(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】フェノール化合物を含む二酸架橋ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20230510BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20230510BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20230510BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230510BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K5/092
C08K5/3445
C08K5/13
B60C1/00 C
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020533286
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 FR2018053177
(87)【国際公開番号】W WO2019122587
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】チュリエ アンヌ-リーズ
(72)【発明者】
【氏名】ガヴァール-ロンシェ オディル
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505673(JP,A)
【文献】特表2016-501941(JP,A)
【文献】特表2016-506430(JP,A)
【文献】特開2014-233910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシド官能基を含む少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つの補強フィラーと、下記一般式(I)のポリカルボン酸、下記一般式(II)のイミダゾールを含む架橋系と、少なくとも1つの下記一般式(III)のフェノール化合物とをベースとするゴム組成物であって、
【化1】
(式中、Aは、共有結合、または、1個もしくは複数のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素ベース基を表す)
【化2】
(式中、
- R
1は、炭化水素ベース基または水素原子を表し、
- R
2は、炭化水素ベース基を表し、
- R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子または炭化水素ベース基を表し、あるいはR
3およびR
4は、それらに結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成する)
【化3】
(式中、
- G
1は、ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロゲノカルボニルもしくはアミノ基、またはアミノアルキルラジカルを表し、
- G
2およびG
3は、互いに独立して、水素原子、またはカルボキシル、ヒドロゲノカルボニルおよびヒドロキシル基から選択される基、またはアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、アリールオキシ、アルコキシ、カルボキシルアルキル、カルボニルアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびアミノアルキルラジカルから選択されるラジカルを表す)
一般式(III)の前記フェノール化合物の芳香族核が、少なくともカルボキシル基、ヒドロゲノカルボニル基、アミノ基またはアミノアルキルラジカルで置換されている、組成物。
【請求項2】
G
1がヒドロキシル基であり、G
2がヒドロキシル基または水素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
G
1がカルボキシル基であり、G
2が水素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
G
3が水素原子である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
G
3がヒドロキシル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミノアルキルラジカルが、1~15個の炭素原子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
フェノール化合物の含有量が、0.1から25phrの間である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリカルボン酸の含有量が、0.2~100phr
に及ぶ範囲内である、請求項1~7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
部品、および請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物を少なくともベースとする複合材料。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物または請求項9に記載の複合材料を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシド官能基を含むエラストマーベースゴム組成物、そのような組成物を含む複合材料、およびそのような組成物またはそのような複合材料を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ補強プライは、通常、ゴム混合物および補強ケーブルを含み、このケーブルは、多くは金属性であり、真鍮で表面を被覆されている。ゴム混合物と金属ケーブルとの間の接着は、ケーブルの表面にコーティングされた真鍮の硫化現象によって作り出される。しかし、作り出された相間は、湿度、温度または腐食性要素の影響下で変化し得る。
接着機能は一般に、ゴム混合物に対して特殊な配合を課し、とりわけ、高い含有量の硫黄および酸化亜鉛、少量のステアリン酸、コバルト塩の存在、および遅効性促進剤の使用が必要である。
したがって、複合材料への硫黄の分配を可能にしつつ、同時に補強ケーブルへの良好な接着を可能にする配合物を見出すことは、タイヤ製造者には目下の懸案事項である。
国際公開第2014/095586号は、エポキシド官能基を含む少なくとも1つのエラストマー、ポリカルボン酸およびイミダゾールを含む架橋系をベースとするゴム組成物を含み、他の架橋系と比較して組成を単純化すること、およびヒステリシス性を改善することを対象としたタイヤについて記載している。前記文書は、ケーブルに対する組成物の接着の問題に取り組んでいない。
日本特許出願公開第2011252107号は、金属への接着が良好な示すゴム組成物について記載しており、この組成物は、ジエンエラストマーおよびコバルト塩を含む。没食子酸または没食子酸水和物は、コバルト塩の溶解を促進する。組成物は、硫黄ベース系で架橋される。
【発明の概要】
【0003】
本出願人は研究を続けて、エポキシド官能基を含む少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つの補強フィラーと、ポリカルボン酸、イミダゾールを含む架橋系と、少なくとも1つの特定のフェノール化合物とをベースとするゴム組成物を発見し、この組成物が、補強要素に対する接着の観点から、詳細にはタイヤ用を意図されている複合材料を作るために特に有利な特徴を有することを発見した。したがって、本発明による組成物により、加硫もしくは硫化、またはコバルト塩の存在を一切必要とすることなく、補強要素への優れた接着を得ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、エポキシド官能基を含む少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つの補強フィラーと、一般式(I)のポリカルボン酸、一般式(II)のイミダゾールを含む架橋系と、少なくとも1つの一般式(III)のフェノール化合物とをベースとするゴム組成物であって、一般式(III)の前記フェノール化合物の芳香族核が、少なくともカルボキシル基、ヒドロゲノカルボニル基、アミノ基またはアミノアルキルラジカルで置換されている、組成物に関する。
【化1】
(式中、Aは、共有結合、または、1個もしくは複数のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素ベース基を表す)
【化2】
(式中、
- R
1は、炭化水素ベース基または水素原子を表し、
- R
2は、炭化水素ベース基を表し、
- R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子または炭化水素ベース基を表し、あるいはR
3およびR
4は、それらに付着しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成する)
【化3】
(式中、
- G
1は、ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロゲノカルボニルもしくはアミノ基、またはアミノアルキルラジカルを表し、
- G
2およびG
3は、互いに独立して、水素原子、またはカルボキシル、ヒドロゲノカルボニルおよびヒドロキシル基から選択される基、またはアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、アリールオキシ、アルコキシ、カルボキシルアルキル、カルボニルアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびアミノアルキルラジカルから選択されるラジカルを表す)
