(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】増大したhATファミリートランスポゾン媒介遺伝子導入ならびに関連する組成物、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20230510BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230510BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20230510BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230510BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230510BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230510BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/62 Z
C12N9/12
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/09 100
(21)【出願番号】P 2019554474
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 US2017066829
(87)【国際公開番号】W WO2018112415
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-15
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519216002
【氏名又は名称】ビー-モーゲン・バイオテクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ラルガエスパーダ,デービッド
(72)【発明者】
【氏名】モリアリティ,ブランデン
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー,ビュー
(72)【発明者】
【氏名】オットー,ニール
(72)【発明者】
【氏名】クマール,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ホグダル,リア
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0252140(US,A1)
【文献】Xianghong Li et al.,A resurrected mammalian hAT transposable element and a closely related insect element are highly active in human cell culture. ,PNAS, 110 (6) ,2013年,E478-E487
【文献】Database GenBank[online],2007年12月31日,〈https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ABF20545.1/〉,Accession No. ABF20545.1, Definition: transposase [Triboliumcastaneum]
【文献】Database GenBank[online], Accession No. ABF20545.1 〈https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ABF20545.1/〉 31-Dec-2007 uploaded, Definition: transposase [Triboliumcastaneum],2007年12月31日
【文献】Definition: transposase [Triboliumcastaneum],Database GenBank[online],2007年12月31日,〈https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ABF20545.1/〉,Accession No. ABF20545.1
【文献】Xianghong Li et al.,A resurrected mammalian hAT transposable element and a closely related insect element are highly active in human cell culture,PNAS,110(6),2013年,E478-R487
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/54
C12N 15/62
C12N 9/12
C07K 19/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/63
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長の配列番号1に対して少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ配列番号1に従って番号付けした場合、V377T、E469K、D189A、K573E
、E578L
、I452F、N85S、およびA358Kから選択される2つ以上のアミノ酸置換の組合せを含む、突然変異型TcBusterトランスポザーゼであって、前記置換の組合せは、配列番号1に従って番号付けした場合、
V377T、E469K、およびD189A;
K573EおよびE578L;
I452F、V377T、E469K、およびD189A;
N85S、V377T、E469K、およびD189A;
N85S、V377T、およびE469K;
A358K、V377T、E469K、およびD189A; および
V377T、E469K、D189A、K573E、およびE578L
から選択される、突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
【請求項2】
配列番号1の野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列と比較して少なくとも2個そして最大で25個のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
【請求項3】
配列番号1の野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列と比較して少なくとも5個のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
【請求項4】
配列番号1に従って番号付けした場合、N85S、D99A、E247Kから選択されるアミノ酸置換、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のTcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインを含む融合トランスポザーゼ。
【請求項6】
請求項5に記載のTcBusterトランスポザーゼ配列を含む融合トランスポザーゼであって、DNA配列特異的結合ドメインは、TALEドメイン、ジンクフィンガードメイン、AAV Rep DNA結合ドメイン、またはそれらの任意の組み合わせを含むDNA配列特異的結合ドメインから選択される、融合トランスポザーゼ。
【請求項7】
TcBusterトランスポザーゼ配列が、全長の配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有する、請求項5または請求項6に記載の融合トランスポザーゼ。
【請求項8】
TcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインが、リンカーによって分離されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼであって、
リンカーは、少なくとも3個のアミノ酸を含む、融合トランスポザーゼ。
【請求項9】
リンカーが配列番号9を含む、請求項8に記載の融合トランスポザーゼ。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ、または請求項5~9のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドであって、DNAまたはメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
化学的に修飾されたmRNAを含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは請求項5~9のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼを産生する細胞であって、請求項10または請求項11に記載のポリヌクレオチドを含有する細胞。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは請求項5~9のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを、インビトロまたは生体外で細胞に導入する工程を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、導入する工程が、細胞を、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと接触させること、そして、細胞を、トランスポゾンを含有するDNAベクターと接触させることを含み、
トランスポゾンは2つの逆位リピート間に配置されたカーゴカセットを含み、
- 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが、配列番号3または配列番号5を有する配列を含む;または
- 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが、配列番号4または配列番号6を有する配列を含む、方法。
【請求項15】
カーゴカセットが、CMV、EFS、MND、EF1α、CAGCs、PGK、UBC、U6、H1、およびCumateからなる群から選択されるプロモーターを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
導入する工程が、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、カチオン性ポリマー、デンドリマー、リポソーム、微粒子銃、フュージーン、直接音波負荷、細胞圧搾、光学的トランスフェクション、プロトプラスト融合、インペールフェクション、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、またはそれらの任意の組み合わせを利用して細胞をトランスフェクトするステップを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか一項に記載の方法であって、細胞が、対象から単離された細胞であり、細胞は、
-胚性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、上皮幹細胞、気管支肺胞幹細胞、乳腺幹細胞、間葉系幹細胞、腸管幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経堤幹細胞、精巣細胞、およびそれらの任意の組み合わせから選択される幹細胞、または人工多能性幹細胞を含む;または
-ガンマデルタT細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、エフェクターT細胞、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、CD3+細胞であってもよい、初代白血球または初代T細胞を含む、そして、
カーゴカセットを含むトランスポゾンは導入遺伝子を含む、
方法。
【請求項18】
導入遺伝子が、細胞受容体、免疫学的チェックポイントタンパク質、サイトカイン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードし、ここで細胞受容体は、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞が対象の血液から単離されたものである、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
相互参照 [0001]本出願は、2016年12月16日に出願された米国仮出願第62/435,522号の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]トランスポゾンとも呼ばれる転位遺伝エレメントは、単一細胞内のあるゲノム位置から別のゲノム位置へ動員することができるDNAのセグメントである。トランスポゾンは、それらの転位メカニズムに従って2つの主要な群に分けることができる:転位は、(1)レトロトランスポゾンと呼ばれるエレメントに対するRNA中間体の逆転写を介して、および(2)DNAトランスポゾンに対して末端逆位リピート(TIR)に隣接するDNAの直接転位を介して起こり得る。活性トランスポゾンは、転位に必要とされる1つ以上のタンパク質をコードする。天然の活性なDNAトランスポゾンは、トランスポザーゼ酵素遺伝子を有する。
【0003】
[0003]hATファミリーのDNAトランスポゾンは、植物および動物に広く行き渡っている。限定されないが、Hermesトランスポゾン、Acトランスポゾン、hoboトランスポゾン、およびTol2トランスポゾンを含む、多数の活性なhATトランスポゾン系が同定され、機能的であることが見出されている。hATファミリーは、それらのトランスポザーゼの一次配列に基づいて、ACサブファミリーおよびBusterサブファミリーとして分類されている2つのファミリーで構成される。hATファミリーのメンバーはクラスII転位エレメントに属する。クラスIIの可動エレメントは、転位のカットアンドペーストメカニズムを使用する。hATエレメントは、類似のトランスポザーゼ、短い末端逆位リピート、およびゲノム標的の8塩基対の重複を共有する。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本開示の一態様は、全長の配列番号1に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を有する、突然変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して、増加した転位効率を有する。
【0005】
[0005]本開示の別の態様は、全長の配列番号1に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン;挿入ドメイン;Zn-BEDドメイン;またはそれらの組み合わせにおいて1つ以上のアミノ酸置換を有する、突然変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して、増加した転位効率を有する。
【0006】
[0006]本開示のなお別の態様は、全長の配列番号1に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、表1からの1つ以上のアミノ酸置換を有する、突然変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。
【0007】
[0007]一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比較して、触媒ドメイン内にまたはそれに近接して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含み、1つ以上のアミノ酸は、配列番号1に従って番号付けした場合、D223、D289、またはE589に近接して位置する。一部の実施形態では、近接は、約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である。一部の実施形態では、近接は、約70~80アミノ酸の距離である。
【0008】
[0008]一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列は、全長の配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。
【0009】
[0009]一部の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、リジンまたはアルギニンへの置換を含む。一部の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、中性アミノ酸、リジンまたはアルギニンへのアスパラギン酸またはグルタミン酸の置換を含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表4からの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表2からの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表3からの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、およびD189Aを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換K573EおよびE578Lを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452Kを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358Kを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V297Kを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換N85Sを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、およびD189Aを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、およびD189Aを含む。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573EおよびE578Lを含む。
【0010】
[0010]一部の実施形態では、転位効率は、突然変異型TcBusterトランスポザーゼ、およびレポーターカーゴカセットを含有するTcBusterトランスポゾンを細胞の集団に導入するステップ、ならびに細胞の集団のゲノムにおけるレポーターカーゴカセットの転位を検出するステップを含むアッセイによって測定される。
【0011】
[0011]本開示のさらに別の態様は、TcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインを含む融合トランスポザーゼを提供する。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、全長の配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有する。
【0012】
[0012]一部の実施形態では、DNA配列特異的結合ドメインは、TALEドメイン、ジンクフィンガードメイン、AAV Rep DNA結合ドメイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、DNA配列特異的結合ドメインはTALEドメインを含む。
【0013】
[0013]一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、全長の配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン;挿入ドメイン;Zn-BEDドメイン;またはそれらの組み合わせにおいて1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、表1からの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して増加した転位効率を有する。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比較して、触媒ドメイン内にまたはそれに近接して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含み、1つ以上のアミノ酸置換は、配列番号1に従って番号付けした場合、D223、D289、またはE589に近接して位置する。一部の実施形態では、近接は、約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である。一部の実施形態では、近接は、約70~80アミノ酸の距離である。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、表2からの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、表3からの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、およびD189Aを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換K573EおよびE578Lを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452Kを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358Kを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V297Kを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換N85Sを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、およびD189Aを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、およびD189Aを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573EおよびE578Lを含む。一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、全長の配列番号1に対して100%の同一性を有する。
