(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ポリエーテルジアミンを含有するエーテルアミン混合物、ならびにその作成および使用法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/325 20060101AFI20230510BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C08G65/325
C08G59/14
(21)【出願番号】P 2020550680
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 US2019022683
(87)【国際公開番号】W WO2019182941
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-17
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クライン,ハワード・ピー
(72)【発明者】
【氏名】レンケン,テリー・エル
(72)【発明者】
【氏名】リー,チェン-クアン
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-515077(JP,A)
【文献】特表2016-536287(JP,A)
【文献】特表2017-536437(JP,A)
【文献】特開2001-181384(JP,A)
【文献】特開平08-311194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/48
C08G59/00-59/72
C08G77/00-77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中:Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオールのラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyがそれぞれ1から9の範囲であり、そしてxおよびyの和が2から10の範囲であり、
前記疎水性ジオールが6から15個の炭素原子を有し、かつ
前記疎水性ジオールが脂環式ジオール、水素化芳香族ジオール、直鎖アルキルジオール、またはそれらの組み合わせから選択される)
の1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含んでなるエーテルアミン混合物。
【請求項2】
疎水性ジオールがシクロペンタンジオールまたはシクロヘキサンジオールである請求項1に記載のエーテルアミン混合物。
【請求項3】
xおよびyの和が3から6の範囲である請求項1に記載のエーテルアミン混合物。
【請求項4】
式(I)の1もしくは複数のポリエーテルジアミンの少なくとも60%のアミン基が一級アミンである請求項1に記載のエーテルアミン混合物。
【請求項5】
エーテルアミン混合物が、エーテルアミン混合物の総重量に基づき10重量%未満のモノエーテルジアミンを含む請求項1に記載のエーテルアミン混合物。
【請求項6】
エーテルアミン混合物
を生成する方法であって:
-疎水性ジオールをアルコキシル化反応ゾーンに充填し;
-アルコキシル化反応ゾーン内で疎水性ジオールをエチレンオキシドと接触させて前駆体ジオールを提供し、ここでエチレンオキシド 対 疎水性ジオールのモル比は1:1より高く10:1までの範囲であり;そして
-前駆体ジオールを還元的アミノ化ゾーンに充填し、そして前駆体ジオールを還元的にアミノ化して式(I):
【化2】
(式中:Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオールのラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyがそれぞれ1から9の範囲であり、そしてxおよびyの和が2から10の範囲であり、
前記疎水性ジオールが6から15個の炭素原子を有し、かつ
前記疎水性ジオールが脂環式ジオール、水素化芳香族ジオール、直鎖アルキルジオール、またはそれらの組み合わせから選択される)
の1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含むエーテルアミン混合物を形成することを含んでなる前記
方法。
【請求項7】
エチレンオキシド 対 疎水性ジオールのモル比が、2:1より高く10:1までの範囲である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エポキシ樹脂系
を生成する方法であって:
-請求項1に記載のエーテルアミン混合物を準備し;
-エポキシ樹脂を準備し;
-エーテルアミン混合物およびエポキシ樹脂を接触させてエポキシ樹脂系を形成する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項9】
硬化エポキシ樹脂系
を生成する方法であって:
-請求項1に記載のエーテルアミン混合物を準備し;
-エポキシ樹脂を準備し;
-エーテルアミン混合物およびエポキシ樹脂を接触させてエポキシ樹脂系を形成し、そして
-エポキシ樹脂系を硬化する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項10】
エポキシ樹脂系の硬化工程が、エポキシ樹脂系を約5℃から30℃の範囲の温度に6から24時間の範囲の期間供することを含んでなる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のエーテルアミン混合物を有機ポリイソシアネートと反応させることを含んでなるポリウレア
を生成する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により生成されるポリウレア。
【請求項13】
-疎水性ジオールをアルコキシル化反応ゾーンに充填し;
-アルコキシル化反応ゾーン内で疎水性ジオールをエチレンオキシドと接触させて前駆体ジオールを提供し、ここでエチレンオキシド 対 疎水性ジオールのモル比は1:1より高く10:1までの範囲であり;そして
-前駆体ジオールを還元的アミノ化ゾーンに充填し、そして前駆体ジオールを還元的にアミノ化して式(I):
【化3】
(式中:Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオールのラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyがそれぞれ1から9の範囲であり、そしてxおよびyの和が2から10の範囲である、
前記疎水性ジオールが6から15個の炭素原子を有し、かつ
前記疎水性ジオールが脂環式ジオール、水素化芳香族ジオール、直鎖アルキルジオール、またはそれらの組み合わせから選択される)
の1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含むエーテルアミン混合物を形成する工程を含んでなる方法により生成されるエーテルアミン混合物。
