(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】予定磁気式飛行経路に対する車両の経路補正
(51)【国際特許分類】
B60L 13/06 20060101AFI20230510BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230510BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230510BHJP
G05D 1/08 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B60L13/06 Z
G08G1/00 X
G05D1/02 A
G05D1/08
(21)【出願番号】P 2020500099
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(86)【国際出願番号】 US2018041155
(87)【国際公開番号】W WO2019010461
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517074613
【氏名又は名称】スカイトラン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】ベルチュ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エルカイム, ガブリエル ヒュー
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1997/002167(WO,A1)
【文献】特開2016-155518(JP,A)
【文献】特開平10-001086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0229487(US,A1)
【文献】国際公開第2007/021206(WO,A1)
【文献】特開平07-291194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 58/40
G08G 1/00
G05D 1/02
G05D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気式飛行用ガイドウェイに沿って移動する車両を制御する方法であって、前記方法は、
1つ以上のセンサによって生成されたデータを制御装置で受信することと、
車両の予定飛行経路に関するデータを制御装置で受信することと、
磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を制御装置で判断することと、
磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の速さを制御装置で判断することと、
予定飛行経路からの車両の偏差を制御装置で計算することと、
車両の状態空間を、少なくとも前記偏差と前記速さに基づいて、制御装置で計算することと
、を含み、
前記車両は、角度を変更可能な複数の浮上発生器を備え、
前記複数の浮上発生器は、前記磁気式飛行用ガイドウェイから前記車両を浮上磁力によって浮上させるとともに、前記複数の浮上発生器の角度を変更することにより前記車両の高度、ロールおよびピッチの各々を調整可能であるように構成され、
前記制御装置は、前記複数の浮上発生器の少なくとも1つの角度を変更することにより、前記状態空間における前記車両の高度、ロールおよび/またはピッチを調整するデータを前記浮上発生器に送信する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1つ以上のセンサが、前記複数の浮上発生器のうちの対応する1つに関連する少なくとも1つのセンサを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記状態空間が、高度制御装置、ピッチ制御装置、およびロール制御装置のうちの少なくとも1つを用いて計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高度制御装置を使用して、前記複数の浮上発生器のうちの少なくとも1つの角度の変化を計算すること、前記ピッチ制御装置を使用して、前記複数の浮上発生器のうちの少なくとも1つの角度の変化を計算すること、および/または前記ロール制御装置を使用して、前記複数の浮上発生器のうちの少なくとも1つの角度の変化を計算することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高度制御装置を使用して、前記車両の指令速度の変化を計算すること、前記ピッチ制御装置を使用して、前記車両の指令速度の変化を計算すること、および/または前記ロール制御装置を使用して、前記車両の指令速度の変化を計算することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の浮上発生器のうちの少なくとも1つの角度の変化を計算することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記予定飛行経路と、前記ガイドウェイに対する前記車両の現在位置との差を判断することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
3次元における偏差を判断することと、3次元における偏差を使用して、ロール、高度およびピッチを判断することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の浮上発生器のうちの第1の浮上発生器の角度を変更することと、それとは独立に前記複数の浮上発生器のうちの第2の浮上発生器の角度を変更することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気式飛行用ガイドウェイでの磁気式飛行中の車両制御に関する。より具体的には、本開示は、磁気式飛行用ガイドウェイでの磁気式飛行における車両の予定飛行経路からの垂直偏差を最小化することに関する。
【背景技術】
【0002】
輸送システムは、人や貨物を長距離にわたって移動させるように設計されている。輸送システムは、車道または軌道を通過するように構成される車両を含むことができる。車両は、車両の乗員室または貨物室の動きを修正して、軌道または車道に対する乗員室または貨物室の振動や他の動きを低減するように構成された懸架システムを含むことができる。懸架システムを提供する1つの方法は、移動する車両から発生し、静止軌道上で導電板と交差する磁界を使用することである。垂直導電板に隣接する車両の垂直運動は、導電板内に渦電流を誘起し、移動する車両に垂直力を発生させる。力は車両の垂直運動に影響を与える。磁場の特定の側面を調整することによって、制御システムは、車両が軌道上で予定経路をたどる原因となる垂直力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
添付の図を参照して、本願技術の具現例が単なる例としてこれから記載される。
【
図1A】ガイドウェイの区間に進入する車両の一例の概略図である。
【
図1B】ガイドウェイの区間における車両の一例の概略上面図である。
【
図2】撓んだガイドウェイ上で車両の所定高度を維持する浮上発生器発生器の一例の概略図である。
【
図3】所定の高度を維持するために速さを増加させる車両の一例の概略図である。
【
図4】ピッチ偏差を有する車両の一例の概略図である。
【
図5】ロール偏差を有する車両の一例の概略図である。
【
図6】高度制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】高度制御方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図8】水平速度および合力を示す基本となる翼の幾何学を示す。
