(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ウエットトラッピング方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20230510BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230510BHJP
B41M 1/14 20060101ALI20230510BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20230510BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D7/24 303A
B05D7/24 301M
B05D7/24 301T
B41M1/14
C09D11/101
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2019548299
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(86)【国際出願番号】 US2018021010
(87)【国際公開番号】W WO2018165068
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-04
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596024024
【氏名又は名称】サン・ケミカル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ティーセン,ジョン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ガウトル,カイ-ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】パリス,ジュアニータ エム.
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-066948(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129649(WO,A1)
【文献】特開2015-071719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0263060(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1633360(CN,A)
【文献】特開平08-155381(JP,A)
【文献】特開昭61-287743(JP,A)
【文献】米国特許第04105806(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05D 1/00 - 7/26
B32B 1/00 - 43/00
B41M 1/00 - 3/18
B41M 7/00 - 9/04
C09D 11/00 - 13/00
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)基材を提供すること;
b)前記基材に、1つ以上の光開始剤を含む、1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(A)を塗布すること;
c)前記基材に光開始剤を含まない1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(B)を塗布すること;ならびに
d)
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露によって、印刷実行の終わりに全てのコーティングおよび/またはインク層を同時にエネルギー硬化させること;
を含み、
前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層の1つ以上はプライマーコーティングであってもよく;ならびに
前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層の1つ以上はトップコートであってもよく;
ただし、前記インクまたはコーティング層の少なくとも1つは1つ以上の光開始剤を含むことを条件とし、
エネルギー硬化性は、
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露による硬化性を意味し、
前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層が、各々、
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露により硬化可能であるエネルギー硬化型材料を40重量%以上含み;
ステップd)によりすべての層が硬化する、印刷物品を調製するウエットトラッピング法。
【請求項2】
少なくとも1つのエネルギー硬化性インクまたはコーティング層は、UV硬化性を有し、アクリレート、グラフト化ポリスチレン、ビニル化合物、環状ラクタム、またはアクリルアミドの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インクまたはコーティング層の1つ以上は、エネルギー硬化型材料および非エネルギー硬化型材料を含むハイブリッドインクまたはコーティングである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハイブリッドインクまたはコーティング層は次のコーティング層の塗布前に乾燥される、及び/又は、前記インクまたはコーティング層の全てが塗布された後の熱の使用をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記インクまたはコーティング層(B)の1つ以上は、少量の光開始剤を、10wt%未満の量でさらに含む、及び/又は、1つ以上のインクまたはコーティング層は、アミン共力剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミン共力剤の少なくとも1つは三級アミン共力剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記三級アミンは2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートである、又は、前記三級アミンはジエチルアミンおよびトリプロピレングリコールジアクリレートの付加物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光開始剤は、I型光開始剤、II型光開始剤、ポリマー光開始剤、カチオン性光開始剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記インクまたはコーティング層の1つ以上は、顔料、剥離添加剤、フロー添加剤、および消泡剤からなる群より選択される1つ以上の材料をさらに含む、及び/又は、ビスフェノール-Aから生成される成分を含まないトップコートを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記インクまたはコーティング層の少なくとも1つは非反応性樹脂をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1のインクまたはコーティング層のみが光開始剤を含み、その後の層は全て光開始剤を含まない、又は、最後のインクまたはコーティング層のみが光開始剤を含み、その下の層全ては光開始剤を含まない、又は、3つ以上のインクまたはコーティング層が塗布され、第1のインクまたはコーティング層、および最後のインクまたはコーティング層は光開始剤を含み、中間層は全て光開始剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記層の順序は基材、プライマーコーティングの1つ以上の層、インクの1つ以上の層、およびトップコートの1つ以上の層である、又は、前記層の順序は基材、インクの1つ以上の層、およびトップコートの1つ以上の層である、又は、前記層の順序は基材、プライマーコーティングの1つ以上の層、およびインクの1つ以上の層である、又は、前記層の順序は基材、およびインクの2つ以上の層である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
エネルギー硬化型材料を含まない1つ以上のインクまたはコーティング層を前記基材上に塗布し、前記エネルギー硬化型材料を含まない1つ以上のインクまたはコーティング層は、請求項1に記載の前記ウエットトラッピング法を使用する前に乾燥されることを、さらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基材は、紙、コート紙、板紙、金属箔、ポリマーフィルム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を使用して調製される印刷物品。
【請求項16】
a)多孔性基材を提供すること;
b)エネルギー硬化性コーティング(C)を塗布すること;
c)前記エネルギー硬化性コーティング(C)を
、電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露によって硬化させること;
d)前記硬化されたコーティング(C)の上面に、1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(A)および/または(B)を塗布することであって、
前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層の1つ以上は、光開始剤を含まないエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(B)である、こと;
e)1つ以上の光開始剤を含むトップコートである、UV硬化性コーティング層(A)を塗布すること;ならびに
f)前記トップコートおよび下にあるインクまたはコーティング層を同時に、
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露によって硬化させること
を含み、
エネルギー硬化性は、
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露による硬化性を意味し、
前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層が、各々、
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露により硬化可能であるエネルギー硬化型材料を40重量%以上含む、
多孔性基材を印刷する方法。
【請求項17】
前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層(B)の1つ以上は、少量の1つ以上の光開始剤を、10wt%未満の量でさらに含む、及び/又は、前記多孔性基材は紙または板紙である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の方法により調製される、印刷された基材。
【請求項19】
請求項18に記載の印刷された基材を含む物品。
【請求項20】
a)第1の基材および第2の基材を提供することであって、前記第1または第2の基材の少なくとも1つはUV照射に対して透明であること;
b)1つ以上の光開始剤を含む、1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(A)を前記第1の基材または前記第2の基材の少なくとも1つに塗布すること;
c)光開始剤を含まない1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(B)を前記第1の基材または前記第2の基材の少なくとも1つに塗布すること;
d)前記第1および第2の基材を濡れ面対濡れ面、または乾燥面対濡れ面で積層させること;ならびに
e)UV照射に対して透明である前記基材を通して、前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層を同時に、UV照射への曝露によって硬化させること
を含み、
エネルギー硬化性は、
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露による硬化性を意味し、
前記エネルギー硬化性インクまたはコーティング層が、各々、
電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波から選択される電磁放射線への曝露により硬化可能であるエネルギー硬化型材料を40重量%以上含む、
積層物品を調製するウエットトラッピング法。
【請求項21】
前記第1および第2の基材の両方がUV-照射に対して透明なフィルムである、又は、前記第1または第2の基材の1つがUV-照射に対して透明なフィルムであり、前記第1または第2の基材のもう一方が紙である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
UV硬化性インクまたはコーティング層(A)は前記第1の基材または前記第2の基材の1つに塗布され、UV硬化性インクまたはコーティング層(B)は前記第1または第2の基材のもう一方に塗布される、又は、UV硬化性インクまたはコーティング層(A)およびUV硬化性インクまたはコーティング層(B)は前記第1の基材または第2の基材の1つに塗布され、UV硬化性インクまたはコーティング層は前記第1または第2の基材のもう一方には塗布されない、又は、UV硬化性インクまたはコーティング層(B)およびUV硬化性インクまたはコーティング(A)は、前記第1の基材または前記第2の基材の1つに塗布され、UV硬化性コーティング(B)は前記第1または第2の基材のもう一方に塗布される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の方法により調製される積層物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月7日に出願された米国仮特許出願第62/467,859号、2017年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/512,791号、および2017年8月7日に出願された米国仮特許出願第62/541,838号(その各々が、その全体として本明細書に組み込まれる)に対し優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、基材上での多層のインクおよび/またはコーティングの印刷に関する。本発明は特に、基材上で多層のインクおよび/またはコーティングを印刷または塗布するウエットトラッピング方法に関する。本発明はまた、本発明のウエットトラッピング法を使用して積層物品を調製することに関する。
【背景技術】
【0003】
基材を多層のインクおよび/またはコーティングで印刷することがしばしば必要となる。エネルギー硬化性インクおよび/またはコーティングを使用する場合、典型的には各層は、次の層が刷り重ねられる前に硬化される。
【0004】
多くのエネルギー硬化性インクおよび/またはコーティングは、十分な硬化を可能にするために光開始剤を含まなければならない。しかしながら、光開始剤を使用する不利点が存在する。例えば、硬化後に残る光開始剤残留物は、可塑剤として作用することにより硬化したインクまたはコーティングの耐溶剤性を損なう可能性がある。加えて、医薬品または化粧品のためなどのパッケージング物品では、未反応光開始剤および光開始剤断片が、印刷された基材を通って移動し、その中に含まれる製品を汚染する可能性がある。光開始剤はまた高価である。
【0005】
エネルギー硬化性インクおよび/またはコーティングの印刷において使用される光開始剤の量を低減させようとして、いくつかのグループが、インクまたはコーティング中でバインダとして使用される「自己開始型」エネルギー硬化性ポリマーを作製しようと試みている。今日まで、いくつかの興味深い開発が存在したが、提案された解決策のどれも、多層のインクおよび/またはコーティングを用いて調製された物品に要求される、硬化後に必要な耐性特性、などを達成するには十分ではない。
【0006】
CN105017487号は、シランカップリング剤およびスズ触媒(フリーラジカルを生成させ、UV照射下二重結合重合を引き起こす)を用いてポリエステルジオールから調製されたシロキサンポリウレタンを開示する。系がどのようにフリーラジカルを発生させるのかは明確ではなく、メカニズムは実際には熱的であり得る。
【0007】
電解質メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(BMIMBF)およびTiO2粒子がUV光により活性化されると、架橋された系が構築され得ることが示されている(Xinhua Liu, Bin He, Haifeng Tang & Qigang Wang. Tough nanocomposite ionogel-based actuator exhibits robust performance. Scientific Reports, 4:6673 (2014))。HEMAはアクリレートであり、BMIMBFはイオン性液体であり、TiO2は明らかにフリーラジカル源である。そのため、技術的には、フリーラジカル源としてのTiO2は、光開始剤として機能する。
【0008】
1-エチル-3-メチル-イミダゾリウムクロリド([EMIM]Cl)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、キトサン、および水は互いの中で溶解させ、UV光下で架橋させることができることが教示されている(Xinhua Liu, Dongbei Wu, Huanlei Wang and Qigang Wang. Self-recovering tough gel electrolyte with adjustable supercapacitor performance. Advanced Materials, 26(25):4370-4375 (2014))。UV光が[EMIM]Clを分裂させ、塩化物アニオンを形成させる時にUVラジカルが形成されるといわれている。よって、[EMIM]Clは光開始剤として機能する。
