(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20230511BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2019059601
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018160778
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018241777
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】一岡 祐介
(72)【発明者】
【氏名】坂内 宣
(72)【発明者】
【氏名】杉之原 貴洋
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187923(JP,A)
【文献】特開2018-093575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 5/22
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸を中心として、軸方向に延びるシャフトを有する回転部と、
前記回転部の内側に配置され、ステータを有する静止部と、
前記シャフトを支持する軸受と、
を有し、
前記回転部は、
磁性体である筒状のロータヨークと、
前記ロータヨークの内周面に固定され、前記ステータと径方向に対向するマグネットと、
を有し、
前記静止部は、
前記ステータの軸方向下方に配置され、径方向に延びるブラケットと、
前記ステータの径方向内側に配置され、軸方向に延びる軸受ハウジングと、
前記ステータと前記ブラケットとの軸方向間に配置される基板と、
を有し、
前記ステータは、前記基板と電気的に接続される引出線を有する複数のコイルを有し、
前記軸受ハウジングは、前記引出線と径方向に対向し、前記軸受ハウジングの外周部に沿って配置される絶縁部材を有
し、
前記絶縁部材は熱収縮チューブである、無人飛行機用モータ。
【請求項2】
上下に延びる中心軸を中心として、軸方向に延びるシャフトを有する回転部と、
前記回転部の内側に配置され、ステータを有する静止部と、
前記シャフトを支持する軸受と、
を有し、
前記回転部は、
磁性体である筒状のロータヨークと、
前記ロータヨークの内周面に固定され、前記ステータと径方向に対向するマグネットと、
を有し、
前記静止部は、
前記ステータの軸方向下方に配置され、径方向に延びるブラケットと、
前記ステータの径方向内側に配置され、軸方向に延びる軸受ハウジングと、
前記ステータと前記ブラケットとの軸方向間に配置される基板と、
を有し、
前記ステータは、前記基板と電気的に接続される引出線を有する複数のコイルを有し、
前記軸受ハウジングは、前記引出線と径方向に対向し、前記軸受ハウジングの外周部に沿って配置される絶縁部材を有
し、
前記ブラケットは、軸方向に貫通する基板挿通孔を有し、
前記基板の外部接続部は、前記基板挿通孔を通って、径方向外方へ延びる、無人飛行機用モータ。
【請求項3】
前記基板挿通孔は、隣り合う前記ブラケット取付部の各々と中心軸とを結ぶなす角の間に配置される、請求項
2に記載の無人飛行機用モータ。
【請求項4】
上下に延びる中心軸を中心として、軸方向に延びるシャフトを有する回転部と、
前記回転部の内側に配置され、ステータを有する静止部と、
前記シャフトを支持する軸受と、
を有し、
前記回転部は、
磁性体である筒状のロータヨークと、
前記ロータヨークの内周面に固定され、前記ステータと径方向に対向するマグネットと、
を有し、
前記静止部は、
前記ステータの軸方向下方に配置され、径方向に延びるブラケットと、
前記ステータの径方向内側に配置され、軸方向に延びる軸受ハウジングと、
前記ステータと前記ブラケットとの軸方向間に配置される基板と、
を有し、
前記ステータは、前記基板と電気的に接続される引出線を有する複数のコイルを有し、
前記軸受ハウジングは、前記引出線と径方向に対向し、前記軸受ハウジングの外周部に沿って配置される絶縁部材を有
し、
前記基板は、前記引出線が電気的に接続される半田部を有し、
前記ブラケットは、軸方向に貫通するブラケット取付部を有し、
前記半田部の少なくとも一部は、隣り合う前記ブラケット取付部の周方向間に配置され、
前記ブラケットは、軸方向に貫通する前記ブラケット取付部を少なくとも2個以上有し、
前記基板は、前記基板の外縁から径方向内方に窪む基板凹部を有し、前記ブラケット取付部と前記基板凹部とは軸方向に重なる、無人飛行機用モータ。
【請求項5】
前記絶縁部材の少なくとも一部は、前記基板の径方向内側の上面と接触する、請求項1
