(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】物品投入完了告知手段付き物品ピッキング作業装置
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B65G1/137 F
(21)【出願番号】P 2017076920
(22)【出願日】2017-04-07
【審査請求日】2020-04-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 謙二
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】岡本 健太郎
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-213493(JP,A)
【文献】特開2015-145302(JP,A)
【文献】特開2013-224186(JP,A)
【文献】特開2008-150152(JP,A)
【文献】特開2014-91609(JP,A)
【文献】特開2003-321109(JP,A)
【文献】特開2008-7239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤと、
前記コンベヤ上を移動する出荷容器と、
前記出荷容器に投入されるべきピッキング物品が配膳される商品配膳棚と、
前記出荷容器に付された出荷商品個別の識別IDと、
前記識別ID読み取り装置と、
商品出荷配送拠点の全ての商品の入庫、倉庫内移動及び出荷情報を一括管理し、前記出荷容器ごとに、出荷先及び商品の種類及び/もしくは内容、数、出荷時期を含む情報と前記識別IDとを紐付けて有し、前記出荷容器に対して前記商品配膳棚のどの特定商品が最後に投入されたら該出荷容器に対する全ての商品投入作業が完了するのかを予め情報として保有している物品入出荷管理情報システムと、
前記物品入出荷管理情報システムにより前記出荷容器に投入されるべきものとして決定されるピッキング物品をピッキング指示するために表示するピッキング指示手段と、
前記ピッキング指示手段によって表示された前記ピッキング物品を前記出荷容器に投入する作業が作業員によって行われた結果、前記識別ID読み取り装置によって読み取られた識別IDに係る前記出荷容器について前記特定商品が投入されたことが前記物品入出荷管理情報システムにより把握されることで前記出荷容器に対する必要なピッキング物品のすべての投入が完了したことを告知
する投入完了告知手段と
を具備することを特徴とする物品ピッキング作業装置。
【請求項2】
前記コンベアに沿って配設され前記コンベア上の前記出荷容器の移動に連動して点灯もしくは点滅する一連のランプを備えた第1及び第2のガイドランプをさらに備え、
前記第1のガイドランプは前記ピッキング物品を投入すべき出荷容器を作業者に対して示すものであり、
前記投入完了告知手段は、前記第2のガイドランプのうち前記ピッキング物品のすべての投入が完了した前記出荷容器が移動するのに対応する位置にあるランプが点灯若しくは点滅することによって前記告知を成すことを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキング作業装置。
【請求項3】
前記投入完了告知手段は、
前記物品入出庫管理情報システム及び/若しくは前記識別ID読み取り機と連接した前記コンベヤ上の物品を移動させるための手段が、移動して前記ピッキング物品のすべての投入が完了した前記出荷容器のみの前記コンベヤ上の位置又は向きを変えることによって前記告知を成すことを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキング作業装置。
【請求項4】
前記投入完了告知手段は、
前記物品入出庫管理情報システム及び/若しくは前記識別ID読み取り機と連接した電子タグであって前記出荷容器に貼付されたものが、前記ピッキング物品のすべての投入が完了した時点で点滅若しくは発光若しくは音を発することによって前記告知を成すことを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキング作業装置。
【請求項5】
前記投入完了告知手段は、
前記物品入出庫管理情報システム及び/若しくは前記識別ID読み取り機と連接した自動フラッグであって出荷容器に取り付けられたものが、前記ピッキング物品のすべての投入が完了した際、立ち上がることによって前記告知を成すことを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキング作業装置。
【請求項6】
