(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
B06B1/04 S
(21)【出願番号】P 2020186537
(22)【出願日】2020-11-09
(62)【分割の表示】P 2019034632の分割
【原出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄介
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-300423(JP,A)
【文献】特開2013-126299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケースの内周に沿って配置された円筒状のヨークと、
前記
ヨークの内周に設けられたコイルと、
前記ケースの振動軸に沿って振動する可動子と、
外周部が前記ケースに固定され、中央部が前記可動子に固定された板バネと、
前記可動子に設けられた錘を備え、
前記錘は、
底部が振動軸と直交する方向に拡がり、筒部が前記ケースの開口部方向に開口した有底円筒部
を有することを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記錘は、その中央部に前記ケースの開口部側に向かって前記振動軸方向に延びる円柱部が、前記有底円筒部と一体に設けられている請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記有底円筒部の前記筒部の外周は、前記可動子の最も外周側に位置している請求項1又は請求項2のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記ケースは、その内周部に筒状のインナーガイドを備え、前記有底円筒部における前記筒部の上端部と前記インナーガイドの内周面との間に間隙が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記有底円筒部の底部と筒部との間にある角部が面取りされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記円柱部における前記ケースの開口部側の端部には、前記ケースの開口部側に向かって前記振動軸方向に突出した先端部が設けられ、
前記先端部は、前記板バネの中央部の孔に挿通され、
前記板バネと前記錘は、前記先端部がかしめられることにより固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話等の通信機器において、着信やアラームを人に知らせる方法として振動アクチュエータ(又は、振動モータ)を用いた振動による通知方法がある。そして、近年では、映画やゲーム、VR(Virtual Reality:仮想現実)の分野においても、例えば、アクションシーンの演出効果や、プレーヤーに対するフィードバック手段の一つとして振動アクチュエータが用いられており、振動により人の触覚を刺激することによってリアリティを向上させている。
【0003】
振動アクチュエータは、従来から偏心マスをモータによって回転させて慣性力により振動を発生させる方法を用いるものもあるが、振動の応答が早く、リアルな触感が得られるボイスコイル型の振動アクチュエータを採用する製品がある。かかる振動アクチュエータは、錘等を含む可動子を電気的に往復振動させる構造を有しており、可動子はケース内にバネやゴム等の弾性体により支持されている。
【0004】
例えば、円板状のゴム部材により可動子の両端に固定された軸を支持した構成の振動アクチュエータが開示されている(特許文献1参照)。また、圧縮コイルばねや板ばねにより可動子を支持した構成の振動アクチュエータが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭61-45745号公報
【文献】特許第5775233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、振動アクチュエータに対して外部から衝撃が加わると、弾性支持された可動子は衝撃によって振れて可動子の外周と僅かな隙間をあけて配置されているコイル等の電磁駆動部品と干渉し、当該部品に変形や破損が生じる等して動作不良や異音を生じるおそれがある。特に、携帯電話やゲームコントローラ等に使用される場合は、落下等の衝撃を避けることは難しい。
【0007】
例えば、特許文献1に係る振動アクチュエータでは、内周にコイルが装着されたコイルケースを略円筒状のヨークの内周に挿入して固定しており、可動子はゴム部材からなる支持部材で支持されているだけである。このため、この振動アクチュエータに対して外部から衝撃が加わった際に可動子が径方向(振動方向に対して垂直方向)に移動すればコイルと接触することとなる。
【0008】
一方、特許文献2に係る振動アクチュエータでは、可動子に振動方向に沿ったシャフト(軸)が貫通しており、当該シャフトに沿って可動子は振動する構成であるため、径方向への移動が規制されている。さらに、コイルの内周はボビンにより覆われているため、可動子とコイルとが直接接触することはない。
【0009】
しかし、特許文献1におけるコイルケースへのコイルの接合や、特許文献2におけるケースへのボビンの接合には、接着剤による接着が用いられるが、振動アクチュエータに外部から衝撃が加えられることによりこれらの接合が外れて、コイルやボビンが脱落するおそれがある。
