(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】周波数マッピング装置、周波数マッピング方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/10 20090101AFI20230510BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20230510BHJP
H04W 28/16 20090101ALI20230510BHJP
【FI】
H04W16/10
H04W16/14
H04W28/16
(21)【出願番号】P 2020123959
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2022-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】伊神 皓生
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/003031(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0295497(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0242165(US,A1)
【文献】特開2015-056896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 16/10
H04W 16/14
H04W 28/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信システムが共用する共用周波数帯を要求する複数の基地局の情報と前記共用周波数帯の空きリソースの情報との入力を受付ける情報入力部と、
稼働する基地局が要求する前記共用周波数帯の帯域需要の総和から基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを減じた差を求める目的関数を使用して前記目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せを抽出し、抽出した複数の基地局組合せに対する前記共用周波数帯の割り当てを行うマッピング計算部と、
前記共用周波数帯の割当結果を示す割当結果情報を出力する割当結果出力部と、
を備える周波数マッピング装置。
【請求項2】
前記マッピング計算部は、前記目的関数に対して、前記共用周波数帯を要求する無線通信システム間の公平性指標の差に応じた公平性ペナルティを前記総和からさらに減じた目的関数を使用する、
請求項1に記載の周波数マッピング装置。
【請求項3】
前記マッピング計算部は、2つの基地局間の干渉量が閾値超過である場合に当該2つの基地局が同時に稼働しない制約の下で、前記目的関数を使用する、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の周波数マッピング装置。
【請求項4】
前記マッピング計算部は、前記抽出した複数の基地局組合せの中から、基地局組合せの自己の相関値と、当該基地局組合せと他の基地局組合せとの相関値とが等しい基地局組合せを除外し、残りの基地局組合せを前記共用周波数帯の割り当ての対象にする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の周波数マッピング装置。
【請求項5】
周波数マッピング装置が、複数の無線通信システムが共用する共用周波数帯を要求する複数の基地局の情報と前記共用周波数帯の空きリソースの情報との入力を受付ける情報入力ステップと、
前記周波数マッピング装置が、稼働する基地局が要求する前記共用周波数帯の帯域需要の総和から基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを減じた差を求める目的関数を使用して前記目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せを抽出し、抽出した複数の基地局組合せに対する前記共用周波数帯の割り当てを行うマッピング計算ステップと、
前記周波数マッピング装置が、前記共用周波数帯の割当結果を示す割当結果情報を出力する割当結果出力ステップと、
を含む周波数マッピング方法。
【請求項6】
コンピュータに、
複数の無線通信システムが共用する共用周波数帯を要求する複数の基地局の情報と前記共用周波数帯の空きリソースの情報との入力を受付ける情報入力ステップと、
稼働する基地局が要求する前記共用周波数帯の帯域需要の総和から基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを減じた差を求める目的関数を使用して前記目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せを抽出し、抽出した複数の基地局組合せに対する前記共用周波数帯の割り当てを行うマッピング計算ステップと、
