(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】抗PD-1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230510BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230510BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230510BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230510BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230510BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20230510BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230510BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230510BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230510BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230510BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230510BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230510BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230510BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230510BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230510BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230510BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230510BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230510BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230510BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230510BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230510BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230510BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230510BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230510BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P13/10
A61P1/16
A61P1/04
A61P15/00
A61P35/02
A61P1/18
A61P11/00
A61P13/02
A61P25/00
A61P13/12
A61P13/08
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/00
A61P37/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P11/06
A61P25/28
A61P17/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P3/10
A61P17/00
A61P37/08
A61P37/06
A61P37/04
A61P9/10 101
A61P19/10
A61P19/08
A61P1/02
(21)【出願番号】P 2019539905
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2018073383
(87)【国際公開番号】W WO2018133837
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】201710046148.2
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520470257
【氏名又は名称】タユー ファシャ バイオテック メディカル グループ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リエピン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ, リチュン
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-503984(JP,A)
【文献】特表2010-530753(JP,A)
【文献】国際公開第2015/112900(WO,A1)
【文献】特表2017-500889(JP,A)
【文献】特表2012-501670(JP,A)
【文献】国際公開第2016/014688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、以下:
HCDR1:GFTFSSYT(配列番号1)、HCDR2:ISHGGGDT(配列番号2)、HCDR3:ARHSGYERGYYYVMDY(配列番号3)、LCDR1:ESVDYYGFSF(配列番号4)、LCDR2:AAS(配列番号5)、LCDR3:QQSKEVPW(配列番号6)である、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
重鎖定常領域、軽鎖定常領域、Fc領域、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記軽鎖定常領域が、カッパまたはラムダ鎖定常領域である、請求項2に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
IgG、IgM、IgA、IgE、またはIgDのアイソタイプのものである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記アイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項6】
キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項7】
ヒト化抗体である、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項8】
配列番号35、配列番号37、配列番号39のアミノ酸配列、または配列番号35、配列番号37、もしくは配列番号39に対して少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項7に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項9】
配列番号41、配列番号43、配列番号45のアミノ酸配列、または配列番号41、配列番号43、もしくは配列番号45に対して少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
【請求項12】
がんの処置のための医薬の製造のための請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片の使用。
【請求項13】
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頚部がん、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群より選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための組成物であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、組成物。
【請求項15】
がんまたは感染症の処置を必要とする患者においてがんまたは感染症を処置するための組成物であって、in vitroで請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片で処置された細胞を含む、組成物。
【請求項16】
前記細胞がT細胞である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
感染症の処置のための医薬の製造のための請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片の使用。
【請求項18】
前記感染症が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、または寄生生物による感染症である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
感染症、感染症に関連した内毒素性ショック、関節炎、関節リウマチ、喘息、COPD、骨盤腹膜炎、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、外科手術上の癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、関節炎、髄膜脳炎、自己免疫性ぶどう膜炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介性炎症障害、多発硬化症、ループスおよびギラン-バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、膵炎、外傷、移植片対宿主病、移植片拒絶、虚血性疾患、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、または胎児-母体寛容の欠如に関係した不妊症の処置のための医薬の製造のための請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片の使用。
【請求項20】
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頚部がん、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
感染症の処置のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物。
【請求項22】
前記感染症が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、または寄生生物による感染症である、請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
感染症、感染症に関連した内毒素性ショック、関節炎、関節リウマチ、喘息、COPD、骨盤腹膜炎、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、外科手術上の癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、関節炎、髄膜脳炎、自己免疫性ぶどう膜炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介性炎症障害、多発硬化症、ループスおよびギラン-バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、膵炎、外傷、移植片対宿主病、移植片拒絶、虚血性疾患、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、または胎児-母体寛容の欠如に関係した不妊症の処置のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プログラム細胞死(PD-1)のcDNAは、1992年、アポトーシスを起こしている、マウスT細胞ハイブリドーマおよび造血前駆細胞株から単離された。遺伝子除去研究により、PD-1の欠損が、様々なマウス系統において異なる自己免疫表現型を生じることが示された。トランスジェニックT細胞受容体(TCR)を有するPD-1欠損同種T細胞は、同種抗原に対する応答の増大を示し、T細胞上のPD-1が、抗原に対する応答において負の制御の役割を果たすことを表している。
【0002】
いくつかの研究は、PD-1と相互作用する分子の発見に寄与した。1999年、B7ホモログ1(B7-H1、プログラム死リガンド1[PD-L1]とも呼ばれる)が、そのB7ファミリー分子との相同性に基づいて、分子クローニング、およびヒト発現配列タグデータベース検索を使用してPD-1とは独立して同定され、B7-H1が、in vitroでヒトT細胞応答の阻害剤として作用することが示された。これらの2つの独立した研究路線は、Freeman、Wood、およびHonjoの研究室が、B7-H1(以下、PD-L1と称する)がPD-1の結合および機能パートナーであることを示した1年後、統合された。次に、PD-L1欠損マウス(PD-L1 KOマウス)が、自己免疫疾患の誘発を受けやすいが、このマウス系統はそのような疾患を自発的には発症しないことが決定された。PD-L1/PD-1相互作用が、in vivoで、特に腫瘍微小環境で、T細胞応答の抑制において支配的な役割を果たすことが、後で明らかになる。
【0003】
腫瘍関連PD-L1が活性化T細胞のアポトーシスを容易にし(Dong H.ら、Tumor-associated B7-H1 promotes T-cell apoptosis: a potential mechanism of immune evasion. Nature medicine 2002年;8巻(8号):793~800頁)、また、ヒト末梢血T細胞におけるIL-10産生も刺激して(Dong Hら、B7-H1, a third member of the B7 family, co-stimulates T-cell proliferation and interleukin-10 secretion. Nature medicine 1999年;5巻(12号):1365~9頁)、免疫抑制を媒介することが、当該初期研究により示された。PD-L1の免疫抑制への効果が、はるかにより複雑であることは今や公知である。T細胞アポトーシスおよびIL-10誘発に加えて、PD-L1はまた、様々な機構を通してT細胞機能障害を誘発することができる。PD経路はまた、in vitroおよびin vivoでT細胞アネルギーを促進することも示された。
【0004】
最近、FDAは、ヒトがんを処置するための2つのPD-1 mAb、一方がBristol-Myers Squibb製(Opdivo、ニボルマブ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)、および他方がMerck製(Keytruda、ペムブロリズマブ、ラムブロリズマブ、MK-3475)を認可した。追加として、PD-1またはPD-L1のいずれかに対する複数のmAbが、数千人の患者を含む数百個の臨床試験において活発に開発中である。これまで、抗PD治療は、進行性および転移性腫瘍の退縮を誘発することによる著しい臨床的利益および生存の向上を生じている。より重要なことには、抗PD治療は、持続的な効果、容認できる毒性を有し、幅広い範囲のがん型に、特に、固形腫瘍において、適用できることを示し得る。これらの臨床所見によりさらに、PD経路遮断の原理が確証され、個別化または腫瘍型特異的治療とは異なる独特なカテゴリーに抗PD治療が入れられる。他のがん治療とは異なり、重複しない機構により、抗PD治療は、治療効力をさらに増幅する試みにおいて、ほぼ全てのがん処置方法と組み合わせることが進行中である。がんワクチン、共刺激および共阻害抗体、ならびに養子細胞治療などの様々ながん免疫療法アプローチとの組み合わせに加えて、抗PD治療を化学療法、放射線療法、および標的化治療と組み合わせる様々な臨床試験もまた、開始されている。
抗PD治療は、ヒトがんに対する、特に固形腫瘍についての、免疫療法において、注目を集めている。この治療は、全身性免疫応答をブーストすること、またはがんに対して新規の免疫を発生させることを主として目指す以前の免疫治療剤とは異なり、代わりに、抗PD治療は、腫瘍部位における免疫応答を調節し、腫瘍に誘発される免疫欠損を標的にし、および進行中の免疫応答を修復する。様々なヒトがんの処置のための抗PD治療の臨床的成功はこのアプローチを確証しているが、本発明者らはなお、この経路および関連した免疫応答から学び続けており、それは、がん免疫療法において新しい臨床的に適用可能なアプローチの発見および設計において助けとなるだろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Dong H.ら、Nature medicine(2002年)8巻(8号):793~800頁
【文献】Dong Hら、Nature medicine(1999年)5巻(12号):1365~9頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、PD-1タンパク質へ優れた結合活性および阻害活性を示した抗PD-1抗体を提供する。試験されたものの1つはさらに、制御性(regulatorily)が証明された2つの抗PD-1抗体産物よりも強い結合活性を示した。
【0007】
したがって、本開示の一実施形態によれば、ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-L1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、(a)HCDR1:GFTFSSYT(配列番号1)、HCDR2:ISHGGGDT(配列番号2)、HCDR3:ARHSGYERGYYYVMDY(配列番号3)、LCDR1:ESVDYYGFSF(配列番号4)、LCDR2:AAS(配列番号5)、LCDR3:QQSKEVPW(配列番号6);(b)HCDR1:GYTFTSYT(配列番号7)、HCDR2:INPTTGYT(配列番号8)、HCDR3:ARDDAYYSGY(配列番号9)、LCDR1:ENIYSNL(配列番号10)、LCDR2:AAK(配列番号11)、LCDR3:QHFWGTPWT(配列番号12);および(c)HCDR1:GFAFSSYD(配列番号13)、HCDR2:ITIGGGTT(配列番号14)、HCDR3:ARHRYDYFAMDN(配列番号15)、LCDR1:ENVDNYGINF(配列番号16)、LCDR2:VSS(配列番号17)、LCDR3:QQSKDVPW(配列番号18)からなる群より選択される、抗体またはその断片が提供される。
【0008】
一部の実施形態では、本開示の抗体または断片は、重鎖定常領域、軽鎖定常領域、Fc領域、またはそれらの組み合わせをさらに含む。一部の実施形態では、軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ鎖定常領域である。
【0009】
抗体またはその断片は、一部の実施形態では、IgG、IgM、IgA、IgE、またはIgDのアイソタイプであり得る。一部の実施形態では、アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である。
【0010】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号35、配列番号37、配列番号39のアミノ酸配列、または配列番号35、配列番号37、もしくは配列番号39に対して少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号41、配列番号43、配列番号45のアミノ酸配列、または配列番号41、配列番号43、もしくは配列番号45に対して少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0011】