前記物品入出庫管理情報システム及び/若しくは前記識別ID読み取り機と連接したプロジェクタをさらに備え、
前記投入完了告知手段は、
前記プロジェクタが、前記ピッキング物品のすべての投入が完了した際、前記出荷容器に映像又は画像を投影することによって前記告知を成すことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の物品ピッキング作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流配送拠点における物品の出荷ピッキング作業に係り、特にコンベヤ流れ作業の効率化に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多品種多量の商品を入荷して一時入庫保管し、顧客からの注文に応じて出荷する商品物流センターにおいては、コンベヤ設備を利用した商品のピッキング作業によって商品が選別梱包され顧客のもとに配送される。昨今のインターネット販売や生協などの食品の宅配においては顧客の注文に対していかに速やかに商品を届けるかが事業者の重要な課題であり、その時間短縮のための大きな要因の一つになるのが物流配送拠点における個別商品の選別ピッキング梱包作業の早さにある。
【0003】
物流配送拠点では、おびただしい種類及び数の商品が絶えず入庫され出荷待機の状態で一時保管されている。これらの商品が出荷される際は、商品入出庫管理システムによって選択された商品がピッキング作業現場のフローラック(流動棚)などのピッキング専用棚に配膳され、それらの商品は、ピッキング作業現場から出荷のためのトラックヤードへとつながるコンベヤを活用した流れ作業によるピッキング作業によって出荷容器に投入され出荷される。
【0004】
例えば、生協などの個人宅配のピッキング作業の場合、このコンベヤ上を流れる出荷容器は、注文した特定顧客に配送されるための情報を含む識別IDが付与されており、コンベヤの近傍に位置する複数の作業者が、配膳された商品群の中からその特定顧客用の出荷用に指示された商品のみを選択し出荷容器に投入する。
【0005】
コンベヤ上を流れる出荷容器は、配膳された商品群の前を流れるに従い、その出荷容器に投入すべき商品のみが作業者によってピッキングされ投入され、コンベヤ上を流れるに従い全ての商品の投入が成され、最終工程として内容袋の袋止めや冷凍処理、必要書類の同梱その他の処理を経て出荷用の封止が成され、必要であれば表示ラベル等が貼付されて出荷トラックヤードへと至る。
【0006】
このピッキング作業においては、おびただしい種類の商品を最小の作業者で、かつコンベヤをなるべく止めずに流れ作業の状態で効率的に進行させる方法がいろいろ企図され実施されているが、昨今においてはピッキング作業ミスの低減及びより一層のスピード化を企図し、コンベヤ上を流れる出荷容器に付された識別ID等の出荷情報を利用して、ピッキングすべき商品の種類や数を作業者にすぐに認知させるようコンベヤ前に複数のランプ表示器を設け、ランプの点灯色によって作業者に正確且つ高速作業を促す集品用ガイドランプシステムなどが多く利用されている。
【0007】
たとえば、特許文献1では、集めてきた物品を任意に収納することができ、棚のスペースを有効に活用できる集約棚を備えたピッキング設備及びピッキング方法を提供するための技術思想が開示されている。このような場合も集品用ガイドランプシステムが利用されており、それらの目的はピッキング作業の効率化及び作業ミスの防止にある。
【0008】
しかし、これらの例では、個々のピッキング作業における効率化は図られるが、ピッキング作業及び梱包そして出荷までのコンベヤライン作業全体としての効率化に関する知見には及んでいない。商品ピッキング及び出荷工程においては、商品の配膳から出荷までの全工程を対象として効率化及びスピードアップを図らなければならず、例えばその作業工程の中の特定作業のみを極端に効率化してもその効果を全体工程に反映させる仕組みを持たないと意味を成さない場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、ピッキング作業においてはあらゆる機械設備やコンピュータ管理システムを駆使してハイスピード化及び少人化が成されているが、コンベヤを活用した流れ作業においては、その全行程のスピードを決定するのは最も遅延を生ずる律速段階作業であり、この律速段階の作業の改善を施すことが全行程のスピードアップにつながることは周知の通りである。
【0011】
