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特許7275397バスバーモジュール及び電力変換システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】バスバーモジュール及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230510BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022540831
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2021028019
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】相川 恭汰
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-204464(JP,A)
【文献】特開平8-69872(JP,A)
【文献】特開2020-22263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の筐体に亘って配置され、平滑コンデンサと電力変換ユニットとに直流電力を配分するためのバスバーモジュールであって、
直流の第1極と第2極の何れかの極に適用される第1導体と、
前記第1導体に並列に接続される第2導体と
を備え、
前記第1導体は、延伸方向と垂直な断面において第1厚さで形成された第1平板部を含み、
前記第2導体は、前記延伸方向と垂直な断面において所定の角度を成して屈曲した断面を有し、前記第1厚さよりも薄い第2厚さで形成された第2平板部を含む、
バスバーモジュール。
【請求項2】
前記第2平板部の断面は、L字状に屈曲している、
請求項1に記載のバスバーモジュール。
【請求項3】
前記第2導体の厚さが、前記電力変換ユニットのPWM制御のキャリア周波数よりも周波数が高い基準周波数の表皮深さの2倍以上である、
請求項1に記載のバスバーモジュール。
【請求項4】
前記第2導体の厚さが、前記電力変換ユニットが生成する交流の基本周波数の表皮深さよりも薄い、
請求項3に記載のバスバーモジュール。
【請求項5】
前記基準周波数は、前記キャリア周波数により生成される周波数成分に対応付けられている、
請求項3に記載のバスバーモジュール。
【請求項6】
前記屈曲してフランジを成す前記第2平板部の第1端部側が、前記第1導体の面に接していて、
前記第1端部から繋がっている前記第2平板部の第2端部が、前記第1導体から離れる方向に延伸している、
請求項2に記載のバスバーモジュール。
【請求項7】
前記平滑コンデンサが、前記第2導体を介して前記第1導体に接続されている、
請求項1に記載のバスバーモジュール。
【請求項8】
前記第1導体に並列に接続される第3導体
をさらに備え、
前記第3導体は、前記延伸方向と垂直な断面において所定の角度で屈曲した断面を有し、前記第1厚さよりも薄い第3厚さで形成された第3平板部を含む、
請求項1に記載のバスバーモジュール。
【請求項9】
前記第3平板部の断面は、L字状に屈曲していて、
前記第2平板部と前記第3平板部は、前記第1導体から離れる方向に延伸している、
請求項8に記載のバスバーモジュール。
【請求項10】
直流成分の大きさと交流成分の大きさとに基づいて、前記第1導体の断面の形状と面積と、前記第2導体の断面の形状と面積とが決定されている
請求項8に記載のバスバーモジュール。
【請求項11】
前記第2平板部には、通風可能な貫通穴が設けられている、
請求項1に記載のバスバーモジュール。
【請求項12】
前記第2平板部の第1端部側にフランジが形成され、
前記フランジの前記延伸方向の長さは、前記第2導体の延伸方向の長さの一部又は全部になっている、
請求項1に記載のバスバーモジュール。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れか1項に記載のバスバーモジュール
を備え、
前記複数の筐体のうちの第1筐体に平滑コンデンサが配置され、
前記複数の筐体のうちの第2筐体に電力変換装置が配置される、
電力変換システム。
【請求項14】
前記第1筐体に配置された第1平滑コンデンサと第1電力変換ユニットと、
前記第2筐体に配置された第2平滑コンデンサと第2電力変換ユニットと、
を含む請求項13に記載の電力変換システム。
【請求項15】
前記平滑コンデンサと前記電力変換装置に直流電力を供給する順変換装置
を備える請求項13に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーモジュール及び電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電力変換ユニットを複数の筐体に分けて配置して、これらを共通の直流母線で接続した電力変換システムが知られている。直流母線の断面積Sは、電力変換システムの出力容量などにより下限値が決定される。直流母線の断面積Sを減らしたり、亘長を長くしたりすると配線インダクタンスLが増加して、回路に共振が発生することがあった。