(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】面発光レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
H01S5/183
(21)【出願番号】P 2020504873
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2019004373
(87)【国際公開番号】W WO2019171869
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2018041042
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 孝博
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄太
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-156947(JP,A)
【文献】特開2007-258657(JP,A)
【文献】特表2012-505541(JP,A)
【文献】米国特許第06650684(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0100063(US,A1)
【文献】国際公開第2016/048268(WO,A1)
【文献】特開平06-342958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層と、
前記活性層を挟み込む第1DBR(distributed Bragg reflector)層および第2DBR層と、
前記活性層に注入する電流を狭窄するための電流注入領域が設けられた電流狭窄層と、
前記活性層から見て前記第2DBR層側の反射ミラーの終端部に相当する誘電体層および反射金属層と
を備え
、
前記誘電体層は、厚さが発振波長/(4n)(nは前記誘電体層の屈折率)のAl
2
O
3
、SiO
2
、SiNx、TiO
2
またはTa
2
O
5
からなり、
前記反射金属層は、前記電流注入領域を平面視で覆うように設けられている
面発光レーザ。
【請求項2】
前記誘電体層は、前記第2DBR層のうち、前記活性層側とは反対側に接しており、
前記反射金属層は、前記誘電体層を介して、前記第2DBR層に接している
請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項3】
前記第2DBR層のペア数は、前記第1DBR層のペア数よりも少なくなっている
請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項4】
前記第1DBR層および前記第2DBR層によって形成される垂直共振器構造における光路とは異なる経路に、前記活性層への電流を注入するための電極層を更に備えた
請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項5】
前記反射金属層は、Au、AgまたはAlを含んで構成されている
請求項1に記載の面発光レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、面発光レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
面発光レーザでは、DBR(Distributed Bragg Reflector)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、面発光レーザの分野では、DBRのペア数削減によるデバイス特性の向上や生産性改善が求められている。従って、DBRのペア数を削減することの可能な面発光レーザを提供することが望ましい。
【0005】
本開示の一実施形態に係る面発光レーザは、活性層と、活性層を挟み込む第1DBR層および第2DBR層と、活性層に注入する電流を狭窄するための電流注入領域が設けられた電流狭窄層と、活性層から見て第2DBR層側の反射ミラーの終端部に相当する誘電体層および反射金属層とを備えている。誘電体層は、厚さが発振波長/(4n)(nは誘電体層の屈折率)のAl
2
O
3
、SiO
2
、SiNx、TiO
2
またはTa
2
O
5
からなる。反射金属層は、電流注入領域を平面視で覆うように設けられている。
【0006】
本開示の一実施形態に係る面発光レーザでは、活性層から見て第2DBR層側の反射ミラーの終端部に、誘電体層および反射金属層が設けられている。これにより、第1DBR層および第2DBR層、誘電体層ならびに反射金属層により、所定の発振波長でレーザ発振が生じる。このとき、第2DBR層のペア数が第1DBR層のペア数よりも少ない場合であっても、所定の発振波長でのレーザ発振を生じさせることができ、しかも、レーザ発振の閾値ゲインの上昇を抑えつつ、光取り出し効率を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る面発光レーザの断面構成例を表す図である。
【
図2】
図1の面発光レーザの上面構成例を表す図である。
【
図3】
図1の面発光レーザの裏面構成例を表す図である。
【
図4A】
図1の発光素子の製造過程の一例を表す図である。
【
図5】(A)GaAs基板上にn-DBR層が形成された半導体層の断面構成例を表す図である。(B)GaAs基板上に、Alミラー層、λ/4SiO
2層、およびn-DBR層が形成された半導体層の断面構成例を表す図である。
【
図6】n-DBRペア数と、
図5(A),
図5(B)のn-DBRに波長940nmのレーザ光を入射したときの
図5(A),
図5(B)のn-DBRの反射率との関係を表す図である。
【
図7】(A)
図5(A)の半導体層上にキャビティ層、電流狭窄層、p-DBR層が積層されたレーザ構造の断面構成例を表す図である。(B)
