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<図1>
  • 特許-吸入装置および方法 図1
  • 特許-吸入装置および方法 図2
  • 特許-吸入装置および方法 図3
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  • 特許-吸入装置および方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】吸入装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
A61M11/00 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019558485
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018061056
(87)【国際公開番号】W WO2018197730
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-27
(31)【優先権主張番号】17168869.0
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/491,965
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519084526
【氏名又は名称】ソフトハレ エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】SOFTHALE NV
【住所又は居所原語表記】Agoralaan building Abis, 3590 Diepenbeek Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】バルテルズ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルト, ユーゲン
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-520349(JP,A)
【文献】特許第2630347(JP,B2)
【文献】特開2002-080081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ユーザ対向面を有するハウジング(1)と、
(b)少なくとも2つの液体噴流の衝突によって噴霧エアロゾルを発生させる衝突型ノズル(6)であって、前記ノズル(6)は、衝突して、小さなエアロゾル液滴に分裂するように指向される、少なくとも2つの液体噴流を放出するように、適合され、前記ハウジング(1)に対して不動となるように、前記ハウジング(1)の前記ユーザ対向面にしっかりと固定されている、ノズル(6)と、
(c)前記ハウジング(1)内に配置される流体リザーバ(2)と、
(d)前記ハウジング(1)内に配置されるポンプ装置であって、前記ポンプ装置は、
-前記流体リザーバ(2)に流体接続される上流端部、および
-前記ノズル(6)に流体接続される下流端部を有する、ポンプ装置とを備え、
前記ポンプ装置は、液体(F)を前記流体リザーバ(2)から前記ノズル(6)へとポンピングするように適合されており、前記ポンプ装置は、
(i)上流端部を有するライザ管(5)であって、前記ライザ管(5)は、
-前記ポンプ装置内でピストンとして機能するように適合され、かつ
-前記ハウジング(1)に対して不動となるように、前記ハウジング(1)の前記ユーザ対向面にしっかりと固定されている、ライザ管(5)、
(ii)前記ライザ管(5)の上流に配置される中空シリンダ(9)であって、前記ライザ管(5)の前記上流端部は、前記シリンダ(9)が前記ライザ管(5)上で長手方向に移動できるように前記シリンダ(9)に挿入されている、中空シリンダ(9)、および
(iii)ロック時に位置エネルギーを蓄積し、ロック解除時に前記蓄積されたエネルギーを放出するロック可能手段(7)であって、前記手段(7)は、自身のロックを解除すると、前記ポンプ装置の前記下流端部に向かって前記シリンダ(9)が長手方向に推進移動することになるように、前記シリンダ(9)の外側に配置され、かつ前記シリンダ(9)に機械的に連結されている、ロック可能手段(7)をさらに備え、
前記ポンプ装置は、前記中空シリンダ(9)の上流端部またはその近傍に配置される吸入弁(4)をさらに備え、
前記吸入装置は、10μm以下の空気力学的質量中央径を有する粒子を含む医学的に活性なエアロゾルを放出するように適合され、
前記吸入装置は、ライザ管内またはライザ管の一方の端部に吐出弁(8)を備えない、
吸入療法用の医学的に活性な噴霧エアロゾルを送達する携帯型吸入装置。
【請求項2】
前記ポンプ装置は、少なくとも50バールの圧力で流体(F)を放出するように適合された、高圧ポンプ装置である、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項3】
前記吸入装置は、7μm以下の空気力学的質量中央径を有する粒子を含む医学的に活性なエアロゾルを放出するように適合されている、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項4】
前記ロック可能手段(7)は、撓んだ状態で荷重が少なくとも10Nとなるばねである、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項5】
前記医学的に活性な噴霧エアロゾルを不連続的に、離散単位の形態で送達するように適合されており、1ポンピングサイクルあたり1単位を送達している、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項6】
1単位の前記エアロゾルには2~150μlの液体が含まれている、請求項5に記載の吸入装置。
【請求項7】
前記吸入弁(4)は、前記中空シリンダ(9)内に配置されている、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項8】
前記吸入弁(4)は、前記吸入弁(4)の上流側と下流側との圧力差が所定の閾値を超えた場合にのみ開放するように適合され、前記所定の閾値は1~約20mbarの範囲となる、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項9】
前記吸入装置は、吐出弁(8)を備えない、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項10】
前記流体リザーバ(2)は、前記ハウジング(1)内で前記中空シリンダ(9)と共に移動できるように、前記中空シリンダ(9)にしっかりと装着されている、請求項1からのいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項11】
前記流体リザーバ(2)は可撓性管状体によって前記中空シリンダ(3)に流体接続され、かつ前記ハウジング(1)にしっかりと装着されている、請求項1からのいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項12】
