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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】信号伝達装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20230510BHJP
   H03K 19/0175 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H04L25/02 303B
H03K19/0175 280
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092232
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021027577
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2019141127
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】道下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一真
(72)【発明者】
【氏名】柳島 大輝
(72)【発明者】
【氏名】有村 昌彦
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-232052(JP,A)
【文献】特開2017-188903(JP,A)
【文献】特開2014-007502(JP,A)
【文献】特開2018-026389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0005009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H03K 19/0175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より入力される第1入力信号が二値レベルの一方から他方に変化するパルスエッジに応じて、第1周波数の第1パルス信号を一定期間だけ出力し、
前記二値レベルの他方から一方に変化するパルスエッジに応じて、第2周波数の第2パルス信号を一定期間だけ出力する信号出力部(6,34)と、
外部より入力される第2入力信号がアクティブレベルを示すと、前記二値レベルの他方から一方に変化するパルスエッジに応じて前記第2パルス信号を一定期間だけ出力した後に、当該第2パルス信号の周波数を第3周波数に変化させる変調部(16,34)とを有する送信回路(2)と、
前記第1及び第2パルス信号が一次巻線にそれぞれ入力され、二次巻線より第1及び第2誘起信号をそれぞれ出力する第1及び第2トランス(8H,8L)と、
前記第1誘起信号に応じて第1出力信号の二値レベルを一方から他方に変化させ、前記第2誘起信号に応じて前記二値レベルを他方から一方に変化させ、
前記第2誘起信号の周波数が前記第3周波数に変化したことを検出すると、第2出力信号をアクティブレベルに変化させる受信回路(4,33)とを備える信号伝達装置。
【請求項2】
前記変調部(16)は、前記第3周波数を前記第1及び第2周波数よりも低い値に設定し、
前記受信回路は、前記第1誘起信号によりセットされ、前記第2誘起信号によりリセットされることで前記第1出力信号の二値レベルを変化させるRSフリップフロップ(5)と、
前記第2誘起信号によりトリガされてアクティブレベルの信号を出力する第1ラッチ回路(19)と、
この第1ラッチ回路と直列に接続され、前記RSフリップフロップのセット信号レベルに基づきトリガされて第2出力信号を出力する第2ラッチ回路(20)と、
前記第2誘起信号によりリセットされ、前記第1出力信号の二値レベルが変化する期間よりも短く、且つ前記第3周波数の周期よりも長く設定される計時時間が経過すると、前記第1ラッチ回路をリセットするタイマ(17)とを備える請求項1記載の信号伝達装置。
【請求項3】
前記変調部(16)は、前記第3周波数を前記第1及び第2周波数よりも低い値に設定し、
