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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】巻鉄心の製造装置及び巻鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20230510BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H01F41/02 A
H01F27/245 155
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019158365
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021039963
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】霜村 英二
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-128405(JP,A)
【文献】特開2002-160120(JP,A)
【文献】実公平01-038898(JP,Y2)
【文献】特開2017-186586(JP,A)
【文献】特開平04-367202(JP,A)
【文献】特開2015-106631(JP,A)
【文献】特公昭63-044804(JP,B2)
【文献】特開2000-294432(JP,A)
【文献】特許第6845213(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 27/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フープ材から所定寸法に切断された電磁鋼板を複数枚巻き重ねて静止誘導機器用の巻鉄心を製造するための装置であって、
前記電磁鋼板のフープ材の供給源から、該フープ材を搬送路を順送りに搬送する搬送機構と、
前記搬送路の途中部に設けられ、該フープ材のうち前記電磁鋼板の切断端部となる部分に微細磁区加工を施す微細磁区加工装置と、
前記搬送路の途中部に設けられ、前記フープ材を切断して所定寸法の電磁鋼板とする切断機構と、
前記切断機構により切断された電磁鋼板を巻き重ねる巻回機構とを備える巻鉄心の製造装置。
【請求項2】
前記微細磁区加工装置は、前記搬送されるフープ材の途中部の所定範囲に対して微細磁区加工を行い、
前記切断機構は、前記微細磁区加工装置の下流において、前記フープ材のうち、前記微細磁区加工装置による加工範囲の端部で切断加工を行う構成とされている請求項1記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項3】
前記微細磁区加工装置は、前記搬送されるフープ材の途中部の所定範囲に対して微細磁区加工を行い、
前記切断機構は、前記微細磁区加工装置の下流において、前記フープ材のうち、前記微細磁区加工装置による加工範囲の中間部分で切断を行う構成とされている請求項1記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項4】
前記フープ材に対する前記微細磁区加工装置による微細磁区加工と、前記切断機構による切断加工とが同じタイミングで一括して行われるように構成されている請求項1記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項5】
前記微細磁区加工装置は、前記フープ材の表面に対して熱プレス装置による微細磁区加工を行うように構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項6】
前記微細磁区加工装置は、前記フープ材の表面に対するレーザ照射より微細磁区加工を行うように構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項7】
前記レーザ照射は、前記フープ材の両面に対し、位置をずらした状態で行われる請求項6記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項8】
前記レーザ照射は、前記フープ材に対し、矯正ローラにより熱歪みを矯正しながら行われる請求項6記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項9】
前記微細磁区加工装置は、前記フープ材の表面に対して針状工具により多数の傷を付けるように構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項10】
前記微細磁区加工装置は、前記フープ材の表面に対してカッターローラにより多数の傷を付けるように構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の巻鉄心の製造装置。
【請求項11】
