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特許7275373媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20230510BHJP
   B65H 7/12 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B65H7/02
B65H7/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022504793
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008753
(87)【国際公開番号】W WO2021176536
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】高山 彩萌
(72)【発明者】
【氏名】堺 雅晃
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123604(JP,A)
【文献】特開2014-084188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を出力可能な超音波発信器と、
前記超音波発信器と対向して配置され、受信した超音波に応じた超音波信号を出力する超音波受信器と、
前記超音波信号に基づいて、気圧を検出する気圧検出部と、
受信した音に応じた音信号を生成する音受信器と、
前記音信号に基づいて、媒体のジャム又はスキューが発生したか否かを判定する異常判定部と、
前記気圧に基づいて、前記音受信器の感度の変更、前記音信号の補正、又は、前記異常判定部による媒体のジャム又はスキューの判定基準の変更を実行する変更部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
温度を検出する温度センサをさらに有し、
前記気圧検出部は、さらに前記温度に基づいて、前記気圧を検出する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
湿度を検出する湿度センサをさらに有し、
前記気圧検出部は、さらに前記湿度に基づいて、前記気圧を検出する、請求項1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記超音波信号に基づいて、媒体の重送が発生したか否かを判定する重送判定部をさらに有する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
超音波を出力可能な超音波発信器と、前記超音波発信器と対向して配置され、受信した超音波に応じた超音波信号を出力する超音波受信器と、受信した音に応じた音信号を生成する音受信器と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
前記超音波信号に基づいて、気圧を検出し、
前記音信号に基づいて、媒体のジャム又はスキューが発生したか否かを判定し、
前記気圧に基づいて、前記音受信器の感度の変更、前記音信号の補正、又は、媒体のジャム又はスキューの判定基準の変更を実行する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
超音波を出力可能な超音波発信器と、前記超音波発信器と対向して配置され、受信した超音波に応じた超音波信号を出力する超音波受信器と、受信した音に応じた音信号を生成する音受信器と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記超音波信号に基づいて、気圧を検出し、
前記音信号に基づいて、媒体のジャム又はスキューが発生したか否かを判定し、
前記気圧に基づいて、前記音受信器の感度の変更、前記音信号の補正、又は、媒体のジャム又はスキューの判定基準の変更を実行する、
ことを前記媒体搬送装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関し、特に、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等の媒体搬送装置では、媒体が搬送路を移動する際に媒体のジャム(紙詰まり)又はスキュー等の搬送異常が発生する場合がある。一般に、媒体搬送装置は、媒体の搬送を開始してから所定時間内に搬送路内の所定位置まで媒体が搬送されたか否かにより搬送異常が発生したか否かを判定し、搬送異常が発生したときには装置の動作を停止する機能を備える。一方、搬送異常が発生すると搬送路で大きな音が発生するため、媒体搬送装置は、搬送路で発生する音に基づいて搬送異常が発生したか否かを判定することにより、所定時間の経過を待たずに搬送異常の発生を検知できる可能性がある。
【0003】
超音波の検出強度と重送閾値に基づいて媒体の重送の有無を判定する媒体搬送装置が開示されている(特許文献1を参照)。この媒体搬送装置は、高度0mでの超音波発信部から発する超音波の強度に対する検出強度の傾きと、実際に装置が使用される高度での超音波発信部から発する超音波の強度に対する検出強度の傾きから重送閾値を変更する。
【0004】
超音波発信手段に対向して設けられ超音波を受信する超音波受信手段からの受信信号と閾値とに基づいてシートが二枚以上重ねて給送されているか否かを判別するシート給送装置が開示されている(特許文献2を参照)。この閾値は、シートが超音波発信手段と超音波受信手段との間に存在しないときに超音波受信手段から出力された第一の信号と、基準シートが超音波発信手段と超音波受信手段との間に存在するときに超音波受信手段から出力された第二の信号に基づいて設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-43693号公報
【文献】特開2017-39589号公報
【発明の概要】
【0006】
媒体搬送装置では、媒体の搬送異常が発生したか否かをより精度良く判定することが望まれている。
【0007】
媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムの目的は、媒体の搬送異常が発生したか否かをより精度良く判定することを可能とすることにある。
【0008】
実施形態の一側面に係る媒体搬送装置は、超音波を出力可能な超音波発信器と、超音波発信器と対向して配置され、受信した超音波に応じた超音波信号を出力する超音波受信器と、超音波信号に基づいて、気圧を検出する気圧検出部と、受信した音に応じた音信号を生成する音受信器と、音信号に基づいて、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する異常判定部と、気圧に基づいて、音受信器の感度の変更、音信号の補正、又は、異常判定部による媒体の搬送異常の判定基準の変更を実行する変更部と、を有する。
【0009】