図5(B)の半導体層上にキャビティ層、電流狭窄層、p-DBR層が積層されたレーザ構造の断面構成例を表す図である。
【
図8】n-DBRペア数と、
図7(A),
図7(B)のレーザ構造における発振の閾値ゲインとの関係を表す図である。
【
図9】n-DBRペア数と、
図7(A),
図7(B)のレーザ構造における光取り出し効率との関係を表す図である。
【
図10】
図1の面発光レーザの断面構成の一変形例を表す図である。
【
図12】本開示の第2の実施の形態に係る面発光レーザの断面構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
裏面出射型の面発光レーザに誘電体層および反射金属層を設けた例
2.第1の実施の形態の変形例
誘電体層を透明導電体層に置き換えた例
3.第2の実施の形態
上面出射型の面発光レーザに誘電体層および反射金属層を設けた例
【0009】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
本開示の第1の実施の形態に係る面発光レーザ1について説明する。
図1は、面発光レーザ1の断面構成例を表したものである。
図2は、面発光レーザ1の上面構成例を表したものである。
図3は、面発光レーザ1の裏面構成例を表したものである。
【0010】
面発光レーザ1は、薄型で低消費電力が要求される用途や、薄型で大面積が要求される用途などに好適に適用可能な裏面出射型のレーザである。面発光レーザ1は、例えば、活性層12Aを含むキャビティ層12を備えている。キャビティ層12は、発振波長λ0や用途に合わせて設計される。
【0011】
面発光レーザ1は、さらに、例えば、垂直共振器を備えている。垂直共振器は、基板10の法線方向において互いに対向する2つのDBR(distributed Bragg reflector)によって発振波長λ0で発振するように構成されている。垂直共振器は、例えば、キャビティ層12および電流狭窄層13を挟み込む2つのDBR層を含んで構成されている。なお、垂直共振器は、例えば、基板10、キャビティ層12および電流狭窄層13を挟み込む2つのDBR層を含んで構成されていてもよい。上記2つのDBR層は、例えば、後述のDBR層11(第1DBR層)と、後述のDBR層14(第2DBR層)とにより構成されている。DBR層11は、例えば、基板10の上面に接して形成されている。DBR層14は、例えば、DBR層11と比べて基板10から相対的に離れた位置(つまり、光出射面1Sから離れた位置)に配置されている。垂直共振器は、さらに、例えば、誘電体層15および反射金属層16を備えている。誘電体層15および反射金属層16は、DBR層14の機能を補助する層であり、DBR層14のペア数の削減に寄与する層である。つまり、誘電体層15および反射金属層16は、キャビティ層12から見て、DBR層14側の反射ミラーの終端部に相当する。
【0012】
面発光レーザ1は、例えば、基板10上に、DBR層11、キャビティ層12、電流狭窄層13、DBR層14、誘電体層15および反射金属層16を、基板10側からこの順に備えている。面発光レーザ1は、例えば、さらに、基板10の上面側に、埋込層17、電極層18およびパッド電極19を備えている。面発光レーザ1は、例えば、さらに、基板10の裏面側に、電極層21を備えている。面発光レーザ1は、例えば、基板10とDBR層11とを互いにオーミック接触させるためのコンタクト層を有していてもよい。面発光レーザ1は、さらに、例えば、DBR層14と電極層18とを互いにオーミック接触させるためのコンタクト層を有していてもよい。
【0013】
面発光レーザ1では、例えば、DBR層11、キャビティ層12、電流狭窄層13およびDBR層14を含む半導体層のうち、少なくとも、キャビティ層12、電流狭窄層13およびDBR層14が、柱状のメサ部20となっている。メサ部20の積層面内方向の断面形状は、例えば、円形状となっている。メサ部20の側面には、少なくとも、キャビティ層12、電流狭窄層13およびDBR層14の側面が露出している。
【0014】
基板10は、DBR層11、キャビティ層12、電流狭窄層13およびDBR層14をエピタキシャル結晶成長させる際に用いられた結晶成長基板である。基板10、DBR層11、キャビティ層12、電流狭窄層13およびDBR層14は、例えば、GaAs系半導体によって構成されている。
【0015】
基板10は、キャビティ層12から発せられる光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、n型GaAs基板である。n型GaAs基板には、n型不純物として、例えば、シリコン(Si)などが含まれている。DBR層11は、例えば、低屈折率層および高屈折率層を交互に積層して構成されたものである。低屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(λ0は発振波長、nは低屈折率層の屈折率)のn型Alx1Ga1-x1As(0<x1<1)からなる。発振波長λ0は、例えば、光通信用の波長である940nmとなっている。高屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは高屈折率層の屈折率)のn型Alx2Ga1-x2As(0≦x2<x1)からなる。低屈折率層は、高屈折率層よりもAl(アルミニウム)組成比の高い材料により構成されている。DBR層11には、n型不純物として、例えば、シリコン(Si)などが含まれている。
【0016】
キャビティ層12は、発振波長λ0や用途に合わせて設計される。キャビティ層12は、例えば、活性層12Aおよびバリア層が交互に積層された積層体を有している。キャビティ層12は、さらに、例えば、上記積層体を挟み込む一対のガイド層を有していてもよい。発振波長λ0が940nmのレーザ特性を得る場合には、上記積層体は、例えば、厚さ8nmのIn0.2Ga0.8Asからなる活性層12Aと、厚さ10nmのGaAsからなるバリア層とが交互に積層された構成となっており、上記ガイド層は、例えば、厚さ100nmのAl0.4Ga0.6Asからなる。キャビティ層12は、例えば、ノンドープの半導体によって構成されている。キャビティ層12のうち、後述の電流注入領域13Aと対向する領域が、面発光レーザ1に電流が注入されたときに発光領域となる。
