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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】局所組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20230511BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/893 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K8/42
A61Q17/04
A61K8/49
A61K8/895
A61K8/893
A61K8/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020533227
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018085143
(87)【国際公開番号】W WO2019121476
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】17208371.9
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】デュローン, マチルド
(72)【発明者】
【氏名】メンドロック-エディンガー, クリスティーン
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178437(JP,A)
【文献】特表2008-537532(JP,A)
【文献】特表2016-519050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターを含む水中油型(O/W)エマルションの局所組成物であって、
前記パンテノールが、前記局所組成物の総重量に対して、2~6重量%の範囲で選択される量で、前記局所組成物中に存在し、
前記微粒子化されたUVフィルターが、前記局所組成物の総重量に対して、1~3重量%の範囲で選択される量で、前記局所組成物中に存在し、
前記ポリシロキサン系UVフィルターが、前記局所組成物の総重量に対して、2~4重量%の範囲で選択される量で、前記局所組成物中に存在し、
前記微粒子化されたUVフィルターが、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールであり、
前記ポリシロキサン系UVフィルターが、ポリシリコーン-15であり、
前記局所組成物中のパンテノールの量が、前記ポリシロキサン系UVフィルターの量より多いことを特徴とする局所組成物。
【請求項2】
前記微粒子化されたUVフィルターが、光散乱により測定される200nm未満の平均粒径分布Dv50を有する、請求項1に記載の局所組成物。
【請求項3】
前記微粒子化されたUVフィルターが微粒子化された不溶性有機UVフィルターである、請求項1又は2に記載の局所組成物。
【請求項4】
前記微粒子化されたUVフィルターが、微粒子化されたUVフィルターの粒子を含む水性分散液として使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項5】
前記微粒子化されたUVフィルターを含む前記水性分散液が、C8~16アルキルポリグルコシドをさらに含む、請求項4に記載の局所組成物。
【請求項6】
前記局所組成物が、O/W乳化剤を含み水中油型(O/W)エマルションの形態である、請求項1~のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項7】
前記局所組成物が、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン、及びサリチル酸エチルヘキシルをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項8】
ガラス又はプラスチック表面への水中油型(O/W)エマルションの局所組成物の移行を減少させるための、パンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターの前記局所組成物中での使用であって、
前記パンテノールを、前記局所組成物の総重量に対して、2~6重量%の範囲で選択される量で使用し、
前記微粒子化されたUVフィルターを、前記局所組成物の総重量に対して、1~3重量%の範囲で選択される量で使用し、
前記ポリシロキサン系UVフィルターを、前記局所組成物の総重量に対して、2~4重量%の範囲で選択される量で使用し、
前記微粒子化されたUVフィルターが、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールであり、
前記ポリシロキサン系UVフィルターが、ポリシリコーン-15であり、
前記局所組成物中で使用されるパンテノールの量が、前記ポリシロキサン系UVフィルターの量より多いことを特徴とする、使用
【請求項9】
ラス又はプラスチック表面への脂肪及び/又は油の移行を減少させる方法であって、パンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターの、そのような脂肪及び油を含む水中油型(O/W)エマルションの局所組成物への添加を包含し、
前記パンテノールを、前記局所組成物の総重量に対して、2~6重量%の範囲で選択される量で添加し、
前記微粒子化されたUVフィルターを、前記局所組成物の総重量に対して、1~3重量%の範囲で選択される量で添加し、
前記ポリシロキサン系UVフィルターを、前記局所組成物の総重量に対して、2~4重量%の範囲で選択される量で添加し、
前記微粒子化されたUVフィルターが、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールであり、
前記ポリシロキサン系UVフィルターが、ポリシリコーン-15であり、
前記局所組成物に添加されるパンテノールの量が、前記ポリシロキサン系UVフィルターの量より多いことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、パンテノール、ポリシロキサン系UVフィルター、及び微粒子化されたUVフィルターを特定の比率で含む局所組成物に関する。
【0002】
サンケア製品は、長年にわたり大幅に発展してきた。初期の配合物は、かつてUV-B線が、しわ、皮膚疾患、及び皮膚癌の最も重大な原因であると考えられていたため、使用者をUV-B照射から保護することが意図されていた。しかし、最近の研究は、UV-A照射が、日光による損傷(solar damage)並びに紅斑性狼蒼及びメラノーマ及び非メラノーマ皮膚癌などの皮膚疾患の発生において、同様に又はさらにより重大であることを示した。そのため、現在は、UVA(320~400nm)及び/又はUVB(280~320nm)光をできるだけ多く除去することに焦点が置かれている。その結果、高いSPF(サンプロテクションファクター)及び高いUVA保護を示す一方で、光安定性であるサンケア製品がますます常に必要とされている。