【0010】
また、特許文献2の振動アクチュエータのように、ボビンによりコイル全域を覆う構成では、コイルの放熱性が悪化して、コイルの絶縁劣化が早まるおそれがある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、振動アクチュエータの振動性能や耐久性の悪化を防ぎつつ、外部からの衝撃が生じた際にも動作不良や異音を生じることを防止できる振動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明に係る振動アクチュエータは、筒状のケースと、前記ケースに設けられたコイルと、前記コイルにより前記ケースの振動軸に沿って振動する可動子と、外周端が前記ケースに固定され、中央部が前記可動子に固定された板バネと、前記可動子に設けられた錘を備え、前記錘は、底部が振動軸と直交する方向に拡がり、筒部が前記ケースの開口部方向に開口した有底円筒部を有することを特徴とする。
【0013】
前記錘は、その中心部に前記ケースの開口部側に向かって前記振動軸線方向に延びる円柱部が、前記有底円筒部と一体に設けられてもよい。
【0014】
前記有底円筒部の前記筒部の外周は、前記可動子の最も外周側に位置してもよい。
【0015】
前記ケースは、その内周部に筒状のインナーガイドを備え、前記有底円筒部における前記筒部の上端部と前記インナーガイドの内周面との間に間隙が設けられてもよい。
【0016】
前記有底円筒部の底部と筒部の角部と前記可動子の外周の間に空隙部が設けられてもよい。
有底円筒部の底部と筒部の角部が面取りされていてもよい。
前記円柱部における前記ケースの開口部側の端部には、前記ケースの開口部側に向かって前記振動軸線方向に突出した先端部が設けられ、前記先端部は、前記板バネの中央部の孔に挿通され、前記板バネと前記錘は、前記先端部がかしめられることにより固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記手段を用いる本発明に係る振動アクチュエータによれば、振動アクチュエータの振動性能や耐久性の悪化を防ぎつつ、外部からの衝撃が生じた際にも動作不良や異音を生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図2】振動アクチュエータの第1カバーケース及び第1弾性部材を省いた状態の上面図である。
【
図3】
図2の切断線III-IIIにおける断面図である。
【
図4】(a)第1インナーガイドの斜視図、及び(b)第1インナーガイドの上面図である。
【
図5】振動アクチュエータの作動を説明する図である。
【
図6】(a)振動軸方向一側に可動子が移動した状態の断面図、(b)振動軸方向他側に可動子が移動した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る振動アクチュエータの分解斜視図、
図2は振動アクチュエータの第1カバーケース及び第1弾性部材を省いた状態の上面図、
図3は
図2の切断線III-IIIにおける断面図、
図4は(a)第1インナーガイドの斜視図、及び(b)第1インナーガイドの上面図、
図5は振動アクチュエータの作動を説明する図、
図6は(a)振動軸方向一側に可動子が移動した状態の断面図、(b)振動軸方向他側に可動子が移動した状態の断面図である。以下、これらの図に基づき振動アクチュエータの構成について説明する。
【0021】
振動アクチュエータ1は、主に、外殻をなす筒状のケース2と、当該ケース2の内部に設けられたケース側電磁駆動部3と、当該ケース側電磁駆動部3により振動可能な可動子4と、当該可動子4の両端をそれぞれ弾性支持する第1支持ユニット5a及び第2支持ユニット5bと、当該第1支持ユニット5a及び第2支持ユニット5bの動きを規制する第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bと、から構成されている。当該振動アクチュエータ1は、例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末、ゲーム機のコントローラ等に搭載される。
【0022】
ケース2は、円筒状のケース本体10と第1カバーケース11a及び第2カバーケース11bとを有し、ケース本体10の両開口端が第1カバーケース11a及び第2カバーケース11bにより閉じられている。ケース本体10、第1カバーケース11a、及び第2カバーケース11bはそれぞれABS等の樹脂材料からなる。ケース本体10の外面には、図示しないリード線が接続されるターミナル12が形成されている。
【0023】
電磁駆動部は、ケース側電磁駆動部3のヨーク20と、コイル21a,21bと、可動子側電磁駆動部のマグネット30と、ポールピース31a,31bと、を有する。ケース2には、その内周に沿って配置された円筒状の軟磁性材料でなるヨーク20と、ヨーク20の内周にヨーク20と電気的に絶縁された状態で取り付けられた第1コイル21a及び第2コイル21bと、が設けられている。
【0024】
第1コイル21a及び第2コイル21bはヨーク20の内周に沿って巻回されている。当該第1コイル21a及び第2コイル21bはそれぞれターミナル12からの通電により磁場を発生可能である。なお、第1コイル21a及び第2コイル21bは組み立てに際して、接着剤等によりヨーク20や第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bに仮止めしてもよい。