から請求項4のいずれか1項に記載の無人飛行機用モータ。
【請求項6】
前記絶縁部材の少なくとも一部は、前記ステータの径方向内側の下面と接触する、請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載の無人飛行機用モータ。
【請求項7】
前記基板は、前記引出線が電気的に接続される半田部を有し、
前記ブラケットは、軸方向に貫通するブラケット取付部を有し、
前記半田部の少なくとも一部は、隣り合う前記ブラケット取付部の周方向間に配置される、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の無人飛行機用モータ。
【請求項8】
前記半田部の少なくとも一部は、前記ステータの外周端よりも径方向内側に配置される、請求項
7に記載の無人飛行機用モータ。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の無人飛行機用モータを複数有する、無人飛行機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アウターロータ型のモータが知られている。アウターロータ型のモータは、マグネットを有する回転部と、ステータコアを有する静止部と、を有する。マグネットは、ステータコアの径方向外側に配置される。例えば、特許文献1のモータにおいて、ロータヨークはステータの周囲を取り囲み、軸受装置により回動可能に支承されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部環境下においてモータを使用する場合、砂に含まれた砂鉄や塵埃が機器内に侵入する恐れがある。特許文献1では、ロータを覆うカバーを設けることで、砂鉄がマグネットに吸着されたり、隙間に塵埃が侵入して動作不良を招くといった事態を阻止している。しかしながら、カバーを設けることでモータは大型化し、重量が増える。
【0005】
また、軸受装置の一部であるハウジングが導体である場合、コイルの引出線がハウジングに接触し、ショートする可能性がある。代替技術として、引出線と基板との接続にからげピンを用いることで、引出線とハウジングの接触を抑制することができる。しかしながら、からげピンを用いることで、モータは大型化し、重量が増える。
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、モータを大型化せずに、砂鉄や塵埃が機器内に侵入することを防止することが可能なモータを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、モータを大型化せず、容易な組立方法で、コイルの引出線がハウジングに接触することを防止することが可能なモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的なモータは、回転部と、静止部と、軸受と、を有する。回転部は、上下に延びる中心軸を中心として、軸方向に延びるシャフトを有する。静止部は、回転部の内側に配置され、ステータを有する。軸受は、シャフトを支持する。回転部は、ロータヨークと、マグネットと、を有する。ロータヨークは、磁性体であり、筒状である。マグネットは、ロータヨークの内周面に固定され、ステータと径方向に対向する。ロータヨークは、壁部と、先端部と、を有する。壁部は、ロータヨークの内周面から径方向内側に延び、マグネットと軸方向に対向する。先端部は、壁部よりも軸方向下方に延びる。
【0009】
本発明の例示的なモータは、回転部と、静止部と、軸受と、を有する。回転部は、上下に延びる中心軸を中心として、軸方向に延びるシャフトを有する。静止部は、回転部の内側に配置され、ステータを有する。軸受は、シャフトを支持する。回転部は、ロータヨークと、マグネットと、を有する。筒状のロータヨークは、磁性体である。マグネットは、ロータヨークの内周面に固定され、ステータと径方向に対向する。静止部は、ブラケットと、軸受ハウジングと、基板と、を有する。ブラケットは、ステータの軸方向下方に配置され、径方向に延びる。軸受ハウジングは、ステータの径方向内側に配置され、軸方向に延びる。基板は、ステータとブラケットとの軸方向間に配置される。ステータは、基板と電気的に接続される引出線を有する複数のコイルを有する。軸受ハウジングは、引出線と径方向に対向し、軸受ハウジングの外周部に沿って配置される絶縁部材を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の例示的なモータによれば、モータを大型化せずに、砂鉄や塵埃が機器内に侵入することを防止することが可能である。
【0011】