【0003】
さらに、今日のサンケア製品は、肌に優しい防腐剤又は防腐剤ブースター(preservative boosters)を必要とするが、それらは従来の防腐剤に代わるものになり得る。サンケア製品の別の必要性は、保湿を改善し、皮膚に対する刺激を防ぐか又は減少させることである。
【0004】
しかし、サンケア製品は、多くの場合、相当な量の脂肪及び油を含み、皮膚への塗布後に、特に指の上で、特にガラス表面などの表面、例えばタッチスクリーンへのそのような脂肪及び油の望まれない移行を起こすことが多く、それによりその表面が汚れるが、それは末端消費者により非常に望まれない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を改善すること並びに従来技術の欠点を克服する、UVフィルター及び沈静化剤(soothing agent)を含むサンケア製品を開発することであった。
【0006】
驚くべきことに、多量のパンテノールをポリシロキサン系UVフィルター及び微粒子化されたUVフィルターと組み合わせて含む組成物が、ガラス表面への組成物の著しく減少した移行を示すことが見出された。
【0007】
そのため、本発明は、一態様において、パンテノール、ポリシロキサン系UVフィルター、及び微粒子化されたUVフィルターを含む局所組成物であって、局所組成物中のパンテノールの量(重量%)が、組成物中に存在するポリシロキサン系UVフィルターの量及び/又は微粒子化されたUVフィルターの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)ことを特徴とする局所組成物に関する。
【0008】
好ましい実施形態において、本発明による局所組成物中のパンテノールの量は、組成物中に存在するポリシロキサン系UVフィルターの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)。
【0009】
別の好ましい実施形態において、本発明による局所組成物中のパンテノールの量は、組成物中に存在するポリシロキサン系UVフィルター及び微粒子化されたUVフィルターの総量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)。
【0010】
用語「局所」は、特に、皮膚、頭皮、まつ毛、眉毛、爪、粘膜、及び毛髪、好ましくは皮膚であるケラチン性物質への外用を意味すると本明細書で理解される。
【0011】
パンテノール(INCI)は、D-パンテノール、デクスパンテノール、プロビタミンB5、又は(+)-(R)-2,4-ジヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-3,3-ジメチルブチルアミド(dimethylbutyramid)とも称される。パンテノールは、水和を改善し、皮膚のかゆみ及び炎症を減少させ、皮膚弾力性を改善し、表皮の創傷治癒を加速させる。パンテノールは、例えば、DSM Nutritional Products Europe LtdでD-パンテノールとして市販されている。
【0012】
本明細書で使用される用語「微粒子化された」は、一般的に、200nm未満、好ましくは約5nm~約200nm、より好ましくは約15nm~約100nm(ベックマン・コールター(Beckmann Coulter))の粒径D50を指す。
【0013】
微粒子化されたUVフィルターの例は、微粒子化された不溶性有機UVフィルター又は微粒子化された無機UVフィルターである。微粒子化された不溶性有機UVフィルターの例は、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール又はトリスビフェニルトリアジンである。微粒子化された無機UVフィルターの例は、従来化粧品用途に使用されている微粒子化された二酸化チタン、微粒子化された酸化亜鉛、微粒子化された酸化セリウム、又は微粒子化された酸化鉄である。
【0014】
本明細書で使用される用語「不溶性」は、室温で(すなわちおよそ22℃)、例えば、安息香酸C12~15アルキル、プロピレングリコール、鉱油などの通常の化粧品用油にも、水にも、0.05重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満の溶解度を示すUV吸収剤を指す。さらなる実施形態によると、微粒子化されたUVフィルターは、UVAフィルターかUVBフィルターかブロードバンド(UVA及びUVB)フィルターのいずれかである。
【0015】
好ましい実施形態によると、微粒子化されたUVフィルターは、微粒子化された不溶性有機UVフィルターである。
【0016】
好ましい実施形態によると、本発明による微粒子化されたUVフィルターは、200nm未満の、光散乱により測定される平均粒径分布D50を有する不溶性有機UVフィルターである。
【0017】
より好ましくは、微粒子化された不溶性有機UVフィルターは、30~150nmの範囲、最も好ましくは特に40~110nmの範囲など35~125nmの範囲で選択された、光散乱により(すなわち光子相関分光法(PCS)により)測定された平均粒径分布D50を有する。特定の好都合な実施形態において、微粒子化された不溶性有機UV吸収剤は、50~80nmの範囲のD10、75~125nmの範囲のD50、及び140~180nmの範囲のD90、並びにさらにより好ましくは、55~75nmの範囲のD10、80~110nmの範囲のD50、及び150~175nmの範囲のD90を示す。本明細書で与えられる粒径は、一般的に、微粒子化された不溶性有機UV吸収剤の、超純水(Mili-Q精製)などの水中の好ましくは3mg/mlの濃度レベルの懸濁液で、ベックマン・コールター デルサナノ(Delsa Nano)Sを使用して測定される。
【0018】
さらなる実施形態によると、局所組成物は、微粒子化されたUVフィルターを、微粒子化されたUVフィルターの微粒子化された粒子を含む水性分散液として含む。
【0019】
好ましくは、水性分散液中の微粒子化されたUVフィルターの濃度は、分散液の総重量に対して、10~90重量%、20~80重量%、30~70重量%の範囲、より好ましくは40~60重量%の範囲、例えば45~55重量%の範囲である。
【0020】
さらなる実施形態によると、微粒子化されたUVフィルターを含む水性分散液は、C8~16アルキルポリグルコシドをさらに含む。
【0021】
用語「アルキルポリグルコシド(APG)」は、一般式(generic formula)C2+nO(C10Hを有する1種の非イオン性界面活性剤であって、nが2~22の範囲で選択される整数であり、xがグルコシド部分の平均重合度(モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-、及びポリ-グルコシド)を指す非イオン性界面活性剤を指す。これらのAPGは、家庭用及び産業用の用途に広く使用されている。それらは、一般的に、トウモロコシから誘導されたグルコース及び植物由来の脂肪族アルコールなどの再生可能な原料から誘導される。これらのアルキルポリグルコシドは、一般的に、1~1.7、好ましくは1.4~1.6など1.2~1.6の範囲のグルコシド部分の平均重合度を示す。