前記受信回路は、前記第1誘起信号によりセットされ、前記第2誘起信号によりリセットされることで前記第1出力信号の二値レベルを変化させるRSフリップフロップ(5)と、
前記第2誘起信号によりトリガされてアクティブレベルの信号を出力する第1ラッチ回路(19)と、
この第1ラッチ回路と直列に接続され、前記第3周波数の周期よりも短い周期のクロック信号によりトリガされて第2出力信号を出力する第2ラッチ回路(20)と、
前記第1ラッチ回路の出力信号と、前記第2ラッチ回路の出力信号との何れかを選択して前記第2出力信号を出力するセレクタ(51)と、
前記第2誘起信号によりリセットされ、前記第1出力信号の二値レベルが変化する期間よりも短く、且つ前記第3周波数の周期よりも長く設定される計時時間が経過すると、前記第1ラッチ回路をリセットする第1タイマ(17)と、
前記RSフリップフロップのリセット信号レベルにより起動され、前記第1周波数の周期よりも長く設定される計時時間が経過すると、前記セレクタの選択状態を、前記第2ラッチ回路の出力信号から前記第1ラッチ回路の出力信号に切り替える第2タイマ(23)とを備える請求項1記載の信号伝達装置。
【請求項4】
前記変調部(34)は、外部より入力される第3入力信号がアクティブレベルを示すと、前記第2パルス信号の振幅を変化させ、
前記受信回路(33)は、前記第2誘起信号の周波数が前記第3周波数に変化すると共に、当該信号の振幅が変化したことを検出すると、第3出力信号をアクティブレベルに変化させる請求項1から3の何れか一項に記載の信号伝達装置。
【請求項5】
前記送信回路,前記トランス及び前記受信回路が1つのパッケージ内に封止されている請求項1からの何れか一項に記載の信号伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部より信号が入力される送信回路と、トランスと、そのトランスを介して信号が入力される受信回路とを備える信号伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、以下のような信号伝達装置が開示されている。送信側では、入力信号の二値レベルが変化するのに応じて、フリップフロップのセット信号とリセット信号とを2系統に分けて、それぞれパルス信号をN回発生させる。各パルス信号は、2つのトランスを介してそれぞれ送信される。受信側では、パルス信号をM(<N)回受信するとフリップフロップに対しセット信号,リセット信号を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-188903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、フリップフロップをセット/リセットするために2系統の信号経路を用いている。
これに対して本発明は、信号経路を3系統以上に増やすことなく、異なる制御に用いるためのデータを送信できる信号伝達装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の信号伝達装置によれば、送信回路の信号出力部は、第1入力信号が二値レベルの一方から他方に変化するパルスエッジに応じて第1周波数の第1パルス信号を一定期間だけ出力し、他方から一方に変化するパルスエッジに応じて第2周波数の第2パルス信号を一定期間だけ出力する。また、変調部は、第2入力信号がアクティブレベルを示すと、前記二値レベルの他方から一方に変化するパルスエッジに応じて第2パルス信号を一定期間だけ出力した後に、当該第2パルス信号の周波数を第3周波数に変化させる。第1及び第2パルス信号は、それぞれ第1及び第2トランスを介して第1及び第2誘起信号となり、受信回路に伝達される。
【0006】
受信回路は、第1誘起信号に応じて第1出力信号の二値レベルを一方から他方に変化させ、第2誘起信号に応じて同二値レベルを他方から一方に変化させる。そして、第2誘起信号の周波数が第3周波数に変化したことを検出すると、第2出力信号をアクティブレベルに変化させる。
【0007】