そのため直流母線の導体総量を減らすことが容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特表平10-506780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、直流母線の導体総量を減らすことができるバスバーモジュール及び電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の一態様のバスバーモジュールは、複数の筐体に亘って配置され、平滑コンデンサと電力変換ユニットとに直流電力を配分する。前記バスバーモジュールは、第1導体と、第2導体とを備える。前記第1導体は、直流の第1極と第2極の何れかの極に適用される。前記第2導体は、前記第1導体に並列に接続される。前記第1導体は、延伸方向と垂直な断面において第1厚さで形成された第1平板部を含む。前記第2導体は、前記延伸方向と垂直な断面において所定の角度を成して屈曲した断面を有し、前記第1厚さよりも薄い第2厚さで形成された第2平板部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の電力変換システムの概略構成図。
図2】第1の実施形態の電力変換システムの構成図。
図3】比較例の電力変換システムの動作を不安定にする要因を説明するための図。
図4A】第1の実施形態の直流母線について説明するための図。
図4B】第1の実施形態の直流母線について説明するための図。
図5】第1の実施形態の直流母線の配置図。
図6A】第1の実施形態の直流母線部分の俯瞰図。
図6B】第1の実施形態の直流母線部分の俯瞰図。
図7】第1の実施形態の直流母線の断面図。
図8】第1の実施形態の直流母線に流れる電流の分布と生成される磁束φを説明するための図。
図9A】比較例の直流母線について説明するための図。
図9B】比較例の直流母線について説明するための図。
図9C】実施形態の直流母線について説明するための図。
図9D】実施形態の直流母線について説明するための図。
図10】第1の実施形態の変形例の直流母線について説明するための図。
図11】第1の実施形態の変形例の直流母線部分の俯瞰図。
図12】第2の実施形態の直流母線からキャパシタへの分岐回路を示す図。
図13】第2の実施形態の直流母線部分の俯瞰図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のバスバーモジュール及び電力変換システムについて、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的又は概念的なものであり、各部の機能の配分などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。
【0008】
なお、本願明細書と各図において、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
実施形態において「接続されている」とは、電気的に接続されていることを含む。「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。「XX又はYY」とは、XXとYYのうち何れか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。「XX」及び「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0009】
また先に、+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向、+Z方向、及び-Z方向について定義する。+X方向、-X方向、+Y方向、及び-Y方向は、電力変換システムが配置される床面に沿う方向である。+X方向は、例えば、電力変換システムに係る各装置が配列される方向に沿った方向である。-X方向は、+X方向とは反対方向である。+X方向と-X方向とを区別しない場合は、単に「X方向」と称する。+Y方向及び-Y方向は、X方向とは交差する(例えば略直交する)方向であり、電力変換システムに係る各装置の奥行方向と称されることがある。+Y方向と-Y方向は互いに反対方向である。+Y方向と-Y方向とを区別しない場合は、単に「Y方向」と称する。電力変換システムに係る各装置を+Y方向に見込むとき、これを正面と呼び、-Y方向に見込むとき、これを背面と呼ぶ。+Z方向及び-Z方向は、X方向及びY方向とは交差する(例えば略直交する)方向であり、例えば鉛直方向である。+Z方向は、上方に進む方向である。-Z方向は、+Z方向とは反対方向である。+Z方向と-Z方向とを区別しない場合は、単に「Z方向」と称する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電力変換システム1の概略構成図である。
電力変換システム1は、例えば、変圧器群2(図2)、順変換装置群3、逆変換装置群5、制御装置40とを備える。電力変換システム1は、交流電源PS(図2)から供給される三相交流電力を降圧し、降圧した交流電力を順変換して直流電力を作り、直流電力を逆変換して三相交流電力を作り、三相交流電力を電動機8(図2)に供給する。
【0011】
電力変換システム1は、電動機8に供給するU相、V相、W相の交流電力をそれぞれ別の、変圧器群2の変圧器と、順変換装置群3の順変換装置と、逆変換装置群5の逆変換装置とを用いて生成する。
【0012】
例えば、順変換装置群3は、順変換装置3U、3V、3Wを備える。
逆変換装置群5は、逆変換装置5Uと5Xの組と、逆変換装置5Vと5Yの組と、逆変換装置5Wと5Zの組とを備える。
