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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】電池用亜鉛電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/06 20060101AFI20230510BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20230510BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230510BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20230510BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H01M4/06 T
H01M4/42
H01M4/36 C
H01M12/08 K
H01M4/62 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020524107
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018058096
(87)【国際公開番号】W WO2019089505
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】15/797,181
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517405976
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ,アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ ネイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ロリソン,デブラ アール.
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ジョセフ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ジェフリー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】コ,ジェシー エス.
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0093890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/06
H01M 4/42
H01M 4/36
H01M 12/08
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属亜鉛粉末および液相エマルジョンを含む混合物を提供することであって、
物品を作製するのに使用される前記金属亜鉛粉末のすべての粒径分布は、2つの極大を有する、
提供することと、
前記混合物を乾燥してスポンジを形成することと、
亜鉛の融点未満の温度で前記スポンジを焼結して焼結スポンジを形成することと、
酸化性雰囲気中、亜鉛の融点超の温度で前記焼結スポンジを加熱して、前記焼結スポンジの表面上に酸化亜鉛シェルを形成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記液相エマルジョンは、水およびデカンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記エマルジョンは、乳化剤およびエマルジョン安定剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記乳化剤はドデシル硫酸ナトリウムであり、前記エマルジョン安定剤はカルボキシメチルセルロースである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記2つの極大の一方は、2~20ミクロンの範囲にあり、
前記2つの極大の他方は、20~75ミクロンの範囲にある、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼結は、アルゴン下、200~410℃のピーク温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱は、空気中、420℃超のピーク温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記焼結は、不活性雰囲気中または真空下で行われ、
前記焼結スポンジは、金属亜鉛表面を有する、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性雰囲気は、アルゴンまたは窒素である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
酸化亜鉛を還元すること
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
酸化亜鉛は、亜鉛に対する開回路電位が5mV未満になるまで、酸化されたスポンジに負電圧を印加することによって還元される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月31日に発行された米国特許第9,802,254号の一部継続出願である、2017年10月30日に出願された米国特許出願第15/797,181号の優先権を主張する。本出願はまた、2012年11月28日に出願された米国仮特許出願第61/730,946号の利益を主張する、2013年3月15日に出願された米国特許出願第13/832,576号の一部継続出願である。これらの出願ならびにこの非仮出願の全体にわたって言及されるすべての他の出版物および特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、電池および他の用途で使用するための多孔質亜鉛電極に関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車および携帯用電子機器を含む、ますます拡大するエネルギー市場の要求を満たすための継続的な努力が、Liイオン電池のいくつかの落とし穴の克服を約束する電池技術の研究につながってきた。