【0017】
電流狭窄層13は、キャビティ層12に注入する電流を狭窄するための開口部(電流注入領域13A)を有している。電流注入領域13Aは、例えば、円形状となっている。電流狭窄層13は、電流注入領域13Aの周囲に、電流狭窄領域13Bを有している。電流狭窄領域13Bは、絶縁材料によって形成されており、例えば、Al2Oxによって形成されている。電流狭窄層13は、例えば、Al組成の高いAlGaAs、または、AlAsを部分的に酸化させることにより形成されている。電流狭窄層13は、例えば、DBR層14内のキャビティ層12寄りの低屈折率層の位置に設けられていてもよい。
【0018】
DBR層14は、例えば、低屈折率層および高屈折率層を交互に積層して構成されたものである。低屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは低屈折率層の屈折率)のp型Alx3Ga1-x3As(0<x3<1)からなる。高屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは高屈折率層の屈折率)のp型Alx4Ga1-x4As(0≦x4<x3)からなる。低屈折率層は、高屈折率層よりもAl(アルミニウム)組成比の高い材料により構成されている。DBR層14には、p型不純物として、例えば、炭素(C)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などが含まれている。
【0019】
DBR層14における低屈折率層および高屈折率層のペア数は、例えば、DBR層11における低屈折率層および高屈折率層のペア数よりも少なくなっている。DBR層14のペア数は、誘電体層15および反射金属層16が設けられていないときにDBR層として必要となるペア数の半分以下の数となっている。これは、誘電体層15および反射金属層16が、DBR層14の光反射機能を補助しているからであり、誘電体層15および反射金属層16による光反射の能力の分だけ、DBR層14における低屈折率層および高屈折率層のペア数を少なくすることができるからである。
【0020】
誘電体層15は、例えば、DBR層14のうち、キャビティ層12側とは反対側に接している。誘電体層15は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは誘電体層15の屈折率)のAl2O3、SiO2、SiNx、TiO2またはTa2O5からなる。反射金属層16は例えば、誘電体層15を介して、DBR層14に接している。反射金属層16は、例えば、金(Au)、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含んで構成されている。反射金属層16の膜厚は、例えば、20nm以上となっている。
【0021】
電極層18は、DBR層14と誘電体層15との間に形成されている。電極層18は、少なくとも電流注入領域13Aと対向する箇所に開口を有しており、DBR層14の上面の外縁に接して形成されている。つまり、面発光レーザ1のキャビティ層12への電流を注入するための電極層18が、垂直共振器構造における光路とは異なる経路に設けられている。電極層18は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をDBR層14の上面側から順に積層した構造を有しており、DBR層14と電気的に接続されている。
【0022】
パッド電極19は、面発光レーザ1の外部端子としての役割を有している。パッド電極19は、電極層18と電気的に接続されている。パッド電極19は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層して構成されたものである。パッド電極19は、例えば、電極層18とともに一体に形成されている。パッド電極19は、例えば、埋込層17の上面に接して形成されている。
【0023】
埋込層17は、パッド電極19の形成面を設けるための層である。埋込層17は、メサ部20の周囲に形成されており、メサ部20の一部を埋め込んでいる。埋込層17の上面の高さと、DBR層14の上面の高さとが、おおむね、互いに等しくなっていることが好ましい。埋込層17は、絶縁性の樹脂で構成されており、例えば、ポリイミドにより構成されている。
【0024】
電極層21は、面発光レーザ1の外部端子としての役割を有している。電極層21は、基板10と電気的に接続されている。電極層21は、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)を基板10側からこの順に積層して構成されている。電極層21は、少なくとも電流注入領域13Aと対向する箇所に開口を有しており、基板10の裏面の外縁に接して形成されている。基板10の裏面のうち、電極層21の開口内に露出している面が、面発光レーザ1からの光(レーザ光L)が外部に出射される光出射面1Sとなっている。
【0025】
[製造方法]
次に、本実施の形態に係る面発光レーザ1の製造方法について説明する。
図4A~
図4Eは、面発光レーザ1の製造手順の一例を表したものである。
【0026】
面発光レーザ1を製造するためには、例えばGaAsからなる基板10上に、化合物半導体を、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition :有機金属気相成長)法などのエピタキシャル結晶成長法により一括に形成する。この際、化合物半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)などのメチル系有機金属ガスと、アルシン(AsH3)ガスを用い、ドナー不純物の原料としては、例えばジシラン(Si2H6)を用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えば四臭化炭素(CBr4)を用いる。