前記共用周波数帯の割当結果を示す割当結果情報を出力する割当結果出力ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数マッピング装置、周波数マッピング方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高まるモバイルトラフィックの需要に対処するために、異なる複数の無線通信システムが同じ周波数帯を共用することが検討されている。例えば、既存の無線通信システムに割り当てられている周波数帯を他の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用することができるようにすることが検討されている。この異システム間の周波数共用においては、絶対優先される既存の無線通信システムが使用していない空きリソースを2次事業者システムが使用する。既存の無線通信システムと2次事業者システムとが共用する周波数帯(共用周波数帯)を2次事業者システムに割り当てる周波数割当技術が、例えば非特許文献1,2に記載されている。非特許文献1,2に記載される周波数割当技術では、2次事業者システムの需要に基づいて周波数軸及び時間軸における共用周波数帯の帯域割当量を動的に決定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“Fair Dynamic Spectrum Management in Licensed Shared Access Systems”,IEEE Systems Journal,Volume: 13,Issue: 3,Sept. 2019
【文献】Mirza Kibria,“Resource Allocation in Shared Spectrum Access Communications for Operators with Diverse Service Requirements”,2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した非特許文献1,2に記載される周波数割当技術では、2次事業者システム単位で共用周波数帯を割り当てるので、ある2次事業者システムが自己に割り当てられた共用周波数帯を利用していない場所においても、他の2次事業者システムが当該共用周波数帯を利用することができない。このため、共用周波数帯の空間的な利用効率を向上させることが望まれる。また、2次事業者システムの需要に対して共用周波数帯を効率的に割り当てることが望まれる。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、共用周波数帯の空間的な利用効率を向上させること、また共用周波数帯を効率的に割り当てることを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、複数の無線通信システムが共用する共用周波数帯を要求する複数の基地局の情報と前記共用周波数帯の空きリソースの情報との入力を受付ける情報入力部と、稼働する基地局が要求する前記共用周波数帯の帯域需要の総和から基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを減じた差を求める目的関数を使用して前記目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せを抽出し、抽出した複数の基地局組合せに対する前記共用周波数帯の割り当てを行うマッピング計算部と、前記共用周波数帯の割当結果を示す割当結果情報を出力する割当結果出力部と、を備える周波数マッピング装置である。
(2)本発明の一態様は、前記マッピング計算部は、前記目的関数に対して、前記共用周波数帯を要求する無線通信システム間の公平性指標の差に応じた公平性ペナルティを前記総和からさらに減じた目的関数を使用する、上記(1)の周波数マッピング装置である。
(3)本発明の一態様は、前記マッピング計算部は、2つの基地局間の干渉量が閾値超過である場合に当該2つの基地局が同時に稼働しない制約の下で、前記目的関数を使用する、上記(1)又は(2)のいずれかの周波数マッピング装置である。
(4)本発明の一態様は、前記マッピング計算部は、前記抽出した複数の基地局組合せの中から、基地局組合せの自己の相関値と、当該基地局組合せと他の基地局組合せとの相関値とが等しい基地局組合せを除外し、残りの基地局組合せを前記共用周波数帯の割り当ての対象にする、上記(1)から(3)のいずれかの周波数マッピング装置である。
【0007】
(5)本発明の一態様は、周波数マッピング装置が、複数の無線通信システムが共用する共用周波数帯を要求する複数の基地局の情報と前記共用周波数帯の空きリソースの情報との入力を受付ける情報入力ステップと、前記周波数マッピング装置が、稼働する基地局が要求する前記共用周波数帯の帯域需要の総和から基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを減じた差を求める目的関数を使用して前記目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せを抽出し、抽出した複数の基地局組合せに対する前記共用周波数帯の割り当てを行うマッピング計算ステップと、前記周波数マッピング装置が、前記共用周波数帯の割当結果を示す割当結果情報を出力する割当結果出力ステップと、を含む周波数マッピング方法である。