【0005】
定義
「ベースとする組成物」という表現は、使用される様々な成分のin situ反応の混合物および/または生成物を含む組成物を意味すると理解されるべきであり、これらの(ベース)成分のいくつかが、組成物の様々な製造フェーズ中、開始時に調製されたままの組成の変性中に、少なくとも部分的に互いに反応でき、かつ/または互いに反応すると意図される。したがって、本発明に用いられる組成物は、非架橋状態で、および架橋状態で異なることがある。
【0006】
「エラストマー100質量部当たりの質量部」(またはphr)という表現は、本発明の意味の範囲内で、エラストマー100質量部当たりの質量部を意味すると理解されるべきである。
本文書では、別段明示的に示されない限り、示されているすべての百分率(%)は質量の百分率(%)である。
【0007】
さらに、「aからbの間(between a and b)」という表現により表されている任意の値の間隔は、「a」超から「b」未満に及ぶ値の範囲(すなわち限界値aおよびbが除外される)を表す一方、「a~b(from a to b)」という表現により表される任意の値の間隔は、「a」~「b」までに及ぶ値の範囲を意味する(すなわち厳密な限界値aおよびbを含む)。本文書では、値の間隔が、「a~b」という表現により表される場合、「aからbの間」という表現により表されている間隔も優先的に表される。
【0008】
当業者に周知である「モル当量」という用語は、化合物のモル数または当該官能基と、参照化合物のモル数または官能基との比率を意味すると理解されるべきである。したがって、1molの化合物または官能基Aが使用される場合、化合物または官能基Aに対して、2当量の化合物または官能基Bは、2molの化合物または官能基Bを表す。
本明細書で言及されている炭素を含む化合物は、化石起源またはバイオベースであり得る。後者の場合では、これらは、部分的もしくは全体的に、バイオマスに由来し得る、または、バイオマスに由来する再生可能な出発材料から得られる。ポリマー、可塑剤、フィラーなどが、とりわけ関係している。
【0009】
エポキシド官能基を含むエラストマー
「エポキシド官能基を含むエラストマーまたはゴム(2つの用語は、公知のように同義であり、互換的である)」という用語は、ホモポリマーまたはブロック、統計コポリマーまたは他のコポリマーであるか否かを問わず、エラストマー性を有し、エポキシド官能化されている(またはエポキシ化されている)、つまりエポキシド官能基を保有する、当業者に公知の意味の範囲内にあるいずれかのタイプのエラストマーを意味する。「エポキシド官能基を含むエラストマー」および「エポキシ化エラストマー」という用語は、区別なしで使用される。
エポキシ化エラストマーは、公知のように、室温(20℃)にて固体であり、「固体」という用語は、少なくとも24時間後、重力の影響下、および室温(20℃)のみで、エラストマーが存在する容器の形状を最終的にとる能力を有さない任意の物質を指す。
本文に記載されているエラストマーのガラス転移温度Tgは、例えばDSC(示差走査熱量測定)による公知の方法で、また、別段具体的に示されていない限り、1999年の規格ASTM D3418に従って測定される。
【0010】
本発明によるゴム組成物は、1つのみのエポキシ化エラストマー、または、いくつかのエポキシ化エラストマーの混合物(組成物のエポキシ化エラストマーの和を表すように「エポキシ化エラストマー」と単数形で表される)を含有し得、エポキシド官能基を含むエラストマーは、場合により、任意のタイプの非エポキシ化エラストマー、例えばジエンエラストマー、またはジエンエラストマー以外のエラストマーとさえも組み合わせて使用される。
エポキシ化エラストマーは、本発明によるゴム組成物において主体である、つまり、唯一のエラストマーである、または組成物のエラストマーのうち最大質量を表すものである。
本発明の優先的な実施形態によれば、ゴム組成物は、30~100phr、詳細には50~100phr、好ましくは70~100phrの主体であるエポキシ化エラストマーを、0~70phr、詳細には0~50phr、好ましくは0~30phrの、主体ではない1つまたは複数の他の非エポキシ化エラストマーとのブレンドとして含む。
本発明の別の優先的な実施形態によれば、組成物は、全体で100phrのエラストマーでは、1つまたは複数のエポキシ化エラストマーを含む。
エポキシ化エラストマーのエポキシ化の程度(mol%)は、本発明の詳細な実施形態に従って大幅に、好ましくは0.1%~80%の範囲内で、優先的には0.1%~50%の範囲内で、より優先的には0.3%~50%の範囲内で変化させてよい。エポキシ化の程度が0.1%未満である場合、目標の技術的効果が不十分になる危険性がある一方、80%超では、ポリマー固有の性質が劣化する。これらの理由すべてのために、官能化、とりわけエポキシ化の程度は、より優先的には0.3%~30%の範囲内、有利には2.5%~30%の範囲内である。
【0011】
エポキシ化エラストマーは、エポキシ化ジエンエラストマー、エポキシ化オレフィンエラストマーおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。優先的には、エポキシ化エラストマーは、エポキシ化オレフィンエラストマーおよびその混合物から選択される。本発明の別の優先的な変形によれば、エポキシ化エラストマーは、エポキシ化ジエンエラストマーおよびその混合物から選択される。
「エポキシ化ジエンタイプのエラストマー」という用語は、ジエンモノマー(2つの共役または非共役炭素-炭素二重結合を保有するモノマー)から少なくとも部分的に由来するエラストマー(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)であって、このポリマーが、官能化されている、つまりエポキシド官能基を保有するものを意味すると理解されるべきことが想起される。
【0012】
エポキシ化ジエンエラストマーの第1の特徴は、この通りであり、これらはジエンエラストマーである。これらのジエンエラストマーは、定義によれば、本特許出願では非熱可塑性であり、圧倒的多数の場合でマイナス(つまり0℃未満)であるTgを示し、公知のように2つの分類、「本質的に不飽和」と呼ばれるもの、および「本質的に飽和」と呼ばれるものに分類され得る。ブチルゴム、例えばEPDMタイプのジエンおよびα-オレフィンのコポリマーは、ジエン起源の単位を少ない、またはきわめて少ない含有量、常に15%未満(mol%)で有する、本質的に飽和したジエンエラストマーの分類内に入る。対照的に、「本質的に不飽和のジエンエラストマー」という用語は、ジエン起源の部分または単位(共役ジエン)を15%超(mol%)の含有量で有する、共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に由来するジエンエラストマーを意味する。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーの分類では、「高度に不飽和」のジエンエラストマーは、詳細には、ジエン起源の単位(共役ジエン)を50%超の含有量で有するジエンエラストマーを指す。
【0013】
高度に不飽和タイプの少なくとも1つのジエンエラストマー、詳細には、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを使用することが好ましい。そのようなコポリマーは、より優先的には、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)およびそのようなコポリマーの混合物からなる群から選択される。
上のジエンエラストマーは、例えば、ブロック、統計、シーケンシャルまたはミクロシーケンシャルエラストマーであり得、分散体または溶液として調製され得、これらは、カップリング剤および/もしくは星型分岐剤、または官能化剤で、カップリングおよび/または星型分岐、あるいは官能化され得る。
【0014】
以下が、使用に優先的に好適である。ポリブタジエン、詳細には1,2-単位の含有量が4%から80%の間のもの、もしくは、cis-1,4-単位の含有量が80%超のもの、ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、詳細には、スチレンの含有量が5%から50質量%の間、より詳細には20%から40%の間のもの、ブタジエンの1,2-結合部分の含有量が4%から65%の間のもの、およびトランス-1,4-結合の含有量が20%から80%の間のもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、とりわけイソプレンの含有量が5%から90質量%の間、ガラス転移温度が-40℃~-80℃のもの、またはイソプレン/スチレンコポリマー、とりわけ、スチレンの含有量が5%から50質量%の間、Tgが-25℃から-50℃の間のもの。
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合では、スチレンの含有量が5%から50質量%の間、より詳細には10%から40%の間のもの、イソプレンの含有量が15%から60質量%の間、より詳細には20%から50%の間のもの、ブタジエンの含有量が5%から50質量%の間、より詳細には20%から40%の間のもの、ブタジエン部分の1,2-単位の含有量が4%から85%の間のもの、ブタジエン部分のtrans-1,4-単位の含有量が6%から80%の間のもの、イソプレン部分の1,2-プラス3,4-単位の含有量が5%から70%の間のもの、ならびにイソプレン部分のtrans-1,4-単位の含有量が10%から50%の間のもの、より一般的には、ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーのいずれかが-20℃から70℃の間のTgを有するものは、とりわけ使用に好適である。