また、実施形態の一側面に係る制御方法は、超音波を出力可能な超音波発信器と、超音波発信器と対向して配置され、受信した超音波に応じた超音波信号を出力する超音波受信器と、受信した音に応じた音信号を生成する音受信器と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、超音波信号に基づいて、気圧を検出し、音信号に基づいて、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、気圧に基づいて、音受信器の感度の変更、音信号の補正、又は、媒体の搬送異常の判定基準の変更を実行する。
【0010】
また、実施形態の一側面に係る制御プログラムは、超音波を出力可能な超音波発信器と、超音波発信器と対向して配置され、受信した超音波に応じた超音波信号を出力する超音波受信器と、受信した音に応じた音信号を生成する音受信器と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、超音波信号に基づいて、気圧を検出し、音信号に基づいて、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、気圧に基づいて、音受信器の感度の変更、音信号の補正、又は、媒体の搬送異常の判定基準の変更を実行することを媒体搬送装置に実行させる。
【0011】
本実施形態によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、媒体の搬送異常が発生したか否かをより精度良く判定することが可能となる。
【0012】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
図3】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
図4A】気圧テーブルのデータ構造の一例を示す。
図4B】補正テーブルのデータ構造の一例を示す。
図5】記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
図6】変更処理の動作の例を示すフローチャートである。
図7】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
図8】異常判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図9】重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図10】超音波信号の特性について説明するための図である。
図11】搬送異常判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図12A】音信号の例を示すグラフである。
図12B】音信号の絶対値を取った信号の例を示すグラフである。
図12C】外形信号の例を示すグラフである。
図12D】評価値の例を示すグラフである。
図13A】気圧と、音圧値との関係を示すグラフである。
図13B】気圧と、超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。
図14A】気圧と、超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。
図14B】気圧と、超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。
図14C】気圧と、超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。
図15】他の処理回路250の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一側面に係る媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。なお、以下では、媒体搬送装置100が、用紙又はプラスチックカード等の媒体を原稿として搬送する場合を例にして説明するが、媒体搬送装置100は、媒体を搬送する装置であればどのような装置でもよい。例えば、媒体搬送装置100は、ファクシミリ、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。
【0016】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104及び操作ボタン105等を備える。
【0017】
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。
【0018】
載置台103は、媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。排出台104は、矢印A1で示す方向に回転可能なように、ヒンジにより下側筐体101に係合しており、図1のように開いている状態では、排出された媒体を保持することが可能となる。
【0019】
操作ボタン105は、上側筐体102の表面に配置され、押下されると、操作検出信号を生成して出力する。
【0020】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0021】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ110、給送ローラ111、リタードローラ112、第2媒体センサ113、マイクロフォン114、超音波発信器115a、超音波受信器115b、第1搬送ローラ116、第1従動ローラ117、第1撮像装置119a、第2撮像装置119b、第2搬送ローラ120及び第2従動ローラ121等を有している。なお、各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。
【0022】
下側筐体101の上面は媒体の搬送路の下側ガイド106aを形成し、上側筐体102の下面は媒体の搬送路の上側ガイド106bを形成する。図2において矢印A2は媒体の搬送方向を示す。以下では、上流とは媒体の搬送方向A2の上流のことをいい、下流とは媒体の搬送方向A2の下流のことをいう。
【0023】
第1媒体センサ110は、給送ローラ111及びリタードローラ112の上流側に配置される接触検出センサを有し、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。第1媒体センサ110は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。
【0024】
第2媒体センサ113は、給送ローラ111及びリタードローラ112下流側且つ第1搬送ローラ116及び第1従動ローラ117上流側に配置され、その位置に媒体が存在するか否かを検出する。第2媒体センサ113は、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを含む。発光器は、搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。第2媒体センサ113の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光されるため、第2媒体センサ113の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体信号の信号値は変化する。なお、発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