前記流体リザーバ(2)を折り畳み式バッグとして設計している、請求項1から11のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項13】
-請求項1~12のいずれか一項で定義している携帯型吸入装置を設けるステップであって、前記吸入装置の前記流体リザーバ(2)は医学的に活性な液体(F)を含み、前記ロック可能手段(7)はロック解除状態にある、ステップと、
前記ロック可能手段(7)にロック解除状態からロック状態へと自身の状態を変更させることにより、前記吸入装置をプライミングするステップであって、前記プライミングにより、前記流体リザーバ(2)から前記中空シリンダ(9)へと医学的に活性な液体(F)が流入できるように、前記中空シリンダ(9)が前記ライザ管(5)上で、前記ポンプ装置の上流端部に向かって長手方向に反発移動する、ステップと、次いで
前記ロック可能手段(7)にロックを解除させることにより前記吸入装置を作動させるステップであって、前記作動により、前記ポンプ装置の下流端部に向かって前記シリンダ(9)が長手方向に推進移動し、前記中空シリンダ(9)から前記ノズル(6)を通って下流方向に医学的に活性な液体(F)が放出される、ステップとを含む、
医学的に活性な液体(F)の噴霧エアロゾルを生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入療法用の医学的に活性な液体の吸入装置の分野に関する。具体的には、本発明は、流れ特性を向上させた吸入装置と、吸入装置を用いて医学的に活性な液体のエアロゾルを生成する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ネブライザまたは他の液体エアロゾル発生器については、古くから当技術分野で知られている。そのような装置は、主として医学および薬物の治療の中で使用されている。この場合それらは、エアロゾル状の活性成分、すなわちガスに埋め込まれた小さな液滴を使用するための吸入装置として機能する。そのような吸入装置は、たとえば欧州特許第0627230号明細書から公知である。この吸入装置の重要な構成部品としては、エアロゾル化される液体が収容されるリザーバと、噴霧するのに十分高い圧力を発生させるポンプ装置と、ノズル状の噴霧装置とが挙げられる。このポンプ装置により、液体が離散的な量で、すなわち不連続の量でリザーバから引き出され、ノズルに供給されている。このポンプ装置は噴射剤なしで作動し、機械的に圧力を発生させている。
【0003】
そのような吸入装置に関する公知の実施形態は、国際公開第91/14468号パンフレットに提示されている。そのような装置では、ハウジングに接続されるポンプ室内の圧力は、可動中空ピストンの移動によって発生している。このピストンは、不動シリンダまたはポンプ室内に移動可能に配置されている。中空ピストンの(上流に配置される)入口は、リザーバの内部(リザーバの管部)に流体接続されている。その(下流に配置される)先端はポンプ室へと通じている。さらに、リザーバへの液体の逆流を防止する逆止弁がピストンの先端内に配置されている。
【0004】
ピストンを充填するために、リザーバへと通じるその上流端部にこの逆止弁が直接接続されている。中空シリンダ内に設けられるポンプ室のピストンを引っ張ることにより、その内部容積が増大し、その結果、ポンプ室内で次第に下圧が発生することになる。この圧力は、中空のピストンを介してリザーバへと伝播し、その結果液体がリザーバからピストンへと吸引される。これと同時に、リザーバ内の圧力が(まだ空の)ポンプ室内の圧力よりも高いために、前記弁がその先端で開放する。ここでポンプ室が充填される。これと同時にばねが装填され、可動ピストンがその下死点(垂直に配置される装置の場合)に到達し、ポンプ室が充填されるとこのばねは運動端でロックされる。
【0005】
このばねのロックを手動で解除することができる。その後、蓄積されたエネルギーが突如放出される。再度ピストンがポンプ室の方向に、かつこれに押し込まれ、このために内部容積が減少する。ここで前述の逆止弁が閉鎖し、その結果、液体がリザーバ内へと逆流するのが防止されるため、ポンプ室内で次第に圧力が蓄積することになる。最終的にこの圧力により、ポンプ室の下流端部に配置されるノズルから、液体が放出されることになる。
【0006】
すでに放出された液体または外気でさえも逆流の危険性に対抗するために、後に吐出弁と呼ぶことになる、さらに別の逆止弁をノズルのすぐ前方にあるポンプ室の下流端部に配置して、放出される液体は通過させるが、流入するガスまたは液体を遮断するようにしている。
【0007】
ピストンを圧縮ばね内に配置しており、この圧縮ばねはコイルばねとして設計されているため、その外径が制限されている。また、通常ピストンの容積は小さいため(たとえば15μl)、その内径(多くの場合外径も)も小さく設計されている。
【0008】
可動ピストンが有するこの典型的に小さな内径(たとえば、0.3~1.0mm)は、内部に配置される逆止弁が有する小さなサイズと共に、ここで記載している構造の欠点となっている。このように直径が小さいと流れ抵抗が増加するので、とりわけ高粘度の媒体がピストン内へ流入し、かつこれを通過する際に極めて低速でしか流動しないようになる。換言すれば、ここで記載している構造は、低粘度の(水性)液体およびこれの少量放出にとりわけ適している。また、小さな直径を有する、十分気密な逆止弁を製造するのも困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、既知の技術の欠点を回避する装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、高粘度の医学的に活性な液体から生成される噴霧エアロゾルを短時間で、かつ高い再現性の下でさらに送達できるようにする吸入装置を提供することである。これらのさらなる目的は、以下の説明、図面、および特許請求の範囲をもって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、主請求項に従って提供する吸入装置によって、および請求項9に従って提供する方法によって解決される。有利な実施形態を各従属請求項、後続の説明、および添付の図面に記載している。
【0011】
第1の態様では、本発明は、吸入療法用の医学的に活性な噴霧エアロゾルを送達する携帯型吸入装置を提供し、本装置は、(a)ユーザ対向面を有するハウジングと、(b)少なくとも2つの液体噴流の衝突によって噴霧エアロゾルを発生させる衝突型ノズルであって、このノズルは、たとえばハウジングに対して不動となるように、ハウジングのユーザ対向面にしっかりと固定されている、ノズルと、(c)ハウジング内に配置される流体リザーバと、(d)ハウジング内に配置されるポンプ装置であって、このポンプ装置は、流体リザーバに流体接続される上流端部、およびノズルに流体接続される下流端部を有する、ポンプ装置とを備える。さらにポンプ装置は、液体を流体リザーバからノズルへとポンピングするように適合されており、このポンプ装置は、(i)ポンプ装置内でピストンとして機能するように適合され、かつたとえばハウジングに対して不動となるように、ハウジングのユーザ対向面にしっかりと固定されているライザ管と、(ii)ライザ管の上流に配置される中空シリンダであって、ライザ管の上流端部は、シリンダがライザ管上で長手方向に移動できるようにシリンダに挿入されている、中空シリンダと、(iii)ロック時に位置エネルギーを蓄積し、ロック解除時に蓄積されたエネルギーを放出するロック可能手段であって、この手段は、自身のロックを解除すると、ポンプ装置の下流端部に向かってシリンダが長手方向に推進移動することになるように、シリンダの外側に配置され、かつシリンダに機械的に連結されている、ロック可能手段とを備える。
