(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】背当て寝具
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
A47C27/00 N
A47C27/00 C
(21)【出願番号】P 2020141693
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良三
(72)【発明者】
【氏名】池松 亮子
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-164553(JP,U)
【文献】実開平06-082944(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に使用者の背部に当たる背支持面を有した三角柱状に組み立てることが可能な第1プレート、第2プレートおよび第3プレートと、
前記第1乃至第3プレートのいずれかから延出し、使用時に前記使用者の側部の下に敷かれるシートと、
前記第1乃至第3プレートのいずれか2つを連結および連結解除するための連結部と、
を備え、
前記連結部による連結が解除された状態において、前記第1乃至第3プレートを互いに重なるように折り畳むことが可能であ
り、
前記シートは、重ねられた前記第1乃至第3プレートに巻くことが可能である、
背当て寝具。
【請求項2】
前記第1プレートは、前記シートが接続された第1辺と、前記第1辺の反対側の第2辺と、前記第1辺および前記第2辺の間の前記背支持面と、を有し、
前記第2プレートは、前記第2辺に接続された第3辺と、前記第3辺の反対側の第4辺と、を有し、
前記第3プレートは、前記第4辺に接続された第5辺と、前記第5辺の反対側の第6辺と、を有し、
前記連結部は、前記第1辺と前記第6辺とを解除可能に連結する、
請求項1に記載の背当て寝具。
【請求項3】
前記背支持面の摩擦係数は、前記シートの上面の摩擦係数よりも小さい、
請求項1または2に記載の背当て寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝中の使用者の姿勢を横向きに維持することが可能な背当て寝具に関する。
【背景技術】
【0002】
いびきは、就寝時において気管が圧迫されたり、呼吸通路が狭まったりすることで生じる。気管の圧迫や呼吸通路の狭小化は、横向き姿勢で寝ることにより緩和されることが従来知られている。
【0003】
しかしながら、就寝中に特定の姿勢を維持することは困難である。そこで、横向き姿勢の維持を容易にするための寝具が提案されている(例えば特許文献1,2)。
【0004】
特許文献1,2に開示された寝具は、いずれも三角柱状のクッション(弾性ブロック材)を有している。このクッションを背中に当てることにより、就寝中も使用者の姿勢が横向きに維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-108321号公報
【文献】特開2005-34418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、従来の三角柱状のクッションを有した寝具は、その容積が大きく、一般的なクッションで用いられる綿やウレタンフォームで寝具の内装体が構成される場合には重くなるので持ち運びに不便である。そのため、使用者が出張等で外泊する場合に当該寝具を携行できず、横向き姿勢で就寝するいびき治療が中断してしまう。
【0007】
また、就寝中に寝具がずれると、使用者の横向き姿勢が維持されない可能性がある。これに対処すべく、例えば寝具の側地に滑り止めを施したり、側地自体を滑りにくい材料にしたりすると寝具の使用感が損なわれかねない。
【0008】
ここで例示した他にも、就寝中の使用者の姿勢を横向きに維持するための従来の寝具には種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、このような寝具の使い勝手を良くすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る背当て寝具は、使用時に使用者の背部に当たる背支持面を有した三角柱状に組み立てることが可能な第1プレート、第2プレートおよび第3プレートと、前記第1乃至第3プレートのいずれかから延出し、使用時に前記使用者の側部の下に敷かれるシートと、前記第1乃至第3プレートのいずれか2つを連結および連結解除するための連結部と、を備えている。
【0010】
本発明の一態様において、前記背当て寝具は、前記連結部による連結が解除された状態において前記第1乃至第3プレートを互いに重なるように折り畳むことが可能である。前記シートは、重ねられた前記第1乃至第3プレートに巻くことが可能である。