このように構成すれば、受信回路には、送信回路に入力される第1入力信号のレベル変化に応じて、パルス列信号である第1及び第2誘起信号が入力され、それに伴い第1出力信号の二値レベルが変化する。したがって、第1出力信号による制御対象となる回路を安定的に制御できると共に、第2出力信号を外部に出力してその他に制御を行うことが可能になる。したがって、回路構成を極力増大させることなく、第1及び第2出力信号を用いた制御を行うことができる。
【0008】
請求項2記載の信号伝達装置によれば、変調部は、第3周波数を第1及び第2周波数よりも低い値に設定し、受信回路のRSフリップフロップは、第1誘起信号によりセットされ、第2誘起信号によりリセットされることで第1出力信号の二値レベルを変化させる。第1ラッチ回路は、第2誘起信号によりトリガされてアクティブレベルの信号を出力し、直列に接続される第2ラッチ回路は、RSフリップフロップのセット信号レベルに基づきトリガされて第2出力信号を出力する。タイマは、第2誘起信号によりリセットされ、第1出力信号の二値レベルが変化する期間よりも短く、且つ第3周波数の周期よりも長く設定される計時時間が経過すると、第1ラッチ回路をリセットする。
【0009】
このように構成すれば、第2入力信号がインアクティブレベルを示している期間は、タイマは、第2誘起信号の入力が停止しても次に第1誘起信号が入力されるまでの間に上記計時時間を計時するので、第1ラッチ回路をリセットする。したがって、第2出力信号は出力されない。これに対して、第2入力信号がアクティブレベルを示すと、第2誘起信号の周波数はより低い第3周波数に変化する。
【0010】
そして、第2誘起信号の最後のパルスが入力されてから第1誘起信号の最初のパルスが入力されるまでの時間は第3周波数の周期以上となるので、第1ラッチ回路はリセットされず、第2ラッチ回路がRSフリップフロップのセット信号レベルに基づきトリガされて第2出力信号が出力される。このようにして、受信回路を構成できる。
【0011】
請求項3記載の信号伝達装置によれば、変調部,RSフリップフロップ及び第1ラッチ回路は、請求項2と同様に構成される。第1ラッチ回路に直列に接続される第2ラッチ回路は、第3周波数の周期よりも短い周期のクロック信号によりトリガされて第2出力信号を出力する。第1タイマは、請求項2のタイマと同様に第1ラッチ回路をリセットする。 セレクタは、第1,第2ラッチ回路の出力信号の何れかを選択して第2出力信号を出力する。第2タイマは、RSフリップフロップのリセット信号レベルにより起動され、第1周波数の周期よりも長く設定される計時時間が経過すると、セレクタの選択状態を、第2ラッチ回路の出力信号から第1ラッチ回路の出力信号に切り替える。
【0012】
このように構成すれば、第2入力信号がインアクティブレベルを示している期間は、請求項2と同様に第2出力信号は出力されず、第2入力信号がアクティブレベルを示すと、第2誘起信号の周波数は同じく第3周波数に変化する。そして、第2誘起信号の最後のパルスが入力されてから第1誘起信号の最初のパルスが入力されるまでの期間には、第1ラッチ回路はリセットされない。
【0013】
セレクタは初期状態で、第2ラッチ回路の出力信号を選択しているので、第2出力信号のレベルは第1ラッチ回路のリセット信号レベルとなる。第2タイマが、RSフリップフロップのリセット信号レベルで起動されて計時時間が経過すると、セレクタは、第1ラッチ回路の出力信号を選択する。これにより、第2入力信号がアクティブレベルを示し、第2誘起信号により第1ラッチ回路がトリガされると、第1出力信号がインアクティブレベルに変化した時点を基準として、第2タイマの計時時間が経過した後、第2ラッチ回路がクロック信号によりトリガされると第2出力信号が出力される。したがって、第2タイマの計時時間により、第2出力信号が出力されるタイミングを制御できる。尚、第1~第3周波数は、請求項2における第1~第3周波数と同じ値にする必要はない。
【0014】
請求項4記載の信号伝達装置によれば、送信回路の変調部は、第3入力信号がアクティブレベルを示すと第2パルス信号の振幅を変化させ、受信回路は、第2誘起信号の周波数が第3周波数に変化すると共に当該信号の振幅が変化したことを検出すると、第3出力信号をアクティブレベルに変化させる。これにより、3種類の入出力信号を用いて制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態であり、磁気カプラの構成を示す図