【0013】
電力変換システム1は、電動機8に供給するU相の交流電力を、変圧器群2の変圧器20Uと、順変換装置3Uと、逆変換装置5Uと5Xの組とを用いて生成する。同様に、電力変換システム1は、電動機8に供給するV相の交流電力を、変圧器群2の変圧器20Vと、順変換装置3Vと、逆変換装置5Vと5Yの組とを用いて生成する。電力変換システム1は、電動機8に供給するW相の交流電力を、変圧器群2の変圧器20Wと、順変換装置3Wと、逆変換装置5Wと5Zの組とを用いて生成する。
【0014】
図1に示す交流入力盤3UI、3VI、3WIに、変圧器20U、20V、20Wが夫々配置されていてよい。
【0015】
例えば、交流入力盤3UIと、順変換装置3Uと、逆変換装置5Xと、逆変換装置5Uとが、記載の順に連ねて、+X方向に沿って配列されている。交流入力盤3VIと、順変換装置3Vと、逆変換装置5Yと、逆変換装置5Vとが、記載の順に連ねて、+X方向に沿って配列されている。交流入力盤3WIと、順変換装置3Wと、逆変換装置5Zと、逆変換装置5Wとが、記載の順に連ねて、+X方向に沿って配列されている。交流入力盤3UIよりも-X方向に制御装置40が配置され、逆変換装置5Wよりも+X方向に出力盤5OUTが配置されている。出力盤5OUTには、負荷電力線58U、58V、58W(図2)が接続されていて、負荷電力線58U、58V、58W(図2)を介して電動機8が接続されている。
【0016】
交流入力盤3UIから逆変換装置5Uまでの間、交流入力盤3VIから逆変換装置5Vまでの間、交流入力盤3WIから逆変換装置5Wまでの間に、直流母線が夫々設けられている。後述する中性線65U、65V、65Wは、直流母線の一例である。不図示の正極母線60U、60V、60Wと、負極母線70U、70V、70Wも、直流母線の一例である。なお、以下の説明において、中性線65Uと、正極母線60Uと負極母線70Uとを纏めて直流母線と呼ぶことがある。
【0017】
図2は、第1の実施形態の電力変換システム1の構成図である。
図2には、電力変換システム1の他に交流電源PSと、電動機8とが示される。
例えば、交流電源PSは、商用電源の電力網や発電機などであり、三相交流電力を電力変換システム1に供給する。電動機8は、例えば、誘導電動機などの交流可変速電動機である。電動機8は、電力変換システム1から供給された交流電力によって駆動し、回転駆動力を図示しない出力軸に出力する。
【0018】
次に、電力変換システム1の各部について順に説明する。
変圧器群2は、例えば、変圧器20U、20V、20Wと備える。変圧器20U、20V、20Wのそれぞれは、2次側の結線方式の異なった三巻線トランスである。変圧器20U、20V、20Wのそれぞれは、同様の構成を有するため、以下では代表として変圧器20Uについて説明する。
【0019】
変圧器20Uは、例えば、一次巻線22Uと、二次巻線24UPと、三次巻線24UNとを備える。変圧器20Uは、交流電源PSからの三相交流電力の供給を一次巻線22Uで受け、受けた三相交流電力を変圧し、二次巻線24UP、三次巻線24UNから変圧した三相交流電力を出力する。二次巻線24UP、三次巻線24UNから出力される三相交流電力は、変圧器出力線25UPRST、25UNRSTを介して順変換装置3Uに供給される。変圧器出力線25UPRST、25UNRSTを単線結線図で示す。変圧器出力線25UPRSTには、それぞれR相、S相、T相の相電流が線電流として流れる。変圧器20V、変圧器20Wも、変圧器20Uと同様に構成される。変圧器20V、変圧器20Wについては、変圧器20Uについての説明における構成要素の参照符号におけるUを、それぞれ、V、Wと読み替えることにより、その説明をここに援用する。
【0020】
順変換装置群3の順変換装置3U、3V、及び3Wとのそれぞれは、同様の構成を有するため、以下では代表として順変換装置3Uについて説明する。
【0021】
順変換装置3Uは、例えば、整流器32UPと、整流器32UNとを備える。
整流器32UP、32UNのそれぞれは、三相フルブリッジ型のダイオード整流回路を含む。整流器32UPの交流側は、変圧器出力線25UPRSTを介して二次巻線24UPに接続されている。整流器32UNの交流側は、変圧器出力線25UNRSTを介して三次巻線24UNに接続されている。整流器32UP、32UNの負荷側は互いに直列に接続される。互いに直列に接続された整流器32UP、32UNによって整流された直流電力は、整流器正極端子33UPと整流器負極端子33UNとから出力される。
【0022】
整流器正極端子33UPには、正極母線60Uの一端が接続される。正極母線60Uの延伸先には、逆変換装置5Uの正極入力端子52Uと、逆変換装置5Xの正極入力端子52Xとが接続される。正極母線60Uの一端とは、必ずしも正極母線60Uの構造的な端部でなくてもよい。
【0023】
整流器負極端子33UNには、負極母線70Uの一端が接続される。負極母線70Uの延伸先には、逆変換装置5Uの負極入力端子54Uと、逆変換装置5Xの負極入力端子54Xとが接続される。負極母線70Uの一端とは、必ずしも負極母線70Uの構造的な端部でなくてもよい。
【0024】