【0027】
まず、基板10の表面上に、例えばMOCVD法などのエピタキシャル結晶成長法により、DBR層11、キャビティ層12、被酸化層13DおよびDBR層14をこの順に形成する(
図4A)。次に、例えば、円形状のレジスト層(図示せず)を形成したのち、このレジスト層をマスクとして、DBR層14、被酸化層13D、キャビティ層12およびDBR層11のうち、少なくともDBR層14、被酸化層13Dおよびキャビティ層12を選択的にエッチングする。このとき、例えばCl系ガスによるRIE(Reactive Ion Etching)を用いることが好ましい。これにより、例えば、
図4Bに示したように、DBR層14、被酸化層13D、キャビティ層12およびDBR層11のうち、少なくともDBR層14、被酸化層13Dおよびキャビティ層12にまで達する高さの柱状のメサ部20が形成される。このとき、メサ部20の側面に被酸化層13Dが露出している。その後、レジスト層を除去する。
【0028】
次に、水蒸気雰囲気中において、高温で酸化処理を行い、メサ部20の側面から被酸化層13Dに含まれるAlを選択的に酸化する。または、ウエット酸化法により、メサ部20の側面から被酸化層13Dに含まれるAlを選択的に酸化する。これにより、メサ部20内において、被酸化層13Dの外縁領域が絶縁層(酸化アルミニウム)となり、電流狭窄層13が形成される(
図4C)。続いて、メサ部20の周囲に、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂からなる埋込層17を形成したのち、DBR層14および埋込層17の上面に、電極層18およびパッド電極19を形成する(
図4D)。また、基板10の裏面に、電極層21を形成する。その後、例えば、スパッタ法により誘電体層を成膜し、成膜した誘電体層のうち必要のない箇所をリフトオフ法により除去する。このようにして、メサ部20の上面に誘電体層15を形成する(
図4E)。最後に、蒸着法により反射金属層を成膜し、成膜した反射金属層のうち必要のない箇所をリフトオフ法により除去する。このようにして、反射金属層16を形成する(
図1)。このようにして、面発光レーザ1が製造される。
【0029】
[動作]
このような構成の面発光レーザ1では、DBR層14と電気的に接続されたパッド電極19と、DBR層11と電気的に接続された電極層21との間に所定の電圧が印加されると、電流注入領域13Aを通してキャビティ層12に電流が注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。その結果、キャビティ層12、一対のDBR層11,14、誘電体層15および反射金属層16により、発振波長λ0でレーザ発振が生じる。そして、DBR層11から漏れ出た光がビーム状のレーザ光となって光出射面1Sから外部に出力される。
【0030】
[効果]
次に、本実施の形態に係る面発光レーザ1の効果について、比較例と参考にしつつ説明する。
【0031】
図5(A)は、GaAs基板上にn-DBR層が形成された半導体層の断面構成例を表したものである。
図5(B)は、GaAs基板上に、Alミラー層、λ/4SiO
2層、およびn-DBR層が形成された半導体層の断面構成例を表したものである。
図6は、n-DBRペア数と、
図5(A),
図5(B)のn-DBRに波長940nmのレーザ光を入射したときの
図5(A),
図5(B)のn-DBRの反射率との関係を表したものである。
図6中の「DBR構造」側のグラフが、
図5(A)のn-DBRの反射率を表しており、
図6中の「複合ミラー構造」側のグラフが、
図5(B)のn-DBRの反射率を表している。なお、
図5(B)において、Alミラー層が本実施形態の「反射金属層16」の一例であり、λ/4SiO
2層が本実施形態の「誘電体層15」の一例であり、n-DBRが本実施形態の「DBR層11」の一例である。
【0032】
図6から、「複合ミラー構造」の方が、「DBR構造」よりも、n-DBRペア数が少なくなっても、反射率の下落量が少ないことがわかる。また、「複合ミラー構造」では、n-DBRペア数が20前後の場合であっても、反射率が0.995(=99.5%)を下回ることがなく、実用に耐え得る範囲内になっていることがわかる。
【0033】
図7(A)は、
図5(A)の半導体層上にキャビティ層、電流狭窄層、p-DBR層が積層されたレーザ構造の断面構成例を表したものである。
図7(B)は、
図5(B)の半導体層上にキャビティ層、電流狭窄層、p-DBR層が積層されたレーザ構造の断面構成例を表したものである。
図8は、n-DBRペア数と、
図7(A),
図7(B)のレーザ構造における発振の閾値ゲインとの関係を表したものである。
図9は、n-DBRペア数と、
図7(A),
図7(B)のレーザ構造における光取り出し効率との関係を表したものである。
図8中の「DBR構造」側のグラフが、
図7(A)のレーザ構造の閾値ゲインを表しており、
図8中の「複合ミラー構造」側のグラフが、
図7(B)のレーザ構造の閾値ゲインを表している。
図9中の「DBR構造」側のグラフが、
図7(A)のレーザ構造の光取り出し効率を表しており、
図9中の「複合ミラー構造」側のグラフが、
図7(B)のレーザ構造の光取り出し効率を表している。なお、
図7(B)において、キャビティ層が本実施形態の「キャビティ層12」の一例であり、電流狭窄層が本実施形態の「電流狭窄層13」の一例であり、p-DBRが本実施形態の「DBR層14」の一例である。
【0034】