【0015】
本発明の目的に有用なエポキシ化ジエンエラストマーの第2の本質的特徴は、官能化され、エポキシド官能基を保有していることである。
ジエンエラストマーに存在するエポキシド官能基は、共重合または重合後変性により得られ、鎖の骨格により直接保有される、または調製する方法に応じて、例えば共重合後のエラストマー鎖に存在するジエン官能基のエポキシ化もしくは他の任意の変性で、側基により保有される。
エポキシ化ジエンエラストマーは、公知のように、例えば、当量の非エポキシ化ジエンエラストマーのエポキシ化により、例として、クロロヒドリンもしくはブロモヒドリンに基づくプロセス、または、過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシドもしくは過酸(例えば過酢酸または過ギ酸)に基づくプロセスを経由して得られ、とりわけKautsch. Gummi Kunstst., 2004, 57(3), 82を参照されたい。エポキシド官能基は、かくしてポリマー鎖に存在する。とりわけ、エポキシ化天然ゴム(「ENR」と略される)が挙げられ、そのようなENRは、例えば、Guthrie Polymer社により「ENR-25」および「ENR-50」という名称で販売されている(エポキシ化の程度はそれぞれ25%および50%)。エポキシ化BR自体も周知であり、例えば、Sartomer社により「Poly Bd」(例えば、「Poly Bd 605E」)という名称で販売されている。エポキシ化SBRは、当業者に周知のエポキシ化技術により調製され得る。
【0016】
ジエンエラストマーは、例えば、米国特許第2003/120007号または欧州特許出願公開第0763564号、および米国特許第6903165号または欧州特許出願公開第1403287号に記載されているエポキシド基を保有する。
優先的には、エポキシ化ジエンエラストマーは、エポキシ化天然ゴム(NR)(「ENR」と略される)、エポキシ化合成ポリイソプレン(IR)、優先的にはcis-1,4-結合の含有量が90%超エポキシ化ポリブタジエン(BR)、エポキシ化ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。
【0017】
エポキシ化ジエンエラストマーは、ペンダントエポキシド官能基も含有し得る。この場合では、これらは、重合後変性(例えば、J. Appl. Polym. Sci., 1999, 73, 1733を参照されたい)、または、ジエンモノマーと、エポキシド官能基を保有するモノマー、とりわけエポキシド官能基を含むメタクリル酸エステル、例えばメタクリル酸グリシジルのラジカル共重合(とりわけ塊状、溶液または分散媒体、とりわけ分散体、エマルションまたは懸濁液でのこのラジカル重合は、ポリマー合成の当業者に周知であり、例えば、以下の参考文献、Macromolecules 1998, 31, 2822を挙げることができる)により、または、エポキシド官能基を保有するニトリル酸化物の使用により得られる。例えば、米国特許出願公開第2011/0098404号は、1,3-ブタジエン、スチレンおよびメタクリル酸グリシジルのエマルション共重合について記載している。
【0018】
「エポキシ化オレフィンタイプのエラストマー」という表現は、エポキシド官能化エラストマーを意味すると理解されるべきこと、つまりエポキシド官能基を保有し、そのエラストマー鎖が、Oとして示されるオレフィンモノマー単位を主に含む炭素ベースの鎖であることは想起されるべきである。
【0019】
モノマーOは、当業者に公知の任意のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはイソブチレンから生じ得、これらのモノマーは、直鎖または分岐アルキル基で置換されていてもよい。
優先的には、Oは、エチレン[-CH2-CH2-]ユニットであり、この優先的な場合では、エポキシ化オレフィンエラストマーは、本発明によるゴム組成物における剛性とヒステリシス性能との折衷を改善することが可能なエポキシ化エチレンエラストマーである。
Oのモル含有量は、50%超である。より正確には、Oのモル含有量は、50%から95%の間であり、優先的には65%から85%の間である。したがって、本発明の目的のために、オレフィンタイプのエラストマーは、5~50mol%の非オレフィン単位、すなわちO以外の単位も含むコポリマーである。
これらの非オレフィン単位は、部分的または完全に、Rとして示され、本発明の要件に必須のエポキシド官能基を保有する単位からなる。
【0020】
以前に記載されているエポキシ化オレフィンエラストマーのR単位の含有量(mol%)は、本発明の詳細な実施形態に従って、好ましくは0.1%~50%の範囲内で、優先的には0.3%~50%の範囲内で、より優先的には0.3%~30%の範囲内で、きわめて優先的には2.5%~30%の範囲内で大幅に変化させてよい。R単位の含有量が0.1%未満である場合、目標の技術的効果は不十分な危険性がある一方、50%を超えると、エラストマーは、もはや主にオレフィン性ではなくなる可能性がある。
【0021】
非オレフィン単位すべてがR単位ではない場合では、A’として示される他の単位は、モノマーO、RおよびA’により表される全体のモル含有量が、100%に等しくなるように炭素ベース鎖に存在する。エポキシ化オレフィンエラストマーを調製するのに有用な非オレフィンモノマーは、不飽和を生じない非オレフィンモノマー、および、重合させるとエラストマー鎖により保有される不飽和を生じるモノマー(ジエンモノマー以外)から選択され得る。
不飽和を生じない非オレフィンモノマーは、本質的にビニルおよびアクリル/メタクリルモノマーである。例えば、そのようなモノマーは、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルから選択され得、これらのモノマーは、アルキルもしくはアリール基または他の官能化基で置換されていてもよい。
例えば、不飽和を保有する、オレフィンタイプのエラストマーを共重合により調製するのに有用な非ジエンモノマーも、不飽和エラストマーを形成するためのすべて当業者に公知のもの、例えばメタクリル酸ジシクロペンタジエニルオキシエチルである。
【0022】
本発明の目的のために有用なエポキシ化オレフィンエラストマーの本質的特徴は、官能化され、エポキシド官能基を保有することである。
エポキシ化オレフィンエラストマー、および同エラストマーを調製するためのプロセスは、当業者に周知である。エポキシド基を保有するオレフィンエラストマーは、例えば、欧州特許第0247580号および米国特許第5576080号で記載されている。Arkema社は、エポキシ化ポリエチレンをLotader AX8840およびLotader AX8900の商品名で市場に出している。
エポキシド官能基は、炭素骨格により直接保有され得、次いで、共重合後に最初存在する炭素-炭素二重結合をエポキシ化することにより、主に得られる。この不飽和ポリマーのエポキシ化は、当業者に周知であり、例えば、クロロヒドリンまたはブロモヒドリンをベースとするプロセス、直接酸化プロセスまたは過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシドもしくは過酸(例えば過酢酸または過ギ酸)をベースとするプロセスを経由して行われ得る。
エポキシド官能基は、ペンダントであってもよく、その結果、オレフィンとの共重合に関与するモノマー(このモノマーは、例えば、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルまたはビニルグリシジルエーテルであり得る)に既に存在する、またはペンダント官能基の共重合後変性により得られる。
【0023】
エポキシ化オレフィンエラストマーは、圧倒的多数の場合でマイナス(つまり0℃未満)であるTgを有する。
エポキシ化オレフィンエラストマーは、少なくとも10000g/mol、優先的には少なくとも15000g/mol、および1500000g/mol以下の数平均モル質量(Mn)を有する。Mw/Mn(Mwは質量平均モル質量である)に等しい多分散指数PIは、1.05から11.00の間である。
【0024】
好ましくは、また、要約すれば、エポキシド官能基を含むオレフィンエラストマーは、したがって、少なくとも50%(モル単位)のオレフィンモノマー単位と、2つ以上、優先的には2~5つ、より優先的には2つまたは3つの、いくつかの異なるモノマー単位を含有するコポリマーである。このコポリマーはエラストマーの共重合により、または重合後変性により得られる。共重合または重合後変性により得られるオレフィンコポリマーに存在するエポキシド官能基は、鎖の骨格により直接保有される、または、調製する方法に応じて、例えば、共重合後のエラストマー鎖に存在するジエン官能基のエポキシ化もしくは他の任意の変性で、側基により保有される。
【0025】
補強フィラー
タイヤの製造に使用され得るゴム組成物を補強する能力が公知の、任意のタイプの補強フィラー、例えば有機フィラー、例としてカーボンブラック、補強無機フィラー、例えばシリカ、あるいはこうしたフィラー2タイプのブレンド、とりわけカーボンブラックおよびシリカのブレンドが使用され得る。
すべてのカーボンブラック、とりわけタイヤに従来使用されていたHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック(「タイヤグレード」ブラック)は、カーボンブラックとして好適である。より詳細には、最後のタイプのうち、100、200または300シリーズ(ASTMグレード)の補強カーボンブラック、例えばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック、あるいは、目標の用途に応じて、より高級シリーズのブラック(例えばN660、N683またはN772)が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形態で、イソプレンエラストマーに既に組み込まれていることがある(例えば、特許出願国際公開第97/36724号および国際公開第99/16600号を参照されたい)。
