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特許7275005加硫ゴム成形用離型剤、水希釈液及び加硫ゴム成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】加硫ゴム成形用離型剤、水希釈液及び加硫ゴム成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/60 20060101AFI20230510BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20230510BHJP
   B29C 35/06 20060101ALI20230510BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230510BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20230510BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
B29C33/60
B29C33/02
B29C35/06
C08L71/02
B29K21:00
B29L23:00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019201515
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021074910
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一幸
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093640(JP,A)
【文献】特開2017-177717(JP,A)
【文献】特開2016-165857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/60
B29C 33/02
B29C 35/06
C08L 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含み、
下記成分(A)の全質量が、下記成分(B)の全質量中に対し、4~30倍であり
下記成分(A)の含有率が、下記加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し35~80質量%であり、かつ、
25℃における粘度が500~3000mPa・sであることを特徴とする加硫ゴム成形用離型剤。

(A)重量平均分子量が10000~25000であるポリオキシアルキレンジオール
(B)粘度調整剤
(C)水
【請求項2】
前記成分(A)における前記ポリオキシアルキレンジオールが、下記化学式(A1)で表されるポリオキシアルキレンジオールである請求項1記載の加硫ゴム成形用離型剤。

HO-(EO/PO)m-X-O-(EO/PO)n-H (A1)

前記化学式(A1)中、
EOはオキシエチレン基を表し、
POはオキシプロピレン基を表し、
Xは炭素数2~10のアルキレン基を表し、
EO/POは、EO及びPOの少なくとも一方を表し、EO及びPOの両方を含む場合は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、
m及びnは、それぞれ、EO/POの平均付加モル数を表す。
【請求項3】
前記成分(B)における前記粘度調整剤が、前記成分(A)における前記ポリオキシアルキレンジオール以外のポリオキシエチレン付加物である、請求項1または2に記載の加硫ゴム成形用離型剤。
【請求項4】
130℃における粘度が100~300mPa・sである請求項1から3のいずれか一項に記載の加硫ゴム成形用離型剤。
【請求項5】
前記成分(B)の含有率が、前記加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し1~20質量%である請求項1からのいずれか一項に記載の加硫ゴム成形用離型剤。
【請求項6】
前記成分(B)が、1価アルコールのポリオキシエチレン付加物、成分(A)を除く多価アルコールのポリオキシエチレン付加物、及び脂肪酸のポリオキシエチレン付加物からなる群から選択される少なくとも一つの粘度調整剤である、請求項1から5のいずれか一項に記載の加硫ゴム成形用離型剤。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の加硫ゴム成形用離型剤を水で希釈した水希釈液。
【請求項8】
さらに、請求項1から6のいずれか一項に記載の加硫ゴム成形用離型剤以外の他の離型剤を含む請求項7記載の水希釈液。
【請求項9】
未加硫ゴムと成形型との界面に請求項1から6のいずれか一項に記載の加硫ゴム成形用離型剤又は請求項7若しくは8記載の水希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫成形する加硫成形工程を含むことを特徴とする加硫ゴム成形品の製造方法。
【請求項10】
前記成形型が、マンドレルである請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記加硫ゴム成形品が、ゴムホースである請求項9又は10記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム成形用離型剤、水希釈液及び加硫ゴム成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及びその他の分野において、ゴムホースなどの加硫ゴム成形品が多く使用されている。これらの加硫ゴム成形品の製造では、例えば、所定の形状に成形されたマンドレル等の金型に未加硫ゴムを挿入し、加硫成形した後、加硫されたゴム成形品を金型から引き離す。特に、アクリルゴムは耐熱性、耐油性に優れるため、自動車などの燃料系、潤滑油系、エンジンルーム内の吸・排気系のホースやチューブなどに使用されている。
【0003】
前記金型への未加硫ゴムの挿入及び引き離し作業を容易にするために、加硫ゴム成形用離型剤が用いられる。加硫ゴム成形用離型剤について記載された文献としては、例えば、特許文献1~3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-306094号公報
【文献】特開2017-202664号公報
【文献】特開平09-099439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載されているノンシリコーン系離型剤は、例えば、アクリルゴムホースの加硫成形に用いた場合、加硫中に離型剤がアクリルゴムに吸収される場合がある。この現象が起きると、マンドレル表面に離型剤が残らず、離型性が不十分になるおそれがある。一方、特許文献3に記載されているシリコーン系離型剤は、ホースの挿入性及び離型性に優れているが、水による洗浄性がノンシリコーン系離型剤よりも劣る。
【0006】
そこで、本発明は、挿入性、離型性及び洗浄性の全てに優れた加硫ゴム成形用離型剤と、それを用いた水希釈液及び加硫ゴム成形品の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、下記成分(A)~(C)を含み、下記成分(A)の全質量が、下記成分(B)の全質量中に対し、4~30倍であり、かつ、25℃における粘度が500~3000mPa・sであることを特徴とする。

