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特許7275044慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230510BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230510BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K39/395 V ZMD
A61P25/00
A61K47/18
A61K9/08
A61K9/19
A61P37/06
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019556864
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018060158
(87)【国際公開番号】W WO2018193078
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】17177134.8
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/488,219
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/571,812
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501091604
【氏名又は名称】ツェー・エス・エル・ベーリング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】オーレル・ミールケ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-フィリップ・ラヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ビリー・ダーン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・トートリッチ
(72)【発明者】
【氏名】オトマール・ツェンカー
(72)【発明者】
【氏名】イーフォ・ファン・スカイク
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515395(JP,A)
【文献】Trials, 2016, Vol.17, No.1, Article No.345, pp.1-15
【文献】J. Peripheral Nervous System, 2016, Vol.21, No.2, pp.114-116
【文献】Eur. J. Neurology, 2016.12.21, Vol.24, No.2, pp.412-418
【文献】Eur. J. Neurology, 2013, Vol.20, pp.836-842
【文献】pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)申請資料概要, CSLベーリング株式会社, 独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ, 2013.09.27, [retrieved on 2022.01.11], retrieved from the internet <URL; https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/6343439>
【文献】ClinicalTraials.gov, U.S. National Institutes of Health, ”A Study of HyQvia and Gammagard Liquid (Kiovig) in Adults With Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy (CIDP)”, NCT02549170, First Posted:2015.09.15, [retrieved on 2022.11.09], retrieved from the internet: <URL: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02549170>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、1週間当たり0.2g/kg患者体重の固定用量で皮下投与するためのものであり、該治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも20%改善する結果となり、該治療によって、プラセボとの比較で20%を上回る再発率の低下が達成される、前記免疫グロブリン製品。
【請求項2】
免疫グロブリン製品の固定用量は、1~7日の経過にわたって投与されるものである、請求項1に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項3】
免疫グロブリン製品の用量は、1日の経過にわたって投与されるものである、請求項2に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項4】
治療は、少なくとも3ヵ月間行われ、好ましくは、治療は、少なくとも6ヵ月間行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項5】
治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上は、プラセボ治療に対して、少なくとも50%改善する結果となる、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項6】
免疫グロブリン製品は、すぐに使用できる液体製品であり、かつ/または免疫グロブリン製品は、投与前に液体形態に再構成する必要がない、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項7】
免疫グロブリン製品は、最高温度25℃で保存する場合、液体形態で、少なくとも12ヵ月間、好ましくは、少なくとも24ヵ月間の貯蔵安定性を示す、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項8】
患者は、免疫グロブリン製品を自己投与する、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項9】
免疫グロブリン製品は、凍結乾燥製品である、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項10】
免疫グロブリン製品の免疫グロブリン濃度は10~30%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項11】
免疫グロブリン製品の免疫グロブリン濃度は20%である、請求項10に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項12】
免疫グロブリン製品の免疫グロブリンサブクラス分布は、IgG1が62~74%、IgG2が22~34%、IgG3が2~5%、およびIgG4が1~3%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項13】
IgA濃度は、免疫グロブリン100mg当たり50μg以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項14】