本発明の例示的なモータによれば、モータを大型化せず、容易な組立方法で、コイルの引出線が軸受ハウジングに接触することを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態におけるモータの縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態におけるモータの縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第4実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第5実施形態における基板とブラケットを示す平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第5実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第6実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の無人飛行機本体の外観を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本書では、モータの中心軸が延びる方向を単に「軸方向」と呼び、モータの中心軸を中心として中心軸と直交する方向を単に「径方向」と呼び、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を単に「周方向」と呼ぶ。また、本書では、説明の便宜上、軸方向を上下方向とし、
図1における上下方向をモータの上下方向として各部の形状及び位置関係を説明する。なお、この上下方向の定義がモータの使用時の向き及び位置関係を限定するものではない。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態におけるモータ1の縦断面図である。モータ1はアウターロータ型のモータであり、例えば、
図10に示す小型の無人飛行機に搭載されて回転翼を回転させる。なお、モータ1は、無人飛行機以外の用途に使用されてもよい。例えば、モータ1は、自動車や鉄道等の輸送機械、OA機器、医療機器、工具、産業用の大型設備等に搭載されて種々の駆動力を発生させるものであってもよい。
【0015】
モータ1は、回転部2と、静止部3と、軸受4と、を有する。静止部3は、回転部2の内側に配置される。回転部2は、上下に延びる中心軸Cを中心として回転し、軸方向に延びるシャフト5を有する。軸受4は、シャフト5を支持する。軸受4は、軸方向上下一対で配置される。本実施形態において、軸受4は、ボールベアリングで構成されるが、スリーブ軸受などによって構成されても良い。
【0016】
回転部2は、シャフト5と、ロータヨーク6と、蓋部7と、マグネット8と、を有する。ロータヨーク6は、磁性材料であり、軸方向に延びる筒状体である。ロータヨーク6の詳細な構成は後述する。
【0017】
マグネット8は、ロータヨーク6の内周面61に固定され、ステータ9と径方向に対向する。すなわち、マグネット8は、ステータ9の径方向外側に配置される。マグネット8は、例えば接着剤により内周面61に固定される。本実施形態において、マグネット8は、複数の板状のマグネット8により形成される。複数のマグネット8はN極の磁極面とS極の磁極面とが交互に並ぶ。複数のマグネット8は、周方向に等間隔に配列される。なお、複数のマグネット8に替えて、単一の環状のマグネットを用いてもよい。この場合、マグネットの内周面にN極とS極とが周方向に交互に着磁されていればよい。
【0018】
蓋部7は、ロータヨーク6の上端に接続され、ロータヨーク6の上端を覆う。蓋部7は、径方向に延びる天面部71と、天面部71の径方向外側端部から下方に向かって延びる複数のリブ72と、天面部71の中央に貫通する貫通孔73と、を有する。マグネット8は、隣り合うリブ72の間に配置される。本実施形態において、シャフト5の上部は、貫通孔73に嵌められて固定される。例えば、無人飛行機の回転翼は、蓋部7の軸方向上方に延びる、シャフト5の取付部51に固定される。
【0019】
静止部3は、ステータ9と、ブラケット10と、軸受ハウジング11と、基板12と、を有する。モータ1は、ブラケット10を介して無人飛行機のシャーシ等に固定される。
【0020】
ステータ9は、マグネット8の径方向内側に配置される。ステータ9は、軸受ハウジング11の外周部に固定される。ステータ9は、ステータコア91及び複数のコイル92を有する。ステータコア91は電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなり、コアバック911と複数のティース912とを有する。
【0021】