別の実施形態では、本開示は、ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-L1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、(a)HCDR1:GFTFSSYT(配列番号1)、HCDR2:ISHGGGDT(配列番号2)、HCDR3:ARHSGYERGYYYVMDY(配列番号3)、LCDR1:ESVDYYGFSF(配列番号4)、LCDR2:AAS(配列番号5)、LCDR3:QQSKEVPW(配列番号6);(b)HCDR1:GYTFTSYT(配列番号7)、HCDR2:INPTTGYT(配列番号8)、HCDR3:ARDDAYYSGY(配列番号9)、LCDR1:ENIYSNL(配列番号10)、LCDR2:AAK(配列番号11)、LCDR3:QHFWGTPWT(配列番号12);(c)HCDR1:GFAFSSYD(配列番号13)、HCDR2:ITIGGGTT(配列番号14)、HCDR3:ARHRYDYFAMDN(配列番号15)、LCDR1:ENVDNYGINF(配列番号16)、LCDR2:VSS(配列番号17)、LCDR3:QQSKDVPW(配列番号18);ならびに(d)(a)~(c)に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3であって、そのうちの少なくとも1つが、1個、2個、または3個のアミノ酸の付加、欠失、保存的アミノ酸置換、またはそれらの組み合わせを含む、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3からなる群より選択される、抗体またはその断片を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それらのうちの1つが保存的アミノ酸置換を含むことを除いて、(a)~(c)のいずれか1つに示されている通りである。一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それらのうちの2つがそれぞれ保存的アミノ酸置換を含むことを除いて、(a)~(c)のいずれか1つに示されている通りである。一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それらのうちの3つがそれぞれ保存的アミノ酸置換を含むことを除いて、(a)~(c)のいずれか1つに示されている通りである。
【0013】
一実施形態では、本開示の抗体またはその断片および薬学的に許容される担体を含む組成物もまた提供される。一実施形態では、抗体またはその断片をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む単離された細胞がなおさらに提供される。
【0014】
使用および方法もまた提供される。一実施形態では、がんの処置のための医薬の製造のための本開示の抗体またはその断片の使用が提供される。がんは、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頚部がん、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群より選択され得る。本開示の抗体またはその断片を患者に投与するステップを含む、それを必要とする患者においてがんを処置する方法もまた提供される。
【0015】
別の実施形態では、本開示は、(a)in vitroで細胞を本開示の抗体またはその断片で処置するステップと、(b)処置された細胞を患者に投与するステップとを含む、それを必要とする患者においてがんまたは感染症を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、細胞はT細胞である。
【0016】
別の実施形態では、感染症の処置のための医薬の製造のための本開示のいずれか1個の抗体またはその断片の使用が提供される。一部の実施形態では、感染症はウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、または寄生生物による感染症である。
【0017】
さらに別の実施形態では、免疫障害の処置のための医薬の製造のための本開示の抗体またはその断片の使用が提供される。一部の実施形態では、免疫障害は、感染症、感染症に関連した内毒素性ショック、関節炎、関節リウマチ、喘息、COPD、骨盤腹膜炎、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病(Pilonidal disease)、腹膜炎、乾癬、血管炎、外科手術上の癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、関節炎、髄膜脳炎、自己免疫性ぶどう膜炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介性炎症障害、多発硬化症、ループスおよびギラン-バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、膵炎、外傷、移植片対宿主病、移植片拒絶、虚血性疾患、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症(hypochlorhydia)、および胎児-母体寛容の欠如に関係した不妊症からなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、全ての5つのhPD-1 mAbアイソタイプがhPD-1に高特異性で結合し得ることを示す。
【0019】
【
図2】
図2は、抗hPD-1が、hB7-1、hPD-L1、hB7-H3、hB7-H4、およびhCD137と結合しないことを示す。
【0020】
【
図3】
図3は、hPD-1 mAbが、mPD-1への交差結合を呈することなく、ヒト細胞とカニクイザル細胞の両方のPD-1タンパク質に結合し得ることを示す。
【0021】
【
図4】
図4は、hPD-1 mAbが、投薬量に応じて、hPD-1のhPD-L1への結合に対する遮断効果を有し得ることを示す。
【0022】
【
図5】
図5は、競合的結合環境で観察される場合のhPD-1 mAbの抑止および遮断効果を示す。
【0023】
【
図6】
図6は、RACE産物を確認するゲル電気泳動分析の結果を示す。
【0024】
【
図7】
図7は、組換えDNA抗体のPD-1に結合する能力(A)およびPD-1のPD-L1への結合能力に対するそれらの遮断効果(B)を示す。
【0025】
【
図8】
図8は、9個のヒト化抗体が、親抗体よりも高いおよび低いの両方を含む、PD-1に対する様々な結合親和性を呈したことを示す。
【0026】
【
図9】
図9は、ヒト化抗体が、PD-1のPD-L1への結合能力に対する遮断効果を有し得ることを示す。
【0027】
【
図10】
図10は、ヒト化抗体が、PD-1のPD-L2への結合能力に対する遮断効果を有し得ることを示す。
【0028】
【
図11】
図11は、ヒト化mAbが、in vitroで、アロCD8+CTL細胞のがん細胞に対する細胞傷害を増大させることを示す。
【0029】
【
図12】
図12は、抗hPD-1抗体に対するMLRの増殖応答を示す。
【0030】
【
図13】
図13は、MLR培養上清におけるIL-2およびIFNγ発現プロファイルを示す。
【0031】
【
図14】
図14は、リンパ球上のPD-L1の発現がPD-1 mAbにより阻害されたことを示す。
【0032】
【
図15】
図15は、ヒト化PD-1抗体のin vivo抗腫瘍活性を示す。
【0033】
【
図16】
図16は、抗体結合親和性および動態の比較を提示する。
【0034】
【
図17】
図17は、PD-1/PD-L1遮断におけるPD-1抗体の比較を示す。
【0035】
【
図18】
図18は、in vitroでの、がん細胞に対するアロCD8+CTL細胞の細胞傷害を増大させるmAbの比較を示す。
【0036】
【
図19】
図19は、hPD-1またはmPD-1への試験物品の結合を示す(ELISAアッセイ)。
【0037】
【
図20】
図20は、フローサイトメトリーを使用する、hPD-1またはcPD-1発現CHOK1細胞に対する試験物品の結合を示す。
【0038】
【
図21】
図21は、hPD-1発現CHOK1細胞へのhPD-L1(左)およびhPD-L2(右)の結合に対する試験物品の遮断活性を示す。
【0039】
【
図22】
図22は、ヒトMLRアッセイにおけるIL-2(左)およびIFN-γ(右)レベルを示す。
【0040】
【
図23】
図23は、操作型腫瘍およびT細胞の共培養アッセイにおけるIFN-γレベルを示す。
【0041】
【
図24】
図24は、ELISA結果によるエピトープ結合(上方パネル)および異なる試験物品のエピトープ重複に関する概略図(下方パネル)を示す。
【0042】
【
図25】
図25は、低い固定化レベル(60RU、左パネル)および高い固定化レベル(960RU、右パネル)における、ニボルマブ(上方パネル)またはTY101-04-T3-05(下方パネル)抗体の組換えhPD-1への結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体の1つまたは複数を指す;例えば、「1つの(an)抗体」は、1つまたは複数の抗体を表すと理解されることに留意されたい。それとして、用語「1つの(a)(または1つの(an))」、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」は、本明細書で交換可能に使用することができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド(polypeptide)」は、単数形「ポリペプチド(polypeptide)」、加えて複数形「ポリペプチド(polypeptides)」を包含することを意図され、アミド結合(ペプチド結合としても公知)により直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2個またはそれより多いアミノ酸の任意の鎖(複数可)を指し、産物の特定の長さを指すものではない。したがって、2個またはそれより多いアミノ酸の鎖(複数可)を指すように使用されるペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれと交換可能に使用され得る。用語「ポリペプチド」はまた、ポリペプチドの発現後修飾産物を指すことも意図され、限定なしで、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾が挙げられる。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来し、または組換え技術により産生され得るが、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されるとは限らない。それは、化学合成によるものを含む任意の様式で生成され得る。
【0045】
細胞、DNAまたはRNAなどの核酸に関して本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、高分子の天然供給源に存在する、それぞれ、他のDNAまたはRNAから分離された分子を指す。本明細書で使用される場合、用語「単離された」はまた、組換えDNA技術により産生された場合、細胞材料、ウイルス材料、もしくは培養培地、または化学合成された場合、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸またはペプチドを指す。さらに、「単離された核酸」は、断片として天然に存在せず、天然状態では見出されないだろう核酸断片を含むことを意味する。用語「単離された」はまた、他の細胞タンパク質または組織から単離されている細胞またはポリペプチドを指すように本明細書で使用される。単離されたポリペプチドは、精製されたポリペプチドと組換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関係する時の用語「組換え」は、天然では存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドの形を意図し、その非限定的な例は、通常は一緒に存在しないだろう、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを組み合わせることにより創出することができる。
【0047】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチドの間、または2つの核酸分子の間での配列類似性を指す。相同性は、比較を目的としてアライメントされ得る、各配列における位置を比較することにより決定することができる。比較される配列における位置が同じ塩基またはアミノ酸により占められている場合には、分子はその位置において相同である。配列間の相同性の程度は、配列により共有されるマッチングまたは相同の位置の数の関数である。「無関係の」または「非相同の」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性を共有するが、好ましくは25%未満の同一性を共有する。
【0048】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)が別の配列に対してある特定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)の「配列同一性」を有するとは、アライメントされた時、2つの配列を比較することにおいて、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が同じであることを意味する。このアライメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当技術分野において公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubeletら編、(2007年)Current Protocols in Molecular Biologyに記載されたソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。好ましくは、デフォルトパラメーターがアライメントに使用される。1つのアライメントプログラムは、デフォルトパラメーターを使用するBLASTである。特に、プログラムは、以下のデフォルトパラメーターを使用するBLASTNおよびBLASTPである:遺伝コード=標準;フィルター=なし;ストランド=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリクス=BLOSUM62;記述=50個の配列;ソート=高スコア順;データベース=非冗長性、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。生物学的に等価のポリヌクレオチドは、上記の特定のパーセント相同性を有し、同じまたは類似した生物活性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0049】
用語「等価の核酸またはポリヌクレオチド」は、核酸またはその相補体のヌクレオチド配列とある特定の程度の相同性または配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を指す。二本鎖核酸の相同体は、その相補体とある特定の程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を含むことを意図される。一態様では、核酸の相同体は、前記核酸またはその相補体にハイブリダイズする能力がある。同様に、「等価のポリペプチド」は、参照ポリペプチドのアミノ酸配列とある特定の程度の相同性または配列同一性を有するポリペプチドを指す。一部の態様では、配列同一性は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%である。一部の態様では、等価のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの付加、欠失、置換、およびそれらの組み合わせを有する。一部の態様では、等価の配列は、参照配列の活性(例えば、エピトープ結合)または構造(例えば、塩橋)を保持する。
【0050】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で実施することができる。一般的に、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、約40℃で、約10×SSCまたは等価のイオン強度/温度の溶液中行われる。中等度のストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、典型的には、約50℃で、約6×SSC中実施され、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は一般的に、約60℃で、約1×SSC中実施される。ハイブリダイゼーション反応はまた、「生理学的条件」下で実施することができ、それは、当業者に周知である。生理学的条件の非限定的な例は、細胞中で通常、見出される温度、イオン強度、pH、およびMg2+の濃度である。
【0051】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAの場合はチミンの代わりにウラシル(U)の特定の配列で構成される。したがって、用語「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。このアルファベット表現は、中央処理装置を有するコンピューターにおけるデータベースへの入力で有り得、機能的遺伝学および相同性検索などのバイオインフォマティクスアプリケーションに使用することができる。用語「多型」は、遺伝子またはその部分の1つより多い形の共存を指す。少なくとも2つの異なる形、すなわち、2つの異なるヌクレオチド配列がある遺伝子の一部分は、「遺伝子の多型領域」と称される。多型領域は、単一のヌクレオチドであり得、その同一性は、異なる対立遺伝子で異なる。
【0052】
用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマーの形を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、公知または未知の任意の機能を実施し得る。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST、またはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、dsRNA、siRNA、miRNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリヌクレオチドの組み立ての前または後に与えられ得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチドコンポーネントによって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識化コンポーネントでのコンジュゲーションによるなど、重合後さらに修飾され得る。用語はまた、二本鎖分子と一本鎖分子の両方を指す。他に特定または要求されない限り、ポリヌクレオチドであるこの開示の任意の実施形態は、二本鎖の形と、二本鎖の形を構成することが公知のまたは予測される2つの相補性一本鎖の形のそれぞれ、の両方を包含する。
【0053】
用語「コードする」は、それがポリヌクレオチドに適用される場合、その天然状態においてまたは当業者に周知の方法により操作された場合、転写および/または翻訳されて、ポリペプチドおよび/またはその断片についてのmRNAを産生することができるとき、ポリペプチドを「コードする」と言われるポリヌクレオチドを指す。アンチセンスストランドは、そのような核酸の相補体であり、コード配列はそれから推定することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合性ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識し、そしてそれに結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、抗体全体およびその任意の抗原結合性断片または単鎖であり得る。したがって、用語「抗体」は、抗原に結合する生物活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む分子を含有する任意のタンパク質またはペプチドを含む。そのような例には、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)もしくはそれらのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、またはそれらの任意の部分、または結合タンパク質の少なくとも1つの部分が挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「抗体断片」または「抗原結合性断片」は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの抗体の一部分である。構造に関わらず、抗体断片は、インタクトな抗体により認識される同じ抗原と結合する。用語「抗体断片」は、アプタマー、スピーゲルマー(spiegelmer)、およびダイアボディ(diabody)を含む。用語「抗体断片」はまた、特定の抗原に結合して、複合体を形成することにより抗体のように作用する、任意の合成または遺伝子操作されたタンパク質も含む。