【0014】
[0014]融合トランスポザーゼの一部の実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインは、リンカーによって分離されている。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、または少なくとも50個のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、リンカーは配列番号9を含む。
【0015】
[0015]本開示のなお別の態様は、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。
[0016]本開示のなお別の態様は、本明細書に記載される融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0016】
[0017]一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、化学的に修飾されている。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンをコードする核酸配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNAベクター中に存在する。一部の実施形態では、DNAベクターは、ミニサークルプラスミドを含む。
【0017】
[0018]本開示のなお別の態様は、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼを産生する細胞を提供する。本開示のなお別の態様は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含有する細胞を提供する。
【0018】
[0019]本開示のなお別の態様は、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼ、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞内に導入するステップを含む方法を提供する。
【0019】
[0020]本開示のなお別の態様は、本明細書に記載される融合トランスポザーゼ、および融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞内に導入するステップを含む方法を提供する。
【0020】
[0021]方法の一部の実施形態では、導入するステップは、細胞を、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと接触させるステップを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。一部の実施形態では、mRNAは化学的に修飾されている。
【0021】
[0022]方法の一部の実施形態では、導入するステップは、細胞を、トランスポゾンを含有するDNAベクターと接触させるステップを含む。一部の実施形態では、DNAベクターはミニサークルプラスミドを含む。一部の実施形態では、導入するステップは、細胞を、トランスポゾンと、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドの両方を含有するプラスミドベクターと接触させるステップを含む。一部の実施形態では、導入するステップは、細胞を、精製タンパク質としての突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼと接触させるステップを含む。
【0022】
[0023]方法の一部の実施形態では、トランスポゾンは、2つの逆位リピート間に配置されたカーゴカセットを含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートは、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートうちの左側逆位リピートは、配列番号3を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートは、配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートうちの右側逆位リピートは、配列番号4を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートは、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートうちの左側逆位リピートは、配列番号5を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートは、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートうちの右側逆位リピートは、配列番号6を含む。一部の実施形態では、カーゴカセットは、CMV、EFS、MND、EF1α、CAGCs、PGK、UBC、U6、H1、およびCumateからなる群から選択されるプロモーターを含む。一部の実施形態では、カーゴカセットはCMVプロモーターを含む。一部の実施形態では、カーゴカセットはフォワード方向に存在する。一部の実施形態では、カーゴカセットはリバース方向に存在する。一部の実施形態では、カーゴカセットは導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、導入遺伝子は、細胞受容体、免疫学的チェックポイントタンパク質、サイトカイン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される細胞受容体をコードする。一部の実施形態では、導入するステップは、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、カチオン性ポリマー、デンドリマー、リポソーム、微粒子銃、フュージーン、直接音波負荷、細胞圧搾、光学的トランスフェクション、プロトプラスト融合、インペールフェクション(impalefection)、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、またはそれらの任意の組み合わせの援助を受けて細胞をトランスフェクトするステップを含む。一部の実施形態では、導入するステップは、細胞をエレクトロポレートするステップを含む。
【0023】
[0024]方法の一部の実施形態では、細胞は、対象から単離された初代細胞である。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は疾患を有する患者である。一部の実施形態では、対象は癌または腫瘍と診断されている。一部の実施形態では、細胞は対象の血液から単離される。一部の実施形態では、細胞は初代免疫細胞を含む。一部の実施形態では、細胞は初代白血球を含む。一部の実施形態では、細胞は初代T細胞を含む。一部の実施形態では、初代T細胞は、ガンマデルタT細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、エフェクターT細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、初代免疫細胞はCD3+細胞を含む。一部の実施形態では、細胞は幹細胞を含む。一部の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、上皮幹細胞、気管支肺胞幹細胞、乳腺幹細胞、間葉系幹細胞、腸管幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経堤幹細胞、精巣細胞、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、幹細胞は人工多能性幹細胞を含む。
【0024】
[0025]本開示のなお別の態様は、(a)トランスポゾン、およびトランスポゾンを認識する、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼを細胞に導入し、それによって遺伝子修飾された細胞を生成するステップ;(b)治療を必要とする患者に遺伝子修飾された細胞を投与するステップを含む治療の方法を提供する。一部の実施形態では、遺伝子修飾された細胞は、トランスポゾンによって導入された導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、患者は、癌または腫瘍と診断されている。一部の実施形態では、投与するステップは、遺伝子修飾された細胞を患者の血管に輸注するステップを含む。
【0025】
[0026]本開示のなお別の態様は、本明細書中に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼ、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを含む、ゲノム編集システムを提供する。
【0026】
[0027]本開示のなお別の態様は、本明細書中に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを含む、ゲノム編集システムを提供する。
【0027】
[0028]システムの一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。一部の実施形態では、mRNAは化学的に修飾されている。一部の態様では、トランスポゾンはDNAベクター中に存在する。一部の実施形態では、DNAベクターはミニサークルプラスミドを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドおよびトランスポゾンは、同じプラスミド中に存在する。一部の実施形態では、トランスポゾンは、2つの逆位リピート間に配置されたカーゴカセットを含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートは、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートは、配列番号3を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートは、配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートは配列番号4を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートは、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートは配列番号5を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートは、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートは配列番号6を含む。一部の実施形態では、カーゴカセットは、CMV、EFS、MND、EF1α、CAGCs、PGK、UBC、U6、H1、およびCumateからなる群から選択されるプロモーターを含む。一部の実施形態では、カーゴカセットはCMVプロモーターを含む。一部の実施形態では、カーゴカセットは導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、導入遺伝子は、細胞受容体、免疫学的チェックポイントタンパク質、サイトカイン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される細胞受容体をコードする。一部の実施形態では、カーゴカセットはフォワード方向に存在する。一部の実施形態では、カーゴカセットはリバース方向に存在する。
【0028】
参照による組み込み
[0029]本明細書において言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかもそれぞれの個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的および個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた用語が本明細書において定義された用語と矛盾するという限度において、本明細書が支配する。
【0029】
[0030]本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】[0031]
図1は、野生型(WT)TcBusterトランスポザーゼおよび例示的TcBusterトランスポゾンでトランスフェクトされた細胞中のmCherry陽性細胞のパーセントによって測定した場合の、いくつかの例示的なTcBusterトランスポゾンベクター構築物の転位効率を示す図である。
【
図2】[0032]
図2は、例示的なTcBuster IR/DRの配列1および配列2のヌクレオチド配列比較を示す図である。
【
図3A】[0033]
図3Aは、例示的TcBusterトランスポゾンTn-8(puro-mCherryカセットを含有する;
図1に示される)およびWT TcBusterトランスポザーゼまたはV596A突然変異型トランスポザーゼ(V596A置換を含有する)によるトランスフェクションの2週間後のHEK-293T細胞の代表的な明視野画像および蛍光画像を示す図である。トランスフェクトされた細胞は、トランスフェクションの2日後に1μg/mLのピューロマイシンとともに6ウェルプレートに播種され、固定し、コロニー定量のためにトランスフェクションの2週間後にクリスタルバイオレットで染色された。
【
図3B】
図3Bは、トランスフェクションの2週間後の6ウェルプレートにおけるトランスフェクトされた細胞コロニーの代表的な写真を示す図である。
【
図3C】
図3Cは、トランスフェクションの2週間後の各トランスフェクション条件ごとのコロニーの定量化を示すグラフである。
【
図4】[0034]
図4は、AcサブファミリーにおけるTcBusterトランスポザーゼ対多数のトランスポザーゼのアミノ酸配列アラインメントを示し、アミノ酸保存領域のみが示される。
【
図5】[0035]
図5は、BusterサブファミリーにおけるTcBusterトランスポザーゼ対他の多数のトランスポザーゼメンバーのアミノ酸配列アラインメントを示す図である。特定の例示的なアミノ酸置換は、タンパク質配列の上に示され、それとともに、アラインメントの上部に示されるパーセンテージは、TcBuster配列内に置換されると考えられるアミノ酸を含有する他のBusterサブファミリーメンバーのパーセンテージ、および下部に示されるパーセンテージは、その位置に標準のTcBusterアミノ酸を含有する他のBusterサブファミリーメンバーのパーセンテージである。
【
図6】[0036]
図6は、TcBusterトランスポザーゼ突然変異体を試験するために使用された例示的な発現ベクターpcDNA-DEST40のベクターマップを示す図である。
【
図7】[0037]
図7は、例示的なトランスポザーゼ突然変異体を用いて、TcBusterトランスポゾンTn-8(
図1に示される)でトランスフェクトされたHEK-293T細胞におけるmCherry陽性細胞のパーセントによって測定した場合の、例示的なTcBusterトランスポザーゼ突然変異体の転位効率を定量化したグラフである。
【
図8】[0038]
図8は、DNA配列特異的結合ドメイン、および任意のリンカーによって連結されたTcBusterトランスポザーゼ配列を含有する1つの例示的な融合トランスポザーゼを示す図である。
【
図9】[0039]
図9は、タグを含有する例示的なトランスポザーゼを用いて、TcBusterトランスポゾンTn-8(
図1に示される)でトランスフェクトされたHEK-293T細胞におけるmCherry陽性細胞のパーセントによって測定した場合の、異なるタグを含有する例示的なTcBusterトランスポザーゼの転位効率を定量化したグラフである。
【
図10A】[0040]
図10Aは、GFP陽性細胞のパーセントによって測定した場合の、ヒトCD3+T細胞における例示的TcBuster転位システムの転位効率を定量化したグラフである。
【
図10B】
図10Bは、トランスフェクションの2日後および7日後に、トランスフェクトされたT細胞の生存率をフローサイトメトリーによって定量化したグラフである。データは、パルス制御に関する。
【
図11】[0041]
図11は、注釈された特定のアミノ酸を有する野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
【
図12】[0042]
図12は、アミノ酸置換D189A/V377T/E469Kを含有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列(配列番号78)を示す図である。
【
図13】[0043]
図13は、アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/I452Kを含有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列(配列番号79)を示す図である。
【
図14】[0044]
図14は、アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/N85Sを含有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列(配列番号80)を示す図である。
【
図15】[0045]
図15は、アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/A358Kを含有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列(配列番号81)を示す図である。
【
図16】[0046]
図16は、アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/K573E/E578Lを含む突然変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列(配列番号13)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0047]概要
[0048]DNAトランスポゾンは、非複製の「カットアンドペースト」機構を介して転位することができる。これは、その標的を切断し、結果として、そのドナー鋳型からDNAトランスポゾンを放出することができる触媒酵素、すなわちトランスポザーゼによる2つの末端逆位リピートの認識を必要とする。切除すると、続いて、DNAトランスポゾンは、同じトランスポザーゼによって切断されるアクセプターDNAに組み込まれ得る。それらの天然の立体配置のいくつかにおいて、DNAトランスポゾンは、2つの逆位リピートに隣接し、転位を触媒するトランスポザーゼをコードする遺伝子を含有し得る。
【0032】
[0049]DNAトランスポゾンを用いたゲノム編集用途について、トランスポザーゼが逆位リピートに隣接する目的の遺伝子を含有するトランスポゾンDNAから物理的に分離されている2つの異なるプラスミドに基づく二元システムを開発するためのトランスポゾンを設計することが望ましい。トランスポゾンおよびトランスポザーゼプラスミドの標的細胞への同時送達は、従来のカットアンドペースト機構による転位を可能にする。
【0033】
[0050]TcBusterは、hATファミリーのDNAトランスポゾンのメンバーである。ファミリーの他のメンバーには、Sleeping BeautyおよびPiggBacが含まれる。本明細書では、hATファミリートランスポゾン成分を用いて、ヒト造血系細胞および免疫系細胞への遺伝子導入を増大させるための相乗的アプローチに関する様々な装置、システムおよび方法が検討されている。本開示は、改良されたhATトランスポザーゼ、トランスポゾンベクター配列、トランスポザーゼ送達方法、およびトランスポゾン送達方法に関する。一実施態様では、本研究は、高活性hATトランスポザーゼを作製するための特定の普遍的な部位を同定した。別の実施において、ゲノム空間を節約する最小サイズのhATトランスポゾンベクター逆位末端リピート(ITR)を作製するための方法が記載される。別の実施において、化学的に修飾され、インビトロ転写されたmRNAとしてhATファミリートランスポザーゼを送達するための改良された方法が記載される。別の実施において、DNAの「ミニチュア」サークルとしてhATファミリートランスポゾンベクターを送達するための方法が記載され、実質的に全ての原核生物配列が組換え法によって除去されている。別の実施において、hATトランスポザーゼに融合した転写アクチベーター様(TAL)ドメインを用いて、DNA配列特異的結合ドメインを融合する方法が記載される。これらの改善は、個々においてまたは組み合わせて、問題となっている細胞型への予想外に高レベルの遺伝子導入、および目的の配列へのトランスポゾンベクターの送達の改善をもたらすことができる。
【0034】
[0051]突然変異型TcBusterトランスポザーゼ
[0052]本開示の一態様は、突然変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。
【0035】
[0053]突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの全長配列(配列番号1)に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの全長配列(配列番号1)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。いくつかの場合、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの全長配列(配列番号1)に対して少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0036】