図2】パルス生成回路の構成を示す図
図3】信号判別回路の構成を示す図
図4】磁気カプラのパッケージを示す断面図
図5】磁気カプラのパッケージ内部を示す平面図
図6】磁気カプラの動作を示すタイミングチャート
図7】第2実施形態であり、信号判別回路の構成を示す図
図8】第3実施形態であり、信号判別回路の構成を示す図
図9】第4実施形態であり、磁気カプラの構成を示す図
図10】磁気カプラの動作を示すタイミングチャート
図11】第5実施形態であり、磁気カプラの構成を示す図
図12】磁気カプラの動作を示すタイミングチャート
図13】第6実施形態であり、信号判別回路の構成を示す図
図14】磁気カプラの動作を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すように、信号伝達装置である磁気カプラ1は、送信側チップ2,トランスチップ3及び受信側チップ4を備えている。受信側チップ4には、当該チップ内の制御対象回路としてRSフリップフロップであるラッチ回路5が形成されている。送信側チップ2にはパルス生成回路6が形成されており、外部より第1入力信号IN及び第2入力信号DATAINが入力される。送信側チップ2は送信回路に相当し、受信側チップ4は受信回路に相当する。尚、以下で説明する信号は、何れもアクティブレベルがハイであり、インアクティブレベルがローである。
【0019】
パルス生成回路6は、2つの出力端子を備え、信号INのレベルがハイを示している期間は、送信バッファ7Hを介してトランスチップ3に信号INHを出力する。また、パルス生成回路6は、信号INのレベルがローを示している期間は、送信バッファ7Lを介してトランスチップ3に信号INLを出力する。信号INH,INLは何れもパルス列信号であり、パルス生成回路6は、信号DATAINのレベルに応じて信号INL側のパルス信号の周波数を変調する。信号INH,INLは、それぞれ第1,第2パルス信号に相当する。
【0020】
トランスチップ3は、結合素子として2つのトランス8H,8Lを備えている。トランス8の1次側巻線,2次側巻線の一端は、それぞれ独立したグランドに接続されている。そして、トランス8H,8Lの2次側より、信号OUTH,OUTLが受信側チップ4に出力される。信号OUTH,OUTLは、受信バッファ9H,9Lを介してラッチ回路5に入力される。受信バッファ9Hの出力信号はラッチ回路5のセット信号となり、受信バッファ9Lの出力信号はラッチ回路5のリセット信号となる。ラッチ回路5は、第1出力信号OUTを外部に出力する。信号OUTH,OUTLは、第1,第2誘起信号に相当する。
【0021】
また、受信バッファ9Lの出力信号及び第1出力信号OUTは、信号判別回路10に入力されている。信号判別回路10は、信号OUTLより判別した第2出力信号DATAOUTを外部に出力する。信号OUTは、例えば上位の制御回路にステータスの変化を伝達するための信号であり、信号DATAOUTは、例えばMOSFETなどのスイッチング素子を駆動する信号である。
【0022】
図2に示すように、パルス生成回路6は、信号INの立上りエッジを検出する立上りエッジ検出部11H,立下りエッジを検出する立下りエッジ検出部11Lを備える。また、信号INは、NOTゲート13を介してANDゲート12Lの入力端子の一方に入力されている。信号DATAINは、ANDゲート12Lの入力端子の他方に入力されている。
【0023】
立上りエッジ検出部11H,立下りエッジ検出部11L及びANDゲート12Lの出力端子は、それぞれマルチショットパルス生成回路14H,14L及び14LDのトリガ端子に接続されている。マルチショットパルス生成回路14H,14L及び14LDは、トリガ信号が入力されると、それぞれ周波数fh1,fl1及びfl2のパルス信号を一定期間だけ出力する。一例として、周波数fh1,fl1は10数MHz程度,周波数fl2は数100kHz程度である。尚、周波数fh1,fl1は必ずしも同じ周波数である必要は無い。周波数fh1,fl1及びfl2は、それぞれ第1,第2及び第3周波数に相当する。
【0024】