【0025】
第1コイル21a及び第2コイル21bは、可動子4を間隔をあけて包囲する。可動子4は、振動軸O(ケース2の軸方向)に沿って振動するよう配置されている。可動子4は、円板状のマグネット30と、マグネット30を挟むように配置された円板状の第1ポールピース31a及び第2ポールピース31bと、これらのマグネット30、第1ポールピース31a、第2ポールピース31bを挟むように配置される第1マス(ウエイト、錘)32a、第2マス(ウエイト、錘)32bと、を有している。
【0026】
マグネット30は着磁方向が振動軸O方向である。第1ポールピース31a及び第2ポールピース31bは、軟磁性材料でなり、マグネット30の磁気吸着力及び接着剤等により、マグネット30に取り付けられている。第1ポールピース31a及び第2ポールピース31bは、それぞれ中央部に振動軸Oに沿った貫通孔31a1、31b1が形成されており、対応する第1マス32a及び第2マス32bはそれぞれ中央部に振動軸Oに沿った中央突起部32a1,32b1が形成されている。そして、中央突起部32a1、32b1が当該貫通孔31a1、31b1に圧入されることで、第1ポールピース31aと第1マス32a、第2ポールピース31bと第2マス32bが一体化されている。
【0027】
こうして可動子4を構成するマグネット30、第1ポールピース31a、第2ポールピース31b、第1マス32a、第2マス32bは一体化されている。なお、これらのマグネット30、第1ポールピース31a、第2ポールピース31b、第1マス32a、第2マス32bの一体化は、上述した磁気吸着力や接着剤、圧入による取り付けに限定されるものではなく、ねじ止め等の機械的手段やその他の手段により固定することにより、一体化してもよい。
【0028】
第1マス32a及び第2マス32bは非磁性体からなり、振動軸O方向に延びる円柱部32a2、32b2と、当該円柱部32a2、32b2の根元部分(振動軸O方向中央側)から振動軸Oの垂直方向に拡がり振動軸O方向外側に開口した断面U字状をなした有底円筒部32a3、32b3から構成されている。
【0029】
図3に示されるように、可動子4において、マグネット30の外形は、第1ポールピース31a、第2ポールピース31b、第1マス32a、第2マス32bよりも径方向に小さい。つまり、第1ポールピース31a、第2ポールピース31b、第1マス32aの有底円筒部32a3、第2マス32bの有底円筒部32b3の外周が可動子4において最も外周側に位置しており、最も第1コイル21a及び第2コイル21bの内周と接近している。
【0030】
このように構成された可動子4は、振動軸O方向における両端部、即ち第1マス32a及び第2マス32bのそれぞれの先端部32a4、32b4が第1支持ユニット5a及び第2支持ユニット5bにより支持されている。
【0031】
第1支持ユニット5aは、第1ダンパ40a(第1板バネ)と、当該第1ダンパ40aの一面に設けられた第1弾性部材41aと、から構成されている。
【0032】
図2に示すように、第1ダンパ40aは、孔50a(
図3に図示)を有する支持部51aが中央部に形成されている。第1ダンパ40aは孔50aを通して可動子4と連結されている。詳しくは、孔50aに第1マス32aの先端部32a4を挿通し、当該先端部32a4が押し潰されることでかしめられている。なお、第1ダンパ40aと可動子4との固定手段はかしめに限定されるものではなく、ねじ止めや接着等の他の方法により固定(連結)することもできる。
【0033】
また第1ダンパ40aは、支持部51aから外周へ渦巻き状に延びる3つの腕部52aを有している。各腕部52aは振動軸Oの回りに120°ピッチで等間隔に形成されている。そして、各腕部52aの外周端はケース本体10の内周に沿った環状の枠部53aに連結されている。当該枠部53aは、振動軸Oの回りに120°ピッチの位置にて、ケース本体10の内周の3か所にて径方向内側に突出しているフランジ部13a(
図3に1か所のみ図示)にて連結されている。詳しくは、フランジ部13aから立設したボス部14aを第1ダンパ40aの枠部53aに形成された貫通孔に挿通した状態で、ボス部14aの先端を加熱・加圧し、押し潰すことでかしめている。枠部53aと第1ダンパ40aとの固定手段はかしめに限定されるものではなく、ねじ止めや接着等の他の方法により固定(連結)することもできる。
【0034】
第1ダンパ40aは、金属の一枚ないし複数枚の板バネで構成されており、例えば本実施形態ではステンレス(バネ材)の薄板を加工したものを使用している。第1ダンパ40aの材料は、金属に限らず樹脂や繊維を含む複合素材であってもよい。また、第1ダンパ40aの材料は、疲労に強く、可撓性に優れた材料が望ましい。
【0035】
このように構成された第1ダンパ40aは、振動軸O方向及び当該振動軸Oに直交する垂直な径方向を含む交差方向において所定の範囲で弾性変形可能である。なお、この所定の範囲は、振動アクチュエータ1として通常に使用した場合の可動子4の振幅範囲に相当する。従って、当該所定の範囲は、少なくとも第1ダンパ40aがケース2に接触しない範囲であり、第1ダンパ40aの弾性変形の限界を超えない範囲である。
【0036】
第1弾性部材41aは、
