(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】抗IL-5Rαモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230510BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230510BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230510BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230510BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230510BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230510BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230510BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230510BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230510BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P11/06
A61P37/08
A61K31/56
(21)【出願番号】P 2020519415
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(86)【国際出願番号】 RU2018050118
(87)【国際公開番号】W WO2019070164
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】516261966
【氏名又は名称】ジョイント・ストック・カンパニー “バイオキャド”
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ソフロノワ,エカテリーナ・ウラジミロフナ
(72)【発明者】
【氏名】ミソリン,アレクセイ・コンスタンチノビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ドローニン,アレクサンドル・ニコラエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ネマンキン,ティモフェイ・アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ソゾノワ,アレクサンドラ・アレクサンドロフナ
(72)【発明者】
【氏名】ジリフスカイア,ガリーナ・ステパノフナ
(72)【発明者】
【氏名】レゴツキー,セルゲイ・アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミロワ,アンナ・コンスタンチノフナ
(72)【発明者】
【氏名】ベリアスニコワ,アリーナ・バレーレフナ
(72)【発明者】
【氏名】シュチェメレーワ,マリーア・アレクサンドロフナ
(72)【発明者】
【氏名】イアコフレフ,パベル・アンドレービッチ
(72)【発明者】
【氏名】ソロフエフ,バレリイ・ウラディミロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】クレンデレーワ,エレーナ・アンドレーフナ
(72)【発明者】
【氏名】ペストワ,ナタリア・エフゲネフナ
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ,ドミトリ・バレンチノビッチ
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-527356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-5Rαに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、
1)重鎖可変ドメインが、
CDR1、CDR2及びCDR3として、それぞれ、配列番号1~3のアミノ酸配列を含み;
2)軽鎖可変ドメインが、
CDR1、CDR2及びCDR3として、それぞれ、配列番号6~8のアミノ酸配列を含む
、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
重鎖可変ドメインが、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
軽鎖可変ドメインが、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
1)重鎖可変ドメインが、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列を含み;
そして
2)軽鎖可変ドメインが、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項
1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
1)配列番号11~12を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖と;
2)配列番号13~14を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と
を含む、請求項
1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
IL-5Rα特異抗体が、完全長IgG抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
完全長IgG抗体が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの抗体である、請求項
6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
完全長IgG抗体が、ヒトIgG1アイソタイプの抗体である、請求項
7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸。
【請求項10】
DNAである、請求項
9に記載の核酸。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸であって、前記核酸が、
配列番号15~16を含む群から選択されるヌクレオチド配列であって、請求項1に記載の抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列、
および、配列番号17~18を含む群から選択されるヌクレオチド配列であって、請求項1に記載の抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列
を含む、請求項
9に記載の核酸。
【請求項12】
請求項
9~11のいずれか一項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項13】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を調製するための宿主細胞を産生する方法であって、請求項
12に記載の
発現ベクターによる細胞の形質転換を含む方法。
【請求項14】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を調製するための宿主細胞であって、請求項
9~11のいずれか一項に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を調製する方法であって、前記抗体を産生するのに十分な条件下において増殖培地にて、請求項
14に記載の宿主細胞を培養するステップ
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記方法がさらに、得られた抗体を単離および精製するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
医薬組成物であって、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤との組合せにおいて、請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~8に記載の抗体またはその抗原結合断片、または請求項17に記載の医薬組成物であって、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される、抗体、その抗原結合断片、または医薬組成物。
【請求項19】
喘息、;COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎を含む群から選択される、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬組成物であって、前記喘息が好酸球性喘息(アトピー性喘息)または重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息)である、医薬組成物。
【請求項21】
医薬組合せであって、請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の異なる治療的活性化合物とを含む医薬組合せ。
【請求項22】
請求項21に記載の医薬組合せであって、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される、医薬組合せ。
【請求項23】
IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される請求項
21に記載の医薬組合せであって、前記疾患または障害が、喘息、;COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎を含む群から選択される、医薬組合せ。
【請求項24】
請求項23に記載の医薬組合せであって、前記喘息が好酸球性喘息(アトピー性喘息)または重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息)である、医薬組合せ。
【請求項25】
異なる治療的活性化合物が、
小分子、抗体、またはステロイドホルモンから選択される、請求項
21に記載の医薬組合せ。
【請求項26】
請求項25に記載の医薬組合せであって、前記ステロイドホルモンがコルチコステロイドである、医薬組合せ。
【請求項27】
IL-5Rαの生物活性を阻害することを必要とする対象においてそのような生物活性を阻害するために使用されることが意図される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー、特に抗体またはその抗原結合性断片、ならびにその使用に関する。より詳細には、本発明は、IL-5Rα(インターロイキン5受容体α鎖)に特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。本発明はさらに、上記抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸、発現ベクター、上記抗体を調製する方法、ならびにIL-5Rαに関連する疾患または障害の治療における上記抗体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン5(IL-5)、炎症性サイトカイン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子基、これは、4ヘリックスタンパク質である。インターロイキン5は、一般的に、Th2細胞および肥満細胞によって産生される。IL-5は、活性化されたBリンパ球の増殖および分化を刺激し、IgAに対する免疫グロブリンの合成のスイッチを誘導する。好酸球および好塩基球の多くの機能は、インターロイキン-5(IL-5)の作用によって媒介される。IL-5は、好酸球の分化および活性化を促進し、アポトーシスを阻害することによってそれらの生存率も増加させることが知られている[Lotvall J., Pullertis T. Treating asthma with Anti-IgE or Anti IL-5. Curr Pharm Des. 1999; 5:757~70、およびKolbeck R., Kozhich A., Koike M.ら Medi-563, a humanized anti-IL-5 receptor alpha mAb with enhanced antibody-dependent cell mediated cytotoxicity function. J Allergy Clin Immunol. 2010;125(1):1344~53]。
【0003】
IL-5は、ヒト好酸球/好塩基球前駆体上および成熟好酸球/好塩基球上に発現する特異的受容体(IL-5R)を介して作用する。IL-5Rは、独特なα鎖(IL-5Ra/CD125、細胞外ドメイン)およびIL-3/GM-CSF受容体コモンβ鎖(bc/CD131)からなり、それら自体はリガンドに結合しないが、同名受容体に対するIL-5の親和性を増加させ、シグナル伝達に直接的に関与する[Tetsuya A., Rafeul A. The mechanism of IL-5 signal transduction American Journal of Physiology - Cell Physiology 1998年9月1日出版 Vol. 275 no. 3, C623~C633]。
【0004】
好酸球増多症の発症は、早期骨髄好酸性前駆細胞上でのIL-5の選択的発現に関連する。したがって、IL-5とその細胞受容体との間の相互作用を阻害することは、好酸球増多症を抑制するために最も好ましいと思われる。
【0005】
好酸球増多症抑制の治療有意性は、いくつかの病理学的プロセスにおける好酸性顆粒球の高いレベルに起因する。したがって、気管支喘息を患う患者の気道における、および好酸球性食道炎を患う患者の食道上皮における、好酸球数の増加は、当該疾患の病態生理の原因となる。好酸球は、炎症仲介物質、例えば、好酸球陽イオンタンパク質(ECP)およびロイトコリエンなどを放出する。
【0006】
モノクローナル抗体ベンラリズマブは、先行技術により知られており、IL-5Rαに結合し、それにより、受容体とリガンドとの相互作用を阻害する。上記モノクローナル抗体は、血液および肺組織における好酸球を著しく消耗する。ベンラリズマブは、ハイブリドーマ技術を使用して産生されたマウス抗体から誘導されたヒト化モノクローナル抗体(IgG1/k)である[Koike M., Nakamura K.ら Establishment of humanized anti-interleukin-5 receptor alpha chain monoclonal antibodies having a potent neutralizing activity. Hum Antibodies 2009, 18(1-2):17~27]。上記抗体は、高い親和性(KD=11pm)においてIL-5Rαに結合し、IL-5依存性細胞増殖を阻害する(IC50=0.3nm)[Kolbeck R., Kozhich Aら MEDI-563, a humanized anti-interleukin 5 receptor-alpha monoclonal antibody, with enhanced antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity function. J Allergy Clin Immunol 2010, 125(6): 1344~53.e2]。ベンラリズマブは、アフコシル化された細胞株において産生され、そのようにして達成されたオリゴ糖核におけるフコースの不在は、結果として、可溶性ヒトFcγRIIIaへの結合を5~10倍向上させ、それにより、抗体依存性細胞傷害性を増加させる[Shinkawa T., Nakamura K.ら The absence of fucose but not the presence of galactose or bisecting N-acetylglucosamine of human IgG1 complex-type oligosaccharides shows the critical role of enhancing antibody-dependent cellular cytotoxicity. J Biol Chem 2003, 278(5):3466~73]。上記抗体は、フェーズ3の臨床試験中である。抗体ベンラリズマブは、WO9710354(A1)に記載されている。
【0007】
IL-5RおよびヒトCD3e(ND003)に結合する二重特異性抗体も、先行技術において知られている。当該抗体は、臨床前研究段階にあり、WO2015172800およびWO2015058861に記載されている。
【0008】
上記のことから、IL-5Rαに効果的に結合し、IL-5Rα媒介性活性化を阻害する、新規の抗体を作り出すことが重要であるということになる。
本発明者らは、ベンラリズマブに匹敵する親和性においてヒトIL-5Rαに結合し、IL-5Rα媒介性活性化を阻害する、完全ヒト化モノクローナル抗体mAb(BCD-133)を開発した。ベンラリズマブの場合と同様に、BCD-133は、抗体依存性細胞傷害性を高め、したがって、IL-5受容体を有する細胞に対する免疫反応の活性化を可能にする。抗体BCD-133は、IL-5Rαに選択的に結合し、免疫コンピテント細胞および関連する特異性炎症のIL-5Rα媒介性活性化の効果的な阻害剤である。細胞試験は、ベンラリズマブの作用を超える抗体BCD-133の活性を示す。その上、BCD-133は、デノボにおいて得られた完全ヒト抗体であり;この事実は、免疫原性リスクを減らすことを可能にし、結合親和性の損失を引き起こし得るヒトタンパク質に対する親和性を増加させるように指示されたさらなる遺伝的形質転換を必要としない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結合性分子、例えば、IL-5Rαへの結合を対象とする抗体に関する。そのような抗体は、IL-5とその細胞受容体との相互作用によって媒介される疾患または障害を治療するために使用することができる。
【0010】
一側面において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、配列番号3の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと配列番号8の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、すなわち、配列番号3および8のアミノ酸配列は、1つまたは2つのアミノ酸置換を含み得る、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0011】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0012】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1~3の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、すなわち、配列番号1~3の当該アミノ酸配列は、1つまたは2つのアミノ酸置換を含み得る。
【0013】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1~3によって表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号6~8の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、すなわち、配列番号6~8の当該アミノ酸配列は、1つまたは2つのアミノ酸置換を含み得る。
【0014】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号6~8によって表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1~3の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6~8の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、すなわち、配列番号1~3および6~8の当該アミノ酸配列は、1つまたは2つのアミノ酸置換を含み得る。
【0015】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1~3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6~8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0016】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0017】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0018】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0019】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0020】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11~12を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号13~14を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0021】
一態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11~12を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号13~14を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0022】
一態様において、IL-5Rα特異抗体は、完全長IgG抗体である。
一態様において、当該IL-5Rα特異的完全長IgGモノクローナル抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの抗体である。
【0023】
一態様において、当該IL-5Rα特異的完全長IgGモノクローナル抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの抗体である。
一側面において、本発明は、上記抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸に関する。
【0024】
一態様において、核酸はDNAである。
一態様において、核酸は、抗体の重鎖をコードし、配列番号15~16を含む群から選択される配列に対して少なくとも90%相同であるヌクレオチド配列、および/または、抗体の軽鎖をコードし、配列番号17~18を含む群から選択される配列に対して少なくとも90%相同であるヌクレオチド配列を含む。
【0025】
一態様において、核酸は、抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列であって、当該重鎖が配列番号15~16を含む群から選択される、ヌクレオチド配列、および/または、配列番号17~18を含む群から選択され、抗体の軽鎖をコードする、ヌクレオチド配列を含む。
【0026】
一側面において、本発明は、上記核酸を含む発現ベクターに関する。
一側面において、本発明は、上記抗体またはその抗原結合性断片を産生するために使用される宿主細胞をする産生方法であって、上記ベクターによる細胞の形質転換を含む方法に関する。
【0027】
一側面において、本発明は、上記抗体またはその抗原結合性断片を調製するために使用され、上記核酸を含む宿主細胞に関する。
一側面において、本発明は、上記抗体またはその抗原結合性断片を産生する方法であって、当該抗体を産生するのに十分な条件下において増殖培地にて上記宿主細胞を培養するステップと、必要であれば、その後に、得られた抗体を単離および精製するステップとを含む方法に関する。
【0028】
一側面において、本発明は、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用される医薬組成物であって、上記抗体またはその抗原結合性断片を、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤との組合せにおいて含む医薬組成物に関する。
【0029】
一態様において、医薬組成物は、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることを目的とし、当該疾患または障害は、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎;好酸球性胃腸炎から選択される。
【0030】
一側面において、本発明は、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることを目的とする医薬組み合せ物(pharmaceutical combination)であって、当該抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種の異なる治療的活性化合物とを含む医薬組合せに関する。
【0031】
一態様において、医薬組合せは、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることを目的とし、当該疾患または障害は、
喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎;好酸球性胃腸炎から選択される。
【0032】
一態様において、医薬組合せは、小分子、抗体、またはステロイドホルモン、例えば、コルチコステロイドなどから選択される治療的活性化合物を含む。
一側面において、本発明は、IL-5Rαの生物活性を阻害することを必要とする対象において当該生物活性を阻害する方法であって、上記抗体またはその抗原結合性断片の有効量を投与するステップを含む方法に関する。
【0033】
一側面において、本発明は、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害の治療のための方法であって、そのような治療を必要とする対象に、上記抗体またはその抗原結合性断片あるいは上記医薬組成物を、治療有効量において投与するステップを含む方法に関する。
【0034】
一態様において、上記疾患または障害は、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎;好酸球性胃腸炎、好酸球増多症候群から選択される。
【0035】
一側面において、本発明は、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害のそのような治療を必要とする対象の治療のための、上記抗体またはその抗原結合性断片または上記医薬組成物の使用に関する。
【0036】
一態様において、上記疾患または障害は、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎;好酸球性胃腸炎、好酸球増多症候群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】Fc融合タンパク質を有する抗原の
一過性生成のためのプラスミドのマップ。
【
図2】C末端EPEAタグ(FE)を有する抗原の
一過性生成のためのプラスミドのマップ。
【
図3】His6タグを有する抗原の
一過性生成のためのプラスミドのマップ。
【
図4】還元条件(10%SDS-PAGE)下での抗原の電気泳動図。
【
図5】還元条件(10%SDS-PAGE)下での抗原の電気泳動図。
【
図6】非還元条件下(7.5%SDS-PAGE)での抗原の電気泳動図。
【0038】
【
図7】コンビナトリアル
ナイーブヒトライブラリーの合成のスキーム。
【
図8】Fabファージディスプレイライブラリーをクローニング
するためのファージミドのマップ。
【
図9】Fab
生成のための発現プラスミドのマップ。
【
図10】特異的抗原および非特異的抗原のための後選択ライブラリー
のポリクローナルファージの
免疫酵素分析。
【
図11】Octet RED 384
デバイス(BCD133-03-002)
上
の、抗体とIL-5Rαとの相互作用のセンソグラム(sensogram)。