前述の通り商品の物流配送拠点でのピッキング出荷作業では、ベルトコンベヤ等の流れ作業によって構成されているため、商品投入後の出荷容器の封止作業がコンベヤ上の最終工程(最下流工程)において終了した時点で全行程が完了する。この最終工程を「出荷前作業」と称する。必要なすべての商品の投入を終えた出荷容器は、コンベヤ上の最終工程である出荷前作業において、内袋の口止め、保冷剤の投入、容器のフラップ止め、ラベルの貼り換え、場合によっては小箱から親箱への詰め替え、発砲スチロール等緩衝物の投入、必要帳票の挿入、封止(封印)梱包などの作業が行われる。
【0012】
例えば出荷前作業の具体的詳細は以下のようなものである。
・集品箱に貼付されたラベルに記載された箱内商品数量と実際の商品数が一致しているかどうかを確認する。(数量検品)
・内袋の口を閉める。
・届け先が同じ(若しくは近隣)の箱へ、複数の箱の内袋(商品)を詰め合わせる。(子箱から親箱への寄せ)
・保冷材の投入(要冷凍食品の場合)
・集品箱に蓋をする。
【0013】
これらの作業は必ずしもすべての出荷容器に対して必要なものではなく、商品仕様や出荷先又はユーザ等に対する運用によって必要な作業が選択される場合も多く、商品によってはこのうちのいくつかの作業が重畳して必要とされることもある。また、品質サービスの向上、搬送コスト低減のために出荷前作業は複雑化し、この結果これらに対応する作業工程が増えている。
【0014】
このように出荷前作業は、上記のような計画的かつ一律作業である商品ピッキング作業に比較して個別作業や特定作業を任意に実施しなければならない場合が多く、時として作業に長時間を要し、コンベヤの設定スピードに対して遅れを生ずることも多い。つまりコンベヤ上の全体作業の配分に対して出荷前作業は比較的作業負荷が高く、時として作業が間に合わずに集品作業ラインの停止が発生し、必然的にコンベヤライン全体の作業能力を下げる原因になることがある。
【0015】
特にピッキング作業全体として高効率化に対応した規模の大きいピッキングシステムにおいては、ガイドランプ等による作業の単純誘導化などによってピッキング作業の能力が著しく高いために、その最下流である出荷前作業が間に合わずにライン停止を余儀なくされ、如いてはピッキング出荷作業ライン全体の効率を低下される要因となっている。
【0016】
これに対して、上流ピッキング作業では、高速ピッキングシステムに対応し且つ作業者のスキルレベルによってはコンベヤスピードに十分対応した上でピッキング作業における待ち受けタイム(作業余裕、手待ち時間)を生ずる場合もある。また、そのような待ち受け時間を有効活用すべく、ピッキング商品の仮置きや先置き処理などの手法も導入されている。
【0017】
上記のような高速ピッキング作業における作業効率のアンバランスを解消し、特に律速段階となる出荷前作業に着目して、作業工程や作業者の増員をせずにピッキング作業ライン全体工程の最適効率化を図るための作業システムを提供することが本発明の目的である。
【0018】
本発明はこうした従来技術上の問題点を解決することを企図したものであり、ピッキング作業及び商品出荷作業全体の安全性と作業性を格段に向上させつつ、経済効率も格段に向上させることの可能な物品ピッキング装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる課題を解決するため、本発明に係る物品ピッキング作業装置は、
コンベヤと、
前記コンベヤ上を移動する出荷容器と、
前記出荷容器に付された出荷商品個別の識別IDと、
前記識別ID読み取り装置と、
物品入出荷管理情報システムと、
作業者に対して前記出荷容器にピッキング物品の投入が終了したことを告知する手段と
を具備することを特徴とする。また前記告知とは、ピッキング物品の投入が全て終了した前記出荷容器を前記物品入出荷管理情報システムが認知した際、作業者に前記ピッキング物品の投入が終了した前記出荷容器を特定し告知する手段であることを特徴とすることができる。
【0020】
ピッキング作業でのコンベヤ上を流れる出荷容器には識別IDが付与されており、その情報内容は、顧客の注文に従った出荷商品の特定情報も含まれ且つ商品入出荷情報システムとも連動している。ピッキングして出荷容器に投入すべき商品の種類、数等も出荷容器に付された識別IDと紐付けされた情報である。
【0021】
出荷容器に付された識別IDは、ピッキング作業におけるコンベヤ上を移動しながら至る箇所において認識装置によって識別されて、その情報から投入すべき商品が特定され、集品用ガイドランプ等の表示に反映され作業者へのピッキング指示となる。このように出荷容器に投入されるべき商品は、物品入出荷管理情報システムと連動したものであるため予め全て決定されている。
【0022】
つまり本発明は、その出荷容器に全ての商品が投入されピッキング工程が終了した時点で、その出荷容器を認識し、ピッキング工程を完了した出荷容器であることを作業者が認知できる手段を用いて告知又は提示することができることを特徴とする。
