(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)抽出物の新規な美容的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230510BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230510BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230510BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q5/00
A61Q19/00
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2020505416
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 FR2018051972
(87)【国際公開番号】W WO2019025724
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500226948
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】BASF Beauty Care Solutions France S.A.S.
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean de Dieu, F-69007 Lyon, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボネット,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ダノウス,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】デルセヴィル,シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】ミーヌ,ソレーネ
(72)【発明者】
【氏名】モーザー,フィリップ
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-145730(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0056521(KR,A)
【文献】国際公開第2016/146144(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02940053(FR,A1)
【文献】Eye Cream, ID# 1349546, Mintel GNPD [online], 2010年6月, [検索日2022.5.24], URL https://www.mintel.com
【文献】IJPSR, 2017 March, vol.8, no.3, p.1056-1065
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚及び/又は皮膚付属器の刺激及び/又は発赤の感覚、並びに/あるいは皮膚のくすんだ色つや及び/又は色つやの輝きの喪失、並びに/あるいは皮膚及び/又は皮膚付属器の感作の中から選択される皮
膚に対する汚染の有害な影響を低減するための、ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)抽出物の美容的使用
であって、前記抽出物が、4℃~25℃の温度において唯一の溶媒としての水中での水性抽出によって得られる、使用。
【請求項2】
頭皮及び/又は皮膚付属器に対する汚染の有害な影響を低減するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ネフェリウム・ラパセウム抽出物が、葉、果肉、果皮及び/又は種子の抽出
物である、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ネフェリウム・ラパセウム抽出物が、種子抽出物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を増加させるため、並びに/あるいは細胞損傷及び/又は細胞老化を減少させるための、請求項1~
4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記使用が局所適用によるものである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記抽出物が、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物中に、該化粧品組成物の全重量に対して1×10
-4重量%~10重量
%の最終濃度で存在する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記抽出物が、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物中に、該化粧品組成物の全重量に対して1×10
-4
重量%~5重量%の最終濃度で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記抽出物が、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物中に、該化粧品組成物の全重量に対して1×10
-3
重量%~3重量%の最終濃度で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
皮膚及び/又は皮膚付属
器のための活性化及び/又は汚染除去剤としての、請求項1~
9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記抽出物が、水性若しくは油性溶液、クリーム又は水性ゲル若しくは油性ゲ
ルから選択される化粧品組成物中に存在する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記抽出が、30分~24時間にわたって実施される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記抽出が、1時間~5時間にわたって実施される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を増加させるため、並びに/あるいは細胞老化を減少させるため、並びに/あるいは皮
膚に対する汚染の有害な影響を低減するために、
ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)抽出物又はそれを含有する化粧品組成物の局所又は経口投与を含む、美容ケア方法
であって、皮膚に対する汚染の有害な影響が、皮膚及び/又は皮膚付属器の刺激及び/又は発赤の感覚、並びに/あるいは皮膚のくすんだ色つや及び/又は色つやの輝きの喪失、並びに/あるいは皮膚及び/又は皮膚付属器の感作の中から選択され、前記抽出物が、4℃~25℃の温度において唯一の溶媒としての水中での水性抽出によって得られる、美容ケア方法。
【請求項15】
顔に対する汚染の有害な影響を低減するための、請求項14に記載の美容ケア方法。
【請求項16】
頭皮及び/又は皮膚付属器に対する汚染の有害な影響を低減するための、請求項14に記載の美容ケア方法。
【請求項17】
毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するための、請求項14に記載の美容ケア方法。
【請求項18】
脚、足、脇の下、手、大腿、腹、胸、首、腕、胴、背中及び
顔から選択される、ヒトの体の全て又は一部に局所適用することからなる、請求項
14~17のいずれか1項に記載の美容ケア方法。
【請求項19】
顔に局所適用することからなる、請求項14~17のいずれか1項に記載の美容ケア方法。
【請求項20】
頭皮及び/又は皮膚付属器に局所適用することからなる、請求項14~17のいずれか1項に記載の美容ケア方法。
【請求項21】
前記抽出が、30分~24時間にわたって実施される、請求項14~20のいずれか1項に記載の美容ケア方法。
【請求項22】
前記抽出が、1時間~5時間にわたって実施される、請求項14~20のいずれか1項に記載の美容ケア方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)植物の抽出物の美容的使用(化粧品的使用)に関する。
【背景技術】
【0002】
環境がヒトの皮膚に与える影響は、美容及び皮膚科領域において重要な課題である。紫外線(UV)の皮膚への有害な影響に加えて、汚染物質は皮膚と毛髪の両方に負の影響を及ぼす。公知の汚染物質には、大都市で大きな問題となっている排気ガス、重金属や微粒子のほか、ベンゾピレンやベンザアントラセンなどの多環芳香族炭化水素がある。