(A)重量平均分子量が10000~25000であるポリオキシアルキレンジオール
(B)粘度調整剤
(C)水
【0008】
本発明の水希釈液は、前記本発明の加硫ゴム成形用離型剤を水で希釈した水希釈液である。
【0009】
本発明の加硫ゴム成形品の製造方法は、未加硫ゴムと成形型との界面に前記本発明の加硫ゴム成形用離型剤又は前記本発明の水希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫成形する加硫成形工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、挿入性、離型性及び洗浄性の全てに優れた加硫ゴム成形用離型剤と、それを用いた水希釈液及び加硫ゴム成形品の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、例えば、前記成分(A)における前記ポリオキシアルキレンジオールが、下記化学式(A1)で表されるポリオキシアルキレンジオールであってもよい。

HO-(EO/PO)-X-O-(EO/PO)-H (A1)

前記化学式(A1)中、
EOはオキシエチレン基を表し、
POはオキシプロピレン基を表し、
Xは炭素数2~10のアルキレン基を表し、
EO/POは、EO及びPOの少なくとも一方を表し、EO及びPOの両方を含む場合は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、
m及びnは、それぞれ、EO/POの平均付加モル数を表す。
【0013】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、例えば、前記成分(A)の含有率が、前記加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し35~80質量%であってもよい。
【0014】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、例えば、130℃における粘度が100~300mPa・sであってもよい。
【0015】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、例えば、前記成分(B)における前記粘度調整剤が、前記成分(A)における前記ポリオキシアルキレンジオール以外のポリオキシエチレン付加物であってもよい。
【0016】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、例えば、前記成分(B)の含有率が、前記加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し1~20質量%であってもよい。
【0017】
本発明の水希釈液は、例えば、さらに、前記本発明の加硫ゴム成形用離型剤以外の他の離型剤を含んでいても良い。
【0018】
本発明の加硫ゴム成形品の製造方法は、例えば、前記成形型が、マンドレルであっても良い。
【0019】
本発明の加硫ゴム成形品の製造方法は、例えば、前記加硫ゴム成形品が、ゴムホースであっても良い。
【0020】
以下、本発明の具体例について、さらに詳細に説明する。
【0021】
[1.加硫ゴム成形用離型剤]
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、前述のとおり、下記成分(A)~(C)を含み、下記成分(A)の全質量が、下記成分(B)の全質量中に対し、4~30倍であり、かつ、25℃における粘度が500~3000mPa・sであることを特徴とする。