図3に示すように、第1ダンパ40aの支持部51aから各腕部52aの一定の範囲までの形状に沿った外形の板状をなし、第1ダンパ40aの一面に固定されている。詳しくは、第1弾性部材41aは、第1ダンパ40a上に積層された、接着剤でなる第1接着層と、PE(ポリエチレン)でなるPE層と、接着剤でなる第2接着層と、エラストマ(エラストマとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)があるが限定するものではない)でなるエラストマ層とからなっている。そして、第1弾性部材41aの弾性変形(本実施形態では、PE層のずり変形、エラストマ層の曲げ変形)により、第1ダンパ40aの制振を行う。第1弾性部材41aと第1ダンパ40aとの固定手段は、上記の接着によるものに限定されず、樹脂製の第1弾性部材41aを第1ダンパ40aに熱溶着する等、その他の固定手段を用いてもよい。
【0037】
第2支持ユニット5bも、第1支持ユニット5aと同様の構成をなしており、第2ダンパ40b(第2板バネ)及び第2弾性部材41bを有している。なお、本実施形態において第2ダンパ40bと第1ダンパ40aとが同一形状、同材料からなり、第2弾性部材41bと第1弾性部材41aとが同一形状、同材料である。
図3に示すように、第2ダンパ40bの3つの腕部52bは孔50bが形成された支持部51bから環状の枠部53bまで延びている。そして、第2ダンパ40bは、孔50bに第2マス32bの先端部32b4が挿入され押し潰してかしめられることで可動子4と連結されている。また、第2ダンパ40bは、環状の枠部53bがケース本体10の内周から突出している3つのフランジ部13bと、枠部53bに形成された貫通孔をフランジ部13bのボス部14bが挿通し押し潰されてかしめられることで連結されている。なお、第2ダンパ40bの各腕部52bの渦巻き方向は、第1ダンパ40aの各腕部52aの渦巻き方向と逆をなしている。これにより、振動時に可動子4は第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bから各々逆方向のトルクを受けるため、振動軸O方向に変位しても振動軸O回りに回転しない。
【0038】
(第1インナーガイド6a、第2インナーガイド6b)
第1インナーガイド6aは振動アクチュエータ1の振動軸O方向の一側であり、第1支持ユニット5aよりも振動軸O方向の他側(ケース2中央側)に設けられている。第2インナーガイド6bは振動アクチュエータ1の振動軸O方向の他側であり、第2支持ユニット5bよりも振動軸O方向の一側(ケース2中央側)に設けられている。つまり、
図3に示すように、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bは、ケース2内において第1支持ユニット5a及び第2支持ユニット5bよりも振動軸O方向中央側に設けられている。第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bは、例えばABS等の樹脂材料で形成されている。ただし第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bの材料は樹脂材料に限定されるものでない。
【0039】
図4に示すように、第1インナーガイド6aは、ケース本体10の内周に沿った環状の枠部60aを有しており、その枠部60aの振動軸O回り120°ピッチの3か所に、ケース本体10の径方向内側且つ振動軸O方向他側に向けて螺旋状に傾斜した段差部61aが形成されている。当該段差部61aの螺旋形状は、第1ダンパ40aの各腕部52aの渦巻き形状の外周側(基端側)の部分に沿った形状であり、且つ第1ダンパ40aが所定の範囲で弾性変形している際には各腕部52aに接触することなく、当該第1ダンパ40aの変形が所定の範囲を超えた際には各腕部52aと接触する間隔を有している。
【0040】
詳しくは、各段差部61aは、ケース本体10の内周と平行な面をなす側壁61awと、当該側壁61awから径方向内側に延びる底部61abと、から構成されている。各底部61abの内縁は上面視においてケース本体10の内周と同軸の内周円(同心円)を形成しており、各側壁61awはケース本体10の内周側から当該内周円に向けた円弧状をなしている。第1ダンパ40aが振動軸Oの交差方向において所定の範囲を超えて変形した場合には側壁61awと接触することで当該交差方向の動きを規制し、第1ダンパ40aが振動軸O方向に所定の範囲を超えて変形した場合には底部61abと接触することで当該振動軸O方向の動きを規制する。
【0041】
また、各段差部61aには軽量化のための孔62aが形成されている。さらに、第1インナーガイド6aの枠部60aの外周縁側にはケース本体10の各フランジ部13aの形状に合わせて3か所に当該フランジ部13aの形状に沿った切欠部63aが形成されている。
【0042】
また、第1インナーガイド6aには、枠部60aの一部から径方向外側に突出した係止部64aが形成されている。係止部64aがケース本体10の開口溝部に係合することで、第1インナーガイド6aがケース2に対して位置合わせされる。
【0043】
また、枠部60aの背面側には、切欠部63bを除く部分に、振動軸O方向の中央側に突出した爪部67aが形成されている。