【0009】
意図的に自己開始される系の別の例がLi Dan、Guo Wenxun、Gao PengおよびWen Annanにより記載される(“A Novel Self-initiated Waterborne UV Curable System,” Petrochemical Technology, Volume 42, Issue 4, 435-440ページ Journal 2013)。塩化スズにより触媒された、トリブロモアニリンおよびトリブロモフェニルマレイミドのポリマーはUV硬化特性を示す。光開始剤はわかっておらず、存在しないと考えられるが、その材料がUVに曝露された時に硬化自体以外の何かを実施することも示されていない。
【0010】
自己開始される、UV硬化型両親媒性巨大分子樹脂はCN101914175号において記載される。ヒドロキシまたはアミノ含有クマリンがイソシアネートと、ジラウリル酸ジブチルスズを触媒として用いて、1:1モル比で反応させられる。生成物は次いで、様々なモノマーを用いて、特定の比率で、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として使用してアクリル化される。得られたポリマーはUV光への曝露で硬化する。使用されたクマリンとしては、4‐ヒドロキシ、3‐アミノ、3‐フェニル‐7‐アミノ、7‐メチル‐4‐ヒドロキシ、4‐エトキシ‐7‐ヒドロキシ、6,8‐ジクロロ‐7‐ヒドロキシ、および6‐アミノ‐3,4‐ベンゾが挙げられる。
【0011】
Yuan Hua、Guo Wenxun、およびGao Pengは自己開始されるUV硬化型ポリマーについて論じている(“Synthesis of a Self-Initiated UV-curing Polymer,” Applied Chemical Industry, Volume 40, Issue 7, 1180-1182, 1204ページ; Journal 2011)。30-60秒のUVへの曝露で良好な硬度まで硬化する不飽和ポリエステル-尿素コポリマが生成された。成分としてはプロピレングリコール、尿素、無水フタル酸、無水マレイン酸およびセバシン酸が挙げられる。興味深いことに、最適硬化性能は50の酸価および4%-5%の尿素含量で生じる。
【0012】
自己開始されるUV硬化性ポリエステルネットワークの他の例は、GI. Ozturk、M. Zhang、およびT.E. Longにより論じられている(“Self-Initiating UV-Curable Polyester Networks,” Polymer Preprints (American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry), Volume 50, Issue 2, 627-628ページ. Journal 2009)。光分解、続いて断片のマイケル付加により、相互侵入ゲルネットワークを形成するメカニズムが調査された。(これはまた、ワシントンDCでの2009 ACS National Meetingで、論文として提示された)。
【0013】
DeSousaおよびKhudyakovはUV硬化性アミドイミドオリゴマーを記載する(“Ultraviolet UV-Curable Amideimide Oligomers,” Industrial & Engineering Chemistry Research, Volume 45, Issue 19, 6413-6419ページ, Journal 2006)。要約は全て包含される:2つのUV硬化性オリゴマーのブレンドを、環状二無水物のω-ヒドロキシ置換アクリレートとの、およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)との反応に基づいて、調製した。使用した環状二無水物はベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物(PMDA)およびベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)であった。2つのオリゴマーはポリ(イミドアミド)であった。BTDAに基づくオリゴマーは、自己開始型である(すなわち、UV光により硬化させるのに光開始剤の添加を必要としない)と報告された。この特性は、明らかにBTDAの構造中のベンゾフェノン断片の存在による。BTDAを用いて調製されたオリゴマーはまた、アクリレートおよび/またはメタクリレートオリゴマーの他のフリーラジカルUV光-誘導硬化のための開始剤として機能し得る。しかしながら、それ自体、UV光に感応性ではない他の材料を硬化させるために自己開始型材料を使用するためには、材料は材料の同じ層中でそれらと密接に混合されなければならない。
【0014】
S.D. MihalicおよびP. Millsは表面照射を使用したポリマーの深硬化を記載する(“Deep Section Polymerization Initiated by Surface Radiation, Part 1 Monomers,” RadTech Report, Volume 13, Issue 2, 28-32ページ, Journal 1999)。典型的な光開始剤を含むアクリル系において、過酸化物(熱)開始剤をアミン促進剤と共に使用して、表面UV照射への短い曝露後に十分な熱効果を生成させ、完全硬化がUV光の照準線内にない領域においても起こり得る。二次硬化は無指向性であると述べられている。これは現在の発明を予測するものではない。というのも、単一層のコーティングが使用されており、前の例におけるように、その中に光開始剤を有さない層はないからである。
【0015】
US6,245,827号は良好な完全硬化を有する液体樹脂製品を開示する。これは、脂環式エポキシド、カプロラクトン、カチオン性光開始剤および次いで、標準フリーラジカル型α-ヒドロキシ-ケトン光開始剤からなる「促進剤」(特定的にはDarocur1173またはIrgacure184)および典型的な有機過酸化物熱フリーラジカル発生剤(Lupersol)を使用することにより達成された。α-ヒドロキシ-ケトンは崩壊したカチオン性光開始剤の塩断片を低減させ、有機過酸化物を分解させるのに必要とされる反応の熱を生成させることが主張されている。これは従来の二重硬化メカニズムである。
【0016】
自己開始されるUV硬化ポリマーの探求はまた、学術的な試みである(“Advances In light-induced polymerizations: I. Shadow cure in free radical photopolymerizations, II. Experimental and modeling studies of photoinitiator systems for effective polymerizations with LEDs.” Copyright 2012 Hajime Kitano.アイオワ大学.この論文はIowa Research Online:http://ir.uiowa.edu/etd/4866で入手可能である)。
【0017】
US7,214,725号は、マイケル付加に関与することができる一連のアクリレート材料を記載する。この特許はしばしば引用されるが、それは、特定的に、UV曝露状況において光開始剤の使用なしで働くことを主張しておらず、むしろ、著しく低い光開始剤レベルで働くことを主張していることに注意すべきである。
【0018】
US7,214,725号についての樹脂技術は、合成特許US5,945,489号およびUS6,025,410号(考案者および優先日が同じ)に基づく。これらの特許は、コストのかかる光開始剤を添加しなくても紫外線を用いて架橋させることができる不飽和を含む液体オリゴマーを意図的に開示する。しかしながら、概念の証明のための硬化は、両方の場合において、1.0%のIrgacure500を用いて達成された(CAS118690-08-07、それ自体、1‐ベンゾイルシクロヘキサノール、別名Irgacure184 CAS 947-19-3およびベンゾフェノンCAS 119-61-9の混合物)。Irgacure500は、最も確実に光開始剤である。技術は本当の意味で自己開始型ではなく、決して、光開始剤フリーではない。
【0019】
よって、多層のインクおよび/またはコーティングを基材上に印刷するより効率的で、コスト効率の良い方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、多層のインクおよび/またはコーティングを基材上で印刷するための方法を提供する。主にエネルギー硬化性インクおよびコーティングを使用するウエットトラッピング法が開示される。方法は、ペーストインク/コーティング方法(例えばオフセット)ならびに液体インク/コーティング方法(例えばフレキソ印刷)に好適である。本発明はまた、多孔性基材を印刷する方法を提供し、この場合、多孔性は、本発明のウエットトラッピング法を実施する前に、硬化プライマーコーティング層で密閉される。
【0021】
1つの態様では、本発明は、
a)基材を提供すること;
b)基材に、1つ以上の光開始剤を含む、1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(A)を塗布すること;
c)基材に光開始剤を含まない1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(B)を塗布すること;ならびに
d)印刷実行の終わりに全てのコーティングおよび/またはインク層を同時に硬化させること
を含む、印刷物品を調製するウエットトラッピング法を提供し、
ここで、エネルギー硬化性インクまたはコーティング層の1つ以上はプライマーコーティングであってもよく;
エネルギー硬化性インクまたはコーティング層の1つ以上はトップコートであってもよく;
ただし、インクまたはコーティング層の少なくとも1つは1つ以上の光開始剤を含むことを条件とする。
【0022】
別の態様では、本発明は、
a)多孔性基材を提供すること;
b)エネルギー硬化性コーティング(C)を塗布すること;
c)エネルギー硬化性コーティング(C)を硬化させること;
d)硬化されたコーティング(C)の上面に、1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(A)および/または(B)を塗布することであって;
i)ここで、エネルギー硬化性インクまたはコーティング層の1つ以上は、光開始剤を含まないエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(B)である、こと;
e)1つ以上の光開始剤を含むトップコートであるUV硬化性コーティング層(A)を塗布すること;ならびに
f)トップコートおよび下にあるインクまたはコーティング層を同時に硬化させること
を含む、多孔性基材を印刷する方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、
a)第1の基材および第2の基材を提供することであって、第1または第2の基材の少なくとも1つはUV照射に対して透明であること;
b)1つ以上の光開始剤を含む、1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(A)を第1の基材および第2の基材の少なくとも1つに塗布すること;
c)光開始剤を含まない1つ以上のエネルギー硬化性インクまたはコーティング層(B)を第1の基材および第2の基材の少なくとも1つに塗布すること;
d)第1および第2の基材を濡れ面対濡れ面、または乾燥面対濡れ面で積層させること;ならびに
e)UV照射に対して透明である基材を通して、エネルギー硬化性インクまたはコーティング層を同時に硬化させること
を含む、積層物品を調製するウエットトラッピング法を提供する。
【0024】
ある一定の実施形態では、本発明は、本発明の方法に従い印刷された多層のインクおよび/またはコーティングを含む基材を提供する。
【0025】
他の実施形態では、本発明は、本発明の方法により調製された基材を含む物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
前記概要および下記詳細な説明は例示であり、説明にすぎず、特許請求されるいずれの対象物も制限しようとするものではないことが理解されるべきである。
【0027】
別に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、発明が属する分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。全ての特許、特許出願、公開出願および刊行物、ウェブサイトおよび本明細書における全開示内容を通して言及される他の公開された材料は、別記されない限り、目的に応じてその全体が参照により組み込まれる。
【0028】
本発明は基材を印刷するための改善された方法、ならびに多層のインクおよび/またはコーティングを有する物品を提供する。印刷のウエットトラッピング法が開示される。本発明の方法はエネルギー硬化性インクおよび/またはコーティングに特に好適である。本発明はまた、インクおよび/またはコーティング層を他の基材と接触した各基材の面上にウエットトラッピングすることにより積層基材を調製するための方法を提供する。
【0029】
方法は、液体インク/コーティング方法(例えばフレキソ印刷)に対するように、ペーストインク/コーティング方法(例えばオフセット)へも同様に適用可能である。ペーストインクでは、ウエットトラッピングは、「タック」を測定し、制御することにより遂行することができる。この方法はASTM標準D4361(「3-ローラータックメータによる、印刷インクおよびビヒクルの見かけのタックのための標準試験方法」)および当業者に知られている他の同様の文書により記載される。液体の、特定的には、フレキソ印刷インク/コーティングの場合、ウエットトラッピングは、インク/コーティングのレオロジー特性を測定し、制御することにより遂行することができる。インク/コーティングのレオロジー特性を測定し、制御するこれらの方法はUS9,365,064号に記載される(その開示内容は、これにより、その全体が本明細書で組み込まれる)。塗布または印刷方法は制限されず、例えば、平版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、などが挙げられる。
【0030】
定義
本出願では、単数形の使用は特に別記されない限り複数を含む。本明細書では、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈により明確に別記されない限り、同様に複数形態を含むことが意図される。
【0031】
本出願では、「または」の使用は別記されない限り「および/または」を意味する。
【0032】
本明細書では、「含む」および/または「含んでいる」という用語は、明言された特徴、整数、工程、動作、要素、および/または成分の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、成分、および/またはそれらの群の存在または付加を除外しない。さらに、「含有する」、「有している」、「有する」、「備える」、「成る」、「構成される」という用語またはそれらの変形は詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかで使用される限りでは、そのような用語は「含んでいる」という用語と同様に包括的であることが意図される。
【0033】
本明細書では、「基材」は、インクまたはコーティングを塗布させることができる任意の表面または物体を意味する。基材としては、紙、布、革、織物、フェルト、コンクリート、石造、石、プラスチック、プラスチックもしくはポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、木材、複合物、それらの組み合わせ、などが挙げられるが、それらに限定されない。基材は、金属もしくは金属酸化物、または他の無機材料の1つ以上の層を有してもよい。
【0034】
本明細書では、「物品(単数形または複数形)」は基材または製造製品を意味する。物品の例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:基材、例えば紙、布、革、織物、フェルト、コンクリート、石造、石、プラスチック、プラスチックもしくはポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、木材、複合物、など;ならびに製造製品、例えば刊行物(例えばパンフレット)、ラベル、およびパッケージング材料(例えば、ボール紙シートまたは段ボール)、容器(例えば瓶、缶)、衣服、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンもしくはポリプロピレン)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、金属化箔(例えば、積層アルミ箔)、金属化ポリエステル、金属容器、など。
【0035】
本明細書では、「インクおよび/またはコーティング」、「インクおよびコーティング」、「インクまたはコーティング」、「インク」、および「コーティング」という用語は同じ意味で使用される。
【0036】
本明細書では、「エネルギー-硬化」は、光化学効果を生成する様々な電磁放射線源への曝露下で達成される硬化を示す。そのような発生源としては、電子ビーム、UV光、可視光、IR、またはマイクロ波が挙げられるが、それらに限定されない。組成物がUV光の作用下で硬化される場合、下記などの非限定的なUV源を使用することができる:低圧水銀球、中圧水銀球、キセノン球、エキシマランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド球、UV-LEDランプまたは太陽光。現在の発明により調製される組成物を硬化させるために、任意のUV光源が使用され得ることが当業者により認識されるべきである。現在の発明の組成物は、UV光および/または電子ビームの作用下で硬化可能な組成物における使用にとりわけ適している。
【0037】
本明細書では、「コート紙」または「コート紙基材」は、製紙業者により印刷のために、クレーコートまたは同様の滑らかな表面で仕上げられた紙を意味する。