(A)重量平均分子量が10000~25000であるポリオキシアルキレンジオール
(B)粘度調整剤
(C)水
【0022】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、前述のとおり、25℃における粘度が500~3000mPa・sである。粘度が低すぎると、離型性及び挿入性が悪くなるおそれがある。粘度が高すぎると、ハンドリング性(取扱い易さ)が悪くなるおそれがあり、より具体的には、加硫ゴム成形用離型剤が容器(例えば缶)から出ない、加硫ゴム成形用離型剤の使用量が過多になる、等のおそれがある。本発明の加硫ゴム成形用離型剤の25℃における粘度の下限値は、例えば、500mPa・s以上、600mPa・s以上、800mPa・s以上、又は1200mPa・s以上でもよく、上限値は、例えば、3000mPa・s以下、2800mPa・s以下、2500mPa・s以下、又は2300mPa・s以下でもよい。
【0023】
なお、本発明の加硫ゴム成形用離型剤の25℃における粘度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、BL型粘度計を用いて30rpmで30秒後の粘度を測定すればよい。
【0024】
また、本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、例えば、前述のとおり、130℃における粘度が100~300mPa・sであってもよい。すなわち、ゴムの加硫時には高温になるため、高温での加硫ゴム成形用離型剤の粘度が好適な範囲であることが好ましい。130℃での加硫ゴム成形用離型剤の粘度が100mPa・s以上であると、ゴムと成型型との界面に加硫ゴム成形用離型剤が残りやすくなり、離型性が向上すると考えられる。また、130℃での加硫ゴム成形用離型剤の粘度が300mPa・s以下であると、ゴムと成型型との界面に加硫ゴム成形用離型剤が広がりやすくなり、挿入性が向上すると考えられる。本発明の加硫ゴム成形用離型剤の130℃における粘度の下限値は、例えば、80mPa・s以上、90mPa・s以上、100mPa・s以上、又は120mPa・s以上でもよく、上限値は、例えば、300mPa・s以下、280mPa・s以下、250mPa・s以下、又は200mPa・s以下でもよい。
【0025】
なお、本発明の加硫ゴム成形用離型剤の130℃における粘度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記条件で測定すればよい。

[使用機器]
レオメーター(Anton-paar社製、商品名MCR302)

[測定条件]
測定温度:130℃
プレート:CP-50
ギャップ:0.05mm
せん断速度:100cm-1
回転時間:10秒
【0026】
[1-1.成分(A)]
本発明の加硫ゴム成形用離型剤における成分(A)は、前述のとおり、重量平均分子量が10000~25000のポリオキシアルキレンジオールである。
【0027】
成分(A)は、本発明の加硫ゴム成形用離型剤において、例えば、ゴム(例えば、ゴムホース等のゴム製品)の離型性向上、特にゴムへの離型剤の吸収(ゴムの膨潤)を抑制し離型性を向上させる機能を有すると考えられる。また、例えば、成分(A)のポリオキシアルキレンジオールの重量平均分子量が10000~25000と高分子量であることにより、ゴム加硫時の高温下(例えば130℃)でも高い粘度が得られ、離型剤がゴムとマンドレルとの間に残りやすいと考えられる。
【0028】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、前述のとおり、成分(A)の全質量が、成分(B)の全質量中に対し、4~30倍である。成分(A)の全質量が、成分(B)の全質量中に対し、4~30倍の範囲外であると、加硫ゴム成形用離型剤の粘度が高くなりすぎるか、又は逆に低くなりすぎることにより、本発明の効果を発揮することが出来ないおそれがある。成分(A)の全質量が、成分(B)の全質量中に対し、例えば、5倍以上、6倍以上、8倍以上、又は10倍以上でもよく、例えば、28倍以下、27倍以下、26倍以下、又は25倍以下でもよい。
【0029】
また、成分(A)の含有率は、前述のとおり、本発明の加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し、例えば、35~80質量%であってもよい。35質量%以上配合することにより、離型性が向上する。80質量%以下配合することにより、コスト抑制や挿入性の向上、製品安定性が向上する。成分(A)の含有率は、本発明の加硫ゴム成形用離型剤の全質量中に対し、例えば、37質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上でもよく、例えば、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下でもよい。
【0030】
成分(A)は、前述のとおり、ポリオキシアルキレンジオールの重量平均分子量が10000~25000である。ポリオキシアルキレンジオールの重量平均分子量が10000未満であると、例えば、高温でのゴム加硫工程中に、離型剤が加硫ゴムと金型(マンドレル等)との界面から流れ出て前記界面に保持されない、離型剤がゴムに吸収されて前記界面に残りにくくなり離型性が低下する、等の問題が起こるおそれがある。また、ポリオキシアルキレンジオールの重量平均分子量が25000を超えると、離型剤が高粘度になる等の問題により、製品安定性や製造性が悪化するおそれがある。成分(A)におけるポリオキシアルキレンジオールの重量平均分子量の下限値は、例えば、11000以上、12000以上、12500以上、又は13000以上でもよく、上限値は、例えば、20000以下、18000以下、16000以下、又は14000以下でもよい。なお、本発明において、重量平均分子量の測定方法は、特に限定されないが、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定できる。GPCの測定条件も特に限定されないが、例えば、後述する実施例に記載された条件でもよい。
【0031】
成分(A)におけるポリオキシアルキレンジオールの構造は、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンが、炭素数2~10のオキシアルキレン基の重合体であっても良い。また、前記ポリオキシアルキレンは、例えば、オキシエチレン基を含んでいても良く、オキシプロピレン基を含んでいても良い。なお、本発明において、前記ポリオキシアルキレンは、1種類のみのオキシアルキレン基の重合体でも良いし、複数種類のオキシアルキレン基の共重合体でも良い。また、本発明において、アルキル基、アルキレン基等の鎖状の基は、特に断らない限り、直鎖状でも分枝状でも良い。また、本発明において、重合体(例えば、ポリオキシアルキレン)が共重合体である場合は、特に断らない限り、ブロック共重合体でもランダム共重合体でも良い。前記ポリオキシアルキレンは、例えば、EO(オキシエチレン基)のみからなっていても、EOとPO(オキシプロピレン基)の両方を含んでいても良いが、加硫ゴム成形用離型剤の離型性、製品安定性及び洗浄性の観点から、EO及びPOの両方を含むことが好ましい。前記ポリオキシアルキレン中、EOの数は、加硫ゴム成形用離型剤の洗浄性の観点から、オキシアルキレン基の総数に対し、例えば、50%以上、60%以上、又は70%以上が好ましく、95%以下、90%以下、85%以下が好ましい。前記ポリオキシアルキレン中、POの数は、加硫ゴム成形用離型剤の離型性(潤滑性)の観点から、オキシアルキレン基の総数に対し、例えば、5%以上、10%以上、15%以上が好ましく、50%以下、40%以下、又は30%以下が好ましい。
【0032】
なお、本発明において、オキシエチレン基(EO)は、下記化学式(1)で表される原子団である。
【化1】
【0033】
また、本発明において、オキシプロピレン基(PO)は、下記化学式(2)で表される原子団である。
【化2】
【0034】
成分(A)における前記ポリオキシアルキレンジオールは、例えば、前述のとおり、下記化学式(A1)で表されるポリオキシアルキレンジオールであってもよい。