整流器32UP、32UNのそれぞれは、変圧器20Uの二次巻線24UP、三次巻線24UNから電位の異なる交流電力の供給を受けているため、整流器32UP、32UNのそれぞれの出力を直列接続することにより、整流器32UPの出力電圧と整流器32UNの出力電圧との合計値(合計電圧という。)を、整流器正極端子33UPと整流器負極端子33UNとから出力する。その合計電圧は、後段に設けられているキャパシタによって平滑化される。
【0025】
これにより、順変換装置3Uは、後段に設けられているキャパシタと逆変換装置(電力変換装置)に直流電力を供給する。
【0026】
逆変換装置群5の逆変換装置5U、5V、及び5Wと、逆変換装置5X、5Y、及び5Zとのそれぞれは、同様の構成を有するため、以下では代表として逆変換装置5Uと5Xとの組について説明する。
【0027】
逆変換装置5Uと5Xの組は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)、GCT(Gate Commutated Turn-off thyristor)などの電力用のスイッチング素子を含むレグの組み合わせにより、フルブリッジNPC型5レベルインバータ(Neutral-Point-Clamped Five-Level Inverter)として動作可能に形成されている。
【0028】
例えば、逆変換装置5Uは、レグ50Uと、キャパシタ55UPと、キャパシタ55UNを備える。逆変換装置5Xは、レグ50Xと、キャパシタ55XPと、キャパシタ55XNを備える。
【0029】
レグ50Uとレグ50Xは、同じ構成を有している。レグ50Uとレグ50Xは、夫々PWM(Pulse Width Modulation)制御されることにより、順変換装置3Uから正極母線60Uと負極母線70Uを介して供給される直流電力を、可変周波数及び可変電圧の三相交流電力に変換する。
【0030】
キャパシタ55UPとキャパシタ55UNは、互いに直列に接続され、正極母線60Uと負極母線70Uとに夫々接続されている。キャパシタ55UPとキャパシタ55UNは、正極母線60Uと負極母線70Uとの間に接続されることにより、順変換装置3Uが出力する直流電力を平滑化する。
【0031】
キャパシタ55UPとキャパシタ55UNとの接続点65UAは、中性線65Uに接続される。接続点65UAの電位が正極母線60Uと負極母線70Uとの中間の電位となるように、キャパシタ55UPとキャパシタ55UNとは、略同一のキャパシタンスを持つ。
【0032】
キャパシタ55XPとキャパシタ55XNは、互いに直列に接続され、正極母線60Uと負極母線70Uとに夫々接続されている。キャパシタ55XPとキャパシタ55XNとは、正極母線60Uと負極母線70Uとの間に接続されることにより、順変換装置3Uが出力する直流電力を平滑化する。
【0033】
キャパシタ55XPとキャパシタ55XNとの接続点65XAは、中性線65Uに接続される。接続点65XAの電位が正極母線60Uと負極母線70Uとの中間の電位となるように、キャパシタ55XPとキャパシタ55XNとは、略同一のキャパシタンスを持つ。
【0034】
上記の通り、キャパシタ55UPと55UNの組と、キャパシタ55XPと55XNの組は、順変換装置3Uの整流器32UP、32UNから出力された脈流を平滑化する。平滑化された直流電力が逆変換装置5U、5Xに供給される。
【0035】
逆変換装置5Uは、レグ50Uによって変換されたU相の交流電力を、負荷電力線58Uを介して電動機8に供給する。逆変換装置5Xの出力は、交流側の中性点Nに接続されている。逆変換装置5Xは、レグ50Xによって変換されたX相の交流電力を用いて、U相に係る直流レベルを中性点Nの電位を基準にシフトさせる。
【0036】
順変換装置3V、3Wも、順変換装置3Uと同様に構成される。順変換装置3V、3Wについては、順変換装置3Uについての説明における構成要素の参照符号におけるUを、それぞれ、V、Wと読み替えることによりその説明をここに援用する。
【0037】
逆変換装置5Vと5Yの組と、逆変換装置5Wと5Zの組も、逆変換装置5Uと5Xの組と同様に構成される。逆変換装置5Vと5Yの組と、逆変換装置5Wと5Zの組については、逆変換装置5Uと5Xの組についての説明における構成要素の参照符号におけるUとXを、それぞれ、VとY、WとZに読み替えることによりその説明をここに援用する。
【0038】
また、以下の説明において、キャパシタ55UP、55UN、55VP、55VN、55WP、55WNのそれぞれを特に区別しない場合は、キャパシタ55と呼ぶ。以下の説明において、レグ50U、50V、50W、50X、50Y、50Zのそれぞれを特に区別しない場合は、レグ50と呼ぶ。レグ50は、電力変換ユニットの一例である。
【0039】
制御装置40は、負荷電力線58U、58V、58Wのうちの2つ以上の負荷電力線に流れる負荷電流を検出する図示しない電流検出器の検出値などに基づいたフィードバック制御によって、レグ50のスイッチング素子にゲートパルス信号を出力することにより、スイッチング素子をPWM制御する。
【0040】
上記のように電力変換システム1は、レグ50のスイッチングによる直流電圧の変動を抑制するようにキャパシタ55を設けている。ただし、電動機8に流れる電流の大きさ、バランスによって、逆変換装置群5内の直流電圧が変動することがある。
【0041】
例えば、逆変換装置5Uが、5レベルの最高位の電圧を出力する場合には、順変換装置3Uから逆変換装置5Uに向かう方向に、正極母線60Uに電流が流れる。このとき、逆変換装置5Xの正極入力端子52Xの電位も高い電位になる。