【0008】
(6)本発明の一態様は、コンピュータに、複数の無線通信システムが共用する共用周波数帯を要求する複数の基地局の情報と前記共用周波数帯の空きリソースの情報との入力を受付ける情報入力ステップと、稼働する基地局が要求する前記共用周波数帯の帯域需要の総和から基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを減じた差を求める目的関数を使用して前記目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せを抽出し、抽出した複数の基地局組合せに対する前記共用周波数帯の割り当てを行うマッピング計算ステップと、前記共用周波数帯の割当結果を示す割当結果情報を出力する割当結果出力ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共用周波数帯の空間的な利用効率を向上させることができる。また共用周波数帯を効率的に割り当てることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る周波数マッピング装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る周波数マッピング方法の全体手順の例を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態に係るマッピング計算方法の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る周波数マッピング装置の構成例を示すブロック図である。
図1において、周波数マッピング装置1は、情報入力部11と、マッピング計算部12と、割当結果出力部13と、割当結果データベース(割当結果DB)14と、を備える。
【0012】
周波数マッピング装置1の各機能は、周波数マッピング装置1がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、周波数マッピング装置1として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0013】
周波数マッピング装置1は、複数の無線通信システムが共用する共用周波数帯を要求する複数の基地局に対して、共用周波数帯の各タイムスロット(時間スロット)における周波数チャネルを割り当てる周波数マッピング処理を実行する。本実施形態の一例として、周波数マッピング装置1は、既存の無線通信システム(既存システム)に割り当てられている周波数帯を他の複数の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用する場合において、当該周波数帯(共用周波数帯)の空きリソースを各2次事業者システムの基地局に対して割り当てる。なお、以下の説明において電波干渉のことを単に干渉と称する場合がある。
【0014】
本実施形態に係る周波数マッピング処理では、2次事業者システムの基地局が要求する共用周波数帯の帯域需要と、基地局間の干渉量とを考慮する。これにより、共用周波数帯の空間的な利用効率を向上させること、また共用周波数帯を効率的に割り当てることを図る。さらには共用周波数帯を要求する2次事業者システム間の公平性を考慮することにより、公平な共用周波数帯の割り当てを図る。
【0015】
情報入力部11は、基地局情報111と共用周波数帯の空きリソース情報112との入力を受付ける。基地局情報111は、共用周波数帯を要求する2次事業者システムの基地局の情報であって、2次事業者システムの事業者名や事業者番号、要求帯域幅、要求利用時間帯、要求利用場所、基地局パラメータなどの情報である。空きリソース情報112は、共用周波数帯の空きリソースの情報であって、各タイムスロットにおける周波数チャネルの空きを示す情報である。
【0016】
マッピング計算部12は、情報入力部11が入力を受付けた情報に基づいて、共用周波数帯の空きリソースを各2次事業者システムの基地局に対して割り当てる。この空きリソースの割り当てでは、マッピング計算部12は、稼働する基地局が要求する共用周波数帯の帯域需要の総和から基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを減じた差を求める目的関数を使用して当該目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せを抽出し、抽出した複数の基地局組合せに対する共用周波数帯の割り当てを行う。このマッピング計算方法の詳細は後述する。
【0017】