【0012】
本発明による吸入装置は、医学的に活性な液体からの噴霧エアロゾル、具体的には、たとえば液体に含まれる薬理活性成分をユーザまたは患者の肺に送達するために、ユーザまたは患者が吸入することのできるエアロゾルの生成および送達に役立つ。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、医学的に活性な液体(F)の噴霧エアロゾルを生成する方法を提供し、本方法は、(a)先行する請求項のいずれか一項で定義している携帯型吸入装置を設けるステップであって、前記吸入装置の流体リザーバは医学的に活性な液体(F)を含み、前記位置エネルギーを蓄積する手段はロック解除状態にある、ステップと、(b)前記位置エネルギーを蓄積する手段にロック解除状態からロック状態へと自身の状態を変更させることにより、前記吸入装置をプライミングするステップであって、前記プライミングにより、たとえば流体リザーバから中空シリンダへと医学的に活性な液体が流入できるように、中空シリンダがライザ管上で、ポンプ装置の上流端部に向かって長手方向に反発移動する、ステップと、次いで(c)前記位置エネルギーを蓄積する手段にロックを解除させることにより前記吸入装置を作動させるステップであって、前記作動により、ポンプ装置の下流端部に向かってシリンダが長手方向に推進移動し、中空シリンダからノズルを通って下流方向に医学的に活性な液体が放出される、ステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】その初回使用前の、本発明による吸入装置の1つの好ましい実施形態を概略的に示す。
図2図1と同様の装置であるが、吐出弁を備えないものを示す。
図3】ポンプ室が充填された状態の、図1の実施形態を示す。
図4】本装置の初回作動時の状況を示す。
図5】初回の作動終了時の状況を示す。
図6】ポンプ室を再充填した後の状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、請求項1に記載の、吸入療法用の医学的に活性な噴霧エアロゾルを送達する携帯型吸入装置を提供する。
【0016】
より具体的には、本装置は、ユーザ対向面を有するハウジングと、少なくとも2つの液体噴流の衝突によって噴霧エアロゾルを発生させる衝突型ノズルと、ハウジング内に配置される流体リザーバと、同様にハウジング内に配置されるポンプ装置とを備える。ノズルは、たとえばハウジングに対して不動となるように、ハウジングのユーザ対向面にしっかりと固定されている。ポンプ装置は、流体リザーバに流体接続される上流端部と、ノズルに流体接続される下流端部とを有する。さらにポンプ装置は、流体を流体リザーバからノズルへとポンピングするように適合されており、このポンプ装置は、ポンプ装置内でピストンとして機能するように適合されたライザ管と、中空シリンダと、位置エネルギーを蓄積するロック可能手段とを備える。ライザ管は、たとえばハウジングに対して不動となるように、ハウジングのユーザ対向面にしっかりと固定されている。中空シリンダはライザ管の上流に配置され、ライザ管の上流端部は、シリンダがライザ管上で長手方向に移動できるようにシリンダに挿入されている。ロック可能手段は、ロック時に位置エネルギーを蓄積することができ、ロック解除時に蓄積されたエネルギーを放出するように適合されている。この手段は、自身のロックを解除すると、ポンプ装置の下流端部に向かってシリンダが長手方向に推進移動することになるように、シリンダの外側に配置され、かつシリンダに機械的に連結されている。
【0017】
本明細書で使用する場合、携帯型吸入装置とは、片手で便利に把持することができ、また吸入療法用の医学的に活性な噴霧エアロゾルを送達するのに適した携帯装置を意味する。吸入療法に適した状態となるために、本装置は、吸入可能な粒径を有する、すなわち患者またはユーザの肺に取り込まれるほど小さい、医学的に活性なエアロゾルを放出できる必要がある。吸引可能な粒子は典型的には、約10μm以下、具体的には約7μm以下、または約5μm以下の空気力学的質量中央径を有する。この点で、これらの吸入装置は、米国特許出願公開第2004/0068222号明細書などに開示されている経口または経鼻投与用の噴霧液を放出する装置とは実質的に異なる。
【0018】
本発明によれば、本吸入装置は噴霧エアロゾルを送達することができる。本明細書で使用する場合、エアロゾルは、ガスが連続相となり、その中に小さな液滴状の分散液相を含む、少なくとも2つの相を有する系である。場合によっては、液相自体が溶液、分散液、懸濁液、または乳濁液を表してもよい。
【0019】
噴霧エアロゾルの生成にとって重要なのは、適切なノズルを使用することである。本発明によれば、このノズルは衝突型である。これはたとえば衝突して、小さなエアロゾル液滴に分裂するように指向される、少なくとも2つの液体噴流を放出するように、このノズルが適合されていることを意味する。このノズルは、本装置の使用時に、ハウジングに対して、あるいは少なくともハウジングにおいてユーザ(たとえば患者)に対向する側面または部分に対して不動となるように、あるいは非可動となるように、本吸入装置のハウジングのユーザ対向面にしっかりと固定されている。
【0020】
ハウジング内に配置される流体リザーバは、本吸入装置が噴霧エアロゾルを生成する際の元となり、かつ本装置によって送達される医学的に活性な液体を保持または貯蔵するように適合されている。
【0021】
同様にハウジング内に配置されるポンプ装置は、プランジャポンプとも呼ばれるピストンポンプとして機能するように適合されており、ライザ管は、中空シリンダ内で長手方向に移動可能なピストン、すなわちプランジャとして機能する。ライザ管の上流端部が移動する中空シリンダの内側セグメントは、シリンダに対するライザ管の位置に応じた可変容積を有する、ポンプ室を形成している。
【0022】
ポンプ室を供給している中空シリンダは、任意選択のリザーバ管(またはリザーバの管部)などによって、直接的または間接的に流体リザーバと流体接続されている。同様に、リザーバに対向しており、中空シリンダ内に収容され得るライザ管の内側(上流)端部は、その下流または外側端部で直接的または間接的に、ノズルと液密に流体接続されている。
【0023】
本明細書では、「中空シリンダ」という表現は、円筒形状を有するか、または円筒空間を有するセグメントを含む内部空隙を備えるという意味で、中空である部品または部材を指す。換言すれば、また他のタイプのピストンポンプにも当てはまるように、それぞれの部品または部材の外形が円筒形である必要はない。また、「中空シリンダ」という表現は、たとえば噴霧化される液体などの材料で「中空」空間が充填され得る、それぞれの部品または部材の動作状態を除外することはない。