Liイオン電池は、低自己放電、メモリー効果がない、そして何よりも再充電性の利益を有する一方、Liイオンベースのエネルギー貯蔵のより幅広い応用は、安全性への懸念、製造コスト、および他の有望な電池技術と比べて低い比エネルギー密度(<200Wh・kg-1)によって限られている(Lee et al., “Metal-air batteries with high energy density: Li-air versus Zn-air” Adv. Energy Mater. 2011, 1, 34-50)。例えば、亜鉛-空気電池は、高い実用的な比エネルギー密度(400Wh・kg-1)、および電池内に貯蔵される必要のない酸素分子を消費する空気吸い込み式カソードに結合された、安価で環境に優しい活物質(亜鉛)の利点を有する(Neburchilov et al., “A review on air cathodes for zinc-air fuel cells” J. Power Sources 2010, 195, 1271-1291)。特定の市販用途(例えば、補聴器)において一次電池として成功しているが、亜鉛-空気のさらなる実用性は、その限られた再充電性、パルス出力の不足、および理論上の放電容量の中程度の利用率(<60%)によって妨げられている。これらの制限は、市販の亜鉛-空気電池で使用される伝統的な負極フォームファクタにおける亜鉛(Zn)の電気化学的挙動に固有のものである。
【0004】
ゲル化剤、電解質、およびバインダと混合された亜鉛粉末を負極として含有する亜鉛-空気電池を放電すると、金属亜鉛は酸化され、電解質の水酸化物イオンと反応して可溶性亜鉛酸イオンを形成する。溶解した亜鉛酸イオンは、過飽和条件に到達するまでその電気的発生点から拡散し、急速に沈殿および脱水して半導体酸化亜鉛(ZnO)を形成する(Cai et al., “Spectroelectrochemical studies on dissolution and passivation of zinc electrodes in alkaline solutions” J. Electrochem. Soc. 1996, 143, 2125-2131)。電気化学的再充電時、結果として生じた酸化亜鉛は、最初の放電と異なる形状ではあるが、還元されて亜鉛金属に戻る。充放電サイクルの数が増加すると、この形状変化はより顕著になり、最終的には、デンドライトがセパレータを貫通し、電池の動作を終わらせる電気的短絡を引き起こすまで、負極からデンドライトを成長させる。
【発明の概要】
【0005】
アノード集電体、アノード集電体と電気的に接触したアノード、電解質、カソード集電体、アノード集電体と電気的に接触した、銀または酸化銀を含むカソード、およびアノードとカソードとの間のセパレータを含む電気化学セルが、本明細書に開示される。アノードは、金属亜鉛粉末および液相エマルジョンを含む混合物を提供すること、混合物を乾燥させてスポンジを形成すること、不活性雰囲気中または真空下、亜鉛の融点未満の温度でスポンジをアニールおよび/または焼結して、金属亜鉛表面を有するアニールおよび/または焼結スポンジを形成すること、ならびに酸化性雰囲気中、亜鉛の融点超の温度でアニールおよび/または焼結スポンジを加熱して、酸化されたスポンジの表面上に酸化亜鉛シェルを含む酸化されたスポンジを形成することを含む方法によって作製される。アノードは、金属亜鉛を含む連続ネットワーク、亜鉛ネットワークに相互貫入するボイド空間の連続ネットワーク、金属亜鉛粒子コアを接続する金属亜鉛ブリッジを含む。電解質は、ボイド空間を満たす。
【0006】
本発明のより完全な理解は、以下の例示的な実施形態の説明および添付の図面を参照することにより容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】融着した、モノリスの貫通接続多孔質ネットワークおよびスポンジ内の個々の粒子の表面構造を示す、最初にアルゴン中、次いで空気中で加熱した後の3D亜鉛スポンジの写真(上)および走査型電子顕微鏡写真(中および下)を示す。
図2】(A、B)電気化学インピーダンス分光法、(C、D)X線回折、および(E、F)走査型電子顕微鏡によって測定された、加熱後状態(左:A、C、E)および電気化学的還元ステップ後(右:B、D、F)の亜鉛スポンジの比較を示す。
図3】(上)10分単位で5mA~200mAに印加電流を増加させたときの、ハーフセル構成における放電電位、および(下)印加電流の増加に対する定常状態放電電圧の線形依存性を示す。
図4】(上)記載された亜鉛スポンジアノードおよび炭素/クリプトメレン/テフロン(登録商標)複合空気カソードを使用して調製された、フルセル亜鉛-空気電池の実証、ならびに(下)-5mA・cm-2、-10mA・cm-2、および-24mA・cm-2の放電電流密度での、3つの亜鉛-空気セルの放電プロファイルを示す。
図5】(上)Zn/ZnOスポンジ対称セルの図、および(下)+24mA・cm-2と-24mA・cm-2との間で交互に負荷をかけた、45回の走査までの充放電サイクルデータを示す。
図6】(上)完全に還元された、全金属亜鉛スポンジの単一粒子のSEM、および(下)±24mA・cm-2で45回の走査にわたる充電/放電サイクル後の、Znスポンジの表面にわたる緻密なZnOコーティングの形成を実証するSEMを示す。マクロスケール(>10μm)のデンドライトは観察されなかったことに留意されたい。
図7】Znスポンジアノードを含む高出力Ag-Zn試作セルのセル構成を示す。
図8】15~500mAの範囲の印加電流(約15~500mA・cm-2、0.2~5.6A・g-1)で、Znスポンジ電極を使用したAg-Znセルの出力サイクルを示す。凡例は、プラトーを上から下へ同じ順に記載する。
図9】Znスポンジアノードを含む銀-亜鉛セルが、放電時(5.5mA・cm-2)、理論上のZn利用率の96%を達成し、初期容量(5.5mA・cm-2)の97%まで再充電され得ることを示す。
図10】開示の亜鉛構造への繰り返されるサイクルの影響を模式的に示す。
