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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】杭頭部の接合構造および杭頭接合方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019158211
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021036115
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】金本 清臣
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
(72)【発明者】
【氏名】黒木 光博
(72)【発明者】
【氏名】北市 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】石濱 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】柳 悦孝
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-111256(JP,A)
【文献】特開2004-300754(JP,A)
【文献】特開2003-105779(JP,A)
【文献】特開平11-172670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭体の杭頭部を構造物に接合するための杭頭部の接合構造であって、
前記杭頭部の周囲を取り囲む外鋼管と、
前記外鋼管の下端に固着されて前記杭頭部が上下方向に挿通する水平ダイアフラムと、
前記水平ダイアフラムの上面に固定され上方に向けて延びて前記構造物に接続される定着鉄筋と、
前記外鋼管と前記杭頭部との間に充填される硬化材と、
を備えていることを特徴とする杭頭部の接合構造。
【請求項2】
前記水平ダイアフラムの上面には、カプラー又はナットからなる雌ねじ筒体が溶着され、
前記定着鉄筋は、前記雌ねじ筒体に対して上方から螺合させることにより前記水平ダイアフラムに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の杭頭部の接合構造。
【請求項3】
前記水平ダイアフラムには前記定着鉄筋が挿通可能な貫通孔が形成され、
前記貫通孔に挿通された前記定着鉄筋は、前記水平ダイアフラムの上下からナットで締め付けることで前記水平ダイアフラムに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の杭頭部の接合構造。
【請求項4】
前記定着鉄筋は、周方向に間隔をあけて複数配置され、上面視で隣り合う前記定着鉄筋同士を結ぶ線が八角形となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の杭頭部の接合構造。
【請求項5】
前記複数の定着鉄筋が配置される前記八角形が前記水平ダイアフラムにおける半径方向の内外に二重に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の杭頭部の接合構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の杭頭部の接合構造において、前記杭体の杭頭部を前記構造物に接合するための杭頭接合方法であって、
前記外鋼管に前記水平ダイアフラムを一体的に固定する工程と、
前記外鋼管に固定された前記水平ダイアフラムの上面に前記定着鉄筋を固定する工程と、
前記杭頭部の周囲を取り囲むように前記水平ダイアフラムを備えた前記外鋼管を配置する工程と、
前記外鋼管と前記杭頭部との間に硬化材を充填する工程と、
を有することを特徴とする杭頭接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭部の接合構造および杭頭接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭、場所打ち鋼管コンクリート杭、外殻鋼管コンクリート杭(SC杭)、プレストレスト鉄筋コンクリート杭(PRC杭)と、鉄筋コンクリート造基礎梁(以下、基礎梁と称す)等の構造物とを剛に接合する際の杭頭部の接合構造として、例えば特許文献1に示されるような、杭頭部よりひと回り大きな径を有する円筒状の外鋼管を杭頭部の外側に巻いた状態に取り付け、杭頭部と外鋼管との間にコンクリートを充填するとともに、このコンクリートにアンカー筋の一端を埋設した二重管方式のものが提案されている。
