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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】コークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/06 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
C10B57/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019174177
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050279
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000156961
【氏名又は名称】関西熱化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】満行 流星
(72)【発明者】
【氏名】西端 裕子
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0018275(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105295973(CN,A)
【文献】特開2011-133344(JP,A)
【文献】特開2013-107930(JP,A)
【文献】特開2015-232102(JP,A)
【文献】特開2017-165929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 57/06
C10B 57/04
C10B 57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭にフライアッシュを添加して配合炭を得る工程と、
前記配合炭を乾留する工程と
を含み、
前記フライアッシュは、フライアッシュ全体に対する粒径45μm以下のフライアッシュの割合が99.7質量%以上であり、
前記フライアッシュの平均粒径は、35μm以下であることを特徴とするコークスの製造方法。
【請求項2】
前記フライアッシュの添加量は、配合炭全体に対して10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコークスの製造方法。
【請求項3】
前記フライアッシュの添加量は、配合炭全体に対して3質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄原料として用いられるコークスは、高炉内での通液性を確保するため、高強度であることが求められる。また、従来、高炉用コークスとして高反応性コークスを用いることにより、高炉の操業効率を向上させることができることが知られている。
【0003】
特許文献1には、高反応性コークスを製造する方法として、石炭にアルカリ土類金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の混合物を添加してコークス炉で乾留することが開示されている。特許文献1には、コークス強度を確保して高炉の通気性を維持することができ、かつ、高炉寿命、高炉安定操業の面で問題がない、高炉用高反応性コークスの製造方法を提供することを目的とすることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、アルカリ土類金属および/または遷移金属を1質量%以上含む石炭を配合炭中に2質量%以上混合してコークス炉で乾留することが開示されている。特許文献2には、高炉用コークスとして高炉装入時に粉化による通気性低下などが生じない充分なコークス強度を確保でき、かつ、高炉寿命、高炉安定操業の面で問題がない、高炉用高反応性コークスの製造方法を提供することを目的とすることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、遷移金属とアルカリ土類金属との複合酸化物を、石炭に添加、混合して混合物を得る工程と、前記混合物を乾留する工程とを含む高強度高反応性コークスの製造方法が開示されている。特許文献3には、触媒として遷移金属とアルカリ土類金属との複合酸化物を石炭に添加・混合して混合物とし、更に該混合物を乾留してコークスを製造しているため、反応性と強度に優れたコークスが提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-348576号公報
【文献】特開2003-306681号公報
