周辺回路等を有する。メモリ12は、プロセッサ11が読み取り可能な記録媒体であり、RAM(=Random Access Memory)及びROM(=Read Only Memory)等を有する。
【0022】
ストレージ13は、プロセッサ11が読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等を有する。プロセッサ11は、RAMをワークエリアとして用いてROMやストレージ13に記憶されているプログラムを実行することで各ハードウェアの動作を制御する。通信装置14は、アンテナ及び通信回路等を有し、通信回線2を介した通信を行う。
【0023】
図3はドローン20のハードウェア構成を表す。ドローン20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信装置24と、飛行装置25と、センサ装置26と、撮像装置27とを備えるコンピュータである。プロセッサ21から通信装置24までは、
図2に表すプロセッサ11から通信装置14までと同種のハードウェア(但しドローン用に小型化及び軽量化されたもの)である。
【0024】
飛行装置25は、モータ及びローター等を備え、自機を飛行させる装置である。飛行装置25は、空中において、あらゆる方向に自機を移動させたり、自機を静止(ホバリング)させたりすることができる。センサ装置26は、飛行制御に必要な情報を取得するセンサ群を有する装置である。センサ装置26は、例えば、自機の位置(緯度及び経度)を測定するGPS(=Global Positioning System)等の位置センサを備える。
【0025】
また、センサ装置26は、自機が向いている方向(ドローンには自機の正面方向が定められており、定められた正面方向が向いている方向)を測定する方向センサを備える。また、センサ装置26は、自機の高度を測定する高度センサと、自機の速度を測定する速度センサとを備える。また、センサ装置26は、3軸の角速度及び3方向の加速度を測定する慣性計測センサ(IMU(Inertial Measurement Unit))を備える。
【0026】
撮像装置27は、イメージセンサ及び光学系の部品等を備え、レンズが向いている方向にある物体を撮影する(いわゆるデジタルカメラ又はデジタルビデオ)。ここでいう撮影には、イメージセンサが検出した画像を静止画像又は動画像としてストレージ23等に記憶させる記憶動作だけでなく、記憶動作と共に又は記憶動作に代えて、イメージセンサが検出した画像をストリーミング技術で送信し続ける送信動作も含む。
【0027】
撮像装置27は、本実施例では、飛行時に自機の鉛直下方側になる部分に設けられ、固定された所定の方向に光軸を向け、自機の真下を含む領域を撮影する。つまり、撮像装置27は、自機が水平を保つ状態では、自機の真下に存在する物体を撮影するように設けられている。例えば画角が±15度だとすると、光軸の向きは俯角-90度(真下向き)から-75度までの間の角度となる。また、撮像装置27は、電源のオンオフが制御可能になっている。
【0028】
図4は作業員端末30のハードウェア構成を表す。作業員端末30は、プロセッサ31と、メモリ32と、ストレージ33と、通信装置34と、UI(=User Interface)装置35とを備えるコンピュータである。プロセッサ31から通信装置34までは、
図3に表すプロセッサ21から通信装置24までと同種のハードウェアである。UI装置35は、自装置を利用するユーザに対して提供されるインターフェースである。
【0029】
UI装置35は、例えば、表示手段であるディスプレイと、ディスプレイの表面に設けられたタッチパネルとを有するタッチスクリーンを有し、画像を表示するとともに、ユーザからの操作を受け付ける。また、UI装置35は、タッチスクリーン以外にも、キーボード等の操作子を有し、それらの操作子への操作を受け付ける。潜水士位置監視システム1においては、上記の各装置のプロセッサがプログラムを実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
【0030】
図5は潜水士位置監視システム1において実現される機能構成を表す。サーバ装置10は、飛行指示部101と、泡認識部102と、位置特定部103と、位置情報出力部104とを備える。ドローン20は、飛行制御部201と、センサ測定部202と、画像取得部203と、画像送信部204とを備える。作業員端末30は、位置情報表示部301を備える。
【0031】
サーバ装置10の飛行指示部101は、ドローン20に対する飛行指示を行う。飛行指示とは、飛行方向、飛行速度、飛行高度、飛行経路及び静止位置等のうちの1以上を指示することである。飛行指示部101は、本実施例では、潜水士の呼気を含む泡を探索する際の飛行指示と、探索された泡を追従する際の飛行指示とを行う。追従時の飛行指示は後程説明するので、まずは探索時の飛行指示について説明する。
【0032】
工事は綿密な計画を立てて行われるので、潜水士が水中で作業する予定の範囲も予め決まっている。そこで、例えば作業員の一人が潜水士の作業予定の範囲を示す範囲情報を予めサーバ装置10に入力しておく。範囲情報とは、例えば作業予定の範囲の境界線を緯度及び経度を用いて示す情報である。