【0003】
このような特許文献1で提案されるような二重管方式の杭頭部の接合構造としては、杭頭部の周囲を取り囲む外鋼管と、外鋼管の下端に固着されて杭頭部を挿通可能に形成したダイアフラムと、外鋼管と杭頭部との間に充填された充填コンクリートと、を備えている。そして、外鋼管の内側には周方向に等間隔で定着鉄筋がフレア溶接されている。その定着鉄筋は杭頭部よりも上方に突出した状態で設けられ、基礎梁のコンクリートに埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-297472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の杭頭部の接合構造では、以下のような問題があった。
すなわち、従来の杭頭部の接合構造の場合、外鋼管の内側に設けられる定着鉄筋には基礎梁(構造物)のコンクリートに十分に定着させるために所定の突出長が必要となる。そのため、定着鉄筋の位置によっては基礎梁の主筋等の配筋と干渉する箇所が生じてしまう。このように干渉する箇所では、基礎梁の配筋をずらすことで対応することもできるが、基礎梁が過密配筋となっている場合には対応できないという問題があった。
【0006】
また、従来の杭頭部の接合構造では、予め工場で定着鉄筋を外鋼管から突出する状態で溶接により一体化させて製作している。この製品を工場から現場に運搬する際には、鋼管から突出した定着鉄筋があるため運搬効率が低下するという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、構造物の配筋との干渉を防止することができ、現場へ効率よく運搬できる杭頭部の接合構造および杭頭接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る杭頭部の接合構造は、杭体の杭頭部を構造物に接合するための杭頭部の接合構造であって、前記杭頭部の周囲を取り囲む外鋼管と、前記外鋼管の下端に固着されて前記杭頭部が上下方向に挿通する水平ダイアフラムと、前記水平ダイアフラムの上面に固定されて上方に向けて延びて前記構造物に接続される定着鉄筋と、前記外鋼管と前記杭頭部との間に充填される硬化材と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る杭頭接合方法は、上述した杭頭部の接合構造において、前記杭体の杭頭部を前記構造物に接合するための杭頭接合方法であって、前記外鋼管に前記水平ダイアフラムを一体的に固定する工程と、前記外鋼管に固定された前記水平ダイアフラムの上面に前記定着鉄筋を固定する工程と、前記杭頭部の周囲を取り囲むように前記水平ダイアフラムを備えた前記外鋼管を配置する工程と、前記外鋼管と前記杭頭部との間に硬化材を充填する工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明では、水平ダイアフラムの上面に固定される定着鉄筋は外鋼管と杭頭部との間の硬化材に埋設された状態となり、杭頭部での定着鉄筋の引張り力はこの埋設部分における定着鉄筋と硬化材との付着力と、定着鉄筋下端部で固定され硬化材に接する水平ダイアフラムの支圧力とで抵抗する。定着鉄筋の引張り力は硬化材との付着力で大半が処理されるので、定着板として機能する水平ダイアフラムに作用する力はわずかなものとなる。
【0011】
また、本発明では、外鋼管に一体化した水平ダイアフラムに対して定着鉄筋を固定する作業を施工する現場で行い、工場で外鋼管と水平ダイアフラムとを溶接等で一体化する。そのため、外鋼管から大きく突出する定着鉄筋を外鋼管に固定しない状態で工場から現場に効率よく運搬することができる。