フープ材から所定寸法に切断された電磁鋼板を複数枚巻き重ねて静止誘導機器用の巻鉄心を製造するための方法であって、
前記電磁鋼板のフープ材の供給源から、該フープ材を搬送路を順送りに搬送しながら、前記搬送路の途中部において前記電磁鋼板の切断端部となる部分に微細磁区加工を施す微細磁区加工工程と、
前記フープ材を切断して所定寸法の電磁鋼板とする切断工程とを含む巻鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導機器用の巻鉄心を製造するための巻鉄心の製造装置及び巻鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静止誘導機器例えば変圧器の鉄心においては、ケイ素鋼板等の帯板状の電磁鋼板を、一巻きごとに少なくとも1箇所の突合せ接合部を設けながら複数枚巻き重ねて構成される、いわゆるワンターンカット型の巻鉄心と称されるものがある(例えば特許文献1参照)。このものでは、ワンターン毎の電磁鋼板の突合せ接合部において、電磁鋼板を階段状にずらしていきながら巻き重ねることが行われる。このとき、例えば、接合部に非磁性のシート部材が配置され、一定の幅のエアギャップが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-28406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のように階段状にずれながら設けられた接合部ひいてはエアギャップを有する巻鉄心にあっては、鉄心を流れる磁束が、エアギャップ部分で積層方向に隣り合う電磁鋼板に渡るようにしながら流れることになる。そのため、接合部で磁気抵抗が大きくなって損失即ち鉄損が生ずる問題がある。そこで、近年では、損失の低減を図るために、鉄心を構成する電磁鋼板の表面に対し、その圧延方向に関して縦横方向に格子状にレーザ照射を行う微細磁区加工を施すことが提案されている。この場合、巻鉄心を製造する際に、微細磁区加工を施した上で効率的に製造することが望まれる。
【0005】
そこで、電磁鋼板を複数枚巻き重ねて構成される巻鉄心を製造するものにあって、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板に施すことを含めながら、効率的な製造を行うことが可能な巻鉄心の製造装置及び巻鉄心の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る巻鉄心の製造装置は、フープ材から所定寸法に切断された電磁鋼板を複数枚巻き重ねて静止誘導機器用の巻鉄心を製造するための装置であって、前記電磁鋼板のフープ材の供給源から、該フープ材を搬送路を順送りに搬送する搬送機構と、前記搬送路の途中部に設けられ、該フープ材のうち前記電磁鋼板の切断端部となる部分に微細磁区加工を施す微細磁区加工装置と、前記搬送路の途中部に設けられ、前記フープ材を切断して所定寸法の電磁鋼板とする切断機構と、前記切断機構により切断された電磁鋼板を巻き重ねる巻回機構とを備えている。
【0007】
実施形態に係る巻鉄心の製造方法は、フープ材から所定寸法に切断された電磁鋼板を複数枚巻き重ねて静止誘導機器用の巻鉄心を製造するための方法であって、前記電磁鋼板のフープ材の供給源から、該フープ材を搬送路を順送りに搬送しながら、前記搬送路の途中部において前記電磁鋼板の切断端部となる部分に微細磁区加工を施す微細磁区加工工程と、前記フープ材を切断して所定寸法の電磁鋼板とする切断工程とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態を示すもので、製造装置の全体構成を概略的に示す図
図2】微細磁区加工装置及び切断機構部分の構成を概略的に示す斜視図
図3】プレス型の加工面の拡大底面図
図4】第2の実施形態を示すもので、微細磁区加工装置及び切断機構部分の構成を概略的に示す斜視図
図5】第3の実施形態を示すもので、微細磁区加工装置及び切断機構部分の構成を概略的に示す斜視図
図6】第4の実施形態を示すもので、微細磁区加工装置及び切断機構部分の構成を概略的に示す斜視図
図7】第5の実施形態を示すもので、微細磁区加工装置及び切断機構部分の構成を概略的に示す斜視図
図8】フープ材の微細磁区加工部分の拡大斜視図
図9】第6の実施形態を示すもので、微細磁区加工装置部分の斜視図
図10】第7の実施形態を示すもので、微細磁区加工装置部分の斜視図
図11】第8の実施形態を示すもので、微細磁区加工装置部分の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、静止誘導機器としての変圧器用の巻鉄心の製造に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、複数の実施形態間で共通する部分については、同一の符号を付して、新たな図示や繰り返しの説明を省略する。