【
図9】翼がある角度に設定され、垂直速度を有する場合の力を示す。
【
図10】螺旋状モータの磁石、水平速度、および周速の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
上述の様々な実施例は、説明のためにのみ提供されており、縮尺通りに示されていなくてもよく、開示の範囲を限定するように解釈されるべきではない。したがって、詳細の多くは図示も記載もされていない。本技術の多くの特徴および利点が、本開示の構造および機能の詳細と共に、前述の説明に記載されているが、本開示は例示的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲で使用される用語の広範な一般的意味によって表される範囲全てにわたって、本開示の原理内での部品の詳細、特に形状、大きさおよび配置について変更することができる。したがって、上記の実施例は、添付の特許請求の範囲の範囲内で修正可能であることが理解される。集合の「少なくとも1つ」という請求項の文言は、その集合の一つの部材または集合の複数の部材が請求項を満たすことを示す。
【0005】
説明を簡単かつ明瞭にするために、適宜、異なる図の間で参照番号を繰り返して、対応する又は類似する要素を示している。さらに、本明細書に記載される実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかし、当業者であれば、本明細書に記載された実施形態は、これらの特定の詳細なしに実施可能であることを理解する。他の実施例では、方法、手順及び構成要素は、記載されている関連する特徴を不明瞭にしないように、詳細には記載されていない。また、説明は、本明細書に記載される実施形態の範囲を限定するものとはみなしてはならない。
【0006】
本開示において使用されるいくつかの用語は、ここで非限定的な実施例において説明される。本明細書中で使用される用語「浮上(levitation)」とは、物体間の機械的接触が存在せず、ある物体を他の物体に対して持ち上げて懸架することを示す。「浮上力(levitation force)」は浮上をもたらす力である。浮上力は、垂直方向(重力の方向と反対の方向)に作用することができるが、同じ力を使用して、水平方向または垂直と水平の両成分を含むいずれかの方向に2つの物体を移動または配設することができる。一般化すると、本明細書で使用される「浮上」および「浮上力」という用語は、主な走行方向に実質的に直行する方向での二つの物体間での非接触配置および力をそれぞれ示す。本明細書中でさらに使用されるように、「浮上磁束(levitation magnetic flux)」および「浮上力」は、一般的に互換性をもち、同じ要素を示す。「浮上発生器(levitation generator)」とは、浮揚部材と相互作用して可動物体を静止物体に対して浮上させる磁波を発生させるように構成される装置である。
【0007】
「駆動力(drive force)」とは、ある物体を別の物体に対して加速、動きを維持、または減速させるために必要な力を示す。本明細書で使用される「駆動力」は、二つの物体間に機械的接触を伴わずにもたらされる主な走行方向に実質的に一致する力を意味する。本明細書中でさらに使用される場合、「駆動磁束(drive magnetic flux)」および「駆動力」は、一般的に互換性をもち、同じ要素を示す。「駆動発生器(drive generator)」は、駆動部材と相互作用して磁波を発生させて、静止物体に対して可動物体を駆動するように構成される装置である。
【0008】
「ガイドウェイ(guideway)」とは、車両(car)、車両(vehicle)、台車、または輸送機器が移動可能な経路を提供する装置または構造物である。本明細書中で使用される場合、用語ガイドウェイおよび軌道は、一般に交換可能であり、同じ要素を示す。車両(car)とは、ガイドウェイ上で走行するように構成された装置のことである。車両は、少なくとも部分的に包囲されてもよく、全体的に包囲されてもよく、または物体または人を載せられる面を有する。車両は台車に結合され、台車はガイドウェイに結合される。台車は、車両の一体的な構成要素であるか、車両が結合可能な独立した構成要素であってもよい。本明細書で使用される台車は、必ずしも車輪を含まず、ガイドウェイと係合するように構成されている。
【0009】
「制御装置(controller)」は、一般に、プログラムを実行してデータを分析し、判断を行い、コマンドを送信するためのコンピュータである。場合によっては、制御装置は車両に搭載される。他の例では、制御装置は車両から離れていてもよいが、車両と通信することができる。制御装置は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、メモリ(ROMおよび/またはRAM)、および/または記憶装置を含むが、これらに限定されない電子デバイスであり得る。制御装置は、市販の既製(COTS)電子デバイス、または制御システムと共に実施するために特別に設計されたものとすることができる。
【0010】
「結合(coupled)」とは、2つの物体の連結または接続を示す。結合は、直接的または間接的であり得る。間接的な結合には、1つ以上の仲介物体を介して2つの物体を接続することを含む。結合は、電気的または機械的な接続を示す場合もある。結合はまた、物理的接触を伴わない磁気連結を含むことができる。
【0011】
「実質的に(substantially)」とは、ある構成要素が特定の寸法、形状、または実質的に修正する他の語に本質的に一致することを示すので、構成要素そのままである必要はない。例えば、実質的に円筒形とは、物体が円筒形に類似しているが、実際の円筒形から1以上の偏差を含み得ることを意味する。
【0012】
「備える(comprising)」とは、「必ずしもこれに限定されるわけではないが、含む(including)」を意味する。具体的には、前述の組み合わせ、グループ、シリーズなどを無制限に含める、またはこれらのメンバーシップを示す。
【0013】
「近く(closely)」という用語には強い類似性または関係性をともなう。用語「近く」はまた、ほぼ、同様に、または所望または所定の範囲内を示すことができる。
【0014】
「磁気源(magnetic source)」とは、自然に磁場を発生させるか、誘起されると磁場を発生させる任意の材料である。例えば、磁気源は、永久磁石、電磁石、超伝導体、または磁場を生成するか、誘起されると磁場を発生させる任意の他の材料を含み得る。
【0015】
「ロール(roll)」という用語は、縦軸、すなわちX軸を中心とする回転または振動を示す。縦軸は前後の間に延びる。
【0016】
「ピッチ(pitch)」という用語は、走行方向に対する浮上発生器の長軸の頂角をいう。ピッチは、横軸、すなわちZ軸を中心とした回転または振動であり、横軸は縦軸に対して垂直であり、横軸は二つの側面の間に延びる。
【0017】
本明細書で用いられる「高度(altitude)」という用語は、ガイドウェイの頂部又は底部から浮上発生器の中心点又は旋回点までの距離を指す。
【0018】
本明細書に記載される様々な実施例は、説明のためにのみ提供されており、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。したがって、そのような詳細の多くは図示も記載もされていない。本発明の技術の多くの特徴および利点が、本開示の構造および機能の詳細と共に、本明細書中に記載されているが、本開示は例示的なものにすぎず、特に、添付の特許請求の範囲において使用される用語の広範な一般的意味によって示される全範囲にわたって本開示の原理内の部品の特に形状、大きさおよび配置について詳細に変更することができる。したがって、上記の実施例は、添付の特許請求の範囲の範囲内で修正可能であることが理解される。集合の「少なくとも1つ」という請求項の文言は、その集合の一つの部材または集合の複数の部材が請求項を満たすことを示す。例えば、A、B、Cのうち少なくとも1つは、部材がAのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、またはA、BとCのいずれかでありうることを示す。