【0038】
本明細書では、「無コート紙」または「無コート紙基材」は製紙業者により覆われていないままとされた紙を意味し、そのため、印刷は紙繊維上で直接起こる。
【0039】
本明細書では、「グラフト化リサイクルポリスチレン」または「rPS」は、脱重合され、次いで、(メト)アクリレート、および/またはスチレンおよび/または(メト)アクリル酸モノマーおよび/またはオリゴマーと共重合された、ポリスチレン樹脂を示す。
【0040】
本明細書では、範囲および量は、「約」特定の値または範囲として表すことができる。「約」はまた、正確な量を含むことが意図される。よって、「約5パーセント」は「約5パーセント」およびまた「5パーセント」を意味する。「約」は、意図される用途または目的についての典型的な実験誤差内を意味する。
【0041】
ウエットトラッピング方法
本発明の方法は、複数のインクおよび/またはコーティング層を基材および物品上に印刷するための、従来使用された方法に対していくつかの利点を提供する。
【0042】
フリーラジカル付加により硬化させてポリマーにすることができる不飽和結合を含むコーティングが知られている。様々なフリーラジカル源が使用されており、熱発生(例えば有機過酸化物)および光発生(例えば光開始剤)が挙げられる。
【0043】
アクリル酸エステル基(アクリレート)を含む放射線硬化性組成物は紫外線(UV)または電子ビーム(EB)への曝露により硬化させることができる。速硬性UV硬化系では、光開始剤が、原則として、必要であり、これは光子による照射下でラジカルを形成し、アクリレート基のフリーラジカル重合を開始させる。これは次いで、生成物の乾燥、固化、および硬化につながる。アクリレート基、またはビニル基などの他のエチレン性不飽和官能基を含むモノマー、オリゴマーおよびポリマー、ならびに光開始剤は、典型的には、当業者により本発明の前に検討され、コーティング、印刷用インク、接着剤、または成形材料として使用される放射線-固化系の必須構成要素である。
【0044】
しかしながら、高レベルの光開始剤を含むUV-およびLED-硬化性インクは、パッケージング、とりわけ食品パッケージングにおけるいくつかの適用について問題となる。例えば、高レベルの未反応光開始剤、ならびに崩壊した光開始剤由来の開裂生成物は印刷物中に残ることがあり、例えば、移行および匂いなどの様々な問題を引き起こす可能性がある。
【0045】
そのため、完全に硬化され、移行、匂い、および健康リスクの高い可能性を有する古典的、低分子量光開始剤をごく少量しか含まない、またはこれを含まない印刷物が必要である。
【0046】
インク中の光開始剤含量を低下させ、依然として、良好な硬化を得るためには、ラジカル重合の敵である酸素を低減させ、または排除して、酸素阻害を回避しなければならない。酸素阻害は、酸素はビラジカルとして、光開始剤の形成されたラジカル、またはモノマーまたは成長しているポリマー鎖上のラジカルと容易に反応することができ、それらを、通常過酸化物誘導体として不活性にすることを意味する。酸素が存在すると、これは、インクの不十分な乾燥につながる可能性がある。
【0047】
酸素阻害を最小に抑えるために、いくつかの手段が提案されている。例えば、UV乾燥機を窒素または二酸化炭素で不活性化することを実施することができる。これには、硬化点で酸素含量を低減させるために精巧な印刷機サイド導入が必要とされ、とりわけ枚葉印刷機では導入が困難である。
【0048】
光硬化(例えば、フリーラジカル硬化アクリレートまたはメタクリレート)を硬化させるためには、下記のいくつかの組み合わせを有することが必要であることが常に仮定されてきた:
フリーラジカル硬化メカニズムの酸素阻害を防止するために、窒素または他の不活性ガスのブランケット下にある間に、コーティングに衝突する電離放射線、例えば電子ビーム(EB)源;または
コーティング中の成分として光開始剤が含有されているUV光源。不活性ガスブランケットがない場合、存在する酸素から離れて反応し、系に戻った大気酸素の拡散が、汚染し、さらなるフリーラジカル付加反応を終了させる前に、硬化を進行させて完了させるために十分な量の光開始剤および十分な強度のUV光が必要とされる。
【0049】
前者の場合(EB)、ジョブのために必要とされるインクおよびコーティングは、典型的にはウエットトラッピングされており、硬化はEBユニットにおいて、印刷機の最後に起こる。後者の場合(UV)、各インクまたはコーティングは一般に個々に硬化され、その後、ウェブまたはシートが次の印刷ステーションに進む。
【0050】
光開始剤を含まないフリーラジカル層は光開始剤含有プライマー層と光開始剤含有トップコート層の間でウエットトラッピングすることができ、サンドイッチ全体は、UV光への1回曝露で一度に硬化させることができるとは決して考えられていない。具体的には、構造内の各個々の層が光開始剤を含む必要はないことは以前には知られていなかった。さらに、隣接する層(例えば、下のプライマーまたは上のトップコート)中で発生するフリーラジカルは未硬化中間層中に移動することができ、各光開始層の個々のUVランプへの個々の曝露で可能なものと同じか、またはさらに大きなレベルまでこれらを硬化させることができることは知られていなかった。本発明は初めて、インクおよび/またはコーティングの層をウエットトラッピングし、全ての層を印刷実行の終わりに同時に硬化させることにより、多層のインクおよび/またはコーティングを印刷することができることを示したものであり、ただし、インクおよび/またはコーティング層の少なくとも1つが光開始剤を含むことを条件とする。
【0051】
この発見の利点は多い。例えば、多色コート印刷ジョブに必要とされるUVランプの数が、コーティング/印刷ステーションあたり1つ(しばしば、8かまたはそれ以上)から最終印刷ステーション後の単一ユニット(しばしばトップコート)に低減できる。
【0052】
別の利点は、印刷構成物における中間層中の光開始剤が排除されることである。これによりコストを節約することができる。というのも、しばしば、光開始剤は処方配合物の最も高価な成分であるからである。
【0053】
本発明の方法は、複合印刷構造における総光開始剤負荷を低減させることができる。未反応光開始剤および光開始剤反応断片の移行は、規制されるパッケージング用途(例えば食品パッケージング)では、重要な懸念領域である。これらの量の低減は有利である。
【0054】
ある一定の実施形態では、硬化後、光開始剤残渣が存在しないため、中間層の硬化が改善される。硬化生成物の耐溶剤性は、各層が次の層の塗布前に個々に硬化されるものに比べて、本発明の構成では優れていることが証明された。これは、光開始剤残渣が典型的には硬化して、付加硬化ポリマーのバックボーンに入ることはないからである。代わりに、それは可塑剤として機能し、硬化層を柔らかくする。この残渣が存在しないと、硬化層の溶剤攻撃に抵抗する全体能力が著しく改善される。
【0055】
別の可能性のある利点は、プライマーが典型的には存在するので、「一般的な」インク系をインクバインダの基材への特定の接着特性を考慮せずに使用することができることである。プライマーが基材に接着し、インクがプライマーに接着し、トップコートがインクに接着する限り、全体の構成物は商業的に許容されるであろう。
【0056】
加えて、本発明の方法は、インクおよび/またはコーティングを配合するのにより大きな柔軟性を提供することができる。典型的には光開始剤により占められる配合物の7%~10%を除去すると、インクおよび/またはコーティングにおける多くの配合許容範囲が開かれる。例えば、インクはより高い顔料負荷で配合され得る。ほとんどのプリンターはより密な着色インクを好み、というのも、それらはより薄く印刷し、より良好な再現結果が得られるからである。または、樹脂/オリゴマーをインク中に入れることができることを使用して、耐溶剤性および接着などの物理的性質を改善することができる。
【0057】
本発明の方法はまた、「硬化が困難な色」の改善された硬化を提供することができる。ホワイトおよびブラックインクおよびコーティングはUVシステムにおいて硬化することが難しいことで有名であるが、EBシステムではずっと容易に硬化する。EBは色とは無関係にインク層を容易に貫通するので、そのため、これは、問題はインク化学自体ではなく、むしろ、UV光がインク層を完全に貫通することができないことであることを意味する。ホワイトおよびブラックインク顔料はどちらも、相当量のUV光を吸収する。配合者は典型的にはこれに対抗し、これらの配合物においてより高い量の光開始剤を使用することにより、UV光経路の底(基材/インク界面)での良好な硬化を得ようと試みる。しかしながら、光がインク層を通過しようと試みる時のUV吸収の最大の貢献者は、それから、光開始剤自体となる。光開始剤をインク層から除去することにより、UV光のずっと高い割合が始めから終わりまで通過し、下のプライマー中の光開始剤と反応する。硬化は「上向き」に進行することができ、「トップ硬化」が十分であるが、「インク対基材接着」が不十分である状況が排除される。UV-LEDランプシステムの特定の場合では、この方法は、現在のところ達成することができない濃い黄色の良好な硬化を可能にする。
【0058】
本発明の方法はまた、インクおよび/またはコーティング層の改善された耐溶剤性を提供することができる。メカニズムは完全にはわかっていないが、インクが「一度に硬化される」場合(例えば、光開始剤含有プライマーと光開始剤含有トップコートの間に挟まれている)、メチルエチルケトン(MEK)溶剤摩擦耐性が数桁改善する。典型的な光開始剤を含むUVインクでは非常に低いMEK摩擦耐性が得られ(例えば1~5二重摩擦)、本発明のプライマー/インク(複数可)/トップコート系では100二重摩擦以上の良好なMEK摩擦結果が得られた。一般に、MEK摩擦の商業的に許容されるレベルは20超、または100超、または500超である。トップコートを有するEB硬化インクは長く、UVインクに等しい(しばしば、より悪い)MEK摩擦耐性を有することが知られてきた。
【0059】
本発明の別の特徴は、初めて、「積層置き換え」が実際に、実用的な提案となることである。この前は、フレキシブルパッケージングについてのUVおよびEBインクの両方の最終耐性(傷付き、摩擦、油/溶剤耐性)はまさに、オーバーラミネートフィルムのレベル以下では決してない。
【0060】
1つの実施形態では、光開始剤を含むエネルギー硬化性(EC)材料のプライマー層は基材上に、典型的には(だが、必ずしもではない)100%被覆率で堆積されるが、硬化されない。光開始剤を含まないEC硬化性材料で作製された、1つ以上のその後のインク層は、所望の印刷順序およびパターンでプライマー上にトラッピングされる。電子ビーム(EB)照射による硬化のために配合されたインクおよびコーティングは、EBインクおよびコーティングはエネルギー硬化型材料を用いて配合されるが光開始剤を有さないことを除き、典型的にはUV硬化型インクおよびコーティングと非常に類似している。よって、ある一定の実施形態では、EBインクおよびコーティングは、本発明の方法の光開始剤を含まない層について理想的な候補となり得る。最後に、光開始剤を含むEC硬化性材料のトップコート層は100%被覆率で他の層全て上に塗布される。コート基材はUVランプ下で通過させられ、所望のレベルで照射される。硬化は複合構造の上から下へ起こることが観察され、親指ねじり(thumb-twist)および溶剤摩擦などの試験により立証することができる。適正なレベルの光開始剤およびUV照射が使用されると、表面損傷も、層間接着不良も、複合物の基材からの分離も観察されない。
【0061】
ある一定の実施形態では、光開始剤を有さない1つ以上のインクが基材上に印刷され(すなわち、プライマーはなく、第1の層は光開始剤を有さないインクである)、光開始剤を有するトップコート層はインクの上面に印刷される。構成物は印刷実行の終わりに、UV照射により硬化される。
【0062】
いくつかの実施形態では、光開始剤を有さないプライマーが基材上に塗布され、続いて、光開始剤を有するインクの1つ以上の層が塗布される。構成物は印刷実行の終わりに、UV照射により硬化される。
【0063】
他の実施形態では、光開始剤を有する1つ以上のインクが基材上に印刷され(すなわち、プライマーはなく、第1の層は、光開始剤を有するインクである)、光開始剤を有さないトップコート層はインクの上面に印刷される。構成物は印刷実行の終わりに、UV照射により硬化される。
【0064】
ある一定の実施形態では、光開始剤を有さないプライマーが基材上に印刷され、次いで、光開始剤を有する1つ以上のインク層が上面に印刷され、最後の層は光開始剤を有さないはトップコートである。構成物は印刷実行の終わりに、UV照射により硬化される。
【0065】
いくつかの実施形態では、フレキシブルプラスチックフィルムを基材として使用して、酸素阻害を低減させることができる。というのも、フレキシブルプラスチックフィルムは酸素バリアとして機能するからである。しかしながら、フレキシブルプラスチックフィルム基材上での印刷はフレキソ印刷には好適であるが、枚葉印刷機には好適ではない。よって、良好な解決策は、パッケージング材料および出版のための多孔性紙およびボール紙を主に取り扱う枚葉印刷機では見当たらない。
【0066】
加えて、今や、驚いたことに、硬化されたUV-またはEB-コーティングで密閉された表面を有する紙基材と、UV硬化性トップコート(UVオーバープリントワニス)の間の硬化された放射線硬化性インクは、硬化させるのに、通常よりも少ない光開始剤を必要とし、さらには光開始剤を必要としないことが観察されている。
【0067】
多孔性基材の表面を酸素から遮断するために、最初に、UVまたはEB硬化性コーティングが多孔性紙またはボール紙基材上に塗布され、UV-またはEB-照射により硬化される。UV/EBコーティングは「プライマー」として塗布することができ、これは、例えば、フレキソ印刷コーティングまたは平版印刷コーティング、もしくはゲルコート、またはより高い粘度を有する別の好適な型のコーティングとすることができる。
【0068】
第1のコートの硬化はインラインで実施することができる。例えば、UVコーティングが最初に塗布され、ステーション間UV乾燥機で、インクが塗布される前に乾燥される。あるいは、多孔性基材はオフラインでEBコーティングでコートし、オフラインでEB乾燥機を用いて硬化させることができる。プライマーのコーティング重量は好ましくは1g/m2超、より好ましくは2~6g/m2である。通常、コーティング重量が高いほど、多孔性基材のシーリングが良好になる。
【0069】
多孔性基材は、典型的には刊行物のために使用される紙またはボール紙の印刷ストックであってもよく、または、20~400g/m2の重量を有する、シート、印刷機での印刷前に切断されてシートにされるロール、容器、例えば、瓶もしくはビーカーなどの形態のパッケージング材料であってもよい。それは無コートとすることができ、または、典型的な方法により、粘土または炭酸カルシウム、などでコートすることができる。コートされた、またはより高密度な紙またはボール紙が好ましい。
【0070】
場合によっては、当業者は基材およびプライマーコーティングの特性、例えば表面張力およびコーティング重量を調整することができ、そのため、プライマーコーティングが多孔性基材の上面上に存在し、硬化後、有効なシーリング層を形成する。コーティングが多孔性基材により吸い込まれ、そのためシーリング層を形成させることができないことは回避されなければならない。
【0071】
放射線硬化性コーティング(プライマー)が多孔性基材の上面上で硬化された後、放射線硬化性インクがフレキソ印刷、平版印刷、インクジェット、スクリーン印刷、凹版印刷、または他の手段により塗布される。好ましい塗布は平版印刷による。インクは塗布プロセスに好適な印刷密度で塗布される。インクの光開始剤含量は0~20wt%、好ましくは0~5wt%、最も好ましくは0wt%である。インクは任意の放射線硬化性インク、例えば、既存の商品由来の典型的な平版UV-インク、例えば、光開始剤の含量が低減された、SunChemicalのSuncure FLM、USL、ULR、または完全に光開始剤を有さない電子ビーム硬化性インク、例えば、例としてSunChemicalのSunbeam ELMインクとすることができる。
【0072】
最後に、濡れた、未硬化放射線硬化性インクは、UV-もしくはLED-フレキソ印刷コーティング、またはUV-もしくはLED-平版印刷コーティングでオーバーコートされる。トップコーティング(オーバープリントワニス)の光開始剤含量は0~20wt%、好ましくは1~10wt%である。トップコーティングのコーティング重量は好ましくは1g/m2超、より好ましくは2~6g/m2、または高光沢付与では、6~8g/m2である。インクおよびコーティングは好ましくは、塗布されたUV-もしくはLEDトップコーティングを通して、全て一緒に最終-硬化される。
【0073】
硬化されたプライマーの上面に、かつ、トップコートの下に塗布することができる放射線硬化性インク層の数は主に、トップコート中の光開始剤の量、およびインクの着色に依存する。トップコート中の光開始剤が多いほど、放射線硬化性インク層における硬化が良好になる。通常、濃いブラックのインクはある程度の量の光開始剤を必要とし、一方、他の放射線硬化性インクは完全に光開始剤なしで硬化させることができる。
【0074】
UV-もしくはLED-硬化の時点で、放射線硬化性インクは、密閉コーティングにより底から、および、UVトップコートにより上面から、酸素から保護され、そのため、硬化条件はUV-ラミネート(硬化されるのにより少ない光開始剤、通常、典型的な初期光開始剤濃度のたった1/5~1/8を必要とする)と同様になることが有利である。放射線硬化性インクの硬化に必要とされる少量の開始種は、トップコートによって拡散により提供され、または故意に添加される。
【0075】
UVトップコートは、例えば、ベンゾフェノンなどの無着色コーティングのための光開始剤よりほかの、顔料インク(しばしばより精巧でコストがかかる)(例えばIrgacure369)を硬化させるのに好適な光開始剤を含む必要は必ずしもないことが有利である。その上、コーティングは着色されていないので、放射線はより容易に光開始剤に対応することができ、高いレベルでラジカルを発生させることができる。ラジカルがコーティング中で形成され、拡散により隣接するインク層中に移動するとすぐに、そのようなラジカルは、コーティング開始剤により生成されたものであっても、インク中でも効果的にラジカル重合を開始させることができる。