【0026】
カーボンブラック以外の有機フィラーの例として、特許出願国際公開第2006/069792号、国際公開第2006/069793号、国際公開第2008/003434号および国際公開第2008/003435号に記載されている官能化ポリビニル有機フィラーが挙げられる。
本特許出願では、「補強無機フィラー」という用語は、定義により、カーボンブラックと対照的に「ホワイトフィラー」、「クリアフィラー」またはさらに「非ブラックフィラー」として公知の任意の無機または鉱物フィラー(色および起源、天然または合成に関係なく)を意味すると理解されるべきであり、これは、中間カップリング剤以外の手段を一切伴わずに、それ自体単独で、タイヤの製造を意図されているゴム組成物を補強することが可能であり、言い換えれば、補強する役割において、従来のタイヤ-グレードカーボンブラックに置き換わることが可能であり、そのようなフィラーは、一般的に、公知のように、ヒドロキシル(-OH)基がその表面に存在することにより特徴付けられる。
補強無機フィラーが得られる物理的状態は重要ではなく、粉末、ミクロパール、顆粒、ビーズの形態、または他の適切な任意の高密度化形態であるか否かを問わない。いうまでもないが、「補強無機フィラー」という用語は、以下に記載されている異なる補強無機フィラー、詳細には、高度に分散性のシリカ質および/またはアルミナ質フィラーの混合物も意味する。
【0027】
シリカ質タイプの鉱物フィラー、詳細にはシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱物フィラー、詳細にはアルミナ(Al2O3)は、とりわけ、補強無機フィラーとしての使用に好適である。使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強シリカ、とりわけ、BET表面積、また、CTAB比表面積の両方が450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gである任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)として、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ、Rhodia社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ、PPG社からのHi-Sil EZ150Gシリカ、Huber社からのZeopol 8715、8745および8755シリカ、または特許出願国際公開第03/16837号に記載されている、高い比表面積を有するシリカが挙げられる。
【0028】
詳細にはシリカである場合に使用される補強無機フィラーは、好ましくは45から400m2/gの間、より優先的には60から300m2/gの間のBET表面積を有する。
優先的には、全体の補強フィラー(カーボンブラックおよび/または補強無機フィラー、例えばシリカ)の含有量は、20から200phrの間、より優先的には30から150phrの間であり、最適なものは、公知のように、目標の具体的な用途に応じて異なり、自転車用タイヤに予想される補強レベルは、もちろん、例えば、持続的に高速で走行することが可能であるタイヤ、例としてオートバイ用タイヤ、旅客車両用タイヤまたは作業車両、例として大型車用タイヤに必要とされるレベル未満である。
【0029】
本発明の優先的な実施形態によれば、30から150phrの間、より優先的には50から120phrの間の有機フィラー、特にカーボンブラックを含み、シリカを含んでもよい補強フィラーが使用され、シリカは、存在する場合、好ましくは20phr未満、より優先的には10phr未満(例えば0.1から10phrの間)の含有量で使用される。この優先的な実施形態は、組成物の主体のエラストマーがエポキシ化イソプレンゴム、より詳細にはエポキシ化天然ゴムである場合に、特に好ましい。
別法として、本発明の別の優先的な実施形態によれば、30から150phrの間、より優先的には50から120phrの間の無機フィラー、特にシリカを含み、カーボンブラックを含んでもよい補強フィラーが使用され、カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20phr未満、より優先的には10phr未満(例えば0.1から10phrの間)の含有量で使用される。この優先的な実施形態も、組成物の主体のエラストマーが、エポキシ化イソプレンゴム、より詳細にはエポキシ化天然ゴムである場合に特に好ましい。
【0030】
補強無機フィラーをエラストマーにカップリングするために、公知のように、無機フィラー(その粒子の表面)とエラストマーとの間において、化学的および/または物理的性質の申し分ないつながりを得ることが意図されている、少なくとも二官能性カップリング剤(または結合剤)、詳細には二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサンを使用してもよい。
とりわけ、「対称」または「非対称」と呼ばれるシランポリスルフィドが、例えば、特許出願国際公開第03/002648号(または米国特許出願第2005/016651号)および国際公開第03/002649号(または米国特許出願第2005/016650号)に記載されているように、詳細な構造に応じて使用され得る。
【0031】
シランポリスルフィドの例として、より詳細には、ビス((C1-C4)アルコキシル(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)ポリスルフィド(とりわけジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、例えばビス(3-トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられる。これらの化合物のうち、詳細にはTESPTと略される、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のTESPDと略されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが使用される。優先的な例として、ビス(モノ(C1-C4)アルコキシルジ(C1-C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(とりわけジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、より詳細には、米国特許出願第2004/132880号に記載されているビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0032】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤として、とりわけ二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)、あるいは、特許出願国際公開第02/30939号および国際公開第02/31041号に記載されているヒドロキシシランポリスルフィド、あるいは、例えば、特許出願国際公開第2006/125532号、国際公開第2006/125533号および国際公開第2006/125534号に記載されているアゾジカルボニル官能基を保有するシランまたはPOSが挙げられる。
本発明によるゴム組成物では、カップリング剤の含有量は、優先的には4から12phrの間、より優先的には4から8phrの間である。別の態様では、本発明によるゴム組成物は、カップリング剤を一切含まない。
当業者は、本セクションに記載されている補強無機フィラーに等しいフィラーとして、別の性質、とりわけ有機的性質の補強フィラーが使用され得るが、但し、この補強フィラーが、無機層、例えばシリカで覆われていること、あるいは、表面に、被覆剤またはカップリング剤の有無を問わず、フィラーとエラストマーとの間に結合を確立可能にする官能部位、とりわけヒドロキシル部位を含むことを条件とすると理解する。
【0033】
架橋系
本発明によるゴム組成物を架橋または硬化することが可能である架橋系は、以前に記載されているエポキシ化エラストマーおよび補強フィラーと組み合わせられる。この架橋系は、一般式(I)のポリカルボン酸および一般式(II)のイミダゾールを含む。
当業者に公知の手段では、エラストマーの性質に関わりなく、エポキシ化エラストマー、詳細にはジエン、非ジエンまたはオレフィンエラストマーは、ポリカルボン酸およびイミダゾールを含む架橋系と架橋し得、ポリ酸は、エポキシド官能基を経由して橋を形成し、これらの橋は、エステル官能基を含む。
【0034】
- ポリ酸
本発明の目的のために有用なポリ酸は、一般式(I)のポリカルボン酸である。
【化4】
(式中、Aは、共有結合、または、少なくとも1個の炭素原子を含み、1個または複数のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい炭化水素ベース基を表す)
【0035】
好ましくは、一般式(I)のポリ酸において、Aは、共有結合、または、1~1800個の炭素原子、優先的には2~300個の炭素原子、より優先的には2~100個の炭素原子、きわめて優先的には2~50個の炭素原子を含む、二価炭化水素ベース基を表す。炭素原子が1800個を超えると、ポリ酸は、さほど有効な架橋作用剤でなくなる。したがって、Aは、好ましくは、3~50個の炭素原子、優先的には5~50個の炭素原子、より優先的には8~50個の炭素原子、より一層優先的には10~40個の炭素原子を含む二価炭化水素ベース基を表す。詳細な一態様では、本発明によるゴム組成物は、0.9から30phrの間の少なくとも1つのポリ酸を含み、そのA基は、10から40個の間の炭素原子を含み、また、5から30phrの間の少なくとも1つのポリ酸を含み、そのA基は、100から300個の間の炭素原子を含む。