また、定着鉄筋を施工する現場で構造物の配筋に対応させた任意の位置で水平ダイアフラムに固定することができるので、構造物の配筋との干渉を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る杭頭部の接合構造は、前記水平ダイアフラムの上面には、カプラー又はナットからなる雌ねじ筒体が溶着され、前記定着鉄筋は、前記雌ねじ筒体に対して上方から螺合させることにより前記水平ダイアフラムに固定されていることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、現場において水平ダイアフラムの上面に溶着された雌ねじ筒体に定着鉄筋を螺合させるといった簡単な作業により、水平ダイアフラムから上方に向けて延びる定着鉄筋を設けることができる。この場合は、工場で水平ダイアフラムの上面に雌ねじ筒体を溶着する作業が行われるが、運搬時には定着鉄筋を水平ダイアフラムから外した状態にすることができるので、上述したように効率よく運搬を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る杭頭部の接合構造は、前記水平ダイアフラムに前記定着鉄筋が挿通可能な貫通孔が形成され、前記貫通孔に挿通された前記定着鉄筋は、前記水平ダイアフラムの上下からナットで締め付けることで前記水平ダイアフラムに固定されていることを特徴としてもよい。
【0015】
この場合には、現場において水平ダイアフラムに形成されている貫通孔に定着鉄筋を挿通させて、水平ダイアフラムの上下からナットで締め付けるといった簡単な作業により、水平ダイアフラムから上方に向けて延びる定着鉄筋を設けることができる。この場合は、工場で水平ダイアフラムに貫通孔を設ける加工が行われるが、運搬時には定着鉄筋を水平ダイアフラムから外した状態にすることができるので、上述したように効率よく運搬を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る杭頭部の接合構造は、前記定着鉄筋は、周方向に間隔をあけて複数配置され、上面視で隣り合う前記定着鉄筋同士を結ぶ線が八角形となるように配置されていることが好ましい。
【0017】
この場合には、複数の定着鉄筋が円形に配置される場合に比べて、杭頭部が接合される構造物の縦横に延在する配筋を効率よくかわすことが可能となる。そのため、円形の場合のように構造物の配筋をずらす対応が不要となり、杭頭部と構造物との接合が容易となる。
【0018】
また、本発明に係る杭頭部の接合構造は、前記複数の定着鉄筋が配置される前記八角形が前記水平ダイアフラムにおける半径方向の内外に二重に設けられていることが好ましい。
【0019】
この場合には、複数の定着鉄筋が配置される八角形が内外に二重に設けられているので、定着鉄筋を円形に配置した場合と同等以上の曲げ耐力を得ることができ、杭頭部と構造物との接合部の高耐力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の杭頭部の接合構造および杭頭接合方法によれば、構造物の配筋との干渉を防止することができ、現場へ効率よく運搬できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態による杭頭部の接合構造を示す縦断面図であって、分かりやすくするために基礎梁内における紙面直交方向の鉄筋を省略した図である。
図2】杭頭部に水平ダイアフラム及び定着鉄筋を固定した外鋼管を接合した状態を上方から見た平面図である。
図3図1に示すA-A線断面図である。
図4】第1変形例による杭頭部の接合構造を示す縦断面図であって、図1に対応する図であり、分かりやすくするために基礎梁内における紙面直交方向の鉄筋を省略した図である。
図5】第2変形例による杭頭部の接合構造を示す縦断面図であって、図1に対応する図であり、分かりやすくするために基礎梁内における紙面直交方向の鉄筋を省略した図である。
図6】第2実施形態による杭頭部の接合構造で定着鉄筋を固定するカプラーを設けた構成を示す縦断面図であって、図1に対応する図であり、分かりやすくするために基礎梁内における紙面直交方向の鉄筋を省略した図である。
図7】第2実施形態による杭頭部の接合構造で定着鉄筋を固定する固定ナットを設けた構成を示す縦断面図であって、図1に対応する図であり、分かりやすくするために基礎梁内における紙面直交方向の鉄筋を省略した図である。
図8】第3実施形態による杭頭部の接合構造を示す縦断面図であって、図1に対応する図であり、分かりやすくするために基礎梁内における紙面直交方向の鉄筋を省略した図である。