[0054]突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの全長配列(配列番号1)と異なる少なくとも1つのアミノ酸を有するアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの全長配列(配列番号1)とは異なる、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、またはそれを超えるアミノ酸を有するアミノ酸配列を含み得る。いくつかの場合、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの全長配列(配列番号1)とは異なる、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも200個、または少なくとも300個のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含み得る。いくつかの場合、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの全長配列(配列番号1)とは異なる、最大で3個、最大で6個、最大で12個、最大で25個、最大で35個、最大で45個、最大で55個、最大で65個、最大で75個、最大で85個、最大で95個、最大で150個、最大で250個、または最大で350個のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0037】
[0055]
図4に示されるように、典型的には、野生型TcBusterトランスポザーゼは、N末端からC末端に、ZnF-BEDドメイン(アミノ酸76~98)、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン(アミノ酸112~213)、第1の触媒ドメイン(アミノ酸213~312)、挿入ドメイン(アミノ酸312~543)、および第2の触媒ドメイン(アミノ酸583~620)、ならびにこれらの注釈されたドメイン間において少なくとも4つのドメイン間領域を含むものと見なすことができる。別段の指定がない限り、本明細書で使用されるアミノ酸の参照符号は全て配列番号1によるものである。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、これらのドメインのうちの任意の1つ、またはそれらの任意の組み合わせにおいて1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。いくつかの場合、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、ZnF-BEDドメイン、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン、第一の触媒ドメイン、挿入ドメイン、またはそれらの組み合わせにおいて1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、2つの触媒ドメインのうちの少なくとも1つにおいて、1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。
【0038】
[0056]例示的な突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表1からの1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。時として、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表1からのアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表1からの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、またはそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
[0057]例示的な突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表2からの1つ以上のアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含む。時として、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表2からの少なくとも1つのアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表2からの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、もしくはそれを超えるアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含み得る。
【0043】
【0044】
【0045】
[0058]例示的な突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表3からの1つ以上のアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含む。時として、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表3からの少なくとも1つのアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表3からの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、もしくはそれを超えるアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含み得る。
【0046】
【0047】
[0059]高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼ
[0060]本開示の別の態様は、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼを提供することである。本明細書で使用される「高活性」突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して、転位効率が増加した任意の突然変異型TcBusterトランスポザーゼを指し得る。
【0048】
[0061]一部の実施形態では、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して、特定の状況下で増加した転位効率を有し得る。例えば、特定のタイプの逆位リピート配列を有するトランスポゾンの転位を触媒するために使用される場合、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼよりも良好な転位効率を有し得る。他のタイプの逆位リピート配列を有するいくつかの他のトランスポゾンでは、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して、増加した転位効率を有さない場合がある。いくつかの他の非限定的な例では、特定のトランスフェクション条件下で、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して、増加した転位効率を有し得る。限定されないが、野生型TcBusterトランスポザーゼと比較した場合、温度が通常の細胞培養温度よりも高いと、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、より良好な転位効率を有し得る;高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、比較的酸性または塩基性の水性媒体中でより良好な転位効率を有し得る;特定のタイプのトランスフェクション技術(例えば、エレクトロポレーション)が行われた場合、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、より良好な転位効率を有し得る。
【0049】
[0062]転位効率は、宿主細胞の集団に導入されたトランスポゾンおよびトランスポザーゼの量によって標準化された、宿主細胞の集団において生じる成功した転位事象のパーセントによって測定することができる。多くの場合、2つ以上のトランスポザーゼの転位効率を比較する場合、同じトランスポゾン構築物が、同じまたは類似のトランスフェクション条件下での宿主細胞のトランスフェクションのために2つ以上のトランスポザーゼの各々と対にされる。宿主細胞における転位事象の量は、種々のアプローチによって調べることができる。例えば、トランスポゾン構築物は、逆位リピート間に配置されるレポーター遺伝子を含有するように設計され得、レポーター遺伝子に対して陽性のトランスフェクト細胞は、成功した転位事象が起こる細胞として数えられ得、これは、転位事象の量の推定を与えることができる。別の非限定的な例には、トランスポゾンのカセットカーゴの挿入を調べるための宿主細胞ゲノムの配列決定が含まれる。一部の実施形態では、2つ以上の異なるトランスポゾンの転位効率を比較する場合、同じまたは類似のトランスフェクション条件下で、宿主細胞のトランスフェクションのために、同じトランスポザーゼを異なるトランスポゾンの各々と対にすることができる。類似したアプローチを転位効率の測定値に利用することができる。転位効率の比較のために、当業者に公知である他の方法もまた実施することができる。
【0050】
[0063]高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼを得る方法もまた本明細書において提供される。
[0064]1つの例示的な方法は、アミノ酸配列の正味電荷を増加させるためにTcBusterトランスポザーゼのアミノ酸を系統的に突然変異させるステップを含み得る。時として、本方法は、中性pHで負に帯電しているアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)をアラニン残基に突然変異させるために系統的なアラニンスキャニングを行うステップを含み得る。方法は、中性pHで正に帯電しているリジン(lysing)(K)またはアルギニン(R)残基に対して系統的な突然変異を行うステップを含み得る。
【0051】
[0065]特定の理論に束縛されることを望むものではないが、中性pHでのアミノ酸配列の正味電荷の増加は、TcBusterトランスポザーゼの転位効率を増加させ得る。特に、正味電荷がトランスポザーゼの触媒ドメインに近接して増加した場合、転位効率は増加することが予想される。正に帯電したアミノ酸は、DNA標的との接触点を形成し、触媒ドメインがDNA標的に作用することを可能にすると考えられることができる。また、これらの正に帯電したアミノ酸の喪失は、トランスポザーゼにおける切り出し活性または組み込み活性のいずれかを減少させ得ると考えられ得る。
【0052】
[0066]
図11は、WT TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示し、DNAとの接触点となり得るアミノ酸を強調している。
図11において、大きな太字は、触媒トライアドアミノ酸を示す;四角で囲った文字は、正に帯電したアミノ酸に置換した場合に転位を増加させるアミノ酸を示す;イタリック体および小文字のレタリングは、異なるアミノ酸に置換した場合に転位を減少させる正に帯電したアミノ酸を示す;太字のイタリック体および下線付きのアミノ酸は、正に帯電したアミノ酸に置換した場合に転位が増加し、負に帯電したアミノ酸に置換した場合に転位が減少するアミノ酸を示す;下線を引いたレタリングは、Busterサブファミリーへのタンパク質配列アラインメントに基づいて、正に帯電したアミノ酸であり得るアミノ酸を示す。
【0053】
[0067]突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。時として、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む突然変異型TcBusterトランスポザーゼは高活性であり得る。時として、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、限定されないが、リジン(K)またはアルギニン(R)などの正に帯電したアミノ酸への1つ以上の置換を含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、限定されないが、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)などの負に帯電したアミノ酸の、中性アミノ酸または正に帯電したアミノ酸による1つ以上の置換を含み得る。
【0054】
[0068]1つの非限定的な例としては、配列番号1と比較して、触媒ドメイン内にまたはそれに近接して中性pHで、正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む突然変異型TcBusterトランスポザーゼが挙げられる。触媒ドメインは、第1触媒ドメインまたは第2触媒ドメインであり得る。触媒ドメインはまた、トランスポザーゼの両方の触媒ドメインを含み得る。
【0055】
[0069]本開示の例示的な方法は、DNAに非常に近接するかまたはDNAと直接接触することが予測されるアミノ酸を突然変異させるステップを含み得る。これらのアミノ酸は、hATファミリーの他のメンバー(単数または複数)(例えば、Busterおよび/またはAcサブファミリーの他のメンバー)に保存されているものとして同定された置換アミノ酸であり得る。DNAに非常に近接するかまたはDNAと直接接触することが予測されるアミノ酸は、例えば、結晶構造、予測構造、突然変異分析、機能分析、hATファミリーの他のメンバーとのアラインメント、または他の適切な方法を参照することによって同定することができる。
【0056】
[0070]特定の理論に束縛されることを望むものではないが、hATトランスポザーゼファミリーの他のメンバーのように、TcBusterトランスポザーゼは、DDEモチーフを有し、これはトランスポゾンの移動を触媒する活性部位であり得る。D223、D289、およびE589は、酸性残基のトライアドである活性部位を作り上げると考えられる。DDEモチーフは、二価金属イオンを配位し得、触媒反応において重要であり得る。一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含み得、1つ以上のアミノ酸は、配列番号1に従って番号付けした場合、D223、D289、またはE589に近接して位置する。
【0057】
[0071]特定の実施形態では、本明細書に提供される突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、触媒トライアド、すなわちD223、D289、またはE589のいずれの破壊も含まない。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、D223、D289、またはE589のいずれものアミノ酸置換も含まない可能性がある。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、D223、D289、またはE589でアミノ酸置換を含み得るが、このような置換は、触媒トライアドによってもたらされる触媒活性を乱さない。
【0058】
[0072]いくつかの場合、「近接」という用語は、トランスポザーゼの一次構造における直線距離の測定値を指し得る。例えば、野生型TcBusterトランスポザーゼの一次構造におけるD223とD289の間の距離は、66アミノ酸である。特定の実施形態では、近接とは、約70~80アミノ酸の距離を指し得る。多くの場合、近接とは、約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離を指し得る。
【0059】
[0073]いくつかの場合、「近接」という用語は、トランスポザーゼの二次構造または三次構造における空間的関係の測定、すなわち、トランスポザーゼがその三次元立体配置に折り畳まれるときの測定を指し得る。タンパク質の二次構造は、タンパク質の局所セグメントの三次元形態を指し得る。一般的な二次構造エレメントとしては、アルファヘリックス、ベータシート、ベータターンおよびオメガループが挙げられる。タンパク質がその三次元の三次構造に折り畳まれる前に、二次構造エレメントが中間体として形成し得る。タンパク質の三次構造は、タンパク質の三次元形状を指し得る。タンパク質の三次構造は、生理学的条件または他の条件下で、動的な立体配置変化を示し得る。三次構造は、1つ以上のタンパク質二次構造、タンパク質ドメインを有する単一のポリペプチド鎖「骨格」を有する。アミノ酸側鎖は、多数の方法で相互作用し、結合し得る。特定のタンパク質内の側鎖の相互作用および結合がその三次構造を決定する。多くの実施において、近接は、約1Å、約2Å、約5Å、約8Å、約10Å、約15Å、約20Å、約25Å、約30Å、約35Å、約40Å、約50Å、約60Å、約70Å、約80Å、約90Å、または約100Åの距離を指し得る。
【0060】
[0074]中性pHは、約7のpH値であり得る。時として、中性pHは、6.9~7.1の間、6.8~7.2の間、6.7~7.3の間、6.6~7.4の間、6.5~7.5の間、6.4~7.6の間、6.3~7.7の間、6.2~7.8の間、6.1~7.9の間、6.0~8.0の間、5~8の間、またはそれから派生する任意の範囲内にあるpH値であり得る。
【0061】
[0075]配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む非限定的であり、例示的な突然変異型TcBasterトランスポザーゼには、表4からのアミノ酸置換の少なくとも1つの組み合わせを含むTcBusterトランスポザーゼが含まれる。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表4からの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、またはそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
【0062】
[0076]一部の実施形態では、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比較して、非中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。いくつかの場合、正味電荷は、非中性pHで触媒ドメイン内にまたはそれに近接して増加する。多くの場合、正味電荷は、非中性pHで、D223、D289、またはE589に近接して増加する。非中性pHは、7より低い、6.5より低い、6より低い、5.5より低い、5より低い、4.5より低い、4より低い、3.5より低い、3より低い、2.5より低い、2より低い、1.5より低い、または1より低いpH値であり得る。非中性pHはまた、7より高い、7.5より高い、8より高い、8.5より高い、9より高い、9.5より高い、または10より高いpH値であり得る。
【0063】
【0064】
[0077]例示的な一実施形態では、方法は、DNA結合およびオリゴマー化ドメインのアミノ酸を系統的に突然変異させるステップを含み得る。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、DNA結合およびオリゴマー化ドメインにおける突然変異は、DNA標的に対する結合親和性を増加させ、トランスポザーゼのオリゴマー化活性を促進し得、これは結果として転位効率を促進し得る。より具体的には、本方法は、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン内にまたはそれに近接して1つずつ系統的にアミノ酸を突然変異させるステップを含み得る(例えば、アミノ酸112~213)。この方法はまた、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン内にまたはそれに近接して1を超えるアミノ酸を突然変異させるステップを含み得る。本方法はまた、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン内にまたはそれに近接して1つ以上のアミノ酸を、DNA結合およびオリゴマー化ドメインの外側の1つ以上のアミノ酸と一緒に突然変異させるステップを含み得る。
【0065】
[0078]一部の実施形態では、本方法は、TcBusterと他のhATファミリートランスポザーゼ(Ac、Hermes、Hobo、Tag2、Tam3、Hermes、RestlessおよびTol2)またはBusterサブファミリー(例えば、AeBuster1、AeBuster2、AeBuster3、BtBuster1、BtBuster2、CfBuster1、およびCfBuster2)の他のメンバーとの複数の配列アラインメントに基づいて、選択的なアミノ酸残基の合理的な置換を行うステップを含み得る。特定の理論に束縛されることなく、他のhATファミリートランスポザーゼ、特に活性なものの中での特定のアミノ酸の保存は、トランスポザーゼの触媒活性にとってそれらの重要性を示し得る。したがって、野生型TcBuster配列(配列番号1)の保存されていないアミノ酸を他のhATファミリーの保存されているアミノ酸と置換することにより、高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼを得ることができる。本方法は、TcBusterならびに他のhATファミリートランスポザーゼの配列を得るステップ;TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を他のhATファミリートランスポザーゼの中で異なる保存された対応物と整列させ、同定するステップ;部位特異的変異誘発を実施して、突然変異(単数または複数)を有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼを産生するステップを含み得る。
【0066】
[0079]高活性突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、Busterサブファミリーの他のメンバーまたはhATファミリーの他のメンバーへのアラインメントに基づいて1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。多くの場合、1つ以上のアミノ酸置換は、野生型TcBuster配列(配列番号1)中の保存されていないアミノ酸の保存されているアミノ酸での置換であり得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼの非限定的な例としては、表5からのアミノ酸置換の少なくとも1つを含むTcBusterトランスポザーゼが挙げられる。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、表5から少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、またはそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