図8から、「複合ミラー構造」の方が、「DBR構造」よりも、n-DBRペア数が少なくなっても、閾値ゲインの上昇量が少ないことがわかる。また、「複合ミラー構造」では、n-DBRペア数が20前後の場合であっても、閾値ゲインが2500cm-1を上回ることがなく、実用に耐え得る範囲内になっていることがわかる。また、
図9から、「複合ミラー構造」の方が、「DBR構造」よりも、n-DBRペア数が少なくなっても、光取り出し効率が減少しないことがわかる。
【0035】
本実施の形態では、キャビティ層12から見て、DBR層14側の反射ミラーの終端部に、DBR層14の機能を補助する誘電体層15および反射金属層16が設けられている。これにより、キャビティ層12、一対のDBR層11,14、誘電体層15および反射金属層16により、発振波長λ0でレーザ発振が生じる。このとき、DBR層14のペア数がDBR層11のペア数よりも少ない場合であっても、発振波長λ0でのレーザ発振を生じさせることができ、しかも、レーザ発振の閾値ゲインの上昇を抑えつつ、光取り出し効率を高く維持することができる。従って、DBR層14のペア数をDBR層11のペア数よりも少なくすることができる。その結果、DBR層14のペア数削減によるデバイス特性の向上や生産性改善を図ることができる。また、DBR層14のペア数削減により、F-P Dip波長の検出が容易となるので、エピウェハーの特性評価精度を改善することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態では、面発光レーザ1のキャビティ層12への電流を注入するための電極層18が、垂直共振器構造における光路とは異なる経路に設けられている。具体的には、電極層18は、誘電体層15および反射金属層16を介さずに、直接、DBR層14に電流を注入可能な位置に設けられている。電極層18は、例えば、
図1に示したように、DBR層14と誘電体層15との間に設けられており、かつ、電流注入領域13Aと対向する箇所を避けて、DBR層14の上面と接している。これにより、面発光レーザ1の駆動電圧を低くすることができる。また、電極層18が、垂直共振器構造における光路とは別の経路に設けられていることから、誘電体層15を導電性の材料で形成する必要がない。従って、誘電体層15に対して、膜厚の制御のし易い材料や製法を選択することができる。
【0037】
<2.変形例>
次に、上記実施の形態に係る面発光レーザ1の変形例について説明する。
【0038】
図10は、本変形例に係る面発光レーザ1の断面構成例を表したものである。
図11は、
図10の面発光レーザ1の上面構成例を表したものである。
【0039】
また、本変形例では、誘電体層15の代わりに透明導電体層22が設けられており、かつ、電極層18の代わりに電極層23が設けられている。このとき、電極層23は、透明導電体層22および反射金属層16と電気的に接続されており、かつ、パッド電極19とも電気的に接続されている。つまり、面発光レーザ1のキャビティ層12への電流を注入するための電極層23は、垂直共振器構造における光路と共通の経路にキャビティ層12へ注入する電流を流す。透明導電体層22は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは透明導電体層22の屈折率)のITO(Indium Tin Oxide)、または、ITiO(Indium Titanium Oxide)などの透明導電体材料を含んで構成されている。透明導電体層22は、DBR層14と電気的に接続されている。
【0040】
本変形例では、キャビティ層12から見て、DBR層14側の反射ミラーの終端部に、DBR層14の機能を補助する透明導電体層22および反射金属層16が設けられている。これにより、キャビティ層12、一対のDBR層11,14、透明導電体層22および反射金属層16により、発振波長λ0でレーザ発振が生じる。このとき、DBR層14のペア数がDBR層11のペア数よりも少ない場合であっても、発振波長λ0でのレーザ発振を生じさせることができ、しかも、レーザ発振の閾値ゲインの上昇を抑えつつ、光取り出し効率を高く維持することができる。従って、DBR層14のペア数をDBR層11のペア数よりも少なくすることができる。その結果、DBR層14のペア数削減によるデバイス特性の向上や生産性改善を図ることができる。また、DBR層14のペア数削減により、F-P Dip波長の検出が容易となるので、エピウェハーの特性評価精度を改善することが可能となる。
【0041】
また、本変形例では、面発光レーザ1に電流注入するための電極層23が、透明導電体層22上に設けられている。具体的には、電極層23は、透明導電体層22および反射金属層16を介して、DBR層14に電流を注入可能な位置に設けられている。これにより、電極層23を簡易に製造することができる。
<3.第2の実施の形態>
[構成]
本開示の第2の実施の形態に係る面発光レーザ2について説明する。
図12は、面発光レーザ2の断面構成例を表したものである。
図13は、面発光レーザ2の上面構成例を表したものである。
図14は、面発光レーザ2の裏面構成例を表したものである。
【0042】
面発光レーザ2は、薄型で低消費電力が要求される用途や、薄型で大面積が要求される用途などに好適に適用可能な上面出射型のレーザである。面発光レーザ2は、例えば、活性層32Aを含むキャビティ層32を備えている。キャビティ層32は、発振波長λ0や用途に合わせて設計される。
【0043】