HO-(EO/PO)-X-O-(EO/PO)-H (A1)

前記化学式(A1)中、
EOはオキシエチレン基を表し、
POはオキシプロピレン基を表し、
Xは炭素数2~10のアルキレン基を表し、
EO/POは、EO及びPOの少なくとも一方を表し、EO及びPOの両方を含む場合は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、
m及びnは、それぞれ、EO/POの平均付加モル数を表す。
なお、Xは炭素数2~6のアルキレン基であることが好ましい。
【0035】
[1-2.成分(B)]
本発明の加硫ゴム成形用離型剤における成分(B)は、前述のとおり、粘度調整剤である。成分(B)における粘度調整剤は、例えば、本発明の加硫ゴム成形用離型剤の粘度が高くなりすぎることを防止し、加硫ゴム成形用離型剤の安定性、ハンドリング性(取扱い易さ)等を向上させる機能を有する。具体的には、例えば、前述のとおり、離型剤の粘度が高すぎると、ハンドリング性が悪くなるおそれがあり、例えば、加硫ゴム成形用離型剤が容器(例えば缶)から出ない、加硫ゴム成形用離型剤の使用量が過多になる、等のおそれがある。また、加硫ゴム成形用離型剤の粘度が低すぎても、前述のとおり、離型性及び挿入性が悪くなるおそれがある。本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、成分(B)の粘度調整剤を含むことにより、これらの問題を解決できる。
【0036】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤において、前記粘度調整剤は、1種類のみ用いても良いし、複数種類併用しても良い。
【0037】
成分(B)における粘度調整剤は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、ポリオキシエチレン付加物であってもよい。ただし、この場合におけるポリオキシエチレン付加物には、前述のとおり、成分(A)における前記ポリオキシアルキレンジオールは含まれない。成分(B)における粘度調整剤は、ポリオキシエチレン付加物以外には、例えば、ポリオキシプロピレン付加物等が挙げられる。また、成分(B)における粘度調整剤の重量平均分子量は特に限定されないが、その下限値は、例えば、50以上、100以上、150以上、又は200以上でもよく、上限値は、例えば、8000以下、6000以下、4000以下、又は2000以下でもよい。
【0038】
成分(B)の粘度調整剤におけるポリオキシエチレン付加物は、特に限定されないが、例えば、1価アルコール(モノオール)のポリオキシエチレン付加物でも良いし、多価アルコール(例えば、ジオール、トリオール等)のポリオキシエチレン付加物でも良いし、脂肪酸のポリオキシエチレン付加物でも良い。前記1価アルコール(モノオール)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、ラウリルアルコール、トリデカノールが挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールが挙げられる。
【0039】
前記1価アルコール(モノオール)のポリオキシエチレン付加物は、例えば、下記化学式(I)で表されるポリオキシエチレン誘導体であっても良い。
【0040】
【化I】
【0041】
前記化学式(I)中、Rは、アルキル基(例えば、炭素数1~18のアルキル基)であり、R11は、EOを含む1種類又は複数種のアルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n11は、正の整数であり、重合度を表し、各R11は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(I)中、-R11-O-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、例えば、EOでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n11は、例えば、1以上、3以上、5以上、7以上でも良く、200以下、100以下、50以下、20以下でも良い。
【0042】
前記多価アルコールのうち、2価アルコール(ジオール)のポリオキシエチレン付加物は、例えば、下記化学式(II)で表されるポリオキシエチレン誘導体であっても良い。
【0043】
【化II】
【0044】
前記化学式(II)中、Rは、アルキレン基(例えば、炭素数1~4のアルキル基)であり、R21は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n21は、正の整数であり、重合度を表し、各R21は、同一でも異なっていても良い。R22は、EOを含む1種類又は複数種のアルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n22は、正の整数であり、重合度を表し、各R22は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(II)中、-R21-O-及び-O-R22-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、それぞれ、例えば、EOでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n21及びn22は、それぞれ、例えば、1以上、3以上、5以上、7以上でも良く、200以下、100以下、50以下、20以下でも良い。
【0045】
前記多価アルコールのうち、3価アルコール(トリオール)のポリオキシエチレン付加物は、例えば、下記化学式(III)で表されるポリオキシエチレン誘導体であっても良い。
【0046】
【化III】
【0047】