図4(a)に示される第1インナーガイド6aにおいては、爪部67aが3か所に形成されている。第1インナーガイド6aとケース本体10とは、例えば超音波溶着により第1インナーガイド6aの爪部67aを溶融させてケース本体10に溶着することで接合されている。なお、本実施形態のケース本体10と第1インナーガイド6a(爪部67a)とが同じ樹脂材料からなることで溶着により互いに強固に接合される。ケース本体10と第1インナーガイド6aをガラス繊維等が含有された樹脂材料としてもよい。ただし、接合方法は溶着に限られるものではなく、接着剤による接着や、かしめやねじ止め等の他の方法により接合してもよい。
【0044】
さらに、第1インナーガイド6aには、各段差部61aの内縁、即ち各底部61abの内縁から振動軸O方向中央側に延びる略円筒状の延在部65aが形成されている。
図3に示すように、当該延在部65aは、第1コイル21aと可動子4との間に位置し、第1コイル21aの一部をケース2との間に挟持している。具体的には、第1インナーガイド6aの延在部65aとケース本体10とにより、第1コイル21aの振動軸O方向における一側端部を挟持している。本実施形態では、延在部65aは、振動アクチュエータ1の振動軸O方向における中央部分を除いて第1コイル21aと可動子4との間に位置しており、延在部65aは第1コイル21aの内周全体を覆うことなく、第1コイル21aの一部をケース2の内部に露出させている。また、本実施形態では、第1インナーガイド6aの延在部65aは第1コイル21aの振動軸O方向一側端部と当接することで当該第1コイル21aがケース本体10から脱落しないように保持している。なお、延在部65aは第1コイル21aに直接的に当接している必要はなく、間に他の部材を介して間接的に第1コイル21aを保持してもよい。
【0045】
このように構成された第1インナーガイド6aにおいて、可動子4は、延在部65aより径方向内側にて振動軸O方向に進退移動可能である。
【0046】
第2インナーガイド6bは第1インナーガイド6aと同一形状であり、第2インナーガイド6bについても第1インナーガイド6aと同様の構成をなしている。つまり、
図4にて第2インナーガイド6bの各部をかっこ書きの符号で示すように、第1インナーガイド6aと第2インナーガイド6bの各部は対応している。詳しくは、第2インナーガイド6bは環状の枠部60bを有しており、枠部60bに側壁61bwと底部61bbを有する段差部61bが形成されている。また、各段差部61bには孔62bが形成され、枠部60bには切欠部63bが形成されている。さらに、枠部60bには径方向外側に突出した係止部64bが形成されており、当該係止部64bがケース本体10と接合され、枠部60bの各爪部67bを介してケース本体10と第2インナーガイド6bとが溶着されている。
【0047】
また、第2インナーガイド6bには、振動軸O方向中央側に延びる略円筒状の延在部65bが形成されている。当該延在部65bは、第2コイル21bと可動子4との間に位置し、第2コイル21bの一部をケース2との間に挟持している。
図3では、延在部65bとケース本体10とにより、第2コイル21bの振動軸O方向における一側端部を挟持している。本実施形態では、第2インナーガイド6bの延在部65bは第2コイル21bの振動軸O方向他側端部と当接することで当該第2コイル21bがケース本体10から脱落しないように保持している。
【0048】
(作動)
以上のように構成された振動アクチュエータ1は、第1コイル21a及び第2コイル21bに通電していない状態では、
図3に示すように、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bで支持される可動子4は、第1コイル21a及び第2コイル21bの中央に位置している。
【0049】
可動子4を振動させる際には、ターミナル12を介して、第1コイル21a及び第2コイル21bに、交互に逆極性の磁界を発生する向きに交流を通電させる。即ち、第1コイル21a及び第2コイル21bの隣り合う部分に同極が発生するようになっている。
【0050】
例えば
図5に示す極性の場合、可動子4には実線矢印Aで示す振動軸O方向の他側(
図5における下方)への推力が発生し、第1コイル21a及び第2コイル21bへ流す電流を反転させれば、可動子4には点線矢印Bで示す振動軸O方向の一側(
図5における上方)への推力が発生する。
【0051】
このように、第1コイル21a及び第2コイル21bに交流を通電させれば、可動子4は第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bによる付勢力を両側から受けながら、振動軸Oに沿って振動する。
【0052】
ところで、可動子4に発生する推力は、基本的にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力に準じられる。本実施形態では、第1コイル21a、第2コイル21bがケース2に固定されているので、マグネット30等が取り付けられた可動子4に第1コイル21a、第2コイル21bに発生する力の反力としての推力が発生する。
【0053】
よって、推力に寄与するのは、可動子4のマグネット30の磁束の水平成分(マグネット30の軸方向に直交する成分)である。そして、ヨーク20はマグネット30の磁束の水平成分を増大するものである。
【0054】
このように可動子4の通常の振動時は、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bは振動軸O方向及び径方向において所定の範囲で弾性変形し、可動子4並びに第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bは第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bに接触することはない。