コアバック911は軸方向に延びた環状に形成される。複数のティース912はコアバック911の外周面からマグネット8に向かって径方向の外側に放射状に延びる。これにより、複数のティース912が周方向に配置される。コイル92は各ティース912の周囲にそれぞれ導線を巻き回して形成される。
【0022】
ブラケット10は、ステータ9の軸方向下方に配置され、径方向に延びる。ブラケット10は、中央部101と、縁部102と、を有する。中央部101は、ステータ9と軸方向に対向する。縁部102は、中央部101の径方向外側に配置される。中央部101の上端は、縁部102の上端よりも軸方向上方に位置する。すなわち、ブラケット10は、径方向外側に向かって段差が形成される。
【0023】
軸受ハウジング11は、ステータ9の径方向内側に配置される。軸受ハウジング11は、軸方向に延びる筒状である。軸受4は、軸受ハウジング11の内側に保持される。さらに、シャフト5は、軸受4によって支持される。本実施形態において、ブラケット10と軸受ハウジング11とは一体に形成される。なお、ブラケット10と軸受ハウジング11とは、別体により形成されてもよい。
【0024】
基板12は、ステータ9の軸方向下方に配置される。つまり、基板12は、ステータ9とブラケット10との軸方向間に配置される。基板12には、コイル92の引出線13が電気的に接続される。基板12には、コイル92に駆動電流を供給するための電子回路(図示略)が実装される。コイル92に駆動電流が供給されると、ティース912に磁束が生じる。そして、ティース912とマグネット8との間の磁束の作用により周方向のトルクが発生する。これにより、回転部2が静止部3に対して中心軸Cを中心として回転し、モータ1の回転動作が開始される。
【0025】
コイル92は、基板12と電気的に接続される引出線13を有する。引出線13は、軸受ハウジング11の一部と径方向に対向する。引出線13は、例えば、銅線である。
【0026】
ブラケット10は、ブラケット取付部104と、基板挿通孔105を有する。ブラケット10は、ブラケット取付部104を少なくとも2個以上有する。ブラケット取付部104は、ステータ9の少なくとも一部と軸方向に対向し、ブラケット10において軸方向に貫通する。ブラケット取付部104は、例えば、ネジを挿入することができる穴である。モータ1は、無人飛行機本体へブラケット取付部104でネジ留めすることで固定される。基板挿通孔105は、ブラケット10の径方向外側において、軸方向に貫通する。基板挿通孔105は、基板12の一部が通る孔である。
【0027】
軸受ハウジング11の一部は、引出線13と径方向に対向する。軸受ハウジング11は、導体である。たとえば、軸受ハウジング11は、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属材料である。また、軸受ハウジング11は、絶縁部材14を有する。絶縁部材14は、軸受ハウジング11の外周部に沿って配置される。例えば、絶縁部材14は、軸受ハウジング11と引出線13との径方向の間に配置される。絶縁部材14は、軸受ハウジング11と径方向に接触してもよいし、接触しなくてもよい。
【0028】
基板12は、引出線13が電気的に接続される半田部121を有する。半田部121の少なくとも一部はステータ9と軸方向に対向し、基板12の径方向外側に配置される。半田部121は、コイル92から引き出された引出線13と基板12とを電気的に接続する。基板12は、例えば、フレキシブル基板が使用される。なお、基板12は、プリント基板でもよい。
【0029】
基板12は、ブラケット10より径方向外側に延びる外部接続部124を有する。外部接続部124は、基板12と同一部材である。外部接続部124の径方向外端は、例えば、コネクタなどが取り付けられる。なお、外部接続部124は、リード線であってもよい。リード線は、基板12に接続され、モータ1の外部へと引き出される。
【0030】
コイル92から引出線13を引き出し、基板12に半田付けする際に引出線13と軸受ハウジング11とが接触する可能性がある。また、引出線13が断線しないように、引出線13のたわみを大きく設けて半田付けした場合も軸受ハウジング11と引出線13とが接触する可能性がある。本実施形態において、軸受ハウジング11が導体である場合、軸受ハウジング11と引出線13とが接触した場合、ショートする可能性がある。
【0031】
図1に示す本実施形態のモータ1によれば、軸受ハウジング11は、引出線13と径方向に対向し、軸受ハウジング11の外周部に沿って絶縁部材14が配置される。軸受ハウジング11に絶縁部材14を配置することで、引出線13と軸受ハウジング11とが直接接触することがなく、ショートすることを抑制できる。絶縁部材14は、筒状である方が好ましい。絶縁部材14が筒状であると、軸受ハウジング11の全周を覆うことができる。これにより、引出線13と軸受ハウジング11とが如何なる場所で接触しても、ショートすることを抑制できる。絶縁部材14は、軸受ハウジング11と接触してもよく、接触していなくてもよい。