【0023】
請求項2に係る発明である物品ピッキング作業装置は、前記物品ピッキング作業におけるコンベヤの近隣に敷設されたガイドランプが前記ピッキング物品の投入が終了した出荷容器の移動に伴って点灯若しくは点滅することを特徴とする。
【0024】
本発明は、出荷容器に投入すべき商品が全て投入された際、識別IDの読取り装置又は物品入出荷管理情報システムの情報によりピッキング終了を認知し、その告知手段として物品入出荷管理情報システムと連動した集品用ガイドランプの特定ランプを点灯又は点滅等させることができる。
【0025】
これにより作業者はピッキング作業が終了した出荷容器を認知することができる。出荷容器がコンベヤ上を移動するに追随して集品用ガイドランプの特定ランプの点灯又は点滅も追随して移動する。これらの技術は周知技術の範囲内で対応できる。
【0026】
請求項3に係る発明である物品ピッキング作業装置は、前記物品ピッキングシステムの前記物品入出荷管理情報システムと連動した前記コンベヤの物品仕分け用のシューが移動して前記ピッキング物品の投入が終了した前記出荷容器のみのコンベヤ上の位置又は向きを変えることを特徴とする。
【0027】
本発明は、出荷容器に投入すべき商品が全て投入された際、識別IDの読取り装置又は物品入出荷管理情報システムの情報によりピッキング終了を認知し、その告知手段として物品入出荷管理情報システムと連動したコンベヤ上のシューが移動してその出荷容器のみの向きを変更及び/若しくはコンベヤ上の位置を変更することができる。
【0028】
これによりピッキング作業者は、コンベヤ上のどの出荷容器がピッキング商品の投入が終わったものであるかを認知することができる。
【0029】
請求項4に係る発明である物品ピッキング作業装置は、前記物品入出荷管理情報システム及び/若しくは識別ID読取装置と連動した電子タグであって前記出荷容器に貼付されたものが前記ピッキング物品の投入が終了した時点で点滅若しくは発光若しくは音を発することを特徴とする。
【0030】
本発明は、出荷容器に投入すべき商品が全て投入された際、識別IDの読取り装置又は物品入出荷管理情報システムの情報によりピッキング終了を認知し、その告知手段として物品入出荷管理情報システムと無線又は電気通信を介して連動した出荷容器に付された電子タグが、そのランプを点灯若しくは点滅、発光又は音を発することができる。
【0031】
例えば電子タグでないものであっても、無線又は電気通信を介して物品入出庫管理情報システムからの指示を受け、タグ形状を変え又は変色等の視覚認識可能な外観上の変化により作業者に出荷容器のピッキング作業の終了を告知することができる。
【0032】
請求項5に係る発明である物品ピッキング作業装置は、物品入出荷管理情報システム及び/若しくは識別ID読み取り装置と連動した自動フラッグであって出荷容器に取り付けられたものが、ピッキング物品の投入が終了した際、立ち上がることに特徴を有する。ピッキング商品が全て投入された出荷容器を特定し作業者に認知させる手法としては、最も単純な方法としては出荷容器に組み付けた自動フラッグを立てることが可能である。
【0033】
請求項6に係る発明である物品ピッキング作業装置は、前記物品ピッキングシステムの物品入出荷管理情報システム及び/若しくは識別ID読取装置と連動したプロジェクタが、ピッキング物品の投入が終了した出荷容器に映像を投影することを特徴とする。
【0034】
本発明は、出荷容器に投入すべき商品が全て投入された際、識別IDの読取り装置又は物品入出荷管理情報システムの情報によりピッキング終了を認知し、その告知手段として物品入出荷管理情報システムと連動したプロジェクタが、ピッキング物品の投入が終了した出荷容器に特定の個別映像又は画像を投影することを特徴とする。
【0035】
これにより作業者はピッキング作業が終了した出荷容器を認知することができる。出荷容器がコンベヤ上を移動するに従って投影される映像も追随して移動する。出荷容器のコンベヤ上の位置は、貼付されている識別IDを定期的に読取装置によって感知識別することにより把握可能であるし、また商品入出庫管理システムのコンベヤの移動スピード情報に基づいて自動計算により位置確認をすることも可能である。そしてこれらの技術は周知技術の範囲内で対応できる。
【0036】
上記のように、上流の作業であるピッキング作業の作業者が手待ち時間を有している場合、その作業者のいずれかが、出荷容器のピッキング作業終了の告知を認知して、内袋の口止めや出荷容器のフラップ折りなど出荷前作業を前もって実施することができる。これは出荷前作業工程の作業を一つずつ前段階で減じていくことに他ならない。出荷前作業の負荷低減となり効率化及びスピードアップに貢献する。