【0025】
マイクロフォン114は、音受信器の一例であり、媒体搬送路の近傍に設けられ、媒体が搬送中に発生する音(可聴音)を受信(集音)し、受信した音に応じたアナログの音信号を生成して出力する。マイクロフォン114は、給送ローラ111及びリタードローラ112の下流側に、上側筐体102内部のフレーム107に固定されて配置される。媒体が搬送中に発生する音をより的確にマイクロフォン114が集音できるように、上側ガイド106bのマイクロフォン114に対向する位置には穴108が設けられている。マイクロフォン114には、集音する感度が設定可能であり、マイクロフォン114は、設定された感度に応じて集音し、集音した音に応じた音信号を出力する。一定の音圧の音が発生したときに生成される音信号の信号値は、設定される感度が大きい(高い)ほど、大きくなり、設定される感度が小さい(低い)ほど、小さくなる。
【0026】
超音波発信器115a及び超音波受信器115bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。超音波発信器115aは、超音波を出力可能である。なお、可聴音の周波数は、20Hz以上且つ20kHz以下であり、超音波の周波数は、20kHzより大きく且つ300MHz以下である。一方、超音波受信器115bは、アナログ信号生成回路、絶対値信号生成回路及びA/D変換器を有する。アナログ信号生成回路は、超音波発信器115aから出力され、媒体を通過した超音波を受信し、受信した超音波に応じたアナログの電気信号を生成して絶対値信号生成回路に出力する。絶対値信号生成回路は、アナログ信号生成回路から出力されたアナログの電気信号の絶対値を取った絶対値信号を生成してA/D変換器に出力する。A/D変換器は、絶対値信号生成回路から出力された絶対値信号をアナログ/デジタル変換してデジタルの超音波信号を生成して出力する。なお、絶対値信号生成回路及び/又はA/D変換器は、超音波受信器115bの外部に設けられてもよい。以下では、超音波発信器115a及び超音波受信器115bを総じて超音波センサ115と称する場合がある。
【0027】
第1撮像装置119aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)による撮像センサを有する。また、第1撮像装置119aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置119aは、媒体の裏面を撮像した読取画像を生成して出力する。
【0028】
同様に、第2撮像装置119bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによる撮像センサを有する。また、第2撮像装置119bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置119bは、媒体の表面を撮像した読取画像を生成して出力する。
【0029】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。以下では、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを総じて撮像装置119と称する場合がある。
【0030】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ111が図2の矢印A3の方向に回転することによって、下側ガイド106aと上側ガイド106bの間を媒体搬送方向A2に向かって搬送される。リタードローラ112は、媒体搬送時、図2の矢印A4の方向に回転する。給送ローラ111及びリタードローラ112の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ111と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。給送ローラ111及びリタードローラ112は、媒体の分離部として機能する。
【0031】
媒体は、下側ガイド106aと上側ガイド106bによりガイドされながら、第1搬送ローラ116と第1従動ローラ117の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ116が図2の矢印A5の方向に回転することによって、第1撮像装置119aと第2撮像装置119bの間に送り込まれる。撮像装置119により読み取られた媒体は、第2搬送ローラ120が図2の矢印A6の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0032】
図3は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、音信号生成部130、モータ134、インタフェース装置135、温度センサ136、湿度センサ137、記憶装置140及び処理回路150等をさらに有する。
【0034】
音信号生成部130は、音受信器の一例であり、マイクロフォン114、フィルタ131、増幅器132及びA/D変換器133等を含んでいる。フィルタ131は、マイクロフォン114から出力されたアナログの音信号に対して、予め定められた周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを適用し、増幅器132に出力する。増幅器132は、フィルタ131から出力された信号を増幅させてA/D変換器133に出力する。増幅器132には、増幅率が設定可能であり、増幅器132は、設定された増幅率に応じてフィルタ131から出力された信号を増幅させる。一定の信号値を有する音信号が入力されたときに増幅器132から出力される信号の信号値は、設定される増幅率が大きい(高い)ほど、大きくなり、設定される増幅率が小さい(低い)ほど、小さくなる。A/D変換器133は、増幅器132から出力された信号を所定間隔ごとにサンプリングしてデジタル変換したデジタルの音信号を生成し、処理回路150に出力する。なお、フィルタ131、増幅器132及び/又はA/D変換器133はマイクロフォン114に含まれ、マイクロフォン114がデジタルの音信号を出力してもよい。
【0035】
モータ134は、1つ又は複数のモータを含み、処理回路150からの制御信号によって、給送ローラ111、リタードローラ112、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ120を回転させて媒体の搬送動作を行う。
【0036】
インタフェース装置135は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有する。インタフェース装置135は、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して読取画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置135の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0037】