【0033】
図6は作業予定の範囲の一例を表す。
図6の例では、鉛直上方から見た作業予定の範囲A1が表されている。範囲A1は四角形の範囲であるため、例えば各頂点の緯度及び経度が範囲情報として示されればよい。なお、水深に応じて作業予定の範囲が変化する場合(例えば水深が深いほど範囲が狭くなる場合)では、潜水士がいる可能性がある最も広い範囲を示す範囲情報がサーバ装置10に記憶されていればよい。
【0034】
飛行指示部101は、範囲A1の全域の画像が取得されるようにドローン20を飛行させる指示を探索時の飛行指示として行う。
図6には、ドローン20が所定の高度で飛行した場合に撮像装置27の画角に含まれる範囲が画角範囲B1として表されている。所定の高さとは、潜水士が排出した呼気を含む泡が水面又は水面近くの水中まで上昇してきた場合に、撮像装置27が映す画像においてその泡が認識可能な程度の高さである。
【0035】
図6に表す飛行経路C1は、範囲A1の角から出発し、範囲A1の長辺に沿って飛行して向かいの短辺に到達すると短辺方向の位置をずらしてUターンする飛行を繰り返す経路である。飛行経路C1に沿ってドローン20が飛行すると、画角範囲B1が作業予定の範囲A1の全域を一度は通過することになる。飛行指示部101は、この飛行経路C1に沿って飛行する指示を探索時の飛行指示として行う。
【0036】
なお、ドローン20が範囲A1内を飛行経路C1に沿って飛行した際に、潜水士が排出した泡が認識されなかった場合には、再度範囲A1の出発地点に戻って飛行経路C1に沿っての飛行を繰り返すように探索時の飛行指示がなされてもよい。その場合、ドローン20は、泡が認識されるまで範囲A1を飛行し続ける(但しバッテリーが切れる前に帰還することも飛行指示に含まれているものとする)。
【0037】
なお、本実施例では、範囲A1、すなわち潜水士の作業予定の範囲の上空においては工事用の構造物及び機械等との衝突の危険がないものとする。飛行指示部101は、飛行経路C1、飛行高度及び飛行速度を飛行指示として示す指示データを生成してドローン20に送信する。ドローン20の飛行制御部201は、送信されてきた指示データが示す指示、すなわち、飛行指示部101からの飛行指示に従い飛行するように自機の飛行を制御する。
【0038】
飛行制御部201は、センサ測定部202に飛行に必要な測定を開始するよう指示する。センサ測定部202は、
図3に表すようにセンサ装置26により、自機の位置、方向、高度、速度、加速度及び角速度を測定する。センサ測定部202は、測定した各値を飛行制御部201に供給する。飛行制御部201は、例えば測定される高度が指示データの示す飛行高度を維持するように自機の高度を制御する(高度制御)。
【0039】
また、飛行制御部201は、測定される速度が指示データの示す飛行速度を維持するように自機の飛行速度を制御する(速度制御)。また、飛行制御部201は、測定される方向が指示データの示す飛行経路C1の進行方向に向くように自機の飛行方向を制御し、指示データの示す飛行経路C1からずれた位置が測定された場合には飛行経路C1に戻るように自機の飛行方向を制御する(方向制御)。
【0040】
飛行制御部201は、飛行を開始するとともに、画像の取得を開始するよう画像取得部203に指示する。画像取得部203は、この指示を受け取ると、撮像装置27の電源をオンにして、撮像装置27が映す画像の取得を開始する。画像取得部203は、撮像装置27が映す画像を取得しながら、並行して、取得した画像を画像送信部204に供給する。また、飛行制御部201は、飛行制御に用いた自機の位置、向き及び飛行高度を示す情報(以下「飛行情報」と言う)を画像送信部204に供給する。
【0041】
画像送信部204は、供給された画像及び飛行情報をサーバ装置10に送信する。画像送信部204は、新たな画像及び飛行情報が供給される度にこの送信を行う。サーバ装置10は、送信されてきた画像及び飛行情報を泡認識部102に供給する。泡認識部102は、水面の上空を飛行する飛行体であるドローン20に設けられて水面に向いている撮像装置27が映している画像からその画像に映っている泡を認識する。泡認識部102は本発明の「認識部」の一例である。
【0042】
図7は取得された画像の一例を表す。
図7の例では、泡領域群E1が映った画像D1が表されている。泡領域群E1には、水面に到達した泡だけでなく、水面に向けて水中を浮上中の泡も含まれている。泡を鉛直上方(真上)から見た場合、水面の泡も水中の泡も円形又は円形に近い形をしている。また、泡を斜めから見ると、水面まで到達した泡であれば半円に近くなり、水中の泡は円形又は楕円形に近くなる。
【0043】
一方で、水面及び水中(水面に近い領域)には、円形、半円又は楕円形に近い形をした物体はほとんど存在しない。そこで、泡認識部102は、周知の画像処理技術を用いて、画像D1内の輪郭を検出し、検出した輪郭が囲む領域のうち円形、半円又は楕円形との類似度が閾値以上の領域を、画像D1内の泡領域として特定する。泡認識部102は、例えば、撮像装置27の光軸の俯角が大きいほど(真上に近い方向から撮影される場合ほど)円形に近い形を用いて泡領域を特定する。
【0044】
泡認識部102は、