【0019】
本開示は、磁気式飛行用ガイドウェイに沿って移動する車両の高度を制御する方法に関する。本方法は、1つ以上のセンサによって生成されたデータを制御装置で受信する。本方法はまた、制御装置において、車両の予定飛行経路に関するデータを受信する。制御装置は、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の速さを判断し、予定飛行経路からの車両の偏差を計算する。制御装置は、磁気式飛行懸架システムの特定の態様を変更することによって、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を調節し、車両が予定飛行経路のより近くを通過するようにする。本開示で一般的に使用されるように、予定飛行経路は、所望の、または想定された飛行経路を指す。
【0020】
センサは、対応する制御装置と関連する少なくとも1つのセンサを含む。少なくとも1つのセンサは超音波センサであってもよく、制御装置は浮上発生器であってもよい。磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の速さを判断するために、制御装置は、光学センサ、エンコーダ、RFID、または前方監視レーダのうちの1つから検知された水平速度を受信する。磁気式飛行用ガイドウェイの車両の高度は、レーザセンサ、光学センサ、カメラセンサ、機械センサ、または磁気センサのうちの少なくとも1つであり得る高度センサから制御装置がデータを受信することによって判断される。車両の予定飛行経路に関する受信データは、ガイドウェイセグメントを表す情報を含むデータベースからのものである。データは、車両の出発地点および行き先に基づく想定飛行経路の対応するガイドウェイセグメントである。予定飛行経路からの車両の偏差は、予定飛行経路とガイドウェイに対する車両の現在位置との差分を求めることによって計算され、偏差は三次元であり、ゆえにロール、高度、およびピッチが判断される。
【0021】
磁気式飛行懸架システムのある態様は、複数の浮上発生器のうちの1つ以上の角度を変化させることによって変更することができる。各浮上発生器の角度は、互いに独立して変えることができ、駆動モータによって調整することができる。また、駆動発生器は、磁気式飛行懸架システムを変更する際に、車両の異なる速度を発生させるように変更することができる。
【0022】
本開示はまた、磁気式飛行用ガイドウェイに沿って移動する車両を制御するように構成されたシステムに関するものでもある。このシステムは、これと関連する少なくとも1つのセンサと、ガイドウェイに対する位置を検出するように機能する複数のセンサと、複数のセンサに機能結合された少なくとも1つのプロセッサユニットを含む制御装置とを有する複数の浮上発生器を含むことができる。制御装置は、複数のセンサによって生成されるデータと、車両の予定飛行経路に関するデータとを受信するように構成することができる。制御装置はまた、磁気飛行のために、複数のセンサのうちの1つ以上を使用して、ガイドウェイに対する車両の高度と、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の速さとを判断することができる。そして制御装置は、予定飛行経路からの車両の偏差を計算し、データを送信して、車両に予定飛行経路のより近くを通行させる磁気式飛行懸架システムの特定の態様を変更することによって、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を調整することができる。
【0023】
本開示はまた、磁気式飛行用ガイドウェイ上で移動する車両の高度を制御する方法にも関している。本方法は、制御装置において、1つ以上のセンサによって生成されたデータと、車両の予定飛行経路に関するデータとを受信することを含む。制御装置は、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度と磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の速さとを判断する。そして制御装置は、予定飛行経路からの車両の偏差と磁気式飛行経路からの偏差を低減するために必要な浮上調整とを計算する。浮上調整信号は、1つ以上の浮上発生器へ送信される。制御装置は、予定飛行経路からの偏差と同等の浮上調整によって磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を調節し、それによって予定飛行経路により近い経路を維持する。
【0024】
実施例は、実質的に水平なガイドウェイに関して図示されているが、本開示は、垂直方向に向けられたガイドウェイも含む。このような垂直方向のガイドウェイでは、システムはエレベータにより近いものとすることができる。他のシステムでは、ガイドウェイは、水平、垂直、傾斜、またはそれらの任意の組み合わせである構成要素を含むことができる。
【0025】
図1Aは、車両102がガイドウェイ106内にあるか、またはガイドウェイに進入する状態の浮上輸送システム100の一例を示す。浮上輸送システム100は、複数のガイドウェイ106区分によって形成される軌道を有する。各ガイドウェイ106区分は、一つ以上の支柱108によって支持され、分割軌道区分は、様々な区間110を有することができる。図の例は、両端部に支持部108を有するガイドウェイ106のセグメントを示しているが、分割軌道は、中央支柱108とこれから延出する二次支柱とを有するなど、様々な配置を有する支柱108を含むことができる。
【0026】
ガイドウェイ106区分は、車両102が浮上輸送システム100内を移動することを可能にする軌道のネットワークを形成することができる。図示されている分割ガイドウェイ106区分は2本の支柱108の間の部分に延在しているが、区分が延在範囲の一部分であっていずれかの側で別のガイドウェイ106区分に結合されて、複数の区分が2本の支柱108の間の部分に延在してもよい。
【0027】
車両102は、磁気式飛行懸架システム101を有し、この磁気式飛行懸架システムは、車両102がガイドウェイ106内で予定飛行経路111のより近くを通るようにする特定の態様を有する。磁気式飛行懸架システム101の一態様は、複数の浮上発生器104であり得る制御装置10である。複数の浮上発生器104は、ガイドウェイ106内に少なくとも部分的に収容され、車両102が浮上輸送システム100内を走行することができるようにする。浮上発生器104は、ガイドウェイ106と磁気により係合して相互作用し、輸送システム100上で車両102を案内する。浮上発生器104及びガイドウェイ106は、車両が浮上輸送システム100内を走行するときに物理的に接触するように設計されておらず、むしろ、浮上発生器104は、浮上磁力を発生させて、浮上発生器106をガイドウェイ106の上方またはガイドウェイ106から離間距離内(しかし分割軌道内)で上昇させる。一つ以上の浮上発生器104を実施することができる。
図1Aは二つの浮上発生器104を示しているが、他の例では、
図1Bと同様に四つの浮上発生器104が使用され、二つ以上の浮上発生器104が
図1の二つの浮上発生器104と平行である。四つの浮上発生器104は、各々がZ軸を中心にピッチ動作を行うか、回転して、車両102の高度、ロールおよび/またはピッチを調整できる。