また、別のタイミングに、逆変換装置5Uが、5レベルの最低位の電圧を出力する場合には、逆変換装置5Uから順変換装置3Uに向かう方向に、負極母線70Uに電流が流れる。このときに逆変換装置5Xの正極入力端子52Xの電位は、中性点Nの電位に近い電位になる。
【0042】
このように、電力変換システム1が作動しているときには、正極母線60Uと、負極母線70Uと、中性線65Uの夫々の電位が中性点Nの電位に対して変動する。
【0043】
ところで、電力変換システムの容量(規模)が大きくなると、このことが直流母線の許容範囲を超える電位の変動を招き、電力変換システムの動作を不安定にする要因になることがある。図3は、比較例の電力変換システムの動作を不安定にする要因を説明するための図である。
【0044】
順変換装置群3と逆変換装置群5との間を、比較例の直流母線でつなぎ、ここに平滑コンデンサを設けた構成をモデル化して示す。
【0045】
例えば、電力変換システムのサイズを大きくしたことに伴って、直流母線の断面積を変更することなく延伸方向に単に延長すると、それぞれを延長した分の配線インダクタンスLが増加する。さらに、平滑コンデンサCの静電容量は、電力変換システム1の出力容量(逆変換装置群5の容量)見合いで増加させる必要がある。図3に示すように配線インダクタンスLと平滑コンデンサCとを含む閉回路が形成される。電力変換システムの大容量化に伴って、この閉回路の共振周波数が低下することがある。
このような比較例の場合、電力変換システムを作動させたときのスイッチングノイズによって、この閉回路が加振されて共振すると、定格電流よりも大きな電流が直流母線に生じることがあった。
【0046】
また、別の比較例として、このような共振の発生を抑制するために、閉回路内に集中定数型の回路要素であるリアクトルを設けて閉回路のインダクタンスを調整して、閉回路の共振周波数を移動させることで共振を抑制させることがある。ただし、比較的大きな電流を流すことができるリアクトルは、そのサイズが大きくなるため、実装が困難な場合があった。これに対して、リアクトルのような集中定数型の回路要素を利用しない対処方法が必要とされることがあった。
【0047】
図4A図4Bは、第1の実施形態の直流母線について説明するための図である。図5は、第1の実施形態の直流母線の配置図である。図6A図6Bは、第1の実施形態の直流母線部分の俯瞰図である。図7は、第1の実施形態の直流母線の断面図である。
なお、図4Aから図7に示す直流母線の説明は、正極母線60Uと負極母線70Uと中性線65Uに適用できる。以下、直流母線の一例として中性線65Uを挙げて説明する。
【0048】
中性線65Uは、第1導体65UBと、第2導体65UUと、第3導体65UDとを備える。
【0049】
図4Aに中性線65Uの第1導体65UBの一例を示す。
図4A中の(a)に第1導体65UBの正面図を示し、図4A中の(b)に第1導体65UBの上面図を示し、図4A中の(c)に第1導体65UBの側面図を示す。
【0050】
第1導体65UBは、例えば、長さx、幅a、厚さbの板状の金属で形成されている。第1導体65UBは、X方向に延伸して、Y方向に面の法線が向くように配置されている。その面の幅方向が、Z方向になる。第1導体65UBは、所定の位置に配置される複数の碍子(図6B)によって筐体のフレーム(不図示)に支持されていて、各碍子によって筐体のフレームから絶縁された状態で固定されている。第1導体65UBの長さxは、電力変換システムに係る各装置の筐体の幅よりも長い。例えば、幅aは、厚さbに対して十分に長い。
【0051】
例えば、第1導体65UBのY方向に法線が向く面には、延伸方向(X方向)に沿った所定の位置に複数の貫通穴(不図示)が設けられている。例えば、各貫通穴には所定のネジ径のナット(図6B)が圧入されていてもよい。この複数の貫通穴は、第2導体65UUと、第3導体65UDとを各々固定することに利用される。
【0052】
図4Bに中性線65Uの第2導体65UUの一例を示す。
第2導体65UUは、板状に成形されていて、X方向に延伸して、Z方向に面の法線が向くように配置されている。面の幅方向が、Y方向になっている。第2導体65UUの+Y方向の端部には、第1導体65UBに固定するためのフランジが設けられている。このフランジは、第2導体65UUの延伸方向の全長に亘って設けられていてもよく、延伸方向の全長よりも短い所定の長さ(曲げ幅)で形成されて延伸方向の全長のなかで複数個所に配置されていてもよい。図4Bに示すフランジは、後者の一例である。フランジには、延伸方向に沿って所定の間隔で複数の貫通穴FHが設けられている。この複数の貫通穴FHは、第2導体65UUを第1導体65UBに固定することに利用されている。第2導体65UUの面に、通風可能にするための複数の貫通穴WCが設けられていてもよい。
【0053】
第3導体65UDは、第2導体65UUと同様の形状に形成されていてよい。
【0054】
図5の配置図は、電力変換システム1の各筐体内における直流母線の概略位置を示す平面図である。図5中の複数の長方形の枠は、順変換装置3U、逆変換装置5X、逆変換装置5Uの各装置の筐体を示す。図5の配置図に示すように、中性線65Uは、順変換装置3U、逆変換装置5X、逆変換装置5Uの各筐体を跨って配置されている。
【0055】