割当結果出力部13は、マッピング計算部12が共用周波数帯の空きリソースを各2次事業者システムの基地局に割り当てた割当結果を示す割当結果情報120を出力する。割当結果情報120は、共用周波数帯の空きリソースのうち、各タイムスロットにおいて各基地局に割り当てられた周波数チャネルの割当結果を示す情報である。各2次事業者システムの割当結果情報120は、各2次事業者システムへ通知される。各2次事業者システムは、割当結果情報120に示される自己の割当結果に従って、共用周波数帯を利用する。
【0018】
割当結果DB14は、各2次事業者システムの基地局に割り当てられた共用周波数帯の周波数チャネル及びタイムスロットの割当結果を格納する。
【0019】
次に
図2を参照して本実施形態に係る周波数マッピング方法の全体手順について説明する。
図2は、本実施形態に係る周波数マッピング方法の全体手順の例を示すフローチャートである。
【0020】
(ステップS1) 周波数マッピング装置1は、基地局情報111と共用周波数帯の空きリソース情報112との入力を受付ける。
【0021】
(ステップS2) 周波数マッピング装置1は、ステップS1で入力を受付けた情報に基づいて、共用周波数帯の空きリソースを各2次事業者システムの基地局に対して割り当てるマッピング計算を行う。
【0022】
(ステップS3) 周波数マッピング装置1は、ステップS2で求められた各2次事業者システムの基地局に割り当てられた共用周波数帯の周波数チャネル及びタイムスロットの割当結果を割当結果DB14に格納する。
【0023】
(ステップS4) 周波数マッピング装置1は、ステップS2で求められた各2次事業者システムの基地局に割り当てられた共用周波数帯の周波数チャネル及びタイムスロットの割当結果を示す割当結果情報120を出力する。
【0024】
[マッピング計算方法]
次に
図3を参照して本実施形態に係るマッピング計算方法を説明する。
図3は、本実施形態に係るマッピング計算方法の手順の例を示すフローチャートである。なお、以下では、下付き文字の例えば「a」を「_a」と表記する場合がある。
【0025】
周波数マッピング装置1には、周波数マッピング処理で使用されるパラメータ、目的関数及び制約条件が予め設定される。
【0026】
本実施形態の周波数マッピング処理に係るパラメータが次の(1)式に示される。
【0027】
【0028】
iは2次事業者システムを識別する事業者番号である。Mは事業者番号の集合である。
fは共用周波数帯の周波数チャネルを識別する周波数チャネル番号である。Fは共用周波数帯の周波数チャネル番号の集合である。
tは共用周波数帯が割り当てられるタイムスロットを識別するタイムスロット番号である。Tはタイムスロット番号の集合である。
【0029】
nは基地局を識別する基地局インデックスである。Nは基地局インデックスの集合である。
pは基地局の組み合わせを識別する基地局の組み合わせインデックスである。Pは基地局の組み合わせインデックスの集合である。
qは相互干渉のない基地局の組み合わせを識別する相互干渉のない基地局の組み合わせインデックスである。Qは相互干渉のない基地局の組み合わせインデックスの集合である。
【0030】
fd_i,n,tは、2次事業者システム(i)の基地局(n)がタイムスロット(t)で要求する共用周波数帯の帯域需要である。
fa_i,n,tは、2次事業者システム(i)の基地局(n)に対するタイムスロット(t)での共用周波数帯の帯域割当量である。
【0031】
Bs_i,n,pは、2次事業者システム(i)の基地局(n)が基地局の組み合わせ(p)において稼働ありか又は稼働なし(停波)かを示す基地局の稼働情報(「1が稼働あり、0が稼働なし(停波)」)である。
BSset_pは、基地局の稼働情報Bs_i,n,pの組み合わせ(基地局の稼働組み合わせ)である。
【0032】
It_l,mは、2つの基地局間の干渉量であって、基地局(l)が基地局(m)に与える干渉量である。
IF_nは、基地局の稼働情報Bs_i,n,pにおける当該基地局(n)が受ける干渉量である。
BSset_qは、相互干渉のない基地局の組み合わせである。
【0033】
αは、公平性ペナルティ関数の重み係数である。
【0034】
以降の処理(ステップS11-S18)はタイムスロット毎に実行される。
【0035】
(ステップS11) マッピング計算部12は、基地局情報111に基づいて、基地局の稼働情報Bs_i,n,pと基地局の稼働組み合わせBSset_pとを設定する。
【0036】
(ステップS12) マッピング計算部12は、基地局情報111に基づいて、干渉量It_l,mを計算する。
【0037】
(ステップS13) マッピング計算部12は、基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティを導出する干渉ペナルティ関数PI(BSset_p)を設定する。干渉ペナルティ関数PI(BSset_p)は、基地局の稼働組み合わせBSset_pにおいて、稼働する基地局に対する他の稼働する基地局からの総干渉量IF_nに応じた干渉ペナルティを導出する関数である。本実施形態に係る干渉ペナルティ関数PI(BSset_p)の一例を次の(2)式に示す。