【0022】
本発明による全実施形態において特に好都合なものは、カプリリル(C)及びカプリル(C10)ポリグルコシドから基本的になるC8~10アルキルポリグルコシドの使用である。好ましくは、そのようなカプリリル(C)及びカプリル(C10)ポリグルコシドは、3:1~1:3の範囲、好ましくは約2:1~1:2の範囲、最も好ましくは1.5:1~1:1.5の範囲の、カプリリル(C)モノグルコシドとカプリル(C10)モノグルコシドの比(%/%、ここで、全%はHPLC-MSにより測定される面積%である)をさらに示す。さらに、そのようなC8~10アルキルポリグルコシドは、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下のC12アルキルモノグルコシド(HPLC-MSにより測定される)を含む。そのようなアルキルポリグルコシドが、より高級な(すなわちC14~16)アルキルポリグルコシドを基本的に含まないことが理解される。
【0023】
本発明による特に好都合なC8~10アルキルポリグルコシドは、トウモロコシから誘導されたグルコース並びにココナツ及びパーム核油から誘導されたC及びC10脂肪族アルコールから製造され、それは、例えば、商標Green APG 0810でシャンハイファインケミカル(Shanghai Fine Chemical)により水性分散液として販売されている。
【0024】
好ましくは、そのようなC8~16アルキルポリグルコシド又はその混合物は、水性分散液の総重量に対して2~15重量%、好ましくは5~10重量%の濃度で存在する。好ましくは、そのようなC8~16アルキルポリグルコシドはC8~10アルキルポリグルコシドである。
【0025】
本発明の全実施形態(embodimnetns)において、微粒子化されたUVフィルターは、好ましくはメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール又はトリスビフェニルトリアジンである。本発明の全実施形態において最も好ましくは、UVフィルターは、微粒子化されたメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールである。
【0026】
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(INCI)は、MBBT、2,2’-メチレン-ビス-(6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールとも称され、MBBT及びアルキルポリグルコシドを含む水性分散液として、DSMニュートリショナル・プロダクツリミテッド(DSM Nutritional Products Ltd)(パルソール(PARSOL)(登録商標)MAX)により、並びにビーエーエスエフエスイー(BASF SE)(チノソーブ(Tinosorb)(登録商標)M)により販売されている。MBBTは、UVA及びUVB光を除くブロードスペクトルUVフィルターである。
【0027】
トリスビフェニルトリアジンは、2,4,6-トリス([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジンとも称され、チノソーブ(登録商標)A2Bとしてビーエーエスエフエスイーにより販売されているUVフィルターである。
【0028】
好ましくは、本発明の全実施形態において、局所組成物中のポリシロキサン系UVフィルターは、ベンザルマロネートタイプの発色団残基を有する。
【0029】
さらにより好ましくは、本発明によるポリシロキサン系UVフィルターは、式Ia又はIbによる化合物である:
【化1】

(式中
Xは、R又はAであり;
Aは、式IIa、IIb、又はIIcから選択され:
【化2】


Rは、水素、C1~6-アルキル、又はフェニルであり;
及びRは、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、C1~6-アルキル、又はC1~6-アルコキシであり;
はC1~6-アルキルであり;
は、水素又はC1~6-アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立に、水素又はC1~6-アルキルであり;
rは0~250であり;
sは0~20であり;
r+sは少なくとも3であり;
tは0から10であり;
vは0から10であり;
v+tは少なくとも3であり;且つ
nは1~6であり;
但し、sが0である場合、少なくとも1つのXがAであることを条件とする)。
【0030】
用語「C1~6-アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec.ブチル、イソブチル、ペンチル、及びネオペンチルなどの基を指す。用語「C1~6-アルコキシ」は、対応するアルコキシ基を指す。
【0031】
本発明の全実施形態において、Rは、好ましくはメチルである。
【0032】
残基R及びRは、好ましくは、水素、メトキシ、又はエトキシ、より好ましくは水素であるか、或いは、RとRの一方が水素であり、他方が、メチル、メトキシ、又はエトキシである。
【0033】
残基Rは、好ましくは、メチル又はエチル、より好ましくはエチルである。
【0034】
好ましくは、Rは、水素又はメチルであり、R及びRは水素であり、且つnは1である。
【0035】
一般式IIa及びIIbの基Aを有するポリシロキサン化合物並びにそれらの調製は、欧州特許出願公開第A0538431号明細書に記載されている。これらのポリシロキサン化合物が最も好ましい。
【0036】
一般式IIcの基Aを有するポリシロキサン化合物及びそれらの調製は、欧州特許出願公開第A0358584号明細書に記載されている。
【0037】
式Iaによる直鎖ポリシロキサン化合物において、発色団を有する残基Aは、ポリシロキサンの末端基に結合していても(X=A)、ポリマーにわたり統計的に分布していてもよい。
【0038】
発色団を有する残基Aが統計的に分布している直鎖ポリシロキサン化合物が好ましい。前記好ましいポリシロキサン化合物は、発色団残基を有する少なくとも1つの単位を有し(s=1)、好ましくは、sは、約2~約10の値、より好ましくは約4の統計的平均を有する。ポリシロキサン化合物に存在する他のシリコーン単位のrの数は、好ましくは約5~約150、より好ましくは約60の統計的平均である。
【0039】
全シロキサン単位の20%以下、好ましくは10%未満が発色団残基を有する単位であるポリシロキサン化合物が、化粧品特性に関して好ましい。
【0040】
式IIaの発色団残基Aを有するポリシロキサン単位と、式IIbの発色団残基Aを有するものとの比は重大ではない。前記比は、約1:1~約19:1、好ましくは約2:1~約9:1、より好ましくは約4:1であり得る。
【0041】
Aが式IIa又はIIbの残基であるポリシロキサン化合物Ia又はIbは、EP-B0538431号明細書に記載の通り、以下の反応スキームに従って、対応するベンザルマロネートのシリル化により調製できる:
【化3】

(式中、R、R及びRは、先に定義された通りである)。
【0042】
4-(2-プロピニルオキシ)フェニルメチレンジエチルエステルのシリル化は、ケイ素に結合した水素原子の脂肪族不飽和性を含む基への付加の公知の手順を利用して実施できる。そのような反応は、一般に、白金族金属又はそのような金属の錯体により触媒される。利用できる触媒の例は、炭素担持白金、塩化白金酸、白金アセチルアセトナート、白金化合物と不飽和化合物、例えばオレフィン及びジビニルジシロキサンとの錯体、ロジウム及びパラジウム化合物の錯体、並びに無機担体に担持された白金化合物の錯体である。付加反応は、減圧、大気圧、又は高圧で実施できる。反応混合物中で、溶媒、例えばトルエン又はキシレンを使用できるが、溶媒の存在は必須ではない。反応を、高い反応温度、例えば約50℃~約150℃で実施することも好ましい。
【0043】
特に好ましいのは、
Xがメチルを表し、
Aが式IIa又はIIbの基を表し、
Rがメチルを表し、
及びRが、水素、メトキシ、又はエトキシを表すか、或いは、RとRの一方が水素であり、他方が、メチル、メトキシ、又はエトキシであり、
が、メチル又はエチルを表し、
が、水素又はメチルを表し、
及びRが水素を表し、
rが約5~150であり、
sが約2~約10であり、且つ
nが1の値を有する、
一般式Iaの化合物である。
【0044】
最も好ましいのは、
Xがメチルを表し、
Aが式IIa又はIIbの基を表し、
Rがメチルを表し、
及びRが水素を表し、
がエチルを表し、
が水素を表し、
及びRが水素を表し、
rが約60の統計的平均であり、
sが約4の統計的平均であり、且つ
nが1の値を有する、
一般式式Iaの直鎖ポリシロキサンである。
【0045】
本発明の全実施形態におけるこれらの最も好ましいポリシロキサン系UVフィルターは、商標パルソール(登録商標)SLXでDSMニュートリショナル・プロダクツリミテッドで市販されているポリシリコーン-15(INCI)である。
【0046】
本発明の全実施形態において、本発明による局所組成物中に存在するパンテノールの量は、好都合には、組成物の総重量に対して、0.1~10重量%の範囲、好ましくは0.5~8重量%の範囲、より好ましくは1~7重量%の範囲、最も好ましくは2~6重量%の範囲で選択される。さらなる好ましい範囲は、組成物の総重量に対して、1~6重量%又は2~6重量%のパンテノールである。
【0047】
本発明の全実施形態において、本発明による局所組成物中に存在する微粒子化されたUVフィルターの量(実際の量に基づく(based on active))、好ましくはメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール又はトリスビフェニルトリアジンの量、最も好ましくはメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの量は、好都合には、組成物の総重量に対して、0.1~9重量%の範囲、好ましくは0.5~7重量%の範囲、より好ましくは1~6重量%の範囲、最も好ましくは1~5重量%の範囲で選択される。さらなる好ましい範囲は、組成物の総重量に対して、0.5~6重量%、1~5重量%、及び1~3重量%である。
【0048】
本発明の全実施形態において、本発明による局所組成物中の、好ましくはベンザルマロネートタイプの発色団残基を有するポリシロキサン系UVフィルター、最も好ましくはポリシリコーン-15などの量は、好都合には、組成物の総重量に対して、0.1~9重量%の範囲、好ましくは0.5~7重量%の範囲、より好ましくは1~6重量%の範囲、最も好ましくは1~5重量%の範囲で選択される。さらなる好適な範囲は、1~7重量%又は2~4重量%だろう。
【0049】
本発明による特に好都合な局所組成物は、2~6重量%のパンテノール、1~3重量%のメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(実際の量に基づく)、及び2~4重量%のポイルシリコーン(poylsilicone)-15を含む(量は全て組成物の総重量に対するものである)。
【0050】
本発明の一実施形態は、ガラス又はプラスチック表面への局所組成物の移行を減少させるための、本明細書で記載及び定義される微粒子化されたUVフィルターの局所組成物中での使用の方法に関する。
【0051】
本発明の特定の実施形態において、本発明は、ガラス又はプラスチック表面への局所組成物の移行を減少させるための、本明細書で記載及び定義されるパンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターの本発明による局所組成物中での使用の方法に関する。特定の好都合な実施形態において、前記局所組成物中のパンテノールの量は、ポリシロキサン系UVフィルターの量及び/又は微粒子化されたUVフィルターの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)。
【0052】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、ガラス又はプラスチック表面への局所組成物の移行を減少させるための、2~6重量%のパンテノール、1~3重量%のメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(実際の量に基づく)、及び2~4重量%のポイルシリコーン-15の局所組成物中での使用の方法に関するが、但し、前記局所組成物中のパンテノールの量が、ポリシリコーン-15の量及び/又はメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)ということを条件とする。
【0053】
別の実施形態において、本発明は、本明細書で記載及び定義されるパンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターを使用して、本発明による局所組成物に含まれる脂肪及び油の、特にガラス又はプラスチック表面などの表面、例えばタッチスクリーンなどへの移行を減少させることに関する。特定の好都合な実施形態において、前記局所組成物中のパンテノールの量は、ポリシロキサン系UVフィルターの量及び/又は微粒子化されたUVフィルターの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)。
【0054】
さらなる特に好ましい実施形態において、本発明は、2~6重量%のパンテノール、1~3重量%のメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(実際の量に基づく)、及び2~4重量%のポイルシリコーン-15を使用して、本発明による局所組成物に含まれる脂肪及び油の、特にガラス又はプラスチック表面などの表面、例えばタッチスクリーンなどへの移行を減少させることに関するが、但し、前記局所組成物中のパンテノールの量が、ポリシリコーン-15の量及び/又はメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)ことを条件とする。