温度センサ136は、媒体搬送装置100における温度(気温)を検出し、検出した温度を示す温度情報を処理回路150に出力する。
【0038】
湿度センサ137は、媒体搬送装置100における湿度を検出し、検出した湿度を示す湿度情報を処理回路150に出力する。
【0039】
記憶装置140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置140には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等である。
【0040】
また、記憶装置140には、読取画像、マイクロフォン114の基準感度、増幅器132の基準増幅率、判定パラメータの基準値、気圧テーブル及び補正テーブル等が格納される。判定パラメータは、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する搬送異常判定処理で使用されるパラメータである。判定パラメータには、第1閾値、第2閾値、加算ポイント及び減算ポイント等が含まれる。第1閾値は、音信号の信号値と比較するための閾値である。第2閾値は、音信号の信号値が第1閾値以上である回数に基づいて算出される評価値と比較するための閾値である。加算ポイントは、音信号の信号値が第1閾値以上である場合に評価値に加算するポイントである。減算ポイントは、音信号の信号値が第1閾値未満である場合に評価値から減算するポイントである。判定パラメータには、他のパラメータが含まれてもよい。気圧テーブル及び補正テーブルの詳細については後述する。
【0041】
処理回路150は、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路150として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0042】
処理回路150は、操作ボタン105、第1媒体センサ110、第2媒体センサ113、超音波センサ115、撮像装置119、音信号生成部130、モータ134、インタフェース装置135、温度センサ136、湿度センサ137及び記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路150は、モータ134の駆動制御、撮像装置119の撮像制御等を行い、読取画像を取得する。また、処理回路150は、音信号生成部130から出力された音信号に基づいて媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する。処理回路150は、超音波センサ115から出力された超音波信号に基づいて気圧を検出し、検出した気圧に基づいて、マイクロフォン114の感度の変更、音信号の補正又は媒体の搬送異常の判定基準の変更を実行する。
【0043】
図4Aは、気圧テーブルのデータ構造の一例を示す。
【0044】
図4Aに示すように、気圧テーブルには、超音波発信器115aが超音波を出力した時に取得される超音波信号の信号値の範囲と、媒体搬送装置100における温度の範囲と、湿度の範囲と、気圧の範囲とが関連付けて記憶されている。気圧テーブルは、様々な環境(温度、湿度、気圧)に媒体搬送装置100を置いた状態で、超音波発信器115aに超音波を出力させた時に取得される超音波信号の信号値を測定した実験結果に基づいて設定される。なお、気圧テーブルには、常温における超音波信号の信号値の範囲と、湿度の範囲と、気圧の範囲とが関連付けて記憶されてもよい。また、気圧テーブルには、常湿における超音波信号の信号値の範囲と、温度の範囲と、気圧の範囲とが関連付けて記憶されてもよい。また、気圧テーブルには、常温常湿における超音波信号の信号値の範囲と、気圧の範囲とが関連付けて記憶されてもよい。
【0045】
図4Bは、補正テーブルのデータ構造の一例を示す。
【0046】
図4Bに示すように、補正テーブルには、媒体搬送装置100における気圧の範囲と、補正係数とが関連付けて記憶されている。補正係数は、マイクロフォン114の感度、音信号の信号値又は判定パラメータを補正するための係数である。補正係数として、マイクロフォン114の感度、増幅器132の増幅率、音信号生成部130から出力される音信号の信号値、判定パラメータに含まれる第1閾値、第2閾値、加算ポイント又は減算ポイントに乗算するための係数が設定される。なお、補正係数として、感度、増幅率、音信号の信号値、第1閾値、第2閾値、加算ポイント又は減算ポイントに対して加算、減算又は除算するための係数が設定されてもよい。また、補正テーブルには、感度、増幅率、音信号の信号値、第1閾値、第2閾値、加算ポイント又は減算ポイントの内の二つ以上のパラメータをそれぞれ補正するための二つ以上の補正係数が記憶されてもよい。
【0047】
感度、増幅率、音信号の信号値もしくは加算ポイントに乗算もしくは加算するための補正係数、又は、第1閾値、第2閾値もしくは減算ポイントから除算もしくは減算するための補正係数は、気圧が低いほど大きくなるように設定される。一方、第1閾値、第2閾値又は減算ポイントに乗算もしくは加算するための補正係数、又は、感度、増幅率、音信号の信号値もしくは加算ポイントから除算もしくは減算するための補正係数は、気圧が低いほど小さくなるように設定される。感度、増幅率又は音信号の信号値を補正するための補正係数は、媒体搬送装置100を様々な気圧環境に置いて所定の音圧の音を発生させた時に生成される音信号の大きさが同一になるように設定される。また、第1閾値、第2閾値、加算ポイント又は減算ポイントを補正するための補正係数は、媒体搬送装置100を様々な気圧環境に置いて所定の音圧の音を発生させた時の媒体の搬送異常の判定結果が一致するように設定される。
【0048】
図5は、記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【0049】
図5に示すように、記憶装置140には、制御プログラム141、気圧検出プログラム142、変更プログラム143、画像生成プログラム144、重送判定プログラム145及び異常判定プログラム146等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路150は、記憶装置140に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作することにより、制御部151、気圧検出部152、変更部153、画像生成部154、重送判定部155及び異常判定部156として機能する。
【0050】
図6は、媒体搬送装置100の変更処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0051】