【0038】
【0039】
上記(2)式において、IF_nは、基地局の稼働組み合わせBSset_pにおいて、基地局の稼働情報Bs_i,n,pにおける当該基地局(n)が受ける干渉量である。Xは、干渉量の閾値「-XdBm」を決定する定数である。閾値「-XdBm」として、例えば干渉許容電力値を適用する。ペナルティ(penalty)は、最適化問題における十分に大きな(巨大な)定数であって、big-mと呼ばれるものである。ペナルティの値として、例えば、全ての2次事業者システムの共用周波数帯の帯域需要の総和よりも大きな値を適用する。
【0040】
なお、共用周波数帯の共用における干渉条件(例えば、干渉許容電力値等)が明確に定められていない場合には、干渉ペナルティ関数PI(BSset_p)を、基地局間の干渉量が多いほど干渉ペナルティが増加する関数とする。
【0041】
(ステップS14) マッピング計算部12は、共用周波数帯を要求する2次事業者システム間の公平性指標の差に応じた公平性ペナルティを導出する公平性ペナルティ関数Pf(BSset_p)を設定する。本実施形態に係る公平性ペナルティ関数Pf(BSset_p)の一例を次の(3)式に示す。
【0042】
【0043】
上記(3)式において、δ_iは、2次事業者システム(i)の利得関数である。αは、公平性ペナルティ関数の重み係数である。(3)式の公平性ペナルティ関数Pf(BSset_p)は、基地局の稼働組み合わせBSset_pにおける、2次事業者システム間の利得関数値の差分総和を導出する関数である。この公平性ペナルティ関数Pf(BSset_p)では、2次事業者システム間の利得関数値の差が小さいほど公平性が上がり、公平性ペナルティが小さくなる。
【0044】
2次事業者システム(i)の利得関数δ_iは、次の(4)式で表される。
【0045】
【0046】
上記(3)式において、Eは公平性指標であり、λは公平性指標の重み係数である。2次事業者システム(i)の利得関数δ_iは、各種の公平性指標E_1,E_2,E_3,・・・から構成される。公平性指標Eの一例として、獲得量に係る公平性指標E_1を次の(5)式に示す。
【0047】
【0048】
上記(3)式において、公平性指標E_1は、2次事業者システム(i)が要求する共用周波数帯の総帯域需要である。
【0049】
(ステップS15) マッピング計算部12は、干渉のない基地局組合せを抽出する。この基地局組合せの抽出には、次の(6)式の目的関数を使用する。
【0050】
【0051】
上記(6)式の目的関数は、稼働する基地局が要求する共用周波数帯の帯域需要の総和から干渉ペナルティと公平性ペナルティとを減じた差を求めるものである。マッピング計算部12は、(6)式の目的関数を使用して、当該目的関数の値が大きい方から複数の基地局組合せBSset_pを抽出する。この抽出計算には、最適化問題を解くための従来の最適化ツールや探索アルゴリズムを適用することができる。マッピング計算部12は、抽出した複数の基地局組合せBSset_pを干渉のない基地局組合せとする。
【0052】
なお、最適解の探索範囲を狭めるために、次の(7)式の制約の下で(6)式の目的関数を使用してもよい。
【0053】
【0054】
(7)式の制約条件は、2つの基地局(a,b)間の干渉量It_a,bが閾値超過である場合に当該2つの基地局(a,b)が同時に稼働しないことである。
【0055】
(ステップS16) マッピング計算部12は、ステップS15で抽出された干渉のない基地局組合せBSset_pを対象にしてクレンジングを行う。このクレンジングは、次の(8)式により行う。
【0056】
【0057】
上記(8)式において、「X*Y」は、XとYの内積を表す。なお、XとYの内積は、XとYの相関値を表す値の一例である。
【0058】
(8)式により、干渉のない基地局組合せBSset_pにおいて、ある一の基地局組合せBSset_pの自己の内積と、当該一の基地局組合せBSset_pと他の基地局組合せBSset_p(BSset_j)との内積とが等しい基地局組合せを判別する。(8)式が成立する基地局組合せBSset_pには、当該基地局組合せBSset_p内の稼働する基地局を全て含み且つ当該基地局組合せBSset_pよりも多くの稼働する基地局を有する他の基地局組合せBSset_p(BSset_j)が存在する。このため、(8)式が成立する基地局組合せBSset_pを、ステップS15で抽出された干渉のない基地局組合せBSset_pから除外する。
【0059】
マッピング計算部12は、ステップS15で抽出された干渉のない基地局組合せBSset_pから(8)式が成立する基地局組合せBSset_pを除外し、残りの基地局組合せBSset_pを相互干渉のない基地局の組み合わせBSset_qに設定する。相互干渉のない基地局の組み合わせBSset_qは、共用周波数帯の割り当ての対象になる基地局組合せである。
【0060】
