(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】検査システムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20230510BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2020011912
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 亮介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 雄史
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0010710(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1372836(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1470878(KR,B1)
【文献】特開2014-185878(JP,A)
【文献】実開昭63-97485(JP,U)
【文献】特開2012-211836(JP,A)
【文献】特開2017-7026(JP,A)
【文献】特開2003-136171(JP,A)
【文献】特開2019-66222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
B25J 1/00 - B25J 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばねを保持する保持部と、前記ばねの座面を撮像するカメラを含む撮像部と、を有し、前記ばねの座面と前記カメラを相対的に移動させる搬送装置と、
前記ばねの座面の傾きを検出する検出装置と、
前記検出装置が検出した傾きに基づいて前記搬送装置を制御し、前記ばねの座面と前記カメラを正対させ、前記カメラに前記ばねの座面を撮像させる制御装置と、
を備える検査システム。
【請求項2】
前記撮像部は、さらに前記ばねの座面を照らす円形の開口を有する照明を含み、
前記カメラと前記開口が同軸上に配置されている、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記照明は、前記カメラの撮像方向において前記カメラと距離を空けて配置され、
前記撮像部は、前記照明の前記カメラと反対側の面に取付けられ前記開口よりも径の小さい円形の窓部を有する遮光板を含み、
前記制御装置は、前記搬送装置を制御して、前記ばねを前記窓部に通すとともに前記ばねの座面を前記開口の中央に配置させる、
請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記ばねは、第1座面と、前記第1座面の反対側の第2座面とを有し、
前記撮像部が前記第1座面を撮像する際に、前記検出装置が前記第2座面の傾きを検出する、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記保持部を移動させるアームを含む第1ロボットと、前記撮像部を移動させるアームを含む第2ロボットと、を備える、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項6】
ばねの座面を検査する検査方法であって、
前記ばねを保持し、
保持した前記ばねの座面の傾きを検出し、
検出した前記傾きに基づいて前記ばねの座面とカメラを正対させ、前記カメラにより前記ばねの座面を撮像する、
検査方法。
【請求項7】
前記ばねは、第1座面と、前記第1座面の反対側の第2座面とを有し、
前記カメラにより前記第1座面を撮像する際に、前記第2座面の傾きを検出する、
請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記カメラにより前記第1座面を撮像した後、検出した前記第2座面の傾きに基づいて前記第2座面と前記カメラを正対させ、前記カメラにより前記第2座面を撮像する、
請求項7に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねの座面の検査システムおよび検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ばねの製造工程においては、コイリングされた線材が切断されてばねが成形され、当該ばねの座面が研磨される。さらに、ばねの座面の研磨不良や端末位置を確認するために座面検査が行われている。
【0003】
近年では、各種製品の製造工程を自動化するための種々の技術が開発されている(例えば特許文献1参照)。上述のばねの座面検査を一つずつ目視により行うと膨大な時間を要するため、座面検査においても自動化が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ばねの座面検査を自動化するための手段の一つとして、カメラを用いた画像検査がある。しかし、ばねの座面に対してカメラが傾いているとピントが合わない等の不具合が生じ、画像検査で誤判定が発生する原因となる。
【0006】