【0076】
本発明のUV硬化性インクおよびコーティングは、例えば、高電圧水銀球、中電圧水銀球、キセノン球、カーボンアーク灯、メタルハライド球、UV-LEDランプ、または太陽光により提供されるUV光などの任意の活性光線により、UV硬化させることができる。適用される照射の波長は、好ましくは約200~500nmの範囲内、より好ましくは約250~400nmである。UVエネルギーは好ましくは約30~3000mJ/cm2の範囲内、より好ましくは約50~250mJ/cm2の範囲内である。加えて、電球は放射線硬化性トップコートの吸収に従い適切に選択することができる。
【0077】
ある一定の実施形態では、プライマー層が基材上に印刷され、硬化される。このプライマー層はUV照射により硬化可能とすることができ、光開始剤を含み、またはEB照射により硬化可能とすることができ、光開始剤を含まない。次いで、本発明のウエットトラッピング法を使用して、光開始剤を有さない1つ以上のインク層が硬化されたプライマーの上面に印刷され、光開始剤を有するトップコートが最後の層となる。最終構成物は印刷実行の終わりに、UV照射により硬化される。この実施形態は多孔性基材と共に都合よく使用され、ここで、印刷および硬化されたプライマーは、酸素を遮断し、その後の層の硬化の酸素阻害を軽減するように作用する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明のウエットトラッピング法は、第1の基材を第2の基材に積層させるために使用することができる。積層技術の分野では、エネルギー硬化性コーティングまたは接着剤が、基材の2つの層間;典型的には、フィルムと紙の間、または2つのフィルム間にトラッピングされる系が存在することが当業者に知られている。全ての場合において、基材の少なくとも1つは、エネルギー硬化性配合物中の光開始剤(複数可)を活性化するUVエネルギーの波長(複数可)に対して比較的透明でなければならない。
【0079】
エネルギー硬化性材料は、2つの基材、典型的には印刷層および非印刷層を一緒に接着するための接着剤として使用することができる。ほとんどの場合、この技術は、印刷表面を、積層構造の内部にそれを「埋める」ことにより保護するために使用される。他の場合には、それは単純に、耐熱または耐化学性層を別の層、例えばシーラント層に接着させるため、または異なる耐化学性またはガスバリア特性を有する2つの層を一緒に接着させるための経済的な方法である。
【0080】
あるいは、基材の1つは、湿性コーティング中に刻み込まれた図形パターンを有してもよい。硬化後、典型的にはインプリント基材は硬化後除去され、パターンが現れる。最も一般的な例は、Cast and Cure(商標)技術であるが、これに限定されない。
【0081】
場合によっては、2つの異なる配合物を使用することが有利であり、その1つは、第1の基材への良好な接着を提供するように設計され、そのもう1つは第2の基材への良好な接着を提供するように設計される。以前には、万一、光開始剤が所望の基材の1つまたはもう1つと適合しないという場合には、できることは何もなかった。
【0082】
本発明では、硬化は、積層構造の内部で、2つの異なるUVコーティング配合物を、互いにウエット・オン・ウエット接触で使用して(そのうちの1つのみが光開始剤を含む)、達成されたことが証明された。両方の配合物は硬化して、融合して、両方の基材に接着する連続層になる。
【0083】
ある一定の実施形態では、光開始剤を含む1つ以上のエネルギー硬化性インクおよび/またはコーティング層(A)は第1および/または第2の基材のいずれか、または両方に塗布することができる。光開始剤を含まない1つ以上のエネルギー硬化性インクおよび/またはコーティング層(B)は第1および/または第2の基材のいずれか、または両方に塗布することができる。便宜的に、第1または第2の基材の少なくとも1つはUV照射に対して透明である。第1および第2の基材は濡れ面対濡れ面、または乾燥面対濡れ面で積層させることができ、積層構成物の層は、UV照射に対して透明である基材の1つを通して同時に硬化される。
【0084】
上記のように、酸素阻害はEC硬化に有害である。アミン、最も特定的には三級アミンの存在は酸素阻害の低減に大きな利点となることが知られている。必要とされるアミンのレベルは各個々のインク型について実験的に決定されなければならず、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートなどの材料については配合物の4重量%以下から、マイケル付加物として形成されるアミノアクリレート(例えばジエタノールアミン-1,6-HDDAまたはジエチルアミン-TPGDA)については8%以上まで変動する可能性がある。便宜的に、外層(プライマーおよびトップコート)の場合、アミノアクリレートの存在は、酸素の硬化に対する有害効果を阻害するのに非常に有益である。II型光開始剤が使用される場合、アミノアクリレートは、共力剤およびフリーラジカル発生プロセスにおける引き出し可能な水素の源として二重に重要である。しかしながら、I型光開始剤の場合であっても、アミノアクリレートの存在は有益であることが示されている(Husar, et al. “Novel phosphine oxide photoinitiators,” RadTech International Proceeding, 2014)。完全硬化を達成するためには、アミノアクリレートは、光開始されない中間層中に存在することは厳密には必要ではないが、有益であると考えられる。
【0085】
プライマーを第1の層として有することは必要とは限らない。酸素不浸透性基材(例えば、ポリマーフィルム)が印刷される場合、これは特にそうである。しかしながら、多孔性紙などの酸素透過性基材上では、プライマーを使用することはベストプラクティスである。コート紙は中間ケースを表し、この場合、紙の多孔度によって、プライマーが必要とされるか、またはされない可能性がある。使用される場合、プライマーは、インクビヒクルとは無関係に、基材への接着を調節することができる。理論的には、基材特異的インクビヒクルがとにかく使用される理由はないはずである。インクがプライマーに接着する限り、いずれの構成物においても同じインクを使用することができる。同様に、トップコートは、基材に接着するように特定的に配合される必要はない。トップコートはインク(複数可)およびその下のプライマーに接着する限り、複合物全体が許容されるレベルで働くであろう。
【0086】
実際には、トップコートは典型的には、I型およびII光開始剤ならびにアミノアクリレートのブレンドを開始剤/共力剤パッケージとして使用する。通常、約3%の光開始剤が、トップコート層中/周りに存在する酸素を消費するために必要とされる。良好なブレンドは1部のI型対2部のII型であることが見いだされている。典型的な開始剤/共力剤組成物は、3%I型光開始剤(例えば、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、6%II型光開始剤(例えば、ベンゾフェノン)および9%アミノアクリレート(例えば、ジエチルアミンおよびトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)の付加物(例えばMiwon Photocryl A101またはAllnex P115)であることが見いだされている。
【0087】
中間インク層は必要に応じてアミノアクリレートありまたはなしで配合することができるが、典型的には5%以上までが、硬化促進剤として有益である。アミノアクリレートは、ほとんどの場合、UVフレキソ印刷インク中の標準成分として使用され、そのため、液体インクの場合、これは現行の実施からの主な変更ではない。ペーストインクでは、アミノベンゾエート、例えば2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートが長く平版印刷インク配合物において問題なく使用されてきた。歴史的に、アミノアクリレートがペーストインク型についての吸水値に有害効果を有するという懸念があった。しかし、これはマイケル付加物を調製するための開始材料がアルカノールアミン場合にそうであるが、同様の懸念が-OH基を含まないアルキルアミンに当てはまるという証拠はないことが認識されるべきである。
【0088】
プライマー層は典型的には、長波長UV受容体であるI型光開始剤と最も良好に機能する。というのも、それらの波長は硬化される材料中に最も深く浸透するからである。9%アミノアクリレートと対にした3%レベルのホスフィンオキシド(TPO、TPO-LおよびBAPO)は、典型的にはプライマーを硬化させるのに十分である。というのも、インク(複数可)およびトップコートで被覆されるとすぐに、比較的少ない溶存酸素がプライマーレベルに下がるからである。
【0089】
別の実施形態では、光開始剤(複数可)を含む第1の層(プライマー層か、またはインク層のいずれか)は堆積されるが、硬化されず、それから、全てのその後の層は光開始剤(複数可)を含まないインクおよび/またはコーティング(任意で、トップコートを含む)である。構成物全体はUV-LEDランプもしくはUV水銀灯のいずれか、または両方の組み合わせを含む最終段階で硬化されるであろう。これが、「ボトムアップ」硬化として説明することができるものである。
【0090】
ある一定の実施形態では、本発明の方法のインクおよび/またはコーティングはSun Chemical米国特許第9,365,064号の方法にしたがい配合される。US9,365,064号は、「逆トラッピング」を最小に抑える、または排除するウエットトラッピング印刷の方法を記載する。逆トラッピングは、第1の印刷層がその後の印刷層をもっていき、それを印刷機内のその後のプレートおよびローラー上に再堆積させ、印刷欠陥を引き起こす望ましくない効果である。
【0091】
光開始剤を含まないと特定された層(すなわちエネルギー硬化性インクおよび/またはコーティング層(B))は、添加された光開始剤を完全に含まないことが好ましいが、少量の光開始剤をこれらの層に添加することが可能である。好ましくは、添加される光開始剤の量は、層がUV光と反応し、それ自体の上に堅い、硬化フィルムを形成するには不十分なものであろう。インク型および選択した実際の光開始剤によって、そのような場合における光開始剤含量は、典型的には、6%未満、または5%未満、より好ましくは4%未満、または2%未満、または1%未満、最も好ましくは0.5%未満である。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、その全てが少なくともある程度のエネルギー硬化型材料、任意で光開始剤を含むインクのウエットトラッピングを含む。1つの実施形態では、本発明のウエットトラッピング法において使用されるインクは本質的に全てエネルギー硬化性材料である(少量の様々な添加物および/または不活性樹脂を含むことは例外かもしれない)。この実施形態では、エネルギー硬化型材料は典型的には90重量%以上、好ましくは95重量%以上の量で存在する。
【0093】
ある一定の実施形態では、従来の溶剤系、油性、および水性インクにおいて典型的に使用されるエネルギー硬化型材料および非エネルギー硬化型材料の両方を含むハイブリッドインクが使用され得る。ハイブリッドインクの場合、エネルギー硬化型材料の量は、一般に、配合物の型によって、40重量%以上、または45重量%以上、または50重量%以上、または60重量%以上、または70重量%以上、または80重量%以上、または90重量%以上または95重量%以上である。あせやすい材料を含むハイブリッドインクが使用される場合、構成物は、熱により乾燥させ、その後、印刷実行の終わりにUV照射による硬化を実施することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、UV硬化前にハイブリッドインクを熱乾燥する必要はない(例えば、一例は、ハイブリッドインクが従来の樹脂を含み、溶剤を含まない場合である)。
【0094】
本発明は典型的には、エネルギー硬化型材料を含まない従来の溶剤系(とりわけ油性)および水性インクのウエットトラッピングを含まない。従来の溶剤系、油性、および水性インクおよびコーティングは、エネルギー硬化型材料を実質的に含まないものと規定することができる。そのようなインクは典型的には、樹脂、溶剤、様々な添加物、および任意で着色剤から構成される。従来の溶剤系、油性、および水性インクをウエットトラッピングする場合、それらは典型的には、次の層の印刷前に、印刷されたフィルムから十分な溶剤を的確に放出しない。よって、それらはエネルギー硬化型材料を含むその後のインクまたはコーティング層を刷り重ねるのに好適ではなく、これは多インク層印刷構成物全体の完全性を損なう。溶剤系、油性、および水性インクを本発明のウエットトラッピング法と併用する場合、これらの溶剤系、油性、および水性インクは好ましくは、その後のインク層について本発明のウエットトラッピング法を使用する前に完全に乾燥される(ウエットトラッピングされない)。
【0095】
本発明の方法は典型的には、インクおよび/またはコーティングのUV照射によるエネルギー硬化を使用する。本発明の方法はUV照射のいずれの特定の範囲の波長にも制限されず、一般に光開始剤が現在のところ有効なUV波長範囲全体、約250nm~415nmにわたって働く。しかしながら、本発明の方法は、この範囲内の光開始剤に制限されない。光開始剤が拡大する波長の範囲(例えば200nm~500nm)として、本発明の方法は依然として、拡大された波長の範囲にも適用可能である。
【0096】
エネルギー硬化型材料は、様々な形態の放射線(例えばUV、EB、LED、など)に曝露されると重合可能であるものと広く規定することができる。本発明のウエットトラッピング法において使用するのに好適なインクおよびコーティングはいずれの特定の配合要求によっても縛られないが、それらは好ましくは全てエネルギー硬化型材料を含むであろう。エネルギー硬化型材料の最も一般的なカテゴリは下記に列挙される。
【0097】
好適な単官能エチレン性不飽和モノマーの例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:アクリル酸イソブチル;シクロヘキシルアクリレート;イソ-オクチルアクリレート;n-オクチルアクリレート;イソデシルアクリレート;イソ-ノニルアクリレート;オクチル/デシルアクリレート;ラウリルアクリレート;2-プロピルヘプチルアクリレート;トリデシルアクリレート;ヘキサデシルアシレート;ステアリルアクリレート;イソ-ステアリルアクリレート;ベヘニルアクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;4-t.ブチルシクロヘキシルアクリレート;3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート;イソボルニルアクリレート;ジシクロペンチルアクリレート;ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート;ジシクロペンタニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェノキシエチルアクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート;アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート;クミルフェノキシエチルアクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート;2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート;ポリプロピレングリコールモノアクリレート;カプロラクトンアクリレート;エトキシル化メトキシポリエチレングリコールアクリレート;メトキシトリエチレングリコールアクリレート;トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート;ジエチレングリコールブチルエーテルアクリレート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;エトキシル化エチルヘキシルアクリレート;アルコキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;プロポキシル化ノニルフェノールアシレート;ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート;エトキシル化p-クミルフェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;アルコキシル化ラウリルアクリレート;エトキシル化トリスチリルフェノールアクリレート;N-(アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド;N-ブチル1,2(アクリロイルオキシ)エチルカルバメート;コハク酸モノアクリロイルオキシエチル;オクトキシポリエチレングリコールアクリレート;オクタフルオロペンチルアクリレート;2-イソシアナトエチルアクリレート;アセトアセトキシエチルアクリレート;2-メトキシエチルアクリレート;ジメチルアミノエチルアクリレート;2-カルボキシエチルアクリレート;4-ヒドロキシブチルアクリレート。等価のメタクリレート化合物もまた使用することができる。
【0098】