(ステップS17) マッピング計算部12は、相互干渉のない基地局の組み合わせBSset_qに対する共用周波数帯の割り当てを行い、次の(9)式の割当結果を得る。この割り当て計算には、最適化問題を解くための従来の最適化ツールや探索アルゴリズムを適用することができる。
【0061】
【0062】
上記(9)式の共用周波数帯の割り当てでは、予め定められた任意の割り当て条件の下で、各基地局組合せBSset_qに共用周波数帯を割り当てる。例えば、周波数利用効率や帯域需要の獲得率や2次事業者システム間の公平性などの要件が予め割り当て条件として設定される。また、異なる基地局の組み合わせBSset_q間では、同一の周波数チャネルを割り当てないことが好ましい。
【0063】
(ステップS18) マッピング計算部12は、ステップS17の各基地局組合せBSset_qに対する共用周波数帯の割当結果に基づいて、各基地局組合せBSset_qにおいて各基地局に対する共用周波数帯の割り当てを行い、次の(10)式の割当結果を得る。この割り当て計算には、最適化問題を解くための従来の最適化ツールや探索アルゴリズムを適用することができる。
【0064】
【0065】
上記(10)式の共用周波数帯の割り当てでは、予め定められた任意の割り当て条件の下で、一の基地局組合せBSset_q内の稼働する各基地局に共用周波数帯を割り当てる。例えば、周波数利用効率や帯域需要の獲得率や2次事業者システム間の公平性などの要件が予め割り当て条件として設定される。また、一の基地局の組み合わせBSset_q内では、異なる複数の基地局に対して同一の周波数チャネルを割り当てることを許容する。
【0066】
上記したマッピング計算方法により、タイムスロット毎に(10)式の割当結果が生成される。割当結果出力部13は、各タイムスロットの(10)式の割当結果を示す割当結果情報120を出力する。
【0067】
(目的関数の他の例)
上記したステップS15で使用される目的関数の他の例を説明する。本実施形態に係る目的関数の他の例を次の(11)式に示す。
【0068】
【0069】
上記した(6)式の目的関数では、稼働する基地局が要求する共用周波数帯の帯域需要の総和から干渉ペナルティと公平性ペナルティとを減じた差を求めたが、(11)式に示される目的関数は、稼働する基地局が要求する共用周波数帯の帯域需要の総和から干渉ペナルティのみを減じた差を求めるものである。
【0070】
なお、複数の目的関数を予め周波数マッピング装置1に設定しておき、マッピング計算部12が当該複数の目的関数の中から任意の目的関数を使用するように構成してもよい。例えば、周波数マッピング装置1に予め設定された複数の目的関数の中から使用する目的関数をユーザが選択するための目的関数選択メニューを設け、ユーザが目的関数選択メニューから使用する目的関数を選択するように構成してもよい。
【0071】
本実施形態によれば、稼働する基地局が要求する共用周波数帯の帯域需要と基地局間の干渉量に応じた干渉ペナルティとに基づいて共用周波数帯の割り当て対象の基地局組合せを抽出することにより、異なる2次事業者システム同士でも同一の周波数チャネルを割り当てることを許容しながら、共用周波数帯の帯域需要を満たすように共用周波数帯の割り当てを行うことができる。これにより、共用周波数帯の空間的な利用の稠密性を高めることができるので、共用周波数帯の空間的な利用効率を向上させることができると共に、2次事業者システムの需要に対して共用周波数帯を効率的に割り当てることができるという効果が得られる。
【0072】
本実施形態によれば、さらに共用周波数帯を要求する2次事業者システム間の公平性指標の差に応じた公平性ペナルティにも基づいて共用周波数帯の割り当て対象の基地局組合せを抽出することにより、共用周波数帯の割り当てにおいて2次事業者システム間の公平性を保つことに寄与することができる。
【0073】
本実施形態によれば、共用周波数帯の割り当て対象の基地局組合せを抽出する際に、2つの基地局間の干渉量が閾値超過である場合に当該2つの基地局が同時に稼働しない制約を設けることにより、基地局組合せの探索範囲を狭めて計算量を削減することができる。これにより、共用周波数帯の割り当て処理にかかる時間を短縮することができるので、2次事業者システムの需要に対して迅速に応えることができるという効果が得られる。
【0074】
本実施形態によれば、共用周波数帯の割り当て対象として抽出された基地局組合せに対してクレンジングを行うことによって共用周波数帯の割り当て対象の基地局組合せを効果的に絞り込む。これにより、より効率的な共用周波数帯の割り当てを行うことができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0076】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0077】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…周波数マッピング装置、11…情報入力部、12…マッピング計算部、13…割当結果出力部、14…割当結果データベース(割当結果DB)