【
図12】Octet RED 384
デバイス(BCD133-03-020)
上
の、抗体とIL-5Rαとの相互作用のセンソグラム(sensogram)。
【
図13】Octet RED 384
デバイス(BCD133-03-021)
上
の、抗体とIL-5Rαとの相互作用のセンソグラム(sensogram)。
【
図14】
抗体依存性細胞傷害性の抗体濃度依存性を示す図である。
【
図15】抗体ベンラリズマブとの比較分析における50%効果濃度
値(EC50)を示す図である。
【
図16】Octet RED 384
デバイス(BCD133-03-002)による、抗体とカニクイザルIL-5Rαとの相互作用のセンソグラム。
【
図17】Octet RED 384
デバイス(BCD133-03-020)
上
の、抗体とカニクイザルIL-5Rαとの相互作用のセンソグラム。
【
図18】Octet RED 384
デバイス(BCD133-03-021)
上
の、抗体とカニクイザルIL-5Rαとの相互作用のセンソグラム。
【
図19】BCD-133
とIL-5Rαとの複合体の3D空間モデルである。
【
図20】BCD-133
とIL-5Rαとの複合体の3D空間モデルである。
【
図21】平均粒子径(Z平均)対温度のグラフである。
【
図22】平均粒子径(Z平均)対温度のグラフである。
【
図23】縮小されたスケールでのBCD-133の混合クロマトグラムである。青-未処理、赤-pH=5.0の20mMのアセテート中における50℃での72時間のインキュベーション。波長:220nm。
【
図24】拡大されたスケールでのBCD-133の混合クロマトグラムである。青-未処理、赤-pH=5.0の20mMのアセテート中における50℃での72時間のインキュベーション。波長:220nm。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の開示
定義および基本方法
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0040】
さらに、文脈によって必要とされない限り、単数形用語は、複数を含み、複数形用語は、単数を含むものとする。典型的には、細胞培養の分類および方法、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子学、分析化学、有機合成化学、医薬化学、ならびに本明細書において説明されるタンパク質および核酸のハイブリダイゼーションおよび化学は、当業者において周知であり、広く使用される。酵素反応および精製方法は、当技術分野において一般的であるように、または本明細書において説明されるように、製造元の指示に従って実施される。
【0041】
抗体に関連する定義
用語IL-5Rまたは「インターロイキン5受容体」は、本明細書において使用される場合、インターロイキン5(IL-5)に結合するタンパク質である。インターロイキン5受容体(IL-5R)の発現は、主に、好酸球、好塩基球、および肥満細胞の表面においてのみ観測される。IL-5Rは、独特なα鎖(IL-5Ra/CD125、細胞外ドメイン)からなり、IL-3およびGM-CSF受容体β鎖(bc/CD131)と共有され、それらは、それ自体はリガンドに結合しないが、同名の受容体に対するIL-5の親和性を増加させ、シグナル伝達に直接的に関与する。
【0042】
この遺伝子の増幅および/またはそのタンパク質の高発現(hyperexpression)が、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎;好酸球性胃腸炎、または好酸球増多症候群を含む、多くの自己免疫疾患において見出された。
【0043】
用語「結合性分子」は、抗体および免疫グロブリンを包含する。
用語「抗体」または「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において使用される場合、抗体全体ならびに任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」)または単鎖を包含する。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を少なくとも含む糖タンパク質、または抗原結合性部分を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、略してVHと称される)および重鎖定常領域を含む。ギリシャ文字:α、δ、ε、γ、およびμによって示される、哺乳動物Ig重鎖の5つのタイプが知られている。存在する重鎖のタイプは、抗体のクラスを定義し;これらの鎖は、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体において見出される。異なる重鎖は、サイズおよび構成において異なっており;αおよびγは、およそ450のアミノ酸を含むが、μおよびεは、およそ550のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち、定常領域および可変領域を有する。当該定常領域は、同じアイソタイプの全ての抗体において同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なっている。重鎖γ、α、およびδは、3つの定常ドメインCH1、CH2、およびCH3(順番に)と、フレキシビリティを加えるためのヒンジ領域とで構成される定常領域を有し(Woof J., Burton D., Nat Rev Immunol 4, 2004, cc.89-99);重鎖μおよびεは、4つの定常ドメインCH1、CH2、CH3、およびCH4で構成される定常領域を有する。哺乳動物では、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)で示される2つのタイプの軽鎖のみ知られている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、略してVLと称される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖のおよその長さは、211から217のアミノ酸である。好ましくは、当該軽鎖はカッパ(κ)軽鎖であり、当該定常ドメインCLは、好ましくはCカッパ(κ)である。
【0044】
本発明による「抗体」は、任意のクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、好ましくはIgG)、またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2、好ましくはIgG1)の抗体であり得る。
【0045】
さらに、VLおよびVH領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域の間に散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超変異性領域に分けることができる。各VHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4においてアミノ末端からカルボキシ末端まで整列された3つのCDRおよび4つのFRで構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0046】
抗体の「抗原結合性部分」、または「抗原結合性断片」(または単に「抗体部分」または「抗体断片」)なる用語は、本明細書において使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたは複数の断片を意味する。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行することができることが分かっている。抗体の「抗原結合性部分」なる用語に包含される結合性断片の例としては、(i)Fab断片、VLドメインとVHドメインとCLドメインとCH1ドメインとからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VH/VHHドメインからなるdAd断片(Wardら, (1989) Nature 341:544~546);および(vi)抽出された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つの領域であるVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされ、それらは、VL領域およびVH領域が対となって一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら (1988) Science 242:423-426;и Hustonら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879~5883を参照されたい)を形成する単一のタンパク質鎖を受け入れることを可能にする合成リンカを使用する遺伝子組換え法を使用することにより連結させることができる。そのような一本鎖分子も、抗体の「抗原結合性部分」なる用語に包含されることが想定される。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技術を使用して得られ、当該断片は、未処理抗体と同様の方式においてスクリーニングされる。
【0047】
好ましくは、本発明の抗原結合性部分のCDRまたは抗原結合性部分の抗体全体は、マウス、ラマ、またはヒトドナーライブラリー由来であるかあるいは実質的にヒト起源であり、特定の抗体の特性、例えば、KD、koff、IC50、EC50、ED50などを最適化するためにある特定のアミノ酸残基が変更された、例えば、異なるアミノ酸残基で置換されている。好ましくは、本発明の抗体のフレームワーク領域は、ヒト起源であるかまたは実質的にヒト起源である(ヒト起源の少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%)。
【0048】
他の態様において、本発明の抗原結合性部分は、これらに限定されるわけではないが、マウス、ラマ、ウサギ、ラット、またはハムスターを含む、他の非ヒト種に由来していてもよい。あるいは、当該抗原結合性領域は、ヒト種に由来し得る。
【0049】
用語「可変ドメイン」は、当該可変ドメインのある特定の部分が、抗体の中の配列において大いに異なるという事実を意味する。Vドメインは、抗原結合を媒介し、それぞれの特定の抗体の、その特定の抗原に対する特異性を決定する。しかしながら、可変性は、当該可変ドメインの110アミノ酸長さにわたって均等に分布するわけではない。代わりに、V領域は、「超可変領域」と呼ばれる非常に高い可変性のより短い領域またはCDRによって分離された15~30のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる不変な断片からなる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、ループを形成する3つの超可変領域によって結合された、主にβシート構造をとる4つのFRを含み、それらは、βシート構造を接続し、場合によってβシート構造の一部を形成する。各鎖における超可変領域は、FRによって極めて接近して一緒に保持され、他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に貢献する。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接は関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への抗体の参加などを示す。
【0050】
用語「超可変領域」は、本明細書において使用される場合、抗原結合性を担う抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、一般的に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基ならびに/あるいは「超可変ループ」由来のそれらの残基を含む。
【0051】
ある特定の場合には、標的エピトープに対する結合親和性を向上させるために1つまたは複数のCDRアミノ酸残基を変更することも望ましくあり得る。これは、「親和性成熟化」として知られており、場合により、例えば、抗体のヒト化が結合特異性または結合親和性を減少させかつ復帰変異のみによって結合特異性または結合親和性を十分に向上させることができないような状況において、ヒト化に関連して実施され得る。例えば、Burksら, Proc Natl Acad Sci USA, 94:412~417 (1997)に記載のインビトロスキャニング飽和変異誘発法、およびWuら, Proc Natl Acad Sci USA 95:6037~6042 (1998)による段階的インビトロ親和性成熟法など、様々な親和性成熟法が当技術分野において既知である。
【0052】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、典型的には、FR1、FR2、FR3、およびFR4として同定されている4つのFRを有する。CDRが、Kabat則に従って定義される場合、軽鎖FR残基は、およそ残基1~23(LCFR1)、35~49(LCFR2)、57~88(LCFR3)、および98~107(LCFR4)に位置され、重鎖FR残基は、およそ当該重鎖における残基1~30(HCFR1)、36~49(HCFR2)、66~94(HCFR3)、および103~113(HCFR4)に位置される。CDRが超可変ループ由来のアミノ酸残基を含む場合、軽鎖FR残基は、およそ当該軽鎖における残基1~25(LCFR1)、33~49(LCFR2)、53~90(LCFR3)、および97~107(LCFR4)に位置され、重鎖FR残基は、およそ当該重鎖残基における残基1~25(HCFR1)、33~52(HCFR2)、56~95(HCFR3)、および102~113(HCFR4)に位置される。場合によって、CDRが、Kabat則によって定義されるCDRと、超可変ループのCDRの両方を含む場合、当該FR残基は、それに応じて調整されるであろう。例えば、CDRH1が、アミノ酸H26~H35を含む場合、重鎖FR1残基は、位置1~25に存し、FR2残基は位置36~49に存する。
【0053】
標的抗原に「結合する」本発明の抗体は、当該抗体が、当該抗原を発現するタンパク質または細胞を標的とする診断薬および/または治療薬として使用することができるような十分な親和性において当該抗原に結合することができ、他のタンパク質とわずかに交差反応する、抗体を意味する。分析方法:蛍光活性化セルソーティング(FACS)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはELISAにより、そのような態様において、非標的タンパク質に結合する抗体の割合は、特異的な標的タンパク質に結合する抗体の10%未満である。標的分子への抗体の結合に関して、「特異的結合」または「に特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に対して特異的である」なる用語は、非特異的相互作用とは顕著に(明らかに)異なる結合を意味する(例えば、bH1-44またはbH1-81の場合、非特異的相互作用は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ウシ胎仔血清、またはニュートラアビジンへの結合である)。
【0054】
特異的結合は、例えば、コントロール分子の結合と比較して分子の結合を決定することによって、測定することができる。例えば、特異的結合は、標的と同様なコントロール分子、例えば、過剰な非標識標的、との競合によって決定することができる。この場合、特異的結合は、プローブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に示される。本明細書において使用される場合、「特異的結合」または「に特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に対して特異的である」なる用語は、少なくとも約200nM、または少なくとも約150nM、または少なくとも約100nM、または少なくとも約60nM、または少なくとも約50nM、または少なくとも約40nM、または少なくとも約30nM、または少なくとも約20nM、または少なくとも約10nM、または少なくとも約8nM、または少なくとも約6nM、または少なくとも約4nM、または少なくとも約2nM、または少なくとも約1nM、またはそれ以上の、標的に対するKdを有する分子によって説明することができる。一態様において、用語「特異的結合」は、分子が、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合するような結合を意味する。
【0055】
用語「Ka」は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合率を意味することが意図され、その一方で、用語「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離率を意味することが意図される。
【0056】
「結合親和性」は、概して、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の総和の強度を意味する。特に明記されない限り、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する固有の(特徴的な、真の)結合親和性を意味する。結合パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に、解離定数(Kd)によって表すことができる。好ましいKd値は、約200nM、約150nM、約100nM、約60nM、約50nM、約40nM、約30nM、約20nM、約10nM、約8nM、約6nM、約4nM、約2nM、約1nM、またはそれ以下である。親和性は、本明細書において説明されるものを含む、当技術分野において既知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性の抗体は、一般的に、抗原にゆっくりと結合し、そして容易に解離する傾向にあり、その一方で、高親和性の抗体は、一般的に、抗原に迅速に結合し、そしてより長く結合したままでいる傾向にある。結合親和性を測定する様々な方法が、当技術分野において既知であり、そのいずれも、本発明の目的のために使用することができる。
【0057】
一態様において、「Kd」または「Kd値」は、約10応答単位(RU)において、固定化された抗原CM5チップを用い、25℃にて、BIAcore(商標)-2000またはBIAcore(商標)-3000(BIAcore, Inc.、ピスキャタウェイ、N.J.)を使用して、表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定される。簡潔には、カルボキシメチル化されたデキストランバイオセンサチップ(CM5、BIAcore Inc.)は、製造元の指示に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によって活性化される。抗原は、pH4.8の10mM酢酸ナトリウムによって、5μg/ml(約0.2μM)へと希釈され、次いで、結合されたタンパク質の約10応答単位(RU)を達成するために5μl/分の流量において注入される。抗原の注入に続いて、未反応の基をブロックするために、1Mエタノールアミン溶液が注入される。反応速度測定のために、Fabの2倍系列希釈(例えば、0.78nMから500nM)が、約25μl/分の流量において、25℃で、0.05%のTween 20(PBST)を伴うPBSに注入される。結合速度(on-rate)(kon)および解離速度(off-rate)(koff)は、会合および解離のセンソグラムを同時適合(simultaneous fitting)させることによって、単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIAcore Evaluation Software version 3.2)を用いて計算される。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比として計算される。例えば、Chen, Y.,ら, (1999) J. Mol. Biol. 293: 865~881を参照されたい。結合速度が、表面プラズモン共鳴アッセイによって106M-1s-1を超える場合、当該結合速度は、分光計、例えば、流れ停止を備えた分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌型キュベットを備えた8000シリーズのSLM-Aminco分光測定器(ThermoSpectronic)などにおいて測定される抗原の漸増濃度の存在下において、pH7.2のPBS中における20nM抗抗原抗体溶液(Fab形態)の25℃での蛍光放出強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域パス)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定することができる。
【0058】
用語「koff」は、結合性分子と抗原との間の特定の相互作用の解離速度定数を意味する。解離速度定数koffは、例えば、Octet(商標)システムを使用して、バイオレイヤ干渉法(bio-layer interferometry)を用いて測定することができる。
【0059】
本発明による「on-rate」または「kon」も、約10相対単位(応答単位、RU)において、固定化された抗原CM5チップを用い、25℃にて、BIAcore(商標)-2000またはBIAcore(商標)-3000(BIAcore、Inc.、ピスキャタウェイ、N.J.)を使用して、上記の表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定することができる。簡潔には、カルボキシメチル化されたデキストランバイオセンサチップ(CM5,BIAcore Inc.)は、製造元の指示に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によって活性化される。抗原は、pH4.8の10mM酢酸ナトリウムによって、5μg/ml(約0.2μM)へと希釈され、次いで、結合されたタンパク質の約10応答単位(RU)を達成するために5μl/分の流量において注入される。抗原の注入に続いて、未反応の基をブロックするために、1Mエタノールアミン溶液が注入される。
【0060】
特に明記されない限り、本発明のポリペプチドに関する「生物学的活性な」および「生物活性」および「生物学的特性」なる用語は、生物学的分子に結合する能力を有することを意味する。
【0061】
用語「生物学的分子」は、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、およびそれらの組合せを意味する。一態様において、当該生物学的分子は、天然に存在する。
抗体断片、例えば、FabおよびF(ab’)2断片などは、従来の技術、例えば、全抗体のパパインまたはペプシン消化などを用いて、全抗体から調製することができる。その上、抗体、その一部分、および免疫接着分子(immunoadhesion molecule)は、例えば、本明細書において説明されるような、標準的な組換えDNA技術を使用して調製することができる。
【0062】
用語「組換え抗体」は、抗体をコードするヌクレオチド配列を含む細胞または細胞株において発現される抗体を意味することが意図され、その場合、当該ヌクレオチド配列は、当該細胞に自然には関連しない。
【0063】
本明細書において使用される場合、用語「バリアント抗体」は、その「親」抗体の配列と比較した場合に1つまたは複数のアミノ酸残基の追加、欠失、および/または置換によって親抗体のアミノ酸配列とは異なっているアミノ酸配列を有する抗体を意味することが意図される。好ましい態様において、バリアント抗体は、少なくとも1つまたは複数(例えば、1から12、例えば、2、3、4、5、6、7、8または9、10、11、または12;いくつかの態様において、バリアント抗体は、1から約10を含む)のアミノ酸の追加、欠失、および/または置換を、親抗体と比較した場合に、含む。いくつかの態様において、そのような追加、欠失、および/または置換は、バリアント抗体のCDRにおいて為される。バリアント抗体の配列に関する同一性または相同性は、必要であれば配列同一性の最大パーセントを達成するために、配列を整列させた後またはギャップを導入した後での、親抗体残基と同一である、バリアント抗体配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして、本明細書において定義される。バリアント抗体は、親抗体が結合する同じ抗原、好ましくはエピトープに結合する能力を保持し;いくつかの態様では、少なくとも1つの特性または生物活性が、親抗体より優れている。例えば、バリアント抗体は、例えば、親抗体と比較した場合に、より強い結合親和性、より長い半減期、より低いIC50、または抗原の生物活性を阻害するより高められた能力を有し得る。本明細書における特に目的のバリアント抗体は、親抗体と比較した場合に、生物活性において少なくとも2倍(好ましくは、少なくとも5倍、10倍、または20倍)の増強を示すものである。
【0064】
用語「二重特異性抗体」は、単一の生物学的分子上の2つの異なるエピトープに特異的に結合することができる、または2つの異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することができる、抗原結合性ドメインを有する抗体を意味する。当該二重特異性抗体は、本明細書において、「二重特異性」を有する、または「二重特異性」抗体であるとも言及される。
【0065】
広義において、用語「キメラ抗体」は、ある抗体の1つまたは複数の領域と、1つまたは複数の他の抗体、典型的には、部分的ヒト抗体および部分的非ヒト抗体、すなわち、非ヒト動物、例えば、マウス、ラットなど、または寄生動物、またはラクダ科、例えば、ラマおよびアルパカなどに部分的に由来する抗体の1つまたは複数の領域とを含む抗体を意味することが意図される。概して、キメラ抗体は、ヒト抗抗体免疫反応、例えば、マウス抗体の場合におけるヒト抗マウス抗体免疫反応のリスクを減らすために、非ヒト抗体よりも好ましい。典型的なキメラ抗体の例は、可変領域配列がマウス配列であり、その一方で定常領域配列がヒト配列であるものである。キメラ抗体の場合、非ヒト部分は、当該抗体をヒト化するためにさらなる変更を施され得る。
【0066】
用語「ヒト化」は、抗体が完全または部分的非ヒト起源、例えば、マウスまたはラマをそれぞれ目的の抗原によって免疫化することによって得られたマウス抗体またはラマ抗体を有する場合、または抗体が、マウスまたはラマのそのような抗体をベースとするキメラ抗体である場合に、ヒトにおける免疫反応を避けるためまたは最小限に抑えるために、特にフレームワーク領域ならびに重鎖および軽鎖の定常ドメインにおけるある特定のアミノ酸を置換することが可能であるという事実を意味することが意図される。抗体は、6つの重鎖および軽鎖CDRに位置されたアミノ酸残基を介して、標的抗原と支配的に相互作用する。この理由により、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側と比べて、個々の抗体の間においてはるかに可変である。CDR配列は、ほとんどの抗体-抗原相互作用を担っているため、例えば、特異抗体からCDR配列を発現し、異なる抗体からフレームワーク配列を発現する発現ベクターを構築することによって、天然に存在する特異抗体、またはより一般的には、上記アミノ酸配列を有する任意の特異抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である。その結果、非ヒト抗体を「ヒト化すること」、および、かなりの程度まで、初期抗体の結合特異性および親和性を保存することが可能である。特定の抗体の免疫原性およびそれによるヒト抗抗体反応を正確に予測することは可能ではないが、非ヒト抗体は、典型的には、ヒト抗体よりもより免疫原性である。キメラ抗体は、外来(例えば、寄生動物またはラクダ科)の定常領域がヒト起源の配列によって置換されている場合、一般的に、完全な外来起源の抗体よりも免疫原性が少ないことが分かっており、治療抗体における傾向は、ヒト化抗体または完全ヒト抗体に向いている。したがって、キメラ抗体または非ヒト起源の他の抗体は、ヒト化することにより、ヒト抗抗体反応のリスクを減らすことができる。
【0067】