【0055】
一方で、例えば振動アクチュエータ1を搭載した機器が落下した場合等で振動アクチュエータ1に外部から衝撃が加わると、可動子4が過剰な振幅で動き、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bが所定の範囲を超えた動きをすることがあるが、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bと接触することでこの動きが規制される。
【0056】
具体的には
図6(a)に示すよりも可動子4が振動軸O方向一側に過剰振幅し、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bが所定の範囲を超える動きをした場合、第2ダンパ40bの腕部52bが、第2インナーガイド6bの段差部61bの底部61bbと接触する。これにより、可動子4がそれ以上振動軸O方向一側に移動することが規制され、可動子4はケース2(第1カバーケース11a)と接触することが防止される。
【0057】
また、
図6(b)に示すよりも可動子4が振動軸O方向他側に過剰振幅し、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bが所定の範囲を超える動きをした場合、第1ダンパ40aの腕部52aが、第1インナーガイド6aの段差部61aの底部61abと接触する。これにより、可動子4がそれ以上振動軸O方向他側に移動することが規制され、可動子4はケース2(第2カバーケース11b)と接触することが防止される。
【0058】
図示しないが、ケース2に径方向の衝撃が加わった場合は、可動子4も径方向に移動する。このような場合に、可動子4が径方向に移動し、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bが径方向における所定の範囲を超える動きをすると、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bの腕部52a,52bが、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bの段差部61a、61bの側壁61aw、61bwと接触する。
【0059】
またたとえ、可動子4がさらに径方向に移動したとしても、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bのそれぞれの延在部65a、65bがコイル21a,21bと可動子4との間に位置していることから、延在部65a、65bが可動子4と接触することとなる。
【0060】
このように、本実施形態における振動アクチュエータ1によれば、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bは、可動子4の径方向への移動を規制しつつ、延在部65a,65bにより可動子4がケース側電磁駆動部3の第1コイル21a及び第2コイル21bと接触することを防止することができる。なお、必ずしも第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bの両方が、対応する第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bと接触する必要はなく、片方が接触しても同様の効果を奏する。
【0061】
また、延在部65a,65bはケース本体10とともに第1コイル21a及び第2コイル21bを挟持していることで、第1コイル21a及び第2コイル21bがケース2から脱落しないように機械的に保持することができる。これにより、例えば接着剤のみによる第1コイル21a及び第2コイル21bの取り付けよりも強固に第1コイル21a及び第2コイル21bを固定できる。また接着剤を用いなくとも、第1コイル21a及び第2コイル21bを保持することができる。
【0062】
さらに、延在部65a,65bは第1コイル21a及び第2コイル21bの振動軸O方向における中央部分は覆っていないことから、第1コイル21a及び第2コイル21bの一部はケース内部に露出し、放熱性を確保することができ、当該第1コイル21a及び第2コイル21bの絶縁劣化を防止することができる。
【0063】
また、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bが第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bの動きを規制することで、可動子4の過剰振幅を抑制することができる。また、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bは板バネで構成されているから、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bが第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bに接触した際には第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bが弾性変形し、衝撃を吸収できる。また、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bは第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bより振動軸O方向においてケース2の内側に設けられていることから、ケース2の大型化を防ぐことができる。これにより、振動アクチュエータ1の大型化を防ぎつつ、外部からの衝撃が生じた際の可動子4への衝撃を抑制することができる。
