(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20230510BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/172 500
(21)【出願番号】P 2021199991
(22)【出願日】2021-12-09
(62)【分割の表示】P 2017559007の分割
【原出願日】2016-05-11
【審査請求日】2021-12-09
(32)【優先日】2015-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514028019
【氏名又は名称】アルキオーネ セラピューティクス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALCYONE THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】アナンド・ピージェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブロフィー・モーガン
(72)【発明者】
【氏名】シング・ディープ アルジュン
(72)【発明者】
【氏名】エベール・グレッグ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-517298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達システムにおいて、
少なくとも1つの流体内腔を有するカテーテルと、
前記カテーテルを通じて流体を注入するように構成されたポンプと、
患者の生理学的パラメータを測定するように構成されたセンサと、
前記カテーテルを通じた薬物の注入を、前記センサにより測定された前記生理学的パラメータと連携させるように、前記ポンプを制御する、コントローラと、
を含
み、
前記センサは、髄腔内圧を測定するように構成された第1のセンサと、心拍数を測定するように構成された第2のセンサと、を含み、
前記コントローラは、
前記注入が行われず、前記コントローラが前記第1および第2のセンサの出力に基づいて前記心拍数と前記髄腔内圧との相関関係を確立する、学習モード、ならびに、
前記コントローラが前記第2のセンサの前記出力に基づいて前記カテーテルを通じた前記薬物の前記注入を前記患者の髄腔内拍動と連携させる、注入モード、
において動作可能である、薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2015年5月11日出願の米国仮特許出願第62/159、552号、2015年10月10日出願の米国仮特許出願第62/239、875号、および2016年3月4日出願の米国仮特許出願第62/303、403号の優先権を主張し、これらはそれぞれ、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔分野〕
(例えば、被験者の脳または脊柱の脳脊髄液(CSF)腔またはくも膜下腔内への髄腔内送達を介して)被験者に薬物を送達するためのシステムおよび方法が、本明細書に開示される。
【0003】
〔背景〕
患者に薬物を送達することが望ましくなり得る例は多い。本明細書で使用されるような用語「薬物」は、ホルモン、幹細胞、遺伝子治療、化学物質、化合物、小分子および大分子、染料、抗体、ウイルス、治療薬などを含む、ヒトまたは動物の被験者に送達され得る任意の機能剤を指す。
【0004】
薬物の送達は、全身的に行われてもよく、または、特定の場所もしくは特定の分配パターンを対象としていてもよい。しかしながら、標的型薬物送達は、意図する送達対象がアクセス可能でないか、または低侵襲的にアクセス可能でない場合が多いので、困難となり得る。
【0005】
患者の自然な生理機能も、薬物送達の問題を呈し得る。例えば、髄腔内送達によって所望または最適な薬物分配を達成することは、少なくとも一部には、正味の流動がほとんどなくても振動し、かつ拍動性となる傾向のある、患者の内部におけるCSFの自然流動によって、困難となり得る。大量の薬物を髄腔(intrathecal space)に送達すること、および薬物を分配するのに自然拡散に依存することを含む、従来の技術は、効率が悪く、また、患者にとって有害となり得る。
【0006】
改善された薬物送達システムおよび方法が引き続き必要とされている。
【0007】
〔概要〕
薬物送達システムおよび方法が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、患者の生理学的パラメータ(例えば、患者の自然な脳脊髄液(CSF)拍動、または患者の心拍数もしくは呼吸速度)と連携して、患者に薬物を送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、注入と吸引との組み合わせを用いて、患者への薬物の送達を制御するように構成され得る。前述したシステムにおいて使用されるカテーテル、コントローラ、および他の構成要素も開示され、そのようなシステムを使用するさまざまな方法も開示される。
【0008】
いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、少なくとも1つの流体内腔を有するカテーテルと、カテーテルを通じて流体を注入するように構成されたポンプと、患者の生理学的パラメータを測定するように構成されたセンサと、センサにより測定された生理学的パラメータとカテーテルを通じた薬物の注入を連携させるようにポンプを制御するコントローラと、を含む。
【0009】
コントローラは、注入頻度を、センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動(natural intrathecal pulsation)の周波数と同期させることができる。コントローラは、注入位相を、センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の位相と同期させることができる。コントローラは、センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の正弦波近似を確立させることができる。コントローラは、注入を、正弦波近似の上昇波と同期させることができる。コントローラは、注入を、正弦波近似の下降波と同期させることができる。センサは、髄腔内圧を測定するように構成され得る。センサは、髄腔内圧を測定するように構成された第1のセンサと、心拍数を測定するように構成された第2のセンサと、を含み得る。コントローラは、注入が行われず、コントローラが第1および第2のセンサの出力に基づいて心拍数と髄腔内圧との相関関係を確立する、学習モードと、コントローラが第2のセンサの出力に基づいてカテーテルを通じた薬物の注入を患者の髄腔内拍動と連携させる、注入モードと、で動作可能であってよい。システムは、カテーテルと流体連通する植え込み可能な注入ポートと、注入ポートと嵌合するように構成された生体外の注入器と、を含み得る。カテーテルは、第1および第2の流体内腔を含み得る。コントローラは、センサにより測定された生理学的パラメータと連携して、第1の流体内腔を通じた流体の吸引と、第2の流体内腔を通じた流体の注入とを交互に行うため、ポンプを制御するように構成され得る。センサは、心拍数、髄腔内圧、髄腔内拍動率、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大、胸郭収縮、胸内圧、および腹腔内圧のうちの少なくとも1つを測定するように構成され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者に薬物を送達する方法は、カテーテルを患者の髄腔内に挿入することと、センサを用いて患者の生理学的パラメータを測定することと、センサにより測定された生理学的パラメータとカテーテルを通じた薬物の注入を連携させるように、コントローラによってポンプを制御することと、を含む。
【0011】
この方法は、注入頻度を、センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の周波数と同期させることを含み得る。この方法は、注入位相を、センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の位相と同期させることを含み得る。この方法は、センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の正弦波近似を確立することと、注入を正弦波近似の上昇波と同期させることと、を含み得る。この方法は、センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の正弦波近似を確立することと、注入を正弦波近似の下降波と同期させることと、を含み得る。センサは、髄腔内圧を測定するように構成され得る。センサは、髄腔内圧を測定するように構成された第1のセンサと、心拍数を測定するように構成された第2のセンサと、を含み得る。この方法は、注入が行われていないときに第1および第2のセンサの出力に基づいて心拍数と髄腔内圧との相関関係を確立することと、第2のセンサの出力に基づいて患者の髄腔内拍動とカテーテルを通じた薬物の注入を連携させることと、を含み得る。カテーテルは、第1および第2の流体内腔を含んでよく、方法は、センサにより測定された生理学的パラメータと連携して、第1の流体内腔を通じた流体の吸引と、第2の流体内腔を通じた流体の注入とを交互に行うため、ポンプを制御することを含み得る。センサは、心拍数、髄腔内圧、髄腔内拍動率(intrathecal pulsation rate)、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大、胸郭収縮、胸内圧、および腹腔内圧のうちの少なくとも1つを測定するように構成され得る。カテーテルは、患者の脊髄に沿って延びるように挿入され得、カテーテルの少なくとも一部が患者の脊柱の頸部に配され、かつカテーテルの少なくとも一部が患者の脊柱の腰部に配される。方法は、カテーテルを通じて複数の異なる薬物を送達することを含んでよく、薬物はそれぞれ、カテーテルのそれぞれの流体内腔を通って送達される。方法は、カテーテルを通じて流体を吸引するように、コントローラでポンプを制御することを含み得る。カテーテルは、カテーテルの長さに沿って頭尾方向に離間した複数の出口ポートを含んでよく、方法は、カテーテルの第1のポートを通じて薬物を注入することと、カテーテルの第2のポートを通じて流体を吸引することとを含んでよく、第2のポートは、第1のポートより頭側にある。薬物は、患者の脊柱の頸部に配されたカテーテルのポートを通じて注入されて、その注入された薬物を頭蓋腔に押し込む(propel)ことができる。方法は、ある容量のCSFを患者から吸引することと、第1のポートと第2のポートとの間に薬物のボーラスを形成するように、カテーテルの第2の遠位ポートを通じてCSFを吸引しながら、カテーテルの第1の近位ポートを通じて薬物を注入することと、遠位方向にボーラスを進めるためにボーラスより近位の場所で、先に抽出されたCSFを注入することと、を含み得る。患者から吸引されるCSFの容量は、患者の全CSFの約10容量%であってよい。カテーテルは、経皮的腰椎穿刺によって患者に挿入され得る。注入は、第1の容量の薬物の注入と、第2の容量の薬物の吸引とを交互に行うことを含んでよく、第2の容量は第1の容量未満である。薬物は、対象領域に送達され得、対象領域は、患者の髄腔、患者の軟膜下領域、患者の小脳、患者の歯状核、患者の後根神経節、および患者の運動ニューロンのうちの少なくとも1つである。薬物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、立体的に純粋な(stereopure)核酸、ウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、非ウイルス遺伝子治療薬(non-viral gene therapy)、エキソソーム(vexosomes)、およびリポソームのうちの少なくとも1つを含み得る。方法は、薬物を送達することによって遺伝子療法を行うこと、薬物を送達することによって遺伝子編集を行うこと、薬物を送達することによって遺伝子スイッチを行うこと、および薬物を送達することによって非ウイルス遺伝子療法を行うことのうちの少なくとも1つを含み得る。方法は、患者の全CSF容量を決定することと、全CSF容量に基づいて注入を調整することと、を含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、薬物を患者に送達する方法は、カテーテルを患者の髄腔に挿入することと、カテーテルを通じて薬物を注入するために、コントローラによってポンプを制御することと、カテーテルを通じて流体を吸引するために、コントローラによってポンプを制御することと、薬物の送達を患者内部の対象部位に向けるために、注入および吸引を制御することと、を含む。
【0013】