キメラ抗体の場合、ヒト化は、典型的には、可変領域配列のフレームワーク領域の変更を伴う。相補性決定領域(CDR)の一部であるアミノ酸残基は、大抵、ヒト化によって変更されないが、場合によっては、CDRの個々のアミノ酸残基を変更するために、例えば、グリコシル化部位、脱アミド処理部位、アスパラギン酸塩異性化部位、あるいは望ましくないシステイン残基またはメチオニン残基を欠失させるために、望ましくあり得る。N結合グリコシル化は、トリペプチド配列Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrのアスパラギン残基にオリゴ糖鎖を結合させることによって為され、この場合、Xは、Proを除く任意のアミノ酸であり得る。N-グリコシル化部位の除去は、好ましくは保存的置換により、異なる残基によってAsn残基またはSer/Thr残基のどちらかを変異させることによって達成され得る。アスパラギン残基およびグルタミン残基の脱アミド化は、pHおよび表面露出などの要因に応じて行うことができる。特に、アスパラギン残基は、主に配列Asn-Glyに存在する場合、脱アミド化を受けやすく、他のジペプチド配列、例えば、Asn-Alaなどにおいては、より少ない程度において脱アミド化を受ける。CDR配列がそのような脱アミド化部位、特にAsn-Glyを含む場合には、典型的には、関係する残基の1つを欠失させる保存的置換によって、この部位を除去することは望ましくあり得る。
【0068】
抗体配列のヒト化のための多くの方法が、当技術分野において既知である。一般的に使用される方法の1つは、CDR移植(CDR grafting)である。CDR移植は、KabatによるCDRの定義に基づき得るが、最新版(Magdelaine-Beuzelinら, Crit Rev.Oncol Hematol. 64:210~225 (2007))は、IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system(登録商標), www.imgt.org)定義が、ヒト化の結果を向上させ得ることを示唆する(Lefrancら, Dev. Comp Immunol. 27:55~77 (2003)を参照されたい)。場合によって、CDR移植は、CDRが得られる親抗体と比較して、CDR移植された非ヒト抗体の結合特異性および親和性を減少させ得、したがって、その生物活性を減少させ得る。復帰変異(場合によって、「フレームワーク領域修復(framework region repair)」と呼ばれる)は、親抗体の結合特異性および親和性を回復するために、CDR移植された抗体における選択された位置、典型的にはフレームワーク領域に導入され得る。可能な復帰変異のための位置の識別は、文献および抗体データベースにおいて入手可能な情報を使用して実施することができる。復帰変異のための候補であるアミノ酸残基は、典型的には、抗体分子の表面に位置されるものであり、その一方で、埋もれた残基または表面露出の程度が低い残基は、通常、変更されないであろう。CDR移植および復帰変異に対する代替のヒト化技術は、リサーフェイシングであり、これにおいて、非ヒト起源の非表面露出残基が維持されるが、表面残基はヒト残基へと変更される。
【0069】
完全ヒト抗体は、2つの技術:インビトロで収集されたファージライブラリーまたはインビボでのヒト化動物(ネズミ、ラットなど)の免疫化を使用して作り出すことができる。
【0070】
コンビナトリアルファージ抗体ライブラリーの構築は、いくつかの抗体ライブラリーのタイプが、ナイーブ、免疫、および合成のどれに区別できるかに応じて、遺伝子レパートリーの供給源の選択によって始まる。ナイーブおよび免疫ライブライは、それぞれ、健康なドナーまたはある特定の抗原によって免疫化されたドナーの可変免疫グロブリンドメインをコードする自然に再編成された遺伝子を使用して構築される。抗体産生リンパ様細胞株に由来するmRMAが、この目的のために単離される。主に、末梢血リンパ球が使用されるが、脾細胞も使用されている[Sheets MD, Amersdorfer P, Finnern R, Sargent P, Lindquist E, Schier R,ら. Efficient construction of a large nonimmune phage antibody library: the production of high-affinity human single-chain antibodies to protein antigens. Proc Natl Acad Sci U S A 1998,95:6157~6162、およびde Haard HJ, van Neer N, Reurs A, Hufton SE, Roovers RC, Henderikx P,ら. A large non-immunized human Fab fragment phage library that permits rapid isolation and kinetic analysis of high affinity antibodies. J Biol Chem 1999,274:18218~18230.]、клетки миндалин или лимфоциты костного мозга [Vaughan TJ, Williams AJ, Pritchard K, Osbourn JK, Pope AR, Earnshaw JC,ら. Human antibodies with sub-nanomolar affinities isolated from a large non-immunized phage display library. Nat Biotechnol 1996,14:309~314.]。次いで、mRNAに基づいてcDNAが合成され、オリゴdTプライマーおよび統計的に案出されたヘキサヌクレオチドの両方を使用することができ、それは、抗体の可変ドメインをコードする遺伝子の全ての可能なバリアントのcNDAコピーをもたらす[Ulitin AB, Kapralova MV, Laman AG, Shepelyakovskaya AO, Bulgakova EB, Fursova KK,ら The library of human miniantibodies in the phage display format: Designing and testing DAN: Izd-vo ”Nauka”; 2005.]。
【0071】
ここではcDNAレベルにおいて、増幅遺伝子の範囲を1つまたは複数の可変ドメイン遺伝子ファミリーまたは抗体アイソタイプに制限するために、1つまたは複数のプライマーを同時に使用することができる[Marks JD, Hoogenboom HR, Bonnert TP, McCafferty J, Griffiths AD, Winter G. Bypassing immunization. Human antibodies from V-gene libraries displayed on phage. J Mol Biol 1991,222:581~597]。免疫グロブリンをコードする遺伝子の増幅のために使用されるプライマーは、それらの最も保存的領域に対して相補的である。それらの配列は、KabatまたはV BASEデータベースなどのデータベースに編成される遺伝子コレクションから選択される。プライマー設計は、適切なベクターへのPCR産物のクローニングのための内部制限部位も提供する。
【0072】
合成ライブラリーの構成は、一連のランダム配列による天然CDRの置換に基づいている。この場合、非常に多様な抗原結合部位を生成することが可能である。
ファージディスプレイは、抗体の探求のための、最も強力で広く使用されているインビトロ技術の1つである。1985年、Smithは、外来DNA配列を、糸状性バクテリオファージM13中にクローニングすることができること、およびそのようなクローン配列を、融合タンパク質としてファージ粒子の表面に発現させることができることを見出した(Smith GP: Filamentous fusion phage: novel expression vectors that display cloned antigens on the virion surface. Science 1985, 228:1315~1317.)。したがって、他のタンパク質に結合するそれらの能力に基づいて、目的の融合タンパク質を選択することが可能である。この発見は、PCR増幅法と組み合わされ、標的特異的モノクローナル抗体を迅速に探し出すために使用することができる可変ドメインを含む様々なファージライブラリーを作り出すために免疫グロブリン遺伝子のcDNAレパートリーをクローニングすることを可能にした。ファージライブラリーレパートリーは、ライブラリーを作製するためにその血液が使用されたそれぞれのヒトまたは動物のB細胞抗体のレパートリーを反映する。1995年、2つの論文によって、完全ヒト抗体を発現することができる遺伝子操作されたマウスの産生について報告され、当該抗体のレパートリーは、ハイブリドーマ技術によって得られるものに匹敵する(Lonberg N, Taylor LD, Harding FA, Trounstine M, Higgins KM, Schramm SR, Kuo CC, Mashayekh R, Wymore K, McCabe JGら: Antigen-specific human antibodies from mice comprising four distinct genetic modifications. Nature 1994, 368:856~859)。これらの動物において、それら自身の内因性免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖遺伝子が故意に破壊され、その後、ヒト重鎖およびκ軽鎖遺伝子のセグメントである導入遺伝子が導入された。ヒト遺伝子レパートリーは、より様々な抗原に対する高特異性および高親和性の抗体を産生するために、マウス免疫系によって使用することができるということが判明した。トランスジェニックマウスが、本質的に、マウスおよびヒト成分(ヒト免疫グロブリン、マウスIgα、Igβ、および他のシグナル伝達分子)のハイブリッドであるB細胞受容体を発現するという事実にもかかわらず、それらのB細胞は、正常に成長し成熟する。
【0073】
ある特定の場合には、標的エピトープに対する結合親和性を向上させるために1つまたは複数のCDRアミノ酸残基を変更することも望ましくあり得る。これは、「親和性成熟化」として知られており、場合により、例えば、抗体のヒト化が結合特異性または結合親和性を減少させかつ復帰変異のみによって結合特異性または結合親和性を十分に向上させることができないような状況において、ヒト化に関連して実施され得る。例えば、Burksら, Proc Natl Acad Sci USA、94:412~417(1997)に記載のインビトロスキャニング飽和変異誘発法、およびWuら, Proc Natl Acad Sci USA 95:6037~6042(1998)による段階的インビトロ親和性成熟法など、様々な親和性成熟法が当技術分野において既知である。
【0074】
用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、細胞の別々のクローン集団によって合成されて単離された抗体を意味する。当該クローン集団は、不死化細胞のクローン集団であり得る。いくつかの態様において、クローン集団における当該不死化細胞は、典型的にはリンパ性腫瘍由来の個別細胞との免疫動物由来の個別のBリンパ球の融合によって産生される、ハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)である。ハイブリドーマは、構築された細胞のタイプであり、天然には存在しない。
【0075】
「自然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖とで構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結されており、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖によって異なる。各重鎖および軽鎖も、規則的に離間された鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、いくつかの定常ドメインによって後続される可変ドメイン(VH)を片端に有する。各軽鎖は、片端(VL)に可変ドメインを有し、他方の片端に定常ドメインを有する。軽鎖の当該定常ドメインは、重鎖の第一定常ドメインに揃えられており、当該軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインに揃えられている。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖の可変ドメインの間の相互作用を形成すると考えられる。
【0076】
この説明において様々な抗体について説明するために使用される用語「単離された」は、同定され、当該抗体が発現される細胞または細胞培養物から分離および/または再生された抗体を意味する。その自然環境に由来する不純物(汚染成分)は、ポリペプチドの診断用途または治療用途を妨げるであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい態様において、抗体は、(1)スピンニングカップシークェネータ(spinning cup sequenator)(Edmanシークェネータ)の使用によってN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに十分な程度に、または、(2)クーマシーブリリアントブルー、好ましくは銀染色を使用する、非還元条件下または還元条件下でのSDS-PAGEで均質になるまで、精製される。ポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの構成要素は存在しないであろうために、単離された抗体は、遺伝子組換え細胞内でのインサイチューにおいて抗体を含む。単離されたポリペプチドは、典型的には、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0077】
「単離された」核酸分子は同定され、それが抗体核酸の天然源において結合している少なくとも1種の核酸分子-不純物から分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、自然条件下において見出される形態またはセットとは異なっている。したがって、単離された核酸分子は、自然条件下において細胞内に存在する核酸分子とは異なっている。しかしながら、例えば、核酸分子が、自然条件下における細胞内でのその位置とは異なっている染色体局在化を有する場合、単離された核酸分子は、抗体が正常に発現される細胞内に位置された核酸分子を含む。
【0078】
用語「エピトープ」は、本明細書において使用される場合、結合性分子(例えば、抗体または関連する分子、例えば、二重特異性結合性分子など)に特異的に結合する抗原の一部(決定基)を意味することが意図される。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または炭水化物または砂糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、典型的には、特異的な三次元構造特性、ならびに特異的な電荷特性を含む。エピトープは、「直鎖状」または「立体配座的」のどちらかであり得る。直鎖状のエピトープにおいて、タンパク質(例えば、抗原)と相互作用性分子(例えば、抗体)との間の相互作用の全ての位置は、当該タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に生じる。立体配座的エピトープの場合、相互作用の位置は、当該一次アミノ酸配列においてお互いに分離された当該タンパク質上のアミノ酸残基全域に生じる。抗原の所望のエピトープが決定されると、当技術分野において周知の技術を使用して、そのエピトープに対する抗体を作り出すことが可能である。さらに、抗体または他の結合性分子の作製およびキャラクタリゼーションは、望ましいエピトープについての情報を解明し得る。この情報から、例えば、当該抗原への結合に対してお互いに競合する結合性分子を見出すための競合研究を行うことによって、そのエピトープまたは同一のエピトープに結合するための抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。
【0079】
用語「ペプチドリンカ」は、本明細書において使用される場合、お互いを結合するドメインの応じた長さにおいてドメインを組み合わせる能力を有し、任意のアミノ酸配列を含む、任意のペプチドを意味することが意図される。好ましくは、当該ペプチドリンカは、5を超えるアミノ酸の長さを有し、G、A、S、P、E、T、D、Kから選択されるアミノ酸の任意のセットからなる。
【0080】
用語「インビトロ」は、人工条件下における体外での生物学的存在、生物学的プロセス、または生物学的反応を意味する。例えば、インビトロで増殖された細胞は、体外の環境、例えば、試験管、培養バイアル瓶、またはマイクロタイタプレートなどにおいて増殖された細胞として理解される。
【0081】
用語「IC50」(50%阻害濃度)は、薬物濃度を意味し、生物学的プロセスを50%まで阻害するために必要な阻害剤の量を示す。IC50値は、曲線近似のための専用の統計ソフトウェアを使用して、適切な用量応答曲線を使用することにより計算することができる。
【0082】
用語「ED50」(EC50)(50%有効用量/濃度)は、50%生物学的効果(細胞傷害性を含み得る)を生じるための薬物濃度を意味する。
抗体「エフェクター機能」なる用語は、抗体アイソタイプによって変わる抗体のFc領域(天然Fc領域配列またはFc領域アミノ酸バリアント)に起因する生物活性を意味する。抗体エフェクター機能の例としては、Clq結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介型細胞傷害(ADCC);食作用;
細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節、およびB細胞活性化が挙げられる。
【0083】
「抗体依存性細胞傷害」または「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、標的細胞上の結合した抗体を認識し、その後に当該標的細胞の溶解または食作用を生じる、免疫応答性エフェクター細胞媒介性(Tキラー、ナチュラルキラーなど)の応答を意味する。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞は、FcγRJIIのみを発現し、その一方で、単核細胞は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。 造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9: 457~92 (1991)の第464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCCアッセイ、例えば、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイにとって有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。択一的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボにおいて、例えば、Clynesら PNAS (USA) 95: 652~656 (1998)において開示されるような動物モデルにおいて、評価され得る。
【0084】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つまたは複数のFc受容体を発現し、エフェクター機能を実施する白血球である。好ましくは、当該細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単核細胞、細胞傷害性T細胞、および好中球が挙げられ;PBMCおよびNK細胞は好ましい。当該エフェクター細胞は、その天然源、例えば、本明細書において説明されるような血液またはPBMCなどから単離され得る。
【0085】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために使用される。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。その上、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するものであり(ガンマ受容体)、これらの受容体の対立遺伝子変異型および選択的にスプライシングされた形態を含む、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、それらは、主にそれらの細胞質ドメインにおいて異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容阻害性チロシンモチーフ((ITIM)を含む(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15: 203~234 (1997)の概説を参照されたい)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9: 457~92 (1991)において概説されている。将来に識別されるものを含め、他のFcRは、本明細書において用語「FcR」によって包含される。当該用語は、胎児への母体IgGの移動を担う新生児型受容体FcRnも含む。
【0086】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下において標的を溶解する、分子の能力を意味する。補体活性化経路は、同種抗原と複合体化された分子(例えば、抗体)への補体系(C1q)の第一成分の結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoroら, J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されるような、CDCアッセイが実施され得る。
【0087】
用語「同一性」または「相同性」は、必要であれば配列全体に対して最大パーセントの同一性を達成するために、配列を整列させてギャップを導入した後の、比較される対応する配列の残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージを意味すると解釈され、いずれの保存的置換も、配列同一性の一部として見なされない。N末端またはC末端の延長も挿入も、同一性または相同性を減少させると解釈されるであろう。当該整列のための方法およびコンピュータプログラムは、当技術分野において周知である。配列同一性は、配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package、Genetics Computer Group、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーーセンター、1710 University Ave.、Madison、WI 53705)を使用して測定され得る。このソフトウェアは、様々な置換、欠失(排除)、および他の修飾に対する相同性の程度を割り当てることによって類似する配列をマッチングする。
【0088】
抗体のポリペプチド配列に関する用語「相同の」は、ポリペプチド配列に対して少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、および最も好ましくは95%の配列同一性を示す抗体として解釈されるべきである。
核酸配列に関連する用語は、核酸配列に対して少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列として解釈されるべきである。
【0089】
本明細書において説明される抗体のアミノ酸配列の修飾が提供される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を向上させることは望ましくあり得る。抗体のアミノ酸配列バリアントは、当該抗体核酸中に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内における残基の欠失および/または挿入および/または置換が挙げられる。最終構築物が所望の特性を有する限り、当該最終構築物を得るために、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが為される。当該アミノ酸変化は、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変更するなど、抗体における翻訳後プロセスも変え得る。
【0090】
アミノ酸置換を使用した抗体のアミノ酸配列の修飾のバリアント。そのようなバリアントは、異なる残基による抗体分子における少なくとも1つのアミノ酸残基の置換である。置換型変異誘発のための最大目的の部位としては、超可変領域またはCDRが挙げられるが、FRまたはFc変更も想到される。「好ましい置換」の下における保存的置換が表1に示されるそのような置換が、生物活性の変更を引き起こす場合、表Aに示された「例示的置換」として表される、さらなる大きな変化を為すことができ、あるいは、アミノ酸のクラスを説明するときに以下においてより詳細に説明される変更、および生成物スクリーニングも、実施してもよい。
【0091】
【0092】
本説明において相互互換的に使用される「核酸」、「核配列」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、および「ヌクレオチド配列」なる用語は、修飾されるかまたは修飾されていない、核酸の断片または領域を決定する、非天然ヌクレオチドを含むかまたは含まない、二本鎖DNAもしくはRNA、一本鎖DNAもしくはRNA、または当該DNAの転写産物のいずれかである、ヌクレオチドの正確な配列を意味する。
【0093】
本発明は、天然染色体環境における、すなわち、自然な状態で、ヌクレオチド配列に関するものではないことも、ここに記載する。本発明の配列は、単離および/または精製されており、すなわち、それらは、例えば、コピーによって、直接的または間接的にサンプリングされており、それらの環境は、少なくとも部分的に変更されている。したがって、組換え遺伝子学によって得られるか、例えば、宿主細胞の手段によって得られるか、または化学合成によって得られる、単離された核酸についても、以下において言及されるべきである。
【0094】
ヌクレオチド配列に対する言及は、特に明記されない限り、その補体を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸に対する言及は、その相補的配列を有する相補鎖を包含するものとして理解されるべきである。
【0095】
用語「制御配列」は、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物にとって好適である制御配列は、例えば、プロモーター、場合によりオペレータ配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0096】
核酸は、別の核酸配列との機能的関係に置かれた場合、「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列または分泌リーダー配列のDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、当該ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、当該コード配列に作動可能に連結され;リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、「作動可能に連結される」は、連結されているDNA配列が、隣接しており、分泌リーダーの場合には、隣接し、リーディングフェーズ(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要はない。
【0097】
用語「ベクター」は、本明細書において説明される場合、連結されている別の核酸を移動させることができる核酸分子を意味する。いくつかの態様において、ベクターは、プラスミド、すなわち、中に追加のDNAセグメントがライゲートされ得る円形二本鎖DNA断片である。いくつかの態様において、ベクターは、ウイルスベクターであり、その場合、追加のDNAセグメントは、当該ウイルスゲノム中にライゲートされ得る。いくつかの態様において、ベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製することができる(例えば、複製の細菌性起源部位を有する細菌性ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。さらなる態様において、ベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中へと統合することができ、それにより、宿主遺伝子と共に複製される。その上、ある特定のベクターは、それらが作動的に連結される遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に、「発現ベクター」)と呼ばれる。