優先的には、一般式(I)のポリ酸において、Aは、脂肪族もしくは芳香族タイプの二価基、または、少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基であり得る。好ましくは、Aは、脂肪族タイプの二価基、または、少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基であり得る。別法として、また、やはり好ましくは、Aは、飽和または不飽和脂肪族タイプの二価基、例えばアルキレン基であり得る。
【0036】
一般式(I)のポリ酸のA基は、酸素、窒素および硫黄、好ましくは酸素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子で中断され得る。
一般式(I)のポリ酸のA基は、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノおよびカルボニルラジカルから選択される、少なくとも1つのラジカルでも置換され得る。
一般式(I)のポリ酸は、2個超のカルボン酸官能基を含み得、この場合では、A基は、1個もしくは複数のカルボン酸官能基、および/または、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールもしくはアラルキルラジカルから選択され、これら自体も1個もしくは複数のカルボン酸官能基で置換される1個もしくは複数の炭化水素ベースラジカルで置換される。
【0037】
優先的な形態によれば、Aラジカルは、他の任意のカルボン酸官能基を含まず、ポリ酸は、したがって二酸である。
ポリ酸の含有量は、優先的には0.2~100phr、好ましくは0.2~50phr、より優先的には0.4~30phr、より一層優先的には0.9~25phrに及ぶ範囲内である。ポリ酸が0.2phrを下回ると、架橋の効果は不十分になる一方、ポリ酸が100phrを超えると、ポリ酸である架橋剤は、エラストマーマトリックスと比較して、質量に対して主体的になる。
本発明の目的のために有用なポリ酸は、市販されている、または、当業者により、周知の技術、例えば、米国特許第7534917号、また、その中の引用文献に記載されている化学経路、または、米国特許第3843466号に記載されている発酵のような生物学的経路に従って容易に調製される。
例えば、市販され、本発明の目的のために有用なポリ酸として、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸あるいはポリ酸、例えばトリメシン酸または3,4-ビス(カルボキシメチル)シクロペンタンカルボン酸が挙げられる。
【0038】
- イミダゾール
本発明による架橋系に有用なイミダゾールは、一般式(II)のイミダゾールである。
【化5】
(式中、
- R
1は、炭化水素ベース基または水素原子を表し、
- R
2は、炭化水素ベース基を表し、
- R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子または炭化水素ベース基を表し、
- あるいは、R
3およびR
4は、それらに付着しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成する)
【0039】
好ましくは、一般式(II)のイミダゾールは、以下のように基を含有する。
- R1は、水素原子、または、1~20個の炭素原子を含有するアルキル基、5~24個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を含有するアリール基もしくは7~25個の炭素原子を含有するアラルキル基を表し、この基は、1個もしくは複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、かつ/または置換されていてもよく、
- R2は、1~20個の炭素原子を含有するアルキル基、5~24個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を含有するアリール基、または7~25個の炭素原子を含有するアラルキル基を表し、この基は、1個もしくは複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、かつ/または置換されていてもよく、
- R3およびR4は、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含有するアルキル基、5~24個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を含有するアリール基もしくは7~25個の炭素原子を含有するアラルキル基から選択される同一もしくは異なる基を表し、これらの基は、ヘテロ原子で中断されていてもよく、かつ/または置換されていてもよく、あるいはR3およびR4は、それらに付着しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、5~12個の炭素原子、好ましくは5または6個の炭素原子を含む芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環から選択される環を形成する。
【0040】
優先的には、R1は、2~12個の炭素原子を含有するアルキル基または7~13個の炭素原子を含有するアラルキル基から選択される基を表し、これらの基は、置換されていてもよい。より優先的には、R1は、7~13個の炭素原子を含有する置換されていてもよいアラルキル基を表し、R2は、1~12個の炭素原子を含有するアルキル基を表す。より一層優先的には、R1は、7~9個の炭素原子を含有する置換されていてもよいアラルキル基を表し、R2は、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基を表す。
好ましくは、R3およびR4は、独立して、水素、または1~12個の炭素原子を含有するアルキル基、5~8個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~24個の炭素原子を含有するアリール基もしくは7~13個の炭素原子を含有するアラルキル基から選択される同一もしくは異なる基を表し、これらの基は、置換されていてもよい。別法として、また、優先的には、R3およびR4は、それらに付着しているイミダゾール環の炭素原子と、フェニル、シクロヘキセンまたはシクロペンテン環を形成する。
【0041】
本発明の申し分のない作業では、イミダゾール含有量は、一般式(I)のポリカルボン酸に存在するカルボン酸官能基と比較して、優先的には、0.01~4モル当量、好ましくは0.01~3モル当量に及ぶ範囲内である。0.01モル当量を下回ると、ポリ酸が単独で使用される状況と比較して、イミダゾール共助剤の効果は観察されない一方、4モル当量の値を上回ると、低い含有量と比較して、さらなる利益は観察されない。したがって、イミダゾール含有量は、より優先的には、一般式(I)のポリカルボン酸に存在するカルボン酸官能基と比較して、0.01~2.5モル当量、好ましくは0.01~2モル当量、より一層優先的には0.01~1.5モル当量、好ましくは0.5~1.5モル当量に及ぶ範囲内である。
【0042】
本発明の目的のために有用なイミダゾールは、市販されている、または当業者により、例えば、特開第2012211122号および特開第2007269658号、またはScience of Synthesis, 2002, 12, 325-528に記載されているように周知の技術に従って容易に調製される。
例えば、市販され、本発明の目的のために有用なイミダゾールとして1,2-ジメチルイミダゾール、1-デシル-2-メチルイミダゾールまたは1-ベンジル-2-メチルイミダゾールが挙げられる。
明らかに、また、本発明の「ベースとする」という表現の定義によれば、上で提示されている一般式(I)のポリ酸、および一般式(II)のイミダゾールをベースとする組成物は、前記ポリ酸および前記イミダゾールが、事前に一緒に反応して、ポリ酸の1つまたは複数の酸官能基と、それぞれ、1つまたは複数のイミダゾール核との間の塩を形成する組成物であり得る。
【0043】
フェノール化合物
本発明による組成物は、少なくとも1つのフェノール化合物を含み、この化合物は、一般式(III)の芳香族化合物である。
【化6】
(式中、
- G
1は、ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロゲノカルボニルもしくはアミノ基、またはアミノアルキルラジカルを表し、
- G
2およびG
3は、互いに独立して、水素原子、またはカルボキシル、ヒドロゲノカルボニルおよびヒドロキシル基から選択される基、またはアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、アリールオキシ、アルコキシ、カルボキシルアルキル、カルボニルアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびアミノアルキルラジカルから選択されるラジカルを表し、
一般式(III)の前記フェノール化合物の芳香族核は、少なくともカルボキシル基、ヒドロゲノカルボニル基、アミノ基またはアミノアルキルラジカルで、有利には少なくともカルボキシル基、ヒドロゲノカルボニル基またはアミノアルキルラジカルで、きわめて有利にはカルボキシル基またはヒドロゲノカルボニル基で置換されている)
本明細書では、「フェノール化合物」という用語は、一般式(III)の芳香族化合物を表す。
【0044】