面発光レーザ2は、さらに、例えば、垂直共振器を備えている。垂直共振器は、基板30の法線方向において互いに対向する2つのDBRによって発振波長λ0で発振するように構成されている。垂直共振器は、例えば、キャビティ層32および電流狭窄層33を挟み込む2つのDBR層を含んで構成されている。なお、垂直共振器は、例えば、基板30、キャビティ層32および電流狭窄層33を挟み込む2つのDBR層を含んで構成されていてもよい。上記2つのDBR層は、例えば、後述のDBR層31(第2DBR層)と、後述のDBR層34(第1DBR層)とにより構成されている。DBR層31は、例えば、基板30の上面に接して形成されている。DBR層34は、例えば、DBR層31と比べて基板30から相対的に離れた位置(つまり、光出射面2Sに近い位置)に配置されている。垂直共振器は、さらに、例えば、誘電体層38および反射金属層39を備えている。誘電体層38および反射金属層39は、DBR層31の機能を補助する層であり、DBR層31のペア数の削減に寄与する層である。つまり、誘電体層38および反射金属層39は、キャビティ層32から見て、DBR層31側の反射ミラーの終端部に相当する。
【0044】
面発光レーザ2は、例えば、基板30上に、DBR層31、キャビティ層32、電流狭窄層33およびDBR層34を、基板30側からこの順に備えている。面発光レーザ2は、例えば、さらに、基板30の上面側に、埋込層35、電極層36およびパッド電極37を備えている。面発光レーザ2は、例えば、さらに、基板30の裏面側に、電極層41を備えている。面発光レーザ2は、例えば、基板30の開口部30A内に、基板30の開口部30A内に露出したDBR層31に接する誘電体層38を備えており、さらに、誘電体層38に接して反射金属層39を備えている。基板30の開口部30Aは、少なくとも後述の電流注入領域33Aと対向する領域に形成されており、例えば、後述のメサ部40と対向する領域に形成されている。つまり、誘電体層38および反射金属層39は、少なくとも後述の電流注入領域33Aと対向する領域に形成されており、例えば、後述のメサ部40と対向する領域に形成されている。面発光レーザ2は、例えば、基板30とDBR層31とを互いにオーミック接触させるためのコンタクト層を有していてもよい。面発光レーザ2は、さらに、例えば、DBR層34と電極層36とを互いにオーミック接触させるためのコンタクト層を有していてもよい。
【0045】
面発光レーザ2では、例えば、DBR層31、キャビティ層32、電流狭窄層33およびDBR層34を含む半導体層のうち、少なくとも、キャビティ層32、電流狭窄層33およびDBR層34が、柱状のメサ部40となっている。メサ部40の積層面内方向の断面形状は、例えば、円形状となっている。メサ部40の側面には、少なくとも、キャビティ層32、電流狭窄層33およびDBR層34の側面が露出している。
【0046】
基板30は、DBR層31、キャビティ層32、電流狭窄層33およびDBR層34をエピタキシャル結晶成長させる際に用いられた結晶成長基板である。基板30、DBR層31、キャビティ層32、電流狭窄層33およびDBR層34は、例えば、GaAs系半導体によって構成されている。
【0047】
基板30は、キャビティ層32から発せられる光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、n型GaAs基板である。n型GaAs基板には、n型不純物として、例えば、シリコン(Si)などが含まれている。DBR層31は、例えば、低屈折率層および高屈折率層を交互に積層して構成されたものである。低屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは低屈折率層の屈折率)のn型Alx5Ga1-x5As(0<x5<1)からなる。発振波長λ0は、例えば、光通信用の波長である940nmとなっている。高屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは高屈折率層の屈折率)のn型Alx6Ga1-x6As(0≦x6<x5)からなる。低屈折率層は、高屈折率層よりもAl(アルミニウム)組成比の高い材料により構成されている。DBR層31には、n型不純物として、例えば、シリコン(Si)などが含まれている。
【0048】
キャビティ層32は、発振波長λ0や用途に合わせて設計される。キャビティ層32は、例えば、活性層32Aおよびバリア層が交互に積層された積層体を有している。キャビティ層32は、さらに、例えば、上記積層体を挟み込む一対のガイド層を有していてもよい。発振波長λ0が940nmのレーザ特性を得る場合には、上記積層体は、例えば、厚さ8nmのIn0.2Ga0.8Asからなる活性層32Aと、厚さ10nmのGaAsからなるバリア層とが交互に積層された構成となっており、上記ガイド層は、例えば、厚さ100nmのAl0.4Ga0.6Asからなる。キャビティ層32は、例えば、ノンドープの半導体によって構成されている。キャビティ層32のうち、後述の電流注入領域33Aと対向する領域が、面発光レーザ2に電流が注入されたときに発光領域となる。
【0049】
電流狭窄層33は、キャビティ層32に注入する電流を狭窄するための開口部(電流注入領域33A)を有している。電流注入領域33Aは、例えば、円形状となっている。電流狭窄層33は、電流注入領域33Aの周囲に、電流狭窄領域33Bを有している。電流狭窄領域33Bは、絶縁材料によって形成されており、例えば、Al2Oxによって形成されている。電流狭窄層33は、例えば、Al組成の高いAlGaAs、または、AlAsを部分的に酸化させることにより形成されている。電流狭窄層33は、例えば、DBR層34内のキャビティ層32寄りの低屈折率層の位置に設けられていてもよい。
【0050】
DBR層34は、例えば、低屈折率層および高屈折率層を交互に積層して構成されたものである。低屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは低屈折率層の屈折率)のp型Alx7Ga1-x7As(0<x7<1)からなる。高屈折率層は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは高屈折率層の屈折率)のp型Alx8Ga1-x8As(0≦x8<x7)からなる。低屈折率層は、高屈折率層よりもAl(アルミニウム)組成比の高い材料により構成されている。DBR層34には、p型不純物として、例えば、炭素(C)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などが含まれている。