【0098】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書において使用される場合、組換え発現ベクターが導入されている細胞を意味することが意図される。本発明は、例えば、上記において説明した本発明によるベクターなどを含み得る宿主細胞に関する。本発明は、例えば、本発明の結合性分子の第一結合性ドメインおよび/または第二結合性ドメインの、重鎖またはその抗原結合性部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖をコードするヌクレオチド配列またはその抗原結合性部分、あるいはその両方を含む宿主細胞にも関する。「組換え宿主細胞」および「宿主細胞」は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代も意味することが意図されることは理解されるべきである。変異または環境による影響のどちらかに起因して、修飾が後続の世代において生じる場合があるため、実際に、そのような後代は、親細胞と同一ではないかもしれないが、そのような細胞は、依然として、本明細書において使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0099】
用語「賦形剤」は、本発明の化合物以外の任意の成分を説明するために、本明細書において使用される。
「医薬組成物」は、本発明の抗体と、薬学的に許容される、および薬学的互換性の、充填剤、溶媒、希釈剤、担体、助剤、分配剤および検知剤、送達剤、例えば、防腐剤、安定化剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、甘味料、風味剤、着香剤、抗菌剤、防カビ剤、潤滑剤、および持続的送達制御剤などを含む群から選択される成分のうちの少なくとも1つとを含む組成物を意味し、それらの選択および好適な比率は、投与のタイプおよび方法ならびに投与量に依存する。好適な懸濁剤の例は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエテン、ソルビトールおよびソルビトールエーテル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにそれらの混合物である。微生物の作用に対する防御は、様々な抗菌剤および防カビ剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸、および同様の化合物などによって提供することができる。組成物は、等張剤、例えば、砂糖、ポリオール、塩化ナトリウムなども含有し得る。組成物の持続的作用は、有効成分の吸収を減速させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどによって達成され得る。好適な担体、溶媒、希釈剤、および送達剤の例としては、注射用の、水、エタノール、多価アルコール、およびそれらの混合物、天然油(例えば、オリーブ油)、および有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。充填剤の例は、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどである。崩壊剤および分配剤の例は、デンプン、アルギン酸およびその塩、ケイ酸塩である。好適な潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、および高分子量のポリエチレングリコールである。単独でのまたは別の活性化合物との組合せにおける有効成分の、経口、舌下、経皮、眼内、筋肉内、静脈内、皮下、局所、または直腸投与のための医薬組成物は、従来の医薬担体との混合物において、標準的投与形態でヒトまたは動物に投与され得る。好適な標準的投与形態としては、経口形態、例えば、錠剤、ゼラチンカプセル剤、丸剤、粉末剤、粒剤、チューイングガム、および経口用溶液剤もしくは懸濁剤など;舌下および経口腔投与形態;エアゾール剤;移植;局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内、または眼内形態、および直腸投与形態が挙げられる。
【0100】
「医薬品」は、ヒトおよび動物における生理機能の修復、改善、または変更のため、疾患の治療および予防のため、診断、麻酔、避妊、美容術、および他のもののための、錠剤、カプセル剤、溶液剤、軟膏剤、および他のすぐに使える形態の化合物(または医薬組成物のような化合物の混合物)である。
【0101】
用語「IL-5とその細胞受容体との間の相互作用によって媒介される疾患または障害」は、疾患または障害の病因、発症、進行、持続、病理を含む、IL-5およびIL-5Rに直接的または間接的に関連する任意の疾患または障害を意味する。「治療する」、「治療すること」、および「治療」は、生物学的障害および/またはそれに伴う症状の少なくとも1つを軽減または排除する方法を意味する。本明細書において使用される場合、疾患、障害、または状態を「軽減する」ことは、疾患、障害、または状態の症状の重篤度および/または発生頻度を減少させることを意味する。さらに、「治療」に対する本明細書における言及は、治癒的治療、緩和的治療、および予防的治療に対する言及を含む。
【0102】
一側面において、治療の対象、または患者は、哺乳動物、好ましくはヒト対象である。当該対象は、任意の年齢の雄または雌のどちらかであり得る。
用語「障害」は、本発明の化合物による治療から恩恵を受けるであろう任意の状態を意味する。これは、哺乳動物を関心対象の当該障害にする病的状態を含む、慢性および急性の障害または疾患を含む。本明細書における、治療されるのに好ましい障害は、自己免疫疾患である。
【0103】
用語「免疫反応」、「自己免疫反応」、および「自己免疫性炎症」は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記細胞または肝細胞によって産生される可溶性巨大分子(侵襲性病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌細胞の、あるいは自己免疫または病理学的炎症の場合には、ヒト体内由来の正常細胞または組織の、選択性損傷、破壊、または排除の結果として生じる抗体、サイトカイン、および補体を含む)の作用を意味する。
【0104】
用語「自己免疫疾患」は、本明細書において使用される場合、個体の自身の(自己)抗原および/または組織から生じ、およびそれに対する、非悪性疾患または障害を意味する。
【0105】
当該用語は、これらに限定されるわけではないが、関節リウマチ、変形性関節症、若年性慢性関節炎、敗血症性関節炎、ライム関節症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、強皮症、反応「移植片対宿主」、移植臓器拒絶、移植に関連する急性または慢性免疫疾患、サルコイドージス、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、へノッホ・シェーンライン紫斑病、顕微鏡性腎血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎(uvenita)、敗血症性ショック、毒素ショック症候群、敗血症候群、悪液質、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチングトン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマ病患者、卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、限局性脱毛症、血清反応陰性関節炎、関節症、ライター病、潰瘍性大腸炎に関連する乾癬性関節症、関節症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、シート状天疱瘡、類天疱瘡の疾病、線形IgA、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶性血貧血、悪性貧血、若年性悪性貧血、関節炎、原発性硬化性A型肝炎、特発性自己免疫性肝炎、線維症肺疾患、特発性線維症肺胞隔炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺臓炎、慢性好酸性肺炎、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性肝I型(古典的な自己免疫性肝炎か類狼瘡)、自己免疫性肝炎II型、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、乾癬I型、乾癬II型、特発性白血球減少症、自己免液性好中球減少症、腎NOS疾患、糸球体腎炎、顕微鏡性腎血管炎、円板状エリテマトーデス、特発性またはNOS雄性不妊症、精子に対する自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織疾患に続発する肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、強直性脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/血管炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進、甲状腺腫自己免疫性甲状腺不全(橋本病)、自己免疫萎縮性甲状腺不全、原発性粘液浮腫、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性脈管炎、白斑、急性肝臓疾患、慢性肝炎、アレルギー、喘息、精神障害(鬱病および統合失調症を含む)、Th2型/Th1型媒介性疾患、結膜炎、アレルギー接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、α1アンチトリプシン欠損症、筋委縮性側索硬化症、貧血、嚢胞性繊維症、サイトカイン療法に関連する障害、脱髄性疾患、皮膚炎、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血再灌流障害、虚血性脳卒中、若年性リウマチ性関節炎、自己免疫性腸疾患、自己免疫性難聴、自己免疫性リンパ球増殖症候群、自己免疫性心筋炎、自己免疫性早期卵巣機能不全、および眼瞼炎を包含する。当該抗体は、上記の障害の任意の組合せも治療することができる。
【0106】
「治療有効量」は、治療される障害の症状の1つまたは複数をある程度まで軽減するであろう、投与される治療薬の量を意味することが意図される。
用語「慢性」使用は、長期間にわたって初期治療効果(活性)を持続するための、投与の急性(短期)経路とは対照的な、薬剤の継続的な(不断の)使用を意味する。
【0107】
「断続的」使用は、中断なく一貫して行われるわけではないが、本質的にかなり周期的である治療を意味する。
本明細書において使用される場合、語句「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含む(include)」、または「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(includes)」、または「含むこと(including)」などの変形、ならびにそれらの文法的な全ての変形は、述べられる整数または整数の群を包含するが、任意の他の整数または整数の群を排除しないことを含意すると理解されるであろう。
発明の詳細な説明
抗体
本発明は、IL-5Rαに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片に関する。
【0108】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)に対して少なくとも80%、85%、または92%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR3(すなわち、CDR3は、配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)、または1つもしくは2つの置換を有する配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)である)を含む重鎖可変領域と、
(b)配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)に対して少なくとも80%、83%、または91%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR3(すなわち、CDR3は、配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)、または1つもしくは2つの置換を有する配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)である)を含む軽鎖可変領域と
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0109】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)を含むCDR3を含む重鎖可変領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0110】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0111】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)アミノ酸配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)を含むCDR3を含む重鎖可変領域と、
(b)アミノ酸配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0112】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)以下:
(i)配列NYAMS(配列番号1)に対して少なくとも80%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR1(すなわち、CDR1は、配列NYAMS(配列番号1)、または1つの置換を有する配列NYAMS(配列番号1)である)と、
(ii)配列AINSGGKSTNYADSVKG(配列番号2)に対して少なくとも80%、88%、または94%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR2(すなわち、CDR2は、配列AINSGGKSTNYADSVKG(配列番号2)、または1つもしくは2つの置換を有する配列AINSGGKSTNYADSVKG(配列番号2)である)と、
(iii)配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)に対して少なくとも80%、85%、または92%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR3(すなわち、CDR3は、配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)、または1つもしくは2つの置換を有する配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)である)と
を含む重鎖可変領域、
および/または
(b)以下:
(i)配列SGSRSNIGSGYDVH(配列番号6)に対して少なくとも80%、85%、または92%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR1(すなわち、CDR1は、配列SGSRSNIGSGYDVH(配列番号6)、または1つもしくは2つの置換を有する配列SGSRSNIGSGYDVH(配列番号6)である)と、
(ii)配列DDNNRPS(配列番号7)に対して少なくとも80%または85%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR2(すなわち、CDR2は、配列DDNNRPS(配列番号7)、または1つの置換を有する配列DDNNRPS(配列番号7)である)と、
(iii)配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)に対して少なくとも80%、83%、または91%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含むCDR3(すなわち、CDR3は、配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)、または1つもしくは2つの置換を有する配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)である)と
を含む軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0113】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)以下:
(i)アミノ酸配列NYAMS(配列番号1)を含むCDR1と、
(ii)アミノ酸配列AINSGGKSTNYADSVKG(配列番号2)を含むCDR2と、
(iii)アミノ酸配列DYATNYGVPYFGS(配列番号3)を含むCDR3と
を含む重鎖可変領域、および/または
(b)以下:
(i)アミノ酸配列SGSRSNIGSGYDVH(配列番号6)を含むCDR1と、
(ii)アミノ酸配列DDNNRPS(配列番号7)を含むCDR2と、
(iii)アミノ酸配列QSYDSSLSGHVV(配列番号8)を含むCDR3と
を含む軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0114】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)群:
【0115】
【0116】
から選択される配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または、
(b)群:
【0117】
【0118】
から選択される配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0119】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)群:
【0120】
【0121】
から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または、
(b)群:
【0122】
【0123】
から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)群:
【0124】
【0125】
から選択される配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含む重鎖、および/または、
(b)配列
【0126】
【0127】
に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0128】
一態様において、本発明は、IL-5Rαに特異的に結合し、
(a)群:
【0129】
【0130】
から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖、および/または、
(b)アミノ酸配列
【0131】
【0132】
を含む軽鎖
を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。
一態様において、IL-5Rαに特異的に結合する上記単離された抗体は、モノクローナル抗体である。
【0133】
一態様において、IL-5Rαに特異的に結合する上記モノクローナル抗体は、完全長IgG抗体である。
一態様において、IL-5Rαに特異的に結合する上記完全長IgG抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの抗体である。
【0134】
一態様において、IL-5Rαに特異的に結合する上記完全長IgG抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの抗体である。
一態様において、上記単離された抗体は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列QVTLKESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVSAINSGGKSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCADYATNYGVPYFGSWGQGTTVTVSSを含む重鎖可変断片と、アミノ酸配列QAGLTQPPSVSAAPGQRVTISCSGSRSNIGSGYDVHWYQQVPGTAPKLLIFDDNNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDSSLSGHVVFGGGTKLTVLを含む軽鎖可変断片とを含む抗体BCD133-03-002である。
【0135】
一態様において、上記単離された抗体は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列QVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVSAINSGGKSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCADYATNYGVPYFGSWGQGTMVTVSSを含む重鎖可変断片と、アミノ酸配列QAGLTQPPSVSAAPGQRVTISCSGSRSNIGSGYDVHWYQQVPGTAPKLLIFDDNNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDSSLSGHVVFGGGTKLTVLを含む軽鎖可変断片とを含む抗体BCD133-03-020である。
【0136】
一態様において、上記単離された抗体は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列QVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVSAINSGGKSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCADYATNYGVPYFGSWGQGTMVTVSSを含む重鎖可変断片と、アミノ酸配列QSVLTQPPSVSAAPGQRVTISCSGSRSNIGSGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYDDNNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDSSLSGHVVFGGGTKLTVL
を含む軽鎖可変断片とを含む抗体BCD133-03-021である。
【0137】
一態様において、上記単離された抗体は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列
【0138】
【0139】
を含む重鎖可変断片と、アミノ酸配列
【0140】
【0141】
を含む軽鎖可変断片と
を含む抗体BCD133-03-002である。
一態様において、上記単離された抗体は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列
【0142】
【0143】
を含む重鎖と、アミノ酸配列
【0144】
【0145】
を含む軽鎖とを含む抗体BCD133-03-020である。
一態様において、上記単離された抗体は、IL-5Rαに特異的に結合し、アミノ酸配列
【0146】
【0147】
を含む重鎖と、アミノ酸配列
【0148】
【0149】
を含む軽鎖とを含む抗体BCD133-03-021である。
核酸分子
本発明は、核酸分子、特に、本発明のIL-5Rα(インターロイキン5受容体α鎖)に対する抗体をコードする配列、またはその断片のいずれか、ならびに、本明細書において説明される、それらの様々な組合せであって、場合により、任意のペプチドリンカ配列を含み、それらによって結合される、組合せにも関する。
【0150】
ヌクレオチド配列に対する言及は、特に明記されない限り、その補体を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸に対する言及は、その相補的配列を有する相補鎖を包含するものとして理解されるべきである。用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において使用される場合、少なくとも10塩基長のヌクレオチドか、またはリボヌクレオチド、またはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態のいずれかの重合形態を意味する。当該用語は、一本鎖形態および二本鎖形態を包含する。
【0151】
本発明は、上記ヌクレオチド配列または配列番号1~3、6~8からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の1つまたは複数に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一であるヌクレオチド配列にも関する。ある特定の態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号4~5、9~10のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一である。本発明は、上記ヌクレオチドまたは配列番号11~14からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の1つまたは複数に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一であるヌクレオチド配列にも関する。
【0152】
一側面において、本発明は、配列番号1~14から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。核酸分子は、上記ヌクレオチド配列の任意の組合せも含むことができる。一態様において、核酸分子は、配列番号3をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号8をコードするヌクレオチド配列を含む。一態様において、核酸分子は、配列番号1~3をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号6~8をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号4または5をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号9または10をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号4または5をコードするヌクレオチド配列と、配列番号9または10をコードするヌクレオチド配列とを含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号11または12をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号13または14をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号11または12をコードするヌクレオチド配列と、配列番号13または14をコードするヌクレオチド配列とを含む。
【0153】
一側面において、本発明は、重鎖をコードし、群:
【0154】
【0155】
から選択される配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一であるヌクレオチド配列を含む、核酸分子に関する。
【0156】
一側面において、本発明は、重鎖をコードし、群:
【0157】
【0158】
から選択されるヌクレオチド配列を含む、核酸分子に関する。
一側面において、本発明は、軽鎖をコードし、群:
【0159】
【0160】