【請求項14】
xおよびyがそれぞれ1から9の範囲であり、そしてxおよびyの和が2から10の範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エチレンオキシド 対 疎水性ジオールのモル比が、2:1より高く10:1までの範囲である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項9の方法により形成される複合材。
【請求項17】
式(III):
【化4】
(式中、Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオールのラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyはそれぞれが1から9の範囲であり;そしてxおよびyの和は2から10の範囲であり、
前記疎水性ジオールが6から15個の炭素原子を有し、かつ
前記疎水性ジオールが脂環式ジオール、水素化芳香族ジオール、直鎖アルキルジオール、またはそれらの組み合わせから選択される)
の少なくとも1又は複数のポリエーテルジアミンを含んでなる、請求項1に記載のエーテルアミン混合物。
【請求項18】
前記エーテルアミン混合物が、 式(III):
【化5】
(式中、Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオールのラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyはそれぞれが1から9の範囲であり;そしてxおよびyの和は2から10の範囲であり、
前記疎水性ジオールが6から15個の炭素原子を有し、かつ
前記疎水性ジオールが脂環式ジオール、水素化芳香族ジオール、直鎖アルキルジオール、またはそれらの組み合わせから選択される)
の少なくとも1又は複数のポリエーテルジアミンを含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
式(III):
【化6】
(式中、Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオールのラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyはそれぞれが1から9の範囲であり;そしてxおよびyの和は2から10の範囲であり、
前記疎水性ジオールが6から15個の炭素原子を有し、かつ
前記疎水性ジオールが脂環式ジオール、水素化芳香族ジオール、直鎖アルキルジオール、またはそれらの組み合わせから選択される)
の少なくとも1又は複数のポリエーテルジアミンを含んでなる、請求項13に記載のエーテルアミン混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2018年3月19日に出願された米国特許仮出願第62/644,848号明細書の利益を主張し、その開示内容は引用により全部、明白に本明細書に編入する。
【0002】
研究開発に関する連邦政府支援の表明
適用なし
【0003】
分野
本開示は一般に、1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含んでなるエーテルアミン混合物、その生産法、およびエポキシ樹脂用の硬化剤としてのその使用に関する。そのようなエーテルアミン混合物を含有するエポキシ樹脂系は、例えば自己水平性(self-leveling)(および自己硬化性)塗り床剤、厚膜天板を調製するため、および他の装飾用塗装の応用に特に適するものになる。1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含むエーテルアミン混合物は、ポリアミドおよびポリウレア化合物の調製にも使用することができる。
【背景技術】
【0004】
背景
ポリエーテルアミンは、エポキシ樹脂の硬化剤として、またはポリアミドもしくはポリウレアの合成において反応物として広く使用されている。そのようなポリエーテルアミンは、一般にアルキレンオキシドとアルコールとの反応でポリオキシアルキレンポリオールを形成し、続いて還元的アミノ化によりヒドロキシル基のアミン基への変換により生成される。
【0005】
最先端の技術にもかかわらず、硬化性エポキシ樹脂用の硬化剤として使用できる新規ポリエーテルアミンの開発の必要性が持続的に存在し、この新規ポリエーテルアミンはエポキシ樹脂用に様々な硬化条件、およびそれから得られる硬化したエポキシ組成物に独自の特性をもたらす。
【0006】
したがって本開示の目的は、エポキシ樹脂用の硬化剤として使用できるポリエーテルアミンを含んでなるエーテルアミン混合物を提供することであり、ここでそれを含有するエポキシ樹脂系は、室温で自己硬化能を有し、そしていったん硬化すれば例えば限定するわけではないが、塗り床剤、厚膜天板のような応用、および他の装飾用塗装の応用に良好な柔軟性(flexibility)を有する。本開示の別の目的は、そのようなエーテルアミン混合物を生成する方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本開示の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本開示はその応用を以下の記載で説明する構成要素または工程または方法論の構成および配置の詳細に限定されないと理解されるべきである。本開示は他の態様、または様々な方法で実施または実行することが可能である。また本明細書で採用する表現法および用語法は、説明を目的とするものであり、限定と見なすべきではないと理解される。
【0008】
本明細書で別段の定めがない限り、本開示と関連して使用される技術用語は、当業者に
より通常理解されている意味を有するものである。さらに文脈から別の解釈が必要とされない限り、単数形は複数を含み、そして複数形は単数を含むものとする。
【0009】
本明細書で言及する全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する技術分野の当業者の技術水準を示す。本出願の任意の部分で引用される全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個別の特許または刊行物が個別具体的に引用により編入されているように、そしてそれらが本開示と矛盾しない程度と同じ程度までそれら全部を引用により明白に本明細書に編入する。
【0010】
本明細書に開示するすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして必要以上の実験を行わずに作成でき、そして実施できる。本開示の組成物および方法は態様および好適な態様という用語で記載したが、当業者には本開示の概念、精神、および範囲から逸脱せずに本明細書に記載する組成物および/または方法に、そして方法の工程または工程の順序に変更を適用できることが明白である。そのような当業者には明白なすべての類似する置き換えおよび修飾は、本開示の精神、範囲および概念の中にあると見なされる。