マルチショットパルス生成回路14Hの出力端子は、送信バッファ7Hの入力端子に接続されている。マルチショットパルス生成回路14L及び14LDの出力端子は、ORゲート15Lの入力端子にそれぞれ接続されている。ORゲート15Lの出力端子は、送信バッファ7Hの入力端子に接続されている。パルス生成回路6は信号出力部の一例である。また、構成要素13,12L,14LD及び15Lは変調部16を構成している。
【0025】
図3に示すように、受信バッファ9H,9Lの出力端子は、それぞれRSフリップフロップであるラッチ回路5のセット端子S,リセット端子Rに接続されている。また、受信バッファ9Lの出力端子は、信号判別回路10を構成するタイマ17のリセット端子Rと、ラッチ回路19のクロック端子CLKとに接続されている。ラッチ回路19の入力端子Dは、電源18によりハイレベルにプルアップされている。タイマ17の出力端子はラッチ回路19のリセット端子Rに接続されている。タイマ17は、起動して一定時間を計時するとラッチ回路19をリセットする。上記一定時間は計時時間に相当する。
【0026】
ラッチ回路20は、ラッチ回路19に直列に接続されており、ラッチ回路20のクロック端子CLKは、ラッチ回路5の出力端子に接続されている。ラッチ回路20の出力端子Qからは、出力バッファ21を介して信号DATAOUTが出力される。ラッチ回路19,20は、それぞれ第1,第2ラッチ回路に相当する。
【0027】
図4及び図5に示すように、例えば入力側チップ2及びトランスチップ3は、共にリードフレーム11にダイボンディングされており、出力側チップ4は、リードフレーム12にダイボンディングされている。リードフレーム13a~13cは、入力側チップ2側の外部端子であり、リードフレーム14a~14cは、出力側チップ4側の外部端子である。各チップ2~4の間,リードフレーム13と入力側チップ2との間、出力側チップ4とリードフレーム14との間は、それぞれボンディングワイヤを介して接続されている。そして、全体が樹脂22によりモールドされており、磁気カプラ1はワンパッケージで構成されている。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。図6に示すように、信号DATAINがローレベルを示す期間は、信号INの二値レベルが変化する立上りエッジの発生タイミングに応じて、受信回路4には周波数fh1のパルス信号OUTH1が入力され、立下りエッジの発生タイミングに応じて周波数fl1のパルス信号OUTL1が入力される。ラッチ回路5は、パルス信号OUTH1によりセットされ、パルス信号OUTL1によりリセットされるので、信号OUTのレベルは、信号INの二値レベル変化に応じて変化する。信号INの二値レベルが変化する周波数は、例えば100kHz程度である。また、パルス信号OUTH1,OUTL1が出力される期間は、例えば信号INの周期の1/8程度である。
【0029】
信号判別回路10のラッチ回路19は、パルス信号OUTL1によりトリガされるが、タイマ17は、同信号によりリセットされる。タイマ17が計時する一定時間は、例えば周波数fl2に相当する周期の1.5倍程度に設定されている。したがって、パルス信号OUTL1の最後のパルスが入力されてから、次に信号INの立上りエッジが発生するタイミングよりも早く、タイマ17は一定時間の計時を完了するので、ラッチ回路19はリセットされる。これにより、前記立上りエッジが発生してラッチ回路20がトリガされても、信号DATAOUTはローレベルのままとなる。
【0030】
そして、信号DATAINがハイレベルに変化すると、立下りエッジの発生タイミングに応じて周波数fl1のパルス信号OUTL2が入力された後に、周波数がより低いfl2に変化したパルス信号OUTL2が入力される。タイマ17は、一定時間を計時するよりも速い間隔でパルス信号OUTL2によりリセットされ続ける。そして、パルス信号OUTL2の最後のパルスが入力されてから、次に信号INの立上りエッジが発生するタイミングでは、タイマ17が計時している時間は一定時間に達しない。これにより、ラッチ回路19はセットされた状態でラッチ回路20がトリガされるため、信号DATAOUTはハイレベルに変化する。
【0031】
以上のように本実施形態によれば、送信側チップ2のパルス生成回路6は、外部より入力される信号INがハイレベルを示すと周波数fh1のパルス列を一定期間だけ信号INHとして出力し、信号INがローレベルを示すと周波数fl1のパルス列を一定期間だけ信号INLとして出力する。