【0003】
皮膚では、これらの汚染物質は、表皮の表面に粒子を沈着させ、とりわけ、くすみ肌(dull skin complexion)を誘発する。また、これらの汚染物質は毛髪をもろくし、脱毛につながる。頭皮表面に沈着すると、かゆみや刺激を引き起こすこともある。化粧品分野の活性成分は、汚染に対処するためにすでに存在している。しかし、この分野における代替成分の必要性は絶えず増加している。
【0004】
ランブータンとも呼ばれるネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)植物は、東南アジア、特にマレーシア及びインドネシアにおいて見られる木である。それは高さ10~20メートルの木であり、大量の果実を産出する。その官能特性で知られているこの果実は、糖、ビタミンC及び鉄を含有する。また乾燥した根又は葉の煎出液は、発熱に対処するために使用されている。
【0005】
化粧品組成物におけるN.ラパセウム植物の使用は一般的に知られている。したがって、出願JP2002-145730は、その抗酸化効果、皮膚を明るくすること、及びその保湿性について種子抽出物を記載している。しかしながら、この出願は、汚染の有害な影響を低減するための前記植物の抽出物の使用を特に記載又は開示していない。
【0006】
さらに、Thitilertdecha及びRakariyatham(Scientia Horticultae, 129, 247-252, 2011)は、エラジタンニンを含み、抗酸化活性を有するN.ラパセウム植物のいくつかの部分を記載している。しかし、この文書は、より良好な抗フリーラジカル活性を有するため、前記植物の他の部分よりむしろ果皮を使用することが好ましいことを教示している。同じ教示はSekar et al.(International Journal of Pharmaceutical Sciences and Research, 8(3), 1056-1065, 2017)に由来しており、この植物を抗酸化剤として用いる場合にはN.ラパセウム植物の果皮を用いることが好ましいことが示されている。さらに、Sekar et al.は、N.ラパセウム抽出物を、汚染の有害な影響に対処するために、すなわち、皮膚及び/又は皮膚付属器に対する汚染物質の非審美的な及び/又は不快な影響を低減するために使用し得ることを開示していない。
【0007】
最後に、出願EP3069763は、ポリフェノール抗酸化剤を含む抗酸化目的の化粧品組成物を開示している。さらに、この出願は、いかなるものであってもN.ラパセウム抽出物、並びにThitilertdecha及びRakariyathamに開示されたフェノール化合物のいずれも開示していない。
【0008】
出願CN105534812は、皮膚のための抗炎症、アンチエイジング及び保湿特性を有する組成物を開示し、該組成物は、例えばランブータンを含むいくつかの植物抽出物の混合物を含む。しかしながら、ランブータン植物の部分については開示されていない。
【0009】
出願WO 201118278は、水和目的で化粧品組成物において使用するため、より一般的には、ケラチン繊維、特に毛髪をケアするための、ランブータン種子油の使用を開示している。しかしながら、この出願は、皮膚及び/又は毛髪に対する汚染の有害な影響に対処するためのN.ラパセウム抽出物の使用を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本出願人の知る限り、従来技術は、皮膚及び/又は皮膚付属器、好ましくは毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するためのN.ラパセウム抽出物の使用を開示又は示唆するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る抽出物は、N.ラパセウム抽出物である。この抽出物の原産国はベトナムである。出願人は、驚くべきことに、そのような抽出物が汚染によって引き起こされる有害な影響を低減する効果があることを見出した。
【0012】
本発明に係る抽出物の利点は、皮膚及び毛髪の両方に対する汚染の影響を防止及び/又は対処するのに有効であることである。この抽出物のもう1つの利点は、皮膚及び毛髪の表面における付着を減らすことで汚染の影響を低減し、これらの汚染物質に対する防御を助ける、いくつかの標的を刺激することで、特に毛髪の細胞代謝を高めることができることである。
【0013】
それは、アレルギー特性を持たず、工業規模で容易に生産できる化学的に安定した抽出物である。最後に、皮膚及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪のための活性化及び汚染除去活性成分である。
【0014】
それは、皮膚及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪の色つや(complexion)の輝きを増加させることができる。
【0015】
従って、本発明の第1の課題は、皮膚及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するための、N.ラパセウム(N. lappaceum)植物の抽出物の美容的使用(化粧品的使用)に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中の「美容的使用(化粧品的使用)」という用語は、治療目的のためではない、非医薬的使用を意味することが意図され、本発明に係る抽出物は、健康な非病的皮膚の領域の全て又は一部に適用されることが意図される。「健康な皮膚の領域」という語句は、本発明に係る抽出物が適用され、かつ皮膚科医によって「非病的」と称される皮膚の領域、すなわち、感染、瘢痕、皮膚疾患、炎症若しくは障害、例えば、カンジダ症、膿痂疹、乾癬、湿疹、ざ瘡若しくは皮膚炎、又は創傷若しくは外傷、及び/又は他の皮膚疾患を有さない皮膚の領域を意味することが意図される。
【0017】
したがって、皮膚は、頭皮を含む全身及び/又は顔を含む。
【0018】
本明細書中の「皮膚付属器」は、体毛、まつ毛及び頭毛を意味し、好ましくは頭毛を意味することを意図している。
【0019】
本発明に係る抽出物の美容的使用(化粧品的使用)は、経口又は局所的であり得、好ましくは局所的である。抽出物を経口投与する場合、栄養補助食品、粉末、ゲルカプセル、カプセル又はゲルの形態である。従って、栄養補助食品組成物中に含有され得る。
【0020】
本発明の一実施形態において、本発明に係る抽出物の美容的使用(化粧品的使用)は、抽出物又はそれを含む化粧品組成物を、脚、足、脇の下、手、大腿、腹、胸、首、腕、胴、背中及び顔、有利には顔、より有利には頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪から選択される、ヒトの体及び/又は顔の全体又は一部に局所適用することからなる。
【0021】
本発明に係る抽出物は、局所的に許容される抽出物であり、用語「局所的に許容される」とは、皮膚又は毛髪を刺激せず、非毒性であり、アレルギー反応を引き起こさない抽出物を意味する。「局所適用」とは、皮膚及び/又は皮膚付属器の表面、好ましくは毛髪の表面に抽出物又はそれを含む化粧品組成物を直接適用又は噴霧することを意味する。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、本発明に係る抽出物は、細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を維持及び/又は増加させることによって、並びに/あるいは細胞損傷及び/又は細胞老化を減少させることによって、有利には、細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を増加させることによって、非常に有利には細胞生存率及び/又はATP合成を増加させることによって、汚染の有害な影響を低減するために使用される。
【0023】
「汚染の有害な影響を低減する」は、皮膚、有利には頭皮、及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染物質の非審美的な及び/又は不快な影響を減らすことを意味することを意図している。これらの影響は抗酸化活性とは異なる。したがって、本発明の目的のために、N.ラパセウム抽出物は抗酸化剤及び/又は抗フリーラジカルとして使用されない。
【0024】
「非審美的な及び/又は不快な影響」は、本明細書において、治療的処置、特に皮膚科学的処置を必要としない、皮膚及び/又は皮膚付属器の刺激及び/又は発赤及び/又はくすみ及び/又は色つやの輝きの喪失及び/又は感作の感覚を意味することを意図する。より好ましくは、それらは、皮膚、より有利には頭皮、及び/又は皮膚付属器の刺激及び/又は発赤の感覚であり;及び/又は、くすんだ色つやの感覚及び/又は皮膚の色つやの輝きの消失;及び/又は、皮膚、より有利には頭皮、及び/又は皮膚付属器の感作である。