図11】先行技術の亜鉛構造への繰り返されるサイクルの影響を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、限定ではなく説明の目的で、本開示の完全な理解を提供するために具体的な詳細が述べられている。しかしながら、当業者であれば、これらの具体的な詳細から逸脱する他の実施形態において本主題を実施できることは明らかであろう。他の例では、不必要な詳細で本開示を不明瞭にしないために、周知の方法およびデバイスの詳細な説明は省略する。
【0009】
亜鉛含有二次電池の基本要件は、2つの要素からなる。亜鉛-空気の場合、空気吸い込み式カソード構造は、電池放電のための酸素還元反応(ORR)および再充電時の逆反応のための酸素発生反応(OER)の両方の触媒を含有しなければならない。亜鉛アノード複合体は、デンドライト阻害添加剤またはそのアーキテクチャのいずれかが、亜鉛構造全体にわたって電流密度が均一に分布し、それによりデンドライト形成の可能性および最終的な電池の短絡を減少させるように設計されなければならない必要がある。本開示は、これらの亜鉛スポンジが亜鉛含有二次電池システムに使用される用途を研究するために、この亜鉛アーキテクチャの再設計に着目している。
【0010】
現在および開発中の高性能亜鉛含有電池で使用する負極として、高多孔質で、モノリスであり、かつ3D貫通接続した亜鉛スポンジで、粉体層亜鉛アノードを置き換える手法が、本明細書に開示される。概して、亜鉛スポンジは、エマルジョン安定剤の存在下、2相混合物の亜鉛粉末のスラリーを形成して、高粘性だが注入可能な混合物を生成し、それを型中で乾燥し、続いて熱処理してロバストなモノリス電極を得ることによって作製される。亜鉛スポンジは、相互接続した細孔ネットワーク(10~75μmの大きさ)により高表面積を示し得、それが、市販の亜鉛含有電池と比べて、達成可能な出力密度の増加につながり得る。電気化学的還元ステップ後、デバイスで使える状態の電極は、3Dに相互接続し、高導電性、高多孔質で、電解質が浸潤しており、構造的に堅固であり、亜鉛アノードを使用する再充電可能電池で使用するか、または亜鉛のより高い利用率が望まれる一次電池の、理想的なプラットフォームを提供する。完全に金属性のスポンジネットワークは、改善された電流分布の電子環境を提供し、それにより、電気的短絡につながるデンドライトの形成を阻害する。液式ハーフセル構成での亜鉛スポンジアノードの予備的な特性評価、およびフルセル亜鉛-空気電池試作品の評価、および有害なデンドライト形成のない再充電性の実証を示す。米国特許出願公開第2016/0093890号は、参照により本明細書に組み込まれ、そこに開示されたすべての材料および方法は、本開示の主題に適用される。
【0011】
電極構造全体にわたって改善された電流分布を可能とする、完全に金属性の、3Dの高導電経路は、充放電サイクルが、不均等な反応位置およびデンドライトの形成を促す高い局所電流密度を有するのを防止する(Zhang, “Electrochemical thermodynamics and kinetics,” Corrosion and Electrochemistry of Zinc. 1996, 1st Ed. ; Arora et al., “Battery separators” Chem. Rev. 2004, 104, 4419-4462)。加えて、亜鉛の高多孔質ネットワークは、放電時に付随する亜鉛酸塩の飽和がより速くかつZnOへの脱水がより急速であり、それにより形状変化を最小限にする、電解質体積に対して高い表面積を有する閉じ込められた体積要素を可能とする。
【0012】
電極は、2つの共連続相互貫入ネットワークを含有する。一方は固体であり、亜鉛を含み、他方はボイド空間である。したがって、電極は、一般にスポンジと呼ばれる形態であり得る多孔質亜鉛構造である。亜鉛ネットワークは、ネットワークの表面および内部の両方に亜鉛を含有し得る。すなわち、非亜鉛多孔質基材上にコーティングされた亜鉛ではなく、全体を通して純亜鉛または純亜鉛に近いものであり得る。亜鉛ネットワークは、セル中で電極が放電されると表面上に形成する酸化亜鉛および/またはオキシ水酸化亜鉛を含んでもよい。亜鉛ネットワークは、3次元の融着したモノリス構造である。構造は、単に亜鉛粒子同士をプレスすることでは作製されないであろう。プレスされた粒子は互いから分離し得るため、そのようなプレス材料は、亜鉛粒子同士が融着していないであろう。亜鉛ネットワークは、5wt%未満の酸化亜鉛、またはさらには1wt%未満の酸化亜鉛を有してよい。より低い酸化亜鉛のパーセンテージは、より良好な電極性能をもたらしてよいが、亜鉛は空気中で自然酸化し得るため、電極を完全に酸化亜鉛非含有にすることは不可能な場合がある。
【0013】
本明細書で使用される場合、ボイド空間は、亜鉛ネットワークまたはそれに取り付けられた任意の他の材料ではない構造内の体積を指す。ボイド空間は、電解質などのガスまたは液体で満たされてよく、それでもなおボイド空間と呼ばれてよい。
【0014】
電極を作製するための方法の例は、液相中に亜鉛粉末のエマルジョンを提供することから始まる。任意の粒径の亜鉛粉末が使用されてよく、100μm以下が挙げられるが、これに限定されない。より小さい粒径は、より良好な電極性能をもたらし得る。エマルジョンの液相は、蒸発できかつその中で亜鉛粉末が乳化できる任意の液体またはその混合物であってよい。水およびデカンの混合物は、1つの好適な液相である。乳化は、乳化剤および/またはエマルジョン安定剤を加えることによって改善されてよい。1つの好適な乳化剤は、ドデシル硫酸ナトリウムであり、1つの好適なエマルジョン安定剤はカルボキシメチルセルロースである。他のそのような好適な乳化剤およびエマルジョン安定剤は、当該技術分野で既知である。亜鉛金属は、インジウムおよびビスマス、またはガス発生およびスポンジの腐食を抑制する他のドーパントもしくはエマルジョン添加剤で合金化されてよく、これは電極性能を改善し得る。亜鉛およびエマルジョンの混合物は、例えば、2~125Pa・s、2~75Pa・s、または50~125Pa・sの粘度を有し得る。
【0015】