IgA濃度は、免疫グロブリン100mg当たり25μg以下である、請求項13に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項15】
免疫グロブリン製品は安定剤を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項16】
安定剤はアミノ酸であり、好ましくは、安定剤はプロリンである、請求項15に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項17】
免疫グロブリン製品は、ヒト血漿またはヒト血漿濃縮物から得られる、請求項1~16のいずれか1項に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項18】
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、週毎の総用量を0.2g/kg患者体重の用量で維持しつつ投与間隔を延長または短縮するよう調整する柔軟な投与レジメンで皮下投与するためのものであり、該治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも20%改善する結果となり、該治療によって、プラセボとの比較で20%を上回る再発率の低下が達成される、前記免疫グロブリン製品。
【請求項19】
免疫グロブリン製品は、隔週投与されるものであり、投与される用量は、週毎の総用量に2を乗じたものである、請求項18に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項20】
免疫グロブリン製品は、3週毎に投与されるものであり、投与される用量は、週毎の総用量に3を乗じたものである、請求項18に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項21】
免疫グロブリン製品は、1週間に2回投与されるものであり、投与される用量は、週毎の総用量を2で除したものである、請求項18に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【請求項22】
免疫グロブリン製品は、1週間当たり2~7回投与されるものであり、週毎の総用量は
維持される、請求項18に記載の使用のための免疫グロブリン製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品に関する。具体的には、本発明は、有効な投与レジメンを提供する。
【背景技術】
【0002】
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)は、特に末梢神経の髄鞘を標的とし、進行性の脱力および感覚消失を引き起こす自己免疫疾患である。神経根の腫大も該疾患の特徴である。CIDPは、いずれの年齢および性別においても生じ得るが、若年成人においてより一般的であり、また女性よりも男性においてより一般的である。
【0003】
CIDPは、上肢、下肢、または身体の他の部位における、感覚消失、脱力、もしくは疼痛単独またはその組合せによって明白となる、末梢性ニューロパチーを引き起こす。これは、対称性または多巣性のニューロパチーを引き起こし、近位筋または遠位筋に影響を及ぼす可能性がある。CIDPは、特定の他の疾患と関連する場合がある。例えば、CIDPは、末梢神経疾患のために紹介されたヒト免疫不全ウイルス(HIV)-血清陽性患者の3分の1で診断されることが認められている。CIDPは、狼瘡、パラプロテイン血症、リンパ腫、または糖尿病を患う対象にも生じる。CIDPの経過は、個体間で大きく異なることがある。CIDPの発作を生じ、後に自然回復する患者もいれば、他の患者は、多くの発作を生じ、再発の合間に部分的に回復するのみである。
【0004】
CIDPは、臨床像、電気診断試験または生検された神経の病理学的試験における脱髄の根拠、および遺伝的欠陥、骨硬化性骨髄腫、またはIgM単クローン性免疫グロブリン血症など、他の既知のニューロパチーの原因を除外することに基づいて診断される。
【0005】
未治療の場合、CIDPは、理学および作業療法、矯正器具、ならびに長期治療を必要とする障害が増え続けることを特徴とする。早期介入によって、永続的な損傷および障害を防ぐことが可能である。CIDPに対する現行の治療法は、単独または免疫抑制薬と組み合わせて処方される、プレドニゾンなどの副腎皮質ステロイド剤の投与を含む。免疫抑制薬は、ステロイドの非存在下でも投与されることがある。個別に調整された静脈内免疫グロブリン(IVIG)療法も有効であり、CIDPを治療するために現在使用されている。しかし、このような現行のIVIG治療は、各患者個人に対する投与レジメンの労力を要する調整が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、当該分野では、CIDPの標準化された有効な免疫グロブリン治療の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少ない固定用量の免疫グロブリンが、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療において治療的効能を示すという予想外の発見に基づく。
【0008】
本発明は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、5~10日の間隔毎に、0.1~0.4g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品を提供する。好ましい実施形態において、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品は、1週間に1回、0.15~0.25g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与されるものである。追加の好ましい実施形態において、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品は、1週間に1回、0.2g/kg患者体重の固定用量で投与されるものである。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、免疫グロブリン製品は、皮下投与される。追加の好ましい実施形態において、患者は、免疫グロブリン製品を自己投与する。さらに、免疫グロブリン製品の1回用量を、一度に全て投与することがある。代替方法として、免疫グロブリン製品の1回用量を、複数の分量に分割し、1回の投与間隔中の様々な時点で投与することがある。したがって、該製品は、患者が使用するのに都合が良く、このため、患者のコンプライアンスにとって有益である。
【0010】
提供される治療は、数週間、数ヵ月、および数年を含む、様々な期間にわたって行われることがある。これは、有効であり、忍容性が高い。提供される治療は、有利な副作用プロファイル、具体的には、注射部位における少ない局所反応を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】試験設計を示す図である。
図2】対象の内訳のフローチャート;CIDP=慢性炎症性脱髄性多発神経炎;IVIG=静脈内免疫グロブリン;PP-PSDS=プロトコール遵守無作為化前安全性解析対象集団(Safety Data Set);PPS=プロトコール遵守解析対象集団(Set);PSDS=無作為化前安全性解析対象集団;RSDS=救済薬安全性解析対象集団;SDS=安全性解析対象集団。RSDSおよびPPSからの対象の除外を示す図である。
図3】CIDP再発を示す図である。
図4】Kaplan-MeierプロットによるCIDP再発までの時間を示す図である。