【0024】
本明細書で使用する場合、長手方向の移動とは、中空シリンダの主軸に沿った移動を意味し、推進移動とは、下流方向(または順方向)への部品の移動を意味する。
【0025】
本発明の吸入装置におけるポンプ装置のライザ管がシリンダの下流に配置され、たとえばハウジングに対して、あるいは少なくともハウジングにおいて、このハウジングのユーザ対向面を含む部分に対して不動となるように、ハウジングのユーザ対向面にしっかりと固定されていることが重要である。誤解を避けるために明記すると、しっかりと固定されるとは、たとえばそれぞれの部品間の相対移動を防止するために、直接的または間接的に(すなわち、1または複数の接続部を介して)固定されることを意味する。ハウジングまたはハウジングのそれぞれの部分に対してノズルが不動となるため、ライザ管もまたノズルに対して不動となり、中空シリンダの長手方向への移動によってポンプ作用が行われることになる。ライザ管に対して上流位置に配置されるシリンダが推進移動すると、ポンプ室の容積が減少することになり、シリンダが反発移動すると、容積が増加することになる。換言すれば、ライザ管はハウジングに対する自身の位置を維持し、中空シリンダは、たとえば可動円筒部材において不動ライザ管がシリンダ内のピストンのような運動を実行するように、具体的にはハウジングの長手方向軸に沿って、ハウジングに対してその位置を変更することができる。
【0026】
この配置は、米国特許出願公開第2012/0090603号明細書に開示されているように、ライザ管が上流位置にあり、円筒部材が下流位置にあるために、ライザ管が可動であり、円筒部材がハウジングに固定されている形態の、ポンプ装置に依存する他の衝突型吸入装置とは異なっている。本発明の装置が有する重要な利点は、ポンプ室と流体リザーバとの間の通路を、その寸法に関する制限が軽減された状態で設計できることにある。たとえば非常に大きな吸入弁(逆止弁とも呼ばれる)を収容することができ、これによって狭いライザ管内に収容する必要がなくなるため、この吸入弁の製造はより容易となる。その一方で、本発明により、そのサイズがハウジングの内部サイズまたは位置エネルギーを蓄積する手段の寸法によってのみ制限される逆止弁を使用できるようになる。換言すれば、逆止弁、ライザ管、および(使用する場合は)リザーバ管の直径は互いに一致する必要がない。さらに、可動ピストンを流体リザーバに接続する必要がないため、リザーバへの流体接続を供給する構成部品を、可動構成部品、すなわち中空シリンダとは無関係に設計することができ、これによって、個々の部品を個々のそれぞれの機能に合うように適合させることができる。この点で、本発明においては、可動中空シリンダが、その安定した構造と寸法により、より安定度の低い可動ライザ管を使用した場合よりも、リザーバとの機械的に安定した接続を設計するより効果的な機会を付与するため、より高度の設計柔軟性がもたらされることになる。また、中空シリンダと流体リザーバとの接続を、直径をより大きくした状態で設計することができるので、より高速の流速とより高い流体粘度とが実現可能となる。さらに、リザーバの支持体を、シリンダを備える任意の構成部品に一体化させることができる。加えて、リザーバの圧力平衡を確保する任意の通気口をリザーバ本体それ自体から離間させて、リザーバと中空シリンダとの間にインターフェースを形成するコネクタ(たとえば)まで移動させることができるため、構造を容易にし、本質的に「開放した」リザーバ本体を設ける必要性が回避されることになる。
【0027】
上述のように、位置エネルギーを蓄積するロック可能手段は、ロック状態でエネルギーを蓄積し、ロックが解除されると蓄積されたエネルギーを放出するように適合されている。この手段は、自身のロックを解除すると、ポンプ装置の下流端部に向かってシリンダが長手方向に推進移動することになるように、中空シリンダに機械的に連結されている。この移動中に、シリンダの内部容積、すなわちポンプ室の容積が減少する。反対に、位置エネルギーを蓄積する手段がロック状態にあるとき、中空シリンダは、ポンプ室の容積が最大となる自身の最上流位置にあることになる。このロック状態を、プライミングされた状態と見なすこともできる。エネルギーを蓄積する手段の状態がロック解除状態からロック状態へと変更されると(これを、本装置のプライミングと呼ぶことができる)、中空シリンダは長手方向に、すなわち最下流位置から最上流位置に向かって反発移動することになる。ポンピングサイクルは、その最下流位置から始まりその最上流(またはプライミングされた)位置へと至る、シリンダによる後続する2つの相反する運動で構成されており、位置エネルギーを蓄積する手段によって駆動され、ここでそのエネルギーをその最下流位置まで放出し返している。
【0028】
好ましい実施形態の1つでは、このポンプ装置は高圧ポンプ装置であり、少なくとも約50バールの圧力で作動するか、または流体を放出するように適合されている。他の好ましい実施形態では、ポンプ装置の動作圧力は、それぞれ少なくとも約10バール、少なくとも約100バール、約2バール~約1000バール、または約50バール~約250バールである。本明細書で使用する場合、動作圧力とは、具体的には薬理活性成分における吸入可能な水性液体製剤などの医学的に活性な液体を、ポンプ装置が、そのポンプ室から下流方向に、すなわちノズルに向かって放出する際の圧力である。本明細書では、「作動するように適合される」という表現は、たとえば規定の圧力での作動を有効にするように、材料、寸法、表面の品質および仕上げに関してポンプ装置の構成部品が選択されていることを意味する。
【0029】
また、そのような高圧ポンプ装置により、位置エネルギーを蓄積する手段がその都度圧力を得られるような力で、シリンダの長手方向への推進移動を駆動するのに十分な量のエネルギーを蓄積かつ放出できることが示唆される。
【0030】
位置エネルギーを蓄積する手段を、引張りばねまたは圧縮ばねとして設計することができる。あるいは金属体またはプラスチック体に加えて、ガス媒質、または磁力利用型材料も、エネルギーを蓄積する手段として使用することができる。圧縮または引張りにより、位置エネルギーが前記手段に供給される。前記手段の一方の端部は、ハウジングにおいて、またはハウジング内の適切な位置で支持され、したがって、この端部は本質的に不動である。もう一方の端部については、ポンプ室を供給している中空シリンダに接続され、したがって、この端部は本質的に可動である。十分な量のエネルギーが供給されてから前記手段をロックすることができ、これによって、ロック解除が行われるまでエネルギーを蓄積することができる。ロックが解除されると、前記手段は、ポンプ室を有するシリンダまで位置エネルギー(たとえば、ばねエネルギー)を放出することができ、その後シリンダは、たとえば移動(この場合は長手方向への)を行うように駆動される。通常、エネルギーの放出は突如行われるため、ポンプ室内で高圧が蓄積してから大量の液体が放出され得、その結果圧力が低下する。実際、放出段階のかなりの部分において、位置エネルギーを蓄積する手段によって送達される圧力と、すでに放出された液体の量との間に平衡が生じている。したがって、液体の量はこの段階では本質的に一定のままとなり、これは、米国特許出願公開第2005/0039738号明細書、米国特許出願公開第2009/0216183号明細書、米国特許出願公開第2004/0068222号明細書、または米国特許出願公開第2012/0298694号明細書に開示されている装置など、放出時にユーザの手動力を使用する装置にとって重要な利点であり、これはなぜなら、手動力は個々のユーザまたは患者によって異なるものであり、放出段階で大きく変動する可能性が非常に高く、その結果不均一な液滴形成、サイズ、および量が生じることになるためである。従来技術とは対照的に、本発明による手段は、確実に本吸入装置が極めて再現性の高い結果をもたらすようにしている。