【0037】
つまり本発明に係る物品ピッキング作業装置は、コンベヤ上の出荷容器のピッキング作業終了の告知表示を手待ち余裕のあるライン上流の作業者が認知し、最終工程である出荷前作業のいずれかを先行して実施することにより、出荷前作業の作業負荷を予め上流工程で減ずることにより出荷前作業の作業タイムオーバを回避することができる。
【0038】
これにより最下流である出荷前作業が間に合わずにライン停止を余儀なくされ、如いてはピッキング出荷作業ライン全体の効率を低下させる要因を大幅に減ずることができる。
【0039】
上記のような高速ピッキング作業における全体の作業効率のアンバランスを解消し、特に律速段階となる出荷前作業に着目して、作業工程や作業者の増員をせずにピッキング作業ライン工程全体の最適効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る物品ピッキング作業装置によれば、商品出荷配送拠点等における商品の出荷作業において、商品ピッキングから出荷前作業に至るまでのライン作業の負荷バランスの不均一を減ずることができ、これによりライン作業全体の効率化及びスピード化が図られ、安全性と作業性を格段に向上させつつ、経済効率も格段に向上させることの可能な商品出荷作業が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】物品ピッキング作業の全体イメージを示した概念図である。
【
図2】物品ピッキング作業の全体イメージを示した概念図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る物品ピッキング作業装置のガイドランプを利用した場合の概念図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る物品ピッキング作業装置のプロジェクタを利用した場合の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0043】
図1は、物品ピッキング作業の全体イメージを示した概念図である。同図に示すように、商品ピッキング作業ライン1は、例えばベルトコンベヤ4でつながっており、上流の作業であるピッキング作業ライン2を経て、最終段階で出荷前作業3となり出荷容器5がトラックヤードへ運ばれて出荷6される。
【0044】
上流作業であるピッキング作業ライン2ではピッキング作業者8が、背後に位置する商品配膳棚7に配膳された商品をピッキング(選択)し、ベルトコンベヤ4の上を移動する出荷容器5に投入する。出荷容器5には識別IDが付されているため、物品入出庫管理情報システムによって予めその識別IDが読み取られ、その商品は商品配膳棚7の中でランプ等によって示され作業者に認知されることにより選択される。同様に、その商品を投入すべき出荷容器5は、コンベヤに隣接して設置された作業用ガイドランプ10が点灯(点灯ガイドランプ11)することによって作業者に認知される。
【0045】
出荷先ごとに指定された出荷容器5は、ピッキング作業ラインで必要な商品をすべて投入されてベルトコンベヤ4の移動と共に最終工程である出荷前作業3のラインに至る。出荷前作業ラインでは出荷前作業者9が、内袋の口止め、保冷剤の投入、容器のフラップ止め、ラベルの貼り換え、場合によっては小箱から親箱への詰め替え、必要帳票の挿入、封止(封印)梱包などの作業を行い出荷6する。
【0046】
図2は、物品ピッキング作業の全体イメージを示した概念図である。
図2に示すようにベルトコンベヤ4の上を流れる出荷容器5は、「未」を示す商品投入作業が未完了のもの、「完」を示す商品投入作業が完了したもの、「済」を示す出荷前作業が済んだものに分けられる。出荷容器5は、出荷前作業3のラインに入った後は商品投入作業が完了したことが確実であるとわかるが、まだピッキング作業ライン2の過程にある間は、最終のピッキング作業者を通過するまで商品投入が完了したかどうかは作業者にはわからない。よって「?」を示す。
【0047】
図2に示すように、出荷前作業3のラインに入った出荷容器5は全てが既に商品投入済みであるため出荷前作業者9は、内袋の口止め、保冷剤の投入、容器のフラップ止め、ラベルの貼り換え、場合によっては小箱から親箱への詰め替え、発砲スチロール等緩衝物の投入、必要帳票の挿入、封止(封印)梱包などの作業を手早く実施することになる。
【0048】
しかし出荷前作業3では、商品の種類・大きさ・形状・仕様又は客先仕様などの違いによって上記のような様々な作業がランダムに必要となり、場合によっては小箱から親箱への詰め替えが必要な出荷容器5が連続して流れてくることもあり往々にしてベルトコンベヤ4のスピードに作業が間に合わない事態となることも多い。