図5】有害事象の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
CIDPは、病因が免疫媒介性と想定される、末梢神経系における後天性多発ニューロパチーである。CIDPは、次第に悪化する、近位筋および遠位筋の両方における対称性脱力を特徴とする。この状態は、常にではないが、通常、感覚障害、腱反射の欠如または低下、脳脊髄液のタンパク質レベル上昇、および電気生理学的パラメータの変化を伴う。神経生検標本は、脱髄の徴候を特徴とする。この臨床経過は、再発性または慢性および進行性であり(例えば、Mathey EK他、J Neurol Neurosurg Psychiatry 2015;86:973~985頁;Koller H他、N Engl J Med.2005;352(13):1343~1356頁参照)、前者は若年成人においてはるかに一般的である。CIDPは、推定有病率が成人100,000名当たり約1.6~8.9名および小児100,000名当たり約0.5名の稀な疾患である。CIDPは、Joint Task Force of the EFNS and the PNS(Journal of the Peripheral Nervous System 15:1~9頁(2010))に記載されている通りに診断される場合がある。
【0013】
以下の状態は、CIDPと同一であるか、または本質的に同一とみなされ、したがって特許請求の範囲に包含される:「慢性再発性多発ニューロパチー」、「慢性特発性脱髄性多発神経炎」、「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎」、および「慢性後天性脱髄性多発神経炎」(「CADP」)。
【0014】
免疫グロブリン製品
「免疫グロブリン製品」という用語は、全てのポリクローナル抗体画分を意味することが意図される。この点に関して、「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」という用語と互換的に使用される場合がある。免疫グロブリン製品は、哺乳動物、好ましくは、ヒトの血漿から得られる。特定の実施形態において、複数(概ね1000以上)の健常ドナーの血漿をプールし、場合により、さらに処理する。「健常者」という用語は、血液を提供するための現行の(提供時点の)標準的適格基準を満たす個人を意味し、このような適格基準は、継続的な改善および変更の対象であることを念頭に置く。いくつかの実施形態において、免疫グロブリン画分は、プールした血漿から濃縮される。好ましくは、免疫グロブリンは、プールした血漿から精製される。より好ましくは、免疫グロブリンは、精製され、濃縮される。様々な実施形態において、精製され、濃縮された免疫グロブリンG(IgG)が使用される。
【0015】
特定の実施形態において、免疫グロブリン製品は、IgAまたはIgMなど、異なるIgクラスの免疫グロブリンを微量に含むことがある。一実施形態において、IgA濃度は、免疫グロブリン100mg当たり50μg以下である。好ましい実施形態において、IgA濃度は、免疫グロブリン100mg当たり25μg以下である。少量のIgAは、IgA欠損症を有する患者における有害事象を避けるために望ましい。一実施形態において、IgM濃度は、免疫グロブリン100mg当たり10μg以下である。好ましい実施形態において、IgM濃度は、免疫グロブリン100mg当たり5μg以下である。様々な実施形態において、免疫グロブリン製品は、IgGが90%を上回る、より好ましくは、IgGが95%を上回る、さらにより好ましくは、IgGが98%を上回るタンパク質画分の純度を示す。様々な実施形態において、免疫グロブリン製品は、90%を上回る、より好ましくは、95%を上回る、さらにより好ましくは、98%を上回る免疫グロブリン単量体および二量体の含有率を示す。提供される製品は、好ましくは、天然のIgGサブクラス分布を示す。一実施形態において、免疫グロブリン製品の免疫グロブリンサブクラス分布は、IgG1が62~74%、IgG2が22~34%、IgG3が2~5%、およびIgG4が1~3%である。免疫グロブリン製品は、安定剤などの追加の成分、例えば、プロリンもしくはグリシンなどのアミノ酸、またはスクロース、マルトース、ソルビトール、アルブミン、ニコチン酸アミド、PEG、ポリソルベート80、またはその他を含んでよい。好ましい安定剤は、アミノ酸、具体的には、プロリンである。様々な実施形態において、免疫グロブリン製品は、10~30%(w/v)の免疫グロブリンを含む。特定の実施形態において、免疫グロブリン製品は、少なくとも10%(w/v)の免疫グロブリン、より好ましくは、少なくとも15%(w/v)の免疫グロブリン、最も好ましくは、約20%(w/v)の免疫グロブリンを含む溶液として提供される。免疫グロブリン製品は、約30%(w/v)の免疫グロブリンを含むこともある。免疫グロブリン製品は、エンベロープウイルス(例えば、HIV、HBV、およびHCV)および非エンベロープウイルス(例えば、HAVおよびパルボウイルスB19)のウイルスに対する安全性がある。
【0016】
免疫グロブリン製品は、液体製品または凍結乾燥製品として提供されることがある。好ましい実施形態において、免疫グロブリン製品は、液体製品として提供される。このような液体製品は、すぐに使用できる、すなわち、投与前に製品を再構成する必要がない。液体製品は、再構成を必要としないため、使用するのに都合が良い。したがって、液体製品は、患者による自己投与に特に適している。
【0017】
提供される免疫グロブリン製品は、長期間にわたる貯蔵安定性を示す。一実施形態において、免疫グロブリン製品は、最高温度25℃で保存する場合、液体形態で、少なくとも12ヵ月間の貯蔵安定性を示す。好ましい実施形態において、免疫グロブリン製品は、最高温度25℃で保存する場合、液体形態で、少なくとも24ヵ月間の貯蔵安定性を示す。追加の好ましい実施形態において、免疫グロブリン製品は、最高温度25℃で保存する場合、液体形態で、少なくとも30ヵ月間の貯蔵安定性を示す。本明細書で用いる場合、「貯蔵安定性」という用語は、貯蔵期間にわたり、免疫グロブリン製品の1つまたはそれ以上の特性を維持することを指す。例えば、貯蔵安定性は、免疫グロブリンの凝集がないことによって示される。一実施形態において、免疫グロブリン製品の免疫グロブリン単量体および二量体は、最高温度25℃で保存する場合、少なくとも12ヵ月間の貯蔵中に95%を上回る含有率を保つ。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の免疫グロブリン単量体および二量体は、最高温度25℃で保存する場合、少なくとも24ヵ月間の貯蔵中に95%を上回る含有率を保つ。一実施形態において、免疫グロブリン製品の免疫グロブリン単量体および二量体は、最高温度25℃で保存する場合、少なくとも12ヵ月間の貯蔵中に98%を上回る含有率を保つ。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の免疫グロブリン単量体および二量体は、最高温度25℃で保存する場合、少なくとも24ヵ月間の貯蔵中に98%を上回る含有率を保つ。
【0018】
好ましい免疫グロブリン製品は、皮下投与のための製品(SCIG)である。「皮下免疫グロブリンG」、略してSCIGという用語は、皮下投与のために製剤化した、プールした免疫グロブリンGの治療用製剤を意味する。SCIGは、製品に加えて、好ましい投与経路(皮下投与)も意味する。特定の実施形態において、SCIGは、VIVAGLOBIN(登録商標)またはHIZENTRA(登録商標)(共にCSL Behringで製造および販売されている)である。
【0019】