注入は、患者の自然なCSF拍動に優先して、薬物を対象部位に向けて進めることができる。注入は、患者の自然なCSF拍動と連携して、薬物を対象部位に向けて進めることができる。注入は、薬物のボーラスを送達することと、その後、ボーラスの後で流体の拍動性送達を実行し、ボーラスを対象部位に向けて進めることと、を含み得る。流体は、薬物、緩衝溶液、およびカテーテルを通じて患者から吸引されたCSFのうちの少なくとも1つを含み得る。カテーテルの少なくとも一部は、対象領域内に配され得る。注入および吸引のうちの少なくとも一方は、患者の生理学的パラメータと連携させることができる。この生理学的パラメータは、心拍数、髄腔内圧、髄腔内拍動率、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大、胸郭収縮、胸内圧、および腹腔内圧のうちの少なくとも1つであってよい。カテーテルは、第1および第2の流体内腔を含んでよく、方法は、第1の流体内腔を通じた流体の吸引と第2の流体内腔を通じた流体の注入とを交互に行うようにポンプを制御することを含み得る。カテーテルは、患者の脊髄に沿って延びるように挿入されてよく、カテーテルの少なくとも一部は、患者の脊柱の頸部内に配され、カテーテルの少なくとも一部は、患者の脊柱の腰部内に配される。方法は、ある容量のCSFを患者から吸引することと、第1のポートと第2のポートとの間で薬物のボーラスを形成するように、カテーテルの第2の遠位ポートを通じてCSFを吸引しながらカテーテルの第1の近位ポートを通じて薬物を注入することと、ボーラスを遠位方向に押し進めるためにボーラスより近位の場所において、先に抽出したCSFを注入することと、を含み得る。この方法は、第1の容量の薬物の注入と、第2の容量の薬物の吸引とを交互に行うことを含むことができ、第2の容量は、第1の容量未満である。対象部位は、患者の髄腔、患者の軟膜下領域、患者の小脳、患者の歯状核、患者の後根神経節、および患者の運動ニューロンのうちの少なくとも1つであってよい。薬物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、立体的に純粋な核酸、ウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、非ウイルス遺伝子治療薬、エキソソーム、およびリポソームのうちの少なくとも1つを含み得る。方法は、薬物を送達することによって遺伝子療法を行うこと、薬物を送達することによって遺伝子編集を行うこと、薬物を送達することによって遺伝子スイッチを行うこと、および薬物を送達することによって非ウイルス遺伝子療法を行うこと、のうちの少なくとも1つを含み得る。方法は、患者の全CSF容量を決定することと、全CSF容量に基づいて注入および/または吸引を調整することと、を含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、薬物送達カテーテルは、第1の流体ポートまで延びる第1の流体内腔、第2の流体ポートまで延びる第2の流体内腔、およびガイドワイヤ内腔を有する先端部と、ハブと、先端部の第1の流体内腔と流体連通する第1の流体内腔を画定する第1の流体チューブ、先端部の第2の流体内腔と流体連通する第2の流体内腔を画定する第2の流体チューブ、先端部のガイドワイヤ内腔内部に配された遠位端部を有するガイドワイヤ、ならびにガイドワイヤと第1および第2の流体チューブとが配される少なくとも1つの内部チャネルを画定するシースを有する、本体と、を含み、シースは、ハブの遠位端部から先端部の近位端部まで延びる。
【0015】
先端部は、テーパー状の遠位端部を有し得る。第1および第2の流体ポートは、先端部の長さ方向中心軸からオフセットしていてよい。第1および第2の流体ポートのうちの少なくとも一方は、先端部の長さ方向中心軸に対して垂直に、または斜角をなして向けられ得る。第1および第2の流体チューブは、ハブを通って途切れずに延びることができる。第1および第2の流体チューブは、近位延長チューブを選択的に連結させることができるそれぞれのコネクタにおいて、ハブ内部で終端していてよい。ガイドワイヤは、ハブを通って途切れずに延びることができる。第1および第2の流体チューブは、それらの近位端部にそれぞれの流体コネクタを有し得る。第1および第2の流体チューブのうちの少なくとも一方は、溶融シリカから形成され得る。第1および第2の流体チューブのうちの少なくとも一方は、収縮管に覆われていてよい。シースは、ポリウレタンから形成され得る。シースは、第1および第2の流体チューブのうちの少なくとも一方の流体ポートと流体連通する、シースに形成された開口部を含み得る。第1および第2のポートのうちの少なくとも一方は、螺旋状の内部を有し得る。第1および第2のポートのうちの少なくとも一方は、そのポートの遠位端部に向かってテーパー状になる内部を有し得る。第1の流体ポートは、第2の流体ポートより近位にあってよい。カテーテルは、カテーテル内部に回転可能に取り付けられたオーガを含み得る。カテーテルは、カテーテル内部に配された圧電トランスデューサを含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、経皮針デバイスは、少なくとも1つの内腔を中に画定する細長いシャフトと、細長いシャフトの遠位端部に配されたセンサと、センサの出力を表示するように構成された、細長いシャフトに取り付けられたディスプレイと、少なくとも1つの内腔と流体接続するために細長いシャフトの近位端部に配されたコネクタと、を含む。
【0017】
このデバイスは、流体貯蔵器と、針の内腔と流体連通する流水ドームと、を含んでよく、流水ドームの作動は、貯蔵器から針の内腔を通じて流体をポンプで送るのに有効である。
【0018】
〔詳細な説明〕
薬物送達システムおよび方法を本明細書に開示する。いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、患者の生理学的パラメータ(例えば、患者の自然な脳脊髄液(CSF)拍動または患者の心拍数もしくは呼吸速度)と連携して患者に薬物を送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、患者への薬物の送達を制御するために注入と吸引との組み合わせを使用するように構成され得る。前述したシステムで使用されるカテーテル、コントローラ、および他の構成要素も開示され、そのようなシステムを使用するさまざまな方法も開示される。
【0019】
本明細書に開示される方法、システム、およびデバイスの構造、機能、製造、および使用の原理の全体的な理解をもたらすために、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ以上の例を添付図面に例示する。当業者は、本明細書に具体的に記載され、添付図面に例示された方法、システム、およびデバイスが非限定的な例示的実施形態であることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態と関連して例示または説明された特徴部は、他の実施形態の特徴部と組み合わせられ得る。このような改変および変形体は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、自然なCSFの流れと連携して患者の中枢神経系に薬物が注入されるか、または別様に送達される、システムおよび方法が提供される。例えば、薬物は、自然なCSFパルスと位相および/または周波数が同期された複数の段階において注入され得る。本明細書のシステムおよび方法により、薬物は、従来の技術の場合よりも効率的に患者に送達されることが可能となり得る。例えば、より少量の薬物が、送達され、それでもなお対象目的地に到達することにより、大量の薬物を送達する費用および/または起こり得る副作用を軽減することができる。
【0021】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、意図する送達対象がアクセス可能でないか、または低侵襲的にアクセス可能でないが、代わりに、意図する送達部位と直接流体連通する、より容易にアクセス可能で安全な注入部位が存在する適用に、使用され得る。例えば、薬物は、患者の脊柱(例えば、腰部、胸部、頸部など)の注入部位を介して患者の髄腔に送達され得、また、その髄腔を介して、注入部位より頭側である対象の場所(例えば、脳、または脊柱の、より頭側の領域)まで運ばれ得る。他の実施形態では、薬物は、注入部位より尾側となる場所まで運ばれ得る。
【0022】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、心拍数、CSF圧力、CSF拍動率、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大および収縮、胸内圧、腹腔内圧などといった患者の生理学的パラメータをリアルタイムで監視することにより同期され得る、十分にプログラム可能なカスタマイズされた注入および/または吸引プロファイルを含み得る。これにより、エンドユーザーが、サイクルごとの注入/吸引量、各微量注入の時間の長さおよびプロファイル、微量注入の相対的なタイミング(もしくは位相)、および他のパラメータを微調整することができる。本明細書に開示されるシステムおよび方法は、薬物送達の有効性を評価し、患者の安全性を確実にするために、リアルタイムのインライン圧力感知を含み得る。
【0023】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、さまざまな内腔数量、内腔サイズ、ポート設置場所、および他の特性を備えた注文製のカテーテルを含み得る。カテーテルは、効率的な混合のため、および/または特定の解剖学的構造に適合するように、方向性が最適化され得る。
【0024】
図1は、例示的な薬物送達システム100の概略図である。図示のとおり、システム100は、カテーテル102と、コントローラ104と、ポンプまたはアクチュエータ106と、1つ以上のセンサ108と、を含み得る。ポンプ106は、カテーテル102を通じて患者110の内部(例えば、患者の髄腔内)へ薬物または薬物含有流体をポンプで送るように構成され得る。ポンプ106はまた、患者から流体を吸引するように構成され得る。ポンプ106は、薬物の送達および/または流体の吸引を、センサ108によって測定され得る患者の生理学的パラメータと同期させるか、または別様に連携させるように、コントローラ104によって制御され得る。例示的な生理学的パラメータは、心拍数、CSF圧力、CSF拍動率、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大および収縮、胸内圧、腹腔内圧などを含み得る。
【0025】
システム100と共に使用され得る例示的なカテーテル102が
図2に示されている。カテーテル102は、先端部分112と、本体114と、ハブ116と、を含み得る。本体114の第1の部分114dは、先端部112とハブ116の遠位端部との間に延びることができる。本体114の第2の部分114pは、ハブ116から、1つ以上のコネクタ118、またはカテーテル102をシステム100に連結するための、例えばカテーテルをポンプ106に取り付けるための、他の特徴部まで、近位に延びていてよい。カテーテル102は、約1mの全長を有し得る。
【0026】
カテーテル102の先端部112は、
図3A~
図3Cに、より詳細に図示されている。先端部112は、円錐形、弾丸型(bulleted)、またはテーパー状の先端部を備えた概ね円筒形の本体を含み得る。先端部112は、組織を通して、または髄腔など、患者の内腔を通して、カテーテル102を進める(tunneling)のを容易にするよう、非外傷性の導入表面(lead-in surface)を提供し得る。先端部112は、その中に形成された1つ以上の流体内腔と、対応する1つ以上の流体ポートと、を含んでよく、この流体ポートを通って、流体は、流体内腔からカテーテルの外へ、また、カテーテルの外から流体内腔へと伝わり得る。例示された実施形態では、先端部112は、第1の流体ポート122Aを備えた第1の流体内腔120Aと、第2の流体ポート122Bを備えた第2の流体内腔120Bと、を含むが、先端部は、任意の数の流体内腔(例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個以上など)と、任意の数の流体ポート(例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個以上など)と、を含み得ることが、認識されるであろう。流体ポート122A、122Bは、図示のとおり、実質的に遠位方向に向けられてよく、また、先端部112の長さ方向中心軸からオフセットしていてよい。他の実施形態では、流体ポート122A、122Bは、横方向に、例えば、先端部112の長さ方向中心軸に実質的に垂直な方向に、向けられてよい。流体ポートを中心からわずかにオフセットさせるか、または横方向に向けることで、有利には、カテーテル102の挿入または使用中にポートが塞がれるリスクを減らすことができる。
【0027】
カテーテル102は、カテーテルを患者の内部に遠隔的に位置づけるのを容易にするために操縦機構を含み得る。例えば、カテーテル102は、その中を通してガイドワイヤ124を受容して、カテーテルがガイドワイヤを覆って挿入されるか、またはガイドワイヤによって操縦されることを可能にするように構成され得る。例示された実施形態では、先端部112は、ガイドワイヤ内腔126を含む。ガイドワイヤ内腔126は、図示のとおり閉じた止まり穴であってよいか、または、先端部112の外部に開かれていてよい。あるいは、またはさらに、カテーテル102は、先端部112で終端する1つ以上の操縦ワイヤ(不図示)を含み得る。これらのワイヤは、先端部112からカテーテル102の近位端部まで近位に延びてよく、カテーテル102の近位端部において、ワイヤは、カテーテルの先端部を患者の内部で操縦するために選択的に張力をかけられ得る。例えば、カテーテル102は、その中を通って長さ方向に延び、かつ先端部の外周の周りの直径方向に向かい合った場所において先端部112に固着される、第1および第2の操縦ワイヤを含み得る。操縦ワイヤは、カテーテル102の本体114におけるそれぞれのスリーブまたはチューブを通って、カテーテルの近位端部まで延びてよく、カテーテルの近位端部において、カテーテルの先端部112を操縦するために張力が操縦ワイヤに選択的に加えられ得る。