【0011】
本開示に従い使用されるように、以下の用語は別段の定めがない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0012】
用語“a”または“an”の使用は、用語「含んでなる(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」または「含む(containing)」(またはそのような用語の派生形)と関連して使用する場合、「1つ」を意味するものだが、これはまた「1もしくは複数」、「少なくとも1つ」および「1または1より多く」という意味とも合致する。
【0013】
用語「または」の使用は、もっぱら代替物を明らかに示し、そして代替物が相互に排他的である場合のみを除き、「および/または」を意味するために使用する。
【0014】
本開示を通して用語「約」は、値が定量する装置、メカニズムまたは方法の誤差の固有変動性、あるいは測定される対象(1もしくは複数)間に存在する固有の変動性を含むことを示す。例えば限定するわけではないが、用語「約」を使用する場合、それが指す表示した値は、プラスマイナス10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセントまたは1パーセントまで、あるいはそれらの間の1もしくは複数の画分で変動してよい。
【0015】
「少なくとも1つ」の使用は、1ならびに限定するわけではないが1,2,3,4,5,10,15,20,30,40,50,100等を含む1より多くの任意の量を含むと理解されるものである。用語「少なくとも1つ」は、それが指す用語に依存して最高100または1000またはそれより多くに拡張することができる。さらに100/1000の量は、より低い、またはより高い限界も満足な結果を生じる可能性があるので、限定と考えるものではない。
【0016】
さらに「X、YおよびZの少なくとも1つ」という句は、X単独、Y単独およびZ単独、ならびにX,Y,およびZの任意の組み合わせを含むものと理解される。同様に「XおよびYの少なくとも1つ」という句は、X単独、Y単独、ならびにXおよびYの任意の組み合わせを含むものと理解される。さらに「少なくとも1つ」という句は、任意の数の構成要素と共に使用でき、そして前記に説明した意味に類似する意味を有すると理解される。
【0017】
序数の用語(すなわち「第1」、「第2」、「第3」、「第4」等)の使用は、2以上の項目(items)間を差別化する目的のみであり、別段の定めがない限り、他の項目に対していかなる1つの項目の順序または序列または重要性、あるいは添加の順番も意味するものではない。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる(comprising)」(およびその任意の形、例えば“comprise”および“comprises”)、「有する(having)」(およびその任意の形、例えば“have”および“has”)、「含む(including)」(およびその任意の形、例えば"includes”および“include”)または「含む(containing)」(およびその任意の形、例えば“contains”および“contain”)は、包括的、すなわち制限がなく(open-ended)、そして追加の非言及要素または方法工程を排除しない。
【0019】
本明細書で使用する句「またはそれらの組み合わせ」および「およびそれらの組み合わせ」は、用語に先行する列挙した項目の全ての並べ替えおよび組み合わせを指す。例えば「A,B,Cまたはそれらの組み合わせ」は:A,B,C,AB,AC,BC,またはABCの少なくとも1つを含むことを意図し、そして特定の文脈で順序が重要ならばBA,CA,CB,CBA,BCA,ACB,BACまたはCABの少なくとも1つを含むことを意図する。この例に続いて明確に含まれるのは、1もしくは複数の項目または用語の反復を含む組み合わせ、例えばBB,AAA,CC,AABB,AACC,ABCCCC,CBBAAA,CABBB等である。当業者は文脈から明らかにそうでない場合を除き、一般に任意の組み合わせの中の項目および用語の数に制限はないと理解するだろう。同じ考え方で、用語「およびそれらの組み合わせ」は、句「からなる群から選択される」と一緒に使用される場合、その句に先行する列挙した項目の全ての並び替えおよび組み合わせを指す。
【0020】
「1つの態様において」、「態様では」、「1つの態様によれば」等の句は、一般にその句に続く特定の機能、構造または特徴が本開示の少なくとも1つの態様に含まれることを意味し、そして本開示の1より多くの態様に含まれ得ることを意味する。重要なことは、そのような句は非限定的であり、そして同じ態様を必ずしも指していないが、もちろん1もしくは複数の先行する、および/または後述する態様を指すことができる。例えば添付の請求の範囲では、任意の請求する態様を任意の組み合わせで使用することができる。
【0021】
本明細書で使用する用語「重量による%」、「重量%」、「重量パーセント」または「重量によるパーセント」は、互換的に使用される。
【0022】
本明細書で使用する句「室温」は、周辺の作業環境の周囲温度(例えば、硬化性組成物が使用される領域、建物または部屋の温度)を指し、硬化を促進するために硬化性組成物に直接かける熱の結果として生じる任意の温度変化を排除する。室温は一般に約5℃から約30℃の間、または約10℃から約30℃の間、より具体的には約15℃から約25℃の間、そしてより一層特別には約20℃から約25℃である。
【0023】
1つの観点によれば、本開示は式(I):
【化1】
の1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含んでなるエーテルアミン混合物を対象とし、式中:Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオールのラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyはそれぞれが1から9の範囲であり;そしてxおよびyの和は2から10の範囲である。別の態様では、xまたはyの1つが0ならば、他方は1から9の範囲であるという条件の下に、xおよびyはそれぞれが0から9の範囲であり、そしてxおよびyの和は1から10の範囲である。
【0024】
疎水性ジオールは、脂環式ジオール、水素化芳香族ジオール、直鎖アルキルジオール、またはそれらの組み合わせから選択されることができる。
【0025】
1つの態様では、疎水性ジオールが6から15個の炭素原子を含んでなる。別の態様では、疎水性ジオールが6から12個の炭素原子を含んでなる。さらに別の態様では、疎水性ジオールが6から10個の炭素原子を含んでなる。
【0026】