「少なくともカルボキシル基、ヒドロゲノカルボニル基またはアミノアルキルラジカルで置換されている、一般式(III)の前記フェノール化合物の芳香族核」という表現は、前記置換基が、一般式(III)で表されている芳香族核の1個の炭素原子に直接付着していることを意味する。
「カルボキシル基」または「カルボン酸官能基」という用語は、式-COOHの基を意味し、式中、炭素原子は、二重結合を経由して酸素原子に、また、単結合を経由してヒドロキシル基-OHに連結している。
「ヒドロゲノカルボニル基」という用語は、式-CHOの基を意味し、式中、炭素原子は、二重結合を経由して酸素原子に、また、単結合を経由して水素原子に連結している。
【0045】
「アミノ基」という用語は、式-NH2の基を意味する。
「アミノアルキルラジカル」という用語は、式-CnH2n-NH2のラジカルを意味し、式中、nは、有利には1から15の間、優先的には1から10の間、きわめて優先的には1から5の間、好ましくは1から3の間の整数である。
有利には、G2およびG3は、互いに独立して、水素原子、またはカルボキシル、ヒドロゲノカルボニルおよびヒドロキシル基から選択される基、またはアルキルラジカルを表す。
優先的には、G2およびG3は、互いに独立して、水素原子である、または、1~10個の炭素原子、優先的には1~6個の炭素原子、有利には1~5個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む。
好ましい態様では、G1はヒドロキシル基であり、G2はヒドロキシル基または水素原子である。
別の好ましい態様では、G1はカルボキシル基であり、G2は水素原子である。この態様の一変形では、G3は水素原子である。この態様の別の変形では、G3はヒドロキシル基である。
【0046】
好ましい実施形態に関わりなく、一般式(III)の芳香族化合物のモル質量は、有利には1000g/mol未満、好ましくは800g/mol未満、優先的には600g/mol未満、きわめて好ましくは400g/mol未満、きわめて優先的には220g/mol未満、きわめて優先的には200g/mol未満、または180g/molでさえある。
きわめて好ましくは、一般式(III)のフェノール化合物は、没食子酸、プロトカテク酸、サリチル酸、プロトカテクアルデヒドおよびパラ-ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される。
【0047】
本発明によるゴム組成物は、金属部品への接着の観点から、とりわけ一般式(III)のフェノール化合物の存在によって、詳細には複合材料、ごく詳細には、タイヤ用に意図されている複合材料を作るために、特に有利な特徴を有する。
本発明によるゴム組成物は、有利には、0.1~25phr、優先的には2~15phrのフェノール化合物を含む。0.1phrを下回ると、フェノール化合物は、本発明によるゴム組成物の接着性に対する注目すべき効果を有さない。25phrを超えると、さらなる顕著な利益が観察されない。
【0048】
様々な添加剤
本発明によるゴム組成物は、当業者に公知の、また、タイヤ用ゴム組成物、詳細には、本特許出願で以下に定義されている内層に通常使用される、通常の添加剤、例えば可塑剤(可塑化油および/または可塑化樹脂)、上で言及されているもの以外の補強フィラーもしくは非補強フィラー、顔料、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学オゾン劣化防止剤、抗酸化剤、抗摩耗剤または補強樹脂(例えば、特許出願国際公開第02/10269号に記載されている)のすべて、またはいくつかも含み得る。
これらの組成物は、カップリング剤に加えて、カップリング活性化物質、無機フィラーの被覆剤、またはより一般的には、公知のように、ゴムマトリックスにおけるフィラーの分散を改善することにより、また、組成物の粘度を低下させることにより、生状態で加工される能力を改善することができる加工助剤も含有し得、これらの作用剤は、例えば、加水分解性シラン、例としてアルキルアルコキシシラン(例えばオクチルトリエトキシシランまたはocteoシラン)、ポリオール、ポリエーテル、第一級、第二級もしくは第三級アミン、またはヒドロキシル化もしくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0049】
優先的には、本発明のゴム組成物は、以前に記載されているもの以外の架橋系を含まず、少なくとも1つのポリ酸および少なくとも1つのイミダゾールを含む。言い換えれば、少なくとも1つのポリ酸および少なくとも1つのイミダゾールをベースとする架橋系は、優先的には、本発明のゴム組成物における唯一の架橋系である。好ましくは、本発明のゴム組成物は、加硫系を含まない、または、それを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満含有する。したがって、本発明によるゴム組成物は、優先的には分子の硫黄を含まない、または、それを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満含有する。同様に、組成物は、当業者に公知である任意の加硫促進剤もしくは活性化物質を優先的には含まない、または、それを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満含有する。
同様に、組成物は、当業者に公知であるコバルト塩を優先的には含まず、当業者に公知であるその効果は接着の改善であり、または、1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満、きわめて優先的には0.1phr未満を含有する。
したがって、意外にも、本発明による組成物の補強ケーブルへのきわめて良好な接着は、コバルト塩の使用を必須とせずに得られる。
【0050】
ゴム組成物の調製
本発明によるゴム組成物は、当業者に周知である調製フェーズを使用して、好適な混合機で製造される。
- 必須の成分すべて、とりわけエラストマーマトリックス、ポリカルボン酸およびイミダゾールを含む架橋系、フェノール化合物、フィラーならびに任意選択の様々な他の添加剤が、適切な混合機、例えば標準的な密閉式混合機(例えば「バンベリー」タイプのもの)に導入される間に、単一の熱機械ステップで行われ得る、熱機械的作業フェーズまたは混練フェーズ。フィラーのエラストマーへの組み込みは、熱機械的に混練しながら1つまたは複数の部で行われ得る。フィラー、詳細にはカーボンブラックが、例えば、特許出願国際公開第97/36724号、または国際公開第99/16600号に記載されているように、マスターバッチの形態で、完全にまたは部分的にエラストマーに既に組み込まれている場合では、これは、直接混練し、適切であれば、マスターバッチ形態ではない他のエラストマーまたはフィラーが組成物に存在し、また、任意選択の様々な他の添加剤が組み込まれているマスターバッチである。
【0051】
熱機械的混練は、110℃から200℃の間、好ましくは130℃から185℃の間の最大温度までの高温で、一定期間、一般的に2から10分の間行われる。
- 次いで、機械的作業の第2フェーズは、第1フェーズ中に得られた混合物をより低い温度、典型的には120℃未満、例えば40℃から100℃の間に冷却した後で、外部混合機、例えばオープンミル中で行われ得る。
このようにして得られた最終組成物は、続いて、例えば、とりわけ研究室での特徴付けのためにシートまたはプラークの形態でカレンダー加工する、あるいはゴム半製品(または輪郭要素)の形態で押し出す。
組成物は、生状態(架橋または加硫前)または硬化状態(架橋または加硫後)であり得、タイヤに使用できる半製品であり得る。
硬化は、一般的に130℃から200℃の間の温度にて、圧力下で、とりわけ対象の組成物の硬化温度、採用された架橋系、架橋動態、またはタイヤの大きさに応じて変化し得る十分な時間、例えば5から90分の間、当業者に公知である手段で行われ得る。
【0052】
複合材料
本発明は、少なくとも本発明による部品およびゴム組成物をベースとする複合材料にも関する。
「少なくとも本発明による部品および組成物をベースとする」複合材料という表現は、部品および前記組成物を含む複合材料であって、組成物が、複合材料の様々な製造フェーズ中に、詳細には組成物の架橋中に、または組成物を架橋する前の複合材料の製造中に、部品と反応できた複合材料を意味すると理解されるべきである。
前記部品は、全体的または部分的に金属ベースまたは繊維製品ベースであり得る。詳細には、前記部品は、繊維製品の性質であってよく、すなわち有機材料、とりわけポリマー材料、または無機材料、例えばガラス、石英、玄武岩または炭素でできていてよい。ポリマー材料は、熱可塑性タイプ、例えば脂肪族ポリアミド、とりわけポリアミド6-6、およびポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタレートであり得る。ポリマー材料は、非熱可塑性タイプ、例えば芳香族ポリアミド、とりわけアラミドおよび天然または人工のセルロース、とりわけレーヨンであり得る。
【0053】
詳細な一態様では、前記部品は、金属表面を含む。
部品の金属表面は、少なくとも一部、有利には前記部品の表面すべてを構成し、本発明による組成物と接触するように意図されている。
本発明による組成物は、部品の少なくとも一部、有利には前記部品のすべてを被覆する。
部品は、有利には、部分的または完全に金属製であり、金属部分は、少なくとも金属表面を含む。好ましくは、部品は、完全に金属でできている。
本発明の第1の変形によれば、部品の金属表面は、部品の残部とは異なる材料でできている。言い換えれば、部品は、少なくとも部分的に、有利には全体的に、金属表面を形成する金属層で被覆されている材料でできている。少なくとも部分的に、有利には全体的に金属表面で被覆されている材料は、金属製または非金属製であり、好ましくは事実上金属製である。