から選択される配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であるかまたは同一であるヌクレオチド配列を含む、核酸分子に関する。
【0161】
一側面において、本発明は、軽鎖をコードし、群:
【0162】
【0163】
から選択されるヌクレオチド配列を含む、核酸分子に関する。
一側面において、本発明は、上記の核酸配列の任意の組合せを含む核酸分子に関する。
上記の態様のいずれかにおいて、核酸分子は単離することができる。
【0164】
本発明の核酸分子は、抗IL-5Rα抗体またはその一部を生じる任意の供給源から単離することができる。ある特定の態様において、本発明の核酸分子は、単離するのではなく、合成することができる。
【0165】
いくつかの態様において、本発明の核酸分子は、任意の供給源からの重鎖定常ドメインをコードするヌクレオチド配列にインフレームにおいて連結された、本発明の抗体の第一または第二ドメイン由来のVHドメインをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。同様に、本発明の核酸分子は、任意の供給源からの軽鎖定常ドメインをコードするヌクレオチド配列にインフレームにおいて連結された、本発明の抗体の第一または第二ドメイン由来のVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。
【0166】
本発明のさらなる側面において、第一または第二結合性ドメインの重鎖(VH)および/または軽鎖(VL)の可変ドメインをコードする核酸分子は、抗体遺伝子の長さ全体において「変換」され得る。一態様において、VHまたはVLドメインをコードする核酸分子は、それぞれ、重鎖定常(CH)ドメインまたは軽鎖定常(CL)ドメインを既にコードする発現ベクター中への挿入によって、長さ全体において抗体遺伝子に変換され、それぞれ、当該VHセグメントは、当該ベクター内の当該CHセグメントに作動的に連結され、および/またはVLセグメントは、当該ベクター内のCLセグメントに作動的に連結される。別の態様において、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子は、標準的分子生物学的技術を使用して、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子をCHおよび/またはCLドメインをコードする核酸分子に連結させること、例えば、ライゲートすることによって、長さ全体において抗体遺伝子へと変換される。長さ全体において重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子は、それらが導入された細胞から発現され得る。
【0167】
核酸分子は、大量の組換え抗IL-5Rα抗体を発現するために使用され得る。核酸分子は、本明細書において説明されるような、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、イムノアドヘシン、ダイアボディ、変異抗体、および抗体誘導体を製造するためにも使用され得る。
【0168】
ベクター
別の側面において、本発明は、本明細書において説明されるヌクレオチド配列にいずれかの発現にとって好適なベクターに関する。
【0169】
本発明は、本明細書において説明されるような、抗IL-5Rα抗体またはその一部(例えば、第一結合性ドメインの重鎖および/または軽鎖配列、ならびに/あるいは第二結合性ドメインの重鎖および/または軽鎖配列)のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を含むベクターに関する。本発明はさらに、融合タンパク質、修飾抗体、抗体断片をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。
【0170】
別の態様において、核酸分子およびベクターは、変異抗IL-5Rα抗体を作製するために使用され得る。抗体は、例えば、抗IL-5Rα抗体の結合特性を変えるために、第一結合性ドメインの重鎖および/または軽鎖ならびに/あるいは第二結合性ドメインの重鎖および/または軽鎖の可変ドメインにおいて変異され得る。例えば、変異は、抗体のKDを増加または減少させるため、koffを増加または減少させるため、またはIL-5Rαに関する抗体の結合特異性を変更するために、1つまたは複数のCDRにおいて為され得る。別の態様において、1つまたは複数の変異が、本発明の抗IL-5Rα抗体の第一または第二結合性ドメインのアミノ酸残基において為される。そのような変異は、可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域において、または定常ドメインにおいて為され得る。好ましい態様において、変異は、可変ドメインにおいて為される。別の態様において、1つまたは複数の変異が、本発明の抗体の可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域における生殖細胞系(germinal line)と比較して変化されることが知られているアミノ酸残基において為される。
【0171】
いくつかの態様において、本発明の抗IL-5Rα抗体は、遺伝子が、必要な発現制御配列、例えば、転写制御配列および翻訳制御配列などに作動的に連結されているような発現ベクターにおいて、上記において説明されるように得られた、第一または第二結合性ドメインの配列(例えば、結合性ドメインが軽鎖および重鎖配列を含む場合の軽鎖および重鎖配列)を部分的にまたは完全にコードするDNAを挿入することによって発現される。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えば、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスなど、コスミド、YAC、EBV誘導エピソームなどが挙げられる。DNA分子は、ベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列が、当該DNAの転写および翻訳を調節するそれらの意図された機能に役立つように、当該ベクター内にライゲートされ得る。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択され得る。第一または第二結合性ドメインの配列の配列(例えば、結合性ドメインが重鎖および軽鎖配列を含む場合の重鎖および軽鎖配列)を部分的にまたは完全にコードするDNA分子は、個々のベクター内に導入することができる。一態様において、当該DNA分子の任意の組合せが、同じ発現ベクター中に導入される。DNA分子は、標準的方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上への相補制限部位のライゲーション、または、制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)によって発現ベクター内に導入することができる。
【0172】
好適なベクターは、上記において説明されるような、いずれかのVHまたはVL配列を容易に挿入および発現させることができるように操作された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターにおけるHCコード遺伝子およびLCコード遺伝子は、対応するmRNAを安定化することによって、結果として、高められた抗体タンパク質全体の収率を生じる、イントロン配列を含有し得る。当該イントロン配列は、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位によって隣接され、それらは、どこでRNAスプライシングを生じるかを決定する。イントロン配列の位置は、抗体鎖の可変領域または定常領域のどちらか、または複数のイントロンが使用される場合には可変領域および定常領域の両方であり得る。ポリアデニル化および転写終了は、コード領域の下流の天然の染色体部位において生じ得る。組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドもコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームにおいて免疫グロブリン鎖のアミノ酸末端に結合されるように、ベクター中へとクローニングされ得る。当該シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは非相同シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0173】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換えベクター発現は、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有することができる。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの因子に依存し得ることは当業者によって理解されるであろう。哺乳動物における発現宿主細胞にとって好ましい制御配列としては、哺乳動物細胞での高レベルのタンパク質発現を確保するウイルス性要素、例えば、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(例えば、SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、主要な後期プロモーターアデノウイルス(AdMLP))由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、ポリオーマウイルスおよび強力な哺乳動物プロモーター、例えば、天然の免疫グロブリンプロモーターまたはアクチンプロモーターなどが挙げられる。ウイルス制御要素およびそれらの配列についてのさらなる説明については、例えば、米国特許第5,168,062号、同第4,510,245号、および同第4,968,615号を参照されたい。プロモーターおよびベクターの説明を含む、結合性分子、例えば、植物における抗体などを発現させる方法、ならびに植物の形質転換は、当技術分野において既知である。例えば、米国特許第6,517,529号を参照されたい。細菌細胞または真菌細胞、例えば、酵母細胞などにおいてポリペプチドを発現させる方法も、当技術分野において周知である。
【0174】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、付加配列、例えば、宿主細胞におけるベクター(例えば、複製元)および選択可能なマーカー遺伝子の複製を調節する配列などを有することができる。当該選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、当該選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、薬剤、例えば、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどに対する耐性を付与する。例えば、選択可能なマーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸塩レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅の際のdhfr宿主細胞における使用のため)、neo遺伝子(G418選択のため)、およびグルタミン酸シンテターゼ遺伝子が挙げられる。
【0175】
用語「発現制御配列」は、本明細書において使用される場合、それらがライゲートされるコード配列の発現およびプロセシングに影響を及ぼすために必要なポリヌクレオチド配列を意味することが意図される。発現制御配列としては、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルなど;細胞質性mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;ならびに、所望の場合、タンパク質分泌を高める配列が挙げられる。そのような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なり、原核生物では、そのような制御配列は、概して、リボソーム結合部位のプロモーター、および転写終結配列を含み、真核生物では、典型的には、そのような制御配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、その存在が発現およびプロセシングにとって必須である少なくとも全ての成分を包含することが意図され、その存在が有利である追加の成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列なども包含することができる。
【0176】
宿主細胞
本発明のさらなる側面は、本発明の抗IL-5Rα抗体を製造する方法に関する。本発明の一態様は、本明細書において定義される抗体を産生する方法であって、抗体を発現することができる組換え宿主細胞を導入/調製するステップと、当該抗体の発現/産生にとって好適な条件下において当該宿主細胞を培養するステップと、得られた抗体を単離するステップとを含む方法に関する。そのような組換え宿主細胞におけるそのような発現によって産生される抗IL-5Rα抗体は、本明細書において、「組換え抗IL-5Rα抗体」と呼ばれる。本発明は、そのような宿主細胞由来の細胞の後代、および類似的に得られる抗IL-5Rα抗体にも関する。
【0177】
本発明の抗IL-5Rα抗体をコードする核酸分子およびこれらの核酸分子を含むベクターは、好適な哺乳動物またはその細胞、植物またはその細胞、細菌または酵母宿主細胞のトランスフェクションのために使用することができる。形質転換は、宿主細胞中にポリヌクレオチドを導入するための任意の既知の技術によって行うことができる。哺乳動物細胞中への非相同ポリヌクレオチドの導入の方法は、当技術分野において周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性ポリマー-核酸複合体トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソームにおけるポリヌクレオチドのカプセル化、および核中へのDNAの直接微量注入を含む。さらに、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳動物細胞中に導入してもよい。細胞にトランスフェクトする方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号を参照されたい。植物細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、直接注入、エレクトロポレーション、およびウイルス形質転換を含む。細菌細胞および酵母細胞を形質転換する方法も、当技術分野において周知である。
【0178】
形質転換のための宿主として使用される哺乳動物細胞株は、当技術分野において周知であり、利用可能な複数の不死化細胞株を含む。これらは、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、フリースタイル293細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、およびいくつかの他の細胞株を含む。細胞株は、どの細胞株が、高い発現レベルを有し、産生されるタンパク質の必要な特性を提供するかを決定することによって選択される。使用され得る他の細胞株は、昆虫細胞株、例えば、Sf9またはSf21細胞などである。抗IL-5Rα抗体をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞中に導入される場合、当該抗体は、宿主細胞での当該抗体の発現、より好ましくは、当該宿主細胞が増殖される培養培地中への当該抗体の分泌を可能にするのに十分な期間において当該宿主細胞を培養することによって産生される。抗IL-5Rα抗体は、標準的なタンパク質精製技術を使用して、当該培養培地から再構成することができる。植物宿主細胞としては、例えば、タバコ属(Nicotiana)、アラビドプシス属(Arabidopsis)、アオウキクサ、トウモロコシ、小麦、ジャガイモなどが挙げられる。細菌宿主細胞としては、エシェリキア属(Escherichia)種およびストレプトマイセス属(Streptomyces)種が挙げられる。酵母宿主細胞としては、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。
【0179】
その上、産生細胞株からの本発明の抗IL-5Rα抗体の産生のレベルは、いくつかの既知の技術を使用して高めることができる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、ある特定の条件下において発現を高めるための一般的なアプローチである。当該GS系は、欧州特許第0216846号、同第0256055号、同第0323997号、および同第0338841号との関連において、全体または一部が説明される。
【0180】
異なる細胞株によって、またはトランスジェニック動物において発現される抗IL-5Rα抗体は、お互いに比較した場合、異なるグリコシル化プロファイルを有するであろう可能性が高い。しかしながら、本明細書において説明される核酸分子によってコードされる、または本明細書において提供されるアミノ酸配列を含む、全ての抗IL-5Rα抗体は、結合性分子のグリコシル化にかかわらず、概して、翻訳後修飾の存在または不在にかかわらず、本発明の一部である。
【0181】
抗体の調製
本発明はさらに、抗IL-5Rα抗体およびその抗原結合性断片を産生する方法およびプロセスにも関する。
【0182】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler,ら Nature 256,1975, 495頁によって最初に報告されたハイブリドーマ法を使用して調製され得るか、または、組換えDNA法(US4816567)を使用して調製され得る。
【0183】
ハイブリドーマ法において、マウス、または他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターなどは、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を生じさせるために、上記の方法に従って免疫化される。別の態様により、リンパ球は、インビトロ免疫化によってする産生ことができる。免疫化後、当該リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を産生するために、適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールなどを使用して骨髄腫細胞株と融合される。
【0184】
上記のようにして産生されたハイブリドーマ細胞は、非融合親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1種または複数種の物質を好ましくは含有する好適な培養培地において培養され得る。例えば、当該親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を有さない場合、ハイブリドーマのための当該培養培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)、すなわち、HGPRT欠乏細胞の増殖を防ぐ物質を含むであろう。
【0185】
骨髄腫細胞融合のための成分として使用される好ましい細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高水準産生を支援し、非融合親細胞が選択を受ける培地に対して感受性である。好ましい骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center(サンディエゴ、カルフォルニア、米国)から入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍由来のもの、およびAmerican Type Culture Collection(ロックビル、メリーランド、米国)から入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞などである。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)細胞株も、モノクローナル抗体の産生について説明されている(Kozbor, J. Immunol., 133, 1984, 3001頁)。
【0186】
好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素連結免疫吸着検査法(ELISA)などによって決定される。
【0187】
当該モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munsonら, Anal. Biochem., 107:220 (1980)に記載されているスキャッチャード解析によって決定することができる。
【0188】
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されれば、クローンは、限定希釈手順によってサブクローニングされ得、標準的方法によって増殖され得る。この目的にとって好適な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。さらに、当該ハイブリドーマ細胞は、例えば、マウス内への当該細胞の腹腔内(i.p.)注射などによって、動物において腹水腫瘍としてインビボにて増殖させられ得る。
【0189】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の抗体精製技術、例えば、親和クロマトグラフィー(例えば、プロテインAセファロースまたはプロテインGセファロースを使用する)またはイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析などによって、当該培養培地、腹水、または血清から分離することができる。
【0190】
当該モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)を使用して配列決定される。当該ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として機能する。当該DNAは、単離されると、発現ベクター中へ入れられ得、それは、次いで、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得るために、宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、シミアンCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはトランスフェクトされることなしに抗体タンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの中にトランスフェクトされる。
【0191】
さらなる態様において、モノクローナル抗体または抗体断片は、McCaffertyら, Nature, 348:552~554 (1990)に記載の技術を使用して作製された抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624~628 (1991)およびMarksら, J. Mol. Biol., 222:581~597 (1991)には、それぞれ、ファージライブラリーを使用したマウスおよびヒト抗体の単離について記載されている。その後の刊行物には、鎖シャッフリング(chain shuffling)(Marksら, Bio/Technology, 10:779~783 (1992)による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生、ならびに非常に大きいファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染(combinatorial infection)およびインビボ組換え(Waterhouseら, Nucl. Acids. Res. 21:2265~2266 (1993)について記載されている。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替手段である。
【0192】
当該抗体をコードするDNAは、例えば、キメラまたは融合抗体ポリペプチドを産生するために、例えば、相同マウス配列を重鎖および軽鎖(CHおよびCL)定常領域配列で置換することによって(US4816567およびMorrison,ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 81:6851 (1984))、または非免疫グロブリンポリペプチド(非相同ポリペプチド)のコード配列の全てまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合的に融合させることによって、修飾され得る。当該非免疫グロブリンポリペプチド配列を、抗体の定常領域と置換することにより、または、抗体の1つの抗原結合性中心の可変ドメインと置換することにより、抗原に対して特異性を有する抗原結合部位と、異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作製することができる。
【0193】
ヒト化抗体
「ヒト化」された非ヒト動物抗体を製造する方法は、当技術分野において周知である。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つまたは複数の必須のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的に「移入(import)」可変領域から得られるため、多くの場合、「移入」残基と称される。ヒト化は、実質的に、Winterおよび共同研究者らの方法 (Jonesら, Nature, 321:522~525 (1986))に従って、ヒト抗体の対応する配列を超可変領域配列で置換することによって実施することができる。したがって、そのような「ヒト化」された抗体は、未処理のヒト可変領域より実質的に小さい領域が、非ヒト種由来の対応する配列で置換されている、キメラ抗体(US4816567)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯動物抗体における類似領域に由来する残基で置換された、ヒト抗体である。
【0194】
ヒト化抗体の産生において使用されるヒト可変領域、軽鎖および重鎖の両方の選択は、抗体がヒト治療用途を目的とする場合に抗原性およびHAMA反応(ヒト抗マウス抗体)を低下させるために、非常に重要である。いわゆる「最良適合(best-fit)」法により、齧歯動物の抗体の可変領域の配列が、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。齧歯動物の配列に最も近いヒトVドメイン配列が同定され、その中の、ヒト化抗体における使用に好適であるヒトフレームワーク領域(FR)が選択される(Simsら, J. Immunol. 151:2296 (1993))。別の方法は、全てのヒト抗体の軽鎖または重鎖の特定のサブグループのコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体に対して使用され得る(Carterら., Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 89:4285 (1992))。
【0195】
ヒト化される抗体が、抗原に対する高い結合親和性および他の意味のある生物学的特性を保持していることも重要である。このために、好ましい方法により、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の概念的三次元モデルを使用する親配列および様々なヒト化生成物の分析によって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補の免疫グロブリン配列の可能性のある三次元立体配座構造を例示し、表示するコンピュータプログラムが、利用可能である。これらの画像の検査は、当該候補の免疫グロブリン配列の機能における当該残基の可能性のある役割の分析、すなわち、抗原に結合する当該候補の免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基を選択することができ、所望の抗体特性、例えば、標的抗原に対する増加した親和性などを実現するために、受容(recipient)配列および移入配列と組み合わせることができる。概して、超可変領域残基は、抗原結合性への影響に、直接的にならびに最も実質的に関与する。