【0011】
本発明の他の一態様において、前記背支持面の摩擦係数は、前記シートの上面の摩擦係数よりも小さい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、就寝中の使用者の姿勢を横向きに維持するための寝具の使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る背当て寝具の概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したクッション体を展開した状態の背当て寝具の概略的な斜視図である。
【
図3】
図3は、クッション体を展開した状態の背当て寝具の概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、
図3におけるIV-IV線に沿う背当て寝具の概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、内装体として利用し得る板材の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、背当て寝具の使用状態を示す概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、3つのプレートが重ねられた背当て寝具の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態につき図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る背当て寝具100の概略的な斜視図である。図示したように、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を定義する。
【0015】
背当て寝具100は、第1プレート1と、第2プレート2と、第3プレート3と、シート4とを備えている。これらプレート1~3およびシート4は、例えばY方向と平行な2辺を有した矩形状である。
【0016】
図1の例において、プレート1~3は、三角柱状に組み立てられている。このように組み立てられたプレート1~3により、使用者の背部を支持するクッション体Cが構成される。以下、
図1に示す背当て寝具100の状態を使用状態と呼ぶ。
【0017】
第1プレート1は外面11(背支持面)および内面12を有し、第2プレート2は外面21および内面22を有し、第3プレート3は外面31および内面32を有している。外面11,21,31は、使用状態において外側を向く面である。内面12,22,32は、使用状態において内側を向く面である。
【0018】
シート4は、第1プレート1のY方向と平行な一辺から延出している。シート4は、使用状態において上方を向く上面41と、その反対側の下面42とを有している。上面41には、全体的に第1滑り止め材5が設けられている。
【0019】
図2は、クッション体Cを展開した状態の背当て寝具100の概略的な斜視図である。外面31には、第2滑り止め材6が設けられている。
図2の例において、第2滑り止め材6は、外面31の大部分を覆う矩形状である。
【0020】
図3は、クッション体Cを展開した状態の背当て寝具100の概略的な平面図である。
図4は、
図3におけるIV-IV線に沿う背当て寝具100の概略的な断面図である。
図3の例においては、プレート1~3が略同じサイズの長方形であり、シート4がプレート1~3よりも大きいサイズの正方形である。
【0021】
第1プレート1は、シート4が接続された第1辺S1と、第1辺S1の反対側の第2辺S2とを有している。第2プレート2は、第2辺S2に接続された第3辺S3と、第3辺S3の反対側の第4辺S4とを有している。第3プレート3は、第4辺S4に接続された第5辺S5と、第5辺S5の反対側の第6辺S6とを有している。これらの辺S1~S6は、いずれもY方向と平行である。外面11は、第1辺S1と第2辺S2の間に位置している。外面21は、第3辺S3と第4辺S4の間に位置している。外面31は、第5辺S5と第6辺S6の間に位置している。
【0022】
図3の例においては、プレート1~3のY方向における幅Wyがプレート1~3のX方向における幅Wxよりも大きい。一例として、幅Wyは300mmであり、幅Wxは200mmである。
【0023】
背当て寝具100は、第1辺S1に設けられた第1連結要素7と、第6辺S6に設けられた第2連結要素8とをさらに備えている。これら連結要素7,8は互いに連結可能であり、本実施形態に係る連結部を構成する。
【0024】