脂環式ジオールの非限定的例は、例えば限定するわけではないが、1,3-シクロペンタンジオール,1,2-シクロヘキサンジオール,1,3-シクロヘキサンジオール,1,3-シクロヘキサンジメタノール,1,4-シクロヘキサンジオール,1,4-シクロヘキサンジメタノール,1,5-シクロオクタンジオールのようなシクロペンタンジオールおよびシクロヘキサンジオール:ビスフェノールF,ビスフェノールA,ハイドロキノン,カテコールおよびレゾルシノールの水素化誘導体、およびそれらの組み合わせを含む。1つの特に好適なシクロヘキサンジオールは、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)である。
【0027】
直鎖アルキルジオールの非限定的例には、1,6-ヘキサンジオール、7-ヘプタン ジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールおよび1,10-デカンジオールを含む。1つの特に好適な直鎖アルキルジオールは1,8-オクタンジオールである。
【0028】
別の態様では、疎水性ジオールはネオペンチルグリコールであることができる。
【0029】
xおよびyの和は、1から9,または1から8、または2から8,または2から7,または3から7,または3から6,または4から5の範囲、または約4.5であることができる。別の態様では、nは1から2の範囲である。
【0030】
特に好適な態様では、式(I)の“R”は、式(II)に表されるように、2つのヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオール1,4-シクロヘキサンジメタノールのラジカルである:
【化2】
式中、x、yおよびnは、式(I)について前記に定義したものと同じである。
【0031】
1つの態様では、式(I)の1もしくは複数のポリエーテルジアミンのアミン基は、少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%が一級アミンである。1つの特定の態様では、式(I)の1もしくは複数のポリエーテルジアミンのアミン基の約75から80%が一級アミンである。
【0032】
別の態様では、エーテルアミン混合物は、エーテルアミン混合物の総重量に基づき10重量%未満のモノエーテルジアミンを含んでなる。
【0033】
さらに別の態様では、エーテルアミン混合物は式(III)の1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含んでなることができ:
【化3】
式中、Rは疎水性ジオールから2個のヒドロキシル基を除去した後の疎水性ジオー
ル(前記のような)のラジカルであり;nは1から3の範囲であり;xおよびyはそれぞれが1から9の範囲であり;そしてxおよびyの和は2から10の範囲である。別の態様では、xまたはyの1つが0ならば、他方は1から9の範囲であるという条件の下に、xおよびyはそれぞれが0から9の範囲であり、そしてxおよびyの和は1から10の範囲である。
【0034】
また本開示はエーテルアミン混合物の生成法を対象とし、この方法は:(i)疎水性ジオール(前記のような)をアルコキシル化反応ゾーンに充填(charge)し;(ii)アルコキシル化反応ゾーン内で疎水性ジオールをエチレンオキシドと接触させて前駆体ジオールを提供し、ここでエチレンオキシド 対 疎水性ジオールのモル比は約1:1から約10:1、または約2:1から約10:1、または約2:1から約9:1、または約2:1から約8:1、または約2:1から約7:1、または約2:1から約6:1、または約3:1から約6:1、または約3:1から約5:1、または約4:1から約5:1までの範囲、または約4.5:1であり:そして(iii)前駆体ジオールを還元的アミノ化ゾーンに充填し、そして前駆体ジオールを還元的にアミノ化して式(I)の1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含むエーテルアミン混合物を形成することを含んでなる。
【0035】
疎水性ジオールがアルキレンオキシドと接触する期間は、前駆体ジオールを形成するために十分となるような時間であり、そしてある態様では約0.5時間から約24時間の範囲となり得る。
【0036】
アルコキシル化反応ゾーンは閉鎖反応容器であることができ、ここでアルコキシル化は塩基性触媒の存在下で高温および高圧下で行われる。すなわちアルコキシル化は約50℃
から約150℃の範囲の温度、および約40psiから約100psiの圧で行うことができる。塩基性触媒は塩基―触媒型反応で通常使用される任意のアルカリ性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、または水酸化セシウムのようなアルカリ金属水酸化物、あるいはジメチルシクロヘキシルアミンまたは1,1,3,3-テトラメチルグアニジンのような三級アミンでよい。アルコキシル化後、生じた混合物を真空ストリッピングして不要な成分、例えば余分な未反応アルキレンオキシド、水および/または塩基性触媒を除去し、一方、生じた前駆体ジオールを残しておく。
【0037】
ある態様では、還元的アミノ化の前に、前駆体ジオールは例えば蓚酸またはケイ酸マグネシウムのような任意の適切な酸または化学的吸着剤により中和し、そして不溶性物質を除くために濾過することができる。
【0038】
1つの特定の態様では、前駆体ジオールを還元的にアミノ化する工程は還元的アミノ化触媒、水素およびアンモニアの存在下で行われる。より詳細には、前駆体ジオールの還元的アミノ化工程は、前駆体ジオールを還元的アミノ化ゾーンに充填することを含み、ここで前駆体ジオールは還元的アミノ化触媒(水素化―脱水素化触媒と呼ばれることもある)と接触し、そして還元的アミノ化条件下でアンモニアおよび水素の存在下で還元的にアミノ化される。そのような還元的アミノ化条件は、例えば約150℃から約275℃の範囲の温度、および約180℃から約220℃の間の温度範囲で約500から約500psiの範囲の圧を含み、そして約1500から約2500psiの範囲の圧が好適である。
【0039】
還元的アミノ化工程には、米国特許第3,654,370号明細書(この内容は全部、引用により本明細書に編入する)に記載されているような任意の適切な水素化触媒を使用することができる。ある態様では、水素化触媒は、クロム、モリブデンまたはタングステンのような周期表の第VIB族の1もしくは複数の金属と混合された、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金のような周期表の第VIIIB族の1もしくは複数の金属を含んでなることができる。銅のような周期表の第IB族からのプロモーター(promoter)も含むことができる。例として米国特許第3,152,998号明細書に開示されている種類の触媒のような、約60モルパーセントから約85モルパーセントのニッケル、約14モルパーセントから約37モルパーセントの銅、および約1モルパーセントから約5モルパーセントのクロム(クロミアとして)を含んでなる触媒を使用することができる。別の例として、約70重量%から約95重量%のコバルトおよびニッケルの混合物、および約5重量%から約30重量%の鉄を含む、米国特許第4,014,933号明細書に開示されている型の触媒を使用することができる。別の例として、ニッケル、銅、および第3成分(これは鉄、亜鉛、ジルコニウムまたはそれらの混合物でよい)を含んでなる、米国特許第4,152,353号明細書に開示されている型の触媒、例えば約20重量%から約49重量%のニッケル、約36重量%から約79重量%の銅および約1重量%から約15重量%の鉄、亜鉛、ジルコニウム、またはそれらの混合物を含む触媒を使用することができる。さらに別の例では、米国特許第4,766,245号明細書に開示されているような型の、約60重量%から約75重量%のニッケル、および約25重量%から約40重量%のアルミニウムを含んでなる触媒を使用することができる。