【0031】
位置エネルギーを蓄積する手段を、高圧ガス容器の形態で設けていてもよい。前記手段を適切に配置し、かつ繰り返し断続的に駆動(開放)することにより、ガス容器内に蓄積されたエネルギーの一部をシリンダに対して放出することができる。ポンプ室内で再度所望の圧力を蓄積させるのに残余エネルギーが不足状態となるまで、このプロセスを繰り返すことができる。この後、ガス容器を再充填または交換する必要がある。
【0032】
好ましい実施形態の1つでは、位置エネルギーを蓄積する手段は、撓んだ状態で荷重が少なくとも10Nとなるばねである。特に好ましい実施形態では、位置エネルギーを蓄積する手段は、撓んだ状態で荷重が約1N~約500Nとなる鋼製の圧縮ばねである。他の好ましい実施形態では、鋼製の圧縮ばねの荷重は、撓んだ状態で約2N~約200N、または約10N~約100Nとなる。
【0033】
本発明による吸入装置は、好ましくは医学的に活性な噴霧エアロゾルを不連続的に、すなわち離散単位の形態で送達するように適合されており、この場合、1ポンピングサイクルあたり1単位を送達している。この態様では本装置は、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、振動メッシュネブライザ、または電気流体力学的ネブライザなど、通常数秒間から最大で数分間にわたって連続的に噴霧エアロゾルを生成かつ送達することから、患者またはユーザがエアロゾルを吸入するのに、連続した呼吸動作が何回も必要となる、一般的に知られているネブライザとは異なっている。その代わりに、本発明の吸入装置はエアロゾルの離散単位を生成かつ放出するように適合されており、この単位はそれぞれ、ポンプ装置により、流体を直ちにエアロゾル化し、ユーザまたは患者にこれを送達するノズル内へと1回のポンピングサイクルでポンピングされる流体(すなわち、医学的に活性な液体)の量に相当する。反対に、1回のポンピングサイクルでポンプ装置によってポンピングされる液体の量によって、患者が1投与ごとに服用する薬理活性薬剤の量が決まる。したがって、所望の治療効果を発揮させるために、ポンプ装置が正確かつ確実に、そして再現性よく作動することが非常に重要となる。本発明者らは、高い精度と再現性とを確実に発揮するという点で、本明細書に記載しているような、ポンプ装置を内蔵した本吸入装置がとりわけ有利であることを見出した。
【0034】
1つの好ましい実施形態では、薬剤の単一用量(すなわち、医学的に活性な液体による噴霧エアロゾルの)は、1単位、すなわち、エアロゾル生成のためにポンプ装置からノズルへと1回のポンピングサイクルで送達される容量に含まれる。この場合、ユーザまたは患者は本装置を一度だけプライミングして作動させ、1投与あたり(すなわち、投与イベントあたり)1回の呼吸動作で放出されたエアロゾルを吸入する。
【0035】
別の好ましい実施形態では、薬剤の単一用量は2単位のエアロゾルからなり、したがって2回のポンピングサイクルが必要となる。通常ユーザまたは患者は、本装置をプライミングし、たとえば1単位のエアロゾルを放出して吸入するために作動させ、その後この手順を繰り返すことになる。あるいは、3単位以上のエアロゾルが単一用量を構成してもよい。
【0036】
1回のポンピングサイクルでポンプ装置によってポンピングされる流体(たとえば、医学的に活性な液体)の容量は、約2~約150μlの範囲であることが好ましい。この容量は、具体的にはそれぞれ約0.1~約1000μl、または約1~約250μlの範囲であってもよい。これらの容量の範囲は、本吸入装置によって生成される1単位のエアロゾルに含まれる液相容量とほぼ同じであり、おそらく、本装置内で微量の液体が失われることによるわずかな差が生じ得る。
【0037】
別の好ましい実施形態では、ポンプ装置は、中空シリンダ内に配置される、逆止弁または吸入逆止弁とも呼ばれる吸入弁を備える。本実施形態によれば、中空シリンダの内部空間、すなわちポンプ室は、吸入逆止弁を介して流体リザーバに流体接続されている。この吸入弁により、液体がポンプ室に流入することができるが、その一方で、液体が流体リザーバに向かって、または流体リザーバ内へと逆流するのが防止される。たとえば、中空シリンダの内部容積のほぼ全体を利用してポンプ室として機能させるために、この吸入弁の位置をシリンダの上流端部またはその近傍にしていてもよい。あるいは、たとえばシリンダの上流セグメントと下流セグメントとを画定して、上流セグメントが吸入弁の上流に位置し、下流セグメントが吸入弁の下流に位置するように、中空シリンダの(長手方向)主軸に沿って、この吸入弁をより中央に配置してもよい。この場合、ポンプ室は下流セグメントに配置される。
【0038】
上述のように、本発明の効果の1つは、比較的大きな寸法を有する吸入弁をこの位置、すなわちポンプ室の上流端部に収容できることである。これにより、吸入弁内で1または複数の流体導管の寸法を大きくすることができ、このために高速の流体速度が実現され、結果として本吸入装置のプライミング中にポンプ室が素早く充填されるようになるため、とりわけ有益である。さらに、可溶性活性成分の高濃度溶液など、吸入用で通常の液体製剤よりも高い粘度を有する液体の使用が、吸入療法を目的として実現可能になる。
【0039】
さらなる好ましい実施形態によれば、この吸入弁は、吸入弁の上流側と下流側、すなわち、流体リザーバ側とポンプ室側との圧力差が所定の閾値を超えた場合にのみ開放するように適合され、この圧力差が閾値を下回っている限り閉鎖したままとなる。ここで言う「圧力差」とは、絶対圧力値に関係なく、両方の側における相対的な圧力差のみが、吸入弁を閉鎖するかまたは開放するかの決定に関係していることを意味する。たとえば、上流(リザーバ)側の圧力はすでに正(たとえば、熱膨張によって1.01バールとなる)であるが、下流(ポンプ室)側の圧力が常圧(1.0バールであり、本装置が作動せず)である場合、圧力差(ここでは、0.01バール)が閾値(たとえば20mbar)を下回っているため、開放方向に正圧がかかった場合でも吸入弁を閉鎖したままにすることができる。これは、閾値圧力に達するまで逆止弁が閉鎖したままとなり、その結果、リザーバとポンプ室との間の通路が、たとえば本吸入装置の不使用時に確実に閉鎖されることを意味する。閾値圧力差の例では、1~1000mbarの範囲となり、より好ましくは約10~約500mbarの範囲、または約1~約20mbarの範囲となる。
【0040】