亜鉛粉末は、異なる平均粒径を有する2つ以上の異なる亜鉛粉末のブレンドであってよい。例えば、第1の亜鉛粉末は20~75ミクロンの範囲の平均粒径を有してよい。第2の亜鉛粉末は2~20ミクロンの範囲の平均粒径を有してよい。2つの亜鉛粉末の組み合わせは、両粉末源からの重み付けされた寄与を表す、1リニアインチ当たりの平均細孔を生成するであろう。複数の種類の亜鉛粉末がブレンドされると、粒径分布のグラフは、少なくとも2つの極大を示すであろう。そのような粒径分布では、電極の作製に使用された亜鉛粉末のどの部分も省かれるべきではないことに留意されたい。エマルジョン中の亜鉛のすべてを分析すると、粒径中に少なくとも2つの極大が存在するであろう。複数の粒径の使用は、モノリス中の亜鉛のより高い体積密度および増加した比エネルギーをもたらし得る。
【0016】
エマルジョンは、結果として生じるZn/ZnOモノリスの所望の大きさおよび形状を規定する容器中に導入され、その後、乾燥されて液体成分を除去される。乾燥されたエマルジョンは、本明細書で「スポンジ」と表される、Zn/ZnO粒子およびボイドを含む多孔質の固形物をもたらし、この多孔質物体は、亜鉛粉末粒子同士が融着していないため、脆い場合がある。
【0017】
型は、後続の熱処理ステップで到達する温度に耐えられる金属基材、メッシュ、もしくは箔(スズなど)、または合金基材、メッシュ、もしくは箔(スズコーティング銅など)を含んでよい。このプロトコルは、別の金属に金属的に融着した電極をもたらす。このプロトコルの適用としては、電池などの電気化学セルに使用される集電体にスポンジ電極を電子的に接続することが挙げられるが、これらに限定されない。この手順は図12に示され、型の底部は開いており、亜鉛粒子が通過できない網目の大きさであり、(下)後続の熱処理ステップで到達する温度に耐えられる金属を含む金属メッシュ(スズコーティング銅)の上に配置される。メッシュは、亜鉛粒子のd50粒径未満の平均開口径を有してよい。
【0018】
次に、スポンジは、低酸素分圧下でアニールおよび/または焼結されてアニールおよび/または焼結スポンジを形成する。そのような条件は、不活性雰囲気中(例としてはアルゴンもしくは窒素流が挙げられ得る)または真空下のいずれかで見られてよく、それらすべては、微量の酸素を含有する。アニールおよび/または焼結は、亜鉛の融点未満の温度で行われ、亜鉛の融点の少なくとも3分の2であってよい。温度傾斜は、例えば、2℃/分であってよく、滞留時間は、例えば、少なくとも30分であってよい。アニールおよび/または焼結は、全体のモルフォロジーを著しく変化させるのに十分な融解を引き起こすことなく、亜鉛粒子を融着させてモノリス構造にする。構造は、スポンジのままである。亜鉛粒子同士を融着させる任意のアニールおよび/または焼結条件が、使用されてよい。条件の例としては、アルゴン中、200~410℃のピーク温度でのアニールおよび/または焼結が挙げられるが、これらに限定されない。融着構造は、粒子同士を融着させる相互接続ブリッジを有する金属亜鉛を含有する。
【0019】
次に、アニールおよび/または焼結スポンジは、酸化性雰囲気中で加熱されて、部分的に酸化されたスポンジの表面上に酸化亜鉛を生成する。加熱は、亜鉛の融点超の温度で行われる。この第2の加熱ステップは、電池または他のデバイスへの組み込みなどのさらなる取り扱いのために、スポンジの強度を改善し得る。酸化亜鉛は、亜鉛の融点よりはるかに高い温度で融解せずに分解するため、高温でもスポンジ構造を保存する。融着亜鉛ネットワークを覆う酸化亜鉛シェルが形成され、シェル内の金属亜鉛ブリッジおよび粉末粒子コアを略保存する。ブリッジの一部またはすべてが、部分的または完全に酸化亜鉛に変換されてよいが、物理的なブリッジは破壊されない。酸化亜鉛シェル内で、金属亜鉛は、構造および融着ブリッジの強度を潜在的にさらに増加させつつ、スポンジのモルフォロジーを変えることなく融解してよい。酸化亜鉛を形成する任意の加熱条件が、使用されてよい。条件の例としては、空気中、420~650℃、700℃、少なくとも亜鉛の融点超、または亜鉛の融点より少なくとも150℃超で少なくとも30分間の加熱が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
次に、スポンジは、亜鉛の融点以上の温度で、例えば、420~650℃、700℃、少なくとも亜鉛の融点超、または亜鉛の融点より少なくとも150℃超で30分間以上、不活性雰囲気に戻される。この第3の加熱ステップは、前のステップで表面上に形成された酸化物によって形状は保護されつつ、さらなる酸化物形成を終わらせ、スポンジ骨格の金属コアをさらに融着させることによって、スポンジの強度および相互接続性をさらに改善し得る。不活性雰囲気へ戻すことは、酸化亜鉛へのさらなる変換を停止させ、コア中の高い亜鉛量を維持する。
【0021】
任意選択で、酸化亜鉛はその後、電気化学的に還元されて亜鉛に戻り、亜鉛金属スポンジを形成する。このスポンジは、相互貫入する亜鉛およびボイド空間ネットワークを含有する。還元は、電極が、電池などの対象とするデバイス中に配置された後に行われてよい。酸化亜鉛を還元する任意の電気化学的条件が、使用されてよい。例えば、亜鉛に対する開回路電位が5mV未満になるまで、酸化されたスポンジに負電圧を印加することによって行われる。上記のように、融着ブリッジは略保存され、変換されて金属亜鉛に戻る。一部の亜鉛は室温でも酸化するため、酸化亜鉛の一部の量は、亜鉛ネットワークの表面上に存在する。
【0022】
この構造は、真空下、亜鉛の融点超の高温で乾燥エマルジョンを加熱する単回の加熱ステップによって作製されたものとは異なる。真空は完璧ではなく、偶発的な分子酸素が常に存在するため、そのような加熱は、金属亜鉛ブリッジが形を成して粒子同士が融着し得る前に、個々の亜鉛粒子上に酸化亜鉛のシェルを急速に形成することになる。これらのブリッジがないと、そのような構造は、非常に脆くなり、本開示の構造より低い電気的相互接続性を有し得る。
【0023】
最終的な電極は、電気化学セルに使用されてよい。そのようなセルは、アノード集電体、アノード集電体と電気的に接触した亜鉛スポンジ電極を含むアノード、ボイド空間を満たす電解質、カソード、カソード集電体、およびアノードとカソードとの間のセパレータを含んでよい。電気化学セルは、亜鉛-空気、銀-亜鉛、もしくは亜鉛-酸化マンガン電池、または亜鉛電極を含む任意の他の電池であってよい。そのような電池の構築は、当該技術分野で既知である。セルのアノードが完全または部分的に放電されると、酸化亜鉛および/またはオキシ水酸化亜鉛が、亜鉛ネットワークの表面上に形成され得る。
【0024】