【0040】
還元的アミノ化は、還元的アミノ化触媒の固定床を含む反応槽に前駆体ジオール、アンモニアおよび水素が連続的に充填され、そして反応生成物が連続的に取り出される連続的基準で行われることが好ましい。
【0041】
過剰な水素およびアンモニアをリサイクル用に回収するために、反応生成物は適切に減圧され、そして次いで分画されて反応の副生水を除去し、そして所望のエーテルアミン混合物を提供する。
【0042】
還元的アミノ化の実施では、使用される還元的アミノ化条件は前駆体ジオール原料ヒドロキシル当量あたり約4モルから約150モルのアンモニアの使用を適切に含むことができる。水素は、好ましくは前駆体ジオール原料のヒドロキシル当量あたり約0.5モル当量から約10モル当量の水素の範囲の量で使用される。反応がバッチ式で行われる場合、反応ゾーン内の接触時間は、適切には約0.1時間から約6時間、そしてより好ましくは約0.15時間から約2時間の範囲内であることができる。
【0043】
反応が触媒ペレットを使用して連続的基準で行われる場合、反応速度は適切には1立方センチメートルの触媒、1時間あたり約0.1グラムから約2グラムの原料、より好ましくは反応速度は1立方センチメートルの触媒、1時間あたり約0.3グラムから約1.6グラムの原料となり得る。
【0044】
また還元的アミノ化は、1モルの前駆体ジオールあたり約1モルから約200モルのアンモニア、そしてより好ましくは1モルの前駆体ジオールあたり約4モルから約130モルのアンモニアの存在下で行うことができる。1モルの前駆体ジオールあたり約0.1モルから約50モルの水素を使用することができ、そしてより好ましくは1モルの前駆体ジオールあたり約1モルから約25モルの水素を使用することができる。
【0045】
別の観点では、本開示は、本開示の方法に従い生成されるエーテルアミン混合物を対象とする。
【0046】
本開示によるエーテルアミン混合物の好ましい特性により、エーテルアミン混合物はエポキシ樹脂用の硬化剤として、またはポリアミドおよびポリウレア化合物の調製における反応物として使用することができ、これら化合物は例えば自己均展性(self-leveling)(および自己硬化性)塗り床剤、厚膜天板の調製、および他の装飾用塗装の応用を含む様々な工業的応用に使用することができる。
【0047】
さらに別の観点では、本開示はエポキシ樹脂および本明細書に開示するエーテルアミン混合物を含んでなるエポキシ樹脂系を対象とする。また本開示は、エポキシ樹脂をここに開示するエーテルアミン混合物と接触させることを含んでなるエポキシ樹脂系の形成法を対象とする。
【0048】
エポキシ樹脂は、混合物が重合して本明細書に開示するエーテルアミン混合物または他のアミン硬化剤とのそのブレンドのポリエーテルジアミンを含む有用な材料を形成するように、分子あたり平均で少なくとも1エポキシド基、好ましくは分子あたり少なくとも1.3エポキシド基、そしてより好ましくは分子あたり少なくとも1.6エポキシド基の1,2-エポキシ当量(官能性)を有する反応性エポキシ樹脂(1もしくは複数)の1つもしくは混合物でよく、そしてさらに一層好ましくは、分子あたり少なくとも2エポキシ基の官能性を有するエポキシ樹脂でよい。別の態様では、エポキシ樹脂は平均して分子あたり少なくとも1.3のエポキシド基から分子あたり約8のエポキシド基、好ましくは分子あたり少なくとも約1.6のエポキシド基から分子あたり約5のエポキシド基の範囲の官能性を有する。エポキシ樹脂は飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐の脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であることができ、そして臭素またはフッ素のような置換基を持つことができる。これはモノマーもしくはポリマーの液体もしくは固体であることができるが、好ましくは液体、または室温で低融点の固体である。
【0049】
1つの態様によれば、エポキシ樹脂はポリグリシジルエポキシ化合物、例えばポリグリシジルエーテル,ポリ(β-メチルグリシジル)エーテル,ポリグリシジルエステルまたはポリ(β-メチルグリシジル)エステルである。ポリグリシジルエーテル、ポリ(β-
メチルグリシジル)エーテル,ポリグリシジルエステルおよびポリ(β-メチルグリシジル)エステルの合成および例は、米国特許第5,972,563号明細書に開示され、これは引用により本明細書に編入する。例えばエーテルは、少なくとも1個のフリーアルコール性ヒドロキシル基および/またはフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、適切に置換されたエピクロロヒドリンとアルカリ条件下で、または酸性触媒の存在下で反応させ、続いてアルカリ処理することにより得られる。アルコールは例えば、非環式アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびより高次のポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン-1,2-ジオール、またはポリ(オキシプロピレン)グリコール,プロパン-1,3-ジオール,ブタン-1,4-ジオール,ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン-1,5-ジオール,ヘキサン-1,6-ジオール,ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール,1,1,1-トリメチロールプロパン,ビストリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール、およびソルビトールであることができる。しかし適切なグリシジルエーテルは、1,3-または1,4-ジヒドロキシクロヘキサン,ビス(4-ヒドロキシシクロ-ヘキシル)メタン,2,2-bビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたは1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサ-3-エンのような脂環式アルコールから得ることもでき、あるいはそれらは、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリンまたはp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンのような芳香族環を有することができる。
