(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ブレーキ制御装置の監視装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20230510BHJP
B60T 13/36 20060101ALI20230510BHJP
B61H 13/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
B60T13/36
B61H13/00
(21)【出願番号】P 2022512914
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014604
(87)【国際公開番号】W WO2021199174
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504158881
【氏名又は名称】東京地下鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】西岡 勲
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 賢司
(72)【発明者】
【氏名】新井 修
(72)【発明者】
【氏名】船渡 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 壮馬
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008654(WO,A1)
【文献】米国特許第4538228(US,A)
【文献】特開2005-280516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00-17/22
B62L 1/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制動を制御するブレーキ制御装置に設けられるAC指令室の圧力を検知するAC圧力センサの情報と、前記車両に設けられる空気供給タンクと前記AC指令室との間に設けられ前記空気供給タンクの圧縮空気の前記AC指令室への供給および停止するための供給弁の動作を検知する供給弁動作検知センサの情報と、前記AC指令室と外気とを繋ぐ流路上に設けられ前記AC指令室の圧縮空気の外気への開放および停止するための排気弁の動作を検知する排気弁動作検知センサの情報を取得する取得部と、
前記AC圧力センサの情報と、前記供給弁動作検知センサの情報と、排気弁動作検知センサの情報とに基づいて、前記ブレーキ制御装置の異常を判断する判断部と、
を備える、
ブレーキ制御装置の監視装置。
【請求項2】
前記供給弁動作検知センサの情報は前記供給弁の開閉動作を示す情報であり、
前記排気弁動作検知センサの情報は前記排気弁の開閉動作を示す情報である、
請求項1に記載のブレーキ制御装置の監視装置。
【請求項3】
前記判断部は、
前記AC圧力センサの値が、目標圧力値より高く設定される第1の圧力値を上回る回数が予め設定される回数より多く、かつ、前記排気弁動作検知センサの開閉動作の回数が予め設定される回数より多いときに、前記ブレーキ制御装置の異常と判断する、
請求項2に記載のブレーキ制御装置の監視装置。
【請求項4】
前記判断部は、
前記排気弁の動作を異常と判断した場合に、ブレーキ制御装置の異常個所を、前記排気弁ではない、と判断する、
請求項3に記載のブレーキ制御装置の監視装置。
【請求項5】
前記判断部は、
前記AC圧力センサの値が、目標圧力値より低く設定される第2の圧力値を下回る回数が予め設定される回数より多く、かつ、前記供給弁動作検知センサの開閉動作の回数が予め設定される回数より多いときに、前記ブレーキ制御装置の異常と判断する、
請求項2に記載のブレーキ制御装置の監視装置。
【請求項6】
前記判断部は、
前記供給弁の動作を異常と判断した場合に、ブレーキ制御装置の異常個所を、前記供給弁ではない、と判断する、
請求項5に記載のブレーキ制御装置の監視装置。
【請求項7】
前記取得部は、
前記ブレーキ制御装置の空気ばねの圧力を検知するAS圧力センサの圧力値をさらに取得し、
前記判断部は、
前記AS圧力センサの圧力値が安定している状態か否かを判断し、前記AS圧力センサの圧力値が安定している状態であると判断したときに、前記ブレーキ制御装置の異常を判断する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用ブレーキ制御装置の状態を監視する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両の運行にあたり、鉄道車両に搭載されるブレーキ装置の動作状態等を監視して、故障または異常を判断するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の空制システム異常判定装置は、空制システムの所定個所から取得した圧力値とデータベースに記憶している異常発生時の圧力値とを比較し、空制システムの異常有無を判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空制システム異常判定装置は、取得した圧力値とデータベースに記憶している圧力値を用いて異常を検知しているため、圧力値が正常の範囲内にあるときに、異常の有無を検出することは困難である。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、車両のブレーキ制御装置から取得した圧力値が正常の範囲内にあるときに、ブレーキ制御装置の異常の有無を検出することができる監視装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、車両の制動を制御するブレーキ制御装置に設けられるAC指令室の圧力を検知するAC圧力センサの情報と、車両に設けられる空気供給タンクとAC指令室との間に設けられ空気供給タンクの圧縮空気のAC指令室への供給および停止するための供給弁の動作を検知する供給弁動作検知センサの情報と、AC指令室と外気とを繋ぐ流路上に設けられAC指令室の圧縮空気の外気への開放および停止するための排気弁の動作を検知する排気弁動作検知センサの情報を取得する取得部と、AC圧力センサの情報と、供給弁動作検知センサの情報と、排気弁動作検知センサの情報とに基づいて、ブレーキ制御装置の異常を判断する判断部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、車両の制動を制御するブレーキ制御装置に設けられるAC指令室の圧力を検知するAC圧力センサの情報と、車両に設けられる空気供給タンクとAC指令室との間に設けられ空気供給タンクの圧縮空気のAC指令室への供給を停止するための供給弁の動作を検知する供給弁動作検知センサの情報と、AC指令室と外気とを繋ぐ流路上に設けられAC指令室の圧縮空気を外気に開放するための排気弁の動作を検知する排気弁動作検知センサの情報を取得する取得部と、AC圧力センサの情報と、供給弁動作検知センサの情報と、排気弁動作検知センサの情報とに基づいて、ブレーキ制御装置の異常を判断する判断部と、を備えているので、ブレーキ制御装置から取得した圧力値が正常の範囲内にあるときにブレーキ制御装置の異常の有無を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る監視装置を備えるブレーキ制御装置の構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係るブレーキ制御装置の構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る制御部の概略構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係るAC圧力制御の例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係るAC圧力制御の別の例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る制御部の動作を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係るAC圧力制御の別の例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係るAC圧力制御の別の例を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る監視装置の動作を示す図である。
【
図10】実施の形態2に係るブレーキ制御装置の監視装置の構成例を示す図である。
【
図11】実施の形態に係る監視装置を実現するハードウェアの一般的な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
実施の形態1
図1は、本実施の形態1に係る監視装置100を備えるブレーキ制御装置10の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、監視対象となるブレーキ制御装置10(詳細は後述)は列車を構成する車両1に備えられている。さらに車両1は、端末装置2、車輪3a~3d、ブレーキシリンダ4a~4d、および機械ブレーキ装置5a~5dを備えている。
図1では、車両1台のみ図示しているが、列車を構成する車両の数は特に限定されるものではない。実施の形態1では、ブレーキ制御装置10の監視装置100は、ブレーキ制御装置10に備えられている(詳細は後述)。
【0011】
端末装置2は、ブレーキ制御装置10と接続され、運転室(図示しない)に設置されたブレーキ設定器(図示しない)から出力される電気信号(後述する「ブレーキ指令」)をブレーキ制御装置10に伝送する。また、車両が複数台ある場合、ブレーキ指令を各車両に伝送する。
【0012】
車輪3a~3dは、車両1を支持する台車(図示しない)に設けられた車軸(図示しない)に取り付けられている。車輪3a~3dについて区別しない場合は、車輪3と表現する。
【0013】
ブレーキシリンダ4a~4dは、台車に設けられ、ブレーキ制御装置10から送出された圧縮空気の圧力に応じたブレーキ力を発生させる。ブレーキシリンダ4a~4dについて区別しない場合は、ブレーキシリンダ4と表現する。
【0014】
機械ブレーキ装置5a~5dは、ブレーキシリンダ4によって作動され、車輪3に接触することで車両1を制動する。機械ブレーキ装置5a~5dについて区別しない場合は、機械ブレーキ装置5と表現する。
【0015】
ブレーキ制御装置10は、端末装置2およびブレーキシリンダ4と接続され、端末装置2からブレーキ指令を受け取り、車両1のブレーキ制御を行う。詳細は後述する。ブレーキ指令は、ブレーキ力を示す指令である。
【0016】
図2は、監視対象となるブレーキ制御装置10の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、ブレーキ制御装置10は、制御部11、供給弁20、供給弁動作センサ21、排気弁30、排気弁動作センサ31、中継弁40、AC指令室50、AC圧力センサ60、BC圧力センサ70、SR圧力センサ80、およびAS圧力センサ90を備えている。
【0017】
制御部11は、端末装置2からブレーキ指令が入力される。制御部11は、ブレーキ指令に応じて、供給弁20および排気弁30の開閉動作の制御を行うことで、中継弁40に供給する圧縮空気の流量を制御する。
【0018】
供給弁20は、空気供給タンク6と中継弁40のAC指令室50とを接続する流路上に配置される電磁弁である。ここで、流路とは空気回路を示す。供給弁20は、制御部11からの制御信号に従って開閉動作を行う。供給弁20は、開状態において、空気供給タンク6の圧縮空気をAC指令室50に送出し、所定の圧力を印加させる。
【0019】
供給弁動作検知センサ21は、供給弁20の動作を検知するセンサである。具体的には、供給弁20の開閉動作を検知するセンサである。供給弁動作検知センサ21で検知した開閉動作の情報は、電気信号として制御部11に送られる。
【0020】
排気弁30は、中継弁40のAC指令室50と外気(EX)とを繋ぐ流路上に配置される電磁弁である。排気弁30は、制御部11からの制御信号に従って開閉動作を行う。排気弁30は、開状態において、AC指令室50に送出された圧縮空気を外気に開放し、AC指令室50の圧力を下げる。
【0021】
排気弁動作検知センサ31は、排気弁30の動作を検知するセンサである。具体的には、排気弁30の開閉動作を検知するセンサである。排気弁検知センサ31で検知した開閉動作の情報は、電気信号として制御部11に送られる。