前記化学式(III)中、Rは、飽和炭化水素基(例えば、炭素数1~4の飽和炭化水素基)であり、R31は、EOを含む1種類又は複数種のアルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n31は、正の整数であり、重合度を表し、各R31は、同一でも異なっていても良い。R32は、EOを含む1種類又は複数種のアルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n32は、正の整数であり、重合度を表し、各R32は、同一でも異なっていても良い。R33は、EOを含む1種類又は複数種のアルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n33は、正の整数であり、重合度を表し、各R33は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(II)中、-R31-O-、-O-R32-及び-O-R33-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、それぞれ、例えば、EOでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n31、n32及びn33は、それぞれ、例えば、1以上、3以上、5以上、7以上でも良く、300以下、100以下、50以下、20以下でも良い。
【0048】
前記アルコールのポリオキシエチレン付加物のうち、モノオールのポリオキシエチレン付加物としては、例えば、ファインサーフ290、ワンダーサーフRLE-1200等が挙げられる。ジオールのポリオキシエチレン付加物としては、例えば、アデカカーポールPH-800、ブラウノンP-178、エパンU-108、レオコン2105E等が挙げられる。トリオールのポリオキシエチレン付加物としては、例えば、アデカカーポールGH-5、ブラウノンCW-200等が挙げられる。なお、上記「アデカカーポール」を含む名称は、全て、株式会社ADEKAの商品名である。また、上記「ファインサーフ」「ワンダーサーフ」「ブラウノン」を含む名称は、全て、青木油脂工業株式会社の商品名であり、上記「エパン」を含む名称は、全て、第一工業製薬株式会社の商品名であり、上記「レオコン」を含む名称は、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社の商品名である。以下においても同様である。
【0049】
前記脂肪酸のポリオキシエチレン付加物としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレン基の片側に脂肪酸がエステル付加しているもの(モノエステル)と、ポリオキシエチレン基の両側に脂肪酸がエステル付加しているもの(ジエステル)とのいずれか一方を用いてもよく、両方を併用してもよい。前記脂肪酸としては、特に限定されず、例えば、炭素数6~20、炭素数8~18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸でもよい。前記脂肪酸のポリオキシエチレン付加物のジエステルとしては、特に限定されないが、ブラウノンDS-6000F等が挙げられる。
【0050】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤において、前記粘度調整剤(成分(B))の配合量(含有率)は、加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上でもよく、例えば、25質量%以下、23質量%以下、20質量%以下、又は18質量%以下でもよい。また、前記粘度調整剤(成分(B))の配合量(含有率)は、本発明の加硫ゴム成形用離型剤において、水(成分(C))を除いた全ての成分の全質量に対し、例えば、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、又は2質量%以上でもよく、例えば、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下でもよい。
【0051】
[1-3.成分(C)]
本発明の加硫ゴム成形用離型剤における成分(C)は、前述のとおり、水である。この水は、例えば、本発明の加硫ゴム成形用離型剤の粘度が高くなりすぎることを防止し、加硫ゴム成形用離型剤の安定性を向上させる機能を有する。
【0052】
成分(C)における水としては、特に限定されないが、例えば、水道水、イオン交換水等が挙げられる。
【0053】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤において、前記水(成分(C))の配合量(含有率)は、加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は20質量%以上でもよく、例えば、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下でもよい。また、本発明の加硫ゴム成形用離型剤の使用時には、例えば、さらに水を加えて希釈し、前記本発明の水希釈液として用いてもよい。
【0054】
[1-4.任意成分]
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、前記成分(A)~(C)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、シリコーン類等の公知の離型性成分、油(鉱物油、植物油、鉱油等)、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。これら以外の任意成分としては、例えば、水以外の希釈溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを、水と併用して用いてもよい。