【0196】
当該ヒト化抗体は、抗体断片、例えば、Fabなどであってもよく、それらは、場合により、イムノコンジュゲートを作り出すために、1つまたは複数の細胞毒性剤とコンジュゲートされる。あるいは、当該ヒト化抗体は、完全長抗体、例えば、完全長IgG1抗体などであってもよい。
【0197】
ヒト抗体およびファージディスプレイライブラリーに基づく方法
ヒト化の代替手段として、ヒト抗体を作り出すことができる。例えば、免疫化の後に、内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の全範囲を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、結果として、内因性抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されている。そのような生殖細胞系変異体マウス中へのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子の移動は、結果として、抗原チャレンジの後のヒト抗体の産生を生じる(US5545806、US5569825、US5591669(GenPharmの全て);US5545807;およびWO97/17852)。
【0198】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature, 348:552~553 (1990))は、免疫化ドナー体由来の免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子レパートリーから、インビトロにおいてヒト抗体および抗体断片を産生するために使用することができる。この技術により、抗体V領域遺伝子は、糸状バクテリオファージ、例えば、M13またはfdなどのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のどちらかにインフレームにおいてクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示される。当該糸状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能的特性に基づく選択は、結果として、当該特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択ももたらす。したがって、当該ファージは、B細胞特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、様々な形式において実施することができる。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源が、ファージディスプレイのために使用することができる。Clacksonら, Nature, 352:624~628 (1991)は、免疫化されたマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小ランダムコンビナトリアルライブライから抗オキサゾロン抗体の様々なアレイを単離した。Marksら, J. Mol. Biol. 222:581~597 (1991)に記載される技術に基本的にしたがって、非免疫化ヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体を単離することができる。
【0199】
上記において説明されるように、ヒト抗体は、インビトロで活性化させたB細胞によって作り出してもよい(US5567610およびUS5229275を参照されたい)。
抗体断片
ある特定の状況において、抗体全体よりむしろ、抗体断片を使用することは賢明である。断片の小さいサイズは、それらの迅速なクリアランスに貢献し、密度の高い腫瘍中へのより良い浸透に貢献し得る。
【0200】
抗体断片の産生のために、様々な技術が開発されている。従来、これらの断片は、未処理抗体のタンパク質分解によって誘導された。しかしながら、現在では、これらの断片は、組換え宿主細胞によって直接的に産生することができる。Fab、Fv、およびScFv抗体断片は、大腸菌において発現しそれらから分泌され得、したがって、大量のこれらの断片の産生を容易にすることができる。抗体断片は、上記において説明した抗体ファージライブラリーから単離することができる。別の態様により、Fab’-SH断片は、大腸菌から直接単離することができ、化学的にカップリングさせることにより、F(ab’)2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163~167 (1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。増加したインビボ半減期保持エピトープ結合受容体残基を有するFabおよびF(ab’)2断片が、US5869046に記載されている。抗体断片を産生するための他の技術は、当業者に明らかであろう。他の態様において、最適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である(WO93/16185;US5571894およびUS5587458を参照されたい)。FvおよびscFvは、定常領域を欠く、未処理の結合部位を有する唯一の種であり、その結果、それらは、インビボでの使用の際の非特異的結合の減少にとって好適である。scFv融合タンパク質は、scFvのN末端またはC末端のどちらかにおいてエフェクタータンパク質の融合をもたらすように構築され得る。当該抗体断片はさらに、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるような「線状抗体(linear antibody)」であり得る。そのような線状抗体断片は、単一特異的または二重特異的であり得る。
【0201】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例えば、二重特異性抗体は、抗IL-5Rα抗体タンパク質の2つの異なるエピトープに結合し得る。他の二重特異性抗体は、抗IL-5Rα抗体結合部位を、別のタンパク質に対する結合部位と一緒に、組み合わせてもよい。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、二重特異性抗体のF(ab’)2)として調製することができる。
【0202】
二重特異性抗体を産生する方法は、当該技術分野で既知である。完全長二重特異性抗体の従来の作製は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいており、この場合、当該2つの鎖は、異なる特異性を有する。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為な取り合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生するが、そのうち、適正な二重特異性構造を有するのは1つのみである。通常、いくつかのステップにおいて親和クロマトグラフィーによって為される、当該適正な分子の精製は、かなり厄介であり、生成物の収量は少ない。同様の手順が、WO93/08829において開示されている。
【0203】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性(抗体の抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインが、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。好ましくは、当該融合物は、Ig重鎖定常領域によって作製され、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部を含む。好ましくは、軽鎖の結合に必要な当該部位を含有する第一重鎖定常領域(CH1)は、当該融合物の少なくとも1つに存在する。当該免疫グロブリン重鎖融合物と、所望であれば、当該免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAは、様々な発現ベクターに挿入され、好適な宿主細胞中へとコトランスフェクトされる。これは、最適な収量を提供するために構築において3つのポリペプチド鎖の不均等な比率が使用される態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合を選択する際に、より一層の融通性を提供する。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が、結果として、高い収量をもたらす場合には、または当該比率が、著しい影響を有さない場合には、単一の発現ベクターにおける2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖中に当該コード配列を挿入することは可能である。
【0204】
このアプローチによる好ましい態様において、二重特異性抗体は、第一アームにおける第一結合特異性を提供するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および第二アームにおける(第二結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖/軽鎖対である。この非対称構造は、不要な免疫グロブリン鎖の組合せからの、所望の二重特異性分子の分離を容易にすることが見出されたが、それは、二重特異性分子の半分にのみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が、分離を容易にするためである。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の産生に関するさらなる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照されたい。
【0205】
US5731168に記載される別のアプローチによれば、抗体分子の対の間の界面を構築することにより、組換え細胞培養物から得られるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にすることができる。好ましい界面は、CH3領域の少なくとも一部を含む。この方法によれば、第一抗体分子の界面からの側鎖を有する1つまたは複数の小さいアミノ酸は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。当該大きいアミノ酸側鎖を含むアミノ酸をより小さい側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)を含むアミノ酸で置き換えることによって、当該大きい側鎖と同一または同様のサイズの代償の「穴」が、第二抗体分子の界面に作り出される。これは、他の不要な最終生成物と比較した場合、ヘテロ二量体の収率を増加させるメカニズムを提供する。
【0206】
二重特異性抗体は、架橋抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体を包含する。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方は、アビジンにカップリングさせることができ、他方は、ビオチンにカップリングさせることができる。そのような抗体は、例えば、不要な細胞に対して免疫系細胞を標的とするため(US4676980)、およびHIV感染症の治療のため(WO91/00360、WO92/200373、およびEP03089)に使用することができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製され得る。好適な架橋剤は、当該技術分野において周知であり、様々な架橋技術と共に、US4676980において開示されている。
【0207】
抗体断片から二重特異性抗体を産生するための技術も、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennanら, Science 229:81 (1985)は、F(ab’)2を産生するために未処理抗体がタンパク質分解的に切断される手順について記載している。これらの断片は、隣接するジチオールを安定化させるため、および分子間ジスルフィド結合の形成を防ぐために、ジチオール錯化剤、例えば、亜ヒ酸ナトリウムなどの存在下において還元される。次いで、産生されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体へと転化される。次いで、当該Fab’-TNB誘導体の一つは、メルカプトエチルアミンを用いた還元によって、Fab’-チオールへと再転化され、等モル量の別のFab’-TNB誘導体と混合されることにより、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用することができる。
【0208】
最近の進歩により、大腸菌からのFab’-SH断片の直接回収が容易になり、これを化学的にカップリングすることにより、二重特異性抗体を産生することができる。Shalabyら, J. Exp. Med. 175:217~225 (1992)には、完全ヒト化二重特異性抗体分子のF(ab’)2の産生について記載されている。各Fab’が大腸菌から別々に分泌され、二重特異性抗体を形成するために、インビトロでの直接化学的カップリングを施された。
【0209】
組換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体断片を産生および単離する様々な技術についても記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパを用いて産生されている(Kostelnyら, J. Immunol. 148(5):1547~1553 (1992))。Fosタンパク質およびJunタンパク質に由来するロイシンジッパペプチドは、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’に連結された。抗体ホモ二量体をヒンジ領域において還元することによってモノマーを形成され、次いで、再酸化することにより、当該抗体ヘテロ二量体を形成された。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444~6448 (1993)に記載される「ダイアボディ(diabody)」技術は、二重特異性抗体断片を産生するための代替的メカニズムである。当該断片は、リンカによってVL領域に接続されたVH領域を含むが、当該リンカは、短すぎるため、同じ鎖上の当該2つのドメインの間において対合することができない。したがって、1つの断片のVH領域およびVL領域は、別の断片の相補的VL領域およびVH領域と対合しなければならず、したがって、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖(Fv)-(sFv)二量体を使用して二重特異性抗体断片を産生する別の戦略も報告されている(Gruberら, J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい)。
【0210】
本発明は、3つ以上の結合価を有する抗体も提供する。例えば、三重特異性抗体または四重特異性抗体を作製することができる。
多価抗体
多価抗体は、二重特異性抗体よりも速く、当該抗体が結合する抗原を発現する細胞によって取り込まれ得る(および/または異化され得る)。本明細書において提案される抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外の)であり得(例えば、四価抗体)、それらは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現によって容易に産生することができる。当該多価抗体は、二量体化ドメインと3つ以上の抗原結合部位を含むことができる。好ましい二量体化ドメインは、Fc断片またはヒンジ領域を含む(または、それらからなる)。このシナリオにおいて、当該抗体は、Fc断片と、当該Fc断片に対するN末端における3つ以上の抗原結合部位とを含むであろう。本明細書における好ましい多価抗体は、3つから約8つ、好ましくは4つの抗原結合部位を含む(または、それらからなる)。当該多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、この場合、当該ポリペプチド鎖は、2つ以上の可変領域を含む。例えば、当該ポリペプチド鎖は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含み得、この場合、VD1は、第一可変領域を意味し、VD2は、第二可変領域を意味し、Fcは、Fc断片の1つのポリペプチド鎖を意味し、X1およびX2は、アミノ酸またはポリペプチドを意味し、nは、0または1を意味する。例えば、当該ポリペプチド鎖は、以下の鎖:VH-CH1-フレキシブルリンカ-VH-CH1-Fc断片;またはVH-CH1-VH-CH1-Fc断片を含み得る。好ましくは、本明細書における当該多価抗体はさらに、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変領域ポリペプチドを含む。本明細書における当該多価抗体は、例えば、約2つから約8つの軽鎖可変領域ポリペプチドを含み得る。本発明との関連において、当該軽鎖可変領域ポリペプチドは、軽鎖可変領域を含み、場合により、さらにCL領域を含む。
【0211】
医薬組成物
別の側面において、本発明は、有効成分として(または、唯一の有効成分として)IL-5Rα-特異抗体を含む医薬組成物を提供する。当該医薬組成物は、本明細書において説明されるような、IL-5Rαに対して特異的な少なくとも1つの抗体、および/または対応する表面受容体の1つまたは複数を標的とする1つまたは複数の追加の結合性分子(例えば、抗体)を含み得る。いくつかの態様において、当該組成物は、IL-5とその細胞受容体との相互作用から結果として生じ得る障害を改善、予防、治療することを目的としている。
【0212】
「医薬組成物」は、本発明の抗IL-5Rα抗体と、薬学的に許容されるおよび薬学的に互換性の賦形剤、例えば、充填剤、溶媒、希釈剤、担体、助剤、分配剤、送達剤、保存料、安定化剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、持続的送達制御剤などからなる群より選択される成分のうちの少なくとも1つとを含む組成物を意味し、当該成分の選択および比率は、投与のタイプおよび経路ならびに適用量に依存する。本発明の医薬組成物およびその調製方法は、明白に、当業者に明らかとなるであろう。当該医薬組成物は、好ましくは、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(Good Manufacturing Practice))要件に従って製造されるべきである。当該組成物は、緩衝液組成物、等張化剤、安定化剤、および可溶化剤を含み得る。組成物の持続的作用は、医薬品有効成分の吸収低下を示す薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンによって達成され得る。好適な担体、溶媒、希釈剤、および送達剤の例としては、水、エタノール、多価アルコールおよびそれらの混合物、油、ならびに注射用有機エステルが挙げられる。
【0213】
「医薬品(薬物)」は、ヒトおよび動物における生理機能の修復、改善、または変更を目的とする、および疾患の治療および予防のため、診断、麻酔、避妊、美容術、および他のものを目的とする、錠剤、カプセル剤、粉末剤、凍結乾燥物、注射液、点滴液、軟膏剤、および他のすぐに使える形態の医薬組成物としての化合物または化合物の混合物である。当技術分野において受け入れられるペプチド、タンパク質、または抗体を投与する任意の方法が、本発明の抗IL-5Rα抗体に対して、好適に用いられ得る。
【0214】
用語「薬学的に許容される」は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける投与にとって好適な、1種または複数種の互換性液体または固体を意味する。
用語「賦形剤」は、本発明の上記の成分以外の任意の成分を説明するために、本明細書において使用される。これらは、必要な物理化学特性を薬物製品に与えるために医薬品製造において使用される無機または有機の性質の物質である。
【0215】
本明細書において使用される場合、「緩衝液」、「緩衝液組成物」、「緩衝剤」は、その酸-塩基共役成分の作用によってpHの変化に抵抗することができ、抗IL-5Rα抗体薬がpHの変化に抵抗できるようにする溶液を意味する。概して、当該医薬組成物は、好ましくは、4.0から8.0の範囲のpHを有する。使用される緩衝液の例としては、これらに限定されるわけではないが、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩などの緩衝溶液が挙げられる。
【0216】
用語「等張剤(tonic agent)」、「浸透圧調整剤(osmolyte)」、または「浸透圧剤(osmotic agent)」は、本明細書において使用される場合、液体抗体配合物の浸透圧を増加させることができる賦形剤を意味する。「等張(isotonic)」薬は、ヒト血液と同等の浸透圧を有する薬物である。等張薬は、典型的には、約250mOsm/kgから350mOsm/kgの浸透圧を有する。使用される等張薬としては、これらに限定されるわけではないが、ポリオール、サッカリドおよびスクロース、アミノ酸、金属塩、例えば、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0217】
「安定化剤」は、活性剤に物理的および/または化学的安定性を提供する賦形剤または2種類以上の賦形剤の混合物を意味する。安定化剤としては、アミノ酸、例えば、これらに限定されるわけではないが、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、リシン、グルタミン、プロリン;界面活性剤、例えば、これらに限定されるわけではないが、ポリソルベート20(商標:Tween 20)、ポリソルベート80(商標:Tween 80)、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、およびそれらのコポリマー(商標:ポロキサマ、プルロニック、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))など;酸化防止剤、例えば、これらに限定されるわけではないが、メチオニン、アセチルシステイン、アスコルビン酸、モノチオグリセロール、亜硫酸塩など;キレート化剤、例えば、これらに限定されるわけではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0218】
医薬組成物は、活性剤が、指定された貯蔵期間、例えば、2~8℃の保存温度において、それらの物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物活性を維持する場合、「安定」である。好ましくは、活性剤は、物理的安定性および化学的安定性の両方、生物活性を維持する。貯蔵期間は、促進エージング条件または自然なエージング条件での安定性試験の結果に基づいて調節される。
【0219】
本発明の医薬組成物は、すぐに使用できる配合物の形態での単回単位用量または複数の単回単位用量の形態において、製造、包装、または広く販売することができる。用語「単回単位用量」は、本明細書において使用される場合、所定の量の有効成分を含有する医薬組成物の分離量を意味する。有効成分の量は、典型的には、対象に投与される有効成分の用量、またはそのような用量における使いやすい一部、例えば、そのような用量の半分または3分の1に等しい。
【0220】
本発明による医薬組成物は、典型的には、注射、点滴、および移植によって胃腸管を回避する、皮膚または粘膜バリアにおける突破を介した、人体への投与を目的とする無菌製薬としての非経口投与にとって好適である。例えば、非経口投与としては、とりわけ、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、心室内、尿道内、頭蓋内、滑液嚢内、経皮注射または点滴;および腎臓透析点滴技術が挙げられる。局所潅流も提供される。好ましい態様は、静脈内および皮下経路を含む。当技術分野において受け入れられるペプチドまたはタンパク質を投与する任意の方法は、本発明の抗IL-5Rα抗体に対して好適に用いられ得る。
【0221】
注射製剤は、非限定的に、単位投与剤形態、例えば、アンプル、バイアルなど、プラスチック容器、プレフィルドシリンジ、自動注入装置において、調製、パッケージング、または販売され得る。非経口投与のための製剤としては、とりわけ、懸濁剤、溶液剤、油性または水性基剤中における乳濁剤、ペーストなどが挙げられる。
【0222】
別の態様において、本発明は、投与の前の好適な基剤(例えば、無菌発熱性物質不含水)による再構成のために乾燥(すなわち、粉末または顆粒)形態において提供される医薬組成物を含む非経口投与のための組成物を提供する。そのような製剤は、例えば、凍結乾燥プロセスなどによって調製され得、当該プロセスは、当技術分野において冷凍乾燥ステップとして既知であり、生成物を冷凍するステップと、その後の、冷凍した材料からの溶媒の除去とを伴う。
【0223】
本発明の抗IL-5Rα抗体は、吸入器、例えば、加圧されたエアゾール容器、ポンプ、噴霧器、アトマイザー、ネブライザーなどからの好適な薬学的に許容される賦形剤を伴う混合物として(その場合、好適な高圧ガスが、使用されるか、または使用されない)、あるいは点鼻剤、または噴霧剤として、鼻腔内または吸入のどちらかによって投与することもできる。
【0224】
非経口投与のための投与剤形態は、即時放出および/または放出調節(modified release)であるように製剤化され得る。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、脈動放出、制御放出、ターゲット放出(targeted release)、およびプログラム放出(programmed release)が挙げられる。
【0225】
本発明の抗IL-5Rα抗体の治療用途
一側面において、本発明の抗IL-5Rα抗体は、IL-5活性に関連する障害の治療において有用である。
【0226】
一側面において、本発明の抗IL-5Rα抗体は、疾患または障害の治療において有用であり、この場合、疾患または障害は、群:喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎;好酸球性胃腸炎、または好酸球増多症候群から選択される。
【0227】
一側面において、治療の対象、または患者は、哺乳動物、好ましくはヒト対象である。当該対象は、任意の年齢の雄または雌のどちらかであり得る。
本明細書において使用される場合、抗IL-5Rα抗体および1種または複数種の他の治療薬について言及する用語「共投与(co-administration)」、「共投与された」、および「との組合せにおいて」は、以下を、意味する、言及する、または含むことが予想される:
1)そのような成分が、当該成分を実質的に同じタイミングにおいて治療を必要とする患者に放出する単一投与剤形態へと一緒に製剤化される場合、当該患者への、本発明の抗IL-5Rα抗体および治療薬のそのような組合せの同時投与(simultaneous administration)、
2)そのような成分が、治療を必要とする患者によって同時に摂取され、それにより、当該成分が、当該患者へと実質的に同じタイミングで放出される別々の投与剤形態へと、お互いに別々に製剤化される場合、当該患者への、本発明の抗IL-5Rα抗体および治療薬のそのような組合せの実質的な同時投与、
3)そのような成分が、治療を必要とする患者によって、各投与の間に十分な時間間隔をおいて連続して摂取され、それにより、当該成分が、当該患者へと実質的に異なるタイミングで放出される別々の投与剤形態へと、お互いに別々に製剤化される場合、当該患者への、本発明の抗IL-5Rα抗体および治療薬のそのような組合せの逐次的投与、および
4)そのような成分が、制御された方式において当該成分を放出される単一投与剤形態へと一緒に製剤化され、それにより、当該成分が、治療を必要とする患者に対して同じタイミングおよび/または異なるタイミングで、同時に、連続して、または共同で放出され、各部分が、同じ経路または異なる経路のどちらかによって投与され得る場合、当該患者への、本発明の抗IL-5Rα抗体および治療薬のそのような組合せの逐次的投与。
【0228】
本発明の抗IL-5Rα抗体は、さらなる治療療法を伴わない、すなわち、非依存性療法として、投与することができる。その上、本発明の抗IL-5Rα抗体による治療は、少なくとも1種の追加の治療療法を含んでもよい(併用療法)。いくつかの態様において、当該抗IL-5Rα抗体は、異なる医薬品/自己免疫疾患薬と共に、またはそれらと組み合わせて投与され得る。