本発明の目的の一つは、ばねの座面を正確に検査することが可能な検査システムおよび検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る検査システムは、搬送装置と、検出装置と、制御装置とを備えている。前記搬送装置は、ばねを保持する保持部と、前記ばねの座面を撮像するカメラを含む撮像部と、を有し、前記ばねの座面と前記カメラを相対的に移動させる。前記検出装置は、前記ばねの座面の傾きを検出する。前記制御装置は、前記検出装置が検出した傾きに基づいて前記搬送装置を制御し、前記ばねの座面と前記カメラを正対させ、前記カメラに前記ばねの座面を撮像させる。
【0008】
前記撮像部は、さらに前記ばねの座面を照らす円形の開口を有する照明を含み、前記カメラと前記開口が同軸上に配置されてもよい。
【0009】
前記照明は、前記カメラの撮像方向において前記カメラと距離を空けて配置され、前記撮像部は、前記照明の前記カメラと反対側の面に取付けられ前記開口よりも径の小さい円形の窓部を有する遮光板を含んでもよい。前記制御装置は、前記搬送装置を制御して、前記ばねを前記窓部に通すとともに前記ばねの座面を前記開口の中央に配置させてもよい。
【0010】
前記ばねは、第1座面と、前記第1座面の反対側の第2座面とを有し、前記撮像部が前記第1座面を撮像する際に、前記検出装置が前記第2座面の傾きを検出してもよい。
【0011】
前記搬送装置は、前記保持部を移動させるアームを含む第1ロボットと、前記撮像部を移動させるアームを含む第2ロボットと、を備えてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る検査方法は、ばねの座面を検査する検査方法であって、前記ばねを保持し、保持した前記ばねの座面の傾きを検出し、検出した前記傾きに基づいて前記ばねの座面とカメラを正対させ、前記カメラにより前記ばねの座面を撮像する。
【0013】
前記ばねは、第1座面と、前記第1座面の反対側の第2座面とを有し、前記カメラにより前記第1座面を撮像する際に、前記第2座面の傾きを検出してもよい。
【0014】
前記カメラにより前記第1座面を撮像した後、検出した前記第2座面の傾きに基づいて前記第2座面と前記カメラを正対させ、前記カメラにより前記第2座面を撮像してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ばねの座面を正確に検査することが可能な検査システムおよび検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る検査システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る検査システムの概略的な斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る検出装置の概略的な正面図である。
【
図4】
図4は、
図3のB-B線に沿う検出装置の概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る撮像部の概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す状態でカメラが撮像した画像のイメージ図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る検査システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、主にばねの座面検査での使用を想定した検査システムおよび検査方法を開示する。各図においては、検査システムを構成する各部材の相対的な大きさや位置を模式的に示すことがある。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る検査システム100の概略的な構成を示す図である。検査システム100は、たとえば、ばねの座面検査において使用される。座面検査は、ばねの製造工程において、コイリングや座面研磨等の前工程の後に実施される後工程のうちの一つである。座面検査では、ばねの座面の研磨具合や端末が規定位置にあるかを検査する。他にも、座面検査では、座面の寸法や形状等を検査してもよい。本実施形態で検査対象となるばねは、たとえば、軸が円弧状の圧縮アークコイルばね等である。ただし、本実施形態に係る検査システム100は、軸が直線状のコイルばね等の検査にも利用できる。
【0019】
検査システム100は、搬送装置10と、検出装置20と、制御装置30と、を備えている。搬送装置10と検出装置20は、制御装置30とそれぞれ通信可能に接続されている。制御装置30は、搬送装置10と検出装置20をそれぞれ制御可能に構成されている。
【0020】
搬送装置10は、第1ロボット40と、第2ロボット50と、を備えている。第1ロボット40は、アーム41と、保持部42と、を備えている。保持部42は、ハンド43a,43bを有している。ハンドの数は、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。2つのハンド43a,43bが検査対象のばね1を保持する。ばね1は、第1座面1aおよび第1座面1aと反対側の第2座面1bを有している。第1ロボット40は、制御装置30と接続されている。