【0055】
追加の実施形態において、本発明は、特にガラス又はプラスチック表面などの表面、例えばタッチスクリーンなどへの脂肪及び/又は油の移行を減少させる方法であって、本明細書で記載及び定義されるパンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターの、そのような脂肪及び油を含む本発明による局所組成物への添加を包含する方法に関する。特定の好都合な実施形態において、前記局所組成物中のパンテノールの量は、ポリシロキサン系UVフィルターの量及び/又は微粒子化されたUVフィルターの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)。
【0056】
追加の特定の好都合な実施形態において、本発明は、特にガラス又はプラスチック表面などの表面、例えばタッチスクリーンなどへの脂肪及び/又は油の移行を減少させる方法であって、2~6重量%のパンテノール、1~3重量%のメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(実際の量に基づく)、及び2~4重量%のポイルシリコーン-15の、そのような脂肪及び油を含む局所組成物への添加を包含する方法に関するが、但し、前記局所組成物中のパンテノールの量が、ポリシリコーン-15の量及び/又はメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)ことを条件とする。
【0057】
本発明の全実施形態における好ましい局所組成物は、特にO/W、W/O、Si/W、W/Si、O/W/O、W/O/W多重又はピッカリングエマルションなど、油相及び水相を含むエマルションである。そのようなエマルション中に存在する油相(すなわち、全油及び脂肪を含む相)の量は、組成物の総重量に対して、10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲など、好ましくは少なくとも10重量%である。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明は、日焼け止め剤として使用するための、本明細書に記載の実施形態による局所組成物、本明細書に記載の実施形態による局所組成物の日焼け止め剤としての使用にそれぞれ関する。
【0059】
微粒子化されたUVフィルター、特に微粒子化されたメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール又はトリスビフェニルトリアジン及びポリシロキサン系UVフィルターの他に、さらなるUVフィルターも、本発明による局所組成物に存在し得る。これらのUVフィルターは、全て市販のUVフィルター物質であり、特に(INCI名)フェニルベンズイミダゾール(phenylbenzimidazol)スルホン酸、3-ベンジリデンカンファー、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、ホモサレート、エチルヘキシルトリアゾン、酸化亜鉛、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、ベンゾフェノン(benzophenon)-3、二酸化チタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸2ナトリウム、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどであるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明による局所組成物は、さらなるUVフィルターとして、少なくともオクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル、及びブチルメトキシジベンゾイルメタンを含む。
【0060】
本発明による局所組成物は局所適用向けであるので、それらは、生理的に許容できる媒体、すなわち、皮膚、粘膜、及びケラチン繊維などのケラチン性物質と適合性のある媒体を含む。特に、生理的に許容できる媒体は、化粧品として許容できる担体である。
【0061】
化粧品として許容できる担体という用語は、化粧用組成物に従来使用されている、全ての担体及び/又は賦形剤及び/又は希釈剤を指す。
【0062】
本発明による好ましい局所組成物は、スキンケア調合物、装飾的調合物、及び機能的調合物である。
【0063】
スキンケア調合物の例は、特に、光保護調合物、抗加齢調合物、光老化の治療のための調合物、ボディオイル、ボディローション、ボディゲル、トリートメントクリーム、皮膚保護軟膏、スキンパウダー、モイスチャライジングゲル、モイスチャライジングスプレー、顔及び/又は体用保湿剤、皮膚日焼け調合物(すなわち、ヒト皮膚の人工/サンレスタンニング及び/又は褐色化のための組成物)、例えばセルフタンニングクリーム、並びに皮膚美白調合物である。
【0064】
装飾的調合物の例は、特に、口紅、アイシャドウ、マスカラ、ドライ及びモイストメイクアップ配合物、ルージュ、及び/又はパウダーである。
【0065】
機能的調合物の例は、非限定的に、ホルモン調合物、ビタミン調合物、野菜抽出物調合物、抗加齢調合物、及び/又は抗微生物(抗菌性又は抗真菌性)調合物など、有効成分を含む化粧用又は医薬組成物である。
【0066】
特定の実施形態において、本発明による局所組成物は、SPF(サンプロテクションファクター)のあるサンプロテクションミルク、サンプロテクションローション、サンプロテクションクリーム、サンプロテクションオイル、日焼け止め、又はデイケアクリームなどの光保護調合物(サンケア製品)である。特に興味深いのは、サンプロテクションクリーム、サンプロテクションローション、サンプロテクションミルク、及びサンプロテクション調合物である。
【0067】
本発明による局所組成物は、溶媒又は脂肪性物質中の懸濁液又は分散液の形態のことがあり、或いは、エマルション若しくはマイクロエマルション(特に、水中油(O/W-)又は油中水(W/O-)タイプ、水中シリコーン(Si/W-)又はシリコーン中水(W/Si-)タイプ、PIT-エマルション、多重エマルション(例えば、油中水中油(O/W/O-)又は水中油中水(W/O/W-)タイプ)、ピッカリングエマルション、ハイドロゲル、アルコール性ゲル、リポゲル、単相若しくは多相溶液若しくはベシクル分散液の形態、又は他の通常の形態であり得て、それらは、ペンにより、マスクとして、又はスプレーとして適用できる。
【0068】
本発明による局所組成物は、好都合には、O/W乳化剤の存在下で水相に分散された油相を含む水中油型(O/W)エマルションの形態である。そのようなO/Wエマルションの調合物は当業者に周知であり、実施例に示される。
【0069】
好都合な一実施形態において、本発明によるO/W乳化剤は、リン酸エステル乳化剤である。リン酸エステル乳化剤という用語は、式(II)のリン酸エステル乳化剤を指す
【化4】