以下、図6に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の変更処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。図6に示す動作のフローは、例えば、媒体搬送装置100の電源投入後の初期化時(装置起動時)に実行される。なお、図6に示す動作のフローは、定期的に実行されてもよい。
【0052】
最初に、制御部151は、第2媒体センサ113から受信する第2媒体信号に基づいて、媒体搬送路に媒体が存在するか否かを判定する(ステップS101)。
【0053】
媒体搬送路に媒体が存在する場合、制御部151は、モータ134を駆動して給送ローラ111、リタードローラ112、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ120を回転させて、媒体を排出台104に排出させる又は載置台103に戻す(ステップS102)。次に、制御部151は、処理をステップS101へ戻す。
【0054】
一方、媒体搬送路に媒体が存在しない場合、気圧検出部152は、超音波発信器115aに超音波を出力させ、超音波センサ115から超音波信号を取得する(ステップS103)。
【0055】
次に、変更部153は、温度センサ136から温度情報を取得する(ステップS104)。
【0056】
次に、変更部153は、湿度センサ137から湿度情報を取得する(ステップS105)。
【0057】
次に、気圧検出部152は、超音波信号、温度情報に示される温度、及び、湿度情報に示される温度に基づいて、媒体搬送装置100の設置場所における気圧を検出する(ステップS106)。気圧検出部152は、気圧テーブルから、超音波信号の信号値、温度情報に示される温度、及び、湿度情報に示される湿度に対応する気圧を特定し、特定した気圧を媒体搬送装置100の設置場所における気圧として検出する。
【0058】
次に、変更部153は、気圧検出部152が検出した気圧に基づいて、マイクロフォン114の感度の変更、音信号生成部130が生成する音信号の補正又は異常判定部156による媒体の搬送異常の判定基準の変更の内の一つ以上を実行する(ステップS107)。
【0059】
変更部153は、補正テーブルから、気圧検出部152が検出した気圧に対応する補正係数を特定する。変更部153は、マイクロフォン114の基準感度に、特定した補正係数を乗算した感度をマイクロフォン114に設定する。または、変更部153は、増幅器132の基準増幅率に、特定した補正係数を乗算した増幅率を増幅器132に設定する。または、変更部153は、特定した補正係数を、音信号生成部130が出力する音信号の信号値を補正するための補正係数として記憶装置140に設定する。または、変更部153は、第1閾値の基準値に、特定した補正係数を乗算した値を、第1閾値として記憶装置140に設定する。または、変更部153は、第2閾値の基準値に、特定した補正係数を乗算した値を、第2閾値として記憶装置140に設定する。または、変更部153は、加算ポイントの基準値又は減算ポイントの基準値に、特定した補正係数を乗算した値を、加算ポイント又は減算ポイントとして記憶装置140に設定する。
【0060】
なお、変更部153は、基準感度、基準増幅率、第1閾値の基準値、第2閾値の基準値、加算ポイントの基準値又は減算ポイントの基準値に対して、特定した補正係数を加算、減算又は除算することにより、各パラメータを設定してもよい。
【0061】
以上により、変更処理は終了する。なお、ステップS104及びS105の処理が省略され、ステップS106で、気圧検出部152は、気圧テーブルにおいて、超音波信号の信号値に対応する気圧を、媒体搬送装置100の設置場所における気圧として検出してもよい。また、ステップS104の処理が省略され、ステップS106で、気圧検出部152は、気圧テーブルにおいて、超音波信号の信号値及び湿度情報に示される湿度に対応する気圧を媒体搬送装置100の設置場所における気圧として検出してもよい。また、ステップS105の処理が省略され、ステップS106で、気圧検出部152は、気圧テーブルにおいて、超音波信号の信号値及び温度情報に示される温度に対応する気圧を媒体搬送装置100の設置場所における気圧として検出してもよい。
【0062】
図7は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0063】
以下、図7に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。図7に示す動作のフローは、定期的に実行される。
【0064】
最初に、制御部151は、利用者により、媒体の読み取りを指示するための操作ボタン105が押下されて、媒体の読み取りを指示する操作検出信号を操作ボタン105から受信するまで待機する(ステップS201)。
【0065】
次に、制御部151は、第1媒体センサ110から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS202)。
【0066】
載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部151は、ステップS201へ処理を戻し、操作ボタン105から新たに操作検出信号を受信するまで待機する。なお、制御部151は、不図示の表示装置、スピーカ、LED(Light Emitting Diode)等により、媒体を載置する要求を利用者に通知してもよい。
【0067】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部151は、モータ134を駆動して給送ローラ111、リタードローラ112、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ120を回転させて、媒体を搬送させる(ステップS203)。
【0068】
次に、制御部151は、異常発生フラグがONであるか否かを判定する(ステップS204)。この異常発生フラグは、媒体読取処理の開始時にOFFに設定され、後述する異常判定処理で異常が発生したと判定されるとONに設定される。
【0069】
異常発生フラグがONである場合、制御部151は、異常処理として、モータ134を停止して、媒体の搬送を停止させる。また、制御部151は、不図示のスピーカ、LED等により、異常が発生したことを利用者に通知し、異常発生フラグをOFFに設定し(ステップS205)、一連のステップを終了する。
【0070】
一方、異常発生フラグがONでない場合、画像生成部154は、搬送された媒体を撮像装置119に読み取らせ、撮像装置119から読取画像を取得する(ステップS206)。
【0071】
次に、画像生成部154は、読取画像を、インタフェース装置135を介して不図示の情報処理装置へ送信する(ステップS207)。なお、情報処理装置と接続されていない場合、画像生成部154は、読取画像を記憶装置140に記憶しておく。
【0072】
次に、制御部151は、第1媒体センサ110から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS208)。
【0073】