連結要素7,8は、例えば線ファスナーであり、Y方向に並んだ複数の歯で構成される歯列を有している。また、連結要素7,8の少なくとも一方に、歯列に対しスライド可能なスライダーが設けられている。クッション体Cを形成する際には、連結要素7,8の歯列を対向させ、さらにスライダーを所定方向にスライドさせて連結要素7,8の歯列を係合させる。これにより、第1辺S1と第6辺S6が連結される。さらに、クッション体Cを展開する際には、スライダーを上記所定方向の反対方向にスライドさせて歯列の係合を解除する。これにより、第1辺S1と第6辺S6の連結が解除される。
【0025】
図4に示すように、第1連結要素7は、シート4の下面42側に設けられている。また、第2連結要素8は、第3プレート3の端部に設けられている。
【0026】
背当て寝具100は、外装体としての第1側地110および第2側地120を備えている。側地110,120は、例えばプレート1~3およびシート4を合わせたサイズのニット生地であり、
図1乃至
図3に破線で示す縫合線Lに沿って縫い合わされている。側地110,120の内側にウレタン等で形成されたクッション層が設けられてもよい。
【0027】
第1滑り止め材5は、シート4において第1側地110に縫い付けられている。第2滑り止め材6は、第3プレート3において第1側地110に縫い付けられている。これら滑り止め材5,6は、第1側地110に接着剤で接着されてもよい。
【0028】
滑り止め材5,6は、側地110,120の表面よりも摩擦係数(静止摩擦係数および動摩擦係数)が大きい材料で形成されている。一例として、滑り止め材5,6としては、ポリエステル製の基材の表面にウレタン膜を形成したものを用いることができる。
【0029】
なお、シート4の下面42、第1プレート1の外面11および内面12、第2プレート2の外面21および内面22、第3プレート3の内面32には滑り止め材が設けられていない。
【0030】
図4に示すように、背当て寝具100は、平板状の第1内装体13、第2内装体23および第3内装体33をさらに備えている。第1内装体13は、第1プレート1において側地110,120の間に配置されている。第2内装体23は、第2プレート2において側地110,120の間に配置されている。第3内装体33は、第3プレート3において側地110,120の間に配置されている。
【0031】
図5は、内装体13,23,33として利用し得る板材200の一例を示す斜視図である。図示した板材200は、平板状の一対のライナー210,220を有している。
図5の例においては、ライナー210の一部を破断している。
【0032】
ライナー210,220の間には、互いに平行かつ等間隔に並んだ複数のリブ230が配置されている。これにより、ライナー210,220の間に長尺な空洞240が形成される。
【0033】
ライナー210,220およびリブ230は、例えばポリプロピレン等のプラスチックによって形成することができる。この場合において、ライナー210,220およびリブ230は、一体押出成形により形成されてもよい。
【0034】
このような中空構造を有する板材200で内装体13,23,33が構成されていれば、中実のプラスチック板等を用いる場合に比べ、内装体13,23,33を大幅に軽量化することが可能である。また、中空構造により断熱性にも優れ、内装体13,23,33の十分な強度も確保できる。
【0035】
図6は、背当て寝具100の使用状態を示す概略的な断面図である。クッション体Cを構成するに際しては、内面12,22,32が向かい合うようにプレート1~3を折り曲げ、連結要素7,8により第1辺S1と第6辺S6を連結する。これにより、例えば正三角柱であるクッション体Cが得られる。
【0036】
背当て寝具100は、使用時において第3プレート3の外面31およびシート4の下面42がベッドのマットレスに敷かれたシーツや敷布団の上面と接するように置かれる。使用者Uは、背支持面である第1プレート1の外面11に背部Bを当て、かつ側部E(肩、上腕、腰部側面等)の下にシート4を敷いて横向きで寝る。これにより、クッション体Cによって使用者Uの上半身が支持され、横向きに寝た姿勢を容易に維持することができる。
【0037】
使用時においては、第2滑り止め材6がシーツや敷布団の上面と接する。これにより、背当て寝具100の位置がずれにくくなる。また、使用者Uの側部Eが第1滑り止め材5と接する。これにより、側部Eと上面41が滑って横向きに寝た使用者Uの姿勢が崩れることを抑制できる。
【0038】
なお、本実施形態においては外面11に滑り止め材が設けられていない。そのため、外面11の摩擦係数は、第1滑り止め材5が設けられた上面41の摩擦係数よりも小さい。仮に滑り止め材を設けるなどして外面11の摩擦係数を大きくした場合、背部Bと外面11との滑りが悪くなって寝心地が悪化し得る。これに対し、本実施形態の構成であれば快適な寝心地を実現できる。