免疫グロブリン製品は、静脈内投与のための製品(IVIG)であってもよい。IVIGは、製品に加えて、好ましい投与経路(静脈内投与)も意味する。特定の実施形態において、IVIGは、PRIVIGEN(登録商標)またはSANDOGLOBULIN(登録商標)/CARIMUNE(登録商標)(共にCSL Behringで製造および販売されている)である。
【0020】
投与スキーム
本発明は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療に有効な、免疫グロブリン製品の体重に基づく固定用量を提供する。本明細書で用いる場合、「固定用量」という用語は、全ての患者に投与可能な、体重に基づく特定の用量を指す。このような固定用量を使用することによって、個別の用量調整が不要となる。
【0021】
具体的には、本発明は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、5~10日当たり、6~8日当たり、または1週間当たり、0.1~0.4g/kg患者体重の範囲から、0.1~0.3g/kg患者体重の範囲から、0.15~0.25g/kg患者体重の範囲から、もしくは0.18~0.22g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量、または0.2g/kg患者体重の固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品を提供する。
【0022】
本明細書で提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、5~10日当たり、0.1~0.4g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、6~8日当たり、0.1~0.4g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、1週間当たり、0.1~0.4g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。
【0023】
本明細書で提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、5~10日当たり、0.1~0.3g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、6~8日当たり、0.1~0.3g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、1週間当たり、0.1~0.3g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。
【0024】
本明細書で提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、5~10日当たり、0.15~0.25g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、6~8日当たり、0.15~0.25g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、1週間当たり、0.15~0.25g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。
【0025】
本明細書で提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、5~10日当たり、0.18~0.22g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、6~8日当たり、0.18~0.22g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、1週間当たり、0.18~0.22g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。
【0026】
本明細書で提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、5~10日当たり、0.2g/kg患者体重の固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、6~8日当たり、0.2g/kg患者体重の固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品であって、1週間当たり、0.2g/kg患者体重の固定用量で投与するための前記免疫グロブリン製品である。
【0027】
さらに提供されるのは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を治療する方法であって、免疫グロブリン製品を、それを必要とする患者に投与することを含み、該免疫グロブリン製品が、5~10日当たり、0.1~0.4g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量で投与されるものである、前記方法である。慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療における使用のための免疫グロブリン製品に関する、本明細書に記載される個別の投与スキームは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎を治療するあらゆる方法に同様に適用される。
【0028】
免疫グロブリン製品は、任意の適当な方法で投与されることがある。一実施形態において、免疫グロブリン製品は、静脈内投与される。好ましい実施形態において、免疫グロブリン製品は、皮下投与される。皮下投与は、皮下ボーラス注射または皮下注入で行われることがある。皮下注入は、注入ポンプを使用して行われることがある。免疫グロブリン製品の皮下投与は、これによって、患者におけるピーク対トラフ比が低くなるため、有利である。したがって、皮下投与によって投与されたIgGは、患者において、比較的安定したレベルを保つ。このような安定したレベルによって、最適な治療効果が確保される。
【0029】
追加の好ましい実施形態において、患者は、免疫グロブリン製品を自己投与する。自己投与は、患者のコンプライアンスを向上させる。治療施設への来院は不要である。さらに、この投与は、患者の都合に合わせて、患者の日常生活に組み込むことができる。
【0030】
免疫グロブリン製品の固定用量の全てを、一度に、すなわち、いかなる投与の中断もなく、投与してよい。この用量を、複数の分量に分割し、これらの分量を、間に中断を入れつつ、個別に投与してもよい。このような段階的投与は、1日の経過にわたって、または数日の経過にわたって行われることがある。一実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量を、2つ以上の分量に分割し、これらの分量を、1~7日の経過にわたって投与する。したがって、用量の全てを一度に投与されるか、またはこの用量を複数の分量で、1日もしくは数日の経過にわたって投与されるかのどちらを好むか、患者が個々に決定してよい。
【0031】
一実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、1~7日の経過にわたって投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、1日の経過にわたって投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、2日の経過にわたって投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、3日の経過にわたって投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、4日の経過にわたって投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、5日の経過にわたって投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、6日の経過にわたって投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量は、7日の経過にわたって投与されるものである。