【文献】特開2013-14642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に開示されているコークスの製造方法では、得られるコークスの強度が低下するおそれがあることを本発明者らは見出した。以下、この点について説明する。
コークス製造時の石炭の乾留工程では、石炭が軟化溶融する過程において、石炭中の化学結合が熱分解する(熱により切断される)が、石炭分子内の水素(移行性水素)が結合の切断箇所に移行して安定化するため、低分子化が進行して流動性が高くなると考えられている。しかしながら、酸化鉄などの遷移金属酸化物を石炭に添加すると、酸化鉄が移行性水素を消費してしまい、切断された結合の安定化を果たせなくなってしまう。そのため、再び架橋結合が生じ、低分子化が進まず、最高流動度が低下し、乾留して得られるコークスの強度の低下が生じる。
【0008】
また、製鉄原料として用いられるコークスは、高炉内での通気性を確保するためには、高強度であるのみならず、ある程度の粒径を有することが求められる。
【0009】
しかしながら、特許文献1~3に開示されているコークスの製造方法では、得られるコークスの粒径が低下するおそれがある。
【0010】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、得られるコークスが高強度であり、且つ、高反応性を有するのみならず、さらに、得られるコークスの粒径を向上させることが可能なコークスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係るコークスの製造方法は、
石炭にフライアッシュを添加し添加炭を得る工程と、
前記添加炭を乾留する工程と
を含むことを特徴とする。
【0012】
フライアッシュとは、火力発電所における微粉炭燃焼の際、溶融状態になった灰の粒子が、高温の燃焼ガス中を浮遊し、ボイラ出口で温度が低下することに伴い、球形微細粒子となって電気集じん器に捕集されるものである。
【0013】
前記フライアッシュは、その組成として、シリカ(SiO)とアルミナ(Al)と触媒物質とを少なくとも含む。
【0014】
本発明では、石炭にフライアッシュを添加する。フライアッシュは、球状であるため、粒子間のすべり性が良い。しかも、フライアッシュは、比較的細粒である。従って、石炭にフライアッシュを添加することにより乾留前の添加炭の充填密度を高くすることができる。そして、充填密度の高い添加炭を乾留することにより、コークスを高強度化することができる。
なお、上述したように、フライアッシュは、触媒物質を含有するため、得られるコークスの強度を低下させるおそれはある。
しかしながら、本発明では、フライアッシュを添加しているため、上述の通り、充填密度を高めることによるコークスの高強度化を図ることができる。従って、少なくとも、従来と比較して遜色ない程度にコークスの強度を高く維持することができる。
【0015】
また、本発明によれば、得られるコークスに、触媒物質を含有するフライアッシュが添加されているため、炭素と二酸化炭素とから一酸化炭素を生成する反応が活性化されることになる。従って、前記構成によれば、得られるコークスの熱間反応性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明では、石炭にシリカ及びアルミナを含有するフライアッシュを添加して添加炭を得る。添加炭の乾留時には、一旦、石炭は溶融し、その後、固化する。本発明によれば、添加炭にシリカ及びアルミナを含有するフライアッシュが添加されているため、前記添加炭の乾留時に石炭等は溶融し、その後固化するものの、乾留の間、シリカ及びアルミナは溶融することなく不溶分として存在する。石炭等は溶融後の固化により収縮する一方、シリカ及びアルミナは収縮しないため、シリカ及びアルミナと、周囲の石炭との収縮率の差が大きくなる。そのため、大亀裂が発生する前に微小亀裂が発生し応力が緩和される。従って、得られるコークスの粒径を向上させることができる。
【0017】
このように、本発明に係るコークスの製造方法によれば、得られるコークスが高強度であり、且つ、高反応性を有するのみならず、さらに、得られるコークスの粒径を向上させることが可能となる。
【0018】
前記構成において、前記フライアッシュの添加量は、配合炭全体に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0019】
前記フライアッシュの添加量が添加炭全体に対して10質量%以下であると、得られるコークスの強度をより高強度とすることができる。
【0020】
前記構成において、前記フライアッシュの添加量は、添加炭全体に対して3質量%以下であることが好ましい。