図10は、亜鉛スポンジ構造および繰り返されるサイクルの影響を模式的に示す。上の画像は、スポンジの3次元(3D)体積全体にわたって相互接続した導電性金属のコアがその中にある、モノリスの非周期的構造を示す。3D配線された構造が、当該技術分野で既知の他の亜鉛粉末配合物より均一な電流分布を確実なものにすることと関連して、本明細書で使用される場合、「非周期的」は、構造が規則的または幾何学的パターンに従わず、全体を通して略均一であることを意味する。ボイド空間のすべては、混合物を乾燥する同じ機構から生じる。異なる大きさまたは種類のボイド空間を作り出すために、テンプレートなどの他の手段は使用されない。元の亜鉛粒子間の境界は、必ずしも識別できない。構造は、3次元に金属的に相互接続している。下の図は、放電時、Znスポンジ構造のすべての表面は酸化亜鉛で覆われることを示す。再充電は酸化亜鉛を除去し、構造を、その本質的に全金属の形態に回復させる。サイクルは、Parker et al., Science, 356, 415-418 (2007)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、マクロスケールのデンドライトを形成することなく何回も繰り返され得る。
【0025】
非周期的構造は、固められた、脆い、成型されたフォームファクタを作り出すための、乳化液のゆっくりとした蒸発中に、(よく分散した亜鉛粒子を含有する)よく混合されたエマルジョンが沈降するときの、金属亜鉛粉末の自然な充填によって形成されてよい。型から除去した後、非酸化性雰囲気中、元の金属粉末の融点直下の温度での、固められた、型の無いボイド固体形状のアニールは、元のエマルジョンの有機成分が熱分解されて揮発性種になり、それにより元のエマルジョンから固められたモノリス物体のボイド固体構造から除去されるため、粒子間の原子スケールのブリッジが形成することを確実なものとする。酸化性雰囲気中、元の金属亜鉛粉末の融点より数百℃高い温度である650℃での、アニールされたボイド固体形状のか焼は、内部の金属亜鉛が融解して流れることを確実なものとし、一方、アニールされたボイド固体形状のボイド固体構造は、アニールされた固体ネットワークの酸化亜鉛の堅いシェルによって捕らえられ、酸化物コーティングされた固体ネットワークのボイド中への崩壊または沈み込みを防ぐことによって、アニール多孔質構造を維持する。最終的な多孔質モノリスフォームファクタ中のボイドネットワークの一般的な大きさは、亜鉛エマルジョンの作製に使用された粒子の大きさによって確立される。これは、1~100ミクロンの細孔径、および1リニアインチ当たり160~6000の細孔、または具体的には、1リニアインチ当たり平均300超の細孔を生成し得る。第1の亜鉛粉末は、1リニアインチ当たりの平均細孔が169~635の範囲の領域を生成してよい。第2の亜鉛粉末は、1リニアインチ当たりの平均細孔が635~6350の範囲の領域を生成する。2つの亜鉛粉末の組み合わせは、両粉末源からの重み付けされた寄与を表す、1リニアインチ当たりの平均細孔を生成するであろう。
【0026】
図11は、先行技術の亜鉛構造および繰り返されるサイクルの影響を模式的に示す。しばしばバインダおよびゲル化剤と、共にゆるく結合した亜鉛粒子の特質は、不均一な電流分布をもたらす。下の図は、繰り返される放電および再充電が、酸化亜鉛の不均一な形成、したがって充電時の亜鉛の不均一な再生を生じることを示す。放電後、酸化亜鉛を含有する構造の一部は、もはや回路に接続されない場合があり、その結果、電池の負荷は狭い領域に向けられ、亜鉛デンドライトの形成をもたらし得る(McBreen, “Rechargeable Zinc Batteries” J. Electroanal. Chem. 1980, 168, 415-432)。
【0027】
他の先行技術の亜鉛構造が、テンプレートとして多孔質ポリマーフォームを使用して作製されてよい(例えば、Arrance, US Pat. No. 3,287,166)。テンプレートは、スラリーで満たされ、燃焼して飛ばされ、その結果、元のテンプレート中でボイドであった部分が固体となる。テンプレート中で固体であった部分は、大きなスケールのボイドとなる。大きいボイドは直径がミリメートルのオーダー、1リニアインチ当たりの全細孔は50未満であり得る。
【0028】
他の考えられる用途としては、負極として亜鉛を含有する様々な電池システムでの亜鉛スポンジの使用が挙げられる。フルセル電池(例えば、銀-亜鉛、ニッケル-亜鉛、亜鉛-炭素、亜鉛-空気等)は、電解質添加剤の有無にかかわらず、本明細書に記載された亜鉛スポンジの作製手順を変更することなく調製され得る。本明細書に記載されたフルセル電池は、セルホルダとしてナイロンスクリューキャップを利用してよい。これの代替としては、電極構成要素として亜鉛を含有する任意のセルホルダが挙げられる。他の代替は、デンドライト形成を抑制するための手段として均一な電流分布を有する多孔質亜鉛モノリスを生成しようとする、3D貫通接続亜鉛構造を得るように設計された作製手順を含み、サイクル性を向上させ、かつ/または一次もしくは二次亜鉛含有電池における亜鉛利用率を高める。
【0029】
好適な電解質はKOHである。機能するセルをもたらす任意の量および濃度が、使用されてよい。
【0030】
高出力動作が可能でありかつ再充電性が向上した亜鉛含有電池の開発には、高表面積の電気化学界面を提供し、改善された電流分布を支持し、それにより電着したZnの過成長および有害なデンドライト形成を抑制する、亜鉛電極アーキテクチャの再設計が必要である。市販の亜鉛含有電池(例えば、亜鉛-空気)で負極として主に使用されている伝統的な粉体層亜鉛複合体は、Znの理論上の比容量の低い利用率(<60%)、電解質添加剤の高い含有量、不均一な電流分布、および限られた再充電性に悩まされている。本明細書に開示される電極は、これらの欠点を著しく改善する新規亜鉛アノードの調製を記載する。
【0031】