載置台103に媒体が残っている場合、制御部151は、ステップS203へ処理を戻し、ステップS203~S208の処理を繰り返す。一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部151は、一連のステップを終了する。
【0074】
図8は、異常判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0075】
以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。図8に示すフローチャートは、媒体の搬送中に、所定の時間間隔ごとに実行される。異常判定処理が実行される前に、制御部151は、超音波発信器115aに超音波を出力させる。
【0076】
最初に、重送判定部155は、重送判定処理を実施する(ステップS301)。重送判定部155は、重送判定処理において、超音波センサ115から取得した超音波信号の信号値と、記憶装置140に設定された重送閾値に基づいて、媒体の重送が発生したか否かを判定する。重送判定処理の詳細については後述する。
【0077】
次に、異常判定部156は、搬送異常判定処理を実施する(ステップS302)。異常判定部156は、搬送異常判定処理において、音信号生成部130から取得した音信号に基づいて、媒体のジャム又はスキュー等の搬送異常が発生したか否かを判定する。搬送異常判定処理の詳細については後述する。
【0078】
次に、制御部151は、媒体搬送処理に異常が発生したか否かを判定する(ステップS303)。制御部151は、媒体の重送及び搬送異常のうちの少なくとも一つが発生した場合、異常が発生したと判定する。すなわち、制御部151は、媒体の重送及び搬送異常の何れも発生していない場合にのみ、異常が発生していないと判定する。
【0079】
制御部151は、媒体搬送処理に異常が発生した場合、異常発生フラグをONに設定し(ステップS304)、一連のステップを終了する。一方、制御部151は、媒体搬送処理に異常が発生していない場合、特に処理を行わず、一連のステップを終了する。
【0080】
図9は、重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0081】
図9に示す動作のフローは、図8に示すフローチャートのステップS301において実行される。
【0082】
最初に、重送判定部155は、超音波センサ115から超音波信号を取得する(ステップS401)。
【0083】
次に、重送判定部155は、取得した超音波信号の信号値が、重送閾値未満であるか否かを判定する(ステップS402)。
【0084】
図10は、超音波信号の特性について説明するための図である。
【0085】
図10のグラフ1000において、実線1001は一枚の用紙が搬送されている場合の超音波信号の特性を示し、点線1002は用紙の重送が発生している場合の超音波信号の特性を示す。グラフ1000の横軸は時間を示し、縦軸は超音波信号の信号値を示す。重送が発生していることにより、区間1003において点線1002の超音波信号の信号値が低下している。そのため、重送判定部155は、超音波信号の信号値が重送閾値未満であるか否かにより媒体の重送が発生したか否かを判定することができる。
【0086】
重送判定部155は、超音波信号の信号値が重送閾値未満である場合、媒体の重送が発生したと判定し(ステップS403)、一連のステップを終了する。一方、重送判定部155は、超音波信号の信号値が重送閾値以上である場合、媒体の重送は発生していないと判定し(ステップS404)、一連のステップを終了する。このように、重送判定部155は、超音波信号の信号値と重送閾値に基づいて、媒体の重送が発生したか否かを判定する。
【0087】
図11は、搬送異常判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0088】
図11に示す動作のフローは、図8に示すフローチャートのステップS302において実行される。
【0089】
最初に、異常判定部156は、音信号生成部130から音信号を取得する(ステップS501)。
【0090】
図12Aは、音信号の例を示すグラフである。図12Aに示すグラフ1200は、音信号生成部130から出力された音信号を表す。グラフ1200の横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示す。
【0091】
なお、変更部153は、補正係数を用いて、音信号生成部130が出力した音信号を補正する場合、記憶装置140から現在設定されている補正係数を読み出し、音信号生成部130から取得した音信号の信号値に補正係数を乗算することにより音信号を補正する。なお、変更部153は、音信号生成部130から取得した音信号の信号値に対して、補正係数を加算、減算又は除算することにより音信号を補正してもよい。このように、変更部153は、気圧検出部152が検出した気圧に基づいて、音信号生成部130が出力した音信号を補正する。
【0092】
次に、異常判定部156は、音信号生成部130から出力された音信号について絶対値を取った信号を生成する(ステップS502)。
【0093】
図12Bは、音信号の絶対値を取った信号の例を示すグラフである。図12Bに示すグラフ1210は、グラフ1200の音信号の絶対値を取った信号を表す。グラフ1210の横軸は時間を示し、縦軸は信号値の絶対値を示す。
【0094】
次に、異常判定部156は、音信号の絶対値を取った信号の外形を抽出した外形信号を生成する(ステップS503)。異常判定部156は、外形信号として包絡線を抽出する。
【0095】
図12Cは、外形信号の例を示すグラフである。図12Cに示すグラフ1220は、グラフ1210の音信号の絶対値を取った信号の包絡線1221を表す。グラフ1220の横軸は時間を示し、縦軸は信号値の絶対値を示す。
【0096】
次に、異常判定部156は、外形信号に基づく評価値を算出する(ステップS504)。異常判定部156は、外形信号について、信号値が第1閾値以上である場合に増大させ、信号値が第1閾値未満である場合に減少させるように評価値を算出する。異常判定部156は、所定の時間間隔(例えばアナログデジタル変換のサンプリング間隔)ごとに、包絡線1221の値が第1閾値以上であるか否かを判定する。異常判定部156は、包絡線1221の値が第1閾値以上である場合、評価値に加算ポイントを加算し、第1閾値未満である場合、評価値から減算ポイントを減算する。第1閾値、加算ポイント及び/又は減算ポイントは、変更処理で設定される。なお、第1閾値、加算ポイント又は減算ポイントが変更処理で設定されていない場合、第1閾値、加算ポイント又は減算ポイントとして、第1閾値の基準値、加算ポイントの基準値又は減算ポイントの基準値が使用される。
【0097】
図12Dは、評価値の例を示すグラフである。図12Dに示すグラフ1230は、グラフ1220の包絡線1221について算出された評価値を表す。グラフ1220の横軸は時間を示し、縦軸はカウンタ値を示す。
【0098】