【0022】
中継弁40は、空気供給タンク6およびブレーキシリンダ4と接続され、AC指令室50に送出される圧縮空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の圧縮空気を空気供給タンク6からブレーキシリンダ4に向けて送出する。
【0023】
AC圧力センサ60は、供給弁20と中継弁40とを接続する流路上に設けられた圧力センサである。AC圧力センサ60は、AC指令室に送出される圧縮空気の圧力(指令圧力)を検出可能な圧力センサである。AC圧力センサ60で検出された圧力検出値(AC圧)は、電気信号として制御部11に送られる。制御部11は、AC圧力センサ60から送られた圧力検出値に基づいて、ブレーキの制御を行う。
【0024】
BC圧力センサ70は、中継弁40とブレーキシリンダ4とを接続する流路上に設けられた圧力センサである。BC圧力センサ70は、ブレーキシリンダ4のブレーキ力に対応する圧力を検出可能な圧力センサである。BC圧力センサ70は、ブレーキシリンダ4に印加される空気圧力を検出する。BC圧力センサ70で検出された圧力検出値(BC圧)は、電気信号として制御部11に送られる。
【0025】
SR圧力センサ80は、空気供給タンク6と供給弁20とを接続する流路上に設けられ、空気供給タンク6から供給弁20へ供給される供給元圧縮空気の圧力を検出するセンサである。SR圧力センサ80で検出された圧力検出値(SR圧)は、電気信号として制御部11に送られる。
【0026】
AS圧力センサ90は、車両1に設けられている空気ばね7の圧力を示すAS圧を検出センサである。AS圧力センサには、車両1の重量を示す信号である空気ばね7の圧力であるAS圧が入力される。空気ばね7では車両1にかかる荷重に応じてAS圧が変更される。AS圧力センサ90で検出された圧力検出値(AS圧)は、電気信号として制御部11に送られる。
【0027】
図3は、ブレーキ制御装置10の制御部11の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部11は、入力部12、電磁弁制御部13、出力部14および監視装置100を備えている。また、監視装置100は、取得部101、記憶部102および判断部103を有している。
【0028】
入力部12は、制御部11に送られる指令や信号を受け取る。入力部12には、端末装置2から送られたブレーキ指令が入力される。また、入力部12には、ブレーキ制御装置10内の複数のセンサの信号が入力される。具体的には、入力部12には、AC圧力センサ60、BC圧力センサ70、供給弁動作検知センサ21、排気弁動作検知センサ31、SR圧力センサ80およびAS圧力センサ90で検出された検出値が入力される。
【0029】
電磁弁制御部13は、入力部12に入力されたブレーキ指令に応じて、供給弁20および排気弁30の開閉制御を行う。電磁弁制御部13はAC圧力センサ60からの圧力検出値を参照しながら、供給弁20および排気弁30の制御を行う。
【0030】
出力部14は、ブレーキ制御装置10に異常が発生した場合に、ブレーキ制御装置10の異常発生を端末装置2に出力する。また、ブレーキ制御装置10内の複数のセンサの信号を端末装置2に出力してもよい。また、出力部14は、端末装置2に送る情報を車両1に設けられる記録装置に出力してもよい。
【0031】
監視装置100は、ブレーキ制御装置10内の複数のセンサの検出値に基づいて、異常の判断を行う。
【0032】
取得部101は、入力部12に入力されたブレーキ指令を取得する。また、入力部12に入力されたAC圧力センサ60、BC圧力センサ70、供給弁動作検知センサ21、排気弁動作検知センサ31、SR圧力センサ80およびAS圧力センサ90の検出値を取得する。
【0033】
記憶部102は、ブレーキ指令に応じた複数の情報が記憶されている。複数の情報には、例えば、AC圧力値、BC圧力値、供給弁動作の開閉動作、排気弁動作の開閉動作、SR圧力値およびAS圧力値などが含まれる。記憶されている情報は、ブレーキ指令に応じた正常値であってもよいし、異常値であってもよい。
【0034】
判断部103は、取得部101が取得した複数のセンサの検出値と、記憶部102に記憶されている複数の情報に基づき、異常有無を判断する。詳細は後述する。
【0035】
次に、ブレーキ制御装置10の動作について説明する。
図4は、ブレーキ制御装置10のAC圧力値、供給弁20の動作および排気弁30の動作の時間変化を示したグラフの一例である。具体的には、
図4(a)は、AC圧力値の時間変化を示し、縦軸はAC圧力値(kPa)、横軸は時刻(秒)を示している。
図4(b)は、供給弁20の開閉動作の時間変化を示し、縦軸は、供給弁20の開閉の状態、横軸は時刻(秒)を示している。
図4(c)は、排気弁30の開閉動作の時間変化を示し、縦軸は、排気弁30の開閉の状態、横軸は時刻(秒)を示している。
図4(a)から(c)の時刻はそれぞれ対応している(同じ時刻を示している)。
【0036】
図4(a)は、AC圧力値が目標圧力値となるように制御される場合の時間変化を示している。グラフの実線は、AC圧力の検出値である。グラフの一点鎖線は目標とする圧力値(目標AC圧)である。グラフの鎖線は、予め設定されたAC圧力の閾値である。本実施の形態では、例えば、4つの閾値が設定される。圧力値の小さい方から、第2下限値、第1下限値、第1上限値および第2上限値と表現する。目標AC圧は、第1下限値と第1上限値との間に設定される。言い換えると、第1上限値は、目標AC圧より高い圧力に設定され、第2上限値は、第1上限値より高い圧力に設定される。第1下限値は、目標AC圧より低い圧力に設定され、第2下限値は、第1下限値より低い圧力に設定される。第1下限値と第1上限値の間の圧力値となるようAC圧力値は制御される。
【0037】
制御部11は空気供給タンク6から圧縮空気をAC指令室に送出するために、供給弁20を閉状態から開状態にする制御を行う。
図4(b)に示すように、制御部11は、供給弁20を、時刻T1(秒)に閉状態から開状態にする制御を行っている。また、
図4(c)に示すように、制御部11は、排気弁30を、時刻T1(秒)に開状態から閉状態にする制御を行っている。供給弁20が開状態となることで、AC圧力値はP1(kPa)から目標AC圧まで高められる。AC圧力値はAC圧力センサ60で検出し、制御部11に入力される。次に、AC圧力センサ60で検出されたAC圧力値が目標AC圧まで達すると、制御部11は、空気供給タンク6から圧縮空気の送出を停止するために、供給弁20を開状態から閉状態にする制御を行う。