【0032】
別の実施形態において、2つ以上の固定用量を組み合わせ、それに応じて延長された間隔で投与する。このような組合せでは、時間当たりの総用量は、同様に維持される。例えば、週毎の総用量は、0.2g/kg患者体重であり、0.4g/kgを隔週投与することができる。
【0033】
一実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量を2倍にしており、これは、14日毎に投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量を3倍にしており、これは、21日毎に投与されるものである。追加の実施形態において、免疫グロブリン製品の固定用量を4倍にしており、これは、28日毎に投与されるものである。
【0034】
一実施形態において、免疫グロブリン製品は、柔軟な投与レジメンで投与されるものである。このような柔軟な投与レジメンでは、経時的に投与される免疫グロブリン製品の総用量を一定に保つ。したがって、投与回数が少なくても(投与間隔の延長)、多くても(投与間隔の短縮)関係なく、同量の免疫グロブリン製品が経時的に投与される。投与間隔は、1週間より長い場合も、短い場合もあるが、週毎の総用量は維持される。本発明は、以下の実施形態によってさらに説明される:
- 推奨される皮下用量は、1週間当たり0.2~0.4g/kg(1mL~2mL/kg)体重である。
- 最後のIGIV注入の1週間後に免疫グロブリン製品を用いた療法を開始する。
- 週毎の総用量が維持されるという条件で、毎日から隔週(2週間毎)までの任意の投与間隔を用いることができ、これによって、週1回の免疫グロブリン製品による治療に相当する全身の血清IgG曝露がもたらされるであろう。
- 隔週:算出した免疫グロブリン製品の週毎の用量に2を乗じる。
- 頻回投与(1週間当たり2~7回):算出した週毎の用量を、1週間当たりの望ましい回数で除する(例えば、1週間当たり3回の投与の場合、週毎の用量を3で除する)。
【0035】
このため、提供される治療は、薬物の投与スケジュールに関し、患者にとって非常に融通が利く。
【0036】
提供される治療は、数週間から数年に及ぶ長期間にわたって行われることがある。一実施形態において、治療は、少なくとも3ヵ月間行われる。追加の実施形態において、治療は、少なくとも6ヵ月間行われる。別の実施形態において、治療は、少なくとも12ヵ月間行われる。さらに別の実施形態において、治療は、少なくとも24ヵ月間行われる。
【0037】
提供される治療は、忍容性が高い。低用量、例えば、0.2g/kg患者体重の免疫グロブリンの皮下投与では、注射部位における局所反応は、低頻度でのみ生じる。
【0038】
免疫グロブリン治療に対する応答のない患者には、治療効果を得るため、個別の用量調整を行ってよい。
【0039】
治療効果
提供される治療は、様々な治療効果をもたらすことがある。これらの効果は:INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア(8つの筋群)、および電気生理学的パラメータ:遠位および近位潜時、複合活動電位(CMAP)振幅、神経伝導速度、ならびに3つの運動神経における伝導ブロックを含む。これらの効果は、本明細書で提供される用量範囲のいずれかを用いて得られる。一実施形態において、この効果は、6~8日当たり、0.1~0.4g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量を用いて得られる。好ましい実施形態において、この効果は、6~8日当たり、0.18~0.22g/kg患者体重の範囲から選択される固定用量を用いて得られる。
【0040】
INCATスコアは、上肢および下肢の機能性を対象とする10ポイントの評価尺度であり、様々なCIDP試験において治療効果を評価するために首尾よく使用されてきた。上肢の障害に対するスコアは、0(「上肢に問題なし」)から5(「いずれの上肢も目的を持ったいかなる動きにも使用不能」)まで変動し、下肢の障害に対するスコアが、0(「歩行に影響なし」)から5(「車椅子に限定され、介助があっても立位および数歩の歩行が不可能」)まで変動する。INCAT(総)スコアは、これら2つのスコアの合計であり、0から10まで変動する。「調整」INCATスコアにおいて、上肢機能の0(正常)から1(軽度の症状)または1から0への変化は、これらの変化は臨床的に意義がないとみなされるため、悪化または改善として記録されない(Hughes R他、Ann Neurol.2001;50(2):195~201頁;Hughes RA他、Lancet Neurol.2008;7(2):136~144頁;Hughes RA、Expert Rev Neurother.2009;9(6):789~795頁)。
【0041】
R-ODSセンタイルスコアは、ギラン・バレー症候群、CIDP、および多発ニューロパチーを関連付ける意義が不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUSP)を有する対象における、活動および社会参加をとらえる転帰尺度である(van Nes SI他、Neurology.2011;76(4):337~345頁)。このRasch分析に基づく24項目の質問票は、「新聞/本を読むこと」および「食べること」などの最も容易な作業から「走ること」または「数時間立っていること」などの最も困難な作業に及ぶ、日常生活における作業の広い範囲にわたるものであり、各作業は、「実行不可能」、「困難を伴って実行」、または「容易に実行」と評価されるものである。
【0042】
平均握力は、Martin Vigorimeterによって測定されることがある。Martin(Tuttlingen、Germany)の手持ち式Vigorimeterは、手の小筋肉の力、すなわち、握力を測定するデバイスである。対象は、手掌と母指と示指の間に置いたゴム球を握る。圧力は、ゴム管を介して圧力計に記録され、キロパスカルで表示される。各評価において、対象は、各々の手で3回ずつ握る。各々の手の平均握力を決定する。
【0043】
MRC合計スコアの適合バージョン(Leger JM他、Brain.2001;124(Pt1):145~153頁)を使用してよい。MRC合計スコア段階は、0(「可視の収縮なし」)から5(「正常」)まで変動し得る。以下の8つ両側筋対を評価し、個別の筋スコアおよびその合計スコアを記録する:肩関節外転、肘関節屈曲、手関節伸展、示指外転、股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈、母趾背屈。
【0044】
電気生理学的パラメータを評価することがある。3つの運動神経(上肢に2つ、下肢に1つ)を測定する:正中、尺骨、および腓骨。刺激ポイントは以下の通りである:尺骨神経:手首、肘上;正中神経:手首、肘;腓骨神経:足首、腓骨頭下、外側膝窩。
【0045】