図7の例であれば、大小合わせて複数の泡領域を、泡領域群E1として特定する。泡認識部102は、泡領域群E1の画像D1内の位置を算出する。
図8は泡領域群E1の位置の一例を表す。
図8の例では、画像D1の中心を原点O1(0、0)とした平面直角座標系によって各画素の位置が座標で表されている。原点O1は、ドローン20が備えるGPS等の位置センサが測定する位置の水平方向成分(緯度及び経度)と一致しているものとみなされる。
【0045】
図8の平面直角座標系においては、画像D1のX軸上の端の点I1、I2の座標が(Xm、0)と(-Xm、0)であり、画像D1のY軸上の端の点I3、I4の座標が(0、Ym)と(0、-Ym)であり、泡領域群E1の中心点F1の座標が(x1、y1)であることが表されている。
【0046】
泡認識部102は、例えば泡領域群E1に含まれる全ての画素のX座標の平均値及びY座標の平均値を中心点F1のX座標及びY座標として算出する。なお、泡認識部102は、泡領域群E1に外接する図形(四角形又は円形等)の中心の座標を中心点F1の座標として算出してもよい。取得された画像に泡が映っていなければ、泡認識部102は、泡を認識しない。
【0047】
ドローン20が飛行を開始してしばらくは泡が認識されないが、潜水士の近くにくると、潜水士の呼気を含む泡が画像に映るようになり、泡認識部102が泡を認識する。なお、潜水士の呼気を含む泡は、潜水士が息を吐く間隔(数秒に1回程度)で現れるので、泡が途切れる期間も生じ得るが、作業予定の範囲内のどの箇所についても少なくとも呼吸の間隔よりも長い時間画像に映る速度でドローン20を飛行させることで、呼気による泡を見逃すことがなくなる。
【0048】
泡認識部102は、泡を認識すると、上記のとおり泡領域群E1の中心点F1の座標を算出し、算出した中心点F1の座標を、飛行情報と共に位置特定部103に供給する。位置特定部103は、供給された飛行情報が示すドローン20の位置、向き及び飛行高度と、中心点F1の座標が示す画像内の泡の位置に基づいて潜水士の位置を特定する。潜水士の位置の特定方法について
図9、
図10を参照して説明する。
【0049】
図9は潜水士の位置の特定方法の一例を表す。
図9では、撮像装置27の光軸が鉛直下方(真下)を向いている場合について説明する。
図9では、撮像装置27と、X軸に沿った方向から見た仮想の画像D1と、水面G1との関係を模式的に表している。
図9では、水面G1と撮像装置27との距離を飛行高度H1とみなし、また、撮像装置27のY軸に沿った方向の画角を±θ1としている。
【0050】
図9には、撮像装置27から画像D1上の泡領域群E1の中心点F1に向かう直線状に、実際に水面G1に浮いてきた泡の中心点J1が位置している。水面G1のうちの、撮像装置27から原点O1に向かう直線状に位置する点J2(撮像装置27の鉛直下方(真下)の点)と、撮像装置27から画像D1のY軸上の端の点I4(0、-Ym)に向かう直線状に位置する点J3との実際の距離L1は、H1×tanθ1で算出される。
【0051】
また、点J2及び中心点J1のY軸方向の距離をL2とすると、距離L1:距離L2=Ym:y1と表される。位置特定部103は、以上の関係を用いて、H1×tanθ1÷Ym×y1=距離L2を算出する。距離L2は、撮像装置27の真下の点J2と泡の中心点J1とのY軸方向の距離を表している。位置特定部103は、同様にして、撮像装置27の真下の点J2と泡の中心点J1とのX軸方向の距離L3(図示せず)も算出する。
【0052】
撮像装置27の真下の点J2は、ドローン20と同じ緯度及び経度の位置である。本実施例では撮像装置27がドローン20に固定されているため、ドローン20の向きとX軸方向及びY軸方向との関係が一定になる。そこで、位置特定部103は、飛行情報が示すドローン20の向きから、X軸方向及びY軸方向の実際の方位を特定する。
【0053】
そして、位置特定部103は、飛行情報が示すドローン20の緯度及び経度を、算出した距離L2だけY軸方向にずらし、算出した距離L3だけX軸方向にずらした位置を潜水士の位置として特定する。このように、位置特定部103は、本実施例では、泡の位置の真下に潜水士がいるものとして、潜水士の位置を特定する。
【0054】
図10は潜水士の位置の特定方法の別の一例を表す。
図10では、撮像装置27の光軸が鉛直下方(真下)よりも角度θ2だけ傾いている場合について説明する。
図10においては、飛行高度H2と、水面G1に浮いてきた泡の中心点J11と、撮像装置27から原点O1に向かう直線状に位置する点J12と、撮像装置27から点I4(0、-Ym)に向かう直線状に位置する点J13とが表されている。
【0055】
また、
図10の例では、
図9の例と異なり、点J12とは別に、撮像装置27の鉛直下方(真下)の点J14が表されている。位置特定部103は、以上の関係を用いて、H2×tanθ2=距離L11を算出し、距離L11を用いて(H2^2+L11^2)の平方根=距離L12を算出する(「^2」は2乗を表す)。次に、位置特定部103は、距離L12を用いて距離L12×cosθ1=距離L13を算出する。
【0056】