本吸入装置を作動させると、位置エネルギーを蓄積する手段がロック状態からロック解除状態へと自身の状態を変更するためにエネルギーが放出され、これによってシリンダが長手方向に推進移動して、ポンプ室内で非常に大きな圧力が蓄積することになる。これにより、圧力差の閾値を超える著しい圧力差が発生し(ポンプ室内が高圧になり、流体リザーバ内が実質的に低圧になることにより)、その結果逆止弁が開放し、圧力室がリザーバからの液体で充填されるようになる。
【0041】
そのような閾値圧力差で作動するように設計され得る弁のタイプとしては、ばねが事前装填されるボール弁が挙げられる。このばねはボールをその座部へと押し込み、そのスプリング力に抗する圧力が後者を超える場合にのみ、ボール弁が開放する。その構造に応じて、このような閾値圧力差で作動し得る他の弁のタイプとしては、ダックビル弁またはフラップ弁が挙げられる。
【0042】
閾値圧力差で作動するこのような弁を使用する利点は、吸入装置を能動的に使用するまでリザーバを閉鎖したままにすることができるため、装置の搬送中に発生するリザーバ液の不要な飛散、または長期保管中に発生する装置内の蒸発を低減できることにある。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、本発明による吸入装置は、ライザ管内、またはライザ管の一方の端部において、液体または空気がライザ管から中空シリンダへと返流されることを防止するための吐出弁をさらに備える。多くの場合、このような吐出弁を使用すると有利となる。通常、ライザ管の下流端部はノズルの近傍に配置されている。このノズルは外気と流体連通している。シリンダが長手方向に推進移動することで駆動され、ポンプ装置からノズルを通って送達される当該量の液体がエアロゾル化形態で放出された後、ポンプ室を再充填する必要がある。これを目的として、シリンダはライザ管上をスライドして自身の元の上流位置まで後退し(すなわち、長手方向に反発移動する)、その結果、ポンプ室の内部容積が増加する。これに伴い、ポンプ室の内部で負圧(「下圧」と呼ばれることもある)が発生し、これにより、ポンプ室の上流に配置される流体リザーバから液体がポンプ室に吸い込まれることになる。しかしながら、このような負圧はライザ管を通ってノズルの外側まで下流に伝播する可能性があり、またこれが原因で、ノズルまたはノズル開口部を介して本装置内に空気が吸い込まれる場合がある。この問題は、ノズル開口部に向かって開放し、かつ反対方向に閉鎖する、吐出逆止弁とも呼ばれる吐出弁を設けることで回避することができる。
【0044】
任意選択により、この吐出弁は、上記の吸入弁に関連して記載した、閾値圧力差を下回る場合に閉鎖する(また、超える場合は開放する)タイプのものであってもよい。ばね付きのボール弁を使用する場合、ポンプ室の内圧と周囲圧力との差が閾値圧力差の値を超えると吐出弁が開放するように、スプリング力をポンプ室に対して送る必要がある。このような弁を使用する利点は、前述のそれぞれの利点に相当する。
【0045】
前述のように、吐出弁をライザ管内に配置してもよい。あるいは、本吸入装置は、吐出弁であって、ライザ管内に一体化されずに、ライザ管の端部の一方またはその近傍において、具体的には、たとえばライザ管とノズルとの間にある独立したコネクタ内において、その下流端部または下流端部近傍に配置される吐出弁を備える。本実施形態は、たとえば吐出弁の一体化が困難となる、とりわけ小さな直径のライザ管を必要とする場合など、特定の場合に有利となり得る。ライザ管の下流にこの吐出弁を収容することにより、比較的大きな直径の弁が使用可能となるため、弁設計の要件が簡略化されることになる。
【0046】
さらなる代替実施形態では、吐出弁を設けていない。衝突型ノズルの流路が比較的小さな断面を有し、その結果、本装置のプライミング中に所定の圧力条件でわずかな、または極めて低速の逆流しか生じないため、本実施形態は実行可能となり得る。特定の製品の用途を考慮して、当該逆流の量が許容可能であると見なされる場合、吐出弁を設けないことで本吸入装置の設計を簡略化してもよい。
【0047】
本吸入装置を設計するにあたり吐出弁を設けていてもいなくても、いずれにせよ、他の装置の構成要件に関して記載している他の選択肢および選好は全て、これら両方の代替実施形態に適用することができる。
【0048】
さらなる好ましい実施形態では、本発明による吸入装置は、たとえばハウジング内で中空シリンダと共に移動できるように、中空シリンダにしっかりと装着される流体リザーバを備える。これは、ポンピングサイクルの各放出段階で、流体リザーバが中空シリンダと共に、ポンプ室の内部容積が最大となる初期(「上流」)位置から、ポンプ室の内部容積が最小となる終端(「下流」)位置に向かって移動し、次いで後続の「プライミング」ステップ中に、流体リザーバが中空シリンダと共にそれらの初期(「上流」)位置まで戻ることを意味する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「しっかりと装着される」という表現は、永続的および非永続的(すなわち解放可能な)装着の形態の両方を含む。また、これには直接かつ間接(すなわち、1または複数の接続部を介した)タイプの装着が含まれる。その一方で、上述のように「しっかりと装着される」とは、それぞれの部品の互いに対する移動が実質的に防止されるように、互いに対して固定されていることを意味する。換言すれば、互いに対してしっかりと装着される2つの部品は、共に固定されて初めて可動となり得、互いに対しては非可動または不動となり得る。
【0050】
流体リザーバが中空シリンダにしっかりと装着される本実施形態の利点の1つは、リザーバとポンプ室との間で生じ得るデッド容積が最小限となることにある。
【0051】
一代替実施形態によれば、流体リザーバは可撓性管状体によって中空シリンダに流体接続され、ハウジングにしっかりと装着されている。本実施形態によれば、リザーバは中空シリンダにしっかりと装着されておらず、中空シリンダがその長手方向の移動を行うときに、シリンダと共に移動しない。その代わりに、ハウジングまたはハウジングの一部にしっかりと、しかし任意選択により着脱可能に、直接的または間接的に装着されている。本実施形態の1つの利点は、位置エネルギーを蓄積する手段のロックを解除すると突如放出されるエネルギーが、流体リザーバではなく中空シリンダにのみ作用することにある。これは、流体リザーバがその使用開始時に初期(完全に充填された状態)にあって、使用中に減少していく質量が比較的大きい場合にとりわけ有利となり得る。中空シリンダの加速度が上昇すると、結果としてポンプ室の圧力が上昇する。
【0052】
誤解を避けるために明記すると、他の装置の構成要件に関して本明細書の上記および下記で記載している他の選択肢および選好は全て、これら両方の代替実施形態(すなわち、流体リザーバを中空シリンダにしっかりと装着しているかどうかにかかわらず)に適用することができる。
【0053】