【0049】
このような事態が発生すると当然ながらベルトコンベヤ全体を一時停止させて対応することになり、上流作業であるピッキング作業ラインも同時にストップし大きな効率低下につながる。商品ピッキング作業ライン1はコンベヤ4で連続しているため当然のことではあるが出荷前作業ラインのコンベヤだけを停止させることはできない。つまり商品ピッキング作業ライン1全体においては、出荷前作業3の滞りが全体効率に大きく影響する律速段階となる場合が多い。
【0050】
一方
図2に示すようにピッキング作業ライン2においては、ピッキング作業者8は、コンベヤ上の出荷容器5に商品をピッキングして投入する指示のみを受けているため、コンベヤ上のどの出荷容器が既に必要な商品をすべて投入し終えた商品投入作業完了「完」の出荷容器なのかどうかはわからない。出荷容器5がピッキング作業ラインを終えて出荷前作業ラインに入ったことによって事後的に商品投入作業完了の出荷容器が認識できるのである。
【0051】
図3は、本発明の一実施形態に係る物品ピッキング作業装置のガイドランプを利用した場合の概念図である。本発明の一実施形態に係る物品ピッキング作業装置は、
図3に示すように、例えば作業用ガイドランプ10がベルトコンベヤ4に沿って複数列あるような場合は、ピッキング作業である商品投入作業が完了した出荷容器5のみの点灯又は点滅により作業者に知らせることができる。ただし、作業用ガイドランプ10は必ずしも複数列を要する必要はない。単列であっても点灯すべきガイドランプが確保できればよい。
【0052】
物品入出荷管理情報システムは、商品出荷配送拠点の全ての商品の入庫、倉庫内移動及び出荷情報を一括管理しているため、その指示によって出荷容器5は、出荷先及び商品の種類、内容、数、出荷時期などを指定され、これらの情報と紐付けされた識別IDを付与されてピッキング作業ラインのベルトコンベヤ4に投入される。よって、その出荷容器5は、商品配膳棚7のどの商品を最後にピッキング投入されたら全ての商品投入作業が完了するのかは予め情報として保有している。
【0053】
本発明に係る物品ピッキング作業装置は、上記商品入出荷管理情報システムと連動しているため、
図3に示すようにピッキング作業ラインにおいても、どの出荷容器5が商品投入作業を完了しているのかが明白であるため、ガイドランプを商品投入作業完了時に点灯12させることによってその出荷容器をピッキング作業者8に知らせることができる。
【0054】
商品投入作業が完了した出荷容器「完」を認識したピッキング作業者8は、例えば自己のピッキング作業が一時終了し、わずかな手待ち時間が有るのであれば、その出荷容器の内袋の口止め又は保冷剤の投入、容器のフラップ止めなどの出荷前作業の一部を出荷前作業3ラインに先行して実施することができる。複数のピッキング作業者8が、このように出荷前作業を先行して実施することができれば、それだけ後工程である出荷前作業の作業負荷を減ずることができ、出荷前作業ラインにおいて作業負荷オーバーによるライン停止のリスクを大きく減少させることができる。
【0055】
本発明に係る物品ピッキング作業装置は、このように商品ピッキング投入作業を終えた出荷容器5「完」をピッキング作業者8にガイドランプの点灯のみならず様々な方法を駆使して認知させることができる。
【0056】
例えば、物品入出荷管理情報システムと連動し、その指示を受けたコンベヤのシュー(コンベヤ上の物品を移動させるための手段)が移動して、商品ピッキング投入作業が終了した出荷容器のみのコンベヤ上での位置又は向きを変えることによって、作業者に認知させることができる。これにより、ピッキング作業者は、位置や向きを変えられた出荷容器のみに対して出荷前作業を先行して実施することができる。
【0057】
例えば、物品入出荷管理情報システムと連動した電子タグであって、出荷容器に貼付されたものが、商品ピッキング投入作業が終了した時点で点滅若しくは発光若しくは音を発することで作業者に認知させることができる。これにより、ピッキング作業者は、上記のように出荷前作業を先行して実施することができる。
【0058】
また例えば、物品入出荷管理情報システムと連動した自動フラッグであって出荷容器に取り付けられたものが、商品ピッキング投入が終了した際、立ち上がることで作業者に認知させることができる。これにより、ピッキング作業者は、出荷前作業を先行して実施することができる。
【0059】
図4は、本発明の一実施形態に係る物品ピッキング作業装置のプロジェクタを利用した場合の概念図である。同図に示すように、本発明の一実施形態に係る物品ピッキング作業装置は、商品ピッキング作業ライン2の近傍にプロジェクタ13を具備する。プロジェクタ13は、コンベヤに対して上方にあれば天井又は側壁等に設置されていてもよい。