【0025】
「汚染物質」とは、排気ガス及び/又はタバコの煙及び/又は粉塵及び/又は汚染物質、特に石炭粒子、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、一酸化窒素、重金属、例えばオゾン、カドミウム、水銀、ニッケル、鉛、クロム、バリウム、銅、チタン、PM 2.5及びPM 10から選ばれる微粒子、並びにベンゾピレン又はベンザアントラセンなどの多環芳香族炭化水素を意味することを意図している。
【0026】
本明細書中の用語「ATP合成を増加させる」は、本発明に係る抽出物の非存在下で測定したATPレベルと比較して、本発明に係る抽出物の存在下で、非病的皮膚の線維芽細胞におけるATP合成を少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、有利には少なくとも15%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%増加させることを意味することを意図している。本発明の1つの特に有利な実施形態において、この増加は、実施例1a)に従って調製された種子抽出物の存在下で、より有利には、実施例2a)に記載されるような条件下での酵素的方法によって測定される。
【0027】
本発明の別の実施形態において、「ATP合成を増加させる」は、本発明に係る抽出物の非存在下で測定したATPレベルと比較して、本発明に係る抽出物の存在下で、非病的毛包乳頭線維芽細胞におけるATP合成を少なくとも15%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%増加させることを意図する。本発明の1つの特に有利な実施形態において、この増加は、実施例1a)に従って調製された種子抽出物の存在下で、より有利には、実施例2b)に記載されるような条件下での酵素的方法によって測定される。
【0028】
ミトコンドリア活性を増加させるは、本発明に係る抽出物の非存在下で測定したミトコンドリア活性のレベルと比較して、本発明に係る抽出物の存在下での、有利には正常な、すなわち非病的な、毛乳頭線維芽細胞において、より有利には実施例1a)に従って調製した種子抽出物の存在下で測定した、少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%の前記活性の増加を意味することを意図する。好ましくは、実施例3に記載の条件下で、コハク酸デヒドロゲナーゼの存在下でMTT (3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を還元した後の光学密度によって前記活性を測定する。
【0029】
「細胞老化を減少させる」は、本発明の目的のために、本発明に係る抽出物を含まない線維芽細胞において測定された自家蛍光と比較して、本発明に係る抽出物の存在下で、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%の線維芽細胞自家蛍光の減少を意味することが意図される。有利には、毛包乳頭線維芽細胞、より有利には新生乳頭モデルにおいて、より好ましくは実施例1a)に従って調製した種子抽出物の存在下で、自家蛍光を測定する。非常に有利には、自家蛍光は、実施例4の条件下で、フローサイトメトリーにより測定される。
【0030】
本発明の目的のために、「細胞生存率を増加させる」は、本発明に係る抽出物なしで検出されるレベルと比較して、本発明に係る抽出物の存在下での微小濾胞細胞生存率の少なくとも5%、有利には少なくとも10%、より有利には少なくとも20%の細胞生存率の増加を意味することが意図される。好ましくは、増加は、実施例1a)に従って調製された種子抽出物の存在下で、より有利には、実施例6a)に記載された条件下での比色法によって測定される。
【0031】
本発明の目的のために、「細胞損傷を減少させる」は、本発明に係る抽出物の非存在下で測定される細胞溶解のレベルと比較して、本発明に係る抽出物の存在下で、有利には毛包の微小濾胞細胞溶解を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも40%減少させることを意味することを意図する。本発明の1つの有利な実施形態において、これは、実施例1a)に従って調製された種子抽出物の存在下で測定される細胞損傷の減少である。より有利には、この減少は、実施例6b)に記載の条件下で、乳酸デヒドロゲナーゼの存在下での比色法によって測定される。したがって、本発明によれば、本発明に係るN.ラパセウム抽出物は抗酸化剤及び/又は抗フリーラジカル剤として使用されないため、細胞損傷の低減は細胞酸化の低減を意味しない。
【0032】
あるいは、「細胞損傷を減少させる」とは、本発明に係る抽出物の非存在下で測定された分解と比較して、本発明に係る抽出物、好ましくは実施例1a)に従って調製された種子抽出物の存在下で、有利には少なくとも2%、有利には少なくとも5%、より有利には少なくとも10%、非常に有利には少なくとも15%の毛髪繊維の1種以上の成分(ケラチン、ビタミン、鉄、亜鉛、アミノ酸、有利にはトリプトファンから選択される)の分解を低減することによって、毛髪繊維に対する損傷を減少させることを意味する。有利なことに、この減少は、毛髪繊維、好ましくは脱色毛髪繊維のトリプトファン含有量を評価することによって、より好ましくは顕微鏡及び画像分析による蛍光の測定、又は蛍光分光法若しくは蛍光測定法により測定される。
【0033】
本発明の1つの別の実施形態において、抽出物は、皮膚及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪における汚染物質、好ましくは微粒子及び/又は多環芳香族炭化水素、及び/又は石炭粒子及び/又は粉塵、好ましくは多環芳香族炭化水素及び/又は微粒子の付着及び/又は浸透、好ましくは付着を減少させることにより、汚染の有害な影響を低減する。
【0034】
したがって、抽出物は、本発明に係る抽出物なしで測定された汚染物質付着のパーセンテージと比較して、本発明に係る抽出物の存在下で、前記パーセンテージが少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%減少した場合に、汚染物質の付着を減少させるのに有効な量で存在する。1つの特に有利な実施形態では、抽出物は種子抽出物であり、好ましくは実施例1a)に記載の条件下で調製されるものである。あるいは、実施例1h)に従って調製した種子抽出物であろう。
【0035】
汚染物質は毛髪の束(lock)に付着することができ、その影響は、例えば、排気ガス及び粒子の放出を可能にする、いわゆる汚染チャンバーの使用によって測定することができる。本発明の1つの有利な実施形態では、毛髪の束(lock)を汚染物質に曝露し、その影響を顕微鏡及び画像分析によって測定する。
【0036】
本発明の特に有利な一実施形態では、N.ラパセウム種子抽出物、好ましくは実施例1a)に係る抽出物の存在下で汚染物質の付着を減少させることは、実施例1a)に係る種子抽出物で予め処理された毛髪繊維のいくつかの束上の残留汚染物質粒子の密度(μm)を測定することによって評価される。
【0037】
本発明の1つの別の実施形態において、残留汚染物質粒子の密度(μm)は、本発明に係る種子抽出物、好ましくは実施例1a)に係る種子抽出物で前処理された又は前処理されていない毛髪繊維の脱色束(従って毛髪繊維は汚染物質に対してより感受性である)上で測定される。
【0038】
本発明の1つの別の実施形態において、本発明に係る抽出物は、本発明の目的のために定義されるような汚染物質、有利にはベンゾピレンの存在下で増加する細胞自家蛍光を減少させることによって、汚染の有害な影響を低減させる。したがって、有利には、本発明に係る抽出物は、ベンゾピレンの存在下で検出される自家蛍光のレベルと比較して、減少が少なくとも35%、好ましくは少なくとも45%、非常に好ましくは少なくとも70%である場合に、ベンゾピレンの存在下で増加した細胞自家蛍光を減少させるのに有効な量である。より好ましくは、自家蛍光は、真皮乳頭線維芽細胞中で、有利には種子抽出物の存在下で、非常に有利には実施例5に記載されるように実施例1a)に記載される条件下で調製される種子抽出物の存在下で測定される。
【0039】
本発明のさらに別の代替実施形態では、抽出物は、本発明の目的のために定義されるような汚染物質、有利にはベンゾピレンの存在下で増加する細胞粒度を減少させることによって、汚染の有害な影響を低減させる。好ましくは、本発明に係る抽出物は、ベンゾピレンの存在下で検出される細胞粒度のレベルと比較して、この減少が少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%である場合に、ベンゾピレンの存在下で増加した細胞粒度を減少させるのに有効な量である。有利には、この粒度は、真皮乳頭線維芽細胞において、有利には種子抽出物の存在下で、非常に有利には実施例5に記載されるように実施例1a)に記載される条件下で調製される種子抽出物の存在下で測定される。