【0064】
特に、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bは、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bの振動軸O方向における動きを規制することで、可動子4の振動軸O方向の過剰振幅を抑制することができる。
【0065】
また、第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bは、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bのケース2の径方向を含む振動軸Oの交差方向における動きを規制することで、可動子4の径方向の動きを抑制することができる。
【0066】
第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bは、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bの腕部52a,52bの渦巻き形状に対応し振動軸O方向を中心とした螺旋状の段差部61a、61bを有することで、第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bの形状に合わせて振動軸O方向及び振動軸Oの交差方向の動きを規制することができる。また、段差部61a,61bは、可動子4の振動時における各腕部52a、52bの形状に沿った底部61ab、61bbを有するので、腕部52a、52bと底部61ab、61bbとを面接触させることができ、衝撃を分散できる。
【0067】
また、第1インナーガイド6aは可動子4の振幅範囲において第1コイル21aと第1ダンパ(第1板バネ)40aとの間に位置し、第2インナーガイド6bは可動子4の振幅範囲において第2コイル21bと第2ダンパ(第2板バネ)40bとの間に位置していることで、各コイル21a,21bと第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bとの接触を防止できる。
【0068】
また、可動子4の両端を支持する第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bを設け、これに対応する第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bによって振動軸O方向の一側方向と他側方向の規制をそれぞれ担当することで、インナーガイドの占有スペースを小さくでき、小型化することができる。
【0069】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0070】
例えば上記実施形態における第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bの延在部65a、65bの形状は略円筒状をなしているが、延在部の形状はこれに限られるものではない。コイル21a,21bをケース2とともに挟持し、可動子4とコイル21a,21bとの間に位置して、可動子4と第1コイル21a及び第2コイル21bの接触を防ぐことができる形状であれば、延在部にスリットを有する形状等の他の形状であってもよい。
また、上記実施形態における第1インナーガイド6a及び第2インナーガイド6bはそれぞれ枠部60a,60bに形成された爪部67a,67bがケース本体10に溶着されて接合されているが、爪部の数や位置はこれに限られるものではなく、ケースと接合できる構造であればよい。
【0071】
また、上記実施形態では、第1支持ユニット5a及び第2支持ユニット5bは第1弾性部材41a及び第2弾性部材41bを有しているが、必ずしも弾性部材を有していなくてもよい。
【0072】
また、上記実施形態のケース2は円筒状をなしており、可動子4は略円柱状をなしているが、ケース及び可動子の形状はこれに限られるものではなく、多角形やその他の形状であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、可動子4を支持する第1支持ユニット5a及び第2支持ユニット5bは、渦巻き状の腕部52a,52bを有する第1ダンパ40a及び第2ダンパ40bを使用しているが、支持ユニットとしてはその他の板バネを用いてもよい。例えば、曲線だけでなく直線を組み合わせた変則的な渦巻き状、十字状や卍状の板バネを用いてもよい。この場合、インナーガイドも板バネの形状に沿った形状とする。
【符号の説明】
【0074】
1 振動アクチュエータ
2 ケース
3 ケース側電磁駆動部
4 可動子
5a 第1支持ユニット
5b 第2支持ユニット
6a 第1インナーガイド
6b 第2インナーガイド
20 ヨーク
21a 第1コイル
21b 第2コイル
40a 第1ダンパ
40b 第2ダンパ
61a、61b 段差部
64a、64b 係止部
65a、65b 延在部
67a、67b 爪部