図6Aの俯瞰図は、逆変換装置5Uの筐体内を正面寄りの位置から見たものである。図6Bの俯瞰図は、逆変換装置5Uの筐体内を背面寄りの位置から見たものである。図6Aに示すように中性線65Uは、キャパシタ55UPよりも低い位置に配置されている。中性線65Uは、第1導体65UBの幅よりも大きくはみ出すことなく、高さ方向に制限された範囲内に実装されている。図6A図6Bに示すように中性線65Uの取り付けは、逆変換装置5Uの筐体の正面側から行うことができる。例えば、第1導体65UBは、正面側からのボルトによって、図示されないフレームのナットに締結されている。第2導体65UUと第3導体65UDは、正面側からのボルトによって第1導体65UBのナットに締結されている。
【0056】
図7の断面図に、中性線65Uの第1導体65UBと、第2導体65UUと、第3導体65UDとを組み合わせた場合の互いの位置関係を示す。なお、直流の正極と負極と中性点の極の何れかの極に適用する場合も同様でよい。直流の正極と負極と中性点の極のうちの任意の2極は、直流の第1極と第2極の一例である。
【0057】
第1導体65UBは、U相の直流の基準電位(直流の中点電位)になる極の母線に適用されている。
第1導体65UBは、X方向(延伸方向)と垂直な断面において、幅a、厚さb(第1厚さ)で形成された第1平板部を含む。
【0058】
第2導体65UUと、第3導体65UDは、第1導体65UBと電気的に等電位になるように、第1導体65UBに夫々並列に接続されている。第2導体65UUと第3導体65UDの断面は、L字状に屈曲している。第2導体65UUと第3導体65UDは、第1導体65UBから離れる方向(例えば-y方向)に延伸している。なお、第2導体65UUと第3導体65UDの延伸方向は、実装上の背減などがなければZ方向であってもよい。
【0059】
図8から図9Dを参照して、第1の実施形態の直流母線について説明する。
図8は、第1の実施形態の直流母線に流れる電流の分布と生成される磁束φを説明するための図である。
【0060】
導体(金属)の表皮効果により、周波数が高い成分は導体の表面近くに流れ、周波数が低い成分と直流成分は導体の断面全体に均一の電流密度で流れる。そのため、金属の表面から比較的深い部分には、直流成分だけが流れることから、導体を有効に利用しきれていない場合がある。
【0061】
本実施形態では、周波数がより低い成分と直流成分を第1導体65UBと第2導体65UUと第3導体65UDとに流し、周波数がより高い成分を第2導体65UUと第3導体65UDと、第1導体65UBの表面近くに流す。周波数がより高い成分が流れる範囲を、図8中の断面図にハッチングを付けて示す。この場合、中性線65Uの延伸方向に流れる電流iによって中性線65Uに生じる磁束は、第1導体65UBと第2導体65UUと第3導体65UDの断面の外周に沿った磁路が形成される。これを破線で示す。
【0062】
このように第1導体65UBには、第2導体65UUと第3導体65UDとが設けられている。これにより、第1導体65UBに形成される磁路は、第1導体65UBだけで形成された比較例に比べて長くなることが明らかである。本実施形態では、第2導体65UUと第3導体65UDを、磁路の長さを長くすることに利用する。
【0063】
以下、図9Aから図9Dを参照して、中性線65Uについてより詳しく説明する。図9A図9Bは、比較例の直流母線について説明するための図である。図9C図9Dは、実施形態の直流母線について説明するための図である。
【0064】
図9Cに、中性線65Uの俯瞰図を示す。
図9Dに、第2導体65UUのX方向に直交する面における断面図を示す。第2導体65UUは、X方向(延伸方向)と垂直な断面において所定の角度を成して屈曲した断面を有し、厚さb(第1厚さ)よりも薄い厚さ2d(第2厚さ)で形成された第2平板部を含む。例えば、第2平板部の断面は、L字状に屈曲している。上記の所定の角度は、略直角の一例である。なお、フランジの長さeは、適宜決定してよい。
【0065】
第2導体65UUの第2平板部の厚さ2dは、電力変換ユニットのPWM制御のキャリア周波数(以下、単にキャリア周波数という。)よりも高い基準周波数HFrefにおける表皮深さδ1の2倍以上である。基準周波数HFrefは、キャリア周波数の高調波周波数に基づいて決定してもよい。例えば、基準周波数HFrefは、キャリア周波数の整数倍であってよく、特定の次数の高調波周波数にそろえてもよい。
【0066】
第2導体65UUの第2平板部の厚さ2dが、電力変換ユニットが生成する交流の基本周波数の表皮深さδ2よりも薄い。第2平板部の厚さ2dを、このような厚さまで薄くすることで、交流の基本周波数成分におけるインピーダンスが増加して、第2平板部に流れにくくなる。また、上記の基準周波数HFrefは、キャリア周波数により生成される周波数成分(キャリア周波数とその高調波周波数)に対応付けられている。
【0067】
なお、上記の説明では、第2導体65UUを例示して説明するが、第3導体65UDについても同様である。例えば、第3導体65UDは、X方向(延伸方向)と垂直な断面において所定の角度を成して屈曲した断面を有し、厚さb(第1厚さ)よりも薄い厚さ2d(第3厚さ)で形成された第3平板部を含む。例えば、第3平板部の断面は、L字状に屈曲している。
第3導体65UDの第3平板部の厚さ(第3厚さ)は、第2導体65UUの第2平板部の厚さ(第2厚さ)と同じであってよく、条件によって異なる厚さにしてもよい。
【0068】