【0028】
先端部112は、生体適合性材料、ステンレス鋼、チタン、セラミック、ポリマーなどを含むさまざまな材料から形成され得る。先端部112は、放射線不透過性であってよいか、または、X線透視検査もしくは他の撮像技術下での可視化を容易にするために1つ以上の放射線不透過性マーカーを含み得る。
【0029】
先端部112は、約1mm~約1.7mm(約3フレンチ~約5フレンチ)の外径を有し得る。先端部112は、約1mm~約3mmの外径を有し得る。
【0030】
図4は、カテーテル本体114の遠位部分114dの断面図である。図示のとおり、本体114は、内部チャネル130を画定する外側シース128を含み得る。1つ以上の流体チューブ132A、132Bは、内部チャネルの中に配されてよく、各流体チューブは、それぞれの流体内腔134A、134Bを画定する。内部チャネル130はまた、ガイドワイヤ124または1つ以上の操縦ワイヤ(不図示)を収容し得る。例示された実施形態では、本体遠位部分114dは、先端部112の第1の流体内腔120Aと流体連通する内腔134Aを有する第1の流体チューブ132Aと、先端部の第2の流体内腔120Bと流体連通する内腔134Bを有する第2の流体チューブ132Bと、ガイドワイヤ124と、を含む。
【0031】
シース128は、さまざまな断面外形を有し得る。例えば、シース128は、図示のとおり、単一の内部チャネル130を画定する円形の横方向断面を有し得る。さらなる例として、シース128は、複数の内部チャネルを有し得る。流体チューブ132A、132Bはそれぞれ、シース128のそれ自体の独立したチャネル内に配され得るか、または、シース自体が、流体チューブを画定してもよい。ガイドワイヤ124は、シース128のそれ自体の独立したチャネルに配されてよく、流体チューブ132A、132Bは、シースの別個のチャネルに配され得る。ガイドワイヤのチャネルは、円形断面を有してよく、流体チューブのチャネルは、三日月型またはD字型の断面を有し得る。
【0032】
流体チューブ132A、132Bは、溶融シリカ、ポリウレタンなどを含む、さまざまな材料のうちのいずれかから形成され得る。ウイルスは溶融シリカの流体チューブにくっつきにくい場合があるので、ウイルスを送達するのにシステム100を使用する場合には溶融シリカを使用することが有利となり得る。いくつかの実施形態では、薬物送達に使用される流体チューブは、溶融シリカから形成され得、薬物送達に使用されない流体チューブ(例えば、緩衝剤の送達チューブまたは吸引チューブ)は、ポリウレタンなど、溶融シリカ以外の材料から形成され得る。流体チューブ132A、132Bは、収縮管または外側シースで覆われて、流体チューブに応力および張力の緩和をもたらし得る。シース128は、ポリウレタンを含むさまざまな材料のいずれかから形成され得る。流体を伝えるために流体チューブ132A、132Bを使用することが本明細書では一般的に記載されているが、流体チューブは、生検プローブもしくは他の器具を挿入するか、またはセンサ108を挿入するなど、他の目的にも使用され得る。
【0033】
流体チューブ132A、132Bは、約0.127mm~約1.27mm(約0.005インチ~約0.050インチ)の内径を有し得る。流体チューブ132A、132Bは、約0.254mm~約0.508mm(約0.010インチ~約0.020インチ)の内径を有し得る。本体114は、約1mm~約1.7mm(約3フレンチ~約5フレンチ)の外径を有し得る。本体114は、約1mm~約3mmの外径を有し得る。
【0034】
例示的なハブ116が
図5に示されている。ハブ116は、第1の流体チューブ132A、第2の流体チューブ132B、およびガイドワイヤ124を受容するための、それぞれのチャネルを含み得る。各チャネルは、近位開口部および遠位開口部を含み得る。チャネルは、共通の遠位開口部をそれぞれが共有するように、ハブ116の本体内部で合流し得る。本体遠位部分114dのシース128は、ハブ116の遠位開口部を通って、ハブのガイドワイヤチャネル内へと受容され得る。流体チューブ132A、132Bは、ハブ116の本体内部でシース128の側壁を貫通することができる。そのため、ハブ116は、シース128と流体チューブ132A、132Bとの間にシールを形成して、流体チューブおよびガイドワイヤ124を支持し、これらの構成要素を本体遠位部分114dのシースの内部チャネル130内へと案内することができる。
【0035】
ハブ116は、第1の流体チューブ132Aおよび第2の流体チューブ132Bが
図5に示すように妨げられずにハブを完全に通って延びる、「貫通」型ハブであってよい。あるいは、
図6A~
図6Bに示すように、第1の流体チューブ132Aおよび第2の流体チューブ132Bは、ハブ内部のそれぞれのコネクタポート136A、136Bにおいて終端し得る。コネクタポート136A、136Bは、第1の流体チューブ132Aおよび第2の流体チューブ132Bへの本体近位部分114p(例えば、近位延長チューブ)の選択的な連結および分離を可能にし得る。ガイドワイヤ124は、妨げられずにハブ116を完全に通って延び続けてよく、または、ハブ内部の、近位ガイドワイヤ延長部がこれに選択的に連結され得る、コネクタにおいて終端してもよい。テキサス州ヒューストンのValco Instruments Co. Inc.から利用可能な死容積がゼロのマイクロコネクタまたは取り付け具を含め、さまざまなコネクタタイプのいずれかを使用して、流体チューブを近位延長チューブに連結させることができる。
【0036】
本体近位部分114pは、本体遠位部分114dのシースと類似のシースを含み得るか、または、ハブ116から、もしくは、ハブ116において流体チューブ132A、132Bに連結された1つ以上の延長チューブから、近位に延びる流体チューブ132A、132Bによって、形成され得る。カテーテル102の近位端部は、カテーテルの流体チューブ132A、132Bと流体接続するために1つ以上のコネクタ118を含み得る。例えば、
図2に示すように、流体チューブ132A、132B(または場合によっては、近位延長チューブ)は、その近位端部にコネクタ118を含み得る。テキサス州ヒューストンのValco Instruments Co. Inc.から利用可能な死容積がゼロのマイクロコネクタまたは取り付け具を含め、さまざまなコネクタタイプのいずれかを使用し得る。
【0037】
ガイドワイヤ124は、カテーテル102内部に配されてよく、また、患者の内部へのカテーテルの挿入を案内するか、操縦するか、または別様に制御するのに使用され得る。
【0038】
ガイドワイヤ124は、円筒形であってよく、実質的にまっすぐな外形を有し得る。ガイドワイヤ124は、カテーテル102を完全に通って延びてよいか、または、カテーテルの先端部112に形成された盲孔126で終端し得る。使用中、ガイドワイヤ124は、最初に患者に挿入され、対象部位まで案内され得、カテーテル102はその後、ガイドワイヤを覆って挿入されて、カテーテルの一部を対象部位に位置づけることができる。他の実施形態では、カテーテル102は、ガイドワイヤ124より前に、またはガイドワイヤ124と同時に挿入され得、ガイドワイヤは、カテーテルを操縦または案内するのに使用され得る。
【0039】
例えば、
図7A~
図7Cに示すように、ガイドワイヤ124は、ガイドワイヤの遠位端部で、またはこの近くで直線から逸れる静止構成を有し得る。
図7Aでは、ガイドワイヤ124は、湾曲エルボによって接合された、まっすぐな遠位部分124dおよびまっすぐな近位部分124pを有し、遠位部分の長さ方向中心軸は、近位部分の長さ方向中心軸に対して斜角をなして延びる。
図7Bでは、ガイドワイヤ124は、まっすぐな近位部分124pに接合された湾曲した遠位部分124dを有し、遠位部分の長さ方向中心軸は、近位部分の長さ方向中心軸に対して斜角をなして延びる。
図7Cでは、ガイドワイヤ124は、角度のついた屈曲部で合流する、まっすぐな遠位部分124dおよびまっすぐな近位部分124pを有し、遠位部分の長さ方向中心軸は、近位部分の長さ方向中心軸に対して斜角をなして延びる。
【0040】
使用中、ガイドワイヤ124は、屈曲した遠位部分を曲げ、それによりカテーテルを操縦するか、または向けるために、ガイドワイヤの近位端部をねじることによって、患者の内部を通してカテーテル102を操縦するのに使用され得る。単一のガイドワイヤ124が図示されているが、カテーテル102は、任意の数のガイドワイヤおよび/またはガイドワイヤ内腔を含み得ることが認識されるであろう。ガイドワイヤ124は、ニチノールなどの形状記憶金属を含むさまざまな材料のうちのいずれかから形成され得る。
【0041】
本明細書に開示されるカテーテルのうち任意のものが、操縦可能であってよい。例えば、挿入中または別の所望の時点でカテーテル102の遠位端部を案内することができるように、操縦機構が設けられ得る。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、カテーテルの遠位先端部112に連結された第1の端部を有し、かつカテーテルの近位端部に第2の端部を有する1つ以上の操縦ワイヤを含んでよく、カテーテルの近位端部を通じて、張力を、操縦ワイヤに選択的に加えて、カテーテルの先端部を所望の方向に向けるか、または操縦することができる。操縦ワイヤは、カテーテル102の側壁に埋め込まれ得るか、または、カテーテルの内腔を通って延びることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、カテーテル102は、その中を通って延びる同軸の操縦カテーテル(不図示)を含み得る。操縦カテーテルの遠位端部は、湾曲しているか、または湾曲形状に向けて付勢されてよく、操縦カテーテルが一次カテーテル102の先端部から遠位に配備される場合、一次カテーテルは、操縦カテーテルの曲線に沿って操縦または案内され得る。操縦カテーテルは次に、一次カテーテル102内へと後退させられて、曲線状の案内を停止することができる。操縦カテーテルは、形状記憶材料もしくは弾性材料から形成され得るか、または形状記憶材料もしくは弾性材料を含むことができ、操縦カテーテルは、一次カテーテル102内に後退させられたときの実質的に直線の構成と、一次カテーテルから配備されたときの屈曲または湾曲構成との間で、変形可能となる。操縦カテーテルは、配備および後退を可能にするため、一次カテーテル102に対して長さ方向に並進可能であってよい。
【0043】
本明細書に開示するカテーテルのうちの任意のものは、カテーテルと一体であり得るか、またはカテーテルのワーキングチャネルを通して挿入され得る、カメラまたは撮像デバイスを含み得る。本明細書に開示するカテーテルのうちの任意のものは、X線透視検査、CT、MRI、または他の撮像技術下で見ることができるマークを含んで、これらの技術を用いて取り込まれた画像においてカテーテルを可視化することができる。
【0044】
カテーテル102は、高い内圧に耐えるように構成され得る。カテーテル102は、少なくとも約100psi、少なくとも約200psi、および/または少なくとも約500psiの圧力に耐えるように構成され得る。
【0045】
前述したカテーテル102に対するいくつかの変形体が可能であることが、認識されるであろう。例えば、流体ポートのうちの1つ以上は、図示のように、カテーテルの外側壁から出るように横に向けられていてよい。
図8A~
図8Bは、横向きポートを有する例示的なカテーテル先端部を示す。図示のとおり、先端部112は、遠位向きポート122Aまで延びる第1の流体内腔120Aを含む。遠位向きポート122Aは、先端部112の角度がついているかまたはスラッシュカットされた遠位面に形成され得る。先端部112は、横向きポート122Bまで延びる第2の流体内腔120Bも含む。先端部112は、ガイドワイヤ124の遠位端部を受容するためのガイドワイヤ内腔も含み得る。いくつかの実施形態では、シース128の中央チャネル130は、例えば、緩衝剤を送達するため、または薬物を送達するための、流体内腔として作用し得る。先端部112は、シース128の中央チャネル130と流体連通する横向きポート122Cを含み得る。
【0046】
カテーテル102は、カテーテルの先端部分112より近位に、例えば、カテーテルの本体114に形成された、1つ以上の流体ポートを含み得る。
図9は、横向きポート122Bを有する例示的なカテーテル本体114を示す。図示のとおり、本体114のシース128を通って延びる流体チューブ132A、132Bのうちの1つ以上は、本体内で終端し得るか、または別様に、本体に配された流体ポートを有し得る。シース128は、流体チューブ132Bのポートと整列したスリットもしくは開口部122Bを有することができ、流体チューブから出た流体は、シースの開口部を通って流れ得るか、または、流体は、シースを通って流体チューブのポート内へと流れ得る。カテーテル102は、シース128のチャネル130内部に配された1つ以上のプラグ138を含んで、流体チューブ132Bを出入りする流体が、シース内で近位および/または遠位に流れるのを防いで、代わりに、シースに形成された開口部もしくはスリット122Bを通ってシースから出る流体を案内するか、または、チューブの流体ポート内へと入る流体を案内することができる。プラグ138は、剛性材料から、接着剤、シリコーン、またはさまざまな他の材料から、形成され得る。
【0047】
カテーテルの流体内腔は、その中を通って送達される流体の送達パターンを制御するか、または導くように、さまざまな内部形態を有し得る。