【0032】
本実施形態において、絶縁部材14は熱収縮チューブである。熱収縮チューブは、軸受ハウジング11に挿入された後、熱を加えることにより軸受ハウジング11に圧着される。つまり、絶縁部材14は軸受ハウジング11に接触する。絶縁部材14が軸受ハウジング11に接触することで、軸受ハウジング11へ絶縁部材14が固定され、絶縁部材14が動くことを抑制できる。また、からげピンを用いて基板との接続を行うよりも、熱収縮チューブを用いてコイル92の引出線13を直接基板12に接続する方が、モータ1を軽量化することができる。熱収縮チューブは、熱により収縮することで軸受ハウジング11に固定される。つまり、熱収縮チューブは軸受ハウジング11を囲む形状であればよく、軸受ハウジング11に対して熱収縮チューブとの向きなど揃える必要がない。よって、軸受ハウジング11と熱収縮チューブとの向きを合わせるための位置決め部などを軸受ハウジング11に設ける必要はなく、容易に組み立てができる。
【0033】
本実施形態において、基板12の外部接続部124は、基板挿通孔105を通って、径方向外方へ延びる。基板12の外部接続部124は、基板挿通孔105に沿って、軸方向下方に折り曲げられ、さらに折曲げられた部分より径方向外側が軸方向上方に折り曲げられる。つまり、外部接続部124は、径方向において基板挿通孔105に径方向に挟まれる。かつ、外部接続部124が2回折り曲げられるため、ブラケット10に対して軸方向および径方向に固定され、基板12はブラケット10に強固に固定することができる。
【0034】
本実施形態において、絶縁部材14の少なくとも一部は、基板12の径方向内側の上面と接触する。基板12の外部接続部124は、基板挿通孔105を通って、径方向外方へ延びる。つまり、基板12の外部接続部124は、軸方向に貫通する基板挿通孔105を通るため、軸方向下方に向かって折り曲げられる。よって、基板12の折り曲げられた部分よりも径方向内側の部分は、軸方向上方に浮く可能性がある。そこで、絶縁部材14の少なくとも一部が基板12の径方向内側の上面と接触することで、基板12が軸方向上方に浮くことを抑制することができる。
【0035】
基板12は基板挿入孔105を軸方向下方に通り、次いで径方向外側に引き出される。その際、基板挿入孔105は、基板12を軸方向および径方向に挟み固定する。つまり、基板12は、基板挿通孔105と絶縁部材14とで固定されることで、ブラケット10からの浮き上がりを抑制できる。
【0036】
本実施形態において、絶縁部材14の少なくとも一部は、前記ステータ9の径方向内側の下面と接触する。つまり、絶縁部材14の上端とステータ9の径方向内側の下面とが接触し、かつ絶縁部材14の下端と基板12の上面とが接触する。これにより、基板12の軸方向上方への浮きをさらに抑制することができる。
【0037】
基板12には、フレキシブル基板を使用する方が好ましい。基板12をフレキシブル基板にすることで、基板12が軸方向に薄く、柔らかい素材となる。これにより、絶縁部材14と基板12とが軸方向に接触する際に、弱い力で接触しても基板12の浮きを抑制することができる。また、基板12が柔らかい素材のため、ネジを貫通させる孔などを容易に開けることができる。また、モータ1を小型化するためにも軸方向に薄く軽いフレキシブル基板の方が好ましい。
【0038】
ステータ9は、軸受ハウジング11に固定される。つまり、ステータ9の内面と軸受ハウジング11の外面とは、圧入または接着にて固定される。したがって、ステータ9と軸受ハウジング11との接合によって、ステータ9の軸方向の動きが抑制されるために、絶縁部材14の軸方向の動きも抑制される。結果、ステータ9、絶縁部材14、および基板12が軸方向に接触していることで、基板12の浮き上がりを抑制できる。
【0039】
図2は、本発明の第1実施形態におけるモータ1の一部を拡大して示す部分断面図である。ロータヨーク6は、壁部62と、先端部63と、を有する。壁部62は、ロータヨーク6の内周面61から径方向内側に延び、マグネット8と軸方向に対向する。先端部63は、壁部62よりも軸方向下方に延びる。
【0040】
ロータヨーク6は磁性材料であるため、マグネット8からロータヨーク6に向かって磁束が漏れる。ロータヨーク6は、漏れ出た磁束により磁化する。モータ1を外部環境下で使用する場合、砂に含まれた砂鉄や塵埃が、外部に露出するロータヨーク6の外周面に付着し、モータ1の内部に侵入する場合がある。
【0041】