図9Cに示すように、第2導体65UUの第2平板部に形成されたフランジ部(第2平板部の第1端部側)の+Y方向側の面が、第1導体65UBの-Y方向側の面に接している。上記のフランジ部から繋がっている第2導体65UUの第2平板部(第2端部)が、第1導体65UBから離れる方向(-Y方向)に延伸している。
【0069】
第1導体65UBと、第2導体65UUと、第3導体65UDは、その延伸方向であるX方向に電流iを流して、電力変換システム1の盤間を跨いで直流電力を供給可能に構成されている。直流母線には、電流iの直流成分の他に、交流成分も流れる。電流iの直流成分の大きさと交流成分の大きさとに基づいて、第1導体65UBの断面の形状と面積と、第2導体65UUと第3導体65UDとの断面の形状と面積とを決定するとよい。
【0070】
例えば、第1導体65UBのX方向に直交する面で、幅aと厚さbの断面を有する。この断面の面積Sは、幅aと厚さbの積になる。第1導体65UBに電流iが流れたときに、第1導体65UBの断面の周に沿った磁路が形成される。次の式(1)から式(4)に、電気的関係を示す。
【0071】
磁束φ=インダクタンスL×電流i (1)
磁束φ=磁束密度B×面積S (2)
磁界H=電流i/磁路l (3)
磁束密度B=透磁率μ×磁界H (4)
【0072】
なお、上記の式(3)における「磁路l」は、磁路の長さである。
上記の式(1)から(4)を整理すると、インダクタンスLは、次の式を使って算出できる。
【0073】
インダクタンスL=透磁率μ×面積S/磁路l (5)
【0074】
上記の式(5)によれば、面積Sが不変であれば、磁路lの長さとインダクタンスLが反比例の関係にあることを示している。換言すれば、面積Sが不変であれば、磁路lを長くすれば、インダクタンスLを小さくすることができる。逆に、磁路lが不変であれば、面積Sを狭くすれば、インダクタンスLも小さくなる。
【0075】
ここで、図9A図9Bの比較例の導体総量について検討する。ここで示す比較例は、図9Cに示した中性線65Uの断面の周の長さと、略等しい長さの周を有する長方形の断面を有するものである。ここでは、中性線65Uの断面の周の長さを、磁路lの長さとみなす。
【0076】
図9Aに示す第1比較例は、第1導体65UBを幅方向(Z方向)に広げたものである。この導体は、X方向(延伸方向)と垂直な断面において幅(a+2c+2d)、厚さb(第1厚さ)で形成された平板部を含む。この断面の面積は、(ab+2bc+2bd)になる。
【0077】
図9Bに示す第2比較例は、第1導体65UBを厚さ方向(Y方向)に広げたものである。この導体は、X方向(延伸方向)と垂直な断面において幅a、厚さ(b+2c+2d)で形成された平板部を含む。この断面の面積は、(ab+2ac+2ad)になる。
【0078】
第1導体65UBの断面形状が、幅aに比べて厚さbが十分に薄く形成されていれば(例えば、a>>b)、上記の第1比較例と第2比較例の面積を比べると、第1比較例の方がその面積が狭くなる。第1比較例は、等量の磁路lに対して、直流母線の導体総量をより少なく構成できる一例である。
【0079】
そこで、実施形態の中性線65Uの断面の面積Sを解析するに当たり、第2導体65UUの第1平板部の部分に着目して、第2導体65UUの断面の面積を、(2cd)に近似する。これにより、中性線65Uの断面の面積Sは、第3導体65UD分も合わせて、(ab+4cd)と近似できる。
【0080】
また、上記の条件によれば、第2導体65UUの厚さ2dは、第1導体65UBの厚さbよりも薄い(2d<b)。
中性線65Uの断面の面積Sとしての(ab+4cd)と、第1比較例の面積の(ab+2bc+2bd)とを比べると、中性線65Uの断面の面積Sの方が狭いので、中性線65Uは、等量の磁路lに対して、第1比較例(及び第2比較例)よりも直流母線の導体総量をより少なく構成できる。これに伴い、中性線65UのインダクタンスLも小さくなるため、中性線65Uは、第1比較例(及び第2比較例)よりも共振が生じにくくなっている。
【0081】
上記の実施形態によれば、直流母線に適用されるバスバーモジュールは、複数の筐体に亘って配置され、接続されている平滑コンデンサと電力変換ユニットとに直流電力を配分する。直流母線は、直流の第1極と第2極の何れかの極に適用される第1導体と、第1導体に並列に接続される第2導体とを備える。第1導体は、X方向に沿う延伸方向に垂直な断面において厚さb(第1厚さ)で形成された第1平板部を含む。第2導体は、X方向に沿う延伸方向と垂直な断面において所定の角度を成して屈曲した断面を有し、厚さb(第1厚さ)よりも薄い厚さ2d(第2厚さ)で形成された第2平板部を含む。これにより、直流母線の導体総量を減らすことができる。
【0082】
電力変換システム1は、直流母線と、複数の筐体のうちの第1筐体に配置される第1平滑コンデンサと、複数の筐体のうちの第2筐体に配置される第2電力変換装置と、を備えるように形成されていてもよい。
【0083】
電力変換システム1は、逆変換装置5Uの筐体(第1筐体)に配置されたキャパシタ55UP(第1平滑コンデンサ)と、レグ50U(第1電力変換ユニット)と、逆変換装置5Xの筐体(第2筐体)に配置されたキャパシタ55XP(第2平滑コンデンサ)とレグ50X(第2電力変換ユニット)とを備えていてもよい。
【0084】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例について説明する。