【0067】
[0080]別の例示的な方法は、酸性アミノ酸を塩基性アミノ酸に系統的に突然変異させるステップ、および高活性突然変異型トランスポザーゼを同定するステップを含み得る。
[0081]いくつかの場合、突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換V377T、E469K、およびD189Aを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換K573EおよびE578Lを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換I452Kを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換A358Kを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換V297Kを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換N85Sを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換N85S、V377T、E469K、およびD189Aを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、およびD189Aを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、およびD189Aを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573EおよびE578Lを含み得る。
【0068】
【0069】
[0082]融合トランスポザーゼ
[0083]本発明の別の態様は、融合トランスポザーゼを提供する。融合トランスポザーゼは、TcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインを含み得る。
【0070】
[0084]融合トランスポザーゼのTcBusterトランスポザーゼ配列は、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼのいずれかのアミノ酸配列を含み得る。融合トランスポザーゼのTcBusterトランスポザーゼ配列はまた、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を含み得る。
【0071】
[0085]本明細書に記載されるDNA配列特異的結合ドメインは、特異的配列モチーフを含有する配列領域(「標的配列」)でDNA分子に結合するように適合されているタンパク質ドメインを指し得る。例えば、例示的なDNA配列特異的結合ドメインは、配列モチーフTATAに選択的に結合し得るが、一方、別の例示的なDNA配列特異的結合ドメインは、異なる配列モチーフATGCNTAGAT(Nは、A、T、G、およびCのいずれかを示す)に選択的に結合し得る。
【0072】
[0086]本明細書に提供される融合トランスポザーゼは、トランスポゾンの配列特異的挿入を指向し得る。例えば、DNA配列特異的結合ドメインは、結合ドメインの結合特異性に基づいて、融合トランスポザーゼを標的配列に結合するように誘導し得る。特定の配列領域に結合または制限されると、融合トランスポザーゼとトランスポゾンの間の相互作用が空間的に限定され、それによって標的化配列に近接した配列領域への触媒転位が限定される。DNA結合ドメインのサイズ、三次元立体配置、および配列結合親和性、ならびにDNA結合ドメインとTcBusterトランスポザーゼ配列の間の空間的関係、および2つのドメイン間の接続の可撓性に応じて、標的配列への実際の転位部位の距離は異なり得る。融合トランスポザーゼ立体配置の適切な設計は、望ましい標的ゲノム領域への転位を指向することができる。
【0073】
[0087]転位のための標的ゲノム領域は、適用目的に応じて、任意の特定のゲノム領域であり得る。例えば、時として、細胞の特定の重要な内在性遺伝子の発現レベルの望ましくない、またはさらには有害な変化を引き起こし得る、転位のための転写開始部位を回避することが望ましい。融合トランスポザーゼは、宿主ゲノムの安全な避難場所への転位を標的とすることができるDNA配列特異的結合ドメインを含有し得る。安全な避難場所の非限定的な例には、HPRT、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2、ETC)、CCR5、またはRosa26が含まれ得る。安全な避難場所は、一般的に、その使用が細胞のゲノムの完全性、または細胞の健康および機能にほとんどないかまたは全く破壊的な影響を及ぼさない導入遺伝子挿入のための部位を指し得る。
【0074】
[0088]DNA配列特異的結合ドメインは、配列特異性を有する任意のDNA結合タンパク質に由来し得るか、またはその変異体であり得る。多くの場合、DNA配列特異的結合ドメインは、天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。DNA配列特異的結合ドメインは、天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み得る。天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質の非限定的な例としては、様々な起源由来の転写因子、特異的配列ヌクレアーゼ、およびウイルス複製タンパク質が挙げられる。天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質はまた、様々な起源からの特異的結合能力を有する他の任意のタンパク質であり得る。DNA結合タンパク質の選択および予測は、限定されないが、DP-Bind(http://lcg.rit.albany.edu/dp-bind/)またはDNABIND(http://dnabind.szialab.org/)のようなオンラインで入手可能な計算予測データベースを使用することを含む様々なアプローチによって行うことができる。
【0075】
[0089]「転写因子」という用語は、特定のDNA配列に結合することによって、DNAからメッセンジャーDNAへの遺伝情報の転写速度を調節するタンパク質を指し得る。本明細書に記載される融合トランスポザーゼにおいて使用され得る転写因子は、標的DNA分子に結合した場合に配列特異性を付与する限り、原核生物転写因子または真核生物転写因子に基づき得る。DBD(http://www.transcriptionfactor.org)などの転写因子予測データベースは、本明細書の開示の適用のための適切な転写因子の選択に使用され得る。
【0076】
[0090]本明細書で使用されるDNA配列特異的結合ドメインは、天然に存在する転写因子由来の1つ以上のDNA結合ドメインを含み得る。転写因子のDNA結合ドメインの非限定的な例には、塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス、塩基性ロイシンジッパー(bZIP)、二部応答調節因子のC末端エフェクタードメイン、AP2/ERF/GCCボックス、ヘリックス-ターン-ヘリックス、ホメオドメインタンパク質、ラムダリプレッサー様、srf様(血清応答因子)ペアードボックス、ウイングドヘリックス、ジンクフィンガー、マルチドメインCys2His2(C2H2)ジンクフィンガー、Zn2/Cys6、またはZn2/Cys8核内受容体ジンクフィンガーのようなファミリーに属するDNA結合ドメインが含まれる。
【0077】
[0091]DNA配列特異的結合ドメインは、特定のDNA配列に結合する人工的に操作されたアミノ酸配列であり得る。このような人工的に設計されたアミノ酸配列の非限定的な例としては、エフェクターヌクレアーゼ(TALE)DNA結合ドメイン、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、アデノ随伴ウイルス(AAV)Repタンパク質、および本明細書に記載される任意の他の適切なDNA結合タンパク質のような転写アクチベーターのようなフレームワークに基づいて作製される配列が挙げられる。
【0078】
[0092]天然TALEは、植物種の感染を援助するためにキサントモナス(Xanthomonas)細菌によって分泌されるタンパク質である。天然TALEは、特定のDNA配列に結合して宿主遺伝子の発現を活性化することによって感染を補助することができる。一般的に、TALEタンパク質は、DNA標的特異性を決定し、デノボで迅速に合成することができる中心リピートドメインからなる。TALEは、残基の反復配列を含有するモジュラーDNA結合ドメイン(DBD)を有する。一部のTALEでは、各々の反復領域は34アミノ酸を含有する。本明細書で使用される「TALEドメイン」という用語は、TALEのモジュラー式DBDを指し得る。各々の反復領域の12位および13位にある一対の残基は、ヌクレオチド特異性を決定することができ、これは反復可変二残基(RVD)と呼ばれる。半反復と呼ばれる最後の反復領域は、典型的には、20アミノ酸に切断されている。これらの反復領域を組み合わせることにより、配列特異的合成TALEを合成することが可能になる。C末端は、通常、TALEを核に指向する核局在化シグナル(NLS)、ならびに酸性活性化ドメイン(AD)などの転写を調節する機能ドメインを含有する。内因性NLSは、生物特異的局在化シグナルによって置換され得る。例えば、シミアンウイルス40ラージT抗原由来のNLSを哺乳動物細胞に使用することができる。RVDのHD、NG、NI、およびNNは、それぞれC、T、A、およびG/Aを標的とする。ヌクレオチドについての特定の状況下でのRVDおよびそれらの結合優先性のリストを表6に見出すことができる。追加のTALE RVDはまた、カスタム縮重TALE-DNA相互作用に使用することができる。例えば、NAは、DNAの4塩基全てに対して高い親和性を有する。さらに、N*(*は、13番目の残基に欠失を有するRVDである)は、メチル化シトシンを含む全ての文字のDNAを収容することができる。また、S*は、任意のDNAヌクレオチドに結合する能力を有し得る。
【0079】
[0093]特定のDNA配列を標的とするようにTALEを設計するための多数のオンラインツール、例えば、TALE-NT(https://tale-nt.cac.cornell.edu/)、Mojo Hand(http://www.talendesign.org/)が利用可能である。市販のキットはまた、タンパク質のN末端とC末端の間のTALE反復領域のカスタムアセンブリーの作製を補助することができる。これらの方法を使用してカスタムDBDをアセンブルすることができ、次に、機能ドメイン、例えば、TcBusterトランスポザーゼ配列を含有する発現ベクターにクローニングする。
【0080】
【0081】
[0094]TALEは、例えば、ゴールデンゲート反応における消化およびライゲーションステップをII型制限酵素と組み合わせることによって、実験室でデノボ合成することができる。あるいは、TALEは、限定されないが、ライゲーション非依存性クローニング(LIC)、高速ライゲーションベースの自動可能な固相ハイスループット(FLASH)アセンブリー、および反復キャップドアセンブリー(ICA)を含む、多数の異なるアプローチによってアセンブルされ得る。
【0082】
[0095]ジンクフィンガー(ZF)は、約3ヌクレオチドの限られた組み合わせに結合することができる約30アミノ酸である。C2H2 ZFドメインは、最も一般的なタイプのZFであり得、真核細胞において最も豊富に発現されるタンパク質の1つであるようである。ZFは、それらの構造において亜鉛分子と配位結合した、小さく機能的であり、独立して折り畳まれたドメインである。各々のZFのアミノ酸は、特定のヌクレオチドに対して親和性を有し、各々のフィンガーにDNAの3~4ヌクレオチドを選択的に認識させることができる。複数のZFをタンデムアレイに配置して、DNA上の一組のヌクレオチドを認識することができる。異なるジンクフィンガーの組み合わせを使用することによって、ゲノム内の固有のDNA配列を標的とすることができる。
様々な長さの異なるZFPを生成することができ、可能性のある64の三重項サブサイトの中からほとんどいずれもの所望のDNA配列の認識を可能にし得る。
【0083】
[0096]本開示に関連して使用されるジンクフィンガーは、Barbasらによって開発された一組のモジュラーアセンブリーフィンガードメイン、およびさらにはToolGenによって開発された別の一組のモジュラーアセンブリーフィンガードメインなどの確立されたモジュラーアセンブリーフィンガーを使用して作製することができる。両方のドメインセットは、3bpのGNN、ほとんどのANN、多くのCNN、およびいくつかのTNN三重項(Nは4つのヌクレオチドのいずれかであり得る)の全てをカバーする。両者は異なるフィンガーセットを有し、必要に応じて、異なるZFモジュールを検索してコーディングすることが可能である。タンパク質中のフィンガーの位置および隣接フィンガーの配列を伴うモジュラーアセンブリーの文脈依存的な影響を最小限にするために、コンビナトリアル選択に基づくオリゴマー化プールエンジニアリング(OPEN)戦略もまた採用され得る。OPEN ZFアレイは、Zinc Finger Consortium Databaseから公衆に入手可能である。
【0084】
[0097]AAV Rep DNA結合ドメインは、本開示の主題に関連して使用することができる他のDNA配列特異的結合ドメインである。ウイルスのシス作用逆位末端リピート(ITR)、およびトランス作用ウイルスRepタンパク質(Rep)は、ヘルパーウイルスの非存在下で宿主ゲノムのAAVS1部位へのAAVの優先的な組み込みを媒介する因子であると考えられている。AAV Repタンパク質は、AAVS1部位の特定のDNA配列に結合することができる。したがって、部位特異的DNA結合ドメインは、本明細書に記載されるTcBusterトランスポザーゼドメインと一緒に融合することができる。
【0085】
[0098]本明細書に提供される融合トランスポザーゼは、TcBusterトランスポザーゼ配列およびタグ配列を含み得る。本明細書で提供されるタグ配列は、融合タンパク質の検出タグとして使用され得る任意のタンパク質配列を指し得、例えば、限定されないが、レポータータンパク質、および抗体によって認識され得る親和性タグが挙げられる。レポータータンパク質には、限定されないが、蛍光タンパク質(例えば、GFP、RFP、mCherry、YFP)、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)、アルカリホスファターゼ(AP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)が含まれる。親和性タグの非限定的な例としては、ポリヒスチジン(Hisタグ)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、インテイン-キチン結合ドメイン(インテイン-CBD)、ストレプトアビジン/ビオチンベースのタグ、FLAGのようなエピトープタグ、HA、c-myc、T7、Glu-Gluおよび他多数が含まれる。
【0086】
[0099]本明細書で提供される融合トランスポザーゼは、TcBusterトランスポザーゼ配列、およびいずれの中間配列も伴わずに一緒に融合されるDNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列(例えば、「背中合わせ」)を含み得る。いくつかの場合、本明細書に提供される融合トランスポザーゼは、リンカー配列によって連結された、TcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列を含み得る。
図8は、リンカーによって連結された、DNA配列特異的結合ドメインおよびTcBusterトランスポザーゼ配列を含む例示的な融合トランスポザーゼの概略図である。例示的な融合トランスポザーゼにおいて、リンカーは、主に、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドの間のスペーサーとして役立ち得る。リンカーは、単一のポリペプチド中の複数ドメインを分離するための短いアミノ酸配列であり得る。リンカー配列は、天然のマルチドメインタンパク質に生じるリンカーを含み得る。いくつかの例において、リンカー配列は、人工的に作製されたリンカーを含み得る。リンカー配列の選択は、融合トランスポザーゼの用途に基づく場合がある。リンカー配列は、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるアミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、リンカー配列は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、または少なくとも50個のアミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、リンカー配列は、最大で4個、最大で5個、最大で6個、最大で7個、最大で8個、最大で9個、最大で10個、最大で11個、最大で12個、最大で15個、最大で20個、最大で30個、最大で40個、最大で50個、または最大で100個のアミノ酸を含み得る。特定の場合、限定されないが、(GGGGS)
n(n=2~8)、(Gly)
8、GSAGSAAGSGEF、(GGGGS)
4のようなGlyおよびSer残基のストレッチ(「GS」リンカー)などの可撓性リンカー配列を使用することが望ましい場合がある。時として、限定されないが、(EAAAK)
n(n=2~7)、(XP)n(Xは任意のアミノ酸を示す)のようなPro-rich配列などの剛性リンカー配列を使用することが望ましい場合がある。
【0087】
[00100]本明細書に提供される例示的な融合トランスポザーゼにおいて、TcBusterトランスポザーゼ配列は、DNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列のN末端に融合され得る。あるいは、TcBusterトランスポザーゼ配列は、DNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列のC末端に融合することができる。一部の実施形態では、融合トランスポザーゼの用途に応じて、TcBusterトランスポザーゼとDNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列の間に第3のドメイン配列またはそれを超える他の配列が存在し得る。
【0088】
[00101]TcBusterトランスポゾン
[00102]本開示の別の態様は、2つの逆位リピート間に配置されたカセットカーゴを含むTcBusterトランスポゾンを提供する。TcBusterトランスポゾンは、本明細書に記載されるTcBusterトランスポザーゼによって認識され得、例えば、TcBusterトランスポザーゼは、TcBusterトランスポゾンを認識し、DNA配列へのTcBusterトランスポゾンの転位を触媒することができる。
【0089】
[00103]本明細書で互換的に使用される「逆位リピート」、「末端逆位リピート」、「逆位末端リピート」という用語は、天然のトランスポゾンのトランスポザーゼ遺伝子または人工的に操作されたトランスポゾンのカセットカーゴに隣接する短い配列リピートを指し得る。2つの逆位リピートは、一般的に、対応するトランスポザーゼの存在下でのトランスポゾンの動員に必要とされる。本明細書に記載される逆位リピートは、1つ以上の直接リピート(DR)配列を含有し得る。これらの配列は、通常、エレメントの末端逆位リピート(TIR)に埋め込まれている。本明細書で使用される「カーゴカセット」という用語は、TcBusterトランスポザーゼ遺伝子を含有する逆位リピート間の天然ヌクレオチド配列以外のヌクレオチド配列を指し得る。カーゴカセットは人工的に設計することができる。
【0090】
[00104]本明細書に記載されるトランスポゾンは、IR/DR配列が隣接するカーゴカセットを含有し得る。一部の実施形態では、少なくとも1つのリピートは、少なくとも1つの直接リピートを含有する。
図1および
図2に示されるように、トランスポゾンは、IRDR-L-Seq1(配列番号3)およびIRDR-R-Seq1(配列番号4)に隣接するカーゴカセットを含有し得る。多くの場合、左側逆位リピートは、IRDR-L-Seq1(配列番号3)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。時として、右側逆位リピートは、IRDR-R-Seq1(配列番号4)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。他の場合、右側逆位リピートは、IRDR-L-Seq1(配列番号3)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。時として、左側逆位リピートは、IRDR-R-Seq1(配列番号4)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。本明細書で使用される「左側」および「右側」という用語は、それぞれ、二本鎖トランスポゾンのセンス鎖上のカーゴカセットの5’側および3’側を指し得る。また、トランスポゾンがIRDR-L-Seq2(配列番号5)およびIRDR-R-Seq2(配列番号6)に隣接するカーゴカセットを含有し得ることも可能である。多くの場合、左側逆位リピートは、IRDR-L-Seq2(配列番号5)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。時として、右側逆位リピートは、IRDR-R-Seq2(配列番号6)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。他の場合、右側逆位リピートは、IRDR-L-Seq2(配列番号5)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。時として、左側逆位リピートは、IRDR-R-Seq2(配列番号6)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含み得る。トランスポゾンは、