【0051】
DBR層31における低屈折率層および高屈折率層のペア数は、例えば、DBR層34における低屈折率層および高屈折率層のペア数よりも少なくなっている。DBR層31のペア数は、誘電体層38および反射金属層39が設けられていないときにDBR層として必要となるペア数の半分以下の数となっている。これは、誘電体層38および反射金属層39が、DBR層31の光反射機能を補助しているからであり、誘電体層38および反射金属層39による光反射の能力の分だけ、DBR層31における低屈折率層および高屈折率層のペア数を少なくすることができるからである。
【0052】
誘電体層38は、例えば、厚さがλ0/(4n)(nは誘電体層38の屈折率)のAl2O3、SiO2、SiNx、TiO2またはTa2O5からなる。反射金属層39は、例えば、金(Au)、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含んで構成されている。反射金属層39の膜厚は、例えば、20nm以上となっている。
【0053】
電極層36は、DBR層34の上面に形成されている。電極層36は、少なくとも電流注入領域33Aと対向する箇所に開口を有しており、DBR層34の上面の外縁に接して形成されている。電極層36は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をDBR層34の上面側から順に積層した構造を有しており、DBR層34と電気的に接続されている。DBR層34の上面のうち、電極層36の開口内に露出している面が、面発光レーザ2からの光(レーザ光L)が外部に出射される光出射面2Sとなっている。
【0054】
パッド電極37は、面発光レーザ2の外部端子としての役割を有している。パッド電極37は、電極層36と電気的に接続されている。パッド電極37は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層して構成されたものである。パッド電極37は、例えば、電極層36とともに一体に形成されている。パッド電極37は、例えば、埋込層35の上面に接して形成されている。
【0055】
埋込層35は、パッド電極37の形成面を設けるための層である。埋込層35は、メサ部40の周囲に形成されており、メサ部40の一部を埋め込んでいる。埋込層35の上面の高さと、DBR層34の上面の高さとが、おおむね、互いに等しくなっていることが好ましい。埋込層35は、絶縁性の樹脂で構成されており、例えば、ポリイミドにより構成されている。
【0056】
電極層41は、面発光レーザ2の外部端子としての役割を有している。電極層41は、基板30と電気的に接続されている。電極層41は、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)を基板30側からこの順に積層して構成されている。電極層41は、少なくとも電流注入領域33Aと対向する箇所に開口を有しており、基板30の裏面のうち、開口部30Aの周縁部分に接して形成されている。
【0057】
[製造方法]
次に、本実施の形態に係る面発光レーザ2の製造方法について説明する。
図15A~
図15Eは、面発光レーザ2の製造手順の一例を表したものである。
【0058】
面発光レーザ2を製造するためには、例えばGaAsからなる基板30上に、化合物半導体を、例えばMOCVD法などのエピタキシャル結晶成長法により一括に形成する。この際、化合物半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)などのメチル系有機金属ガスと、アルシン(AsH3)ガスを用い、ドナー不純物の原料としては、例えばジシラン(Si2H6)を用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えば四臭化炭素(CBr4)を用いる。
【0059】
まず、基板30の表面上に、例えばMOCVD法などのエピタキシャル結晶成長法により、DBR層31、キャビティ層32、被酸化層33DおよびDBR層34をこの順に形成する(
図15A)。次に、例えば、円形状のレジスト層(図示せず)を形成したのち、このレジスト層をマスクとして、DBR層34、被酸化層33D、キャビティ層32およびDBR層31のうち、少なくともDBR層34、被酸化層33Dおよびキャビティ層32を選択的にエッチングする。このとき、例えばCl系ガスによるRIEを用いることが好ましい。これにより、例えば、
図15Bに示したように、DBR層34、被酸化層33D、キャビティ層32およびDBR層31のうち、少なくともDBR層34、被酸化層33Dおよびキャビティ層32にまで達する高さの柱状のメサ部40が形成される。このとき、メサ部40の側面に被酸化層33Dが露出している。その後、レジスト層を除去する。
【0060】
次に、水蒸気雰囲気中において、高温で酸化処理を行い、メサ部40の側面から被酸化層33Dに含まれるAlを選択的に酸化する。または、ウエット酸化法により、メサ部40の側面から被酸化層33Dに含まれるAlを選択的に酸化する。これにより、メサ部40内において、被酸化層33Dの外縁領域が絶縁層(酸化アルミニウム)となり、電流狭窄層33が形成される(
図15C)。続いて、メサ部40の周囲に、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂からなる埋込層35を形成したのち、DBR層34および埋込層35の上面に、電極層36およびパッド電極37を形成する(
図15D)。
【0061】
次に、基板30の裏面に、開口部30Aを形成する(
図15E)。その後、例えば、スパッタ法により誘電体層を成膜し、成膜した誘電体層のうち必要のない箇所をリフトオフ法により除去する。このようにして、メサ部40の上面に誘電体層38を形成する(