本発明の第2の変形によれば、部品は、同一の材料でできており、この場合では、部品が、金属表面の金属と同一の金属でできている。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、金属表面は、鉄、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、コバルト、ニッケル、およびこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなる群から選択される金属を含む。合金は、例えば、二元または三元合金、例えば鋼鉄、青銅および真鍮であり得る。好ましくは、金属表面の金属は、鉄、銅、スズ、亜鉛、またはこれらの金属の少なくとも1つを含む合金である。より優先的には、金属表面の金属は、鋼鉄、真鍮(Cu-Zn合金)、亜鉛または青銅(Cu-Sn合金)、より一層好ましくは真鍮または亜鉛、きわめて好ましくは真鍮である。
本特許出願では、「金属表面の金属は、以下に表されている金属である」という表現は、金属表面が、以下に表されている金属でできているとすることを意味する。例えば、上に書かれている「金属表面の金属は、真鍮である」という表現は、金属表面が、真鍮でできていることを意味する。ある金属は、周囲空気と接触した際に酸化を施されるので、金属は、ステンレス鋼を除いて部分的に酸化され得る。
【0055】
金属表面が鋼鉄でできている場合、鋼鉄は、好ましくは炭素鋼またはステンレス鋼である。鋼鉄が炭素鋼である場合、その炭素含有量は、好ましくは0.01%から1.2%の間、または0.05%から1.2%の間、あるいは0.2%から1.2%の間、とりわけ0.4%から1.1%の間である。鋼鉄がステンレスである場合、好ましくは少なくとも11%のクロムおよび少なくとも50%の鉄を含む。
部品は、任意の形態であり得る。好ましくは、部品は、スレッドまたはケーブルの形態で示され得る。
【0056】
本発明の詳細な実施形態によれば、部品は、少なくともミリメートルに等しい長さを有する。長さは、部品の最長寸法を意味する。少なくともミリメートルに等しい長さを有する部品として、例えば、車両タイヤ、例えばスレッド状要素(モノフィラメントまたはケーブル)および非スレッド状要素に使用される補強要素が挙げられる。
本発明の特に優先的な実施形態によれば、複合材料は、部品が補強要素を構成し、本発明による組成物が補強要素をコーティングする、補強された構造である。
特に優先的な実施形態によれば、複合材料は、補強要素、および補強要素が包埋されているカレンダー加工ゴムを含む補強された生成物であり、各補強要素は、本発明の実施形態のいずれか1つに従って以前に定義されている部品、および、本発明によるゴム組成物を含むカレンダー加工ゴムからなる。この実施形態によれば、補強要素は、一般的に、中心の方向に沿って配置させる。タイヤで想定される用途では、複合材料は、このようにしてタイヤ補強を構成し得る。
【0057】
本発明による複合材料は、生状態(ゴム組成物の架橋前)であり得、または硬化状態(ゴム組成物の架橋後)であり得る。複合材料は、部品を本発明によるゴム組成物と接触させた後に硬化する。
複合材料は、以下のステップを含むプロセスにより製造され得る
- 本発明による組成物の2つの層を作るステップ
- 2つの層の間に部品を置くことにより、2つの層の間に部品を挟むステップ
- 適切であれば、複合材料を硬化するステップ。
別法として、複合材料は、層の一部に部品を置くことにより製造され得、層は、次いで、それ自体を折り畳んで、このようにして全長または長さの一部にわたって挟まれている部品を被覆する。
【0058】
層は、カレンダー加工により生成され得る。複合材料の硬化中に、ゴム組成物が架橋される。
複合材料が、タイヤにおける補強として使用されることを意図されている場合、複合材料の硬化は、一般的に、タイヤケーシングの硬化中に行われる。
【0059】
タイヤ
本発明の別の主題であるタイヤは、本発明による組成物または複合材料を含むという本質的な特徴を有する。タイヤは、生状態(ゴム組成物の架橋前)であり得、または硬化状態(ゴム組成物の架橋後)であり得る。一般的に、タイヤの製造中、組成物または複合材料は、生状態(すなわちゴム組成物の架橋前)でタイヤの構造に、タイヤを硬化するステップの前に置かれる。
本発明は、詳細には、旅客車両タイプの自動車、SUV(「スポーツユーティリティビークル」)、または二輪車(とりわけオートバイ)、または航空機、あるいはバン、大型車、すなわち地下鉄、バス、道路運送車両(貨物自動車、牽引車、被牽引車)、または路上外走行車、例えば農業用車両もしくは建設車等から選択される産業車両に備えられることを意図されているタイヤに関する。
【0060】
タイヤ内では、3タイプの領域を定義することが可能である。
・周囲空気と接触する半径方向外部領域、この領域は、本質的に、タイヤのトレッドおよび外側サイドウォールからなる。外側サイドウォールは、クラウンとビードとの間において、クラウンからビードへと伸びるカーカス補強領域を完全にまたは部分的に被覆するように、タイヤの内部空洞に対するカーカス補強の外部に位置するエラストマー層である。
・膨張ガスと接触する半径方向内部領域、この領域は、一般的に、膨張ガスに対して気密の層からなり、これは、内部気密層または内部ライナーとして公知なことがある。
・タイヤの内領域、すなわち外部領域と内部領域との間における領域。この領域は、ここでタイヤの内層と呼ばれる層またはプライを含む。これらは、例えば、周囲空気またはタイヤの膨張ガスと接触しないカーカスプライ、トレッド副層、タイヤベルトプライまたは他の任意の層である。
本明細書で定義されている組成物は、タイヤの内層に特に十分適している。
【0061】
したがって、本発明は、本発明による組成物または複合材料を含む内層を含むタイヤにも関する。本発明によれば、内層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビードワイヤーフィリング、クラウンフィート、デカップリング層、トレッド下層およびこれらの内層の組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、内層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビードワイヤーフィリング、クラウンフィート、デカップリング層およびこれらの内層の組合せからなる群から選択される。
【0062】
したがって、限定することはないが、本発明の主題は、以下の実施形態のうち少なくとも1つである。
1.エポキシド官能基を含む少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つの補強フィラーと、一般式(I)のポリカルボン酸、一般式(II)のイミダゾールを含む架橋系と、少なくとも1つの一般式(III)のフェノール化合物とをベースとするゴム組成物であって、一般式(III)の前記フェノール化合物の芳香族核が、少なくともカルボキシル基、ヒドロゲノカルボニル基、アミノ基またはアミノアルキルラジカルで置換されている、組成物。
【0063】
【化7】
(式中、Aは、共有結合、または、1個もしくは複数のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素ベース基を表す)
【化8】
(式中、
- R
1は、炭化水素ベース基または水素原子を表し、
- R
2は、炭化水素ベース基を表し、
- R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子または炭化水素ベース基を表し、あるいはR
3およびR
4は、それらに付着しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成する)
【化9】
(式中、
- G
1は、ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロゲノカルボニルもしくはアミノ基、またはアミノアルキルラジカルを表し、
- G
2およびG
3は、互いに独立して、水素原子、またはカルボキシル、ヒドロゲノカルボニルおよびヒドロキシル基から選択される基、またはアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、アリールオキシ、アルコキシ、カルボキシルアルキル、カルボニルアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびアミノアルキルラジカルから選択されるラジカルを表す)
【0064】
2.G2およびG3が、互いに独立して、水素原子、またはカルボキシル、ヒドロゲノカルボニルおよびヒドロキシル基から選択される基、またはアルコキシラジカルを表す、実施形態1による組成物。
3.G2およびG3が、互いに独立して、水素原子である、または1~10個の炭素原子を含む、実施形態1または2による組成物。
4.G1がヒドロキシル基であり、G2がヒドロキシル基または水素原子である、実施形態1~3の1つによる組成物。
5.G1がカルボキシル基であり、G2が水素原子である、実施形態1による組成物。
6.G3が水素原子である、実施形態5による組成物。
7.G3がヒドロキシル基である、実施形態5による組成物。
8.前記アミノアルキルラジカルが、1~15個の炭素原子を含む、実施形態1~5の1つによる組成物。
9.前記フェノール化合物のモル質量が、1000g/mol未満である、実施形態1~8の1つによる組成物。
【0065】
10.フェノール化合物の含有量が、0.1から25phrの間である、実施形態1~9の1つによる組成物。
11.前記組成物が、分子硫黄を含まない、またはそれを1phr未満含有する、実施形態1~10の1つによる組成物。
12.前記組成物が、コバルト塩を含まない、またはそれを1phr未満含有する、実施形態1~11の1つによる組成物。
13.Aが、共有結合、または、1~1800個の炭素原子、好ましくは2~300個の炭素原子を含む二価炭化水素ベース基を表す、実施形態1~12のいずれか1つによるゴム組成物。