図2に示したものとは異なるヌクレオチド配列を有する2つの逆位リピート、または当業者に公知である様々な配列の組み合わせが隣接するカーゴカセットを含有し得る。本明細書に記載されるトランスポゾンの2つの逆位リピートのうちの少なくとも1つは、配列番号3~6のいずれか1つに対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含有し得る。本明細書に記載されるトランスポゾンの少なくとも1つの逆位リピートは、配列番号3または4に対して少なくとも80%同一である配列を含有し得る。本明細書に記載されるトランスポゾンの少なくとも1つの逆位リピートは、配列番号5または6に対して少なくとも80%同一である配列を含有し得る。逆位リピートの選択は、予想される転位効率、修飾される細胞のタイプ、使用するトランスポザーゼ、および他の多くの要因に応じて異なり得る。
【0091】
[00105]多くの実施において、ゲノム空間を節約する最小サイズのトランスポゾンベクター逆位末端リピートが使用され得る。hATファミリートランスポゾンのITRは、右手と左手のITRの違いによって大きく異なる。多くの場合、ちょうど100~200ヌクレオチドからなるより小さなITRは、hATトランスポゾンベクターにおけるより長い天然のITRと同程度に活性である。これらの配列は、hATファミリーの転位を媒介しながら一貫して減少し得る。これらのより短いITRは、hATトランスポゾンベクター内のゲノム空間を節約することができる。
【0092】
[00106]本明細書で提供されるトランスポゾンの逆位リピートは、約50~2000ヌクレオチド、約50~1000ヌクレオチド、約50~800ヌクレオチド、約50~600ヌクレオチド、約50~500ヌクレオチド、約50~400ヌクレオチド、約50~350ヌクレオチド、約50~300ヌクレオチド、約50~250ヌクレオチド、約50~200ヌクレオチド、約50~180ヌクレオチド、約50~160ヌクレオチド、約50~140ヌクレオチド、約50~120ヌクレオチド、約50~110ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、約50~90ヌクレオチド、約50~80ヌクレオチド、約50~70ヌクレオチド、約50~60ヌクレオチド、約75~750ヌクレオチド、約75~450ヌクレオチド、約75~325ヌクレオチド、約75~250ヌクレオチド、約75~150ヌクレオチド、約75~95ヌクレオチド、約100~500ヌクレオチド、約100~400ヌクレオチド、約100~350ヌクレオチド、約100~300ヌクレオチド、約100~250ヌクレオチド、100~220ヌクレオチド、約100~200ヌクレオチド、またはそれから派生する任意の範囲内であり得る。
【0093】
[00107]いくつかの場合、カーゴカセットは、プロモーター、導入遺伝子、またはそれらの組み合わせを含み得る。プロモーターと導入遺伝子の両方を含むカーゴカセットにおいては、導入遺伝子の発現は、プロモーターによって指示され得る。プロモーターは、当業者に利用可能な任意のタイプのプロモーターであり得る。TcBusterトランスポゾンにおいて使用され得るプロモーターの非限定的な例としては、EFS、CMV、MND、EF1α、CAGGs、PGK、UBC、U6、H1、およびCumateが挙げられる。TcBuster転位に使用されるプロモーターの選択は、限定されないが、プロモーターの発現効率、遺伝子修飾される細胞のタイプ、および所望の導入遺伝子発現レベルなどの多数の要因に依存する。
【0094】
[00108]TcBusterトランスポゾン中の導入遺伝子は、目的の任意の遺伝子であり得、当業者に利用可能であり得る。導入遺伝子は、天然の遺伝子に由来するか、もしくはその遺伝子の変異体であり得るか、または人工的に設計され得る。導入遺伝子は、修飾されるべき細胞と同種起源のものであり得るか、または異種由来のものであり得る。導入遺伝子は、原核生物遺伝子または真核生物遺伝子であり得る。時として、導入遺伝子は、ヒト以外の動物、植物、またはヒトに由来する遺伝子であり得る。導入遺伝子はイントロンを含み得る。あるいは、導入遺伝子は、イントロンが除去されていてもよく、または存在していなくてもよい。
【0095】
[00109]一部の実施形態では、導入遺伝子はタンパク質をコードすることができる。例示的なタンパク質としては、限定されないが、細胞受容体、免疫学的チェックポイントタンパク質、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。時として、本明細書に記載される細胞受容体には、限定されないが、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0096】
[00110]本明細書に記載されるカーゴカセットは、いずれのタイプのタンパク質産物をコードする導入遺伝子を含まなくてもよいが、それは他の目的に有用である。例えば、カーゴカセットは、例えば、それが宿主ゲノム中の遺伝子のエクソンに挿入された場合、挿入部位にフレームシフトを作製するために使用され得る。これは、遺伝子産物の短縮またはヌル変異をもたらし得る。時として、カーゴカセットは、内因性ゲノム配列を外因性ヌクレオチド配列で置換し、それによって宿主ゲノムを修飾するために使用され得る。
【0097】
[00111]本明細書に記載されるトランスポゾンは、フォワード方向またはリバース方向のいずれかでカーゴカセットを有し得る。多くの場合、カーゴカセットには独自の方向性がある。例えば、導入遺伝子を含有するカーゴカセットは5’から3’へのコーディング配列を有する。プロモーターおよび遺伝子挿入を含有するカーゴカセットは、遺伝子挿入の5’部位にプロモーターを有する。本明細書で使用される「フォワード方向」という用語は、カーゴカセットが二本鎖トランスポゾンのセンス鎖上でその指向性を維持する状況を指し得る。本明細書で使用される「リバース方向」という用語は、カーゴカセットが二本鎖トランスポゾンのアンチセンス鎖上でその指向性を維持する状況を指し得る。
【0098】
[00112]ゲノム編集システムおよび使用方法
[00113]本開示の別の態様は、ゲノム編集システムを提供する。システムは、TcBusterトランスポザーゼおよびTcBusterトランスポゾンを含み得る。システムを用いて、宿主細胞のゲノムを編集し、宿主細胞の内因性ゲノム領域を破壊または修飾し、外因性遺伝子を宿主ゲノム内に挿入し、内因性ヌクレオチド配列を外因性ヌクレオチド配列またはそれらの任意の組み合わせで置換することができる。
【0099】
[00114]ゲノム編集システムは、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼ、および変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを含み得る。突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼを精製タンパク質として提供することができる。タンパク質の産生および精製技術は当業者に公知である。精製タンパク質は、トランスポゾンとは異なる容器に保存することができ、または同じ容器に保存することができる。
【0100】
[00115]多くの場合、ゲノム編集システムは、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを含み得る。時として、システムのポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含み得る。あるいはまたはさらに、このシステムのポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含み得る。mRNAは、限定されないが、インビボ転写およびRNA精製、インビトロ転写、ならびにデノボ合成などの当業者に周知である多数の手法によって産生させることができる。多くの場合、mRNAは化学的に修飾することができる。化学的に修飾されたmRNAは、未修飾もしくは天然のmRNAよりも分解に対して抵抗性であり得るか、またはより急速に分解し得る。多くの場合、mRNAの化学修飾は、mRNAをより効率的に翻訳させ得る。mRNAの化学修飾は、当業者に利用可能な周知の技術を用いて、または商業的供給業者によって行うことができる。
【0101】
[00116]多数の用途について、安全性は、hATトランスポザーゼ発現の持続時間が安全なトランスポゾン送達を媒介するのに十分に長いだけであることを要求する。さらに、トランスポゾンベクターレベルの高さと一致するhATトランスポザーゼ発現のパルスは、最大の遺伝子送達を達成することができる。実施は、DNAプラスミド鋳型からのRNA分子のインビトロ転写のための利用可能な技術を用いて行われる。RNA分子は、DNAコピーからのインビトロ(例えば、無細胞)転写のための様々な方法を用いて合成することができる。これを行う方法は記載されており、市販されている。例えば、mMessage Machineインビトロ転写キットは、Life Technologiesを通じて入手可能である。
【0102】
[00117]サービス料に基づいてインビトロ転写を実行することができる会社も多数ある。本発明者らはまた、hAT発現のための化学的に修飾されたRNAが遺伝子導入に特に有効であることを見出した。これらの化学的に修飾されたRNAは、細胞性免疫応答を誘導せずに、RNAは、細胞性免疫応答も回避する独自の方法を使用して生成される。これらのRNA調製物はRNA二量体を除去し(Clean-Cap)、細胞反応性(シュードウリジンの取り込み)は、本発明者らの手に毒性を与えることなく、ヒトT細胞においてより良好な一過性遺伝子発現を生じさせる(データは示さず)。RNA分子は、RNAトランスフェクションのための多くの記載された方法のいずれかを用いて細胞に導入することができ、それは通常、大部分の細胞に対して無毒である。これを行う方法は記載されており、市販されている。例えば、Amaxaヌクレオファクター、Neonエレクトロポレーター、およびMaxcyteプラットフォームである。
【0103】
[00118]本明細書に記載されるトランスポゾンは、発現ベクター中に存在し得る。多くの場合、発現ベクターはDNAプラスミドであり得る。時として、発現ベクターはミニサークルベクターであり得る。本明細書で使用される「ミニサークルベクター」という用語は、全部ではないにしてもほとんどの原核生物ベクター部分(例えば、調節配列または原核生物起源の非機能的配列)を含まない小さい環状プラスミド誘導体を指し得る。状況下では、トランスフェクションまたはエレクトロポレーションによって作製された細胞に対する毒性は、本明細書に記載される「ミニサークル」を使用することによって軽減することができる。
【0104】
[00119]ミニサークルベクターは、利用可能な周知の分子クローニング技術によって調製することができる。第一に、大腸菌などの細菌における「親プラスミド」(トランスポゾン構築物などの挿入を有する細菌プラスミド)を作製することができ、続いて部位特異的リコンビナーゼの誘導を行うことができる。次に、これらのステップに続いて、インサートの両端にある2つのリコンビナーゼ-標的配列を介した原核生物ベクター部分の切除、ならびに得られたミニサークルベクターの回収を行うことができる。精製されたミニサークルは、トランスフェクションまたはリポフェクションによってレシピエント細胞に、例えば、ジェット注入によって分化した組織に移すことができる。ミニサークル含有TcBusterトランスポゾンは、約1.5kb、約2kb、約2.2kb、約2.4kb、約2.6kb、約2.8kb、約3kb、約3.2kb、約3.4kb、約3.6kb、約3.8kb、約4kb、約4.2kb、約4.4kb、約4.6kb、約4.8kb、約5kb、約5.2kb、約5.4kb、約5.6kb、約5.8kb、約6kb、約6.5kb、約7kb、約8kb、約9kb、約10kb、約12kb、約25kb、約50kb、またはこれらの数のうちの任意の2つの間の値のサイズを有することができる。時として、本明細書で提供されるミニサークル含有TcBusterトランスポゾンは、最大で2.1kb、最大で3.1kb、最大で4.1kb、最大で4.5kb、最大で5.1kb、最大で5.5kb、最大で6.5kb、最大で7.5kb、最大で8.5kb、最大で9.5kb、最大で11kb、最大で13kb、最大で15kb、最大で30kb、または最大で60kbのサイズを有することができる。
【0105】
[00120]特定の実施形態では、本明細書に記載されるシステムは、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド、およびトランスポゾンを含有し得、これらは同じ発現ベクター、例えば、プラスミド中に存在する。
【0106】
[00121]本開示のなお別の態様は、遺伝子操作の方法を提供する。遺伝子操作の方法は、TcBusterトランスポザーゼおよびTcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞内に導入するステップを含み得る。遺伝子操作の方法はまた、無細胞環境においても実施され得る。無細胞環境における遺伝子操作の方法は、TcBusterトランスポザーゼ、トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾン、および標的核酸をウェルまたはチューブなどの容器に合わせるステップを含み得る。
【0107】
[00122]本明細書に記載される方法は、本明細書に提供される突然変異型TcBusterトランスポザーゼ、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞に導入するステップを含み得る。ゲノム編集の方法は、本明細書に提供される融合トランスポザーゼ、および融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞に導入するステップを含み得る。
【0108】
[00123]突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼは、タンパク質として、または突然変異型TcBusterトランスポザーゼもしくは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドを介して細胞に導入され得る。上記で検討したように、ポリヌクレオチドは、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAまたはmRNAを含み得る。
【0109】
[00124]多くの場合、TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼは、タンパク質として宿主細胞にトランスフェクトされ得、タンパク質の濃度は、少なくとも0.05nM、少なくとも0.1nM、少なくとも0.2nM、少なくとも0.5nM、少なくとも1nM、少なくとも2nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも500nM、少なくとも1μM、少なくとも2μM、少なくとも5μM、少なくとも7.5μM、少なくとも10μM、少なくとも15μM、少なくとも20μM、少なくとも25μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも200μM、少なくとも500μM、または少なくとも1μMであり得る。時として、タンパク質の濃度は、約1μM~約50μM、約2μM~約25μM、約5μM~約12.5μM、または約7.5μM~約10μMであり得る。
【0110】
[00125]多くの場合、TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼは、ポリヌクレオチドを介して宿主細胞にトランスフェクトすることができ、ポリヌクレオチドの濃度は、少なくとも約5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、80ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、150ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、220ng/ml、250ng/ml、280ng/ml、300ng/ml、500ng/ml、750ng/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、5μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、250μg/ml、300μg/ml、350μg/ml、400μg/ml、450μg/ml、500μg/ml、550μg/ml、600μg/ml、650μg/ml、700μg/ml、750μg/ml、または800μg/mlであり得る。時として、ポリヌクレオチドの濃度は、約5~25μg/ml、25~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、250~500μg/ml、5~800μg/ml、200~800μg/ml、250~800μg/ml、400~800μg/ml、500~800μg/ml、またはそれらに由来する任意の範囲であり得る。多くの場合、トランスポゾンは、トランスポザーゼとは別の発現ベクター中に存在し、トランスポゾンの濃度は、少なくとも約5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、80ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、150ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、220ng/ml、250ng/ml、280ng/ml、300ng/ml、500ng/ml、750ng/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、5μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、250μg/ml、300μg/ml、350μg/ml、400μg/ml、450μg/ml、500μg/ml、550μg/ml、600μg/ml、650μg/ml、700μg/ml、750μg/ml、または800μg/mlであり得る。時として、トランスポゾンの濃度は、約5~25μg/ml、25~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、250~500μg/ml、5~800μg/ml、200~800μg/ml、250~800μg/ml、400~800μg/ml、500~800μg/ml、またはそれらに由来する任意の範囲であり得る。トランスポゾン対トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドの比は、最大で10000、最大で5000、最大で1000、最大で500、最大で100、最大で200、最大で50、最大で20、最大で10、最大で5、最大で2、最大で1、最大で0.1、最大で0.05、最大で0.01、最大で0.001、最大で0.0001、またはそれらの任意の2つの間の任意の数であり得る。
【0111】
[00126]一部の他の場合、トランスポゾン、およびトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドは同じ発現ベクター中に存在し、トランスポゾンとトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドの両方を含有する発現ベクターの濃度は、少なくとも約5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、80ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、150ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、220ng/ml、250ng/ml、280ng/ml、300ng/ml、500ng/ml、750ng/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、5μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、250μg/ml、300μg/ml、350μg/ml、400μg/ml、450μg/ml、500μg/ml、550μg/ml、600μg/ml、650μg/ml、700μg/ml、750μg/ml、または800μg/mlであり得る。時として、トランスポゾンとトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドの両方を含有する発現ベクターの濃度は、約5~25μg/ml、25~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、250~500μg/ml、5~800μg/ml、200~800μg/ml、250~800μg/ml、400~800μg/ml、500~800μg/ml、またはその中で導き出される任意の範囲であり得る。
【0112】
[00127]いくつかの場合、エレクトロポレーションによって細胞に導入され得るポリ核酸の量は、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化するために変動され得る。いくつかの場合、約100pg未満の核酸を各細胞試料(例えば、エレクトロポレートされた1つ以上の細胞)に添加し得る。いくつかの場合、少なくとも約100pg、少なくとも約200pg、少なくとも約300pg、少なくとも約400pg、少なくとも約500pg、少なくとも約600pg、少なくとも約700pg、少なくとも約800pg、少なくとも約900pg、少なくとも約1マイクログラム、少なくとも約1.5μg、少なくとも約2μg、少なくとも約2.5μg、少なくとも約3μg、少なくとも約3.5μg、少なくとも約4μg、少なくとも約4.5μg、少なくとも約5μg、少なくとも約5.5μg、少なくとも約6μg、少なくとも約6.5μg、少なくとも約7μg、少なくとも約7.5μg、少なくとも約8μg、少なくとも約8.5μg、少なくとも約9μg、少なくとも約9.5μg、少なくとも約10μg、少なくとも約11μg、少なくとも約12μg、少なくとも約13μg、少なくとも約14μg、少なくとも約15μg、少なくとも約20μg、少なくとも約25μg、少なくとも約30μg、少なくとも約35μg、少なくとも約40μg、少なくとも約45μg、または少なくとも約50μgの核酸を各細胞試料(例えば、エレクトロポレートされた1つ以上の細胞)に添加し得る。例えば、1マイクログラムのdsDNAをエレクトロポレーション用に各細胞試料に添加し得る。いくつかの場合、最適なトランスフェクション効率および/または細胞生存率に必要とされるポリ核酸(例えば、dsDNA)の量は細胞型に特異的であり得る。