図10は、流体内腔のうちの1つ120Aがその内表面上に形成されたねじ筋(thread)を有して、螺旋形状もしくは「コルク抜き」形状を画定している、例示的なカテーテル先端部112を示す。流体内腔120Aの螺旋形状は、その内腔からの流体の乱流を促進し、流体の分散または均一な分配を助長することができる。流体内腔のうちの2つ以上が螺旋状先端部を有し得ることが、認識されるであろう。
図11は、流体内腔のうちの1つ120Aが遠位端部に向かってテーパー状になるか、または狭くなってノズルを形成している、例示的なカテーテル先端部112を示す。このノズルは、ジェットストリーム効果を生じ得、注入液が送達される際の注入液の速度を上げる。流体内腔のうちの2つ以上がノズル先端部を有し得ることが、認識されるであろう。
図10~
図11にも示すように、流体内腔のうちの1つ以上が、単純な円筒形先端部を有し得る。
【0048】
前述のとおり、カテーテル102は、その中を通って延びる任意の数の内腔を含み得る。いくつかの実施形態では、二重内腔カテーテルを使用することができる。二重内腔カテーテルは、注入内腔と圧力センサ内腔、注入内腔と吸引内腔、2つの注入内腔、などを含み得る。他の実施形態では、三重内腔カテーテルを使用することができる。三重内腔カテーテルは、注入内腔と吸引内腔と圧力センサ内腔、2つの注入内腔と吸引内腔、3つの注入内腔、などを含み得る。
図10は、注入内腔120Aと、吸引内腔120Bと、圧力センサ内腔120Cと、を有する、例示的な三重内腔カテーテルを示す。
図11は、注入内腔120Aと吸引内腔120Bとを有する、例示的な二重内腔カテーテルを示す。
【0049】
カテーテルは、その中を通る流体の流れの方向を制御するためにバルブシステムを含み得る。例えば、バルブシステムは、各内腔上に1方向バルブを含んで、吸引内腔への注入および注入内腔からの吸引を防ぐことができる。バルブシステムは、流体を注入し抜き取るために単一の注射器または他のポンプの使用を促進することができるか、または、単一の内腔を通じた注入および吸引を促進することができる。
【0050】
以下でさらに論じるように、センサ108は、カテーテル102に取り付けられる、カテーテルと一体的に形成される、カテーテルの内腔を通して進められる、などすることができる。例えば、カテーテル102は、カテーテルの先端部分112に埋め込まれたセンサ108を含んでよいか、または、カテーテルの専用のセンサ内腔を通って進められるセンサを含んでよい。
【0051】
カテーテルを通る流体内腔のうちの1つ以上が、カテーテルの他の内腔の流体ポートから長さ方向にオフセットした流体ポートを有し得る。例えば、
図12に示すように、カテーテル102は、カテーテルの末端の遠位端部に形成された流体ポート122Aまで延びる第1の流体内腔120Aを含み得る。カテーテル102は、カテーテルの遠位端部から近位方向に距離Dだけ離間している流体ポート122Bまで延びる第2の流体内腔120Bを含むこともできる。図示のとおり、第2の流体内腔120Bは、1つ以上の横向きポート122Bを含み得る。他の実施形態では、第2の流体内腔120Bは、遠位向きポートを含み得る。使用中、流体内腔120A、120Bのうちの一方は、薬物または他の流体を送達するのに使用され得、他方の流体内腔は、患者から流体を吸引するのに使用され得る。よって、カテーテル102は、薬物が第1の流体内腔120Aによりカテーテルの遠位端部において注入され、その後、流体の流れが第2の流体内腔120Bを通って吸引されることによってカテーテルの近位端部に向けて引き戻される、「プッシュプル」効果を対象部位にて生じさせるのに使用され得る。薬物が近位ポートを通じて注入され、遠位ポートを通じて吸引される、逆の構成を使用してもよい。カテーテル102の近位端部は、第1の流体内腔120Aおよび第2の流体内腔120Bにそれぞれ対応する、第1のコネクタ118Aおよび第2のコネクタ118Bを有し得る。オフセットした流体ポート122A、122Bは、送達を、自然なCSFの流れなどの患者の生理学的パラメータと連携させるのに使用され得る。外部蠕動ポンプまたは他のデバイスを使用して、注入および/または吸引を駆動することができる。図示のとおり、本体114の外側シース128は、第2の内腔120Bが終端した後で、第1の内腔120Aに向かって内側にテーパー状になってよい。
【0052】
カテーテル102は、カテーテルを通じた流体の送達を制御するための特徴部を含み得る。例えば、
図13に示すように、カテーテル102は、内部オーガ140を含み得る。オーガ140は、細長い可撓性シャフト142を有してよく、細長い可撓性シャフト142は、カテーテル102を通ってカテーテルの近位端部まで延び、この近位端部において、可撓性シャフトは、オーガの回転を駆動するためのモーターに連結され得る。モーターは、コントローラ104の一部であってよいか、または別個の構成要素であってよい。コントローラ104は、オーガ140の回転を開始および停止させることができ、かつ/または、オーガの回転の速度もしくは方向を制御して、オーガが配されている流体内腔120を通じた流体の送達を制御することができる。オーガ140は、カテーテル102のシース部分128を通って延びる流体チューブ132内に配され得る。オーガ140は、流体チューブ132の末端の遠位端部より遠位に配されてもよく、オーガのシャフト142は、流体チューブを通って延びる。よって、オーガ140は、カテーテル102のシース128内部に配されるものの、カテーテルの流体チューブ132より遠位であってよい。オーガ140は、有利には、カテーテル102を通じた流体送達を制御し、カテーテルからの流体のさらなる乱流を生成することができる。カテーテルの近位端部は、第1および第2の流体内腔にそれぞれ対応する第1のコネクタ118Aおよび第2のコネクタ118Bと、第3のポートまたはコネクタ118Cと、を有してよく、第3のポートまたはコネクタ118Cを通ってオーガのシャフト142が延びることができる。オーガ140は、送達を、自然なCSFの流れなどの患者の生理学的パラメータと連携させるのに使用され得る。
【0053】
さらなる例として、
図14に示すように、カテーテル102は、往復運動する内部ピストンまたは内側チューブ144を含み得る。カテーテル102は、固定された外側チューブ128と、外側チューブ内部に同軸に配された、スライド可能な内側チューブ144と、を含み得る。内側チューブ144は、外側チューブ128に対して長さ方向に並進運動するように構成され得る。内側チューブ144は、例えばその末端の遠位端部に、バルブ146を含み得る。例示的なバルブとしては、1方向バルブ、ダックビルバルブ、バネ付勢されたチェックバルブなどが含まれる。例えばカテーテル102の近位端部において、内側チューブ144と外側チューブ128との間に、シールが形成され得る。使用中、内側チューブ144には、薬物含有流体が詰め込まれ得る。内側チューブ144はその後、外側チューブ128に対して近位に引っ張られて、1方向バルブ146を通じて外側チューブの遠位端部内へと薬物含有流体を流すことができる。内側チューブ144は、次に、遠位に押されて、1方向バルブ146を閉じ、薬物含有流体を外側チューブ128の遠位端部から患者の内部に押し出すことができる。並進運動するチューブ128、144により、固定容量または所定容量の薬物含有注入液を、内側チューブ144の往復ごとに送達することが可能となり得る。外側チューブ128および内側チューブ144の近位端部は、例えば流体を外側チューブおよび内側チューブに供給するための、コネクタ118A、118Bを含み得る。往復運動する内側チューブ144は、送達を、自然なCSFの流れなどの患者の生理学的パラメータと連携させるのに使用され得る。
【0054】
別の例として、
図15に示すように、カテーテル102は、カテーテルを通じた薬物の送達を制御するのを助けるため、圧電トランスデューサなどのトランスデューサ148を含み得る。トランスデューサ148は、カテーテル102の流体ポート122に隣接して配されたフレックス回路または他の基板上に形成され得る。トランスデューサ148は、トランスデューサ148からカテーテル102を通ってコントローラ104まで近位に延びる導電性のリード線またはワイヤ150を含み得る。使用中、電位をトランスデューサ148に加えて、トランスデューサの振動または他の動きを引き起こすことができる。この動きは、カテーテル102からの薬物の分配を制御することができる。例えば、トランスデューサ148は、注入液がカテーテル102から出るときの注入液が流れる方向を制御することができ、カテーテルの流体ポート122の開閉を制御することができ、かつ/またはカテーテルから出る注入液の容量を制御することができる。カテーテル102の近位端部は、第1および第2の流体内腔にそれぞれ対応する第1のコネクタ118Aおよび第2のコネクタ118Bと、第3のポートまたはコネクタ118Cと、を有してよく、第3のポートまたはコネクタ118Cを通って、トランスデューサ148の導電体150が延びることができる。トランスデューサ148は、送達を、自然なCSFの流れなどの患者の生理学的パラメータと連携させるのに使用され得る。
【0055】
システム100は、集束超音波を患者に送達するための1つ以上のトランスデューサを含むことができる。
図16に示すように、集束超音波システム152は、超音波を、薬物含有注入液154がカテーテル102から出る場所へ向けることができる。集束超音波は、薬物の分散を強化し、かつ/または薬物が分散する方向および程度を制御することができる。集束超音波は、送達を、自然なCSFの流れなどの患者の生理学的パラメータと連携させるのに使用され得る。集束超音波は、拍動性の送達なしで薬物分配を強化するか、または向けるのにも使用され得る。
【0056】
図17は、コントローラ104の例示的な実施形態の物理的構成要素のブロック図を示す。本明細書では例示的なコントローラ104が描かれ説明されているが、これは普遍性のため、および便宜上のものであることが認識されるであろう。他の実施形態では、コントローラ104は、本明細書で図示し説明したものとは構造および動作が異なっていてよい。コントローラ104は、タブレット型コンピュータ、モバイルデバイス、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、クラウドベースのコンピュータ、サーバーコンピュータなどであってよい。コントローラ104の1つ以上の部分は、患者に植え込まれ得る。送達制御ソフトウェアは、コントローラ104上で実行され得る。ソフトウェアは、ローカルなハードウェア構成要素(例えば、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ラップトップコンピュータなど)上で実行され得るか、または、遠隔的に(例えば、コントローラと通信連結している(in communications coupling)サーバもしくはクラウド接続されたコンピュータデバイス上で)実行され得る。
【0057】
例示されたコントローラ104は、例えば埋め込まれたソフトウェア、オペレーティングシステム、デバイスドライバ、アプリケーションプログラムなどを実行することによって、コントローラ104の動作を制御する、プロセッサ156を含む。プロセッサ156は、プログラム可能な汎用もしくは特殊用途プロセッサを含む、任意のタイプのマイクロプロセッサもしくは中央処理装置(CPU)、および/またはさまざまな専売もしくは市販のシングルもしくはマルチプロセッサシステムのうちのいずれか、を含み得る。本明細書で使用される用語「プロセッサ」は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ASIC、FPGA、PIC、内部もしくは外部メモリもしくはレジスターからのプログラム命令を読み取り翻訳するプロセッサなどを指すことができる。コントローラ104はメモリ158も含み、メモリは、プロセッサ156によって実行されるべきコードのため、または、プロセッサによって処理されるデータのための、一時記憶装置または固定記憶装置を提供する。メモリ158は、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、1種類以上のランダムアクセスメモリ(RAM)、および/またはメモリテクノロジーの組み合わせを含み得る。コントローラ104のさまざまな構成要素は、任意の1つ以上の別個のトレース、物理バス、通信回線など、によって相互接続され得る。
【0058】
コントローラ104は、通信インターフェースまたはI/Oインターフェースなどのインターフェース160を含むこともできる。通信インターフェースは、コントローラ104がネットワークまたは通信バス(例えばユニバーサル・シリアル・バス)を介してリモートデバイス(例えば、他のコントローラもしくはコンピュータシステム)と通信するのを可能にし得る。I/Oインターフェースは、1つ以上の入力デバイス、1つ以上の出力デバイス、およびコントローラ104のさまざまな他の構成要素間での通信を容易にすることができる。例示的な入力デバイスは、タッチスクリーン、機械式ボタン、キーボード、およびポインティングデバイスを含む。コントローラ104は、不揮発性および/または非一時的な形でデータを記憶するための任意の従来的媒体を含み得る、記憶デバイス162を含むこともできる。よって、記憶デバイス162は、データおよび/または命令を、固執的状態で保持することができる(すなわち、コントローラ104への電力の中断にもかかわらず、値が保持される)。記憶デバイス162は、1つ以上のハードディスクドライブ、フラッシュドライブ、USBドライブ、光学ドライブ、さまざまなメディアディスクもしくはカード、および/またはそれらの任意の組み合わせを含んでよく、また、コントローラ104のその他の構成要素に、直接接続されるか、または、通信インターフェースを通じるなどして遠隔的に接続され得る。コントローラ104は、ディスプレイ164も含んでよく、ディスプレイ164上に表示されるべき画像を生成することができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ164は、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、または液晶ディスプレイ(LCD)であってよい。コントローラ104は、電源166と、適切な調節および調整回路と、を含むこともできる。例示的な電源は、ポリマーリチウムイオンバッテリーなどのバッテリー、またはコントローラ104をDCもしくはAC電源に連結するためのアダプタ(例えば、USBアダプタもしくは電源アダプタ)を含む。