次に、異常判定部156は、評価値が第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS505)。第2閾値は、変更処理で設定される。なお、第2閾値が変更処理で設定されていない場合、第2閾値として第2閾値の基準値が使用される。異常判定部156は、評価値が第2閾値以上である場合、媒体のジャム又はステイプルで綴じられた複数の媒体のステイプル周辺でのスキュー(回転)等の媒体の搬送異常が発生したと判定し(ステップS506)、一連のステップを終了する。一方、異常判定部156は、評価値が第2閾値未満である場合、媒体の搬送異常は発生していないと判定し(ステップS507)、一連のステップを終了する。
【0099】
図12Cにおいて、包絡線1221は、時刻T1で第1閾値以上となり、その後、第1閾値未満となっていない。そのため、図12Dに示すように、評価値は時刻T1から増大していき、時刻T2で第2閾値以上となり、異常判定部156は、媒体の搬送異常が発生したと判定する。
【0100】
このように、異常判定部156は、音信号に基づいて、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する。特に、異常判定部156は、音信号と第1閾値の比較に基づいて、加算ポイントを加算又は減算ポイントを減算することにより評価値を算出し、評価値と第2閾値の比較に基づいて、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する。
【0101】
なお、ステップS503において、異常判定部156は、外形信号として、包絡線を求める代わりに、音信号の絶対値を取った信号を所定間隔ごとにピークホールドした信号を求めてもよい。また、異常判定部156は、外形信号として、音信号の絶対値を取った信号に公知の平滑化フィルタ、平均化フィルタ又はローパスフィルタを適用させた信号を求めてもよい。
【0102】
以下、超音波信号に基づいて、マイクロフォン114の感度の変更、音信号の補正、又は、異常判定部156による媒体の搬送異常の判定基準を設定することの技術的意義について説明する。
【0103】
図13Aは、媒体搬送装置100の設置場所における気圧と、媒体搬送装置100の媒体搬送路で所定の音が発生した時にマイクロフォン114が集音する音の音圧値との関係を示すグラフ1300である。
【0104】
図13Aの横軸は媒体搬送装置100の設置場所における気圧[hPa](下側の目盛り)及びその設置場所の高度[km](上側の目盛り)を示し、縦軸は音圧値[dB]を示す。グラフ1300は実験による実測値を示す。図13Aに示すように、媒体搬送装置100の設置場所の高度が高いほど、媒体搬送装置100における気圧が低くなり、音は減衰し、音圧値は低くなる。
【0105】
例えば、同じ大きさの音が発生した場合でも、気圧が1010[hPa]である場合にマイクロフォン114が集音する音の音圧値と比較して、気圧が700[hPa]である場合にマイクロフォン114が集音する音の音圧値は2.6[dB]分低くなる。即ち、気圧が1010[hPa]の状態で所定の音が発生した時に搬送異常が発生したと判定するように判定基準を設定した場合、気圧が700[hPa]の状態でその所定の音が発生した時には媒体の搬送異常が発生していないと誤って判定される可能性がある。また、気圧が700[hPa]の状態で所定の音が発生した時に搬送異常が発生していないと判定するように判定基準を設定した場合、気圧が1010[hPa]の状態でその所定の音が発生した時には媒体の搬送異常が発生したと誤って判定される可能性がある。
【0106】
媒体搬送装置100は、媒体搬送装置100における気圧が低いほど、媒体の搬送異常が発生したと判定しやすくなるように、マイクロフォン114の感度の変更、音信号の補正、又は、異常判定部156による媒体の搬送異常の判定基準の変更を実行する。これにより、媒体搬送装置100は、その設置場所の高度に関わらず、音により媒体の搬送異常が発生したか否かを正しく判定することができる。特に、媒体搬送装置100は、0km~5kmの高度に設置されている場合に、音により媒体の搬送異常が発生したか否かを正しく判定することができる。
【0107】
図13Bは、媒体搬送装置100の設置場所における気圧と、超音波センサ115が出力する超音波信号の信号値との関係を示すグラフ1310である。
【0108】
図13Bの横軸は超音波信号の信号値を示し、縦軸は媒体搬送装置100の設置場所における気圧[hPa](左側の目盛り)及びその設置場所の高度[km](右側の目盛り)を示す。なお、グラフ1310は、媒体搬送装置100の設置場所における気圧(又はその設置場所の高度)と、媒体搬送路に媒体が存在しないときの超音波信号の信号値を示す。図13Bに示すように、媒体搬送装置100の設置場所の高度が高いほど、媒体搬送装置100における気圧が低くなり、超音波は減衰し、超音波信号の信号値は低くなる。
【0109】
したがって、媒体搬送装置100は、超音波信号の信号値から、媒体搬送装置100の設置場所における気圧を推定することができる。
【0110】
図14A図14B及び図14Cは、媒体搬送装置100の設置場所における温度及び湿度毎の、気圧と超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。
【0111】
図14A図14Cの横軸は超音波信号の信号値を示し、縦軸は媒体搬送装置100の設置場所における気圧[hPa]を示す。図14Aのグラフ1400~1402は、湿度RH(Relative Humidity)が30%であるときの気圧と超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。図14Bのグラフ1410~1412は、湿度RHが50%であるときの気圧と超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。図14Cのグラフ1420~1422は、湿度RHが80%であるときの気圧と超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。グラフ1400、1410、1420は、温度が0℃であるときの気圧と超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。グラフ1401、1411、1421は、温度が25℃であるときの気圧と超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。グラフ1402、1412、1422は、温度が60℃であるときの気圧と超音波信号の信号値との関係を示すグラフである。
【0112】
なお、各グラフ1400~1402、1410~1412、1420~1422は、媒体搬送装置100の設置場所における気圧と、媒体搬送路に媒体が存在しないときの超音波信号の信号値を示す。
【0113】