【0021】
第2ロボット50は、アーム51と、撮像部52と、を備えている。撮像部52は、カメラ53と、照明54と、を有している。カメラ53は、ばね1の座面1a,1bの座面検査に使用される画像を撮像するために使用される。第2ロボット50は、制御装置30と接続されている。
【0022】
検出装置20は、ばね1の座面1a,1bの傾きを検出する。本実施形態において、検出装置20は、カメラ21と、照明22と、複数の変位計23と、を有している。カメラ21はばね1の座面1a,1bを撮像し、各変位計23は座面1a,1bまでの距離を計測する。各変位計23により得られる座面1a,1bの複数個所の計測値により、座面1a,1bの傾きが示される。
【0023】
制御装置30は、搬送制御モジュール31と、検出モジュール32と、検査モジュール33と、を含んでいる。搬送制御モジュール31は、第1ロボット40と第2ロボット50の動作をそれぞれ制御する。検出モジュール32は、検出装置20の動作を制御し、カメラ21によって撮像された画像データに基づいて3次元空間におけるばね1の座面1a,1bの位置を表す座標データを生成するとともに、変位計23の計測値に基づいて座面1a,1bの傾きを表す傾きデータを生成する。さらに検出モジュール32は、生成した座面1a,1bの傾きデータに基づき、カメラ53がばね1の座面1a,1bに対して正対するための補正データを生成する。ここで、「正対する」とは、ばね1の座面1a,1bが存在する平面に対してカメラ53の撮像方向が垂直となるように、カメラ53がばね1の座面1a,1bに対して向かい合うことをいう。検査モジュール33は、撮像部52を制御し、座面1a,1bをカメラ53で撮像し、撮像した画像データから座面検査を実行する。
【0024】
検査システム100は、
図1に示した構成要素以外の他の要素を含むものとして定義されてもよい。また、検査システム100は、独立したシステムとして構成されてもよいし、他のシステムの一部として組み込まれてもよい。
【0025】
図2は、本実施形態に係る検査システム100の概略的な斜視図である。
図2においては、検査システム100の主たる構成要素である搬送装置10および検出装置20を示している。
【0026】
第1ロボット40は、例えば、複数のアーム41を含む垂直多関節ロボットである。各関節にはモータ等が内蔵されており、各関節の軸を中心に各アーム41が回動運動することが可能である。アーム41の先端にハンド43a,43bを含む保持部42が配置されている。ばね1の軸が円弧状であるため、ばね1の軸に沿う様にハンド43a,43bが配置されている。第1ロボット40は、制御装置30から出力される信号に応じて各関節を駆動させることで、ばね1を搬送することができる。2つのハンド43a,43bでばね1を保持することで、ばね1を安定して搬送することが可能である。
【0027】
第2ロボット50は、例えば、複数のアーム51を含む垂直多関節ロボットである。各関節にはモータ等が内蔵されており、各関節の軸を中心に各アーム51が回動運動することが可能である。アーム51の先端に撮像部52が配置されている。撮像部52は、上述のカメラ53および照明54に加え、プレート55を有している。第2ロボット50は、制御装置30から出力される信号に応じて各関節を駆動させることで、カメラ53をばね1の座面1a,1bに対して正対する位置に配置することができる。カメラ53に対してばね1の第1座面1aが正対するように第1ロボット40の保持部42を動作させてもよい。
【0028】
本実施形態においては、固定的に設置されている検出装置20に対して、第1ロボット40がばね1を搬送する。しかし、保持されたばね1に対して検出装置20を動作させてもよい。
【0029】
図示した例においては、搬送装置10および検出装置20の間に座面検査後のばね1を投入するための仕分け箱Cが設置されている。本実施形態においては、カメラ53で撮像された画像データと予め設定された基準に基づき、座面検査の合否が判定される。さらに、その判定結果に応じてばね1が仕分けされる。図示した例においては、4種類の判定結果に基づいて、検査後のばね1が4つの仕分け箱C1乃至C4のいずれかに収容される。
【0030】
図3は、本実施形態に係る検出装置20の概略的な正面図である。図示したように、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を定義する。Z方向は、例えば鉛直方向と平行である。以下の説明においては、Z方向を上と呼び、Z方向と反対の方向を下と呼ぶことがある。
【0031】
検出装置20は、上述のカメラ21、照明22、および6個の変位計23に加え、プレート24を有している。カメラ21は、撮像方向がZ方向と一致するように設置されている。照明22は、カメラ21に向かって光を照射するように設置されている。カメラ21は、例えば、CMOSカメラやCCDカメラなどである。照明22は、例えば、LED照明などである。変位計23は、Y-Z平面と平行なプレート24の主面において円周状に均等に設置されている。変位計23は、例えば、非接触式のレーザー変位計などである。