(式中、R、R、及びRは、水素、1~22個の炭素、好ましくは12~18個の炭素のアルキル;又は1~22個の炭素、好ましくは12~18個の炭素を有し、1以上、好ましくは2~25、最も好ましくは2~12モルのエチレンオキシドを有するアルコキシ化アルキルであってよく、但し、R、R、及びRの少なくとも1つが、先に定義された通りであるが、少なくとも6個のアルキル炭素を前記アルキル又はアルコキシ化アルキル基中に有するアルキル又はアルコキシ化アルキルであることを条件とする)。
【0070】
及びRが水素であり、Rが、10~18個の炭素のアルキル基、並びに10~18個の炭素及び2~12モルのエチレンオキシドのアルコキシ化脂肪族アルコールから選択されるモノエステルが好ましい。好ましいリン酸エステル乳化剤には、C8~10アルキルエチルホスフェート、C9~15アルキルホスフェート、セテアレス-2リン酸、セテアレス-5リン酸、セテス-8リン酸、セテス-10リン酸、リン酸セチル、C6~10パレス-4リン酸、C12~15パレス-2リン酸、C12~15パレス-3リン酸、DEA-セテアレス-2リン酸、セチルリン酸DEA、オレス-3リン酸DEA、セチルリン酸カリウム、デセス-4リン酸、デセス-6リン酸、及びトリラウレス-4リン酸がある。本発明による特定のリン酸エステル乳化剤は、例えば、アンフィソル(Amphisol)(登録商標)KとしてDSMニュートリショナル・プロダクツリミテッド カイザーアウグスト(Kaiseraugst)で市販のセチルリン酸カリウムである。
【0071】
本発明によるさらなる好適なO/W乳化剤は、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、ジラウリン酸PEG-4、ジオレイン酸PEG-8、オレイン酸PEG-40ソルビット、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル、PEG-20アーモンド脂肪酸グリセリル、PEG-25水添ヒマシ油、ステアリン酸グリセリル(及び)ステアリン酸PEG-100、オリーブ油脂肪酸PEG-7、オレイン酸PEG-8、ラウリン酸PEG-8、PEG-60アーモンド脂肪酸グリセリル、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-100、ラウリン酸PEG-80ソルビタン、ステアレス-2、ステアレス-12、オレス-2、セテス-2、ラウレス-4、オレス-10、オレス-10/ポリオキシル10オレイルエーテル、セテス-10、イソステアレス-20、セテアレス-20、オレス-20、ステアレス-20、ステアレス-21、セテス-20、イソセテス-20、ラウレス-23、ステアレス-100、クエン酸ステアリン酸グリセリル(glycerylstearatcitrate)、ステアリン酸グリセリル(glycerylstearate)(自己乳化型)、ステアリン酸、ステアリン酸の塩、ジステアリン酸ポリグリセリル-3-メチルグリコース(methylglycose)を包含する。さらなる好適な乳化剤は、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ポリステアリン酸スクロース、及び水和されたポリイソブテン(hydrated Polyisobuten)である。さらに、1種以上の合成ポリマーを乳化剤として使用できる。例えば、PVPエイコセンコポリマー、アクリレーツ/アクリル酸C10~30アルキルクロスポリマー、アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、PEG-22/ドデシルグリコールコポリマー、PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー、及びその混合物。
【0072】
別の特定の好適な種類のO/W乳化剤は、例えば、商標オリベム(OLIVEM)1000で販売されている(INCI名)オリーブ油脂肪酸セテアリル及びオリーブ油脂肪酸ソルビタン(化学組成物:オリーブ油脂肪酸のソルビタンエステル及びセテアリルエステル)として知られている、オリーブ油から誘導された非イオン性自己乳化系である。
【0073】
さらなる好適なものは、商標ペムレン(Pemulen)(登録商標)TR-1及びTR-2でノベオン(Noveon)により市販されているアクリレーツ/アクリル酸C10~30アルキルクロスポリマーなどの疎水化ポリアクリル酸などの市販のポリマー性乳化剤である。
【0074】
別の種類の特に好適な乳化剤は、ポリグリセリルエステル/ジエステル(すなわち、脂肪酸がエステル化によりポリグリセリンに結合しているポリマー)とも称される脂肪酸のポリグリセロールエステル又はジエステルであり、例えば、エボニック(Evonik)でイソラン(Isolan)GPS[INCI名 (ジイソステアリン酸/ポリヒドロキシステアリン酸/セバシン酸)ポリグリセリル-4(すなわち、イソステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸、及びセバシン酸の混合物とポリグリセリン-4のジエステル)]として、又はデヒムルス(Dehymuls)PGPHとしてコグニス(Cognis)(INCI ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2)で市販されているものなどである。
【0075】
やはり好適なものは、例えば、クローダ(Croda)で市販されているブリジ(Brij)72(ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル)又はブリジ721(ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテルなどのポリアルキレングリコールエーテルである。
【0076】
少なくとも1種のO/W、Si/W乳化剤はそれぞれ、組成物の総重量に対して、特に0.5~5重量%の範囲など、最も特に0.5~4重量%の範囲など、好ましくは0.5~10重量%の量で使用される。
【0077】
好適なW/O-又はW/Si-乳化剤は、ジポリヒドロキシステアリン酸(dipolyhydroxystearat)ポリグリセリル-2、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、セチルジメチコンコポリオール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 オレイン酸/イソステアリン酸のポリグリセロールエステル、ポリグリセリル-6ヘキサリシノレート(hexaricinolate)、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリギルセリル(polygylceryl)-4/ヤシ油脂肪酸PEG-8プロピレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、リシノール酸カリウム、ヤシ脂肪酸ナトリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、ヒマシ油脂肪酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、及びその混合物である。さらなる好適なW/Si-乳化剤は、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又はPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又はセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン及び/又はPEG-12ジメチコンクロスポリマー及び/又はPEG/PPG-18/18ジメチコンである。少なくとも1種のW/O乳化剤は、組成物の総重量に対して、好ましくは約0.001~10重量%の量で、より好ましくは0.2~7重量%の量で使用される。