図4(b)では、時刻T2(秒)に供給弁20が開状態から閉状態となったことを示している。
図4(c)で示すように、排気弁30については、閉状態のままである。供給弁20が閉状態となることで、AC圧力値は目標AC圧より少し高い圧力であるP2(kPa)まで達し、その後、AC圧力値は安定の状態となる。
【0038】
図5は、ブレーキ制御装置10のAC圧力値、供給弁20の動作および排気弁30の動作の時間変化を示したグラフの別の一例である。
図4と同様に、
図5(a)はAC圧力値の時間変化を示し、縦軸はAC圧力値(kPa)、横軸は時刻(秒)を示している。
図5(b)は、供給弁20の開閉動作の時間変化を示し、縦軸は、供給弁20の開閉の状態、横軸は時刻(秒)を示している。
図5(c)は、排気弁30の開閉動作の時間変化を示し、縦軸は、排気弁30の開閉の状態、横軸は時刻(秒)を示している。
図5(a)から(c)の時刻はそれぞれ対応している(同じ時刻を示している)。
図5に示すグラフは、ブレーキ制御装置の正常動作を示すグラフである。
【0039】
図5において、制御部11は空気供給タンク6から圧縮空気をAC指令室に送出するために、供給弁20を閉状態から開状態にする制御を行う。
図5(b)に示すように、制御部11は、供給弁20を、時刻T1(秒)に閉状態から開状態にする制御を行っている。また、
図5(c)に示すように、制御部11は、排気弁30を、時刻T1(秒)に開状態から閉状態にする制御を行っている。供給弁20が開状態となることで、AC圧力値はP1(kPa)から目標AC圧まで高められる。AC圧力値はAC圧力センサ60で検出し、制御部11に入力される。
図5では、AC圧力センサ60で検出されたAC圧力値が目標AC圧を超え、さらに第1上限値より高くなっている(P3)。制御部11は、空気供給タンク6から圧縮空気の送出を停止するために、供給弁20を開状態から閉状態にする制御を行う。
図5(b)では、目標AC圧に達した時刻T2(秒)に供給弁20が開状態から閉状態となったことを示している。制御部11は、AC圧力値が第1上限値より高くなっているため、AC圧力値を目標AC圧まで下げる必要があると判断する。そのために、排気弁30を閉状態から開状態にする制御を行い、圧縮空気を大気へ排出する。
図5(c)で示すように、排気弁30は、時刻T3(秒)において、閉状態から開状態となっている。さらにAC圧力値が第1上限値を下回ると(P4)、排気弁30を開状態から閉状態に制御する。
図5(c)で示すように、排気弁30は、時刻T4(秒)において、開状態から閉状態となっている。AC圧力値はその後、安定の状態となる。
【0040】
図6は、
図4および
図5におけるブレーキ制御装置10の制御部11の制御フローを示した図である。
【0041】
制御部11は、ブレーキ指令を受けて、AC圧力値が目標AC圧となるよう圧力の調整を行う。AC圧力値を参照し(S11)、供給弁20を閉状態から開状態に制御する(S12)。AC圧力値を参照し(S13)、AC圧力値が目標AC圧に達したかを判断する(S14)。AC圧力値が目標AC圧に達していない場合(S14:N)、S13に戻り、再びAC圧力値を参照する。AC圧力値が目標AC圧に達した場合(S14:Y)、制御部11は、供給弁20を開状態から閉状態に制御する(S15)。AC圧力値を参照し(S16)、AC圧力値が第1上限値より高いかを判断する(S17)。第1上限値より高くない場合(S17:N)、制御を終了する。ここまでは、
図4の制御に対応した制御部11の制御である。
【0042】
S17において、第1上限値より高い場合(S17:Y)、制御部11は、排気弁30を閉状態から開状態に制御する(S18)。AC圧力値を参照し(S19)、AC圧力値が目標AC圧に達したかを判断する(S20)。AC圧力値が目標AC圧に達していない場合(S20:N)、S19に戻り、再びAC圧力値を参照する。AC圧力値が目標AC圧に達した場合(S20:Y)、制御部11は、排気弁30を開状態から閉状態に制御する(S21)。AC圧力値を参照し(S22)、処理を終了する。S17:Y以降は、
図5の制御に対応した制御部11の制御である。
【0043】
ここで、AC圧力値が目標AC圧に達したとは、AC圧力値が、第1下限値と第1上限値になったことを示している。さらに、AC圧力値が第2下限値から第2上限値の間にあれば、ブレーキ制御装置10は正常に動作することは可能である。
【0044】
上述したように、ブレーキ制御装置10の制御部11は、AC圧力値を参照しながら、AC圧力値を目標AC圧となるよう、供給弁20および排気弁30の制御を行う。
【0045】
図7は、
図4および
図5と同様に、AC圧力値を目標AC圧となるように制御される場合のAC圧力値、供給弁20の開閉動作および排気弁30の開閉動作の一例を示す図である。
【0046】
図7を説明する。制御部11は空気供給タンク6から圧縮空気をAC指令室に送出するために、供給弁20を閉状態から開状態にする制御を行う。
図7(b)に示すように、制御部11は、供給弁20を、時刻T1(秒)に閉状態から開状態にする制御を行っている。また、
図7(c)に示すように、制御部11は、排気弁30を、時刻T1(秒)に開状態から閉状態にする制御を行っている。供給弁20が開状態となることで、AC圧力値はP1(kPa)から目標AC圧まで高められる。AC圧力値はAC圧力センサ60で検出し、制御部11に入力される。
図7では、AC圧力センサ60で検出されたAC圧力値が目標AC圧を超え、さらに第1上限値より高くなっている(P3)。制御部11は、空気供給タンク6から圧縮空気の送出を停止するために、供給弁20を開状態から閉状態にする制御を行う。
図7(b)では、目標AC圧に達した時刻T2(秒)に供給弁20が開状態から閉状態となったことを示している。制御部11は、AC圧力値が第1上限値より高くなっているため、AC圧力値を目標AC圧まで下げる必要があると判断する。そのために、排気弁30を閉状態から開状態にする制御を行い、圧縮空気を大気へ排出する。
図7(c)で示すように、排気弁30は、時刻T3(秒)において、閉状態から開状態となっている。さらにAC圧力値が第1上限値を下回ると(P4)、排気弁30を開状態から閉状態に制御する。