一実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも10%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも20%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも30%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも40%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも50%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも60%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも70%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも80%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも90%改善する結果となる。追加の実施形態において、提供される治療によって、INCATスコア、R-ODSスコア、平均握力、MRC合計スコア、および電気生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上が、プラセボ治療に対して、少なくとも100%改善する結果となる。
【0046】
提供される治療によって、CIDP患者におけるCIDP再発率が低下する結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.1~0.4g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、20%を上回る、好ましくは、30%を上回る、より好ましくは、40%を上回る、または50%をも上回る結果となる。追加の実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、20%を上回る、好ましくは、30%を上回る、より好ましくは、40%を上回る結果となる。
【0047】
一実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、20%を上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、30%を上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、40%を上回る結果となる。一実施形態において、週1回、0.2g/kgの固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、20%を上回る結果となる。一実施形態において、週1回、0.2g/kgの固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、30%を上回る結果となる。一実施形態において、週1回、0.2g/kgの固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、再発率の低下が、40%を上回る結果となる。
【0048】
提供される治療によって、CIDP再発を経験しない患者が増加する結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.1~0.4g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、CIDP再発を経験しない患者の増加が、30%を上回る、好ましくは、40%を上回る、より好ましくは、60%を上回る、または80%をも上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、CIDP再発を経験しない患者の増加が、30%を上回る、好ましくは、40%を上回る、より好ましくは、50%を上回る、または60%をも上回る結果となる。
【0049】
提供される治療によって、プラセボ治療患者と比較すると、長期間にわたるCIDP患者におけるCIDP再発の確率が低下する結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.1~0.4g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、治療の5週間後における再発の確率の低下が、10%を上回る、好ましくは、15%を上回る、より好ましくは、20%を上回る、または25%をも上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、治療の5週間後における再発の確率の低下が、10%を上回る、好ましくは、12%を上回る、より好ましくは、13%を上回る、または15%をも上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.1~0.4g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、治療の14週間後における再発の確率の低下が、10%を上回る、好ましくは、20%を上回る、より好ましくは、30%を上回る、または40%をも上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、治療の14週間後における再発の確率の低下が、10%を上回る、好ましくは、15%を上回る、より好ましくは、18%を上回る、または20%をも上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.1~0.4g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、治療の24週間後における再発の確率の低下が、10%を上回る、好ましくは、20%を上回る、より好ましくは、30%を上回る、または35%をも上回る結果となる。一実施形態において、6~8日当たり、0.18~0.22g/kgの範囲から選択される固定用量を用いた、提供される治療によって、プラセボと比較した場合、治療の24週間後における再発の確率の低下が、15%を上回る、好ましくは、20%を上回る、より好ましくは、23%を上回る、または24%をも上回る結果となる。
【実施例
【0050】
患者
患者は、18歳以上であり、European Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society(EFNS/PNS)criteria 2010(Van den Bergh PYK他;Eur J Neurol 2010;17:356-63)に従って、CIDPと確定診断されたか、または推定診断された場合、および登録前の8週間以内に治療担当医師によって評価された際にIVIg治療に応答していた場合、適格である。本治験の実施中、プロトコールは、5回修正された。被験者数の増加以外に、この修正による無作為化治療期間への影響はなかった。
【0051】
治験設計
実施された試験は、国際的多施設共同、二重盲検、無作為化プラセボ対照第III相試験であった。スクリーニング後、全ての適格患者は、IgG依存性試験期間を経て次に進んだ。IgG依存性であると判定された患者のみを、IVIG再安定化期間に登録した。この期間は、IgPro10(Privigen(登録商標)、CSL Behring、Bern、Switzerland)を用い、EFNS/PNSガイドラインの推奨用量(Van den Bergh PYK他;Eur J Neurol 2010;17:356-63)を用いて実施された。少なくともスクリーニング来院時に記録されたINCAT総スコアまで改善した患者および再安定化期間の最後の3週間に、安定したINCAT総スコアを維持した患者のみを、無作為化に適格とした(図1)。
【0052】