【0039】
また、本実施形態においてはシート4の下面42に滑り止め材が設けられていない。そのため、下面42の摩擦係数は、上面41の摩擦係数よりも小さい。仮に滑り止め材を設けるなどして下面42の摩擦係数を大きくした場合、シーツや敷布団の上面と下面42との滑りが悪くなって、これらシーツや敷布団、あるいはシート4によれが生じやすい。これに対し、本実施形態の構成であればよれの発生を抑制できる。
【0040】
また、本実施形態においては連結要素7,8がシート4の下面42側に位置する。これにより連結要素7,8が使用者Uに触れず、寝心地が一層向上する。
【0041】
非使用時には、連結要素7,8による連結を解除することでクッション体Cを展開することができる。このとき、プレート1~3を重ねることで背当て寝具100のコンパクト化が可能である。
【0042】
図7は、プレート1~3が重ねられた背当て寝具100の概略的な断面図である。この図の例においては、第1プレート1の外面11と第2プレート2の外面21が接し、第2プレート2の内面22と第3プレート3の内面32が接するようにプレート1~3が折り畳まれている。
【0043】
シート4は、上面41と第3プレート3の外面31が向かい合うように、積層されたプレート1~3に巻かれている。この場合、第1滑り止め材5と第2滑り止め材6が接するためシート4がずれにくくなり、プレート1~3がばらけることも抑制できる。
【0044】
なお、プレート1~3は、他の態様で折り畳むことも可能である。例えば、第1プレート1の内面12と第2プレート2の内面22が接し、第2プレート2の外面21と第3プレート3の外面31とが接するようにプレート1~3が折り畳まれてもよい。また、シート4は、下面42と第1プレート1の内面12とが向かい合うようにプレート1~3に巻かれてもよい。
【0045】
このように、三角柱状のクッション体Cをプレート1~3で組み立てることができ、かつこのクッション体Cを展開(潰す)ことができれば、非使用時の背当て寝具100のコンパクト化が可能となる。さらに、
図7に示すようにプレート1~3を折り畳めば背当て寝具100が最大限にコンパクト化され、外泊の必要が生じても持ち運びが容易である。内装体13,23,33に上述の板材200を用いて軽量化した場合には、背当て寝具100の携行性がより向上する。
【0046】
発明者は、上述の幅Wyが異なる4つの背当て寝具100のサンプルを作製した。これらサンプルの幅Wyは、それぞれ200mm、300mm、400mm、600mmである。これらサンプルを用いた際の携行性と使用感(寝心地や姿勢維持の良好さ)を確認したところ、幅Wy=300mmのサンプルが両者とも最も良好であった。このことから、幅Wyが300mm付近、例えば250mm以上かつ350mm以下の範囲であることが好ましい。
【0047】
上述のように幅Wxが200mmかつ幅Wyが300mmであれば、プレート1~3を折り畳んだ状態において背当て寝具100が概ねA4サイズ(210mm×297mm)となる。この場合、背当て寝具100を鞄やスーツケース等に収容しやすくなる。
【0048】
以上の本実施形態によれば、使い勝手に優れた背当て寝具100を得ることができる。さらに、この背当て寝具100は携行性に優れるため、いびき治療に用いる場合にはその治療を外泊先等でも中断せずに継続できる。
【0049】
なお、本実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、本実施形態にて開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
【0050】
例えば、プレート1~3はそれぞれ分離可能であってもよい。この場合においては、第2辺S2と第3辺S3を連結および連結解除可能な連結部を設けるとともに、第4辺S4および第5辺S5を連結および連結解除可能な連結部を設ければよい。
【0051】
連結要素7,8は、上述した線ファスナーに限られない。例えば、連結要素7,8は、面ファスナーやボタンであってもよい。
【0052】
背当て寝具100は、いびき治療以外の用途で利用することもできる。クッション体Cを組み立てた状態における外面11の傾斜角度は、例えばプレート1~3の幅Wxの調整により、背当て寝具100の用途に応じて適切な値となるように変更し得る。
【符号の説明】
【0053】
100…背当て寝具、1…第1プレート、2…第2プレート、3…第3プレート、4…シート、5…第1滑り止め材、6…第2滑り止め材、7…第1連結要素、8…第2連結要素、11…第1プレートの外面(背支持面)、41…シートの上面、13,23,33…内装体、C…クッション体。