図7(c)で示すように、排気弁30は、時刻T4(秒)において、開状態から閉状態となっている。ここまでは、
図5の制御と同様である。
【0047】
次に、AC圧力値は、第1上限値を下回ったが、目標AC圧まで下がらず、再度上昇し、第1上限値より高くなっている(P5)。制御部11は、AC圧力値が第1上限値より高くなっているため、AC圧力値を目標AC圧まで下げる必要があると判断する。そのために、排気弁30を閉状態から開状態にする制御を行い、圧縮空気を大気へ排出する。
図7(c)で示すように、排気弁30は、時刻T5(秒)において、閉状態から開状態となっている。さらにAC圧力値が第1上限値を下回ると(P6)、排気弁30を開状態から閉状態に制御する。
図7(c)で示すように、排気弁30は、時刻T6(秒)において、開状態から閉状態となっている。
【0048】
その後、AC圧力値は、第1上限値を下回ったが、目標AC圧まで下がらず、再度上昇し、第1上限値より高くなっている(P7)。制御部11は、AC圧力値が第1上限値より高くなっているため、AC圧力値を目標AC圧まで下げる必要があると判断する。そのために、排気弁30を閉状態から開状態にする制御を行い、圧縮空気を大気へ排出する。
図7(c)で示すように、排気弁30は、時刻T7(秒)において、閉状態から開状態となっている。さらにAC圧力値が第1上限値を下回ると(P8)、排気弁30を開状態から閉状態に制御する。
図7(c)で示すように、排気弁30は、時刻T8(秒)において、開状態から閉状態となっている。その後、制御部11は同様の制御を行う。
【0049】
上述したように、AC圧力値は安定せず、第1上限値を境に圧力値が上下している。このとき、供給弁20は、最初に目標AC圧に達した際に、制御部11により、開状態から閉状態に制御され、その後、閉状態を維持している。排気弁30は、第1上限値より高くなると閉状態から開状態に、第1上限値より低くなると、開状態から閉状態に、制御部11により制御される。
図7(c)で示したように、排気弁30は、開状態と閉状態を繰り返していることがわかる。つまり、排気弁30の動作回数が
図5の制御の場合と比べて多くなっている。
【0050】
AC圧力値は、安定していないが、第2下限値と第2上限値の間にあるため、ブレーキ制御装置10は正常に動作することは可能である。しかしながら、排気弁30の動作回数が多くなっているため、ブレーキ制御装置10に何らかの異常が発生していることが考えられる。特許文献1のように圧力値だけを監視していた場合、圧力値は正常範囲内であるため、
図7に示すブレーキ制御装置10の異常を特定することは困難である。
【0051】
図7で示す例の監視装置100の動作を説明する。取得部101において、ブレーキ指令、AC圧力値、供給弁動作、排気弁動作の情報を取得する。ブレーキ指令は、ブレーキ力を示す情報であり、圧力を設定する際に利用する情報である。次に、判断部103において、ブレーキ制御装置10の異常有無を判断する。
【0052】
取得したAC圧力値が第1上限値を上回る回数が閾値以下か否かを判断する。第1上限値を上回る回数が異常と判断する回数、つまり閾値は、予め設定されており、記憶部102に記憶されている。AC圧力値が第1上限値を上回る回数が閾値より多いと判断した場合、次に電磁弁動作が正常か否かを判断する。
【0053】
予め設定された期間Tにおける、供給弁動作の回数および排気弁動作の回数を算出する。予め設定された期間Tは、例えば、AC圧力値が目標AC圧に達してから数秒間という期間を設定することができる。
図7で示す例では、T2(秒)からT8(秒)までの期間を設定する。ここで、電磁弁動作の回数とは、閉状態から開状態に変化した回数と開状態から閉状態に変化した回数の合計である。期間Tにおいて、供給弁動作の回数は、
図7(b)で示したように1回である。期間Tにおいて、排気弁動作の回数は、
図7(c)で示したように6回である。
【0054】
供給弁動作の回数および排気弁動作の回数の異常と判断する回数、つまり閾値は、予め設定されており、記憶部102に記憶されている。
図7の制御の場合、具体的には、圧縮空気を送り、目標AC圧までAC圧力値を上げる場合において、供給弁動作の回数の閾値を3回、排気弁動作の回数の閾値を4回とした場合、それぞれの閾値が記憶部102に記憶されている。
【0055】
判断部103は、期間Tにおける供給弁動作の回数と記憶部102に記憶されている供給弁動作の回数の閾値とを比較する。
図7で示す例では、供給弁動作の回数は1回、記憶部102に記憶されている供給弁動作の回数の閾値は3回であり、供給弁動作は閾値以下の回数であるため、異常動作ではないと判断する。
【0056】
次に、判断部103は、期間Tにおける排気弁動作の回数と記憶部102に記憶されている排気弁動作の回数の閾値とを比較する。
図7で示す例では、排気弁動作の回数は6回、記憶部102に記憶されている排気弁動作の回数の閾値は4回であり、排気弁動作は閾値より多い回数であるため、異常動作であると判断する。
【0057】
判断部103は、期間Tにおける排気弁動作の回数が異常であると判断し、出力部14に判断結果を送る。出力部14は、判断部103から送られた異常の判断結果を、端末装置2または記録装置に出力する。
【0058】
図7で示した例では、AC圧力値、供給弁動作情報および排気弁動作情報に基づいて、電磁弁動作の異常を判断する。具体的には、AC圧力値の時間変化(期間T)におけるAC圧力値が第1上限値を上回る回数が閾値より多く、供給弁20の動作回数またはおよび排気弁30の動作回数が予め設定された閾値より多い場合に、供給弁20の動作または排気弁30の動作の異常と判断する。
図7で示した例では、AC圧力値が正常な範囲内において、ブレーキ制御装置10の異常を検出することができる。
【0059】
図8は、AC圧力値を目標AC圧となるように制御される場合のAC圧力値、供給弁20の開閉動作および排気弁30の開閉動作の別の一例を示す図である。
【0060】
図8を説明する。制御部11は空気供給タンク6から圧縮空気をAC指令室に送出するために、供給弁20を閉状態から開状態にする制御を行う。
図8(b)に示すように、制御部11は、供給弁20を、時刻T1(秒)に閉状態から開状態にする制御を行っている。また、