好適な多官能エチレン性不飽和モノマーの例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;プロポキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;1,9-ノナンジオールジアクリレート;1,10デカンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;プロポキシル化エチレングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;ポリプロピレングリコールジアクリレート;ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ポリブタジエンジアクリレート;ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシル化エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールFジアクリレート;2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート;ジオキサングリコールジアクリレート;エトキシル化グリセロールトリアクリレート;グリセロールプロポキシレートトリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;e-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;メラミンアクリレートオリゴマー;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。等価なメタクリレート化合物もまた使用することができる。
【0099】
ある一定の実施形態では、ビスフェノール-Aエポキシジアクリレートは、本発明の方法において使用するのに好適な1つ以上のインクおよび/またはコーティング層においてエネルギー硬化型材料として使用される。
【0100】
他の実施形態では、ビスフェノール-Aエポキシジアクリレートはグラフト化ポリスチレン(rPS)に置き換えることができる。グラフト化リサイクルポリスチレン樹脂はWO2017/139333号において教示される。例えば、脱重合されたポリスチレン樹脂は、触媒、開始剤、および/または他の脱重合手段の作用により導入されるラジカルと反応する反応性モノマー、オリゴマー、およびポリマーにより修飾することができる。そのようなモノマーとしては、例えば、(メト)アクリル酸、(メト)アクリレートおよびスチレン、などが挙げられる。他の実施形態では、ウレタンアクリレートまたはリサイクルポリエチレンテレフタレート(rPET)が使用され得る。
【0101】
一部においてこれらの配合物で使用することができる他の官能性モノマークラスの例としては、下記が挙げられる:環状ラクタム、例えばN-ビニルカプロラクタム;N-ビニルオキサゾリジノンおよびN-ビニルピロリドン、および二級もしくは三級アクリルアミド、例えばアクリロイルモルホリン;ジアセトンアクリルアミド;N-メチルアクリルアミド;N-エチルアクリルアミド;N-イソプロピルアクリルアミド;N-t.ブチルアクリルアミド;N-ヘキシルアクリルアミド;N-シクロヘキシルアクリルアミド;N-オクチルアクリルアミド;N-t.オクチルアクリルアミド;N-ドデシルアクリルアミド;N-ベンジルアクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド;N-イソブトキシメチルアクリルアミド;N-ブトキシメチルアクリルアミド;N,N-ジメチルアクリルアミド;N,N-ジエチルアクリルアミド;N,N-プロピルアクリルアミド;N,N-ジブチルアクリルアミド;N,N-ジヘキシルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド;N,N-ジエチルアミノメチルアクリルアミド;N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド;N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド;ならびにN,N’-メチレンビスアクリルアミド。例えば、ケトン樹脂などのエネルギー硬化性樹脂もまた使用され得る。
【0102】
オリゴマーおよびポリマーアクリレートもまた、エネルギー硬化性インクおよび/またはコーティングに含めることができる。そのようなオリゴマーおよびポリマーアクリレートとしては下記が挙げられるが、それらに限定されない:エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリル化ポリウレタン、アクリル化ポリアクリレート、アクリル化ポリエーテル、アクリル化ポリアミン、アクリル化ポリグリコール、亜麻仁油および大豆油に基づくアクリル化エポキシ化油、およびそれらの混合物、など。好適な水溶性または水-分散性アクリレートは、例えば、高度エトキシル化多官能アクリレート、例えばポリエチレンオキシドジアクリレートまたはエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはエポキシアクリレート、例えばアルカンジグリシジルエーテルジアクリレート、ポリグリセロールジアクリレートまたは水性アクリル化ポリウレタンアクリレート分散物、例えばBayhydrol UV2280およびUV2282(Bayer Companyの商標)。
【0103】
好適な光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:α-ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキシド、α-アミノケトン、チオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルグリオキシレート、オキシムエステル、アセトフェノン、ベンジル化合物およびその誘導体、フルオレノン、アントラキノン、それらの組み合わせ、など。
【0104】
好適なα-ヒドロキシケトン光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン;2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-tert-ブチル-プロピオフェノン;2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチル-プロピオフェノン;2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-メチル-プロピオフェノン;オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチル-ビニル)フェニル]プロパノン;ビス[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)フェニル]メタン;2-ヒドロキシ-1-[1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]-1,3,3-トリメチルインダン-5-イル]-2-メチルプロパン-1-オンおよび2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン;それらの組み合わせ;など。
【0105】
好適なアシルホスフィンオキシド光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド;エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート;およびビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド;それらの組み合わせ;など。
【0106】
好適なα-アミノケトン光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:2-メチル-1-[4-メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン;ならびに2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン;それらの組み合わせ;など。
【0107】
好適なチオキサントン光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:2-4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、および1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン;それらの組み合わせ;など。
【0108】
好適なベンゾフェノン光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、および4-メチルベンゾフェノン;メチル-2-ベンゾイルベンゾエート;4-ベンゾイル-4-メチルジフェニルスルフィド;4-ヒドロキシベンゾフェノン;2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;ベンゾフェノン-2-カルボキシ(テトラエトキシ)アクリレート;4-ヒドロキシベンゾフェノンラウレートおよび1-[-4-[ベンゾイルフェニルスルホ]フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン;それらの組み合わせ;など。
【0109】
好適なフェニルグリオキシレート光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:フェニルグリオキシル酸メチルエステル;オキシ-フェニル-酢酸2-[ヒドロキシル-エトキシ]-エチルエステル、またはオキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル;それらの組み合わせ、など。
【0110】
好適なオキシムエステル光開始剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム;[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾエート、または[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]-エチリデンアミノ]アセテート;それらの組み合わせ;など。
【0111】
他の好適な光開始剤の例としては下記が挙げられる:ジエトキシアセトフェノン;ベンジル;ベンジルジメチルケタール;チタノセンラジカル開始剤、例えばチタン-ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル];9-フルオレノン;カンファーキノン;2-エチルアントラキノン;それらの組み合わせ;など。
【0112】
ポリマー光開始剤および増感剤もまた好適であり、例えば、下記が挙げられる:ポリマーアミノベンゾエート(RAHN製のGENOPOL AB-1またはAB-2およびIGM製のOmnipol ASAまたはLambson製のSpeedcure 7040);ポリマーベンゾフェノン誘導体(RAHN製のGENOPOL BP-1またはBP-2、IGM製のOmnipol BP、Omnipol BP2702またはOmnipol 682またはLambson製のSpeedcure 7005);ポリマーチオキサントン誘導体(RAHN製のGENOPOL TX-1またはTX-2、IGM製のOmnipol TXまたはLambson製のSpeedcure 7010);ポリマーアミノアルキルフェノン、例えばIGM製のOmnipol 910;ポリマーベンゾイルホルマートエステル、例えばIGM製のOmnipol 2712;ならびにIGM製のポリマー増感剤Omnipol SZ。
【0113】
記載されるように、アミン共力剤もまた、本発明の方法と共に使用するのに好適なエネルギー硬化性インクおよびコーティングに含めることができる。好適な例としては芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノアクリレートおよびアミン変性ポリエーテルアクリレートが挙げられるが、それらに限定されない。
【0114】
インクおよび/またはコーティングは、インクおよびコーティングにおいて典型的に使用される1つ以上の添加物をさらに含み得る。そのような添加物としては、着色剤(例えば顔料または染料)、剥離添加剤、フロー添加剤、消泡剤、などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0115】
好適な有機または無機顔料の例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、カルバゾール、モノアゾおよびジスアゾベンズイミダゾール、ローダミン、インジゴイド、キナクリドン、ジアゾピラントロン、ジニトロアニリン(dinitraniline)、ピラゾール、ジアゾピラントロン、ジニチアニリン(dinityaniline)、ピラゾール、ジアニシジン、ピラントロン、テトラクロロイソインドリン、ジオキサジン、モノアゾアクリリドおよびアントラピリミジン。染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、それらの組み合わせなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0116】
カラーインデックス(Color Index International)により分類される市販の有機顔料は、下記取引名称に従う:青色顔料PB1、PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:6、PB16、PB60;褐色顔料PB5、PB23、andPB265;緑色顔料PG1、PG7、PG10およびPG36;黄色顔料PY3、PY14、PY16、PY17、PY24、PY65、PY73、PY74PY83、PY95、PY97、PY108、PY109,PY110、PY113、PY128、PY129,PY138、PY139、PY150、PY151、PY154、PY156、PY175、PY180およびPY213;橙色顔料PO5、PO15、PO16、PO31、PO34、PO36、PO43、PO48、PO51、PO60、PO61およびPO71;赤色顔料PR4、PR5、PR7、PR9、PR22、PR23、PR48、PR48:2、PR49、PR112、PR122、PR123、PR149、PR166、PR168、PR170、PR177、PR179、PR190、PR202、PR206、PR207、PR224およびPR254:紫色顔料PV19、PV23、PV32、PV37およびPV42;黒色顔料。
【0117】
好適な剥離添加剤の例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:アクリル化添加物、例えばEvonikのTEGO Rad2200N、2250、2300、2500、2600、2650&2700および類似物;またはAltanaのBYK UV3500、3505、3510、3530、3570および類似物;またはDow CorningのDC-31;または同様の効果を目的とした任意の他のEC反応系。EC系において使用するのに好適な非アクリル化添加物、例えばEvonikのTEGO Glide100&440、AltanaのBYK-306、307、333、337、371、373、375、&377;Dow CorningのDC-57;Erbeck-1;Wacker ChemieのADDID100、130、140、151、&170もまた、適用可能である。他の材料としては、高固体インクおよびコーティングの改良に有用であることが当業者に知られているもの全てが挙げられる。
【0118】
好適なフロー添加剤の例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:アクリル化添加物、例えばEvonikのTEGO Rad2100、2200N、2250、&2300、および類似物;またはAltanaのBYK UV3500、3505、3510、3530、3570および類似物;またはDow CorningのDC-31;または同様の効果を目的とした任意の他のEC反応系。EC系において使用するのに好適な非アクリル化添加物、例えばEvonikのTEGO Glide100&440、AltanaのBYK-306、307、333、337、371、373、375、&377;Dow CorningのDC-57;Erbeck-1;Wacker ChemieのADDID100、130、140、151、&170もまた、適用可能である。他の材料としては、高固体インクおよびコーティングの改良に有用であることが当業者に知られているもの全てが挙げられる。
【0119】
好適な消泡剤としては、TEGO FOAMEX N、FOAMEX1488、1495、3062、7447、800、8030、805、8050、810、815N、822、825、830,831、835、840、842、843、845、855、860、および883、TEGO FOAMEX K3、TEGO FOAMEX K7/K8およびTEGO TWIN4000(EVONIKから入手可能)が挙げられる。BYK-066N、088、055、057、1790、020、BYK-A530、067A、およびBYK354はBYKから入手可能である。
【0120】
ある一定の実施形態では、1つ以上のエネルギー硬化性インクおよび/またはコーティング層は1つ以上の非反応性樹脂を含み得る。いくつかの実施形態では、非反応性樹脂は、例えば、アクリレートおよびメタクリレートなどのモノマー中で可溶性である。非反応性樹脂の好適な例としては、修飾ポリスチレン、修飾ポリエステル、ケトン樹脂、それらの組み合わせ、などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0121】
本発明の方法において使用されるインクおよび/またはコーティングの特定の配合は、それらが含む光開始剤のために、または、本発明において記載されるウエットトラッピング硬化現象のために、インクおよび/またはコーティングをUV照射により硬化させることができる限り、変動させることができる。インクおよび/またはコーティングは、事実上任意の印刷プロセスのために典型的に使用される任意の型を有することができる。例えば、限定はされないが、平版、フレキソ、グラビア、デジタル(例えばインクジェット)、スクリーン印刷方法、およびそれらの組み合わせが使用され得る。
【0122】
別の実施形態では、印刷構成物は、1つ以上のインクおよび/またはコーティング層(UV硬化性、溶剤系、水性、など)を堆積させ、完全に硬化させ、その後に、続いて、本発明のウエットトラッピング法を使用して、さらなるインクおよび/またはコーティング層を塗布することを含むことができる。
【0123】
別の実施形態では、印刷構成物は、本発明のウエットトラッピング法を使用して、インクおよび/またはコーティング層を塗布し、次いで、その後に、上面上でウエットトラッピングされても、されなくてもよい1つ以上のさらなるインクおよび/またはコーティング層(UV硬化性、溶剤系、水性、など)を塗布することを含むことができる。