【0010】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。まず、本実施形態に係る巻鉄心の製造装置及び製造方法により製造される巻鉄心1について簡単に述べておく。図1に傾斜状態で一部示すように、この巻鉄心1は、上下方向に延びる2本の脚部2、2と、それら脚部2、2の上端部同士、下端部同士を左右につなぐ継鉄部3、3とを有した、コーナー部が丸みを帯びた矩形環状に構成されている。各脚部2、2には、夫々図示しない巻線が装着されて変圧器とされる。
【0011】
この巻鉄心1は、いわゆるワンターンカット型のものとされている。即ち、巻鉄心1は、例えばケイ素鋼板等の帯状のフープ材を一巻きごとの所要寸法に切断して電磁鋼板5とし、それら1枚1枚の電磁鋼板5を、端部同士が突き合わされる接合部6を設けながら、内外周方向に複数枚巻き重ねて構成される。電磁鋼板5には方向性電磁鋼板が用いられ、長手方向つまり巻回方向が圧延方向とされている。前記接合部6は、下部の継鉄部3のほぼ中央部分に来るように構成される。このとき、一巻き毎の接合部6を、電磁鋼板5の巻き重ね方向(径方向)に階段状に一定のピッチでずらしてラップさせながら積層するように構成される。巻き重ね方向に電磁鋼板5の数枚程度を1ブロックとして繰り返すように、接合部6を、内周側から外周側に向けて図で左側に順にずらして配置していくことが行われる。
【0012】
このとき、本実施形態では、図2に示すように、前記各電磁鋼板5の先端部表面における他の電磁鋼板5の接合部6とラップしている部分に位置して、歪みにより微細磁区加工の処理がなされた微細磁区加工処理部7が設けられている。図2に便宜上網目状の線で示すように、微細磁区加工処理部7は、電磁鋼板5のうち、電磁鋼板5の幅方向全体に渡り、一定の範囲例えば接合部6のずれのピッチの2倍程度の長さ寸法の範囲で設けられている。この範囲は、電磁鋼板5の端部の表面のうち、重なり合う別の電磁鋼板5に対し磁束が渡る範囲とされている。
【0013】
ここで、上記巻鉄心1を製造するための本実施形態に係る製造装置11について以下説明する。図1は、本実施形態に係る製造装置11の全体的な構成を概略的に示している。この製造装置11は、大きく分けて、電磁鋼板5となるフープ材12を搬送する搬送機構13と、フープ材12のうち電磁鋼板5の切断端部となる部分に微細磁区加工を施す微細磁区加工装置14と、フープ材12を切断して所定寸法の電磁鋼板5とする切断機構15と、切断された電磁鋼板5を巻き重ねて巻鉄心1とする巻回機構16とを備える。尚、この製造装置11の各機構は、コンピュータ等からなる制御装置(図示せず)により制御される。
【0014】
前記搬送機構13は、長尺なフープ材12をロール状に巻いたものがセットされた供給源17から、巻回機構16までの搬送路18を、フープ材12を矢印A方向に順送りに搬送するものである。図1に模式的に示すように、搬送機構13は、フープ材12を供給源17から引き出して微細磁区加工装置14側に送る第1の搬送ローラ19、切断機構15を経たフープ材12(電磁鋼板5)を巻回機構16側に送る第2の搬送ローラ20、それらを駆動するためのモータを含む駆動機構(図示せず)等を備えている。
【0015】
前記微細磁区加工装置14は、搬送路18の途中部の第1の搬送ローラ19の下流部に設けられ、本実施形態では、フープ材12の表面に対して熱プレス装置による微細磁区加工を行うように構成されている。即ち、微細磁区加工装置14は、図2にも示すように、例えば平坦なベッド21、このベッド21に対して上下動するラム22、このラム22の下面に取付けられたプレス型23を備え、プレス型23の加熱状態でフープ材12に対する圧印加工を行う。
【0016】
この場合、図3に示すように、前記プレス型23の表面には、全面に渡って多数の針状の突起23aが設けられている。この微細磁区加工装置14における圧印加工により、フープ材12の表面の所定範囲に対し、熱的なストレス及び機械的なストレスが付与され、突起23aによる無数の微細な刻印が施される。これによって、フープ材12の表面に微細磁区加工処理部7が設けられ、その微細磁区加工処理部7においては、磁気抵抗が減少することが知られている。
【0017】
前記切断機構15は、図1及び図2に示すように、ダイス24と、そのダイス24に対して上下動する切断刃25とを備え、搬送路18を搬送されるフープ材12の先端部を、所定長さで裁断して、1ターン分の長さ寸法の電磁鋼板5を得るように構成されている。このとき、図2に示すように、微細磁区加工処理部7の手前端部の位置でフープ材12が切断され、次に切断される電磁鋼板5の先端部に微細磁区加工処理部7が位置されるようになっている。切断機構15において切断された電磁鋼板5は、更に巻回機構16に送られ、巻鉄心1の巻回作業が行われる。
【0018】