【0028】
浮上発生器104は、一つ以上の浮上発生器104の角度を変えることによってピッチを調整するように機能できる。そのため、浮上発生器104の組み合わせを変更することによって、浮上発生器104は、車両102の高度、ロール、および/またはピッチを調整することができ、これについては以下にさらに詳細に記載する。浮上発生器104は互いに独立して変更することができるので、車両102はガイドウェイ106に対して三つの次元で調整することができる。浮上発生器104は、駆動モータ1040によって調整可能である。少なくとも一例では、浮上発生器104の各々は、対応する駆動モータ1040を有する。他の例では、駆動モータ1040が二つの対応する浮上発生器104を調整するように、一対の浮上発生器104を駆動モータ1040によって通信制御することができる。
【0029】
磁気式飛行懸架システム101はまた、駆動発生器103の変化及び変更を含むことができる。一つ以上の駆動発生器103を浮上輸送システム100に含めることができる。駆動発生器103は、駆動力を付与するように構成される。駆動発生器103を変更させることにより、車両102の異なる速度が生じる。駆動発生器103によって車両102の速度が増大すると、車両102の高度は上昇する。四つの浮上発生器104の各々と駆動発生器103との間で様々な組合せを変更することにより、ガイドウェイ106に対する車両102の高度118を調整する。
【0030】
車両102は、例えば、車両102が浮上輸送システム101内を横断するときに所定の高度118を維持することにより、磁気式飛行懸架システム111の特定の態様を変更して、車両102が予定飛行経路101のより近くを通るようにすることができる制御装置114を含むことができる。例えば、
図2に示すように、ガイドウェイ106は、車両102の予定飛行経路111内のガイドウェイ106の区間110にわたって撓み116を有しうる。撓み116は、様々な要因によって生じうる。例えば、撓み116は、ガイドウェイ106内の経路の変化によって生じうる。他の例では、撓み116は、ガイドウェイ106の自重によって生じうる。さらに、撓み116は、ガイドウェイ106上で走行する一つ以上の車両102の重量によって生じうる。予定飛行経路111内の撓み116は、
図2に示すような垂直撓み、
図4に示すようなピッチ撓み、
図5に示すような回転撓み、またはこれらの組み合わせとすることができる。垂直撓みの場合、車両の高度が調整される。ピッチ撓みについては、車両のピッチが調整される。回転撓みについては、車両のロールが調整される。制御装置114は、磁気式飛行懸架システム101の特定の態様を変更することによって、車両102のロール、高度、および/またはピッチを調整して、予定飛行経路111内のガイドウェイ106の撓み116をオフセットし、予定飛行経路111のより近くを通行するようにすることができる。制御装置114は、車両102及びガイドウェイ106に関する情報を受信して判断するように構成することができる。制御装置114は、一つ以上のセンサから受信した情報に応じてガイドウェイ106の区間110の撓みを判断することが可能なプロセッサ、マイクロプロセッサ、コンピュータ、サーバ、または他の電子装置であってもよい。
【0031】
車両102は、制御装置114が磁気式飛行懸架システム101の特定の態様を変更して車両102の変動を調整し、予定飛行経路111のより近くを追従させることによっても調整することができる。例えば、以下にさらに説明するように、乗員が車両102内で動き回って、X軸を中心とする回転などの不要な回転を引き起こすことがある。制御装置114は、個々の浮上発生器104を調整して、車両102の位置を補正できる。
【0032】
制御装置114は、予定飛行経路111、高度118、支柱108の間隔、および分割軌道の区間110など、浮上輸送システム100に関する関連情報またはデータを受信する。少なくとも一例では、車両102の予定飛行経路111に関する受信データは、ガイドウェイ106のセグメントを表す情報を格納するデータベースからのものである。車両102の予定飛行経路111に関するデータは、車両102の出発地点および行き先に基づいて想定飛行経路の対応するガイドウェイセグメント106に基づいている。
【0033】
車両102の高度118を判断する際、制御装置114は、高度センサ112からデータを受信することができる。高度センサ112は、車両102内に配設することができ、または他の例では、高度センサ112は、ガイドウェイ106および/または支柱108内に配設することができる。高度センサ112は、レーザセンサ、光学センサ、カメラセンサ、機械センサ、磁気センサ、または車両102の高度を判断するのに適当なセンサのうち少なくとも一つであってもよい。制御装置114は、車両102の重量及び速さのような情報を判断することもできる。磁気式飛行用ガイドウェイ106に対する車両102の速さを判断する際に、制御装置114は検知された水平速度を受信する。水平速度は、ガイドウェイ106に関連している。車両102の速さは、光学センサ、エンコーダ、RFID、前方監視レーダのうちの一つから受信したデータ、または車両102の速さを判断するのに適当な他のセンサまたは方法に基づくことができる。車両102の重量は、車両102の重量、乗員の重量、有効荷重、貨物、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。少なくとも一例では、制御装置114は、車両102の重量を瞬時に判断する。少なくとも一例では、制御装置は、車両102の内容物とともに車両102の重量を、瞬時に判断し、内容物は、乗員、有効荷重、および/または貨物のうちの一つ以上を含むことができる。他の例では、制御装置114は、浮上輸送システム100内での車両102の出発時に、車両102の重量を受信する。
【0034】
制御装置114は、浮上輸送システム100に結合された一つ以上のセンサ120からデータを受信できる。一つ以上のセンサ120は、車両102、ガイドウェイ106、及び/又は支柱108上に配設することができる。一つ以上のセンサ120は、高度、速さ、重量、場所、またはそれらの任意の組み合わせを判断するように構成された光学、無線、および/または近距離通信装置であってもよい。一つ以上のセンサ120は、ガイドウェイ106の撓み116を判断するのに必要なデータを制御装置114に提供する。少なくとも一例では、一つ以上のセンサ120は、浮上発生器104のような対応する制御装置10に関連する少なくとも一つのセンサ105を含む。例えば、一つ以上のセンサが、少なくとも四つの超音波センサ105を含み、その各超音波センサが対応する浮上発生器104に関連している。図示されるように、センサ105は、浮上発生器104に結合される。他の例では、センサ105は、他の箇所、例えば車両102に結合することができる。一つ以上のセンサ105は、ガイドウェイ106と相互作用するように構成された超音波センサであってもよい。
【0035】
さらなる例では、一つ以上のセンサ120は、隣接する車両102間でデータを符号化および/または送信するように構成されたレーザセンサを含むことができる。符号化/送信データは、分割軌道の区間110、分割軌道の撓み、隣接する車両の速さ、隣接する車両の重量、および/または制御装置114に必要な他のデータであり得る。
【0036】
図1に見られるように、一つ以上のセンサ120は、支柱108上に配設されてガイドウェイ106の区間110に関するデータを受信できる送信器122と通信結合できる。このデータは、車両102がガイドウェイ106上を走行する際のガイドウェイ106の次の区間110の予測撓み116を判断する際に制御装置114を補助する。また、このデータは、予定飛行経路111からの車両102の何らかの偏差を判断する際に、制御装置114を補助する。