【0055】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤が前記成分(A)~(C)以外の任意成分を含む場合、その配合量(含有率)は、加硫ゴム成形用離型剤の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上でもよく、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下でもよい。また、前記任意成分の配合量(含有率)は、本発明の加硫ゴム成形用離型剤において、水(成分(C))を除いた全ての成分の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上でもよく、例えば、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下でもよい。また、本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、前述のとおり、前記成分(A)~(C)以外の任意成分を含んでいなくてもよい。
【0056】
[2.加硫ゴム成形用離型剤の製造方法]
本発明の加硫ゴム成形用離型剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、各成分を単に混合するのみでも良い。例えば、取扱い易さの観点から、希釈溶媒以外の各成分を前記希釈溶媒に溶解又は分散させて本発明の加硫ゴム成形用離型剤としても良い。前記希釈溶媒は、例えば、水(成分(C))のみでもよいし、前述のとおり、水以外の希釈溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール)を併用してもよい。このとき、前記希釈溶媒以外の成分の重量を、例えば、加硫ゴム成形用離型剤全体の10~80重量%としても良い。水としては、特に限定されないが前述のとおり、例えば、水道水、イオン交換水等が挙げられる。
【0057】
前記各成分を希釈溶媒に溶解又は分散させる際に、必要に応じ、加熱、撹拌等を行なっても良い。加熱時の温度は、例えば、20~90℃であっても良い。加熱時間は、例えば、0.2~5時間等であっても良い。
【0058】
[3.加硫ゴム成形用離型剤の使用方法、加硫ゴム成形品の製造方法]
本発明の加硫ゴム成形用離型剤の使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な加硫ゴム成形用離型剤の使用方法と同様にして使用することができる。具体的には、例えば、前述のとおり、未加硫ゴムと成形型との界面に前記本発明の加硫ゴム成形用離型剤又は前記本発明の水希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫成形する。前述のとおり、この加硫成形工程を含む本発明の加硫ゴム成形品の製造方法により、加硫ゴム成形品を製造することができる。
【0059】
本発明の加硫ゴム成形用離型剤は、使用する前(未加硫ゴムと成形型との界面に付着される前)に、あらかじめ、水で希釈して本発明の水希釈液とすることが好ましい。本発明の水希釈液のうち、水以外の成分の重量は、例えば、本発明の水希釈液全体の7~36重量%、又は10~30重量%としても良い。
【0060】
前記成形型は、特に限定されないが、例えば金型であり、例えばマンドレル等であっても良い。未加硫ゴムと成形型との界面に前記本発明の加硫ゴム成形用離型剤又は前記本発明の水希釈液を付着させる方法は、特に限定されず、一般的な方法又はそれに準じた方法を用いることができる。具体的には、例えば、離型剤に未加硫ゴムホースの先端を浸漬させる方法、前記界面に予め離型剤をハケやスプレーなどで塗布する方法等が挙げられる。
【0061】
前記未加硫ゴムを加硫成形する加硫成形工程も、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴムの加硫成形工程と同様に行うことができる。具体的には、例えば、蒸気加硫、熱風加硫等を用いることが出来る。なお、未加硫ホースを挿入したマンドレルを加硫缶(装置内に蒸気あるいは熱風を充満させて未加硫ホースを加硫する装置、蒸気で加硫させる方法を「蒸気加硫」といい、熱風で加硫させる方法を「熱風加硫」という。
【0062】
本発明の加硫ゴム成形品の製造方法で成形できる加硫ゴムの種類は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)、NBRとポリ塩化ビニルのブレンドポリマー(NBR/PVC)等の加硫成形可能なゴム等が挙げられる。また、本発明の加硫ゴム成形品の製造方法により製造できる加硫ゴム成形品も、特に限定されないが、例えば、ゴムホース、ゴムシール等が挙げられる。
【実施例
【0063】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0064】
[実施例1~6]
下記表1に示した成分を表1に示した配合割合(質量%)で混合し、内温60℃で2時間撹拌溶解させた。溶解後、室温まで冷却し、実施例1~6の加硫ゴム成形用離型剤を得た。
【0065】
[比較例1~4]
成分(A)を用いず、これに代えて下記表1に記載の成分(A)´を用いたこと以外は、実施例1~6と同様にして加硫ゴム成形用離型剤を得た。すなわち、下記表1に示した成分を表1に示した配合割合(質量%)で混合し、内温60℃で2時間撹拌溶解させた。溶解後、室温まで冷却し、比較例1~4の加硫ゴム成形用離型剤を得た。なお、比較例1~4で用いた成分(A)´は、重量平均分子量が1万未満のポリオキシアルキレンジオールである。
【0066】
[GPCによる重量平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記測定条件で測定した。