図9】第4実施形態による杭頭部の接合構造を示す縦断面図であって、図1に対応する図であり、分かりやすくするために基礎梁内における紙面直交方向の鉄筋を省略した図である。
図10図9に示す杭頭部の接合構造において、杭頭部に水平ダイアフラム及び定着鉄筋を固定した外鋼管を接合した状態を上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態による杭頭部の接合構造および杭頭接合方法について、図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態による杭頭部の接合構造1は、杭体2の杭頭部2Aを構造物の基礎梁3に接合するための接合構造である。
杭体2としては、本実施形態では鋼管杭、場所打ち鋼管コンクリート杭、外殻鋼管コンクリート杭(SC杭)、プレストレスト鉄筋コンクリート杭(PRC杭)を対象とする。なお、本実施の形態では、杭体2の全体が地中に埋設され、杭頭部2Aにはコンクリート21が充填されている。
【0024】
基礎梁3は、水平方向に沿って縦横方向(図3に示すXY方向)に延在するように主筋31が配筋され、所定のせいを有する基礎コンクリート32によって杭頭部2Aに一体的に接合されている(図3参照)。
【0025】
図1及び図2に示すように、杭頭部の接合構造1は、杭頭部2Aの周囲を取り囲む外鋼管4と、外鋼管4の下端4aに固着されて杭頭部2Aが上下方向に挿通する水平ダイアフラム5と、水平ダイアフラム5の上面5aに固定されて上方に向けて延びて基礎梁3に接続される定着鉄筋6と、外鋼管4と杭頭部2Aとの間に充填された硬化材7と、を備えている。
【0026】
外鋼管4は、杭頭部2Aの周囲から取り囲む円筒形状の鋼管から形成されている。外鋼管4は、例えば予め杭体2の所定位置に固着されている受け部材(図示省略)上に載置させることにより位置決めされた状態で、杭頭部2Aの杭軸と同軸となるように配置されている。外鋼管4の内径は、杭体2の外径Dと比較して大きい鋼管からなる。外鋼管4の部材長は、例えば杭体2の外径Dの約0.5~1倍程度となっている。
なお、杭頭部2Aの周囲には、外鋼管4が配置される部分よりも大きな作業領域を確保するために所定領域が掘削されている。
【0027】
水平ダイアフラム5は、杭頭部2Aとの間隙をほぼ閉塞するように配置され、硬化材7を打設する際の型枠として機能する。水平ダイアフラム5の外周部5cは、外鋼管4の下端4aに溶着されて固定されている。水平ダイアフラム5は、外鋼管4の下端4aに固着され、杭頭部2Aを挿通する円孔5bが形成されている。円孔5bは、杭体2の外径よりも僅かに大径に形成されている。これにより水平ダイアフラム5は、杭体2に対して同軸となるように挿通され、非固定状態で円孔5bと杭頭部2Aとの間に隙間をあけた状態で配置される。
水平ダイアフラム5は、工場等で予め外鋼管4と溶接によって固定されている。
【0028】
定着鉄筋6は、水平ダイアフラム5の上面5aにおける半径方向(幅方向)の中央部から外周側の位置で、図2及び図3に示すように周方向に間隔をあけて複数本が配置されている。
本実施形態の定着鉄筋6は、ねじ節鉄筋や竹節鉄筋が用いられ、突合せ溶接やスタッド溶接により水平ダイアフラム5の上面5aに固着されている。本実施形態の定着鉄筋6の配置としては、上方からみた平面視で周方向に隣り合う定着鉄筋6同士を結ぶ仮想線Kが八角形となるように配置されている。
【0029】
なお、図3に示す定着鉄筋6の配置を示す仮想線Kは、正八角形ではない。つまり、本実施形態のように、定着鉄筋6は、基礎梁3の配筋方向(互いに直交する図3に示すXY方向)に多く配置し、仮想線KのうちXY方向に延びるXY延在部分のそれぞれに対して斜め45°方向に交差する傾斜部分にはXY延在部分よりも配置数を少なくしてもよい。なお、図2では、八角形の仮想線のうちXY延在部分にそれぞれ5本ずつ定着鉄筋6が配置され、傾斜部分には周方向に隣り合うXY延在部分の間に1本の定着鉄筋6が配置されている。
【0030】
水平ダイアフラム5に固着された定着鉄筋6は、基礎梁3のせい内に所定の長さ寸法で定着されている。
なお、定着鉄筋6がD25以下の場合には、簡易なスタッド溶接とすることも可能である。
【0031】