一実施形態では、この流体リザーバは、可撓性または弾性の壁などによって折り畳み可能となるように設計されている。このような設計を用いる効果として、リザーバの漸次排出を伴う本装置の繰り返し使用時に、たとえばリザーバの内部容積を減少させるように可撓性または弾性の壁が撓んだり、折れ曲がったりするため、一定量の液体を抽出するのに必要となる負圧を、使用時間にわたって実質的に上昇させる必要がなくなる。具体的には、このリザーバを折り畳み式バッグとして設計してもよい。折り畳み式バッグにする利点は、リザーバ内の圧力が充填レベルにほとんど依存せず、熱膨張の影響をほとんど無視できることにある。また、そのようなリザーバタイプの作製は比較的簡単で、すでに十分確立されている。
【0054】
同様の効果は、可動底部(または壁)を有する剛性容器でも得ることができ、この剛性容器を使用しても、リザーバの内部容積を漸次的に減少させることができる。
【0055】
本発明により提供する吸入装置のさらなる具体的かつ有利な実施形態は、以下の通りである。
(a)ハウジングと、このハウジング内における液体を貯蔵するリザーバと、自身の内部で圧力を発生させるポンプ室を有するポンプ装置であって、前記ポンプ室は、リザーバの方向に閉鎖する逆止弁を介してリザーバに流体接続されている、ポンプ装置と、リザーバに対向する少なくとも1つの内側端部で前記ポンプ室内に収容され得るライザ管と、ライザ管の外側端部と液密に接続されるノズルとを備え、ポンプ室の内部容積は、ライザ管に対するポンプ室の相対運動によって可変である、エアロゾルを生成するための医学的に活性な液体の吸入装置であって、ライザ管がハウジングまたはノズルに対して不動となり、かつしっかりと装着されており、またポンプ室がハウジングまたはノズルに対して可動となることを特徴とする、エアロゾルを生成するための医学的に活性な液体の吸入装置。
(b)位置エネルギーを蓄積する手段をさらに備え、またポンプ室に連結され、かつ装填位置でロック可能となり、ロック解除時に、蓄積されたエネルギーをポンプ室の運動へと転換することができる、実施形態(a)に記載の吸入装置。
(c)逆止弁は、逆止弁の上流側と下流側との圧力差が所定の閾値を超えた場合にのみ開放するように適合されている、実施形態(a)または(b)に記載の吸入装置。
(d)液体または空気がライザ管の外側端部に向かって返流されるのを防止するための吐出弁を、ライザ管内にさらに備える、実施形態(a)から(c)のいずれか1つに記載の吸入装置。
(e)液体または空気がライザ管の外側端部に向かって返流されるのを防止するための吐出弁を、ライザ管とノズルとの間にさらに備える、実施形態(a)から(d)のいずれか1つに記載の吸入装置。
(f)リザーバはポンプ室にしっかりと装着され、その結果ハウジング内で可動となる、実施形態(a)から(e)のいずれか1つに記載の吸入装置。
(g)リザーバは可撓体によってポンプ室に接続され、かつハウジングにしっかりと装着されている、実施形態(a)から(e)のいずれか1つに記載の吸入装置。
(h)リザーバは折り畳み式バッグとして設計されている、実施形態(a)から(g)のいずれか1つに記載の吸入装置。
【0056】
さらなる態様では、本発明は、医学的に活性な液体の噴霧エアロゾルを生成する方法を提供する。本方法は、本明細書の上記でその実施形態のいずれかにおいて記載している吸入装置の使用を伴ってもよい。したがって、本吸入の構成要件に関して上述した選択肢および選好は全て、本発明によって提供する方法にも適用することができる。
【0057】
具体的には、本方法は、
(a)先行する請求項のいずれか一項で定義している携帯型吸入装置を設けるステップであって、前記吸入装置の流体リザーバは医学的に活性な液体を含み、前記位置エネルギーを蓄積する手段はロック解除状態にある、ステップと、
(b)前記位置エネルギーを蓄積する手段にロック解除状態からロック状態へと自身の状態を変更させることにより、前記吸入装置をプライミングするステップであって、前記プライミングにより、たとえば流体リザーバから中空シリンダへと医学的に活性な液体が流入できるように、中空シリンダがライザ管上で、ポンプ装置の上流端部に向かって長手方向に反発移動する、ステップと、次いで
(c)前記位置エネルギーを蓄積する手段にロックを解除させることにより前記吸入装置を作動させるステップであって、前記作動により、ポンプ装置の下流端部に向かってシリンダが長手方向に推進移動し、中空シリンダからノズルを通って下流方向に医学的に活性な液体が放出される、ステップとを含む。
【0058】
本発明によれば、ハウジングおよびノズルに対して中空シリンダが移動する間、ライザ管は不動のままとなるが、ポンプ室を供給しているシリンダは自身の相対位置を変更している。換言すれば、ポンプ室はハウジング内で移動可能に支持されているのに対し、ライザ管とノズルとはハウジングおよび/またはノズルにしっかりと不動状態で、または固定状態で装着されている。
【0059】
とりわけ有利な吸入装置の使用を主としているため、本方法は、ライザ管に相当する構成部品、すなわち中空ピストンがハウジングおよびノズルに対して可動となり、ライザ管が固定状態となる、当技術分野で知られている方法に改良をもたらす。
【0060】
さらに好ましい実施形態によれば、ここで記載している本方法は、前述の構成要件のうちの1つ、いくつか、または全てを提供する吸入装置によって実行されるものであり、これらの構成要件にはたとえば、中空シリンダにしっかりと装着されるか、またはハウジングにしっかりと装着され、折り畳み式バッグとして設けられていてもよいリザーバと、閾値圧力差を使用することにより作動されてもよい吸入逆止弁と、たとえば、ばねなどの位置エネルギーを蓄積する手段と、ロック装置と、たとえばライザ管内、またはライザ管とノズルとの間に配置される吐出弁とが含まれる。前記構成要件のそれぞれの動作に関する説明については、本明細書において本装置のそれぞれの構成要件に関連するセクションを参照されたい。
【0061】
さらなる具体的かつ有利な実施形態によれば、本発明は、ハウジングと、ポンプ室を有するポンプ装置と、ライザ管と、ノズルとを備える吸入装置によって、医学的に活性な液体のエアロゾルを生成する方法を提供するものであり、本方法は、
-ポンプ室の内部容積が減少し、この内容積部に収容される液体の圧力が上昇するように、ライザ管の内側端部をポンプ室の内容積部へと移動させるステップと、
-噴霧液が生成されるように、前記ライザ管の外側端部およびノズルを介して前記液体を放出するステップとを実行することを含み、
本方法は、前記運動中、ハウジングおよび/またはノズルに対して前記ライザ管が不動のままとなるのに対し、前記ポンプ室が自身の相対位置を変更していることを特徴としている。
【0062】
上記で示したように、本発明は既知の技術の欠点を解決する。また、高粘度の液体から生成されるエアロゾルの噴霧化および送達を短時間で、かつ高い再現性の下で実現している。
【0063】
図面の詳細な説明
【0064】
図1では、本発明による吸入装置の好ましい実施形態の1つが概略的に示されているが、これは縮尺通りではない。図1は初回使用前の状況を示す。
【0065】
本吸入装置は、好ましくは片手で把持でき、たとえば親指または人差し指(図示せず)など、1本の指で操作できるような形状および寸法であるハウジング(1)を備える。医学的に活性な液体(F)を貯蔵する流体リザーバ(2)は、ハウジング(1)内に配置されている。ここで図示しているリザーバ(2)は、リザーバから液体を引き出すのに必要となる負圧が時間の経過とともに実質的に一定のままとなるように、本装置を繰り返し使用することによってリザーバが空になっていく過程で、軟質または弾性の壁が変形する形態で、折り畳み可能となるように設計されている。同様の効果は、可動底部を有する剛性容器でも得ることができ、この剛性容器を使用しても、リザーバの内部容積を漸次的に減少させることができる(図示せず)。