【0040】
本発明の別の代替実施形態では、抽出物は、汚染物質、有利にはベンゾピレンの存在下で減少した細胞体積を増加させることによって、汚染の有害な影響を低減させる。従って、本発明に係る抽出物は、ベンゾピレンの存在下で検出された細胞体積と比較して、この増加が少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%である場合に、ベンゾピレンの存在下で減少した細胞体積を増加させるのに有効な量である。有利には、この体積は、真皮乳頭線維芽細胞において、有利には種子抽出物の存在下で、非常に有利には実施例1a)に記載の条件下で調製された種子抽出物の存在下で測定される。
【0041】
本発明のさらに別の代替実施形態では、抽出物は、本発明の目的のために定義されるような汚染物質、有利にはベンゾピレンの存在下で増加する細胞アポトーシスを減少させることによって、汚染の有害な影響を低減させる。好ましくは、本発明に係る抽出物は、ベンゾピレンの存在下で検出された細胞アポトーシスのレベルと比較して、この減少が少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%である場合、ベンゾピレンの存在下で増加した細胞アポトーシスを減少させるために有効な量である。有利には、このアポトーシスは、真皮乳頭線維芽細胞において、有利には種子抽出物の存在下で、非常に有利には実施例1a)に記載された条件下で調製された種子抽出物の存在下で測定される。
【0042】
本発明のさらに別の代替の実施形態では、抽出物は、本発明に係る抽出物の非存在下で測定した総タンパク質含量と比較して、重金属、有利には水銀及び/又はカドミウムの存在下、かつ本発明に係る抽出物、好ましくは実施例1a)に記載された条件下で調製された種子抽出物の存在下で培養した皮膚線維芽細胞中で測定した総タンパク質含量を少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、及非常に好ましくは少なくとも15%増加させることによって、皮膚に対する汚染の有害な影響を低減する。
【0043】
有利なことに、総タンパク質はBradford法によって測定される。
【0044】
本発明のさらに別の代替の実施形態では、抽出物は、熱ショックタンパク質マーカー(その発現は、本発明に従って定義されるような汚染物質、有利にはタバコの煙の存在下で増加する)、好ましくはHSP27の発現を減少させることにより、皮膚、有利には頭皮、及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減させる。
【0045】
したがって、本発明に係る抽出物は、皮膚及び/又は皮膚付属器、好ましくは毛髪を活性化及び/又は汚染除去するための剤、好ましくは汚染除去剤として使用される。本発明に係る抽出物は、皮膚及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪の色つやの輝き及び/又は色つやの均質性を増大させること、並びに/あるいは色つやの輝き及び/又は均質性の喪失を防止することを可能にする。
【0046】
特に、皮膚、有利には頭皮のための鎮静剤(soothing agent)として使用されるであろう。
【0047】
1つの特に有利な実施形態において、抽出物は、ATP合成を増加させることによって、皮膚及び/又は皮膚付属器、好ましくは毛髪の色つやの輝きを増加させ、及び/又は色つやの均質性を増加させ、及び/又は色つやの輝き及び/又は均質性の喪失を防止するために使用される。
【0048】
皮膚及び/又は皮膚付属器、好ましくは毛髪の色つやの輝き及び/又は色つやの均質性の増加は、in vivoで測定することができる。したがって、本発明の一実施形態において、皮膚の「色つやの輝きを増大させる」という用語は、本発明に係る抽出物を含むクリームを適用した後に、本抽出物を含まないプラセボクリームと比較して、皮膚のくすんだ色つや及び/又は黄変の少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも4%の低下を意味することが意図される。有利には、色つやの輝きのこの増大は、15日後、28日後及び/又は56日後に、より有利には、女性集団の顔の半分で測定される。本発明の1つの有利な実施形態では、色つやの輝きの増大は、皮膚の発光を測定することにより、有利には、パラメータL*を測定することにより評価される。前記パラメータは、クロマメトリー(chromometry)又は画像解析から選択されるいくつかの技法によって測定することができる。有利には、パラメータL*は、クロマメトリーによって測定されるであろう。
【0049】
本発明の1つの代替的な実施形態では、色つやの輝きは、臨床的評価によって測定される。それは、Goniolux(登録商標)タイプの機器を用いて、又は画像解析によって実施され得る。有利には、画像解析によって実施されるであろう。
【0050】
本発明に係る抽出物は、樹皮、葉、枝、茎、果実全体、果肉、種子、果皮及び根から選択されるN.ラパセウム植物の全部又は一部であり得る。好ましくは、抽出物は、葉、果肉、種子及び/又は果皮の中から選択される。非常に好ましくは、N.ラパセウム植物の種子抽出物である。
【0051】
本発明の目的のために、「種子抽出物」は、種子を含む、有利には種子のみを含む、N.ラパセウム植物の全部又は一部の任意の抽出物を意味することを意図している。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、種子抽出物は果皮又は果肉を含まない。したがって、種子抽出物は果実抽出物ではない。本明細書における「果皮」は、果実の外層を意味することを意図している。抽出物は、浸軟、高温煎出(hot decoction)、ミキサーを用いる超音波ミリングを含むミリングから選択される、当業者に知られている種々の抽出法によって得ることもできるし、あるいは、抽出物は、亜臨界又は超臨界条件(二酸化炭素)下、水中での抽出によって得ることもできる。好ましくは、抽出は浸軟によって実施される。
【0052】
抽出は、物質及び抽出溶媒の全重量に対して0.1重量%~20重量%、有利には1重量%~20重量%、より有利には5重量%~15重量%、非常に有利には10重量%~15重量%、さらにより有利には10重量%の量の乾燥物質又は新鮮物質、有利には、乾燥物質を用いて実施され得る。
【0053】
抽出は、4℃~300℃の範囲の温度で実施し得る。本発明の1つの優先的な実施形態では、抽出は、4℃~25℃、より好ましくは4℃~20℃の温度、より有利には室温、すなわち約20℃で実施し得る。
【0054】
本発明の1つの代替的な実施形態では、抽出は、60℃~90℃の温度、好ましくは70℃~85℃、より好ましくは80℃の温度で実施し得る。
【0055】
本発明の別の代替的な実施形態では、抽出は、亜臨界条件下、100℃~300℃の範囲の温度、有利には120℃~250℃、より有利には120℃で水中において実施されるであろう。抽出は、単一の所与の温度で、又は連続的な上昇温度で実施することができる。本発明の1つの有利な実施形態では、抽出は、120℃の単一の温度で実施されるであろう。代替の実施形態では、抽出は、100℃~200℃の間の3つの上昇温度、例えば、120℃、140℃、そして160℃、又は110℃、130℃、そして150℃、又は120℃、145℃、そして170℃の勾配に従って実施されるであろう。
【0056】
「亜臨界条件」下での抽出という用語は、水が液体状態のままであるが、室温の水よりも低い粘度及び表面張力を有し、その誘電率が増大するように、100℃よりも高い温度、及び221バールよりも低い圧力の条件下において、水の存在下での抽出を意味することが意図される。
【0057】
従って、抽出圧力は、有利には、圧力抽出オートクレーブにおいて、150バール~250バール、好ましくは200~221バールを含み得る。
【0058】
本発明の別の実施形態において、抽出物は、共溶媒の存在下で超臨界条件下(CO2)で抽出することにより得ることができる。有利には、共溶媒はエタノールである。
【0059】
さらに別の代替的な実施形態において、抽出は、参照として本明細書に組み込まれる出願FR 1757173に記載されているようなC6~C16ジアルキルカーボネート溶媒の存在下で行われる。
【0060】
抽出は、30分~24時間にわたって、好ましくは30分~12時間、より好ましくは1時間~5時間にわたって、より有利には1時間~2時間にわたって実施することができる。非常に有利には、抽出は、2時間にわたって実施されるであろう。
【0061】
本発明に係る抽出物は、溶媒又は溶媒混合物、好ましくは、プロトン性極性溶媒、有利には、水、アルコール、グリコール、ポリオール、99/1~1/99(w/w)の水/アルコール、水/グリコール、又は水/ポリオール混合物(例えば、水と、エタノール、グリセロール及び/又はブチレングリコール、及び/又は他のグリコール、例えば、キシリトール及び/又はプロパンジオールとの混合物)の中、有利には、唯一の溶媒としての水の中での抽出によって得ることができる。