14.Aが、脂肪族もしくは芳香族タイプの二価基、または少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基である、実施形態1~13のいずれか1つによるゴム組成物。
15.Aが、飽和または不飽和脂肪族タイプの二価基である、実施形態1~14のいずれか1つによるゴム組成物。
16.Aがアルキレン基である、実施形態1~15のいずれか1つによるゴム組成物。
17.Aが、酸素、窒素および硫黄、好ましくは酸素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子で中断される、実施形態1~16のいずれか1つによるゴム組成物。
18.Aが、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノおよびカルボニルラジカルから選択される少なくとも1つのラジカルで置換される、実施形態1~17のいずれか1つによるゴム組成物。
19.Aが、1個もしくは複数のカルボン酸官能基、ならびに/または、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールもしくはアラルキルラジカルから選択され、これら自体も1個もしくは複数のカルボン酸官能基で置換される1個もしくは複数の炭化水素ベースラジカルで置換される、実施形態1~18のいずれか1つによる組成物。
【0066】
20.Aラジカルが、他のカルボン酸官能基を一切含まない、実施形態1~19のいずれか1つによる組成物。
21.ポリ酸の含有量が、0.2~100phr、好ましくは0.2~50phrに及ぶ範囲内である、実施形態1~20のいずれか1つによるゴム組成物。
22.- R1が、水素原子、または1~20個の炭素原子を含有するアルキル基、5~24個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を含有するアリール基、もしくは7~25個の炭素原子を含有するアラルキル基を表し、この基が、1個もしくは複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、かつ/または置換されていてもよく、
- R2が、1~20個の炭素原子を含有するアルキル基、5~24個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を含有するアリール基、または7~25個の炭素原子を含有するアラルキル基を表し、この基が、1個もしくは複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、かつ/または置換されていてもよく、
- R3およびR4が、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含有するアルキル基、5~24個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を含有するアリール基もしくは7~25個の炭素原子を含有するアラルキル基から選択される同一もしくは異なる基を表し、これらの基は、ヘテロ原子で中断されていてもよく、かつ/または置換されていてもよく、あるいはR3およびR4が、それらに付着しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、5~12個の炭素原子、好ましくは5または6個の炭素原子を含む芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環から選択される環を形成する、実施形態1~21のいずれか1つによるゴム組成物。
【0067】
23.R1が、2~12個の炭素原子を含有するアルキル基、または7~13個の炭素原子を含有するアラルキル基から選択される基を表し、これらの基が、置換されていてもよい、実施形態1~22のいずれか1つによるゴム組成物。
24.R1が、7~13個の炭素原子を含有する置換されていてもよいアラルキル基を表し、R2が、1~12個の炭素原子を含有するアルキル基を表す、実施形態1~23のいずれか1つによるゴム組成物。
25.R3およびR4が、独立して、水素、または1~12個の炭素原子を含有するアルキル基、5~8個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、6~24個の炭素原子を含有するアリール基もしくは7~13個の炭素原子を含有するアラルキル基から選択される同一もしくは異なる基を表し、これらの基が、置換されていてもよい、実施形態1~24のいずれか1つによるゴム組成物。
【0068】
26.補強フィラーが、カーボンブラック、シリカ、またはカーボンブラックおよびシリカの混合物を含む、実施形態1~25のいずれか1つによるゴム組成物。
27.補強フィラーの含有量が、20から200phrの間である、実施形態1~26のいずれか1つによるゴム組成物。
28.部品、および実施形態1~27の1つによる組成物を少なくともベースとする複合材料。
29.金属表面を有する、実施形態28による複合材料。
30.部品の金属表面が、部品の残部とは異なる材料でできている、実施形態29による複合材料。
31.前記部品の金属表面が、鉄、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、コバルト、ニッケル、およびこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなる群から選択される金属を含む、実施形態29および30による複合材料。
32.金属表面の金属が、鉄、銅、スズ、亜鉛、またはこれらの金属の少なくとも1つを含む合金である、実施形態29~31のいずれか1つによる複合材料。
【0069】
33.金属表面の金属が、真鍮または亜鉛である、実施形態29~32のいずれか1つによる複合材料。
34.部品が、少なくともミリメートルに等しい長さを有する、実施形態28~33のいずれか1つによる複合材料。
35.部品が、スレッドまたはケーブルである、実施形態28~34のいずれか1つによる複合材料。
36.実施形態1~27の1つによる組成物、または実施形態28~35の1つによる複合材料を含む、タイヤ。
37.実施形態1~27の1つによる組成物または実施形態28~35の1つによる複合材料を含む内層を含む、タイヤ。
【実施例】
【0070】
ゴム組成物と部品との間における結合の品質は、架橋ゴム組成物から、金属表面を有する個々のスレッドの切片を引き抜くのに必要とされる力が測定される試験により判定される。この目的のために、複合材料は、一方では金属表面を有する部品として個々の金属スレッド、他方では、架橋ゴム組成物を含むエラストマー混合物を含有し、試験片の形態で調製される。
【0071】
ゴム組成物の調製
様々なゴム組成物の調製が、以下の手段で行われる。エポキシド官能基を含むポリマー、次いで混合物の他の成分すべてが、密閉式混合機に連続して導入され(最終的な充填度:体積に対しておよそ70%)、この初期容器温度は、およそ60℃である。次いで熱機械的作業を、最も大きい150℃の温度「低下」が達成されるまで、ワンステップで行う。このようにして得られた混合物を回収し、外部混合機(ホモフィニッシャー)で30℃にて冷却し、すべてを混合する。
【0072】
【表1】
組成物「C1」が、特定のフェノール化合物を一切含まないことは、注目される。
【0073】
試験片の調製
このように調製したゴム組成物は、以下のプロトコールに従って、試験片の形態で、複合材料を作るために使用される。
硬化前に互いに適用される2つのプレートからなるゴムのブロックが調製される。ブロックの2つのプレートは、同一のゴム組成物からなる。個々のスレッドを、生状態の2つのプレート間に等しい距離で離して閉じ込め、一方で、後続の引張り試験に十分な長さを有する個々のスレッド端は、これらのプレートの側面において突き出させたままにするのは、ブロックの調製中である。個々のスレッドを含むブロックは、次いで、目標の試験条件に適合させた型に入れ、当業者の裁量に委ねる。例として、本場合では、ブロックは、170℃にて、組成に従って、5.5トンの圧力下で、25分~90分で変化する時間の間硬化させる。
個々のスレッドは、光沢のある(すなわちコーティングされていない)鋼鉄スレッド、または真鍮、亜鉛もしくは青銅でコーティングされている鋼鉄スレッドである。それらの直径は、1.30mmであり、真鍮コーティングの厚さは、200nm~1μm、亜鉛または青銅コーティングの厚さは、50nm~0.1μmである。
組成物に合わせてこのように調製した試験片は、本発明による複合材料に相当する。
【0074】
接着試験
硬化の結論として、このように架橋したブロックおよび個々のスレッドからなる試験片は、各切片を個々に試験可能にするために、所定の速度および所定の温度にて(例えば、本場合では、100mm/分および周囲温度にて)、好適な引張り試験機の顎部の間に置く。
接着レベルは、試験片から切片を裂く「引裂」力の測定により特徴付けられる。
結果は、試験された試験片のものと同一の性質の個々のスレッドを含有し、表1で提示されているゴム組成物「C1」を含有する、対照試験片に対するベース100で表現する。
【0075】
自由裁量によって100にセットされている対照試験片に対する値よりも高い値は、改善した結果、すなわち、自由裁量によって値が100にセットされている対照試験片の引裂力よりも強い引裂力を示す。
【表2】
【0076】
(実施例1)
この例は、対照組成物と比較して、本発明による組成物により得られる接着における改善を示す。
表2は、対照試験片および本発明による試験片で行った接着試験の結果を示す。
接着試験における100よりもはるかに高い値が提示されており、本発明による複合材料は、真鍮でできているスレッド要素の場合だけではなく、亜鉛、鋼鉄または青銅でできているものの場合でも、大幅に改善した引裂抵抗性を有する。
【0077】
複合材料の性能における改善が、硫化ステップ一切なしで観察される。