【0113】
[00128]本明細書に開示される主題は、広範囲の様々な種類の宿主細胞のゲノム編集において使用を見出すことができる。好ましい実施形態では、宿主細胞は真核生物由来であり得る。一部の実施形態では、細胞は哺乳動物起源に由来し得る。一部の実施形態では、細胞はヒト起源のものであり得る。
【0114】
[00129]一般的に、細胞は、不死化細胞株または初代細胞由来であり得る。
[00130]本明細書で互換的に使用される「細胞株」および「不死化細胞株」という用語は、通常、無期限に増殖することはないが、突然変異のために正常な細胞老化を回避した可能性がある生物由来の細胞の集団を指し得、代わりに分裂を受け続けることができる。本明細書で提供される主題は、一般的な確立した細胞株の範囲における使用を見出すことができ、細胞には、例えば、限定されないが、ヒトBC-1細胞、ヒトBJAB細胞、ヒトIM-9細胞、ヒトJiyoye細胞、ヒトK-562細胞、ヒトLCL細胞、マウスMPC-11細胞、ヒトRaji細胞、ヒトRamos細胞、マウスRamos細胞、ヒトRPMI8226細胞、ヒトRS4-11細胞、ヒトSKW6.4細胞、ヒト樹状細胞、マウスP815細胞、マウスRBL-2H3細胞、ヒトHL-60細胞、ヒトNAMALWA細胞、ヒトマクロファージ細胞、マウスRAW 264.7細胞、ヒトKG-1細胞、マウスM1細胞、ヒトPBMC細胞、マウスBW5147(T200-A)5.2細胞、ヒトCCRF-CEM細胞、マウスEL4細胞、ヒトジャーカット細胞、ヒトSCID.adh細胞、ヒトU-937細胞、またはそれらの細胞の任意の組み合わせが含まれる。
【0115】
[00131]本明細書で使用される「初代細胞」という用語およびその文法上の同等物は、生物、典型的には、動物または植物などの多細胞生物の生体組織から直接採取された細胞を指し得る。多くの場合、初代細胞は、インビトロでの増殖のために樹立され得る。いくつかの場合、初代細胞は、生物から取り出されたばかりであり得、トランスフェクションの前にまだインビトロでの増殖について確立されていない。一部の実施形態では、初代細胞はまた、インビトロで拡大させることができ、すなわち、初代細胞はまた、生物から直接採取された細胞の増殖から生成される子孫細胞を含み得る。これらの場合、子孫細胞は、樹立された細胞株中の細胞のように不明確な増殖特性を示さない。例えば、宿主細胞はヒト初代T細胞であり得るが、トランスフェクション前に、T細胞は、T細胞増殖および細胞集団の拡大をもたらし得る刺激因子(単数または複数)に曝露されている。
【0116】
[00132]遺伝子修飾される細胞は、限定されないが、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、骨格筋、平滑筋、皮膚、骨、脂肪組織、毛髪、甲状腺、気管、胆嚢、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、静脈、食道、横隔膜、胃、直腸、副腎、気管支、耳、目、網膜、性器、視床下部、喉頭、鼻、舌、脊髄、または尿管、子宮、卵巣、精巣、およびそれらの任意の組み合わせなどの組織または臓器由来の初代細胞であり得る。特定の実施形態では、細胞には、限定されないが、血球、トリコサイト、ケラチノサイト、性腺刺激ホルモン、コルチコトロープ、甲状腺刺激ホルモン、ソマトトロープ、プロラクチン産生細胞、クロマフィン細胞、傍濾胞細胞、グロムス細胞、メラニン細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、角膜角化細胞、網膜ミュラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア、上衣細胞、松果体細胞、肺細胞、クララ細胞、杯細胞、G細胞、D細胞、エンテロクロマフィン様細胞、胃の主細胞、壁細胞、小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、パンス細胞、腸細胞、マイクロフォールド細胞、肝細胞、肝星状細胞、胆嚢細胞、中心腺細胞、膵星細胞、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞、膵ε細胞、甲状腺副甲状腺、好酸性細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋芽細胞、筋細胞、ミオサテライト細胞、腱細胞、心筋細胞、リポ芽細胞、ad腹腔細胞、カヤル間質細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞、傍糸球体細胞、間質細胞(stromal cell)、間質細胞(interstitial cell)、テロサイト、単純上皮細胞、ポドサイト、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、ペグ細胞、生殖細胞、精子卵子、リンパ球、骨髄細胞、内皮前駆細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、中血管芽細胞、周皮細胞壁細胞、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。多くの場合、修飾される細胞は、限定されないが、胚性幹細胞、造血幹細胞、上皮幹細胞、表皮幹細胞、気管支肺胞幹細胞、乳腺幹細胞、間葉系幹細胞、腸管幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経堤幹細胞、精巣細胞、およびそれらの任意の組み合わせなどの幹細胞であり得る。時として、細胞は、任意の種類の組織に由来する人工多能性幹細胞であり得る。
【0117】
[00133]一部の実施形態では、遺伝子修飾された細胞は哺乳動物細胞であり得る。一部の実施形態では、細胞は免疫細胞であり得る。細胞の非限定的な例としては、B細胞、好塩基球、樹状細胞、好酸球、ガンマデルタT細胞、顆粒球、ヘルパーT細胞、ランゲルハンス細胞、リンパ球細胞、先天性リンパ球細胞(ILC)、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、メモリーT細胞、単球、骨髄細胞、ナチュラルキラーT細胞、好中球、先駆細胞、形質細胞、前駆細胞、制御性T細胞、T細胞、胸腺細胞、それらの任意の分化もしくは脱分化細胞、またはそれらの細胞の任意の混合物もしくは組み合わせが含まれ得る。
特定の場合、細胞はT細胞であり得る。一部の態様では、細胞は初代T細胞であり得る。特定の場合、細胞は抗原提示細胞(APC)であり得る。一部の実施形態では、細胞は初代APCであり得る。本開示に関連するAPCは、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、他の非専門APC、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0118】
[00134]一部の実施形態では、細胞は、ILC(先天性リンパ球細胞)であり得、ILCは、グループ1 ILC、グループ2 ILC、またはグループ3 ILCであり得る。グループ1 ILCは、一般的に、細胞内病原体に応答してIFN-ガンマおよびTNF-アルファなどの1型サイトカインを分泌する、T-bet転写因子によって調節される細胞として記載され得る。グループ2 ILCは、一般的に、細胞外寄生虫感染に応答して2型サイトカインを産生する、GATA-3およびROR-アルファ転写因子に依存する細胞として記載され得る。グループ3 ILCは、一般的に、ROR-ガンマt転写因子によって調節される細胞として記載され得、IL-17および/またはIL-22を産生する。
【0119】
[00135]一部の実施形態では、細胞は、所与の因子に対して陽性または陰性である細胞であり得る。一部の実施形態では、細胞は、CD3+細胞、CD3-細胞、CD5+細胞、CD5-細胞、CD7+細胞、CD7-細胞、CD14+細胞、CD14-細胞、CD8+細胞、CD8-細胞、CD103+細胞、CD103-細胞、CD11b+細胞、CD11b-細胞、BDCA1+細胞、BDCA1-細胞、L-セレクチン+細胞、L-セレクチン-細胞、CD25+、CD25-細胞、CD27+、CD27-細胞、CD28+細胞、CD28-細胞、CD44+細胞、CD44-細胞、CD56+細胞、CD56-細胞、CD57+細胞、CD57-細胞、CD62L+細胞、CD62L-細胞、CD69+細胞、CD69-細胞、CD45RO+細胞、CD45RO-細胞、CD127+細胞、CD127-細胞、CD132+細胞、CD132-細胞、IL-7+細胞、IL-7-細胞、IL-15+細胞、IL-15細胞、レクチン様受容体G1陽性細胞、レクチン様受容体G1陰性細胞、またはそれらの分化もしくは脱分化細胞であり得る。細胞によって発現される因子の例には、限定的であることを意図しない。当業者は、細胞が当該技術分野において公知である任意の因子に対して陽性または陰性であり得ることを理解する。一部の実施形態では、細胞は、2つ以上の因子に対して陽性であり得る。例えば、細胞はCD4+およびCD8+であり得る。一部の実施形態では、細胞は、2つ以上の因子について陰性であり得る。例えば、細胞はCD25-、CD44-、およびCD69-であり得る。一部の実施形態では、細胞は、1つ以上の因子に対して陽性であり得、1つ以上の因子に対して陰性であり得る。例えば、細胞はCD4+およびCD8-であり得る。
【0120】
[00136]本明細書に開示された方法のうちのいずれかにおいて使用される細胞は、本明細書に開示された細胞のうちのいずれかのものの混合物(例えば、2つ以上の異なる細胞)であり得ることを理解するべきである。例えば、本開示の方法は細胞を含み得、細胞はCD4+細胞とCD8+細胞の混合物である。別の例では、本開示の方法は細胞を含み得、細胞はCD4+細胞とナイーブ細胞との混合物である。
【0121】
[00137]本明細書に提供されるように、トランスポザーゼおよびトランスポゾンは、多数のアプローチを通して細胞に導入することができる。本明細書で使用される「トランスフェクション」という用語およびその文法上の同等物は、一般的に、それによって核酸が真核細胞に導入されるプロセスを指し得る。主題に関連して使用され得るトランスフェクション法には、限定されないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、カチオン性ポリマー、デンドリマー、リポソーム、微粒子銃、フュージーン、直接音波負荷、細胞圧搾、光学的トランスフェクション、プロトプラスト融合、インペールフェクション、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。多くの場合、本明細書に記載されるトランスポザーゼおよびトランスポゾンは、エレクトロポレーションによって宿主細胞にトランスフェクトすることができる。時として、トランスフェクションはまた、ヌクレオフェクション(Nucleofector(商標)テクノロジーとしても知られている)などのエレクトロポレーション法の変法によって行うことができる。本明細書で使用される「エレクトロポレーション」という用語およびその文法上の同等物は、細胞膜の透過性を増加させるために細胞に電場を印加し、化学物質、薬物またはDNAを細胞に導入できるようにするプロセスを指し得る。エレクトロポレーションの間、電場は、しばしば非常に短い期間、例えば、5ミリ秒、10ミリ秒、および50ミリ秒の「パルス」の形で提供される。当業者には理解されるように、エレクトロポレーションは、パルス回転電場の使用により細胞の外膜の孔を一時的に開く。インビトロおよびインビボでのエレクトロポレーションに使用される方法および装置はまた周知である。エレクトロポレートされる細胞型、および細胞によって取り込まれる分子の物理的特性(パルス強度、パルス長、パルス数など)に応じて様々な電気的パラメータを選択することができる。
【0122】
[00138]用途(Applications)
[00139]本明細書に提供される主題、例えば、組成物(例えば、突然変異型TcBusterトランスポザーゼ、融合トランスポザーゼ、TcBusterトランスポゾン)、システムおよび方法は、現代の生活の様々な態様において、ゲノム編集に関する広範囲の用途における使用を見出すことができる。
【0123】
[00140]特定の状況下では、本明細書に記載される主題の利点には、限定されないが、費用の削減、規制上の考慮事項、免疫原性の低下および複雑さの軽減が含まれ得る。場合によっては、本開示の重要な利点は、高い転位効率である。本開示の別の利点は、多数の場合、本明細書において提供される転位システムが「調節可能」であり得ること、例えば、転位がランダム挿入よりもむしろ選択ゲノム領域を標的とするように設計され得ることである。
【0124】
[00141]1つの非限定的な例は、研究用途および臨床用途のための遺伝子修飾された細胞を作製することに関する。例えば、上記で検討されたように、遺伝子修飾されたT細胞は、本明細書に提供される主題を使用して作製することができ、それは、限定されないが、癌および感染症などの様々な疾患と闘う人々の支援における使用を見い出し得る。
【0125】
[00142]1つの特定の例は、本明細書に提供される方法を用いた、遺伝子修飾された初代白血球の生成、およびそれを必要とする患者への遺伝子修飾された初代白血球の投与を含む。遺伝子修飾された初代白血球の生成は、トランスポゾン、およびトランスポゾンを認識することができる、本明細書に記載される突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼを白血球に導入し、それによって遺伝子修飾された白血球を生成することを含み得る。多くの場合、トランスポゾンは導入遺伝子を含み得る。導入遺伝子は、細胞受容体、免疫学的チェックポイントタンパク質、サイトカイン、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。時として、細胞受容体は、限定されないが、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの他の場合、トランスポゾンおよびトランスポザーゼは、内因性遺伝子、例えば、サイトカイン、免疫学的チェックポイントタンパク質、癌遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせを欠失または修飾するように設計される。初代白血球の遺伝子修飾は、患者を罹患状態にする感染性病原体または癌細胞に対する免疫を促進するように設計することができる。
【0126】
[00143]別の非限定的な例は、農業、食料生産、医学、および薬学のために遺伝子修飾された生物を作製することに関する。遺伝子修飾され得る種は、限定されないが、植物および動物を含み、広範囲にわたる。遺伝子修飾された作物または家畜などの遺伝子修飾された生物は、それらの生理学的特性の特定の態様において修飾され得る。食用作物における例には、特定の害虫、疾病、または環境条件に対する耐性、腐敗の低減、または化学的処理に対する耐性(例えば除草剤に対する耐性)、または作物の栄養プロファイルの改善が含まれる。食料以外の作物の例には、医薬品、バイオ燃料、およびその他の産業上有用な商品の生産、ならびにバイオレメディエーションのためのものが含まれる。家畜の例には、特定の寄生虫に対する耐性、特定の栄養素の生産、成長率の増加、および牛乳生産の増加が含まれる。
【0127】
[00144]本明細書で使用される「約」という用語、ならびにその基準数値およびその文法的な同等物に関する文法的な同等物は、その値から±10%の範囲の値を含み得る。例えば、「約10」という量は、9~11の量を含む。基準数値に関する用語「約」はまた、その値から±10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の範囲の値を含み得る。
【実施例】
【0128】
[00145]以下の実施例は、本開示の範囲を限定することなく記載された実施形態をさらに説明する。
[00146]実施例1.材料および方法
[00147]この実施例は、例示的な突然変異型TcBusterトランスポザーゼの生成および評価に利用されるいくつかの方法を記載する。
【0129】
[00148]TcBuster変異体調製のための部位特異的変異誘発
[00149]推定される高活性TcBuster(TcB)トランスポザーゼ突然変異体は、hATおよびBusterサブファミリーのヌクレオチド配列およびアミノ酸アラインメントによって同定された。Q5部位特異的突然変異誘発キット(New England BioLabs)を全ての部位特異的突然変異誘発に使用した。PCR突然変異誘発後、PCR産物をGeneJET PCR精製キット(Thermo Fisher Scientific)で精製した。精製されたPCR産物の20μLの連結反応は、T4 DNAリガーゼ(New England BioLabs)を用いて行われた。5μLの連結反応は、DH10ベータ細胞における形質転換に使用された。Sequetechによる直接コロニーシークエンシングを使用して、所望の突然変異の存在を確認した。確認された突然変異のためのDNAは、ZymoPUREプラスミドミニプレップキット(Zymo Research)を用いて調製された。
【0130】
[00150]HEK-293T細胞におけるトランスフェクション効率の測定
[00151]トランスフェクションの1日前に、HEK-293T細胞を6ウェルプレートの1ウェルあたり300,000細胞で播種した。製造業者の説明書(Mirus Bio)に従って、TransIT X2試薬を用いて、mCherry-ピューロマイシンカセットを有する500ngのトランスポゾンおよび62.5ngのTcBトランスポザーゼを細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後に、細胞は、DMEM完全培地中、3重にした6ウェルプレートのウェルあたり3,000細胞の密度でピューロマイシン(1μg/mL)とともに再播種されるか、またはピューロマイシン選択なしで再播種された。導入遺伝子の安定な組み込みは、ピューロマイシン処理された細胞(薬物選択を生き残った各細胞がコロニーを形成した)のコロニー計数またはフローサイトメトリーによって評価された。ピューロマイシン選択の2週間後のコロニー計数のために、DMEM完全+ピューロマイシン培地を除去した。細胞を1×PBSで洗浄し、細胞を1×クリスタルバイオレット溶液で10分間染色した。プレートをPBSで2回洗浄し、コロニーを計数した。
【0131】
[00152]フローサイトメトリー分析のために、導入遺伝子の安定な組み込みは、薬物選択なしで増殖させた細胞におけるmCherry蛍光の検出によって評価された。トランスフェクトされた細胞は、トランスフェクション後の指示された時点で回収され、PBSで1回洗浄され、分析のために200μLのRDFII緩衝液に再懸濁された。細胞をノボサイト(Acea Biosciences)を用いて分析し、PE-テキサスレッドチャネルを用いてmCherry発現を評価した。
【0132】
[00153]HEK-293T細胞におけるTcBトランスポザーゼ突然変異体のスクリーニング
[00154]トランスフェクションの1日前に、HEK-293T細胞を24ウェルプレートの1ウェルあたり75,000細胞で播種した。製造業者の説明書(Mirus Bio)に従って、TransIT X2試薬を用いて、500ngのトランスポゾンおよび125ngのトランスポザーゼを細胞にトランスフェクトした。導入遺伝子の安定な組み込みは、mCherry蛍光の検出によって評価された。トランスフェクションの14日後に細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、200μLのRDFII緩衝液に再懸濁した。細胞をノボサイト(Acea Biosciences)を用いて分析し、PE-テキサスレッドチャネルを用いてmCherry発現を評価した。
【0133】
[00155]CD3+T細胞におけるTcBusterトランスポゾンおよびトランスポザーゼのトランスフェクション
[00156]CD3+T細胞を濃縮し、白血球(StemCellTechnologies)から凍結保存した。CD3+T細胞を解凍し、ヒト血清ならびにIL-2、IL-15およびIL-7サイトカインを補足したX-Vivo-15培地中でCD3/CD28 Dynabeads(ThermoFisher)を用いて2日間活性化した。トランスフェクション前に、CD3/CD28ビーズを除去し、細胞を洗浄し、RNA形態でTcBusterトランスポゾン(TcBusterおよびSleeping beauty IR/DRおよびGFPカーゴを有するミニサークル)を含むNeonトランスフェクションシステム(ThermoFisher)およびRNA形態のTcBusterまたはSleeping Beautyトランスポザーゼを用いてエレクトロポレートした。生存率対照として、細胞をDNAまたはRNAなしで「パルス」エレクトロポレートした。エレクトロポレートされた細胞をトランスフェクション後の21日間増殖させ、GFPカーゴの生存率安定な組み込みをフローサイトメトリーによって評価した。生存率をSSC-A対FSC-Aによって測定し、パルスのみの対照に標準化し、GFP発現は、2、7、14および21日目にFITCチャンネルを用いて評価された。
【0134】
[00157]
実施例2.例示的なトランスポゾン構築物
[00158]この研究の目的は、異なる例示的なTcBusterトランスポゾン構築物の転位効率を調べることであった。本発明者らは、哺乳動物細胞におけるそれらの転位効率を試験するために、10個のTcBuster(TcB)トランスポゾン(Tn)立体配置(
図1A)を比較した。これら10個のTcB Tnは、使用されたプロモーター(EFS対CMV)、IR/DR配列およびトランスポゾンカーゴの方向が異なっていた。トランスポゾンはそれぞれ、2Aによって薬剤耐性遺伝子であるピューロマイシンに連結されたmCherryをコードする同一のカセットを含有し、そのため、トランスフェクトされた細胞は、蛍光および/またはピューロマイシンによる選択によって同定され得た。HEK-293T細胞は、10個のTcB TnsおよびTcB野生型トランスポザーゼ(1トランスポゾン:1トランスポザーゼの比)のうちの1つでトランスフェクトした。導入遺伝子の安定な組み込みは、トランスフェクション後の10~30日間、mCherry蛍光の検出によるフローサイトメトリーによって評価された(