本実施形態のモータ1によれば、ロータヨーク6に漏れ出た磁束は、壁部62を通じて径方向内側に向かう。つまり、ロータヨーク6の先端部63を通じて下端まで漏れ出る磁束を低減できる。ロータヨーク6の径方向内側に配置された壁部62を磁化させることで、トルクの発生に寄与する磁束が増える。そのため、モータ1の効率が向上する。さらに、先端部63に漏れ出る磁束を低減でき、モータ1外部の砂鉄等が先端部63に付着してモータ1内部に侵入することを抑制できる。
【0042】
本実施形態において、ロータヨーク6の径方向の厚みR1は、壁部62の径方向の長さR2よりも大きい。ロータヨーク6の径方向の厚みR1を大きくすることで、漏れ出る磁束を低減することができる。そのため、ロータヨーク6への砂鉄等の吸着がより抑制される。
【0043】
本実施形態において、壁部62は、接着剤または第1間隙Fを介して、マグネット8と軸方向に対向する。マグネット8をロータヨーク6に固定する際、マグネット8の位置が上下に移動し、マグネット8の径方向外側の側面が壁部62の径方向内側の側面に接触し、マグネット8が径方向内側に浮いて配置される恐れがある。そのような場合、例えば、作業者が浮いたマグネット8を径方向外側に押し込む必要があり、作業性が悪い。本実施形態のモータ1によれば、壁部62とマグネット8との間に第1間隙Fが配置されるため、マグネ
ット8の位置が上下に移動しても、マグネット8は第1間隙F内に配置される。これにより、マグネット8が径方向内側に浮くことを抑制でき、作業性が容易である。
【0044】
本実施形態において、先端部63の軸方向の長さL1は、壁部62の軸方向の長さL2よりも大きい。これにより、先端部63とマグネット8の距離を大きくすることができ、漏れ出た磁束により先端部63が磁化しにくい。そのため、ロータヨーク6への砂鉄等の吸着がより抑制される。
【0045】
本実施形態において、壁部62は、ロータヨーク6の内周面61に沿って環状に配置される。つまり、壁部62の設けられた部分において、ロータヨーク6の径方向の厚みは大きくなる。これにより、ロータヨーク6の剛性が高まる。そのため、モータ1の駆動時におけるティース912とマグネット8との間の磁束の作用に起因する振動と騒音を低減することができる。しかしながら、本発明はこれに限られない。壁部62は、周方向において間隔をあけて複数個所に設けられてもよい。
【0046】
本実施形態において、壁部62の径方向内端は、マグネット8の径方向内端よりも径方向外側に位置する。マグネット8を、筒状のロータヨーク6に固定する際、ロータヨーク6の軸方向の端部からマグネット8が挿入される。例えば、蓋部7と反対側のロータヨーク6の下方からマグネット8を挿入する場合、マグネット8は壁部62の軸方向上方に挿入される。本実施形態のモータ1によれば、壁部62の径方向内端は、マグネット8の径方向内端よりも径方向外側に位置するため、マグネット8を壁部62の径方向外側に通しながら軸方向上方に移動させて、容易に挿入することができる。
【0047】
本実施形態において、先端部63はブラケット10と軸方向に第2間隙Gを介して対向する。これにより、第2間隙Gを通じてモータ1の外方から空気が流入する。そのため、ステータ9で発生した熱を冷却することができる。
【0048】
本実施形態において、ブラケット10の縁部102は、中央部101の径方向外側において、先端部63と軸方向に対向する。中央部101の上端が縁部102の上端よりも軸方向上方に位置するため、先端部63は、中央部101の径方向外側の側面と径方向に対向する。すなわち、第2間隙Gは、径方向内端において、中央部101の径方向外側の側面と、先端部63の径方向内側の側面との軸方向に延びる間隙へと通じる。そのため、ロータヨーク6の下方の第2間隙Gから、水や埃、砂鉄等がモータ1内部に侵入しにくい。
【0049】
本実施形態において、基板12は、中央部101の上面に配置される。さらに、基板12は、先端部63と径方向に対向する。これにより、基板12は、第2間隙Gから離れた位置に配置される。そのため、基板12への水や埃、砂鉄等の付着が抑制される。
【0050】
図3は、本発明の第2実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。ロータヨーク6aは、壁部62aと、先端部63aと、を有する。ステータ9aは、ステータコア91a及び複数のコイル92aを有する。ステータコア91aは、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ブラケット10aは、ステータ9aの軸方向下方に配置され、径方向に延びる 。基板12aは、ステータ9aの軸方向下方に配置される。
【0051】