そして、位置特定部103は、仮想の画像D1におけるY座標Ymを距離L13とした場合のY座標y1に相当する距離L14=距離L13÷Ym×y1を算出する。本実施例では、位置特定部103は、算出した距離L14と泡の中心点J11と点J12との距離L15とは極めて近い値になるので、距離L14を距離L15とみなし、撮像装置27の真下の点J14と泡の中心点J11との距離L16=距離L11+距離L14を算出する。
【0057】
位置特定部103は、同様にして、撮像装置27の真下の点J14と泡の中心点J11とのY軸方向の距離L17も算出する。位置特定部103は、飛行情報が示すドローン20の緯度及び経度を、算出した距離L16だけY軸方向にずらし、算出した距離L17(図示せず)だけX軸方向にずらした位置を、潜水士の位置として特定する。
【0058】
なお、位置特定部103は、上記方法以外にも、ドローン20の位置、向き及び飛行高度と、撮像装置の画像とに基づいて周囲の物体の位置を特定することが可能な周知の技術(例えば拡張現実で用いられる技術)を用いて潜水士の位置を特定してもよい。位置特定部103は、特定した潜水士の位置を示す位置情報(緯度及び経度の情報)を飛行指示部101に供給する。
【0059】
飛行指示部101には、泡が認識されるようになると、上記のとおり位置特定部103から位置情報が繰り返し供給される。飛行指示部101は、供給された位置情報が示す潜水士の位置の鉛直上方(真上)にドローン20が位置するように飛行を指示する指示データを、上述した追従時の指示データとして生成してドローン20に送信する。ドローン20の飛行制御部201は、指示されたように、指示データが示す潜水士の位置と自機の位置とが鉛直上に一致する(つまり潜水士の位置の真上を飛行する)ように自機の飛行を制御する。
【0060】
以上のとおり、飛行指示部101は、泡認識部102により泡が認識されない場合に、ドローン20を
図6に表す飛行経路C1で飛行させることで、泡が認識されるまで画像に映っている範囲を変動させる処理(以下「変動処理」と言う)を行う。この場合の飛行指示部101は本発明の「変動部」の一例である。変動処理が行われることで、潜水士の位置が分かっていない状態からでも潜水士の位置を見つけることができる。
【0061】
また、ドローン20の撮像装置27は、上述したとおり、自機の真下を含む領域を撮影するように設けられている。そのため、一度泡が認識されてドローン20が潜水士の位置の鉛直上方を飛行するようになると、画像内の特定の範囲(本実施例では自機の真下が映る領域)に泡が映る状態が維持されるようになる。また、潜水士の位置の鉛直上方をドローン20が飛行していると、海上にいる作業者は、ドローン20の位置によって潜水士の位置を把握することができる。
【0062】
つまり、ドローン20の位置は、潜水士の位置を海上にいる周囲の人間に報知する役割を果たしている。このように、飛行指示部101は、泡の認識結果に基づいてその泡の内部の気体(呼気)を排出した潜水士の位置を報知するための報知処理として、画像に泡が映る状態を維持するようにドローン20の飛行を制御する処理を行っている。このように、飛行指示部101は本発明の「報知部」の一例でもある。
【0063】
画像に泡が映る状態を維持されると、ドローン20と泡との位置関係が一定に保たれるようになる。そのため、海上にいる周囲の作業員は、ドローン20の位置を見ることで、潜水士の位置を把握することができる。また、画像内の特定の範囲に泡が映る状態が維持されることで、特定の範囲外に泡が映る状態が維持される場合に比べて、より精度の高い潜水士の位置を把握することができる。
【0064】
位置特定部103は、特定した潜水士の位置情報を、位置情報出力部104にも供給する。位置情報出力部104は、供給された位置情報、すなわち、ドローン20の飛行高度、ドローン20の向き及びドローン20の撮像装置27が映している画像内の泡の位置によって特定される潜水士の位置を示す位置情報を出力する。位置情報出力部104は、本実施例では、作業員端末30に対して位置情報を出力する。
【0065】
作業員端末30の位置情報表示部301は、出力されてきた位置情報をディスプレイに表示させる。
図11は表示された位置情報の一例を表す。
図11の例では、位置情報表示部301は、潜水士位置監視システムの画面として、工事区域の地
図M1に重畳させて重機K1と、潜水士の位置P1(星印で表されている)とを表示させている。重機K1の設置位置は決まっているので、位置情報表示部301は、地図の画像の該当する位置に重機K1を重畳させて表示させている。
【0066】
また、位置情報表示部301は、位置情報が出力されてくるたびに、その位置情報が示す位置に潜水士の位置P1を表示させる。これにより、作業員端末30を利用する作業員に対して潜水士の位置が報知されることになる。このように、位置情報出力部104も、本発明の「報知部」の一例である。以上のとおり、作業員は、ドローン20が飛行している位置又は作業員端末30に表示される潜水士の位置P1を見ることで、潜水士の位置を把握することができる。
【0067】
潜水士位置監視システム1が備える各装置は、泡を探索する探索処理と、泡を追従する追従処理と、潜水士の位置情報を出力する位置出力処理とを行う。
図12は探索処理における動作手順の一例を表す。探索処理は、サーバ装置10及びドローン20によって行われる。まず、サーバ装置10(飛行指示部101)は、ドローン20に対して