【0032】
受信側チップ4には、信号INH,INLがトランスチップ3を介して信号OUTH,OUTLとして受信され、これらの信号によりラッチ回路5が制御され、信号OUTが外部に出力される。そして、送信側チップ2の変調部16は、信号DATAINがアクティブレベルを示すと、信号INのローレベルへの変化に伴い信号INLを周波数fl1のパルス列として一定期間だけ出力した後に周波数をfl2に変化させる。すると、受信側チップ4の信号判別回路10は、信号DATAOUTをローレベルからハイレベルに変化させる。また、送信側チップ2,トランスチップ3及び受信側チップ4をワンパッケージで構成する。
【0033】
このように構成すれば、送信側チップ2より出力される信号INH,INLはパルス列を伴う信号となるので、信号INのレベル変化に応じて、受信側チップ4のラッチ回路5をそれぞれのパルス列信号により安定的に制御すると共に、復調した信号DATAOUTを外部に出力してその他に制御を行うことが可能になる。したがって、ロバスト性が向上すると共に、回路構成を極力増大させることなく第2信号DATAOUTを用いた制御を行うことができる。
【0034】
受信側チップ4のラッチ回路19は、信号OUTLによりトリガされてアクティブレベルの信号を出力し、直列に接続されるラッチ回路20は、ラッチ回路5のセット信号レベルに基づきトリガされて信号DATAOUTを出力する。タイマ17は、信号OUTLによりリセットされ、例えば周波数fl2の周期の1.5倍に設定された一定時間を計時するとラッチ回路19をリセットする。
【0035】
このように構成すれば、信号DATAINがインアクティブレベルを示している期間は、タイマ17は、信号INLの入力が停止しても次に信号INHが入力されるまでの間に一定時間を計時するのでラッチ回路19をリセットする。したがって、信号DATAOUTはローレベルを示す。これに対して、信号DATAINがアクティブレベルを示すと信号INLはfl2に変化する。
【0036】
そして、信号INLの最後のパルスが入力されてから次の信号INHの最初のパルスが入力されるまでの時間は周波数fl2の周期以上となるので、ラッチ回路19はリセットされず、ラッチ回路20がラッチ回路5のセット信号レベルに基づきトリガされて信号DATAOUTはハイレベルに変化する。このようにして、受信側チップ4の信号判別回路10を構成できる。
【0037】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図7に示すように、第2実施形態の受信側チップ4Aは、ラッチ回路19,20の間にラッチ回路22を追加した構成である。ラッチ回路22は、ラッチ回路19と同様に信号OUTLによりトリガされ、タイマ17によりリセットされる。
以上のように構成される第2実施形態によれば、信号OUTLのパルスが2回続けて出力されることで信号DATAOUTがハイレベルに変化する。したがって、ロバスト性をさらに向上させることができる。
【0038】
(第3実施形態)
図8に示すように、第3実施形態の受信側チップ4Bは、ラッチ回路5の出力端子Oとラッチ回路20のクロック端子CLKとの間にタイマ23を挿入した構成である。これにより、信号DATAOUTがハイレベルに変化するタイミングを、信号OUTがハイレベルに変化するタイミングよりも遅延させることができる。この場合、信号OUTによりタイマ23を起動させてからタイマ23がラッチ回路20をトリガさせる時間は、タイマ17の計時時間よりも短く設定する。
【0039】
(第4実施形態)
図9に示すように、第4実施形態の磁気カプラ31は、送信側チップ32,トランスチップ3及び受信側チップ33を備えている。送信側チップ32はパルス生成回路34を備え、受信側チップ33は信号判別回路35(1),35(2)を備えている。送信側チップ32には、第2入力信号として信号DATAIN1が入力され、第3入力信号として信号DATAIN2が入力されている。そして、パルス生成回路34は、信号DATAIN1のレベル変化に応じて、第1実施形態と同様に信号INLの周波数をfl1からfl2に変化させる。また、パルス生成回路34は、信号DATAIN2のレベル変化に応じて、信号INLの振幅をH1からより大きい振幅H2に変化させる。