図3に示す第2実施形態では、壁部62aの径方向内端は、マグネット8aの径方向内端と同じ位置に位置する。これにより、ロータヨーク6aの径方向内側に配置された壁部62aの磁束をより増やすことができる。また、壁部62aがステータコア91aに近付くため、トルクの発生に寄与する磁束が増え、モータ1aの効率がさらに向上する。そして、先端部63aに漏れ出る磁束を低減でき、モータ1a外部の砂鉄等が先端部63aに付着してモータ1a内部に侵入することを抑制できる。
【0052】
図4は、本発明の第3実施形態におけるモータの断面図である。
図5は、本発明の第3実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。ロータヨーク6cは、壁部62cと、先端部63cを有する。先端部63cは、縁部102cと軸方向に対向する先端面64cを有する。先端面64cは、中心軸Cと直交する面に対して傾斜する。ブラケット10cは、中央部101cと、縁部102cと、を有する。縁部102cは、先端部63cと軸方向に対向する縁面103cを有する。縁面103cは、中心軸Cと直交する面に対して傾斜する。
【0053】
図5に示す第3実施形態では、先端面64cおよび縁面103cは互いに平行に設けられる。第2間隙Gは、径方向内端において、中央部101cの径方向外側の側面と、先端部63cの径方向内側の側面との軸方向に延びる間隙へと通じる。このため、第2間隙Gから、水や埃、砂鉄等がモータ1の内部に侵入しにくい。先端面64cと縁面103cとが互いに平行に設けられことで、第2間隙Gに水や埃、砂鉄等の浸入を抑制することができる。さらに、縁面103cが中心軸と直交する面に対して傾斜することにより、モータ1の外部へ、水や埃、砂鉄等は排出されやすい。これにより、第2間隙Gから流入した空気は、水や埃、砂鉄等を含むことなく、ステータ9で発生した熱を冷却することができる。
【0054】
図6は、本発明の第4実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。ブラケット10bは、中央部101bと、縁部102bと、を有する。ロータヨーク6bは、壁部62bと、先端部63bとを有する。先端部63bは、縁部102bと軸方向に対向する先端面64bを有する。先端面64bは、中心軸Cと直交する面に対して傾斜する。より具体的には、先端面64bは、先端部63bの径方向内側から径方向外側に向かって、軸方向下方に傾斜している。つまり、先端面64bの径方向内端の位置は、径方向外端の位置よりも軸方向上側に位置する。なお、先端面64bは、径方向内端から径方向外端に向かって直線状に形成されてもよく、湾曲状に形成されてもよい。
【0055】
図6に示す第4実施形態では、先端面64bは、径方向外側に向かうにつれて軸方向下方に傾斜する。これにより、先端面64bに付着した水や埃、砂鉄等は先端面64bが中心軸と直交する面に対して傾斜することによりモータ1の外部へ、排出されやすい。
【0056】
図4、5および6に示す実施形態では、中央部101b(101c)の軸方向厚みを軸方向に更に長くする。これにより、中央部101b(101c)の径方向外側と対向する先端部63b(63c)の軸方向長さをさらに長くできるため、先端面64b(64c)および縁面103cの傾斜角度を更に大きくすることができる。したがって、モータ1の外部へ、水や埃、砂鉄等は更に排出され易く、水や埃、砂鉄等は更に侵入しにくい。
【0057】
図7は、本発明の第5実施形態における基板12dとブラケット10dを示す平面図である。
図8は、本発明の第5実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。基板12dは、基板12dの外縁から径方向内方に窪む基板凹部123dを有する。基板凹部123dは、基板12dの外縁から径方向内方に窪む基板12dの縁部である。基板凹部123dの少なくとも一部はステータと軸方向に対向する。ブラケット取付部104dは、基板凹部123dより径方向外側に配置される。たとえば、基板凹部123dは、ブラケット取付部104dに挿入されるネジと径方向に対向してもよい。
【0058】
図7および
図8に示す本実施形態において、ブラケット取付部104dと基板凹部123dとは軸方向に重なる。基板凹部123dは、基板12dに対して径方向に開口する。基板12dのパターン等が無い余分な部分に基板凹部123dを設ける。つまり、基板12dの余分なスペースを基板凹部123dとして有効に活用することができる。これにより、ブラケット10dの表面積を小さくすることができ、モータ1dを小型化することができる。
【0059】