【0062】
特に、抽出物は水性抽出によって得られる。本発明の目的のために、「水性抽出によって得られる抽出物」は、水溶液の全重量に対して60重量%超、有利には少なくとも70重量%、特に、少なくとも80重量%、より具体的には少なくとも90重量%、特に、少なくとも95重量%の水を含有し、さらにより有利にはグリコールを含有せず、特に、アルコールを含有せず、より具体的には水のみを含有する水溶液による抽出によって得られる任意の抽出物を意味することが意図される。
【0063】
1つの特定の実施形態において、抽出物は、水を唯一の溶媒として調製されたN.ラパセウム種子抽出物である。
【0064】
別の実施形態において、抽出物は、N.ラパセウム種子油抽出物である。この場合、抽出物は、特に、超臨界条件下(CO2)での抽出により、又はC6~C16ジアルキルカーボネート溶媒中での抽出により、又はヘプタン中での抽出により、得ることができる。
【0065】
本発明の別の代替的な実施形態では、抽出は、好ましくはBASFによりPlantacare(登録商標)1200UPという名称で販売されているラウリルグルコシド、あるいはカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)、好ましくは、カプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)から選択される非イオン性界面活性剤の存在下で実施され得る。非イオン性界面活性剤の重量による濃度は、抽出物の全重量に対して、0.5重量%~5重量%、有利には0.5~1重量%でよく、より有利には1重量%になる。
【0066】
従って、本発明の第1の実施形態では、抽出物は、溶媒及び材料の重量に対して10重量%の量の粉砕種子を、20℃の温度で2時間にわたり浸軟することによって得られる。実施例1a)に記載される条下で、得られた粗抽出物を遠心し、デカントし、次いでろ過する。
【0067】
本発明の第2の実施形態では、抽出物は、溶媒及び材料の全重量に対して5重量%の量の粉砕種子を、20℃の温度で24時間にわたって溶媒として水中で浸軟することによって得られる。実施例1b)に記載される条件で、粗抽出物を遠心し、デカントし、次いでろ過する。
【0068】
本発明の第3の実施形態では、抽出物は、20重量%の量の粉砕種子を、20℃の温度で2時間にわたって溶媒として水中で浸軟することによって得られる。実施例1c)に記載される条件で、抽出物を遠心し、デカントし、ろ過し、次いで最終抽出物の全重量に対して80重量%の最終マルトデキストリン量でマルトデキストリンの存在下での噴霧乾燥を行った。
【0069】
第4の実施形態では、抽出物は、溶媒及び材料の全重量に対して10重量%の量の粉砕種子を、80℃の温度で1時間にわたって水:エタノール混合物(80:20; v/v)で浸軟することによって得られる。続いて実施例1d)に記載される条件で、抽出物を遠心し、デカントし、ろ過し、最終抽出物の全重量に対して80重量%の最終マルトデキストリン量でマルトデキストリンの存在下での噴霧乾燥を行った。
【0070】
第5の実施形態では、抽出物は、果皮及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウムの乾燥果皮を、20℃の温度で1時間にわたって浸軟することによって得られ得る。得られた抽出物をデカントし、遠心し、そして上清をろ過する。抽出物は、実施例1e)に記載される条件で、粉末の形態である。
【0071】
第6の実施形態では、果肉及び水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウムの果肉から開始して、80℃の温度で1時間にわたって唯一の溶媒としての水の中で浸軟することによって抽出を行う。実施例1f)に記載される条件で、粗抽出物をデカントし、遠心し、そしてろ過する。
【0072】
第7の実施形態では、葉及び水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウムの乾燥葉を使用して、80℃の温度で1時間にわたって抽出を行う。実施例1g)に記載される条件で、粗抽出物をデカントし、遠心し、そしてろ過する。
【0073】
第8の実施形態では、10重量%の量の乾燥N.ラパセウム種子を使用して、実施例1h)に記載される超臨界CO2条件で抽出を行う。
【0074】
第9の実施形態では、抽出は、果皮及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して5重量%の量の乾燥果皮を用いて、20℃の温度で1時間にわたって行う。実施例1i)に記載される条件で、得られた抽出物をデカントし、遠心し、そして上清をろ過する。
【0075】
有利には、本発明によると、抽出物は、0.45μmのカットオフ閾値でろ過されるであろう。付加的な脱色及び/又は脱臭ステップは、当業者に知られている技術に従って、抽出の任意の段階で抽出物に対して実施することができる。特に、抽出物は活性炭により脱色され得る。
【0076】
実施例1a)及び1b)、1d)~1i)に記載される条件下で得られた抽出物は次に、溶媒の蒸発によって濃縮することもできるし、あるいは、例えば凍結乾燥、又はマルトデキストリンの存在下での噴霧乾燥によって乾燥させることもできる。そして抽出物は粉末形態になる。
【0077】
従って、本発明の特定の一実施形態では、実施例1a)及び1b)、1d)~1i)において得られた抽出物は、得られた粉末の全重量に対して20重量%~90重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは70重量%~80重量%の濃度のマルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥されるであろう。
【0078】
従って、本発明の特定の有利な一実施形態では、抽出物の使用は、細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を増加させることにより、並びに/あるいは細胞損傷及び/又は細胞老化を減少させることにより、より好ましくはATP合成を増加させることにより、皮膚、有利には頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減する。この場合、好ましくは、抽出物は、葉、種子、果皮及び/又は果肉抽出物、より好ましくは種子抽出物である。
【0079】
本発明に係る抽出物は、化粧品活性成分の形態で単独で使用することもできるし、あるいは、化粧品組成物中に含まれてもよい。
【0080】
化粧品成分の形態で単独で使用される場合、抽出物は、好ましくは、抽出物を含む水溶液の全重量に対して、有利には60重量%~90重量%の濃度、より有利には70重量%~85重量%の濃度、非常に有利には80重量%の濃度で存在するグリセリンを含有する水溶液中に可溶化される。続いて、抽出物は液体形態となる。
【0081】
本発明の1つの代替的な実施形態では、抽出物は、溶媒、特に、極性溶媒、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリコール、例えば、ペンチレングリコール及び/又はブチレングリコール及び/又はヘキシレングリコール及び/又はカプリリルグリコール、又はこれらの混合物、好ましくは、水-グリコール混合物(より好ましくは、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びこれらの混合物から選択されるグリコールを含有する)の中に可溶化及び/又は希釈されるであろう。有利には、得られた抽出物は、ヘキシレングリコールを含有する、特に、化粧品成分の全重量に対して0.1重量%~10重量%のヘキシレングリコール、好ましくは0.5重量%~5重量%のヘキシレングリコールを含有する水溶液中に希釈される、及び/又は可溶化される。有利には、得られた抽出物は、カプリリルグリコールを含有する、特に、抽出物を含む水溶液の全重量に対して0.01重量%~5重量%のカプリリルグリコール、好ましくは0.1重量%~1重量%のカプリリルグリコールを含有する水溶液中に希釈される、及び/又は可溶化される。
【0082】
特に、本発明に従ってN.ラパセウム(N. lappaceum)抽出物が可溶化された水溶液は、キサンタンガム、特に、水溶液の全重量に対して0.01重量%~5重量%のキサンタンガム、より具体的には、抽出物を含む水溶液の全重量に対して0.1重量%~1重量%のキサンタンガムを含む。
【0083】
有利には、本発明に従ってN.ラパセウム(N. lappaceum)抽出物が可溶化された溶液は、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びキサンタンガムを含む。