図6で説明したような探索時の飛行指示を示す指示データを生成し(ステップS11)、生成した指示データをドローン20に対して出力する(ステップS12)。
【0068】
ドローン20(センサ測定部202)は、自機が備えるGPS等のセンサによる位置等の測定を行う(ステップS13)。ドローン20(飛行制御部201)は、測定結果を用いて、ステップS12で送信されてきた指示データが示す探索時の指示に従い飛行するように自機の飛行を制御する(ステップS14)。続いて、ドローン20(画像取得部203)は、自機が備える撮像装置27が映す画像を取得する(ステップS15)。
【0069】
次に、ドローン20(画像送信部204)は、取得された画像及び飛行情報(飛行制御に用いた自機の位置、向き及び飛行高度を示す情報)をサーバ装置10に送信する(ステップS16)。ステップS13からS16までの動作は繰り返し行われる。サーバ装置10(泡認識部102)は、送信されてきた画像からその画像に映っている泡を認識するための泡認識処理を行う(ステップS17)。
【0070】
泡認識処理が行われると、画像に泡が映っている場合は泡が認識されるが、画像に泡が映っていない場合は泡が認識されない。サーバ装置10(泡認識部102)は、泡認識処理により泡を認識したか否かを判断し(ステップS18)、認識した(YES)と判断するまでステップS17の動作を繰り返す。サーバ装置10(泡認識部102)が認識した(YES)と判断すると、探索処理は終了し、続いて、追従処理が開始される。
【0071】
図13は追従処理における動作手順の一例を表す。追従処理も、サーバ装置10及びドローン20によって行われる。追従処理においては、まず、サーバ装置10(位置特定部103)は、
図12のステップS16で送信されてきた飛行情報が示すドローン20の位置及び飛行高度と、認識された泡の位置に基づいて潜水士の位置を特定する(ステップS21)。次に、サーバ装置10(飛行指示部101)は、特定された潜水士の位置の鉛直上方にドローン20が位置するように飛行を指示する指示データを、追従時の指示データとして生成し(ステップS22)、ドローン20に送信する(ステップS23)。
【0072】
ドローン20(センサ測定部202)は、自機が備えるセンサによる位置等の測定を行う(ステップS24)。ドローン20(飛行制御部201)は、測定結果を用いて、ステップS23で送信されてきた指示データが示す追従時の指示に従い飛行するように自機の飛行を制御する(ステップS25)。続いて、ドローン20(画像取得部203)は、自機が備える撮像装置27が映す画像を取得する(ステップS26)。
【0073】
次に、ドローン20(画像送信部204)は、取得された画像及び飛行情報(飛行制御に用いた自機の位置、向き及び飛行高度を示す情報)をサーバ装置10に送信する(ステップS27)。ステップS24からS27までの動作は繰り返し行われる。サーバ装置10(泡認識部102)は、送信されてきた画像からその画像に映っている泡を認識するための泡認識処理を行う(ステップS28)。
【0074】
サーバ装置10(泡認識部102)は、泡認識処理により泡を認識したか否かを判断し(ステップS29)、認識した(YES)と判断すると、ステップS21(潜水士の位置の特定)まで戻って動作を繰り返す。サーバ装置10は、ステップS29で認識しない(NO)と判断すると、追従処理における動作手順を終了する。以上の追従処理と並行して、位置出力処理が行われる。
【0075】
図14は位置出力処理における動作手順の一例を表す。位置出力処理は、サーバ装置10及び作業員端末30によって行われる。まず、サーバ装置10(位置特定部103)は、
図13のステップS21の動作(潜水士の位置の特定)を行う。次に、サーバ装置10(位置情報出力部104)は、特定された潜水士の位置を示す位置情報を作業員端末30に対して出力する(ステップS31)。作業員端末30(位置情報表示部301)は、出力されてきた位置情報を
図11に表すようにディスプレイに表示させる(ステップS32)。
【0076】
本実施例では、上記のとおり、潜水士が吐く呼気を含む泡を認識することでその潜水士の位置が、海上にいる周囲の作業員に報知される。これにより、潜水士に例えば電波や光を発する装置等の特別な装置を持たせなくとも潜水士の位置を把握することができる。
【0077】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
【0078】
[2-1]撮像装置
ドローンが備える撮像装置は、実施例で述べたものに限らない。例えば、実施例の撮像装置27はドローン20に対して向きが固定されていたが、撮像装置がドローンに対して可動になっていてもよい。その場合、例えばドローンの正面方向に対する撮像装置の光軸の向きがセンサ装置によって測定されることで、撮像装置の光軸が向いている方位及び俯角が求められる。
【0079】
撮像装置の光軸の方位及び俯角が求められると、位置特定部103は、実施例と同様に、ドローン20の位置、向き及び飛行高度と、認識された泡領域群の中心点の座標が示す画像内の泡の位置に基づいて潜水士の位置を特定することができる。また、撮像装置がズーム機能及び振動防止機能等の機能を備えていてもよい。また、複数の撮像装置がドローンに設けられていてもよい。