【0021】
前記フライアッシュの添加量が添加炭全体に対して3質量%以下であると、得られるコークスの強度をさらに高強度とすることができる。
【0022】
前記構成において、前記フライアッシュは、フライアッシュ全体に対する粒径45μm以下のフライアッシュの割合が30質量%以上であることが好ましい。
【0023】
前記フライアッシュの粒径45μm以下の割合が30質量%以上であると、前記フライアッシュ全体としての比表面積が比較的大きいため、前記触媒物質との接触面積が広くなり、得られるコークスの熱間反応性をより向上させることができる。
【0024】
前記構成において、前記フライアッシュは、フライアッシュ全体に対する粒径45μm以下のフライアッシュの割合が90質量%以上であることが好ましい。
【0025】
前記フライアッシュの粒径45μm以下の割合が90質量%以上であると、前記フライアッシュ全体としての比表面積がさらに大きくなるため、前記触媒物質との接触面積がさらに広くなり、得られるコークスの熱間反応性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、得られるコークスが高強度であり、且つ、高反応性を有するのみならず、さらに、得られるコークスの粒径を向上させることが可能なコークスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】フライアッシュA、フライアッシュBの粒度分布である。
図2】かさ密度の測定に使用した設備を模式的に示す側面図である。
図3図2の平面図である。
図4】フライアッシュの添加率とかさ密度との関係を示すグラフである。
図5】評価用コークスの粒度分布である。
図6】フライアッシュの添加率とコークスの平均粒径との関係を示すグラフである。
図7】フライアッシュの添加率とコークス強度DIとの関係を示すグラフである。
図8】フライアッシュの添加率とコークスの熱間反応性指数との関係を示すグラフである。
図9】フライアッシュの添加率とコークスのJIS反応性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態に係るコークスの製造方法について説明する。
【0029】
本実施形態に係るコークスの製造方法は、
石炭にフライアッシュを添加して配合炭を得る工程と、
前記配合炭を乾留する工程と
を含む。
【0030】
前記フライアッシュは、その組成として、シリカ(SiO)とアルミナ(Al)と触媒物質とを少なくとも含む。
【0031】
本実施形態では、石炭にフライアッシュを添加する。フライアッシュは、球状であるため、粒子間のすべり性が良い。しかも、フライアッシュは、比較的細粒である。従って、石炭にフライアッシュを添加することにより乾留前の添加炭の充填密度を高くすることができる。そして、充填密度の高い添加炭を乾留することにより、コークスを高強度化することができる。
なお、上述したように、フライアッシュは、触媒物質を含有するため、得られるコークスの強度を低下させるおそれはある。
しかしながら、本実施形態では、フライアッシュを添加しているため、上述の通り、充填密度を高めることによるコークスの高強度化を図ることができる。従って、少なくとも、従来と比較して遜色ない程度にコークスの強度を高く維持することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、得られるコークスに、触媒物質を含有するフライアッシュが添加されているため、炭素と二酸化炭素とから一酸化炭素を生成する反応が活性化されることになる。従って、前記構成によれば、得られるコークスの熱間反応性を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、石炭にシリカ及びアルミナを含有するフライアッシュを添加して添加炭を得る。添加炭の乾留時には、一旦、石炭は溶融し、その後、固化する。本実施形態によれば、添加炭にシリカ及びアルミナを含有するフライアッシュが添加されているため、前記添加炭の乾留時に石炭等は溶融し、その後固化するものの、乾留の間、シリカ及びアルミナは溶融することなく不溶分として存在する。石炭等は溶融後の固化により収縮する一方、シリカ及びアルミナは収縮しないため、シリカ及びアルミナと、周囲の石炭との収縮率の差が大きくなる。そのため、大亀裂が発生する前に微小亀裂が発生し応力が緩和される。従って、得られるコークスの粒径を向上させることができる。
【0034】
このように、本実施形態に係るコークスの製造方法によれば、得られるコークスが高強度であり、且つ、高反応性を有するのみならず、さらに、得られるコークスの粒径を向上させることが可能となる。
【0035】