図12)。最後に、蒸着法により反射金属層を成膜し、成膜した反射金属層のうち必要のない箇所をリフトオフ法により除去する。このようにして、反射金属層39を形成する(
図1)。このようにして、面発光レーザ2が製造される。
【0062】
[動作]
このような構成の面発光レーザ2では、DBR層34と電気的に接続されたパッド電極37と、DBR層31と電気的に接続された電極層41との間に所定の電圧が印加されると、電流注入領域33Aを通してキャビティ層32に電流が注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。その結果、キャビティ層32、一対のDBR層31,34、誘電体層38および反射金属層39により、発振波長λ0でレーザ発振が生じる。そして、DBR層34から漏れ出た光がビーム状のレーザ光となって光出射面2Sから外部に出力される。
【0063】
[効果]
次に、本実施の形態に係る面発光レーザ2の効果について説明する。
【0064】
本実施の形態では、キャビティ層32から見て、DBR層31側の反射ミラーの終端部に、DBR層31の機能を補助する誘電体層38および反射金属層39が設けられている。これにより、キャビティ層32、一対のDBR層31,34、誘電体層38および反射金属層39により、発振波長λ0でレーザ発振が生じる。このとき、DBR層31のペア数がDBR層34のペア数よりも少ない場合であっても、発振波長λ0でのレーザ発振を生じさせることができ、しかも、レーザ発振の閾値ゲインの上昇を抑えつつ、光取り出し効率を高く維持することができる。従って、DBR層31のペア数をDBR層34のペア数よりも少なくすることができる。その結果、DBR層31のペア数削減によるデバイス特性の向上や生産性改善を図ることができる。また、DBR層31のペア数削減により、F-P Dip波長の検出が容易となるので、エピウェハーの特性評価精度を改善することが可能となる。
【0065】
また、本実施の形態では、面発光レーザ2に電流注入するための電極層41が、垂直共振器構造における光路とは別の経路に設けられている。具体的には、電極層41は、誘電体層38および反射金属層39を介さずに、直接、DBR層31に電流を注入可能な位置に設けられている。電極層41は、例えば、
図12に示したように、基板30の裏面のうち、開口部30Aの周縁部分に接して形成されており、かつ、電流注入領域33Aと対向する箇所を避けて、基板30の裏面と接している。これにより、面発光レーザ2の駆動電圧を低くすることができる。また、電極層41が、垂直共振器構造における光路とは別の経路に設けられていることから、誘電体層38を導電性の材料で形成する必要がない。従って、誘電体層38に対して、膜厚の制御のし易い材料や製法を選択することができる。
【0066】
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0067】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
活性層と、
前記活性層を挟み込む第1DBR層および第2DBR層と、
前記活性層から見て前記第2DBR層側の反射ミラーの終端部に相当する誘電体層および反射金属層と
を備えた
面発光レーザ。
(2)
前記誘電体層は、前記第2DBR層のうち、前記活性層側とは反対側に接しており、
前記反射金属層は、前記誘電体層を介して、前記第2DBR層に接している
(1)に記載の面発光レーザ。
(3)
前記第2DBR層のペア数は、前記第1DBR層のペア数よりも少なくなっている
(1)または(2)に記載の面発光レーザ。
(4)
前記第1DBR層および前記第2DBR層によって形成される垂直共振器構造における光路とは異なる経路に、前記活性層への電流を注入するための電極層を更に備えた
(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(5)
前記誘電体層は、厚さが発振波長/(4n)(nは前記誘電体層の屈折率)のAl2O3、SiO2、SiNx、TiO2またはTa2O5からなる
(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(6)
前記反射金属層は、Au、AgまたはAlを含んで構成されている
(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(7)
活性層と、
前記活性層を挟み込む第1DBR層および第2DBR層と、
前記活性層から見て前記第2DBR層側の反射ミラーの終端部に相当する透明導電体層および反射金属層と
を備えた
面発光レーザ。
(8)
前記第1DBR層および前記第2DBR層によって形成される垂直共振器構造における光路と共通の経路に前記活性層へ注入する電流を流す電極層を更に備えた
(7)に記載の面発光レーザ。
(9)
前記透明導電体層は、厚さが発振波長/(4n)(nは前記透明導電体層の屈折率)のITO、または、ITiOを含んで構成されている
(7)または(8)に記載の面発光レーザ。
【0068】
本開示の一実施形態に係る面発光レーザによれば、活性層から見て第2DBR層側の反射ミラーの終端部に、誘電体層および反射金属層を設けるようにしたので、DBRのペア数を削減することができる。なお、本開示の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されず、本明細書中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【0069】
本出願は、日本国特許庁において2018年3月7日に出願された日本特許出願番号第2018-041042号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0070】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。