【0060】
物品入出荷管理情報システムと連動したプロジェクタ13は、商品のピッキング投入が完了した出荷容器5「完」の情報を得て、その出荷容器5に、例えば出荷容器5に付された識別IDの情報に基づいて必要な映像又は画像を投影することができる。その映像又は画像情報は、出荷前作業のひとつである内袋の口止め若しくは保冷剤の投入、容器のフラップ止め、ラベルの貼り換え等の指示情報であればよい。
【0061】
手待ち時間を有するピッキング作業者8は、その映像又は画像情報に従って出荷前作業の先行実施をすることができる。例えば出荷容器によっては保冷剤が必要なものには、保冷剤の映像又は画像を投射することにより必要な出荷容器5のみに保冷剤を投入することができる。また出荷容器特有の同梱物を別指定して投入することもできる。映像又は画像であるから出荷前作業を作業別に指示することもできる。これらの情報は予め物品入出荷管理情報システム又は識別IDに個別情報として記録されていればプロジェクタ13はその読み取られた情報に従って指定された映像を選択して投影するだけでよい。
【0062】
また、コンベヤ4と共に移動する出荷容器5の移動速度は、コンベヤの速度設定に従うものであるため、それらの情報を物品入出荷管理情報システム経由でプロジェクタ13に連動させることによって投影された映像又は画像も出荷容器の移動に追随して移動することになる。出荷容器5の正確な位置は、識別IDの読み取り機によって定期的に補正することも可能である。
【0063】
上記のような本発明の一実施形態に係る物品ピッキング作業装置による商品投入作業完了出荷容器の表示告知方法は、本発明に係る物品ピッキング作業装置における情報伝達形態であれば、その他の様々な方法に対応できるため、本発明はそれらを限定するものではない。本発明は、このような告知手段を用いてピッキング作業者に手待ち時間であるロスタイムを減縮させ、且つ後工程であってライン全体の律速工程になる出荷前作業を先行実施し負荷低減を図ることにある。
【0064】
本発明の技術思想は、出荷容器へのピッキング作業完了の見極めと告知方法のみではない。一般的に、最終作業である梱包封止作業を可能な範囲で上流工程にもっていくこと、また出荷容器の個別性に対応してその出荷容器の梱包封止はそれぞれ最終ピッキング商品が投入された時点であることが望ましい等の基本的な考え方に本発明は立脚する。梱包封止作業を必ずしもラインの最下流にまとめる必然性はない。本発明は、出荷容器への個別の商品ピッキング投入及び梱包封止作業は個別に開始され個別に終了することが原点であることへの技術的対応であり、本発明によってコンベヤライン作業全体の作業負荷の均質化を図ることができる。最終工程に梱包封止作業を集中化させるという固定概念の払拭であり、上流作業の手待ちロス時間を下流の作業の負荷オーバの解消に充てるという極めて合理的発想に基づく技術思想である。
【0065】
コンベヤライン作業の本質はラインの最初から最終工程までの作業の均質化にあり、すべての作業が同じスピードに対応するように人員配分又は作業配分を講ずることが大原則であるため、ライン作業内に律速作業が存在してはならない。本発明は、出荷前作業という特殊性に鑑み無意識に最終工程にあるべきとの固定概念のもと現実的にはラインバランスを崩すという不合理な結果を解消しつつ、同時にライン全体作業バランスの均質化に寄与させるという相乗効果を企図する技術思想を提起するものである。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。これらはすべて、本技術思想の一部である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
上述したように、本願に係る発明によれば、商品出荷におけるピッキング作業ラインの安全性と作業性を格段に向上させつつ、経済効率も格段に向上させることの可能な商品配送拠点の商品出荷が実現される。
【0068】
また、本発明は、商品配送拠点でのピッキング商品出荷に限定されることなく、あらゆる物品のピッキング集配作業ラインにおいても利用・適用可能である。よって、本願は、各種産業に対して大きな有益性をもたらすものである。
【符号の説明】
【0069】
1 商品ピッキング作業ライン
2 ピッキング作業ライン(上流作業)
3 出荷前作業
4 ベルトコンベヤ
5 出荷容器
6 出荷
7 商品配膳棚
8 ピッキング作業者
9 出荷前作業者
10 作業用ガイドランプ
11 点灯ガイドランプ
12 商品投入完了点灯
13 プロジェクタ
14 投影映像