亜鉛粉末エマルジョンの形成とともにそれに続く2ステップのアニールおよび/または焼結ならびに電気化学的還元ステップは、様々な亜鉛含有電池のデバイスで使える状態の、ロバストで拡張可能なモノリス亜鉛スポンジをもたらす。結果として生じる亜鉛スポンジは、2つの相互貫入する、亜鉛金属およびボイドの共連続ネットワークを含み、電極の構造全体にわたって電流分布を改善する。この特徴は、アノードの3Dアーキテクチャに固有であり、普通なら、必然的に電池の短絡を引き起こすデンドライトの成長を促す、反応中心の偏りにつながるはずの濃度勾配の形成を妨げる。以下の例で使用される一次亜鉛-空気電池は、市販の粉体層亜鉛アノード複合体より>20%多くの亜鉛を利用し、それにより、改善された電流分布の金属ネットワークから予期される別の特徴である、より高い比エネルギーを提供する。加えて、亜鉛金属のネットワークと共連続した高多孔質ネットワークは、放電時の亜鉛酸塩のより速い飽和およびZnOへのより急速な脱水を促進し、それにより形状変化を最小限にする、高い表面積対電解質体積比を有する閉じ込められた体積要素を可能とする。この考えは、改善された電流分布から生じるデンドライト抑制と相まって、市販の亜鉛-空気電池のZnアノードでは見られない再充電性を可能とする。
【0032】
以下の実施例は、具体的な適用を説明するためのものである。これらの特定の実施例は、本出願の開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0033】
実施例1
モノリス亜鉛スポンジの作製-亜鉛スポンジ電極の典型的な調製は、水およびデカン中の亜鉛粉末のエマルジョンの形成から始まる。小さいビーカーまたはシンチレーションバイアルに、300ppmのインジウムおよび285ppmのビスマスも含有する6.0gの亜鉛粉末(Grillo-Werke AGから入手したまま)を加えた。インジウムおよびビスマス添加剤は、鉛および水銀などの有毒な添加剤の必要性を排除しつつ、アルカリ電解質中の水素発生の過電圧を上昇させるために必要である(Glaeser, U.S. Patent No. 5,240,793)。水(1.027mL)およびデカン(2.282mL)を、乳化剤であるドデシル硫酸ナトリウム(6.3mg)およびエマルジョン安定剤であるカルボキシメチルセルロース(0.253g)と共に加えた。続く亜鉛電極の作製に使用される亜鉛エマルジョンの形成におけるこれらの成分の使用は、以前に記載されている(Drillet et al., “Development of a Novel Zinc/Air Fuel Cell with a Zn Foam Anode, a PVA/KOH Membrane, and a MnO2/SiOC-based Air Cathode” ECS Trans. 2010, 28, 13-24)。混合物を、1,200rpmの速度で>15分間急速に撹拌して、エマルジョン中への亜鉛の完全な取り込みを確実なものとした。自由に流れるが粘性のあるエマルジョンを、円筒形のポリエチレン型に注入し、一晩、空気乾燥させた。この例で使用された型は直径1.15cmであり、厚さ1~4mmの亜鉛スポンジを得ることができたが、この手順は、他の大きさおよび形状に拡張可能である。16~24時間の乾燥後、この段階では脆い亜鉛モノリスを、型をひっくり返して離型させた。亜鉛スポンジを強化するために、試料を管状炉に移し、アルゴン流下、2℃/分の正の傾斜率で400℃のアニール温度に加熱し、2時間保持した。その後、アルゴン流を除去し、管を周囲空気に開放し、第2のステップのために2℃/分で650℃に加熱し、2時間保持した。この最終ステップは、亜鉛スポンジにさらなる強化特性を与えるために必要である針状ZnOのシェルで、アニールされた亜鉛粒子の表面を覆う。2時間後、速度制御をせずに管を冷却させた。結果として生じるモノリスを、図1に見られるように、走査型電子顕微鏡(SEM)で特性評価した。
【0034】
実施例2
亜鉛-空気電池の負極としての亜鉛スポンジ-亜鉛スポンジへの酸化物の意図的な導入は、機械的完全性を向上させ、亜鉛スポンジを、破壊のリスクを減少させて定常的に取り扱うことを可能とするが、亜鉛上の酸化物の層は、放電時の初期容量を低下させ、亜鉛含有セルを組み立てると接触抵抗を導入する(図2Aの電気化学インピーダンス分光法(EIS)からのナイキスト線図を参照)。ZnOコーティングを電気化学的に還元するために、スポンジを、6M KOH中にPt対極および亜鉛擬参照電極を有する3電極構成のハーフセルの作用電極の部分として使用する。亜鉛スポンジを、スズコーティング銅メッシュの外皮の中に配置して作用電極を形成した。(スズには亜鉛とのガルバニック適合性があり、普通なら他の集電体(例えば、ニッケル、銅等)では激しいはずの電極の腐食が抑制されるため、スズ接点が使用された。)典型的な実験シーケンスでは、セルの開回路電位(OCP)を金属亜鉛擬参照電極に対して測定し、その後、初期EIS測定を行った。初期OCPは、Znに対して40mVを超え、実インピーダンス(RCT)は金属接触で予期されるものよりはるかに高く、亜鉛スポンジ上の、導電性の乏しい酸化亜鉛コーティングの存在と一致した。酸化物コーティングスポンジの、その金属亜鉛対応物への電気化学的還元を、-50mVの定電位を30分間印加することによって達成し、さらなるEISおよびOCP測定が続いた。このシーケンスを、開回路電位が、亜鉛金属への完全な還元を示す0mVまたはその付近で安定するまで繰り返した。電荷移動抵抗は、抵抗が60Ω・cm-2を超えた加熱後亜鉛スポンジと比較して、電気還元亜鉛スポンジでは0.2Ω・cm-2未満に減少した(図2A、B)。ZnOのZn金属への変換を、X線回折を使用して確認し(Rigaku、図2C、2D)、X線回折はZnO反射の減少を示し、電気還元後、金属亜鉛のみを残した。加えて、還元後、亜鉛モノリスの多孔度または機械的強度の明らかな減少はなかったが、ZnOがZnに還元されて失われた酸素質量、およびアルカリ電解質へ失われる可溶性生成物を形成するいくらかの亜鉛の腐食のため、測定可能な質量減少が記録された。12の対照実験に基づいて、上に記載された熱処理を使用してアニールおよび酸化された亜鉛スポンジを使用して、この電気化学的還元ステップに関連した平均質量減少は、23.9±3.4%である。図2E、2Fは、還元ステップ後のモルフォロジー変化を強調し、調製されたままのスポンジに関連した酸化亜鉛のシェルを有効に除去している。
【0035】