【0050】
ポリグリシジルエーテルまたはポリ(β-メチルグリシジル)エーテルの代表例は、単環式フェノール、例えばレゾルシノールまたはハイドロキノンに基づくもの、または多環式フェノールに基づくもの、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF),2,2-ビス(4-ビドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノーA),ビス(4-ビドロキシフェニル)S(ビスフェノールS),アルコキシル化ビスフェノールA,FまたはS,トリオール延長型(triol extended)ビスフェノールA,FまたはS、および臭素化ビスフェノールA,FまたはS,水素化ビスフェノールA,FまたはS,フェノールおよびペンダント基もしくは鎖を持つフェノールのグリシジルエーテルに基づくもの、フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとの酸性条件下で得られる縮合生成物に基づくもの、例えばフェノールノボラックおよびクレゾールノボラック、またはシロキサンジグリシジルに基づくものを含む。
【0051】
ポリグリシジル エステルおよびポリ(β-メチルグリシジル)エステルは、エピクロロヒドリンまたはグリセロール ジクロロヒドリンまたはβ-メチルエピクロロヒドリンと、ポリカルボン酸化合物を反応させることにより生成することができる。反応は、経験的に塩基の存在下で行われる。ポリカルボン酸化合物は、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、または二量体化もしくは三量体化リノール酸であることができる。しかし同様に脂環式ポリカルボン酸、例えばテトラヒドロフタル酸,4-メチルテトラヒドロフタル酸,ヘキサヒドロフタル酸または4-メチルヘキサヒドロフタル酸を使用することも可能である。また例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリト酸またはピロメリト酸のような芳香族ポリカルボン酸を使用することも可能であり、あるいは例えばトリメリト酸およびポリオールのカルボキシル―末端付加物、例えばグリセロールまたは2,2-ビス(4-ビドロキシシクロヘキシル)プロパンを使用ことができる。
【0052】
別の態様では、エポキシ樹脂は非-グリシジルエポキシ化合物である。非-グリシジルエポキシ化合物は、直鎖、分岐または環式構造であることができる。例えばエポキシド基が脂環式または複素環式環系の一部を形成する1もしくは複数のエポキシド化合物を含めることができる。他には少なくとも1つのケイ素原子を含有する基に直接または間接的に結合している少なくとも1つのエポキシシクロヘキシル基を含むエポキシ含有化合物を含む。例は米国特許第5,639,413号明細書に開示され、これは引用により本明細書に
編入する。さらに他には、1もしくは複数のシクロヘキセンオキシド基を含むエポキシド、および1もしくは複数のシクロペンテンオキシド基を含むエポキシドがある。特に適する非-グリシジルエポキシ化合物のものには、エポキシド基が脂環式または複素環式環系の一部を形成する以下の二官能性非-グリシジルエポキシド化合物を含む。:ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル,1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)エタン,3,4-エポキシシクロヘキシル―メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート,3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート,ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート,ジ(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート,エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート),エタンジオールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル,ビニルシクロヘキセンジオキシド,ジシクペンタジエンジエポキシドまたは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-1,3-ジオキサン、および2,2’-ビス-(3,4-エポキシ-シクロヘキシル)-プロパン。
【0053】
別の態様では、エポキシ樹脂は好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような塩基性触媒、エピクロロヒドリンのようなエピハロヒドリンの存在下で、ホルムアルデヒドのようなアルデヒドの樹脂状縮合物(resinous condensate)および一価フェノールまたは多価フェノールのいずれかとの反応により得られるエポキシ
ノボラック化合物である。
【0054】
別の態様では、エポキシ樹脂はポリ(N-グリシジル)化合物またはポリ(S-グリシジル)化合物である。ポリ(N-グリシジル)化合物は、例えばエピクロロヒドリンと少なくとも2つのアミン水素原子を含有するアミンとの反応生成物の脱塩化水素反応により得られる。これらのアミンは例えばn-ブチルアミン、アニリン、トルイジン、m-キシリレンジアミン,ビス(4-アミノフェェニル)メタンまたはビス(4-メチルアミノフェニル)メタンであることができる。ポリ(N-グリシジル)化合物の他の例には、エチレンウレアまたは1,3-プロピレンウレアのようなシクロアルキレンウレアのN,N’-ジグリシジル誘導体、および5,5-ジメチルヒダントインのようなヒダントインのN,N’-ジグリシジル誘導体を含む。ポリ(S-グリシジル)化合物の例は、ジチオールから誘導されるジ-S-グリシジル誘導体、例えばエタン-1,2-ジチオールまたはビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルである。
【0055】
また1,2-エポキシド基が異なるヘテロ原子または官能基に結合しているエポキシ含有化合物を使用することも可能である。これらの化合物の例には4-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、サリチル酸のグリシジルエーテル/グリシジル エステル、N-グリシジル-N’-(2-グリシジルオキシプロピル)-5,5-ジメチルヒダントインまたは2-グリシジルオキシ-1,3-ビス(5,5-ジメチル-1-グリシジルヒダントイン-3-イル)プロパンを含む。
【0056】