次に、上記構成の製造装置11における巻鉄心1の製造手順について述べる。上記構成の巻鉄心1の製造装置11においては、搬送機構13により、フープ材12の供給源17から、該フープ材12が搬送路18を矢印A方向に順送りに搬送される。そして、搬送路18の途中部において、微細磁区加工装置14により、フープ材12のうち電磁鋼板5の切断端部となる部分に微細磁区加工が施されて微細磁区加工処理部7が形成される(微細磁区加工工程)。この後、搬送路18を送られるフープ材12は、切断機構15により、切断されて所定寸法の電磁鋼板5とされる(切断工程)。
【0019】
これにより、先端部の所定範囲に微細磁区加工処理部7が設けられた電磁鋼板5が得られる。この後、巻回機構16により、電磁鋼板5が巻き重ねられて巻鉄心1が得られる。この場合、製造装置11においては、フープ材12が搬送路18を搬送される途中で、フープ材12の必要な位置に微細磁区加工の処理がなされ、そのまま切断されて所定寸法の電磁鋼板5となって巻回機構16に送られる。このとき、巻回機構16に送られる電磁鋼板5は、所定寸法に切断されると共に、その切断端部に微細磁区加工処理部7が設けられたものとなる。
【0020】
このように本実施形態によれば、フープ材12を供給源17から巻回機構16まで搬送する搬送機構13を備えると共に、搬送路18の途中部に微細磁区加工装置14及び切断機構15を備え、搬送路18の途中部において電磁鋼板5の切断端部となる部分に微細磁区加工を施す微細磁区加工工程と、フープ材12を切断して所定寸法の電磁鋼板5とする切断工程とを含む。従って、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を奏する。
【0021】
特に本実施形態では、切断機構15は、微細磁区加工装置14の下流において、フープ材12のうち、微細磁区加工処理部7の端部で切断加工を行う構成とした。これにより、フープ材12に対して、微細磁区加工装置14による微細磁区加工が行われた後、切断機構15による切断加工が行われる。従って、微細磁区加工及び切断加工を夫々確実に行うことができる。また本実施形態では、微細磁区加工装置14は、フープ材12の表面に対して熱プレス装置による微細磁区加工を行うように構成した。これにより、加熱状態のプレス型23をフープ材12の表面に押付けることによって微細磁区加工を施すことができ、比較的簡単な構成で済むと共に、簡単な処理で必要な微細磁区加工処理部7を形成することができる。
【0022】
(2)第2、第3の実施形態
図4は、第2の実施形態を示している。この第2の実施形態の巻鉄心の製造装置が、上記第1の実施形態の製造装置11と異なるところは、次の構成にある。即ち、本実施形態では、搬送路18の途中部の第1の搬送ローラ19の下流部には、やはり熱プレス装置からなる微細磁区加工装置31が設けられている。この微細磁区加工装置31は、多数の突起を有するプレス型32を備えているのであるが、このプレス型32は、上記第1の実施形態のプレス型23と比較して、フープ材12の搬送方向つまり長手方向に2倍の大きさを備えている。この微細磁区加工装置31により、フープ材12の表面には、上記第1の実施形態と比較して長手方向に2倍の範囲で微細磁区加工処理部33が設けられる。
【0023】
そして本実施形態では、微細磁区加工装置31の下流に切断機構15が設けられているのであるが、この切断機構15は、フープ材12のうち、微細磁区加工装置31による微細磁区加工処理部33の加工範囲の中間部分で切断を行う構成とされている。これによれば、フープ材12のうち、微細磁区加工装置31によって加工された範囲の中間部分で、切断機構15による切断加工が行われる。従って、フープ材12から切離される電磁鋼板5の終端部と、次にフープ材12から切離されるべき電磁鋼板5の先端部との双方に、一回の加工動作によって、微細磁区加工が施されることになる。
【0024】
この結果、この第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を得ることができる。これに加えて、より効率的な微細磁区加工を行うことができる。
【0025】
図5は、第3の実施形態を示している。この第3の実施形態の巻鉄心の製造装置が、上記第1の実施形態の製造装置11と異なるところは、微細磁区加工装置41に、切断機構をいわば一体化した構成にある。即ち、微細磁区加工装置41は、やはり熱プレス装置からなり、切断装置のダイスを兼用するベッド42、このベッド42に対して上下動するラム43、このラム43の下面に取付けられたプレス型23を備えると共に、ラム43の側面のうち搬送方向前方の面に取付けられた切断刃44を備えている。
【0026】
これにより、搬送路18を搬送されるフープ材12は、微細磁区加工装置41において、ラム43が下降されることにより、プレス型23の加熱状態でフープ材12に対する圧印加工が行われ、表面に微細磁区加工処理部7が設けられる。これと同時に、切断刃44によって、微細磁区加工処理部7の手前端部の位置でフープ材12が切断され、先端部に微細磁区加工処理部7を有する電磁鋼板5となって巻回機構16に送られる。次に切断される電磁鋼板5の先端部に微細磁区加工処理部7が位置されることになる。このように、フープ材12に対する微細磁区加工装置41による微細磁区加工と、切断機構による切断加工とが同じタイミングで一括して行われる。