【0056】
「単鎖可変断片」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖の可変領域(VH)と軽鎖の可変領域(VL)の融合タンパク質を指す。一部の態様では、領域は、10個~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドで接続されている。リンカーは、柔軟性のためにグリシン、加えて、溶解度のためにセリンまたはスレオニンが豊富であり得、VHのN末端をVLのC末端と接続する、またはその逆かのいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にも関わらず、最初の免疫グロブリンの特異性を保持する。scFv分子は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。
【0057】
抗体という用語は、生化学的に区別することができる様々な幅広いクラスのポリペプチドを包含する。重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、それらの中にいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4)を有することを当業者は認識している。それは、抗体の「クラス」をそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEと決定するこの鎖の特性である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5などは、よく特徴付けられており、機能上の特定化を与えることは公知である。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変バージョンは、本開示を鑑みれば、当業者に容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。全ての免疫グロブリンクラスは明らかに本開示の範囲内であり、以下の考察は、一般的に、免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象とする。IgGに関して、標準免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4つの鎖は、典型的には、「Y」配置でジスルフィド結合により接合されており、軽鎖が、「Y」の口から始まって可変領域まで続く重鎖を、挟んでいる。
【0058】
本開示の抗体、その抗原結合性ポリペプチド、バリアント、または誘導体には、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化またはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合性断片、例えば、Fab、Fab’、およびF(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結型Fv(sdFv)、VKまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーにより作製される断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示されたLIGHT抗体に対する抗Id抗体が挙げられる)が挙げられるが、それらに限定されない。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、およびIgA2)、またはサブクラスのものであり得る。
【0059】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(Κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダのいずれかの軽鎖と結合し得る。一般的に、軽鎖および重鎖は、お互いに共有結合的に結合し、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかにより生成される場合、2つの重鎖の「テール」部分は、共有結合性ジスルフィド連結または非共有結合性連結によりお互いに結合する。重鎖において、アミノ酸配列は、Y配置の分岐端におけるN末端から各鎖の底部におけるC末端まで及ぶ。
【0060】
軽鎖と重鎖の両方は、構造的および機能的相同性の領域に分けられる。用語「定常」および「可変」は機能的に使用される。この点において、軽鎖部分の可変ドメイン(VK)と重鎖部分の可変ドメイン(VH)の両方が、抗原認識および特異性を決定することが理解される。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CK)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2、またはCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などの重要な生物学的特性を与える。慣例により、定常領域ドメインのナンバリングは、それらが抗体の抗原結合性部位またはアミノ末端から遠位になるほど、増加する。N末端部分は、可変領域であり、C末端部分は定常領域である;CH3およびCKドメインは、実際、重鎖および軽鎖、それぞれのカルボキシ末端を含む。
【0061】
上で示されているように、可変領域は、抗体が、抗原上のエピトープを選択的に認識し、特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVKドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは、組み合わさって三次元抗原結合性部位を画定する可変領域を形成する。四次抗体構造は、Yの各アームの末端に存在する抗原結合性部位を形成する。より具体的には、抗原結合性部位は、VH鎖およびVK鎖のそれぞれの上の3つのCDR(すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3)により画定される。一部の場合、例えば、ラクダ科の種に由来したまたはラクダ科の免疫グロブリンに基づいて操作されたある特定の免疫グロブリン分子において、完全な免疫グロブリン分子は、軽鎖を含まず、重鎖のみからなり得る。例えば、Hamers-Castermanら、Nature 363巻:446~448頁(1993年)を参照されたい。
【0062】
天然に存在する抗体において、各抗原結合性ドメインに存在する6つの「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境においてその三次元配置をとる場合、抗原結合性ドメインを形成するように特異的に位置する、アミノ酸の短く不連続な配列である。「フレームワーク」領域と称される、抗原結合性ドメインにおけるアミノ酸の残りは、より低い分子間可変性を示す。フレームワーク領域は、主として、βシートコンフォメーションをとり、CDRは、βシート構造を接続し、場合によっては、βシート構造の部分を形成する、ループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用により正しい配向にCDRを位置づけることを提供するスキャフォールドを形成するように作用する。位置づけられたCDRにより形成された抗原結合性ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を画定する。この相補的表面は、抗体のその同族エピトープへの非共有結合性結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域含むアミノ酸はそれぞれ、それらは正確に定義されているため、当業者により任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について容易に同定することができる(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、Kabat, E.ら、 U.S. Department of Health and Human Services、(1983年);ならびにChothiaおよびLesk、J. MoI. Biol.、196巻:901~917頁(1987年)を参照されたい)。
【0063】
当技術分野内で使用および/または認められている用語の2つまたはそれより多い定義がある場合、本明細書で使用される場合、用語の定義は、明確にそれとは反対に述べられていない限り、全てのそのような意味を含むことを意図される。具体的な例は、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される不連続な抗原結合部位を記載する用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域は、全体として参照により本明細書に組み入れられるKabatら、U.S. Dept. of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983年)およびChothiaら、J. MoI. Biol. 196巻:901~917頁(1987年)により記載されている。KabatおよびChothiaによるCDRの定義は、お互いに対して比較した時、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それでもなお、抗体またはそのバリアントのCDRを指すいずれの定義の適用も、本明細書で定義および使用される場合の用語の範囲内にあることを意図される。上で引用された参考文献のそれぞれにより定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸残基は、比較として下記の表に示されている。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列およびサイズによって異なる。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
【表5】
【0064】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列についてのナンバリングシステムを定義した。当業者は、この「Kabatナンバリング」のシステムを任意の可変ドメイン配列に、その配列自体以外のいかなる実験データにも頼ることなく、一義的に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabatナンバリング」は、Kabatら、U.S. Dept. of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983年)により示されたナンバリングシステムを指す。
【0065】
上記の表に加えて、Kabatナンバーシステムは、以下のようにCDR領域を記載する:CDR-H1は、およそアミノ酸31(すなわち、最初のシステイン残基からおよそ9番目の残基)で始まり、およそ5~7個のアミノ酸を含み、次のトリプトファン残基で終わる。CDR-H2は、CDR-H1の終わりから15番目の残基で始まり、およそ16~19個のアミノ酸を含み、次のアルギニンまたはリシン残基で終わる。CDR-H3は、CDR-H2の終わりからおよそ33番目のアミノ酸残基で始まり、3~25個のアミノ酸を含み、配列W-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終わる。CDR-L1は、およそ残基24(すなわち、システイン残基の後)で始まり、およそ10~17個の残基を含み、次のトリプトファン残基で終わる。CDR-L2は、CDR-L1の終わりからおよそ16番目の残基で始まり、およそ7個の残基を含む。CDR-L3は、CDR-L2の終わりからおよそ33番目の残基(すなわち、システイン残基の後)で始まり、およそ7~11個の残基を含み、配列FまたはW-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終わる。
【0066】
本明細書で開示された抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源由来であり得る。好ましくは、抗体はヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリの抗体である。別の実施形態では、可変領域は、起源がコンドリクトイド(condricthoid)(例えば、サメ由来)であり得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「重鎖定常領域」は、免疫グロブリン重鎖に由来したアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上流、中流、および/または下流のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそのバリアントもしくは断片の少なくとも1つを含む。例えば、本開示に使用される抗原結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態では、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示に使用される抗体は、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインの全部または部分)を欠損し得る。上で示されているように、重鎖定常領域は、アミノ酸配列において天然に存在する免疫グロブリン分子とは異なるように改変され得ることは当業者により理解される。
【0068】
本明細書に開示された抗体の重鎖定常領域は、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドの重鎖定常領域は、IgG1分子に由来したCH1ドメインおよびIgG3分子に由来したヒンジ領域を含み得る。別の例では、重鎖定常領域は、一部、IgG1分子に由来し、一部、IgG3分子に由来した、ヒンジ領域を含み得る。別の例では、重鎖部分は、一部、IgG1分子に由来し、一部、IgG4分子に由来した、キメラヒンジを含み得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「軽鎖定常領域」は、抗体軽鎖に由来したアミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は、定常カッパドメインまたは定常ラムダドメインの少なくとも1つを含む。
【0070】
「軽鎖-重鎖ペア」は、軽鎖のCLドメインと重鎖のCH1ドメインとの間のジスルフィド結合を通してダイマーを形成することができる軽鎖および重鎖のコレクションを指す。
【0071】
以前に示されているように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元配置は周知である。本明細書で使用される場合、用語「VHドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、用語「CH1ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖の最初の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側にある。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「CH2ドメイン」は、例えば、従来のナンバリングスキームを使用する抗体の約残基244~残基360(残基244~360、Kabatナンバリングシステム;および残基231~340、EUナンバリングシステム;Kabatら、U.S. Dept. of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983年)を参照されたい)にわたる、重鎖分子の部分を含む。CH2ドメインは、それが別のドメインと密接にペア形成されていない点で独特である。むしろ、2つのN連結型分岐炭水化物鎖が、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入されている。CH3ドメインが、CH2ドメインからIgG分子のC末端にわたり、およそ108個の残基を含むこともまた、十分、実証されている。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに接合する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25個の残基を含み、可撓性であり、したがって、2つのN末端抗原結合性領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は、3つの別個のドメイン:上流、中流、および下流のヒンジドメインへ細分され得る(Rouxら、J. Immunol 161巻:4083頁(1998年))。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」は、2個の硫黄原子間で形成される共有結合性結合を含む。アミノ酸システインは、ジスルフィド結合を形成するか、または第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。最も多く天然に存在するIgG分子において、CH1およびCK領域は、ジスルフィド結合により連結され、2つの重鎖は、Kabatナンバリングシステムを使用する239および242に対応する位置(226または229位、EUナンバリングシステム)における2つのジスルフィド結合により連結される。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、免疫反応性領域または部位が第1の種から得られるか、またはそれに由来し、定常領域(本開示によれば、インタクトでも、部分的でも、または改変されていてもよい)が第2の種から得られる、任意の抗体を意味すると考えられている。ある特定の実施形態では、標的結合領域または部位は、非ヒト供給源(例えば、マウスまたは霊長類)由来であり、定常領域はヒトである。
【0076】
本明細書で使用される場合、「パーセントヒト化」は、ヒト化ドメインと生殖系列ドメインの間でのフレームワークアミノ酸の差異(すなわち、非CDRの差異)の数を決定し、その数をアミノ酸の総数から引き算し、次いで、それをアミノ酸の総数で割り算し、100を掛け算することにより計算される。
【0077】
「特異的に結合する」または「に対する特異性を有する」とは、抗体がその抗原結合性ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が、抗原結合性ドメインとエピトープとの間にいくらかの相補性を伴うことを一般的に意味する。この定義によれば、抗体は、その抗原結合性ドメインを介してそのエピトープに、ランダムな無関係のエピトープに結合し得るよりも容易に結合する場合、エピトープと「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的親和性を認定するために本明細書で使用される。例えば、抗体「A」は、抗体「B」よりも所与のエピトープに対して高い特異性を有するとみなされ得、または抗体「A」は、関連エピトープ「D」に対して有するよりも高い特異性で、エピトープ「C」に結合すると言われ得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」または「処置」は、治療的処置と予防的または防止的手段の両方を指し、目的は、がんの進行などの望ましくない生理学的変化または障害を防止または遅くする(減らす)ことである。有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能または検出不可能に関わらず、症状の軽減、疾患の程度の減弱、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的に関わらず)が挙げられるが、それらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けなかった場合の予想される生存と比較して、生存の延長を意味し得る。処置を必要とするものには、状態もしくは障害をすでに有するもの、加えて、状態もしくは障害を有する傾向にあるもの、または状態もしくは障害が防止されるべきであるものが挙げられる。