(測定条件)
装置:Waters社製 e2695
検出器:示差屈折率検出器 Waters社製 2414
カラム:Waters社製 HSPgel MB-H、RT2.0、RT4.0の計3本を直列に接続した。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
温度:40℃
【0067】
[加硫ゴム成形用離型剤の特性の評価方法]
実施例及び比較例で製造した各加硫ゴム成形用離型剤(以下、単に「離型剤」ということがある。)の特性を、下記の方法で測定し、評価した。
【0068】
(1)挿入性及び離型性の評価方法
離型剤に浸漬したアクリルゴム製の未加硫ゴムホースを、離型剤を塗布した成形ホース用マンドレルに挿入した。なお、このとき、離型剤は、水で希釈せずにそのまま用いた。この挿入するときの作業性を挿入性とし、下記の基準で評価した。

○:挿入時に抵抗なく挿せる
△:挿入時に若干の抵抗があるが挿せる
×:挿入時に抵抗があり挿せない
【0069】
つぎに、前記マンドレルに挿入した前記未加硫ゴムホースを、150℃で30分間加熱することにより、加硫処理を行い、加硫ゴムホースとした。その後、前記マンドレルから前記加硫ゴムホースを引き抜いた。この引き抜く(離型する)ときの作業性を離型性とし、挿入性と同様に下記の基準で評価した。