第1の実施形態における第2導体65UUと、第3導体65UDのフランジは、所定の長さ(曲げ幅)に分割されているものであった。これに対し、本変形例における第2導体65UUaと、第3導体65UDaのフランジは、第2導体65UUの延伸方向(X方向)の長さに亘って連続しているものである。以下、これについて説明する。
【0085】
図10は、第1の実施形態の変形例の直流母線について説明するための図である。図11は、第1の実施形態の変形例の直流母線部分の俯瞰図である。図10図11は、前述の図4B図6Bに代わるものである。
【0086】
図10図11に示す第2導体65UUaのフランジは、第2導体65UUの延伸方向(X方向)の全長に亘って連続している。このようにフランジの延伸方向の長さを長くすると、フランジの曲げ加工が困難になることがあるが、第2導体65UUaと第1導体65UBの接触部分の面積を広くすることができることから、第2導体65UUaと第1導体65UBとの間の接触抵抗を減らすことができる。
【0087】
第1の実施形態の変形例の場合も、フランジ部分の導体量が幾らか増加するものの、第1の実施形態と同様に、直流母線の導体総量を減らすことができる。
【0088】
(第2の実施形態)
図12図13を参照して、第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、直流母線の導体総量とインダクタンスを低減させる構成例について説明した。本実施形態では、直流母線を分岐回路として利用する。この適用について説明する。
【0089】
図12は、第2の実施形態の直流母線からキャパシタ55への分岐回路を示す図である。図13は、第2の実施形態の直流母線部分の俯瞰図である。図12図13は、前述の図5図6Aとに代わるものである。
【0090】
図12図13とに示すように、各キャパシタ55と、第2導体65UUとの間に、接続導体55UPNが設けられている。接続導体55UPNは、各キャパシタ55の電極と第2導体65UUとを接続する。換言すれば、各キャパシタ55の電極は、接続導体55UPNを介して第2導体65UUに接続されている。これにより、各キャパシタ55は、接続導体55UPNと第2導体65UUとを介して、第1導体65UBに接続される。
【0091】
この図12図13に、各キャパシタ55の一方の電極への接続例を示したが、他方の電極についても同様の方法で直流母線に接続するように構成してよい。
【0092】
第2の実施形態によれば、直流母線からの分岐回路の一部に第2導体65UUを利用することができる。これにより、接続導体55UPNと第2導体65UUとを分離して構成するよりも、併用する構成にしたことで、第1の実施形態と同様に、直流母線の導体総量を減らすことに加えて、接続導体55UPNと第2導体65UUとを合わせた範囲の導体総量を減らすことができる。
【0093】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、バスバーモジュールは、複数の筐体に配置される平滑コンデンサと電力変換ユニットとに直流電力を配分する。前記バスバーモジュールは、第1導体と、第2導体とを備える。前記第1導体は、直流の第1極と第2極の何れかの極に適用される。前記第2導体は、前記第1導体に並列に接続される。前記第1導体は、延伸方向と垂直な断面において第1厚さで形成された第1平板部を含む。前記第2導体は、前記延伸方向と垂直な断面において所定の角度を成して屈曲した断面を有し、前記第1厚さよりも薄い第2厚さで形成された第2平板部を含む。これにより、直流母線の導体総量を減らすことができる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0095】
なお、逆変換装置群5のレグ50は、フルブリッジNPC型5レベルインバータに代えて、フルブリッジ3レベルインバータであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1、1A…電力変換システム、2…変圧器群、20U、20V、20W…変圧器、3…順変換装置群、3U、3V、3W…順変換装置、32UP、32UN、32VP、32VN、32WP、32WN…整流器、40…制御装置、5…逆変換装置群、5U、5V、5W、5X。5Y、5Z…逆変換装置、55、55UP、55UN、55VP、55VN、55WP、55WN、55XP、55XN、55YP、55YN、55ZP、55ZN…キャパシタ、65U、65V、65W…中性線(バスバーモジュール)、60U、60V、60W…正極母線(バスバーモジュール)、負極母線70U、70V、70W…負極母線(バスバーモジュール)、65UB…第1導体、65UU…第2導体、65UD…第3導体、8…電動機、PS…交流電源
【要約】
バスバーモジュールは、複数の筐体に亘って配置され、平滑コンデンサと電力変換ユニットとに直流電力を配分する。前記バスバーモジュールは、第1導体と、第2導体とを備える。前記第1導体は、直流の第1極と第2極の何れかの極に適用される。前記第2導体は、前記第1導体に並列に接続される。前記第1導体は、延伸方向と垂直な断面において第1厚さで形成された第1平板部を含む。前記第2導体は、前記延伸方向と垂直な断面において所定の角度を成して屈曲した断面を有し、前記第1厚さよりも薄い第2厚さで形成された第2平板部を含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13