【0079】
「被験体」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後診断、または治療が望まれる任意の被験体、特に哺乳動物被験体を意味する。哺乳動物被験体には、ヒト、家畜動物、農場動物、および動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、雌ウシなどが挙げられる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「処置を必要とする患者へ」または「処置を必要とする被験体」などの句は、例えば、検出のために、診断手順のために、および/または処置のために、使用される本開示の抗体または組成物の投与から利益を得るだろう、哺乳動物被験体などの被験体を含む。
【0081】
抗PD-1抗体
本開示は、ヒトPD-1タンパク質に対する高い親和性を有する抗PD-1抗体を提供する。試験された抗体は、強力な結合および阻害活性を示し、治療的および診断的使用に有用である。さらに、試験されたヒト化抗体の1つ(TY101)は、2つのFDA認可抗hPD-1抗体よりも大幅に高い結合親和性を示した。
【0082】
したがって、本開示の一実施形態は、ヒトプログラム死1(PD-1)タンパク質に特異的に結合することができる抗PD-1抗体またはその断片を提供する。
【0083】
本開示の一実施形態によれば、表1におけるCDR群の1つのようなCDR領域を有する、重鎖および軽鎖可変ドメインを含む抗体が提供される。
【表1】
【0084】
例えば、一実施形態では、ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、HCDR1:GFTFSSYT(配列番号1)、HCDR2:ISHGGGDT(配列番号2)、HCDR3:ARHSGYERGYYYVMDY(配列番号3)、LCDR1:ESVDYYGFSF(配列番号4)、LCDR2:AAS(配列番号5)、LCDR3:QQSKEVPW(配列番号6)である、抗体またはその断片が提供される。
【0085】
例えば、一実施形態では、ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、HCDR1:GYTFTSYT(配列番号7)、HCDR2:INPTTGYT(配列番号8)、HCDR3:ARDDAYYSGY(配列番号9)、LCDR1:ENIYSNL(配列番号10)、LCDR2:AAK(配列番号11)、LCDR3:QHFWGTPWT(配列番号12)である、抗体またはその断片が提供される。
【0086】
例えば、一実施形態では、ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、HCDR1:GFAFSSYD(配列番号13)、HCDR2:ITIGGGTT(配列番号14)、HCDR3:ARHRYDYFAMDN(配列番号15)、LCDR1:ENVDNYGINF(配列番号16)、LCDR2:VSS(配列番号17)、LCDR3:QQSKDVPW(配列番号18)である、抗体またはその断片が提供される。
【0087】
実験例において実証されているように、これらのCDR領域を含有した抗体は、マウス、ヒト化、またはキメラに関わらず、強力なPD-1結合および阻害活性を有した。さらにコンピューターモデリングにより、CDR内のある特定の残基が、抗体の特性を保持または向上させるように改変され得ることが示された。一部の実施形態では、本開示の抗PD-1抗体は、1つ、2つ、または3つのさらなる改変を有する、表1に列挙されているようなVH CDRおよびVL CDRを含む。そのような改変は、アミノ酸の付加、欠失、または置換であり得る。
【0088】
一部の実施形態では、改変は、CDRのそれぞれからの1つ以下のホットスポット位置における置換である。一部の実施形態では、改変は、1つ、2つ、または3つのそのようなホットスポット位置における置換である。一実施形態では、改変は、ホットスポット位置の1つにおける置換である。そのような置換は、一部の実施形態では、保存的置換である。
【0089】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、免疫グロブリンポリペプチド内の非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置き換えられる。別の実施形態では、アミノ酸のひと続きが、側鎖ファミリーメンバーの、順序および/または組成が異なる構造的に類似したひと続きで置き換えられ得る。
【0090】
保存的アミノ酸置換の非限定的な例は、以下の表に提供され、その表において、0またはそれより高い類似性スコアは、2つのアミノ酸間の保存的置換を示す。
【表6】
【表7】
【0091】
VHの非限定的な例は、配列番号27、配列番号31、配列番号35、配列番号37、および配列番号39に提供されている。配列番号27はマウスVHである。配列番号31はキメラ抗体のVHであり、配列番号35、配列番号37、および配列番号39はヒト化されている。
【0092】
VLの非限定的な例は、配列番号29、配列番号33、配列番号41、配列番号43、および配列番号45に提供されている。配列番号29はマウスVLである。配列番号33はキメラ抗体のVLであり、配列番号41、配列番号43、および配列番号45はヒト化されている。
【0093】
一部の実施形態では、本開示の抗PD-1抗体は、配列番号27、配列番号31、配列番号35、配列番号37、もしくは配列番号39のVH、配列番号29、配列番号33、配列番号41、配列番号43、もしくは配列番号45のVL、またはそれらのそれぞれの生物学的等価物を含む。VHまたはVLの生物学的等価物は、全体的な80%、85%、90%、95%、98%、または99%配列同一性を有すると同時に、指定されたアミノ酸を含む配列である。例えば、配列番号27の生物学的等価物は、配列番号27に対して全体的な80%、85%、90%、95%、98%、または99%配列同一性を有するが、CDRを保持するVHであり得る。
【0094】
本明細書に開示されているような抗体が、それらが由来した天然に存在する結合性ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なるように、改変され得ることもまた、当業者により理解される。例えば、指定されたタンパク質に由来したポリペプチドまたはアミノ酸配列は、出発配列に類似し、例えば、出発配列に対してある特定のパーセント同一性を有し得、例えば、出発配列に対して60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であり得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、抗体は、抗体に通常付随していない、アミノ酸配列または1つもしくは複数の部分を含む。例示的な改変は、下により詳細に記載されている。例えば、本開示の抗体は、可撓性リンカー配列を含み得、または機能性部分(例えば、PEG、薬物、毒素、または標識)を付加するように改変され得る。
【0096】
本開示の抗体、そのバリアントまたは誘導体には、例えば、共有結合性付着が、抗体がエピトープに結合するのを妨げないように、任意の型の分子の抗体への共有結合性付着により、改変される誘導体が挙げられる。例えば、非限定的に、抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などにより、改変され得る。多数の化学修飾のいずれも、公知の技術により行われ得、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが挙げられるが、それらに限定されない。追加として、抗体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0097】
一部の実施形態では、抗体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、薬学的作用物質、またはPEGにコンジュゲートされ得る。
【0098】
抗体は、治療剤にコンジュゲートまたは融合され得、治療剤には、放射性標識などの検出可能な標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤または診断剤、薬物または毒素であり得る細胞毒性剤、超音波増強剤、非放射性標識、それらの組み合わせ、および当技術分野において公知の他のそのような作用物質が挙げられ得る。
【0099】
抗体は、それを化学発光化合物にカップリングすることにより、検出可能に標識することができる。次いで、化学発光タグ付き抗原結合性ポリペプチドの存在が、化学反応の経過中に生じる発光の存在を検出することにより決定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルである。
【0100】
抗体はまた、152Euまたはランタニド系列の他のものなどの蛍光放射性金属を使用して、検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して、抗体に付着させることができる。様々な部分を抗体にコンジュゲートするための技術は、周知であり、例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243~56頁(Alan R. Liss, Inc.(1985年);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、Marcel Dekker, Inc.、623~53頁(1987年);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、Monoclonal Antibodies’84: Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475~506頁(1985年);「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編)、Academic Press 303~16頁(1985年)、およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」、Immunol. Rev.(52巻:119~58頁(1982年))を参照されたい。
【0101】
二機能性分子
PD-1は、免疫チェックポイント分子であり、また腫瘍抗原でもある。腫瘍抗原を標的にする分子として、PD-1に特異的な抗体または抗原結合性断片を、免疫細胞に特異的な第2の抗原結合性断片と組み合わせて、二重特異性抗体を生成することができる。
【0102】
一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、貪食細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球、好塩基球、およびマスト細胞からなる群より選択される。標的にされ得る免疫細胞上の分子には、例えば、CD3、CD16、CD19、CD28、およびCD64が挙げられる。他の例には、PD-1、CTLA-4、LAG-3(CD223としても公知)、CD28、CD122、4-1BB(CD137としても公知)、TIM3、OX-40もしくはOX40L、CD40もしくはCD40L、LIGHT、ICOS/ICOSL、GITR/GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVM、またはBTLA(CD272としても公知)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、およびCD47が挙げられる。二重特異性の具体的な例には、非限定的に、PD-L1/PD-1、PD-1/LAG3、PD-1/TIGIT、およびPD-1/CD47が挙げられる。
【0103】
免疫チェックポイント阻害剤として、PD-1に特異的な抗体または抗原結合性断片を、腫瘍抗原に特異的な第2の抗原結合性断片と組み合わせて、二重特異性抗体を生成することができる。「腫瘍抗原」は、腫瘍細胞において産生される抗原性物質であり、すなわち、それは、宿主において免疫応答を引き起こす。腫瘍抗原は、腫瘍細胞を同定することにおいて有用であり、がん治療における使用のための有力候補である。身体における正常タンパク質は抗原性ではない。しかしながら、ある特定のタンパク質は、腫瘍形成中、産生されるかまたは過剰発現され、したがって、身体にとって「外来」に思われる。これには、免疫系から十分、隔離されている正常タンパク質、正常には極めて少量で産生されるタンパク質、正常にはある特定の発生期でのみ産生されるタンパク質、または構造が変異により改変されているタンパク質が挙げられ得る。
【0104】
多数の腫瘍抗原が当技術分野において公知であり、新しい腫瘍抗原は、スクリーニングにより容易に同定することができる。腫瘍抗原の非限定的な例には、EGFR、Her2、EpCAM、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、CD73、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、CIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR、インテグリン、αVβ3、α5β1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、およびテネイシンが挙げられる。
【0105】
一部の態様では、一価ユニットは、対応する非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞上に過剰発現するタンパク質に対する特異性を有する。本明細書で使用される場合、「対応する非腫瘍細胞」は、腫瘍細胞の起源と同じ細胞型である非腫瘍細胞を指す。そのようなタンパク質は、必ずしも腫瘍抗原と異なるとは限らないことに留意されたい。非限定的な例には、たいていの結腸、直腸、乳房、肺、膵臓、および胃腸管の癌腫に過剰発現している癌胎児抗原(CEA);乳房、卵巣、結腸、肺、前立腺、および子宮頚部のがんに過剰発現している場合が多い、ヘレグリン受容体(HER-2、neuor c-erbB-2);乳房、頭頚部、非小細胞肺、および前立腺の固形腫瘍を含む様々な範囲の固形腫瘍で高度に発現している上皮増殖因子受容体(EGFR);アシアロ糖タンパク質受容体;トランスフェリン受容体;肝実質細胞上に発現しているセルピン酵素複合体受容体;膵管腺癌細胞上に過剰発現している線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR);抗血管新生遺伝子治療のための血管内皮増殖因子受容体(VEGFR);非粘液性卵巣癌の90%において選択的に過剰発現している葉酸受容体;細胞表面グリコカリックス;炭水化物受容体;ならびに呼吸上皮細胞への遺伝子送達に有用であり、嚢胞性線維症などの肺疾患の処置にとって魅力的である多量体免疫グロブリン受容体が挙げられる。この点における二重特異性の非限定的な例には、PD-1/EGFR、PD-1/Her2、PD-1/CD33、PD-1/CD133、PD-1/CEA、およびPD-1/VEGFが挙げられる。
【0106】
二重特異性抗体の異なる型式もまた提供される。一部の実施形態では、抗PD-1断片および第2の断片のそれぞれは、それぞれFab断片、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体から独立して選択される。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、Fc断片をさらに含む。
【0107】
抗体または抗原結合性断片だけを含むのではない、二機能性分子もまた提供される。腫瘍抗原を標的にする分子として、本明細書に記載されたものなどのPD-1に特異的な抗体または抗原結合性断片は、免疫サイトカインまたはリガンドと、必要に応じてペプチドリンカーを通して、組み合わせることができる。連結される免疫サイトカインまたはリガンドには、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、GM-CSF、TNF-α、CD40L、OX40L、CD27L、CD30L、4-1BBL、LIGHT、およびGITRLが挙げられるが、それらに限定されない。そのような二機能性分子は、免疫チェックポイント遮断効果を腫瘍部位局部的免疫調節と組み合わせることができる。
【0108】
抗体をコードするポリヌクレオチドおよび抗体を調製する方法
本開示はまた、本開示の抗体、そのバリアントまたは誘導体をコードする単離されたポリヌクレオチドまたは核酸分子(例えば、配列番号22、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、および46)も提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上、または別個のポリヌクレオチド分子上の抗原結合性ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域の全体をコードし得る。追加として、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上、または別個のポリヌクレオチド分子上の抗原結合性ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域の部分をコードし得る。
【0109】
抗体を作製する方法は当技術分野において周知であり、本明細書に記載されている。ある特定の実施形態では、本開示の抗原結合性ポリペプチドの可変領域と定常領域の両方は、完全にヒトである。完全ヒト抗体は、当技術分野において記載された技術を使用して、および本明細書に記載されているように、作製することができる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内在性遺伝子座が無能にされているトランスジェニック動物に抗原を投与することにより調製することができる。そのような抗体を作製するために使用することができる例示的な技術は、全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,150,584号;第6,458,592号;第6,420,140号に記載されている。
【0110】
ある特定の実施形態では、調製された抗体は、処置されるべき動物、例えば、ヒトにおいて、有害な免疫応答を誘発しない。一実施形態では、本開示の抗原結合性ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体は、当技術分野において認められている技術を使用して、それらの免疫原性を低下させるように改変される。例えば、抗体は、ヒト化、霊長類化、脱免疫化され得、またはキメラ抗体が作製され得る。これらの型の抗体は、親抗体の抗原結合性特性を保持、または実質的に保持するが、ヒトにおいて免疫原性がより低い、非ヒト抗体、典型的にはマウスまたは霊長類抗体に由来する。これは、(a)非ヒト可変ドメイン全体をヒト定常領域へグラフトして、キメラ抗体を生成すること;(b)重要なフレームワーク残基を保持して、もしくは保持せずに、非ヒト相補性決定領域(CDR)の1つもしくは複数の少なくとも一部をヒトフレームワークおよび定常領域へグラフトすること;または(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによりヒト様区画でそれらを「覆い隠す」ことを含む様々な方法により達成され得る。そのような方法は、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 57巻:6851~6855頁(1984年);Morrisonら、Adv. Immunol. 44巻:65~92頁(1988年);Verhoeyenら、Science 239巻:1534~1536頁(1988年);Padlan、Molec. Immun. 25巻:489~498頁(1991年);Padlan、Molec. Immun. 31巻:169~217頁(1994年)、ならびに米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、および第6,190,370号に開示され、それらの全ては全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0111】