【0229】
上記の自己免疫疾患または関連する自己免疫状態の治療において、異なる治療薬との組合せにおいて本明細書において提案される抗IL-5Rα抗体は、多剤併用療法を用いて、患者に投与してもよい。当該抗IL-5Rα抗体は、同時に、連続して、または免疫抑制薬と共に交互に、あるいは異なる療法に対する耐性を示した後に、投与することができる。当技術分野において使用される投与量と比較して、同じまたはより少ない免疫抑制薬の投与量を使用してもよい。好ましい免疫抑制薬を選択する場合、治療される疾患のタイプまたは患者の医療記録を含む多くの要因が考慮されるべきである。
【0230】
本明細書において使用される場合、アドオン療法において使用される用語「治療薬」は、患者の免疫系を抑制または遮断することを対象とする物質、例えば、小分子、抗体、またはステロイドホルモン、例えば、コルチコステロイドなどを意味する。そのような薬剤は、サイトカイン産生を阻害するか、自己抗原発現を下方調節または抑制するか、あるいは主要組織適合性複合物(MHC)抗原を遮断する物質であり得る。そのような薬剤の例としては、ステロイド、例えば、グルココルチコイド、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、およびデキサメタゾンなど;2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン(US4665077を参照されたい)、アザチオプリン(またはアザチオプリンに対する有害反応の場合、シクロホスファミド、);ブロモクリプチン;グルタルアルデヒド(US4120649に記載されているように、MHC抗原を遮断する);MHC抗原およびMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;サイクロスポリンA;インターフェロンγ抗体、インターフェロンβ抗体、またはインターフェロンα抗体を含む、サイトカインおよびサイトカイン受容体アンタゴニスト;抗腫瘍壊死因子抗体;抗インターロイキン-2抗体および抗IL-2受容体抗体;抗L3T4抗体、非相同抗リンパ球グロブリン、pan-T抗体、好ましくは、抗CD3抗体または抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合性ドメインを含む可溶性ペプチド(WO90/08187、1990年6月26日公開);ストレプトキナーゼ;TGF-p;ストレプトドルナーゼ;宿主DNA/RNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞受容体(US5114721);T細胞受容体断片((Offnerら, Science 251:430~432 (1991);WO90/11294;およびWO91/01133);およびT細胞受容体抗体(ЕР340109)、例えば、T10B9などが挙げられる。
【0231】
本発明の抗IL-5Rα抗体は、上記において説明したような治療の方法において使用され得、上記において説明したような治療において使用され得、および/または上記において説明したような治療のための医薬品の製造において使用され得ることが意味される。
【0232】
用量および投与経路
本発明の抗IL-5Rα抗体は、関心対象の状態の治療において有効である量において、すなわち、所望の結果を達成するのに必要な用量および期間において、投与されるであろう。治療有効量は、治療すべき特定の状態、患者の年齢、性別、および体重、当該抗IL-5Rα抗体が、単独で投与されるかそれとも1種または複数種の追加の抗自己免疫または抗炎症治療技術と組み合わせて投与されるのかなどの要因によって変わり得る。
【0233】
投薬計画は、最適な応答を提供するように適合させることができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、数回に分割された用量を時間経過と共に投与してもよく、あるいは当該用量を、治療状況の緊急性によって示されるように比例的に増減してもよい。投与の容易さおよび投薬量の均一性のための単位投与形態において非経口組成物を製剤化することが、とりわけ有利である。本明細書において使用される単位投与形態は、治療されるべき患者/対象に対して単位投薬量として適合された、物理的に別個の単位を意味するように意図され;各単位は、所望の医薬担体と共に所望の治療効果を生じるよう計算された所定の量の有効成分を含有する。本発明の単位投与形態のための仕様は、典型的には、(a)化学療法剤の独特な特性および達成されるべき特定の治療効果または予防効果、および(b)対象における感度の治療に対してそのような活性化合物を化合する当技術分野における固有の制限によって決定され、それらに直接的に依存する。
【0234】
したがって、当業者は、本明細書において提供される開示に基づいて、用量および投薬計画が、治療技術分野において周知の方法に従って調整されることを理解するであろう。すなわち、最大耐量は、容易に確立することができ、患者に対して検出可能な治療効果を提供する有効量も決定され得、それにより、患者に対して検出可能な治療効果を提供するために各薬剤を投与する時間的要件を決定することができる。したがって、ある特定の用量および投与計画が本明細書において例示されるが、これらの実施例は、決して、本発明の態様の実践において患者に対して提供され得る用量および投与計画を制限するものではない。
【0235】
投薬量値は、緩和されるべき状態のタイプおよび重篤度によって変わり得、単回用量または複数回用量を含み得ることに留意されたい。その上、任意の特定の対象に対して、特定の投薬計画は、個々のニーズおよび当該組成物を投与するまたは投与を監督する医療専門家の判断に従って、時間の経過と共に調整されるべきであること、ならびに本明細書において詳細に説明される投薬計画は例示に過ぎず、特許請求される組成物の範囲または実践を制限することを意図するものではないということを理解されたい。さらに、本発明の組成物による投薬計画は、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、当該状態の重篤度、投与経路、および用いられる特定の抗IL-5Rα抗体を含む、様々な要因に基づき得る。したがって、当該投薬計画は、幅広く変わり得るが、標準的な方法を用いて通常の方式によって決定することができる。例えば、用量は、薬物動態的または薬力学的パラメーターに基づいて調整され得、それらは、毒性作用などの臨床効果および/または実験室での値を含み得る。したがって、本発明は、当業者によって決定される患者内用量漸増(intra-patient dose-escalation)を包含する。適切な投薬量および投薬計画を決定する方法は、当技術分野において周知であり、本明細書において開示される着想を提供すれば、当業者によって理解されるであろう。
【0236】
好適な投与方法の例は、上記において提供される。
本発明の抗IL-5Rα抗体の好適な用量は、0.1~200mg/kg、好ましくは、0.1~100mg/kgの範囲、例えば、約0.5~50mg/kg、例えば、約1~20mg/kgなどであろうと考えられる。当該抗IL-5Rα抗体は、例えば、少なくとも0.25mg/kg、例えば、少なくとも0.5mg/kgなど、例えば、少なくとも1mg/kg、例えば、少なくとも1.5mg/kg、例えば、少なくとも2mg/kgなど、例えば、少なくとも3mg/kg、例えば、少なくとも4mg/kg、例えば、少なくとも5mg/kg;ならびに、例えば、最高でも最大50mg/kgまで、例えば、最高でも最大30mg/kgまで、例えば、最高でも最大20mg/kgまで、例えば、最高でも最大15mg/kgまでの用量において投与され得る。当該投与は、典型的には、責任ある医師によって適切であると考えられる限り、適切な時間間隔、例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回などにおいて繰り返されるであろうし、場合により、必要であれば、用量を増加または減少され得る。
【0237】
製品(製造物)およびキット
別の態様により、本発明は、自己免疫疾患または関連する状態、例えば、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、または好酸球増多症候群の治療のために使用されることが意図される製造物を含む製品を提供する。当該製造物は、ラベルおよび添付文書を伴う容器であり、それらは、ブリスタおよび/またはパッケージ内に存し得る。好適な容器としては、例えば、バイアル瓶、アンプル、シリンジなどが挙げられる。当該容器は、様々な材料、例えば、ガラス材料またはポリマー材料などによって作製され得る。当該容器は、ある特定の状態の治療に有効な組成物を含み、無菌アクセスポートを有し得る。当該組成物中の少なくとも1種の有効成分は、本発明による抗IL-5Rα抗体である。当該ラベルおよび添付文書は、当該薬物がある特定の状態を治療するために使用されることを意図されることを示す。当該ラベルおよび/または添付文書は、そのような治療薬のための、指示、頻度、容量、投与経路、禁忌症、および/または事前注意を追加的に含む、患者に当該抗体組成物を投与するための使用説明書を含む。一態様において、当該添付文書は、当該組成物が、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、または好酸球増多症候群の治療のために使用されることを意図されることを示す。
【0238】
その上、製品は、非限定的に、商業目的に必要なまたは消費者にとって必要な他の製造物、例えば、溶媒、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどを含み得る。
本発明は、例えば、細胞からIL-5Rαを精製または免疫沈降するため、IL-5Rα保有細胞を単離するためなど、様々な目的に使用することができるキットにも関する。抗IL-5Rα抗体またはIL-5Rα保有細胞の単離および精製のためのキット。キットは、顆粒(例えば、セファロース顆粒または磁性粒子)に結合された抗IL-5Rα抗体を含み得る。キットは、容器、ラベル、および添付文書を含む。
【0239】
診断用途および組成物
本発明の抗IL-5Rα抗体は、診断プロセス(例えば、インビトロ、エクスビボにおける)においても使用される。例えば、当該抗IL-5Rα抗体は、患者から得られた試料(例えば、組織試料、または体液、例えば、炎症性滲出液、血液、血清、腸液、唾液、または尿などの試料)中のIL-5Rαのレベルを検出または測定するために使用することができる。検出および測定のための好適な方法としては、イムノアッセイ、例えば、フローサイトメトリ、酵素連結免疫吸着測定法(ELISA)、化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイ、および免疫組織学などが挙げられる。本発明はさらに、キット、例えば、本明細書において説明される抗IL-5Rα抗体を含む診断用キットを含む。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
IL-5Rαに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、
1)配列番号3の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと;
1)配列番号8の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと
を含むモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様2]
重鎖可変ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含む、態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様3]
軽鎖可変ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様4]
重鎖可変ドメインが、配列番号1~3の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む、態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様5]
重鎖可変ドメインが、配列番号1~3によって表されるアミノ酸配列を含む、態様4に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様6]
軽鎖可変ドメインが、配列番号6~8の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む、態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様7]
軽鎖可変ドメインが、配列番号6~8によって表されるアミノ酸配列を含む、態様6に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様8]
1)重鎖可変ドメインが、配列番号1~3の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
2)軽鎖可変ドメインが、配列番号6~8の配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む、
態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様9]
1)重鎖可変ドメインが、配列番号1~3のアミノ酸配列を含み;
2)軽鎖可変ドメインが、配列番号6~8のアミノ酸配列を含む、
態様8に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様10]
重鎖可変ドメインが、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む、態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様11]
重鎖可変ドメインが、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む、態様10に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様12]
軽鎖可変ドメインが、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む、態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様13]
軽鎖可変ドメインが、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む、態様12に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様14]
1)重鎖可変ドメインが、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含み;
2)軽鎖可変ドメインが、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む、
態様1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様15]
1)重鎖可変ドメインが、配列番号4~5を含む群から選択されるアミノ酸配列を含み;
2)軽鎖可変ドメインが、配列番号9~10を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む、
態様14に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
[態様16]
1)配列番号11~12を含む群から選択される配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む重鎖と;
2)配列番号13~14を含む群から選択される配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含む軽鎖と
を含む、態様1に記載のモノクローナル抗体。
[態様17]
1)配列番号11~12を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖と;
2)配列番号13~14を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と
を含む、態様16に記載のモノクローナル抗体。
[態様18]
IL-5Rα特異抗体が、完全長IgG抗体である、態様1に記載のモノクローナル抗体。
[態様19]
完全長IgG抗体が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの抗体である、態様18に記載のモノクローナル抗体。
[態様20]
完全長IgG抗体が、ヒトIgG1アイソタイプの抗体である、態様19に記載のモノクローナル抗体。
[態様21]
態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸。
[態様22]
DNAである、態様21に記載の核酸。
[態様23]
a)態様1に記載の抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列であって、配列番号15~16を含む群から選択される配列に対して少なくとも90%相同であるヌクレオチド配列、および/または、態様1に記載の抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列であって、配列番号17~18を含む群から選択される配列に対して少なくとも90%相同であるヌクレオチド配列;あるいは、
b)配列番号15~16を含む群から選択されるヌクレオチド配列であって、態様1に記載の抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列、および/または、配列番号17~18を含む群から選択されるヌクレオチド配列であって、態様1に記載の抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列
を含む、態様21に記載の核酸。
[態様24]
態様21~23のいずれか一項に記載の核酸を含む発現ベクター。
[態様25]
態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を調製するための宿主細胞を産生する方法であって、態様24に記載のベクターによる細胞の形質転換を含む方法。
[態様26]
態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を調製するための宿主細胞であって、態様21~23のいずれか一項に記載の核酸を含む宿主細胞。
[態様27]
態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を調製する方法であって、前記抗体を産生するのに十分な条件下において増殖培地にて、態様26に記載の宿主細胞を培養するステップと、必要であれば、その後に、該得られた抗体を単離および精製するステップとを含む方法。
[態様28]
IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される医薬組成物であって、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤との組合せにおいて、態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
[態様29]
喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎を含む群から選択される、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される態様28に記載の医薬組成物。
[態様30]
IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される医薬組合せであって、態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の異なる治療的活性化合物とを含む医薬組合せ。
[態様31]
IL-5Rαによって媒介される疾患または障害を予防または治療するために使用されることが意図される態様30に記載の医薬組合せであって、前記疾患または障害が、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎を含む群から選択される、医薬組合せ。
[態様32]
異なる治療的活性化合物が、小分子、抗体、またはステロイドホルモン、例えば、コルチコステロイドなどから選択される、態様30~31のいずれか一項に記載の医薬組合せ。
[態様33]
IL-5Rαの生物活性を阻害することを必要とする対象においてそのような生物活性を阻害する方法であって、態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片の有効量を投与するステップを含む方法。
[態様34]
IL-5Rαによって媒介される疾患または障害の治療のための方法であって、そのような治療を必要とする対象に、態様1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片、または態様28に記載の医薬組成物を、治療有効量において投与するステップを含む方法。
[態様35]
疾患または障害が、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、または好酸球増多症候群を含む群から選択される、態様34に記載の、疾患または障害の治療のための方法。
[態様36]
そのような治療を必要とする対象の、IL-5Rαによって媒介される疾患または障害の治療のための、態様1~20のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または態様28に記載の医薬組成物の使用。
[態様37]
疾患または障害が、喘息、例えば、好酸球性喘息(アトピー性喘息)、例えば、重篤な好酸球性喘息(アトピー性喘息);COPD(慢性閉塞性肺疾患);チャーグ・ストラウス症候群;好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎を含む群から選択される、態様36に記載の使用。
【実施例】
【0240】
以下の実施例は、本発明のより良い理解のために提供される。これらの実施例は、例示目的のみのためであり、いずれにおいても本発明の範囲を限定として解釈されるべきではない。
【0241】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。前述の発明について、理解の明瞭化の目的のための例示および実施例によってある程度詳細に説明したが、本発明の教示を踏まえると、添付の態様の趣旨および範囲から逸脱することなくある特定の変化および変更を為し得ることは、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0242】
材料および基本的方法
ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は、Kabat, E.A.,ら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)において与えられる。抗体鎖のアミノ酸は、EU付番(Edelman, G.M.,ら, Proc. Natl. Acad. Sci. Natl. Acad. Sci. USA 63 (1969) 78~85; Kabat, E.A.,ら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, (1991))に従って付番され参照される。
【0243】
組換えDNA技術
Sambrook, J.ら, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載のようにDNAを操作するために、標準的方法を使用した。製造元の使用説明書に従って、分子生物学的試薬を使用した。
【0244】
遺伝子合成
化学合成によって作製されたオリゴヌクレオチドから所望の遺伝子セグメントを調製した。単数の制限部位に隣接された300~4000kb長の遺伝子セグメントを、PCR増幅を含む、オリゴヌクレオチドのアニール処理およびライゲーションによって組み立て、その後に当該示された制限部位を介してクローニングした。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定法によって確認した。
【0245】
DNA配列の決定
Sanger配列決定法により、DNA配列を決定した。
DNAおよびタンパク質の配列分析および配列データ管理
配列作製、マッピング、解析、アノテーション、および図示のために、InfomaxのVector NT1 Advanceスイート バージョン8.0を使用した。
【0246】
発現ベクター
説明した抗体および抗原の発現、原核細胞(大腸菌)における発現のための発現プラスミドのバリアント、真核細胞(例えば、CHO細胞)における一過性発現を適用した。抗体発現カセット以外に、当該ベクターは、大腸菌での当該プラスミドの複製を可能にする複製開始点、大腸菌での耐性を様々な抗生物質(例えば、アンピシリンおよびカナマイシン)に付与する遺伝子を含んだ。
【0247】
下記において説明されるような、当該説明した抗体鎖を含む融合遺伝子を、PCRおよび/または遺伝子合成によって作製し、例えば、対応するベクターにおける独特な制限部位を使用して、当該一致する核酸セグメントの接続による既知の組換え法および技術によって組み立てた。当該サブクローニングされた核酸配列を、DNA配列決定法によって確認した。一過性トランスフェクションのため、形質転換された大腸菌培養から、プラスミド調製によってより多量のプラスミドを調製した。
【0248】
実施例1
懸濁哺乳動物細胞培養における組換え抗原および抗体の産生
SalI/NotI制限部位においてタンパク質を産生するために、ヒトおよび動物のIL-5Rαの細胞外ドメインをコードする配列を、EPEA、FC、およびH6Fタグと共にプラスミドpEE中へとクローニングした(
図1、2、3)。当該プラスミドの必要量を大腸菌において産生し、Qiagenキットを使用して精製した。
【0249】
チャイニーズハムスター卵巣細胞から得られた確立された細胞株(CHO-T細胞株)の細胞において抗原を産生し、公開されているプロトコル[Cytotechnology (2012) 64:613~622]に従って、CHOにおいて抗体を産生した。8mMLのグルタミンおよび1g/lのプルロニック68を補ったHyCell TransFx-Cからの無血清培地を使用して、オービタルシェーカーに設置したフラスコにおいて懸濁培養を実施した。一過性発現のために、2~2.2×106c/mlの濃度の細胞に、直鎖状ポリエチレンイミン(PEI MAX, Polysciences)によってトランスフェクトした。DNA/PEI比は、1:3/1:10であった。トランスフェクションの5~7日後、細胞培養物を、2000gにおいて20分間遠心分離し、0.22μmのフィルターでろ過した。親和HPLCによって、培養液から標的タンパク質を単離した。
【0250】
タンパク質のC末端にEPEAタグ(グルタミン酸-プロリン-グルタミン酸-アラニン)を含む組換えタンパク質を、吸着剤CaptureSelect C-tag Affinity Matrixを使用して単離した。培養液を、5mlのCタグ吸着剤を事前に充填したクロマトグラフカラムに通過させ、次いで、任意の非特異的結合性成分を除去するために、当該カラムを25mlのPBSで洗浄した。20mMのTris、2MのMgCl2(pH7.0~7.4)を使用して温和な条件下において、当該結合した抗体を溶離させた。次いで、半浸透性透析膜を使用して、タンパク質をPBS(pH7.4)中へと透析により分離し、ろ過し(0.22μm)、管に移して-70℃で保存した。
【0251】
吸着剤である5mlのHiTrap rProtein A Sepharose FF (GE Healthcare)を使用して、組換えFcタンパク質を単離した。カラムを平衡化し、次いで、非特異的に結合した成分を除去するために、5倍の体積のPBSで洗浄した。0.1Mのグリシン緩衝液(pH3)によって、結合した抗原を溶離させた。主要タンパク質溶出ピークを収集し、1MのTris緩衝液(pH8)によってpHを中性化した。全ての段階を、100cm/hの流量において実施した。次いで、SnakeSkin Dialysis Tubing技術を使用して、タンパク質をPBS(pH7.4)中へと透析により分離し、ろ過し(0.22μm)、管に移して-70℃で保存した。
【0252】