【0032】
図4は、
図3のB-B線に沿う検出装置20の概略的な断面図である。
図4を用いて、検出装置20がばね1の第1座面1aに対して行う動作を以下に説明する。
【0033】
まず、制御装置30に制御された第1ロボット40により、ばね1がハンド43a,43bによって保持された状態で第1座面1a側から検出装置20に向かって搬送される。搬送されたばね1の第1座面1aが、カメラ21と照明22の間の領域A1に配置される。領域A1に配置されたばね1に対して照明22から照明光が照射され、カメラ21によってばね1が撮像される。撮像された画像データは、制御装置30に出力される。カメラ21によって撮像された画像データから、第1座面1aのX-Y-Z空間における位置を表す座標データを生成することが可能となる。
【0034】
次に領域A1内にある第1座面1aに対して、変位計23からレーザーが照射される。変位計23は、第1座面1aで反射されたレーザーを受光することで、変位計23から第1座面1aまでの距離を計測する。各変位計23からばね1の軸を中心とする円周方向に所定間隔ごとに第1座面1aにレーザーを照射することで、第1座面1aまでの距離を複数箇所で計測することができる。本実施形態においては、変位計23が6個配置されているため、第1座面1aまでの距離を6箇所計測できる。各変位計23で計測された計測値は、制御装置30に出力される。各計測値から、X-Y-Z空間における第1座面1aの傾きデータを生成することが可能となる。座面1a,1bの座標データおよび傾きデータを生成する手段は、本実施形態に示す方法に限られるものではない。
【0035】
図5は、本実施形態に係る撮像部52の概略的な断面図である。図示した例においては、ばね1の第1座面1aの傾きに基づいて、撮像部52の姿勢(傾き)が補正されている。第1座面1aの反対側の第2座面1bを撮像する際には、第2座面1bの傾きに基づいて、撮像部52の姿勢が再度補正される。
【0036】
撮像部52は、上述のカメラ53、照明54、およびプレート55に加え、遮光板56を有している。カメラ53と照明54は、一体的な動作が可能となるように、プレート55を介して接続されている。一体的な動作とは、カメラ53と照明54が互いの位置関係を保持したまま同時に動作することをいう。つまり、カメラ53と照明54は、第1座面1aの傾きに基づいて、同時に姿勢が補正されるといえる。なお、カメラ53と照明54は、分離して配置され、別々に姿勢が補正されるような構成であってもよい。
【0037】
照明54は、カメラ53の撮像方向において、カメラ53と一定間隔をあけて配置されている。照明54は、中央に円形の開口部54aを有している。さらに照明54は、開口部54a内に光を放つ環状に配置された複数の発光素子を有している。
【0038】
照明54は、カメラ53の撮像方向において、カメラ53と反対側の面54bを有している。遮光板56は、面54bに配置されている。遮光板56は、開口部54aと同心円状の窓部56aを有している。窓部56aの直径は、開口部54aの直径よりも小さい。すなわち、遮光板56は、窓部56aの周縁部に突出している。カメラ53、照明54、開口部54a、遮光板56、および窓部56aは、カメラ53の撮像方向と平行な軸に対して同軸上に配置されている。
【0039】
ここで、撮像部52によりばね1の第1座面1aを撮像する手順を以下に説明する。まず、制御装置30に制御された第1ロボット40により、ばね1がハンド43a,43bによって保持された状態で第1座面1a側から撮像部52に向かって搬送される。搬送されたばね1の第1座面1aが窓部56aに通されるとともに、第1座面1aが開口部54aの中央に配置される。このとき、第1座面1aは開口部54a内に位置し、カメラ53側には突出していない。
【0040】
制御装置30に制御された第2ロボット50は、検出モジュール32によって生成された第1座面1aの傾きデータに基づいて、カメラ53が第1座面1aに対して正対するように撮像部52の姿勢を補正する。図示した例においては、第1座面1aの傾きデータに基づいて、撮像部52の姿勢が通常時姿勢(
図5破線部分)から補正されている。通常時姿勢は、例えばカメラ53の撮像方向がX方向と平行になる姿勢である。第2ロボット50は、図示したようにX方向に対する撮像部52の傾きを補正するだけでなく、Y方向およびZ方向に対する撮像部52の傾きも補正することができる。第1座面1aの傾きデータに基づいてあらかじめ撮像部52の姿勢が補正された後、第1座面1aがばね1の開口部54a内に位置するようにばね1が搬送されてもよい。
【0041】
撮像部52の姿勢が補正された後、照明54から第1座面1aの周囲に向かって照明光が照射される。照明光が照射されることで、カメラ53で撮像する画像に第1座面1aの輪郭を浮かび上がらせることができる。また、遮光板56の窓部56aが開口部54aの直径よりも径が小さいため、ばね1のうち遮光板56よりも第2座面1b側に位置する部分には照明光が届きにくくなる。これにより、第1座面1aの輪郭のみを浮かび上がらせることができる。
【0042】