脱免疫化もまた、抗体の免疫原性を減少させるために使用することができる。本明細書で使用される場合、用語「脱免疫化」は、T細胞エピトープを改変するための抗体の変化を含む(例えば、国際出願公開WO/9852976号A1およびWO/0034317号A2を参照されたい)。例えば、出発抗体由来の可変重鎖および可変軽鎖配列が分析され、配列内の相補性決定領域(CDR)および他の重要な残基に関係したエピトープの位置を示す各V領域からのヒトT細胞エピトープ「マップ」が作成される。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープが、最終抗体の活性を変化させるリスクが低い代替のアミノ酸置換を同定するために分析される。アミノ酸置換の組み合わせを含む様々な代替可変重鎖配列および可変軽鎖配列が設計され、次いで、これらの配列が、様々な結合性ポリペプチドへ組み入れられる。典型的には、12個~24個の間のバリアント抗体が生成され、結合および/または機能について試験される。その後、改変された可変およびヒト定常領域を含む完全な重鎖および軽鎖遺伝子は、発現ベクターへクローニングされ、その後に生じたプラスミドが、抗体全体の産生のために細胞株へ導入される。次いで、抗体は、適切な生化学的および生物学的アッセイにおいて比較され、最適なバリアントが同定される。
【0112】
本開示の抗原結合性ポリペプチドの結合特異性は、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または酵素結合性免疫吸着アッセイ(ELISA)などのin vitroアッセイにより決定することができる。
【0113】
あるいは、単鎖ユニットの産生について記載された技術(米国特許第4,694,778号;Bird、Science 242巻:423~442頁(1988年);Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 55巻:5879~5883頁(1988年);およびWardら、Nature 334巻:544~554頁(1989年))は、本開示の単鎖ユニットを産生するように適応することができる。単鎖ユニットは、Fv領域の重鎖断片と軽鎖断片をアミノ酸架橋を介して連結して、単鎖融合ペプチドを結果として生じることにより形成される。E.coliにおける機能性Fv断片の組み立てについての技術もまた使用され得る(Skerraら、Science 242巻:1038~1041号(1988年))。
【0114】
単鎖Fv(scFv)および抗体を作製するために使用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology 203巻:46~88頁(1991年);Shuら、Proc. Natl. Sci. USA 90巻:1995~1999頁(1993年);ならびにSkerraら、Science 240巻:1038~1040頁(1988年)に記載されたものが挙げられる。ヒトにおける抗体のin vivo使用およびin vitro検出アッセイを含む一部の使用について、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を使用することが好ましい場合がある。キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来している分子、例えば、マウスモノクローナル抗体に由来した可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体である。キメラ抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、Morrison、Science 229巻:1202頁(1985年);Oiら、BioTechniques 4巻:214頁(1986年);Gilliesら、J. Immunol. Methods 125巻:191~202頁(1989年);米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;および第4,816397号を参照されたい。
【0115】
ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、所望の抗原を結合する非ヒト種抗体に由来した抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、抗原結合を変化させ、好ましくは向上させるために、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、当技術分野において周知の方法、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDR残基およびフレームワーク残基の相互作用のモデリング、ならびに特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較により、同定される。(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature 332巻:323頁(1988年)を参照されたい。)抗体は、例えば、CDR-グラフト(EP239,400;国際出願公開WO91/09967号;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェシング(resurfacing)(EP592,106;EP519,596;Padlan、Molecular Immunology 28巻(4/5号):489~498頁(1991年);Studnickaら、Protein Engineering 7巻(6号):805~814頁(1994年);Roguskaら、Proc. Natl. Sci. USA 91巻:969~973頁(1994年))および鎖シャフリング(全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,565,332号)を含む、当技術分野において公知の様々な技術を使用してヒト化することができる。
【0116】
完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置にとって特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来した抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ方法を含む、当技術分野において公知の様々な方法により作製することができる。それぞれが、全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびに国際出願公開WO98/46645号、WO98/50433号、WO98/24893号、WO98/16654号、WO96/34096号、WO96/33735号、およびWO91/10741号もまた参照されたい。
【0117】
ヒト抗体はまた、機能性内因性免疫グロブリンを発現する能力がないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して作製することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体が、マウス胚性幹細胞へランダムに、または相同組換えにより導入され得る。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域が、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞へ導入され得る。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えにより、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別々に、またはそれと同時に、非機能性にさせられ得る。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生を防止する。改変された胚性幹細胞が拡大増殖され、胚盤胞へマイクロインジェクションされて、キメラマウスを産生する。次いで、キメラマウスは、飼育されて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を産生する。トランスジェニックマウスは、通常の仕方で、選択された抗原、例えば、所望の標的ポリペプチドの全部または一部分で免疫化される。抗原に対して方向づけられたモノクローナル抗体を、従来のハイブリドーマ技術を使用して、免疫化トランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスによって保持されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再配列し、その後、クラス切り替えおよび体細胞変異を起こす。したがって、そのような技術を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を作製するためのこの技術の概説について、LonbergおよびHuszar、Int. Rev. Immunol. 73巻:65~93頁(1995年)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのこの技術の詳細な考察ならびにそのような抗体を作製するためのプロトコールについて、例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、国際出願公開第WO 98/24893号;WO96/34096号;WO96/33735号;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;および第5,939,598号を参照されたい。加えて、Abgenix,Inc.(Freemont、Calif.)およびGenPharm(San Jose、Calif.)などの会社は、上で記載されたものと類似した技術を使用して、選択された抗原に対して方向づけられたヒト抗体を提供することに関わり得る。
【0118】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体はまた、「誘導選択(guided selection)」と称される技術を使用して生成することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体が、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導するために使用される(Jespersら、Bio/Technology 72巻:899~903頁(1988年)。全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,565,332号も参照されたい)。
【0119】
別の実施形態では、所望のモノクローナル抗体をコードするDNAが、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力があるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離およびシーケンシングされ得る。単離され、サブクローニングされたハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として働く。いったん単離されれば、DNAは、発現ベクターへ入れられる場合があり、次いで、他に免疫グロブリンを産生しない、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの原核生物または真核生物の宿主細胞へトランスフェクトされる。より特には単離されたDNA(本明細書に記載されているように合成であってもよい)は、参照により本明細書に組み入れられる、1995年1月25日に出願されたNewmanら、米国特許第5,658,570号に記載されているように、抗体の製造のための定常および可変領域配列をクローニングするために使用され得る。本質的には、これは、選択された細胞からのRNAの抽出、cDNAへの変換、およびIg特異的プライマーを使用するPCRによる増幅を伴う。この目的のための適切なプライマーもまた、米国特許第5,658,570号に記載されている。下でより詳細に論じられるように、所望の抗体を発現する形質転換された細胞は、免疫グロブリンの臨床的および商業的供給を提供するために比較的大量に増殖され得る。
【0120】
追加として、日常的組換えDNA技術を使用して、本開示の抗原結合性ポリペプチドのCDRの1つまたは複数が、フレームワーク領域内に、例えば、非ヒト抗体をヒト化するためにヒトフレームワーク領域へ、挿入され得る。フレームワーク領域は、天然に存在するまたはコンセンサスなフレームワーク領域、好ましくはヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、ヒトフレームワーク領域の一覧表について、Chothiaら、J. Mol. Biol. 278巻:457~479頁(1998年)を参照されたい)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせにより生成されたポリヌクレオチドは、所望のポリペプチドの少なくとも1つのエピトープ、例えば、LIGHTに特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、1つまたは複数のアミノ酸置換がフレームワーク領域内で行われ得、好ましくは、アミノ酸置換が抗体のその抗原への結合を向上させる。追加として、そのような方法は、鎖内ジスルフィド結合に関与する1個または複数の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を行い、1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合を欠損する抗体分子を生成するために使用され得る。ポリヌクレオチドへの他の変化は、本開示により包含され、当業者の能力の範囲内である。
【0121】
加えて、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共に、スプライシングすることによる「キメラ抗体」の作製のために開発された技術(Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA:851~855頁(1984年);Neubergerら、Nature 372巻:604~608頁(1984年);Takedaら、Nature 314巻:452~454頁(1985年))を使用することができる。本明細書で使用される場合、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来している分子、例えば、マウスモノクローナル抗体に由来した可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である。
【0122】
組換え抗体を生成するためのさらに別の非常に効率的な手段がNewman、Biotechnology 10巻:1455~1460頁(1992年)により開示されている。具体的には、この技術は、サル可変ドメインおよびヒト定常配列を含有する霊長類化抗体の生成を結果として生じる。この参考文献は、本明細書で全体として参照により組み入れられる。さらに、この技術はまた、それぞれが、参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第5,658,570号、第5,693,780号、および第5,756,096号に記載されている。
【0123】
あるいは、抗体産生細胞株が、当業者に周知の技術を使用して、選択および培養され得る。そのような技術は様々な実験マニュアルおよび主な刊行物に記載されている。この点において、下記のような本開示での使用に適した技術は、別冊を含め、全体として参照により本明細書に組み入れられる、Current Protocols in Immunology、Coliganら編、Green Publishing Associates and Wiley-Interscience、John Wiley and Sons、New York(1991年)に記載されている。
【0124】
追加として、結果としてアミノ酸置換を生じる、部位特異的変異誘発およびPCR媒介性変異誘発を含むが、それらに限定されない、当業者に公知の標準技術を使用して、本開示の抗体をコードするヌクレオチド配列に変異を導入することができる。好ましくは、バリアント(誘導体を含む)は、参照可変重鎖領域CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、可変軽鎖領域CDR-L1、CDR-L2、またはCDR-L3と比べて、50個未満のアミノ酸置換、40個未満のアミノ酸置換、30個未満のアミノ酸置換、25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5個未満のアミノ酸置換、4個未満のアミノ酸置換、3個未満のアミノ酸置換、または2個未満のアミノ酸置換をコードする。あるいは、変異は、飽和変異誘発によるなどのコード配列の全部または一部に沿ってランダムに導入することができ、結果として得られた変異体は、活性を保持する変異体を同定するために生物活性についてスクリーニングすることができる。
【0125】
がん処置
本明細書で記載される場合、本開示の抗体、バリアント、または誘導体は、ある特定の処置および診断方法に使用され得る。
【0126】
本開示はさらに、本明細書に記載された障害または状態の1つまたは複数を処置するために、動物、哺乳動物、およびヒトなどの患者に本開示の抗体を投与することを含む、抗体に基づいた治療を対象とする。本開示の治療用化合物には、本開示の抗体(本明細書に記載されているようなそのバリアントおよび誘導体を含む)、および本開示の抗体をコードする核酸またはポリヌクレオチド(本明細書に記載されているようなそのバリアントおよび誘導体を含む)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0127】
本開示の抗体はまた、がんを処置または阻害するために使用することができる。PD-1は、腫瘍細胞において過剰発現し得る。腫瘍由来PD-1は、免疫細胞上のPD-L1に結合して、それにより、抗腫瘍T細胞免疫を制限することができる。マウス腫瘍モデルにおいてPD-1を標的にする小分子阻害剤またはモノクローナル抗体を用いた結果は、標的化PD-1治療が、腫瘍増殖の有効な調節への重要な代替的かつ現実的なアプローチであることを示している。実験例に実証されているように、抗PD-1抗体は、適応免疫応答機構を活性化し、それは、がん患者における生存の向上をもたらし得る。
【0128】
したがって、一部の実施形態では、それを必要とする患者においてがんを処置するための方法が提供される。方法は、一実施形態では、本開示の抗体の有効量を患者に投与することを伴う。一部の実施形態では、患者におけるがん細胞(例えば、間質細胞)の少なくとも1個は、PD-1を発現する、過剰発現する、または発現するように誘発される。PD-1発現の誘発は、例えば、腫瘍ワクチンの投与または放射線療法により行うことができる。
【0129】
PD-1タンパク質を発現する腫瘍には、膀胱がん、非小細胞肺がん、腎臓がん、乳がん、尿道がん、結腸直腸がん、頭頚部がん、扁平上皮がん、メルケル細胞癌、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、および小細胞肺がんの腫瘍が挙げられる。したがって、本開示される抗体は、任意の1つまたは複数のそのようながんを処置するために使用することができる。
【0130】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療などの細胞性治療もまた本開示に提供される。本開示の抗PD-1抗体と接触させられる(または、代替として、本開示の抗PD-1抗体を発現するように操作される)適切な細胞を使用することができる。そのような接触または操作により、細胞は、次いで、処置を必要とするがん患者に導入することができる。がん患者は、本明細書に開示されているような型のいずれかのがんを有し得る。細胞(例えば、T細胞)は、例えば、非限定的に、腫瘍浸潤性Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0131】
一部の実施形態では、細胞は、がん患者自身から単離された。一部の実施形態では、細胞は、ドナーにより、または細胞バンクから提供された。細胞ががん患者から単離されている場合、望ましくない免疫反応は最小限にされ得る。