Ni-NTA(QIAGEN)カラムを使用して、組換えHisタグ付けタンパク質を単離し、平衡緩衝液(50mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール(pH8.0))によって吸着剤を3回洗浄した。当該培養液体のpHを8.0に調整し、1mMの最終濃度までNiCl2を加えた。吸着剤を培養液に移し、撹拌しながら4℃で2時間インキュベートし、10カラム量の緩衝液(50mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール)で洗浄し、20カラム量(50mMのNa2HPO4、1MのNaCl、20mMのイミダゾール)で洗浄し、10量のPBS(pH7.4)で洗浄し、50mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、250mMのイミダゾール(pH8.0)で溶離させた。タンパク質溶液をPBS(pH7.4)に変換し、-70℃で冷凍した。
【0253】
得られたタンパク質溶液の純度は、還元および非還元SDS-PAGEによって評価した(
図4、5、6)。
実施例2
ナイーブヒトFabファージライブラリーMeganLibTMの工学技術
1千を超える個々のヒトドナーの血液試料由来のBリンパ球の全RNAを、推奨されたプロトコルに従い、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を使用して単離した。Nanovueキット(GE Healthcare)を使用して、RNA濃度アッセイを実施し、単離されたRNAの品質を、1.5%アガロースゲル電気泳動によって試験した。
【0254】
プライマーとしてMMuLV逆転写酵素およびランダム六量体オリゴヌクレオチドを用いて、推奨されるプロトコルに従い、MMLV RTキット(Evrogen)を使用して、逆転写反応を実施した。
【0255】
制限部位に隣接する可変ドメインの遺伝子を得るために、二段階ポリメラーゼ連鎖反応におけるマトリックスとして逆転写生成物を使用し、反応を、[J Biol Chem. 1999 Jun 25; 274(26): 18218~30]によるプロトコルに従い、オリゴヌクレオチドキットを使用して実施した。
【0256】
得られたDNA調製物VL-CK-VH(
図7)を、NheI/Eco91I制限エンドヌクレアーゼによって処理し、元のファージミドpH5へとライゲートした(
図8)。ライゲーション生成物を、プロトコル[Methods Enzymol. 2000;328: 333~63.]に従って調製したSS320大腸菌エレクトロコンピテント細胞中に形質転換させた。コンビナトリアルFabファージディスプレイライブラリーMeganLibTMのレパートリーは、10
11形質転換体だった。Fabファージライブラリーの調製物を、前に説明した手順に従って調製した[J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3): 581~97]。
【0257】
実施例3
ファージディスプレイによるヒト抗IL-5RαFabの産生
コンビナトリアルFabファージディスプレイライブラリーMeganLibTMから、特異的抗IL-5RαヒトファージFabを得た。ファージディスプレイにより[Nat Biotechnol. 1996 Mar;14(3):309-14; J Mol Biol.1991 Dec 5;222(3): 581~97]、ただし、マグネットビーズおよびKingFisher Flex装置を使用して、ヒトIL-5Rαにおいてバイオパニングを実施したが、それは、この技術は、同時に最大96までの異なるスキームおよびバリアントを実施することを可能にすることによる。
【0258】
ヒトビオチン化IL-5Rα抗原(Fc、EPEA)を、第一ラウンドでは10μg/mlの濃度、第二ラウンドでは2μg/mlの濃度、第三ラウンドおよび第四ラウンドでは、それぞれ、0.4μg/mlおよび0.2μg/mlの濃度において、ストレプトアビジン磁性ビーズ(NEB)の表面上に意図的に固定させた。抗原を、撹拌機において、ビーズと共に室温で1時間インキュベートした。次いで、当該ビーズをPBS(pH7.4)で洗浄し、ビーズ表面を、PBS(pH7.4)中における2%の無脂肪ミルクまたは1%のBSAの溶液によって1時間かけてブロックした。ヒトファージライブラリーMeganLibTMを、2%の無脂肪ミルクと標的抗原タグを含む非標的抗原とを伴うPBS(pH7.4)における2×1013ファージ粒子/mlの濃度において希釈し、非特異的結合性ファージを除去するために、表面上に抗原を有しない磁性ビーズによって事前に選択した。次いで、IL-5Rαコーティングされた磁性ビーズを、MeganLibTMと共に室温で1~2時間インキュベートした。
【0259】
0.1%のTween20を伴うPBS(pH7.4)の溶液による磁性ビーズの洗浄の数サイクルによって、結合していないファージを除去した。洗浄サイクルの回数は、ラウンド毎に増加させた(第一ラウンドでは3洗浄サイクル、第二ラウンドでは9洗浄サイクル、および第四ラウンドでは15洗浄サイクル)。磁性ビーズの表面上の抗原に結合したファージを、撹拌しながら、100mMのGly-HCl溶液(pH2.2)によって15分間かけてビーズから溶離させ、次いで、当該溶液を、1MのTris-HCl(pH7.6)で中和した。大腸菌TG1細菌にファージを感染させ、培養培地において増殖させ、次の選択サイクルにおいて使用した。3ラウンドまたは4ラウンド後、製造元(Qiagen)のプロトコルに従って、ファージミドDNAを大腸菌TG1培養物から単離した。標的抗原に対するライブラリーの濃縮、および非特異的結合性ファージ粒子の存在の評価のために、ポリクローナルファージエンザイムイムノアッセイ(ELISA)を使用した。
【0260】
実施例4
特異的および非特異的抗原に対するポリクローナルファージのELISA
ELISAを実施するために、Fc融合タンパク質を伴う標的抗原IL-5Rα-Fcおよび非標的抗原を、高吸収プレート(Greiner-Bio)上に固定した。それぞれ、0.1MのNaHCO3(pH9.0)中における1μg/mlおよび5μg/mlの濃度においてタンパク質を加え、2から7希釈増分において滴定し、次いで、密封したプレートを4℃において一晩インキュベートした。全ての後続のステップを、高性能の自動化されたTecan Freedom EVO 200ベースのロボットプラットフォーム(Tecan)を使用して、標準ELISAプロトコルに従って実施した。非特異的結合をブロックするために、PBS(pH7.4)中における2%の無脂肪ミルクまたは1%のBSAを含むブロッキング緩衝液をプレートのウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした。Tween20(PBST)を含むリン酸塩-塩水緩衝液による数回の洗浄サイクルの後、試験中の50μl/ウェルのポリクローナルファージを加えた。洗浄後、各ウェルを、PBST(1:7500)中における抗M13 HRPコンジュゲート二次抗体(Pierce-ThermoScientific)によってコーティング(50μl/ウェル)した。室温での50分間のインキュベーション後、プレートをPBSTで3回洗浄した。10分間かけて基質溶液(CH3COONa中におけるH2O2-0.02%およびTMB、pH5.5)を加えることによって、比色分析シグナルを得て、次いで、1%の硫酸(20μl)を加えることによって、発色を抑えた。好適なTecan-Sunriseプレート読み取り機(Tecan)を使用して、450nmにおいて発色シグナルを測定した。
【0261】
ポリクローナルファージ調製物のELISAは、標的抗原に対する選択の第三および第四ラウンドの後に、著しい濃縮を示した(
図10)。再クローニングおよびさらなるスクリーニングのためにライブラリーを選択し、それらにおいて、非相同コントロール抗原に対してファージライブラリーの最小希釈において5倍を超えるシグナルが観察された。
【0262】
実施例5
発現プラスミド中への抗体可変ドメインの遺伝子の再クローニング
首尾よく成功した選択ラウンドの後のファージミドベクターからの発現プラスミド(
図9)中への抗体可変ドメインの遺伝子の再クローニングを、制限ライゲーション技術を使用し、標準的プロトコルに従って実施した。それに続いて、Mabnext Flow Chartプラットフォームを使用したELISAによる、抗原に対するディスプレイライプラリからの可変抗体断片の親和性の比較分析のために、抗体断片を含む発現ベクターを、大腸菌BL21-Gold菌株中へと形質転換した。
【0263】
実施例6
ヒトIL-5Rαに特異的に結合する後選択ライブラリーからの高親和性クローンの選択
標準的技術に従って、Fabを産生した:Fab遺伝子を含む発現ベクターを用いて、大腸菌BL21-Gold細菌細胞を形質転換し、その後の誘発剤の添加により、ラックオペロンの転写を引き起こさせ、それにより、結果として得られた転換体を培養する場合、細胞膜周辺腔中へと移出されたFabの発現を生じさせた。次いで、基質に固定されたIL-5Rα-EPEA抗原へのFabの結合を確認するために、0.1MのNaHCO3(pH9.0)において、プレート(medium binding、Greiner bio one社製)上にて0.2μg/mlの濃度でELISAを実施した(抗原は、4℃において一晩かけて固定させた)。発現プラスミドpLLに挿入したFabベンラリズマブ(Medimmune)配列を、ポジティブコントロールとして使用した。全てのさらなるステップを、高性能の自動化されたプラットフォームをベースとするロボットシステムGenetix Qpix2xt(Molecular Devices)およびTecan Freedom EVO 200(Tecan)を使用して、標準的ELISAプロトコルに従って室温において実施した。各ステップの後に、300μl/ウェルの1×PBSTによって、3回の繰り返しにおいて洗浄を実施した。当該プレート上の非特異的結合部位を、1×PBS中における1%の無脂肪ミルクよってブロックし、洗浄後に、大腸菌上清によって代表される分析物(60μl/ウェルの大腸菌上清)を加えた。ペルオキダーゼコンジュゲートヤギ抗Fab抗体(Pierce-ThermoScientific)(1:7500)を使用して、免疫複合体を検出した。15分間かけて、50μlの基質溶液((CH3COONa中におけるH2O2-0.02%およびTMB(pH5.5))を加えることによって、基質-色原性混合物を染色した。反応を止めるために、25μlの1%のH2SO4を使用した。好適なTecan-Sunriseプレート読み取り機(Tecan)を使用して、450nmにおいて発色シグナルを測定した。抗体結合は、発生したシグナルに比例した。発色シグナルがコントロール抗体からのシグナルを超えたクローンを、非特異的結合に対して、ELISAによって試験した。
【0264】
実施例7
異なる抗原に対する選択されたFabの非特異的結合の分析
異なる抗原ELISAに対する、関心対象のFabの非特異的結合を分析するためにも、ELISAを用いた。分析は、上記において説明したように実施したが、0.1MのNaHCO3(pH9.0)中におけるIL6R-Fc、PCSK9-VG-FEを、固定化のための抗原として使用した(抗原は、4℃において一晩かけて固定した)。特異的結合コントロールとしてIL-5Rα-FE、IL-5Rα-Fcを使用した(抗原は、4℃において一晩かけて固定した)。全てのさらなる段階を、高性能の自動化されたプラットフォームをベースとするロボットシステム、例えば、Genetix Qpix2xt(Molecular Devices)およびTecan Freedom EVO 200(Tecan)などを用いて、標準的ELISAプロトコルに従って実施した。受容体-リガンド相互作用をブロックするFabを同定するために、発色シグナルがコントロールシグナルを超えなかったクローンを、競合ELISAによって試験した。
【0265】
実施例8
リガンドIL-5とのIL-5Rαの相互作用をブロックする高親和性Fabの選択
リガンドIL-5(Sino Biological)とのIL-5Rαの相互作用をブロックする能力に対して、前に選択した抗ヒト特異的Fabを試験するために、競合ELISAを使用した。公開された配列を有するFabのベンラリズマブ(Medimmune)を、ポジティブコントロールとして使用した。
【0266】
50μl/ウェルのIL-5(NaHCO3中における1μg/mlの溶液、pH9.0)をELISAウェルプレートにおいて固定し(中結合、Greiner bio one)、4℃で一晩インキュベートした。全てのさらなる段階を、高性能の自動化されたプラットフォームをベースとするロボットシステムGenetix Qpix2xt(Molecular Devices)およびTecan Freedom EVO 200(Tecan)を用いて、室温において標準的ELISAプロトコルに従って実施した。ブロッキング緩衝液(200μlの、PBS中における1%の無脂肪ミルク)を加えることによって非特異的結合をブロックした。
【0267】
並行して、試験FabおよびIL-5Rα(PBST中における1μg/mlの最終濃度において)を含む細胞上清を、非吸収プレートにおいて1:1の比で混合し、室温で45分間インキュベートした。
【0268】
ブロッキング緩衝液から洗浄後、事前にインキュベートした混合物を当該プレートに移した。全てのさらなるステップは、実施例6において説明したのと同様であった。コントロールFabであるベンラリズマブのレベルにおいてブロッキングを示すクローンをポジティブとして留意し、さらなるアッセイにおいて使用した。
【0269】
ポジティブクローンの可変ドメインの遺伝子を、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)において、標準的プロトコルに従って配列決定し、解析した。
【0270】
実施例9
解離速度による高親和性Fabの選択
Pall Forte Bio Octet Red 96を使用して、Koffスクリーニングを実施した。10mMのPBS(pH7.2~7.4)と0.1%のTween20と0.1%のBSAとを含むワーキング緩衝液において、Anti-FABCH1バイオセンサーを30分間再水和させた。大腸菌上清の試料を試験するために、最高10%最終濃度までワーキング緩衝液を加えた。次いで、候補の抗体のFabを含む大腸菌上清中に抗FABCH1バイオセンサーを浸し、4℃で12時間インキュベートした。表面に固定されたFabを有するセンサーを、ワーキング緩衝液の入ったウェルに移動させ、ベースラインを記録した(60秒)。次いで、抗原-抗体会合を達成するために、当該センサーを分析物溶液(IL-5Rα-Fc、30μg/ml)の入ったウェルに移動させた(300秒)。次いで、さらなる解離のために、当該センサーをワーキング緩衝液の入ったウェルに戻した(600秒)。各試験の後、使用したセンサーを再生させるため、それらを、再生緩衝液(10mMのGly-HCl、рH1.7)に3回入れ、次いで、さらなる実験に使用した。得られた曲線を、1:1局所相互作用モデルによる標準的手順に従ってOctet Data Analysis(バージョン9.0)を使用して解析した。
【0271】
実施例10
完全長抗体の調製
標準的技術によって、クローニングを実施した。Sal1/Nhe1制限部位において、ベクターpEE-HcIgG1中へと重鎖可変ドメイン配列をクローニングした。Sal1/BsiW1制限部位において、ベクターpEE-CK中へと軽鎖可変ドメインをクローニングした。CHO細胞株におけるタンパク質の一過性産生のために、得られた遺伝子構築物を移した。実施例1において説明したように、細菌性プロテインAにおける親和クロマトグラフィーによって、標準的方法に従ってタンパク質を単離し精製した。メルカプトエタノールおよび天然8%PAGEを補った変成12%PAGEにおいて、電気泳動を実施した(
図6)。
【0272】
実施例11
Forte Bio Octert RED 384における完全長抗体の親和性の決定
Forte Bio Octert RED 384において、ヒトIL-5Rα抗原に対する抗体の結合親和性の実験研究を実施した。標準的プロトコルおよび製造元の使用説明書に従って、20μg/mlの濃度においてヒトIL-5RαをAR2Gセンサー(ForteBio)の表面上に固定した。ワーキング緩衝液として、0.1%のTween20および0.1%のBSAを含むPBSを使用して、30℃において分析を実施した。ベースラインを記録した後、抗体溶液の入ったウェルにセンサーを300秒間浸漬し、当該複合体を会合させた。次いで、緩衝溶液における複合体解離を600秒間検出した。
【0273】
基準シグナルを引き算した後、標準的プロトコルに従い、Octet Data Analysis(バージョン9.0)ソフトウェアを使用して、1:1グローバル相互作用モデルを使用して、結合曲線を解析した。抗IL-5Rα抗体は、高親和性においてヒト抗原に特異的に結合する。表A(
図11、12、13)。
【0274】
【0275】
実施例12
IL-5Rαを発現する安定細胞株の調製
CHO-K1細胞株を、5%のFBSを伴うDMEM/F12培地において培養した。製造元のプロトコルに従い、TurboFectを使用して、IL-5RαをコードするDNAを含む遺伝子構築物のトランスフェクションを実施した。
【0276】
トランスフェクションの3日後、当該培地に250μg/mlの最終濃度までハイグロマイシンBを加えることによって14日間かけて、トランスフェクトした培養物を選択した。選択後に得られた細胞集団をクローニングした。増殖速度、集団均質性、および形態変化の不在を考慮して、IL-5Rα発現レベル/均質性の分析の結果に基づいて、IL-5Rαを発現する細胞クローンを選択した。
【0277】
実施例13
CHO-IL-5R細胞でのADCCアッセイにおけるコントロール再現可能アフコシル化抗体および候補抗IL-5Rα抗体の比較
IL-5Rαを安定して発現するCHO-IL-5R細胞株、および健康なドナーの球状血液単核細胞(PBMC)を、ADCCアッセイにおいて使用した。CHO-IL-5R細胞を、2mMのグルタミンと、5%のFBS(ウシ胎仔血清)と、0.05mg/mlのゲンタマイシンと、0.4mg/mlのハイグロマイシンBとを含むDMEM/F12培地において、5%のCO2を用いて、37℃において培養した。トリプシンによる処理によって当該表面から細胞を除去し、2mMのグルタミン、10%のFBSを伴うRPMI-1640において2回洗浄した。トリパンブルーによって染色した後、血球計を使用して生存率および細胞数を評価した。10%のFBSを伴うRPMI-1640培地において、4×105/mlの濃度の細胞の懸濁液を調製した。
【0278】
密度勾配分離によりフィコールを用いて健康なドナーの静脈血から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。次いで、DPBSにおいて細胞を2回洗浄し、2×106/mlの密度において、2mMのグルタミン、10%のFBSを伴うRPMI-1640培地に再懸濁させた。
【0279】
ADCCアッセイを実施するために、0.005ng/mlから300ng/mlの濃度の抗体の一連の50μl希釈液を、96ウェルプレートのウェルに加えた。次いで、50μl/ウェルの標的細胞懸濁液を加え、当該プレートを、37℃および5%のCO2において30分間インキュベートした。50μl/ウェルのエフェクター細胞懸濁液を加えた。当該プレートを、5%のCO2を伴う37℃で16時間インキュベートした。インキュベーション後、CytoTox96(登録商標)Non-Radio Cytotoxicity Assayキットを使用して、細胞傷害性アッセイを実施した。
【0280】
ADCC有効性は、以下の式を用いて計算した。
【0281】
【0282】
GraphPad Prism 6.0を使用して、50%効果濃度(EC50)を計算した。実験により、候補である抗IL-5Rα抗体BCD-133-03-002、BCD-133-03-020、BCD-133-03-021の効力は、抗体ベンラリズマブ(BCD-133-018-200617)より1.6倍高かった。候補は、ベンラリズマブとの関連において、お互いに対し、効力において著しい違いを示さなかった。結果を
図14、15に示す。
【0283】
実施例14
Forte Bio Octet RED 384でのカニクイザル/ウサギ/マウスIL-5Ra受容体との相互作用の分析
Forte Bio Octert RED 384において、動物IL-5Rα抗原に対する抗体の結合親和性の実験研究を実施した。標準的プロトコルおよび製造元の使用説明書に従って、20μg/mlの濃度の抗体をAR2Gセンサー(Forte Bio)の表面上に固定した。ワーキング緩衝液として、0.1%のTween20および0.1%のBSAを含むPBSを使用して、30℃において分析を実施した。ベースラインを記録した後、抗原溶液(動物のIL-5Rα)の入ったウェルにセンサーを300秒間浸漬し、当該複合体を会合させた。次いで、緩衝溶液における複合体解離を600秒間検出した。
【0284】
基準シグナルを引き算した後、標準的手順に従い、Octet Data Analysis(バージョン9.0)ソフトウェアを使用して、1:1グローバル相互作用モデルを使用して、結合曲線を解析した。抗IL-5Rα抗体は、カニクイザル抗原に特異的に結合する。表B.
図16、17、18。
【0285】
【0286】
抗体は、マウスおよびウサギのIL-5Rαと相互作用しない。
実施例15
安定細胞株の生成、抗IL-5Rα抗体の産生および精製
最適な比率の抗体軽鎖および重鎖を含んだベクター構築物を伴う親懸濁CHO-K1-S細胞株に、4D Nucleofector(Lonza)を使用して、エレクトロポレーションによってトランスフェクトすることによって、モノクローナル抗体BCD-133を産生する安定な細胞株を得た。ClonePixロボットプラットフォーム(Molecular Devices)と、異なる培養形式において抗生物質を使用する予備的ミニプール選択ステップを使用することにより、高水準のクローン系統(1000mg/l超)を得た。Octet QK System(Pall Life Sciences)分析システムを使用して、定量分析を実施した。自動化されたシステムであるTecan Genesis Workstation RSP 200/8 Automatic Liquid Handling System(Tecan)において、およびその後のMODDEソフトウェアにおける数学的処理により、基本培地および培養スキームを選択した。無血清培地および動物由来タンパク質を含まない栄養補給を用いて、生産株を培養した。HyCloneシングルユースバイオリアクタ(Thermo Fisher Scientific)50L発酵槽において、前臨床研究のためのBCD-133を調製した。
【0287】
Millistak C0HC(Merck-Millipore)デプスフィルターにおいて、培養液をろ過した。タンパク質A親和性吸着剤において、ろ過した培養培地からの抗体の一次精製を実施した。酸性条件下において、グリシン緩衝液pH3.3~3.8によって、標的タンパク質を特異的に溶離させた。ウイルス不活性化のために、収集した溶離液を酸性pHに30~60分間曝し、次いで、1MのTris-OH溶液により、pH6.5~7.0に中和した。残存するDNA、生産株細胞タンパク質、放出されたアフィン吸着剤のリガンド、凝集物、および抗体断片を除去するために、フロースルーモードにおいてCaptoAdhere吸着剤(GE HealthCare LifeSciences)を使用して、最終クロマトグラフ精製を実施した。このために、タンパク質溶液を、低伝導率(<3ミリ秒/cm2)において、調製した吸着剤pH6.5~7.0を通して流した。次いで、精製したタンパク質に対して、Viresolve PROフィルターキット(Millipore)を使用したウイルス除去ろ過、濃縮、および酢酸緩衝液(pH5.0~5.5)とトレハロースとを含む最終緩衝液に対して透析ろ過を行った。タンパク質濃度は、50mg/ml以上であった。
【0288】
実施例16
抗体BCD-133/ヒトIL-5Rα複合体のインシリコモデリング
IL-5Rαに対して特異的な変異体抗体BCD-133を作製するために、Schrodinger Suiteバージョン2017-1(Schrodinger)ソフトウェアを使用して、3D構造解析を行った。IDコード:3VA2の下においてProtein Data Bankに被着させた構造を、標的結晶構造として選択した。Schrodinger SuiteソフトウェアのPIPERツールを使用してドッキングを実施した。最適な位置の選択は、25ナノ秒分子動力学的間隔において、自由エネルギー評価(MM-GBSA法)を用いて行った(D.E. Shaw ResearchによるDesmondインストルメント)。得られた構造を、Maestro(Schrodinger)ツールを使用して視覚化した。
図19、20は、BCD-133の可変ドメインを含むモデルを示す。
【0289】
【0290】
【0291】
実施例17
ヒトIL-5Rαに対して特異的な変異体抗体BCD-133のライブラリーの構築
IL-5Rαに対して特異的な変異体抗体BCD-133を作製するために、Schrodinger Suiteバージョン2017-1(Schrodinger)ソフトウェアおよびIL-5Rαモデル(PDB 3VA2)を使用して3D構造解析を実施した(実施例16も参照されたい)。コンピュータモデルに基づいて、抗体/IL-5Rα複合体の3D構造のセットを作製し、この場合、各3D構造は、抗体親和性および複合体安定性を変更するための6以下のアミノ酸置換を含んだ。次のステップにおいて、結果として得られる構造のセットは、ライブラリーを形成し、それは、当該置換が結果として複合体安定性の増加および抗体親和性の増加を生じるバリアントを含んだ。
【0292】
以下の表において、配列番号1~3、6~8の配列を含むCDRによって示されるように、Chothia Canonical Assignmentを使用して、より一般的Kabat分類を使用せずに、CDRを決定した(このクラスタ化アルゴリズムは、他のバリアントと比較した場合、より良い抗体構造上においてループを定義する)(Chothiaら (1997) http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283697913541?via%3Dihub)。したがって、すなわち、当該クラスタ化法を、抗体親和性を変更するために使用した。
【0293】
上記のプロトコルにより得られた抗体ライブラリーは、71の抗体配列を含む。16の位置を置換した。16のうちの9つは、軽鎖CDR領域であり、他の7つの位置は、重鎖CDR領域である。独特な置換の数は60である。表Dは、元の候補ループのCDR配列、ならびに71の変異配列のそれぞれによって示される一連のアミノ酸置換を示す。当該ライブラリーからの変異CDRループの配列は、以下のようにまとめることができる。
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
実施例18
動的光散乱を使用したタンパク質凝集点によるコロイド安定性の決定
動的光散乱による研究下での試料の凝集温度を決定するために、40℃から85℃の勾配加熱を用いて、DynaPro(登録商標) Plate Reader II (Wyatt Technology Corp.)を使用して、温度に対する培地での粒子サイズの依存性を得た。結果を表Eに示す。
図21および
図22は、20mMの酢酸緩衝溶液pH=5.0、および20mMのクエン酸緩衝溶液pH=5.0における研究下での抗体に対する凝集曲線のプロファイルを示す。
【0298】
【0299】
分子BCD-133は高い熱コロイド安定性を有すると結論付けることができる(20mMの酢酸緩衝溶液pH=5.0、および20mMのクエン酸緩衝溶液pH=5.0における凝集点は、>65°である)。
【0300】
実施例19
50℃での熱応力下での熱的安定性の決定
試験試料を、恒温空気槽に入れ、50℃で72時間恒温に維持した。
加熱後、未処理の圧力を加えた試料を、UV検出器を備えるサイズ排除HPLC(SEC HPLC)によって、および非還元条件下における電気泳動によって分析した。Tosoh TSK-Gel G3000SWXLカラムにおけるAgilent 1100 HPLCシステムにおいてクロマトグラフィーを行い、220nmの波長において検出を行った。Caliper Labchip GX IIにおいて電気泳動を行った。HT Protein Express Reagent Kitを使用して標準的手順に従って、検量線用溶液の調製およびチップの調製を行った。
【0301】
50℃でインキュベートしたときのBCD-133の安定性に関する結果のデータを表Fに示し、
図23、24は、組み合わせたクロマトグラムを示す:青-未処理;赤-50℃での72時間のインキュベーション。
【0302】
【配列表】