【0124】
1つの実施形態では、ある一定の量のモノマー、共力剤(アミン)、および光開始剤を含む水性コーティングは、ウエットトラッピングプロセスにおいて、下にある開始されていない層において硬化を開始させる、光開始されるトップコートとして使用することができる。
【0125】
実施例
下記実施例は本発明の特定の態様を説明し、いかなる点においてもその範囲を制限することを意図せず、そのように解釈されるべきではない。下記実施例は、本水性コーティング組成物の特定の態様を説明する。実施例は単に例示にすぎず、本開示に基づいて特許請求される対象物の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。全ての部およびパーセンテージは、特に指定がない限り、重量による(総重量に基づくwt%または質量%)。
【0126】
試験方法
指摩擦試験
耐傷性は指摩擦試験を使用して評価される。硬化された構成物の上面層上で、印刷物品を保持し、操作する典型的な力で前後に指でこする。印刷層が無傷のままであれば、構成物は指摩擦試験に合格する。1つ以上の印刷層がこすれて汚れ、または傷ついた場合、そうすると、構成物は指摩擦試験に不合格である。試験の主目的は、表面硬化を評価することである。
【0127】
親指ねじり試験
親指を硬化された構成物の上面層上に力を込めて押しつけ、90°だけ回転させる。印刷層が無傷のままであれば、構成物は親指ねじり試験に合格する。1つ以上の印刷層に傷または損傷があれば(典型的には、基材とインク/コーティングの間の接着の不良)、そうすると、構成物は親指ねじり試験に不合格である。試験の主目的は、通しの硬化を評価することである。
【0128】
溶剤摩擦試験
綿ボールをメチルエチルケトン(MEK)に浸漬させ、硬化された構成物の上面層で前後にこする(すなわち、二重摩擦(double rub))。硬化された構成物が損傷する前の二重摩擦の数が記録される。好ましくは、構成物は、50を超える二重摩擦、好ましくは100を超える二重摩擦、より好ましくは500を超える二重摩擦に耐える。
【0129】
接着試験
3M 810接着テープの一片を硬化された構成物上に置き、滑らかにして構成物の上面層にテープを接着させる。テープを90°角で直ちにはぎ取る。印刷および硬化された層が基材に接着されたままである場合、そうすると、構成物は接着試験に合格する。印刷された層の10超%が基材から除去されると、構成物は接着試験に不合格である。
【0130】
各印刷構成物の4つの試料を調製し(特に指定がない限り)、下記で報告される試験結果は、4つの試料の平均である。
【0131】
実施例1.無コート紙/光開始剤を有するプライマー/光開始剤を有さないインク/光開始剤を有するトップコートの構成物
4つの印刷構成物を無コート紙基材上で調製した。基材上で印刷した層は、光開始剤を有するプライマー/光開始剤を有さないインク/光開始剤を有するトップコートとした。
【0132】
ベンゾイルギ酸メチル(II型)およびエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)(I型)を光開始剤として含み、ジエタノールアミンおよびヘキサン-1,6-ジオールジアクリレート(1,6-HDDA)の付加物を共力剤として有するプライマーを配合した。これをプライマー1(「P1」)とした。P1はペーストであった。P1の配合は表1に示される。
【表1】
【0133】
P1を無コート校正紙(BYK Chart PA-2831)上に、Little Joe校正機を用い、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を使用して置いた。
【0134】
一連の市販のSun Chemical EB平版印刷インクを、プライマー上にLittle Joe印刷機セットアップを使用して並べてトラッピングさせた。インクを並べて塗布することにより、4つの構成物(各々がプライマー/インク/トップコートを有する)を調製した。4つのインクは下記とした:ブラック91182306(「B1」)(商品ID FLUWB943610、DPQ ULT PRO.BLACK、Sun Chemical製);シアン91182266(「C1」)(商品ID FLUWB4483612、DPQ ULT PRO.CYAN、Sun Chemical製);マゼンタ91182373(「M1」)(商品ID FLUWB4483612、DPQ ULT PRO.MAGENTA、Sun Chemical製);ならびにイエロー91182365(「Y1」)(商品ID FLUWB2483613、DPQ ULT PRO.YELLOW、Sun Chemical製)(Sunbeamシリーズの一部、Sun Chemical製)。
【0135】
市販のUVフレキソ印刷コーティング、RCSFV0343453(Sun Chemical)(「T1」)を、EBインクおよびプライマー上に、165ライン/インチアニロックスローラーを有する、2-ロールハンドプルーファーを使用してトラッピングさせた。
【0136】
トラッピングさせた湿層を全て、98ft/min(29.9m/min)のライン速度で、400ワット/in(160W/cm)入力電力に設定した中圧水銀UVランプを用いて同時に硬化させた。
【0137】
全ての層の完全硬化が得られた。
【0138】
実施例2.コート紙/光開始剤を有するプライマー/光開始剤を有さないインク/光開始剤を有するトップコートの構成物
実施例2は、基材をコート紙、BYK Chart2810にしたことを除き、実施例1の繰り返しである。硬化条件は、実施例1と同一とした。再び、全ての層の完全硬化が得られた。トップコートにより被覆された印刷物の部分上では汚れまたは親指ねじり不良はなかった。下方層がトップコートにより完全に被覆されていなかった領域では、ブラックのみが汚れる傾向を示した。これにより、光開始剤含有トップコートが存在しない場合であっても、「上向き」硬化を達成することが可能であることが証明される。
【0139】
実施例3.無コート紙/光開始剤を有するプライマー/光開始剤を有さないインク層/光開始剤を有さないインク層/光開始剤を有するトップコートの構成物
実施例3は、無コート紙上の、光開始されるプライマー層と光開始されるトップコート層の間に挟まれた、2つの光開始されないブラックインク層の有効なウエットトラッピングを示す。ブラックの印刷密度は、UVブラックインクにおいて典型的に硬化させることができるものより高いことに注目すべきである。
【0140】
色中へのプライマーの逆トラッピングが起こる程度を最小に抑えるのを助けるために、より濃厚な(より粘着性の)プライマーを配合した。プライマー2(「P2」)の配合は表2に示される。
【表2】
【0141】
プライマーP2を無コート紙ストック(BYK Chart PA-2831)上に、Little Joe校正機を用い、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を使用して印刷した。ブラックEB平版印刷インクの2つの層(どちらもB1)を、前に言及したLittle Joeセットアップを用い、当業者に知られているレイダウン厚さの変化を使用して、プライマー上にトラッピングさせ、ブランケットから基材へのきれいな転写を確保した。T1トップコートをLittle Joe校正機を使用して、構成物全体上にトラッピングさせた。構成物全体を、中圧水銀灯を用いて、400W/in(160W/cm)ランプ入力電力で、150ft/min(45.7m/min)の速度で硬化させた。
【0142】
全ての層が高度に許容されるレベルまで硬化した。
【0143】
ブラックインクの印刷密度は通常より高かった。典型的には、2.2を超える密度で印刷されたブラックインクは硬化が困難である。実施例3の構成物の密度は平均2.35であり、標本偏差は0.01、n=5であった。光開始剤含量が9%~12%の範囲にある典型的なブラックUVインクでは、インクは単独では、この印刷密度では硬化しない。インク上にUVコーティングを置くと、にじみ汚れ耐性が助けられるが典型的には依然として、インクと基材の間に不十分な接着が存在し、硬化された構成物は親指ねじり試験に合格しないであろう。実施例3の構成物は基材から摩擦され、親指ねじりされて除去されることはなく、本発明の方法の有効性が証明される。本発明の方法は、個々の層の適正な配合(すなわち、インクおよび/またはコーティング中の光開始剤および/またはアミンの型および量)を用いると、本明細書で示される2.35より高い密度であっても、効果的に硬化させることが予測されるであろうことに注意すべきである。
【0144】
実施例4.無コート紙/光開始剤を有するプライマー/光開始剤を有さないインクの構成物
実施例4は、無コート紙上で、光開始されるプライマーの上面に印刷された光開始されないインク層の有効なウエットトラッピングを示す。トップコート層を使用しなかった。
【0145】
P2を、無コート校正紙(BYK Chart PA-2831)上に、Little Joe校正機を用いて、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を使用して置いた。
【0146】
一連の市販のSun Chemical EB平版印刷インクを、プライマー上にLittle Joe印刷機セットアップを使用して並べてトラッピングさせた。インクを並べて塗布することにより、4つの構成物(各々がプライマー/インク/トップコートを有する)を調製した。4つのインクは、以上で記載されるB1、C1、M1、およびY1とした。
【0147】
2つの実施例4構成物を調製し、異なる速度で、中圧水銀灯を使用し、400W/in(160W/cm)の電力入力を用いて硬化させた。
【0148】
構成物実施例4Aを150ft/min(45.7m/min)のライン速度で硬化させた。単純な指摩擦ではいずれの色に対しても損傷はなく、親指ねじり試験では、全ての色に対してわずかな損傷があった。これらは商業的に許容される結果である。
【0149】
構成物実施例4Bを75ft/min(22.9m/min)のライン速度で硬化させた。擦り落ちも親指ねじり不良もどの色でも起こらなかった。「上向き」硬化方法の強力効果がこれにより証明される。
【0150】
実施例5:無コート紙/光開始剤を有するプライマー/光開始剤を有さないインク(複数可)/光開始剤を有するトップコートの構成物
実施例5は、光開始剤を含むプライマーと光開始剤を含むトップコートの間に挟まれた、異なる色の、光開始剤を有さない2つのインク層の成功したウエットトラッピングを示す。
【0151】
全ての校正刷りを、中圧水銀UVランプを用い、400W/in(160W/cm)の電力入力で、150ft/min(45.7m/min)のライン速度で硬化させた。全ての校正刷りは堅く硬化し、指摩擦および親指ねじり試験の両方に問題なく合格した。
【0152】
Ex.5A(シアン上にイエロー):P2を無コート紙(BYK Chart PA-2831)に塗布した。C1をP2の上面に印刷し;次いで、Y1をC1の上面に印刷した。トップコートT1を全ての層上に塗布した。
【0153】
Ex.5B(マゼンタ上にイエロー):P2を無コート紙(BYK Chart PA-2831)に塗布した。M1をP2の上面に印刷し;次いで、Y1をM1の上面に印刷した。トップコートT1を全ての層上に塗布した。
【0154】
Ex.5C(シアン上にマゼンタ):P2を無コート紙(BYK Chart PA-2831)に塗布した。C1をP2の上面に印刷し;次いで、M1をC1の上面に印刷した。トップコートT1を全ての層上に塗布した。
【0155】
実施例5A~5Cは、無コート紙上で、光開始されるプライマーと光開始されるトップコート層の間に挟まれた2つの光開始されないインク層(様々な配置で印刷されるプロセスカラー)の有効なウエットトラッピングを示す。トラップは4色プロセス印刷についての標準セットアップを表す:ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、シアン上マゼンタトラップ、シアン上イエロートラップおよびマゼンタ上イエロートラップ。ブラックを用いてトラッピングされた色は典型的には、4色プロセス印刷においては使用されない。
【0156】
プロセスカラートラップ試験は、4色KCMY(すなわちブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)プロセス印刷において使用される全ての標準組み合わせについて良好な硬化を示した。全ての試験は、無コート紙ストック(BYK Chart PA-2831無コート紙)上に、Little Joe校正機を用い、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を使用して塗布したP2を使用した。全ての色は、実施例1で記載されるEB平版モノタックインクセット由来とした(すなわちB1、C1、M1、およびY1)。第1の色(シアンブルー)を同じ方法によりプライマー上に塗布した。第2の色(マゼンタ)を同様の方法により塗布した。第3の色(イエロー)を、第2の色およびプライマー上に、当業者に知られているインクフィルム厚を増加させるための改良を使用して塗布した。UVトップコートもまた、同じ方法により塗布した。
【0157】
実施例6:無コート紙/光開始剤を有するプライマー/光開始剤を有さないEBシアンの第1の層/光開始剤を有さないEBシアンの第2の層/光開始剤を有さないトップコートの構成物
実施例6は、無コート紙上で、光開始されるプライマー層と光開始されないトップコート層の間に挟まれた2つのシアンの光開始されないインク層の成功したウエットトラッピングを示す。この構成物は成功した「ボトムアップ」硬化ウエットトラッピング構成物を証明する。
【0158】
光開始剤を含まないトップコート2(「T2」)を調製した。T2の配合は表3に示される。エネルギー硬化性トップコートT2は光開始剤を含まないが、大量のアミノアクリレート共力剤を含む。
【表3】
【0159】
プライマーP2を、Little Joe校正機を用い、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を使用して、試験ストック(BYK Chart PA-2831無コート紙)に塗布した。EBシアンインク(C1)の2つの層をプライマー上でウェットトラッピングさせた。第4の層、トップコートを以上で記載される方法により塗布した。校正刷りを、中圧水銀UVランプを用い、400W/in(160W/cm)のランプ入力電力を用い、2つのレベルのUV曝露(ライン速度)で硬化させた。
【0160】
Ex.6A(150ft/min(45.7m/min)):校正刷りを150ft/min(45.7m/min)の速度で硬化させた。耐摩擦性を硬化後1、2、4、および8分で試験した。校正刷りは、曝露後1、2、および4分に、その上を指で摩擦することにより容易に傷ついたが、曝露後8分ではそうではなくなった。
【0161】
Ex.6B(75ft/min(22.9m/min)):校正刷りを75ft/min(22.9m/min)のライン速度で硬化させた。耐摩擦性を硬化後1、2、4、および8分で試験した。校正刷りは曝露後1および2分で、その上を指で摩擦することにより容易に傷つく場合があった。しかしながら、曝露後4分を超えると、事実上傷は起こらなかった。曝露後4分を超えると、この校正刷りは商業的に許容されると考えられる。曝露後2時間では、この校正刷りは、MEKに浸漬させた綿ボールを用いる41MEK二重摩擦に合格した。
【0162】
実施例6は、適正な硬化電力およびUVプライマーの配合(大量のアミノアクリレート共力剤)を用いると、許容されるボトムアップ硬化を、インク(複数可)の層およびトップコートを用いて、商習慣で典型的に見られるように、光開始剤を含むプライマー層のみと共に達成することができることを示す。
【0163】
実施例7.グラフト化リサイクルポリスチレンを含む、プライマーおよびトップコートを有するウエットトラッピング構成物
実施例7は、P1およびP2、ならびにT1(Suncure、Sun Chemical製)およびT2において使用されるビスフェノールAエポキシジアクリレートはグラフト化リサイクルポリスチレン(rPS)に置き換えることができ、有効なウエットトラッピングにつながることを示す。
【0164】
実施例7は、樹脂ビスフェノールAエポキシジアクリレートは、隣接する硬化方法の性能には重要ではないことを証明する。WO2017/139333号において記載される方法により製造されたグラフト化リサイクルポリスチレン(Ex.5;rPSは分解され、トルエン中でグラフト化され、その後、TPDGAについて溶剤交換される)をプライマーおよびトップコートの両方のための樹脂として使用した。様々なUVランプを硬化のために使用した。
【0165】
UVプライマー3(「P3」)を表4における配合に従い調製した。光開始剤はUVA部分のスペクトル、すなわち320nm~390nmの波長の吸収帯を有することに留意されたい。このプライマーの主な不利益はUV光への曝露で黄色になる傾向があることである。インク層の下であれば、黄色化は問題にならないくらい十分淡いが、校正刷りの透明/白色領域ではそれは許容されない可能性がある。
【表4】
【0166】
UVトップコート3(「T3」)を表5における配合に従い調製した。
【表5】
【0167】
光開始剤を含まないイエロー平版印刷インク2(「Y2」)を、製造施設から光開始剤の添加直前に、Sun Chemical商用UV平版印刷インクStarluxeG7 Pro Yellow(FLYSV2484086)のサンプルを入手することにより獲得した。配合物中の普通の他の材料成分は全て存在した。
【0168】
P3の狭いストリップをコート紙(BYK Chart2810)上に、Little Joe校正機を用い、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を使用してコートした。Y2のより広いストリップ(すなわち、Y2のストリップの一部が直接基材上にあり、プライマー層がない)を、プライマー上に同じ印刷方法を使用してトラッピングさせた。T3のさらにより広いストリップを、他の層全て上に#4 Mayerロッドを使用して塗布した。全ての層を、2-ランプセットアップを用い、100ft/min(30.5m/min)のウェブ速度およびランプ曝露間1~2秒間隔で同時に硬化させた。