音声/ウェブ自動応答システムを使用し、地域(日本/日本以外)について層別した、1ブロック6名のブロック無作為化を用いて、患者を高用量もしくは低用量IgPro20(Hizentra(登録商標)、CSL Behring、Bern、Switzerland)またはプラセボ群に1:1:1の割合で無作為に割り付けた。SC完了後またはSC治療期間中の何らかの理由による脱落後の全ての患者は、試験終了時に来院した。
【0053】
治療および盲検化
IgPro20またはプラセボを、適切な部位決定訓練(site training)後に、自己投与させるか、または在宅介護者に投与させた。SC治療期間中、全ての群に対する総用量/総体積は、体重に基づくものとした。1つの群には、IgPro20を0.4g/kgで投与し、1つの群には、3つ全ての群で体積が一致するようにプラセボを加えてIgPro20を0.2g/kgで投与し、1つの群には、プラセボのみを投与した。週1回のSC注入は、2セッション中1日または2日連続の間に、注入ポンプを使用して実施された。全ての患者および試験担当者は、盲検下にあり、治療割付について知らなかった。プラセボ(2%ヒトアルブミン溶液)およびIgPro20の適切な盲検化を確実にするため、標準的尺度が用いられた。「2名の医師」で取り組むことによって、試験の盲検解除の可能性が減少し、バイアスを最小限に抑える。「治療する」医師は、患者との最初の接触者であり、患者関連の全ての質問、有害事象(AE)評価、および他の試験関連の作業を担当した。2番目の「評価する」医師は、有効性の評価を担当した。評価する医師は、治療する医師によって収集されたいずれのデータも入手することができなかった。
【0054】
転帰尺度およびデータ収集
主要転帰を、SC治療中にCIDP再発を経験した患者またはSC治療中に何らかの理由で試験から脱落した患者の百分率と定義した。
【0055】
CIDP再発を、調整INCAT総スコアにおける、ベースラインからの少なくとも1ポイントの悪化(すなわち、増加)と定義した(Hughes RA他;The Lancet Neurol 2008;7:136-44)。ベースラインスコアを、IVIg再安定化期間の終了時に評価したスコアと定義した。SC治療期間の副次的転帰は、主要評価項目までの時間、INCATスコアにおけるベースライン来院から試験終了時来院までの中央値変化の群間差、手持ち式Martin Vigorimeterを使用して評価される、両手それぞれの平均握力(Vanhoutte EK他;Eur J Neurol 2013;20:748-55)、Medical Research Council(MRC)合計スコア(Kleyweg RP他;Muscle & Nerve 1991;14:1103-9)、および炎症性ニューロパチー-Rasch確立包括的障害測定尺度(Rasch-built Overall Disability Scale)(I-RODS)(Van Nes SI他;Neurology 2011;76:337-45)であった。主要および副次的転帰尺度は、スクリーニング時;IgG依存性試験期間中で、IVIg再安定化期間中のIVIg注入前;ベースライン時;試験終了時来院を含む、SC治療期間中の全ての来院時;および全ての予定外来院時に評価された。
【0056】
生活の質を、EuroQoLの5項目質問票(EuroQoL 5-Dimension Questionnaire)(EQ-5D)、医薬品に対する治療満足度質問票(Treatment Satisfaction Questionnaire for Medication)(TSQM)、および一般的健康状態に対する作業生産性および活動障害質問票(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire for General Health)(WPAI-GH)を使用して評価した(van Schaik IN他;Trials 2016;17:345)。
【0057】
IgPro20対プラセボの安全性および忍容性を評価するため、注入当たりの有害事象(AE)ならびにAEを有する患者の人数および百分率を決定した。2回の無作為化前期間における全ての転帰、救済治療、および他の探索的転帰は、それぞれ報告されるであろう。
【0058】
統計解析
被験者数の算出は、SC治療中に再発した患者または脱落した患者の百分率が、プラセボから低用量、高用量群に向かって増加することなく、検討したSCIg用量群のうちの少なくとも1つは、プラセボ群より厳密に低い百分率を有するという帰無仮説に基づいて行われた。主要評価項目に達した患者の百分率は、高用量で35%、低用量で52%、プラセボで65%であると仮定した(van Schaik IN他;Trials 2016;17:345)。これらの数値は、ICE試験の延長期間からのデータに基づく(Hughes RA他;The Lancet Neurol 2008;7:136-44)。等間隔スコアおよび0.025の片側有意水準で正確Cochran-Armitage傾向検定を用いて、上記仮説に基づく治療企図解析(intention-to-treat analysis)において、90%の検出力を得るためには、各治療群で58名の被験者数が必要とされた。IgG依存性試験およびIVIg再安定化期間を通過しないであろう患者を考慮して、無作為化する患者174名を確保するためには、350に及ぶ患者がスクリーニングに必要であると見込まれた。
【0059】
3つの治験群にわたる傾向を検討する主要転帰に対して、片側第一種の過誤を0.025とした正確Cochran-Armitage傾向検定を用いた。仮定された優越性が証明された場合、続く対比較:プラセボ対低用量、プラセボ対高用量、および低用量対高用量に対して、片側Fisherの正確確率検定を用いた。各治療群の割合および対応する両側95%Wilsonスコア信頼区間を算出した。全てのペアワイズ治療比較において、割合の差に対する点推定値および対応する正確両側95%信頼区間を算出した。変更した主要評価項目の定義を用いた3つの予め指定された感度解析によって、CIDP再発以外の何らかの理由に対する潜在的バイアスを検討した(van Schaik IN他;Trials 2016;17:345)。主要解析および感度解析の補完として、2つの時間事象解析が実施され、Kaplan-Meier推定値が得られた。最初の解析では、他の理由で脱落した患者は、評価項目に達したとみなされ、2番目の解析では、他の理由による脱落は、打ち切り転帰とした。
【0060】
副次的評価項目は、ベースラインからの中央値変化として提示され、漸近的なJonckheere-Terpstra検定(Jonckheere AR;Biometrika 1954;41:133-45)を用いて3群間で比較された。ベースラインからの中央値変化に基づく対比較を、片側Wilcoxon順位和検定を用いて行った。主要評価項目においてのみ、統計的検定の多重検定に対する調整を行った。このため、他の全ての比較は、探索的とみなされる。
【0061】
全ての感度解析を含む主要転帰は、治療企図解析対象集団(ITTS)およびプロトコール遵守解析対象集団(PPS)(van Schaik IN他;Trials 2016;17:345)において評価された。安全性は、少なくとも1回分の用量のIgPro20/プラセボを投与された全ての無作為化患者を含む安全性解析対象集団において評価された。
【0062】
結果
患者
患者は、世界各地69箇所の施設で、2012年3月から2015年11月までに登録され、最後の患者の来院は、2016年9月であった。総数276名の独自の患者をスクリーニングした。総計172名の患者を無作為化した(図2)。これら172名の患者全てが、割り当てられた治療を受け、予定していた体積の99.7%が、実際に投与された。患者は、並行する2~8箇所の注入部位を有する注射部位当たり最大50mLの体積および最大50mL/時間/部位の注入速度を忍容し、最大総注入量は140mLであった。注入時間は約1時間であった。追跡調査不能となった患者はいなかった。表1は、無作為化患者全てのベースライン特性を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