図1B)。
【0135】
[00159]実験条件下で、導入遺伝子mCherryの安定な発現は、EFSと比較して、CMVプロモーターを使用して大きく増強されることが見出された。転位は、配列1 IR/DRを用いた場合にのみ起こるように見えた。リバース方向へのカーゴの転位がフォワード方向と比較してより大きな転位活性を促進することもまた見出された。
【0136】
[00160]TcB Tn-8は、フローサイトメトリーによる試験10個のTnsの間で最大の転栗効率を示した。TcB Tn-8の転位効率を確認するために、HEK-293T細胞は、WTトランスポザーゼまたはV596A突然変異トランスポザーゼを有するTcB Tn-8を用いてトランスフェクトされた。トランスフェクションの2日後に、細胞は、DMEM完全培地中で3重にした6ウェルプレートのウェルあたり3,000細胞の密度でピューロマイシン(1μg/mL)とともに再播種された。2週間の選択後、薬物選択を生き残った各細胞はコロニーを形成し、これをmCherry発現について評価し(
図3A)、導入遺伝子の安定な組み込みを確認するために計数された(
図3B~C)。TcB-Tn 8の転位効率は、HEK-293T細胞におけるmCherryおよびピューロマイシン耐性コロニーの発現によって確認された。
【0137】
[00161]実施例3.例示的なトランスポザーゼ突然変異体
[00162]この研究の目的は、TcBusterトランスポザーゼ突然変異体を生成し、それらの転位効率を調べることであった。
【0138】
[00163]この目的のために、本発明者らは、野生型TcBトランスポザーゼのcDNAおよびアミノ酸配列を他の類似したトランスポザーゼと比較することによってコンセンサス配列を生成した。比較のために、Sleeping beautyは、13個の類似したトランスポザーゼのアラインメントによって復活され、SPINは、8つの別々の生物由来のSPIN様トランスポザーゼのアラインメントによって復活された。SPINおよびTcBusterは、hATファミリーの豊富なトランスポザーゼの一部である。
【0139】
[00164]hATトランスポゾンファミリーは、2つのサブファミリー、すなわち、hobo、hermes、およびTol2を有するものなどのAC、ならびにSPINおよびTcBusterなどのBusterサブファミリーからなる。TcBusterのアミノ酸配列は、ACとBusterサブファミリーの両方のメンバーのアミノ酸配列に整列されて、TcBusterにおいて保存されていない、高活性な置換の標的であり得る重要なアミノ酸を同定した。TcBusterをACサブファミリーのメンバーであるHermes、Hobo、Tag2、Tam3、Herves、Restless、およびTol2にアラインメントすることにより、TcBusterで置換することができる高度に保存された領域内のアミノ酸を同定することができた(
図4)。さらに、TcBusterのBusterサブファミリーへの配列アラインメントは、置換され得るより多数の候補アミノ酸をもたらした(
図5)。候補TcBトランスポザーゼ突然変異体は、表7に列挙される部位突然変異を含むオリゴヌクレオチドを用いて生成された。次に、突然変異体は配列確認され、pCDNA-DEST40発現ベクターにクローニングされ(
図6)、トランスフェクション前にミニプレップされた。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
[00165]TcBトランスポザーゼ突然変異体の転位効率を調べるために、HEK-293T細胞は、WTトランスポザーゼもしくはV596A突然変異型トランスポザーゼを有するTcB Tn-8(mCherry-ピューロマイシンカセット)、または候補トランスポザーゼ突然変異体を二連にしてトランスフェクトされた。細胞を完全なDMEM中で増殖させ(薬物選択なし)、mCherry発現をトランスフェクション後の14日目にフローサイトメトリーにより評価した。野生型トランスポザーゼよりも高い転位効率を有する20個を超えるTcBトランスポザーゼ突然変異体が同定された(
図7)。これらの調べられた突然変異体のうち、3つのアミノ酸置換D189A、V377T、およびE469Kの組み合わせを含有する1つの突然変異型トランスポザーゼが、それぞれの単一の置換体を含有する突然変異体と比較して、転位活性の実質的な増加をもたらすことが発見された。高い転位活性を有する突然変異体はまた、とりわけ、K573E/E578L、I452F、A358K、V297K、N85S、S447E、E247K、およびQ258Tを含んでいた。
【0144】
[00166]これらの試験された突然変異体の中で、触媒トライアドアミノ酸(D234、D289、およびE589)のうちの1つに近接した、リジン(K)またはアルギニン(R)などの正に帯電したアミノ酸への置換の大部分が転位を増加したことが発見された。さらに、正電荷の除去、または負電荷の付加は、転位を減少させた。これらのデータは、特にこれらのアミノ酸が正に帯電したアミノ酸に突然変異している場合、触媒ドメインに近いアミノ酸はTcBの転位活性を促進するのを支援し得ることを示唆している。
【0145】
[00167]高活性なTcBuster突然変異体D189A/V377T/E469Kのアミノ酸配列(配列番号78)を
図12に示す。この突然変異体のさらなる突然変異分析を実施する。
図13に示されるように、TcBuster突然変異体D189A/V377T/E469K/I452F(配列番号79)が構築される。
図14に示されるように、TcBuster突然変異体D189A/V377T/E469K/N85S(配列番号80)が構築される。
図15に示すように、TcBuster突然変異体D189A/V377T/E469K/S358K(配列番号81)が構築される。
図16に示すように、TcBuster突然変異体D189A/V377T/E469K/K573E/E578L(配列番号13)が構築される。
図12~16の各々において、TcBusterのドメインは、以下:ZnF-BED(小文字のレタリング)、DNA結合/オリゴ化ドメイン(太字のレタリング)、触媒ドメイン(下線のレタリング)、および挿入ドメイン(イタリック体のレタリング)のように指示される。コアのD189A/V377T/E469K置換は、より大きな、太字、イタリック体、下線の文字で指示される;追加の置換は、大きな太字で指示される。これらの構築物の各々は、既に記載されたように試験され、野生型TcBusterと比較して高活性を示すと予想される。
【0146】
[00168]
実施例4.タグを含有する例示的な融合トランスフェラーゼ
[00169]この研究の目的は、融合TcBusterトランスポザーゼの転位効率を生成し、試験することであった。一例として、タンパク質タグ、GSTまたはPESTドメインをTcBusterトランスポザーゼのN末端に融合して、融合TcBusterトランスポザーゼを生成した。可撓性リンカーGGSGGSGGSGGSGTS(配列番号9)は、配列番号10によってコードされ、これを用いて、GSTドメイン/PESTドメインをTcBusterトランスポザーゼから分離した。この可撓性リンカーの存在は、融合タンパク質中の非特異的相互作用を最小化し、そのため、その活性を増加させ得る。例示的な融合トランスポザーゼは上記のようにTcB Tn-8でトランスフェクトされ、転位効率は、14日目にフローサイトメトリーによってmCherry発現によって測定された。転位効率は、GFPまたはPESTドメインのタグ化による影響を受けなかった(
図9)。これは、トランスポザーゼDNA結合ドメインをTcBusterカーゴの直接組み込みに融合してセーフハーバー部位などのゲノム部位を選択することがTcBusterにとって実行可能な選択肢であり得、より安全な組み込みプロファイルを可能にすることを示唆する。
【0147】
[00170]実施例5.TALEドメインを含む例示的な融合トランスポザーゼ
[00171]この研究の目的は、TALEドメインを含む融合TcBusterトランスポザーゼを生成し、融合トランスポザーゼの転位活性を調べることである。TALE配列(配列番号11)は、ヒトゲノムのヒトAAVS1(hAAVS1)部位を標的とするように設計される。このようにして、TALE配列を野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)のN末端に融合させて、融合トランスポザーゼを生成する。可撓性リンカーGly4Ser2は、配列番号12によってコードされ、TALEドメインとTcBusterトランスポザーゼ配列を分離するために使用される。例示的な融合トランスポザーゼは、配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0148】
[00172]例示的な融合トランスポザーゼは、エレクトロポレーションの援助を受けて、上記のようにTcB Tn-8でHela細胞にトランスフェクトされる。TcB Tn-8は、レポーター遺伝子mCherryを含む。トランスフェクション効率は、トランスフェクションの2日後にmCherry陽性細胞を計数するフローサイトメトリーによって調べることができる。さらに、次世代シークエンシングが、ゲノム内のmCherry遺伝子挿入部位を評価するために行われる。設計されたTALE配列は、hAAVS1部位の近くのゲノム部位におけるmCherry遺伝子の標的挿入を媒介し得ることが予想される。
【0149】
[00173]実施例6.初代ヒトT細胞における転位効率
[00174]この研究の目的は、初代CD3+T細胞を操作するためのTcBusterトランスポゾンシステムを開発することであった。この目的のために、本発明者らは、GFP導入遺伝子を保有する例示的なTcBusterトランスポゾンをミニサークルプラスミドに組み入れた。活性化CD3+T細胞は、TcBミニサークルトランスポゾン、およびWT TcBusterトランスポザーゼなどのRNAトランスポザーゼでエレクトロポレートされ、実施例2に記載されるように例示的な突然変異体を選択した。導入遺伝子発現は、フローサイトメトリーによってエレクトロポレーション後の21日間、モニターされた。
【0150】
[00175]TcBトランスポゾンの転位は、WT TcBusterトランスポザーゼおよびV596A突然変異型トランスポザーゼと比較して、トランスフェクションの14日後、例示的な突然変異体V377T/E469KおよびV377T/E469K/D189Aを用いると、ほぼ2倍改善されることが見出された(
図10A)。さらに、高活性な突然変異体V377T/E469KおよびV377T/E469K/D189Aの平均転位効率は、それぞれSB11(平均=8.4)と比較して2倍(平均=20.2)および3倍(平均=24.1)効率的であった。
【0151】
[00176]次に、CD3+T細胞の生存率は、ミニサークルTcBトランスポゾンおよびRNAトランスポザーゼを用いたエレクトロポレーションの2日後に評価された。CD3+T細胞をTcBミニサークルおよびRNAトランスポザーゼでトランスフェクトした場合、生存率は中程度に減少することが見出された。しかしながら、細胞は7日目までに生存率を急速に回復した(
図10B)。これらの実験は、本開示の一部の実施形態による、初代T細胞の細胞工学におけるTcBusterトランスポゾンシステムの能力を実証する。
【0152】
[00177]実施例7.癌患者の治療のためのキメラ抗原受容体修飾されたT細胞の生成
[00178]前述のTcB Tn-8構築物を含有するミニサークルプラスミドは、トランスポゾンの逆位リピート配列の間にキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を収容するように設計することができる。CARは、CD137(T細胞の共刺激受容体[4-1BB])およびCD3-ゼータ(T細胞抗原受容体のシグナル伝達成分)シグナル伝達ドメインでカップリングされた、B細胞抗原CD19に対する特異性を有するように設計することができる。
【0153】
[00179]自己T細胞は、癌、例えば、白血病を有する患者の末梢血から得られる。T細胞は、赤血球を溶解し、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離により単球を枯渇させることにより単離することができる。CD3+T細胞は、DYNABEAD M-450 CD3/CD28Tなどの抗CD3/抗CD28コンジュゲートビーズを用いたフローサイトメトリーによって単離することができる。単離されたT細胞は、GMPガイダンスに従って標準条件下で培養される。
【0154】
[00180]初代T細胞の遺伝子修飾は、上記される、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573EおよびE578Lを含む突然変異型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号13)、ならびにCARを含むTcBuster Tn-8トランスポザーゼを用いて実行される。T細胞は、突然変異型TcBusterトランスポザーゼおよびCAR含有Tn-8トランスポザーゼの存在下でエレクトロポレートされる。トランスフェクション後、T細胞は、活性化および増殖のために免疫刺激試薬(抗CD3抗体ならびにIL-2、IL-7、およびIL-15など)で処理される。トランスフェクションの検証は、トランスフェクションの2週間後に次世代シークエンシングによって行われる。トランスフェクトされたT細胞におけるトランスフェクション効率およびトランスジーン負荷は、治療レジメンの設計を補助するために決定することができる。危険な導入遺伝子挿入部位が配列決定の結果によって明らかにされた場合、安全上の懸念を排除するために特定の対策もまた取られる。
【0155】
[00181]癌患者へのキメラ抗原受容体修飾されたT細胞(CAR-T細胞)の注入は、導入遺伝子挿入の検証および臨床的に望ましいレベルへのCAR-T細胞のインビトロでの拡大後に開始される。
【0156】
[00182]注入量は、限定されないが、処置の日における、癌の病期、患者の治療歴、ならびにCBC(完全血球数)および患者のバイタルサインなどの多数の要因によって決定される。疾患の進行、患者の嫌悪反応、および他の多くの医学的要因に応じて、注入量を上昇または緩和させることができる。その間、治療レジメン中に、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析が行われて、血液および骨髄中のキメラ抗原受容体T細胞が検出される。qPCR分析は、投薬戦略および他の治療計画に関して医学的決定を下すために利用することができる。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
[00183]本発明の好ましい実施形態は、本明細書において示され、説明されているが、
このような実施形態が例としてのみ提供されていることは当業者には明らかである。多数の変形、変更、および置換は、ここでは、当業者に、本発明から逸脱することなく、想到される。本明細書中に記載された本発明の実施形態に対する種々の代替物が本発明を実施する際に使用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの同等物がそれによって包含されることが意図される。
国際出願時の特許請求の範囲
[項1] 全長の配列番号1に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼであって、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して増加した転位効率を有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項2] 1つ以上のアミノ酸置換が、リジンまたはアルギニンへの置換を含む、請求項1に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項3] 1つ以上のアミノ酸置換が、アスパラギン酸またはグルタミン酸から中性アミノ酸、リジンまたはアルギニンへの置換を含む、請求項1または2に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項4] 表4からの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項5] 全長の配列番号1に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン;挿入ドメイン;Zn-BEDドメイン;またはそれらの組み合わせにおいて1つ以上のアミノ酸置換を有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼであって、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して増加した転位効率を有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項6] 全長の配列番号1に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、表1からの1つ以上のアミノ酸置換を有する突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項7] 配列番号1と比較して、触媒ドメイン内にまたはそれに近接して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項8] 配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含み、1つ以上のアミノ酸が、配列番号1に従って番号付けした場合、D223、D289、またはE589に近接して位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項9] 近接が、約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である、請求項7または8に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項10] 近接が、約70~80アミノ酸の距離である、請求項7または8に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項11] 突然変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列が、全長の配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である、請求項1~10のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項12] 表2からの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項13] 表3からの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項14] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、およびD189Aを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項15] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換K573EおよびE578Lを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項16] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452Kを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項17] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358Kを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項18] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V297Kを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項19] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換N85Sを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項20] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、およびD189Aを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項21] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、およびD189Aを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項22] 配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573EおよびE578Lを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項23] 転位効率が、突然変異型TcBusterトランスポザーゼおよびレポーターカーゴカセットを含有するTcBusterトランスポゾンを細胞の集団に導入すること、そして、細胞の集団のゲノムにおけるレポーターカーゴカセットの転位を検出することを含むアッセイによって測定される、請求項1~22のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ。
[項24] TcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインを含む融合トランスポザーゼであって、TcBusterトランスポザーゼ配列が全長の配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有する融合トランスポザーゼ。