前記シリカの含有量は、フライアッシュ全体を100質量%としたときに、通常、35質量%以上である。前記シリカの含有量は、45質量%以上、60質量%以上等の場合も挙げられる。また、前記シリカの含有量は、80質量%以下、60質量%以下等の場合が挙げられる。
【0036】
前記アルミナの含有量は、フライアッシュ全体を100質量%としたときに、通常、10質量%以上である。前記アルミナの含有量は、20質量%以上、25質量%以上等の場合も挙げられる。また、前記アルミナの含有量は、40質量%以下、30質量%以下等の場合が挙げられる。
【0037】
前記触媒物質としては、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、及び、遷移金属化合物のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0038】
前記アルカリ土類金属は、周期律表2族に属する元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)である。
【0039】
前記アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物が挙げられる。また、前記アルカリ土類金属化合物としては、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩、及び、複塩等も挙げられる。
【0040】
前記アルカリ土類金属化合物の具体的としては、石灰石(CaCO)、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、ドロマイト(MgCO)等が挙げられる。
【0041】
前記遷移金属は、周期律表の3族から11族までの元素である。
【0042】
前記遷移金属化合物としては、前記遷移金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物が挙げられる。前記遷移金属化合物としては、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩、及び、複塩等も挙げられる。
【0043】
前記遷移金属の具体的としては、鉄(Fe)、前記遷移金属化合物の具体例としては、酸化鉄(Fe)が挙げられる。
【0044】
前記触媒物質の含有量は、フライアッシュ全体を100質量%としたときに、通常、1質量%以上、40質量%以下程度である。前記触媒物質の含有量は、8質量%以上、15質量%以上等の場合も挙げられる。また、前記触媒物質の含有量は、30質量%以下、20質量%以下等の場合が挙げられる。
【0045】
前記フライアッシュは、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、触媒物質以外のその他成分を含んでいてもよい。前記その他成分としては、TiO、KO、MnO、Pが挙げられる。
【0046】
前記フライアッシュは、フライアッシュ全体に対する粒径45μm以下のフライアッシュの割合が30質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
前記フライアッシュの粒径45μm以下の割合が30質量%以上であると、前記フライアッシュ全体としての比表面積が比較的大きいため、前記触媒物質との接触面積が広くなり、得られるコークスの熱間反応性をより向上させることができる。
また、前記フライアッシュの粒径45μm以下の割合が90質量%以上であると、前記フライアッシュ全体としての比表面積がさらに大きくなるため、前記触媒物質との接触面積がさらに広くなり、得られるコークスの熱間反応性をさらに向上させることができる。
前記粒径の測定方法は、実施例記載の方法による。
【0047】
前記フライアッシュの平均粒径は、35μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
前記フライアッシュの平均粒径が35μm以下であると、乾留前の添加炭の充填密度をより高くすることができる。そして、充填密度のより高い添加炭を乾留することにより、コークスをより高強度化することができる。
また、前記フライアッシュの平均粒径が15μm以下であると、乾留前の添加炭の充填密度をさらに高くすることができる。そして、充填密度のさらに高い添加炭を乾留することにより、コークスをさらに高強度化することができる。前記平均粒径の測定方法は、実施例記載の方法による。
【0048】
本実施形態に係るコークスの製造方法では、まず、石炭に前記フライアッシュを添加して添加炭を得る。前記石炭としては、特に限定されず、従来公知の石炭を用いることができる。前記石炭は、単一品種であってもよく、複数品種の混合であってもよい。