他のエポキシド誘導体、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド,リモネンジオキシド,リモネンモノオキシド,ビニルシクロヘキセンモノオキシド,3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート,3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル9,10-エポキシステアレートおよび1,2-ビス(2,3-エポキシ-2-メチルプロポキシ)エタンを使用することができる。また考えられるのはエポキシ樹脂用の硬化剤で上に述べたもののようなオキセタンまたはエポキシ含有化合物の液体予備反応付加物(liquid pre-reacted adducts)の使用である。
【0057】
エポキシ樹脂系は、安定化剤、改質剤、消泡剤、強化剤、促進剤(accelerat
or)、共硬化剤(co-curing agents)、均展剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、顔料、染料、充填剤およびそれらの組み合わせのような通常の添加剤および補助剤をさらに含むことができる。例えばグアニジンまたはその誘導体のような促進剤は、エポキシ樹脂系に使用することができる。グアニジン誘導体の例は、限定するわけではないがジメチルグアニジンまたはテトラメチルグアニジンのようなアルキルグアニジン、またはこれらのいずれかから誘導されるグアニジウム塩を含む。グアニジウム塩の例には、限定するわけではないがグアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩、およびグアニジン硝酸塩を含む。本開示の利点を有する当業者は、本開示の態様で使用するために適切な添加剤および補助剤を認識するだろう。
【0058】
本開示のある態様では、エーテルアミン混合物はイソホロンジアミンのような脂環式ジアミンのような共硬化剤の使用を必要としない場合がある。これらの態様では、エポキシ樹脂を製造するために必要な材料はより少なくなり、ならびにより低い硬化温度に達するために必要なエネルギーはより少なくなる。
【0059】
いったん調製すれば、エポキシ樹脂系は物品の1もしくは複数の表面に適用することができ、例えばエポキシ樹脂系をそれらにはけ塗り、噴霧、浸漬、静電吹付等し、ついで塗装した物品をエポキシ樹脂系の硬化が生じるための適切な条件に供する。
【0060】
前記エポキシ樹脂系は、いったん調製されかつ/または1もしくは複数の表面に適用されれば、エポキシ樹脂系の硬化を生じるために十分な条件に供されることができる。
【0061】
1つの態様では、エポキシ樹脂系は室温で実質的に硬化される。驚くことに本開示のエーテルアミン混合物は低粘度を有し、そしてそれを含むエポキシ樹脂系は熱を加えずに約12時間以内に室温で実質的に硬化することができることが分かった。1つの特定の態様では、エポキシ樹脂系は約20℃から約30℃の範囲の温度で、約6から約24時間、または約6から約22時間、または約6から約20時間、または約12から約24時間、または約16から約22時間、または約6から約12時間の範囲、あるいは本明細書に設定する範囲の間の任意の期間で実質的に硬化する。
【0062】
別の態様では、エポキシ樹脂系は高温、例えば約40℃から約220℃の範囲内の温度で硬化する。ある態様では、硬化時間は約2時間から約24時間であることができ、この間の任意の個別の時間の量を含む。
【0063】
1つの観点では、本開示はここに開示するエポキシ樹脂を硬化することにより形成される複合材を対象とする。
【0064】
1つの特定の態様では、エポキシ樹脂系は実質的にメチル3-メトキシプロピオネート(“MMP”)および/またはベンジルアルコールを含まない。
【0065】
本開示はさらに有機ポリイソシアネートを本開示のエーテルアミン混合物と反応させることを含んでなるポリウレアの生成法を対象とする。また本開示は、有機ポリイソシアネートを本開示のエーテルアミン混合物と反応させることにより形成されるポリウレアを対象とする。
【0066】
有機ポリイソシアネートは、例えば限定するわけではないが当業者に周知な標準的なイソシアネート化合物および組成物を含む。そのような有機ポリイソシアネートの非限定的例には、MDI-系の準プレポリマー、例えばRUBINATE(商標)9480,RUBINATE(商標)9484,およびRUBINATE(商標)9495のブランド品として市販されているものを含み、これらはすべてハンツマンコーポレーション(Hun
tsman Corporation)(テキサス州、ウッドランド)またはその代理店から入手可能である。バイエル マテリアルサイエンス(Bayer MaterialScience)から入手可能なMONDUR(商標)MLイソシアネートのような液化MDIもイソシアネートの全てまたは一部として使用できる。
【0067】
使用できる他の有機ポリイソシアネートには、当業者に一般的に知られているものを含む。すなわち例えばそれらには米国特許第4,748,192号明細書(引用により全部、本明細書に編入する)に記載されている種類の脂肪族イソシアネートを含むことができる。したがってそれらは一般に脂肪族ジイソシアネート、およびさらに詳細にはそれらは三量体化またはビウレット形の脂肪族ジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、あるいはテトラアルキルキシレンジイソシアネートの二官能性モノマー、例えばテトラメチルキシレンジイソシアネートである。脂肪族イソシアネートの別の例は、シクロヘキサンジイソシアネートである。他の有用な脂肪族イソシアネートは、米国特許第4,705,814号明細書(引用により全部、本明細書に編入する)に記載されている。それらには脂肪族ジイソシアネート、例えば1,12-ドデカンジイソシアネートおよび1,4-テトラメチレンジイソシアネートのような4から12個の炭素原子をアルキレンラジカルに持つアルキレンジイソシアネートを含む。また記載されるのは、脂環式ジイソシアネート、例えば1,3および1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ならびにこれらの異性体の任意の所望する混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート);4,4’-,2,2’-および2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物などである。
【0068】