【0027】
このような第3の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を得ることができる。そして本実施形態では、フープ材12に対する微細磁区加工と、切断機構による電磁鋼板5の切断加工とを一括して行うことができ、より効率的な製造作業を行うことができる。フープ材12の微細磁区加工処理部7に対する切断位置の位置ずれが起きにくいというメリットも得られる。
【0028】
(3)第4~第6の実施形態
図6は、第4の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なるところは、微細磁区加工装置51の構成にある。即ち、本実施形態では、熱プレス装置からなる微細磁区加工装置14に代えて、微細磁区加工装置51は、フープ材12の表面に対するレーザ照射より微細磁区加工を行うように構成されている。詳しく図示はしないが、この微細磁区加工装置51は、レーザ発振器や、ガルバノミラー等からなるスキャン装置を備えており、フープ材12の表面に対し、連続した線状に延びるレーザ照射処理を、互いに交差する縦横二方向即ちX、Y方向に多数本ずつ格子状に施すように構成されている。
【0029】
この微細磁区加工装置51によるレーザ照射処理により、フープ材12の表面には、格子状の線状痕が形成され、この線状痕の形成範囲が微細磁区加工処理部52となる。この微細磁区加工処理部52は、フープ材12の表面に磁区微細分化がなされたものであり、この部分における磁気抵抗を減少させることができる。尚、レーザ照射処理により線状痕が形成される間隔は、例えば縦横共に2.0mm以下とされる。より好ましくは、0.5mm以下である。線状痕がフープ材12の圧延方向即ち長手方向に対し斜め方向に傾斜する形態で設けるようにしても良い。
【0030】
このような第4の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を得ることができる。そして本実施形態では、微細磁区加工装置51により、フープ材12の表面に対するレーザ照射によって微細磁区加工を確実に施すことができ、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0031】
図7及び図8は、第5の実施形態を示すものである。図7に示すように、この第5の実施形態が、上記第4の実施形態と異なる点は、前記微細磁区加工装置51に加えて、フープ材12の裏面即ち図で下面に対してレーザ照射より微細磁区加工を行う微細磁区加工装置53を設けた構成にある。これにより、微細磁区加工装置51によってフープ材12の表面に微細磁区加工処理部52が形成されると共に、微細磁区加工装置53によってフープ材12の裏面に微細磁区加工処理部54(図8参照)が形成される。
【0032】
このとき、図8に示すように、微細磁区加工処理部52及び微細磁区加工処理部54は、フープ材12の所定長さの範囲に設けられるのであるが、表裏面で位置をずらした状態、例えば半ピッチ分だけずれた位置に設けられる。ここで、微細磁区加工にレーザ照射を採用した場合、レーザを照射された面側でのフープ材12の熱膨張・熱収縮により、フープ材12に、レーザ照射面と反対側に凸となるような反りや歪みが発生する事情がある。ところが、本実施形態では、図8に示すように、フープ材12の熱歪みを、両面で打ち消し合うようにしながらレーザ照射の処理を行うことができ、反りや歪みの発生に起因した寸法精度低下等の問題を解消することができる。
【0033】
従って、この第5の実施形態によれば、上記第4の実施形態と同様に、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を得ることができる。また、微細磁区加工装置51、53により、フープ材12に対するレーザ照射によって微細磁区加工を確実に施すことができ、信頼性の高い処理を行うことができる。更に、レーザ照射に起因するフープ材12の熱歪みの発生を抑制することができる。尚、電磁鋼板5の端部の両面に微細磁区加工が施されているので、巻鉄心1とした際の接合部での磁気抵抗をより小さくすることができ、損失の低減により効果的となる。
【0034】
図9は、第6の実施形態を示すものであり、上記第4の実施形態とは次の点で異なる。即ち、この第6の実施形態では、搬送路18のうち、微細磁区加工装置51によりフープ材12の表面に対するレーザ照射が行われる部分に、矯正ローラ55が設けられている。この矯正ローラ55は、微細磁区加工装置51によるレーザ照射中において、フープ材12の下面側を受けることにより、フープ材12に対し、熱歪みによる熱収縮分を想定した上面側に凸となる湾曲を付与するようになっている。これにより、フープ材12に対するレーザ照射は、矯正ローラ55により熱歪みを矯正しながら行われる。
【0035】