[項25] DNA配列特異的結合ドメインが、TALEドメイン、ジンクフィンガードメイン、AAV Rep DNA結合ドメイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24に記載の融合トランスポザーゼ。
[項26] DNA配列特異的結合ドメインがTALEドメインを含む、請求項24または25に記載の融合トランスポザーゼ。
[項27] TcBusterトランスポザーゼ配列が、全長の配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する、請求項24~26のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項28] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項29] 1つ以上のアミノ酸置換が、リジンまたはアルギニンによる置換を含む、請求項28に記載の融合トランスポザーゼ。
[項30] 1つ以上のアミノ酸置換が、アスパラギン酸またはグルタミン酸の、中性アミノ酸、リジンまたはアルギニンでの置換を含む、請求項28または29に記載の融合トランスポザーゼ。
[項31] TcBusterトランスポザーゼ配列が、DNA結合およびオリゴマー化ドメイン;挿入ドメイン;Zn-BEDドメイン;またはそれらの組み合わせにおいて1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24~30のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項32] TcBusterトランスポザーゼ配列が、表1からの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24~31のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項33] TcBusterトランスポザーゼ配列が、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比較して増加した転位効率を有する、請求項24~32のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項34] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1と比較して、触媒ドメイン内にまたはそれに近接して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24~33のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項35] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1と比較して中性pHで正味電荷を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含み、1つ以上のアミノ酸置換が、配列番号1に従って番号付けした場合、D223、D289、またはE589に近接して位置する、請求項24~34のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項36] 近接が、約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である、請求項34または35に記載の融合トランスポザーゼ。
[項37] 近接が、約70~80アミノ酸の距離である、請求項34または35に記載の融合トランスポザーゼ。
[項38] TcBusterトランスポザーゼ配列が、表2からの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24~37のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項39] TcBusterトランスポザーゼ配列が、表3からの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24~38のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項40] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、およびD189Aを含む、請求項24~39のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項41] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換K573EおよびE578Lを含む、請求項24~40のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項42] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452Kを含む、請求項24~41のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項43] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358Kを含む、請求項24~42のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項44] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V297Kを含む、請求項24~43のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項45] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換N85Sを含む、請求項24~44のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項46] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、およびD189Aを含む、請求項24~45のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項47] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、およびD189Aを含む、請求項24~46のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項48] TcBusterトランスポザーゼ配列が、配列番号1に従って番号付けした場合、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573EおよびE578Lを含む、請求項24~47のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項49] TcBusterトランスポザーゼ配列が、全長の配列番号1に対して100%の同一性を有する、請求項24~27のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項50] TcBusterトランスポザーゼ配列およびDNA配列特異的結合ドメインが、リンカーによって分離されている、請求項24~48のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ。
[項51] リンカーが、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、または少なくとも50個のアミノ酸を含む、請求項50に記載の融合トランスポザーゼ。
[項52] リンカーが配列番号9を含む、請求項50または51に記載の融合トランスポザーゼ。
[項53] 請求項1~22のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド。
[項54] 請求項24~49のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド。
[項55] 突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む、請求項53または54に記載のポリヌクレオチド。
[項56] 突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項53~55のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項57] mRNAが化学的に修飾されている、請求項56に記載のポリヌクレオチド。
[項58] 突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、請求項53~57のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項59] DNAベクター中に存在する、請求項53~58のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項60] DNAベクターがミニサークルプラスミドを含む、請求項59に記載のポリヌクレオチド。
[項61] 請求項1~49のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼを産生する細胞。
[項62] 請求項53~60のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含有する細胞。
[項63] 請求項1~22のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼ、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞に導入する工程を含む方法。
[項64] 請求項24~49のいずれか一項に記載の融合トランスポザーゼ、および融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞に導入する工程を含む方法。
[項65] 導入する工程が、細胞を、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと接触させることを含む、請求項63または64に記載の方法。
[項66] ポリヌクレオチドが、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む、請求項65に記載の方法。
[項67] ポリヌクレオチドが、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項65に記載の方法。
[項68] mRNAが化学的に修飾されている、請求項67に記載の方法。
[項69] 導入する工程が、細胞を、トランスポゾンを含有するDNAベクターと接触させることを含む、請求項63~68のいずれか一項に記載の方法。
[項70] DNAベクターがミニサークルプラスミドを含む、請求項69に記載の方法。
[項71] 導入する工程が、細胞を、トランスポゾンと、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドの両方を含有するプラスミドベクターと接触させることを含む、請求項65~70のいずれか一項に記載の方法。
[項72] 導入する工程が、細胞を、精製タンパク質としての突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼと接触させることを含む、請求項63~71のいずれか一項に記載の方法。
[項73] トランスポゾンが、2つの逆位リピート間に配置されたカーゴカセットを含む、請求項63~72のいずれか一項に記載の方法。
[項74] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項73に記載の方法。
[項75] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが配列番号3を含む、請求項73に記載の方法。
[項76] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが、配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項73~75のいずれか一項に記載の方法。
[項77] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが配列番号4を含む、請求項73~75のいずれか一項に記載の方法。
[項78] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項73に記載の方法。
[項79] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが配列番号5を含む、請求項73に記載の方法。
[項80] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項73、78、または79に記載の方法。
[項81] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが配列番号6を含む、請求項73、78、または79に記載の方法。
[項82] カーゴカセットが、CMV、EFS、MND、EF1α、CAGCs、PGK、UBC、U6、H1、およびCumateからなる群から選択されるプロモーターを含む、請求項73~81のいずれか一項に記載の方法。
[項83] カーゴカセットがCMVプロモーターを含む、請求項73~82のいずれか一項に記載の方法。
[項84] カーゴカセットがフォワード方向に存在する、請求項73~83のいずれか一項に記載の方法。
[項85] カーゴカセットがリバース方向に存在する、請求項73~83のいずれか一項に記載の方法。
[項86] 導入する工程が、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、カチオン性ポリマー、デンドリマー、リポソーム、微粒子銃、フュージーン、直接音波負荷、細胞圧搾、光学的トランスフェクション、プロトプラスト融合、インペールフェクション、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、またはそれらの任意の組み合わせを利用して細胞をトランスフェクトするステップを含む、請求項63~85のいずれか一項に記載の方法。
[項87] 導入する工程が、細胞をエレクトロポレートするステップを含む、請求項63~86のいずれか一項に記載の方法。
[項88] 細胞が、対象から単離された初代細胞である、請求項63~87のいずれか一項に記載の方法。
[項89] 対象がヒトである、請求項88に記載の方法。
[項90] 対象が疾患を有する患者である、請求項88または89に記載の方法。
[項91] 対象が癌または腫瘍と診断されている、請求項88~90のいずれか一項に記載の方法。
[項92] 細胞が対象の血液から単離される、請求項88~91のいずれか一項に記載の方法。
[項93] 細胞が初代免疫細胞を含む、請求項63~92のいずれか一項に記載の方法。
[項94] 細胞が初代白血球を含む、請求項63~93のいずれか一項に記載の方法。
[項95]
細胞が初代T細胞を含む、請求項63~94のいずれか一項に記載の方法。
[項96] 初代T細胞が、ガンマデルタT細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、エフェクターT細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項95に記載の方法。
[項97] 初代免疫細胞がCD3+細胞を含む、請求項93~96のいずれか一項に記載の方法。
[項98] 細胞が幹細胞を含む、請求項63~97のいずれか一項に記載の方法。
[項99] 幹細胞が、以下の細胞からなる群から選択される、請求項98に記載の方法:
胚性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、上皮幹細胞、気管支肺胞幹細胞、乳腺幹細胞、間葉系幹細胞、腸管幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経堤幹細胞、精巣細胞、およびそれらの任意の組み合わせ。
[項100] 幹細胞が人工多能性幹細胞を含む、請求項98に記載の方法。
[項101] カーゴカセットが導入遺伝子を含む、請求項73~100のいずれか一項に記載の方法。
[項102] 導入遺伝子が、以下のものからなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項101に記載の方法:
細胞受容体、免疫学的チェックポイントタンパク質、サイトカイン、およびそれらの任意の組み合わせ。
[項103] 導入遺伝子が、以下のものからなる群から選択される細胞受容体をコードする、請求項101または102に記載の方法:
T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせ。
[項104] (a)トランスポゾン、およびトランスポゾンを認識する請求項1~47のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼを細胞に導入し、それによって遺伝子修飾された細胞を生成すること;ならびに
(b)遺伝子修飾された細胞を、治療を必要とする患者に投与すること
を含む治療の方法。
[項105] 遺伝子修飾された細胞が、トランスポゾンによって導入された導入遺伝子を含む、請求項104に記載の方法。
[項106] 患者が癌または腫瘍と診断されている、請求項104または105に記載の方法。
[項107] 投与するステップが、遺伝子修飾された細胞を患者の血管内に輸注するステップを含む、請求項104~106のいずれか一項に記載の方法。
[項108] 請求項1~49のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼ、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを含むゲノム編集システム。
[項109] 請求項1~49のいずれか一項に記載の突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド、および突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを含むゲノム編集システム。
[項110] ポリヌクレオチドが、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む、請求項109に記載のシステム。
[項111] ポリヌクレオチドが、突然変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項109または110に記載のシステム。
[項112] mRNAが化学的に修飾されている、請求項111に記載のシステム。
[項113] トランスポゾンがDNAベクター中に存在する、請求項108~112のいずれか一項に記載のシステム。
[項114] DNAベクターがミニサークルプラスミドを含む、請求項113に記載のシステム。
[項115] ポリヌクレオチドおよびトランスポゾンが同じプラスミド中に存在する、請求項109~114のいずれか一項に記載のシステム。
[項116] トランスポゾンが、2つの逆位リピート間に配置されたカーゴカセットを含む、請求項108~115のいずれか一項に記載のシステム。
[項117] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも約98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項116に記載のシステム。
[項118] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが配列番号3を含む、請求項116に記載のシステム。
[項119] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが、配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項116~118のいずれか一項に記載のシステム。
[項120] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが配列番号4を含む、請求項116~118のいずれか一項に記載のシステム。
[項121] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはと少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項116に記載のシステム。
[項122] 2つの逆位リピートのうちの左側逆位リピートが配列番号5を含む、請求項116に記載のシステム。
[項123] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項116、121、または122に記載のシステム。
[項124] 2つの逆位リピートのうちの右側逆位リピートが配列番号6を含む、請求項116、121、または122に記載のシステム。
[項125] カーゴカセットが、CMV、EFS、MND、EF1α、CAGCs、PGK、UBC、U6、H1、およびCumateからなる群から選択されるプロモーターを含む、請求項116~124のいずれか一項に記載のシステム。
[項126] カーゴカセットがCMVプロモーターを含む、請求項116~116のいずれか一項に記載のシステム。
[項127] カーゴカセットが導入遺伝子を含む、請求項116~126のいずれか一項に記載のシステム。
[項128] 導入遺伝子が、細胞受容体、免疫学的チェックポイントタンパク質、サイトカイン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項127に記載のシステム。
[項129] 導入遺伝子が、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される細胞受容体をコードする、請求項127または128に記載のシステム。
[項130] カーゴカセットがフォワード方向に存在する、請求項116~129のいずれか一項に記載のシステム。
[項131] カーゴカセットがリバース方向に存在する、請求項116~129のいずれか一項に記載のシステム。