【0080】
[2-2]変動処理
泡が認識されるまで画像に映っている範囲を変動させる変動処理は、実施例で述べた処理に限らない。例えば、飛行指示部101が、探索時は飛行高度を高くして飛行させる指示を行うことで、画像に映る範囲を広くして、飛行距離が短くなるようにしてもよい。
【0081】
探索時の飛行高度は、撮像装置27が映す画像において泡が認識可能な高さの範囲でなるべく高くすることが望ましい。探索時の飛行高度を泡が認識可能なぎりぎりの高さに近づけるほど、画像に映っている範囲が広くなり、飛行距離の短縮がしやすくなる。また、ドローンの撮像装置がズーム機能を備える場合に、飛行指示部101が、探索時は画面を縮小して(画角を大きくして)、広い範囲が画像に映るようにしてもよい。
【0082】
その場合、画面を縮小しない場合に比べてより早く泡を見るけることができる。また、ドローンの撮像装置が可動である場合に、飛行指示部101が、撮影範囲を動かすことで画像に映っている範囲を変動させてもよい。その場合、探索時にドローンが飛行する距離が短くすることができる(海上工事の領域の広さによってはその領域の中央で静止したまま領域全体の画像を取得することも可能)。
【0083】
[2-3]追従時の指示
飛行指示部101は、実施例では、画像内の特定の範囲(例えば自機の真下が映る領域)に泡が映る状態が維持されるように飛行を指示したが、追従時の指示はこれに限らない。飛行指示部101は、例えば、ドローン20の撮像装置27が映している画像内のどこでもよいので泡が映る状態が維持されるように飛行を指示してもよい。この指示がされた場合でも、ドローン20は、泡領域群が映らなくなるほど泡領域群から離れることはないので、実施例と同様に、海上にいる周囲の作業員は、ドローン20の位置を見ることで、潜水士の位置を把握することができる。
【0084】
[2-4]2人以上の潜水士
潜水士位置監視システム1は、2人以上の潜水士の位置を監視してもよい。その場合、飛行指示部101は、最初は実施例と同様の飛行経路での飛行を指示する。そして、1つ目の泡領域群が認識されると、飛行指示部101は、1つ目の泡領域群が画像内に映っている状態を維持したまま画像に映る範囲を変化させる指示を行う。
【0085】
画像に映る範囲を変化させる指示とは、例えば、飛行高度を高くする指示、ズーム機能により画角を広くする指示又は泡領域群の周囲を飛行する指示等である。この指示による飛行中に取得された画像に、2つ目の泡領域群が映っていると、泡認識部102が、2つの泡領域群を特定することになる。
【0086】
なお、泡認識部102は、複数の泡領域を特定した場合に、例えば、泡領域Aとの距離が閾値未満の泡領域Bは泡領域Aと同じ泡領域群であり、泡領域Bとの距離が閾値未満の泡領域Cも泡領域Aと同じ泡領域群であるという判定を繰り返し行う。そうすることで、泡認識部102は、互いに離れている2つの泡領域群については、それぞれ別の泡領域群として特定する。
【0087】
飛行指示部101は、まだ認識されていない泡領域群が存在する場合には、認識済みの泡領域群が画像内に映っている状態を維持したまま画像に映る範囲を変化させる指示を行う。以上の指示と泡領域群の認識とが繰り返し行われることで、泡認識部102は、2以上の泡領域群を認識する。このように2以上の泡領域群が認識される場合、位置特定部103は、その認識結果に基づいて、2人以上の潜水士の位置を特定する。
【0088】
各潜水士の位置の特定方法は、実施例と同じ方法が用いられればよい。そして、飛行指示部101及び位置情報出力部104は、このように泡の認識結果に基づいて2人以上の潜水士の位置が特定される場合に、所定の領域に近い潜水士の位置を優先して報知するための処理を報知処理として行う。所定の領域について、出力される潜水士の位置情報を参照して説明する。
【0089】
図15は本変形例で表示された位置情報の一例を表す。
図11の例では、位置情報表示部301が、
図11に表す地
図M1、重機K1、潜水士の位置P1に加えて潜水士の位置P2を表示させている。
図11の例では、重機K1が設置されている領域が所定の領域として用いられている。
【0090】
位置情報出力部104は、重機K1の設置領域に近い方の潜水士の位置P2をこの設置領域から遠い方の潜水士の位置P1よりも大きな星印で表すことで、位置P2の星印を目立ちやすくして、位置P2にいる潜水士の位置に気付かせやすくしている。このように、優先して報知するとは、報知された相手(作業者等)が、報知された内容(潜水士の位置)に、より気付きやすいように報知することである。
【0091】
なお、位置情報出力部104は、
図11の方法以外に、位置P2の星印の色を目立つ色にしたり点滅させたり大きさを変動させたりしてもよいし、より目立ちやすい図柄に変えてもよい。また、位置情報出力部104は、3人以上の潜水士の位置が特定された場合は、重機K1との距離が近い順に星印を大きくして、重機K1に近い潜水士ほどその位置が気付かれやすいように報知してもよい。
【0092】
一方、飛行指示部101は、例えば、所定の領域に最も近い潜水士の位置(