○:離型時に抵抗なく抜ける
△:離型時に若干の抵抗があるが抜ける
×:離型時に抵抗があり抜けない
【0070】
(2)洗浄性の評価方法
上記挿入性及び離型性の評価で得られた加硫ゴムホースを、70℃の水に2分間浸漬して取り出した。その後、前記加硫ゴムホースの表面を目視で観察し、下記の基準で評価した。

○:2分間浸漬後に加硫ゴムホースの表面に離型剤が残っていない
△:2分間浸漬後に加硫ゴムホースの表面に離型剤が若干残っている
×:2分間浸漬後も加硫ゴムホースの表面に離型剤が多く残っている
【0071】
(3)液流動性の評価方法
離型剤を瓶に入れ、温度4℃の条件下で1ヶ月間保管した後の液流動性について目視で観察し、下記の基準で評価した。

○:瓶を傾けた際に液が簡単に流動する。
△:瓶を傾けた際に時間は掛かるが流動する。
×:瓶を傾けた際に液が流動しない。
【0072】
(4)製品粘度(温度25℃での粘度)の評価方法
温度25℃での離型剤の粘度(製品粘度)は、BL型粘度計を用いて30rpmで30秒後の粘度を測定した。
【0073】
(5)原体粘度(130℃での粘度)の評価方法
温度130℃での離型剤の粘度(原体粘度又は離型原体粘度ともいう。)は、下記条件で測定した。

[使用機器]
レオメーター(Anton-paar社製、商品名MCR302)

[測定条件]
測定温度:130℃
プレート:CP-50
ギャップ:0.05mm
せん断速度:100cm-1
回転時間:10秒
【0074】
(6)ゴムの膨潤度の評価方法
70ml瓶にサンプル液50mlを入れ、さらに、1cmに刻んだ未加硫アクリルゴム10gを入れた。それを70℃で3日間静置し、静置前と静置後の重量差を確認し、下記数式にしたがって重量の増加割合を膨潤率(ゴムの膨潤度)とした。膨潤率が低いほど良く、膨潤率が3%以下のサンプルを、膨潤率が良好と評価した。なお、前記サンプル液としては、前記各実施例及び比較例で製造した離型剤を、希釈等をせずにそのまま用いた。
膨潤率(%)=(静置後重量(g)-静置前重量(g))/静置前重量(g)×100
【0075】
実施例及び比較例の加硫ゴム成形用離型剤の組成と、前記(1)~(6)の特性の評価結果を、下記表1にまとめて示す。また、成分(A)、(A)´及び(B)のメーカー及び製品名(商品名)を、下記表2にまとめて示す。下記表2において「合成品」は、メーカーの製品でなく自家で製造(合成)したことを示す。また、下記表2においてポリオキシアルキレンジオールは、メーカーの製品及び合成品のいずれも、全てランダム共重合体であり、「EO75質量%」とは、オキシアルキレン基の総数に対するオキシエチレン基の数の百分率である。なお、成分(A)は、前記化学式(A1)で表されるポリオキシアルキレンジオールであり、成分(A)´は、重量平均分子量が1万未満であること以外は同様の構造で表されるポリオキシアルキレンジオールである。また、成分(A)及び成分(A)´は、いずれも、前記化学式(A1)のXに該当する部分が、炭素数2~6のアルキレン基である。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1に示したとおり、実施例1~6の加硫ゴム成形用離型剤は、挿入性、離型性及び洗浄性の全てに優れていた。これに対し、重量平均分子量が10000未満のポリオキシアルキレンジオールを用いた比較例1~4の加硫ゴム成形用離型剤は、離型性が良くなかった。また、比較例1及び2については、挿入性も実施例と比較して劣っていた。また、比較例1~4の加硫ゴム成形用離型剤は、ゴムの膨潤度(膨潤率)が高かったことから、ゴムに大量に吸収されてしまったことが分かり、これが、離型性が良くなかった原因であると考えられる。