【0049】
前記フライアッシュの添加量は、配合炭全体に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。前記フライアッシュの添加量が添加炭全体に対して10質量%以下であると、得られるコークスの強度をより高強度とすることができる。また、前記フライアッシュの添加量が添加炭全体に対して3質量%以下であると、得られるコークスの強度をさらに高強度とすることができる。
【0050】
石炭へのフライアッシュの添加方法は、特に限定されないが、例えば、全体の粉砕粒度が一定以下(例えば、3mm以下)のものが含まれる割合が一定量(例えば、70~100%)となるように、ジョークラッシャー、コーヒーミルあるいはハンマーミルで粉砕した上で、全体を配合することが好ましい。
【0051】
前記添加炭を得た後、前記添加炭を乾留する。乾留方法としては、従来公知方法を採用することができる。例えば、装入密度700~900kg/m、炉温1000~1300℃、乾留時間15~30時間の範囲内の条件で適宜決定すればよい。
【0052】
このようにして得られるコークスは、高強度であり、且つ、高反応性を有するのみならず、さらに、粒径が向上させたものとなる。
【0053】
本実施形態において、得られるコークスの平均粒径は、44mm以上が好ましく、46mm以上がより好ましい。前記平均粒径は、大きいほど好ましいが、例えば、60mm以下、55mm以下である。コークスの前記平均粒径の測定方法は、実施例記載の方法による。
【0054】
本実施形態において、得られるコークスの強度DI(ドラム強度指数(DI150 15))は、84.0%以上が好ましく、84.5%以上がより好ましく、84.8%以上がさらに好ましい。前記強度DIは、大きいほど好ましいが、例えば、87.0%以下、86.5%以下である。コークスの前記強度DIの測定方法は、実施例記載の方法による。
【0055】
本実施形態において、得られるコークスの熱間反応性指数(CRI)は、37以上が好ましく、39以上がより好ましく、41以上がさらに好ましい。前記熱間反応性指数(CRI)は、熱間反応後強度が低くなりすぎない観点から、例えば、50以下、45以下等が好ましい。コークスの前記熱間反応性指数(CRI)の測定方法は、実施例記載の方法による。
【0056】
本実施形態において、得られるコークスのJIS反応性(ReI)は、14以上が好ましく、16以上がより好ましく、18以上がさらに好ましい。前記JIS反応性(ReI)は、熱間反応後強度が低くなりすぎない観点から、例えば、25以下、22以下、21以下、20以下等が好ましい。コークスの前記JIS反応性(ReI)の測定方法は、実施例記載の方法による。
【実施例
【0057】
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[フライアッシュ]
<組成>
本実施例で使用するフライアッシュA及びフライアッシュBの組成を、蛍光X線分析装置(XRF;理学電機工業株式会社製、製品名:ZSX-100e)を用いて、分析した。
結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
<粒径>
フライアッシュA、フライアッシュBの粒度分布を、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、装置名:SALD-2200)を用いて分析した。図1に得られたフライアッシュA、フライアッシュBの粒度分布を示す。
また、フライアッシュ全体に対する粒径45μm以下のフライアッシュの含有量、及び、平均粒径について、表2に示す。
なお、平均粒径は、得られた粒度データの割合をフラクション毎に算出し、それらの加重平均値を求めた。より詳細には、後述するコークスの平均粒径の算出と同様とした。
【0061】
【表2】
【0062】
[評価用添加炭の調整]
まず、表3に示す配合炭Xを準備した。
表3には、配合炭Xの性状(VM、ASH、RoMF、TI)について示している。
表3中、VM、ASH、RoMF、TIは、下記を意味する。
VM:空気との接触を断って、既定の条件のもとで試料を加熱したときの、質量減少率から水分を差引いた値(JIS M 8812に従って測定できる。)
ASH:空気雰囲気下で、既定の条件のもと、試料を燃焼した時に得られる灰の割合(JIS M 8812に従って測定できる。)
Ro:ビトリニット(主として植物の木質部に由来する微細組織)の反射率測定において、1個の研磨試料の50点以上の最大反射率の平均値。原料石炭の石炭化度を示すパラメーター。