【0059】
コントローラ104が実行するさまざまな機能は、1つ以上のモジュールによって実行されるものとして論理的に記述され得る。そのようなモジュールは、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせにおいて実装され得ることが、理解されるであろう。ソフトウェアにおいて実装された場合、モジュールは、単一のプログラムまたは1つ以上の別々のプログラムの一部であってよく、かつ、さまざまな状況で(例えば、埋め込まれたソフトウェアのパッケージ、オペレーティングシステム、デバイスドライバ、スタンドアロンのアプリケーション、および/またはそれらの組み合わせの一部として)実装され得ることが、さらに理解されるであろう。さらに、1つ以上のモジュールを包含するソフトウェアが、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に実行可能プログラムとして記憶され得る。特定のモジュールによって実行されるものとして本明細書で開示される機能は、任意の他のモジュール、またはモジュールの組み合わせによって実行されてもよく、コントローラは、本明細書に図示および説明したものより少ないか、または多いモジュールを含むことができる。
図18は、コントローラ104の例示的な一実施形態のモジュールの概略図である。
【0060】
図18に示すように、コントローラ104は、センサ108から情報を受信するように構成されたセンサ入力モジュール168を含み得る。センサ入力モジュール168は、センサ108からプロセッサ156へと、例えばプロセッサの汎用の入力/出力ピンを介して供給された、出力信号を読み取り、翻訳することができる。センサ入力モジュール168は、オプションとして、周波数検出、位相検出、デバウンシング、アナログ-デジタル変換、フィルタリングなどといった、センサ信号に対するさまざまな処理を実行することができる。
【0061】
コントローラ104は、患者に対し流体を注入もしくは吸引するため、および/またはカテーテル102を制御するために、ポンプまたはアクチュエータ106を制御するように構成された、送達制御モジュール170を含むこともできる(例えば、オーガ、ピストン、トランスデューサ、超音波システムなど)。例えば、「注入」命令が出されると、送達制御モジュール170は、カテーテル102を通じた注入液のポンプ供給を開始するために、電力がポンプ106に供給されるようにすることができるか、または、圧力下で保存されている注入液がカテーテルとと流体連通させられて、カテーテルを通って流れるように、電子的に作動されるバルブを開くことができる。いくつかの実施形態では、送達制御モジュール170は、システム内の圧力が所定の閾値に達したことを圧力センサが示したときに、ポンプ106への電力を断ち切るか、またはバルブを閉じるように構成され得る。「吸引」命令が出されると、送達制御モジュール170は、カテーテル102から流体をポンプで汲み出し始めるために、電力がポンプ106に供給されるようにすることができる。
【0062】
コントローラ104は、例えば、インターフェース160を介してユーザによって供給されるような、1つ以上のユーザ入力を受信するように構成されたユーザ入力モジュール172を含み得る。例示的なユーザ入力は、以下でさらに論じるように、注入パラメータ、患者情報、治療プロトコルなど、を含み得る。
【0063】
コントローラ104は、グラフィックもしくはテキストユーザインターフェース、メニュー、ボタン、命令、および他のインターフェース要素など、ディスプレイ164上でユーザに対してさまざまな情報を表示するように構成された、ディスプレイモジュール174を含むこともできる。ディスプレイモジュール174は、命令、警告、エラー、測定値、および計算結果を表示するように構成されてもよい。
【0064】
図19は、ディスプレイモジュール174によってユーザに対して表示され得る例示的なグラフィカルユーザインターフェース176を示しており、これを通じて、ユーザは、情報をユーザ入力モジュール172に供給することができる。例示されたインターフェース176は、注入液をカテーテル102に送達し、かつカテーテルから流体を抜き取るかもしくは吸引するためのそれぞれの注射器ポンプに力を加えるように動作され得る第1および第2のモーターもしくはリニアアクチュエータを含む、ポンプシステム106と共に使用されるように構成されている。
【0065】
ユーザインターフェース176は、モーターと関連付けられたさまざまな情報を表示するためのモーター通信パネル178を含み得る。この情報は、モーターの接続状況、モーターのIPアドレスもしくは他のソフトウェアアドレス、およびモーターの通信周波数もしくは更新時間を含み得る。ユーザは、モーターアドレスおよび更新時間を選択または変更するためにモーター通信パネル178と対話することができる。
【0066】
ユーザインターフェース176は、さまざまなモーター設定を調節するため、および現在の設定をユーザに表示するための、モーター設定パネル180を含み得る。モーター設定パネル180は、モーター速度、モーター加速度、モーターステップの関数としての注射器の移動距離、現在のモーター位置、注入頻度、注入振幅、注入速度、注入位相などのための制御装置を含み得る。
【0067】
コントローラ104は、カスタマイズされた送達を達成するために、さまざまな注入および/または吸引パラメータを制御するように構成され得る。これにより、送達は、治療の適用に基づいて調整されることが可能となる。コントローラ104によって制御され得る例示的なパラメータとしては、注入タイプ、注入速度、注入容量、注入と注入との間の時間、振動率(oscillatory rate)、注入と抜き取りとの割合、注入位相タイミング、吸引タイプ、吸引速度、吸引と吸引との間の時間、吸引容量などが含まれる。
【0068】
ポンプまたはアクチュエータシステム106は、薬物もしくは薬物含有流体をカテーテル102に供給するように、かつ/または流体をカテーテルから吸引するように、構成され得る。システム106は、1つ以上のポンプを含み得る。例えば、システム106は、複数のポンプを含んでよく、ポンプはそれぞれ、カテーテル102の対応する内腔と結合され、かつ流体連通している。ポンプは、ある容量の流体を保持するための対応する貯蔵器と結合され、かつ流体連通することもできる。いくつかの実施形態では、システム106は、第1および第2の注射器ポンプを含むことができ、第1および第2の注射器ポンプは、コントローラ104から受信した制御信号に応じて注射器ポンプのプランジャーを前進または後退させるように構成された電子リニアアクチュエータに連結されている。いくつかの実施形態では、システム106は、蠕動ポンプ、オーガポンプ、ギアポンプ、ピストンポンプ、ブラダーポンプなどを含み得る。システム106の1つ以上の部分が、患者に植え込まれ得る。システム106は、さまざまな植え込み可能なポンプまたは生体外のポンプのうちの任意のものを含み得る。いくつかの実施形態では、システム106は、完全に植え込まれたプログラム可能なポンプ、およびシステムを用いて送達されるべき流体を収容する完全に植え込まれた流体貯蔵器を含み得る。いくつかの実施形態では、システム106全体が、例えば長期的治療方法を促進するために、植え込み可能であってよい。
【0069】
センサ108は、単一のセンサまたは複数のセンサであってよい。例示的なセンサは、圧力センサ、心電図センサ、心拍数センサ、温度センサ、PHセンサ、呼吸速度センサ、呼吸容量センサ、肺容量センサ、胸郭拡大および収縮センサ、胸内圧センサ、腹腔内圧センサなどを含む。センサ108のうちの1つ以上が、患者の内部に植え込まれ得る。センサ108のうちの1つ以上が、カテーテル102上に据え付けられるか、カテーテル102を通して挿入されるか、またはカテーテル102内もしくは上に形成されることができる。センサ108は、カテーテル102から離れていてもよい。いくつかの実施形態では、センサ108は、カテーテルに隣接したCSF圧力を測定するためにカテーテル102内もしくは上に配された圧力センサと、患者の心拍数を測定するためのECGセンサと、を含み得る。センサ108は、(ワイヤによって、または無線接続によって)コントローラ104のセンサ入力モジュール168に接続され得る。
【0070】
前述のとおり、送達システム100の1つ以上の構成要素、そして、いくつかの実施形態では、送達システムのすべての構成要素は、患者の内部に植え込まれ得る。送達システム100の一部またはすべてを植え込むことで、非侵襲的処置または外来処置による(例えば、数日、数週間、数か月、もしくは数年にわたる)常習的または長期の薬物送達が容易となり得る。
【0071】
図20A~
図20Bは、患者の内部に完全に植え込まれたカテーテル102を示す。図示のとおり、カテーテル102は、患者の髄腔内に位置づけられるように構成されてよく、実質的に脊柱の全長にわたり、またはその任意の部分に沿って、延びることができる。カテーテル102は、1つ以上の流体内腔を含み得る。カテーテル102は、1つ以上の流体ポートも含み得る。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、複数の流体内腔を含んでよく、複数の流体内腔はそれぞれ、それ自体の対応する流体ポートを有している。例示された実施形態では、カテーテル102は、3つの流体内腔と、3つの対応する流体ポート122P、122M、122Dと、を含む。カテーテル102は、1つ以上のセンサ108(例えば、圧力センサ)を含むこともできる。例示された実施形態では、流体ポート122P、122M、122Dはそれぞれ、それに隣接して、またはその近くに据え付けられたセンサ108P、108M、108Dを含む。カテーテル102の近位端部は、完全に植え込まれた、経皮的な、または生体外の注入ポート182に連結され得、この注入ポートを通って、流体が、カテーテルのさまざまな内腔に送達され(またはそこから除去され)ることができ、また、この注入ポートを通って、カテーテル上の1つ以上のセンサ108がコントローラ104または他のデバイスに連結され得る。クイックコネクタシステム184が、カテーテル102を注入ポート182に連結するのに使用され得る。マイクロコネクタ184は、エアフィルターおよび/または細菌濾過器を含んでよく、死容積がゼロのコネクタであってよい。ポンプ106およびコントローラ104は、注入ポート182と嵌合するように構成された注入器190と連結され得る、
図20Cに示すような、シャシーまたはハウジング188において、共に据え付けられてよい。注入器190は、注入器が経皮的な注入ポート182に対して適切に整列することを確実にするために、磁気整列特徴部186を含み得る。
【0072】
図20Dに示すように、カテーテル102の遠位または頭側/頸部側の先端部は、その中を通る乱流を助長するように、改変された形状を有し得る(例えば、前述のとおり、らせん状もしくはコルク抜き形状の内腔もしくは流体ポート122D)。さまざまな他の形状のうちの任意のものを使用することができる。その他のポート122M、122Pは、同様に構成されてもよく、
図20Eに示すように単純な円形断面を有してもよく、あるいは、本明細書に記載する任意の他の構成を有してもよい。
【0073】
図20A~
図20Eに例示されたシステム100は、さまざまな方法のうちの任意の方法で、急性および/または慢性の適用に使用され得る。
【0074】
例えば、カテーテル102は、3つの異なる薬物を(例えば、1つの薬物をカテーテルのそれぞれの異なる内腔を通して)送達するのに使用され得る。
【0075】
さらなる実施例として、カテーテル102は、脊柱のさまざまな部位に異なる薬物を局所送達するのに使用され得る。
【0076】
さらに別の実施例として、カテーテル102は、実質的に瞬間的な分配により、脊柱全体に沿って同じ薬物を送達するのに使用され得る。
【0077】
別の実施例では、カテーテル102の1つのポートは、吸引するのに使用されてよく、別のポートは注入するのに使用され、注入された流体を、脊柱管を通じて抜き取る。いくつかの実施形態では、流体は、下部腰椎ポート122Pを通じて注入されてよく、流体は、注入された流体を脊柱に「引っ張り」上げるために頸部側ポート122Dを通じて吸引され得る。
【0078】
別の実施例では、流体は、患者の脊柱の頸部に配されたポート122Dを通じて注入されて、注入された薬物を頭蓋腔内に押し出すことができる。
【0079】
さらなる実施例として、カテーテル102は、注入された薬物を脊柱の所与の部位に実質的に封じ込める(contain)のに使用され得る。いくつかの実施形態では、流体は、下部腰椎ポート122Pを通じて注入され得、流体は、中央腰椎(mid-lumbar)ポート122Mから抜き取られて、注入された薬物を、患者の脊柱の腰部において2つのポート122P、122M間に保持することができる。