硬化材7は、外鋼管4と杭頭部2Aとの間の間隙に上方より充填され、内側に設けられる定着鉄筋6の下方部分を埋設した状態で硬化することにより外鋼管4と杭頭部2Aとの接合を可能にする。硬化材7としては、コンクリート、モルタル等を採用することができる。
【0032】
次に、上述した杭頭部の接合構造を使用した杭頭接合方法について具体的に説明する。
先ず、図1に示すように、工場等で外鋼管4と水平ダイアフラム5とを一体的に接合した状態に製作したものを施工現場に運搬する。
【0033】
そして、現場に搬入された外鋼管4において、適宜なタイミングで水平ダイアフラム5の上面5aの所定位置に複数の定着鉄筋6を溶接により固着する。このとき、定着鉄筋6の下端のみを水平ダイアフラム5の上面5aに突合せ溶接やスタッド溶接等によって簡単にかつ短時間な作業により固着できる。
【0034】
次に、先行して打設された場所打ち鋼管コンクリート杭、プレストレスト鉄筋コンクリート杭、鋼管杭のいずれかからなる杭体2の杭頭部2Aの外側に水平ダイアフラム5及び複数の定着鉄筋6を一体に備えた外鋼管4を配置する。このとき、地盤に埋設される杭体2の杭頭部2Aを露出させるため、杭頭部2Aの周囲の所定領域を掘削しておく。具体的には、水平ダイアフラム5及び複数の定着鉄筋6を一体的に設けた外鋼管4を、外鋼管4の管軸が杭軸Oと一致するようにして杭頭部2Aに対して上方から被せる。このとき、水平ダイアフラム5の円孔5bと杭頭部2Aとは接合せずに、周方向の全周にわたって所定の隙間をあけた状態で配置する。
【0035】
続いて、外鋼管4と杭頭部2Aとの間にコンクリートからなる硬化材7を充填する。これにより杭頭部2Aに接合した外鋼管4内に硬化材7が充填された状態で杭頭部2Aの接合構造が構築される。
なお、定着鉄筋6を水平ダイアフラム5に固着する作業は、杭頭部2Aに外鋼管4を配置する前であることに制限されることはなく、杭頭部2Aに外鋼管4を配置した後で行ってもかまわない。
【0036】
次に、図3に示すように、基礎梁3の主筋31を組み立てる。このとき、図2に示すように外鋼管4に配置される複数の定着鉄筋6を結ぶ仮想線Kが上面視で八角形となるように配置されているので、これら定着鉄筋6に干渉することなく主筋31を組み立てることができる。主筋31を組み立てた後、コンクリートを打設し、杭頭部2Aから上方に突出する定着鉄筋6を基礎梁3の基礎コンクリート32に定着させる。
これにより杭体2の杭頭部2Aと基礎梁3との接合が完了となる。
【0037】
次に、上述した杭頭部の接合構造および杭頭接合方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、図1に示すように、水平ダイアフラム5の上面5aに固定される定着鉄筋6は外鋼管4と杭頭部2Aとの間のコンクリートからなる硬化材7に埋設された状態となり、杭頭部2Aでの定着鉄筋6の引張り力はこの埋設部分における定着鉄筋6と硬化材7との付着力と定着鉄筋6の下端部で固定され硬化材7に接する水平ダイアフラム5の支圧力で抵抗する。このとき、定着鉄筋6の引張り力は硬化材との付着力で大半が処理されるので、定着板として機能する水平ダイアフラム5に作用する力はわずかなものとなる。
【0038】
従来工法では、定着鉄筋6を外鋼管4の内側にフレア溶接して固定していたため、定着鉄筋6の配置に融通が利かず、基礎梁3の配筋(主筋31)との干渉が避けられなかったが、本実施形態では、定着鉄筋6を任意の位置に固定することができるので、杭頭部2Aを接合するための基礎梁3の配筋(主筋31)との干渉を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、施工する現場で、外鋼管4に一体で設けられる水平ダイアフラム5に対して定着鉄筋6を固定する作業を行うことができるので、工場では外鋼管4と水平ダイアフラム5との固定のみを行う製作となる。そのため、外鋼管4から大きく突出する定着鉄筋6を外鋼管4に固定しない状態で工場から現場に効率よく運搬することができる。
【0040】
また、本実施形態では、定着鉄筋6が周方向に間隔をあけて複数配置され、上面視で隣り合う定着鉄筋6同士を結ぶ仮想線Kが八角形となるように配置されているから、複数の定着鉄筋6が円形に配置される場合に比べて、杭頭部2Aが接合される基礎梁3の縦横に延在する配筋(主筋31)を効率よくかわすことが可能となる。
そのため、円形の場合のように基礎梁3の配筋をずらす対応が不要となり、杭頭部2Aと基礎梁3との接合が容易となる。