図8(c)に示すように、制御部11は、排気弁30を、時刻T1(秒)に開状態から閉状態にする制御を行っている。供給弁20が開状態となることで、AC圧力値はP1(kPa)から目標AC圧まで高められる。AC圧力値はAC圧力センサ60で検出し、制御部11に入力される。
図8では、AC圧力センサ60で検出されたAC圧力値が目標AC圧に達している(P2)。制御部11は、空気供給タンク6から圧縮空気の送出を停止するために、供給弁20を開状態から閉状態にする制御を行う。
図8(b)では、目標AC圧に達した時刻T2(秒)に供給弁20が開状態から閉状態となったことを示している。
【0061】
次に、AC圧力値は、目標AC圧の圧力値を下回り、さらに第1下限値を下回っている(P3)。AC圧力値が第1下限値を下回ったため、制御部11は、AC圧力値を目標AC圧にあげる必要があると判断する。そのために、空気供給タンク6から圧縮空気を送出するため、供給弁20を閉状態から開状態にする制御を行う。
図7(b)で示すように、供給弁20は、時刻T3(秒)において、閉状態から開状態となっている。その後、AC圧力値が目標AC圧の圧力値に達すると(P4)、制御部11は、空気供給タンク6から圧縮空気の送出を停止するために、供給弁20を開状態から閉状態にする制御を行う。
図8(b)では、目標AC圧に達した時刻T4(秒)に供給弁20が開状態から閉状態となったことを示している。
【0062】
その後、AC圧力値は、目標AC圧の圧力値を下回り、さらに第1下限値を下回っている(P5)。AC圧力値が第1下限値を下回ったため、制御部11は、AC圧力値を目標AC圧にあげる必要があると判断する。そのために、空気供給タンク6から圧縮空気を送出するため、供給弁20を閉状態から開状態にする制御を行う。
図7(b)で示すように、供給弁20は、時刻T5(秒)において、閉状態から開状態となっている。その後、AC圧力値が目標AC圧の圧力値に達すると(P6)、制御部11は、空気供給タンク6から圧縮空気の送出を停止するために、供給弁20を開状態から閉状態にする制御を行う。
図8(b)では、目標AC圧に達した時刻T6(秒)に供給弁20が開状態から閉状態となったことを示している。その後、制御部11は同様の制御を行う。
【0063】
上述したように、AC圧力値は安定せず、AC圧力値は、目標AC圧と第1下限値を上下している。このとき、排気弁30は制御が始まるT1(秒)に、制御部11により、開状態から閉状態に制御され、その後、閉状態を維持している。供給弁20は、目標AC圧の圧力値より高くなると開状態から閉状態に、第1下限値より低くなると、閉状態から開状態に、制御部11により制御される。
図7(b)で示したように、供給弁20は、開状態と閉状態を繰り返していることがわかる。つまり、供給弁20の動作回数が多くなっている。
【0064】
AC圧力値は、安定していないが、第2下限値と第2上限値の間にあるため、ブレーキ制御装置10は正常に動作することは可能である。しかしながら、供給弁20の動作回数が多くなっているため、ブレーキ制御装置10に何らかの異常が発生していることが考えられる。特許文献1のように圧力値だけを監視していた場合、圧力値は正常範囲内であるため、ブレーキ制御装置10の異常を特定することは困難である。
【0065】
図8で示す例における監視装置100の動作は、
図7で示す例と同様である。
図8で示す例では、AC圧力値、供給弁動作情報および排気弁動作情報に基づいて、電磁弁動作の異常を判断する。 具体的には、AC圧力値の時間変化(期間T)における供給弁20の動作回数および排気弁30の動作回数が予め設定された閾値より多い場合に、供給弁20の動作または排気弁30の動作の異常と判断する。
図8に示す例では、AC圧力値が正常な範囲内において、ブレーキ制御装置10の異常を検出することができる。ここで期間Tは、予め設定された期間で、例えば、AC圧力値が目標AC圧に達してから数秒間という期間を設定することができ、T2(秒)からT6(秒)までの期間を設定する。
【0066】
図9は、
図7で示す例および
図8で示す例における監視装置の動作を示す図である。まず、取得部101が、入力部12から予め定められた期間(期間T)のAC圧力値、供給弁20の動作情報および排気弁30の動作情報を取得する(S101)。次に、取得したAC圧力値が、第1下限値を下回る回数または第1上限値を上回る回数が閾値以下か否か判断する(S102)。AC圧力値が、第1下限値を下回る回数または第1上限値を上回る回数が閾値以下である場合(S102:Y)、「異常なし」と判断し(S107)、処理を終了する。AC圧力値が、第1下限値を下回る回数または第1上限値を上回る回数が閾値より多い場合(S102:N)、期間Tにおける供給弁20の動作回数および排気弁30の動作回数を算出する(S103)。次に、記憶部に記憶されている、供給弁動作回数、および排気弁動作回数の閾値を参照し(S104)、供給弁動作回数、および排気弁動作回数が閾値以下か否かを判断する(S105)。供給弁動作回数、および排気弁動作回数が閾値以下である場合(S105:Y)、「異常なし」と判断し(S107)、処理を終了する。供給弁動作回数、または排気弁動作回数が閾値より多い場合(S105:N)、「供給弁動作、または排気弁動作の異常」と判断し(S107)、処理を終了する。
【0067】
監視装置100の判断部103は、異常個所を絞り込む判断を行うことが可能である。
図7で説明したように、監視装置100の判断部103は、AC圧力値の時間変化(期間T)におけるAC圧力値が第1上限値を上回る回数が閾値より多く、排気弁30の動作回数が予め設定された閾値より多い場合において、供給弁20の動作は異常ではないと判断し、排気弁30の動作は異常であると判断する。さらに、この場合において、判断部103は、ブレーキ制御装置10の異常個所は、排気弁30ではないと判断する。
【0068】
「排気弁30の動作が異常である」というのは、制御部11が排気弁30を制御できていないということではない。言い換えると、排気弁30は制御部11の制御に従って開閉動作を行うことができている。つまり、排気弁30に異常があるということではない。
【0069】