【0080】
例示的な方法では、複数の内腔およびポートによる注入および吸引は、かなり大きなボーラスを生成して、改良され制御されかつ好都合な速度で前進させるため、段階的であるか、または順番に組み合わせられ得る。方法は、故意に離間させたポート間での同時の吸引/注入を含み得る。送達は、ボーラスを前進させる際の後の処置工程で置き換えられるように安全な量のCSFを除去する準備工程により強化され得る。方法は、最終段階の同期された拍動性の注入を含み得る。方法は、大きなボーラスがより迅速に形成されることを可能にすることができ、制御された投薬を可能にすることができ、かつ/またはボーラスが脳もしくは他の対象部位の近くに送達されることを可能にすることができる。方法は、近位端部から遠位端部に向かってテーパー状になるカテーテルを用いて実行され得る。カテーテル直径が各ポートの遠位で減少するテーパー状のカテーテルの外形によって、カテーテルが、より長くなり、導入/操縦がより容易になり、かつデバイスを対象部位のかなり近くに到達させることができるようになり得る。ポートのデザインおよび場所は、投与量および他の要因に基づいて最適化され得る。カテーテルは、ポートを出る流体が患者の解剖学的構造(例えば、内腔の盲端、内腔の側壁、内腔の狭窄)に対して流れて、カテーテルを出る際の注入液の乱流を促進するように、設置され得る。初期工程では、ある容量の患者のCSFが、カテーテルの1つ以上のポートを通じて吸引され得る。例示的な実施形態では、約10容量%の患者のCSFが、カテーテルを通じて吸引され、貯蔵器に保管され得る。吸引されるCSFの量は、臨床的に決定された安全レベルに基づいていてよい。次の送達工程では、CSFは、カテーテル102の遠位流体ポート122Dを通じて患者から吸引され得、薬物が、同時に、カテーテルの中間ポート122Mを通じて患者の内部に注入される。これにより、薬物のボーラスが中間ポート122Mと遠位ポート122Dとの間に形成され得る。ポートは、カテーテルの長さに沿って位置し、ボーラスのサイズまたは投与量を定めることができる。前進工程では、薬物のボーラスが、患者の内部で前進させられ得る。これは、先に吸引されたCSFを、カテーテル102の近位ポート122Pを通じて貯蔵器から患者の内部へ注入することによって達成され得る。この注入は、ボーラスを対象部位に向けて遠位に押すことができ、患者の内部で正常または安全なCSF圧力に達するまで続けられ得る。先に吸引されたCSFは、前述の実施例ではボーラスを前進させるのに使用されるが、薬物含有流体などの他の流体を、代わりに、またはさらに、使用することができる。ボーラスの前進前、前進中、または前進後に、CSFおよび/または薬物含有流体の注入は、患者の1つ以上の生理学的パラメータと連携して拍動する形で実行され得る。前記の方法は、近位ポート122Pおよび遠位ポート122Dのみを用いて実行されてもよい。近位ポート122P、中間ポート122M、遠位ポート122Dは、
図20Aに示すように脊柱の長さに沿って離間し得るか、またはすべてが、脊柱の別々の領域(例えば、頸椎、胸椎、腰椎など)に収容されてもよい。
【0081】
本明細書に開示されるシステムは、さまざまな薬物送達方法のうちの任意のものに使用され得る。
【0082】
例示的な方法では、注入ポンプ106は、薬物または薬物含有流体を、カテーテル102を通して患者の内部(例えば、患者の髄腔内)にポンプで送るように構成され得る。カテーテル102は、さまざまな場所のうちのいずれかで患者に挿入され得る。例えば、針を用いて経皮的穿刺創が患者に形成され得る。穿刺創は、脊柱の腰部に、または脊柱の任意の他の領域、例えば、C1とC2との間の頸部に、形成され得る。針は、カテーテル102を脊髄に平行に操縦するのを助ける、屈曲した遠位先端部を有し得る。カテーテル102は、針を通じて挿入され、髄腔を通って脊髄に沿って案内され得る。注入は、経皮的穿刺創の近くで実行され得るか、または、カテーテル102は、患者の内部でいくらかの距離を前進させられ得る。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、腰椎に挿入され、頸椎まで、または大槽まで前進させられ得る。注入は、カテーテル102の長さに沿った任意の地点で行われ得る。流体は、(例えば、脊柱の頸部において)カテーテル102の遠位端部から注入され得、カテーテルは、近位に抜き取られ得、さらなる注入が、より尾側の場所で(例えば、脊柱の腰部で)実行され得る。
【0083】
ポンプ106は、薬物の送達を、患者の自然なCSFの流れもしくは拍動と、または患者の他の生理学的パラメータ(例えば、心拍数、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大および収縮、胸内圧、腹腔内圧など)と、同期させるか、または別様に連携させるように、コントローラ104によって制御され得る。注入プロファイルは、注入液を対象部位まで送るために自然なCSF拍動に優先するように調整され得る。あるいは、またはさらに、注入プロファイルは、注入液を対象部位に向かって移動させるために自然なCSF拍動と連携し、かつこれを活用するように調整され得る。
【0084】
圧力センサ108の記録は、コントローラ104によって受信され得、コントローラは、そのセンサ出力に対して信号処理を行って、患者のCSFの流れのさまざまな特徴(例えば、位相、速度、規模など)を決定することができる。コントローラ104は、次に、これらの測定された特徴に基づいてポンプ106を制御して、自然なCSFの流れと連携して薬物を送達することができ、オプションとして、この送達をリアルタイムで同期させる。例えば、
図21Aの上部に示すとおり、コントローラ104は、CSFの測定された拍動性の流れを、正弦波近似へと変換することができる。コントローラ104は次に、
図21Aの下部に示すとおり、ポンプ制御信号を出力して、CSF拍動と連携して注入ポンプ106を駆動することができる。
【0085】
場合によっては、圧力センサ108が感知した圧力は、カテーテル102を通じた注入の影響を受ける場合がある。したがって、CSFの流れを検出または予測する別の方法を有することが望ましくなり得る。よって、いくつかの実施形態では、システム100は、最初は「学習」モードで動作されてよく、このモードでは、注入が行われず、コントローラ104が、CSF拍動と心拍数(例えば、コントローラと通信連結しているECGセンサ108により検出されるような)との間に相関関係を確立する。一般に、CSF拍動は、わずかに遅れて心拍数を追う。いったん相関関係が確立されたら、システム100は、「注入」モードで動作されてよく、このモードでは、注入液がカテーテル102を通じて送達され、CSF拍動が、(圧力センサ108の出力に基づいてCSF拍動を検出もしくは予測する代わりに、またはこれに加えて)測定された心拍数に基づいて検出または予測される。言い換えれば、システム100は、必ずしも圧力センサの出力に頼らずとも、ECG出力に基づいてCSFの流れを内挿または予測することができる。これにより、コントローラ104が送達を目標の圧力もしくは圧力範囲に自動的に調節できるように注入圧力を監視するなど、他の目的に圧力センサを使用することが可能となり得る。
【0086】
本明細書に記載のシステムの一使用例では、薬物は、単純なボーラス注入(ある容量の流体の素早い注入)により髄腔に送達され得、薬物は、その後、脊柱に沿ってゆっくりと拡散する。
【0087】
別の実施例では、ボーラス注入が、薬物を送達するために実行され得、その後、システムは、自然なCSFパルスに優先し、ボーラスを対象位置(例えば、脳)に向けてより迅速に動かすために振動速度/拍動率を変化させることにより、ボーラスの後で拍動を生じさせるのに使用され得る。この拍動は、ある容量のCSFを繰り返し抜き取るか、もしくは吸引し、その後、同じ容量を患者内へとポンプで送りパルスを生じさせることによって、生じ得る。
【0088】
別の実施例では、薬物自体の注入を使用して拍動効果を生じ、薬物を髄腔に沿って押し進めることができる。この実施例では、第1の容量の薬物が注入されてよく(例えば、0.1mL)、その後、第2の、より少ない容量を抜き取ることができる(例えば、0.05mL)。これは、サイクルごとの正味の注入でパルスを生じさせるように、繰り返され得る。このプロセスは、所望の投与量が送達されるまで、繰り返されてよい。2:1の注入と抜き取りとの比率が前述されたが、任意の比率を使用し得ることが、認識されるであろう。さらに、注入および抜き取りの速度は、対象位置(例えば、脊柱の上部)に向けて流体の噴出を生じるように、(例えば、素早く注入し、ゆっくりと抜き取ることによって)制御され得る。
【0089】
本明細書に開示したデバイスおよび方法では、注入および/または吸引は、患者の1つ以上の生理学的パラメータ(例えば、自然なCSFの流れ、心拍数、呼吸速度など)と連携され得る。
【0090】
髄腔内対象部位における薬物分配の方向は、少なくともある程度は、CSFの流れのタイミングに対する薬物送達のタイミングに基づいて、制御され得る。例えば、
図21Bに示すように、CSFの流れの上昇波と同期された注入は、頭側の方向において、より多く分配され得るが、
図21Cに示すように、CSFの流れの下降波と同期された注入は、脊柱管の尾側の方向において、より多く分配され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、二重または多重内腔カテーテルは、交互の、反復的な注入と吸引に使用されてよく、これにより、薬物分配をさらに向上させることができる。
【0092】
本明細書に開示したシステムおよび方法は、(仮にあったとしても)脊柱管または脳の遠隔部分に効率的に到達しない従来の腰椎ボーラス注入と比べて、髄腔に薬物を送達する改善された手段を提供することができる。
【0093】
髄腔内送達は、概ね前述した実施例において説明したが、本明細書のシステムおよび方法は、当業者が認識されるようなサイズまたは他のパラメータの適切な変更により、他の適用に用いられ得ることが、認識されるであろう。例えば、本明細書に開示したシステムおよび方法は、動脈内(intrarterial)または静脈内の送達に使用され得る。このようなシステムおよび方法は、患者の1つ以上の生理学的パラメータ(例えば、自然なCSFの流れ、心拍数、呼吸速度など)と連携させられる、注入および/または吸引を含み得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、薬物は、非拍動性の形で、かつ/または、必ずしも送達を患者の生理学的パラメータと連携させずとも、送達され得る。例えば、交互に行うか、または別様に連携された吸引と注入を使用して、薬物を対象部位に送達することができる。さらなる実施例として、薬物が注入され得、次に、緩衝剤が薬物の後に注入されて、分配を向上させるか、または、薬物を対象部位に向けて動かすことができる。
【0095】
例示的な方法は、カテーテルの少なくとも一部を患者に挿入することと、薬物を患者の対象領域まで送達することと、を含み得る。カテーテルの少なくとも一部は、対象領域内に配され得る。薬物は、拍動性の形で送達され得る。薬物は、患者の生理学的パラメータ(例えば、患者の自然なCSFの流れおよび/または患者の心拍数)と連携して送達され得る。
【0096】
対象領域は患者の髄腔であってよい。対象領域は、患者の軟膜下領域(例えば、脊髄の軟膜下領域および/または脳の軟膜下領域)であってよい。対象領域は患者の小脳であってよい。対象領域は患者の歯状核であってよい。対象領域は患者の後根神経節であってよい。対象領域は患者の運動ニューロンであってよい。薬物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。薬物は、立体的に純粋な核酸を含み得る。薬物は、ウイルスを含み得る。薬物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含み得る。薬物は、非ウイルス遺伝子治療薬を含み得る。薬物はエキソソームを含み得る。薬物はリポソームを含み得る。方法は、薬物を送達することによって(例えば、AAVなどのウイルスを送達することによって)遺伝子療法を行うことを含み得る。方法は、薬物を送達することによって(例えば、AAVなどのウイルスを送達することによって)遺伝子編集を行うことを含み得る。方法は、薬物を送達することによって(例えば、AAVなどのウイルスを送達することによって)遺伝子スイッチを行うことを含み得る。方法は、薬物を送達することによって(例えば、エキソソームおよび/またはリポソームを送達することによって)非ウイルス遺伝子療法を行うことを含み得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、方法は、患者の全CSF容量を決定することと、全CSF容量に基づいて送達を調整することと、を含み得る。例えば、造影剤の有無にかかわらず、MRIまたは撮像技術を用いて、患者の全体的なCSF容量を評価することができる。その後、薬物の送達は、測定された容量に基づいて調整され得る。例えば、より大きい容量の緩衝剤を、全CSF容量がより多い患者に用いてよく、より小さい容量の緩衝剤を、全CSF容量がより少ない患者に用いてよい。さらなる実施例として、注入振幅、注入速度、吸引容量、吸引振幅、および他のパラメータは、測定された全CSF容量に従って、変更され得る。
【0098】
注入容量は、約0.05mL~約50mLの範囲であってよい。注入速度は、約0.5mL/分~約50mL/分の範囲であってよい。
【0099】