図15の例であれば位置P2)の上空を飛行することで、その位置を優先して報知する。なお、飛行指示部101は、それ以外にも、例えば、2以上の潜水士の位置で囲まれた領域の内部であり、優先度が高い潜水士の位置により近い位置の上空を飛行することで、その潜水士の位置を優先して報知してもよい。
【0093】
本変形例では、上記のとおり優先度が高い潜水士の位置の方が、優先度が低い潜水士の位置よりも把握しやすい報知がされる。これにより、例えば重機等が稼働されていて近づくと危険な領域を特定の領域とすることで、報知に優先度を付けない場合に比べて、危険な領域への潜水士の接近に気付きやすくなり、そのような接近を防ぎやすくすることができる。
【0094】
[2-5]潜水士の異常監視
潜水士位置監視システム1は、泡の状態に基づいて潜水士の異常を監視してもよい。
図16は本変形例で実現される機能構成を表す。
図16では、
図5に表す各部に加えて異常検知部105と、異常報知部106とを備えるサーバ装置10aが表されている。異常検知部105は、泡認識部102による泡の認識結果に基づいて潜水士の異常を検知する。
【0095】
潜水士が正常な状態では呼吸が安定しているので、泡認識部102が認識する泡領域群の大きさが定期的に変化する。具体的には、息を吐いたときの泡が水面に到達すると泡領域群が大きくなり、その後息を吸っているときは泡が出ないので泡領域群が小さくなることを繰り返す。本変形例では、泡認識部102は、泡を認識すると、泡領域群の画像上の面積(例えば泡領域群に含まれる画素数)を異常検知部105に通知する。
【0096】
異常検知部105は、通知された泡領域群の面積を通知された時刻と共に記憶する。異常検知部105は、記憶した面積と時刻との関係を示す関係式を周知の曲線当てはめの手法(内挿又は重回帰分析等)を用いて算出する。算出された関係式は、潜水士が正常な状態のときに認識される泡領域群の面積と時刻との関係を表す。潜水士に異常が生じると、高い確率でその呼吸が乱れることになり、呼気が過大になったり反対に呼気が極端に少なくなったりする。
【0097】
そこで、異常検知部105は、新たに通知された泡領域群の画像上の面積と、算出した関係式においてその通知時刻に対応する泡領域群の面積との差分が閾値以上である場合に、潜水士に異常が生じたことを検知する。なお、異常検知部105は、通知された泡領域群の画像上の面積が第1閾値以上又は第2閾値未満の状態が所定の期間継続した場合に潜水士の異常を検知してもよい。
【0098】
異常検知部105は、潜水士の異常を検知すると、その旨を異常報知部106に通知する。異常報知部106は、この通知を受け取った場合、すなわち、泡認識部102による泡の認識結果に基づいて潜水士の異常が検知された場合に、潜水士に異常が生じた旨を報知するための異常報知処理を行う。異常報知部106は本発明の「異常報知部」の一例である。
【0099】
異常報知部106は、例えば、異常が検知された潜水士の位置情報を位置特定部103から読み出し、その位置情報が示す位置の潜水士の異常を報知する報知情報を生成して作業員端末30に対して出力する。作業員端末30の位置情報表示部301は、出力されてきた報知情報をディスプレイに表示させる。
【0100】
図17は表示された報知情報の一例を表す。
図17の例では、位置情報表示部301は、
図11に表す潜水士の位置P1と、位置P1を指して「潜水士の異常が検知されました!至急対応してください!」という文字列を含む吹き出しQ1とを表示している。作業員端末30を利用する作業員がこの報知情報を見ることで、潜水士の異常に気付いて、救出のための行動が開始される。
【0101】
なお、異常報知処理は
図17の例に限らない。異常報知部106は、例えば、報知用のサイレンが設置されている場合に、そのサイレンを鳴らす処理を異常報知処理として行ってもよい。また、異常報知部106は、作業員端末30だけでなく、登録されている関係者の宛先(電子メールアドレス等)に対して報知情報を出力してもよい。いずれの場合も、異常報知処理がされない場合に比べて、潜水士の異常に迅速に対処することができる。
【0102】
[2-6]水の流れ
潮流のような水の流れがあると、潜水士の呼気を含む泡が水流に流されて、潜水士の真上とは異なる位置に浮かび上がる場合がある。そこで、水流を考慮した潜水士の位置の特定が行われてもよい。
【0103】
図18は本変形例で実現される機能構成を表す。
図18では、
図5に表す各部に加えて水流情報取得部107を備えるサーバ装置10bが表されている。水流情報取得部107は、ドローン20の画像取得部203により取得される画像に映る領域における水流の情報を取得する。本変形例では、海上工事が行われる領域に1以上の潮流計が
図1に表す通信回線2を介してサーバ装置10bと通信可能に設置されているものとする。
【0104】
潮流計とは、潮流を測定するセンサを備える機械であり、潮流の方向(流向)及び速度(流速)を測定する。例えば、流向は0度から360度の方位で表され、流速は単位時間当たりの水の移動距離(メートル/秒等)で表される。水流情報取得部107は、各潮流計が測定した流向及び流速の値を水流情報として取得し、位置特定部103に供給する。位置特定部103は、供給された水流情報が示す水流に基づき潜水士が排出する呼気を含む泡の上昇中の移動を求める。