排気弁30が動作するということは、AC指令室50の圧力が目標AC圧と比較して高くなっていることを示している。AC指令室50の圧力を高める要因があるため、AC指令室50の圧力が高くなっていると考えられる。この要因としては、例えば、供給弁20の異常が考えられる。供給弁20において、部品の劣化や接続に異常があった場合、供給弁20が完全に閉状態とならずに、空気供給タンク6から圧縮空気がAC指令室50に送出される可能性がある。この場合、供給弁20は制御としては閉状態となっているが、供給弁20の部品の劣化や接続に異常があった場合、空気供給タンク6から圧縮空気がAC指令室に送出され、AC指令室の圧力は高くなる。
【0070】
上述のように、判断部103は、排気弁30の動作を異常と判断した場合、異常個所を排気弁30ではないと判断する。換言すれば、排気弁30以外の部品や接続の異常と判断する。判断部103の判断により、異常個所を排気弁30以外の部品や接続に絞り込むことができる。
【0071】
同様に、
図8で説明したように、監視装置100の判断部103は、AC圧力値の時間変化(期間T)における供給弁20の動作回数が予め設定された閾値より多い場合において、排気弁30の動作は異常ではないと判断し、供給弁20の動作は異常であると判断する。さらに、この場合において、判断部103は、ブレーキ制御装置10の異常個所は、供給弁20ではないと判断する。
【0072】
「供給弁20の動作が異常である」というのは、制御部11が供給弁20を制御できていないということではない。言い換えると、供給弁20は制御部11の制御に従って開閉動作を行うことができている。つまり、供給弁20に異常があるということではない。
【0073】
供給弁20が動作するということは、AC指令室50の圧力が目標AC圧と比較して低くなっていることを示している。AC指令室50の圧力を下げる要因があるため、AC指令室50の圧力が低くなっている。この要因としては、例えば、排気弁30の異常が考えられる。例えば、排気弁30において、部品の劣化や接続に異常があった場合、排気弁30が完全に閉状態とならずに、AC指令室50の圧縮空気が大気に放出される可能性がある。この場合、排気弁30は制御としては閉状態となっているが、排気弁30の部品の劣化や接続に異常があった場合、AC指令室50の圧縮空気が大気に放出され、AC指令室の圧力は低くなる。
【0074】
上述のように、判断部103は、供給弁20の動作を異常と判断した場合、異常個所を供給弁20ではないと判断する。換言すれば、供給弁20以外の部品や接続の異常と判断する。判断部103の判断により、異常個所を供給弁20以外の部品や接続に絞り込むことができる。従って、判断部103は、動作の異常があると判断した電磁弁自体は異常個所ではないと判断する。判断部103の判断により、動作の異常があると判断した電磁弁以外を異常個所として絞りこむことができるため、点検にかかる時間を減らすことが可能となる。
【0075】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、車両の制動を制御するブレーキ制御装置に設けられるAC指令室の圧力を検知するAC圧力センサの情報と、車両に設けられる空気供給タンクとAC指令室との間に設けられ空気供給タンクの圧縮空気のAC指令室への供給および停止するための供給弁の動作を検知する供給弁動作検知センサの情報と、AC指令室と外気とを繋ぐ流路上に設けられAC指令室の圧縮空気の外気への開放および停止するための排気弁の動作を検知する排気弁動作検知センサの情報を取得する取得部と、AC圧力センサの情報と、供給弁動作検知センサの情報と、排気弁動作検知センサの情報とに基づいて、ブレーキ制御装置の異常を判断する判断部とを備えることにより、ブレーキ制御装置から取得した圧力値が正常の範囲内にあるときにブレーキ制御装置の異常の有無を検出することができる。
【0076】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、供給弁動作検知センサの情報は供給弁の開閉動作を示す情報であり、排気弁動作検知センサの情報は排気弁の開閉動作を示す情報であることにより、ブレーキ制御装置から取得した圧力値が正常の範囲内にあるときにブレーキ制御装置の異常の有無を検出することができる。
【0077】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、判断部は、AC圧力センサの値が、目標圧力値より高く設定される第1の圧力値を上回る回数が予め設定される回数より多く、かつ、排気弁動作検知センサの開閉動作の回数が予め設定される回数より多いときに、ブレーキ制御装置の異常と判断することにより、ブレーキ制御装置から取得した圧力値が正常の範囲内にあるときにブレーキ制御装置の異常の有無を検出することができる。
【0078】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、判断部は、排気弁の動作を異常と判断した場合に、ブレーキ制御装置の異常個所を、排気弁ではない、と判断することにより、動作の異常があると判断した電磁弁以外を異常個所として絞りこむことができるため、点検にかかる時間を減らすことが可能となる。
【0079】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、判断部は、AC圧力センサの値が、目標圧力値より低く設定される第2の圧力値を下回る回数が予め設定される回数より多く、かつ、供給弁動作検知センサの開閉動作の回数が予め設定される回数より多いときに、ブレーキ制御装置の異常と判断することにより、ブレーキ制御装置から取得した圧力値が正常の範囲内にあるときにブレーキ制御装置の異常の有無を検出することができる。
【0080】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、判断部は、供給弁の動作を異常と判断した場合に、ブレーキ制御装置の異常個所を、供給弁ではない、と判断することにより、動作の異常があると判断した電磁弁以外を異常個所として絞りこむことができるため、点検にかかる時間を減らすことが可能となる。
【0081】
実施の形態2
実施の形態1では、ブレーキ制御装置10の監視装置100は、ブレーキ制御装置10に備えられていた。実施の形態2では、ブレーキ制御装置10の監視装置100は、地上装置250に備えられていることを特徴とする。
【0082】
図10は、本実施の形態2に係るブレーキ制御装置の監視装置100の構成の一例を示す図である。