第1座面1aに照明光が照射された状態で、カメラ53によって第1座面1aが撮像される。撮像された画像データは、制御装置30に出力される。カメラ53によって撮像された画像データに基づいて、第1座面1aの座面検査が制御装置30によって実行される。
【0043】
図6は、
図5に示す状態でカメラ53が撮像した画像のイメージ図である。
図6(a)は座面検査に適した画像を示し、
図6(b)は座面検査に不適な画像を示す。
【0044】
図6(a)の画像は、第1座面1aとカメラ53が正対するように撮像部52の姿勢が補正された状態でカメラ53により撮像された画像である。この場合、照明光が第1座面1aの周囲から均一に照射される。よって、第1座面1aの輪郭L1,L2や端末P1を明確に認識することが可能な画像を得ることが可能となる。このような画像であれば、第1座面1aが良好に研磨されているか否かの判定や、端末P1が規定位置に位置しているかの判定を正確に実施できる。
【0045】
一方、
図6(b)の画像は、撮像方向が第1座面1aに対して傾いたカメラ53により撮像された画像である。この場合、照明光が第1座面1aの周囲から均一に照射されないばかりでなく、カメラのピントが第1座面1aに合わない。そのため、撮像された画像に輪郭L3,L4や端末P2のような不鮮明な部分(
図6破線部分)が発生する。このように不鮮明な部分を有する画像では、第1座面1aが良好に研磨されているか否かの判定や端末が規定位置に位置しているかの判定を実施できない、もしくは判定に使用した場合には誤判定の原因となる。そのため、当該画像は座面検査の使用に適していない。
【0046】
図7は、本実施形態に係る検査システム100の動作(検査方法)の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す動作は、制御装置30によって実行される。制御装置30は、プロセッサやメモリ等で構成されたコンピュータを含む。例えば、制御装置30が備えるプロセッサがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、上述の搬送制御モジュール31と、検出モジュール32と、検査モジュール33が実現される。コンピュータプログラムの実行は、複数のプロセッサを用いて実現されてもよい。また、制御装置30はPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)により構成されてもよい。各モジュール31乃至33の少なくとも一つは、制御装置30とは独立した個別の装置であってもよい。
【0047】
まず、検査システム100の動作が開始すると、搬送制御モジュール31は、第1ロボット40のアーム41をばね1が設置された場所まで移動させ、保持部42にばね1を保持させる(ステップS101)。ばね1を保持した後、搬送制御モジュール31は、第1ロボット40にばね1を搬送させ、第1座面1aを検出装置20の近傍に移動させる(ステップS102)。この際、第1座面1aが
図4に示した領域A1に位置決めされる。
【0048】
領域A1に第1座面1aが位置決めされると、検出モジュール32がカメラ21に第1座面1aを撮像させる(ステップS103)。撮像された画像データには、ノイズ除去等の必要な画像処理が施される。検出モジュール32は、画像処理が施された画像データに基づき、X-Y-Z空間における第1座面1aの位置を表す座標データを生成する(ステップS104)。
【0049】
第1座面1aの座標データを生成した後、検出モジュール32は、変位計23に第1座面1aまでの距離を計測させる(ステップS105)。検出モジュール32は、変位計23で計測された計測値から、第1座面1aの傾きを表す傾きデータを生成する(ステップS106)。検出モジュール32は、ステップS104にて生成された第1座面1aの座標データとステップS106にて生成された第1座面1aの傾きデータに基づいて、第2ロボット50が有する撮像部52の位置と姿勢の補正データを生成する(ステップS107)。
【0050】
次に、搬送制御モジュール31は、第1ロボット40にばね1を搬送させ、第1座面1aを撮像部52に移動させる(ステップS108)。この際、第1座面1aは窓部56aに通されるとともに、開口部54aの中央に位置決めされる。同時に、第2座面1bは検出装置20の領域A1に位置決めされる。撮像部52に第1座面1aが移動すると、ステップS107で生成された補正データに基づき、搬送制御モジュール31が第2ロボット50に撮像部52の位置と姿勢を補正させる(ステップS109)。この補正においては、カメラ53が第1座面1aに正対し且つ第1座面1aが照明54の開口部54a内に位置するように、撮像部52のX-Y-Z空間における位置と、X方向、Y方向およびZ方向に対する傾きとが調整される。
【0051】
撮像部52の位置と姿勢が補正されると、検査モジュール33が、カメラ53に第1座面1aを撮像させる(ステップS110)。撮像された画像データには、ノイズ除去等の必要な画像処理が施される。そして、検査モジュール33は、画像処理が施された画像データに基づき、第1座面1aの座面検査を実行する(ステップS111)。
【0052】