【0040】
図10に示すように、信号判別回路35(1)は、第1実施形態と同様に信号INLの周波数がfl1からfl2に変化したことを検出し、且つ閾値Vth1及びVth2を用いて信号INLの振幅がH1であることを条件に、信号OUTの立上りエッジに同期して信号DATAOUT1をハイレベルに変化させる。また、信号判別回路35(2)も、第1実施形態と同様に信号INLの周波数がfl1からfl2に変化したことを検出するが、閾値Vth2を用いて信号INLの振幅がH2に変化したことを条件に、信号OUTの立上りエッジに同期して信号DATAOUT2をハイレベルに変化させる。
【0041】
以上のように第4実施形態によれば、パルス生成回路34は、信号DATAIN2がハイレベルを示すと信号INLの振幅を変化させ、信号判別回路35(2)は、信号INLの周波数がfl2に変化すると共に当該信号の振幅がH2に変化したことを検出すると、信号DATAOUT2をハイレベルに変化させる。これにより、3種類の入出力信号を用いて制御を行うことができる。
【0042】
(第5実施形態)
図11に示すように、第5実施形態の磁気カプラ41は、送信側チップ42,トランスチップ43及び受信側チップ44を備えている。送信側チップ42はパルス生成回路45を備え、トランスチップ43は単一のトランス8を備えている。受信側チップ44は4つの信号判別回路45(1)~45(4)を備えている。
【0043】
送信側チップ42には、第1実施形態と同様に信号IN及びDATAINが入力される。パルス生成回路45は、図12に示すように、信号IN及びDATAINのレベル変化に応じて、信号INHLの周波数及び振幅を以下のような4つの組合せで変化させる。尚、「R」は立上りエッジ,「F」は立下りエッジを示す。
IN DATAIN INHL
R - 周波数fn1/振幅Hn1(条件1)
F - 周波数fn2/振幅Hn1(条件2)
- R 周波数fn1/振幅Hn2(条件3)
- F 周波数fn2/振幅Hn2(条件4)
尚、周波数fn1>fn2であり、振幅Hn1>Hn2である。振幅Hn1,Hn2の判定は、閾値Vthn1,Vthn2を用いて行う。
【0044】
そして、信号判別回路45(1)は、信号OUTHLについて上記の条件1を検出するとラッチ回路46(1)をセットし、信号判別回路45(2)は、同信号について上記の条件2を検出するとラッチ回路46(1)をリセットする。信号判別回路45(3)は、同信号について上記の条件3を検出するとラッチ回路46(2)をセットし、信号判別回路45(4)は、同信号について上記の条件4を検出するとラッチ回路46(2)をリセットする。
【0045】
以上のように第5実施形態によれば、送信側チップ42のパルス生成回路45は、信号INの二値レベルが変化する立上りエッジに応じて周波数fn1及び振幅Hn1のパルス信号INHLを出力し、立下りエッジに応じて信号INHLの周波数をfn2に変化させる。更に、信号DATAINの二値レベルが変化する立上りエッジに応じて周波数fn1及び振幅Hn2の信号INHLの出力し、立下りエッジに応じて信号INHLの周波数をfn2に変化させる。信号INHLは、トランス8を介して誘起信号OUTHLとなり、受信側チップ44に伝達される。
【0046】
そして、受信側チップ44の信号判別回路45(1)~45(4)は、誘起信号OUTHLについて上記の条件1~4を検出することで、ラッチ回路46(1),46(2)をセット、リセットすることで信号OUT、DATAOUTのレベルを変化させる。このように構成すれば、1つのトランス8を用いた構成により、第1実施形態の磁気カプラ1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(第6実施形態)
図13に示すように、第6実施形態の受信側チップ4Cは、第3実施形態の受信側チップ4Bを若干変更した構成である。ラッチ回路19,20の間にはセレクタ51が配置されており、セレクタ51は、ラッチ回路19,20の出力端子Qの何れか一方を選択して、入力される信号をラッチ回路20の入力端子Dに出力する。セレクタ51の選択切り替えは、タイマ23の出力信号により制御される。タイマ23は、出力信号OUTがローレベルになると起動して計時を開始する。タイマ23の計時期間T23は、周波数fl2の周期よりも長くなるように設定されている。