【0037】
一つ以上のセンサ120の少なくとも一つは、支柱108上に配設された送信器122と通信して、ガイドウェイセグメント106の区間110に関するデータを受信することができる。送信器122は、クイックレスポンス(QR)コードのようなバーコード124、無線周波数識別(RFID)タグ、または一つ以上のセンサ120にデータを提供するように構成される類似の装置であってもよい。
【0038】
送信器122は、支柱108、ガイドウェイ106、又は一つ以上のセンサ120の通信範囲を含む浮上輸送システム100のいずれかの部分に配設することができる。図示の例では、送信器122は支柱108にある。送信器122は、浮上輸送システム100の異なる部分に設けることができる。例えば、送信器122は、接合部又は中央部においてガイドウェイ106上に設けることができる。送信器122に関連するデータは、静的であっても動的であってもよい。送信器122に関連するデータが動的である状況では、車両102によって受信されるデータは、先行車両102の重量、レールの温度、大気温度、後続車両102の重量、または他の必要な情報を含むことができる。
【0039】
送信器122は、予定飛行経路111に関するデータ、例えば、2本以上の支柱108間のガイドウェイ106の区間110又は経路を記憶することができる。
図1において、送信器122は、2本の支柱108の間でガイドウェイ106の区間110について通信する。他の例では、送信器122は、ガイドウェイ106の二つ以上の区間110に関するデータを通信することができ、これにより、浮上輸送システム100内で必要な送信器122の総数を減少させることができる。
【0040】
制御装置114は、一つ以上のセンサ120によって生成されたデータ、車両102の予定飛行経路111に関するデータを受信した後、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両102の高度118および速さを判断した後に、予定飛行経路111からの車両102の偏差を計算する。予定飛行経路111からの車両102の偏差は、ガイドウェイ106の撓み、あるいは風、乗員の動き、又は他の要因のような他の要因により起こりうる。予定飛行経路111からの車両102の偏差は、駆動発生器103の回転に基づく速さ、浮上発生器104の角度、車両102の重量、または他のあらゆる可能な要因によっても起こり得る。
【0041】
次に、制御装置114は、予定飛行経路111からの偏差を減少させるために必要な浮上調整を計算し、浮上発生器104がそのピッチを調整するように一つ以上の浮上発生器104に浮上調整信号を送信する。制御装置114は、予定飛行経路111からの偏差と同等の浮上調整により、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両102の高度を調整し、予定飛行経路114に近い経路を維持する。浮上発生器104の角度またはピッチの調整は、各浮上発生器104における揚力ベクトルを変化させ、これにより、車両102の上下動に影響を与える。個々の浮上発生器104の角度又はピッチの変化の組合せにより、制御装置114は、高度、ロール及び/又はピッチに関して車両102を調整することができる。
【0042】
図2は、浮上輸送システム100のガイドウェイ106の撓み区間110内の車両102を示す。ガイドウェイ106の区間110は、車両102の重量により撓み得るか、または予定飛行経路111のために撓む。
図2に示すように、撓みは一時的であり、ガイドウェイ106は元の高度に戻る。他の例では、予定飛行経路111内のガイドウェイ106の傾斜は、異なる勾配を有するか、長距離にわたって延在することができる。さらに他の例では、例えば車両102が地面へ戻った場合には、ガイドウェイ106の高さは、以前の高さに戻らないことがある。撓み116は数学的に予測可能であり、車両102の既知の重量及び速さ、並びにガイドウェイ106の区間110を用いて計算することができる。制御装置114は、予定飛行経路111からの車両102の偏差を計算し、高度、ロール及び/又はピッチに関する偏差を判断することができる。制御装置114は、予定飛行経路111と、ガイドウェイ106に対する車両102の現在位置との差分を求めることにより、車両102の偏差を算出する。制御装置114は、車両102の重量、速さ、及びガイドウェイ106の区間110を考慮してガイドウェイ106の撓み116を計算することができる。次に、制御装置114は、車両102の浮上を調節して、撓み116に適応して所定の高度118を維持する。
【0043】
図3に示されるように、制御装置114は、車両102の速さを上げること、浮上発生器104のピッチを調整することを含むが、これらに限定されない多くの方法で、車両102の浮上又は高度を調整して所定の高度118を維持し、それによってより多くの浮上を生成することができる。
図2は、
図1の浮上発生器に対して浮上を増大させ、それによって所定の高度118を維持するようにピッチ制御される浮上発生器104を有する車両102を示す。高度を補正するために、浮上発生器104は、車両102がバランスを維持するように、上向きまたは下向きに所望されるように同時ピッチ制御を行う。例えば、高度を下げるには、浮上発生器104が下向きに同時ピッチ制御を行うことができる。逆に高度を上げるには、浮上発生器104が上向きに同時ピッチ制御することができる。
【0044】
ガイドウェイ106は、その内面に配設される一つ以上のマーキング107を有することができる。一つ以上のマーキング107は、撓んだガイドウェイ106上に水平飛行経路を示すことができる。一つ以上のマーキング107は、着色塗料、反射テープ、反射塗料、またはガイドウェイ106の内面とのコントラストを提供する任意の類似のマーキングであってよい。いくつかの例では、一つ以上のマーキング107を内面に配設して、異なるガイドウェイ106の状況、すなわち、1台の車両、2台の車両、3台の車両の状況において水平飛行経路を示すことができる。
【0045】
浮上発生器104上のセンサ105は、一つ以上のマーキング107に対する自身の位置を判断して水平飛行経路を維持することができる。センサ105は、マーキング107からの偏差を検出し、浮上発生器104のピッチを調整して水平飛行経路を維持するように制御装置114に命令できる。制御装置114は、様々な状況下で、各ガイドウェイ106について予め計算され記憶された撓みを有することができる。制御装置114は、輸送システム100の条件が変化した、例えば、ガイドウェイ106に進入/退出する場合に、あるマーキング107から別のマーキング107まで浮上発生器104及び高度センサを調整することができる。
【0046】
図3は、分割軌道に対して速さが上昇している一方で、
図1の浮上発生器104と実質的に類似したピッチを浮上発生器104が有する車両102を示す。駆動発生器103は、ガイドウェイ106に対して速さを上昇させ、これにより、浮上発生器104によって生成される浮上力を増加させることで、車両102が所定の高度118を維持することができる。
【0047】
制御装置114は、車両102の浮上を調整して、実質的に線形の走行方向と所定の高度118を維持する。同様に、車両102の高度は、乗員の重量や動き、または風などの他の要因によって変化し得る。制御装置114はまた、車両102の高度を調節して、車両102に予定飛行経路111のより近くを追従させることもできる。
【0048】
下降傾斜または上昇傾斜のような実質的に非水平の形態で分割軌道が配置される状況では、
図4に示されるように、制御装置114は車両102のピッチを調整し、実質的に非水平の分割ガイドウェイ102の撓みを相殺してより近くを追従させることができる。