カメラ53により第1座面1aが撮像される際、すでに第2座面1bは検出装置20の領域A1に位置決めされている。そのため、ステップS110,S111と並行して、検出モジュール32は第2座面1bの座標データや傾きデータを生成することが可能である。具体的には、検出モジュール32は、カメラ21に第2座面1bを撮像させる(ステップS112)。撮像された画像データには、ノイズ除去等の必要な画像処理が施される。検出モジュール32は、画像処理が施された画像データに基づき、X-Y-Z空間における第2座面1bの位置を表す座標データを生成する(ステップS113)。
【0053】
第2座面1bの座標データを生成した後、検出モジュール32は、変位計23に第2座面1bまでの距離を計測させる(ステップS114)。検出モジュール32は、変位計23で計測された計測値から、第2座面1bの傾きを表す傾きデータを生成する(ステップS115)。検出モジュール32は、ステップS113にて生成された第2座面1bの座標データとステップS115にて生成された第2座面1bの傾きデータに基づいて、第2ロボット50が有する撮像部52の位置と姿勢の補正データを生成する(ステップS116)。
【0054】
ステップS111,S116の処理が完了した後、搬送制御モジュール31は、第1ロボット40にばね1を搬送させ、第2座面1bを撮像部52に移動させる(ステップS117)。この際、第2座面1bは窓部56aに通されるとともに、開口部54aの中央に位置決めされる。撮像部52に第2座面1bが移動すると、ステップS116で生成された補正データに基づき、搬送制御モジュール31が第2ロボット50に撮像部52の位置と姿勢を再度補正させる(ステップS118)。この補正においては、カメラ53が第2座面1bに正対し且つ第2座面1bが照明54の開口部54a内に位置するように、撮像部52のX-Y-Z空間における位置と、X方向、Y方向およびZ方向に対する傾きとが調整される。
【0055】
撮像部52の位置と姿勢が補正されると、検査モジュール33が、カメラ53に第2座面1bを撮像させる(ステップS119)。撮像された画像データには、ノイズ除去等の必要な画像処理が施される。そして、検査モジュール33は、画像処理が施された画像データに基づき、第2座面1bの座面検査を実行する(ステップS120)。
【0056】
ステップS111における第1座面1aの座面検査とステップS120における第2座面1bの座面検査の検査結果に基づき、検査モジュール33は、ばね1の合否を判定する(ステップS121)。判定結果に基づき、搬送制御モジュール31は、第1ロボット40にばね1を仕分け箱C1乃至C4のいずれかに搬送させ、収容することでばね1の仕分けが実行される(ステップS122)。ステップS122を以て検査システム100による動作は終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る検査システム100は、ばね1の座面1a,1bの傾きに基づいてカメラ53を座面1a,1bに正対させることで、カメラ53で座面1a,1bを正確に撮像することが可能である。これにより、従来目視にて行われていた検査を自動化することが可能となり、作業工数を削減することができる。
【0058】
本実施形態においては、カメラ21で撮像された画像データに基づき生成された座面1a,1bの位置を表す座標データを用いて座面1a,1bを開口部54aの中央に位置決めする。その開口部54aの中央に位置決めされた座面1a,1bに対して撮像部52の姿勢を補正するので、カメラ53を座面1a,1bに対して正確に正対させることができる。また、座面1a,1bが開口部54aの中央に位置決めされることで、照明54から座面1a,1bの周囲に向かって照射された照明光によって、座面1a,1bの輪郭を浮かび上がらせることができる。その座面1a,1bをカメラ53で撮像することで座面検査に適した座面1a,1bの輪郭が明確に認識することが可能な画像データを取得することができる。当該画像データに基づき座面検査を実行することで検査の精度が向上する。
【0059】
特に軸が円弧状である圧縮アークコイルばねのような複雑な形状であっても、座面1a,1bの座標データや傾きデータからカメラ53を座面1a,1bに正対させることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、第1座面1aのカメラ53での撮像と、第2座面1bの検出装置20での座標および傾きの検出が同時に実行される。これにより、さらに作業工数を短縮することが可能となる。
【0061】
以上説明した実施形態は、発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明はその他の様々な形態で実施することが可能である。当該実施形態にて開示した構成やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…ばね、1a…第1座面、1b…第2座面、10…搬送装置、20…検出装置、21…カメラ、22…照明、23…変位計、30…制御装置、31…搬送制御モジュール、32…検出モジュール、33…検査モジュール、40…第1ロボット、41…アーム、42…保持部、50…第2ロボット、51…アーム、52…撮像部、A1…領域、C…仕分け箱、L…輪郭、P…端末