MF:ギーセラー最高流動度(ギーセラ-プラストメーターを使用する試験(JISM8801にその詳細が規定されている石炭の加熱軟化溶融特性試験)において回転翼が最高回転数を示す値の対数値。原料石炭の粘結性を代表する指標。)
TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(JIS M 8816に従って測定できる。)
【0063】
【表3】
【0064】
フライアッシュ(フライアッシュA、B)を表4に示す質量比率で配合した。配合する際には、粉砕粒度が3mm以下のものが含まれる割合が約80%となるように、ジョークラッシャー、コーヒーミルあるいはハンマーミルで粉砕した上で、配合した。配合炭を作成後、水分を7.5%±0.2%に調整した。
表4中の配合炭Xは、フライアッシュを含まない。例えば、製造例2は、製造例1の配合炭XとフライアッシュAとを、「(配合炭X):(フライアッシュA)=99:1」の比率で配合したことを示す。
【0065】
【表4】
【0066】
[添加炭のかさ密度の測定]
図2は、かさ密度の測定に使用した設備の側面図であり、図3は、その平面図である。図2図3に示すように、下面にゲートを有するホッパーに、断面がゲートと同一形状の筒状の受け皿を接続したかさ密度を測定するための設備を準備した。ゲートは、縦25cm×横9cmの長方形である。また、ゲートは、受け皿の最下面から高さ132cmの位置にある。
次に、前記設備の前記ホッパーに添加炭(製造例1についてはフライアッシュが添加されていない配合炭)を7kg溜めた。添加炭は、装入時を考慮して水分を7.5%±0.2%に調整したものを用いた。
次に、前記ゲートを開放して添加炭を落下させた。その後、受け皿に落ちた添加炭の高さを6カ所測定して平均値を求め、受け皿の面積を掛け合わせて落下後の体積を求めた。次に、落下させた重量(7kg)を落下後の体積で割ることにより、かさ密度(kg/m)を求めた。
フライアッシュの添加率とかさ密度との関係を図4に示す。
図4から分かるように、添加炭におけるフライアッシュの添加率が大きくなるにつれて、かさ密度が向上する。従って、実際の操業において、フライアッシュが添加された添加炭を用いれば、高強度なコークスが得られることになることが分かる。つまり、フライアッシュが添加された添加炭を高炉内に装入すると、高い充填密度で装入されることになり、充填密度の高い添加炭を乾留すれば、高強度なコークスが得られることになる。
【0067】
[評価用コークスの製造]
(製造例10)
製造例1の評価用配合炭を、L:235mm×W:300mm×H:235mmの缶容器に充填密度735dry-kg/mで充填した。
次に、乾留温度1050℃で約19時間乾留して評価用コークスを得た。
【0068】
(製造例11)
製造例3の評価用配合炭を用いたこと以外は、製造例10と同様にして評価用コークスを得た。
【0069】
(製造例12)
缶容器への充填密度を761dry-kg/mに変更したこと以外は、製造例11と同様にして評価用コークスを得た。
なお、製造例12において缶容器への充填密度を761dry-kg/mに変更した理由としては、実際の操業において製造例3の配合炭を使用した場合、製造例1の配合炭と比較して充填密度は高くなるためである。すなわち、製造例3の評価用配合炭を用いた場合、図4より、充填密度は、製造例1と比較して約(730/705)倍になるはずである。つまり、図4によれば、製造例1の充填密度が約705dry-kg/mであるときに製造例3の充填密度が約730dry-kg/mであるので、製造例10において充填密度735dry-kg/mとして評価用コークスを製造するならば、同一の操業条件であるとしてコークスを評価するならば、製造例13では、充填密度を735dry-kg/m×(730/705)、すなわち、約761dry-kg/mとして評価用コークスを製造して評価する方がより正確な対比となると考えたためである。
【0070】
(製造例13)
製造例5の評価用配合炭を用いたこと以外は、製造例10と同様にして評価用コークスを得た。
【0071】
(製造例14)
缶容器への充填密度を790dry-kg/mに変更したこと以外は、製造例13と同様にして評価用コークスを得た。
なお、製造例14において缶容器への充填密度を790dry-kg/mに変更した理由としては、上記と同じ理由による。
【0072】
表5に、製造例10~製造例14の評価用コークスの製造条件(使用配合炭と充填密度)をまとめた。
【0073】
【表5】
【0074】
<コークスの粒径測定>
得られた評価用コークスを高さ2mのところから2回落下させた(シャッター試験)。その後、ドラム(内径1.5m×胴長1.5m)に入れ、15rpmで2分間回転させた。以上により、評価用コークスを粉砕した。
【0075】