【0041】
上述のように本実施形態による杭頭部の接合構造および杭頭接合方法では、基礎梁3の配筋との干渉を防止することができ、外鋼管4を現場へ効率よく運搬できる。
【0042】
次に、他の実施形態及び変形例による杭頭部の接合構造および杭頭接合方法について説明する。なお、上述した第1実施形態の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、これらについては、説明が重複するので詳しい説明は省略する。
【0043】
(第1変形例)
第1変形例による杭頭部の接合構造は、図4に示すように、定着鉄筋6の上端部6aに機械式定着板61を備えた構成のものである。
この場合の定着鉄筋6にはねじ節鉄筋が使用され、上述した第1実施形態と同様に、水平ダイアフラム5の上面5aに溶接により固定されている。
【0044】
(第2変形例)
第2変形例による杭頭部の接合構造は、図5に示すように、定着鉄筋6の上端部に拡径された拡径定着板63を有する摩擦接合による定着板を備えた構成のものである。このような拡径定着板63を備えた鉄筋として、例えばマイティヘッド工法(登録商標、清水建設社製)による鉄筋を採用することができる。この場合の定着鉄筋6は、上述した第1実施形態と同様に、水平ダイアフラム5の上面5aに溶接により固定されている。
【0045】
上述した第1変形例および第2変形例は、機械式定着板と拡径定着板63のいずれも定着鉄筋6における硬化材7に埋設された部分からの引抜き抵抗力を高めることができる。
【0046】
(第2実施形態)
図6及び図7に示すように、第2実施形態による杭頭部の接合構造1Aは、水平ダイアフラム5の上面5aにカプラー64(図6)又は固定ナット65(図7)からなる雌ねじ筒体を溶着した構成となっている。カプラー64の内周面及び固定ナット65の内周面には、それぞれ雌ねじが形成されている。定着鉄筋6Aは、カプラー64及び固定ナット65に対してそれぞれ上方から螺合させることにより水平ダイアフラム5の上面5aに固定されている。
【0047】
定着鉄筋6Aとしてねじ節鉄筋が使用される場合には、図6に示すカプラー64が使用される。この場合の定着鉄筋6Aにはねじ節鉄筋が使用される。
【0048】
図6に示すカプラー64を使用した定着鉄筋6Aは、上述した第1変形例と同様の機械式定着板が設けられている。また、図7に示す固定ナット65を使用した定着鉄筋6Aには、上述した第2変形例と同様の拡径定着板63が設けられている。この場合の定着鉄筋6Aにはねじ節鉄筋が使用される。
【0049】
なお、第2実施形態において、定着鉄筋6の上端に定着板を設ける構成であることに限定されることはなく、上述した第1実施形態のように定着板を省略した定着鉄筋6を採用してもよい。
【0050】
第2実施形態による杭頭部の接合構造1Aでは、現場において水平ダイアフラム5の上面5aに溶着されたカプラー64又は固定ナット65に定着鉄筋6Aを螺合させるといった簡単な作業により、水平ダイアフラム5から上方に向けて延びる定着鉄筋6Aを設けることができる。
【0051】
この場合は、工場で水平ダイアフラム5の上面5aにカプラー64又は固定ナット65を溶着する作業が行われる。そして、水平ダイアフラム5の上面5aにカプラー64又は固定ナット65が固定されていても、外鋼管4の運搬時には定着鉄筋6Aを水平ダイアフラム5から外した状態にすることができるので、上述したように効率よく運搬を行うことができる。
【0052】
(第3実施形態)
図8に示すように、第3実施形態による杭頭部の接合構造1Bは、水平ダイアフラム5に定着鉄筋6Bが挿通可能な貫通孔5dが形成されている。定着鉄筋6Bにはねじ節鉄筋が使用される。
貫通孔5dに挿通された定着鉄筋6Bは、水平ダイアフラム5の上下からナット66で締め付けることで水平ダイアフラム5に固定され、水平ダイアフラム5から上方に向けて延びるように配置される。定着鉄筋6Bは、上述した第2変形例と同様の拡径定着板63が設けられているが、第1変形例と同様の機械式定着板が設けられていてもよいし、第1実施形態と同様に定着板が省略されたものを採用してもよい。
【0053】