以下は、本明細書に開示するシステムを用いて実行され得る例示的な薬物送達方法である。
【0100】
実施例A:
薬物(ポンプ1)と緩衝剤/生理食塩水(ポンプ2)の交互の拍動性注入
薬物の全容量:2.2mL
緩衝剤の全容量:4.4mL
両方のポンプの注入速度:15mL/分
サイクル:腰椎で10サイクルの後、大槽で10サイクル
サイクル間隔:100ミリ秒
注入の説明:腰椎部分で、ポンプ1が0.11mLを15mL/分で注入し、100ms休止し、ポンプ2が0.22mLを15mL/分で注入し、100ms休止する(サイクル1)。これを、腰椎で合計10サイクルにわたり繰り返す。カテーテルを、大槽まで通す。ポンプ1が0.11mLを15mL/分で注入し、100ms休止し、ポンプ2が0.22mLを15mL/分で注入し、100ms休止する(サイクル1)。これを、大槽で合計10サイクルにわたり繰り返す。
【0101】
実施例B:
薬物(ポンプ1)と緩衝剤/生理食塩水(ポンプ2)の交互の拍動性注入
薬物の全容量:3mL
緩衝剤の全容量:20mL
両方のポンプの注入速度:4mL/分
サイクル:胸部で13サイクル
ポンプ1をポンプ2と交互にする間の間隔:1000ミリ秒
サイクル間隔(ポンプ2からポンプ1):5000ミリ秒
注入の説明:腰椎部分において、ポンプ1が0.231mLを4mL/分で注入し、1000ms休止し、ポンプ2が2.0mLを4mL/分で注入し、5000ms休止する(サイクル1)。これを、胸部で合計13サイクルにわたり繰り返す。
【0102】
実施例C:
薬物(ポンプ1)と緩衝剤/生理食塩水(ポンプ2)の交互の拍動性注入
薬物の全容量:5mL
緩衝剤の全容量:8mL
ポンプ1の注入速度:37mL/分
ポンプ2の注入速度:20mL/分
サイクル:胸部で5サイクル
サイクル間隔:10ミリ秒
注入の説明:腰椎部分において、ポンプ1が1mLを37mL/分で注入し、10ms休止し、ポンプ2が1.6mLを30mL/分で注入し、100ms休止する(サイクル1)。これを、胸部で合計5サイクルにわたり繰り返す。
【0103】
図22は、腰椎穿刺針292を含む薬物送達システム200を示す。針292は、針の遠位先端部に隣接して取り付けられたセンサ294(例えば、圧力センサ)を含み得る。したがって、針292を患者210に挿入する際、センサ294は、患者のCSFの圧力または他の特性を測定することができる。針292は、センサ294の出力をユーザに対して表示するための、一体的または遠隔ディスプレイ296を含むこともできる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ296は、針の近位ルアーまたは他のコネクタ298より遠位で、針292の長さに沿って取り付けられ得る。針本体292は、鋭利な、または角度のついた先端部を備えた管状の金属シャフトであってよい。流体チューブは、例えば近位コネクタ298によって、針292に、また、プログラム可能なポンプ106に連結され得る。前述したタイプのコントローラ104は、例えば患者の生理学的パラメータと連携した拍動性の形で、針292を通じて流体を送達するためにポンプ106を制御するようにプログラムされ得る。針292は、薬物を送達するため、緩衝剤を送達するため、および/または流体を吸引するために、使用され得る。いくつかの実施形態では、前述したタイプのカテーテル102は、針292を通して挿入されてよく、流体の送達または吸引は、カテーテルを通じて実行されてよい。
【0104】
図23に示すように、手動ポンプ206は、
図22に示すプログラム可能なポンプ106およびコントローラ104の代わりに、またはこれらに加えて、提供され得る。図示のとおり、針292の(または針を通じて挿入されるカテーテル102の)第1の流体内腔は、第1の貯蔵器および第1の流水ドームを含む、第1のポンプ206Aに連結され得る。同様に、針292の(または針を通じて挿入されるカテーテル102の)第2の流体内腔は、第2の貯蔵器および第2の流水ドームを含む、第2のポンプ206Bに連結され得る。ユーザは、指の圧力を第1および第2の流水ドームに加えて、第1および第2の貯蔵器に収容された流体を選択的に患者の内部へと押し込むことができる。したがって、ユーザの手による作動速度および作動圧力は、注入頻度および容量を左右し得る。よって、ユーザは、送達を手動でパルス状にすることができる。流水ドームは、ドームのそれぞれ連続した作動によって、一定の所定容量の流体が送達されるように、構成され得る。例えば、流水ドームのひと押しごとに、0.1mLの流体を送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、貯蔵器のうちの一方は、緩衝溶液で満たされてよく、もう一方の貯蔵器は、薬物含有溶液で満たされてよい。
【0105】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、説明された発明の概念の趣旨および範囲内において、多くの変更がなされ得ることを、理解されたい。したがって、本発明は説明された実施形態に限定されるものではないことが、意図されている。
【0106】
〔実施の態様〕
(1) 薬物送達システムにおいて、
少なくとも1つの流体内腔を有するカテーテルと、
前記カテーテルを通じて流体を注入するように構成されたポンプと、
患者の生理学的パラメータを測定するように構成されたセンサと、
前記カテーテルを通じた薬物の注入を、前記センサにより測定された前記生理学的パラメータと連携させるように、前記ポンプを制御する、コントローラと、
を含む、薬物送達システム。
(2) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記コントローラは、注入頻度を、前記センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の周波数と同期させる、システム。
(3) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記コントローラは、注入位相を、前記センサにより測定されるような患者の自然な髄腔内拍動の位相と同期させる、システム。
(4) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記コントローラは、前記センサにより測定されるような前記患者の自然な髄腔内拍動の正弦波近似を確立し、注入を前記正弦波近似の上昇波と同期させる、システム。
(5) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記コントローラは、前記センサにより測定されるような前記患者の自然な髄腔内拍動の正弦波近似を確立し、注入を前記正弦波近似の下降波と同期させる、システム。
【0107】
(6) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記センサは、髄腔内圧を測定するように構成されている、システム。
(7) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記センサは、髄腔内圧を測定するように構成された第1のセンサと、心拍数を測定するように構成された第2のセンサと、を含む、システム。
(8) 実施態様7に記載のシステムにおいて、
前記コントローラは、
注入が行われず、前記コントローラが前記第1および第2のセンサの出力に基づいて心拍数と髄腔内圧との相関関係を確立する、学習モード、ならびに、
前記コントローラが前記第2のセンサの出力に基づいて前記カテーテルを通じた前記薬物の注入を前記患者の前記髄腔内拍動と連携させる、注入モード、
において動作可能である、システム。
(9) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルと流体連通する植え込み可能な注入ポートと、
前記注入ポートと嵌合するように構成された生体外の注入器と、
をさらに含む、システム。
(10) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、第1および第2の流体内腔を含み、
前記コントローラは、前記センサにより測定された前記生理学的パラメータと連携して、前記第1の流体内腔を通じた流体の吸引と、前記第2の流体内腔を通じた流体の注入とを交互に行うため、前記ポンプを制御するように構成されている、システム。
【0108】
(11) 実施態様1に記載のシステムにおいて、
前記センサは、心拍数、髄腔内圧、髄腔内拍動率、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大、胸郭収縮、胸内圧、および腹腔内圧のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている、システム。
(12) 患者に薬物を送達する方法において、
カテーテルを前記患者の髄腔内に挿入することと、
センサを用いて前記患者の生理学的パラメータを測定することと、
前記センサにより測定された前記生理学的パラメータと前記カテーテルを通じた薬物の注入を連携させるように、コントローラによってポンプを制御することと、
を含む、方法。
(13) 実施態様12に記載の方法において、
注入頻度を、前記センサにより測定されるような前記患者の自然な髄腔内拍動の周波数と同期させることをさらに含む、方法。
(14) 実施態様12に記載の方法において、
注入位相を、前記センサにより測定されるような前記患者の自然な髄腔内拍動の位相と同期させることをさらに含む、方法。
(15) 実施態様12に記載の方法において、
前記センサにより測定されるような前記患者の自然な髄腔内拍動の正弦波近似を確立することと、
注入を前記正弦波近似の上昇波と同期させることと、
をさらに含む、方法。
【0109】
(16) 実施態様12に記載の方法において、
前記センサにより測定されるような前記患者の自然な髄腔内拍動の正弦波近似を確立することと、
注入を前記正弦波近似の下降波と同期させることと、
をさらに含む、方法。
(17) 実施態様12に記載の方法において、
前記センサは、髄腔内圧を測定するように構成されている、方法。
(18) 実施態様12に記載の方法において、
前記センサは、髄腔内圧を測定するように構成された第1のセンサと、心拍数を測定するように構成された第2のセンサと、を含む、方法。
(19) 実施態様18に記載の方法において、
注入が行われていないときに前記第1および第2のセンサの出力に基づいて心拍数と髄腔内圧との相関関係を確立することと、
前記第2のセンサの出力に基づいて前記患者の前記髄腔内拍動と前記カテーテルを通じた前記薬物の注入を連携させることと、
をさらに含む、方法。
(20) 実施態様12に記載の方法において、
前記カテーテルは、第1および第2の流体内腔を含み、
前記方法は、前記センサにより測定された前記生理学的パラメータと連携して、前記第1の流体内腔を通じた流体の吸引と、前記第2の流体内腔を通じた流体の注入とを交互に行うため、前記ポンプを制御することを含む、方法。
【0110】
(21) 実施態様12に記載の方法において、
前記センサは、心拍数、髄腔内圧、髄腔内拍動率、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大、胸郭収縮、胸内圧、および腹腔内圧のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている、方法。
(22) 実施態様12に記載の方法において、
カテーテルは、前記患者の脊髄に沿って延びるように挿入され、前記カテーテルの少なくとも一部が前記患者の脊柱の頸部に配され、前記カテーテルの少なくとも一部が前記患者の脊柱の腰部に配される、方法。
(23) 実施態様12に記載の方法において、
前記カテーテルを通じて複数の異なる薬物を送達することをさらに含み、
前記薬物はそれぞれ、前記カテーテルのそれぞれの流体内腔を通って送達される、方法。
(24) 実施態様12に記載の方法において、
前記カテーテルを通じて流体を吸引するように、前記コントローラで前記ポンプを制御することをさらに含む、方法。
(25) 実施態様12に記載の方法において、
前記カテーテルは、前記カテーテルの長さに沿って頭尾方向に離間した複数の出口ポートを含み、
前記方法は、前記カテーテルの第1のポートを通じて薬物を注入することと、前記カテーテルの第2のポートを通じて流体を吸引することと、を含み、
前記第2のポートは、前記第1のポートより頭側にある、方法。
【0111】
(26) 実施態様12に記載の方法において、
前記薬物は、前記患者の脊柱の頸部に配された前記カテーテルのポートを通じて注入されて、その注入された薬物を頭蓋腔へ押し込む、方法。
(27) 実施態様12に記載の方法において、
ある容量のCSFを前記患者から吸引することと、
前記カテーテルの第2の遠位ポートを通じてCSFを吸引しながら、前記カテーテルの第1の近位ポートを通じて薬物を注入し、前記第1のポートと第2のポートとの間に薬物のボーラスを形成することと、
遠位方向に前記ボーラスを押し進めるために前記ボーラスより近位の場所で、先に抽出されたCSFを注入することと、
をさらに含む、方法。
(28) 実施態様27に記載の方法において、
前記患者から吸引されるCSFの前記容量は、前記患者の全CSFの約10容量%を含む、方法。
(29) 実施態様12に記載の方法において、
前記カテーテルは、前記患者の経皮的腰椎穿刺創を通じて挿入される、方法。
(30) 実施態様12に記載の方法において、
前記注入は、第1の容量の前記薬物の注入と、第2の容量の前記薬物の吸引とを交互に行うことを含み、
前記第2の容量は、前記第1の容量未満である、方法。
【0112】