図10は、端末装置2、ブレーキ制御装置210、中央装置220、車上無線装置230および車上アンテナ240を有する列車1と、監視装置100を有する地上装置250と、ネットワーク260を備えている。
【0083】
ブレーキ制御装置210は、実施の形態1におけるブレーキ制御装置10から監視装置100を省いたものである。
【0084】
中央装置220は、端末装置2および車上無線装置230と接続される。車両1に搭載される複数の機器の状態を示す状態情報を収集する端末装置2から出力される複数の機器の状態情報を取得する。複数の機器の一つにブレーキ制御装置210が含まれる。
【0085】
車上無線装置230は、中央装置220と車上アンテナ240と接続される。車上無線装置230は、ネットワーク260を介して地上装置250と通信を行うための無線装置である。
【0086】
地上装置250は監視装置100を備えている。また、ネットワーク260を介して車上無線装置と通信することが可能である。地上装置250は記録装置(図示しない)を備えており、中央装置220から伝送された情報を蓄積することが可能である。
【0087】
中央装置220から、ブレーキ制御装置210の機器の状態を示す情報が、車上無線装置230、ネットワーク260を介して地上装置250に伝送される。その際、ブレーキ制御装置210を特定する装置ID、時間情報、キロ程情報、速度情報、気象情報などを付加して伝送してもよい。ブレーキ制御装置210の機器の状態を示す情報には、端末装置2から受け取るブレーキ指令と複数のセンサの検出値が含まれる。複数のセンサの検出値は、例えば、AC圧力センサ60、BC圧力センサ70、供給弁動作検知センサ21、排気弁動作検知センサ31、SR圧力センサ80およびAS圧力センサ90で検出された検出値である。
【0088】
本実施の形態2に係るブレーキ制御装置の監視装置100は、車上から伝送されたブレーキ制御装置210の機器の状態を示す情報を取得部101で取得する。判断部103の動作は、実施の形態1と同様である。判断部103が判断した結果は、地上装置250の記録装置に記録される。
【0089】
本実施の形態2に係るブレーキ制御装置の監視装置100は、地上装置250に備えられているため、地上で異常有無の判断を行うことが可能である。つまり、車両で処理する場合と比較して、車両の負荷を軽減できる。また、地上装置250に記録される他のブレーキ制御装置などの機器の情報を利用することも可能である。
【0090】
実施の形態3
ブレーキ制御装置に備えられている複数のセンサの検出値は、様々な条件により、値がばらつくことがある。例えば、乗客の数が変動すれば、空気ばね7の圧力を示すAS圧力センサの検出値(AS圧力値)は変動する。AS圧力値が変動すれば、AS圧から応荷重演算した指令圧であるAC圧力値も変動する。つまり、AS圧力値の変動が大きいと、AC圧力値の変動も大きくなり、ブレーキ制御装置の異常の判断も難しくなる。そこで、実施の形態3では、AS圧力値の変動が少ないときに、ブレーキ制御装置の異常の判断を行うことを特徴とする。
【0091】
AS圧力値の変動が少ない場合として、乗客の乗降が行われない場合が考えられる。例えば、駅停車時において、車両1のドアが完全に閉まった後であれば、乗客の乗降は行われないため、AS圧力値の変動は少なく、安定した圧力値となっている。
【0092】
監視装置100の判断部103が異常の判断を行う場合の情報として、AS圧力値の変動が少ないときのブレーキ指令、各センサの圧力値であることが好ましい。そこで、実施の形態3では、監視装置100の取得部101において、AS圧力値の情報を取得する。判断部103は、取得したAS圧力値が安定しているか否か、つまりAS圧力値の変動が少ないか否かを判断し、AS圧力値が安定している状態と判断した場合に、異常の判断を行う。ここで、AS圧力値の変動が少ないとは、AS圧力値の変動がない、またはAS圧力値の変動が予め定められた変動幅の範囲内に納まっている状態をいう。AS圧力値の変動が少ないときの情報を利用することで、各センサの圧力値は安定した値となるため、ブレーキ制御装置の異常の判断を精度よく行うことが可能となる。
【0093】
本開示に係るブレーキ制御装置の監視装置は、取得部は、ブレーキ制御装置の空気ばねの圧力を検知するAS圧力センサの圧力値をさらに取得し、判断部は、AS圧力センサの圧力値が安定している状態か否かを判断し、AS圧力センサの圧力値が安定している状態であると判断したときに、ブレーキ制御装置の異常を判断することにより、ブレーキ制御装置の異常の判断を精度よく行うことが可能となる。
【0094】
図11は、監視装置100が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がプロセッサ1000およびメモリ1001で構成される場合、監視装置100の処理回路の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ1001に格納される。処理回路では、メモリ1001に記憶されたプログラムをプロセッサ1000が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路は、監視装置100の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1001を備える。また、これらのプログラムは、監視装置100の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0095】
なお、本開示は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、実施の形態を適宜、変形、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 列車
2 端末装置
3 車輪
4 ブレーキシリンダ
5 機械ブレーキ装置
6 空気供給タンク
7 空気ばね
10,210 ブレーキ制御装置
11 制御部
12 入力部
13 電磁弁制御部
14 出力部
20 供給弁
21 供給弁動作検知センサ
30 排気弁
31 排気弁動作検知センサ
40 中継弁
50 AC指令室
80 SR圧力センサ
60 AC圧力センサ
70 BC圧力センサ
90 AS圧力センサ
100 監視装置
101 取得部
102 記憶部
103 判断部
220 中央装置
230 車上無線装置
240 車上アンテナ
250 地上装置
260 ネットワーク