広い様々な芳香族ポリイソシアネートを使用して、本開示のポリウレアを形成することもできる。一般的な芳香族ポリイソシアネートには、p-フェニレンジイソシアネート,ポリメチレンポリフェニルイソシアネート,2,6-トルエンジイソシアネート,ジアニシジンジイソシアネート,ビトリレンジイソシアネート,ナフタレン-1,4-ジイソシアネート,ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン,ビス(3-メチル-3-イソ-シアナトフェニル)メタン,ビス(3-メチル-4-イソシアナトフェニル)メタン,および4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネートを含む。使用できる他の芳香族ポリイソシアネートは、約2から約4の官能性を有するメチレン-架橋ポリフェニルポリイソシアネート混合物である。これら後者のイソシアネート化合物は、一般に対応するメチレン架橋ポリフェニルポリアミンのホスゲン化により生成され、これは通常、塩酸および/または他の酸性触媒の存在下で、ホルムアルデヒドと一級芳香族アミン、例えばアニリンとの反応により生成される。ポリアミンおよびそれらから対応するメチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの既知の調製法は、文献および多くの特許、例えば米国特許第2,683,730号;同第2,950,263号;同第3,012,008号;同第3,344,162号および同第3,362,979号明細書に記載され、これらの全ては引用により全部、本明細書に編入する。通常、メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネート混合物は、約20重量パーセントから約100重量パーセントのメチレンジフェニルジイソシアネート異性体を含み、残りはより高い官能性およびより高い分子量を持つポリメチレンポリフェニルジイソシアネートである。これらの中で典型的であるのは、約20重量パーセントから約100重量パーセントのジフェニルジイソシアネート異性体を含むポリフェニルポリイソシアネート混合物であり、その中の約20重量パーセントから約95重量パーセントが4,4’-異性体であり、残りはより高い分子量および約2.1から約3.5の平均官能性を有する官能性のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである。これらのイソシアネート混合物は既知であり、市販されている材料であり、そして米国特許第3,362,979号明細書に記載されている方法により調製することができる。好適な芳香族ポリイソシアネートは、メチレンビス(4-フェニルイソシアネート)、または“MDI”である。純粋MDI,MDIの準-プレポリマー,修飾された純粋MDI
等は、本開示に従いポリウレアを調製するために有用である。純粋MDIは固体であり、そしてすなわち使用するには不便であることが多いので、MDIまたはメチレンビス(4-フェニルイソシアネート)系の液体生成物を本明細書では使用する。引用により本明細書に編入する米国特許第3,394,164号明細書は液体MI生成物を記載する。より一般的には、ウレトンイミン(uretonimine)修飾型純粋MDIも含まれる。この生成物は、蒸留したMDIを触媒の存在下で加熱することにより作られる。液体生成物は、純粋MDIと修飾MDIの混合物である。有機ポリイソシアネートという用語は、活性水素含有物質を含むイソシアネートまたはポリイソシアネートの準プレポリマーも含む。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を提供する。しかし本開示は、その応用を以下に開示する具体的実験、結果および研究室での手順に限定するものとは理解されない。むしろ実施例は様々な態様の1つとして提供されるだけであり、そして例示を意味するもので包括的ではない。
【0070】
エーテルアミン混合物
例示的エーテルアミン混合物は、約3.27kg(7.2lbs.)の1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)および100gのジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)を、4ガロンの反応槽釜に加えることにより調製した。CHDMおよびDMCHAの混合物を窒素下で90℃に加熱し、次いで3.99kg(8.8lbs.)のエチレンオキシド(“EO”)を、90-100℃で、40psigの最大圧で反応槽にゆっくりと加えた。次いでCHDM,DMCHA,およびEOの混合物を100℃で2から3時間温浸して(digested)、CHDMおよびEOの反応からポリエーテルジオールを含有する温浸混合物を形成した。温浸後、温浸混合物の窒素を揮散させ、次いで100℃の真空に供して余分なEOおよびDMCHAを除去した。残るポリエーテルジオールを1ガロンの瓶に包装した。ポリエーテルジオールは、363のヒドロキシル数、0.07重量%の水分、および309ダルトンの重量平均分子量を有する透明で、流動性の液体であった。
【0071】
CHDMとEOの反応からのポリエーテルジオールは、次いで水素およびアンモニアを含む上流反応槽中のニッケル/銅/ジルコニア触媒上で、約200℃の温度および約2000psiの圧で約24から36時間、連続的な還元的アミノ化に供して、1もしくは複数のポリエーテルジアミンを含んでなるエーテルアミン混合物を形成した。エチレン混合物はガロン容器に集め、これは過剰なアンモニアを排気し、そして約1-2mmHgにまで吸引して(vacuum stripped down)、水および残存アンモニアを除去した。最終的なエチレン混合物は低粘度の大変薄い色の液体で、そして水への完全な溶解性を示した。
【0072】
さらに分析では、エーテルアミン混合物が5.17meq./gの全アミン値および96.4%のアミン変換を示し、そのうちの78.5%が一級アミンであり、そして21.5%のほとんどが二級アミンであった。エーテルアミン混合物の重量平均分子量は約650ダルトンであり、そして算出されたアミン水素当量(AHEW)は109であった。
【0073】
前記の実施例は4:1のEO対CHDMのモル比を説明する。前記と同じ工程をEO対CHDMのモル比が2:1および3.33:1の2つの追加の実施例について使用した。
【0074】
種々の特性の3例を以下の表1で説明する。3例はEO対CHDMのモル比が異なる。
【表1】
【0075】
硬化エポキシ樹脂系
硬化エポキシ樹脂系は、(i)4:1のモル比のEO対CHDMを使用して調製した59gの前記エーテルアミン混合物、および(ii)ハンツマンコーポレーションまたはその代理店の1つ(テキサス州、ウッドランド)から入手可能な100gのARALDITE(商標)6010エポキシ樹脂を加えることにより調製した。生じた混合物を透明になるまでスパチュラでよく撹拌し、均一な溶液が形成した。次いでこの均一溶液を、型ならびに添付図を用いて木製表面に流した。一晩、室温で硬化した後、キャスティングおよび木製上の塗膜の両方が透明で、硬い物質となり、これらはアミン―ブラシュまたはウォーター―スポットのような明らかな欠陥が無く、表面には光沢があった。
【0076】
上記記載から本開示は、目的を遂行するため、そして本明細書に言及し、ならびに本開示に固有の利点に到達するために十分に適合することが明らかである。本開示の例示的態様は開示目的で記載してきたが多数の変更を行うことができ、この変更は当業者に本開示および添付の請求の範囲から逸脱せずに達成できることを容易に連想させると理解されるものである。