(31) 実施態様12に記載の方法において、
前記薬物は、対象領域に送達され、
前記対象領域は、前記患者の髄腔、前記患者の軟膜下領域、前記患者の小脳、前記患者の歯状核、前記患者の後根神経節、および前記患者の運動ニューロンのうちの少なくとも1つである、方法。
(32) 実施態様12に記載の方法において、
前記薬物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、立体的に純粋な核酸、ウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、非ウイルス遺伝子治療薬、エキソソーム、およびリポソームのうちの少なくとも1つを含む、方法。
(33) 実施態様12に記載の方法において、
前記方法は、前記薬物を送達することによって遺伝子療法を行うこと、前記薬物を送達することによって遺伝子編集を行うこと、前記薬物を送達することによって遺伝子スイッチを行うこと、および前記薬物を送達することによって非ウイルス遺伝子療法を行うこと、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
(34) 実施態様12に記載の方法において、
前記患者の全CSF容量を決定することと、
前記全CSF容量に基づいて前記注入を調整することと、
をさらに含む、方法。
(35) 薬物を患者に送達する方法において、
カテーテルを前記患者の髄腔に挿入することと、
前記カテーテルを通じて薬物を注入するために、コントローラでポンプを制御することと、
前記カテーテルを通じて流体を吸引するために、前記コントローラで前記ポンプを制御することと、
前記薬物の送達を前記患者内部の対象部位に向けるために、前記注入および前記吸引を制御することと、
を含む、方法。
【0113】
(36) 実施態様35に記載の方法において、
前記注入は、前記患者の前記自然なCSF拍動に優先して、前記薬物を前記対象部位に向けて進める、方法。
(37) 実施態様35に記載の方法において、
前記注入は、前記患者の前記自然なCSF拍動と連携して、前記薬物を前記対象部位に向けて進める、方法。
(38) 実施態様35に記載の方法において、
前記注入は、前記薬物のボーラスを送達することと、その後、前記ボーラスの後で流体の拍動性送達を実行し、前記ボーラスを前記対象部位に向けて進めることと、を含む、方法。
(39) 実施態様38に記載の方法において、
前記流体は、薬物、緩衝溶液、および前記カテーテルを通じて前記患者から吸引されたCSFのうちの少なくとも1つを含む、方法。
(40) 実施態様35に記載の方法において、
前記カテーテルの少なくとも一部は、前記対象領域内に配される、方法。
【0114】
(41) 実施態様35に記載の方法において、
前記注入および前記吸引のうちの少なくとも一方は、前記患者の生理学的パラメータと連携させられる、方法。
(42) 実施態様35に記載の方法において、
前記生理学的パラメータは、心拍数、髄腔内圧、髄腔内拍動率、呼吸速度、肺容量、胸郭拡大、胸郭収縮、胸内圧、および腹腔内圧のうちの少なくとも1つである、方法。
(43) 実施態様35に記載の方法において、
前記カテーテルは、第1および第2の流体内腔を含み、
前記方法は、前記第1の流体内腔を通じた流体の吸引と、前記第2の流体内腔を通じた流体の注入とを交互に行うように前記ポンプを制御することを含む、方法。
(44) 実施態様35に記載の方法において、
カテーテルは、前記患者の脊髄に沿って延びるように挿入され、前記カテーテルの少なくとも一部は前記患者の脊柱の頸部に配され、前記カテーテルの少なくとも一部は前記患者の脊柱の腰部に配される、方法。
(45) 実施態様35に記載の方法において、
ある容量のCSFを前記患者から吸引することと、
前記第1のポートと第2のポートとの間に薬物のボーラスを形成するように、前記カテーテルの第2の遠位ポートを通じてCSFを吸引しながら前記カテーテルの第1の近位ポートを通じて薬物を注入することと、
前記ボーラスを遠位方向に押し進めるために前記ボーラスより近位の場所において、先に抽出されたCSFを注入することと、
をさらに含む、方法。
【0115】
(46) 実施態様35に記載の方法において、
第1の容量の前記薬物の注入と、第2の容量の前記薬物の吸引とを交互に行うことをさらに含み、
前記第2の容量は、前記第1の容量未満である、方法。
(47) 実施態様35に記載の方法において、
前記対象部位は、前記患者の髄腔、前記患者の軟膜下領域、前記患者の小脳、前記患者の歯状核、前記患者の後根神経節、および前記患者の運動ニューロンのうちの少なくとも1つである、方法。
(48) 実施態様35に記載の方法において、
前記薬物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、立体的に純粋な核酸、ウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、非ウイルス遺伝子治療薬、エキソソーム、およびリポソームのうちの少なくとも1つを含む、方法。
(49) 実施態様35に記載の方法において、
前記方法は、前記薬物を送達することによって遺伝子療法を行うこと、前記薬物を送達することによって遺伝子編集を行うこと、前記薬物を送達することによって遺伝子スイッチを行うこと、および前記薬物を送達することによって非ウイルス遺伝子療法を行うこと、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
(50) 実施態様35に記載の方法において、
前記患者の全CSF容量を決定することと、
前記全CSF容量に基づいて前記注入および/または前記吸引を調整することと、
をさらに含む、方法。
【0116】
(51) 薬物送達カテーテルにおいて、
第1の流体ポートまで延びる第1の流体内腔、第2の流体ポートまで延びる第2の流体内腔、およびガイドワイヤ内腔を有する、先端部と、
ハブと、
前記先端部の前記第1の流体内腔と流体連通する第1の流体内腔を画定する第1の流体チューブ、前記先端部の前記第2の流体内腔と流体連通する第2の流体内腔を画定する第2の流体チューブ、前記先端部の前記ガイドワイヤ内腔内部に配された遠位端部を有するガイドワイヤ、ならびに、前記ガイドワイヤと前記第1および第2の流体チューブとが配される少なくとも1つの内部チャネルを画定するシース、を有する本体であって、前記シースは、前記ハブの遠位端部から前記先端部の近位端部まで延びる、本体と、
を含む、薬物送達カテーテル。
(52) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記先端部は、テーパー状の遠位端部を有する、デバイス。
(53) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2の流体ポートは、前記先端部の長さ方向中心軸からオフセットしている、デバイス。
(54) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2の流体ポートのうちの少なくとも一方は、前記先端部の前記長さ方向中心軸に対して、垂直に、または斜角をなして向けられている、デバイス。
(55) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2の流体チューブは、前記ハブを通って途切れずに延びる、デバイス。
【0117】
(56) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2の流体チューブは、近位延長チューブを選択的に連結させることができるそれぞれのコネクタにおいて、前記ハブ内部で終端している、デバイス。
(57) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記ガイドワイヤは、前記ハブを通って途切れずに延びる、デバイス。
(58) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2の流体チューブは、それらの近位端部にそれぞれの流体コネクタを有する、デバイス。
(59) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2の流体チューブのうちの少なくとも一方は、溶融シリカから形成されている、デバイス。
(60) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2の流体チューブのうちの少なくとも一方は、収縮管に覆われている、デバイス。
【0118】
(61) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記シースは、ポリウレタンから形成されている、デバイス。
(62) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記シースは、前記第1および第2の流体チューブのうちの少なくとも一方の流体ポートと流体連通する、前記シースに形成された開口部を含む、デバイス。
(63) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2のポートのうちの少なくとも一方は、螺旋状の内部を有する、デバイス。
(64) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2のポートのうちの少なくとも一方は、前記ポートの前記遠位端部に向かってテーパー状になる内部を有する、デバイス。
(65) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記第1の流体ポートは、前記第2の流体ポートより近位にある、デバイス。
【0119】
(66) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記カテーテル内部に回転可能に取り付けられたオーガをさらに含む、デバイス。
(67) 実施態様51に記載のデバイスにおいて、
前記カテーテル内部に配された圧電トランスデューサをさらに含む、デバイス。
(68) 経皮針デバイスにおいて、
少なくとも1つの内腔を中に画定する細長いシャフトと、
前記細長いシャフトの遠位端部に配されたセンサと、
前記センサの出力を表示するように構成された、前記細長いシャフトに取り付けられたディスプレイと、
前記少なくとも1つの内腔と流体接続するために前記細長いシャフトの近位端部に配されたコネクタと、
を含む、経皮針デバイス。
(69) 実施態様68に記載のデバイスにおいて、
流体貯蔵器、および前記針の前記内腔と流体連通する流水ドームをさらに含み、
前記流水ドームの作動は、前記貯蔵器から前記針の前記内腔を通じて流体をポンプで送るのに有効である、デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図2】
図1のシステムと共に使用され得るカテーテルの斜視図である。
【
図3A】
図2のカテーテルの先端部の斜視図である。
【
図3B】
図2のカテーテルの先端部の断面図である。
【
図3C】
図2のカテーテルの先端部の一連のデザイン図である。
【
図5】
図2のカテーテルのハブの斜視図であり、ハブの一部が透視図で示されている。
【
図6A】一体化したコネクタと共に示された、
図5のハブの断面図である。
【
図6B】一体化したコネクタと共に示された、
図5のハブの端面図である。
【
図7A】
図2のカテーテルのガイドワイヤの第1の屈曲外形の平面図である。
【
図7B】
図2のカテーテルのガイドワイヤの第2の屈曲外形の平面図である。
【
図7C】
図2のカテーテルのガイドワイヤの第3の屈曲外形の平面図である。
【
図8A】
図2のカテーテルと共に使用され得る先端部の、一部が透視図の斜視図である。
【
図9】横の出口ポートと共に示された、
図2のカテーテルの本体の、一部が透視図の斜視図である。
【
図10】
図2のカテーテルと共に使用され得る先端部の斜視図と端面図である。
【
図11】
図2のカテーテルと共に使用され得る先端部の斜視図と端面図である。
【
図12】
図1のシステムと共に使用され得るカテーテルの、一部が透視図の詳細挿入図を備えた斜視図である。
【
図13】
図1のシステムと共に使用され得るカテーテルの、一部が透視図の詳細挿入図を備えた斜視図である。
【
図14】
図1のシステムと共に使用され得るカテーテルの、一部が透視図の詳細挿入図を備えた斜視図である。
【
図15】
図1のシステムと共に使用され得るカテーテルの、一部が透視図の詳細挿入図を備えた斜視図である。
【
図16】
図1のシステムと共に使用され得る集束超音波システムの概略図である。
【
図17】
図1のシステムのコントローラの概略的なハードウェアの図である。
【
図19】
図17のコントローラによって実装され得るグラフィカルユーザインターフェースのスクリーンキャプチャである。
【
図20A】患者に植え込まれ、注入ポートと共に示された、
図1のシステムのカテーテルの斜視図である。
【
図20C】注入ポート、注入器、およびコントローラと共に示された、
図20Aのカテーテルおよび患者の斜視図である。
【
図21A】感知した生理学的パラメータとポンプの制御を連携させる
図1のシステムのコントローラを示す図である。
【
図21B】薬物の送達を患者の自然なCSF拍動の上昇波と同期させるための
図1のシステムの使用を示す図である。
【
図21C】薬物の送達を患者の自然なCSF拍動の下降波と同期させるための
図1のシステムの使用を示す図である。
【
図22】高性能な(smart)腰椎穿刺針を有する薬物送達システムの概略図である。
【
図23】手動ポンプを備える薬物送達システムの概略図である。