上に記載された還元ステップは、亜鉛含有電池に組み込まれると普通なら容量を制限しかつ抵抗を増加させるはずの、スポンジ中に存在する酸化亜鉛の量を低下させることに成功した。ハーフセル試験構成は、フルセル電池に使用する前の、アノードのインピーダンス特性の品質検査を提供するが、アノードとしての亜鉛スポンジの出力能力の研究にも有用なツールであり得る。例えば、亜鉛モノリススポンジ(直径1.15cm、厚さ3.5mm)を、LOCTITE(登録商標)Hysol(登録商標)1C(商標)エポキシで、亜鉛スポンジの面を除いてすべての構成要素を完全に取り囲んで、スズ集電体に取り付けた。亜鉛に対して-50mVの還元電圧を50分間印加し、続いて亜鉛スポンジを定電流(5mA)で10分間放電(すなわち酸化)して定常状態放電電圧を測定した。このプロトコルを、図3に示すように印加電流を増加させて繰り返した。定電流実験は、印加電流に対する定常状態放電電圧の線形依存性を明らかにした。200mA(193mA・cm-2)の電流をかけても、この電流密度を維持するために必要な過電圧は、わずか230mVであった。高負荷(電流密度)でも低い過電圧を維持する能力は、亜鉛スポンジアーキテクチャが可能とする特性である。亜鉛-空気電池を含む従来の亜鉛含有電池は、典型的には、開回路電圧に対して500mVの降下までで動作する(Linden, “Zinc/air cells” Handbook of Batteries. 1984, 2nd Ed.)。
【0036】
亜鉛スポンジは、Znに完全に還元されると、フルセル電池の負極として使用できる状態であった。予備試験に使用される試作亜鉛-空気セルは、セルの空気吸い込み側として働く上面上に6mm穴が付いた、スナップ式の、1.8cmのナイロンスクリューカバー(Hillman Group)をベースとする。白金線をスズ集電体に取り付け、電池試験中の負端子として使用した。別の電気化学的還元ステップに続いて、依然として6M KOHが浸潤している亜鉛スポンジを、100mLの6M KOH中に溶解した6gのポリアクリル酸から合成したゲル電解質に浸した。フルZn-空気セルを調製するために、ゲル浸漬亜鉛スポンジから過剰のゲルを軽く拭き取り、薄いコーティングのみを残した。粘性ゲル電解質は、溶媒の蒸発を遅くしつつ、亜鉛スポンジが完全に液体電解質が浸潤したままであることを確実なものとする。亜鉛スポンジをスズ集電体上に配置し、その後、亜鉛スポンジの直径(1.15cm)よりわずかに大きい寸法の水性適合性セパレータをその上に配置した。正極端子は、ニッケルメッシュ片に取り付けられた、ケッチェンブラック炭素、クリプトメレン、およびテフロン(登録商標)の空気カソード複合体を含み、白金線リードに取り付けられる。これらの亜鉛スポンジアノードを利用した典型的な亜鉛-空気フルセルの結果を、図4に示す。これらの例では、-5.0、-10、および-24mA・cm-2でフルセルを放電する前に、すべての初期OCPを1.4V超で測定した。これらのセルの平均放電電圧は、各々0.9Vのカットオフ電圧で、それぞれ1.25、1.19、および1.13V、であった。-5、-10、および-24mA・cm-2の放電で得られた対応する比容量は、728、682、および709mAh・gZn -1であり、それぞれの比エネルギー密度が907、834、および816Wh・kgZn -1、これらのセルの対応する亜鉛利用率は、89%、83%、および86%であった。これらの計量値は、一般に亜鉛の理論上の比容量の50~60%しか利用しない、標準的な市販の亜鉛粉末複合アノードに比べて改善している(Zhang, “Fibrous zinc anodes for high power batteries.” J. Power Sources. 2006, 163, 591)。
【0037】
実施例3
亜鉛スポンジアノードの可逆性-電池構成における3D亜鉛スポンジの可逆性を研究するために、最適化されたカソード(例えば、ORRまたはOERのための二機能触媒性)を必要としない、水性適合性セパレータによって分離された全金属Znスポンジ対Zn/ZnOスポンジを含有する対称電気化学セルを使用した。Zn/ZnOスポンジを、10分単位で亜鉛に対して-50mVを印加することによって加熱後スポンジから存在するZnOの一部を電気還元することにより、調製した。EISおよびOCPを、各サイクル後に測定した。EISのRCTが0.5Ω・cm-2を下回ったらこのスポンジの還元を終わらせたが、OCPはZnに対して30mVより高いままであり、スポンジネットワーク全体にわたって高い導電性を示したが、ZnOは残っていた。第2の加熱後スポンジを、Znに対して0mVに非常に近いOCPを有する全金属Znスポンジに完全に還元されるまで、実施例2に記載されたように、30分単位で亜鉛に対して-50mVで還元した。対称セルの構築では、負極は、スズ箔集電体と電気的に接触した全金属Znスポンジであり、正極は、やはりスズ箔集電体と電気的に接触したZn/ZnOスポンジ電極であった。両スポンジ電極は、6M KOHを予備浸潤され、水性適合性セパレータによって分離された(図5参照)。対称セルの評価の第1のステップでは、-24mA・cm-2を1時間印加してZn/ZnOスポンジ中のZnOの一部を還元したが、これは対向するスポンジ中のZnの酸化に連動する。その後、逆反応を開始させる第2のステップで、+24mA・cm-2を印加した。フル対称セルを、ステップの1つが±100mVの閾値を超えるまで、±24mA・cm-2でサイクルした。電気的短絡は観察されなかった。この例では、対称セルを、約23%の放電深度で45の充放電サイクルにわたって、サイクルした。サイクル後の分析では、電極をセルから除去し、徹底的にすすぎ、真空中で一晩乾燥した。走査型電子顕微鏡写真は、サイクル後、スポンジがその多孔度を維持したことを示す(図6)。加えて、形状変化、デンドライト形成、または不均一な堆積の明らかな徴候は、観察されなかった。亜鉛スポンジのサイクルは、花弁状デンドライトではなく、モノリスの粒子の表面上の亜鉛または酸化亜鉛の緻密層をもたらし、このうまく配線され、よく調べられた亜鉛スポンジアーキテクチャの結果であるサイクル性の増加を実証した。
【0038】
実施例4