【0078】
本発明による局所組成物は、さらに好都合には、例えば、モノ-及びジグリセリド並びに/又は脂肪族アルコールの群から選択されるなどの、少なくとも1種の共界面活性剤を含む。共界面活性剤は、一般に、組成物の総重量に対して、特に0.5~7重量%の範囲、最も特に1~5重量%の範囲など、0.1~10重量%の範囲で選択される量で使用される。特定の好適な共界面活性剤は、アルキルアルコール、例えば、セチルアルコール(Lorol C16、ラネッテ(Lanette)16)、セテアリルアルコール(ラネッテO)、ステアリルアルコール(ラネッテ18)、ベヘニルアルコール(ラネッテ22)など、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル(Estol 3650)、水添ココグリセリル(リポシア(Lipocire)Na10)、並びにその混合物のリストから選択される。
【0079】
本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物は、例えば、O/Wエマルション用の全配合物形態で、例えばセラム、ミルク、又はクリームの形態で提供でき、それらは、通常の方法に従って調製される。本発明の主題である組成物は、局所適用向けであり、特に、例えばヒトの皮膚を紫外線の有害作用から保護することが意図される(抗しわ、抗加齢、保湿、抗光保護(anti-sun protection)など)皮膚科用又は化粧用組成物を構成し得る。
【0080】
本発明の好都合な実施形態によると、組成物は化粧用組成物を構成し、皮膚への局所適用向けである。
【0081】
最後に、本発明の主題は、特に皮膚などのケラチン性物質の美容的処置であって、上記で定義された組成物が特に皮膚などの前記ケラチン性物質に適用される美容的処置である。方法は、特に日焼け及び/又は光老化などの紫外線の有害作用から皮膚を保護するのに特に好適である。
【0082】
本発明によると、本発明による組成物は、皮膚美白;日焼け防止;色素沈着の治療;ざ瘡、しわ(wrinkles)、しわ(lines)、萎縮及び/若しくは炎症を予防若しくは減少させること;キレート化剤及び/若しくは封鎖剤;抗セルライト及び痩身(例えば、フィタン酸)、引き締め、保湿及び活性化、セルフタンニング、沈静化のための成分、並びに弾力性及び皮膚バリアを改善する薬剤、並びに/又はさらなるUVフィルター物質並びに従来局所組成物に使用されている担体及び/若しくは賦形剤若しくは希釈剤などのさらなる成分を含み得る。他に何も述べられていない場合、下記に言及される賦形剤、添加剤、希釈剤などは本発明による局所組成物に好適である。化粧用及び皮膚科用補助剤及び添加剤の必要な量は、所望の製品に基づいて、当業者により容易に決定され得る。追加の成分は、適切であると思われる通り、油相にも、水相にも、別々にも加えることができる。添加の様式は、当業者により容易に適応され得る。
【0083】
本明細書において有用な化粧品として有効な成分は、いくつかの場合に、2種以上の利益を与えることも、2種以上の作用様式で作用することもある。
【0084】
本発明の局所化粧用組成物は、通常の化粧品用補助剤及び添加剤、例えば、防腐剤/酸化防止剤、脂肪性物質/油、水、有機溶媒、シリコーン、増粘剤、柔軟剤、乳化剤、日焼け止め剤、消泡剤、保湿剤、香料などの美的成分、界面活性剤、充填剤、金属封鎖剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性、若しくは両性ポリマー若しくはその混合物、噴射剤、酸性化若しくは塩基性化剤、染料、着色料/着色剤、研磨剤、吸収剤、精油、皮膚センセート(sensates)、収れん剤、消泡剤、顔料若しくはナノ顔料、例えば、紫外線を物理的に遮断することにより光保護効果を与えるのに適したもの、又は通常化粧用組成物に製剤される他のあらゆる成分も含み得る。本発明の組成物における使用に好適な、スキンケア産業で通常使用されるそのような化粧品用成分は、例えば、非限定的に、online INFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)によりアクセス可能な、米国パーソナルケア製品評議会(Personal Care Product Council)(http://www.personalcarecouncil.org/)による、the International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbookに記載されている。
【0085】
化粧品用及び皮膚科用の補助剤及び添加剤の必要な量は、所望の製品に基づいて、当業者により容易に選択され得るが、非限定的に実施例に示されるだろう。
【0086】
当然ながら、当業者は、上述の任意選択の追加の化合物若しくは複数の化合物及び/又はそれらの量を、本発明による組合せと本質的に関連する好都合な性質が、想定される添加又は複数の添加により、悪影響を受けないか、又は実質的に悪影響を受けないように注意して選択するだろう。
【0087】
本発明による局所組成物は、一般的に、3~10の範囲のpH、好ましくは4~8の範囲のpH、最も好ましくは4~7の範囲のpHを有する。pHは、例えばクエン酸などの好適な酸又はNaOHなどの塩基により、当技術分野における標準的な方法に従って、望まれる通りに容易に調整できる。
【0088】
本発明による局所組成物は、皮膚を鎮静させ軟化させる1種以上の軟化剤をさらに含み得る。例としては、軟化剤は、炭酸ジカプリリル又は安息香酸C12~15アルキルであり得る。さらなる軟化剤は、シリコーン(ジメチコン、シクロメチコン)、植物油(グレープシード、ゴマ種子、ホホバなど)、バター(カカオバター、シアバター)、アルコール(ステアリルアルコール、セチルアルコール)、及びペトロラタム誘導体(ワセリン、鉱油)である。
【0089】