従って、この第6の実施形態によれば、上記第4の実施形態と同様に、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を得ることができる。また、微細磁区加工装置51により、フープ材12に対するレーザ照射によって微細磁区加工を確実に施すことができ、信頼性の高い処理を行うことができる。更に、矯正ローラ55によりフープ材12の熱歪みを矯正しながらレーザ照射が行われるので、フープ材12の熱歪み及びそれに伴う悪影響を効果的に防止することができる。
【0036】
(4)第7、第8の実施形態、その他の実施形態
図10は、第7の実施形態を示すものである。この第7の実施形態では、微細磁区加工装置61の構成が上記第1の実施形態などと異なっている。即ち、微細磁区加工装置61は、フープ材12の下面を受ける受け台62と、その上方に設けられる針状工具63と、その針状工具63を前後左右に移動させる駆動機構(図示せず)とを備えて構成されている。前記針状工具63は、横長な柄部63aの下面に、けがき針と称される複数本のバイト63bを並んで取付けて構成されている。
【0037】
この微細磁区加工装置61は、バイト63bをフープ材12の表面に押し当てた状態で、針状工具63を駆動機構により縦横方向、即ち矢印B及び矢印C方向に往復移動させることを繰返し、フープ材12の表面の所定の領域に対して、複数本のバイト63bにより縦横方向に延びる多数本の傷を付けるように構成されている。これにて、フープ材12の表面に微細磁区加工処理部64が形成される。
【0038】
このような第7の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を得ることができる。そして、本実施形態では、フープ材12の表面に対して針状工具63を移動させながら多数の傷を付けるといった比較的簡単な処理で、機械的に微細磁区加工を施すことができる。フープ材12の熱歪みによる反り等が生ずることも防止できる。
【0039】
図11は、第8の実施形態を示すものであり、微細磁区加工装置71の構成が上記第1の実施形態などと異なっている。即ち、微細磁区加工装置71は、フープ材12の下面を受けるテーブル72と、その上方に搬送方向前後に並んで設けられた2個のカッターローラ73、74とを備えて構成されている。前記カッターローラ73、74は、共に、フープ材12の幅方向全体に延びる円筒状をなし、フープ材12の搬送方向とは直交する方向に水平に延びる回転軸を中心に回転可能とされている。これらカッターローラ73、74は、フープ材12の表面の微細磁区加工を施すべき位置に対して下降して押付けられるようになっている。
【0040】
各カッターローラ73、74の外周面には、夫々軸方向に対して傾斜方向に延びる複数本の刃部73a、74aが設けられている。このとき、刃部73aと刃部74aとでは、軸方向に対して傾斜方向が逆向きとされている。刃部73a、74aを螺旋状に設けるようにしても良い。この微細磁区加工装置71においては、テーブル72上のフープ材12の表面に対し、カッターローラ73、74を下方に向けて押し当てた状態で、フープ材12が矢印A方向に搬送されながら、カッターローラ73、74が矢印D方向に回転される。これにより、カッターローラ73、74の刃部73a、74aによって、フープ材12の表面に、多数個の菱形を組合せたような網目状の傷が付けられ、微細磁区加工処理部75が形成される。
【0041】
このような第8の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、フープ材12の送り出しから巻鉄心1として巻回されるまでの一連の工程中に、損失の低減を図るための微細磁区加工を電磁鋼板5に施すことを含めることができ、効率的な製造を行うことが可能となるという優れた効果を得ることができる。そして、本実施形態では、フープ材12の表面に対してカッターローラ73、74により多数の傷を付けるといった比較的簡単な処理で、機械的に微細磁区加工を施すことができる。フープ材12の熱歪みによる反り等が生ずることも防止できる。
【0042】
尚、上記した各実施形態では、フープ材の表面に対する圧印加工やレーザ照射処理によって微細磁区加工処理部を設けるようにしたが、それ以外にも、フープ材の表面に対する数百℃程度の熱的ストレスを与えることにより微細磁区加工を施すようにしても良い。以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
図面中、1は巻鉄心、5は電磁鋼板、6は接合部、7、33、52、54、64、75は微細磁区加工処理部、11は製造装置、12はフープ材、13は搬送機構、14、31、41、51、53、61、71は微細磁区加工装置、15は切断機構、16は巻回機構、17は供給源、18は搬送路、23、32はプレス型、25、44は切断刃、55は矯正ローラ、63は針状工具、73、74はカッターローラを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11