【0132】
本開示の抗体、またはそのバリアントもしくは誘導体で処置、防止、診断、および/または予後診断され得る、細胞生存の増加に関連した追加の疾患または状態には、悪性疾患および関連障害、例えば、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む))および慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、ならびに例えば、以下に限定されないが、肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、黒色腫、前立腺がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーム、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経鞘腫、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫を含む固形腫瘍の進行および/または転移が挙げられるが、それらに限定されない。
【0133】
感染症および免疫障害の処置
実験例に実証されているように、本開示の抗体は、免疫応答を活性化することができ、その免疫応答は、次いで、感染症を処置するために有用であり得る。
【0134】
感染症は、疾患を引き起こす作用物質による生物体の身体組織への侵入、それらの繁殖、ならびにこれらの生物体およびそれらが産生する毒素に対する宿主組織の反応である。感染症は、ウイルス;ウイロイド;プリオン;細菌;線形動物、例えば、寄生性回虫および蟯虫;節足動物、例えば、マダニ、ダニ、ノミ、およびシラミ;真菌、例えば、白癬;ならびに他の大寄生生物、例えば、サナダムシおよび他の蠕虫類などの感染性物質により引き起こされ得る。一態様では、感染性物質は、グラム陰性細菌などの細菌である。一態様では、感染性物質は、DNAウイルス、RNAウイルス、および逆転写ウイルスなどのウイルスである。ウイルスの非限定的な例には、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エプスタイン-バーウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、HIV、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスが挙げられる。
【0135】
一部の実施形態では、免疫障害の処置のための抗体またはその断片の方法または使用もまた提供される。免疫障害の非限定的な例には、感染症、感染症に関連した内毒素性ショック、関節炎、関節リウマチ、喘息、COPD、骨盤腹膜炎、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、外科手術上の癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、関節炎、髄膜脳炎、自己免疫性ぶどう膜炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介性炎症障害、多発硬化症、ループスおよびギラン-バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、膵炎、外傷、移植片対宿主病、移植片拒絶、虚血性疾患、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、および胎児-母体寛容の欠如に関係した不妊症が挙げられる。
【0136】
本開示の抗体はまた、微生物および免疫細胞を標的にして微生物の排除をもたらすことにより、微生物により引き起こされる感染性疾患を処置する、または微生物を死滅させるために、使用することもできる。一態様では、微生物は、RNAおよびDNAウイルスを含むウイルス、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、原生動物、または真菌である。
【0137】
任意の特定の患者についての具体的な投薬量および処置レジメンは、使用される特定の抗体、そのバリアントまたは誘導体、患者の年齢、体重、全般的な健康、性別、および食事、ならびに投与時期、排泄速度、薬物組み合わせ、ならびに処置されている特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存する。医療介護人によるそのような因子の判断は当業者の能力の範囲内である。量はまた、処置されるべき個々の患者、投与経路、製剤の型、使用される化合物の特徴、疾患の重症度、および所望の効果に依存する。使用される量は、当技術分野において周知の薬理学的および薬物動態学的原理により決定することができる。
【0138】
抗体またはバリアントの投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が挙げられるが、それらに限定されない。抗原結合性ポリペプチドまたは組成物は、任意の都合良い経路、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を通しての吸収により投与され得、他の生物活性剤と共に投与され得る。したがって、本開示の抗原結合性ポリペプチドを含有する医薬組成物は、経口で、直腸に、非経口的に、槽内に(intracistemally)、腟内に、腹腔内に、局所的に(散剤、軟膏剤、滴剤、または経皮パッチによるような)、頬側に、または口腔用もしくは鼻腔用スプレーとして、投与され得る。
【0139】
本明細書で使用される場合、用語「非経口的な」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内の注射および注入を含む、投与様式を指す。
【0140】
投与は全身性または局部性であり得る。加えて、本開示の抗体を、脳室内および髄腔内の注射を含む任意の適切な経路により中枢神経系へ導入することが望ましい場合があり、脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバーなどのリザーバーに付帯した、脳室内カテーテルにより容易にされ得る。肺投与もまた、例えば、吸入器または噴霧器、および噴霧剤との製剤の使用により、用いることができる。
【0141】
本開示の抗体ポリペプチドまたは組成物を、処置を必要とする区域へ局部的に投与することが望ましい場合がある;これは、例えば、非限定的に、手術中の局部的注入により、例えば、手術後の創傷包帯と併せた局所適用により、注射により、カテーテルを用いて、坐剤を用いて、またはインプラント(前記インプラントは、シラスティック(sialastic)膜などの膜または線維を含む多孔性、非多孔性、またはゼラチン様材料のものである)を用いて、達成され得る。好ましくは、本開示の抗体を含むタンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収しない材料を使用するように注意しなければならない。
【0142】
別の実施形態では、抗体または組成物は、小胞、特にリポソーム内へ送達され得る(Langer、1990年、Science 249巻:1527~1533頁;Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez-BeresteinおよびFidler(編)、Liss、New York、353~365頁(1989年);Lopez-Berestein、同書、317~327頁を参照されたい;概して同書を参照されたい)。
【0143】
さらに別の実施形態では、抗原結合性ポリペプチドまたは組成物は、制御放出系で送達され得る。一実施形態では、ポンプが使用され得る(Sefton、1987年、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14巻:201頁;Buchwaldら、1980年、Surgery 88巻:507頁;Saudekら、1989年、N. Engl. J. Med. 321巻:574頁を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.(1974年);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall(編)、Wiley、New York(1984年);RangerおよびPeppas, J.、1983年、Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23巻:61頁を参照されたい;Levyら、1985年、Science 228巻:190頁;Duringら、1989年、Ann. Neurol. 25巻:351頁;Howardら、1989年、J. Neurosurg. 71巻:105頁も参照されたい)。さらに別の実施形態では、制御放出系は、治療標的、すなわち、脳の近位に配置され得、したがって、全身性用量のほんの一部のみを必要とする(例えば、Goodson、Medical Applications of Controlled Release、同上、2巻、115~138頁(1984年)を参照されたい)。他の制御放出系は、Langer(1990年、Science 249巻:1527~1533頁)による概説において論じられている。
【0144】
本開示の組成物がタンパク質をコードする核酸またはポリヌクレオチドを含む具体的な実施形態では、核酸を、例えば、レトロウイルスベクターの使用(米国特許第4,980,286号を参照されたい)により、それを適切な核酸発現ベクターの一部として構築して、それが細胞内となるようにそれを投与することにより、または直接的注射により、または微粒子銃(microparticle bombardment)(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)の使用により、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤でのコーティングにより、または核に侵入することが公知であるホメオボックス様ペプチドと連結させてそれを投与すること(例えば、Joliotら、1991年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88巻:1864~1868頁を参照されたい)などにより、それがコードするタンパク質の発現を促進するようにin vivoで投与することができる。あるいは、核酸は、相同組換えにより、細胞内に導入されて、発現のために宿主細胞DNA内に取り込まれ得る。
【0145】
炎症性、免疫性、または悪性の疾患、障害、または状態の処置、阻害、および防止に有効であろう本開示の抗体の量は、標準臨床技術により決定することができる。加えて、in vitroアッセイは、最適な投薬量範囲を同定するのを助けるために、必要に応じて用いられ得る。製剤中に用いられる正確な用量はまた、投与経路、および疾患、障害、または状態の重篤度に依存し、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導かれた用量応答曲線から外挿され得る。
【0146】
一般命題として、本開示の抗原結合性ポリペプチドの患者へ投与される投薬量は、典型的には、患者の体重1kgあたり0.1mg~100mg、患者の体重1kgあたり0.1mg~20mgの間、または患者の体重1kgあたり1mg~10mgである。一般的に、ヒト抗体は、他の種由来の抗体よりも、外来ポリペプチドに対する免疫応答のせいで、ヒト身体内で長い半減期を有する。したがって、ヒト抗体のより低い投薬量および投与のより少ない頻度が可能である場合が多い。さらに、本開示の抗体の投薬量および投与頻度は、例えば、脂質化などの改変により抗体の取り込みおよび(例えば、脳への)組織浸透を増強することにより低減され得る。
【0147】
本開示の抗体、そのバリアントまたは誘導体の投与を含む、感染性、または悪性の疾患、状態、または障害を処置するための方法は、典型的には、ヒトにおける使用の前に、所望の治療的または予防的活性について、in vitroで、次いで、許容される動物モデルにおいてin vivoで試験される。トランスジェニック動物を含む適切な動物モデルは、当業者に周知である。例えば、本明細書に記載された抗原結合性ポリペプチドの治療的有用性を実証するためのin vitroアッセイには、抗原結合性ポリペプチドの、細胞株または患者組織試料への効果が挙げられる。抗原結合性ポリペプチドの細胞株および/または組織試料への効果は、本明細書の他の箇所に開示されたアッセイなどの当業者に公知の技術を利用して決定することができる。本開示によれば、特定の抗原結合性ポリペプチドの投与が必要であるかどうかを決定するために使用することができるin vitroアッセイには、患者組織試料が培養で増殖され、化合物に曝露され、または別な方法で化合物を投与され、そのような化合物の組織試料への効果が観察される、in vitro細胞培養アッセイが挙げられる。
【0148】
例えば、リポソームにおけるカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現する能力がある組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987年、J. Biol. Chem. 262巻:4429~4432頁を参照されたい)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などの様々な送達系が公知であり、本開示の抗体または本開示の抗体をコードするポリヌクレオチドを投与するために使用することができる。
【0149】
診断方法
PD-1の過剰発現は、ある特定の腫瘍試料において観察され、PD-1過剰発現細胞を有する患者は、本開示の抗PD-1抗体での処置に応答する可能性が高い。したがって、本開示の抗体はまた、診断および予後診断のためにも使用することができる。
【0150】
好ましくは細胞を含む試料は、がん患者または診断を望む患者であり得る患者から得ることができる。細胞は、患者由来の腫瘍組織もしくは腫瘍塊、血液試料、尿試料、または任意の試料の細胞であり得る。試料の必要に応じての前処置時に、試料は、本開示の抗体と、抗体が試料に潜在的に存在するPD-1タンパク質と相互作用可能な条件下でインキュベートされ得る。試料においてPD-1タンパク質の存在を検出するために、抗PD-1抗体を活用する、ELISAなどの方法を使用することができる。
【0151】
試料中のPD-1タンパク質の存在(必要に応じて、量または濃度と共に)は、がんの診断のために、患者が抗体での処置に適していることの指標として、または患者が、がん処置に応答している(または応答していない)ことの指標として、使用することができる。予後診断方法について、がん処置の開始の際、処置の進行を示すために、ある特定の段階に、1回、2回またはそれより多く、検出を行うことができる。
【0152】
組成物
本開示はまた、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、有効量の抗体および許容される担体を含む。一部の実施形態では、組成物は、第2の抗がん剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0153】
具体的な実施形態では、用語「薬学的に許容される」は、動物、およびより特にはヒトにおける使用として、連邦政府もしくは州政府の規制機関により認可されるか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認められている薬局方に収載されていることを意味する。さらに、「薬学的に許容される担体」は、一般的に、無毒性の固体、半固体、または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、または任意の型の製剤助剤である。
【0154】
用語「担体」は、治療薬が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、無菌液体、例えば、水および石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む油であり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合、好ましい担体である。生理食塩溶液ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液もまた、特に注射溶液のための、液体担体として用いることができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望の場合には、組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩も含有し得る。ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度の調整のための作用物質もまた構想される。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形をとり得る。組成物は、トリグリセリドなどの伝統的な結合剤および担体と共に坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準担体を含み得る。適切な医薬担体の例は、参照により本明細書に組み入れられた、E. W. MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。そのような組成物は、治療有効量の抗原結合性ポリペプチドを、好ましくは精製された形で、患者への適正な投与のための形を提供するために適切な量の担体と共に、含有する。製剤は、投与様式に適するべきである。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチックで作られたアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回用量バイアル内に封入され得る。
【0155】
ある実施形態では、組成物は、人への静脈内投与に適応した医薬組成物として日常的手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤および注射部位での疼痛を和らげるためのリグノカインなどの局部麻酔剤を含み得る。一般的に、成分は、単位剤形において、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたは小袋(sachette)などの密閉された容器中の乾性凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、別々にかまたは一緒に混合されてかのいずれかで供給される。組成物が注入により投与されることになっている場合、それは、無菌の医薬品グレードの水または食塩水を含有する注入ボトルを用いて分配され得る。組成物が注射により投与される場合、注射用無菌水または食塩水のアンプルが、成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【0156】
本開示の化合物は、中性または塩の形として製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来したものなどの陰イオンと共に形成されたもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来したものなどの陽イオンと共に形成されたものが含まれる。
【実施例】
【0157】
(実施例1:ヒトPD-1に対するヒトモノクローナル抗体の生成)
完全長ヒトPD-1 cDNAのクローニング
ヒトTリンパ球を、ヒト末梢血リンパ球(PBMC)からMACSビーズ(MiltenyiBiotec)を用いて単離した。全RNAをヒトT細胞からRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて抽出し、cDNAを、逆転写PCR(SuperScript First-Strand Synthesis System、Invitrogen)により得た。hPD-1をコードする完全長cDNAを、ヒトT細胞mRNAからセンスプライマー(5’-CTGTCTAGAATGCAGATCCCACAGGCGCC、配列番号47)およびアンチセンスプライマー(5’-GGATCCTCAGAGGGGCCAAGAGCAGT、配列番号48)を使用するRT-PCRにより生成した。配列を、DNAシーケンシングにより検証し、NCBIデータベース(NM-005018.2)と比較した。
【0158】