ランプ#1:UV-LED、395nmでのピーク出力、20W/cm2強度(すなわち放射照度)、10mmエアギャップ。
ランプ#2:UV-Hg-蒸気、200W/in(80W/cm)のランプ入力電力。
【0169】
様々な幅の各層を印刷することにより、下記構成物を得た:
Ex.7A:基材/T3
Ex.7B:基材/Y2/T3
Ex.7C:基材/P3/Y2/T3
【0170】
指で印刷物を擦ると、全ての領域がよく硬化され、基材への接着が良好であることが示された。すなわち、全ての構成物7A(T3のみ)、7B(Y2およびT3)、および7C(P3、Y2、およびT3)は基材への良好な接着を有した。接着(3M810テープを用いて試験)は全ての層上で非常に高く、粘土コーティングが紙から除去された。優れた硬化により、イエローの色濃度=1.16が可能になり、これはプロセス印刷に典型的に要求されるものより強い。
【0171】
実施例8.UV-LEDのみを用いた硬化
実施例7と同一の印刷構成物を、実施例7と同じ条件で、UV-LEDランプにのみ曝露させた。UVプライマーP3が下にある領域は良好な接着および耐摩擦性を示した。通しの硬化は優れていた。UVトップコートT3は表面上でわずかに汚れたが、これはコーティングをUV-LEDで硬化させる場合には典型的である。この実施例は、P3はUV-LED光により非常に効果的に活性化され、水銀灯は通しの硬化を達成するのに必要とは限らないことを示す。
【0172】
実施例9.UV-LEDおよび水銀UVランプを用い、より低い電力入力を用いた硬化
実施例7および実施例8と同一の印刷構成物をUV-LEDに曝露させ、次いで、中圧水銀UVランプ下、100W/in(40W/cm)入力電力を用いて通過させた。トップコート表面をタックおよびスミアフリーにするために、実施例7で使用されるものよりもより少ないエネルギーが水銀灯から必要とされることが示された。すなわち、実施例7のようにUV-LEDで処理され、次いで、より低い入力電力に設定された水銀灯を用いてさらに硬化された校正刷りは、校正刷りの全ての領域にわたって(1、2、または3つの合計層)、少ない100W/in(40W/cm)を用い、200ft/min(61m/min)で、にじみ汚れ耐性を有するものとすることができた。
【0173】
実施例10.配合最適化
実施例10は、様々なインクおよび/またはコーティング(すなわちプライマー、インク、およびトップコート)の性能を最適化するように様々な量の光開始剤および共力剤を有する配合物を試験するように設計された。
【0174】
実施例10A~10Iは、ウエットトラッピング印刷構成物の1つ以上の層(すなわちインクおよび/またはコーティング)における様々な量の光開始剤および共力剤の効果を試験するように設計された。これらの実施例は非限定的であり、インクおよびコーティング配合物の分野の当業者は最終用途に従うインクおよび/またはコーティングの要求される特性に基づき、異なる型および量の原料を選択することができることが理解されるべきである。
【0175】
様々なレベルの光開始剤およびアミン共力剤を含むプライマーP4~P8を、実施例10A~10Iにおいて試験するために調製した。プライマーP4~P8の配合は表6に示される。
【表6】
【0176】
トップコートT4~T6を、実施例10A~10Iにおいて試験するために調製した。T4~T6の配合は表7に示される。
【表7】
【0177】
イエローエネルギー硬化性、光開始剤フリー、平版印刷インクY2を実施例10A~10Iの全てにおいて中間インク層として使用した。
【0178】
全ての実行をBYK Chart2810(コート)紙を用いて実施した。第1のコーティング(プライマー)を、ブレード付きフレキソ印刷ハンドプルーファーを使用して、800ライン/インチ(1.7bcm体積)アニロックスを用いて塗布した。イエロー光開始剤フリーインクY2を、ブレード付きフレキソ印刷ハンドプルーファーを使用して、360ライン/インチ(4.23bcm体積)アニロックスを用いて塗布した。トップコートを2-ロールフレキソ印刷ハンドプルーファーを使用して、440ライン/インチ(3.35bcm体積)アニロックスを用いて塗布した。2つの校正刷りを構成物10A~10Iの各々について作製した。
【0179】
実施例10A~10Iの各々について使用した構成物は表8に示される。
【表8】
【0180】
校正刷りを、100ft./min(30.5m/min)での、2つのUVランプ下、曝露間1~2秒のパスを用いて硬化させた。第1のランプは、67%出力で設定したUV-LEDランプ(395nm)とし、第2のランプは25%出力で設定した中圧水銀灯とした。意図は、UVA部分のスペクトル(320nm~390nm)における各ランプの等しい線量(エネルギー密度)を用いて照射することであった。UV-LED用具についてのUVA曝露の理論値は57mJ/cm2の線量(エネルギー密度)、および0.60W/cm2の強度(放射照度)であった。UVA曝露またはUV中圧水銀蒸気用具の理論値は、57mJ/cm2の線量(エネルギー密度)および0.41W/cm2の強度(放射照度)であった。組み合わせ曝露のUVAについての平均測定値は115mJ/cm2線量(エネルギー密度)および0.91W/cm2強度(放射照度)であった。組み合わせ曝露のUVB(280nm~320nm)についての平均測定値は57mJ/cm2線量、および0.40W/cm2強度であった。組み合わせ曝露のUVC(250nm~260nm)についての平均測定値は10mJ/cm2線量、および0.05W/cm2強度であった。テープ接着を3M810接着テープを使用して試験し、「優れた」の値は、接着不良がトップコート/インク/プライマー層と基材内または間で起こらなかったことを意味し、典型的には、紙コーティングは紙基材からはぎ取られる。
【0181】
色濃度をX-Rite分光濃度計を用いて測定した。イエロー上の光沢をBYKマイクロ-トリ-グロスメーターを用いて60°で測定した。実施例10A~10Iについての色濃度およびイエロー上の光沢の値は下記表9に示される。
【表9】
【0182】
校正刷りを指擦り落ち、親指ねじり、MEK摩擦耐性、およびテープ接着により評価した。MEK摩擦耐性についての試験は1000摩擦で中断した。というのも、500MEK摩擦を超えるものは、商業的観点から優れていると考えられるからである。結果は下記表10に示される。
【表10】
【0183】
調査した配合パラメータの1つは、構成物中の1つ以上のインクおよび/またはコーティング配合物中にアミン共力剤を含める効果であった。例えば、アミン共力剤はインクおよび/またはコーティング層のいずれかに存在することができるが、実施例10A~10Iにより、プライマーもしくはトップコート、または両方がアミン共力剤を含む限り、良好な性能を達成するために中間インク層中にアミン共力剤を含む必要はないことが示される。
【0184】
実施例11.構成物10EのUV水銀灯のみによる硬化
実施例10Eで使用される構成物を調製し、UV中圧水銀灯のみを用いて(すなわち、UV-LEDランプを消した)硬化させた。合計UV線量および強度は実施例10と同じであった。中圧水銀灯を50%出力まで増加させ、ライン速度を100ft/min(30.5m/min)とした。これにより、実施例10Eと同じUV線量がUVA領域で確実に受け取られた。
【0185】
親指ねじりおよび指-摩擦の結果は実施例10Eに匹敵した。色濃度は平均して0.98となり、実施例10Eよりわずかに高かった。60°で測定したイエロー上の光沢は平均して92.3となり、実施例10Eより著しく高かった。光沢が高いほど、通常、より完全な硬化を示す。しかしながら、密度および光沢値の両方の可変性はこの実施例において、実施例10Eより高かった(例えば、標準偏差は、密度について0.07対0.01、および60°光沢については0.8対0.2)。テープ接着は優れており、実施例10Eと同一であった。
【0186】
実施例12.LED硬化を用いた、ポリマーポリエステルフィルム基材上でのウエットトラッピング
未処理ポリエステルフィルムSarafil(Polyplex Company)/光開始剤を有さないEB硬化性平版印刷プロセスインク(Sunbeamシリーズ、Sun Chemical製)/LED硬化性トップコートのウエットトラッピング印刷構成物。使用したインクはSunbeam ELM46ブラック(「B2」)、Sunbeam ELM25シアン(「C2」)、Sunbeam ELM27マゼンタ(「M2」)、およびSunbeam ELM26イエロー(「Y3」)とした。LEDトップコートはKustom-Group Company製のLED012(「T7」)またはトップコート「T8」のいずれかであり、その配合は表11に示される。T8の粘度は、25℃の温度、およびD=50l/sのせん断速度で測定すると、190mPasであった。
【表11】
【0187】
平版印刷インクをプラスチック基材上に、IGT社製のオフセットインクラボプルーファーC-5を用いて塗布した。ディストリビュータロールを250mgのインクでコートし、2分間運転させ、その後、インクをインクローラーに1分間セットオフさせた。それから、インク印刷を実施した。インクの塗布直後に、トップコートをウェットオンウェットで塗布した。LEDトップコートを、アニロックスローラー(200ライン/インチ)を用い、BYK-Gardner製の自動化コーティングユニット(約4g/m2のフィルム重量を与えた)を使用して塗布した。
【0188】
ウェットトラッピングさせた層状印刷物を、2つのパスで、Phoseon LED乾燥機(395nmで8W)を用いてLED-硬化させた。適用したエネルギーの線量を、EIT社製のラジオメーターPowerpuck-IIを用いて測定した。適用した線量はUVA=7.5mJ/cm2、UVA2=58.0mJ/cm2、およびUVV=125mJ/cm2/パスであった。
【0189】
表面硬化度を親指ねじり試験により評価し、この場合、親指を印刷構成物の表面に適度な力で押しつけ、ねじった。スミアリングまたは著しい跡が形成されなかった場合、硬化層は試験に合格した。
【0190】
通しの硬化を、LED硬化インクの裏面での「裏移り」試験を使用して評価した。インクのUV-硬化印刷物(1.6~2.2の光学濃度を用いて印刷された)を、強力接着フィルムにより、硬化トップコートと共に、プラスチック基材から除去し、インク裏面を白色カウンター紙で被覆した。次いで、10トンの圧力を用いて、印刷インクの裏側および無地のカウンター紙を共にプレスした。圧力を10トンまで約5秒以内で増加させ、10トンの圧力に圧力計で到達するとすぐに、圧力を直ちに解除した。次いで、カウンター紙を印刷物から除去し、カウンター紙上の転写されたインクの量をデンシトメーターにより測定した。原則として、転写されたインクの量が低いほど、デンシトメーター上の読み取り値は低くなり、硬化は良好になった。良好に硬化されたインクは0.1単位未満の転写光学濃度を示す。
【0191】
表面硬化および通しの硬化についての結果は表12に示される。
【表12】
【0192】
表12における裏移り硬化試験結果により、LEDトップコートの下では、たとえ、EBインクが光開始剤を含んでいなくても、EB-インクは完全に硬化されることが示される。LEDトップコートを有さないインクY3、C2、M2、およびB2との比較実験はいずれの硬化度も示さず、硬化試験で不合格となった。
【0193】
よって、実施例12A~12Hは、系を硬化させるためのUV-LED照射を用いた、未処理ポリエステルフィルム上の光開始されるトップコートの下の光開始されないプロセスインク層の有効なウエットトラッピングを示す。
【0194】
実施例13.ポリマーポリプロピレンフィルム上でのウエットトラッピング
未処理配向ポリプロピレンH1-LSフィルム(Jindal Polyfilms)を基材として使用したことを除き、実施例13は実施例12と同じである。硬化評価結果は表13に示される。
【表13】
【0195】
表13における裏移り硬化試験結果により、たとえ、EBインクが光開始剤を含んでいなくても、LEDトップコートの下でEBインクは完全に硬化されることが示される。LEDトップコートを有さないインクY3、C2、M2、およびB2との比較実験はいずれの硬化度も示さず、硬化試験で不合格となった。
【0196】
実施例14.ポリマーポリエチレンテレフタレートフィルム上でのウエットトラッピング
未処理ポリエチレンテレフタレートMylar813(Du Pont)フィルムを基材として使用したことを除き、実施例14は実施例12と同じである。硬化評価結果は表14に示される。
【表14】
【0197】
実施例15.無コート紙/光開始剤を有さないプライマー/光開始剤を有するブラックインクの構成物
実施例15は、層の同時硬化を用いた、無コート紙上で光開始されないプライマーの上面に印刷された光開始されるブラックインクの有効なウエットトラッピングを示す。
【0198】
UV硬化性材料(光開始剤を有さない)から作製されたプライマー(P9~P11)を無コート試験紙BYK Chart PA-2831に塗布し、光開始剤を含むブラックインクを刷り重ねた。プライマーP9~P11の配合は表15に示され、ブラックインクB3およびB4の配合は表16に示される。
【表15】
アミン含有材料は、IGM-EHA 2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート分子量277.4 CAS No.21245-02-3およびMiwon Photocryl A-101((Miwon技術者との個人的な接触)ジエチルアミンおよびTPGDAの付加物として説明される)である。
【表16】
【0199】
プライマーおよびインクの両方を、0.4ミル(10.2μm)ウエッジ板が取り付けられたLittle Joe校正機を用いて塗布した。第2の層を第1上にウエットトラッピングさせた。当業者に知られている配合物操作および校正刷り方法、例えば着肉およびインプレッション設定を使用することにより、清浄なトラップが確保された。複合(湿)構成物を、中圧水銀灯により発生したUV光を用いた照射により、100ft./min(30.5m/min)のベルト速度、および400W/インチ(160W/cm)の電力設定で硬化させた。この条件下でのエネルギー曝露(線量および強度)を下記のようにEIT Powerpuck装置を用いて測定した:
UVA 174mJ/cm2 1.186W/cm2
UVB 195mJ/cm2 1.206W/cm2
UVC 24mJ/cm2 0.141W/cm2
【0200】
視覚印刷密度(V)を、X-Riteモデル939分光濃度計を用いて測定した。印刷物を、以上で記載される親指ねじりおよび指摩擦試験を使用して試験した。結果は表17に示される。
【表17】
【0201】
良好な硬化を確保するために、プライマーまたはブラックインクのいずれかにアミンを添加する必要はないことが見いだされた。より高いレベルのアミンは所望の印刷密度への移行をより困難なものとしたこともまた見いだされた。ブラックインクの光開始剤パッケージ中には三級アミンが存在することに注意すべきである。ブラックインクは2.08%のIrgacure369(分子内に1つの三級アミン基を含む)、および1.25%のエチルEMK(分子内に2つの三級アミン基を含む)を含んだ。
【0202】
実施例16.無コート紙/光開始剤を有するブラックインク/光開始剤を有さないトップコートの構成物
実施例16は、両方の層の同時硬化を用いた、無コート紙上での、光開始されないトップコートの下の光開始されるブラックインクの有効なウエットトラッピングを示す。
【0203】
UV硬化性材料(光開始剤を有さない)で作製されたトップコート(T9およびT10)を、無コート紙(BYK Chart PA-2831)上で、光開始剤を含むブラックインク上に印刷した。T9およびT10の配合は表18に示される。
【表18】
【0204】
UV硬化性ブラックインクB3を、実施例15の方法によって、無コート試験紙BYK Chart PA-2831上で印刷した。光開始剤を含まないUV硬化性トップコート(T9およびT10)をブラックインク上に、インクが依然として濡れている間に、#3Mayerロッドを使用してコートした。複合(湿)構成物をUV光を用いた照射により、実施例15の方法によって、硬化させた。アミンありおよびなしのトップコートを試験した。
【0205】
16A構成物の視覚印刷密度(V)は2.12であり、Vの値は16B構成物では1.99であった。実施例16Aおよび16Bの各々を、硬化後数回、親指ねじり試験および指-摩擦試験を使用して試験した。試験結果は表19に示される。
【表19】
【0206】
商業的に許容される硬化が起きるためには、著しいレベルのアミンがトップコート中にあることが好ましいことが見いだされた。トップコート中にアミンが存在しなくても、親指ねじり試験および指-摩擦試験は合格することができる。しかしながら、表面は非常にわずかに汚れており、指を硬化されたコーティング上で擦ると視認可能な跡が形成される可能性があり、それは商業的に好ましくない。UV照射への曝露の数分以内に起こるトップコートのいくらかの硬化後固化もあり、そのため、商業的に許容される結果は硬化直後には得られず、むしろ、その後、数分で得られる。
【0207】
実施例17.無コート紙/光開始剤を有さないプライマー/光開始剤を有するブラックインク/光開始剤を有さないトップコートの構成物
光開始されるブラックインクを、光開始剤を含まないプライマーとトップコートの層の間においた。
【0208】
校正刷りを無コート試験紙BYK Chart PA-2831上で作製した。第1の層は、実施例15で記載されるLittle Joe校正機を用いて、開始されないUV硬化性プライマーP11とした。第2の層、光開始されるブラックインクB3を、実施例15で記載されるLittle Joe校正機を用いて、プライマー上にウエットトラッピングさせた。第3の層、開始されないUV硬化性トップコートT10を、前の2つの層上に、Mayerロッドを使用し、実施例16の方法によってウエットトラッピングさせた。全ての層を、実施例15で記載される条件でのUV光への曝露により同時に硬化させた。
【0209】
校正刷りを、X-Riteモデル939分光濃度計で測定して、低くて1.86および高くて2.18の視覚印刷密度で作製し、下記結果が得られた:
親指ねじり試験は硬化後1~2分に合格した。
指摩擦スミア試験は硬化後1~2分に合格した。