【0084】
したがって、本発明の別の主題は、皮膚、有利には頭皮、及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するための、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物における本発明に係る抽出物の使用に関する。「許容される」という用語は、アレルギー応答を誘発せず、化学的に安定である、化粧品賦形剤、又は皮膚に対して非刺激性の賦形剤を意味することが意図される。
【0085】
したがって、化粧品組成物は、皮膚及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するために使用される。
【0086】
本発明に係る抽出物、好ましくは葉、果皮、果肉及び/又は種子抽出物、非常に好ましくは種子抽出物を含む化粧品組成物は、活性化及び/又は汚染除去化粧品組成物、有利には汚染除去、より有利には毛髪用の化粧品組成物として使用し得る。
【0087】
組成物は、局所的又は経口的に投与され得る。本発明の有利な一実施形態において、上記化粧品組成物は、局所的に、有利には脚、足、脇の下、手、大腿、腹、胸、首、腕、胴、背中及び顔、有利には顔、より有利には頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪から選択される、ヒトの体の全体又は一部に適用される。
【0088】
本発明の一実施形態では、本発明に係る抽出物は、組成物の全重量に対して1×10-4重量%~10重量%、好ましくは1×10-4重量%~5重量%、より好ましくは1×10-3重量%~3重量%の濃度で、化粧品組成物中に存在し得る。
【0089】
賦形剤は、界面活性剤及び/又は乳化剤、防腐剤、緩衝剤、キレート剤、変性剤、乳白剤、pH調整剤、還元剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、皮膜形成ポリマー、充填剤、つや消し剤、光沢剤、顔料、染料、香料、並びにこれらの混合物から選択され得る。CTFA(Cosmetic Ingredient Handbook, Second Edition (1992))には、本発明で使用するのに適した種々の化粧品賦形剤が記載されている。
【0090】
有利には、賦形剤は、ポリグリセリン、エステル、セルロースポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、スクロース系安定剤、ビタミンE及びその誘導体、キサンタンガム、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不けん化物(unsaponifiable)、フィトステロール、シリコーン、タンパク質加水分解物、ベタイン、アミンオキシド、植物抽出物、サッカロースエステル、二酸化チタン、グリシン、並びにパラベンを含む群から選択され、より好ましくは、ステアレス-2、ステアレス-21、グリコール-15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、カプリリルグリコール、天然トコフェロール、グリセリン、ジヒドロキシセチルナトリウムホスフェート、イソプロピルヒドロキシケチルエーテル、ステアリン酸グリコール、トリイソノナノイン、オクチルココエート、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス-7、カルボマー、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG30-ジポリヒドロキシステレート、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、オクタン酸セテアリル、アジピン酸ジブチル、ブドウ種子油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ワックス及び鉱油、イソステアリン酸イソステアリル、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、PEG8、蜜ろう、水素化パーム核油(palm heart oil)のグリセリド、ラノリン油、ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、サッカロース、低密度ポリエチレン、等張生理食塩水、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0091】
化粧品組成物は、水性若しくは油性溶液、クリーム又は水性ゲル若しくは油性ゲル、特に、シャワーゲル、乳液、エマルション、マイクロエマルション又はナノエマルション(特に、水中油型又は油中水型又は多重又はシリコーン系)、マスク、セラム、ローション、液体セッケン、皮膚用バー(dermatological bar)、軟膏、フォーム、パッチ、無水製品、好ましくは、液体、ペースト又は固体、シャンプーの形態から選択され得る。有利には、シャンプーである。
【0092】
化粧品組成物は、同じ特性を有し、場合によっては本発明に係る抽出物と相乗効果を誘発する他の化粧剤、又は補完的な効果を有する化粧剤を含んでもよい。
【0093】
毒性分子の浸透から皮膚を保護するための使用、又は解毒剤として、又は汚染除去剤としての使用が知られている化粧剤には、特に、タラ(Caesalpinia spinosa)抽出物、及びヤハズツノマタ(Chondrus crispus)又はオオキリンサイ(Kappaphycus striatum)の加水分解抽出物が含まれる。Arganyl(商標)の名称で販売されているアルガンオイル抽出物、又は出願人がPurisoft(商標)及びPuricare(商標)の名称で販売しているワサビノキ(Moringa oleifera)の種子抽出物も言及し得る。
【0094】
他のタイプの活性剤、例えば、抗老化成分及び/又は漂白活性剤、汚染防止成分及び/又は色つやの輝きを促進する成分が組成物中に存在してもよい。
【0095】
これらは、例えば、DN-Age(商標という名称で販売されているカシア・アラタ(Cassia alata)の葉抽出物、及び/又は抗酸化活性剤としてLitchiderm(商標)という名称で販売されているライチの抽出物、脱糖化剤(deglycating agent)としてCollRepair(商標)という名称で販売されているサルビア・ミルティオリザ(Salvia miltiorhizza)の抽出物及びナイアシンアミドの組合せ、Lox-Age(商標)という名称で販売されているチコリの抗しわ抽出物、Neurobiox(商標)という名称で販売されているアキレア・ミレフォリウム(Achillea millefolium)の抽出物、Perlaura(商標)という名称で販売されているポリゴヌム・ビストルタ(Polygonum bistorta)の抽出物、Hyalufix(商標)という名称で販売されているガランガ(galanga)の抽出物、Deliner(商標)という名称で販売されているトウモロコシの抽出物、又はEpigenist(商標)という名称で本出願人によって販売されているボアンドゼイア・スブテラネア(Voandzeia subterranea)の抽出物、あるいは皮膚の堅さを促進する活性剤、例えば、Dermican(商標)という名称で販売されている合成テトラペプチド、Linefactor(商標)という名称で販売されているハイビスカス・アベルモスクス(Hibiscus abelmoschus)の抽出物、Proteasyl(商標)という名称で販売されているエンドウ豆の精製抽出物、Elestan(商標)という名称で販売されているマニルカラ・ムルチネルビス(Manilkara multinervis)の抽出物、Argassential(商標)という名称で本出願人によって販売されているアルガン(Argan)の果肉抽出物であり得る。Dermagenist(商標)という名称で販売されているオリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)植物の抽出物、及び/又はCollalift(登録商標)18という名称で販売されているカヤ・セネガレンシス(Khaya senegalensis)の抽出物も、化粧品組成物に添加され得る。
【0096】
本発明のまた別の課題は、細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を増加させるため、並びに/あるいは細胞損傷を減少させるため及び/又は細胞老化を減少させるため、並びに/あるいは皮膚、有利には頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するために、本発明に係る抽出物又はそれを含む化粧品組成物の局所又は経口投与を含む、美容ケア方法である。好ましくは、投与は局所適用である。
【0097】