第3実施形態による杭頭部の接合構造1Bでは、現場において水平ダイアフラム5に形成されている貫通孔5dに定着鉄筋6Bを挿通させて、水平ダイアフラム5の上下のそれぞれからナット66で締め付けるといった簡単な作業により、水平ダイアフラム5から上方に向けて延びる定着鉄筋6Bを設けることができる。
【0054】
この場合は、工場で水平ダイアフラム5に貫通孔5dを設ける加工が行われるが、外鋼管4の運搬時には定着鉄筋6Bを水平ダイアフラム5から外した状態にすることができるので、上述したように効率よく運搬を行うことができる。
【0055】
(第4実施形態)
図9及び図10に示すように、第4実施形態による杭頭部の接合構造1Cは、定着鉄筋6が水平ダイアフラム5の上面5aにおいて半径方向に間隔をあけて2列に並んだ構成となっている。つまり、上述した第1実施形態において、複数の定着鉄筋6が配置される仮想線Kである八角形を水平ダイアフラム5における半径方向の内周側と外周側とに二重(図10に示す仮想線K1、K2)に設けた構成のものである。
【0056】
第4実施形態による杭頭部の接合構造1Cでは、複数の定着鉄筋6が配置される八角形の仮想線K1、K2が内周側と外周側とに二重に設けられているので、定着鉄筋6を円形に配置した場合と同等以上の曲げ耐力を得ることができ、杭頭部2Aと基礎梁3との接合部の高耐力化を図ることができる。
【0057】
以上、本発明による杭頭部の接合構造および杭頭接合方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0058】
例えば、本実施形態では、杭体2として鋼管杭、場所打ち鋼管コンクリート杭、外殻鋼管付コンクリート杭プレストレスト鉄筋コンクリート杭(PRC杭)対象としているが、例えば、PHC杭(既成コンクリート杭)などの杭体2の杭頭部2Aに適用してもよい。また、杭体2の杭径についてもとくに制限されるものではなく、適宜な外径の杭体2に適用することができる。
【0059】
また、上述した第1~第4実施形態、及び変形例では、複数種類の杭頭部の接合構造を示したが、1現場に配置される複数の杭体2において、1種類の杭頭部の接合構造のみを採用することに限定されることはなく、複数種の杭頭部の接合構造を混在させて使用することも可能である。
【0060】
また、本実施形態では、定着鉄筋6の定着部の構成として、上述した定着板に限定されることはなく、他の形状の定着部を採用することも可能である。例えば定着鉄筋の拡径部がT型に形成されたTヘッド工法鉄筋(登録商標、清水建設社製)を用いるようにしてもよい。
【0061】
さらに、本実施形態では、定着鉄筋6が水平ダイアフラム5の上面5aで周方向に間隔をあけて複数配置され、上面視で隣り合う定着鉄筋6同士を結ぶ仮想線Kが八角形となるように配置した構成としているが、このような八角形配置であることに限定されることはない。例えば、構造物の基礎梁3が過密配筋で無く、基礎梁3の配筋と定着鉄筋6との干渉が少ない場合には円形配置としてもかまわない。
【0062】
さらにまた、外鋼管4の上下方向の長さ寸法、径寸法や厚さ、水平ダイアフラム5の厚さなどの構成についても、杭体2の種類、寸法、接合する構造物の形状、接合強度等に対応して適宜設定することができる。
【0063】
また、本実施形態では、定着鉄筋6を水平ダイアフラム5の上面5aに固着するタイミングとして、ダイアフラム中央の杭開口を作業空間として利用できるため、外鋼管4を杭頭部2Aに被せる前に行っているが、この手順であることに限定されることはない。例えば、水平ダイアフラム5を備えた外鋼管4を杭頭部2Aの周囲に配置した後に複数の定着鉄筋6を水平ダイアフラム5に固着するようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、杭頭部2Aの接合対象となる構造物として基礎梁3を対象としているが、他の構造物であってもかまない。
【0065】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B、1C 杭頭部の接合構造
2 杭体
2A 杭頭部
3 基礎梁(構造物)
4 外鋼管
4a 下端
5 水平ダイアフラム
5a 上面
5c 外周部
5d 貫通孔
6、6A、6B 定着鉄筋
7 硬化材
64 カプラー(雌ねじ筒体)
65 固定ナット(雌ねじ筒体)
O 杭軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10