効能
77名の患者が、CIDPを再発するか、または試験から脱落した:プラセボ群36名(63%)、低用量群22名(39%)、および高用量群19名(33%)(図3、表2)。主要評価項目に達するための絶対リスク減少率(ARR)は、プラセボ群と比較して、低用量群では24.6%(95%CI 6.2、40.7)および高用量群では30.4%(12.2、46.0)であった。低用量を高用量と比較すると、ARRは5.8(-11.4、22.6)であった。SCIGの両用量は、プラセボよりも優れていた(p=0.007およびp<0.001)。感度解析によって、再発以外の理由で脱落した患者は、主要評価項目転帰に影響を及ぼさなかったことが示された(表2)。
【0065】
【表2】
【0066】
時間事象解析によって評価された主要評価項目に達する確率は、プラセボ群よりもSCIG両群において有意に低かった(ハザード比、低用量対プラセボ:0.49(95%CI 0.29~0.84、p=0.007);高用量対プラセボ:0.38(0.22~0.67、p<0.001);図4、表2)。
【0067】
脱落時に全ての脱落を打ち切って、補完的時間再発解析(time to relapse analysis)を実施した。CIDP再発単独のKaplan-Meier推定値は、高用量SCIgでは22%、低用量SCIgでは35%、およびプラセボ患者では59%であった(表2)。IgPro20の両用量は、プラセボと比較して、より低い再発率に関連しており、再発の確率は、プラセボ治療患者と比較した場合、IgPro20治療患者では、SC3~25週目の間の全時点でより低かった。全てのプロトコール遵守解析は、ITT解析の結果を裏付けた。
【0068】
副次的転帰の変数において、ベースラインからの中央値変化は、異なる治療群間の主要転帰と同様のパターンを示した(表3)。I-RODSスコアにおいて、低用量を用いた中央値変化を除いて、高用量および低用量を用いた全ての中央値変化は、プラセボを用いた場合よりも有意に良好であった。2つの用量群間に有意差は認められなかった。
【0069】
【表3】
【0070】
健康に関連する生活の質の尺度は、概して、プラセボに対してSCIG両群における転帰が、より良好であることを示した(転帰が報告された患者の詳細は不明)。
【0071】
安全性
プラセボ群では、患者21名(36.8%)に、1514回の注入に対して52件の有害事象が認められた。低用量群では、患者33名(57.9%)に、2007回の注入に対して158件の有害事象が認められた;高用量群では、患者30名(51.7%)に、2218回の注入に対して114件の有害事象が認められた。注入部位における局所反応は、患者の18.6%で生じ、SCIg群でより頻度が高かった(プラセボ患者での7%に比して、低用量患者では19%および高用量患者では29%、図5)。全ての局所反応は、軽度(94.5%)または中等度(5.5%)のいずれかであり、最初の8回の注入の間に、頻度が低下し、試験中断に至るものはなかった。プラセボ患者1名、低用量患者3名、および高用量患者2名において、11件の重篤なAEが発生した。これら11件のSAEのうちの1件のみは、因果関係があると評価された:低用量群の1名の患者が、急性アレルギー性皮膚反応を発症した。このSAEは治療中断に至った。SC治療期間中、溶血および血栓症は生じなかった。
【0072】
考察
報告された試験は、CIDP再発の予防における、IgPro20の効能および安全性の根拠を提示している。24週間の無作為化、プラセボ対照SC治療期間において、IgPro20の両用量のプラセボに対する優越性が、IgPro20の両用量に対する統計的な有意差によって実証された。
【0073】
CIDP再発の絶対リスク減少率は、プラセボと比較して、0.2g/kgのIgPro20用量では25%、また0.4g/kgのIgPro20用量では30%であった。この結果は、CIDP再発だけではなく、他の何らかの理由で脱落した対象も含む、保守的な評価項目を用いて得られた。
【0074】
CIDP再発のみを考慮した場合、0.2g/kgのIgPro20用量は、対象の67%でCIDP再発を予防し、0.4g/kgのIgPro20用量は、対象の81%で予防した(図3)。プラセボと比較した前記絶対リスク減少率は、0.2g/kgのIgPro20用量では23%、また0.4g/kgのIgPro20用量では37%であった。これらの絶対リスク減少率の逆数に基づいた、CIDP再発を予防する治療を必要とする対象の数は、0.2g/kgのIgPro20用量では4~5名、また0.4g/kgのIgPro20用量では2~3名である。
【0075】
CIDP再発に対する時間(図4)を評価し、Kaplan-Meier推定値に基づくCIDP再発の対応する確率は:プラセボ、58.8%;0.2/kg体重のIgPro20、35.0%;および0.4g/kg体重のIgPro20、22.4%であった。プラセボと比較した低用量および高用量のハザード比(95%CI)は、それぞれ0.48(0.27、0.85)および0.25(0.12、0.49)であった。0.2g/kg体重のIgPro20群と0.4g/kg体重のIgPro20群の間に認められた差は、統計的有意性に達しなかった。
【0076】
CIDP再発のリスクは、3週目~25週目の間の全ての時点において、プラセボと比較して、IgPro20の各用量群でより低かった。前記ハザード比に基づいた、プラセボ群の対象におけるCIDP再発リスクは、0.2g/kgのIgPro20群の対象より2倍高く、0.4g/kgのIgPro20群の対象より4倍高い。
【0077】
副次的評価項目であるINCATスコア、R-ODSセンタイルスコア、平均握力、およびMRC合計スコアは、プラセボに対して、IgPro20の両用量においてより好ましく、生活の質および電気生理学的パラメータにおいても同様であった。
【0078】
IgPro20の各用量間のいずれの尺度においても、統計的な有意差は認められなかった。驚くべきことに、0.2g/kgのIgPro20用量は、0.4g/kgのIgPro20用量と同様の効能がある。
【0079】
88%を上回る対象は、SC注入の使用が容易であると示唆した。
【0080】
総合的に、IgPro20を用いたSC治療は、CIDP再発を予防する効能があるだけでなく、IVIGよりも好ましい治療であった。
【0081】
本試験中に認められた有害事象、検査パラメータ、およびバイタルサインは、IgPro20の既知の安全性プロファイルに一致している。最も高頻度のAEは、局所反応であり、プラセボ治療対象においてよりも、IgPro20治療対象において生じることが多かった。0.2g/kgのIgPro20投与において、局所反応のAEの発生率は、0.4g/kgのIgPro20投与に比して低かった。局所反応のAEの頻度は、概して、SC治療期間における初期の注入時に最も高く、その後低下した。因果関係のあるAEの頻度は低く、AEの大半は軽度または中等度であり、SAEの報告はほとんどなかった。
【0082】
注入セッション当たり最大140mLと多量に注入した場合、SC治療は忍容性が高かった。対象は、概して、4箇所の注射部位(最大:9部位)を使用し、部位当たり平均20mLを、20mL/時間(最大:50mL/時間)の注入速度で注入した。注入時間は約1時間であった。
【0083】
まとめとして、本試験における利用可能な証拠によって、対象のCIDP再発を予防することにおけるIgPro20の効能および安全性が実証される。
図1
図2
図3
図4
図5