粉砕後のコークスについて、篩目100mm、75mm、50mm、38mm、25mm、及び、15mmの篩で篩分けをし、各篩目Dp(mm)の篩上に残った質量%を得た。結果を表6に示す。また、表6に示した結果を粒分布として図5に示す。
【0076】
<コークスの平均粒径の算出>
表6に示した各粒度分布の代表粒度と割合から加重平均により算出した。具体的には、下記のようにして算出した。
100mm以上のフラクションの代表粒度を115mm、割合をA%、
75mm以上100mm未満のフラクションの代表粒度87.5mm、割合をB%、
50mm以上75mm未満のフラクションの代表粒度を67.5mm、割合をC%、
38mm以上50mm未満のフラクションの代表粒度を44.0mm、割合をD%、
25mm以上38mm未満のフラクションの代表粒度を31.5mm、割合をE%、
15mm以上25mm未満のフラクションの代表粒度を20.0mm、割合をF%、
15mm未満のフラクションの代表粒度を7.5mmとし、割合をG%とした。
(平均粒径(mm))=(115×A+87.5×B+67.5×C+44.0×D+31.5×E+20.0×F+7.5×G)/100
結果を表6に示す。また、フライアッシュの添加率とコークスの平均粒径との関係を図6に示す。図6から分かるように、コークスの平均粒径は、フライアッシュの添加率が増加するほど大きくなる傾向にある。
【0077】
<コークス強度DIの測定>
得られた評価用コークスについて、JIS-K2151で規格化された落下強度試験法に準拠したシャッター試験を2回施した試料から25mm篩上のコークス塊を採取した。次に、これを用いてJIS-K2151に準拠したドラム強度指数(DI150 15)を測定した。結果を表6に示す。また、フライアッシュの添加率とコークス強度DIとの関係を図7に示す。
図7から分かるように、フライアッシュの添加率が3%である場合(製造例11、製造例12)、フライアッシュの添加率0%(製造例10)と比較して、コークス強度が大きく低下することはなかった。特に、乾留時(コークス製造時)の充填密度が高い製造例12の場合は、コークス強度が向上することが分かった。
また、フライアッシュの添加率が10%である場合(製造例13、製造例14)、乾留時(コークス製造時)の充填密度が同じである製造例10と製造例13との比較では、フライアッシュの添加率が10%であると、フライアッシュを添加しない場合に比べて、コークス強度は1.2%程度低下した。しかしながら、乾留時(コークス製造時)の充填密度が高い製造例14の場合は、フライアッシュを添加しない場合と同等程度のコークス強度を有することが分かった。
【0078】
【表6】
【0079】
<コークスの熱間反応性>
得られた評価用コークスについて、平均粒径19~21mmに整粒した。この試料より19mm篩上から21mm篩下のコークス塊200gを用い、1100℃で2時間CO(5L/min)と反応させた。反応後のコークス重量を測定し、反応前試料重量に対する、反応前試料重量から反応後試料重量を減算した値の割合を熱間反応性指数(CRI)とした。結果を表7に示す。また、フライアッシュの添加率と熱間反応性指数との関係を図8に示す。
図8より、フライアッシュの添加率と熱間反応性とは、フライアッシュの添加率が多くなるほど熱間反応性が高くなるという正の相関があることが分かった。これは、フライアッシュ中の触媒物質が還元反応を促進していることを示していると推察される。
【0080】
<コークスのJIS反応性(ReI)>
JIS-K2151に準拠し、得られた評価用コークスとCOとを950℃で反応させ、反応時のCOとCOの濃度を測定した。測定したCOとCOの濃度に基づいて、下記数式によりJIS反応性を算出した。結果を表7に示す。また、フライアッシュの添加率とJIS反応性との関係を図9に示す。
[JIS反応性]=[(CO濃度)/[(CO濃度)+2×(CO濃度)]]×100
JIS反応性の試験は、粒径が0.75~1.5mmのコークスについての反応性を試験するものである。
図9より、フライアッシュの添加率とJIS反応性とは、フライアッシュの添加率が多くなるほどJIS反応性が高くなるという正の相関があることが分かった。
上述の熱間反応性試験では、評価対象のコークス径が大きいため、コークスに形成されている気孔の影響で反応性が向上しているとの見方をする余地もある。しかしながら、気孔の影響を排除したJIS反応性の試験においてもフライアッシュの添加率が多くなるほどJIS反応性が高くなっている。これにより、気孔ではなくコークスの基質部分においても反応性が向上していることが確認された。
【0081】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9