3M810テープ接着テープ接着試験は、硬化後10分で合格し、PA-2831テストカードの印刷されていない部分上で、0%~30%の接着不良が存在した。不良モードはインクとプライマーの間であった。
溶剤摩擦耐性(V=1.88で)を硬化後60分に観察し、PA-2831テストカードのブラック印刷部分上で、MEKで湿らせた綿ボールを使用して、95二重摩擦であった。
【0210】
実施例17は、全ての層の同時硬化を用いた、無コート紙上での、光開始されないプライマーと光開始されないトップコートの間に挟まれた光開始されるブラックインクの有効なウエットトラッピングを示す。
【0211】
実施例18.コート紙/光開始されないイエローインク/光開始剤を有するハイブリッドトップコートの構成物
実施例18は光開始されないイエローUVインクの上面に印刷された、光開始剤を含む水性ハイブリッドトップコートの有効なウエットトラッピングを示す(実施例18B)。実施例18はまた、ハイブリッドトップコートは単一層として硬化させることができることを示す(実施例18A)。
【0212】
光開始されないイエローUVインクY4を、Y3をMiwon製の9.7%Photocryl A101アミノアクリレートに合わせることにより作製した。
【0213】
ハイブリッドトップコートT11は水性コーティング、Dicoat AE-1349(Sun Chemical)のエネルギー硬化性材料および光開始剤とのブレンドである。エネルギー硬化性材料は、BASF製のLaromer PO 94Fポリエーテルアクリレート、Miwon製のPhotocryl A101アミノアクリレート、ならびにIGM Resins製のIrgacure754およびTPO-L光開始剤を含む。完成水性ハイブリッドトップコートT11は48.5%固体であった。T11の配合は表20に示される。
【表20】
【0214】
Ex.18A:
T11をBYK Chart2810コート紙に#4Mayerロッドを用いて塗布し、90℃で60秒間乾燥させ、水銀UVランプにより、400W/in(157.48W/cm)のランプ入力電力を用いて、100ft/min(30.48m/min)のライン速度で硬化させた。完成印刷構成物は、MEKで濡らした綿ボールによる775の二重摩擦に耐えた。実施例18Aは、ハイブリッドトップコートT11は、そのままで印刷させ、硬化させることができることを示す。
【0215】
Ex.18B:
Y4をコート紙BYK Chart2810上に、Little Joe校正機を使用して、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を用いて印刷した。T11を上面上に、2-ロールハンドプルーファーを使用し、165ライン/インチ14bcmアニロックスローラーを用いてウェットトラッピングさせた。校正刷りを60秒間90℃で乾燥させた。次いで、校正刷りを水銀UVランプからの光に、400W/in(157.48W/cm)のランプ入力電力を用い、100ft/min(30.48m/min)のライン速度で曝露させた。
【0216】
硬化構成物は親指ねじり試験に合格した。それはまた、指摩擦およびスミア試験に合格した。X-Rite939分光濃度計により測定した印刷密度はY=1.24~1.29であり、校正刷りはMEKを用いた100二重摩擦に合格した。この時点で、イエローカラーのほとんどがMEKにより校正刷り表面から抜き取られたが、依然として、トップコートが実際に突き破られた兆候はなかった(すなわちMEKは黄色顔料をトップコートを通して浸出させたが、トップコートの機械的構造は無傷のままであった)ことに注意すべきである。1つの層が未硬化である状況では、MEKは典型的には、1~3摩擦で硬化されたトップコートを基材まで「突き破り」、そのため、良好な硬化が達成されたことが示され得ることに留意されたい。
【0217】
実施例19.コート紙/光開始されるブラックインク/光開始剤を有さないハイブリッドトップコートの構成物
実施例19は、光開始されるブラックUVインクの上面に印刷された、光開始剤を有さないハイブリッド水性トップコートの有効なウエットトラッピングを示す。
【0218】
UV硬化性アクリレートを含むが、光開始剤を含まないハイブリッドトップコートT12を調製した。T12の配合は表21に示される。
【表21】
【0219】
光開始されるブラックインクB3を、Little Joe校正機を使用して、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を用いてコート紙BYK Chart2810上に印刷した。トップコートT12を、2-ロールハンドプルーファーを使用して、165ライン/インチおよび14bcmアニロックスを用いて、B3上にウェットトラッピングさせた。校正刷りを60秒間85℃で乾燥させた。次いで、校正刷りを水銀灯からのUV光に、400W/インチ(157.48W/cm)のランプ入力電力を用い、100ft/min(30.48m/min)のライン速度で曝露させた。
【0220】
校正刷りの試験により、親指ねじり試験に合格し、指摩擦耐性は優れており、3M810接着テープにより測定した接着もまた優れていたことが示された。MEK摩擦耐性は、インクが基材から除去されるまで117二重摩擦であった。良好な硬化が達成された。
【0221】
実施例20.コート紙基材/光開始剤を有さない油性ハイブリッドインク/光開始剤を有するUVトップコートの構成物
実施例20は、光開始されるUVトップコート(Sun Chemical RC88-1170(「T13」))の下に印刷された、UV硬化性材料を含むが、光開始剤を有さない油性ハイブリッドインクの有効なウエットトラッピングを示す。
【0222】
UVコーティングを酸化により乾燥する従来の油性インク上にウェットトラッピングさせた場合に観察される典型的な現象は「グロスバック(gloss-back)」と呼ばれる。コートされたインクの最初の光沢は、硬化されたUVコーティングの下のインクが次の24~72時間にわたって硬化するにつれ減少する。この問題はこの業界でよく知られている。2000年代半ばから、多くのインク供給元が、この問題点に対処するために、いわゆる「ハイブリッド系」を供給してきた(D. Savastano, Ink World Magazine, 2005年9月6日を参照されたい)。
【0223】
ハイブリッドシアンインクC3を、Sun Chemical DIA25 Diamond Process Cyanの従来のシート給紙インクを1:1比でエネルギー硬化性材料(ポリエステルアクリレートエネルギー硬化性樹脂およびTMPTA)とブレンドすることにより調製した。C3の配合は表22に示される。
【表22】
【0224】
比較の従来のシアンインクC4を、Sun Chemical DIA25を従来の低タック増量剤と1:1比でブレンドすることにより調製した。C4の配合は表23に示される。
【表23】
【0225】
Ex.20A:
ハイブリッドシアンインクC3を、Little Joe校正機を使用して、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を用いて、コート紙BYK Chart2810上に印刷し、第1の(ブルー)インクを塗布した。次いで、T13を、インク上に、2-ロールハンドプルーファーを使用して、360ライン/インチおよび4.23bcmアニロックスを用いてウェットトラッピングさせた。次いで、校正刷りを水銀灯からのUV光に、160W/cm(400W/インチ)ランプ入力電力を用いて、50m/min(164ft/min)のライン速度で曝露させた。
【0226】
Ex.20B:
比較の従来のシアンインクC4をLittle Joe校正機を使用して、0.4ミル(10μm)ウエッジ板を用いて、コート紙BYK Chart2810上に印刷し、第1の(ブルー)インクを塗布した。次いで、T13を、インク上に、2-ロールハンドプルーファーを使用して、360ライン/インチおよび4.23bcmアニロックスを用いてウェットトラッピングさせた。次いで、校正刷りを水銀灯からのUV光に、160W/cm(400W/インチ)ランプ入力電力を用いて、50m/min(164ft/min)のライン速度で曝露させた。
【0227】
校正刷りの最初の光沢を硬化が起きた後15分に測定した。Ex.20B(従来のシアンインクC4を使用)の4つの試料についての色強度の範囲(シアン濃度)は1.07~1.42であった。Ex.20A(ハイブリッドシアンインクC3を使用)の4つの試料についての色強度の範囲は1.17~1.29であった。硬化後の72時間後、光沢を再び測定した。試験結果は、表24において、Ex.20AおよびEx.20Bの各々について4つの試料の平均として示される。
【表24】
【0228】
実施例20の結果により、乾燥油およびエネルギー硬化性材料から作製したが、光開始剤を有さないハイブリッドインクは、乾燥油および油性ワニスから作製した従来のインクと比べ、どちらも、市販のUVコーティング(T13)を用いてウェットトラッピングさせ、UV硬化された場合、グロスバックが低減したことが示される。これにより、ハイブリッドインクの硬化は、それと接触する光開始されるUVトップコートの存在により起きたことが証明される。
【0229】
いくつかの事実から、Ex.20Aハイブリッドインク層において良好な硬化が起きたことが証明される。硬化が起こらないと、Ex.20Aは、親指ねじりおよび指摩擦/スミア試験に合格しなかったであろう。グロスバックはEx.20B(従来の油性インク)に対し15点大きかったという事実は、光開始剤を有さないハイブリッドインクにおいて従来のインクよりも起きた変化が小さかったことを示す。改善された硬化性能は、Ex.20Aが良好な硬化性能を有さなかった場合不可能であったであろう。
【0230】
実施例21および22.紙基材/硬化されたプライマー/光開始剤を有さないインク#1/光開始剤を有さないインク#2/光開始剤を有するトップコートの構成物
ManRoland700UV枚葉印刷機上で、光開始剤を含むUV硬化性コーティング(Sun Chemical UV-平版印刷ワニス10HC171)をプライマー(「P12」)として、インラインで紙基材上に塗布し、ステーション間乾燥機を用いてUV硬化させた。次いで、光開始剤を含まないSun Chemical製の平版印刷電子ビームインク(C2およびM2)を硬化されたコーティングの上面に印刷した。次いで、UV硬化性平版印刷ワニス10HC1171を、未硬化インクの上面に、トップコートとして塗布した(「T14」)。最後に、インク層およびトップコートを全て一緒にトップコートを通してUV硬化させた。
【0231】
プレス試験を2回2つの異なる印刷ストック(多孔性基材)を用いて実施した。Ex.21はMultiart光沢紙を使用し、Ex.22はLuxo Satin紙を使用した(どちらもPapyrus製)。湿し水は、3%Sunfount480(Sun Chemical)、および4%イソプロピルアルコールを含んだ。印刷板はElite Pro(Agfa)とした。ライン速度は13,000シート/時間であり、印刷長は5000シートであった。
【0232】
印刷順は下記の通りとした:
印刷ステーション:P12(コーティング重量約2g/m2)。
ステーション間乾燥機UV水銀建造、160W/cm入力電力。
印刷ステーション:C2(光学濃度=1.4)。
印刷ステーション:M2(光学濃度=1.4)。
印刷ステーション:T14(コーティング重量約2g/m2)。
最終乾燥機低エネルギー、ドープUV水銀球、160W/cm入力電力。
【0233】
印刷物の硬化を親指ねじり試験により評価した。親指を印刷物の印刷され、乾燥された表面の上面に力を入れて押しつけ、90°回転させた。トップコートの下のインク層が硬化されておらず移動可能であれば、印刷画像は親指ねじり試験後破壊される(不合格)。画像が変化なしのままであれば、合格である。
【0234】
加えて、紙印刷物を引き裂き、未硬化の汚れたインクについて調査した。インクの染みが手指につかなければ、インク層は硬化した(合格)。UV硬化評価の結果は表25で提供される。
【表25】
【0235】
実施例21および22により、たとえ放射線硬化性インクが光開始剤を含んでいなくても、放射線硬化性インクは、硬化されたUVプライマーとUVトップコートの間でうまくUV硬化されたことが示される。アクリレート基の硬化に必要なラジカルは、組成物が依然として液体である間それらの寿命中に、トップコートからの移行により供給される。
【0236】
実施例23.ウエットトラッピング方法を使用した積層
2つのエネルギー硬化性フレキソ印刷配合物コーティングを調製した。フレキソ配合物Aは光開始剤を含み、フレキソ配合物Bは光開始剤を含まない。フレキソ配合物Aおよびフレキソ配合物Bの配合は、それぞれ、表26および27に示される。
【表26】
【表27】
【0237】
エネルギー硬化性フレキソ配合物Aは不十分な表面硬化を示すはずであることが当業者に知られている。というのも、それは、酸素により阻害されるホスフィンオキシド光開始剤のみを含むからである(例えば、Husar, et al. “Novel Phosphine Oxide Photoinitiators”, RadTech International Proceeding, 2014を参照されたい)。ベースラインを確立し、表面硬化度を定量する方法は、フレキソ配合物Aをコート紙上にコートし、それをUV硬化させ、硬化された表面上での1%過マンガン酸カリウムを含む脱イオン水を用いた5分染み試験を使用するものである。得られた染みの色の深さは、反応する過マンガン酸イオンに利用できる未反応二重結合の数に比例する。1.000以下の光学濃度値では、光学濃度は着色インクの厚さに線形的に比例すると仮定される。有用な近似は、発現した染みの程度は表面での未硬化コーティングの厚さに線形的に比例することを仮定するものである。下記発明の実施例のすべてにおいて、報告される各色濃度値は、3つの別個の校正刷り、1校正刷りあたり3つの読み取り値、n=9からの平均である。
【0238】
基本的な場合では(Ex.23A)、フレキソ配合物AをBYK Chart2810コート紙上に、2-ロールHarperハンドプルーファーを使用して、440ライン/インチを用い、3.35bcmアニロックスローラーによりコートした。校正刷りを水銀UVランプに50%出力(80W/cm)および36.6m/minのベルト速度で曝露させた。平均UV性能を、EIT Power-Puckラジオメーターを用いて67mJ/cm2の線量、およびUVAバンドの光については0.72W/cm2の強度で測定した。
【0239】
ベースラインケース、Ex.23Bは空気中で硬化された光開始剤を含む/光開始剤を含まない二重層の予測される性能を決定した。そのような二重層は積層物内で見いだされるものと類似する。フレキソ配合物Aを基本的な場合、Ex.23Aにおけるように、コート紙上で校正刷りし、次いで、フレキソ配合物Bをその上に同じツーリングを使用してウエットトラッピングさせた。硬化を、基本的な場合、Ex.23Aと同じ条件下で実施した。
【0240】
「2 oz. Klockner」と同定したPETGフィルムを、UVA光に対して比較的透明であり、UVBおよびUVC光に対して不透明であると決定した。TPO-L光開始剤は、UVA光に対して高感度であることが知られている。発明のEx.23Cでは、コーティングを、Ex.23Bにおいて記載されるように、紙上にウエットトラッピングさせ、次いでPETGフィルムを湿性コーティング(複数可)表面に積層させた。UV曝露は、Ex.23Aの条件によってPETGフィルムを通して起きた。
【0241】
発明のEx.23Dでは、紙をEx.23Aのようにコートした。次いで、フレキソ配合物BをPETGフィルムに、2-ロールHarperハンドプルーファーを使用して、440ライン/インチを用いて、3.35bcmアニロックスローラーにより塗布した。PETGおよび紙を濡れ面対濡れ面で、積層を案内し、平滑化するローラーを用いて積層させた。UV硬化を、Ex.23AにおけるようにPETGフィルムを通して実施した。
【0242】
Ex.23A~23Dの構成物は表28に示される。試験結果の概要は表29に示される。
【表28】
【表29】
【0243】
第1の、全く予想外の結果は、発明のEx.23B(ベースライン)の表面硬化がEx.23A(基本)を超えると考えられることである。フレキソ配合物Aは四官能性ポリエーテルアクリレート(Ebecryl40)を含む。フレキソ配合物Bは、より官能化が低いエトキシル化ジアクリレート(Photomer4361、(EO)2-HDDA)を含む。ウレタンアクリレートは高度に官能化されているが、含量のみが2つの間で0.5%だけ異なる。いずれの場合でも、データは、配合物BはB/A二重層において、Aが単一層で硬化されるのと同様の程度まで硬化されることを示す。よって、B層の硬化をその後、使用して、積層物における硬化を評価した。というのも、それが染み試験に曝露された層であったからである。
【0244】
発明のEx.23Cおよび23Dでは、第1の懸念は、異なるコーティングが硬化し、融合して連続層になるかどうかであった。それらはそうであり、PETGフィルムが、紙から除去される時にそれ自体上で引き戻される場合(180°剥離試験)、接着は紙の上層をコーティングと共に引き剥がすのに十分である。コーティングは互いに分離することができない。
【0245】
表面を染み試験に有効なものにするために、硬化された積層物は、PETGを紙から、徐々に90°角度で引っ張って除去することにより、注意深く分離されなければならない。これにより、フレキソコーティングBのPETGからの明確な分離が引き起こされる。次いで、試験により、Ex.23Bに対して積層物内で起こる硬化における7X~12X改善が明らかにされる。
【0246】
Ex.23CとEx.23Dの間には視覚的な違いも存在したことに注意すべきである。23Cは、染色の「斑点」パターンを示し、一方、Ex23Dの着色は均一であった。これは、積層を作製する困難さに起因する可能性がある。濡れ面対濡れ面での積層により、乾燥フィルムを湿性コーティングに積層させるよりも、より滑らかな積層が得られる。平滑度の視覚的な違いは、Ex.23Dにおける染みのより滑らかな外観と相関する。
【0247】
本発明について、その好ましい実施形態を含んで、詳細に記載してきた。しかしながら、当業者であれば、本開示を考慮すれば、この発明に対し、発明の範囲および精神の範囲内に含まれる改変および/または改善が可能であることが認識されるであろう。