本実施形態において、半田部121dの少なくとも一部は、隣り合うブラケット取付部104dの周方向間に配置される。これにより、ブラケット取付部104dと半田部121dとが径方向に重ならないため、ブラケット10dの表面積が大きくなることを抑制することができる。よって、モータ1dを小型化することができる。
【0060】
基板12dと引出線の接続において、からげピンを用いるより、半田のみで接続する方が好ましい。からげピンを用いると、からげピンが基板12dを貫通するための軸方向距離が必要になる。さらに、ブラケット10dにもからげピンを貫通させる穴を設ける必要がある。しかし、基板12dと引出線の接続において半田接合のみを行うと、軸方向に余計な穴を空ける必要が無い。よって、ブラケット10dの防塵防水を行うことができる。
【0061】
本実施形態において、半田部121dの少なくとも一部は、ステータの外周端よりも径方向内側に配置される。これにより、コイルと基板12dとの軸方向間の空間を有効に活用することができる。半田部121dはできるだけ中心軸に近い場所に配置することが好ましい。これにより、基板12dの大きさを小型化し、モータ1dを小型化することができる。
【0062】
本実施形態において、基板挿通孔105dは、隣り合うブラケット取付部104dの各々と中心軸とを結ぶなす角の間に配置される。これにより、ブラケット取付部104dと基板挿通孔105dとが径方向に並ぶことはない。よって、ブラケット10dの表面積が大きくなることを抑制でき、モータ1dを小型化することができる。外部接続部124dは、基板挿通孔105dを軸方向に貫通し、径方向外側に延びる。
【0063】
図9は、本発明の第6実施形態におけるモータ1eの一部を拡大して示す部分断面図である。基板12eは、ステータの少なくとも一部と軸方向に対向し、軸方向に貫通する基板貫通孔122eを有する。基板貫通孔122eは、基板12eの径方向外側に配置される。基板貫通孔122eはネジの外周面を径方向に囲ってもよい。
【0064】
本実施形態において、ブラケット取付部104eと基板貫通孔122eとは軸方向に重なる。基板12eの表面にパターン等が無い、余分な部分に基板貫通孔122eを設ける。つまり、基板12eの余分なスペースを基板貫通孔122eとして有効に活用することができる。これにより、基板12eの大きさを小型化し、ブラケット10eの表面積を小さくすることができ、モータ1eを小型化することができる。
【0065】
図10は、第1実施形態に係る無人飛行機本体1Aの外観を示す概略斜視図である。無人飛行機本体1Aは、本体部100と、第1モータ101A、第2モータ101B、第3モータ101C、および第4モータ101Dと、第1プロペラ102A、第2プロペラ102B、第3プロペラ102C、および第4プロペラ102Dと、を備える。
【0066】
本体部100は、中央から四方へ枝分かれする形状を有し、アーム100A~100Dを有する。アーム100A~100Dのそれぞれの先端部には、第1モータ101A、第2モータ101B、第3モータ101C、および第4モータ101Dがそれぞれ支持される。第1モータ101A~第4モータ101Dの各ロータには、第1プロペラ102A~第4プロペラ102Dが固定される。すなわち、無人飛行機では、4つのモータによって4つのプロペラが回転される。なお、モータとプロペラの個数は、4つに限らず、少なくとも2つあればよい。
【0067】
本実施形態において、無人飛行機1Aはモータ1を複数有する。これにより、無人飛行機1Aにおいて、モータ1は小型で軽量にすることができる。したがって、無人飛行機1Aにおいて、小型化かつ軽量化を図ることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上記実施形態とその変形例は適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えばモータにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・モータ、2・・・回転部、3・・・静止部、4・・・軸受、5・・・シャフト、51・・・取付部、6・・・ロータヨーク、61・・・内周面、62・・・壁部、63・・・先端部、7・・・蓋部、71・・・天面部、72・・・リブ、73・・・貫通孔、8・・・マグネット、9・・・ステータ、91・・・ステータコア、911・・・コアバック、912・・・ティース、92・・・コイル、10・・・ブラケット、101・・・中央部、102・・・縁部、11・・・軸受ハウジング、12・・・基板、C・・・中心軸、F・・・第1間隙、G・・・第2間隙、13・・・引出線、14・・・絶縁部材、104・・・ブラケット取付部、122・・・基板貫通孔、123・・・基板凹部、121・・・半田部、105・・・基板挿入孔、124・・・外部接続部、無人飛行機・・・1A