【0105】
位置特定部103は、具体的には、泡領域群を含む領域における、泡の移動方向と、泡が海面に到達するまでに移動する移動距離とを求める。位置特定部103は、供給された水流情報が1つである場合は、海上工事の領域の全体でその水流情報が示す流向及び流速で泡が流されるものとみなす。また、位置特定部103は、供給された水流情報が2以上である場合は、各水流情報が示す流向及び流速から海上工事の領域内の各位置の流向及び流速を求める。
【0106】
位置特定部103は、各位置の流向及び流速として、例えば、その位置と潮流計の測定位置との距離が近いほど測定結果に重みを付けた上で流向及び流速の平均値を求める。位置特定部103は、求めた流向の平均値を泡の移動方向とみなす。次に、位置特定部103は、海上工事の領域における平均の海底深度を予め記憶しておき、海底深度に応じて潜水士の呼気を含む泡が排出されてから海面に到達するまでの時間を求める。
【0107】
潜水士が潜る海底の深度と泡が海面に到達するまでの時間との関係は、例えば予め実験等を行って求められればよい。なお、位置特定部103は、海上工事の領域の中でも場所によって異なる深度を用いてもよいし、泡の上昇速度を理論的に求めて(その際は泡が生じる位置が海底よりも数m高いことを考慮する)海面に到達するまでの時間を求めてもよい。位置特定部103は、計算した時間に流速を乗じることで泡の移動距離を求める。
【0108】
位置特定部103は、実施例と同様の方法で仮の潜水士の位置を特定し、特定した位置に対して、求めた泡の移動方向とは反対方向に、求めた泡の移動距離だけ移動した位置を、真の潜水士の位置として特定する。位置特定部103は、特定した潜水士の位置情報を位置情報出力部104に供給する。位置情報出力部104は、こうして水流による泡の移動を考慮して特定された潜水士の位置を示す情報を、位置情報として出力する。
【0109】
この位置情報は、水流情報取得部107により取得された水流情報が示す水流により求められる泡の上昇中の移動と、ドローン20の飛行高度、ドローン20の向き及びドローン20の撮像装置27が映している画像内の泡の位置とによって特定される潜水士の位置を示す情報である。本変形例によれば、水流を考慮しないで潜水士の位置を特定する場合に比べて、より正確な潜水士の位置を報知することができる。
【0110】
[2-7]飛行体への指示
実施例では、追従時の飛行指示及び探索時の飛行指示をサーバ装置10が行ったが、これらの飛行指示を作業員が作業員端末30又はドローン20を操作するプロポ等を用いて行ってもよい。その場合、状況に応じて、作業員の判断で、最小限の探索範囲を指示したり、追従時のドローン20の位置(潜水士の真上か斜め上か)を指示したりすることができる。
【0111】
[2-8]飛行体
実施例では、撮像装置を備える飛行体として回転翼機型の飛行体が用いられたが、これに限らない。撮像装置を備える飛行体は、例えばヘリコプター型の飛行体であってもよいし、気球型の飛行体であってもよい。要するに、撮像装置を備えることが可能であり、且つ、望ましくは、泡の上空の限られた空間で飛行し続ける機能を有する飛行体であればよい。また、実施例では飛行体が1台であったが、2台以上であってもよい。その場合、2人以上の潜水士の位置を分担して特定し、報知することができる。
【0112】
[2-9]各部を実現する装置
図5等に表す各機能を実現する装置は、図中に表された装置に限らない。例えばサーバ装置10が実現する機能を作業員端末30がまとめて実現してもよい。また、サーバ装置10が実現する機能を2以上の装置又はクラウドコンピューティングサービスで提供されるリソースで分散して実現してもよい。
【0113】
また、例えば、実施例では飛行指示部101が探索時の飛行指示と追従時の飛行指示との両方を行ったが、これら2つの動作を別々の機能が行ってもよい。また、泡認識部102及び位置特定部103の行う動作を1つの統合された機能が行ってもよい。要するに、画像読取システム全体として
図5等に表された機能が実現されていれば、装置毎の機能分担及び各機能が行う動作の範囲は自由に定められてよい。
【0114】
[2-10]発明のカテゴリ
本発明は、サーバ装置及び作業員端末等の情報処理装置の他、各情報処理装置とドローン20のような飛行体とを備える情報処理システム(潜水士位置監視システム1がその一例)としても捉えられる。また、本発明は、各情報処理装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、各情報処理装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等の通信回線を介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…潜水士位置監視システム、10…サーバ装置、20…ドローン、30…作業員端末、101…飛行指示部、102…泡認識部、103…位置特定部、104…位置情報出力部、105…異常検知部、106…異常報知部、107…水流情報取得部、201…飛行制御部、202…センサ測定部、203…画像取得部、204…画像送信部、301…位置情報表示部。