図4は連続下向きの傾斜で示されているが、車両102のピッチは、上向き傾斜、可変傾斜、および/または、何らかの垂直撓みを補正するように調整させるので、車両102のピッチはガイドウェイ106および予定飛行経路111のより近くで追従できるように調整される。また、車両102のピッチは、車両102の前部と後部の間での車両102内の重量のシフトまたはアンバランスを補正するように調整されてもよい。
図4において、ガイドウェイ106は下向き傾斜を有するので、車両102のピッチはガイドウェイ106内での予定飛行経路111のより近くを追従するように調整される。車両102のピッチは、前部および後部の浮上発生器104間のピッチまたは角度を変更することによって調整することができる。そのため、車両102の端部が下降するように高い方の端部を補正するため、高い方の端部の浮上発生器104が下向きにピッチ制御されうる、および/または、下端部の浮上発生器104が上向きにピッチ制御されうる。逆に、車両102の下端部が上昇するようにこの端部を補正するために、下端部の浮上発生器104が上向きにピッチ制御され、及び/又は高い方の端部の浮上発生器104が下向きにピッチ制御されうる。
【0049】
図5は、輸送システム100の正面図であり、車両102を回転させる、すなわちロールさせ、予定飛行経路111のより近くを追従させる磁気式飛行懸架システム101の特定の態様の変更を示す。予定飛行経路からの車両102の偏差は、ロールとして図示される。制御装置114は、予定飛行経路111からの車両102の偏差を計算し、その偏差をロールとして判断することができる。制御装置114は、予定飛行経路111と、ガイドウェイ106に対する車両102の現在位置との差分を求めることによって、車両102の偏差を計算する。車両102は、乗員の動き、風、方向の変化、または他のあらゆる可能な要因を含む多くの要因のために、回転またはロールすることができる。個々の又は対になった浮上発生器104は、車両102に予定飛行経路111のより近くを追従させる、及び/又は不要なロールを補正するように調整することができる。片側での浮上発生器104のピッチを調整することによって、車両102は、X軸を中心にロール動作を行い、所望の予定飛行経路111のより近くを追従するか、望ましくないアラインメントを補正したりすることができる。ロールを補正するために、下側の浮上発生器104が、上向きにピッチ動作することができ、及び/又は高い側の浮上発生器104が、下向きにピッチ動作することができる。
図4に示すように、(図解から)右側1022が左側1024より低い高度まで降下するように、車両102はロール制御されている。(図解から)車両102を反時計方向に回転させると、右側の浮上発生器104は上向きにピッチ動作を行う、及び/又は左側の浮上発生器104が下向きにピッチ動作を行うことができる。左側1024が右側1022よりも低い高度まで降下する、且つ/または(図解から)時計回りの方向に車両102を回転させるように車両102がロール制御された場合には、左側の浮上発生器104が上向きにピッチ動作を行うことができ、および/または右側の浮上発生器104が下向きにピッチ動作を行うことができる。
【0050】
上記では、高度、ピッチ、ロールの変更を別々に説明したが、任意の組み合わせを実現することができる。四つの個々の浮上発生器104のピッチは、三つの次元での偏差の調整をすることができる。
【0051】
ガイドウェイ106の区間110内の車両の数は、分割軌道の区間110、車両102の速さ、車両間の間隔、浮上輸送システム100内の車両の数、及び/又は経路の使用頻度/密集度に応じて変動しうる。特定の経路、目的地、または分割ガイドウェイ106は、異なる使用頻度を有してガイドウェイ106の区間110内の車両102の潜在数が変化する。
【0052】
図6を参照すると、一例によるフローチャートが提示されている。方法600を実行する様々な方法があるので、この方法例600は、一例として挙げられている。以下に説明する方法600は、例えば、
図1~
図5に示す構成を使用して実行することができる。
図6に示される各ブロックは、方法例600において実行される一つ以上のプロセス、方法、またはサブルーチンを表す。さらに、図示されたブロックの順序は単に例示的であって、本開示によりブロックの順序は変化しうる。本開示から逸脱することなく、さらなるブロックを追加してもよく、またはより少ないブロックを利用してもよい。方法例600は、ブロック602から開始することができる。
【0053】
ブロック602において、方法600は、一つ以上のセンサによって生成されたデータを制御装置で受信する。1つ以上のセンサは、対応する制御装置に関連する少なくとも1つのセンサを含む。制御装置は浮上発生器であってもよく、少なくとも1つのセンサは超音波センサであってもよい。少なくとも1つの例では、1つ以上のセンサは、少なくとも4つの超音波センサを含み、その各超音波センサは、対応する浮上発生器に関連している。
【0054】
ブロック604において、方法600は、車両の予定飛行経路に関するデータを制御装置で受信する。車両の予定飛行経路は、ガイドウェイセグメントを表す情報を格納するデータベースから得ることができる。データは、車両の出発点および行き先に基づく想定飛行経路の対応するガイドウェイセグメントであり得る。
【0055】
ブロック606において、方法600は、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を制御装置で判断する。制御装置は、高度センサからデータを受信することができる。高度センサは、レーザセンサ、光学センサ、カメラセンサ、機械センサ、磁気センサ、または他の適当なセンサのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0056】
ブロック608において、方法600は、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の速さを制御装置で判断する。制御装置は、検知された水平速度を受信することができる。車両の速さは、光学センサ、エンコーダ、RFID、前方監視レーダ、または他の適当なセンサまたは方法のうちの1つから受信されたデータに基づくことができる。
【0057】
ブロック610において、方法600は、予定飛行経路からの車両の偏差を制御装置で計算する。偏差を計算するために、制御装置は、予定飛行経路とガイドウェイに対する車両の現在位置との差分を求めることができる。制御装置は、三つの次元で偏差を計算することでロール、高度、およびピッチを判断することができる。
【0058】
ブロック612において、方法600は、制御装置からデータを送信し、磁気式飛行懸架システムのある態様を変更して車両に予定飛行経路のより近くを追従させることによって、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を調整する。複数の浮上発生器の1つ以上の角度を変化させることによって車両を調整することができる。複数の浮上発生器の各々の角度は、互いに独立して変えることができ、複数の浮上発生器の各々の角度は、駆動モータによって調整することができる。また、駆動発生器は、車両の異なる速度を生じるように変更することができる。
【0059】
図7を参照すると、一例によるフローチャートが示されている。例示的な方法700は、実行する様々な方法があるので、一例として挙げられている。以下に説明する方法800は、例えば、
図1~
図5に示す構成を使用して実行することができる。
図7に示される各ブロックは、例示的方法700において実行される一つ以上のプロセス、方法、またはサブルーチンを表す。さらに、図示されたブロックの順序は単に例示的であって、ブロックの順序は本開示に従って変更することができる。本開示から逸脱することなく、さらなるブロックを追加してもよく、またはより少ないブロックを利用してもよい。例示的な方法700は、ブロック702から開始することができる。