本発明の一実施形態では、美容ケア方法は、脚、足、脇の下、手、大腿、腹、胸、首、腕、胴、背中及び顔、有利には顔、より有利には頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪から選択される、ヒトの体の全て又は一部に、本発明に係る抽出物又はそれを含む組成物を局所適用することからなる。
【0098】
実施例は、本発明の記載を参照し以下に提供される。これらの実施例は説明的な目的で与えられるものであって、本発明の範囲を何ら限定することはない。実施例のそれぞれは、一般的な範囲を有する。実施例は本発明の不可欠な部分であり、実施例を含むその全体としての記載から任意の従来技術と比べて新規であると思われる任意の特徴は何であっても本発明の不可欠な部分である。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]皮膚、有利には頭皮、及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するための、ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)抽出物の美容的使用。
[実施形態2]前記ネフェリウム・ラパセウム抽出物が、葉、果肉、果皮及び/又は種子の抽出物、好ましくは種子抽出物である、実施形態1に記載の使用。
[実施形態3]前記抽出物が、溶媒又は溶媒混合物、好ましくはプロトン性極性溶媒、有利には水、アルコール、グリコール、ポリオール、99/1~1/99(w/w)の水/アルコール、水/グリコール又は水/ポリオール混合物(例えば、水と、エタノール、グリセロール及び/若しくはブチレングリコール、並びに/又は他のグリコール、例えばキシリトール及び/若しくはプロパンジオールとの混合物)中、有利には唯一の溶媒としての水中での抽出によって得られる、実施形態1又は2に記載の使用。
[実施形態4]前記抽出物が、皮膚、有利には頭皮、及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染物質の非審美的な及び/又は不快な影響を低減する、実施形態1~3のいずれかに記載の使用。
[実施形態5]前記抽出物が、皮膚及び/又は皮膚付属器の刺激及び/又は発赤の感覚、並びに/あるいは皮膚のくすんだ色つや及び/又は色つやの輝きの喪失、並びに/あるいは皮膚及び/又は皮膚付属器の感作を低減する、実施形態1~4のいずれかに記載の使用。
[実施形態6]細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を増加させるため、並びに/あるいは細胞損傷及び/又は細胞老化を減少させるための、実施形態1~5のいずれかに記載の使用。
[実施形態7]前記使用が局所適用によるものである、実施形態1~6のいずれかに記載の使用。
[実施形態8]前記抽出物が、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物中に、該化粧品組成物の全重量に対して1×10
-4
重量%~10重量%、好ましくは1×10
-4
重量%~5重量%、より好ましくは1×10
-3
重量%~3重量%の最終濃度で存在する、実施形態1~7のいずれかに記載の使用。
[実施形態9]皮膚及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪のための活性化及び/又は汚染除去剤としての、実施形態1~8のいずれかに記載の使用。
[実施形態10]前記抽出物が、水性若しくは油性溶液、クリーム又は水性ゲル若しくは油性ゲル、特にシャワーゲル、乳液、エマルション、マイクロエマルション又はナノエマルション、特に水中油型若しくは油中水型若しくは多重若しくはシリコーン系エマルション、マスク、セラム、ローション、液体セッケン、皮膚用バー、軟膏、フォーム、パッチ、無水製品、好ましくは液体、ペースト若しくは固体の無水製品、シャンプーから選択される化粧品組成物中に存在する、実施形態1~9のいずれかに記載の使用。
[実施形態11]細胞生存率及び/又はATP合成及び/又はミトコンドリア活性を増加させるため、並びに/あるいは細胞老化を減少させるため、並びに/あるいは皮膚、有利には頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪に対する汚染の有害な影響を低減するために、実施形態1~10のいずれかに記載の抽出物又はそれを含有する化粧品組成物の局所又は経口投与を含む、美容ケア方法。
[実施形態12]脚、足、脇の下、手、大腿、腹、胸、首、腕、胴、背中及び顔、有利には顔、より有利には頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には毛髪から選択される、ヒトの体の全て又は一部に局所適用することからなる、実施形態11に記載の美容ケア方法。
【0099】
最後に、特に指定のない限り、実施例において、温度は摂氏温度、パーセンテージは体積あたりの重量で表され、圧力は大気圧である。
【実施例】
【0100】
実施例1:本発明に係るN.ラパセウム(N. lappaceum)の抽出物を調製するための方法
実施例1a)溶媒及び種子の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N. lappaceum)粉砕種子を、20℃の温度で2時間にわたり溶媒としての水中で浸軟することによって得た。粗抽出物を遠心し、デカントし、次いでろ過した。
【0101】
実施例1b)溶媒及び種子の全重量に対して5重量%の量のN.ラパセウム(N. lappaceum)粉砕種子を、20℃の温度で24時間にわたって溶媒としての水中で浸軟することによって得た。粗抽出物を遠心し、デカントし、次いでろ過した。
【0102】
実施例1c)溶媒及び種子の全重量に対して20重量%の量のN.ラパセウム(N. lappaceum)粉砕種子を、20℃の温度で2時間にわたって溶媒としての水中で浸軟することによって得た。粗抽出物を遠心し、デカントし、次いでろ過した。最終抽出物の全重量に対して80重量%の最終マルトデキストリン量でマルトデキストリンの存在下で抽出物を噴霧乾燥した。
【0103】
実施例1d)溶媒及び種子の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N. lappaceum)粉砕種子を、80℃の温度で1時間にわたって溶媒としてのエタノール:水混合物(80:20; v/v)中で浸軟することによって抽出した。粗抽出物を遠心し、デカントし、次いでろ過した。最終抽出物の全重量に対して80重量%の最終マルトデキストリン量でマルトデキストリンの存在下で抽出物を噴霧乾燥した。
【0104】
実施例1e)果皮及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウムの乾燥果皮を、80℃の温度で1時間にわたって浸軟することによって抽出した。得られた抽出物をデカントし、遠心し、次いで上清をろ過した。抽出物は粉末の形態である。
【0105】
実施例1f)果肉及び水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウムの果肉から開始して、80℃の温度で1時間にわたって唯一の溶媒としての水中で浸軟することによって抽出を行った。粗抽出物をデカントし、遠心し、次いでろ過した。
【0106】
実施例1g)葉及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウムの乾燥葉を、20℃の温度で1時間にわたって浸軟することによって抽出した。得られた抽出物をデカントし、遠心し、次いで上清をろ過した。抽出物は粉末の形態である。
【0107】
実施例1h)10%の量の乾燥種子を、共溶媒としてのエタノール(10%)の存在下で、超臨界CO2条件での抽出により得た。
【0108】
実施例1i)果皮及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して5重量%の量の乾燥果皮を、20℃の温度で1時間にわたって浸軟することによって抽出した。得られた抽出物をデカントし、遠心し、次いで上清をろ過した。抽出物は液体形態である。
【0109】
実施例2:N.ラパセウム抽出物の存在下におけるATP合成の増加の実証
実施例2a)皮膚線維芽細胞におけるATP合成
プロトコル:DMEM及び10%のウシ胎仔血清を含む増殖培地において、37℃(CO2=5%、95%相対湿度)で6日間、正常、すなわち非病的なヒト線維芽細胞をインキュベートした。本発明に係る抽出物を含む又は含まない(対照)Hanks生理食塩水溶液で培地を置き換えた。24時間のインキュベーション期間の後、細胞をUVA下で照射し、次に37℃で24時間にわたって培養に戻した。
【0110】
細胞ATPをDMSOで抽出し、酵素的方法(ルシフェリン/ルシフェラーゼ複合体;ATP Bioluminescence kit ROCHE Diagnostics)により抽出物のアリコートにおいてアッセイした。