樹立されたhPD-1安定発現細胞株:XbalおよびBamH Iでの消化後、hPD-1 PCR断片を、pcDNA3.1(-)ベクター(Invitrogen)へクローニングした。その後、pcDNA-hPD-1完全長プラスミドを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へlipofectamine 2000(Invitrogen)を使用してトランスフェクトした。hPD-1を安定的に発現する細胞株(CHO/hPD-1)を、G418により選択し、フローサイトメトリーによりスクリーニングした。
【0159】
ヒトPD-1Ig融合タンパク質の作製:hPD-1の細胞外ドメインを含有するhPD-1mIgおよびhPD-1hIg融合タンパク質のcDNAを、pcDNA-hPD-1完全長から特異的なプライマーによるPCRにより増幅した。EcoR IおよびBgl IIで消化されたPCR断片を、発現プラスミドpmIgG内のマウスIgG2a重鎖または発現プラスミドphIgG内のヒトIgG1重鎖のCH2-CH3ドメインに融合した(H Dongら、Nat Med. 1999年;5巻:1365~1369頁)。培養上清中のタンパク質を、プロテインAセファロースカラム(HiTrap Protein A HP、GE healthcare)により精製した。精製されたタンパク質をSDA-PAGE電気泳動により確認した。
【0160】
モノクローナル抗体の生成:8~10週齢の雌Balb/cマウスを、100μgのhPD-1mIg融合タンパク質および完全フロイントアジュバント(CFA)(Sigma-Aldrich)を含む200μlの乳剤で複数の部位において皮下に(s.c.)免疫化した。3週間後、マウスを50~100μgのタンパク質で不完全フロイントアジュバント(IFA)(Sigma-Aldrich)と共にs.c.により合計3回、免疫化した。血清力価試験のために各免疫化から2週間後、マウスから採血した。力価が十分である場合、マウスを、PBS中60μgのタンパク質で腹腔内注射(i.p.)によりブーストした。免疫化マウス脾臓細胞と(ATCCからの)SP2/0-Ag14骨髄腫細胞株を融合することによりハイブリドーマを得た。ブーストされたマウスを二酸化炭素により屠殺し、脾臓を無菌的に採取した。膵臓全体を単一細胞懸濁液へ解離し、赤血球を、ACK緩衝液により溶解した。SP2/0-Ag14骨髄腫および脾臓細胞を、50mlコニカル遠心分離管において1:1比で混合した。遠心分離後、上清を捨て、細胞融合を、50%ポリエチレングリコール(Roche)で実施した。融合された細胞を、HAT選択培地中、8~10日間培養し、ハイブリドーマ培養上清を、hPD-1発現細胞への結合について、ハイスループットトランスフェクションおよびスクリーニングシステム(S Yaoら、Immunity. 2011年;34巻(5号):729~40頁)を用いて、スクリーニングし、陽性クローンを、フローサイトメトリー分析により確認した。陽性ハイブリドーマのサブクローニングを、限界希釈技術を使用して、純粋なモノクローナル培養物に達するように少なくとも5回実施した。
【0161】
(実施例2:PD-1モノクローナル抗体の特徴付け)
Mabのアイソタイプ:mAbのアイソタイプを、マウス免疫グロブリンアイソタイピングキット(BD Biosciences)を使用して同定した。全ての5個のPD-1 mAbは、IgG1アイソタイプおよびκ鎖であると同定された。
【0162】
抗hPD-1の結合特異性:表面にhPD-1を発現するCHO細胞(CHO/hPD-1)を使用して、PD-1 mAbの特異性をフローサイトメトリーにより決定した。CHO/hPD-1細胞を、氷上で抗PD-1 mAbとインキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、抗mIgG-APC(eBiosciences)とさらにインキュベートした。フローサイトメトリー分析を、FACSVerse(BD Biosciences)を使用して実施した。データは、全ての5個のhPD-1 mAbが、hPD-1に高特異性で結合したことを示した(
図1)。hPD-1 mAbが他のタンパク質を結合する可能性を排除するために、hB7-1、hPD-L1、hB7-H3、hB7-H4、hCD137、または他のタンパク質分子をトランスフェクトされたCHO細胞を、抗hPD-1 mAbで染色して、フローサイトメトリー分析した。これらの細胞をまた、陽性対照としてそれらのそれぞれの陽性抗体で、それぞれ染色した。データは、抗PD-1 mAbがこれらの試験されたタンパク質を結合しなかったことを実証した(
図2)。
【0163】
種交差反応性:抗hPD-1 mAbの種特異性を評価するために、(Guangdong landau Biotechnology Companyからの)カニクイザルの末梢血単核細胞(PBMC)を、末梢血からフィコール(Sigma-Aldrich)を用いて単離した。PBMCを、10%FCSを含有するRPMI 1640培地中に懸濁し、1μg/mlの抗hCD3でプレコーティングされた24ウェルプレートへ入れた。細胞を2日間培養した。細胞を、まず、抗hPD-1で染色した。洗浄後、細胞を、抗mIgG-APCおよびCD3-FITC;フローサイトメトリー分析のためにCD8-PerCPで染色した。加えて、mAbのマウスPD-1との交差反応性を、マウスPD-1をトランスフェクトされたCHO細胞(CHO/mPD-1)を使用するフローサイトメトリーにより決定した。
【0164】
データは、抗hPD-1 mAbがヒトT細胞とカニクイザルT細胞の両方におけるPD-1タンパク質に結合することができることを実証し、マウスPD-1に対する交差結合は見出されなかった(
図3)。
【0165】
リガンド遮断:リガンド結合の遮断を調べるために、100ngのhPD1hIg融合タンパク質を、示された用量のmAb(400、300、200、100、50ng/10ul)または対照Igと4℃で30分間プレインキュベートし、次いで、CHO/hB7-H1細胞を染色するのに使用した。細胞を洗浄し、ヤギ抗hIgG-APCでさらに染色した。遮断効果をフローサイトメトリーで評価した。
【0166】
データは、抗hPD-1 mAb 1および2(Ab1およびAb2)がリガンド遮断に対する効果を有さないことを実証した。Ab3、Ab4、およびAb5は、hPD-1融合タンパク質のhPD-L1への結合を用量依存性様式で遮断できる(
図4)。
【0167】
競合結合アッセイ:これらのmAbがhPD-1タンパク質の同じまたは異なる結合部位を認識するのかを調べるために競合結合アッセイを実施した。CHO/hPD-1細胞を、過剰量(10μg)の5個のPD-1 mAbそれぞれと、4℃で30分間プレインキュベートした。洗浄後、細胞を、50ngの異なるビオチン標識mAbと、4℃で20分間インキュベートした。mAbの結合効果を、フローサイトメトリー分析を使用して測定した。
【0168】
フローサイトメトリー分析により、Ab4およびAb5が、hPD-1タンパク質への結合をお互いに完全に抑止し、飽和用量のAb3がAb4およびAb5結合へ部分的な遮断効果を有し、Ab1およびAb2は、Ab4およびAb5のhPD-1への結合へ遮断効果を有しなかったことが示された(
図5)。したがって、Ab4およびAb5についてのPD-1上の結合部位が重複している場合がある。Ab1またはAb2およびAb4またはAb5は、異なる界面を通してPD-1に結合し、そのことはまた、リガンド遮断試験により確証された。
【0169】
(実施例3:抗PD-1抗体産生ハイブリドーマのシーケンシングおよび抗体ヒト化)
抗PD-1抗体産生ハイブリドーマのシーケンシング:1×10
7個のハイブリドーマ細胞を採取し、PBSで洗浄した。メッセンジャーRNAを、ハイブリドーマからRAeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して抽出した。RACE-Ready first-Strand cDNAを、SMARTer RACE cDNA増幅キット(Clontech)を使用して合成した。逆転写後、5’RACE PCR反応を、鋳型としてready cDNA、ならびにキットにより提供された5’ユニバーサルプライマー(UPM)およびマウスIgG1重鎖可変領域とκ軽鎖遺伝子配列により設計された3’遺伝子特異的プライマー(GSP1)を用いて、実施した。RACE産物をゲル電気泳動分析により決定した(
図6)。PCR産生をTベクターへZero Blunt TOPO PCRクローニングキット(Invitrogen)を使用してクローニングした。形質転換後、プラスミドをシーケンシング分析により検証した。抗体遺伝子断片を、VBASE2(http://www.vbase2.org)を使用することにより分析した。配列は(表2)に開示されている。
【表2】
【0170】
組換え抗体のタンパク質発現および機能決定:組換え抗体配列の正確さを保証するために、組換え抗体重鎖および軽鎖の完全長配列をそれぞれ、pcDNA3.1ベクターへクローニングし、HEK 293T細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞培養上清由来のタンパク質を、機能評価のためにプロテインGセファロースカラム(GE healthcare)で精製した。
【0171】
サイトメトリー分析データは、その組換え抗体がhPD-1タンパク質を結合することができ、かつhPD-1融合タンパク質のPD-L1タンパク質への結合を遮断することができることを実証した(
図7、パネルA、B)。
【0172】
抗ヒトPD-1抗体ヒト化:抗hPD-1ハイブリドーマの可変重鎖(VH)配列および可変軽鎖(VL)配列に基づいてヒト化を実施した。一般的に、親マウスVHおよびVL配列ならびにヒトIgG4-S228P定常領域およびヒトκ鎖で構成されるマウス-ヒトキメラmAbを最初に構築した。キメラ抗体の特徴を同定した後、3つのVLおよび3つのVLのヒト化配列を設計し、9個のヒト化抗体を作製するために使用した。配列は(表3Aおよび3B)に列挙されている。
【表3A】
【表3B】
【0173】
(実施例4:ヒト化抗体の特徴および機能)
ヒト化抗体の結合活性:CHO/hPD-1細胞を、段階希釈されたmAbとインキュベートした。9個のヒト化抗体のPD-1タンパク質への結合効果を、フローサイトメトリー分析を使用して評価し、キメラ親抗体と比較した。
【0174】
フローサイトメトリー分析結果は、一部の変異体組み合わせの結合活性が、親抗体の結合活性よりも高い;一部が、親抗体と同じまたはそれよりもわずかに低いことを示した(
図8)。変異体組み合わせは下記の表4に列挙されている。
【表4-1】
【0175】
ヒト化抗体の遮断能力:hPD-1のhPD-L1への結合を遮断するヒト化抗体の能力を測定した。100ngのhPD1mIgを、異なる用量のヒト化抗体と、10μlのPBS中、4℃で30分間プレインキュベートし、次いで、CHO/hB7-H1細胞を染色するのに使用した。細胞を洗浄し、ヤギ抗mIgG-APCでさらに染色した。遮断効果をフローサイトメトリーで評価した。同様の方法を使用して、hPD-1のhPD-L2への結合を遮断するヒト化抗体の能力を測定した。
【0176】
結果は、hPD-1mIgのCHO/hPD-L1細胞への結合が、全てのヒト化抗体により用量依存性様式で阻害されたことを示した。一部の変異体組み合わせは、キメラ親抗体よりも高い遮断能力を有する(
図9)。結果はまた、hPD-1mIgのCHO/hPD-L2細胞への結合もまた遮断されたことを示した(
図10)。
【0177】
ヒト化抗体の結合親和性および動態決定:ヒト化PD-1 mAbのhPD-1タンパク質との相互作用の結合親和性および動態を、Biacore T100(GE Healthcare Life Sciences)で評価した。hPD-1mIgタンパク質を、センサーチップCM5上にアミンカップリングにより固定化した。濾過されたヒト化抗体をHBS-EP緩衝液pH7.4(GE Healthcare Life Sciences)で希釈し、その後、hPD-1mIg固定化表面の上に注射した。9つの異なる濃度を各試料について試験した。詳細な結合動態パラメーター(会合速度、Ka、解離速度、Kd、および親和定数、KD)は完全動態分析により決定することができる。
【0178】
分析データは、変異体組み合わせとキメラ親抗体との間で結合速度(Ka)に有意差がないことを示した。3つの変異体組み合わせ(3、6、9)は解離速度(Kd)においてキメラ親抗体に近かった。全てのヒト化抗体は、低いナノモル濃度範囲(10
-10M)でのKD値を有する強い親和性を有する。2つの変異体組み合わせ(3、6)は、キメラ親抗体に近いKD値(9.89×10
-11M)を有する(表4)。
【表4-2】
【0179】
in vitroでのPD-L1陽性腫瘍細胞を死滅させるアロCD8
+CTLに対する抗PD-1の増強効果:抗PD-1抗体の抗腫瘍機構に基づいて、この実施例は、ヒト同種CD8
+細胞傷害性リンパ球(アロCD8
+CTL)による腫瘍細胞死滅へ抗PD-1抗体の増強効果を決定するためにin vitroモデルを設計した。まず、CD8
+リンパ球をヒトPBMCから単離し、照射されたヒト黒色腫トランスフェクトhB7-1細胞(624 Mel/B7-1)と培養して、アロCD8
+cyto CTLを産生した。次いで、96ウェルプレートにおいて、アロCD8
+CTL細胞を、一晩培養された624 Mel/hPD-L1腫瘍細胞と、ヒト化抗体または対照Igの存在下で5日間共培養した。プレートウェル中の細胞を、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、プレートを、ELISAリーダーを用いて540nmで読み取った。死滅活性は、腫瘍細胞の生存に基づいて計算した。
【化1】
【0180】
結果は、一部の変異体組み合わせが、in vitroで腫瘍細胞を死滅させるアロCTL細胞の能力を増強し得ることを実証した(
図11)。
【0181】
変異体組み合わせの最良セット(バリアント3)を選択し、タンパク質コード配列を、適切な発現ベクターへクローニングし、CHO細胞へ移入して、TY101とも称される抗hPD-1抗体を産生した。
【0182】
(実施例5:がん免疫療法におけるTY101の特徴)
PBMCにおけるサイトカイン増強混合リンパ球反応(MRL)。健康な個体由来のヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール-ハイパックを使用する密度勾配遠心分離により単離した。スティミュレーター細胞として、健康なドナー1由来のPBMCに、X線を40Gyの線量で照射した。レスポンダー細胞として、健康なドナー2からTリンパ球をhuman Pan T cell Isolation Kit(MiltenylBiotec)を用いて単離した。レスポンダー細胞およびスティミュレーター細胞を、10%FCSを含有する完全RPMI培地中に再懸濁し、TY101またはhIgG対照の段階希釈物の存在下で96ウェルプレートへウェルあたり2.5×105個のレスポンダー細胞および1.25×105個のスティミュレーター細胞(R/S=2)で播種した。細胞を、5%CO2での加湿インキュベータにおいて、37℃で5日間培養した。5日目に、T細胞の増殖活性を、Cell Counting Kit-8(Dojindo Molecular Technologies,Inc)により評価した。サイトカインを検出するために、培養上清を、3日目および5日目に収集した。サイトカイン分析を、Human Th1/Th2/Th17 Cytometric Bead Array kit(CBA;BD Biosciences)を使用して実施した。
【0183】
結果は、TY101に対するT細胞増殖応答が、hIgGに類似していたことを実証した(
図12)。興味深いことに、サイトカインIL-2およびIFNγ産生が、hIgGでの場合と比較して、TY101と共に投与されたMLRの培養上清において大幅に増加した(
図13)。
【0184】
Tリンパ球上のPD-1の発現の遮断。腫瘍細胞上のPD-L1の発現は、腫瘍微小環境において腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)上のPD-1発現を誘発し、PD-1依存性免疫抑制を引き起こすことができる。この実施例は、TY101が、hPD-L1をトランスフェクトされた腫瘍細胞と培養された場合、ヒトリンパ球上のhPD-1発現を阻害できるかどうかを決定するためのin vitroモデルを設計した。ヒトPBMCから単離されたヒトTリンパ球を、ヒト黒色腫トランスフェクトhPD-L1(624/hPD-L1)細胞と共に、10μg/mlのTY101または対照IgGの存在下で4日間培養した。リンパ球上のhPD-1の発現を、フローサイトメトリーにより検出した。
【0185】
結果は、リンパ球上のPD-1の発現が、培地のみおよびhIgG対照と比較して、TY101の添加により完全に阻害されたことを実証した(
図14)。
【0186】
ヒト化PD-1抗体のin vivo抗腫瘍活性:TY101のin vivo抗腫瘍効果を調べた。8週齢の雌のヒトPD-1ノックインマウス(Shanghai Model Organisms Center,Inc.から購入)に、0日目において、MC38トランスフェクトhPD-L1(MC38/hPD-L1)腫瘍細胞(1×106個/マウス)を右脇腹において皮下(s.c.)に移植した。TY101または対照Igを、6日目、9日目、および13日目にi.p.注射により投与した(10mg/kg)。腫瘍サイズおよび生存をモニターした。
【0187】
全ての動物は、最初、検出可能な腫瘍(6日目までに4~5mm)を有した。しかしながら、MC38/hPD-L1腫瘍を有するマウスのTY101での処置後、完全応答が、マウスの100%において生じた。TY101で処置された全ての5匹のマウスにおける腫瘍は、25日目までに完全に退行した。対照的に、対照IgGで処置された5匹のマウスのうちの2匹は、進行性に増殖する腫瘍を発生した。対照IgGで処置された別の3匹のマウスにおいて、腫瘍がやはり32日目に退行したが、2匹のマウスにおける腫瘍は、すぐに再発した(
図15)。結果は、TY101がin vivoでの抗腫瘍効力を増強し得ることを示した。
【0188】
(実施例6:TY101の市販PD-1抗体との機能比較)
この実施例は、TY101との比較のために、がん患者の臨床的処置のために現在認可されている2個の抗hPD-1抗体:MerckのKeytruda(ペムブロリズマブ)およびBristol-Myers SquibbのOpdivo(ニボルマブ)を選択した。
【0189】
抗体結合親和性および動態:TY101の親和性および動態を、Biacore T200装置(GE Healthcare Life Sciences)を使用して分析し、2個の市販抗体と比較した。hPD-1mIgタンパク質を、センサーチップCM5上に低濃度(33RU)で固定化し、抗体を、相互作用を検出するための検体(移動相)とした。データは、3個の抗体の結合速度Kaが著しく異ならないことを示した。TY101は、市販抗体よりもわずかに低い。TY101の解離速度Kdは、2つの市販抗体の10分の1であり、TY101の親和性KDは、市販抗体の4~7倍である。結果は、TY101がより強い結合を示すことを示した(
図16)。
【0190】
PD-1/PD-L1遮断におけるPD-1抗体の比較:PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイを、PD-1/PD-L1 Blockade Bioassays Kit(Promega)を使用してアッセイした。1×105細胞/ウェルでのJurkat-PD1細胞を、不透明な96ウェルTCプレートにおいて、TY101、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、または陰性対照hIgG4の段階希釈物(0~30μg/ml)の存在下で5時間、一晩培養されたCHO-PD-L1細胞(5×104細胞/ウェルから開始した培養物)で刺激した。5時間のインキュベーション後、Jurkat-PD-1細胞活性化を、SpectraMAX Lルミノメーターにおいて相対発光量(RLU)として、ONE-Glo基質(Promega)でのルシフェラーゼ活性を測定することにより検出した。
【0191】
分析データは、TY101および2個の市販抗体が、PD-1/PD-L1経路を遮断し得ることを示した。TY101の遮断効果は、ペムブロリズマブのものと類似し、ニボルマブのものよりも高い(
図17)。
【0192】
in vitroでの腫瘍細胞増殖の阻害効果の比較:以前に記載されているように、異なるmAbおよび対照IgGの存在下で96ウェルプレートにおいて、一晩培養された624 Mel/PD-L1腫瘍細胞とアロCD8+CTL細胞を5日間共培養した。細胞を、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、プレートを、ELISAリーダーを用いて540nmで読み取った。死滅活性は、腫瘍細胞の生存に基づいて計算した。