【0048】
セレクタ51は、タイマ23の出力信号がローレベルを示す期間はラッチ回路20の出力端子Qを選択し、タイマ23が起動されて計時期間T23を計時し、出力信号がハイレベルになるとラッチ回路19の出力端子Qを選択する。ラッチ回路20は、発振器52が出力するクロック信号によってトリガされる。前記クロック信号の周期は、例えば周波数fl1の周期よりも長く、且つ周波数fl2の周期よりも短く設定されている。タイマ17,23は、それぞれ第1,第2タイマに相当する。
【0049】
次に、第6実施形態の作用について説明する。図14に示すように、信号INがハイレベルからローレベルに変化した後に、信号DATAINが2回ハイレベルに変化した場合を想定する。タイマ23の出力信号がローレベルを示す期間にセレクタ51はラッチ回路20の出力端子Qを選択しているので、出力信号DATAOUTはローレベルを示す。出力信号OUTのレベルがハイからローに変化すると、タイマ23が起動される。
【0050】
信号DATAINのレベルがローからハイに変化するのに応じて、端子OUTLに入力される信号はOUTL1からOUTL2に変化する。これらにより、ラッチ回路19はトリガされて出力端子Qはハイレベルになる。タイマ23が期間T23を計時すると、セレクタ51は、ラッチ回路19の出力端子Qを選択する。その後、ラッチ回路20が発振器52のクロック信号でトリガされると、出力信号DATAOUTはハイレベルになる。すなわち、出力信号DATAOUTは、出力信号OUTがローレベルに変化してから、計時期間T23にクロック信号の1周期を加えた時間の経過後にハイレベルになる。
【0051】
信号DATAINのレベルがハイからローに変化すると、信号OUTL2の出力が停止するのでタイマ17が起動される。タイマ17が期間T17を計時すると、ラッチ回路19がリセットされて出力端子Qがローレベルになり、その後に出力されるクロック信号によりラッチ回路20がトリガされて出力信号DATAOUTがローレベルになる。
【0052】
信号INがローレベルを示す期間に信号DATAINが再度ハイレベルになると、信号OUTL2によりラッチ回路19がトリガされて出力端子Qはハイレベルになり、ラッチ回路20が発振器52のクロック信号でトリガされると、出力信号DATAOUTは再度ハイレベルになる。信号DATAINがローレベルになるとタイマ17が計時を開始するが、期間T17を計時する以前に信号INがハイレベルになり、出力信号OUTがハイレベルになる。これにより、セレクタ51はラッチ回路20側を選択するので、出力信号DATAOUTはハイレベルに固定される。
【0053】
以上のように第6実施形態によれば、ラッチ回路20は、周波数fl2の周期よりも短い周期のクロック信号によりトリガされて出力信号DATAOUTを出力する。セレクタ51は、ラッチ回路19,20の出力信号の何れかを選択する。タイマ23は、RSフリップフロップ5のリセット信号レベルにより起動されて計時時間T23が経過すると、セレクタ51の選択状態を、ラッチ回路19の出力信号からラッチ回路20の出力信号に切り替える。このように構成すれば、タイマ23の計時時間T23により、出力信号DATAOUTが出力されるタイミングを制御できる。
【0054】
(その他の実施形態)
制御対象回路は、ラッチ回路5に限らず、2系統の信号により制御される回路であれば良い。
第2~第6実施形態の構成についても、第1実施形態と同様にワンパッケージで構成しても良い。
また、必ずしもワンパッケージで構成する必要は無く、マルチパッケージで構成しても良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は磁気カプラ、2は送信側チップ、3はトランスチップ、4は受信側チップ、5はラッチ回路、6はパルス生成回路、8はトランス、10は信号判別回路を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図14