【0111】
【0112】
結論:果肉、種子、葉及び果皮の抽出物は、皮膚を活性化して汚染を除去する作用を有することにより、対照と比較してATP合成の増加を示した。
【0113】
実施例2b)毛包乳頭線維芽細胞におけるATP合成
プロトコル:毛包乳頭由来の非病的ヒト線維芽細胞をDMEM培地で24時間培養した後、培地の全容積に対して0.03%及び0.01%の容積による最終濃度で、本発明に係るN.ラパセウム水性種子抽出物で6日間処理した。本発明に係る抽出物の非存在下で同一培地を培養した(対照)。ATP量は酵素的方法(ルシフェリン/ルシフェラーゼ複合体;ATP Bioluminescence kit ROCHE Diagnostics)により6日終了時に測定した。
【表2】
【0114】
結論:種子抽出物は対照と比較してATP合成の増加を示した。その結果、種子抽出物は、頭皮及び/又は皮膚付属器、好ましくは毛髪に対する活性化及び/又は汚染除去作用を有し、従って、色つやの輝き及び/又は色つやの均質性を増大させること、並びに/あるいは色つやの輝き及び/又は均質性の喪失を防止することが可能となる。
【0115】
実施例3:本発明に係る抽出物による毛乳頭線維芽細胞のミトコンドリア代謝活性の増加の実証
プロトコル:非病理学的ヒト毛包乳頭線維芽細胞を24時間培養した後、培地の全容積に対して0.1%及び0.3%の容積の最終濃度で、N.ラパセウム水性種子抽出物で6日間処理した。本発明に係る抽出物の非存在下で同一培地を培養した(対照)。線維芽細胞ミトコンドリア活性は、コハク酸デヒドロゲナーゼの存在下でMTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド)還元により測定した。得られた沈殿をDMSOで抽出し、次いでDMSO溶液の光学密度を540nmで測定した。
【0116】
【0117】
結論:N.ラパセウム水性種子抽出物は、対照と比較して少なくとも15%、最大47%までの毛包乳頭線維芽細胞のミトコンドリア活性の増加を示した。このミトコンドリア活性は、頭皮及び/又は皮膚付属器、好ましくは毛髪に対する汚染によって誘発される有害な影響の低減に関与し、色つやの輝き及び/又は色つやの均質性を増大させ、及び/又は色つやの輝き及び/又は均質性の喪失を防止する。
【0118】
実施例4:新生乳頭(neo-papilla)細胞モデルにおける自家蛍光パラメータの減少
プロトコル:正常で非病的なヒト線維芽細胞を、培地の全容積に対して1容積%の最終濃度で、実施例1a)に従って調製した本発明に係る種子抽出物を含むDMEM培地中に懸濁させた。本発明に係る抽出物の非存在下で同一培地を培養した(対照)。遠心後、凝集体を37℃(5%CO2)で5日間インキュベートした。凝集体をPBS緩衝液で洗浄した後、細胞をEDTAとのプロテアーゼ混合物中で溶解した。
【0119】
細胞自家蛍光はC6フローサイトメーター(Becton-Dickinson UK)(585nm+/20nm)を用いて測定した。結果は、対照に対する%で表す。
【0120】
【0121】
結論:種子抽出物は、線維芽細胞の自家蛍光を少なくとも20%低下させる能力を示し、それにより毛包乳頭における線維芽細胞老化を低下させる。
【0122】
実施例5:本発明に係る抽出物の汚染物質ベンゾピレンに対する保護効果
プロトコル:非病的ヒト真皮乳頭線維芽細胞の懸濁液を、増殖因子溶液(0.2%v/v)の存在下で基底培養培地中にその線維芽細胞を培養して調製し、これに5又は10μmol/L最終培地の最終濃度でベンゾピレン(BaP)を添加し、従って実施例1a)に従って調製したN.ラパセウム種子抽出物の最終濃度0.5%(w/v培地)又は抽出物なし(対照)とした。懸濁液を遠心(5分、200g)し、得られた凝集体を37℃(5%CO2)で5日間インキュベートした。
【0123】
細胞の自家蛍光(表5)及び細胞粒度(表6)の分析のために、凝集体を5日間のインキュベーション後に回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液ですすぎ、その後、プロテアーゼとEDTAの混合物中で37℃の温度で1時間インキュベートすることにより転位(dislocate)させた。得られた細胞懸濁液を次にフローサイトメトリーにより分析した。自家蛍光は585nmで測定した。細胞の自家蛍光と細胞粒度の増加は線維芽細胞の分解の特徴であり、分析した汚染物質の影響を示している。
【0124】
【0125】
結論:ベンゾピレンは線維芽細胞において少なくとも191%自家蛍光の程度を増加させた。これに対して、汚染物質の存在下でのN.ラパセウム種子抽出物の添加は、ベンゾピレン単独存在下で検出された自家蛍光の程度を少なくとも35%低下させることによってこの分解を相殺し、抽出物がベンゾピレンによって誘導された細胞分解に対抗するのに有効であることを実証している。
【0126】
【0127】
結論:培地へのベンゾピレンの添加は凝集体の粒子サイズを少なくとも9%増加させた。これに対して、N.ラパセウム種子抽出物の同時添加は、汚染物質の存在下で検出された粒子サイズを少なくとも31%減少させたことから、抽出物がベンゾピレンにより誘導された細胞分解に対抗するために有効であることを実証している。
【0128】
実施例6:本発明に係る抽出物が微小毛包に及ぼす影響の実証
微小濾胞(micro-follicle)の再構築法:
微小濾胞モデルは、乳頭線維芽細胞、毛包の外鞘からのケラチノサイト及びメラノサイトの3D共培養からなる。この細胞モデルは、異なるタイプの細胞間の神経、表皮及び間葉の相互作用の統合を可能にすることにより、毛包に最も近い再構築された器官分子である。微小毛包を培養した。非病理学的乳頭線維芽細胞を3日間培養した。次にメラノサイトと毛包の外鞘からのケラチノサイトを新生乳頭に加えて微小毛包を形成した。培養24時間後、N.ラパセウム水性種子抽出物を添加した。本発明に係る抽出物なしで同一培地を培養した(対照)。培養培地及び微小毛包を、試験のために処理の48時間後にサンプリングした。
【0129】
実施例6a)微小毛包における細胞生存率の増加
プロトコル:
微小毛包細胞生存率はPrestoBlue(Thermo Fisher Scientific)法で測定した。この比色法は、生細胞によるレザズリン試薬の還元及び蛍光発光に基づいている。測定は処理48時間後に行った。値は、未処理の対照による正規化後の平均%で表す。
【0130】
【0131】
結論:本発明に係る種子抽出物は、微小毛包細胞生存率を増加させることができるため、汚染によって誘導されるストレス、特に頭皮及び/又は皮膚付属器、好ましくは毛髪のストレスを減少させる活性抽出物である。
【0132】
実施例6b)微小毛包における細胞損傷の軽減
プロトコル:乳酸デヒドロゲナーゼ存在下で比色法により細胞損傷を測定し、培養培地中の損傷細胞における乳酸デヒドロゲナーゼ活性の測定で抽出物の細胞毒性の定量を可能にした。細胞膜損傷と細胞溶解の増加は、溶解細胞数に比例した乳酸デヒドロゲナーゼ活性の増加をもたらす。この活性はホルマザン存在下で示され、その量は光学密度(500nm)を測定することによって評価した。測定は、培地の全容積に対して0.02容積%の最終濃度での本発明に係る抽出物の存在下での、又は抽出物なし(対照)での処理の48時間後に培養培地で実施した。
【0133】
【0134】
結論:本発明に係る種子抽出物は、汚染の有害な影響、特に頭皮及び皮膚付属器、好ましくは毛髪に対する有害な影響を低減する活性抽出物を作製することにより、細胞損傷を低減することができる。
【0135】
実施例7:N.ラパセウム抽出物を含む化粧品成分の例
N.ラパセウム種子抽出物(実施例1c) 20重量%
マルトデキストリン 80重量%
【0136】
実施例8:本発明に係る抽出物を含む化粧品組成物の例
特に種々の相を混ぜ合わせることに関して当業者に知られている方法に従って、以下の組成物が調製される。示される量は、組成物の全重量に対する重量百分率である。
【0137】
実施例8a):身体及び顔用セラム:
相 名称 量(全重量%)
A 水 94.75
A 防腐剤 100になるまで
A グリセリン 1.00
B キサンタンガム 0.2
B ポリアクリル酸ナトリウム 0.25
C 実施例7に係る化粧品成分 1~5
【0138】
実施例8b):顔用クリーム
実施例7に係る化粧品成分 1.00~10%
キサンタンガム 0.50
EDTA 0.05
ステアレス-2 2.00
ステアレス-21 2.50
セテアリルアルコール 1.00
カプリル酸プロピルヘプチル 15.00
水酸化ナトリウム(30%溶液) 0.10
フェノキシエタノール、クロルフェネシン、 1.25
安息香酸、ブチレングリコール、
ソルビン酸の混合物(Germazide(商標)PBS)
ポリアクリレート-X、イソヘキサデカン及び 4.00
ポリソルベート60の混合物(Sepigel(商標)SMS 60)
水 100になるまで