【0066】
さらに、本吸入装置は、液体(F)を放出し、かつこれを噴霧化するのに必要となる所望の圧力を発生させるポンプ室(3)を形成している中空シリンダ(9)をハウジング(1)内に有する、ポンプ装置を備える。このポンプ装置は、押しボタンまたはロック装置など、図面に示していない別の構成部品をさらに備えてもよい。
【0067】
位置エネルギーを蓄積する手段(7)としてばねが設けられており、このばねは、一方の端部(上向き、または下流)でシリンダ(9)に連結され、かつハウジング(1)に支持されている(図の下部)。
【0068】
本吸入装置は、リザーバに対向しているか、または上流の、前記シリンダ(9)内に収容され得る少なくとも1つの内側端部(5A)を有するライザ管(5)をさらに備える。換言すれば、ライザ管(5)を少なくとも部分的に中空シリンダ(9)内に押し込むことができ、その結果として、ポンプ室(3)の内部容積が減少する。この「内部容積」という用語は、シリンダ(9)においてリザーバに対向している入口から、ライザ管(5)の内側端部(5A)が位置する場所まで延在している空間の容積を表す。ここで図示している状況では、ライザ管(5)はほぼ完全にシリンダ(9)に収容されている。その結果、吸入弁(4)とライザ管(5)の内側端部(5A)との間に位置するポンプ室(3)の内部容積が最小となる。
【0069】
好ましくは、ポンプ室(3)として機能するか、またはこれを収容し、かつライザ管(5)を収容している中空シリンダ(9)のセクション(またはセグメント)は円形の内側断面を呈し、その直径は、ライザ管(5)において対応するセグメントが有する円形の外側断面の直径と比較的近似して(たとえば小さな隙間を除いて)一致している。他の(たとえば、非円形の)断面形状も同様に使用可能であることは言うまでもない。
【0070】
図示の実施形態によれば、吸入弁(4)は、リザーバ(2)とシリンダ(9)によって形成されるポンプ室(3)の入口との間に配置されている。
【0071】
さらに、本吸入装置は、ライザ管(5)の外側(または下流)端部(5B)と液密に接続されるノズル(6)を備える。ノズル(6)は、少なくとも2つの液体噴流の衝突によって噴霧エアロゾルを発生させる、衝突型ノズルである。好ましくは、液体含有流路の断面は比較的小さく、典型的にはミクロンの範囲にある。
【0072】
また、ライザ管(5)内に配置される、液体または空気が外部からライザ管の外側端部(5B)へと逆流するのを防止するための任意選択の吐出弁(8)が示されている。吐出弁(8)はライザ管(5)の内側端部(5A)に配置されている。液体(F)はノズル(6)の方向に吐出弁(8)を通過できるが、この吐出弁(8)は反対方向において不要な逆流を遮断している。
【0073】
図1に示すように、ライザ管(5)はハウジング(1)に対して不動となるように設計されており、外側端部(5B)の領域でのハウジング(1)との接続によって示しているように、ハウジング(1)にしっかりと装着されている。ライザ管(5)はノズル(6)にもしっかりと装着されており、ノズル(6)も同様にハウジング(1)に装着されている。これに対して、ポンプ室(3)を供給している中空シリンダ(9)は、ハウジング(1)およびノズル(6)に対して可動となるように設計されている。この設計の利点についてはすでに説明しているので、上記の説明に関する各セクションを参照されたい。
【0074】
図2を参照すると、図1のものと同様の装置が示されている。しかしながら、図2に示す実施形態は前記(任意選択の)吐出弁(8)を欠いている。他の構成部品は全て存在し、その機能も同等である。本実施形態では、ポンプ室(3)は吸入弁(4)の下流からノズル(6)まで延在しており、ノズルは流体抵抗が著しく増大する場所である。ライザ管(5)の内径がとりわけ小さくなる代替実施形態では、ポンプ室(3)は吸入弁(4)の下流からライザ管(5)の上流内側端部(5A)までしか延在していない。
【0075】
図3は、ポンプ室が充填された状態の、図1の実施形態を示す。中空シリンダ(9)は自身の最上流位置に移動しており、これにより、位置エネルギーを蓄積する手段(7)が装填されている。ポンプ室(3)内の負圧により吐出弁(8)が閉鎖し、吸入弁(4)が流体リザーバ(2)に向かって開放している。リザーバ(2)の壁の折れ込みが進むと、リザーバ(2)の内圧はほぼ一定に保たれるが、ポンプ室(3)内の圧力は中空シリンダ(9)による長手方向への推進移動により低下するため、ポンプ室(3)の容積が増加することになる。その結果、リザーバ(2)からの液体(F)でポンプ室(3)が充填されることになる。
【0076】
図4には、図1の吸入装置による初回の作動終了後の状況が示されている。位置エネルギーを蓄積する手段(7)は、図3に示す装填位置から解放されている。前記手段は、たとえばライザ管(5)の上をスライドさせるように、シリンダ(9)を下流方向に押圧する。ライザ管(5)の内側端部(5A)は、この時点では閉鎖している吸入逆止弁(4)に接近している。その結果、ポンプ室(3)内の圧力が上昇し、吸入弁(4)は閉鎖したままとなるが、吐出弁(8)は開放する。液体(F)は、ライザ管(5)からその外側端部(5B)を通り、ノズル(6)に向かって流れることになる。
【0077】
図5は、エアロゾル放出段階終了時の状況における図1の装置を示す。位置エネルギーを蓄積する手段(7)は、その最も弛緩した終端位置(ばねが完全に伸長した位置)にある。また、ポンプ室(3)の内部容積が最小に到達するように、中空シリンダ(9)はほぼ完全にライザ管(5)へと押し込まれている。それ以前にポンプ室(3)に収容されていた液体(F)のほとんどは、吐出弁(8)を通過してライザ管(5)の主セグメントへと向かっている。ノズル(6)に向かって、かつこれを通って一部の液体(F)が押し出され、ノズルで噴霧が発生し、その結果、噴霧エアロゾルがユーザまたは患者に向けて放出されることになる。
【0078】
図6には、ポンプ室の再充填後の状況における図1の装置が示されている。中空シリンダ(9)は(反発的に)上流方向に移動しているため、シリンダ(9)によって供給されているポンプ室(3)の容積が増加している。位置エネルギーを蓄積する手段(7)が装填されている(ばねが圧縮されている)。シリンダ(9)がノズル(6)から離間移動する間にポンプ室(3)で負圧が発生し、これによって吐出弁(8)が閉鎖し、吸入逆止弁4が開放する。その結果、液体(F)がさらにリザーバ(2)からポンプ室(3)へと引き込まれる。本吸入装置のポンプ室(3)が再充填され、ばねを解放することで液体(F)の次の放出に向けた準備が整う。
【符号の説明】
【0079】
1 ハウジング
2 流体リザーバ、リザーバ
3 ポンプ室
4 吸入弁
5 ライザ管
5A 内側端部
5B 外側端部
6 ノズル
7 位置エネルギーを蓄積する手段、手段
8 吐出弁
9 中空シリンダ、シリンダ
F 液体、流体

図1
図2
図3
図4
図5
図6