【0193】
結果は、全ての3つの抗PD-1mAbが、アロCD8
+CTLの腫瘍死滅能力を増強することができたことを示した。TY101の増強効果は、2個の市販抗体のものよりも高かった(
図18)。
【0194】
(実施例7:TY101についてのクローンの開発およびそれらの活性)
TY101の配列を、独占所有権のある発現ベクターへクローニングし、CHO細胞にトランスフェクトした。モノクローナル細胞株を、ClonePixおよび/または限界希釈を使用することにより樹立した。複数のクローンを樹立し、3個のそのようなクローンにより産生される抗体(TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1)を特徴付けた。
【0195】
hPD-1またはmPD-1タンパク質に対する試験抗体の結合(ELISA)
抗体のhPD-1への結合およびmPD-1タンパク質に対する交差反応性を、ELISAにより試験した。試験抗体の段階希釈物を、1μg/mlのhPD-1またはmPD-1でプレコーティングされたELISAプレートに添加した。次いで、HRPコンジュゲート型ヤギ抗ヒトIgGまたはヤギ抗マウスIgG抗体を添加した後、基質テトラメチルベンジジン(TMB)を添加し、SpectraMax Plus 384 Microplate Reader(Molecular Device,LLC.、Sunnyvale、CA)を用いて450nm波長において定量化した。試験されたTY101クローンのTY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1は、0.01~0.15nMの範囲のEC50で、hPD-1タンパク質への良好な結合を示した。抗体は、mPD-1タンパク質への結合を示さなかった(
図19)。
【0196】
hPD-1およびcPD-1発現CHOK1細胞への試験抗体の結合(フローサイトメトリー)
抗体のhPD-1への結合およびカニクイザルPD-1(cPD-1)に対する交差反応性を、hPD-1またはcPD-1発現CHOK1細胞を使用して、フローサイトメトリーにより試験した。CHOK1-hPD-1、CHOK1-cPD-1、およびCHOK1ブランク細胞を、試験物品の段階希釈物と、続いて、Alexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート型ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体とインキュベートし、FACSCanto II(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して分析した。試験されたTY101クローンのTY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1は、ナノモル濃度未満のEC50で、CHOK1-hPD-1へ、および1桁のナノモル濃度のEC50で、CHOK1-cPD-1細胞への良好な結合を示した(
図20)。
【0197】
hPD-1/hPD-L1またはhPD-1/hPD-L2結合に対する試験抗体の遮断活性(フローサイトメトリー)
これらの抗体をさらに、hPD-1/hPD-L1、加えてhPD-1/hPD-L2結合を遮断するそれらの能力について試験し、それらの能力は、がん患者処置における潜在的有効性についての鍵となるだろう。CHOK1-hPD-1細胞を、ビオチン-hPD-L1またはビオチン-hPD-L2と混合された試験物品の段階希釈物と、インキュベートした。次いで、細胞を、Alexa 488標識ストレプトアビジンとインキュベートし、FACSCanto IIを使用して分析した。抗hPD-1抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1は、hPD-L1のhPD-1発現CHOK1細胞への結合を、1.15~1.47nM IC50で遮断した。それらはまた、hPD-L2のhPD-1発現CHOK1細胞への結合を、1.52~2.33nM IC50で遮断した(
図21)。
【0198】
抗体のT細胞への効果を試験するためのヒト混合白血球反応(MLR)アッセイ
これらの抗体のT細胞機能に対する効果を、2人のドナーから単離されたT細胞を用いて、ヒトMLRアッセイにおいて試験した。接着性PBMC(大部分が単球;ドナー1から単離し、細胞培養ディッシュにプレーティングして、接着させた)を、100ng/mLの組換えヒト(rh)GM-CSFおよび50ng/mLのrhIL-4の存在下で5日間培養し、3日後、培地の半量を新しくし、6日目に1μg/mLのLPSを添加した。7日目、結果として生じた細胞(大部分が成熟DC)を採取し、マイトマイシンCで処置した。CD3
+T細胞を、ドナー2および3からEasySep(商標)Human T Cell Isolation Kit(ネガティブ選択、STEMCELL Technologies)により単離した。DCおよびT細胞を、3個の濃度(5、0.5、0.05μg/ml)の試験抗体の存在下で5日間共培養した。3日後、上清を採取して、IL-2レベルを決定し、5日後(100μL)、IFN-γレベルを決定した。抗hPD-1抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1は、アイソタイプ対照hIgG4と比較して、両方のドナー由来の細胞によるIL-2およびIFN-γの分泌を用量依存性様式で、促進した(
図22)。
【0199】
T細胞に対する抗体の効果を試験するための、操作型腫瘍細胞-ヒトT細胞共培養アッセイ
T細胞機能に対するこれらの抗体の効果をまた、4人の異なるドナーから単離されたT細胞を使用して、操作型腫瘍細胞-ヒトT細胞共培養アッセイにおいて試験した。4人のドナーのPBMCからCD3
+T細胞をEasySep(商標)Human T Cell Isolation Kitにより単離した。操作型腫瘍細胞Hep3B-OS8-hPDL1(OS8(抗CD3単鎖可変断片(scFv))およびhPD-L1を安定的に発現するように操作されたHep3B細胞(KCLB、カタログ#:88064)である)を、マイトマイシンCで処置し、3個の濃度(5、0.5、0.05μg/ml)の試験抗体の存在下で3日間、CD3
+T細胞と共培養し、培養上清を採取して、IFN-γレベルを決定した。抗hPD-1抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1は、アイソタイプ対照hIgG4と比較して、全ての4人のドナー由来の細胞によるIFN-γの分泌を用量依存性様式で、促進した(
図23)。
【0200】
(実施例8:TY101クローンは、FDA認可抗hPD-1抗体と比較してより良好な結合親和性を示した)
抗体エピトープ重複を試験するための競合的ELISA
これらの抗体が、FDA認可抗hPD-1抗体ニボルマブまたはペムブロリズマブと同じエピトープに結合するかどうかを、競合的ELISAアッセイにおいて試験した。競合抗体の段階希釈物およびビオチン-hPD-1を、1μg/ml試験抗体でプレコーティングされたELISAプレートに添加した。次いで、HRPコンジュゲート型ストレプトアビジンを添加した後、基質TMBを添加し、SpectraMax Plus 384 Microplate Readerを用いて450nm波長で定量化した。抗hPD-1抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1は、お互いのhPD-1への結合をほとんど完全に遮断し、それらが類似したエピトープを共有したことを示唆している。3個の抗体はまた、ニボルマブおよびペムブロリズマブのhPD-1への結合をほぼ完全に遮断し(93%~94%)、一方、ニボルマブおよびペムブロリズマブは、これらの抗体のhPD-1への結合を部分的にのみ、遮断した(ニボルマブについて77%~78%、およびペムブロリズマブについて46%~49%)。これらのデータは、TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1抗体が、ニボルマブおよびペムブロリズマブのエピトープとは異なるエピトープに結合し、それらは、ニボルマブおよびペムブロリズマブよりも高いhPD-1に対する親和性を有し得ることを示唆している(
図24)。
【0201】
SPRにより決定される、試験抗体のhPD-1に対する結合親和性
hPD-1に対する結合親和性の正確な測定値を得るために、抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1、加えて、ニボルマブおよびペムブロリズマブを、SPRを用いて分析した。ヒトPD-1 ECDタンパク質を、CM5センサーチップ上に、フローセル3における低い固定化レベル(60RU)およびフローセル4における高い固定化レベル(960RU)に達するように異なる時間の長さの間、固定化した。段階希釈された(0、1.5625、3.125、6.25、12.5、25、および50nM)抗体をフローセルに注射した。会合時間は180秒であり、解離時間は600秒(ニボルマブおよびペムブロリズマブについて)または1500秒(TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1について)であった。参照(フローセル1)とゼロ濃度の両方のシグナルを、試料のシグナルから引き算した後、結合動態を、Biacore T200評価ソフトウェアバージョン1.0および曲線フィッティングのための1:1結合モデルを使用して計算した。対照ヒトIgG4のhPD-1への結合はなかった。hPD-1の低い固定化レベルからのデータ(約60RU;表3;
図23)に基づいて、抗hPD-1抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1によるヒトPD-1への会合速度は、ニボルマブおよびペムブロリズマブの会合速度よりもわずかに低かった(2分の1~4分の1)。これらの3個の抗体のヒトPD-1からの解離速度は、ニボルマブおよびペムブロリズマブの解離速度の12分の1~30分の1であり、ニボルマブおよびペムブロリズマブの親和性より4~8倍の親和性を結果として生じた(より低いK
Dはより良好な親和性に対応し、逆もまた同様;表3)。hPD-1への抗hPD-1抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1の結合親和性もまた、hPD-1の高い固定化レベルにおいて試験した。抗体TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1は、非常に遅い解離速度を示し、1500秒間の解離時間後でさえも最小の解離が観察された(
図23)。データは、TY101-01-09、TY101-04-T3-05、およびTY101-4G1の結合親和性が、大部分、遅い解離速度により、ニボルマブおよびペムブロリズマブの結合親和性よりも良好であったことを示唆した(
図25)。
【0202】
本開示は、記載された具体的な実施形態により範囲が限定されるべきではなく、その実施形態は、本開示の個々の態様の単一の実例として意図され、機能的に等価であるいかなる組成物も方法もこの開示の範囲内である。本開示の方法および組成物において、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、様々な改変および変更がなされ得ることは当業者に明らかであろう。したがって、本開示は、この開示の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入るとの条件で、網羅することが意図される。
【0203】
この明細書で言及された全ての刊行物および特許出願は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ個々に示されて参照により組み入れられているかのように、同じ程度で、参照により本明細書に組み入れられる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-L1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、以下:
(a)HCDR1:GFTFSSYT(配列番号1)、HCDR2:ISHGGGDT(配列番号2)、HCDR3:ARHSGYERGYYYVMDY(配列番号3)、LCDR1:ESVDYYGFSF(配列番号4)、LCDR2:AAS(配列番号5)、LCDR3:QQSKEVPW(配列番号6);
(b)HCDR1:GYTFTSYT(配列番号7)、HCDR2:INPTTGYT(配列番号8)、HCDR3:ARDDAYYSGY(配列番号9)、LCDR1:ENIYSNL(配列番号10)、LCDR2:AAK(配列番号11)、LCDR3:QHFWGTPWT(配列番号12);および
(c)HCDR1:GFAFSSYD(配列番号13)、HCDR2:ITIGGGTT(配列番号14)、HCDR3:ARHRYDYFAMDN(配列番号15)、LCDR1:ENVDNYGINF(配列番号16)、LCDR2:VSS(配列番号17)、LCDR3:QQSKDVPW(配列番号18)
からなる群より選択される、抗体またはその断片。
(項目2)
重鎖定常領域、軽鎖定常領域、Fc領域、またはそれらの組み合わせをさらに含む、項目1に記載の抗体またはその断片。
(項目3)
前記軽鎖定常領域が、カッパまたはラムダ鎖定常領域である、項目1に記載の抗体またはその断片。
(項目4)
IgG、IgM、IgA、IgE、またはIgDのアイソタイプのものである、項目1に記載の抗体またはその断片。
(項目5)
前記アイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である、項目4に記載の抗体またはその断片。
(項目6)
キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である、項目1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
(項目7)
ヒト化抗体である、項目6に記載の抗体またはその断片。
(項目8)
配列番号35、配列番号37、配列番号39のアミノ酸配列、または配列番号35、配列番号37、もしくは配列番号39に対して少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目7に記載の抗体またはその断片。
(項目9)
配列番号41、配列番号43、配列番号45のアミノ酸配列、または配列番号41、配列番号43、もしくは配列番号45に対して少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目8に記載の抗体またはその断片。
(項目10)
ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-L1)に対する特異性を有する単離された抗体またはその断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、以下:
(a)HCDR1:GFTFSSYT(配列番号1)、HCDR2:ISHGGGDT(配列番号2)、HCDR3:ARHSGYERGYYYVMDY(配列番号3)、LCDR1:ESVDYYGFSF(配列番号4)、LCDR2:AAS(配列番号5)、LCDR3:QQSKEVPW(配列番号6);
(b)HCDR1:GYTFTSYT(配列番号7)、HCDR2:INPTTGYT(配列番号8)、HCDR3:ARDDAYYSGY(配列番号9)、LCDR1:ENIYSNL(配列番号10)、LCDR2:AAK(配列番号11)、LCDR3:QHFWGTPWT(配列番号12);
(c)HCDR1:GFAFSSYD(配列番号13)、HCDR2:ITIGGGTT(配列番号14)、HCDR3:ARHRYDYFAMDN(配列番号15)、LCDR1:ENVDNYGINF(配列番号16)、LCDR2:VSS(配列番号17)、LCDR3:QQSKDVPW(配列番号18);ならびに
(d)(a)~(c)に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3であって、そのうちの少なくとも1つが、1個、2個、または3個のアミノ酸の付加、欠失、保存的アミノ酸置換、またはそれらの組み合わせを含む、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3からなる群より選択される、抗体またはその断片。
(項目11)
前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それらのうちの1つが保存的アミノ酸置換を含むことを除いて、(a)~(c)のいずれか1つに示されている通りである、項目10に記載の単離された抗体またはその断片。
(項目12)
前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それらのうちの2つがそれぞれ保存的アミノ酸置換を含むことを除いて、(a)~(c)のいずれか1つに示されている通りである、項目10に記載の単離された抗体またはその断片。
(項目13)
前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それらのうちの3つがそれぞれ保存的アミノ酸置換を含むことを除いて、(a)~(c)のいずれか1つに示されている通りである、項目10に記載の単離された抗体またはその断片。
(項目14)
項目1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその断片および薬学的に許容される担体を含む組成物。
(項目15)
項目1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
(項目16)
がんの処置のための医薬の製造のための項目1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
(項目17)
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頚部がん、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群より選択される、項目16に記載の使用。
(項目18)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、項目1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を前記患者に投与するステップを含む、方法。
(項目19)
がんまたは感染症の処置を必要とする患者においてがんまたは感染症を処置する方法であって、
(a)in vitroで細胞を項目1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその断片で処置するステップと
(b)処置された前記細胞を前記患者に投与するステップと
を含む、方法。
(項目20)
前記細胞がT細胞である、項目19に記載の方法。
(項目21)
感染症の処置のための医薬の製造のための項目1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
(項目22)
前記感染症が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、または寄生生物による感染症である、項目21に記載の使用。
(項目23)
免疫障害の処置のための医薬の製造のための項目1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
(項目24)
前記免疫障害が、感染症、感染症に関連した内毒素性ショック、関節炎、関節リウマチ、喘息、COPD、骨盤腹膜炎、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、外科手術上の癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、関節炎、髄膜脳炎、自己免疫性ぶどう膜炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介性炎症障害、多発硬化症、ループスおよびギラン-バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、膵炎、外傷、移植片対宿主病、移植片拒絶、虚血性疾患、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、および胎児-母体寛容の欠如に関係した不妊症からなる群より選択される、項目23に記載の使用。
【配列表】