図14A図14Cに示すように、超音波信号の信号値が同一の値であっても、温度及び湿度によって、気圧はわずかに異なる。例えば超音波信号の信号値が60である場合、湿度RHが30%であるときは、温度が60℃であるときの気圧は780[hPa]であり、温度が25℃であるときの気圧は850[hPa]であり、温度が0℃であるときの気圧は940[hPa]である。一方、湿度RHが50%であるときは、温度が60℃であるときの気圧は740[hPa]であり、温度が25℃であるときの気圧は800[hPa]であり、温度が0℃であるときの気圧は860[hPa]である。一方、湿度RHが80%であるときは、温度が60℃であるときの気圧は800[hPa]であり、温度が25℃であるときの気圧は870[hPa]であり、温度が0℃であるときの気圧は960[hPa]である。
【0114】
このように、気圧が同じである場合、媒体搬送装置100における温度が低いほど、超音波は減衰し、超音波信号の信号値は低くなる。したがって、気圧検出部152は、媒体搬送装置100における温度を使用することにより、超音波信号に基づいて、媒体搬送装置100における気圧をより精度良く検出することができる。
【0115】
また、媒体搬送装置100における湿度に応じて、超音波信号の信号値は変化する。媒体搬送装置100における湿度を使用することにより、超音波信号に基づいて、媒体搬送装置100における気圧をより精度良く検出することができる。
【0116】
なお、媒体搬送装置100における温度又は湿度に応じて、音信号の信号値も変化するが、音信号の信号値が変化する度合いはわずかであり、無視できる程度である。そのため、変更部153は、温度又は湿度に基づいて、マイクロフォン114の感度の変更、音信号の補正又は媒体の搬送異常の判定基準の変更を実行しない。
【0117】
但し、変更部153は、温度及び/又は湿度に基づいて、マイクロフォン114の感度の変更、音信号の補正又は媒体の搬送異常の判定基準の変更を実行してもよい。その場合、媒体搬送装置100は、補正テーブルにおいて、媒体搬送装置100の設置場所の気圧の範囲と、温度の範囲及び/又は湿度の範囲と、補正係数とを関連付けて記憶する。各補正係数は、媒体搬送装置100を様々な環境(気圧、温度及び/又は湿度)に置いて所定の音圧の音を発生させた時に生成される音信号の大きさが同一になるように、又は、その時の媒体の搬送異常の判定結果が一致するように設定される。図6のステップS107において、変更部153は、補正テーブルから、気圧検出部152が検出した気圧、温度センサ136から取得した温度情報に示される温度及び/又は湿度センサ137から取得した湿度情報に示される湿度に対応する補正係数を特定する。
【0118】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、超音波信号に基づいて気圧を検出し、検出した気圧に基づいて、音による媒体の搬送異常の判定のパラメータを補正する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体の搬送異常が発生したか否かをより精度良く判定することが可能となった。
【0119】
また、媒体搬送装置100は、媒体の重送が発生したか否かを判定するために使用される超音波センサ115を使用して、媒体搬送装置100の設置場所における気圧を検出する。媒体搬送装置100は、媒体搬送装置100の設置場所における気圧を検出するための特殊なセンサを設ける必要がないため、装置サイズの増大及び装置コストの増大を抑制しつつ、気圧を検出することが可能となった。また、利用者は、媒体搬送装置100が特定の高度環境で使用される場合に、誤って媒体の搬送異常が検出されることを防止するために、搬送異常の検出機能を無効にする又はパラメータを変更する必要がなくなり、利用者の利便性を向上させることが可能となった。
【0120】
図15は、他の実施形態に係る媒体搬送装置における処理回路250の概略構成を示す図である。処理回路250は、制御回路251、気圧検出回路252、変更回路253、画像生成回路254、重送判定回路255及び異常判定回路256等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0121】
制御回路251は、制御部の一例であり、制御部151と同様の機能を有する。制御回路251は、操作ボタン105から操作検出信号を、第1媒体センサ110から第1媒体信号を、第2媒体センサ113から第2媒体信号を受信するとともに、記憶装置140から異常発生フラグを読み出す。制御回路251は、受信又は読み出した各情報に基づいて、モータ134を駆動し、媒体を搬送させる。
【0122】
気圧検出回路252は、気圧検出部の一例であり、気圧検出部152と同様の機能を有する。気圧検出回路252は、超音波センサ115から超音波信号を、温度センサ136から温度情報を、湿度センサ137から湿度情報を受信し、受信した各情報に基づいて気圧を検出し、記憶装置140に記憶する。
【0123】
変更回路253は、変更部の一例であり、変更部153と同様の機能を有する。変更回路253は、記憶装置140から気圧を読み出し、読み出した気圧に基づいて、音信号生成部130のマイクロフォン114の感度の変更又は増幅器132の増幅率の変更を実行する。または、変更回路253は、記憶装置140から、音信号生成部130が出力した音信号又は判定パラメータを読み出し、気圧に基づいて音信号又は判定パラメータを補正して記憶装置140に記憶する。
【0124】
画像生成回路254は、画像生成部の一例であり、画像生成部154と同様の機能を有する。画像生成回路254は、撮像装置119から読取画像を受信し、インタフェース装置135を介して不図示の情報処理装置へ送信する。
【0125】
重送判定回路255は、重送判定部の一例であり、重送判定部155と同様の機能を有する。重送判定回路255は、超音波センサ115から超音波信号を受信し、受信した超音波信号に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定し、判定結果に従って、記憶装置140に記憶された異常発生フラグを更新する。
【0126】
異常判定回路256は、異常判定部の一例であり、異常判定部156と同様の機能を有する。異常判定回路256は、音信号生成部130から音信号を受信し、記憶装置140に記憶する。また、異常判定回路256は、記憶装置140から判定パラメータを読み出し、音信号及び判定パラメータに基づいて媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、判定結果に従って、記憶装置140に記憶された異常発生フラグを更新する。
【0127】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路250を用いる場合も、媒体の搬送異常が発生したか否かをより精度良く判定することが可能となった。
【符号の説明】
【0128】
100 媒体搬送装置
114 マイクロフォン
115a 超音波発信器
115b 超音波受信器
130 音信号生成部
136 温度センサ
137 湿度センサ
152 気圧検出部
153 変更部
155 重送判定部
156 異常判定部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15