増加した体積密度を有するモノリス亜鉛スポンジの作製-より高い体積密度(1.79~2.14g・cm-3)を有する亜鉛(Zn)スポンジ電極の調製の例は、水およびデカン中のZn粉末のエマルジョンの形成から始まった。小さい容器中、乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム、21mg)およびエマルジョン安定剤(カルボキシメチルセルロース、0.844g)を、脱イオン水(2.054mL)およびデカン(4.565mL)の撹拌した混合物に加え、300rpmで10分間撹拌した。この混合物に、Zn金属粉末(20g)を加えた。この例の粉末は、2つの供給源からのZn粒子:(i)300ppmのインジウムおよび300ppmのビスマスを含有する約50μmの平均粒径を有するZn粉末、ならびに(ii)200ppmのインジウムおよび200ppmのビスマスを含有する<20μmの平均粒径を有するZn粉末を含む混合物であった。この例で調製されたZnスポンジでは、大きい粒子は粉末混合物の30wt%を構成し、一方、小さい粒子は残りの70wt%を構成したが、他の比率が使用されてよい。インジウムおよびビスマス添加剤は、製造業者によって導入され、鉛および水銀などの有毒な添加剤の必要性を排除しつつ、アルカリ電解質中の水素発生の過電圧を低下させる働きをする(Glaeser, U.S. Patent No. 5,240,793)。撹拌した油/水混合物にZnを加えた後、撹拌速度をゆっくりと1,200rpmに上げ、1,200rpmで少なくとも15分間撹拌して、エマルジョン中へのZn粉末の完全な取り込みを確実なものとした。自由に流れるが粘性のあるエマルジョンを、直径1.15cmのポリエチレン型に、0.5mLのアリコートで分注し、周囲雰囲気および周囲温度下で一晩、この例では16時間、静置および乾燥させた。乾燥後、型をひっくり返してZnモノリスを離型させ、離型したZn形態は、この段階では脆かった。亜鉛スポンジを強化するために、試料を管状炉に移し、不活性ガス流(例えば、アルゴン)下、2℃/分の正の傾斜率で410℃のアニール温度に加熱し、2時間保持した(m.p.Zn=419.5℃)。その後、不活性流を除去し、管を周囲空気に開放し、その後、第2のステップで、静止空気中、2℃/分で650℃に加熱し、2時間保持した。このステップは、Znスポンジにさらなる強化特性を与える熱成長ZnOのシェルで、アニールされたZn粒子フレームワークの表面を覆った。2時間後、速度制御をせずに管を冷却させた。結果として生じるモノリスは、1.79~2.14g・cm-3の範囲の(または非多孔質Zn金属に対して25~30%の)体積密度を有し、そのため本明細書では“Zn30”と称する。
【0039】
実施例5
高出力銀-亜鉛電池の負極としての亜鉛スポンジ-熱処理されたZnスポンジを金属Zn類似体に変換する電気化学的還元ステップに続いて、試作品試験の前のZn活物質容量の正確な評価を得るために、実施例4のZnスポンジを脱イオン水で徹底的にすすぎ、乾燥し、再秤量した。約1cm-2の還元Znスポンジを、6M KOHを浸潤させ、スズ集電体の上に配置し、その後、4つのセパレータ:微多孔質(例えば、Celgard 3501)、2層のCELLOPHANE(登録商標)、および1層の不織布(Freudenberg 700/28K)をその上に配置した。CELLOPHANE(登録商標)および不織布にも、セルの組み立ての前に6M KOH電解質を浸潤させた。正極端子は、白金線に取り付けられたPtまたはAg箔片と機械的に接触した酸化銀(AgO)カソードを含んでいた。AgOカソードを、AgO(0.5g)を(1cmのペレットダイセット中で)7,000psiにプレスしてAgメッシュにすることによって作製した。すべてのセル材料を、1.8cmのナイロンスクリューカバー(Hillman Group)中に収めた。セル組み立て体の拡大図を図7に示す。
【0040】
Znスポンジアノードを使用するAg-Znセルは、再充電可能用途にも使用され得るが、この例の試作Ag-Znセルは、Znスポンジの出力能力を実証するために調製された。この例では、15、25、50、100、200、300、400、500mA(約15~500mA・cm-2、0.2~5.6A・g-1の質量で正規化された値に相当する)でAg-Znセルを放電する前、開回路電圧は約1.66Vと測定された。図8のセルの例について、電圧下限は、1.0Vに設定され、調査された電流密度範囲では到達されず、指定された負荷で出力限界を示さなかった。8つの出力エクスカーション(power excursion)の合計比容量は、合計で246mAh・gZn -1になり、存在する理論上のZn活物質の全量に対して30%の放電深度と等価であり、この例で示された各出力ステップが、1秒未満のパルスではなく、持続した、連続的な負荷のものであることを強調する。セルによって伝達された対応する比出力(電流×平均電圧)は、印加電流密度に依存して、260~5,800W・kgZn -1の範囲である。パッケージ化および最適化されたAg-Znセルでは、セルの20%がZnスポンジアノードを含有すると仮定すると、比出力は、印加電流密度に依存して、約50~1,200W・kg-1に等しいであろう。
【0041】
実施例6
高容量再充電可能銀-亜鉛電池の負極としての亜鉛スポンジ - 熱処理されたZnスポンジを金属Zn類似体に変換する電気化学的還元ステップに続いて、試作品試験の前のZn活物質容量の正確な評価を得るために、実施例4のZnスポンジを脱イオン水で徹底的にすすぎ、乾燥し、再秤量した。この例で使用された約1cm-2の還元Znスポンジの全質量は、0.101gであった。6M KOH電解質を浸潤させたら、前の実施例に従ってAg-Znセルを構築した。Znスポンジアノードの、高い、Znの質量で正規化された容量に放電する能力、およびデンドライトによる短絡を誘発することなく再充電される能力を、約5.5mA・cm-2(C/15)の電流密度でAg-Znセルを徹底的に放電し、その後、同じ割合で再充電することによって調査した(図9)。セルは、1.50Vの平均電圧で放電し、96%のDODZn(787mAh・gZn -1、1181Wh・kgZn -1)に到達し、この極端な深度から97%の容量まで再充電できた。デンドライトによる短絡は観察されなかった。
【0042】
明らかに、上記の教示に照らして多くの修正形態および変形形態が可能である。したがって、特許請求の範囲の主題は、具体的に説明されたものとは別の方法で実施され得ることを理解されたい。例えば、冠詞「a」、「an」、「the」、または「said」を使用した、単数形でのクレーム要素への言及は、要素を単数形に限定するものと解釈されない。
図1
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