本発明による化粧用組成物は、好都合には、防腐剤又は防腐剤ブースターを含む。好ましくは、追加の防腐剤、防腐剤ブースターはそれぞれ、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン、ヒドロキシアセトフェノン、カプリル酸グリセリル、カプリリルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、プロパンジオール、プロピレングリコール、並びにその混合物からなる群から選択される。存在する場合、防腐剤、防腐剤ブースターはそれぞれ、組成物の総重量に対して、好ましくは0.01~2重量%の量、より好ましくは0.05~1.5重量%の量、最も好ましくは0.1~1.0重量%の量で使用される。本発明による化粧用組成物が、例えばパラベン及び/又はメチルイソチアゾリジンなどのさらなる/他の防腐剤を全く含まないことが特に好ましい。
【0090】
以下の実施例は、本発明の組成物及び効果をさらに説明するために提供される。これらの実施例は例示のためのみのものであり、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0091】
[実験パート]
表1に概説する配合物(O/Wエマルション)を、当技術分野における標準的な方法に従って調製した。
【0092】
次いで、耐移行性(transfer resistance)を、以下に概説するスポンジ試験により試験した:
-スポンジクロスを、7.5cm×2.5cmの部分に切る
-スポンジ試料の風袋を量る
-400mgのクリームを適用し、7.5×2.5cmのスポンジ表面全体にわたり均質に分布させる
-試料が適用されたスポンジを秤量する
-顕微鏡スライド(ガラスプレート)の風袋を量る
-顕微鏡スライド(ガラスプレート)をスポンジの上に載せて500gの圧力を10秒間かける
-ガラスプレートに移行したクリームの量を量る
-各配合物に関して試験を10回繰り返して、各配合物の平均値を受け取る
【0093】
結果を表1に概説する。
【0094】
【表1】
【0095】
表2から読み取れる通り、ポリシロキサン系UVフィルター(ポリシリコーン-15)及びメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを含む組成物への比較的多量のD-パンテノールの添加は、ガラス表面に移行したクリームの量を著しく減少させた。
さらなる実施形態は以下のとおりである。
[実施形態1]
パンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターを含む局所組成物であって、前記局所組成物中のパンテノールの量が、前記ポリシロキサン系UVフィルターの量及び/又は前記微粒子化されたUVフィルターの量と比べて少なくとも等しい(又はそれより多い)ことを特徴とする局所組成物。
[実施形態2]
前記微粒子化されたUVフィルターが、光散乱により測定される200nm未満の平均粒径分布Dv50を有する、実施形態1に記載の局所組成物。
[実施形態3]
前記微粒子化されたUVフィルターが微粒子化された不溶性有機UVフィルターである、実施形態1又は2に記載の局所組成物。
[実施形態4]
前記微粒子化されたUVフィルターが、微粒子化されたUVフィルターの粒子を含む水性分散液として使用される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態5]
前記微粒子化されたUVフィルターを含む前記水性分散液が、C 8~16 アルキルポリグルコシドをさらに含む、実施形態4に記載の局所組成物。
[実施形態6]
前記微粒子化されたUVフィルターが、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール又はトリスビフェニルトリアジンである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態7]
前記ポリシロキサン系UVフィルターが、式Ia又はIbによる化合物である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の局所組成物:
【化5】

(式中、
Xは、R又はAであり;
Aは、式IIa、IIb、又はIIcから選択され:
【化6】


Rは、水素、C 1~6 -アルキル、又はフェニルであり;
及びR は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、C 1~6 -アルキル、又はC 1~6 -アルコキシであり;
はC 1~6 -アルキルであり;
は、水素又はC 1~6 -アルキルであり;
及びR は、それぞれ独立に、水素又はC 1~6 -アルキルであり;
rは0~250であり;
sは0~20であり;
r+sは少なくとも3であり;
tは0~10であり;
vは0~10であり;
v+tは少なくとも3であり;且つ
nは1~6であり;
但し、sが0である場合、少なくとも1つのXがAであることを条件とする)。
[実施形態8]
前記ポリシロキサン系UVフィルターがポリシリコーン-15である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態9]
前記微粒子化されたUVフィルター(実際の量に基づく)が、前記組成物の総重量に対して、0.1~9重量%の範囲、好ましくは0.5~7重量%の範囲、より好ましくは1~6重量%の範囲、最も好ましくは1~5重量%の範囲で選択される量で、前記局所組成物中に存在する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態10]
パンテノールが、前記組成物の総重量に対して、0.1~10重量%の範囲、好ましくは0.5~8重量%の範囲、より好ましくは1~7重量%の範囲、最も好ましくは2~6重量%の範囲で選択される量で、前記局所組成物中に存在する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態11]
前記ポリシロキサン系UVフィルターが、前記組成物の総重量に対して、0.1~9重量%の範囲、好ましくは0.5~7重量%の範囲、より好ましくは1~6重量%の範囲、最も好ましくは1~5重量%の範囲で選択される量で、前記局所組成物中に存在する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態12]
前記組成物が、O/W乳化剤の存在下で水相に分散された油相を含む水中油型(O/W)エマルションの形態である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態13]
前記局所組成物が、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン、及びサリチル酸エチルヘキシルをさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の局所組成物。
[実施形態14]
ガラス又はプラスチック表面への局所組成物の移行を減少させるための、パンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターの前記局所組成物中での使用。
[実施形態15]
特にガラス又はプラスチック表面などの表面への脂肪及び/又は油の移行を減少させる方法であって、パンテノール、微粒子化されたUVフィルター、及びポリシロキサン系UVフィルターの、そのような脂肪及び油を含む局所組成物への添加を包含する方法。