【0060】
ブロック702において、方法700は、一つ以上のセンサによって生成されたデータを制御装置で受信する。1つ以上のセンサは、対応する制御装置に関連する少なくとも1つのセンサを含む。制御装置は浮上発生器であってもよく、少なくとも1つのセンサは超音波センサであってもよい。少なくとも1つの例では、1つ以上のセンサは、少なくとも4つの超音波センサを含み、その各超音波センサは、対応する浮上発生器に関連する。
【0061】
ブロック704において、方法700は、車両の予定飛行経路に関するデータを制御装置で受信する。車両の予定飛行経路は、ガイドウェイセグメントを表す情報を格納するデータベースから得ることができる。データは、車両の出発点および行き先に基づく想定飛行経路の対応するガイドウェイセグメントであり得る。
【0062】
ブロック706において、方法700は、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を制御装置で判断する。制御装置は、高度センサからデータを受信することができる。高度センサは、レーザセンサ、光学センサ、カメラセンサ、機械センサ、磁気センサ、または他の適当なセンサのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0063】
ブロック708において、方法700は、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の速さを制御装置で判断する。制御装置は、検知された水平速度を受信することができる。車両の速さは、光学センサ、エンコーダ、RFID、前方監視レーダ、または他の適当なセンサまたは方法のうちの1つから受信されたデータに基づくことができる。
【0064】
ブロック710において、方法700は、予定飛行経路からの車両の偏差を制御装置で計算する。偏差を計算するために、制御装置は、予定飛行経路と、ガイドウェイに対する車両の現在位置との差分を求めることができる。制御装置は、三つの次元で偏差を計算することができ、それによってロール、高度、およびピッチを判断することができる。
【0065】
ブロック712において、方法700は、磁気式飛行経路からの偏差を減少させるために必要な浮上調整を制御装置で計算する。浮上調整は、ロール、高度、および/またはピッチに関して行うことができる。
【0066】
ブロック714において、方法700は、制御装置から、一つ以上の浮上発生器に浮上調整信号を送信する。制御装置は、予定飛行経路からの偏差と同等の浮上調整により、磁気式飛行用ガイドウェイに対する車両の高度を調整し、それにより予定飛行経路のより近い経路を維持する。複数の浮上発生器の1つ以上の角度を変化させることによって車両を調整することができる。複数の浮上発生器の各々の角度は、互いに独立して変えることができ、複数の浮上発生器の各々の角度は、駆動モータによって調整することができる。また、駆動発生器は、車両の異なる速度を生じるように変更することができる。
【0067】
上述の浮上推進システム及び方法は、予定飛行経路からの車両の偏差を計算する。偏差を計算するために、制御装置は、予定飛行経路と、ガイドウェイに対する車両の現在位置との差分を求めることができる。制御装置は、三つの次元における偏差を計算することができ、それによってロール、高度、およびピッチを判断する。磁力の簡略化したモデルを用いて、これらを車両/台車の車体フレームにおける揚力と抗力に変換することにより、車両の飛行と、前進速度及び飛行高さ、ピッチ、並びにロール間の相互関係とを特徴づける一組の非線形微分方程式を導出することができる。
【0068】
図8を参照すると、簡略化モデル(the simplified model)は、速度に対する浮上発生器の幾何学的角度に垂直に作用する単一の力から構成され、この力は、以下のように定数(C
L)と水平速度(V)および角度(α)の正弦(サイン)の積として特徴づけられる。
翼の角度(α)は水平軸よりも上側で正であり、その角度はガイドウェイの水平軸に対するものであることに留意する(このため、スイッチにより上昇したり、スイッチにより下降したりする際に影響を受ける)。このことから、単一の力は、車両の重量のバランスを取るために必要な「揚力」成分(F
L)と、車両の前進運動を遅らせ、発生した推力によって打ち勝つ必要がある「抗力」成分(F
D)とに分解することができる。
これらの簡略した方程式から、システムの簡略化した動力学全体をモデル化し、シミュレーションすることができ、また、これらから飛行制御システムを設計することができる。
【0069】
上昇または下降する際に、角度(α)は車両速度の関数として減少または増加する。揚力は車両の重量に対抗し、抗力は推進システムによって克服されなければならない。
【0070】
揚力係数(CL)は、軌道の透磁率、翼上の磁石の間隔、ならびに翼の磁石およびガイド軌道壁との間隙を含む定数である。解析および実験データは、一般的に、(CL)と翼ガイド軌道壁の間隙の間に線形関係があることを示す。
【0071】
これらの同じ簡略化した方程式を使用して、車両の「トゥーズ(twooze)」もモデル化することができる。トゥーズは磁気フィードバックであり、車両が軌道内で落下した場合、1gで加速するのではなく、定常状態の垂直速度に達し、落下している間、軌道高さがなくなるまでその速度を維持する。これがいわゆる車両の「トゥーズ」である。下降は、車両の速度を遅くする、目に見えない非常に粘性の高い物質によるものと思われる。上記の方程式を使用した場合、垂直に落下する際にはαは90度になり、運動方程式は定数係数線形常微分方程式になることに留意する。
と定義すると、上記方程式は以下のようになる。
これは、予測される通り定常状態の動態が
であることを示し、次のような閉形式解が得られる。
垂直速度はゼロ(0)から始まり、漸近的に定常状態の速さに近づく。
【0072】
実際には、翼を迎角ゼロに設定した状態で車両が垂直移動することはほとんどない。翼を迎角(α)に設定して車両が走行している場合、トゥーズは翼のように働く。
図9に示すように、力の関係は水平飛行における翼の力関係と同様である。
【0073】
車両における揚力の本モデル、翼に対する既知の(C
L)の仮定を考慮した場合、車両の垂直運動は、直接的な揚力とトゥーズ力の組み合わせとしてモデル化することができる。
ここでαは翼の有効角(上昇/下降からの幾何学的角度および誘導角度)であり、gは重力による加速度、mは車両質量である。ある構成では、車両は、前方に2つ、後方に2つの4つの翼を有する。このような場合、すべての翼を同じ幾何学的角度でモデリングし、揚力係数に4を掛けてすべての翼をまとめて表すことができる。水平運動からの揚力と抗力は、垂直運動
によるトゥーズ効果から分離されてきた。これは、翼の幾何学的角度の減少としてモデル化することもできる。それでも、重ね合わせに依拠し、合計される個別の効果として力をモデル化する方が簡単かもしれない。
【0074】
上記の式では、車両が定常レベルの飛行状態(v
y=0)にある場合、公称幾何学角度(α
0)、公称水平速度(V
0)、および揚力係数(C
L)の間に平衡が存在する。これは、次の場合に実現される。
ここで、_
0表記は、これが公称定数であることを示すために使用される。標準三角関数を使用すると、次のように書き換えることができる。
【0075】
これにより、車両質量、公称水平速度および揚力の磁気係数の関数として、必要とされる公称浮上発生器角度が定められる。
【0076】
このシステムはまた、推進のために同じ磁気渦電流特性を使用することができる。この場合、磁石は螺旋状に配置され、ガイドウェイは螺旋状磁石が巻き付けられたチューブである。スプールモータを用いて螺旋状磁石を回転させることにより、車両は抗力に打ち勝ち、ガイドウェイ上で上昇するために使用できる推力を発生する。いくつかの構成では、2つの螺旋状磁石が反対方向に回転しネットトルク(正味トルク)を相殺する。
【0077】
螺旋状磁石モータは、螺旋角と回転速に基づいて力を発生させる。これは、
図10を参照することによって説明することができる。すなわち、磁石の螺旋角がφであり、ωRがモータスプールの周速である。推進力の発生には、磁石とスプールモータの総速度との間のスリップ角が必要とされる。螺旋状磁石に対して垂直な力(F
N)は上記のように展開されるが、異なる揚力係数
を使用して、様々な磁石とスプールモータの透磁率が説明される。V
totは、車両軸速度Vと螺旋状モータの周速ωRとのベクトル和であり、αは、螺旋状磁石と総速度との間の角度である。
【0078】
スプールモータの垂直力を軸または軌道成分に分解すると、スプールモータの推力(F
Thrust)が得られる。
【0079】
一態様では、推進システムの揚力係数
は次のように判断できる。
【0080】
一般に、非線形方程式は直接解くことが難しく、制御システム合成には使用できない。従って、得られる方程式の組が前記平衡点(alpha0,omega0,v0,目標高度、ピッチ、ロールおよび軸速度)に関する定数係数線形常微分方程式であるように、線形摂動方程式の組が、公称トリム/平衡値を用いて導出される。平衡条件に関する摂動変数の使用には三角関数とべき関数のTaylor級数展開が含まれ、高次項の効果は無視される。
【0081】
高度を判断するために、システム動力学は、軸方向/水平方向の合成運動及び垂直運動に対する定数係数線形常微分方程式の状態空間を表したものとなり、そこでは、状態は[δv δy’ δy]、入力は[δw δα]である。[δv]から垂直加速への結合g/V0はかなり小さく、また、制御システムが結合を無効にする限り、垂直及び軸方向のチャネルを分離することができることに留意するべきである。
【0082】
ピッチ制御は高さ制御システムに付加するように設計される。すなわち、入力は、平衡からの浮上発生器の微分角(differential angle)であり、前部浮上発生器における正のピッチおよび後部浮上発生器における負のピッチは正である。方程式は平衡位置に関して展開される(公称ピッチはフラットである)。ピッチ制御装置の状態は[δθ’ δθ]であり、入力は[δαθ]である。
【0083】
ピッチ制御と同様に、ロール制御も高さ制御システムに付加するように設計される。すなわち、入力は、平衡からの浮上発生器の微分角であり、車両の左舷側の正の浮上発生器および右舷側の負の浮上発生器が正の入力である。方程式は平衡位置に関して展開される(公称ロールはフラットである)。ロール制御装置の状態は[δφ’ δφ]であり、入力は[δαφ]である。
【0084】
平衡におけるモータの速さはチューブ内の推進モータに発生する揚力、車両の前進速さ、磁石角度の関数である。これはまた、モータの速さ、車両速度、駆動部材の半径、および磁石の幾何学的角度が与えられた時の揚力係数を解くものとして書き直すことができる。
【0085】
完全な縦軸方向の方程式は弱く結合し、車両速度(軸)速さ方程式と垂直方程式に分離できる。これらは相互作用するが、相互作用が弱いので独立制御システムで別々に扱うことができる。結合システムから適当な列と行を削除することにより、完全結合方程式から方程式が導出される。結果の状態は[δv’δv]、および入力は[δω]である。
【0086】
結合システムの全摂動モデルを用いた場合、垂直方向の運動方程式は軸方向の車両速度の変化によって弱く駆動されるだけである。この弱い結合を考慮して、軌道、ピッチ制御およびロール制御に関して、車両速度、高度制御を分離する制御システムのトポロジーが設計された。制御システムのトポロジーは、垂直チャネル制御装置、ピッチチャネル制御装置およびロールチャネル制御装置の重ね合わせに基づいている。浮上発生器角度に対するこれらの各指令入力信号が、飛行を維持するために必要とされる公称角度(αo)に対する適当な符号とともに付加される。
【0087】
制御システムは、線形摂動動力学と摂動状態(完全状態ではない)のフィードバックを用いて展開する高さ、ピッチ、ロールの公称目標に関するシステムを調整するように設計される。利得は摂動状態とそれらの状態から導出されるものを乗算する固定行列Kとして計算され、ここで摂動状態は3つの制御装置のどれが実行されるかに依存する。利得行列Kは、無限時間範囲にわたる正規化された摂動状態および正規化されたアクチュエータ入力の2乗和の積分が最小化されるように生成される。これはBryson則を用いた線形二次レギュレータ(LQR)であるが、完全状態ではなく摂動を用いて修正した。
【0088】
実際の飛行車両用制御システム性能の制限要因は、浮上発生器角加速度における制限である。制御システムを制約するために、これらの加速度の制限を考慮して、状態は、浮上発生器の角速度値と浮上発生器の角度位置を含むように増補される。したがって、制御システムの新たな出力は、指令された浮上発生器の加速度である。この場合も、Bryson則とともにLQRを用いて、新たな利得行列定数が計算され、浮上発生器の指令加速度の出力が生成される。しかし、アクチュエータは加速度で駆動されるのではなく、指令位置で駆動される。従って、オフライン閉形式積分は、指令された加速度から目標位置を計算するために使用される。
【0089】
行列乗算を必要とする完全状態推定量は、制御システムの時間ステップごとに指令出力を再計算している組込みコンピュータにとって負担が大きい。レート変数の閉形式最小二乗推定量が実装される。この最小二乗推定量は最適化され、組込みプロセッサ上において最小の計算負荷で速度の推定を行うために、これまでのN測定値を乗算する一組の定数係数を生成する。
【0090】
一式のセンサによって直接測定されない摂動変数のみを推定するために、低次推定量が実装される。これにより、組込みプロセッサの計算負荷が大幅に低減される。さらに、測定変数が利用できる場合には、それら変数の推定値は、制御計算には用いられない。これにより、制御システムはより高い性能を維持する。これは摂動状態を未知状態と測定状態に分離するために摂動動力学行列を再配列し分割することにより達成される。A行列において具体化した物理モデルを用いて未知状態の値が推定される。
【0091】
軌道の撓みに対する軌跡を滑らかに切り換えまたは有効化するために、軌跡操作全体の摂動状態を事前計算するフィードフォワード軌跡を実行する。このようにして、制御システムの労力は最小限に抑えられる。その後、軌跡は、時間ではなく軌道からの距離に基づいてパラメータ化される。一組の摂動状態は、軌道下で、操作を介して、摂動状態に対するオフセットおよび制御システムのアクチュエータへのフィードフォワード入力として、制御システムに送られる。既に説明したフィードバックループをこの公称フィードフォワード軌道にかけることにより、車両は指令軌道を追跡し、また最小の制御労力でそれを行う。さらに、この構造は、車両の実際の位置と所望の軌跡との間の不整合を補う。
【0092】
例示的な実施形態およびその利点は、前述の説明から理解されると考えられ、開示の精神および範囲から逸脱することなく、またはその利点の全てを犠牲にすることなく、様々な変更がそれに対してなされ得ることは明らかであり、前述の実施例は、単に開示の好ましいまたは例示的な実施形態であるに過ぎない。
【符号の説明】
【0093】
10 制御装置
100 浮上輸送システム
101 磁気式飛行懸架システム
102 車両
103 駆動発生器
104 浮上発生器
105 センサ
106 ガイドウェイ
107 マーキング
108 支柱
110 区間
111 飛行経路
112 高度センサ
114 制御装置
116 撓み
118 高度
120 センサ
122 送信器
1022 右側
1024 左側
1040 駆動モータ